(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】新規な化合物及びその用途
(51)【国際特許分類】
C07D 495/14 20060101AFI20241213BHJP
H10K 10/46 20230101ALI20241213BHJP
【FI】
C07D495/14 CSP
H10K10/46
(21)【出願番号】P 2022549389
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(86)【国際出願番号】 CN2020075847
(87)【国際公開番号】W WO2021163921
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】岑 鼎海
(72)【発明者】
【氏名】池田 大次
(72)【発明者】
【氏名】横尾 健
(72)【発明者】
【氏名】赤井 泰之
(72)【発明者】
【氏名】岡本 敏宏
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 忠法
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 純一
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0034915(US,A1)
【文献】国際公開第2013/125599(WO,A1)
【文献】特開2015-195362(JP,A)
【文献】特開2014-024844(JP,A)
【文献】特許第6008158(JP,B2)
【文献】国際公開第2017/022761(WO,A1)
【文献】特開2018-064101(JP,A)
【文献】特開2017-171607(JP,A)
【文献】特開2016-146435(JP,A)
【文献】国際公開第2010/024388(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 495/14
H10K 10/46
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物。
【化1】
[式(1)中、X
1は、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はテルル原子であり、X
2及びX
3は、同一又は異なって、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はテルル原子である。ただし、X
2及びX
3が同時に炭素原子である場合は除く。R
1及びR
2は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1~40のアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基、炭素数2~22のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数3~40のシクロアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、又は1価の複素環基であり、R
3~R
10は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~40のアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基、炭素数2~22のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数3~40のシクロアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、又は1価の複素環基である。破線を含む二重線は、単結合又は二重結合を表す。
前記X
2
及び前記X
3
、並びに、前記破線を含む二重線を含む5員環は芳香環である。]
【請求項2】
式(1’)で表される、請求項1に記載の化合物。
【化2】
[式(1’)中、X
1、X
2及びX
3は、それぞれ、式(1)中のものと同じであり、R
1’及びR
2’は、同一又は異なって、炭素数1~40のアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基、炭素数2~22のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数3~40のシクロアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、又は1価の複素環基である。破線を含む二重線は、単結合又は二重結合を表す。
前記X
2
及び前記X
3
、並びに、前記破線を含む二重線を含む5員環は芳香環である。]
【請求項3】
式(1’)において、X
1が硫黄原子、X
2及びX
3の何れか一方が炭素原子で他方が硫黄原子である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
式(1-4)で表される化合物から、式(1-5)で表される化合物を得る工程を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物の製造方法。
【化3】
[式(1-4)、(1-5)中、X
1、X
2、X
3及び破線を含む二重線は、それぞれ、式(1)のものと同じ内容を示す。
前記X
2
及び前記X
3
、並びに、前記破線を含む二重線を含む5員環は芳香環である。]
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物と、少なくとも1種類の溶剤とを含有する有機半導体溶液組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の有機半導体溶液組成物から形成される有機半導体膜。
【請求項7】
請求項6に記載の有機半導体膜を有する有機薄膜トランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な化合物及びその用途に関する。更に詳しくは、新規な化合物及びその製造方法、該化合物を含む有機半導体溶液組成物、該有機半導体溶液組成物から形成される有機半導体膜、並びに該有機半導体膜を有する有機薄膜トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無機半導体材料よりも低温で加工できることから製造コストを削減でき、溶液プロセスによりフレキシブル基板デバイス等の大画面化が可能という利点を有する有機半導体材料が注目され、種々の有機半導体材料について盛んに研究開発が行われている。
【0003】
ペンタセンやテトラセン等のアセン化合物は、高いキャリア移動度を有する有機半導体材料として古くから知られているが、化学的安定性や溶媒に対する溶解性が低いという問題があった。
特許文献1は、アセン骨格の一部を硫黄やセレン等に置換することによって化学的安定性が改善された有機化合物を提示し、特許文献2は、アセン骨格に置換基を導入することによって溶解性が改善された有機化合物を提示している。
【0004】
そして、特許文献3には、チオフェン構造やフラン構造を基本骨格に含み、アルキル基等の置換基が導入され、更に対称性の低い非直線型の分子構造を有する有機化合物が、高いキャリア移動度を示しつつ、より改善された化学的安定性と溶解性を有することが示されている。
【0005】
しかしながら、これまでの有機半導体材料は、温度変化に伴う結晶構造中における分子の揺らぎ、有機半導体膜中に存在する結晶粒界、そして有機半導体膜に加えられた外力による変形部分、などに生じる分子間のズレに起因して半導体特性(キャリア移動度など)が低下しやすく、なお改善の余地を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開WO2006/077888号
【文献】国際公開WO2005/080304号
【文献】国際公開WO2013/125599号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
すなわち本発明の課題は、化学的安定性に優れ、溶媒に対する高い溶解性を有し、かつ優れたキャリア移動度を示す化合物を提供することにある。
また、本発明の課題は、上記化合物の製造方法を提供することにある。また、本発明の課題は、上記化合物を含む有機半導体溶液組成物を提供することにある。
また、本発明の課題は、上記有機半導体溶液組成物から形成される有機半導体膜を提供することにある。
また、本発明の課題は、上記有機半導体膜を有する有機薄膜トランジスタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため、最高被占軌道(HOMO、Highest Occupied Molecular Orbital)とHOMOの一つ下の軌道(NHOMO、Next Highest Occupied Molecular Orbital)とを縮退させて、異なる軌道形状を示す二つのπ電子軌道を軌道の重なりに寄与できるようにすると、キャリア移動度が向上し、分子間のズレの影響も小さくなるという考えに基づき検討を行った。その結果、特定のジナフトカルコゲノフェン型の縮合環化合物が高いキャリア移動度を示すことを見出した。本発明はこの知見に基づいて完成したものである。
【0009】
すなわち、本発明は、下記式(1)で表される化合物(有機半導体材料と称する場合がある)を提供する。
【化1】
[式(1)中、X
1は、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はテルル原子であり、X
2及びX
3は、同一又は異なって、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はテルル原子である。ただし、X
2及びX
3が同時に炭素原子である場合は除く。R
1及びR
2は、同一又は異なって、水素原子又は有機基であり、R
3~R
10は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、又は有機基である。R
3とR
4、R
5とR
6、R
7とR
8、R
8とR
9、及び、R
9とR
10は、それぞれが互いに結合して隣接する炭素原子とともに環を形成してもよい。破線を含む二重線は、単結合又は二重結合を表す。]
【0010】
本発明は、また、下記式(1’)で表される化合物を提供する。
【化2】
[式(1’)中、X
1、X
2及びX
3は、それぞれ、式(1)中のものと同じであり、R
1'及びR
2'は、同一又は異なる有機基である。破線を含む二重線は、単結合又は二重結合を表す。]
【0011】
上記式(1’)において、X1が硫黄原子、X2及びX3の何れか一方が炭素原子で他方が硫黄原子、R1'及びR2'が同一又は異なる有機基であるのが好ましい。
【0012】
本発明は、また、式(1-4)で表される化合物から、式(1-5)で表される化合物を得る工程を含む、上記化合物の製造方法を提供する。
【化3】
[式(1-4)、(1-5)中、X
1、X
2、X
3及び破線を含む二重線は、それぞれ、式(1)中のものと同じ内容を示す。]
【0013】
本発明は、また、上記化合物と、少なくとも1種類の溶剤とを含有する有機半導体溶液組成物を提供する。
【0014】
本発明は、また、上記有機半導体溶液組成物から形成される有機半導体膜を提供する。
【0015】
本発明は、また、上記有機半導体膜を有する有機薄膜トランジスタを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の化合物は、化学的安定性に優れ溶媒に対する高い溶解性を有するので、有機半導体溶液組成物の塗布、印刷により、大面積かつ均一性の高い有機半導体膜を形成できる。
本発明の有機半導体膜は、優れたキャリア移動度を示すので、高性能な有機薄膜トランジスタを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】トップコンタクト/ボトムゲート型の有機薄膜トランジスタの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の化合物、該化合物の製造方法、該化合物(有機半導体材料)を含む有機半導体溶液組成物、該有機半導体溶液組成物から形成される有機半導体膜、及び該有機半導体膜を有する有機薄膜トランジスタについて、以下に説明する。
【0019】
[化合物]
本発明の化合物は、式(1)で表される。
【化4】
式(1)中、X
1は、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はテルル原子であり、X
2及びX
3は、同一又は異なって、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はテルル原子である。ただし、X
2とX
3が同時に炭素原子である場合は除く。R
1及びR
2は、同一又は異なって、水素原子又は有機基であり、R
3~R
10は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、又は有機基である。R
3とR
4、R
5とR
6、R
7とR
8、R
8とR
9、及び、R
9とR
10は、それぞれが互いに結合して隣接する炭素原子とともに環を形成してもよい。
【0020】
式(1)中のX1は、より高いキャリア移動度を示す点で、硫黄原子又はセレン原子であることが好ましく、化学的安定性がより向上するという点から、硫黄原子であることがより好ましい。
【0021】
式(1)中のX2及びX3は、より高いキャリア移動度を示す点で、一方が硫黄原子又はセレン原子であって他方が炭素原子であることが好ましく、X2が硫黄原子であってX3が炭素原子であることがより好ましい。
【0022】
上記式(1)中のR1及びR2に係る有機基は、好ましくは、炭素数1~40のアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基、炭素数2~22のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数3~40のシクロアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、又は1価の複素環基であり、より好ましくは、炭素数1~40のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、又は1価の複素環基である。これらは置換基を有していてもよい。
【0023】
上記R1及びR2に係るアルキル基としては、好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数3~20、更に好ましくは炭素数5~15の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であって、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、2-メチルプロピル基、ブチル基、ペンチル基、2,2-ジメチルプロピル基、ヘキシル基、1-メチルペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、2,6-ジメチルオクチル基、イコシル基、2-デシルテトラデシル基、2-ヘキシルドデシル基、2-エチルオクチル基、2-デシルテトラデシル基、2-ブチルデシル基、1-オクチルノニル基、2-エチルオクチル基、2-オクチルデシル基、2-オクチルドデシル基、7-ヘキシルペンタデシル基、2-オクチルテトラデシル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。
【0024】
上記R1及びR2に係るアルケニル基としては、好ましくは炭素数2~18、より好ましくは炭素数2~12、更に好ましくは炭素数2~8の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基であって、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、1-ヘプテニル基、1-オクテニル基、1-ノネニル基、1-デセニル等が挙げられる。
【0025】
上記R1及びR2に係るアルキニル基としては、好ましくは炭素数2~18、より好ましくは炭素数2~12、更に好ましくは炭素数2~8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキニル基であって、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1-ヘキシニル基、2-ヘキシニル基、3-ヘキシニル基、4-ヘキシニル基、5-ヘキシニル基、1-ヘプチニル基、1-オクチニル基、1-ノニニル基、1-デシニル基、トリメチルシリルエチニル基、トリエチルシリルエチニル基、トリ-i-プロピルシリルエチニル基、2-p-プロピルフェニルエチニル基等が挙げられる。
【0026】
上記R1及びR2に係るアリール基としては、好ましくは炭素数6~18、より好ましくは炭素数6~14のアリール基であって、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、アセナフチレニル基、ビフェニリル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、p-(t-ブチル)フェニル基、4-メチル-2,6-ジプロピルフェニル基、4-フルオロフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、p-ペンチルフェニル基、3,4-ジペンチルフェニル基、p-ヘプトキシフェニル基、3,4-ジヘプトキシフェニル基等が挙げられる。
【0027】
上記R1及びR2に係るシクロアルキル基としては、好ましくは炭素数3~20、より好ましくは炭素数4~20の環状アルキル基であって、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0028】
上記R1及びR2に係るアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1~18、より好ましくは炭素数1~12、更に好ましくは炭素数1~8の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基であって、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基等が挙げられる。
【0029】
上記R1及びR2に係る1価の複素環基としては、例えば、環内に炭素原子と、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる1~4個のヘテロ原子とを有する5~22員(好ましくは5又は6員)の芳香族複素環基、脂肪族複素環基が挙げられる。
【0030】
上記芳香族複素環基としては、例えば、単環式芳香族複素環基(フラニル基、2-ヘキシルフラニル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンズチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、セレノフェニル基等)、縮合芳香族複素環基(キノリル基、イソキノリル基等)などが挙げられる。
【0031】
上記脂肪族複素環基としては、例えば、単環式脂肪族複素環基(ピペリジル基、モルホリニル基、ピペラジニル基、テトラヒドロフリル基等)、縮合脂肪族複素環基(クロメニル基、テトラヒドロキノリニル基、テトラヒドロイソキノリニル基等)などが挙げられる。
【0032】
上記R1及びR2が有してもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子等)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アシル基(ヘキサノイル基、ベンゾイル基等)、アルコキシ基(ブトキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基等)、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アミノ基、アニリノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基(ウレイド基)、アルコキシ及びアリールオキシカルボニルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキル及びアリールチオ基(メチルチオ基、オクチルチオ基等)、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アルキル及びアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基(ジトリメチルシロキシメチルブトキシ基等)、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(-B(OH)2)、ホスファト基(-OPO(OH)2)、スルファト基(-OSO3H)、その他の公知の置換基が挙げられる。
【0033】
上記式(1)中のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられ、中でも、より高いキャリア移動度を示す点で、フッ素原子が好ましい。
【0034】
上記式(1)中のR3~R10に係る有機基は、上記R1及びR2に係るものと同じであり、中でも、炭素数1~40のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素数1~20のアルコキシ基が好ましい。
また、これらが有してもよい置換基も、上記R1及びR2に係るものと同じである。
【0035】
上記R3~R10において、隣接する組み合わせである、R3とR4、R5とR6、R7とR8、R8とR9、及び、R9とR10は、それぞれ、結合して更に環を形成してもよい。上記の環は、芳香環であってもよいし、非芳香環であってもよい。
【0036】
式(1)中の、X2、X3、及び、破線を含む二重線を含む5員環は、破線を含む二重線の両方が単結合であれば非芳香環であり、一方が二重結合であれば芳香環であるが、芳香環であることが好ましい。
【0037】
本発明の化合物は、屈曲性のジナフトカルコゲノフェン型の構造と置換基の導入により、溶剤に対して高い溶解性を有するため、所望の濃度で下記の有機半導体溶液組成物を調製できるので、塗布法・印刷法などの簡便な溶液プロセスによる有機半導体膜の製造に好適に使用できる。
本発明の化合物は、化学的安定性に優れるため、真空蒸着法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、スパッタリング法、レーザー蒸着法、気相輸送成長法等の気相プロセスによる有機半導体膜の製造に使用することもできる。
【0038】
また、本発明の化合物は、安定的に優れたキャリア移動度を示す。この理由は未だ完全に明らかでないが、両端に複素5員環を有する構造によりHOMOとNHOMOのエネルギー準位が非常に近くなりHOMOとともにNHOMOもπ電子軌道の重なりに寄与するためと推測される。
【0039】
本発明の化合物の中でも、溶剤に対する溶解性と軌道の重なりを適度に両立できる点から、式(1’)で表される化合物が好ましい。
【化5】
式(1’)中、X
1、X
2及びX
3は、それぞれ、式(1)中のものと同じであり、R
1'及びR
2'は、同一又は異なる有機基であり、破線を含む二重線は、単結合又は二重結合を表す。
【0040】
上記式(1’)中のR1'及びR2'に係る有機基は、好ましくは、炭素数1~40のアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基、炭素数2~22のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、又は1価の複素環基である。
【0041】
上記式(1’)中のR1'及びR2'に係る、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、1価の複素環基、シクロアルキル基、アルコキシ基、及びこれらが有してもよい置換基は、上記式(1)中のR1及びR2に係るものと同じである。
【0042】
上記式(1’)中の、X1、X2、X3、及び破線を含む二重線に係る内容は、上記式(1)中のものと同じである。
【0043】
上記式(1’)で表される化合物の中でも、X1が硫黄原子、X2及びX3の何れか一方が炭素原子で他方が硫黄原子であって、R1'及びR2'が同一又は異なる有機基である化合物がより好ましい。
【0044】
上記式(1’)で表される化合物の中でも、X
1が硫黄原子、X
2が硫黄原子、X
3が炭素原子であって、R
1'及びR
2'が同一又は異なる有機基である、式(1”)で表される化合物が、更に好ましい。
【化6】
上記式(1”)中のR
1'及びR
2'に係る有機基は、炭素数1~40のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、又は1価の複素環アルキル基、アリール基又は1価の複素環基であって、上記式(1’)中のものと同じである。
【0045】
[化合物の製造方法]
本発明の上記式(1)で表される化合物は、例えば、下記式(1-1)で表される化合物と下記式(1-2)で表される化合物とをクロスカップリングさせて下記式(1-3)で表される化合物を得てから、該式(1-3)で表される化合物のホルミル基をエポキシ化して下記式(1-4)で表される化合物を得る工程と、該式(1-4)で表される化合物から縮合環形成により下記式(1-5)で表される化合物を得る工程と、更に該式(1-5)で表される化合物に置換基を導入する工程を経て製造できる。
【0046】
(クロスカップリング、ホルミル基のエポキシ化)
式(1-4)で表される化合物は、例えば、式(1-1)で表される化合物と式(1-2)で表される化合物とをクロスカップリングさせて式(1-3)で表される化合物を得て、次に、式(1-3)で表される化合物のホルミル基をエポキシ基とする工程を経て製造することができる。
【化7】
式(1-1)~(1-4)中、X
1、X
2、X
3、及び、破線を含む二重線は、それぞれ、式(1)中のものと同じ内容を示し、Aは有機スルホニルオキシ基を示し、Bはボロン酸基(-B(OH)
2)を示す。
【0047】
有機スルホニルオキシ基としては、メタンスルホニルオキシ基、p-トルエンスルホニルオキシ基、トリフルオロメチルスルホニルオキシ基、カンファースルホニルオキシ基等が挙げられ、中でも、トリフルオロメチルスルホニルオキシ基が好ましい。
【0048】
上記Bは、ボロン酸エステル基(ボロン酸ピナコールエステル基、ボロン酸ジイソプロピルエステル基、ボロン酸プロピレングリコールエステル基等)であってもよい。
【0049】
式(1-3)で表される化合物を得る工程では、式(1-1)で表される化合物と式(1-2)で表される化合物とを、一般的な鈴木-宮浦カップリングの条件下で、クロスカップリングさせる。
【0050】
式(1-1)で表される化合物は、例えば、5-ハロゲン化ベンゾフラン、5-ハロゲン化ベンゾチオフェン等を出発原料として、ハロゲン原子のメトキシ置換、4位のホルミル化、メトキシ基の脱保護、有機スルホニルオキシ化などの公知の手段を使用して合成することができる。
【0051】
式(1-2)で表される化合物は、例えば、フラン、チオフェン等をジボランと反応させてボロン酸基(-B(OH)2)を導入し、必要に応じてボロン酸基をエステル化する公知の手段により合成することができる。また、市販品として得ることもできる。
【0052】
式(1-4)で表される化合物は、金属水酸化物と、スルホニウム化合物又はスルホキソニウム化合物とを系内で反応させて得られる硫黄イリドの存在下において、式(1-3)で表される化合物のホルミル基をエポキシ化する反応によって得ることができる。
【0053】
スルホニウム化合物としては、例えば、トリメチルブロモ硫黄(Me3SBr)、トリメチルクロロ硫黄(Me3SCl)及びトリメチルヨード硫黄(Me3SI)等を挙げることができ、スルホキソニウム化合物としては、例えば、トリメチルオキソブロモ硫黄(Me3OSBr)、トリメチルオキソクロロ硫黄(Me3OSCl)及びトリメチルオキソヨード硫黄(Me3OSI)等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
ホルミル基をエポキシ基とする反応の反応温度(溶液温度)は、好ましくは0~100℃、より好ましくは50~80℃である。反応時間は、通常1~50時間、好ましくは1~25時間である。
【0055】
塩基触媒としては、例えば、KOH、NaOHなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
塩基触媒の使用量は、式(1-3)で表される化合物1molに対して、好ましくは1~10molである。
【0056】
Me3SIの使用量は、式(1-3)で表される化合物1molに対して、好ましくは2~4molである。
【0057】
(縮合環の形成)
式(1-5)で表される化合物を得る工程では、ルイス酸触媒の存在下、式(1-4)で表される化合物中のエポキシ基を構成する炭素を含む芳香族6員環を有する縮合環が形成される。
【化8】
式(1-4)、(1-5)中、X
1、X
2、X
3、及び、破線を含む二重線は、それぞれ、式(1)中のものと同じ内容を示す。
【0058】
反応温度(溶液温度)は、好ましくは0~120℃、より好ましくは20~100℃である。反応時間は、通常1~100時間、好ましくは1~50時間である。
【0059】
ルイス酸触媒としては、例えば、塩化インジウム(III)、塩化アルミニウム(III)、塩化タリウム(III)などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
ルイス触媒の使用量は、式(1-1)で表される化合物1molに対して、好ましくは0.1~2molである。
【0060】
(置換基の導入)
上記式(1)で表される化合物は、上記式のR1~R10に係るハロゲン原子や有機基を、公知の芳香族置換反応や公知のクロスカップリング反応を用いて式(1-5)で表される化合物に導入することにより、得ることができる。
【0061】
本発明の上記式(1’)で表される化合物は、同様に、上記式(1-5)で表される化合物に、上記のR1'及びR2'に係る有機基を導入することにより得ることができる。
【0062】
本発明の上記式(1”)で表される化合物も、同様に、例えば、上記式(1-1)で表される化合物として4-ホルミル-5-トリフルオロメチルスルホニルオキシベンゾチオフェン、上記式(1-2)で表される化合物として2,5-チオフェンジボロン酸を使用して得られた上記式(1-5)で表される化合物に、上記のR1'及びR2'に係る有機基を導入することにより得ることができる。
【0063】
上記式(1)、(1’)、(1”)、及び上記式(1-1)~(1-5)で表される化合物を得る反応は、溶媒の存在下で行うのが好ましい。
溶媒としては、例えば、水、アルコール溶媒(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブチルセロソルブ等)、含窒素溶媒(アセトニトリル、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド等)、ハロゲン化炭化水素溶媒(ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等)、エーテル溶媒(ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン、ジクロロメチルメチルエーテル等)、グリコール溶媒(エチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル-2-アセタート等)、芳香族炭化水素溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール等)、ケトン溶媒(メチルイソブチルケトン、アセトン等)、エステル溶媒(酢酸エチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン等)が挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0064】
また、各反応において得られる式(1-1)~(1-5)で表される化合物は、カラムクロマトグラフィーや再結晶等の公知の精製方法により精製してから次の反応に用いてもよいし、粗生成物のまま次の反応に用いてもよい。
【0065】
[有機半導体溶液組成物]
本発明の有機半導体溶液組成物は、上記化合物(有機半導体材料)と溶剤を含有する。有機半導体材料は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0066】
(溶剤)
上記溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素溶媒(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等)、ハロゲン化炭化水素溶媒(ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等)、エーテル溶媒(ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、アルコール溶媒(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブチルセロソルブ等)、エステル溶媒(酢酸エチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン等)、ケトン溶媒(メチルイソブチルケトン、アセトン等)、含窒素溶媒(アセトニトリル、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド等)、含硫黄溶媒(ジメチルスルホキシド等)、ハロゲン化芳香族炭化水素溶媒(クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、1-クロロナフタレン、2-クロロナフタレン、4-クロロビフェニル等)、芳香族炭化水素溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレン等)、脂環族炭化水素溶媒(シクロヘキサン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等)などの有機溶媒が挙げられる。
【0067】
上記溶剤の沸点は、20~120℃が好ましく、20~100℃がより好ましい。
【0068】
本発明の組成物に用いる溶剤の含水率は、0.25重量%以下が好ましい。本発明の組成物中の含水率が高い場合、結晶化の阻害や水分のキャリアトラップによりキャリア移動度が低下する傾向がある。上記含水率は、0.15重量%以下が好ましく、更に好ましくは0.05重量%以下である。なお、含水率は、カールフィッシャー法により測定することができる。
【0069】
本発明の有機半導体溶液組成物は、上記有機半導体材料と上記溶剤以外にも、必要に応じて、バインダーとして高分子化合物を含んでいてもよい。
高分子化合物を含むと、溶解性の低い有機半導体材料を用いる場合であっても、下記のエッジキャスト法又は連続エッジキャスト法において高速で成膜できるなど、有機半導体溶液組成物の成膜性が向上する。
【0070】
(高分子化合物)
本発明の有機半導体が含んでもよい高分子化合物は、有機半導体材料の電気的特性に影響を与えないことが好ましく、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート、ポリ(2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート)等)、ポリスチレン樹脂(ポリスチレン、ポリαメチルスチレン、ポリビニルフェノール、ポリペンタフルオロスチレン等)、セルロース樹脂、ブチラール樹脂(ポリビニルブチラール等)、ポリビニル樹脂(ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等)、ベンゾシクロブテン樹脂、シリコーン樹脂(かご状オリゴシルセスキオキサン等)、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロオレフィン等)、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。
【0071】
本発明の有機半導体溶液組成物が上記高分子化合物を含む場合、その含有量は、上記有機半導体溶液組成物100重量%中、例えば、0.01~20重量%が好ましく、0.1~10重量%がより好ましい。高分子化合物の含有量がこの範囲内にあると、有機半導体溶液組成物の成膜性が向上する傾向がある。
【0072】
本発明の有機半導体溶液組成物全量における溶剤の含有量(2種以上含有する場合はその総量)は、例えば、99.999重量%以下が好ましく、より好ましくは99.990重量%以下、更に好ましく99.900重量%以下である。下限としては、例えば、90重量%以上が好ましく、より好ましくは93重量%以上、更に好ましくは95重量%以上である。
【0073】
本発明の有機半導体溶液組成物中の溶質(特に、有機半導体材料)の含有量(2種以上含有する場合はその総量)は、例えば、溶剤100重量部に対して、例えば、0.02重量部以上が好ましく、より好ましくは0.03重量部以上、更に好ましくは0.04重量部以上である。上限としては、1重量部以下が好ましく、より好ましくは0.5重量部以下、更に好ましくは0.1重量部以下である。
【0074】
本発明の有機半導体溶液組成物は、例えば、上記溶剤、上記溶質、及び、必要に応じて配合される高分子化合物とを混合し、空気、窒素又はアルゴン雰囲気下、30~200℃において0.1~5時間加熱することにより調製できる。
【0075】
本発明の有機半導体溶液組成物は、溶剤に対して優れた溶解性を有する上記有機半導体材料について種々の濃度に調製でき、これから形成される有機半導体膜の結晶化状態を結晶から非晶まで広範囲で任意に変化させることができる。有機半導体膜の結晶化状態が変化するとキャリア移動度も変化する。したがって、本発明の有機半導体溶液組成物を用いることにより有機半導体膜の結晶化状態を任意に調整できるので、有機半導体膜のキャリア移動度を安定的に再現できる。
【0076】
[有機半導体膜]
本発明の有機半導体膜は、上述の本発明の有機半導体溶液組成物を基材に塗布又は印刷し、乾燥することにより形成できる。
【0077】
有機半導体溶液組成物を基材上に塗布又は印刷する方法としては、例えば、塗布法(ドロップキャスト法、スピンコート法、ディップコート法、ブレード法、エッジキャスト法、連続エッジキャスト法等)、印刷法(スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、マスク印刷法、オフセット印刷法、フレキソグラフィー印刷法、マイクロコンタクト印刷法、平版印刷法、凹版印刷法、凸版印刷法等)などが挙げられる。中でも、低コストで大面積の有機単結晶半導体膜が得られやすい点で、エッジキャスト法、連続エッジキャスト法等が好ましい。
【0078】
有機半導体溶液組成物を塗布又は印刷できる基材の素材としては、例えば、ガラス、金属(金、銅、銀等)、無機物質(結晶性シリコン基板、アモルファスシリコン基板等)、樹脂(トリアセチルセルロース樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂等)などが挙げられる。
中でも、低コストで大面積の有機半導体膜を得ることができる点で、樹脂の基板が好ましい。
【0079】
乾燥は、例えば、常圧下あるいは減圧下で、20~200℃で0.5~24時間加熱することによって実施できる。加熱は、有機半導体溶液組成物に対して行ってもよく、基板に対して行ってもよい。
【0080】
本発明の有機半導体膜は、また、結晶構造の制御や溶剤の揮発のために形成後に熱処理されてもよい。
【0081】
有機半導体膜の膜厚は、1~1000nmが好ましく、1~100nmがより好ましく、1~50nmが更に好ましい。
【0082】
本発明の有機半導体膜は、形成後に基材から剥離して使用してもよいし、基板等上に形成されたままの状態で使用してもよい。
【0083】
本発明の有機半導体膜は、上記塗布法により均一に塗布されてからフォトリソグラフィー法等により所定の形状にパターニングされてもよいし、上記印刷法により所定の形状のパターンとなるように印刷されてもよい。
【0084】
[有機薄膜トランジスタ]
本発明の有機薄膜トランジスタは、本発明の有機半導体膜を半導体層として有する。
本発明の有機薄膜トランジスタは、基板上に、ゲート電極と、有機半導体膜(半導体層)と、ゲート電極及び有機半導体膜(半導体層)の間に設けられたゲート絶縁膜と、有機半導体膜(半導体層)に接して設けられ、有機半導体膜(半導体層)を介して連結されたソース電極及びドレイン電極とを有する。この有機薄膜トランジスタにおいては、有機半導体膜とゲート絶縁膜が隣接して設けられる。
本発明の有機薄膜トランジスタは、上記各層を備えていればその構造については特に限定されず、例えば、ボトムコンタクト型(ボトムコンタクト/ボトムゲート型、ボトムコンタクト/トップゲート型)、又は、トップコンタクト型(トップコンタクト/ボトムゲート型、トップコンタクト/トップゲート型)などのいずれの構造であってもよく、中でも、トップコンタクト/ボトムゲート型が好ましい。
【0085】
好ましい例であるトップコンタクト/ボトムゲート型の断面模式図を
図1に示す。
トップコンタクト/ボトムゲート型有機薄膜トランジスタ10は、基板100、導電性膜(ゲート電極)101、ゲート絶縁膜102、有機半導体膜103、ソース電極104A、ドレイン電極104B、保護層105を有する。
【0086】
本発明の有機薄膜トランジスタの用途としては、例えば、電子ペーパー、ディスプレイデバイス、センサ、電子タグ、センサ等などが挙げられる。
【実施例】
【0087】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0088】
実施例及び比較例に係る化合物を合成し、キャリア移動度を評価した。
【0089】
<キャリア移動度の評価方法>
下記の方法により製造した有機薄膜トランジスタを作製し、セミオートプローバー(ベクターセミコン社製、AX-2000)を接続した半導体パラメーターアナライザー(Agilent社製、4156C)を用いて、1気圧の常圧大気下(温度:室温)におけるキャリア移動度を評価した。
キャリア移動度μ(cm2/Vs)は、有機薄膜トランジスタのソース電極-ドレイン電極間に-150Vの電圧を印加し、ゲート電圧を-5V~-150Vの範囲で変化させることによってIdを導出し、ドレイン電流Idに係る下記式を用いて算出した。
【0090】
Id=(W/2L)μCi(Vg-Vth)2
式中、Lはゲート長、Wはゲート幅、μはキャリア移動度、Ciはゲート絶縁膜の単位面積当たりの容量、Vgはゲート電圧、Vthは閾値電圧を、それぞれ表す。
【0091】
<化合物の同定>
実施例に係る化合物、及び各中間化合物の同定は、テトラメチルシランを内部標準とする1H-NMR(400MHz)により、行った。溶媒として、重水素化クロロホルム(CDCl3)又は1,1,2,2-テトラクロロエタン-d2(CDCl2CDCl2)を用いた。
【0092】
[実施例1]
下記化合物C10-TBNTを合成し、キャリア移動度を評価した。
【0093】
<合成法>
化合物C10-TBNTを下記の工程を経て合成した。
【0094】
(中間化合物1bの合成)
【化9】
上記スキーム中、MeONaはナトリムメトキシド、DMFはN,N-ジメチルホルムアミドを示す。
【0095】
アルゴン雰囲気下、室温(28℃)において、5-ブロモベンゾチオフェン1a(50.0g、235mmol)のN,N-ジメチルホルムアミドとメタノールの混合溶媒(300mL、DMF/MeOH=250mL/50mL)溶液に、ナトリムメトキシド(19.0g、352mmol)を加え、撹拌しつつ110℃まで昇温した。110℃において更に臭化銅(3.37g、23.5mmol)を加え、懸濁液を110℃において5時間撹拌した。懸濁液を室温に冷却後、塩化アンモニウム水溶液100mLを注いで反応を停止した。これを酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥してから減圧濃縮し、赤色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィーで精製(展開溶媒=石油エーテル:酢酸エチル=10:1(体積比))して、白色固体として、化合物1b(34.0g、207mmol、収率38%)を得た。
【0096】
1H-NMR(CDCl3、室温) δ:7.74(d、1H、J=8.4Hz)、7.44(d、1H、J=5.6Hz)、7.28(d、1H、J=2.4Hz)、7.26(d、1H、J=5.6Hz)、7.02(dd、1H、J1=2.4Hz、J2=8.4Hz)、3.88(s,3H)
【0097】
(中間化合物1cの合成)
【化10】
上記スキーム中、DCMはジクロロメタンを示す。
【0098】
アルゴン雰囲気下、-40℃において、化合物1b(10.0g、60.9mmol)のジクロロメタン(600mL)溶液に、四塩化スズ(1mol/Lジクロロメタン溶液、124mL、124mmol)を加え、更にジクロロメチルメチルエーテル(8.3mL、91.3mmol)を加え、混合液を-70~-50℃において3時間撹拌した。その後、室温になるまで撹拌しつつ放置した。混合液を0℃に冷却した後、炭酸水素カルシウム水溶液500mLを注ぎ、ガスが発生しなくなるまで2時間撹拌した。これをジクロロメタンで抽出し、減圧濃縮して赤色固体を得た。これをカラムクロマトグラフィーで精製(展開溶媒=石油エーテル:酢酸エチル=50:1(体積比))して、赤色固体として、化合物1c(9.8g、51.2mmol、収率84%)を得た。
【0099】
1H-NMR(CDCl3、室温) δ:10.74(s、1H)、8.42(d、1H、J=4.8Hz)、8.03(d、1H、J=9.2Hz)、7.68(d、1H、J=5.2Hz)、7.09(d、1H、J=8.8Hz)、4.00(s,3H)
【0100】
(中間化合物1dの合成)
【化11】
上記スキーム中、BBr
3は三臭化ホウ素を示す。
【0101】
アルゴン雰囲気下、室温(28℃)において、化合物1c(19.5g、101mmol)のジクロロメタン(1000mL)溶液に、三臭化ホウ素(12mL、122mmol)を加え、混合液を室温(28℃)において12時間撹拌した。混合液を0℃に冷却した後、水500mLを注ぎ、2時間撹拌した。これをジクロロメタンと酢酸エチルで抽出し、減圧濃縮して赤色固体を得た。これをカラムクロマトグラフィーで精製(展開溶媒=ジクロロメタン)して、赤色固体として、化合物1d(16.9g、94.9mmol、収率84%)を得た。
【0102】
1H-NMR(CDCl3、室温) δ:10.55(s、1H)、7.07(d、1H、J=9.2Hz)、7.71-7.78(m、2H)、7.02(d、1H、J=8.8Hz)
【0103】
(中間化合物1eの合成)
【化12】
上記スキーム中、Tf
2Oはトリフルオロメタンスルホン酸無水物、Tfはトリフルオロメチルスルホニル、DMAPはジメチルプロピオンアミドを示す。
【0104】
アルゴン雰囲気下、-10℃において、化合物1d(10.6g、59.5mmol)とジメチルプロピオンアミド(18.2g、149mmol)のジクロロメタン(600mL)溶液に、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(52mL、30.9mmol)を加え、混合液を室温(28℃)において30分間撹拌した。混合液に0℃の水200mLを注いで反応を停止した。これを1mol/L塩酸350mLで2回、飽和食塩水300mLで2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥してから減圧濃縮して、蛍光固体として化合物1eを得た。
【0105】
1H-NMR(CDCl3、室温) δ:10.61(s、1H)、8.45(d、1H、J=5.4Hz)、8.19(d、1H、J=8.4Hz)、7.87(d、1H、J=5.4Hz)、7.40(d、1H、J=8.4Hz)
【0106】
【0107】
1L三ツ口フラスコに、化合物1e(49.3mmol)、化合物1f(3.68g、21.4mmol)、リン酸三カリウム(17.1g、64.3mmol)と、1,4-ジオキサン600mLと水60mLの混合溶媒を加え、アルゴン置換を3回行った後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(11.4g、9.86mmol)を加え、混合液を110℃において12時間撹拌した。混合液を室温(28℃)に冷却してから塩化アンモニウム水溶液200mLを注ぎ、酢酸エチルで抽出し、減圧濃縮して黄色固体を得た。これを混合溶媒(石油エーテル:酢酸エチル=10:1(体積比))で洗浄し、ろ過して、黄色固体として化合物1g(15.3g)を得た。
【0108】
1H-NMR(CDCl3、室温) δ:10.43(s、1H)、8.50(d、2H、J=5.4Hz)、8.16(d、2H、J=8.2Hz)、7.78(d、2H、J=5.4Hz)、7.61(d、2H、J=8.2Hz)、7.17(s,2H)
【0109】
(中間化合物1hの合成)
【化14】
上記スキーム中、MeCNはアセトニトリルを示す。
【0110】
2L三ツ口フラスコに、化合物1g(31.1mmol)、水酸化カリウム(パウダー、9.6g、171mmol)、トリメチルヨード硫黄(19.1g、93.4mmol)を投入し、アルゴン置換を30分間行った後、アクリロニトリル1600mLを加えた。懸濁液を65~70℃において12時間撹拌した。室温(28℃)に冷却してから、懸濁液から未反応の水酸化カリウムをろ過により除き、水1000mLを注ぎ、ジメチルメタン500mLで4回抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥してから減圧濃縮し、茶色固体を得た。これをカラムクロマトグラフィーで精製(展開溶媒=石油エーテル:酢酸エチル=10:1(体積比))して、茶色固体として化合物1h(8.1g、18.7mmol、収率60%)を得た。
【0111】
1H-NMR(CDCl3、室温) δ:7.87-7.90(m、4H)、7.55(d、1H、J=5.6Hz)、7.49(d、1H、J=8.4Hz)、7.15(s、2H)、4.45-4.46(m、1H)、3.15-3.17(m、1H)、2.83-2.86(m、1H)
【0112】
【0113】
2L三ツ口フラスコに三塩化インジウム(870mg、3.93mmol)を投入し、減圧下で30分間ホットガンを用いて加熱した。ここに化合物1h(3.40g、7.86mmol)を加えてアルゴン置換を3回行った後、ジクロロメタン1300mLを加えた。懸濁液を還流させつつ48時間撹拌した。室温(28℃)になるまで冷却してから、水500mLを注ぎ、ジクロロメタン500mLで4回抽出して減圧濃縮し、茶色固体を得た。これをメタノール300mLで3回、水300mLで2回、メタノール300mLで3回洗浄して減圧乾燥し、灰色固体1i(3.05g、7.70mmol、収率98%)を得た。
【0114】
1H-NMR(CDCl2CDCl2、120℃) δ:8.39-8.50(m、4H)、8.08-8.22(m、6H)、7.68-7.73(m、2H)
【0115】
【0116】
1)1L三ツ口フラスコに化合物1i(4.56g、11.5mmol)を投入し、アルゴン雰囲気下で30分間乾燥した後、テトラヒドロフラン(吸水率50ppm未満)600mLを加え、-60℃まで冷却してからノルマルブチルリチウム(1.6mol/Lヘキサン溶液、25.1mL、40mmol)を加え、混合液を-60℃において30分間撹拌した。混合液が茶色から緑色に変化した後、-10℃まで昇温して30分間撹拌し、更に、再び-60℃まで冷却して2時間撹した。
2)1H-NMHによりリチオ化されたことを確認してから、混合液に1,2-ジブロモ-1,1,2,2-テトラクロロエタン(13.0g、40mmol)を加えて、-60℃において12時間撹拌した。室温(28℃)になるまで昇温してから、水200mLを注ぎ、酢酸エチルで抽出して減圧濃縮し、茶色固体を得た。これをメタノール300mLで3回、水300mLで2回、メタノール300mLで2回、ジクロロメタン100mLで1回洗浄して減圧乾燥し、灰色固体として化合物1j(6.04g、10.9mmol、収率95%)を得た。
【0117】
1H-NMR(CDCl2CDCl2、120℃) δ:7.9-8.5(m、10H)
【0118】
(化合物C10-TBNTの合成)
【化17】
上記スキーム中、PdCl
2(dppf)・CH
2Cl
2は[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム・ジクロロメタン酢酸体を示す。
【0119】
1)アルゴン雰囲気下、0℃において、ノルマルデシルマグネシウムブロミド(0.73mol/Lテトラヒドロフラン溶液、1.85mL、1.35mmol)のトルエン(23mL)溶液に、塩化亜鉛(1.0mol/Lテトラヒドロフラン溶液、1.44mL、1.44mmol)、そこに塩化リチウム(0.5mol/Lテトラヒドロフラン溶液、2.88mL、1.44mml)を加え、0℃において20分間撹拌し、無色透明の亜鉛試薬溶液を得た。
2)室温(28℃)において、亜鉛試薬溶液に化合物1j(250mg、0.451mmol)と[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム・ジクロロメタン錯体(29.5mg、0.0361mmol)を加えて、100℃まで撹拌しつつ昇温して更に2時間撹拌した。室温(28℃)になるまで徐冷してから、メタノールを注いで固体を析出させて濾別し、減圧乾燥して粗生成物を得た。組成生物にオルトジクロロベンゼン140mLを加え120℃まで加熱して溶液とし、これをシリカゲル中を通すことにより精製し、これを更に再結晶により精製(再結晶溶媒=オルトジクロロベンゼン、80℃で加熱溶解後に28℃まで徐冷)して、クリーム色固体として化合物C10-TBNT(218g、0.321mmol、収率71%)を得た。
【0120】
1H-NMR(CDCl2CDCl2、100℃) δ:8.35(d、2H、J=8.7Hz、ArH)、8.32(d、2H、J=8.7、Hz、ArH)、8.06(d、2H、J=8.7、Hz、ArH)、7.95(d、2H、J=8.7、Hz、ArH)、7.73(s,2H、ArH)、3.04(t、4H、J=7.3、Hz、Ar-CH2)、1.82-1.89(m、4H、Ar-CH2-CH2)、1.29-1.57(m、28H、Ar-CH2-CH2-C7H14)、0.88(t、6H、J=7.1Hz、CH3)
【0121】
<有機薄膜トランジスタの作製>
オルトジクロロベンゼン中に、上記化合物C10-TBNTを0.1重量%となるように混合し、120℃で3時間加熱して有機半導体溶液組成物を調製した。
表面に厚さ500nmの熱酸化膜(酸化ケイ素膜)を有するn型シリコン基板(20mm×20mm、厚さ0.4mm)の熱酸化膜の表面を、紫外線-オゾン洗浄し、β-フェネチルトリメトキシシランによって処理した。
上記基板のβ-フェネチルトリメトキシシラン処理面の中央に、ガラス製部材(10mm×2mm、厚さ5mm)を密着状態で載置し、基板を50℃に加熱したところに、上記有機半導体溶液組成物を、ピペットを用いて1滴(約0.05mL)ガラス部材の側部から滴下して、ガラス部材を囲み、凹状のメニスカスを有する液膜とした。
上記液膜を、常圧下、基板温度110℃で2時間、さらに減圧下(10-3Pa)、80℃で12時間加熱して乾燥し、化合物C10-TBNTの結晶を析出させ、その後、ガラス部材を外すことによって、基板上に均一な厚さのリング状の有機半導体膜(膜厚50nm)を形成した。
上記有機半導体膜をマスキングして、テトラシアノキノジメタンを蒸着(厚さ2nm)し、次いで金を蒸着(厚さ40nm)することにより、電界効果トランジスタ特性測定用の有機薄膜トランジスタ(ソース電極及びドレイン電極についてゲート幅(W)110μm、ゲート長(L)100μm、比(W/L)1.1)を得た。
【0122】
<キャリア移動度の評価>
得られた有機薄膜トランジスタについて、上記方法により化合物C10-TBNTのキャリア移動度を評価した結果、2.2cm2/Vsであった。
【0123】
[実施例2]
下記化合物C9-TBNTを、実施例1と同様にして得た化合物1jから合成し、実施例1と同様にしてキャリア移動度を評価した。
【0124】
【0125】
1)アルゴン雰囲気下、0℃において、ノルマルノニルマグネシウムブロミド(0.7mol/Lテトラヒドロフラン溶液、2.29mL、1.62mmol)のトルエン(27mL)溶液に、塩化亜鉛(1.0mol/Lテトラヒドロフラン溶液、1.73mL、1.73mmol)、そこに塩化リチウム(0.5mol/Lテトラヒドロフラン溶液、3.46mL、1.73mmol)を加え、0℃において20分間撹拌し、無色透明の亜鉛試薬溶液を得た。
2)室温(28℃)において、亜鉛試薬溶液に化合物1j(300mg、0.541mmol)と[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム・ジクロロメタン錯体(35.4mg、0.0433mmol)を加えて、100℃まで撹拌しつつ昇温して更に3時間撹拌した。室温(28℃)になるまで徐冷してから、メタノールを注いで固体を析出させて濾別し、減圧乾燥して粗生成物を得た。組成生物にオルトジクロロベンゼン360mLを加え120℃まで加熱して溶液とし、これをシリカゲル中を通すことにより精製し、これを更に再結晶により精製(再結晶溶媒=オルトジクロロベンゼン、80℃で加熱溶解後に28℃まで徐冷)して、クリーム色固体として化合物C9-TBNT(256g、0.378mmol、収率70%)を得た。
【0126】
1H-NMR(CDCl2CDCl2、100℃) δ:8.35(d、2H、J=8.7Hz、ArH)、8.32(d、2H、J=8.7、Hz、ArH)、8.06(d、2H、J=8.7、Hz、ArH)、7.95(d、2H、J=8.7、Hz、ArH)、7.73(s,2H、ArH)、3.04(t、4H、J=7.6、Hz、Ar-CH2)、1.82-1.89(m、4H、Ar-CH2-CH2)、1.30-1.56(m、24H、Ar-CH2-CH2-C6H12)、0.89(t、6H、J=6.4Hz、CH3)
【0127】
化合物C9-TBNTについて、キャリア移動度は6.6cm2/Vsであった。
【0128】
[比較例1]
下記の比較化合物1を特許文献3(国際公開WO2013/125599号)に記載されている合成法に従って合成し、実施例1と同様にしてキャリア移動度を評価した。1.0cm
2/Vsであった。
【化19】
【0129】
以上から、実施例1、2の有機半導体材料は、比較例1の有機半導体材料よりも優れたキャリア移動度を示すことが判った。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明による化合物を含有する有機半導体溶液組成物をインクジェット印刷法やエッジキャスト法に適用することよって、高性能な有機半導体膜及び有機薄膜トランジスタを低コストで得ることができる。
【符号の説明】
【0131】
10 有機薄膜トランジスタ
100 基板
101 導電性膜(ゲート電極)
102 ゲート絶縁膜
103 有機半導体膜
104A 導電性膜(ソース電極)
104B 導電性膜(ドレイン電極)
105 保護膜