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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】回路基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/28 20060101AFI20241212BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20241212BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H05K3/28 B
H05K1/03 610N
H05K3/28 C
C08G73/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019194648
(22)【出願日】2019-10-25
(65)【公開番号】P2021068847
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-09-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115118
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 和浩
(72)【発明者】
【氏名】西山 哲平
(72)【発明者】
【氏名】平石 克文
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-011605(JP,A)
【文献】国際公開第2018/061727(WO,A1)
【文献】特開2018-092965(JP,A)
【文献】特開平02-056997(JP,A)
【文献】特開2006-307147(JP,A)
【文献】特開2019-065180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/28
H05K 1/03
C08G 73/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁樹脂層と、
前記絶縁樹脂層中に設けられている回路配線と、
前記絶縁樹脂層の露出面の一部分を覆い、該絶縁樹脂層の吸湿を抑制するバリア膜と、
を備え、
前記絶縁樹脂層が、前記回路配線を支持する配線支持層及び前記回路配線を覆って保護する接着封止層を有するとともに、該配線支持層が非熱可塑性ポリイミドから構成される非熱可塑性ポリイミド層及び熱可塑性ポリイミドから構成される熱可塑性ポリイミド層を含んでおり、
前記非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドは、全モノマー成分から誘導される全モノマー残基のうち、ビフェニル骨格を有するモノマー残基を60mo1%以上含有するものであり、
前記バリア膜が、少なくとも前記配線支持層の露出面を覆っている回路基板。
【請求項2】
前記回路基板が、フィルム状もしくは板状に形成されており、
前記バリア膜が、前記回路配線が延設されている方向に平行な方向の前記回路基板の側面において少なくとも前記配線支持層の露出面を覆うように設けられている請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
前記回路基板はさらに複数の端子部を有しており、
前記バリア膜が、任意の2つの端子部に挟まれた領域において、少なくとも前記配線支持層の露出面を覆うように設けられている請求項1に記載の回路基板。
【請求項4】
前記バリア膜がJIS K 7129に準拠した手法で得られる水蒸気透過度が、1g/m・day以下の材料で形成されている請求項1に記載の回路基板。
【請求項5】
前記バリア膜の材質が金属である請求項4に記載の回路基板。
【請求項6】
前記バリア膜の材質が樹脂である請求項4に記載の回路基板。
【請求項7】
前記バリア膜の材質が、炭化珪素、酸化珪素、酸化炭化珪素、炭化窒素珪素、酸化アルミニウム、窒化珪素、及び窒化酸化珪素からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項4に記載の回路基板。
【請求項8】
請求項1からのいずれか1項に記載された回路基板の製造方法であって、
前記回路配線を有する絶縁樹脂層を形成する工程と、
前記バリア膜を形成するバリア膜形成工程と、
を含む回路基板の製造方法。
【請求項9】
前記絶縁樹脂層を形成する工程の一部分ないし全部が乾燥雰囲気で行われ、該乾燥雰囲気を維持した状態で前記バリア膜形成工程を行う請求項に記載の回路基板の製造方法。
【請求項10】
前記絶縁樹脂層を形成する工程の後で、前記バリア膜を形成していない状態で前記絶縁樹脂層を乾燥する乾燥工程をさらに含み、
前記乾燥工程の後で、前記バリア膜形成工程を行う請求項に記載の回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント基板(FPC;Flexible Printed Circuits)に代表される回路基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気・電子機器の高性能化や高機能化に伴い、情報の高速伝送化が進展している。そのため、電気・電子機器に使用される部品や部材にも高速伝送への対応が求められている。そのような用途に使用される樹脂材料について、高速伝送化に対応した電気特性を有するように、低誘電率化、低誘電正接化を図る試みがなされている。
【0003】
ポリイミドは、高い絶縁性、寸法安定性、易成形性、軽量等の特徴を有するために、回路基板などの材料として電子、電気機器や電子部品に広く用いられている。このポリイミドについても、高速伝送化に対応するため、原料モノマー構成を工夫することによって、低誘電率化、低誘電正接化を図ることが検討されている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2017/159274
【文献】WO2018/061727
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のとおり、ポリイミドは優れた特性を有する材料であるが、分子中にイミド基などの極性基を豊富に含むことから、吸湿しやすいという側面がある。そのため、絶縁樹脂層の材料としてポリイミドを使用した回路基板の使用中に、環境湿度によって吸湿が進み、誘電率や誘電正接が増加してしまう、という問題があった。
従って、本発明の目的は、使用中の環境湿度の影響を極力排除することが可能で、絶縁樹脂層が初期の誘電特性を長期間にわたって維持できる回路基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究の結果、回路基板の絶縁樹脂層への水分の侵入を抑制できるバリア機構を設けることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明の回路基板は、絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層中に設けられている回路配線と、前記絶縁樹脂層の露出面の少なくとも一部分を覆い、該絶縁樹脂層の吸湿を抑制するバリア膜と、を備えている。
【0008】
本発明の回路基板は、フィルム状もしくは板状に形成されていてもよく、前記バリア膜が、前記回路配線が延設されている方向に平行な方向の前記回路基板の側面において前記絶縁樹脂層の露出部分の少なくとも一部分もしくは露出部分の全体を覆うように設けられていてもよい。
【0009】
本発明の回路基板は、さらに複数の端子部を有していてもよく、前記バリア膜が、任意の2つの端子部に挟まれた領域において、前記絶縁樹脂層の露出部分の少なくとも一部分もしくは露出部分の全体を覆うように設けられていてもよい。
【0010】
本発明の回路基板は、前記バリア膜がJIS K 7129に準拠した手法で得られる水蒸気透過度が、1g/m・day以下の材料で形成されていてもよい。
【0011】
本発明の回路基板は、前記バリア膜の材質が金属、樹脂であってもよい。
【0012】
本発明の回路基板は、前記バリア膜の材質が、炭化珪素、酸化珪素、酸化炭化珪素、炭化窒素珪素、酸化アルミニウム、窒化珪素、及び窒化酸化珪素からなる群から選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0013】
本発明の回路基板は、前記絶縁樹脂層が、非熱可塑性ポリイミドから構成される非熱可塑性ポリイミド層及び熱可塑性ポリイミドから構成される熱可塑性ポリイミド層を含んでいてもよい。この場合、前記非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドは、全モノマー成分から誘導される全モノマー残基のうち、ビフェニル骨格を有するモノマー残基を60mo1%以上含有するものであってもよく、
前記熱可塑性ポリイミド層を構成する熱可塑性ポリイミドは、全モノマー成分から誘導される全モノマー残基のうち、ビフェニル骨格を有するモノマー残基を30mo1%以上含有するものであってもよい。
【0014】
本発明の回路基板の製造方法は、上記いずれかの回路基板の製造方法であって、
前記回路配線を有する絶縁樹脂層を形成する工程と、
前記バリア膜を形成するバリア膜形成工程と、
を含んでいる。
【0015】
本発明の回路基板の製造方法は、前記絶縁樹脂層を形成する工程の一部分ないし全部が乾燥雰囲気で行われてもよく、該乾燥雰囲気を維持した状態で前記バリア膜形成工程を行ってもよい。
【0016】
本発明の回路基板の製造方法は、前記絶縁樹脂層を形成する工程の後で、前記バリア膜を形成していない状態で前記絶縁樹脂層を乾燥する乾燥工程をさらに含んでいてもよく、
前記乾燥工程の後で、前記バリア膜形成工程を行ってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の回路基板は、絶縁樹脂層への水分の侵入を抑制できるバリア膜を備えているため、環境湿度に影響されずに絶縁樹脂層の誘電特性を長期間にわたり維持できる。そのため、本発明の回路基板を使用した電気・電子機器や電子部品において、高速伝送化への対応が可能になるとともに、高湿度の使用環境であっても伝送損失の低下を長期間にわたって抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施の形態に係る回路基板の模式的断面図である。
図2】本発明の別の実施の形態に係る回路基板の模式的断面図である。
図3】本発明のさらに別の実施の形態に係る回路基板の模式的断面図である。
図4】本発明のさらに別の実施の形態に係る回路基板の模式的断面図である。
図5】本発明のさらに別の実施の形態に係る回路基板の模式的断面図である。
図6A】絶縁樹脂層の一構成例を示す模式的断面図である。
図6B】絶縁樹脂層の別の構成例を示す模式的断面図である。
図7】回路基板の平面形状の一例を示す図面である。
図8】異なる種類の樹脂フィルムの吸湿率と誘電正接との関係を説明する図面である。
図9】配線支持層の一構成例を示す模式的断面図である。
図10】配線支持層の別の構成例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る回路基板の断面図である。図2図5は、本発明の別の実施の形態に係る回路基板の断面図である。
本実施の形態の回路基板101は、絶縁樹脂層10と、絶縁樹脂層10中に設けられているパターン形成された回路配線21と、絶縁樹脂層10の露出面の少なくとも一部分を覆い、該絶縁樹脂層10の吸湿を抑制するバリア膜50と、を備えている。また、回路基板101は、絶縁樹脂層10の片面又は両面に金属層40を有している。なお、金属層40は必須の構成ではない。
【0020】
(絶縁樹脂層)
絶縁樹脂層10は、複数層から構成されていてもよい。また、同一種類の樹脂層の積層構造に限らず、異なる種類の樹脂の積層構造であってもよい。図1図5に例示する回路基板101では、絶縁樹脂層10が、回路配線21を支持する配線支持層20と、回路配線21を覆って回路配線21を保護するとともに他の層との接着性を有する接着封止層30と、によって構成されている。接着封止層30を構成する樹脂は隣接する回路配線21の間に充填されている。なお、以下の説明では、配線支持層20に回路配線21が積層された部分を「配線部」いうことがある。
【0021】
絶縁樹脂層10を構成する配線支持層20及び接着封止層30の材質は、回路基板材料として利用可能な樹脂材料であれば特に限定されないが、例えばポリイミド、エポキシ樹脂、液晶ポリマー(LCP)、フッ素樹脂などを用いることができる。これらの中でも、吸湿性を有する材質であるポリイミド、エポキシ樹脂を用いる場合に、バリア膜50を設ける効果が大きく得られる。
【0022】
(回路配線)
回路配線21の材質としては、特に制限はないが、例えば、銅、ステンレス、鉄、ニッケル、ベリリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム、銀、金、スズ、ジルコニウム、タンタル、チタン、鉛、マグネシウム、マンガン及びこれらの合金等が挙げられる。この中でも、特に銅又は銅合金が好ましい。
【0023】
(バリア膜)
バリア膜50は、絶縁樹脂層10中への水分の侵入を防ぐ機能を有する膜である。バリア膜50は、絶縁樹脂層10の露出面の少なくとも一部分を覆っていればよい。バリア膜50は、水分透過率が低い材質で構成されており、例えば、JIS K 7129に準拠した手法で得られる水蒸気透過度が、1g/m・day以下の材料で構成することが好ましい。バリア膜50の材質としては、例えば、銅、クロム、ニッケル、コバルトなどの金属であってもよいし、また、例えば、LCPなどの樹脂であってもよい。さらに、例えば炭化珪素、酸化珪素、酸化炭化珪素、炭化窒素珪素、酸化アルミニウム、窒化珪素、窒化酸化珪素などの無機材料でもよい。また、バリア膜50は、単一の材質に限らず、例えばシリカ蒸着PET、アルミナ蒸着PETなどの異種の材質を含む複合材料によって構成されていてもよい。
【0024】
バリア膜50は、図1に示すように、絶縁樹脂層10の露出面である側部の全面を覆っていてもよいし、図2に示すように、絶縁樹脂層10の露出面である側部の一部分を覆っていてもよい。図1に示す態様では、一対の金属層40にバリア膜50の両端を接続させている。これによって、絶縁樹脂層10への水分の侵入を防止できる。なお、一対の金属層40によって、絶縁樹脂層10の厚み方向からの吸湿は防ぐことができる。
【0025】
図2に示す態様は、例えば配線支持層20が吸湿性の高いポリイミドで構成され、接着封止層30が吸湿性の低い樹脂材料で構成されている場合であって、吸湿性の高いポリイミドによる配線支持層20の側部の露出面をバリア膜50によって被覆している。
【0026】
図3及び図4は、絶縁樹脂層10の露出面である側部だけでなく、一対の金属層40の外表面を含む全体をバリア膜50によって被覆する態様である。図3は、金属層40及び絶縁樹脂層10の外表面に密着させた状態でバリア膜50を設けた態様である。これらの態様では、バリア膜50によって絶縁樹脂層10の全体が封止され、外部雰囲気から遮断されている。図4に示す態様では、バリア膜50として、例えば樹脂フィルムを使用する。図4に示すように、バリア膜50は、金属層40及び絶縁樹脂層10の外表面に密着した状態ではなく、隙間を有して被覆していてもよい。
なお、図3及び図4に示す態様においては、一対の金属層40が存在しなくても、絶縁樹脂層10の吸湿を防ぐことができるので、必ずしも金属層40を設けなくてもよい。
【0027】
図5に示す回路基板101は、基材である金属層40上に、パターン化された回路配線21が内部に設けられた絶縁樹脂層10が積層形成され、該絶縁樹脂層10の上面(金属層40とは反対側の面)及び側面を覆うようにバリア膜50が形成されている態様である。本態様では、接着封止層30は設けなくてもよい。
図5に示すバリア膜50は、接着性及び充填性を有する第1バリア層51と、第2バリア層53とが積層された構造となっている。第1バリア層51が水分に対するバリア機能を十分に備えている場合は、第2バリア層53を設けなくてよい。また、第1バリア層51の側面部からの水分の侵入が生じにくい構造や使用態様である場合は、第2バリア層53と金属層40によって厚み方向からの水分の侵入を抑制できればよいため、第1バリア層51は、水分に対するバリア機能を有していなくてもよく、例えば接着性と充填性を有する層であればよい。
【0028】
図1図5では、絶縁樹脂層10中の配線部の構成として、配線支持層20の片側に回路配線21を有する構造を例に挙げたが、配線部の構成としては、図1図5の構成に限定されるものではない。例えば図6Aに示す絶縁樹脂層10のように、配線支持層20の両側に回路配線21を有する配線部を含み、各回路配線21を覆うように接着封止層30が積層された構造でもよいし、図6Bに示す絶縁樹脂層10のように、配線支持層20と回路配線21とを有する配線部が接着封止層30を介して多段に積層された構造でもよい。
また、絶縁樹脂層10は、配線支持層20、接着封止層30以外の任意の層を有していてもよい。そのような例として、例えばカバーレイ、カバーインク、ボンディングシートなどを挙げることができる。
【0029】
図1図3に示す態様の回路基板101において、バリア膜50が金属製の膜である場合は、例えば、CVD、PVD、めっき、スパッタ、金属箔同士のはんだ付け、超音波接合による封止などの方法によって形成可能であり、樹脂製の膜である場合は、例えば塗布、スプレー、貼合わせ、筒状の樹脂膜内部への回路基板の挿入などの手法で形成できる。
【0030】
図4に示す態様の回路基板101は、例えば、少なくとも配線部を有する積層体を2枚の樹脂フィルムによって挟み込み、樹脂フィルムの端部を例えば熱シールなどの方法で封止することによって製造できる。
【0031】
図5に示す態様の回路基板101は、絶縁樹脂層10の上面側から、金属層40との間で絶縁樹脂層10を挟み込むようにしてバリア膜50を金属層40に貼り合わせることによって製造できる。
【0032】
回路基板101は、その全体がフィルム状もしくは板状に形成されている。図1図5に示す断面構造は、回路配線21が延設されている方向(以下、「配線方向」と記すことがある)に直交する方向の断面である。図1図5に示すように、バリア膜50は、配線方向に平行に、少なくとも絶縁樹脂層10の露出面を覆うように設けられていることが好ましい。ここで、回路基板101が平面視短冊状などの単純な形状である場合には、長手方向の両端に端子部が設けられる。そのため、長手方向と配線方向が一致することから、絶縁樹脂層10の露出部分は、金属層40が設けられているときには配線方向に平行な側面部となり、金属層40が設けられていないときは、表裏の平面部(外表面)と配線方向に平行な側面部となる。
【0033】
一方、回路基板101が、平面視で複雑な形状である場合、複数の端子部60の間を接続する回路配線21によって、複数の配線方向が存在することになる。例えば図7に示す平面形状の場合、3つの端子部60の間を接続する回路配線21によって、図7の紙面の上下方向と斜め方向の2つの配線方向が存在することになる。このような場合、絶縁樹脂層10の露出部分は、金属層40が設けられているときには、任意の2つの端子部60に挟まれた側面部となり、金属層40が設けられていないときは、任意の2つの端子部60に挟まれた表裏の平面部と任意の2つの端子部60に挟まれた側面部となる。
【0034】
図7に示す平面形状を有する回路基板101において、例えば図1に示す態様のバリア膜50を形成する場合は、図7中のA-A断面、B-B断面、C-C断面、D-D断面が、それぞれの図1に示すような断面構造になっていればよい(ただし、回路配線21の本数は限定されない)。図2図5に示す態様のバリア膜50を形成する場合も、図7中のA-A断面、B-B断面、C-C断面、D-D断面が、それぞれ図2図5に示すような断面構造であればよい。
【0035】
以上のことから、バリア膜50は、回路基板101の任意の2つの端子部60に挟まれた領域において、絶縁樹脂層10の露出部分の少なくとも一部分、もしくは露出部分の全体を覆うように設けることが好ましい。
【0036】
<作用>
図8は、異なる材質の樹脂フィルムの吸湿率と誘電正接(Df)との関係を示している。図8に示すように、LCPフィルムは、吸湿率にかかわらず、ほぼ一定のDfを示す。つまり、LCPは環境湿度の影響を受けずに、安定した誘電特性を示す材料である。
一方、図8中、PIフィルムA、PIフィルムB及びPIフィルムCで示されるポリイミドフィルムは、吸湿率によってDfが変化し、吸湿率が高くなるほど、Dfが大きくなって誘電特性が悪化することが理解される。また、PIフィルムA~Cでは、同じ吸湿率のときのDfに差があることが見て取れる。これは、主としてポリイミドの化学的構造によるものと考えられ、吸湿率が低い状態(高乾燥状態)では、PIフィルムCのように、LCPフィルムを下回る低いDfを示すものもある。なお、PIフィルムA~Cは、異種のポリイミド層が積層された構造である。
【0037】
本発明は、以上のような樹脂フィルムの特性を応用し、回路基板101の絶縁樹脂層10の一部分または全部が吸湿によってDfが上昇しやすい傾向がある樹脂材料によって形成されている場合においても、次の(1)~(3);
(1)吸湿率が低い高乾燥状態でバリア膜50によって封止すれば低いDfを長期間にわたり維持できること、
(2)高乾燥状態でなくても、バリア膜50によって封止することで環境湿度の影響を受けずに一定のDfを長期間にわたり維持できること、
(3)材質の選択により、高乾燥状態を維持することによって、LCPを下回る誘電特性を長期間維持できること、
のいずれか、又は、これらの組み合わせによる作用効果を実現できることを見出したものである。
【0038】
上記(1)~(3)の作用効果は、回路基板101の絶縁樹脂層10の一部分または全部が図8に示すPIフィルムCのような特性を有する樹脂によって構成されている場合に特に顕著に発現するものと考えられる。以下、そのような樹脂材料の代表的構成について、ポリイミド層を例に挙げて説明する。
【0039】
[ポリイミド層]
ポリイミド層は、回路基板101において、様々な機能を有する層として用いられるが、ここでは、配線支持層20への適用について説明する。配線支持層20としてのポリイミド層は、非熱可塑性ポリイミドを含む非熱可塑性ポリイミド層と、該非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも一方の面に積層されている、熱可塑性ポリイミドを含む熱可塑性ポリイミド層と、を有する積層構造であることが好ましい。
【0040】
配線支持層20の好ましい態様として、図9に例示するように、非熱可塑性ポリイミド層110の片面に熱可塑性ポリイミド層120Aが積層された2層構造の態様や、図10に例示するように、非熱可塑性ポリイミド層110の片面に熱可塑性ポリイミド層120Aが、他方の面に熱可塑性ポリイミド層120Bが積層された3層構造の態様を挙げることができる。ここで、「非熱可塑性ポリイミド」とは、30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、かつ、ガラス転移温度+30℃以内の温度域での貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上を示すものを意味する。「熱可塑性ポリイミド」とは、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定された30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、かつ、ガラス転移温度+30℃以内の温度域での貯蔵弾性率が1.0×10Pa未満を示すものを意味する。
なお、ポリイミド層は、図9及び図10に例示する積層構造に限るものではなく、例えば、4層以上からなるものでもよい。
【0041】
非熱可塑性ポリイミド層110の樹脂成分は、非熱可塑性ポリイミドからなることが好ましく、熱可塑性ポリイミド層120A,120Bの樹脂成分は、熱可塑性ポリイミドからなることが好ましい。ポリイミド層が直接回路配線21と積層される場合、回路配線21は、熱可塑性ポリイミド層120A,120Bの片側、又は両側に積層することができる。
【0042】
また、非熱可塑性ポリイミド及び熱可塑性ポリイミドは、いずれも、「モノマー残基」として、酸二無水物残基及びジアミン残基を含むものである。「酸二無水物残基」とは、テトラカルボン酸二無水物から誘導された4価の基を意味し、「ジアミン残基」とは、ジアミン化合物から誘導された2価の基を意味する。
【0043】
ポリイミド層において、非熱可塑性ポリイミド層110は低熱膨張性のポリイミド層を構成し、熱可塑性ポリイミド層120A,120Bは高熱膨張性のポリイミド層を構成する。低熱膨張性のポリイミド層は、熱膨張係数(CTE)が好ましくは1ppm/K以上25ppm/K以下の範囲内、より好ましくは3ppm/K以上25ppm/K以下の範囲内のポリイミド層をいう。また、高熱膨張性のポリイミド層は、CTEが好ましくは35ppm/K以上、より好ましくは35ppm/K以上80ppm/K以下の範囲内、更に好ましくは35ppm/K以上70ppm/K以下の範囲内のポリイミド層をいう。使用する原料の組合せ、厚み、乾燥・硬化条件を適宜変更することで所望のCTEを有するポリイミド層とすることができる。
【0044】
非熱可塑性ポリイミド及び熱可塑性ポリイミドは、構成する全モノマー成分から誘導される全モノマー残基に対し、ビフェニル骨格を有するモノマー残基(以下、「ビフェニル骨格含有残基」と記すことがある)を豊富に含むものであることが好ましい。ビフェニル骨格含有残基の割合が多いことによって、モノマー由来の剛直構造によりポリマー全体に秩序構造が形成されやすくなり、分子の運動抑制により誘電正接を低下させることができる。ビフェニル骨格含有残基の割合が少ないと、誘電正接が十分に低下しない。
【0045】
ここで、ビフェニル骨格とは、下記の式(a)に示すように、2つのフェニル基が単結合した骨格である。従って、ビフェニル骨格含有残基とは、例えば、ビフェニルジイル基、ビフェニルテトライル基などを挙げることができる。これらの残基に含まれる芳香環は、任意の置換基を有していてもよい。
ビフェニルジイル基の代表例としては、下記の式(b)で表されるものを挙げることができる。ビフェニルテトライル基の代表例としては、下記の式(c)で表されるものを挙げることができる。なお、ビフェニルジイル基及びビフェニルテトライル基において、芳香環における結合手は、式(b)及び式(c)に示す位置に限定されるものではなく、また、上記のとおり、これらの残基に含まれる芳香環は、任意の置換基を有していてもよい。
【0046】
【化1】
【0047】
ビフェニル骨格含有残基は、原料モノマーに由来する構造であり、酸二無水物から誘導されるものでもよいし、ジアミン化合物から誘導されるものでもよい。
【0048】
ビフェニル骨格を有する酸二無水物残基の代表例としては、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,3',3,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、p-ビフェニレンビス(トリメリテート無水物)などの酸二無水物から誘導される残基を挙げることができる。これらの中でも、特に、BPDAから誘導される酸二無水物残基(以下、「BPDA残基」ともいう。)は、ポリマーの秩序構造を形成しやすく、分子の運動抑制により誘電正接や吸湿性を低下させることができるため好ましい。また、BPDA残基は、ポリイミド前駆体のポリアミド酸としてのゲル膜の自己支持性を付与できる。
【0049】
ビフェニル骨格を有するジアミン化合物の代表例としては、芳香環を2つのみ有するジアミン化合物が挙げられ、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-TB)、2,2’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-EB)、2,2’-ジエトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル(m-EOB)、2,2’-ジプロポキシ-4,4’-ジアミノビフェニル(m-POB)、2,2’-ジ-n-プロピル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-NPB)、2,2’-ジビニル-4,4’-ジアミノビフェニル(VAB)、4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)などを挙げることができる。これらのジアミン化合物から誘導される残基は、剛直構造を有しているため、ポリマー全体に秩序構造を付与する作用を有している。これらのジアミン化合物から誘導される残基を含有することによって、酸素透過度が低く、低吸湿性のポリイミドが得られ、分子鎖内部の水分を低減できるため、誘電正接を下げることができる。
【0050】
一般にポリイミドは、酸二無水物とジアミン化合物を溶媒中で反応させ、ポリアミド酸を生成したのち加熱閉環(イミド化)させることにより製造できる。例えば、酸二無水物とジアミン化合物をほぼ等モルで有機溶媒中に溶解させて、0~100℃の範囲内の温度で30分~24時間撹拌し重合反応させることでポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が得られる。反応にあたっては、生成する前駆体が有機溶媒中に5~30重量%の範囲内、好ましくは10~20重量%の範囲内となるように反応成分を溶解する。重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、2-ブタノン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド、N-メチルカプロラクタム、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、クレゾール等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。また、このような有機溶媒の使用量としては特に制限されるものではないが、重合反応によって得られるポリアミド酸溶液の濃度が5~30重量%程度になるような使用量に調整して用いることが好ましい。
【0051】
合成されたポリアミド酸は、通常、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。また、ポリアミド酸は一般に溶媒可溶性に優れるので、有利に使用される。ポリアミド酸の溶液の粘度は、500cps~100,000cpsの範囲内であることが好ましい。この範囲を外れると、コーター等による塗工作業の際にフィルムに厚みムラ、スジ等の不良が発生し易くなる。ポリアミド酸をイミド化させる方法は、特に制限されず、例えば前記溶媒中で、80~400℃の範囲内の温度条件で1~24時間かけて加熱するといった熱処理が好適に採用される。
【0052】
次に、非熱可塑性ポリイミド及び熱可塑性ポリイミドについて、より具体的に説明する。
【0053】
<非熱可塑性ポリイミド>
ポリイミド層において、非熱可塑性ポリイミド層110を構成する非熱可塑性ポリイミドは、酸二無水物残基及びジアミン残基を含むものである。非熱可塑性ポリイミドは、全モノマー成分から誘導される全モノマー残基のうち、ビフェニル骨格含有残基を60mo1%以上含有することが好ましく、70mo1%以上含有することがより好ましい。非熱可塑性ポリイミド中のビフェニル骨格含有残基を60mo1%以上とすることによって、ポリイミド層を構成するポリイミド全体におけるビフェニル骨格含有残基の含有比率を高め、低誘電正接化を図ることができる。
【0054】
(酸二無水物残基)
非熱可塑性ポリイミドは、全酸二無水物残基のうち、ビフェニル骨格を有する酸二無水物残基を35mo1%以上含有することが好ましく、50mo1%以上含有することがより好ましい。さらに好ましくは、式(c)で表されるビフェニルテトライル基を上記の量で含有することがよい。
【0055】
非熱可塑性ポリイミドは、上記のビフェニル骨格を有する酸二無水物残基のほかに、一般にポリイミドの原料として用いられる酸二無水物の残基を含有することができる。そのような酸二無水物残基として、例えば、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、1,4-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル)二無水物(TAHQ)、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、2,2',3,3'-、2,3,3',4'-又は3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3'',4,4''-、2,3,3'',4''-又は2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-又は3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,7,8-、1,2,6,7-又は1,2,9,10-フェナンスレン-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,3,5,6-シクロヘキサン二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,6-又は2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-(又は1,4,5,8-)テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-(又は2,3,6,7-)テトラカルボン酸二無水物、2,3,8,9-、3,4,9,10-、4,5,10,11-又は5,6,11,12-ペリレン-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物、エチレングリコール ビスアンヒドロトリメリテート等の芳香族テトラカルボン酸二無水物から誘導される酸二無水物残基が挙げられる。
【0056】
(ジアミン残基)
非熱可塑性ポリイミドは、全ジアミン残基のうち、ビフェニル骨格を有するジアミン残基を70mo1%以上含有することが好ましく、85mo1%以上含有することがより好ましい。さらに好ましくは、式(b)で表されるビフェニルジイル基を上記の量で含有することがよい。式(b)で表されるビフェニルジイル基は、剛直構造を有し、ポリマー全体に秩序構造を付与する作用を有しているため、酸素透過度を下げるとともに、分子の運動抑制により誘電正接を低下させることができる。
【0057】
非熱可塑性ポリイミドは、上記のビフェニル骨格を有するジアミン残基のほかに、発明の効果を損なわない範囲で、一般にポリイミドの原料として用いられるジアミン化合物の残基を含有することができる。そのようなジアミン残基として、例えば、1,4-ジアミノベンゼン(p-PDA;パラフェニレンジアミン)、4-アミノフェニル-4’-アミノベンゾエート(APAB)、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルプロパン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、(3,3’-ビスアミノ)ジフェニルアミン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン、3-[3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、4,4'-[2-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4'-[4-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4'-[5-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、ビス[4,4'-(3-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、4-[3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]フェノキシ]アニリン、4,4’-[オキシビス(3,1-フェニレンオキシ)]ビスアニリン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル(BAPE)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン(BAPK)、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、9,9-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-メチレンジ-o-トルイジン、4,4’-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4’-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、3,3’-ジアミノジフェニルエタン、3,3’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシベンジジン、3,3''-ジアミノ-p-テルフェニル、4,4'-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4'-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジン、2'-メトキシ-4,4'-ジアミノベンズアニリド、4,4'-ジアミノベンズアニリド、1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)-2,5-ジ-tert-ブチルベンゼン、6-アミノ-2-(4-アミノフェノキシ)ベンゾオキサゾール、2,6-ジアミノ-3,5-ジエチルトルエン、2,4-ジアミノ-3,5-ジエチルトルエン、2,4-ジアミノ-3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチルジフェニルメタン、ビス(4-アミノ-3-エチル-5-メチルフェニル)メタン等の芳香族ジアミン化合物から誘導されるジアミン残基、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級のアミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマー酸型ジアミン等の脂肪族ジアミン化合物から誘導されるジアミン残基などが挙げられる。
【0058】
非熱可塑性ポリイミドにおいて、上記酸二無水物残基及びジアミン残基の種類や、2種以上の酸二無水物残基又はジアミン残基を適用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、酸素透過度、誘電特性、熱膨張係数、貯蔵弾性率、引張弾性率等を制御することができる。また、非熱可塑性ポリイミドにおいて、ポリイミドの構造単位を複数有する場合は、ブロックとして存在しても、ランダムに存在していてもよいが、ランダムに存在することが好ましい。
【0059】
非熱可塑性ポリイミドは、芳香族テトラカルボン酸二無水物から誘導される芳香族テトラカルボン酸残基及び芳香族ジアミンから誘導される芳香族ジアミン残基を含むことが好ましい。非熱可塑性ポリイミドに含まれる酸二無水物残基及びジアミン残基を、いずれも芳香族基とすることで、ポリイミド層の高温環境下での寸法精度を向上させることができる。
【0060】
非熱可塑性ポリイミドのイミド基濃度は、33重量%以下であることが好ましい。ここで、「イミド基濃度」は、ポリイミド中のイミド基部(-(CO)-N-)の分子量を、ポリイミドの構造全体の分子量で除した値を意味する。イミド基濃度が33重量%を超えると、極性基の増加によって吸湿性が増加する。上記酸二無水物とジアミン化合物の組み合わせを選択することによって、非熱可塑性ポリイミド中の分子の配向性を制御することで、イミド基濃度低下に伴うCTEの増加を抑制し、低吸湿性を担保することができる。
【0061】
非熱可塑性ポリイミドの重量平均分子量は、例えば10,000~400,000の範囲内が好ましく、50,000~350,000の範囲内がより好ましい。重量平均分子量が10,000未満であると、フィルムの強度が低下して脆化しやすい傾向となる。一方、重量平均分子量が400,000を超えると、過度に粘度が増加して塗工作業の際にフィルム厚みムラ、スジ等の不良が発生しやすい傾向になる。
【0062】
<熱可塑性ポリイミド>
ポリイミド層において、熱可塑性ポリイミド層120A,120Bを構成する熱可塑性ポリイミドは、酸二無水物残基及びジアミン残基を含むものである。熱可塑性ポリイミドは、全モノマー成分から誘導される全モノマー残基のうち、ビフェニル骨格含有残基を30mo1%以上含有することが好ましく、40mo1%以上含有することがより好ましい。熱可塑性ポリイミド中のビフェニル骨格含有残基を30mo1%以上とすることによって、ポリイミド層を構成するポリイミド全体における、ビフェニル骨格含有残基の含有比率を高め、酸素透過度を低減するとともに、低誘電正接化を図ることができる。すなわち、モノマー由来の剛直構造により、ポリマー全体に秩序構造が形成されるので、熱可塑性でありながら、酸素透過度及び吸湿性が低く、長期耐熱接着性に優れ、誘電正接が低いポリイミドが得られる。一方で、熱可塑性ポリイミドは、回路配線21との接着性を確保するためにポリイミド分子鎖の柔軟性を向上させ、熱可塑性を付与する必要があることから、ビフェニル骨格含有残基の含有量の上限を65mol%とすることが好ましい。なお、非熱可塑性ポリイミド層110の両側に熱可塑性ポリイミド層120A,120Bを有する場合は、熱可塑性ポリイミド層120A,120Bのいずれか片方が上記条件を満たせばよいが、両方の熱可塑性ポリイミド層120A,120Bが共に上記条件を満たすことが好ましい。
【0063】
(酸二無水物残基)
熱可塑性ポリイミドは、全酸二無水物残基のうち、ビフェニル骨格を有する酸二無水物残基を60mo1%以上含有することが好ましい。より好ましくは、式(c)で表されるビフェニルテトライル基を上記の量で含有することがよい。
【0064】
熱可塑性ポリイミドは、上記のビフェニル骨格を有する酸二無水物の残基のほかに、発明の効果を損なわない範囲で、一般にポリイミドの原料として用いられる酸二無水物の残基を含有することができる。そのような酸二無水物残基として、非熱可塑性ポリイミドについて例示した酸二無水物の残基が挙げられる。
【0065】
(ジアミン残基)
熱可塑性ポリイミドは、全ジアミン残基のうち、ビフェニル骨格を有するジアミン残基を1mo1%以上含有することが好ましく、5mo1%以上含有することがより好ましい。さらに好ましくは、式(b)で表されるビフェニルジイル基を上記の量で含有することがよい。式(b)で表されるビフェニルジイル基は、剛直構造を有し、ポリマー全体に秩序構造を付与する作用を有しているため、分子の運動抑制により誘電正接や吸湿性を低下させることができる。更に、熱可塑性ポリイミドの原料として使用することで、酸素透過度が低く、長期耐熱接着性に優れたポリイミドが得られる。
【0066】
熱可塑性ポリイミドは、上記のビフェニル骨格を有するジアミン残基のほかに、発明の効果を損なわない範囲で、一般にポリイミドの原料として用いられるジアミン化合物の残基を含有することができる。そのようなジアミン残基として、非熱可塑性ポリイミドについて例示したジアミン化合物の残基が挙げられる。
【0067】
熱可塑性ポリイミドにおいて、上記酸二無水物残基及びジアミン残基の種類や、2種以上の酸二無水物残基又はジアミン残基を適用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、熱膨張係数、引張弾性率、ガラス転移温度等を制御することができる。また、熱可塑性ポリイミドにおいて、ポリイミドの構造単位を複数有する場合は、ブロックとして存在しても、ランダムに存在していてもよいが、ランダムに存在することが好ましい。
【0068】
熱可塑性ポリイミドは、芳香族テトラカルボン酸二無水物から誘導される芳香族テトラカルボン酸残基及び芳香族ジアミンから誘導される芳香族ジアミン残基を含むことが好ましい。熱可塑性ポリイミドに含まれる酸二無水物残基及びジアミン残基を、いずれも芳香族基とすることで、ポリイミド層の高温環境下でのポリイミドの劣化を抑制することができる。
【0069】
熱可塑性ポリイミドのイミド基濃度は、30重量%以下であることが好ましい。ここで、「イミド基濃度」は、ポリイミド中のイミド基部(-(CO)-N-)の分子量を、ポリイミドの構造全体の分子量で除した値を意味する。イミド基濃度が30重量%を超えると、ガラス転移温度以上の温度での弾性率が低下しにくくなり、また極性基の増加によって低吸湿性も悪化する。
【0070】
熱可塑性ポリイミドの重量平均分子量は、例えば10,000~400,000の範囲内が好ましく、50,000~350,000の範囲内がより好ましい。重量平均分子量が10,000未満であると、フィルムの強度が低下して脆化しやすい傾向となる。一方、重量平均分子量が400,000を超えると、過度に粘度が増加して塗工作業の際にフィルム厚みムラ、スジ等の不良が発生しやすい傾向になる。
【0071】
ポリイミド層において、熱可塑性ポリイミド層120A,120Bは接着層として機能し、回路配線21との密着性を向上させることができる。そのため、熱可塑性ポリイミドは、ガラス転移温度が200℃以上350℃以下の範囲内が好ましく、200℃以上320℃以下の範囲内がより好ましい。
【0072】
熱可塑性ポリイミドは、例えば回路基板101の回路配線21に接する接着層となるため、銅の拡散を抑制するために完全にイミド化された構造が最も好ましい。但し、ポリイミドの一部がアミド酸となっていてもよい。そのイミド化率は、フーリエ変換赤外分光光度計(市販品:日本分光製FT/IR620)を用い、1回反射ATR法にてポリイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを測定することによって、1015cm-1付近のベンゼン環吸収体を基準とし、1780cm-1のイミド基に由来するC=O伸縮の吸光度から算出される。
【0073】
必要に応じて、非熱可塑性ポリイミド層110又は熱可塑性ポリイミド層120A,120B中に、無機フィラーや有機フィラーを含有してもよい。具体的には、例えば二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム等の無機フィラーやフッ素系ポリマー粒子や液晶ポリマー粒子等の有機フィラーが挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。なお、有機フィラーを含有する場合、有機フィラーは非熱可塑性ポリイミド層110又は熱可塑性ポリイミド層120A,120Bを構成する全モノマー成分に該当しないものとする。
【0074】
[回路基板の製造方法]
回路基板101は、バリア膜50を形成する工程を含む以外は、一般的な回路基板と同様の製造方法で製造することができる。つまり、本実施の形態の回路基板の製造方法は、回路配線21を有する絶縁樹脂層10を形成する工程と、バリア膜50を形成するバリア膜形成工程と、を含んでいる。一般的な回路基板の製造方法は、回路基板の構成によって多種多様であるため、個別の具体例を挙げることは意味がないが、バリア膜形成成工程を行うタイミングとして、i)乾燥条件で行われる工程の直後、ii)絶縁樹脂層10を形成した後で乾燥工程を設け、該乾燥工程の直後、のいずれかのタイミングが好ましい。ここで、乾燥条件や乾燥工程は、減圧乾燥、加熱乾燥など、その手段は問われない。
【0075】
上記i)については、絶縁樹脂層10を形成する工程の一部分ないし全部が乾燥雰囲気で行われる場合に、該乾燥雰囲気を維持した状態でバリア膜形成工程を行うことができる。例えば、接着封止層30によって回路配線21を封止する封止工程が乾燥雰囲気で行われる場合は、該封止工程に引き続き、乾燥雰囲気を維持した状態でバリア膜形成工程を行うことができる。
【0076】
上記ii)については、絶縁樹脂層10を形成した後で、バリア膜50を形成していない状態で絶縁樹脂層10を乾燥する乾燥工程を実施し、乾燥工程の後で引き続きバリア膜形成工程を行うことができる。
【0077】
上記i)、ii)による場合、バリア膜50を形成するときの絶縁樹脂層10の乾燥状態は、例えば吸湿率が0.1%以下、好ましくは0%の高乾燥状態である。バリア膜50によって、環境湿度に影響されることなく、長期間にわたり絶縁樹脂層10を高乾燥状態に保持できるため、絶縁樹脂層10の誘電特性を長期間にわたり優れた状態に維持できる。
【0078】
なお、絶縁樹脂層10を高乾燥状態にする必要がない場合は、一般的な製造方法で回路基板を製造した後、バリア膜形成工程を実施してもよい。この場合でも、環境湿度に影響されずに絶縁樹脂層10の初期の誘電特性が長期間にわたり維持できる。
【0079】
以上詳述したように、本発明の回路基板101は、絶縁樹脂層10への水分の侵入を抑制できるバリア膜50を備えているため、環境湿度に影響されずに絶縁樹脂層10の初期の誘電特性を長期間にわたり維持できる。そのため、本発明の回路基板101を使用した電気・電子機器や電子部品において、高速伝送化への対応が可能になるとともに、高湿度の使用環境であっても伝送損失の低下を長期間にわたって抑制できる。
【実施例
【0080】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
【0081】
[誘電正接の測定]
ベクトルネットワークアナライザ(Agilent社製、商品名:E8363C)ならびにSPDR共振器を用いて、周波数10GHzにおける樹脂シート(硬化後の樹脂シート)の誘電正接を測定した。なお、「温度23℃湿度50%」は、温度;24~26℃、湿度;45~55%の条件下で24時間放置し測定した値とし、「乾燥時」は120℃60分で乾燥した直後に測定した値とした。
【0082】
[銅箔の表面粗度の測定]
AFM(ブルカー・エイエックスエス社製、商品名:Dimension Icon型SPM)、プローブ(ブルカー・エイエックスエス社製、商品名:TESPA(NCHV)、先端曲率半径10nm、ばね定数42N/m )を用いて、タッピングモードで、銅箔表面の80μm×80μmの範囲について測定し、十点平均粗さ(Rz)を求めた。
【0083】
[粘度の測定]
E型粘度計(ブルックフィールド社製、商品名;DV-II+Pro)を用いて、25℃における粘度を測定した。トルクが10%~90%になるよう回転数を設定し、測定を開始してから2分経過後、粘度が安定した時の値を読み取った。
【0084】
[重量平均分子量(Mw)の測定]
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(東ソー株式会社製、商品名:HLC-8220GPCを使用)により測定した。標準物質としてポリスチレンを用い、展開溶媒にテトラヒドロフランを用いた。
【0085】
実施例及び参考例に用いた略号は、以下の化合物を示す。
BPDA:3,3’,4,4’‐ジフェニルテトラカルボン酸二無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
m‐TB:2,2’‐ジメチル‐4,4’‐ジアミノビフェニル
BAPP:2,2‐ビス[4‐(4‐アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
BTDA:3,3’,4,4’‐ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
ビスアニリン‐P:1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン(三井化学ファイン社製、商品名;ビスアニリン-P)
DDA:炭素数36の脂肪族ジアミン(クローダジャパン株式会社製、商品名;PRIAMINE1075、アミン価;210mgKOH/g、環状構造及び鎖状構造のダイマージアミンの混合物、ダイマー成分の含有量;95重量%以上)
N‐12:ドデカン二酸ジヒドラジド
OP935:ホスフィン酸のアルミニウム塩(クラリアントジャパン株式会社製、商品名;エクソリットOP935、リン含有量;23%、平均粒径:2μm)
DMAc:N,N‐ジメチルアセトアミド
【0086】
(合成例1)
窒素気流下で、500mlのセパラブルフラスコに、14.02gのm‐TB(0.066モル)及び170gのDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、6.72gのBPDA(0.023モル)及び9.25gのPMDA(0.042モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液aを調製した。ポリアミド酸溶液aにおける固形分濃度は15重量%であり、溶液粘度は20,600cpsであった。
【0087】
(合成例2)
窒素気流下で、500mlのセパラブルフラスコに、19.66gのBAPP(0.0479モル)及び170gのDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、10.34gのPMDA(0.0474モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液bを調製した。ポリアミド酸溶液bにおける固形分濃度は15重量%であり、溶液粘度は4,500cpsであった。
【0088】
(合成例3)
窒素気流下で、500mlのセパラブルフラスコに、12.06gのm‐TB(0.057モル)、2.20gのビスアニリン‐P(0.0063モル)及び171.7gのDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、6.824gのBPDA(0.031モル)及び9.19gのPMDA(0.031モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液cを調製した。ポリアミド酸溶液cにおける固形分濃度は15重量%であり、溶液粘度は18,300cpsであった。
【0089】
(合成例4)
窒素気流下で、500mlのセパラブルフラスコに、44.98gのBTDA(0.139モル)、75.02gのDDA(0.140モル)、168gのN‐メチル‐2‐ピロリドン及び112gのキシレンを装入し、40℃で30分間良く混合して、ポリアミド酸溶液を調製した。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、4.5時間加熱、攪拌し、112gのキシレンを加えてイミド化を完結したポリイミド接着剤溶液aを調製した。 ポリイミド接着剤溶液aにおける固形分濃度は29.1重量%であり、粘度は7,800cpsであった。また、ポリイミド接着剤溶液aの重量平均分子量(Mw)は87,700であった。
【0090】
(合成例5)
合成例4で調製したポリイミド接着剤溶液aの34.4g(固形分として10g)、1.25gのN‐12及び2.5gのOP935を配合し、1.297gのN‐メチル‐2‐ピロリドン及び3.869gのキシレンを加えて希釈してポリイミド接着剤溶液bを調製した。
【0091】
(作製例1)
<カバーレイフィルム1の調製>
合成例5で調製したポリイミド接着剤溶液bを乾燥後の厚みが約25μmとなるように、ポリイミドフィルム1(東レ・デュポン社製、商品名;カプトン50EN-S、厚み;12μm)の片面に塗布した後、80℃で15分間加熱乾燥してカバーレイフィルム1を調製した。
【0092】
(作製例2)
<ボンディングシート1の調製>
合成例5で調製したポリイミド接着剤溶液bを乾燥後の厚みが約25μmとなるように、離型処理されたPETフィルムの片面に塗布し、80℃で15分間乾燥を行い、ボンディングシート1を調製した。
【0093】
(作製例3)
<回路配線板1cの調製>
銅箔1(厚み;12μm、Rz;0.35μm)の上に、ポリアミド酸溶液bを硬化後の厚みが約2μmとなるように均一に塗布した後、120℃で1分加熱乾燥して溶媒を除去した。その上にポリアミド酸溶液aを硬化後の厚みが、約18μmとなるように均一に塗布した後、120℃で3分加熱乾燥して溶媒を除去した。更に、その上にポリアミド酸溶液bを硬化後の厚みが約2μmとなるように均一に塗布した後、120℃で1分加熱乾燥して溶媒を除去した。その後、130℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結して、片面銅張積層板1aを調製した。この片面銅張積層板1aのポリイミド絶縁層側に、銅箔を重ね合わせ、温度;360℃、圧力;6.7MPaの条件で15分間熱圧着して、両面銅張積層板1bを調製した。得られた両面銅張積層板1bについて、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔の片面に対して所定のパターンの配線加工を形成し、回路配線板1cを調製した。回路配線板1cにおけるポリイミド絶縁層の温度23℃湿度50%の誘電正接は0.052、乾燥時の誘電正接は0.0027であった。
【0094】
(作製例4)
<回路配線板2cの調製>
ポリアミド酸溶液aの代わりに、ポリアミド酸溶液cを使用したこと以外、作製例3と同様にして、片面銅張積層板2a及び両面銅張積層板2b並びに回路配線板2cを調製した。回路配線板2cにおけるポリイミド絶縁層の温度23℃湿度50%の誘電正接は0.039、乾燥時の誘電正接は0.0017であった。
【0095】
(作製例5)
<回路基板1dの調製>
回路配線板1cの配線上に、カバーレイフィルム1の接着性ポリイミド層が接するように積層後、160℃で120分間、2MPaの圧力をかけて圧着することで回路基板1dを調製した。
【0096】
(作製例6)
<多層回路基板1eの調製>
片面銅張積層板2aのポリイミド絶縁層側の面と、回路配線板2cの配線パターン側の面との間にボンディングシート1を挟み、重ね合わせた状態で真空ラミネートし、その後オーブンにて160℃、120分間の条件で加熱し、多層回路基板1eを調製した。
【0097】
[実施例1]
回路基板1dを120℃1時間乾燥した後、シリカ蒸着PETフィルムと熱硬化性接着剤からなる封止シートと、ステンレス箔で、回路基板1dの延設されている方向に沿った側面の両端1mmを除き覆うように重ね、ロールラミネーターを用いてこれらを張り合わせた。その後、オーブン中で80℃2時間の熱処理を行い、封止シートとステンレス箔で封止された回路基板1を調製した。回路基板1の伝送特性を評価したところ、吸湿前および吸湿後で伝送特性に差がない事を確認した。
【0098】
[実施例2]
多層回路基板1eを120℃1時間乾燥した後、多層回路基板1eの側面に乾式めっきとしてのスパッタリング装置を用いて、Crを含むN-Cr合金からなる厚み25nmの下地金属層と、その下地金属層の表面に厚み0.3μmの銅層を成膜して、回路基板2を調製した。回路基板2の伝送特性を評価したところ、吸湿前および吸湿後で伝送特性に差がない事を確認した。
【0099】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0100】
10・・・絶縁樹脂層、20…配線支持層、21…回路配線、30…接着封止層、40…金属層、50…バリア膜、51…第1バリア層、53…第2バリア層、60…端子部、101…回路基板、110…非熱可塑性ポリイミド層、120A,120B…熱可塑性ポリイミド層
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
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図10