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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】加齢性肥満改善剤及び脂肪分解力改善剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/18 20060101AFI20241212BHJP
   A61K 31/121 20060101ALI20241212BHJP
   A61K 33/00 20060101ALI20241212BHJP
   A61K 33/04 20060101ALI20241212BHJP
   A61K 33/06 20060101ALI20241212BHJP
   A61K 36/17 20060101ALI20241212BHJP
   A61K 36/232 20060101ALI20241212BHJP
   A61K 36/234 20060101ALI20241212BHJP
   A61K 36/238 20060101ALI20241212BHJP
   A61K 36/284 20060101ALI20241212BHJP
   A61K 36/346 20060101ALI20241212BHJP
   A61K 36/484 20060101ALI20241212BHJP
   A61K 36/534 20060101ALI20241212BHJP
   A61K 36/539 20060101ALI20241212BHJP
   A61K 36/634 20060101ALI20241212BHJP
   A61K 36/638 20060101ALI20241212BHJP
   A61K 36/65 20060101ALI20241212BHJP
   A61K 36/708 20060101ALI20241212BHJP
   A61K 36/744 20060101ALI20241212BHJP
   A61K 36/9068 20060101ALI20241212BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
A61K36/18
A61K31/121
A61K33/00
A61K33/04
A61K33/06
A61K36/17
A61K36/232
A61K36/234
A61K36/238
A61K36/284
A61K36/346
A61K36/484
A61K36/534
A61K36/539
A61K36/634
A61K36/638
A61K36/65
A61K36/708
A61K36/744
A61K36/9068
A61P3/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018104528
(22)【出願日】2018-05-31
(65)【公開番号】P2019034926
(43)【公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-04-15
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】P 2017156131
(32)【優先日】2017-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】赤木 淳二
【合議体】
【審判長】冨永 みどり
【審判官】齋藤 恵
【審判官】田村 直寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-242354(JP,A)
【文献】特開2009-196990(JP,A)
【文献】国際公開第2008/140064(WO,A1)
【文献】特開2010-46230(JP,A)
【文献】国際公開第1997/47209(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/175362(WO,A1)
【文献】特表2013-530981(JP,A)
【文献】特開2009-196972(JP,A)
【文献】Pharmacological Research Communications,Volume 17, Issue 10,p.937-949
【文献】Endocrinology,1963年,Vol.72,No.4,p.527-543
【文献】今日の治療薬2012、2012年、1092頁
【文献】漢方と最新治療、2013年、Vol.22、No.3、pp.229-234
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K36/00
JSTPLUS、JMEDPLUS、JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防風通聖散エキスを含有し、下記脂肪分解力評価試験で測定される脂肪分解力が1mEq/g以下である脂肪組織を有する人に対して用いるための、加齢性肥満改善剤。
<脂肪分解力評価試験>
皮下から採取された脂肪組織をKrebs Ringer緩衝液(pH7.4)で洗浄する。洗浄後の脂肪組織の重量を計測し、洗浄後の脂肪組織0.2gに、1μg/mLのノルアドレナリン、及び2重量%牛血清アルブミン(BSA)を含むKrebs Ringer緩衝液(pH7.4)5mLに加え、37℃で2時間インキュベートする。その後、上清を回収し、ノルアドレナリン刺激により上清中に放出された遊離脂肪酸量を測定し、脂肪組織1g当たりの遊離脂肪酸の放出量(mEq/g)を脂肪分解力として求める。
【請求項2】
体脂肪率が25%以上でウエストサイズが85cm以上である状態が5年以上続いている人に対して適用される、請求項1に記載の加齢性肥満改善剤。
【請求項3】
防風通聖散エキスが、生薬由来成分の総量100重量部当たり、6-ギンゲロールを0.005~0.04重量部含む、請求項1又は2に記載の加齢性肥満改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加齢性肥満を効果的に改善できる加齢性肥満改善剤に関する。また、本発明は、低下した脂肪分解力を改善できる脂肪分解力改善剤にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食文化の欧米化に伴い、日本人の脂質摂取量は増加しており、過剰に摂取された脂質は体重増加をもたらし、肥満の原因となっている。肥満の改善には、体内における脂質の分解能や代謝能を高めることが有効であるが、従来の肥満改善剤では、脂質の分解能や代謝能が慢性的に低下している人には、脂質の分解能や代謝能を向上させるには限界がある。特に、中高年者にみられる肥満(特に、中高年で体脂肪率が25%以上でウエストサイズが85cm以上である状態が5年以上続いている人の肥満)は、脂質の分解能や代謝能が本質的に低下しており、従来の肥満改善剤では効果は期待できないと考えられている。
【0003】
一方、防風通聖散には、内臓脂肪の低減やメタボリックシンドロームの改善等に有効な漢方薬として知られている。また、防風通聖散の作用機序についても、交感神経系を介した褐色脂肪細胞における熱産生の活性化、白色脂肪細胞における脂肪の分解促進等が明らかにされている(非特許文献1参照)。また、防風通聖散エキスについては、内臓脂肪の低減効果の向上、呈味改善等の観点から、様々な製剤処方が開発されている(例えば、特許文献1及び2)。
【0004】
しかしながら、前述したように、中高年以上の人にみられる肥満、特に中高年以上の人で体脂肪率が25%以上でウエストサイズが85cm以上である状態が5年以上続いている人の肥満に対しては、従来の肥満改善剤では効果が期待できないと考えられており、このような中高年以上の人は、食事制限する意欲すらないことが多く、防風通聖散を服薬していないのが現状であった。
【0005】
また、脂肪細胞はノルアドレナリン刺激によって細胞内に蓄積した脂肪を遊離脂肪酸に分解する。これを脂肪分解応答という。脂肪分解応答により生成した遊離脂肪酸は血中に放出され、肝臓や骨格筋、褐色脂肪へ運ばれ、代謝を受けて燃焼・消費される。脂肪細胞の機能が衰えるとノルアドレナリン刺激に対する応答能力が低下することが知られており、この症状は特に加齢とともに進行することが知られている。さらに、このようなノルアドレナリン刺激に対する応答能力の低下は脂肪の燃焼や消費の低下にもつながることから、加齢に伴う体重増加の原因のひとつと考えられている。
【0006】
これまで、脂肪の分解を高める目的で、大豆エキス(特許文献3)やプアール茶エキス(特許文献4)などの脂肪分解促進剤が見出されている。しかし、これらの脂肪分解促進剤は、すでにノルアドレナリン刺激に応答する脂肪分解力が低下してしまった脂肪に対して効果を発揮するのは困難であった。
【0007】
一方、防風通聖散は18種類の生薬より構成される漢方薬であり、内臓脂肪の低減やメタボリックシンドロームの改善等に有効な漢方薬として知られている。構成生薬である麻黄はエフェドリンを含有し、交感神経終末からノルアドレナリン放出を増加させる。また、構成生薬である甘草、荊芥、連翹にはホスホジエステラーゼ阻害作用があり、エフェドリンによって放出されたノルアドレナリンの効果を持続させる働きがある。つまり、防風通聖散の作用機構は、ノルアドレナリンの放出に対して働きかけるものである。このような作用機構上、防風通聖散は、ノルアドレナリン刺激に対する応答能力(脂肪分解力)自体がすでに低下してしまった脂肪細胞に対してはほとんど効果を発揮しないというのが技術常識であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】漢方医学、Vol.37、No.1、2013年、38~40頁
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2009-242354号公報
【文献】特開2009-242330号公報
【文献】特開平11-228430号公報
【文献】特開2002-275078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、加齢性肥満に対して、優れた改善効果を奏する肥満改善剤を提供することである。また、本発明の目的は、ノルアドレナリン刺激に対する低下した応答能力(以下において、低下した脂肪分解力とも記載する。)を改善できる脂肪分解力改善剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
加齢性肥満では、脂質の分解能や代謝能が本質的に低下していることが多く、脂質の分解能や代謝能を高める従来の肥満改善剤では効果は期待できないが、摂取した脂質の便中への排泄を促進させる作用があれば、肥満改善に有効であると考えられる。このような観点から、本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、防風通聖散エキスには、摂取した脂質の便中への排泄を促進させる作用があり、脂質の分解能や代謝能が本質的に低下している加齢性肥満に対しても、優れた肥満改善効果を奏することを見出した。さらに、本発明者らは、防風通聖散に、予想外にも、低下した脂肪分解力を改善する効果があることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0012】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 防風通聖散エキスを含有する、加齢性肥満改善剤。
項2. 体脂肪率が25%以上でウエストサイズが85cm以上である状態が5年以上続いている人に対して適用される、項1に記載の加齢性肥満改善剤。
項3. 下記脂肪分解力評価試験で測定される脂肪分解力が5mEq/g以下である脂肪組織を有する人に対して適用される、項1又は2に記載の加齢性肥満改善剤。
<脂肪分解力評価試験>
皮下から採取された脂肪組織をKrebs Ringer緩衝液(pH7.4)で洗浄する。洗浄後の脂肪組織の重量を計測し、洗浄後の脂肪組織0.2gに、1μg/mLのノルアドレナリン、及び2重量%牛血清アルブミン(BSA)を含むKrebs Ringer緩衝液(pH7.4)5mLに加え、37℃で2時間インキュベートする。その後、上清を回収し、ノルアドレナリン刺激により上清中に放出された遊離脂肪酸量を測定し、脂肪組織1g当たりの遊離脂肪酸の放出量(mEq/g)を脂肪分解力として求める。
項4. 防風通聖散エキスが、生薬由来成分の総量100重量部当たり、6-ギンゲロールを0.005~0.04重量部含む、項1~3のいずれかに記載の加齢性肥満改善剤。
項5. 防風通聖散エキスを含有する、脂肪分解力改善剤。
項6. 体脂肪率が25%以上でウエストサイズが85cm以上である状態が5年以上続いている人に対して適用される、項5に記載の脂肪分解力改善剤。
項7. 下記脂肪分解力評価試験で測定される脂肪分解力が5mEq/g以下である脂肪組織を有する人に対して適用される、項5又は6に記載の脂肪分解力改善剤。
<脂肪分解力評価試験>
皮下から採取された脂肪組織をKrebs Ringer緩衝液(pH7.4)で洗浄する。洗浄後の脂肪組織の重量を計測し、洗浄後の脂肪組織0.2gに、1μg/mLのノルアドレナリン、及び2重量%牛血清アルブミン(BSA)を含むKrebs Ringer緩衝液(pH7.4)5mLに加え、37℃で2時間インキュベートする。その後、上清を回収し、ノルアドレナリン刺激により上清中に放出された遊離脂肪酸量を測定し、脂肪組織1g当たりの遊離脂肪酸の放出量(mEq/g)を脂肪分解力として求める。
項8. 防風通聖散エキスが、生薬由来成分の総量100重量部当たり、6-ギンゲロールを0.005~0.04重量部含む、項5~7のいずれかに記載の脂肪分解力改善剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明の加齢性肥満改善剤によれば、脂質の分解能や代謝能が本質的に低下した加齢性肥満に対しても肥満改善効果を奏することができる。例えば、体脂肪率が25%以上でウエストサイズが85cm以上である状態が5年以上続いている中高年以上の人は、従来の肥満改善剤では改善効果が期待できず、食事制限する意欲すらないことが多かったが、本発明の加齢性肥満改善剤によって、このような中高年以上の人にも肥満改善という福音をもたらすことができる。さらに、本発明の脂肪分解力改善剤によれば、低下した脂肪分解力を改善することができる。例えば、体脂肪率が25%以上でウエストサイズが85cm以上である状態が5年以上続いている中高年以上の人は、加齢などによってすでにノルアドレナリン刺激に応答する脂肪分解力が低下していることが多いが、本発明の脂肪分解力改善剤によって、脂肪分解力の若返りが期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の加齢性肥満改善剤及び脂肪分解力改善剤は、防風通聖散エキスを含有することを特徴とする。以下、本発明の加齢性肥満改善剤及び脂肪分解力改善剤について詳述する。
【0015】
防風通聖散エキス
防風通聖散を構成する生薬は、「一般用漢方処方の手引き」(厚生省薬務局監修、日薬連漢方専門委員会編集、薬業時報社発行)によれば、トウキ、シャクヤク、センキュウ、サンシシ、レンギョウ、ハッカ、ショウキョウ、ケイガイ、ボウフウ、マオウ、ダイオウ、ボウショウ、ビャクジュツ、キキョウ、オウゴン、カンゾウ、セッコウ、及びカッセキである。書簡によっては、前記生薬の内、ビャクジュツを含まないもの(例えば「経験漢方処方分量集」、大塚敬節・矢数道明監集、医道の日本社発行)や、オウゴンを含まないもの(例えば「続漢方あれこれ」大阪読売新聞社編、浪速社発行)がある。本発明で使用される防風通聖散エキスは、これらのいずれの防風通聖散から得られるものであってもよい。
【0016】
また、防風通聖散を構成する各生薬の分量は、「一般用漢方処方の手引き」(厚生省薬務局監修、日薬連漢方専門委員会編集、薬業時報社発行)、「第十七改正日本薬局方」等によれば、トウキ1.2重量部、シャクヤク1.2重量部、センキュウ1.2重量部、サンシシ1.2重量部、レンギョウ1.2重量部、ハッカ1.2重量部、ショウキョウ0.3~1.2重量部、ケイガイ1.2重量部、ボウフウ1.2重量部またはハマボウフウ1.2重量部、マオウ1.2重量部、ダイオウ1.5重量部、ボウショウ(硫酸ナトリウム無水物換算量)0.6~1.5重量部、ビャクジュツ2重量部、キキョウ2重量部、オウゴン2重量部、カンゾウ2重量部、セッコウ2~3重量部、及びカッセキ3~5重量部である。また、書簡によっては、前記分量中、1.2重量部を全て1.5重量部としているものもある(例えば「明解漢方処方」、西岡一夫、高橋真太郎共著、浪速社発行)。
【0017】
防風通聖散エキスの製造に供される生薬調合物における各生薬の分量については、特に制限されず、前記で例示した書簡に示されている各生薬の分量で使用してもよいが、好適な例として、トウキ1.2重量部、シャクヤク1.2重量部、センキュウ1.2重量部、サンシシ1.2重量部、レンギョウ1.2重量部、ハッカ1.2重量部、ケイガイ1.2重量部、ボウフウ1.2重量部、マオウ1.2重量部、ダイオウ1.5重量部、ボウショウ(硫酸ナトリウム無水物換算量)0.6~1.5重量部、ビャクジュツ2重量部、キキョウ2重量部、オウゴン2重量部、カンゾウ2重量部、セッコウ2~3重量部(好ましくは2重量部)、及びカッセキ3~5重量部(好ましくは3重量部)であり、且つショウキョウが0.3~1.5重量部、好ましくは0.3~1.2重量部、更に好ましくは0.3~0.4重量部、特に好ましくは0.3重量部であるもの(以下、「態様A1」と表記することもある)、または、トウキ1.2重量部、シャクヤク1.2重量部、センキュウ1.2重量部、サンシシ1.2重量部、レンギョウ1.2重量部、ハッカ1.2重量部、ケイガイ1.2重量部、ボウフウ1.2重量部、マオウ1.2重量部、ダイオウ1.5重量部、ボウショウ(硫酸ナトリウム無水物換算量)0.6~1.5重量部、ビャクジュツ2重量部、キキョウ2重量部、オウゴン2重量部、カンゾウ2重量部、セッコウ2~3重量部(好ましくは2重量部)、及びカッセキ3~5重量部(好ましくは3重量部)であり、且つショウキョウが0.6~1.5重量部、好ましくは0.8~1.4重量部、更に好ましくは1~1.3重量部、特に好ましくは1.2重量部であるもの(以下、「態様A2」と表記することもある)が挙げられる。用量及び製剤形態等にもよるが、防風通聖散エキスの製造に供される生薬調合物におけるショウキョウの分量を前記態様A1又は態様A2における範囲に調節することによって、加齢性肥満及び/又は脂肪分解力をより効果的に改善することができ、前記態様A2における範囲に調節することによって、錠剤として成形された場合に、錠剤の硬度及び崩壊性を向上させることができる。
【0018】
また、前記の態様A1において、ボウショウの分量が、硫酸ナトリウム無水物換算で、好ましくは0.6~1重量部、更に好ましくは0.6~0.75重量部、特に好ましくは0.7重量部が挙げられ、前記の態様A2において、ボウショウの分量が、硫酸ナトリウム無水物換算で、好ましくは1~1.5重量部、更に好ましくは1.3~1.5重量部、特に好ましくは1.5重量部が挙げられる。用量及び製剤形態等にもよるが、ボウショウの分量がこのような範囲を充足することによって、加齢性肥満及び/又は脂肪分解力をより効果的に改善することが可能になる。また、ボウショウの分量が前記の態様A2において、ボウショウの分量が、硫酸ナトリウム無水物換算で、好ましくは1~1.5重量部、更に好ましくは1.3~1.5重量部、特に好ましくは1.5重量部を充足することによって、錠剤として成形された場合に、錠剤の硬度及び崩壊性を向上させることができる。
【0019】
なお、本発明において、「防風通聖散エキスの製造に供される生薬調合物」とは、防風通聖散エキスの製造において、抽出に供される原料調合物、即ち、防風通聖散を構成する所定量の生薬を含む調合物である。また、ボウショウの硫酸ナトリウム無水物換算とは、ボウショウとして硫酸ナトリウムの水和物を使用する場合には、当該水和物を無水物重量に換算することを指す。なお、ボウショウとしては、硫酸ナトリウムの水和物(例えば、10水和物)及び/又は硫酸ナトリウム無水物が使用され、錠剤として成形された場合において錠剤の硬度及び崩壊性を向上させる観点からは、硫酸ナトリウム無水物が好ましく使用される。
【0020】
本発明で使用される防風通聖散エキスの製造に供される生薬調合物の好適な例として、当該生薬調合物の全量100重量部当たり、ショウキョウが1~5重量部、好ましくは1~4重量部、更に好ましくは1~3重量部、特に好ましくは1~2重量部含まれているものが挙げられる。用量及び製剤形態等にもよるが、このようにショウキョウの比率が低い生薬調合物から防風通聖散エキスを得ることによって、加齢性肥満及び/又は脂肪分解力をより効果的に改善することが可能になる。本発明で使用される防風通聖散エキスの製造に供される生薬調合物の好適な別の例として、当該生薬調合物の全量100重量部当たり、ショウキョウが2~5重量部、好ましくは3~5重量部、更に好ましくは4~5重量部、特に好ましくは4~4.5重量部含まれているものが挙げられる。用量及び製剤形態等にもよるが、このようにショウキョウの比率が低い生薬調合物から防風通聖散エキスを得ることによって、加齢性肥満及び/又は脂肪分解力をより効果的に改善することが可能になり、錠剤として成形された場合においては、錠剤の硬度及び崩壊性を向上させることが可能になる。
【0021】
また、本発明で使用される防風通聖散エキスの製造に供される生薬調合物の好適な例として、当該生薬調合物の全量100重量部当たり、ボウショウが硫酸ナトリウム無水物換算で2~6重量部、好ましくは2~4重量部、更に好ましくは2~3重量部、特に好ましくは2~2.5重量部含まれているものが挙げられる。用量及び製剤形態等にもよるが、このような比率で生薬調合物中にボウショウが含まれることによって、加齢性肥満及び/又は脂肪分解力をより効果的に改善することが可能になる。本発明で使用される防風通聖散エキスの製造に供される生薬調合物の好適な別の例として、当該生薬調合物の全量100重量部当たり、ボウショウが硫酸ナトリウム無水物換算で3~6重量部、好ましくは4~6重量部、更に好ましくは5~6重量部、特に好ましくは5~5.5重量部含まれているものが挙げられる。用量及び製剤形態等にもよるが、このような比率で生薬調合物中にボウショウが含まれることによって、加齢性肥満及び/又は脂肪分解力をより効果的に改善することが可能になり、錠剤として成形された場合においては、錠剤の硬度及び崩壊性を向上させることが可能になる。
【0022】
また、本発明で使用される防風通聖散エキスの好適な例として、生薬由来成分の総量100重量部当たり、6-ギンゲロールが0.005~0.04重量部含まれているものが挙げられる。6-ギンゲロールは、ショウキョウに含まれている成分であり、従来の防風通聖散エキスでは、通常、生薬由来成分の総量100重量部当たり6-ギンゲロールが0.05重量部以上含まれている。本発明では、6-ギンゲロールの含有量が低減された防風通聖散エキスを使用することによって、加齢性肥満及び/又は脂肪分解力をより効果的に改善することが可能になる。用量及び製剤形態等にもよるが、加齢性肥満及び/又は脂肪分解力をより効果的に改善するという観点から、生薬由来成分の総量100重量部当たり、6-ギンゲロールが、好ましくは0.007~0.03重量部、更に好ましくは0.007~0.025重量部、特に好ましくは0.007~0.015重量部含まれているもの、又は、生薬由来成分の総量100重量部当たり、好ましくは6-ギンゲロールが0.02~0.04重量部、より好ましくは0.025~0.04重量部、更に好ましくは0.03~0.04重量部、特に好ましくは0.035~0.04重量部含まれているものが挙げられる。また、錠剤として成形された場合においては、錠剤の硬度及び崩壊性を向上させる観点から、生薬由来成分の総量100重量部当たり、好ましくは6-ギンゲロールが0.02~0.04重量部、より好ましくは0.025~0.04重量部、更に好ましくは0.03~0.04重量部、特に好ましくは0.035~0.04重量部含まれているものが挙げられる。ここで、生薬由来成分とは、防風通聖散を構成する生薬から抽出された成分である。即ち、賦形剤等の添加剤が配合されていない防風通聖散エキス末の場合であれば、当該エキス末の重量が生薬由来成分の総量になり、賦形剤等の添加剤が配合されている防風通聖散エキス末の場合であれば、当該エキス末の重量から含有する添加剤の重量を差し引いた重量が生薬由来成分の総量になる。
【0023】
ショウキョウに含まれる6-ギンゲロール含量は、ショウキョウの産地や生育年数等に応じて異なり、またショウキョウからの6-ギンゲロールの抽出効率も抽出条件等によって変動する。そのため、6-ギンゲロールを前記比率で含む防風通聖散エキスを得るには、ショウキョウに含まれる6-ギンゲロール含量に応じて、生薬調合物におけるショウキョウの比率や、抽出に供されるショウキョウ(即ち、生薬調合物に使用されるショウキョウ)の形状等を適宜設定すればよい。ショウキョウは、1~8mm程度角となるように細切物したものを抽出に供するよりも、厚さ1~3mm程度にスライス状にした加工品を抽出に供した方が、6-ギンゲロールの抽出量を低減でき、6-ギンゲロールを前記比率で含む防風通聖散エキスを好適に得ることができる。例えば、生薬調合物の全量100重量部当たりのショウキョウの比率を前述する態様A1に示す範囲に設定したうえで、ショウキョウの形状を調整することにより、6-ギンゲロールを前記含有量の範囲内で含む防風通聖散エキスを好適に得ることができる。
【0024】
本発明で使用される防風通聖散エキスは、前記生薬調合物を公知の手法で抽出することによって得ることができる。前記生薬調合物を抽出する方法については、従来の防風通聖散エキスの抽出法と同様の方法で行えばよく、例えば、前記生薬調合物に対して、約10~20倍量の水を加え、80~100℃程度で1~3時間程度撹拌して抽出する方法が挙げられる。抽出後に、遠心分離、濾過等の固液分離に供して固形分を除去し、必要に応じて、濃縮処理や乾燥処理に供することによって防風通聖散エキスが得られる。
【0025】
防風通聖散エキスをエキス末として得るには、固形分を除去した抽出液を、必要に応じて濃縮した後に、スプレードライ、減圧濃縮乾燥、凍結乾燥等の乾燥処理に供すればよい。また、乾燥処理(特に、スプレードライによる乾燥処理)に供する際に、必要に応じて抽出液に、デキストリン等の賦形剤を添加してもよい。このように賦形剤を添加することにより、乾燥時間を短縮することが可能になる。添加される賦形剤の種類や添加量については、一般的な漢方エキス末を製造する場合と同様である。
【0026】
また、防風通聖散エキスを軟エキスとして得るには、形分を除去した抽出液を、減圧濃縮等によって濃縮すればよい。また、軟エキスに、適当な吸着剤(例えば無水ケイ酸、デンプン等)を加えて吸着末としてもよい。
【0027】
本発明で使用される防風通聖散エキスは、エキス末又は軟エキスのいずれであってもよく、本発明の加齢性肥満改善剤又は脂肪分解力改善剤の形態に応じて、エキス末又は軟エキスを適宜選択すればよい。また、錠剤として成形される場合においては、硬度及び崩壊性に優れた錠剤を得る観点から、エキス末であることが好ましい。
【0028】
その他の成分
本発明の加齢性肥満改善剤及び脂肪分解力改善剤は、防風通聖散エキス単独からなるものであってもよく、製剤形態に応じた添加剤や基剤を含んでいてもよい。このような添加剤及び基剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、等張化剤、可塑剤、分散剤、乳化剤、溶解補助剤、湿潤化剤、安定化剤、懸濁化剤、粘着剤、コーティング剤、光沢化剤、水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、水溶性高分子、界面活性剤、金属石鹸、低級アルコール類、多価アルコール、pH調整剤、緩衝剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、防腐剤、矯味剤、香料、粉体、増粘剤、色素、キレート剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの添加剤及び基剤の含有量については、使用する添加剤及び基剤の種類、加齢性肥満改善剤又は脂肪分解力改善剤の製剤形態等に応じて適宜設定される。
【0029】
添加剤及び基剤としては、デンプン、カルメロースカルシウム、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、合成ハイドロタルサイト、無水リン酸水素カルシウム、カルメロース、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポピドンが挙げられ、好ましくは、カルメロースカルシウム、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、及び合成ケイ酸アルミニウムが挙げられる。これらの添加剤及び基剤の含有量は、使用する添加剤及び基剤の種類に応じて適宜設定される。
【0030】
錠剤として成形される場合においては、硬度及び崩壊性に優れた錠剤を得る観点から、添加剤及び基剤として少なくともデンプンを含むことが好ましい。デンプンとしては、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン等が挙げられ、好ましくはバレイショデンプンが挙げられる。デンプンの含有量としては、0.5~3重量%、好ましくは1~2.5重量%、更に好ましくは1.5~2.5重量%、特に好ましくは1.5~2重量%が挙げられる。デンプンがこのような比率で含まれることによって、錠剤として成形された場合において、錠剤の硬度及び崩壊性を向上させることが可能になる。
【0031】
カルメロースカルシウムの含有量としては、例えば0.5~10重量%が挙げられ、軽質無水ケイ酸の含有量としては、例えば3~25重量%%が挙げられ、ステアリン酸マグネシウムの量としては、例えば0.2~1重量%、好ましくは0.5~0.7重量%が挙げられ、合成ケイ酸アルミニウムの含有量としては、例えば0.5~10重量%、好ましくは1~10重量%が挙げられる。錠剤として成形される場合においては、硬度及び崩壊性に優れた錠剤を得る観点から、カルメロースカルシウムの含有量として、好ましくは1~7重量%、より好ましくは1~1.5重量%、更に好ましくは1~1.2重量%が挙げられ、軽質無水ケイ酸の含有量として、好ましくは4~15重量%、より好ましくは4~5重量%、更に好ましくは4~4.3が挙げられる。
【0032】
また、本発明の加齢性肥満改善剤及び脂肪分解力改善剤は、防風通聖散エキスの他に、必要に応じて、他の栄養成分や薬理成分を含有していてもよい。このような栄養成分や薬理成分としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、制酸剤、健胃剤、消化剤、整腸剤、鎮痙剤、粘膜修復剤、抗炎症剤、収れん剤、鎮吐剤、鎮咳剤、去痰剤、消炎酵素剤、鎮静催眠剤、抗ヒスタミン剤、カフェイン類、強心利尿剤、抗菌剤、血管収縮剤、血管拡張剤、局所麻酔剤、生薬エキス、ビタミン類、メントール類等が挙げられる。これらの栄養成分や薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの成分の含有量については、使用する成分の種類、加齢性肥満改善剤又は脂肪分解力改善剤の製剤形態等に応じて適宜設定される。
【0033】
製剤形態
本発明の加齢性肥満改善剤及び脂肪分解力改善剤の製剤形態については、経口投与が可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤(ドライシロップを含む)、錠剤、丸剤、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤)等の固形状製剤;ゼリー剤等の半固形状製剤;液剤、懸濁剤、シロップ剤等の液状製剤が挙げられる。これらの製剤形態の中でも、含有成分の安定性や携帯性等の観点から、好ましくは固形状製剤が挙げられる。
【0034】
本発明の加齢性肥満改善剤及び脂肪分解力改善剤が錠剤として成形される場合、錠剤の形状及び大きさ等は特に限定されない。錠剤形状としては、丸型、楕円型、三角型、四角型等が挙げられる。丸型錠の場合にあっては、直径6~12mm、好ましくは8~10mmが挙げられる。錠剤の厚みとしては、3~8mm、好ましくは4~7mmが挙げられる。一錠当たりの重量としては、200~800mg、好ましくは300~600mgが挙げられる。
【0035】
本発明の加齢性肥満改善剤及び脂肪分解力改善剤が錠剤として成形される場合、当該錠剤は、素錠(裸錠)であってもよいし、薬剤の安定化、及び矯味や矯臭等の目的で表面にコーティングを施したコーティング錠であってもよい。コーティング錠としては、糖衣錠や、水溶性、腸溶性または胃溶性の高分子基剤を含むフィルムで被覆したフィルムコーティング剤(胃溶錠、腸溶錠)が挙げられる。好ましくは、素錠の硬度として40N以上、好ましくは50N以上、より好ましくは70N以上、さらに好ましくは80N以上、一層好ましくは100N以上、特に好ましくは130N以上が挙げられる。
【0036】
製造方法
本発明の加齢性肥満改善剤及び脂肪分解力改善剤を前記製剤形態に調製するには、防風通聖散エキス、及び必要に応じて添加される添加剤、基剤、及び薬理成分を用いて、医薬分野で採用されている通常の製剤化手法に従って製剤化すればよい。錠剤として製剤する場合においては、好ましくは、本発明の加齢性肥満改善剤及び脂肪分解力改善剤の製造方法は、防風通聖散エキス、又は必要に応じ添加剤、基材、他の栄養成分、及び/又は他の薬理成分と混合した防風通聖散エキス混合物を造粒する造粒工程、及び造粒物を打錠する打錠工程を含む。打錠工程における打錠圧としては、例えば200~490mg/錠の錠剤を製造する場合、4~20kN、好ましくは4~15kNが挙げられる。打錠装置への負荷を少なくし、打錠装置の長寿命化を図る観点から、打錠圧は、より低い4~12kNとしてもよい。
【0037】
用途
本発明の加齢性肥満改善剤は、加齢性肥満の予防又は改善のために使用される。加齢性肥満とは、加齢によって脂質の分解能や代謝能が低下している肥満であり、加齢性肥満の人として、例えば、中高年以上(45歳以上)で肥満(例えば、体脂肪率が25%以上)の人が挙げられる。
【0038】
本発明の加齢性肥満改善剤は、摂取したコレステロール等の脂質の便中への排泄を促進させる作用もある。このように、脂質の便中への排泄を促進させる作用を併せ持つことによって、加齢性肥満において、脂質の過剰摂取による健康障害(体重増加、内臓脂肪増加等)を効果的に改善又は回避することが可能になる。
【0039】
また、加齢性肥満の人の中でも、脂質の分解能や代謝能が本質的に低下した体質の人では、従来の肥満改善剤では、脂質の分解能や代謝能の改善が期待できず、従来の肥満改善剤を服用する習慣がなかったが、本発明の加齢性肥満改善剤によれば、脂質の便中への排泄を促進させる作用を合わせ持つことにより、このような脂質の分解能や代謝能が本質的に低下した、加齢性肥満に対しても、脂質の過剰摂取による健康障害(体重増加、内臓脂肪増加等)を効果的に改善又は回避することが可能になる。このような本発明の効果を鑑みれば、本発明の加齢性肥満改善剤の好適な適用対象として、脂質の分解能や代謝能が本質的に低下した体質の加齢性肥満が挙げられる。このような体質の加齢性肥満としては、具体的には、中高年以上(45歳以上)で、体脂肪率が25%以上でウエストサイズが85cm以上である状態が5年以上続いている人;下記脂肪分解力評価試験で測定される脂肪分解力が5mEq/g以下、好ましくは3mEq/g以下、より好ましくは1mEq/g以下、さらに好ましくは0.5mEq/g以下、特に好ましくは0.3mEq/g以下である脂肪組織を有する人等が挙げられる。
<脂肪分解力評価試験>
先ず、対象者の皮下から脂肪組織を採取する。得られた脂肪組織をKrebs Ringer緩衝液(pH7.4)で洗浄する。洗浄後の脂肪組織の重量を計測し、洗浄後の脂肪組織0.2gに、1μg/mLのノルアドレナリン、及び2重量%牛血清アルブミン(BSA)を含むKrebs Ringer緩衝液(pH7.4)5mLに加え、37℃で2時間インキュベートする。その後、上清を回収し、ノルアドレナリン刺激により上清中に放出された遊離脂肪酸量を測定し、脂肪組織1g当たりの遊離脂肪酸の放出量(mEq/g)を脂肪分解力として求める。
【0040】
なお、脂肪組織はノルアドレナリン刺激により活性化され、蓄積した脂肪が分解し、遊離脂肪酸を放出することが知られている。前記脂肪分解力評価試験では、脂肪組織の分解力を、この遊離脂肪酸の放出量を測定することで評価している。
【0041】
本発明の脂肪分解力改善剤は、脂肪分解力の低下の予防又は低下した脂肪分解力の改善のために使用される。脂肪分解力が低下している状態は、ノルアドレナリン刺激に対する脂肪細胞の応答能力が低下している状態であり、脂肪の燃焼や消費の低下を引き起こしていることが多い。したがって、脂肪分解力が低下している人として、例えば、中高年以上(45歳以上)の人、及び/又は肥満(例えば、体脂肪率が25%以上)の人が挙げられ、特に、中高年以上(45歳以上)且つ肥満(例えば、体脂肪率が25%以上)の人が挙げられる。
【0042】
また、脂肪分解力が低下している人では、ノルアドレナリン刺激に対する応答能自体が低下しているため、従来の脂肪分解促進剤では脂肪分解力の改善が期待できず、従来の脂肪分解促進剤を服用する習慣がなかったが、本発明の脂肪分解力改善剤によれば、ノルアドレナリン刺激に対する応答能自体を高めることができるため、脂肪分解力を効果的に改善又は脂肪分解力の低下を効果的に回避することが可能になる。このような本発明の効果を鑑みれば、本発明の脂肪分解力改善剤の好適な適用対象として、加齢により脂肪分解力が低下した体質を持つ人、及び脂肪分解力の低下に起因する脂肪の燃焼や消費の低下により肥満である人が挙げられる。このような体質の人としては、具体的には、中高年以上(45歳以上)で、体脂肪率が25%以上でウエストサイズが85cm以上である状態が5年以上続いている人;上記の脂肪分解力評価試験で測定される脂肪分解力が5mEq/g以下、好ましくは3mEq/g以下、より好ましくは1mEq/g以下、さらに好ましくは0.5mEq/g以下、特に好ましくは0.3mEq/g以下である脂肪組織を有する人等が挙げられる。
【0043】
用量・用法
本発明の加齢性肥満改善剤及び脂肪分解力改善剤は経口投与によって使用される。本発明の加齢性肥満改善剤及び脂肪分解力改善剤の用量については、投与対象者の年齢、性別、体質等に応じて適宜設定されるが、例えば、ヒト1人に対して1日当たり、防風通聖散エキスの生薬由来成分の総量が1~10g程度、好ましくは1.5~8g程度、より好ましくは1.5~6g程度となる量で、1日1~3回、好ましくは2又は3回の頻度で服用すればよい。服用タイミングについては、特に制限されず、食前、食後、又は食間のいずれであってもよいが、食前(食事の30分前)又は食間(食後2時間後)が好ましい。
【0044】
また、本発明の加齢性肥満改善剤による脂質の便中への排泄促進効果は、継続的な服用によって奏されるので、本発明の便加齢性肥満改善剤は、継続的な服用(具体的には6日間以上の継続的な服用、好ましくは12日間以上の継続的な服用)を行うことが好ましい。
【0045】
さらに、本発明の脂肪分解力改善剤によるノルアドレナリン刺激に対する応答能の改善は、継続的な服用によって奏されるので、本発明の脂肪分解力改善剤は、継続的な服用(具体的には6日間以上の継続的な服用、好ましくは12日間以上の継続的な服用)を行うことが好ましい。
【実施例
【0046】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0047】
防風通聖散エキスの製造及び分析
1.防風通聖散エキス末の製造
表1に示す各生薬を細切又はスライスして、所定の分量を混合し、細切して生薬調合物を得た。生薬調合物に、重量比で20倍量の水を加えて、約100℃で1時間撹拌しながら抽出を行った。その後、遠心分離にて抽出液を回収し、減圧濃縮した後に、スプレードライヤーを用いて乾燥させ、防風通聖散エキス末を得た。
【0048】
なお、製造例1及び2では、ショウキョウは1~8mm角に細切したものを使用し、製造例3では、ショウキョウは厚さ1~3mmのスライス状にしたものを使用した。また、スプレードライヤーによる乾燥は、抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の熱風を供給することにより行った。
【0049】
【表1】
【0050】
2.防風通聖散エキス末中の6-ギンゲロール含量の測定
防風通聖散のエキス末約1gを精密に量り、共栓遠心沈殿管に入れ、メタノール/水混液(メタノール:水の容量比3:1)30mLを加え、20分間振り混ぜた後、遠心分離し、抽出液を分取した。残留物にメタノール/水混液(メタノール:水の容量比3:1)30mLを加えて、更にこの操作を2回繰り返した。全抽出液を合わせ、メタノール/水混液(メタノール:水の容量比3:1)を加えて正確に100mLとし、試料溶液とした。別に定量用6-ギンゲロール約5mgを精密に量り、メタノール/水混液(メタノール:水の容量比3:1)に溶かし、正確に100mLとし、標準溶液とした。試料溶液及び標準溶液10μLずつを正確にとり、次の試験条件で液体クロマトグラフィーによる測定を行った。
(試験条件)
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:205nm)
カラム:内径4.6mm、長さ15cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填したもの(COSMOSIL 5C18 MS-II(5μm,4.6×150mm)(ナカライテスク株式会社))。
カラム温度:40℃付近の一定温度
移動相:水/アセトニトリル/リン酸混液(水:アセトニトリル:リン酸の容量比3800:2200:1)
流速:6-ギンゲロールの保持時間が約19分になるように調整した。
【0051】
下記式に従って、試料溶液中の6-ギンゲロール量を算出し、各防風通聖散のエキス末中の6-ギンゲロール含量を求めた。
【数1】
【0052】
結果を表2に示す。生薬調合物100重量部に対するショウキョウの比率が1.11重量部と低い生薬調合物から得られた防風通聖散エキスでは、6-ギンゲロールの含有量が0.010重量%と低くなっていた(製造例1)。また、抽出に供するショウキョウを厚さ1~3mmのスライス状にした場合には、1~8mm角に細切した場合に比べて、得られた防風通聖散エキス中の6-ギンゲロールの含有量が低減されていた(製造例2及び3)。
【0053】
【表2】
【0054】
試験例1:内臓脂肪及び体重の低減効果の評価
若齢性肥満モデルマウスの作製
若齢マウス(C57BL/6Jマウス、5週齢、雄)に高脂肪食(HFD32、日本クレア株式会社)を4週間自由摂食させて飼育し、若齢性肥満モデルマウスを作製した。
【0055】
また、加齢マウス(C57BL/6Jマウス、40-60週齢、雄)に高脂肪食(HFD32,日本クレア株式会社)を1週間自由摂食させて飼育し、加齢性肥満モデルマウスを作製した。
【0056】
また、上記で作製した若齢性肥満モデルマウス及び加齢性肥満モデルマウス各3匹から副睾丸周囲脂肪を摘出し、脂肪分解力の測定を行った。具体的には、先ず、副睾丸周囲から摘出した脂肪組織をKrebs Ringer緩衝液(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の脂肪組織の重量を計測し、洗浄後の脂肪組織0.2gに、1μg/mLのノルアドレナリン、及び2重量%牛血清アルブミン(BSA)を含むKrebs Ringer緩衝液(pH7.4)5mLに加え、37℃で2時間インキュベートした。その後、上清を回収し、ノルアドレナリン刺激により上清中に放出された遊離脂肪酸量をNEFA-Cテストワコー(和光純薬工業株式会社)にて測定し、脂肪組織1g当たりの遊離脂肪酸の放出量(mEq/g)を脂肪分解力として求めた。
【0057】
防風通聖散エキスの投与試験
前記で作製した若齢性肥満モデルマウスの体重を測定後、各群の平均体重が約26gとなるようにコントロール群A(対照例)、試験群A1、及び試験群A2に分けた(各群6~11匹)。また、前記で作製した加齢性肥満モデルマウスの体重を測定後、各群の平均体重が約42gとなるようにコントロール群B(対照例)、及び試験群Bに分けた(各群6匹)。
【0058】
試験群A1では、前記高脂肪食に製造例1の防風通聖散エキス末を2重量%となるように配合した飼料を21日間給餌した。試験群A2では、前記高脂肪食に製造例1の防風通聖散エキス末を4重量%となるように配合した飼料を21日間給餌した。試験群Bでは、前記高脂肪食に製造例1の防風通聖散エキス末を2重量%となるように配合した飼料を21日間給餌した。コントロール群A及びBでは、防風通聖散エキスを配合していない高脂肪食を21日間給餌した。試験最終日に各マウスの体重を測定し、更に内臓脂肪を摘出し重量を測定した。
【0059】
コントロール群Aの試験最終日のマウスの平均体重を100%として、試験群A1及びA2の試験最終日のマウスの平均体重の相対値を算出した。また、コントロール群Bの試験最終日のマウスの平均体重を100%として、試験群Bの試験最終日のマウスの平均体重の相対値を算出した。コントロール群Aの試験最終日のマウスの内臓脂肪の平均重量を100%として、試験群A1及びA2の試験最終日のマウスの平均体重の相対値を算出した。コントロール群Bの試験最終日のマウスの内臓脂肪の平均重量を100%として、試験群Bの試験最終日のマウスの内臓脂肪重量の相対値を算出した。
【0060】
結果
得られた結果を表3に示す。この結果から、若齢性肥満モデルマウス及び加齢性肥満モデルマウス共に、防風通聖散エキス末によって体重及び内臓脂肪の低減が認められたが、加齢性肥満モデルマウスでは、2重量%の防風通聖散エキス末を含む飼料の給餌で、4重量%の防風通聖散エキス末を含む飼料を給餌した若齢性肥満モデルマウスよりも、体重及び内臓脂肪の低下量が高まっていた。
【0061】
なお、副睾丸周囲脂肪における脂肪分解力は、若齢性肥満モデルマウスでは平均値が5.6mEq/gであるのに対して、加齢性肥満モデルマウスは0.28mEq/gであり、加齢に伴い脂肪分解力は20分の1にまで低下していた。このように脂肪分解力が低下している加齢性肥満マウスモデルでも、防風通聖散エキス末によって、効果的な体重及び内臓脂肪の低下が認められたことは、極めて予想外の結果である。
【0062】
【表3】
【0063】
試験例2:年代別の体重の低減効果の評価
脂質の分解能や代謝能が本質的に低下した体質の人に対する防風通聖散エキスの体重低減効果を評価した。具体的には、体脂肪率が25%以上でウエストサイズが85cm以上である状態が5年以上続いている男女9名(各年代(20代、30代、40~50代)の平均体重の差が5kg以内になるように選定した)について、製造例1の防風通聖散エキス末5000mgを1日3回に分けて2週間服用させ、服用開始前に対する体重変化を測定した。
【0064】
結果を表4に示す。脂質の分解能や代謝能が本質的に低下した体質の人に対して、防風通聖散エキスを服用させることによって、全体の平均で約1kgの体重の減少が認められた。防風通聖散エキスの効果を世代別に解析すると、加齢とともにその効果は高まり、40~50歳代の人の加齢性肥満に対する改善効果が特に優れていた。40~50歳代の人の加齢性肥満では、脂質の分解能や代謝能が本質的に低下しているため、従来、防風通聖散エキスでは効果が認められないと考えられていたが、防風通聖散エキスには、後述する参考試験例1で示しているように便中への脂質排泄促進作用があり、当該作用が一因となって加齢性肥満に対して優れた体重低下効果が奏されたと考えられる。
【0065】
【表4】
【0066】
参考試験例1:脂質の糞便中への排泄促進効果及び体重低減効果の評価
マウス(C57BL/6Jマウス、5週齢、雄)に高脂肪食(HFD32、日本クレア株式会社)を4週間自由摂食させて飼育し、肥満モデルマウスを作製した。この肥満モデルマウスの体重を測定後、各群の平均体重が約26gとなるようにコントロール群(対照例)、試験群1、及び試験群2の合計3つの群に分けた(各群6~11匹)。試験群1では、肥満モデルマウスに、前記高脂肪食に製造例1の防風通聖散エキスを4重量%となるように配合した飼料を20日間給餌した。試験群2では、肥満モデルマウスに、前記高脂肪食に製造例2の防風通聖散エキスを4重量%となるように配合した飼料を20日間給餌した。コントロール群では、防風通聖散エキスを配合していない高脂肪食を20日間給餌した。試験期間中に糞便を2日分毎に回収した。回収した糞便は凍結乾燥した。
【0067】
凍結乾燥した糞便から低極性溶媒で脂質を抽出し、重量法にて糞便中の総脂質量を測定した。具体的には、凍結乾燥した糞便を粉砕後、100mgを秤取し、クロロホルム/エタノール溶液(クロロホルム:エタノール(容量比)=2:1)500μLで2回抽出し、この抽出液を30℃で真空乾燥後、抽出物(脂質)の重量を測定した。以下の算出式に従って各群の総脂質排泄量を求め、各群の総脂質排泄量を各群のマウスの頭数で除することにより、マウス1匹当たりの総脂質排泄量を算出した。
【数2】
【0068】
更に、試験開始から12~14日目の間で排泄された糞便から抽出した抽出物(脂質)については、イソプロパノールに再溶解し、コレステロールEテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いてキット付属の取扱説明書に従い操作することで、コレステロールの重量を測定し、以下の算出式に従って各群のコレステロール排泄量を求め、各群のコレステロール排泄量を各群のマウスの頭数で除することにより、マウス1匹当たりのコレステロール排泄量を求めた。
【数3】
【0069】
コントロール群のマウス1匹当たりの総脂質排泄量を100%として、試験群1及び2におけるマウス1匹当たりの総脂質排泄量の相対値を算出した。また、同様に、コントロール群のマウス1匹当たりのコレステロール排泄量を100%として、試験群1及び2におけるマウス1匹当たりのコレステロール排泄量の相対値を算出した。
【0070】
また、飼育開始時(0日目)と飼育最終日(20日目)の各群の肥満モデルマウスの体重を測定した。各群の飼育開始時の体重を100%として、飼育最終日の体重の割合を体重変化率(%)として算出した。
【0071】
総脂質排泄量の結果を表5、コレステロール排泄量の結果を表6、及び体重変化率を表7に示す。
【0072】
【表5】
【0073】
【表6】
【0074】
【表7】
【0075】
飼育期間中、全てのマウスにおいて下痢は認められなかった。また、各マウスの1日当たりの糞便量は乾燥重量にて211.5~315.1mg/日/匹であり、群間で有意な差は認められなかった。
【0076】
表5から分かるように、防風通聖散エキス末を摂取させた試験群1及び2では、飼育6日目以降において、コントロール群に比して総脂質の排泄量の増大が認められた。群間での乾燥糞便量に有意な差はなかったため、防風通聖散エキス末を摂取させることで、糞便中の脂質濃度が増加していたことが明らかとなった。特に、飼育12日目以降では、試験群1における脂質の排泄量は、試験群2よりも増大しており、ショウキョウの分量が少ない生薬調合物から得られた防風通聖散エキス末(製造例1)を使用することによって、脂質の排泄促進効果が高まることが明らかとなった。なお、生薬調合物におけるショウキョウの分量を0.4重量部としたこと以外は、製造例1と同条件で製造した防風通聖散エキス末(防風通聖散エキス末(生薬由来成分の総量)100重量部当たりの6-ギンゲロール量:0.012重量部)についても、同様の試験を行ったところ、製造例2の防風通聖散エキス末を使用した場合によりも、脂質の排泄促進効果が高まることが認められた。
【0077】
また、表6から明らかなように、総脂質の排泄量の結果と同様、防風通聖散エキス末を摂取させた試験群1及び2では、コントロール群に比してコレステロールの排泄量が増大していた。また、製造例1の防風通聖散エキス末を摂取させた試験群1では、製造例2の防風通聖散エキスを摂取させた試験群2よりも、コレステロールの排泄量が増加していた。
【0078】
また、表7に示されているように、コントロール群では飼育開始時に比べて飼育終了時に体重が増加していたのに対して、防風通聖散エキスを摂取させた試験群1及び2では体重の増加が抑えられていた。特に、製造例1の防風通聖散エキスを摂取させた試験群1では、製造例2の防風通聖散エキスを摂取させた試験群2よりも、高い体重低減効果が認められた。このような防風通聖散エキスによる体重の増加抑制は、脂質の糞便中への排泄を促進する作用が一因になっていると考えられる。
【0079】
試験例3:脂肪分解力改善効果の評価
週齢の異なる2種類の雄性C57BL/6Jマウス(若齢:9週齢,加齢:43-63週齢)をそれぞれコントロール群と試験群(防風通聖散エキス投与群)とに分けた(各群5-8匹、計4群)。コントロール群には高脂肪食(HFD32、日本クレア)を4週間給餌し、試験群には製造例2の防風通聖散エキス末を前記高脂肪食に2重量%となるように配合した飼料を4週間給餌した。
【0080】
給餌後、それぞれの群のマウスから副睾丸周囲脂肪を摘出し、ノルアドレナリン刺激に対する応答能(脂肪分解力)を評価した。具体的には、先ず、副睾丸周囲から摘出した脂肪組織をKrebs Ringer緩衝液(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の脂肪組織の重量を計測し、洗浄後の脂肪組織0.2gに、1μg/mLのノルアドレナリン、及び2重量%牛血清アルブミン(BSA)を含むKrebs Ringer緩衝液(pH7.4)5mLを加え、37℃で2時間インキュベートした。その後、上清を回収し、ノルアドレナリン刺激により上清中に放出された遊離脂肪酸量をNEFA-Cテストワコー(和光純薬工業株式会社)にて測定し、脂肪組織1g当たりの遊離脂肪酸の放出量を脂肪分解力として求めた。若齢マウスのコントロール群における脂肪分解力を100%とした場合の各群における脂肪分解率と、防風通聖散投与による脂肪分解率の変化率を表8に示す。
【0081】
結果
表8に示すとおり、若齢および加齢マウスのコントロール群について比較したところ、加齢マウスの脂肪分解力は若齢マウスの53.1%と大きく減少していた。一方、試験群の脂肪分解力は、若齢および加齢マウスともにそれぞれのコントロール群よりも高値を示した。その変化率は若齢マウスで1.196倍、加齢マウスで1.386倍であり、加齢マウスの方が、脂肪分解力の改善の程度が高かった。このことから、防風通聖散にはノルドレナリン刺激に対する脂肪分解力を高める作用があり、さらに若齢マウスよりも加齢マウスに対して優れた効果を示すことが明らかとなった。
【0082】
【表8】
【0083】
参考試験例2:防風通聖散エキス末を含有する錠剤の製造1
表9~14に示す処方に従い防風通聖散エキス末を含有する錠剤(1錠当たり400mg)を調製した。防風通聖散エキス末として、前記製造例1又は2に従い製造したエキス末を使用した。得られた錠剤はいずれも糞便中への脂質排泄促進効果が期待される錠剤であった。また、得られた錠剤の硬度及び崩壊時間を測定したところ、防風通聖散エキス末として、製造例1の防風通聖散エキス末を使用した場合に比べて、製造例2の防風通聖散エキス末を使用した場合の方が硬度が高く、崩壊しやすい特性を有していた。
【0084】
通常、錠剤において、漢方エキス末を含有する場合、一般的な薬物に比べて1日に摂取する有効成分(漢方エキス末)の量が多いため、錠剤が大きくなったり、1回服用錠数が多くなったりするため、消費者にとって服用し難いという欠点がある。このような欠点を克服するためには、錠剤中の漢方エキス末の含有量を高めることが有効になるが、錠剤中の漢方エキス末の含有量を高めると、相対的に賦形剤の含有量が少なくなり、その結果、錠剤の硬度が低下するという問題がある。このような状況において、製造例2の防風通聖散エキス末であれば、硬度の高い錠剤とすることができることから、エキス末の含有量を高めることができ(相対的に賦形剤の含有量を少なくできる)、錠剤を小型化したり、1回の服用錠数を少なくすることができることが分かった。
【0085】
【表9】
【0086】
【表10】
【0087】
【表11】
【0088】
【表12】
【0089】
【表13】
【0090】
【表14】
【0091】
参考試験例3:防風通聖散エキス末を含有する錠剤の製造2
表15に示す処方に従い、製造例1又は製造例2で得た防風通聖散エキス末及び他の成分を混合し、造粒した後、5kN又は7kNの打圧で打錠することで錠剤(重さ200mg、直径8mm)を作製した。
【0092】
【表15】
【0093】
製造した錠剤について、日本薬局方(第十七改正)記載の崩壊試験法に従って崩壊性の評価を実施した。崩壊時間は錠剤6個の平均値とした。また、硬度はロードセル式錠剤硬度計を用いて、破断動作速度0.5mm/分で測定した。結果を表16及び表17に示す。試験錠2は、試験錠1と同じ打圧(7kN)で成形されたにも関わらず、厚さがより薄い錠剤が得られた。さらに、試験錠2は、試験錠1よりも硬度が高く、物理的安定性により優れていた。さらに、試験錠2は、試験錠1よりも硬度が高いにも関わらず、崩壊時間が大きく短縮されていた。また、試験錠3では、試験錠2を成形した打圧(7kN)よりも低い打圧(5kN)で成形されたにも関わらず、より高い打圧(7kN)で成形した試験錠1と同程度の硬度とより優れた崩壊性とが達成されている。従って、試験錠3を製造する際は、打錠装置の負荷が少なく、打錠装置の長寿命化を図ることができる。
【0094】
【表16】
【0095】
【表17】