IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立製作所の特許一覧 ▶ 国立大学法人大阪大学の特許一覧

特許7603284ネットワーク分析方法、ネットワーク分析システム及びサーバ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】ネットワーク分析方法、ネットワーク分析システム及びサーバ
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/063 20230101AFI20241213BHJP
【FI】
G06Q10/063
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022009327
(22)【出願日】2022-01-25
(65)【公開番号】P2023108286
(43)【公開日】2023-08-04
【審査請求日】2024-01-29
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 センター・オブ・イノベーションプログラム「乳幼児からの健やかな脳の育成による積極的自立社会創成拠点」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】合田 徳夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 毅
(72)【発明者】
【氏名】八木 健
【審査官】佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-081406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサとメモリを含む計算機が集団における個体間のネットワークを分析するネットワーク分析方法であって、
前記計算機が、集団で運動を行う個体の動きに関する時系列の情報をセンサデータとして収集するセンシングデータ収集ステップと、
前記計算機が、前記センサデータから前記個体毎の運動に関する特徴量を算出する特徴量算出ステップと、
前記計算機が、前記集団内の個体の組み合わせについて前記特徴量に基づいて個体間の関係性を分析し、前記個体間の関係性の分析結果から個体間のネットワークを時系列で生成するネットワーク分析ステップと、
前記計算機が、前記ネットワーク内で関係性を有する個体のうち、相互に関係性を有する複数の個体で構成された一群をクリークとして抽出し、前記クリークについて時系列で分析するクリーク評価ステップと、
を含むことを特徴とするネットワーク分析方法。
【請求項2】
請求項1に記載のネットワーク分析方法であって、
前記個体は、
第1の集団及び第2の集団のいずれか一方に所属し、
前記クリーク評価ステップは、
前記個体が所属する集団と前記個体の組み合わせに応じて予め設定されたクリークの種別で前記クリークを分類することを特徴とするネットワーク分析方法。
【請求項3】
請求項2に記載のネットワーク分析方法であって、
前記クリーク評価ステップは、
前記分類されたクリークの種別を個体毎に時系列で集計して個体毎時系列データとして出力することを特徴とするネットワーク分析方法。
【請求項4】
請求項2に記載のネットワーク分析方法であって、
前記クリーク評価ステップは、
前記分類されたクリークの種別を時系列で集計して種別毎時系列データとして出力することを特徴とするネットワーク分析方法。
【請求項5】
プロセッサとメモリを含むサーバと、
個体の動きに関する時系列の情報を取得するセンシング装置と、を含むネットワーク分析システムであって、
前記センシング装置は、集団で運動を行う個体の動きに関する時系列の情報を前記サーバに送信し、
前記サーバは、
前記センシング装置から受信した前記個体の動きに関する時系列の情報をセンサデータとして収集する情報収集部と、
前記センサデータから前記個体毎の運動に関する特徴量を算出する特徴量抽出部と、
前記集団内の個体の組み合わせについて前記特徴量に基づいて個体間の関係性を分析し、前記個体間の関係性の分析結果から個体間のネットワークを時系列で生成するネットワーク分析部と、
前記ネットワーク内で関係性を有する個体のうち、相互に関係性を有する複数の個体で構成された一群をクリークとして抽出し、前記クリークについて時系列で分析するクリーク評価部と、
を有することを特徴とするネットワーク分析システム。
【請求項6】
請求項5に記載のネットワーク分析システムであって、
前記個体は、
第1の集団及び第2の集団のいずれか一方に所属し、
前記クリーク評価部は、
前記個体が所属する集団と前記個体の組み合わせに応じて予め設定されたクリークの種別で前記クリークを分類することを特徴とするネットワーク分析システム。
【請求項7】
請求項6に記載のネットワーク分析システムであって、
前記クリーク評価部は、
前記分類されたクリークの種別を個体毎に時系列で集計して個体毎時系列データとして出力することを特徴とするネットワーク分析システム。
【請求項8】
請求項6に記載のネットワーク分析システムであって、
前記クリーク評価部は、
前記分類されたクリークの種別を時系列で集計して種別毎時系列データとして出力することを特徴とするネットワーク分析システム。
【請求項9】
プロセッサとメモリを含むサーバであって、
集団で運動を行う個体の動きに関する時系列の情報を受信してセンサデータとして収集する情報収集部と、
前記センサデータから前記個体毎の運動に関する特徴量を算出する特徴量抽出部と、
前記集団内の個体の組み合わせについて前記特徴量に基づいて個体間の関係性を分析し、前記個体間の関係性の分析結果から個体間のネットワークを時系列で生成するネットワーク分析部と、
前記ネットワーク内で関係性を有する個体のうち、相互に関係性を有する複数の個体で構成された一群をクリークとして抽出し、前記クリークについて時系列で分析するクリーク評価部と、
を有することを特徴とするサーバ。
【請求項10】
請求項9に記載のサーバであって、
前記個体は、
第1の集団及び第2の集団のいずれか一方に所属し、
前記クリーク評価部は、
前記個体が所属する集団と前記個体の組み合わせに応じて予め設定されたクリークの種別で前記クリークを分類することを特徴とするサーバ。
【請求項11】
請求項10に記載のサーバであって、
前記クリーク評価部は、
前記分類されたクリークの種別を個体毎に時系列で集計して個体毎時系列データとして出力することを特徴とするサーバ。
【請求項12】
請求項10に記載のサーバであって、
前記クリーク評価部は、
前記分類されたクリークの種別を時系列で集計して種別毎時系列データとして出力することを特徴とするサーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集団におけるネットワーク分析技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、センシングデバイスや映像解析技術の進歩に伴い、スポーツ分野においても、センシング技術の利活用が着目されている。特に、プロスポーツチームやオリンピックナショナルチームにおいては、競技力の向上や試合での勝利を目的として、IoTによるアスリート個人や集団のパフォーマンスの定量評価が求められている。
【0003】
個人のパフォーマンス評価では、競技中の運動量や位置、モーション、バイタル等を記録して分析可能な、映像解析技術やウェアラブルセンサ等のセンシング技術の利活用が進んでいる。
【0004】
集団のパフォーマンス評価では、競技中の個体同士の関連性を表すネットワークを分析することが重要である。例えば、特許文献1では、集団において対面していない個体同士であっても関係して動く場合においても、集団のネットワークを分析して可視化する技術を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-81406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の技術を適用したスポーツのデータ分析では、要素還元論的な統計分析が主流である。サッカーやラグビー又はバスケットなど、試合状況の変化が激しく、試合状況の再現性の低い競技では、従来の分析結果を有効に使うことが難しいという問題があった。
【0007】
従来の技術では、ボールに関連する選手や、ゲームの中心となる選手についてのデータ分析が中心であって、有効なプレーをしている選手を可視化するのは難しいという問題があった。
【0008】
例えば、サッカーでは、右サイドの選手がボールをドリブルで上がっているときに、左サイドの空きスペースに走り込む選手は、たとえパスが来なかったとしても有効なプレーをしていると評価することができる。また、オフェンスの選手はボールが無い状況でもディフェンスを引きつけておくことも有効なプレーとして評価することができる。
【0009】
また、従来の技術では、過去のデータについて分析を行うことが主流であり、リアルタイムで選手やチームの評価を行うことは難しいという問題があった。
【0010】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、集団における個体間のネットワークを分析して、競技内容に対して有効な動きを行う個体を可視化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、プロセッサとメモリを含む計算機が集団における個体間のネットワークを分析するネットワーク分析方法であって、前記計算機が、集団で運動を行う個体の動きに関する時系列の情報をセンサデータとして収集するセンシングデータ収集ステップと、前記計算機が、前記センサデータから前記個体毎の運動に関する特徴量を算出する特徴量算出ステップと、前記計算機が、前記集団内の個体の組み合わせについて前記特徴量に基づいて個体間の関係性を分析し、前記個体間の関係性の分析結果から個体間のネットワークを時系列で生成するネットワーク分析ステップと、前記計算機が、前記ネットワーク内で関係性を有する個体のうち、相互に関係性を有する複数の個体で構成された一群をクリークとして抽出し、前記クリークについて時系列で分析するクリーク評価ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0012】
したがって、本発明は、集団における個体間のネットワークを分析して複数のクリークを抽出することで有効な動きを行う個体を可視化することが可能となる。
【0013】
本明細書において開示される主題の、少なくとも一つの実施の詳細は、添付されている図面と以下の記述の中で述べられる。開示される主題のその他の特徴、態様、効果は、以下の開示、図面、請求項により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例1を示し、運動分野に適用したネットワーク分析システムの一例を示す図である。
図2】本発明の実施例1を示し、ネットワーク分析システムの構成の一例を示すブロック図である。
図3】本発明の実施例1を示し、サーバが行う処理の概要を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施例1を示し、センサデータの一例を示す図である。
図5】本発明の実施例1を示し、環境情報入力部によって表示される画面の一例を示す図である。
図6】本発明の実施例1を示し、環境情報の一例を示す図である。
図7】本発明の実施例1を示し、特徴量算出部で行われる処理の一例を示すフローチャートである。
図8】本発明の実施例1を示し、特徴量情報の一例を示す図である。
図9】本発明の実施例1を示し、ネットワーク分析部で行われる処理の一例を示すフローチャートである。
図10】本発明の実施例1を示し、同期ネットワーク時系列データの一例を示す図である。
図11】本発明の実施例1を示し、ネットワーク評価部で行われる処理の一例を示すフローチャートである。
図12】本発明の実施例1を示し、ネットワーク評価部で行われる次数中心性の算出処理の詳細を示すフローチャートである。
図13】本発明の実施例1を示しネットワーク評価部で行われる近接中心性の算出処理の詳細を示すフローチャートである。
図14】本発明の実施例1を示し、ネットワーク評価部による媒介中心性の算出処理の詳細を示すフローチャートである。
図15】本発明の実施例1を示し、ネットワーク評価部による集団の中心となる個体を算出する処理の一例を示すフローチャートである。
図16】本発明の実施例1を示し、ネットワーク評価部による集団活性度を算出する処理の一例を示すフローチャートである。
図17】本発明の実施例1を示し、個体評価テーブルの一例を示す図である。
図18】本発明の実施例1を示し、集団評価テーブルの一例を示す図である。
図19】本発明の実施例1を示し、同期ネットワーク時系列データの一例を示す図である。
図20】本発明の実施例1を示し、センサデータと同期ネットワークの時系列データの関係の一例を示す図である。
図21】本発明の実施例1を示し、同期ネットワークからクリークを抽出する例を示す図である。
図22】本発明の実施例1を示し、クリーク評価部が行う処理の一例を示すフローチャートである。
図23】本発明の実施例1を示し、2クリークの種別を示す図である。
図24】本発明の実施例1を示し、2クリーク情報の一例を示す図である。
図25】本発明の実施例1を示し、2クリークの種別毎時系列データの一例を示すグラフである。
図26】本発明の実施例1を示し、2クリークの個体毎時系列データの一例を示すグラフである。
図27】本発明の実施例1を示し、3クリークの種別を示す図である。
図28】本発明の実施例1を示し、3クリーク情報の一例を示す図である。
図29】本発明の実施例1を示し、3クリークの種別毎時系列データの一例を示すグラフである。
図30】本発明の実施例1を示し、3クリークの種別毎時系列データの他の例を示すグラフである。
図31】本発明の実施例1を示し、3クリークの個体毎時系列データの一例を示すグラフである。
図32】本発明の実施例2を示し、ネットワーク分析システムの構成の一例を示すブロック図である。
図33】本発明の実施例2を示し、サーバが行う処理の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の好適な実施例1として、集団スポーツのプレイヤー間におけるネットワーク分析システムの一例を、以下図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、実施例1のネットワーク分析システムを集団で行うスポーツに適用した例を示す図である。実施例1のネットワーク分析システムは、集団を構成する個体(プレイヤー)の動きから関係性を分析し、ネットワーク(個人間の連携)を作成し、個体の評価を可視化する計算機システムである。
【0018】
なお、以下においては、人のネットワークを可視化するシステムについて説明するが、動物等、動きのある個体間のネットワークを分析、可視化するシステムであれば、いかなるシステムに適用してもよい。また、以下において、ネットワークを構成する個体を、特にユーザと記載する。
【0019】
ネットワーク可視化システムは、センシング装置1と、ネットワーク4、及び、サーバ5を含む。
【0020】
実施例1でネットワークを表示する運動の一例は、サッカーである。しかし、ネットワークを可視化する運動活動の種類は、2つ以上の個体が参加する競技であればいずれの競技であってもよく、実施例1のネットワーク分析システムは、ラグビー、バスケットボール、バレーボール、ゴールボール、野球、テニス、ハンドボール、ラクロス、陸上競技、スピードスケート等の集団競技に適用されてもよい。
【0021】
また、実施例1のネットワーク分析システムは、個体間のネットワークに限らず、センシング装置1でボールやバット、ラケット等の器具や道具等の物体の動きを測定することで、人体と物体間や、物体間のネットワークの表示に使用されてもよい。
【0022】
実施例1において、センシング装置1は、運動活動を行う個体30の体に一つ以上装着される。実施例1における個体30は、3軸加速度センサを搭載した腕時計型ウェアラブルデバイスを、センシング装置1として、直接人体に装着する例を示す。個体30は、フィールド100上で運動活動をする個体であるが、運動活動を行う場所はフィールド100に限らず、いかなる場所であってよい。
【0023】
また、運動活動を行う場所を指定することによって、センシング装置1を装着した個体が複数の場所にいる場合においても、指定した場所にいる個体のみのネットワークを表示することができる。本実施例において、個体30はネットワークに表示される個体であり、かつ、センシング装置1によって測定される個体である。
【0024】
本実施例におけるセンシング装置1は、個体の動き(運動)を測定する様々なセンサのうち少なくとも一つ以上のセンサを搭載する。様々なセンサとは、加速度センサ、ジャイロセンサ、歩数計、心拍数モニター、位置センサ、衝撃センサ、磁力計、温度センサ、湿度センサ、風センサ、音センサ、気圧センサ、測位センサ及び、赤外線センサ、位置情報センサを含むが、これらに限定されない。そして、これらの様々なセンサによって測定された結果を、センシングデータとしてサーバ5に送信してもよい。
【0025】
また、個体30は、例えば、頭、首、肩、背中、腕、手首、手、指、ウエスト、ヒップ、脚、足首、足、かかと、及び、つま先などの個体30の体の部分に物理的に連結するように、センシング装置1を装着してもよい。また、センシング装置1と個体30の体との間に、1枚以上の衣類、履物、又は、運動保護具が存在する場合、個体30は、センシング装置1と衣類、履物、運動活動に使用する運動保護具と一体化する状態で、ストラップ、接着剤、ポケット、及び、クリップなどの様々な取り外し可能又は不可能な連結手段によって、センシング装置1を装着してもよい。また、センシング装置1はボールやバット、ラケット等の器具や道具等の物体に装着もしくは埋め込まれてもよい。
【0026】
また、センシング装置1は、装着型のウェアラブルセンサに限らず、映像解析により個体や物体の動きを測定する機器や、レーザ光の反射にて物体の位置を検出することのできるレーザレーダや、圧力や衝撃を測定可能なフォースプレートや、他にも音波センサや磁気センサ、RGBカメラ、深度センサ、マルチアレイマイクロフォン等の設置型のセンサであってもよく、個体や物体の動きを測定できるものであればいかなる装置であってもよい。
【0027】
センシング装置1によって測定された動きに関するセンシングデータは、ネットワーク4を介してサーバ5に送信され、サーバ5で分析処理などが行われ、入出力装置56のディスプレイに表示される。
【0028】
本実施例のサーバ5は、センシング装置1から受信したセンシングデータをリアルタイムで分析して個体30間の連携又は関係を示す同期ネットワーク時系列データ(後述)を生成し、個体30間の関係をリアルタイムで分類した後述するクリーク評価情報として入出力装置56のディスプレイに表示する。
【0029】
クリーク評価情報を参照することで、現在進行中の競技などにおいて有効な動きを有する個体30をリアルタイムで把握することができる。
【0030】
図2は、ネットワーク分析システムの構成の一例を示すブロック図である。サーバ5は、ネットワーク4を介してセンシング装置1と通信する。サーバ5は、CPU51と、メモリ54と、補助記憶装置(ストレージ装置)55と、通信部52と、入出力装置56を有する計算機である。なお、以下の説明では、個人間の連携を示す場合に符号の無いネットワークを使用し、計算機を接続するネットワーク4と区別する。
【0031】
サーバ5は、補助記憶装置55からメモリ54にロードされたプログラムをCPU51で実行することによって、解析部10、環境情報入力部53の機能を実現する。サーバ5のメモリ54は、不揮発性の記憶素子であるROM又は揮発性の記憶素子であるRAMで構成することができる。
【0032】
ROMはプログラム(例えば、BIOS)などを格納する。RAMは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)のような高速かつ揮発性の記憶素子であり、補助記憶装置55に格納されたプログラム及びプログラムの実行時に使用されるデータを一時的に格納する。
【0033】
データベース20は、補助記憶装置55に格納される。補助記憶装置55は、例えば、磁気記憶装置(HDD)、フラッシュメモリ(SSD)等の大容量かつ不揮発性の記憶装置である。また、補助記憶装置55は、CPU51が実行するプログラム及びプログラムが利用するデータを格納する。すなわち、プログラムは、補助記憶装置55から読み出されて、メモリ54にロードされて、CPU51によって実行される。
【0034】
サーバ5は、センシング装置1から受信したセンシングデータをデータベース20のセンサデータ22に格納する情報収集部(図示省略)を有し、所定の周期で送信されるセンシングデータを収集する。
【0035】
解析部10は、センサデータ22に基づいて時系列の加速度センサ情報や位置情報を算出し、加速度センサ情報や位置情報から検出した個体の動態や軌跡に基づいて個体間のネットワークを算出し、ネットワークとクリークの評価を実施する機能部である。なお、競技等における個体間の連携又は関係をエッジ(辺)で表現したとき、1以上のエッジを含む一群の頂点(又はノード)をクリークとする。すなわち、ネットワーク内で関係性を有する個体のうち、複数の個体で構成された一群をクリークとする。
【0036】
解析部10は、特徴量算出部11と、ネットワーク分析部12と、ネットワーク評価部13と、クリーク評価部15と、表示部14の機能部を主に有する。なお、個体の位置の測定は、個体に装着したセンシング装置1の他にGNSS35等で検出した位置情報を用いるようにしてもよい。また、時系列の位置情報とセンサデータ22の対応付けは、サーバ5に接続された計算機が行うようにしてもよい。
【0037】
表示部14、環境情報入力部53は、データベース20に記録されたデータを、ネットワーク4を介して接続された計算機又はデバイスあるいは入出力装置56へ出力することにより、集団のネットワークを評価するユーザ(分析システムの利用者)に公開する。入出力装置56は、キーボードやマウス及びディスプレイなどから構成される。
【0038】
CPU51は、各機能部のプログラムに従って処理することによって、所定の機能を提供する機能部として稼働する。例えば、CPU51は、解析プログラムに従って処理することで解析部10として機能する。他のプログラムについても同様である。さらに、CPU51は、各プログラムが実行する複数の処理のそれぞれの機能を提供する機能部としても稼働する。計算機及び計算機システムは、これらの機能部を含む装置及びシステムである。
【0039】
通信部52は、所定のプロトコルに従って、他の装置との通信を制御するネットワークインターフェースである。通信部52は、ネットワーク4を介して他の装置と通信し、データを送受信することができる。
【0040】
解析部10及び環境情報入力部53は、プログラムによって実装されてもよく、また、物理的な集積回路によって実装されてもよい。特に解析部10は、解析部10に含まれる機能部を実行するための複数のプログラム又は複数の集積回路によって実装されてもよい。また、特徴量算出部11と、ネットワーク分析部12と、ネットワーク評価部13、表示部14は、各々が実行する処理毎に複数のプログラム又は複数の集積回路によって実装されてもよい。
【0041】
CPU51が実行するプログラムは、リムーバブルメディア(CD-ROM、フラッシュメモリなど)又はネットワークを介してサーバ5に提供され、非一時的記憶媒体である補助記憶装置55に格納される。このため、サーバ5は、リムーバブルメディアからデータを読み込むインターフェースを有するとよい。
【0042】
サーバ5は、物理的に一つの計算機上で、又は、論理的又は物理的に複数の計算機上で構成される計算機システムであり、前述したプログラムが、同一の計算機上で別のスレッドで実行されてもよく、複数の物理的計算機上に構築された仮想計算機上で実行されてもよい。
【0043】
データベース20は、センサデータ22と、特徴量情報21と、環境情報23と、同期ネットワーク時系列データ24と、ネットワーク評価情報25と、クリーク評価情報40を格納する。
【0044】
各個体のセンシング装置1で測定されたセンシングデータは、センサデータ22として格納される。本実施例におけるセンサデータ22は、各個体に関する運動の測定結果を示す。
【0045】
特徴量情報21は、センサデータ22について特徴量算出部11を実行することにより算出された、各個体の運動に関する特徴量を示す。詳細は後述する。
【0046】
環境情報23は、環境情報入力部53を通じて入力される。環境情報23は、運動活動に関する情報を示し、運動活動に基づいてセンサデータ22と、特徴量情報21と、同期ネットワーク時系列データ24を特定するための情報を含む。
【0047】
環境情報23は、例えば、運動活動の内容と、運動活動が行われた時間及び場所、並びに、運動活動への参加者(個体)等を示す。詳細は後述する。なお、全てのセンサデータ22を対象にネットワークを分析して表示する場合は、必ずしも環境情報23、環境情報入力部53は必要ではない。
【0048】
同期ネットワーク時系列データ24は、特徴量情報21に対して、ネットワーク分析部12を実行することにより算出された個体間のネットワークに関する情報を示す。詳細は後述する。
【0049】
ネットワーク評価情報25は、同期ネットワーク時系列データ24に対し、ネットワーク評価部13を実行することにより算出された集団のネットワークに関する評価情報で、個体評価テーブル250と、集団評価テーブル258を含む。詳細は後述する。
【0050】
クリーク評価情報40は、同期ネットワーク時系列データ24から算出された個体間の連携又は関係をクリークの種別毎に分類し、後述するようにクリークの種別毎の出現頻度を時系列で表現したデータである。
【0051】
センシング装置1は、ネットワークを分析する対象の個体の運動を測定する装置である。本実施例では、対象の個体が装着するウェアラブルデバイスを例に挙げる。なお、センシング装置1は、ユーザによる動きの結果、値が変化する内容であれば、いかなる内容をセンシングデータとして測定してもよい。
【0052】
センシング装置1は、加速度センサ31と、GNSS(Global Navigation Satellite System)35と、メモリ32と、マイコン(図中MCU)33、及び、通信部34を含む。
【0053】
加速度センサ31は、例えば、1秒間に20~1000回程度の回数でユーザの加速度を測定する。GNSS35は、例えば、GPS(Global Positioning System)やQZSS(Quasi-Zenith Satellite System)等の位置情報システムで構成することができ、個体の位置情報を測定する。本実施例では、競技の開始時の個体30の位置情報としてGNSS35からの位置情報を用い、競技中の個体30の動きは加速度センサ31のセンシングデータを用いる例を示す。
【0054】
マイコン33は、加速度センサ31とGNSS35によって測定された測定結果を、センシングデータとしてメモリ32に記録する。ここで、マイコン33は、ユーザ毎に一意な識別子(ユーザID)と測定結果とを、センシングデータとして記録する。
【0055】
マイコン33は、メモリ32に記録したセンシングデータや位置情報を、通信部34を介してサーバ5に送信する。通信部34は、無線又は有線を用いて、通信可能なタイミングで、又は、利用者や管理者が設定した所定のタイミングで、センシングデータをサーバ5に送信する。
【0056】
図3は、サーバ5の解析部10で行われる処理の一例を示すフローチャートである。
【0057】
まず、特徴量算出部11は、環境情報23に基づいて処理を行う対象のセンシングデータをセンサデータ22から取得し、対象のセンサデータ22から個体30毎に運動に関する特徴量情報21を算出する(S101)。
【0058】
特徴量情報21は、例えば、又は体動量等の個体30の動きの強さ(又は、動きのエネルギーの大きさ)に従って値が変化する特徴量を示し、さらに、特徴量の変化を時系列で示す。
【0059】
本実施例においては、特徴量として身体活動強度を算出するが、運動量や体動量、移動速度、活動頻度、ピッチ、歩数等の運動に関する特徴量であれば、いかなるものでもよい。また、特徴量として運動に伴って変化する消費カロリや心拍数、脈拍数、発汗量等の特徴量を算出してもよい。
【0060】
次に、ネットワーク分析部12は、算出した特徴量情報21を用いて、個体30間のネットワーク分析を実施して同期ネットワーク時系列データ24を生成する(S102)。そして、ネットワーク評価部13では、ステップS102の結果から、集団の中心となる個体や、集団活性度を算出してネットワークを評価してネットワーク評価情報25を生成する(S103)。なお、集団活性度の算出については、後述する。
【0061】
クリーク評価部15は、同期ネットワーク時系列データ24を取得して、予め設定された数のクリークを抽出し、抽出したクリークの種類を後述するように分類してクリーク評価情報40を生成する(S104)。
【0062】
最後に、表示部14において、クリーク評価情報40や処理対象の集団の同期ネットワーク時系列データ24やネットワーク評価情報25を出力する(S105)。なお、表示部14は、所定の時間間隔でクリーク評価情報40や同期ネットワーク時系列データ24やネットワーク評価情報25を可視化して出力する。
【0063】
表示部14の出力は入出力装置56のディスプレイや、ネットワーク4を介してサーバ5に接続された計算機(以下、外部の計算機)の出力装置で表示することができる。なお、表示部14が可視化して出力する情報としては、クリーク評価情報40に同期ネットワーク時系列データ24又はネットワーク評価情報25を含むようにしてもよい。
【0064】
また、表示部14が実施する可視化処理は、クリーク評価情報40をグラフ化したり、同期ネットワーク時系列データ24をマップとして出力することができる。なお、クリーク評価情報40と同期ネットワーク時系列データ24の可視化については後述する。
【0065】
図3に示す処理を実行することによって、解析部10は、センサデータ22と環境情報23とを用いて、分析対象の個体30間におけるネットワークを分析し、同期ネットワーク時系列データ24を生成してクリークの分析処理を行うことで、クリーク評価情報40を生成することができる。
【0066】
解析部10では、生成した同期ネットワーク時系列データ24から関係性の大きい個体の組み合わせを特定して、例えば、グラフ等の形態で出力することができる。これにより、集団内の個体間のネットワークを図示によって可視化することができる。
【0067】
そして、解析部10はネットワークを時系列で集計した同期ネットワーク時系列データ24から、所定のクリークを抽出してクリークの種別毎に分類したクリーク評価情報40を生成して、グラフ等で可視化して出力することができる。クリーク評価情報40により、集団における個体間のネットワークについて、競技の内容に対して有効な動きを行う個体を可視化することが可能となる。
【0068】
図4は、実施例1のセンサデータ22を示す図である。
【0069】
センサデータ22は、センシング装置1を装着した個体30の情報を記録するユーザ情報テーブル201と、各個体30の活動量情報を記録する動き情報テーブル202とを含む。
【0070】
ユーザ情報テーブル201は、ユーザID2011と、ユーザ名2012及びユーザ種別2013を含む。ユーザID2011は、センシング装置1を装着した個体30を認識するために、個体30毎に割り当てられた識別子を記録する。ユーザID2011が格納するユーザIDは、センシング装置1から送信されるセンシングデータに格納される。
【0071】
ユーザ名2012は、センシング装置1を装着した個体30の名前又はニックネームを記録する。ユーザ種別2013は、ユーザ情報として、年齢及び性別等を記録してもよく、また、これらに限らない個体30の様々な情報を記録する。
【0072】
例えば、測定する運動活動がサッカーである場合、ユーザ種別2013は、所属チーム及びポジション等を記録することで、表示部14は、個体30の種別毎の評価及び表示が可能になる。
【0073】
動き情報テーブル202の1行は、一人の個体30の、1回の時刻(計測日時)の情報を示す。動き情報テーブル202は、ユーザID2021と、測定日時2022と、加速度X軸2023と、加速度Y軸2024、及び、加速度Z軸2025と、緯度2026と、経度2027を含む。ユーザID2021は、個体30を認識するためのIDを記録し、ユーザID2011に対応する。
【0074】
測定日時2022は、センシングデータが測定された日時を格納する。加速度X軸2023、加速度Y軸2024、及び、加速度Z軸2025は、3軸加速度センサの各軸の測定結果を格納する。緯度2026と経度2027は、GNSS35の測定値を格納する。
【0075】
以上のようにセンサデータ22には、個体30毎のユーザ情報テーブル201と、時系列の動き情報テーブル202が格納される。
【0076】
図5は、実施例1の環境情報入力部53によって表示される環境表示入力画面301を示す図である。
【0077】
環境情報入力部53は、入出力装置56のディスプレイや外部の計算機に環境表示入力画面を提供し、入出力装置56やサーバ5に外部の計算機の操作者から入力された環境情報を受け付ける。そして、環境情報入力部53は、入力された環境情報を補助記憶装置55内の環境情報23に格納する。
【0078】
解析部10は、環境情報23を参照することにより、短い時間の運動活動におけるデータ分析が可能になる。また、解析部10は、短い時間で様々な練習メニューを、参加メンバーを入れ替えながら実施するようなトレーニング等の運動活動においても、ネットワークを分析し、表示することができる。
【0079】
環境表示入力画面301は、環境情報入力ページ302と、参加者選択ページ303、及び、組分け選択ページ304を含む。
【0080】
環境情報入力ページ302は、運動活動の識別子を格納する活動ID3021と、運動活動の名称を格納する活動名3022と、開始時刻3023と、終了時刻3024と、運動活動が行われたエリアのエリア名3025と、運動活動への参加者3026、及び、参加者の組分け3027を入力する。
【0081】
環境情報入力ページ302は、操作者が分析したい運動活動に関する環境情報を入力する画面の一例である。操作者は、環境情報入力ページ302の各行に、活動名3022、開始時刻3023、及び終了時刻3024等を入力する。また、操作者は、活動を実施したエリアのエリア名3025をタブを用いて、事前に登録される候補地から選択する。また、操作者がエリア名3025を入力することも可能である。そして、操作者は、参加者3026に運動活動に参加する個体30を入力する。
【0082】
参加者3026では、事前に登録されているセンシング装置1の装着者(個体30)の全員が参加者である場合、操作者は、「全員」のチェック欄にチェックを入力する。また、操作者が参加者(個体30)を選択する場合、参加者3026の「個別選択」を選択する。
【0083】
参加者3026の「個別選択」が選択された場合、環境情報入力部53は、参加者選択ページ303を表示する。参加者選択ページ303は、事前に登録されたセンシング装置1を装着した個体30の一覧を表示し、操作者に参加者(個体30)を選択させる画面である。本画面に、センシング装置1を装着した個体30を新たに登録する機能を追加させてもよい。
【0084】
参加者選択ページ303は、レコードを選択するチェックボックスとしての選択3031と、ユーザID3032と、ユーザ名3033と、背番号3034と、ポジション3035と、学年3036等の情報を一つのレコードに含む。
【0085】
組分け3027は、操作者に参加者の組分けを選択させるインターフェースを表示する。操作者が参加者を組分けする必要が無い場合、操作者は、組分け306における「なし」のチェック欄にチェックを入れる。また、参加者を組分けする場合、操作者は、詳細設定を選択する。
【0086】
組分け3027の詳細設定が選択された場合、環境情報入力部53は、組分け選択ページ304を表示する。組分け選択ページ304は、事前に登録されたセンシング装置1を装着した個体30の一覧を表示する。そして、組分け選択ページ304は、操作者に、個体30のチームを選択させるインターフェースを表示する。また、操作者がチーム名を自由に設定、変更できる機能を有してもよい。
【0087】
組分け選択ページ304は、ユーザID3041と、ユーザ名3042と、チームA3043と、チームB30434と、チームC3045と、の情報を一つのレコードに含む。
【0088】
また、本実施例1では、個体30が所属するチームによって個体30を組み分けるが、これに限られず、個体30のポジションや学年等によって組み分けてもよく、さらに、ユーザ情報テーブル201に登録される様々な情報を用いて、組分けを行ってもよい。
【0089】
環境情報入力部53が受け付けた環境情報は、データベース20の環境情報23に格納される。また、環境情報入力部53は、組分け選択ページ304を介して入力された個体30の組分けを、ユーザ情報テーブル201のユーザ種別2013に格納してもよい。
【0090】
図6は、実施例1の環境情報23を示す図である。
【0091】
環境情報23は、センサデータ22を測定した活動に関する情報を記録する活動情報テーブル203と、活動を実施した環境を特定するために、活動ID毎に活動の期間、場所という活動を実施した環境等を記録した環境情報テーブル204と、活動を実施した集団の構成や特徴等を記録した集団情報テーブル205を含む。
【0092】
活動情報テーブル203は、活動ID2031と、活動名2032と、集団ID2033とを含む。活動ID2031は、センサデータ22を測定した運動活動を認識するために、運動活動毎に設定されたID(識別子)を記録する。活動ID2031は、環境情報入力ページ302に入力された活動IDと同じであってもよいし、当該活動IDに基づいて割り当てられたIDでもよい。
【0093】
活動名2032は、センサデータ22を測定した運動活動の名称を記録する。これにより、表示部14は、エリア名称を示す画面を表示できる。活動名2032は、環境情報入力ページ302に入力された活動名3022を格納する。
【0094】
環境情報テーブル204は、活動ID2041と、開始時刻2042と、終了時刻2043と、エリアID2044と、ユーザID2045と、エリア名2046とを含む。活動ID2041は、活動情報テーブル203の活動ID2031に対応する。開始時刻2042及び終了時刻2043は、活動ID2041が示す運動活動の開始時刻及び終了時刻を示す。開始時刻2042及び終了時刻2043は、環境情報入力ページ302に入力された開始時刻3023及び終了時刻3024を格納する。
【0095】
エリアID2044は、活動ID2041が示す運動活動が行われた場所を示す。エリアID2044は、環境情報入力ページ302に入力されたエリア名3025に割り当てられるIDを格納する。ユーザID2045は、活動ID2041が示す運動活動の参加者であり、かつ、センシング装置1を装着した個体30のユーザIDを格納する。エリア名2046は、エリアID2044に対応するエリアの名称を格納する。
【0096】
集団情報テーブル205は、集団ID2051と、集団名2052と、ユーザID2053と、集団種別2054とを含む。集団ID2051は、集団ID2033に対応する。集団名2052は、集団の名前又はニックネームを記録する。ユーザID2053は、集団ID2051が示す集団を構成する個体30であり、かつ、センシング装置1を装着した個体30のユーザIDを格納する。集団種別2053は、集団情報として、集団の構成や特徴等を記録してもよく、また、これらに限らない集団の様々な情報を記録する。
【0097】
例えば、測定する集団活動がサッカーである場合、集団種別2053は、フォーメーション等を記録することで、表示部14は、フォーメーション上にネットワークをマッピングして表示する等の種別毎の表示が可能になる。
【0098】
図7は、実施例1の特徴量算出部11によるステップS101の概要を示すフローチャートである。特徴量算出部11は、センサデータ22から個体30の運動に関する特徴量を算出する。
【0099】
まずステップS1011では、特徴量算出部11は、環境情報入力部53で入力された環境情報23に基づいて、ネットワーク分析及び表示の処理を行う対象のセンサデータ22をDB20から取得する。本実施例1においては、センサデータ22は、所定のサンプリングレート(例えば、20Hz)で測定した3軸加速度データ(動き情報テーブル202の加速度X軸2023、加速度Y軸2024及び加速度Z軸2025)である。処理の対象となるセンサデータ22は、入出力装置56や外部の計算機から指定することができる。また、3軸加速度データに加えて緯度2026と経度2027を位置情報として加えることができる。
【0100】
続いて、ステップS1012では、特徴量算出部11が上記ステップS1011で取得したセンサデータ22に対して、ノイズを除去するために、所定のフィルタを適用する。本実施例1では、バンドパスフィルタを設計し適用するが、バンドパスフィルタに制限されず、センシングデータに応じて、移動平均、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ等のいかなる処理を実行してもよい。フィルタの次数や通過域、阻止域等のパラメータもセンシングデータに応じて設定してよい。また、センシングデータによっては、必ずしもステップS1012を実行する必要もない。
【0101】
ステップS1013では、特徴量算出部11が、上記フィルタを適用したセンシングデータから特徴量を算出する。ここで算出される特徴量は、個体30の動きに関する情報である。
【0102】
集団を構成する全ての個体30のセンサデータ22に対して、上記ステップS1011、S1012、S1013を適用する。
【0103】
実施例1の特徴量情報21は、運動強度を示すMETs(Metabolic Equivalents)である。ステップS1013において時刻毎の特徴量情報21(METs)を算出する。
【0104】
特徴量算出部11は、まず、フィルタ適用後のX軸、Y軸及びZ軸の3軸の加速度のスカラー量Sを算出する。ここで、スカラー量Sは、各軸の加速度をXg、Yg、Zgと記載した場合、以下の式(1)により算出される。
【0105】
スカラー量S=(Xg^2+Yg^2+Zg^2)^(1/2) ・・・(1)
【0106】
次に、スカラー量SからMETsを、以下の式(2)に基づき算出する。
【0107】
METs=a×S+1 ・・・(2)
【0108】
ただし、aは定数である。このMETs値は、安静時、すなわちスカラー量S=0であれば、METs=1であり、運動強度が安静時の何倍であるかを示す。
【0109】
前述のセンサデータ22は、3軸の加速度を含んだが、心拍数、呼吸数、及び、振幅等、人の動きのエネルギー(激しさ)の強さを測定した結果であれば、いかなる測定結果を含んでもよい。そして、特徴量算出部11がこれらの様々なセンサデータ22に基づいて、呼吸数、心拍数、歩行もしくは走行パターン、又は、移動速度等の動きに関する特徴量を算出することにより、本実施例のネットワーク分析部12は、より集団のネットワークを分析することが可能になる。
【0110】
また、特徴量情報21は、特定の時間で集計した値を用いてもよい。例えば、サンプリング周波数20Hzで測定されたセンサデータ22から特徴量を算出し、1秒毎に集計した値を用いることで、突発的な変化に伴うノイズを減らすことができる。センサデータ22の集計値を用いるか、またどの程度集計した値を用いるか、は使用したセンシング装置1や測定した環境等によって判断される。
【0111】
上記処理により、フィルタ処理されたセンサデータ22から特徴量情報21の一例としてMETsが算出される。
【0112】
図8は、実施例1の特徴量情報21に記憶されるデータの一例を示す図である。特徴量情報21には、ネットワーク分析を行った全個体223の各日時222における特徴量が格納される。本実施例では、サンプリング周波数20Hzで測定されたセンサデータ22から特徴量としてMETsを算出し、1秒毎に集計した値を記憶している。
【0113】
図9は、実施例1のネットワーク分析部12による図3のステップS102の概要を示すフローチャートである。ネットワーク分析部12は、ステップS101で算出した特徴量から集団を構成する個体間の関係性を分析する。
【0114】
まずステップS1021では、ネットワーク分析部12が個体30間のネットワークを分析するために使用するデータの時間間隔を取得する。データの時間間隔は、センシング装置1の測定間隔(サンプリング周期又は所定の時間間隔)以上であれば、予め設定された値を使用してよい。
【0115】
データの時間間隔は、既にプログラムに記述された値を使用してもよい。また環境情報入力部53に入力部(図示省略)を設けて、入力された値を参照してもよい。本実施例1においては、データの時間間隔を1分と設定しており、1分毎のネットワークを分析、表示することができる。
【0116】
ステップS1022では、ネットワーク分析部12がネットワークの分析を行う2個体を選択する。本実施例1では、2個体間の相関性の有無を、集団を構成する個体の全組み合わせで分析するため、逐次2個体を選択していく。
【0117】
ステップS1023では、上記ステップS1022で選択した個体について、図3のステップS101で算出した特徴量を特徴量情報21から取得する。
【0118】
ステップS1024、S1025、S1026では、2個体間の関係性を分析し、ネットワークの有無を判定する。本実施例1では、移動エントロピーを用いることで、個体30間で伝達された情報量を算出し、ネットワークの有無を判定する。
【0119】
移動エントロピーは情報量の一種であり、確率変数間の情報の流れを平均情報量として数値化したものである。変数間の相関のみを示して情報の流れを含まない相互情報量とは異なり、移動エントロピーは情報の流れを特定することができ、変数間の関係性を測る指標である。本実施例1では、移動エントロピーを用いるが、相互情報量、相関分析、回帰分析、多変量解析等の複数変数間の関係性を測る指標及び当該指標を算出する手法であれば、いかなるものでもよい。
【0120】
ステップS1024では、ネットワーク分析部12が各個体30の変数(特徴量)の時系列データから、確率分布を算出する。確率分布はヒストグラムで近似するという手法を採用するが、ガウス分布や混合ガウス分布を仮定して推定する手法等を採用してもよく、またこれらに制限されない。ヒストグラムで近似する場合、ヒストグラムの分割数は、赤池情報量基準やスタージェスの公式を用いるが、これらに制限されない。
【0121】
ステップS1025では、ネットワーク分析部12が2個体の変数間の情報伝達量を移動エントロピーから算出する。ここで、時刻tにおける確率変数X、Yの要素をxt、ytとした場合、Xに対するYの影響を示す移動エントロピーT(Y→X)は、以下の式(3)により算出される。
【0122】
【数1】
【0123】
T(Y→X)は、0から1の間の値をとり、0では全く影響を与えていない、すなわち関係性が全くないことを示し、1に近づくほど大きな影響を与えていること、すなわち個体間の関係性が大きいことを示している。
【0124】
本実施例1では、確率変数Yの要素ytが確率変数Xの要素xt+1に与えた影響を算出した。つまり、1秒毎に集計した特徴量情報21を用いた場合、個体Yの動きが、個体Xの1秒後に与えた影響を算出したことになる。また、確率変数Xの要素をxt+nとすることで、個体Yの動きが、個体Xのn秒後に与えた影響を算出することもできる。nの値は任意に設定することができる。
【0125】
ステップS1026では、ネットワーク分析部12が、上記ステップS1025で算出した移動エントロピーの値を用いて、2個体間でのネットワークの有無を判定する。ネットワーク分析部12は、移動エントロピーが所定の閾値以上の個体30間において、情報の伝達があり、ネットワークがあったと判定する。本実施例1において、上記閾値は所定の定数である。閾値は、x2分布やガンマ分布等を用いた閾値判定法を用いてもよく、使用したセンシング装置1や測定した環境等によって任意に設定される。
【0126】
ステップS1027では、ネットワーク分析部12が、上記ステップS1026で判定したネットワークの有無を同期ネットワーク時系列データ24に格納する。
【0127】
本実施例1において、2個体間でネットワークが存在した場合には同期ネットワーク時系列データ24に1を設定し、存在しなかった場合は同期ネットワーク時系列データ24に0を設定する。また、閾値を複数個設定し、数段階でネットワークの強度を判定し、保存してもよく、移動エントロピーの値もそのまま保存してもよい。
【0128】
ステップS1028では、集団を構成する個体の全組み合わせでの分析が終了するまで、上記ステップS1022、S1023、S1024、S1025、S1026、S1027を繰り返して実行する。
【0129】
上記処理により、個体30間の関係性の大きさが、移動エントロピーの大きさに基づいて算出され、ネットワークを構成する個体が特定されて、集団内のネットワークが生成される。
【0130】
図10は、実施例1の同期ネットワーク時系列データ24に記憶されるデータを示す図である。同期ネットワーク時系列データ24は、ある時刻におけるネットワークの総当たり図であり、ネットワーク分析を行った全個体における、ある時刻tでのネットワークの有無(強弱)が記載されている。
【0131】
同期ネットワーク時系列データ24は、所定の時間間隔で生成された時系列のデータであり、図示の例では、時刻T1から所定の時間間隔ΔT毎に同期ネットワーク時系列データ24がリアルタイムで生成され、クリーク評価部15で分析及び評価が実施される。
【0132】
同期ネットワーク時系列データ24の1列目は情報及び影響を与える個体のユーザID242であり、1行目は情報及び影響を受ける個体のユーザID243である。行と列で示される2個体間の値はネットワークの強弱を5段階で示す。
【0133】
個体30間での関係性が強い場合は「5」が設定され、個体30間での関係性が弱い場合は「1」が設定される。関係性の強弱を記憶することで、後述の表示部14において、個体間の関係性をより詳細に表示できるようになる。また本実施例では、5段階にて関係性の強弱を記載したが、任意の何段階で記憶してもよい。上記では5段階にて関係性の強弱を記載したが、任意の何段階で記憶してもよい。
【0134】
なお、関係性の強弱については、後述するように次数中心性や近接中心性で表すことができる。個体30間の関係を表示部14で可視化した例を図19に示す。図19は同期ネットワーク時系列データ24にネットワーク評価情報25の次数中心性と近接中心性を加えた例を示す図である。図示の例は、サッカーの試合における個体30間の時系列のネットワーク分析結果を示す。
【0135】
図示の例では、時刻t1の同期ネットワーク時系列データ24が領域81に表示され、時間間隔Δt後の時刻t2のネットワークが領域82に表示され、時刻t3のネットワークが領域83に表示される。
【0136】
Aチーム(第1の集団)の個体30は実線の丸印で表示され、Bチーム(第2の集団)の個体30は破線の丸印で表示される。関係性を有する個体30間には辺(エッジ)で表示され、次数中心性の大きさは円の大きさで表示され、近接中心性の大きさはハッチングの濃さで表示される。
【0137】
なお、図19では、個体30間を有向グラフで表示する例を示したが、グラフは無向グラフでもよい(以下同様)。
【0138】
図11は、ネットワーク評価部13がステップS103で行う処理の一例を示すフローチャートである。ネットワーク評価部は、ステップS102で算出した同期ネットワーク時系列データ24から、集団の中心となる個体や、集団活性度を評価する。
【0139】
ステップS1031では、ネットワーク評価部13が、図3のステップS102で算出した同期ネットワーク時系列データ24を取得する。本実施例においては、図11で示したネットワークを用いるものとする。
【0140】
ステップS1032では、ネットワーク評価部13が取得した同期ネットワーク時系列データ24を用いて、ネットワークの評価指標として次数中心性や近接中心性、媒介中心性、エッジ数を算出する。各指標の算出手法は後述する。本実施例1では、ネットワークの評価指標として、次数中心性や近接中心性、媒介中心性、エッジ数を用いるが、これらに制限されない。
【0141】
ステップS1033では、ネットワーク評価部13が上記ステップS1032で算出した次数中心性、近接中心性、媒介中心性を用いて、ネットワークの中心となる個体を推定する。詳細は後述する。
【0142】
ステップS1034では、ネットワーク評価部13が上記ステップS1032で算出したエッジ数を用いて、チームにおけるネットワークの集団活性度を推定する。詳細は後述する。
【0143】
ステップS1035では、ネットワーク評価部13が上記ステップS1032、S1033、S1034で算出した評価情報をネットワーク評価情報25(個体評価テーブル250と集団評価テーブル258)に格納する。
【0144】
上記処理によって、算出された同期ネットワーク時系列データ24について次数中心性や近接中心性、媒介中心性、エッジ数を用いてネットワーク評価情報25が生成される。
【0145】
図12図13図14は、実施例1のネットワーク評価部13による処理の詳細を示すフローチャートである。
【0146】
図12のフローチャート60は、次数中心性を算出する処理である。次数中心性とは、ネットワーク内でより多くの関係を持つ頂点(個体)を高く評価する指標である。
【0147】
ステップS1036では、ネットワーク評価部13が、ある個体における、ある時刻の入次数をカウントする。入次数とは、ある個体が情報を受けた個体の数である。
【0148】
ステップS1037では、ネットワーク評価部13が、ある個体における、ある時刻の出次数をカウントする。出次数とは、ある個体が情報を伝達した個体の数である。
【0149】
ステップS1038では、ネットワーク評価部13が、次数中心性は次数の積算値であるため、上記ステップS1036で算出した入次数と、ステップS1037で算出した出次数と、入次数と出自数の和である全次数からの入次数、出次数、次数の中心性を算出する。
【0150】
ステップS1039では、次数中心性はネットワークに含まれる頂点の数によって異なるため、ネットワーク評価部13が、次数を処理対象の集団の理論的な最大値で除算することによって、標準化する。個体数nの集団においては、最大次数はn-1であるため、ネットワーク評価部13は、ステップS1038で算出した各次数中心性をn-1で割る処理を行う。
【0151】
ステップS1040では、ネットワーク分析を行った全個体(頂点)について、入次数、出次数、次数の中心性を算出するために、ネットワーク評価部13が上記ステップS1036~S1039の処理を繰り返して実行する。
【0152】
図13のフローチャート61は、近接中心性を算出する処理である。近接中心性とは、他の頂点(個体)との距離が小さい頂点(個体)ほど高く評価する指標である。
【0153】
ステップS1041では、ネットワーク評価部13が、ある個体から他の個体への最短距離の合計を算出する。最短距離とは、ある頂点から他の頂点へ最短で到達するために通る辺の数である。
【0154】
ステップS1042では、近接中心性は、ある個体から他の個体への最短距離の逆数であるため、ネットワーク評価部13は、上記ステップS1040で算出したある個体30から他の個体30への最短距離を用いて、近接中心性を算出する。
【0155】
ステップS1043では、近接中心性はネットワークに含まれる頂点の数によって異なるため、ネットワーク評価部13は、処理対象の集団で近接中心性が理論に最大となる値で割ることによって、標準化する。個体数nの集団においては、近接中心性が最大値は1/(n-1)であるため、ネットワーク評価部13は、上記ステップS1040で算出した近接中心性を1/(n-1)で割る処理を行う。
【0156】
ステップS1044では、ネットワーク分析を行った全個体で、近接中心性を算出するために、ネットワーク評価部13は、上記ステップS1040~を繰り返して実行する。
【0157】
図14のフローチャート62は、ネットワーク評価部13で媒介中心性を算出する処理である。媒介中心性とは、他の頂点(個体)間の最短経路上に位置する程度が高い頂点(個体)ほどを高く評価する指標である。媒介中心性が高い個体は、ネットワークの連結性を維持するために重要な個体であると考えることができる。
【0158】
ステップS1045では、ネットワーク評価部13が、ある個体から他の個体への最短距離の合計を算出する。最短距離とは、ある頂点から他の頂点へ最短で到達するために通る辺の数である。
【0159】
ステップS1046では、ネットワーク評価部13が、ある個体から他の個体への最短経路数を算出する。最短経路数は次のように算出する。始点から始点自身への最短経路数は1とする。そして、探索の過程で到達したある頂点への経路数は、直前の頂点への経路数に等しい。もし、直前の頂点が複数ある場合には、それらの直前の点への経路数の和に等しい。
【0160】
ステップS1047では、ネットワーク分析を行った全個体で、最短距離の合計と最短経路数を算出するために、ネットワーク評価部13が、全ての個体30(頂点)についてステップS1045とS1046を繰り返し、実行する。
【0161】
ステップS1048では、上記ステップS1045とS1046で調べた最短経路に関する情報を用いて、ネットワーク評価部13は、各頂点が他の頂点間の最短経路上に位置する程度を調べていく。
【0162】
ここで、頂点wは頂点sを始点とする最短経路上で頂点vの直後にある頂点とし、gsv、gswはそれぞれ頂点v、頂点wへの最短経路数とする。この場合の、頂点vがどのくらい他の頂点への最短経路上にいる程度bsvは、以下の式(4)によって算出される。
【0163】
【数2】
【0164】
ネットワーク評価部13は、上記式(4)を用いて、各個体30のグラフに含まれる各頂点を始点としたとき、各頂点がとれくらい他の頂点への最短経路上に位置するかを算出する。
【0165】
ステップS1049では、ネットワーク評価部13が、上記ステップS1048で算出した各頂点が他の頂点間の最短経路上に位置する程度bsvを、頂点毎に加算することにより各頂点の媒介中心性を算出する。
【0166】
ステップS1050では、媒介中心性はネットワークに含まれる頂点の数によって異なるため、その集団で媒介中心性が理論に最大となる値で割ることによって、ネットワーク評価部13が標準化する。個体数nの集団においては、媒介中心性が最大値は(n-2)×(n-1)であるため、ネットワーク評価部13は、上記ステップS1049で算出した近接中心性を(n-2)×(n-1)で割る処理を行う。
【0167】
以上の処理によって、ネットワーク評価部13が各頂点(個体)の媒介中心性が算出される。
【0168】
図15のフローチャート63は、図11に示したステップS1033の集団の中心となる個体を算出する処理の一例を示している。ネットワーク評価部13は、ステップS1051で図11のステップS1032で算出した各時刻における、各個体30の次数中心性xと、近接中心性yと、媒介中心性zを用いて、以下の式(5)で示す中心性が最大となる個体を算出する。
【0169】
ax+by+cz ・・・(5)
【0170】
上記式(5)において、a、b、cは係数である。本実施例では、式(5)が最大となる個体を、集団の中心となる個体として算出したが、この手法に限定されない。
【0171】
図16のフローチャート64は、図11に示したステップS1034の集団活性度を算出する処理を示している。
【0172】
ステップS1052では、ネットワーク評価部13が、集団活性度を算出する集団全体の次数をカウントする。また、サッカーのように複数の個体30が同一のフィールド100に存在する場合は、集団内での次数、集団内から別集団への出次数、別集団外から集団内への入次数、集団外での次数を算出することで、集団間での関係性を評価することもできる。
【0173】
ステップS1053では、ネットワーク評価部13が、次数を理論的に最大となる値で割ることによって、標準化し、集団活性度を算出する。集団活性度は、例えば0から1の間の値をとり、1に近づくほど集団が活性化していることを示す。本実施例1では、集団全体の次数を用いて集団活性度を算出したが、この手法に制限されない。
【0174】
図17は、実施例1のネットワーク評価情報25に記憶される個体評価テーブル250の一例を示す図である。ネットワーク評価情報25の個体評価テーブル250には、図3のステップS103にてネットワーク評価を行った各個体の各日時251毎の評価結果が格納される。
【0175】
個体評価テーブル250は、日時251と、入次数中心性252と、出次数中心性253と、次数中心性254と、近接数中心性255と、媒介数中心性256と、中心性257と、を一つのエントリに含む。
【0176】
入次数中心性252と、出次数中心性253と、次数中心性254は図12に示したフローチャート60で算出した入次数、出次数、次数の中心性を格納し、近接数中心性255は図13に示したフローチャート61で算出した近接中心性を格納し、媒介数中心性256は図14に示したフローチャート62で算出した媒介中心性を格納し、中心性257は図15に示したフローチャート63で算出した中心性を格納する。
【0177】
ネットワーク評価情報25の個体評価テーブル250は、個体30の日付毎にそれぞれ生成されるテーブルである。
【0178】
図18は、実施例1のネットワーク評価情報25に記憶される集団評価テーブル258のデータを示す図である。集団評価テーブル258には、図3のステップS103にてネットワーク評価を行った各集団の各日付毎の評価結果が格納される。
【0179】
集団評価テーブル258は、日時259と、集団内次数260と、集団外への出次数261と、集団内への入次数262と、集団外次数263と、総次数264と、活性度265と、次数中心性が最も高い個体266と、近接中心性が最も高い個体267と、媒介中心性が最も高い個体268と、中心個体269と、を一つのエントリに含む。
【0180】
集団評価テーブル258の日時259は、個体評価テーブル250の日時251と対応する。
【0181】
集団内次数260と、集団外への出次数261と、集団内への入次数262と、集団外次数263と、総次数264と、活性度265は図16のフローチャート64で算出した集団内での次数と、集団内から別集団への出次数と、別集団外から集団内への入次数と、集団外での次数と、総次数と、集団活性度を格納する。
【0182】
次数中心性が最も高い個体266は図12のフローチャート60で算出した次数中心性が最も高い個体を格納し、近接中心性が最も高い個体267とは図13のフローチャート61で算出した近接中心性が最も高い個体を格納し、媒介中心性が最も高い個体268は図14のフローチャート62で算出した媒介中心性が最も高い個体を格納し、中心個体269は図15のフローチャート63で算出した中心性が最も高い個体を格納する。
【0183】
図20は、センサデータ22と同期ネットワーク時系列データ24の関係を示す図である。図示の例は、センサデータ22の動き情報テーブル202から取得した加速度データから生成した同期ネットワーク時系列データ24の一部をグラフとして表示し、複数の個体30間の関係の時系列的変化を示す。
【0184】
時刻t1では、ID=「1」の個体30は、ID=「2」及び「4」の2つの個体30と関係を有し、ID=「3」の個体30は、ID=「6」の個体30と関係を有する。所定の時間間隔Δt(例えば、1分)が経過した時刻t2ではID=「1」は、関係先の個体30をID=「4」からID=「5」に変化させ、ID=「2」及び「5」の2つの個体30と関係を有する。時刻t3ではID=「1」が、関係先の個体30をID=「5」のみとする。
【0185】
同期ネットワーク時系列データ24は個体30間の同期によるネットワークであり、個体30間の同期ネットワークを時系列で比較することにより、サッカーやラグビーあるいはバスケットなどの集団による動きの激しい競技の分析を行うことができる。
【0186】
図21は、同期ネットワーク時系列データ24からクリークを抽出する例を示す。図20で示したように、同期ネットワーク時系列データ24からグラフを生成して個体30の関係先の変化を時系列で抽出することができる。
【0187】
解析部10のクリーク評価部15は、同期ネットワーク時系列データ24から所定の数のクリークを抽出して、各時刻のクリークを時系列で集計して出力する。本実施例のクリーク評価部15は、図示のように、2つの個体30で構成される2クリークと、3つの個体30で構成される3クリークを評価対象として抽出する。
【0188】
図20の時刻t1のグラフは、図21に示す2クリークと3クリークの関係に分解することができる。
【0189】
図21において、クリーク評価部15は、関係を有する個体30間を1つのエッジで接続し、エッジの両端のノードを頂点とするグラフを2クリークとして抽出する。すなわち、次数が1のノードの組み合わせが2クリークとなる。例えば、時刻t1のグラフでは、ID=「1」と「2」が2クリークであり、さらに、ID=「1」と「4」、ID=「2」と「4」、ID=「3」と「6」が2クリークとして抽出される。なお、本実施例ではエッジの向きは評価せず無向グラフとして扱う。
【0190】
クリーク評価部15は、2クリークの関係先のノードが第3のノードと関係し、関係元のノードも同じ第3のノードと関係を有する場合、これらの3つのノードを3クリークとして抽出する。
【0191】
3クリークの各ノードは次数が2で、3つのノードはそれぞれ相互に関係を有する。時刻t1のグラフでは、ID=「1」と「2」ノードの2クリークで「1」のノードを関係元とし、「2」ノードを「1」の関係先とすると、関係先のノード「2」は他の(第3の)ノード「4」と関係を有し、関係元のノード「1」は、同じ他のノード「4」と関係を有する。このように、3つのノードを接続するエッジが閉じた構成を3クリークとする。
【0192】
図22は、クリーク評価部15で行われる処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、図3のステップS104で行われる。
【0193】
クリーク評価部15は、まず同期ネットワーク時系列データ24から分析対象のデータを取得する(S1141)。クリーク評価部15は、同期ネットワーク時系列データ24の日時(又は時刻)毎に2クリークを抽出する(S1142)。
【0194】
クリーク評価部15は、抽出された2クリークのデータを図23で示すように3つの種別に分類する(S1143)。個体30の競技がAチームとBチームの2つで行われている場合、2クリークの種別は、次の3種類となる。
【0195】
2つの個体30がAチームのみで構成される組み合わせを種別A2とし、Bチームの個体30のみで構成される組み合わせを種別B2とし、A、Bチームの個体30が各1個で構成される組み合わせを種別A1B1とする。種別A2又はB2の場合は、味方同士が連携している状態と捉えることができる。また、クリークの種別A1B1の場合は、敵味方が対峙しお互いにマークし合っている状態と捉えることができる。
【0196】
クリーク評価部15では、抽出したクリークについて個体が所属する集団と個体30の数に応じて、クリークの種別を分類することで一群の個体30がどのような関係性を有するのかを検出することができる。
【0197】
クリーク評価部15は、種別毎に分類した2クリークのデータを時刻毎に集計してクリーク評価情報40を構成する2クリーク情報410に格納する(S1143)。図24は、2クリーク情報410の一例を示す図である。2クリーク情報410は、同期ネットワーク時系列データ24の日時を格納する日時4101と、関係元となるノード(個体30)の識別子を格納する第1ノード4102と、関係先となるノードの個体30の識別子を格納する第2ノード4103と、分類されたクリークの種別4104を1つのレコードに含む。
【0198】
次に、クリーク評価部15は、種別毎に分類された2クリークのデータを時系列で集計して種別毎の時系列データを生成して出力する(S1144)。図25は、2クリークの種別毎時系列データ420の一例を示すグラフである。2クリークの種別毎時系列データ420もクリーク評価情報40を構成するデータである。2クリークの種別毎時系列データ420は、入出力装置56のディスプレイ又は外部の計算機のディスプレイに表示される。
【0199】
2クリークの種別毎時系列データ420は、横軸を時間、縦軸をクリークの数として、2クリーク情報410の種別毎に時系列のグラフとしたものである。2クリークの種別毎時系列データ420は、集団全体で各個体30が味方と連携している状態(種別A2又はB2)と、お互いにマークし合っている状態(種別A1B1)の出現頻度を表すことができる。特に、サッカーの場合、種別A2やB2ではボールをキープしている状態と考えることができる。
【0200】
次に、クリーク評価部15は、種別毎に分類された2クリーク情報410から個体30の識別子毎に時系列で集計して個体毎の時系列データを生成して出力する(S1145)。図26は、2クリークの個体毎時系列データ430の一例を示すグラフである。2クリークの個体毎時系列データ430は、入出力装置56のディスプレイ又は外部の計算機のディスプレイに表示される。
【0201】
2クリークの個体毎時系列データ430は、横軸を時間、縦軸をクリークの数として、個体30の識別子(2クリーク情報410の第1ノード4102)毎に時系列のグラフとしたものである。図示の例では、個体30のID=「1」について種別毎の時系列データを表示した例を示す。
【0202】
2クリークの個体毎時系列データ430は、各個体30が味方と連携している状態(種別A2)と、攻撃又は防御の状態(種別A1B1)の出現頻度を時系列で表すことができる。2クリークの個体毎時系列データ430を入出力装置56のディスプレイ又は外部の計算機のディスプレイに表示することで、サーバ5の利用者は個体30が集団と連携する態様の変化を時系列で観察して個体30毎の評価を行うことができる。
【0203】
以上のステップS1142~S1145の処理で、クリーク評価部15はクリーク評価情報40を構成する2クリーク情報410と、種別毎時系列データ420と、個体毎時系列データ430を生成する。
【0204】
ステップS1142~S1145では、ステップS1142~S1145の処理と同様にして3クリークの処理が行われる。なお、クリーク評価部15は、ステップS1142~S1145の処理と、ステップS1142~S1145の処理を並列して実行することができる。ただし、クリーク評価部15が、ステップS1142~S1145の処理と、ステップS1142~S1145の処理を順次実行するようにしてもよい。
【0205】
クリーク評価部15は、同期ネットワーク時系列データ24の日時(又は)毎に3クリークを抽出する(S1146)。
【0206】
クリーク評価部15は、抽出された3クリークのデータを図27で示すように4つの種別に分類する(S1147)。個体30の競技がAチームとBチームの2つで行われている場合、3クリークの種別は、次の4種類となる。
【0207】
3つの個体30がAチームのみで構成される組み合わせを種別A3とし、Bチームの個体30のみで構成される組み合わせを種別B3とし、Aチームの個体30が2個でBチームの個体30が1個で構成される組み合わせを種別A2B1とし、Aチームの個体30が1個でBチームの個体30が2個で構成される組み合わせを種別A1B2とする。
【0208】
クリークの種別A3又はB3の場合は、味方同士が連携している状態と捉えることができる。種別A2B1の場合は、Aチームが数的優位な状態と捉えることができる。種別A1B2の場合は、Bチームが数的優位な状態と捉えることができる。
【0209】
クリーク評価部15は、種別毎に分類した3クリークのデータを時刻毎に集計してクリーク評価情報40を構成する3クリーク情報440に格納する。図28は、3クリーク情報440の一例を示す図である。3クリーク情報440は、同期ネットワーク時系列データ24の日時を格納する日時4401と、関係元となるノードの個体30の識別子を格納する第1ノード4402と、関係先となるノードの個体30の識別子を格納する第2ノード4403と、さらに他の関係先となるノードの個体30の識別子を格納する第3ノード4404と、分類されたクリークの種別4405を1つのレコードに含む。
【0210】
次に、クリーク評価部15は、種別毎に分類された3クリークのデータを時系列で集計して種別毎の時系列データを生成して出力する(S1148)。図29図30は、3クリークの種別毎時系列データ450の一例を示すグラフである。3クリークの種別毎時系列データ450もクリーク評価情報40を構成するデータである。3クリークの種別毎時系列データ450は、入出力装置56のディスプレイ又は外部の計算機のディスプレイに表示される。
【0211】
なお、図29は種別A3、B3の種別毎時系列データ450であり、図30は種別A2B1、A1B2の種別毎時系列データ450であり、グラフを見やすくするために2つに分割したがひとつのグラフとしてもよい。
【0212】
3クリークの種別毎時系列データ450は、横軸を時間、縦軸をクリークの数として、3クリーク情報440の種別毎に時系列のグラフとしたものである。3クリークの種別毎時系列データ450は、集団全体で個体30が味方と連携している状態(種別A3又はB3)と、数的優位な状態(種別A2B1、A1B2)の出現頻度を時系列で表すことができる。特に、サッカーの場合、種別A3やB3では相手マークを外した理想的な連携プレーが出来ている状態と考えることができる。
【0213】
次に、クリーク評価部15は、種別毎に分類された3クリーク情報440から個体30の識別子毎に時系列で集計して個体毎の時系列データを生成して出力する(S1149)。図31は、3クリークの個体毎時系列データ460の一例を示すグラフである。3クリークの個体毎時系列データ460は、入出力装置56のディスプレイ又は外部の計算機のディスプレイに表示される。
【0214】
3クリークの個体毎時系列データ460は、横軸を時間、縦軸をクリークの数として、個体30の識別子(3クリーク情報440の第1ノード4402)毎に時系列のグラフとしたものである。図示の例では、個体30のID=「1」について種別毎の時系列データを表示した例を示す。
【0215】
3クリークの個体毎時系列データ460は、個体30(ID=「1」)が味方と連携している状態(種別A3)と、数的優位な状態(種別A2B1、A1B2)の出現頻度を時系列で表すことができる。
【0216】
以上のステップS1146~S1149の処理で、クリーク評価部15はクリーク評価情報40を構成する3クリーク情報440と、3クリークの種別毎時系列データ450と、3クリークの個体毎時系列データ460を生成する。
【0217】
上記の処理によって、センシング装置1から収集したセンシングデータから個体30間の関係性を抽出してリアルタイムでクリーク評価情報40を生成して出力することにより、競技中の個体30間の関係性をリアルタイムで把握することが可能となって、各個体30へ的確な指示を送ることができる。
【0218】
集団の管理者又はコーチなどは、クリーク評価情報40の各情報を参照することで、競技の作戦を立案することができる。例えば、サッカーの場合、使用頻度の高い2クリークはネットワーク全体のリズムを支配していると考えられる。また、3クリークの種別毎の多様性からチームの組織プレーやチーム全体のリズムを把握することができる。
【0219】
そこで、相手チームの個体30のうち、出現頻度の高い2クリークを抑制すれば、相手チームの3クリークの多様性は崩れることが予想される。したがって、出現頻度の高い2クリークをマーク又はプレスをかける指示を味方チームに送ることで、競技の内容を好転させることが可能となる。
【0220】
また、2クリーク、3クリークの各種クリーク評価情報40から各個体30の動きをリアルタイムで取得することによって、ボールの有無に関わらず有効な動きを行う個体30を抽出することができる。
【0221】
例えば、3クリークの情報で種別A3に頻繁に現れる個体30は中心的な存在であると推定することができる。また、3クリークの情報で種別A1B2やA2B1に現れる個体30は、ボールの有無に関わらず、敵をマークしたり、敵を引きつけたりする有効な動きを行っていると評価することができる。
【0222】
以上のように、本実施例のネットワーク分析システムは、個体30に装着したセンシング装置1のセンシングデータからリアルタイムでクリーク評価情報40を提供することで競技内容に対して有効な動きを行う個体30を可視化することが可能となり、作戦の立案や個体30の評価をリアルタイムで行うことが可能となる。
【0223】
また、2クリークや3クリークのクリーク評価情報40では、ボールの有無や競技の中心性に関わらず個体30の評価を行うことが可能となって、動きの激しい競技における選手の評価を的確に行うことが可能となる。
【0224】
また、本実施例のネットワーク分析システムは、様々な競技に適用可能な汎用性を有する。上述したように、本実施例の分析対象はサッカーに限定されるものではなく、ラグビーやバレーボールなどにも適用することが可能となる。
【0225】
また、本実施例のネットワーク分析システムは、説明変数がクリーク数のみであるので、前記従来技術のように多数のパラメータを参照する必要が無く、個体30の動きを容易に理解して迅速に評価することが可能となる。
【0226】
また、上記実施例1では、同期ネットワーク時系列データ24から抽出するクリークを2クリークと3クリークの例について説明したが、抽出するクリークの数は上記に限定されるものではなく、分析対象の競技の種類等に応じて適宜変更することができる。
【0227】
また、上記実施例1では、2つのAチーム(第1の集団)、Bチーム(第2の集団)で競技を行う個体30についてクリークの種別を分類する例を示したが、クリークの種別は同時に競技を行うチームの数に応じて設定すればよく、上記の2チームに限定されるものではない。
【実施例2】
【0228】
図32は、本発明の実施例2を示し、ネットワーク分析システムの構成の一例を示すブロック図である。前記実施例1では、個体30に装着したセンシング装置1が取得した加速度及び位置情報に基づいてサーバ5がリアルタイムでクリーク評価情報40を生成する例を示したが、競技に参加する全ての個体30にセンシング装置1を装着できない場合もある。
【0229】
そこで、本実施例ではセンシング装置1を利用せずに、競技場等にカメラを設置して競技の動画データを収集して、クリーク評価情報40を生成する例を示す。本実施例では、フィールド100上に1以上のカメラ70を設置して競技を行う個体30の動画データを取得してサーバ5の動画データ27に格納する。
【0230】
サーバ5では画像トラッキング部16で動画データ27を読み込んで、個体30の識別と、位置情報の抽出と、移動速度の算出などを行う。その他の構成は前記実施例1と同様であり、同一の構成に同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0231】
図33は、サーバ5で行われる処理の一例を示すフローチャートである。まず、サーバ5では画像トラッキング部16が、補助記憶装置55に格納された動画データ27を取得する(S211)。
【0232】
画像トラッキング部16は、読み込んだ動画データ27から個体30の識別を行って、フィールド100上の位置を算出する(S212)。なお、個体30の識別は、顔認証等の周知の技術を適用することができる。また、識別した個体30とユーザID2021(動き情報テーブル202)の関連付けは入出力装置56や外部の計算機を操作する管理者等で行うようにしてもよい。
【0233】
画像トラッキング部16は、動画データ27のフレーム毎に検出した個体30の位置情報から加速度(又は移動速度)を算出して、動き情報テーブル202の加速度2023~2025に設定する(S213)。
【0234】
サーバ5の解析部10は、個体毎の加速度の算出が完了すると、前記実施例1と同様にして特徴量算出部11が動き情報テーブル202を入力として特徴量情報21を算出する。そして、前記実施例1と同様にしてネットワーク分析部12が特徴量情報21に基づいて同期ネットワーク時系列データ24を生成する(S214)。
【0235】
次に、クリーク評価部15が同期ネットワーク時系列データ24を取得して(S215)、前記実施例1と同様に2クリークと3クリークの抽出を実施してクリーク評価情報40を生成する(S216)。
【0236】
表示部14は、生成されたクリーク評価情報40を入出力装置56のディスプレイ又は外部の計算機に出力して、集団の管理者等に2クリークのグラフや3クリークのグラフを提示する。
【0237】
以上のように、本実施例では、個体30にセンシング装置1を装着できない状況でも前記実施例1と同様に個体30の評価をクリーク評価情報40に基づいて実施することが可能となる。
【0238】
<結び>
以上のように、上記実施例1、2のネットワーク分析システムは以下のような構成とすることができる。
【0239】
(1)プロセッサ(CPU51)とメモリ(メモリ54)を含む計算機(サーバ5)が集団における個体(30)間のネットワークを分析するネットワーク分析方法であって、前記計算機(5)が、集団で運動を行う個体の動きに関する時系列の情報(センシングデータ)をセンサデータ(22)として収集するセンシングデータ収集ステップと、前記計算機(5)が、前記センサデータ(22)から前記個体毎の運動に関する特徴量(特徴量情報21)を算出する特徴量算出ステップ(特徴量算出部11)と、前記計算機(5)が、前記集団内の個体の組み合わせについて前記特徴量に基づいて個体(30)間の関係性を分析し、前記個体間の関係性の分析結果から個体間のネットワークを時系列で生成するネットワーク分析ステップ(ネットワーク分析部12)と、前記計算機(5)が、前記ネットワーク内で関係性を有する個体(30)のうち、複数の個体(30)で構成された一群をクリークとして抽出し、前記クリークについて時系列で分析するクリーク評価ステップ(クリーク評価部15)と、を含むことを特徴とするネットワーク分析方法。
【0240】
上記構成により、集団における個体30間のネットワークを分析して、複数のクリークをから有効な動きを行う個体30を可視化することが可能となる。
【0241】
(2)上記(1)に記載のネットワーク分析方法であって、前記個体(30)は、第1の集団(Aチーム)及び第2の集団(Bチーム)のいずれか一方に所属し、前記クリーク評価ステップ(15)は、前記個体(30)が所属する集団と前記個体(30)の組み合わせに応じて予め設定されたクリークの種別で前記クリークを分類することを特徴とするネットワーク分析方法。
【0242】
上記構成により、クリーク評価部15は、抽出したクリークについて個体30が所属する集団と個体30の数に応じて、クリークの種別を分類することで一群の個体がどのような関係性を有するのかを検出することができる。
【0243】
(3)上記(2)に記載のネットワーク分析方法であって、前記クリーク評価ステップ(15)は、前記分類されたクリークの種別を個体(30)毎に時系列で集計して個体毎時系列データ(430、460)として出力することを特徴とするネットワーク分析方法。
【0244】
上記構成により、個体毎時系列データ430を入出力装置56のディスプレイ又は外部の計算機のディスプレイに表示することで、サーバ5の利用者は個体30が集団と連携する態様の変化を時系列で観察して個体30毎の評価を行うことができる。
【0245】
(4)上記(2)に記載のネットワーク分析方法であって、前記クリーク評価ステップ(15)は、前記分類されたクリークの種別を時系列で集計して種別毎時系列データ(420、450)として出力することを特徴とするネットワーク分析方法。
【0246】
上記構成により、種別毎時系列データ420を入出力装置56のディスプレイ又は外部の計算機のディスプレイに表示することで、サーバ5の利用者は集団内で連携する個体30の変化を時系列で観察しすることができる。
【0247】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を含むものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、又は置換のいずれもが、単独で、又は組み合わせても適用可能である。
【0248】
また、上記の各構成、機能、処理部、及び処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、及び機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0249】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0250】
1 センシング装置
5 サーバ
10 解析部
11 特徴量算出部
12 ネットワーク分析部
13 ネットワーク評価部
14 表示部
15 クリーク評価部
21 特徴量情報
22 センサデータ
24 同期ネットワーク時系列データ
25 ネットワーク評価情報
40 クリーク評価情報
51 CPU
52 メモリ
55 補助記憶装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33