(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ガス検出装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3504 20140101AFI20241212BHJP
【FI】
G01N21/3504
(21)【出願番号】P 2021032049
(22)【出願日】2021-03-01
【審査請求日】2023-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2020045669
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【氏名又は名称】神 紘一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】一色 翔太
(72)【発明者】
【氏名】桑田 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】池田 優二
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/136414(WO,A1)
【文献】特開2017-020901(JP,A)
【文献】米国特許第4618771(US,A)
【文献】中国実用新案第205374288(CN,U)
【文献】特表2019-506607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/61
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の主面に設けられ、発光面から光を発する発光素子と、
前記基板の主面に設けられ、受光面で前記光を受け取る受光素子と、
前記発光素子が発した前記光を前記受光素子に導く導光部材と、を備え、
前記導光部材が、軸外し光学系であり、
前記導光部材が、前記発光面の一辺の方向を第一の方向とし、その面内で前記第一の方向に対して垂直である方向を第二の方向とし、第一の鏡面の回転対称軸の方向の単位ベクトルが前記第一の方向と前記第二の方向のいずれの方向にも射影成分をもつ前記第一の鏡面と、前記受光面の一辺の方向を第三の方向とし、その面内で前記第三の方向に対して垂直である方向を第四の方向とし、第二の鏡面の回転対称軸の方向の単位ベクトルが前記第三の方向と前記第四の方向のいずれの方向にも射影成分をもつ前記第二の鏡面とで構成され、
前記基板の主面を平面視した場合に、
前記発光面と前記受光面は角部を有する形状であり、
前記発光面の辺は、拡大又は縮小と、平行移動と、によって前記受光面の辺と重ならない、ガス検出装置。
【請求項2】
前記基板の主面を平面視した場合に、前記発光面の辺は、拡大又は縮小と、平行移動と、回転移動と、によって前記受光面の辺と重なる、請求項1に記載のガス検出装置。
【請求項3】
基板の主面に設けられ、発光面から光を発する発光素子と、
前記基板の主面に設けられ、受光面で前記光を受け取る受光素子と、
前記発光素子が発した前記光を前記受光素子に導く導光部材と、を備え、
前記導光部材が、軸外し光学系であり、
前記導光部材が、前記発光面の一辺の方向を第一の方向とし、その面内で前記第一の方向に対して垂直である方向を第二の方向とし、第一の鏡面の回転対称軸の方向の単位ベクトルが前記第一の方向と前記第二の方向のいずれの方向にも射影成分をもつ前記第一の鏡面と、前記受光面の一辺の方向を第三の方向とし、その面内で前記第三の方向に対して垂直である方向を第四の方向とし、第二の鏡面の回転対称軸の方向の単位ベクトルが前記第三の方向と前記第四の方向のいずれの方向にも射影成分をもつ前記第二の鏡面とで構成され、
前記基板の主面を平面視した場合に、
前記発光面と前記受光面は角部を有する形状であり、
前記発光面の辺の各々は、前記受光面のいずれの辺とも平行でない、ガス検出装置。
【請求項4】
前記基板の主面を平面視した場合に、回転移動した前記発光面の辺の各々は、前記受光面のいずれかの辺と平行である、請求項3に記載のガス検出装置。
【請求項5】
矩形の主面を有する基板と、
前記基板の主面に設けられ、矩形の発光面から光を発する発光素子と、
前記基板の主面に設けられ、矩形の受光面で前記光を受け取る受光素子と、
前記発光素子が発した前記光を前記受光素子に導く導光部材と、を備え、
前記導光部材が、軸外し光学系であり、
前記導光部材が、前記発光面の一辺の方向を第一の方向とし、その面内で前記第一の方向に対して垂直である方向を第二の方向とし、第一の鏡面の回転対称軸の方向の単位ベクトルが前記第一の方向と前記第二の方向のいずれの方向にも射影成分をもつ前記第一の鏡面と、前記受光面の一辺の方向を第三の方向とし、その面内で前記第三の方向に対して垂直である方向を第四の方向とし、第二の鏡面の回転対称軸の方向の単位ベクトルが前記第三の方向と前記第四の方向のいずれの方向にも射影成分をもつ前記第二の鏡面とで構成され、
前記基板の主面を平面視した場合に、前記受光面又は前記発光面の辺の各々は、前記基板の主面のいずれの辺とも平行でない、ガス検出装置。
【請求項6】
前記基板の主面を平面視した場合に、前記発光面又は前記受光面の辺の各々は、前記基板の主面のいずれかの辺と平行である、請求項5に記載のガス検出装置。
【請求項7】
前記発光素子は面光源である、請求項1から6のいずれか一項に記載のガス検出装置。
【請求項8】
前記導光部材は、
前記発光素子から発せられた前記光及び前記受光素子が受け取る前記光を直接的に反射する第1の反射部と、
前記第1の反射部に対する相対位置が固定されており、前記第1の反射部との間で前記光を反射する第2の反射部と、を備える、請求項1から
7のいずれか一項に記載のガス検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はガス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスを検出するガス検出装置が様々な分野で利用されている。例えば特許文献1は、赤外線を放射する光源と、特定波長の赤外線を検出する検出器とを同一のケース内に備え、当該ケース内に被検出ガスが導入されるように構成された装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載されるガス検出装置は、光路長を長くするために複数のミラーで複数回反射を行う。ここで、光学系において複数の光学部材が配置される場合に、受光素子で受け取る光の像が、発光素子が発する光の像から拡大縮小、回転などの変換、光学的収差及び回折の影響をうけ、元の像と異なる場合がある。このような光の像の変化は、安定した高精度のガス検出を妨げるおそれがある。
【0005】
また、ガス検出装置は、これまで光源としてランプが使用されてきたが、近年(2018年以降)、SMD型(Surface Mount Device 表面実装型)の中赤外LED光源が開発・量産され、発光素子サイズがランプに比べて著しく小型な光源を使用するようになってきている。これまでのランプでは受光素子に入射される光形状の大きさ(入射光束の断面積)は、受光素子サイズに比べて十分大きく、入射光束の断面が回転対称な形状(典型的には円状)で広がっていた。しかしLED光源を使うことにより、その入射光束の断面積は受光素子サイズに対して同等若しくはそれ以下で、光源形状に合わせて入射光束の断面が角部のある矩形に変化し、入射光束の断面の角部が受光素子から外れることによって受光素子のSNR(Signal to Noise Ratio)が低下するという問題がある。
【0006】
本開示は、上記従来の未解決の課題に着目してなされたものであり、安定した高精度のガス検出装置を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態に係るガス検出装置は、
基板の主面に設けられ、発光面から光を発する発光素子と、
前記基板の主面に設けられ、受光面で前記光を受け取る受光素子と、
前記発光素子が発した前記光を前記受光素子に導く導光部材と、を備え、
前記基板の主面を平面視した場合に、
前記発光面と前記受光面は角部を有する形状であり、
前記発光面の辺は、拡大又は縮小と、平行移動と、によって前記受光面の辺と重ならない。
【0008】
ここで発光面とは素子の発光部において気体と触れ合う面でかつ光学的な透過性を持つ材料でできている面である。また受光面とは素子の受感部において気体と触れ合う面でかつ光学的な透過性を持つ材料でできている面である。
【0009】
本開示の一実施形態に係るガス検出装置は、
基板の主面に設けられ、発光面から光を発する発光素子と、
前記基板の主面に設けられ、受光面で前記光を受け取る受光素子と、
前記発光素子が発した前記光を前記受光素子に導く導光部材と、を備え、
前記基板の主面を平面視した場合に、
前記発光面と前記受光面は角部を有する形状であり、
前記発光面の辺の各々は、前記受光面のいずれの辺とも平行でない。
【0010】
本開示の一実施形態に係るガス検出装置は、
矩形の主面を有する基板と、
前記基板の主面に設けられ、矩形の発光面から光を発する発光素子と、
前記基板の主面に設けられ、矩形の受光面で前記光を受け取る受光素子と、
前記発光素子が発した前記光を前記受光素子に導く導光部材と、を備え、
前記基板の主面を平面視した場合に、前記受光面又は前記発光面の辺の各々は、前記基板の主面のいずれの辺とも平行でない。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一実施形態によれば、安定した高精度のガス検出装置が実現され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るガス検出装置の一部を透過させた斜視図である。
【
図2】
図2は、ガス検出装置の断面の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、発光素子及び受光素子の配置の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、比較例における受光素子のマージンを示す図である。
【
図5】
図5は、本実施形態における受光素子のマージンを示す図である。
【
図7】
図7は、発光素子及び受光素子の配置の別の例を示す図である。
【
図8】
図8は、発光素子及び受光素子の配置の別の例を示す図である。
【
図9】
図9は、光の像の回転の原因について説明するための図である。
【
図10】
図10は、光の像の回転の原因について説明するための図である。
【
図11】
図11は、軸外し光学系を使用した時の光学的収差の影響抑制を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本開示の一実施形態に係るガス検出装置1の一部を透過させた斜視図である。ガス検出装置1は、一例として30mm×20mm×10mmの小型の装置であって、ガスセンサーとも称される。本実施形態において、ガス検出装置1は、導入した気体を透過した赤外線に基づいて被検出ガスの濃度を測定する、NDIR(Non Dispersive InfraRed)方式の装置である。被検出ガスは、例えば二酸化炭素、水蒸気、メタン、プロパン、ホルムアルデヒド、一酸化炭素、一酸化窒素、アンモニア、二酸化硫黄又はアルコール等である。
【0014】
ガス検出装置1は、基板2と、発光素子3と、受光素子4と、導光部材5と、接合部材6と、を備える。
図1では、導光部材5の一部を透過させてガス検出装置1の構成例を示しており、基板2の主面20に設けられた発光素子3及び受光素子4が見えている。本実施形態において、主面20は、基板2の面積が最も大きい面のうちで導光部材5と対向する面である。主面20は矩形である。
【0015】
以下、
図1に示すように、xy平面が基板2の主面20と平行であるように、直交座標が設定される。z軸方向は、基板2の主面20に垂直な方向である。x軸方向及びy軸方向は、基板2の主面20の辺と平行である。ここで、y軸方向は、後述する第1の反射部51と第2の反射部52とが向かい合う方向に対応する。
【0016】
基板2は、ガス検出装置1の部品を実装し、実装された電子部品の電気的な接続を行う板状の部材である。基板2は、発光素子3と、受光素子4と、を主面20に設ける。基板2はさらに別の電子部品を実装してよい。例えば、基板2は主面20又は主面20と反対の面である底面に、発光素子3及び受光素子4の少なくとも一方を制御するコントローラを設けてよい。また、基板2は主面20又は底面に、ガス濃度算出における演算を実行する演算部を備えてよい。演算部は、読み込むプログラムに応じた機能を実行する汎用のプロセッサ、及び、特定の処理に特化した専用のプロセッサの少なくとも1つを含んでよい。専用のプロセッサは、特定用途向けIC(ASIC;Application Specific Integrated Circuit)を含んでよい。プロセッサは、プログラマブルロジックデバイス(PLD;Programmable Logic Device)を含んでよい。演算部は、上記のコントローラと一体化されていてよい。
【0017】
発光素子3は、被検出ガスの検出に用いられる光を発する部品である。発光素子3は、被検出ガスによって吸収される波長を含む光を出力するものであれば特に制限されない。本実施形態において、発光素子3が発する光は赤外線であるが、これに限定されない。本実施形態において、発光素子3はLED(light emitting diode、発光ダイオード)であるが、別の例として、有機発光素子又はMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ヒータ等のインコヒーレント光源であり得る。発光素子3は、z軸方向において、後述する第1のミラー511と対向する位置に設けられる。
【0018】
発光素子3は、矩形の発光面31を備える。発光素子3は、発光面31の全体から光を発する面光源である。
図1に示すように、発光素子3は、発光面31からz軸方向すなわち基板2の厚み方向に光を発する。
【0019】
受光素子4は、導入した気体を透過した光を受け取る部品である。受光素子4は、被検出ガスによって吸収される波長を含む光の帯域に感度を有するものであれば特に制限されない。本実施形態において、受光素子4が受け取る光は赤外線であるが、これに限定されない。本実施形態において、受光素子4はフォトダイオード(Photodiode)であるが、別の例としてフォトトランジスタ又はサーモパイル、焦電センサ、ボロメータ等であり得る。受光素子4は、受け取った光を電気信号に変換して、変換した電気信号を出力する。電気信号は、例えば演算部に出力される。電気信号を受け取った演算部は、光の透過率等に基づいて被検出ガスの濃度を演算する。受光素子4は、z軸方向において、後述する第5のミラー513と対向する位置に設けられる。受光素子4は波長選択機能を有する光学フィルタを備えていてよい。
【0020】
受光素子4は、矩形の受光面41を備える。
図1に示すように、受光素子4は、受光面41でz軸方向すなわち基板2の厚み方向の光を受け取る。
【0021】
導光部材5は、発光素子3が発した光を受光素子4に導く部材である。導光部材5は、ガス検出装置1の光学系である。導光部材5は光学部材を備え、発光素子3から受光素子4への光路を構成する。換言すると、導光部材5は、発光素子3と受光素子4とを光学的に接続させる。ここで、光学部材は例えばミラー及びレンズ等である。
【0022】
本実施形態において、導光部材5は、第1の反射部51と、第2の反射部52と、を備える。第1の反射部51は、光学部材として、第1のミラー511と、第3のミラー512と、第5のミラー513と、を備える。第1の反射部51は、発光素子3から発せられた光及び受光素子4が受け取る光を直接的に反射する。第2の反射部52は、光学部材として、第2のミラー521と、第4のミラー522と、を備える。第2の反射部52は、第1の反射部51との間で光を反射する。導光部材5は、発光素子3が発した光を複数回反射して受光素子4に射出する。具体的には、導光部材5は、発光素子3が発した光を、第1のミラー511、第2のミラー521、第3のミラー512、第4のミラー522及び第5のミラー513の順に反射して、受光素子4に導く。光路は、導光部材5と基板2との間に設けられた、気体が導入されるセル54を通過するように構成される。別の例として、導光部材5が備えるミラーの数は5つに限られず、1つ以上であればよい。また、導光部材5は光路の一部においてレンズを備える構成であってよい。
【0023】
導光部材5において、第1の反射部51は、第2の反射部52に対する相対位置が固定される。例えば、第1の反射部51及び第2の反射部52は樹脂製であって一体形成されてよい。第1の反射部51及び第2の反射部52のミラーは、一体形成の後に金属メッキで加工されてよい。別の例として、第1の反射部51及び第2の反射部52は個別に形成されて、接着剤、ネジ、ツメ、はめ合い、グロメット、溶着等によって強力に固定されてよい。
【0024】
第1のミラー511は、入射した焦点からの光を反射する集光鏡である。第1のミラー511は例えば凹面鏡である。第1のミラー511の形状として、楕円面が使用されてよい。本実施形態において、第1のミラー511は、焦点にある発光素子3からz軸方向に発せられた光を、z軸方向と垂直なxy平面方向に反射する。ここで、xy平面方向は、x軸方向及びy軸方向の少なくとも1つの方向の成分を有する方向である。ただし、xy平面方向は、z軸方向成分を有していてよい。
【0025】
第2のミラー521、第3のミラー512及び第4のミラー522は、入射した光を反射する。第2のミラー521、第3のミラー512及び第4のミラー522の少なくとも1つは、集光機能を有する集光鏡であってよい。第2のミラー521、第3のミラー512及び第4のミラー522の少なくとも1つは、例えば凹面鏡であってよい。
図1に示すように、第2のミラー521は、入射した第1のミラー511からの光を、第3のミラー512へ反射する。第3のミラー512は、入射した第2のミラー521からの光を、第4のミラー522へ反射する。第4のミラー522は、入射した第3のミラー512からの光を、第5のミラー513へ反射する。
【0026】
第5のミラー513は、入射した光を焦点に集光させる集光鏡である。第5のミラー513は例えば凹面鏡である。第5のミラー513の形状として、楕円面が使用されてよい。本実施形態において、第5のミラー513は、入射した第4のミラー522からのxy平面方向の光をz軸方向の成分を有するように反射する。具体的には、第5のミラー513は、焦点にある受光素子4において集光するように入射した光を反射する。
【0027】
第1のミラー511、第2のミラー521、第3のミラー512、第4のミラー522及び第5のミラー513を構成する材料は、例えば、金属、ガラス、セラミックス、ステンレス等であってよいが、この限りではない。検出感度向上の観点から、これらのミラーを構成する材料は、光の吸収係数が小さく反射率が高い材料で構成されることが好ましい。具体的には、アルミニウム、金、銀を含む合金、誘電体若しくはこれらの積層体のコーティングが施された樹脂筐体が好ましい。信頼性及び経時変化の観点から金又は金を含む合金層でコーティングされた樹脂筐体が好ましい。さらに、反射率を高めるために金属層の表面に誘電体積層膜を形成することが好ましい。第1のミラー511及び第5のミラー513が樹脂筐体上に蒸着又はめっきによって形成される場合、金属材料で形成される場合と比較して、高生産性と軽量化の向上を図ることができる。さらに、基板2との熱膨張係数差が縮まり、熱変形が抑制され、感度が変動しづらくなる。また、導光部材5は切削加工で成形されてよく、生産性の観点からより好ましくは射出成型で成形されることが望ましい。
【0028】
接合部材6は、基板2と導光部材5とを接合する部材である。本実施形態において、接合部材6は、基板2に接合する第1の底面部61(
図2参照)と、導光部材5に接合する第2の底面部62と、を有する。第1の底面部61と基板2とは、例えば接着剤、グロメット又はネジ、溶着、ツメ、はめ合い等によって接合される。第2の底面部62と導光部材5との接合も同様である。また、生産性の観点から、構成部材の数が削減されるため接合部材6と導光部材5は一体成型されていることが望ましい。
【0029】
図2は、ガス検出装置1の断面の一例を示す図である。
図2では、基板2と、第3のミラー512を含む導光部材5と、接合部材6と、をyz平面に平行な面で切断した断面が示されている。セル54は、基板2と導光部材5とで挟まれた、ガス検出装置1の内部に形成される。導光部材5は、セル54に気体を導入する通気口53を備える。通気口53は、セル54からの気体の排出でも使用され得る。
【0030】
接合部材6は、第1の底面部61を含む第1の部分6aと、第2の底面部62を含む第2の部分6bと、第1の部分6a、第2の部分6b及び第3のミラー512を結合する結合部63と、を備える。第1の部分6a及び第2の部分6bは、中空の円柱体を含む。第1の底面部61は、基板2の底面からネジが挿入されることによって、基板2と接合される。第2の底面部62は、中空部分にグロメットが挿入されて広がることによって、導光部材5と接合される。また、
図2に示すように、第3のミラー512が接合部材6と結合されることによって、第1の反射部51の第2の反射部52に対する相対位置はさらに強固に固定される。別の例として、第1の部分6a及び第2の部分6bは、中実の円柱体であってよい。第1の底面部61と基板2、及び、第2の底面部62と導光部材5は、接着剤、ネジ、ツメ、はめ合い、グロメット、溶着等によって接合されてよい。ここで、
図2の第1のミラー511、基板2の主面20及び発光素子3は、
図1の同じ番号が付された要素と同じであるため、説明を省略する。
【0031】
図3は、発光素子3及び受光素子4の配置の一例を示す図である。
図3では、z軸の負方向に向かって見た基板2の主面20が示されている。つまり、基板2の主面20を平面視した場合の、発光素子3及び受光素子4の配置が示されている。
【0032】
図3に示すように、発光面31は、矩形であって、辺32a、32b、32c及び32dを有する。また、受光面41は、矩形であって、辺42a、42b、42c及び42dを有する。本実施形態における発光面31と受光面41は角部を有する形状である。ある形状Sが角部を有する形状であるとは、概説すると形状Sが6角形以下の多角形で近似されることであり、N個(2<N<7の整数)の頂点をもつ多角形Pを面積不適合率が最小となるように形状Sの上に画定した際に、面積不適合率が5%以下になることである。ここで面積不適合率とは、形状Sに含まれかつ多角形Pに含まれない領域、と形状Sに含まれないが多角形Pに含まれる領域の和の面積を形状Sの面積で割ったものである。ここで比較のために、円に対する正6角形の最小となる面積不適合率は7.4%であり、円は角部を有する形状とはならない。
【0033】
発光素子3は、発光面31の全面から光を発する。基板2の主面20を平面視した場合の射出光L0の形状は発光面31と同じである。発光面31の辺32a、32b、32c及び32dの各々はx軸又はy軸と平行である。つまり、基板2の主面20を平面視した場合に、発光面31の辺32a、32b、32c及び32dの各々は、基板2の主面20のいずれかの辺と平行である。
【0034】
受光素子4は、矩形状の入射光L
1を受光面41で受け取る。入射光L
1は、xy平面において射出光L
0を縮小して回転、せん断変換、台形歪みなどの変換を受けた形状を有する。受光面41は、後述する理由のため、入射光L
1の縁部と受光面41の辺42a、42b、42c及び42dとの間の最小の距離を大きくするように、入射光L
1の回転に合わせて配置される。
図3に示すように、受光面41の辺42a、42b、42c及び42dの各々はx軸と平行でなく、y軸とも平行でない。つまり、基板2の主面20を平面視した場合に、受光面41の辺42a、42b、42c及び42dの各々は、基板2の主面20のいずれの辺とも平行でない。
【0035】
ここで、光学系において光が複数回反射されるガス検出装置1では、特定の配置を除き一般に光の像の回転が生じる。一例として、回転角は非ゼロであって、例えば45°以下である。したがって、基板2の主面20を平面視した場合に、入射光L1の辺の向きは、もとの射出光L0と一致せず、射出光L0を回転移動したものに一致する。
【0036】
図4は、比較例における受光素子4の配置例を示す図である。比較例における受光素子4は、受光面41の辺がx軸又はy軸と平行であるように配置される。つまり、比較例において、受光素子4は、受光面41の辺が基板2の主面20の辺と平行であるように配置される。上記のように、入射光L
1に回転が生じるため、比較例の受光素子4の受光面41では受光領域の最小のマージンm
0が小さい。マージンm
0が小さいと、受光素子4の主面20への配置の誤差、使用環境又は経年変化による入射光L
1のずれ等によって、受光面41で受け取る光の総量が変わるため、ガス検出の精度に影響が生じ得る。ここで、マージンm
0を大きくとるために、受光面41の方を大きく、すなわち受光素子4を大きくすると、ガス検出装置1の製造コストが増加し、またノイズが増加し、小型化が困難になる。また、マージンm
0を小さくする別の要因として光学的収差及び回折の影響がある。
【0037】
図5は、本実施形態に係るガス検出装置1の受光素子4の配置例を示す図である。上記のように、本実施形態において、受光面41は入射光L
1に合わせてxy平面で回転して配置される。そのため、受光領域の最小のマージンm
1を、比較例のマージンm
0よりも大きくすることが可能である。本実施形態に係るガス検出装置1は、大きなマージンm
1を有するため、受光素子4の主面20への配置の誤差、使用環境又は経年変化による入射光L
1のずれ等によるガス検出の精度への影響を受けにくい。したがって、本実施形態に係るガス検出装置1は、安定した高精度のガス検出が可能である。
【0038】
ここで上記光の像(入射光L
1)の回転の原因は以下のとおりである。一例として
図9、
図10に示すように第2のミラー521、第3のミラー512、第4のミラー522のうち、第3のミラー512が集光機能を有する集光鏡である場合を述べる。像の回転は第1のミラー511と第5のミラー513の傾きの方向によって決まっている。発光面31から出た光は第1のミラー511により第2のミラー521の方向に反射される。この際、第1のミラー511の焦点から射出される光は楕円の他方の焦点にある第2のミラー521上に結像される。またZ軸正方向を回転軸とし第1のミラー511の楕円の長辺が、Y軸に平行な矩形の発光面31の一辺に対し、右ネジの方向を正とすると傾きAで傾いている。このため、結像される像は、Z軸正方向を上方とし、倒立実像から光の進行方向を軸に、右ネジの方向を正とし+A°回転した像となる。
【0039】
ここで、視点を変えて発光面31上の光の強度分布と像の関係を逆と考えると、右ねじの方向を正として、発光面31の発光強度分布像(射出光L0)は、第2のミラー521上の像に対して、-A°回転した像となることを強調しておく(この性質を第5のミラー513に関する記述において用いる)。
【0040】
第3のミラー512は第2のミラー521により反射された像を第4のミラー522に再度倒立実像として結像する。つまり第4のミラー522に結像される像は、Z軸正方向を上方とし、第2のミラー521上に結像された像が光の進行方向を軸に、右ネジの方向を正としA°+180°回転した像となる。
【0041】
第5のミラー513の楕円鏡は第4のミラー522から反射された光を焦点に配置した受光面41に結像させる。またZ軸正方向を回転軸とし第5のミラー513の楕円の長辺は、Y軸に平行な矩形の発光面31の一辺に対し、右ネジの方向を正とすると傾き―Bで傾いており、第5のミラー513の反射面に対する光の進行方向が第1のミラー511の反射面と光の進行方向の関係と逆である。そのため受光面41に入射される光は倒立実像から光の進行方向を軸に、発光面31上の光の強度分布の正の方向を基準として、右ネジの方向を正とし180°+A°+B°回転した像となる。
【0042】
図6は、回転像を説明するための図である。
図6に示すように、導光部材5では、発光面31に対向する凹面鏡若しくは平面鏡が第二の方向に傾いている場合に、像が上方正方向に対して回転する。ここで、第一の方向は、発光面31の像(射出光L
0)の特定の方向(例えば発光面31の形状が矩形であれば特定の一辺の方向)である。また、第二の方向は、発光面31内において第一の方向と垂直な方向であって右手系となるような方向である。また受光面41でも同様に受光面41に対向する鏡が傾きを持つ場合、導光部材5は光の像を回転させる。ここで第二の方向に傾いているとは、凹面鏡の回転対称軸の方向のベクトル(特別に平面鏡の場合は任意の部分で局所的な回転軸が存在するため法線方向ベクトルと同一である)が、第二の方向と垂直ではなく、つまり第二の方向の単位ベクトルと内積が0ではなく、第二の方向へ射影成分を持つことを指す。言い換えると、発光面31と受光面41が矩形である場合、発光面31若しくは受光面41の一辺の方向とその面内で垂直である方向に対し、傾きをもつ鏡面(又は軸外し光学系の鏡面)で構成された導光部材5をもつガス検出装置1は像(入射光L
1)の回転が生じる。
【0043】
したがって、仮に発光素子3を回転移動させても、射出光L0の向きと入射光L1の向きとは一致しない。よって、基板2の主面20を平面視した場合に、本実施形態に係るガス検出装置1の受光素子4の配置は、発光素子3の配置に基づいて以下のように記載できる。発光素子3の発光面31の辺32a、32b、32c及び32dは、発光面31の拡大又は縮小と、平行移動と、によって受光素子4の受光面41の辺42a、42b、42c及び42dと重ならない。換言すると、発光素子3の発光面31の辺32a、32b、32c及び32dの各々は、受光素子4の受光面41のいずれの辺とも平行でない。そして、発光素子3の発光面31の辺32a、32b、32c及び32dは、拡大又は縮小と、平行移動と、回転移動と、によって受光素子4の受光面41の辺42a、42b、42c及び42dと重なる。換言すると、回転移動した発光素子3の発光面31の辺32a、32b、32c及び32dの各々は、受光素子4の受光面41のいずれかの辺と平行である。
【0044】
以上のように、軸外し光学系の鏡面を使用する導光部材5において入射光L
1は回転しうるが、発光素子3と受光素子4の配置関係により、導光部材5において生じる入射光L
1の回転によるマージンm
0の低下を抑制し、安定した高精度のガス検出を実現する。軸外し光学系及び自由曲面光学系では、光学的収差による受光面41での受光領域の最小のマージンm
0の低下が抑えられる。そのため、導光部材5は軸外し光学系又は自由曲面光学系であることが望ましい。ここで軸外し光学系とは、レンズ、球面鏡及び楕円面鏡などにおいて、回転中心軸の位置の鏡面を含まないレンズ、鏡面、又は、レンズ及び鏡面を使用した光学系である。一方で回転中心軸の位置を含む鏡面を使用する光学系を共軸光学系若しくは対称光学系という。
図11は同倍率の軸外し光学系と共軸光学系を導光部材5として使用した時の受光面41と入射光の像の図である。受光面41上に入射する入射光の像の総光量を100%としたとき、軸外し光学系を導光部材5として用いた場合の光量が99%となる入射光の像の領域をSOA、共軸光学系を導光部材5として用いた場合の光量が99%となる入射光の像の領域をSAとする。このとき、領域SOAに対する領域SAの面積は2.3倍であり、光学的収差の影響が、共軸光学系を使用する方が軸外し光学系を使用する際に比べ大きく観測される。以上から、小型でかつ安定した高精度なガス検出の実現には導光部材5は軸外し光学系が望ましい。
【0045】
以上のように、本実施形態に係るガス検出装置1は、上記の構成によって、安定した高精度のガス検出が可能である。
【0046】
以上、実施形態を諸図面及び実施例に基づき説明したが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれることに留意すべきである。例えば、各部材、各手段などに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段などを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0047】
例えば、上記の実施形態において、発光素子3は、発光面31の辺32a、32b、32c及び32dの各々がx軸又はy軸と平行であるように配置される。一つの変形例として、
図7に示すように、受光素子4は、受光面41の辺42a、42b、42c及び42dの各々がx軸又はy軸と平行であるように配置されてよい。このとき、入射光L
1の辺がx軸又はy軸と平行になるように、発光素子3は、発光面31の辺32a、32b、32c及び32dの各々がx軸と平行でなく、y軸とも平行でないように配置される。また、別の変形例として、
図8に示すように、発光面31の辺32a、32b、32c、32d、受光面41の辺42a、42b、42c及び42dの各々がx軸と平行でなく、y軸とも平行でないように、発光素子3及び受光素子4が配置されてよい。
【符号の説明】
【0048】
1 ガス検出装置
2 基板
3 発光素子
4 受光素子
5 導光部材
6 接合部材
6a 第1の部分
6b 第2の部分
20 主面
31 発光面
32a、32b、32c、32d 発光面の辺
41 受光面
42a、42b、42c、42d 受光面の辺
51 第1の反射部
52 第2の反射部
53 通気口
54 セル
61 第1の底面部
62 第2の底面部
63 結合部
511 第1のミラー
512 第3のミラー
513 第5のミラー
521 第2のミラー
522 第4のミラー
L0 射出光
L1 入射光