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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】燃焼ノズル及び燃焼式排ガス処理装置
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/58 20060101AFI20241212BHJP
   F23G 7/06 20060101ALI20241212BHJP
   F23D 14/02 20060101ALI20241212BHJP
   F23D 14/22 20060101ALI20241212BHJP
   F23D 14/48 20060101ALI20241212BHJP
   B05B 7/06 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
F23D14/58 A
F23G7/06 N
F23G7/06 D
F23D14/02 H
F23D14/22 E
F23D14/48 D
B05B7/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022186016
(22)【出願日】2022-11-21
(65)【公開番号】P2024074691
(43)【公開日】2024-05-31
【審査請求日】2024-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 信昭
(72)【発明者】
【氏名】関田 誠
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-280629(JP,A)
【文献】特開2019-020011(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0007623(US,A1)
【文献】特表昭62-500010(JP,A)
【文献】特開2018-173226(JP,A)
【文献】特開平10-009551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/00 - 14/84
F23G 7/06
B05B 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筒体と、第2筒体と、前記第1筒体と前記第2筒体を連ねる環状壁と、前記環状壁を貫通し、燃料ガス噴射口を形成する貫通孔と、前記第1筒体よりも内側に形成される処理対象ガス噴射口とを有し、
前記貫通孔は、前記第1筒体の中心軸線を含む縦断面において、前記貫通孔によって径方向の外側端縁と内側端縁によって形成される流路が軸方向の先端側に向けて前記径方向の内側に傾斜する方向に延び、当該流路の延長上に前記第1筒体の先端部の外周面が存在し、且つ、前記軸方向の前記環状壁の厚みが前記径方向の内側に向けて低減するように設けられる、燃焼ノズル。
【請求項2】
前記縦断面において、前記貫通孔の前記外側端縁と前記内側端縁が互いに平行な直線状をなす、請求項1に記載の燃焼ノズル。
【請求項3】
前記軸方向に見たときに前記貫通孔が前記径方向に直線状に延びるスリット状をなす、請求項1に記載の燃焼ノズル。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の燃焼ノズルと、前記燃焼ノズルから噴射される処理対象ガスと燃料ガスによって燃焼反応部を内側に形成する燃焼筒とを有し、
前記燃焼ノズルは、前記処理対象ガス噴射口よりも前記径方向の外側で且つ前記燃料ガス噴射口よりも前記径方向の内側に、窒素ガス噴射口を有し、
前記燃焼ノズルは、前記燃料ガス噴射口よりも高濃度の燃料ガスを噴射する更なる燃料ガス噴射口を、前記窒素ガス噴射口よりも径方向外側で且つ前記燃料ガス噴射口よりも前記径方向の内側に有し、
前記燃焼筒は、支燃性ガスを前記燃焼反応部に向けて噴射する支燃性ガス噴射口を有する、燃焼式排ガス処理装置。
【請求項5】
請求項1~3の何れか1項に記載の燃焼ノズルと、前記燃焼ノズルから噴射される処理対象ガスと燃料ガスによって燃焼反応部を内側に形成する燃焼筒とを有し、
前記燃焼ノズルは、前記処理対象ガス噴射口よりも前記径方向の外側で且つ前記燃料ガス噴射口よりも前記径方向の内側に、窒素ガス噴射口を有し、
前記燃焼筒は、燃料ガスに支燃性ガスを予め混合した予混合ガスを前記燃焼反応部に向けて噴射する予混合ガス噴射口を有する、燃焼式排ガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃焼ノズル及び燃焼式排ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置等から排出される、窒素ガスで希釈された有害成分を含む処理対象ガスを大気開放などの前に除害処理する燃焼式排ガス処理装置のための燃焼ノズルが知られている(例えば特許文献1~2参照)。
【0003】
燃焼ノズルは、第1筒体と、第2筒体と、第1筒体と第2筒体を連ねる環状壁と、環状壁を貫通し、燃料ガス噴射口を形成する貫通孔と、第1筒体よりも内側に形成される処理対象ガス噴射口とを有する。貫通孔は、第1筒体の中心軸線を含む縦断面において、貫通孔によって径方向の外側端縁と内側端縁によって形成される流路が軸方向の先端側に向けて径方向の内側に傾斜する方向に延びるように設けられる。
【0004】
燃焼式排ガス処理装置は、燃焼ノズルと、燃焼ノズルの径方向中心部から噴射される処理対象ガスと燃料ガスによって燃焼反応部を内側に形成する燃焼筒とを有する。燃焼反応部によって処理対象ガスが処理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6734821号公報
【文献】特許第4535558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
処理対象ガスが六フッ化タングステン(WF)のような酸化又は熱分解反応により紛体を発生する成分を含む場合など、処理対象ガスの成分と濃度などによっては、金属含有粉体がノズル先端部に堆積し、燃焼ノズルの性能に影響する場合がある。しかし、金属含有粉体は硬いため、機械的な粉体除去装置などによって自動的に清掃を行うことが難しく、通常、分解清掃などのメンテナンス作業によって除去する必要がある。ノズル先端部への金属含有粉体の堆積を抑制できれば、メンテナンス作業の頻度抑制などの望ましい効果を得ることができる。
【0007】
そこで本発明の目的は、ノズル先端部への金属含有粉体の堆積を抑制し易い燃焼ノズル及び燃焼式排ガス処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は以下のとおりである。
【0009】
[1]
第1筒体と、第2筒体と、前記第1筒体と前記第2筒体を連ねる環状壁と、前記環状壁を貫通し、燃料ガス噴射口を形成する貫通孔と、前記第1筒体よりも内側に形成される処理対象ガス噴射口とを有し、
前記貫通孔は、前記第1筒体の中心軸線を含む縦断面において、前記貫通孔によって径方向の外側端縁と内側端縁によって形成される流路が軸方向の先端側に向けて前記径方向の内側に傾斜する方向に延び、当該流路の延長上に前記第1筒体の先端部の外周面が存在し、且つ、前記軸方向の前記環状壁の厚みが前記径方向の内側に向けて低減するように設けられる、燃焼ノズル。
【0010】
[2]
前記縦断面において、前記貫通孔の前記外側端縁と前記内側端縁が互いに平行な直線状をなす、[1]に記載の燃焼ノズル。
【0011】
[3]
前記軸方向に見たときに前記貫通孔が前記径方向に直線状に延びるスリット状をなす、[1]又は[2]に記載の燃焼ノズル。
【0012】
[4]
[1]~[3]の何れか1項に記載の燃焼ノズルと、前記燃焼ノズルから噴射される処理対象ガスと燃料ガスによって燃焼反応部を内側に形成する燃焼筒とを有し、
前記燃焼ノズルは、前記処理対象ガス噴射口よりも前記径方向の外側で且つ前記燃料ガス噴射口よりも前記径方向の内側に、窒素ガス噴射口を有し、
前記燃焼ノズルは、前記燃料ガス噴射口よりも高濃度の燃料ガスを噴射する更なる燃料ガス噴射口を、前記窒素ガス噴射口よりも径方向外側で且つ前記燃料ガス噴射口よりも前記径方向の内側に有し、
前記燃焼筒は、支燃性ガスを前記燃焼反応部に向けて噴射する支燃性ガス噴射口を有する、燃焼式排ガス処理装置。
【0013】
[5]
[1]~[3]の何れか1項に記載の燃焼ノズルと、前記燃焼ノズルから噴射される処理対象ガスと燃料ガスによって燃焼反応部を内側に形成する燃焼筒とを有し、
前記燃焼ノズルは、前記処理対象ガス噴射口よりも前記径方向の外側で且つ前記燃料ガス噴射口よりも前記径方向の内側に、窒素ガス噴射口を有し、
前記燃焼筒は、燃料ガスに支燃性ガスを予め混合した予混合ガスを前記燃焼反応部に向けて噴射する予混合ガス噴射口を有する、燃焼式排ガス処理装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ノズル先端部への金属含有粉体の堆積を抑制し易い燃焼ノズル及び燃焼式排ガス処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態の燃焼式排ガス処理装置を示す縦断面図である。
図2図1に示す燃焼式排ガス処理装置の動作説明図である。
図3図2の一部拡大図である。
図4】実施例において測定された金属含有粉体の堆積量を示すグラフである。
図5】比較例1としての燃焼式排ガス処理装置を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を例示説明する。
【0017】
図1図3に示すように、本発明の第1実施形態において燃焼ノズル1aは、第1筒体2と、第2筒体3と、第1筒体2と第2筒体3を連ねる環状壁4と、第1燃料ガス噴射口としての第1噴射口5と、第1筒体2よりも内側に形成される処理対象ガス噴射口としての第2噴射口6とを有する。第1噴射口5は、周方向に並べて設けられそれぞれ環状壁4を貫通する複数の貫通孔7によって形成される。
【0018】
なお、第1筒体2の中心軸線Oに沿う方向を軸方向といい、軸方向に沿って第1筒体2(又は燃焼ノズル1a)の先端側に向かう方向を軸方向の先端側といい、その反対方向を軸方向の基端側といい、第1筒体2の中心軸線Oに直交する直線に沿う方向を径方向といい、第1筒体2の中心軸線Oを周回する方向を周方向といい、第1筒体2の中心軸線Oを含む断面を縦断面という。
【0019】
また第1実施形態の燃焼ノズル1aは、第3筒体8と第4筒体9の間に形成される第3噴射口10と、第4筒体9と第1筒体2の間に形成される第4噴射口11とを有する。第3噴射口10は、第3筒体8の外周面と第4筒体9の内周面とによって形成される流路を軸方向の先端側に流れるガスを軸方向の先端側に軸方向に平行に噴射する(図3における二点鎖線矢印参照)。第4噴射口11は、第4筒体9の外周面と第1筒体2の内周面とによって形成される流路を軸方向の先端側に流れるガスを軸方向の先端側に軸方向に平行に噴射する(図3における二点鎖線矢印参照)。
【0020】
第3噴射口10は、第3筒体8の先端と第4筒体9の先端との間に形成され軸方向に見て円環状をなす円環状開口によって形成される。第4噴射口11は、第4筒体9の先端と第1筒体2の先端との間に形成され軸方向に見て円環状をなす円環状開口によって形成される。なお第3噴射口10と第4噴射口11はそれぞれ、上記のような円環状開口によって形成される構成に限らない。なお円環状とは、実質的に円環状であればよく、同心配置の大きさの異なる2つの円で形成される幾何学的形状に完全に一致する形状に限らない。
【0021】
第1筒体2、第2筒体3、第3筒体8及び第4筒体9は同軸状に配置され、それぞれ円筒状をなす。なお円筒状とは、実質的に円筒状であればよく、幾何学的な円筒形状に完全に一致する形状に限らない。また同軸状に配置とは、実質的に同軸に配置すればよく、軸心が幾何学的に完全に一致する配置に限らない。
【0022】
第2筒体3は、燃焼ノズル1aを構成する最も径方向の外側の筒体である。なお、燃焼ノズル1aは第2筒体3よりも径方向の外側に更なる筒体を有する構成としてもよい。第3筒体8は、燃焼ノズル1aを構成する最も径方向の内側の筒体である。なお、燃焼ノズル1aは第3筒体8よりも径方向の内側に更なる筒体を有する構成としてもよい。
【0023】
第1実施形態では、第3噴射口10が窒素ガス噴射口として用いられ、第4噴射口11が第2燃料ガス噴射口(更なる燃料ガス噴射口)として用いられる。つまり第1実施形態では、処理対象ガス噴射口よりも径方向の外側で且つ第1燃料ガス噴射口よりも径方向の内側に窒素ガス噴射口が設けられ、窒素ガス噴射口よりも径方向外側で且つ第1燃料ガス噴射口よりも径方向の内側に第2燃料ガス噴射口が設けられる。
【0024】
第2燃料ガス噴射口は、第1燃料ガス噴射口よりも高濃度の燃料ガスを噴射する。例えば、第1燃料ガス噴射口から噴射される燃料ガスを、濃度100%の燃料ガスに、圧縮空気、圧縮酸素富化空気又は圧縮酸素等の支燃性ガスを予め混合した予混合ガスとし、第2燃料ガス噴射口から噴射される燃料ガスを、濃度100%の燃料ガスそのものとすることができる。第1燃料ガス噴射口と第2燃料ガス噴射口の何れからも予混合ガスを噴射する構成とし、第2燃料ガス噴射口から噴射する予混合ガス中の燃料ガスの濃度を、第1燃料ガス噴射口から噴射する予混合ガスよりも高く設定してもよい。
【0025】
燃料ガスは、炭化水素、水素、アンモニア等、水素原子を含むガスである。しかし、燃料ガスは水素原子を含むガスに限らず、処理対象ガスの種類などに応じて種々の燃料ガスから選択できる。
【0026】
処理対象ガスは、半導体製造装置、液晶パネル製造装置、太陽光発電パネル製造装置などから排出される排ガスであり、可燃性成分、毒性成分、腐食性成分又は地球温暖化の要因となる成分など、未処理のまま大気開放することが望ましくない成分を含む。また処理対象ガスは、窒素ガスで希釈された希釈済みガスとしてドライポンプを経由して燃焼ノズル1aに供給され、燃焼ノズル1aの処理対象ガス噴射口(第2噴射口6)から噴射される。
【0027】
なお処理対象ガスは、窒素ガス以外のガスで希釈した希釈済みガスとして燃焼ノズル1aに供給してもよいし、希釈することなくそのまま燃焼ノズル1aに供給してもよい。処理対象ガスを燃焼ノズル1aに供給するためにドライポンプ以外のポンプ或いはポンプ以外の手段を用いてもよい。
【0028】
処理対象ガス噴射口(第2噴射口6)は、第3筒体8の内周面によって形成される流路を軸方向の先端側に流れる処理対象ガスを、軸方向の先端側に軸方向に平行に噴射する(図3における二点鎖線矢印参照)。第2噴射口6は、第3筒体8の先端によって形成され軸方向に見て円形状をなす円形状開口によって形成される。なお第2噴射口6は、上記のような円形状開口によって形成される構成に限らない。
【0029】
環状壁4は、第1筒体2の先端部における先端よりも軸方向の基端側の部分と、第2筒体3の先端部とを連ね、軸方向に見て円環状をなす。環状壁4の外側端面4a(軸方向の先端側の端面)は、第1筒体2の中心軸線Oを中心とし、径方向の外側に向けて軸方向の先端側に傾斜する円錐面状をなす。なお、環状壁4の外側端面4aはこれに限らず、例えば、第1筒体2の中心軸線Oを中心とし、径方向の外側に向けて軸方向の先端側に湾曲する凹曲面状をなす構成としてもよい。環状壁4の内側端面4b(軸方向の基端側の端面)は、第1筒体2の中心軸線Oに垂直な平面状をなす。なお、環状壁4の内側端面4bはこれに限らず、例えば、第1筒体2の中心軸線Oを中心とし、径方向の外側に向けて軸方向の先端側に傾斜又は湾曲する円錐面状又は凹曲面状をなす構成や、第1筒体2の中心軸線Oを中心とし、径方向の外側に向けて軸方向の基端側に傾斜又は湾曲する円錐面状又は凹曲面状をなす構成としてもよい。
【0030】
環状壁4に設けられる上記複数の貫通孔7は、周方向に等間隔で並べて設けるのが好ましいが、これに限らない。少なくとも1つの特定の(好ましくは全ての)貫通孔7は、それぞれ、軸方向に見たときに貫通孔7が径方向に沿って直線状に延びるスリット状をなすことが好ましいが、これに限らない。また上記特定の(好ましくは全ての)貫通孔7は、それぞれ、縦断面において、貫通孔7の径方向の外側端縁7aと内側端縁7bが互いに平行な直線状をなすことが好ましいが、これに限らない。
【0031】
上記特定の(好ましくは全ての)貫通孔7はそれぞれ、縦断面において、貫通孔7によって径方向の外側端縁7aと内側端縁7bによって形成される流路が軸方向の先端側に向けて径方向の内側に傾斜する方向に延び、当該流路の延長上に第1筒体2の先端部の外周面が存在し、且つ、軸方向の環状壁4の厚みTが径方向の内側に向けて低減するように設けられる。なお、「縦断面において、貫通孔7によって径方向の外側端縁7aと内側端縁7bによって形成される流路の延長上に第1筒体2の先端部の外周面が存在する」という表現は、縦断面において、貫通孔7における軸方向の先端側の端部開口を流路が延びる向き(図3で貫通孔7を通る二点鎖線矢印の向き)に投影した部分が第1筒体2の先端部の外周面に重なる(重なり部分を図3に“A”部として示す)ことを意味する。
【0032】
上記特定の(好ましくは全ての)貫通孔7はそれぞれ、流路の方向に燃料ガスを噴射し(図3における二点鎖線矢印参照)、貫通孔7から流路の方向に延びる燃焼炎(不図示)を形成する。当該燃焼炎は、当該流路の延長上に第1筒体2の先端部の外周面が存在することにより、燃焼炎を接触させて当該外周面を効率的に加熱することができる。また、当該流路では軸方向の環状壁4の厚みTが径方向の内側に向けて低減するので、厚みTが一定の場合に比べて、当該流路における径方向の内側端縁7bに沿う流れの勢いを抑制し、その結果、上記のように燃焼炎を第1筒体2の先端部の外周面に接触させる際の勢いを好ましくは必要最小限に抑制することができる。したがって、燃焼炎を第1筒体2の先端部に接触させることによる燃焼炎の流れ及び燃焼反応部12への悪影響、具体的には燃焼炎の安定性の低下及び燃焼反応部12への加熱効率の低下を抑制し、その結果、処理対象ガスの処理効率への悪影響を抑制することができる。当該効果を得る観点から、貫通孔7の径方向の内側端縁7bはできるだけ径方向の内側に設けることが好ましく、より具体的には、貫通孔7の径方向の内側端縁7bにおける軸方向の先端側の端部は、第1筒体2の先端部の外周面上に位置することが好ましい。
【0033】
燃焼式排ガス処理装置1は、燃焼ノズル1aと、燃焼ノズル1aから噴射される処理対象ガスと燃料ガスによって燃焼反応部12を内側に形成する燃焼筒13とを有する。燃焼反応部12は、第1噴射口5(貫通孔7)から噴射される燃料ガス(燃焼炎)と第2噴射口6から噴射される処理対象ガスとの合流部に形成され、ノズル先端部よりも軸方向の先端側で第1筒体2の中心軸線O上に位置する。燃焼筒13は、燃焼ノズル1aよりも径方向の外側に配置される外周壁部13aを有する。外周壁部13aは第1筒体2に対して同軸状に配置される円筒状をなす。
【0034】
第1実施形態では、燃焼筒13は、ガスを燃焼反応部12に向けて噴射する(図2における二点鎖線矢印参照)第5噴射口14を有する。第5噴射口14は、燃焼筒13の外周壁部13aに周方向に並べて設けられる複数の開口によって形成される。なお、第5噴射口14を単一の開口によって形成する構成としてもよい。第1実施形態では、第5噴射口14は、第2燃料ガス噴射口から噴射される燃料ガスの燃焼を促進するために、支燃性ガスを燃焼反応部12に向けて噴射する支燃性ガス噴射口として用いられる。
【0035】
第1実施形態によれば、ノズル先端部で金属含有粉体を生じる原因となる六フッ化タングステン(WF)などの成分を処理対象ガスが含む場合でも、第1噴射口5からの燃焼炎を第1筒体2の先端部の外周面に接触させることで当該部分を金属含有粉体の昇華温度以上に加熱し易くすることができ、その結果、第1筒体2の先端部の外周面への金属含有粉体の堆積を抑制し易くすることができる。金属含有粉体は、例えば、金属の粉体、又は金属酸化物の粉体などである。
【0036】
また第1実施形態によれば、第3噴射口10(窒素ガス噴射口)から噴射される窒素ガスにより、燃焼反応部12の形成位置をノズル先端部から遠ざけることができる他、第3筒体8と第4筒体9を冷却することにより、第1筒体2の先端部の外周面を高温化させるような条件下においても第2噴射口6、第3噴射口10内部及び第4噴射口11内壁(第4筒体9外周面)の温度上昇を抑制することができ、その結果、処理対象ガスの成分によって形成される種々の粉体のノズル先端部並びに第2噴射口6、第3噴射口10及び第4噴射口11への堆積を抑制することができる。
【0037】
また第1実施形態によれば、第4噴射口11(第2燃料ガス噴射口)から噴射される燃料ガスと第5噴射口14(支燃性ガス噴射口)から噴射される支燃性ガスにより、燃焼反応部12を加熱し、その結果、処理対象ガスの処理効率を向上することができる。
【0038】
第1実施形態の燃焼ノズル1a又は燃焼式排ガス処理装置1は、第4噴射口11(第4筒体9)を有さない構成としてもよく、また、第4噴射口11からの燃料ガスの噴射を行わない構成としてもよい。
【0039】
第1実施形態の燃焼式排ガス処理装置1は、第5噴射口14を有さない構成としてもよく、また、第5噴射口14からの支燃性ガスの噴射を行わない構成としてもよい。
【0040】
次に、第1実施形態と共通の図1図3を用いて第2実施形態について説明する。第2実施形態では、第3噴射口10が第1窒素ガス噴射口として用いられ、第4噴射口11が第2窒素ガス噴射口として用いられる。つまり第2実施形態では、処理対象ガス噴射口よりも径方向の外側で且つ第1燃料ガス噴射口よりも径方向の内側に2つの窒素ガス噴射口が設けられる。また第2実施形態では、第5噴射口14は、燃料ガスに支燃性ガスを予め混合した予混合ガスを燃焼反応部12に向けて噴射する予混合ガス噴射口として用いられる。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0041】
第2実施形態によれば、第1実施形態のときと同様に、ノズル先端部で金属含有粉体を生じる原因となる成分を処理対象ガスが含む場合でも、第1噴射口5からの燃焼炎を第1筒体2の先端部の外周面に接触させることで当該部分を金属含有粉体の昇華温度以上に加熱し易くすることができ、その結果、第1筒体2の先端部の外周面への金属含有粉体の堆積を抑制し易くすることができる。
【0042】
第1実施形態では、第4噴射口11(第2燃料ガス噴射口)から噴射される燃料ガスと第2噴射口6(処理対象ガス噴射口)から噴射される処理対象ガスが直接反応し、金属含有粉体を生成する場合がある。これに対し、第2実施形態では第4噴射口11から燃料ガスを噴射しないため、そのような金属含有粉体の生成が生じない。したがって、第2実施形態によれば、第1実施形態の場合よりも、ノズル先端部への金属含有粉体の堆積を抑制し易くすることができる。
【0043】
また第2実施形態によれば、第3噴射口10(第1窒素ガス噴射口)と第4噴射口11(第2窒素ガス噴射口)から噴射される窒素ガスにより、燃焼反応部12の形成位置をノズル先端部から遠ざけることができる他、第3筒体8と第4筒体9を冷却することにより、第1筒体2の先端部の外周面を高温化させるような条件下においても第2噴射口6、第3噴射口10内部及び第4噴射口11内壁(第4筒体9外周面)の温度上昇を抑制することができ、その結果、処理対象ガスの成分によって形成される種々の粉体のノズル先端部並びに第2噴射口6、第3噴射口10及び第4噴射口11への堆積を抑制することができる。
【0044】
また第2実施形態によれば、第5噴射口14(予混合ガス噴射口)から噴射される予混合ガスにより、燃焼反応部12を加熱し、その結果、処理対象ガスの処理効率を向上することができる。
【0045】
第2実施形態の燃焼ノズル1a又は燃焼式排ガス処理装置1は、第4噴射口11(第4筒体9)を有さない構成としてもよく、また、第4噴射口11からの窒素ガスの噴射を行わない構成としてもよい。
【0046】
第2実施形態の燃焼式排ガス処理装置1は、第5噴射口14を有さない構成としてもよく、また、第5噴射口14からの予混合ガスの噴射を行わない構成としてもよい。
【0047】
本発明は前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0048】
したがって、前述した実施形態の燃焼ノズル1aは、第1筒体2と、第2筒体3と、第1筒体2と第2筒体3を連ねる環状壁4と、環状壁4を貫通し、燃料ガス噴射口を形成する貫通孔7と、第1筒体2よりも内側に形成される処理対象ガス噴射口とを有し、貫通孔7は、第1筒体2の中心軸線Oを含む縦断面において、貫通孔7によって径方向の外側端縁7aと内側端縁7bによって形成される流路が軸方向の先端側に向けて径方向の内側に傾斜する方向に延び、当該流路の延長上に第1筒体2の先端部の外周面が存在し、且つ、軸方向の環状壁4の厚みTが径方向の内側に向けて低減するように設けられる、燃焼ノズル1aである限り変更可能である。
【0049】
例えば、燃焼ノズル1aは、燃焼式排ガス処理装置1用に限らない。燃焼ノズル1aで処理される処理対象ガスは、半導体製造装置などの装置からの排ガスに限らない。第1筒体2、第2筒体3、第3筒体8及び第4筒体9はそれぞれ、円筒状をなす構成に限らず、例えば楕円筒状など、円筒状以外の筒状をなす構成としてもよい。
【0050】
また燃焼式排ガス処理装置1は、燃焼ノズル1aと、燃焼ノズル1aから噴射される処理対象ガスと燃料ガスによって燃焼反応部12を内側に形成する燃焼筒13とを有する燃焼式排ガス処理装置1である限り変更可能である。例えば、燃焼筒13の外周壁部13aは円筒状をなす構成に限らず、例えば楕円筒状など、円筒状以外の筒状をなす構成としてもよい。
【実施例
【0051】
実施例1として第1実施形態の燃焼式排ガス処理装置を用い、実施例2として第2実施形態の燃焼式排ガス処理装置を用い、比較例1として、図5に示すように第1実施形態の燃焼式排ガス処理装置に対して環状壁の厚みと貫通孔の径方向の内側端縁の径方向位置のみが異なるものを用い、処理対象ガスとして六フッ化タングステンを窒素ガスで希釈したガスを処理する燃焼試験を行い、ノズル先端部への金属含有粉体の堆積量を確認した。比較例1では、環状壁の軸方向の厚みは、径方向に一定とした。また各々の貫通孔の径方向の内側端縁の径方向位置は、比較例1の方が、実施例1よりも径方向外側になるように設定した。実施例1では、各々の貫通孔の径方向の内側端縁における軸方向の先端側の端部が、第1筒体の先端部の外周面上に位置するように設定した。
【0052】
処理対象ガス中の六フッ化タングステンの流量は1L/minとし、処理対象ガス中の窒素ガスの流量は50L/minとした。また各々の例における各々のガス噴射口から噴射したガス(又は混合ガスの成分)の流量は次のとおりとした。実施例1においては、第1噴射口では燃料ガス6L/minと空気65L/min、第3噴射口では窒素ガス5L/min、第4噴射口では100%燃料ガス1L/min、第5噴射口では空気5L/minとした。実施例2においては、第1噴射口では燃料ガス6L/minと空気65L/min、第3噴射口では窒素ガス2.5L/min、第4噴射口では窒素ガス2.5L/min、第5噴射口では100%燃料ガス1L/minと空気5L/minとした。比較例1においては、第1噴射口では燃料ガス6L/minと空気65L/min、第3噴射口では窒素ガス5L/min、第4噴射口では100%燃料ガス1L/min、第5噴射口では空気5L/minとした。
【0053】
上記の条件により生じたノズル先端部への金属含有粉体の堆積量を図4に示す。なお図4は、環状壁の外側端面と、環状壁よりも軸方向の先端側に位置する第1筒体の先端部の外周面と、第1筒体、第2筒体、第3筒体及び第4筒体の先端面と、第3筒体の先端部の内周面とを合わせた領域に堆積した金属含有粉体の堆積量を、比較例1での堆積量を1とした場合の比率で示す。図4に示す結果から、実施例1で顕著な効果が確認され、実施例2では極めて顕著な効果が確認された。
【符号の説明】
【0054】
1 燃焼式排ガス処理装置
1a 燃焼ノズル
2 第1筒体
3 第2筒体
4 環状壁
4a 外側端面
4b 内側端面
5 第1噴射口
6 第2噴射口
7 貫通孔
7a 外側端縁
7b 内側端縁
8 第3筒体
9 第4筒体
10 第3噴射口
11 第4噴射口
12 燃焼反応部
13 燃焼筒
13a 外周壁部
14 第5噴射口
O 中心軸線
T 厚み
図1
図2
図3
図4
図5