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特許7603377基材表面内に形成された凹部を充填するための方法および装置
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  • 特許-基材表面内に形成された凹部を充填するための方法および装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】基材表面内に形成された凹部を充填するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/318 20060101AFI20241213BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20241213BHJP
   H01L 21/762 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
H01L21/318 B
H01L21/31 C
H01L21/76 D
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020023282
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2020136678
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2023-01-31
(31)【優先権主張番号】62/808,251
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519237203
【氏名又は名称】エーエスエム・アイピー・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヤミ・ポア
(72)【発明者】
【氏名】ゼチェン・リュウ
【審査官】原島 啓一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0033606(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0061628(US,A1)
【文献】特表2018-533219(JP,A)
【文献】特開2014-112668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/318
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/312-21/316
H01L 21/32
H01L 21/365
H01L 21/469-21/475
H01L 21/70
H01L 21/74-21/764
H01L 21/86
C23C 16/00-16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面内に形成された凹部を充填する方法であって、
前記基材を反応チャンバに提供するステップと、
前記基材に第一の反応物質を第一のドーズ量で前記凹部の表面上に導入するステップと、
前記基材に第二の反応物質を第二のドーズ量で前記凹部の表面上に導入するステップであって、前記第一および前記第二のドーズが前記凹部の上部で重なり合う領域で重なり合い、前記第一および前記第二のドーズが前記凹部の底部で重なり合わない領域を残す、導入するステップと、
前記基材に第三の反応物質を第三のドーズ量で導入するステップであって、前記第三の反応物質が前記第一および前記第二のドーズが重なり合わない領域において、前記第一または第二の反応物質と反応し、それによって材料を堆積させる、導入するステップと、
前記凹部の堆積された材料をエッチングするステップと、を含む、方法。
【請求項2】
任意の未反応の第一の反応物質をパージするステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一の反応物質を導入するステップ、第二の反応物質を導入するステップ、および第三の反応物質を導入するステップが、前記材料をエッチングするステップの前に繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第一および前記第二の反応物質のうちの一方を飽和状態のドーズで導入し、前記第一および第二の反応物質のうちの他方を亜飽和状態のドーズで導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記材料をエッチングするステップの間、前記材料のエッチング速度は、前記第一および前記第二のドーズが重なり合わない領域に比べて前記重なり合う領域においてより高い、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第一の反応物質を導入するステップ、第二の反応物質を導入するステップ、第三の反応物質を導入するステップ、および材料をエッチングするステップが繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第一の反応物質が窒素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第一の反応物質が、He、Ne、Ar、Kr、Xe、N、NHおよびNからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第二の反応物質がシリコンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
第二の反応物質が、シランアミン、シロキサンアミン、およびシラザンアミンからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第三の反応物質が酸素を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第三の反応物質が、水、過酸化水素、分子状酸素およびオゾンからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第三のドーズ量が飽和状態のドーズである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第一の反応物質が、プラズマにより活性化される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第三の反応物質が、プラズマにより活性化される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記材料をエッチングするステップが、C、CHF、NF3、SF、Cl、BCl、HBr、およびHIのうちの一つまたは複数を含むエッチング剤を使用して実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法に従って形成される半導体構造。
【請求項18】
半導体処理装置であって、
その中に形成された凹部を有する表面を含む基材を収容するための一つまたは複数の反応チャンバと、
第一のバルブを介して前記反応チャンバの一つとガス連通している第一の反応物質のための第一の供給源と、
第二のバルブを介して前記反応チャンバの一つとガス連通している第二の反応物質のための第二の供給源と、
第三のバルブを介して前記反応チャンバの一つとガス連通している第三の反応物質のための第三の供給源と、
第四のバルブを介して前記反応チャンバの一つとガス連通しているエッチング剤源と、
前記第一、第二、第三、および第四のガスバルブに動作可能に接続され、かつ、
前記基材に第一の反応物質を第一のドーズ量で前記凹部上に導入することと、
前記基材に第二の反応物質を第二のドーズ量で前記凹部上に導入することであって、
前記第一および前記第二のドーズが前記凹部の上部で重なり合う領域で重なり合い、前記第一および前記第二のドーズが前記凹部の底部で重なり合わない領域を残す、導入することと、
前記基材に第三の反応物質を第三のドーズ量で導入することであって、前記第三の反応物質が前記第一および前記第二のドーズが重なり合わない領域で、前記第一または第二の反応物質と反応し、それによって材料を堆積させる、導入することと、
前記凹部の堆積された材料をエッチングすることと、を制御するように構成およびプログラムされるコントローラと、を含む、半導体処理装置。
【請求項19】
エッチング剤が、C、CHF、NF3、SF、Cl、BCl、HBr、およびHIのうちの一つまたは複数を含む、請求項18に記載の半導体処理装置。
【請求項20】
エッチング剤源と前記一つまたは複数の反応チャンバとの間に遠隔プラズマをさらに含む、請求項18に記載の半導体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概ね、電子デバイスを製造するための方法及び装置に関する。より具体的には、本発明は、電子デバイスの製造中に基材の表面内に形成される一つまたは複数の凹部を充填するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路(IC)などの電子デバイスの製造中、ギャップ、またはトレンチなどの凹部は、基材内に作成されうる。凹部を充填することは、特定の用途に応じてさまざまな形態をとることができる。
【0003】
典型的なトレンチ充填プロセスは、トレンチ内のボイド形成を含む欠点にさらされる場合がある。トレンチが完全に充填される前に、充填材料がトレンチの上部付近に収縮部を形成する場合、ボイドが形成され得る。このようなボイドは、集積回路上でのデバイスのデバイス絶縁分離及びICの全体的な構造的完全性を損なう可能性がある。残念なことに、トレンチ充填中のボイドの形成を防止することは、しばしばトレンチのサイズを制約する可能性があり、それはデバイスのデバイス充填密度を制限する可能性がある。
【0004】
トレンチがデバイス絶縁分離のために充填される場合、デバイス絶縁分離の有効性を測定する際の重要なパラメータは電界閾値電圧、即ち隣接する絶縁デバイスを結ぶ寄生電流を生成するのに必要な電圧でありうる。電界閾値電圧は、処理中の多くの物理的及び材料特性、例えばトレンチ幅、トレンチ充填材料の誘電率、基材ドーピング、フィールドインプラントドーズ、及び基材バイアスにより影響を受ける可能性がある。
【0005】
トレンチの深さを減少させること、及び/又はトレンチの開口部がトレンチの底部よりも上部でより広くなるようにトレンチの側壁に傾斜をつけることにより、ボイド形成を軽減することができる。トレンチの深さを減少させることにおけるトレードオフは、デバイス絶縁分離の有効性を減少させる可能性があり、一方、傾斜をつけた側壁を有するトレンチのより大きな上部開口部は、他の集積回路の面積を使い果たす可能性がある。こうした問題は、デバイス寸法を縮小しようとするときには問題がますます発生する可能性がある。したがって、凹部を充填するための改善された方法および装置が望まれうる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のさまざまな実施形態は、基材の表面内のトレンチなどの凹部を充填する方法に関する。本開示のさまざまな実施形態が従来の方法の欠点に対処する方法は、以下により詳細に議論されるが、一般的に、本開示のさまざまな実施形態は、基材表面内の凹部を充填するのに適した、改善された方法および装置を提供する。例えば、例示的な方法および装置を使用して、誘電材料などの所望の材料で高アスペクト比の凹部をシームレスに充填することができる。
【0007】
本開示の少なくとも一つの実施形態によると、基材表面内に形成された凹部を充填する方法は、反応チャンバ内に基材を提供するステップと、基材に第一の反応物質を第一のドーズ量で凹部の表面上に導入するステップと、基材に第二の反応物質を第二のドーズ量で凹部の表面上に導入するステップであって、第一および第二のドーズ量が重なり合う領域で重なり合い、第一および第二のドーズ量が重なり合わない領域を残す、導入するステップと、基材に第三の反応物質を第三のドーズ量で導入するステップであって、第三の反応物質が第一および第二のドーズ量が重なり合わない領域において第一または第二の反応物質と反応し、それによって材料を堆積する、導入するステップと、凹部内の堆積された材料をエッチングするステップと、を含む。様々な態様によれば、重なり合う領域内の第一の反応物質の濃度は、第一および第二の領域が重なり合わない領域内の第一の反応物質の濃度とは異なる。第一の反応物質を基材に導入するステップ、第二の反応物質を基材に導入するステップ、および第三の反応物質を基材に導入するステップを含む幾度かの堆積サイクルを、方法を堆積された材料をエッチングするステップに進める前に一回または複数回以上繰り返すことができる。さらに、前記堆積された材料をエッチングするステップと組み合わせた一回または複数回の堆積サイクルを幾度か繰り返して、凹部を充填することができる。さらなる態様によれば、第一および第二の反応物質のうちの一方が飽和状態のドーズ量で、第一および第二の反応物質のうちの他方が亜飽和状態のドーズ量で導入される。さらなる例によれば、堆積された材料をエッチングするステップの間、材料のエッチング速度は、第一および第二の領域が重なり合わない領域に比べて重なり合う領域においてより高くなりうる。反応物質が凹部の上部の重なり合う領域で重なり合うように、第一および第二の反応物質のドーズを有することにより、第一及び第二の反応物質は凹部の上部で反応し、凹部の上部における更なる反応を阻止または軽減する。第一および第二の反応物質が重なり合わない凹部の底部における初期未反応領域では、第一または第二の反応物質は更に第三の反応物質と反応し、それにより底部から上向きに凹部を充填することができる。
【0008】
さらなる実施形態によれば、例えば、本明細書に開示された方法のように、改善されたまたは少なくとも代替的な凹部充填方法を提供するための半導体処理装置が提供される。本開示の少なくとも一つの実施形態によると、半導体処理装置は、その中に形成された凹部を有する表面を含む基材を収容する一または複数の反応チャンバと、第一のバルブを介して反応チャンバの一つとガス連通している第一の反応物質のための第一の供給源と、第二のバルブを介して反応チャンバの一つとガス連通している第二の反応物質のための第二の供給源と、第三のバルブを介して反応チャンバの一つとガス連通している第三の反応物質のための第三の供給源と、第四のバルブを介して反応チャンバの一つとガス連通しているエッチング剤源と、第一、第二、第三、および第四のガスバルブと動作可能に接続され:基材に第一の反応物質を第一のドーズ量で凹部上に導入することと、基材に第二の反応物質を第二のドーズ量で凹部上に導入することであって、第一および第二のドーズが重なり合う領域で重なり合い、第一および第二の領域が重なり合わない領域を残す(例えば、第一および第二のドーズのうちの一方の濃度がごく少量であるか、または第一または第二の反応物質の他方の約1%未満および/または重なり合う領域の同じ反応物質の濃度の約1%未満である場合など)、導入することと、基材に第三の反応物質を第三のドーズ量で導入することであって、第三の反応物質が第一および第二の領域が重なり合わない領域において第一または第二の反応物質と反応し、それによって材料を堆積させる、導入することと、凹部の堆積された材料をエッチングすることと、を制御するように構成および制御されたコントローラと、を含む。第一の反応物質を導入すること、第二の反応物質を導入すること、および第三の反応物質を導入することを含む堆積サイクルは、上述のように、堆積された材料をエッチングするステップの前に繰り返され得る。同様に、前記堆積された材料をエッチングするステップと組み合わせた一回または複数回の堆積サイクルを幾度か繰り返して、凹部を充填することができる。
【0009】
本開示のなおさらなる例示的実施形態によれば、半導体構造は、本明細書に記載の方法および/または装置を使用して形成されうる。
【0010】
先行技術を超えて達成される本発明及び利点を要約する目的で、本発明のある特定の目的及び利点が本明細書において上記に説明される。当然のことながら、必ずしもこうした目的または利点のすべてが本発明の任意の特定の実施形態によって達成されなくてもよいことが理解されるべきである。それ故に、例えば本明細書に教示または示唆するような一利点または一群の利点を達成または最適化する様態で、本明細書で教示または示唆され得るような他の目的または利点を必ずしも達成することを必要とせずに、本発明が具体化または実行されてもよいことを当業者は認識するであろう。当業者には、これらのおよび他の実施形態は、図面を参照して、以下のある特定の実施形態の詳細な説明から容易に明らかとなり、本発明は、開示されるいかなる特定の実施形態にも限定されない。
【0011】
本開示の例示的な実施形態のより完全な理解は、以下の例示的な図面に関連して考慮される場合、発明を実施するための形態及び特許請求の範囲を参照することによって得られることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1Aは、本開示の少なくとも一つの実施形態による、凹部を充填するために適切なPEALD(プラズマ強化原子層堆積)装置の概略図を図示する。図1Bは、本開示の少なくとも一つの実施形態による、使用可能なフローパスシステム(FPS)を用いる前駆体供給システムの概略図を図示する。
図2図2は、本開示の少なくとも一つの実施形態による、凹部を充填するための方法のフローチャートを図示する。
図3図3は、本開示の別の実施形態による、凹部を充填するための方法のフローチャートを図示する。
図4図4は、本開示の別の実施形態による構造を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ある特定の実施形態および実施例を以下に開示するが、それらは、本発明が具体的に開示する本発明の実施形態および/または用途、ならびにその明白な変更および均等物を超えて拡大することは、当業者により理解されるであろう。それ故に、開示される本発明の範囲は、以下に説明される特定の開示された実施形態によって限定されるべきではないことが意図される。
【0014】
ここで図を参照すると、図2は本開示の少なくとも一つの実施形態による方法100のフローチャートを示す。方法100は、例えば、構造の製造中に作成される、ギャップまたは特徴と呼ばれることがある、一つまたは複数の凹部を充填するのに使用することができる。凹部は、40またはさらには20nm未満の幅であってもよく、および/または40、100、200またはさらに400nmを超える深さであってもよい。凹部のアスペクト比は、例えば、約5:1~約30:1の範囲でありうる。
【0015】
図2に示されるように、方法100は、反応チャンバに基材を提供するステップ(ステップ105)と、基材に第一の反応物質を第一のドーズ量で凹部の表面上に導入するステップ(ステップ110)と、基材に第二の反応物質を第二のドーズ量で凹部の表面上に導入するステップ(ステップ120)と、基材に第三の反応物質を第三のドーズ量で導入するステップであって、第三の反応物質が、第一および第二のドーズが重なり合わない領域で第一または第二の反応物質と反応し、それによって材料を堆積させる、導入するステップ(ステップ130)と、凹部の堆積された材料をエッチングするステップ(ステップ140)と、を含む。
【0016】
ステップ105は、基材を反応チャンバに提供することを含む。本明細書で使用する場合、「基材」は、その上に材料を堆積することができる表面を有する任意の材料を指す。基材は、バルク材料、例えばシリコン(例えば、単結晶シリコン)を含んでもよく、またはバルク材料の上を覆う一つまたは複数の層を備えてもよい。更に、基材は様々な形態、凹部(例えばトレンチまたはビア)、ライン、および基材の層の少なくとも一部の中またはその上に形成されるようなものなどを含み得る。特定の例として、基材は、SiN、SiOxおよび/またはWの層を含むことができ、これらの層の少なくとも一つはその中に形成された少なくとも一つの凹部を有する。
【0017】
ステップ105の間、基材は、例えば、基材ヒーターおよび/または放射または他のヒーターを使用して、所望温度にすることができる。ステップ110~130または110~140の間の温度は、約100℃~約550℃または約250℃~約450℃であってもよい。そのようなステップの間の反応チャンバ内の圧力は、約1~約9または約3~約7Torrであってもよい。
【0018】
開示の様々な例によれば、反応物質が凹部の上部で重なり合うように、第一および第二の反応物質のドーズを有することにより、第一及び第二の反応物質は上部(重なり合う領域)で反応し、凹部の上部における更なる反応を阻止または軽減することができる。第一および第二の反応物質が重なり合わなかった凹部の底部では(例えば、反応物質のうちの一つの濃度が顕著に低い―例えば、他方の約1パーセント未満および/または重なり合う領域の濃度の約1パーセント未満であるなど)、反応物質はなお第三の反応物質と反応してそれによって材料を堆積させることができる。
【0019】
本開示の実施例によると、第一および第二の反応物質のうちの一方のドーズは飽和状態であり(例えば、比較的高量または高濃度および/または長いパルス時間など)そのため前述の第一および第二の反応物質うちの一方が凹部の全体または実質的に全体を被覆し、一方、第一および第二の反応物質のうちの他方のドーズは亜飽和状態であり(例えば、比較的短いパルス時間および/または低濃度/低量など)第一および第二の反応物質を凹部の上(重なり合う)領域のみで重なり合う、または実質的に上(重なり合う)領域のみで重なり合うように促進する。この文脈では、比較的低いとは、他方の反応物質と比較して、一方の反応物質の濃度および/またはパルス量または時間の約10、5、2、または1%以下を意味することができ、比較的高いとは、他方の反応物質が、一方の反応物質について、他方よりも約10、20、50または約100倍大きい濃度および/またはパルス量または時間を有することを意味することができる。
【0020】
堆積サイクルは、ステップ110~130を含むことができる。堆積サイクルは、ループ150で示されるように、凹部を充填するために複数回繰り返すことができる。堆積サイクルは、例えば、約1~10,000回、約5~2,000回、または約10~1,000回繰り返されてもよい。反応チャンバ内の汚染を引き起こす可能性がある反応物質間の直接反応を回避するために、ステップ110~130および/または140のうちの一つまたは複数の(例えば、それぞれ)後に、過剰な反応物質および/または副産物を取り除くことができる。
【0021】
例えば凹部の上部がまだ底部での反応のための反応物質を阻害している場合など、方法100をループ160を介して部分的に繰り返してもよい。また、ループ150を介した完全な繰り返しとループ160を介した部分的な繰り返しとの組み合わせも行われ得る。このようにして、凹部充填方法の速度を上げることができる。
【0022】
上に記した通り、第一および第二の反応物質のうちの一方は飽和状態(例えば比較的多量又は長時間ドーズ)で導入され得、第一及び第二の反応物質のうちの他方は亜飽和状態(例えば比較的少量又は短時間ドーズ)で導入され得る。飽和状態のドーズで供給された反応物質は、凹部内に深く貫入して凹部の底部に達するが、一方、亜飽和状態のドーズで供給された反応物質は凹部内に深く貫入せずに領域に留まる。従って、第一および第二の反応物質との間の反応は、凹部の上部/重なり合う領域においてのみで、または実質的に凹部の上部/重なり合う領域においてのみで起こり、それによって、上部/重なり合う領域内のさらなる反応を阻害または実質的に阻害する。
【0023】
第一および第二の反応物質のうちの一方は潜在的成長反応物質であってもよく、一方、第一および第二の反応物質のうちの他方は潜在的成長反応物質と組み合わせて比較的低い成長をもたらす低成長反応物質を含んでもよい。したがって、第一の反応物質と第二の反応物質との間の反応は、凹部の上部/重なり合う領域における比較的低成長をもたらし得、そのため、上部/重なり合う領域は、凹部の底部が実質的に充填される前は、材料の堆積によって阻害され得ない。
【0024】
第一および第二の反応物質のうちの一方を導入して、一つまたは複数の凹部の全表面を実質的に被覆する、第一および第二の領域のうちの対応する一方を被覆することができる。第一および第二の反応物質のうちの一方は、他方の反応物質に依存して潜在的成長をもたらす潜在的成長反応物質とすることができる。
【0025】
潜在的成長反応物質である第一および第二の反応物質のうちの一方は、シリコンを含み得る。第一/第二の成長反応物質は、シランアミン、シロキサンアミン、シラザンアミン(アミノシラン、アミノシロキサン、およびアミノシラザン)からなる群から選択することができる。例えば、潜在的成長反応物質は、シランジアミン、例えばALOHA(商標)SAM.24の名称でAir Liquide(フランス、パリ)により販売されているN,N,N’,N’-テトラエチルシランジアミンを含み得る。
【0026】
実質的な低成長反応物質は、He、Ne、Ar、Kr、Xe、N、NH3、およびNのうちの一つまたは複数を含み得、(直接または遠隔で)プラズマによって任意に活性化され得る。潜在的成長反応物質と組み合わせた窒素は、凹部の上部に比較的低成長をもたらし得る。一部の事例では、潜在的成長反応物質を提供する前に、実質的な低成長反応物質を提供することが有利であり得る。
【0027】
第三の反応物質は、潜在的成長反応物質と組み合わせて比較的高い成長をもたらす高成長反応物質を含むことができる。第三の反応物質が凹部の底部に到達することを確実にするために、第三の反応物を比較的高いドーズ量で導入して、第三の反応物質が凹部の底部の潜在的成長反応物と反応することができる。第一および第二の反応物質はすでに凹部の上部で反応している可能性があるため、第三の反応物質に対するトレンチの上部での反応は阻止され得る。
【0028】
第三の反応物質は、水、過酸化水素、分子状酸素およびオゾンからなる群から選択される一つまたは複数の反応物質などの酸化剤を含んでもよく、これはまた(直接または遠隔で)プラズマによって活性化され得る。シランアミン(例えば、例えばN,N,N’,N’-テトラエチルシランジアミンなどのシランジアミン)と組み合わせた酸素は、凹部の底部において比較的高成長をもたらし得る。例えば、材料を堆積するために、N,N,N’,N’-テトラエチルシランジアミン、Nプラズマ、そしてOプラズマを周期的な繰り返し反応で供給してもよい。あるいは、材料を堆積するために、Nプラズマ、N,N,N’,N’-テトラエチルシランジアミン、そしてOプラズマを周期的な繰り返し反応で供給してもよい。
【0029】
図2に示すように、少なくとも一つの堆積サイクル(ステップ110~130)の後に、堆積された材料をエッチングするステップ140が実施される。堆積された材料のエッチング速度が、凹部の底部領域(例えば、重なり合わない領域)に対して、凹部の上部(例えば、重なり合う)領域においてより高いように、ステップ140は構成され得る。ループ170に対するループ150、160の幾度かの繰り返しは、例えば、凹部の寸法(例えば、高さ、幅、またはアスペクト比)、構成(例えば、凹部がどれだけ密集しているか)、および/または幾何学的形状(例えば、凹部開口部の形状および/または凹部の壁の形状)に基づいて操作され得る。
【0030】
本開示の様々な例によれば、ステップ140は乾燥エッチングプロセスを含む。ステップ140の間に使用されるエッチング剤は、例えば、直接または遠隔プラズマユニットによって活性化され得る。使用できる例示的なエッチング剤は、ハロゲン:具体的な例はC、式中、xおよびyは整数であり(例えば、CF、C、C、またはC)、CHF、NF、SF、Cl、BCl、HBr、およびHIを含む。N、O、Ar、He、NOx、などの添加ガスを、ステップ140の間に堆積された材料のエッチングを制御するために追加的に使用することができる。特定の例として、ステップ140は、約25℃~約550℃、または約100℃~約300℃の基材温度で実施され得る。反応チャンバ内の圧力は、約0.05Torr~約5Torrまたは約0.2Torr~約3Torrとし得る。エッチング剤および/または添加剤の流量は、約30sccm~約3000sccm、または約100sccm~約1000とすることができる。
【0031】
図3は、本開示の少なくとも一つの実施形態による方法200のフローチャートを示す。方法200は、方法200が、第三の反応物質の前に第一および第二の反応物質のうちの一つを再び基材に導入するステップ230を含む点以外は、方法100に類似している。ステップ205、210、220、240、および250は、図2に関連して上述したステップ105~140と同じまたは類似していてもよい。さらに、方法200は、方法200の部分またはすべてを繰り返すループ260、270を含み得る。
【0032】
例えば、N,N,N’,N’-テトラエチルシランジアミンなどのシリコン反応物質、例えば窒素プラズマを含む窒素反応質、および例えば酸素プラズマを含む酸素反応物質を、その後、堆積された材料をエッチングするステップに進む前に、窒素プラズマを一回または複数回提供し得る。ループ260および/またはループ270は、例えば、約1~10,000回、5~2,000回、または10~1,000回繰り返され得る。シーケンスにステップ230を追加する(例えば、窒素プラズマステップを二倍にする)ことにより、上部の反応物質が反応し、第三の反応物質(例えば、酸素)プラズマが供給される前に実質的に不活性化されることがより確実になる。
【0033】
第三の反応物質は、例えばオゾンなどの酸化剤および/またはシランジアミン、例えばN,N,N’,N’-テトラエチルシランジアミンと組み合わせて高成長をもたらすことができる過酸化水素を含み得る。オゾンおよび/または過酸化水素は、比較的高い成長をもたらすためにシランジアミンと反応させるためにプラズマにより活性化される必要はなく、それはプラズマのエネルギーが凹部内の深くでより低くなり得るので有益である。
【0034】
ステップ210~250の反応物質は、上述のものと同じまたは類似していてもよい。または、潜在的成長反応物質は有機金属、例えば有機アルミニウム、例えばトリメチルアルミニウム(TMA)を含んでいてもよい。潜在的成長反応物質は有機金属、例えば有機アルミニウム、例えばトリメチルアルミニウム(TMA)を含み、実質的な低成長反応物質はオゾンを含んでいてもよい。トリメチルアルミニウムを組み合わせることによりオゾンは、凹部の上部で低成長をもたらすことができる。
【0035】
第三の反応物質は、トリメチルアルミニウムと組み合わせで、凹部の底部における高成長をもたらし得る過酸化水素;トリメチルアルミニウムと組み合わせで、凹部の底部において高成長をもたらし得るヒドラジン;および/またはトリメチルアルミニウムとの組み合わせで、凹部の底部において高成長をもたらし得る水を含んでもよい。
【0036】
図4は、例示的な方法(例えば、方法100または方法200)にしたがっておよび/または本明細書に記載の装置を使用して形成される構造400を図示する。構造400は、基材402、その中に形成される凹部404、堆積された材料406を含む。堆積された材料406は、堆積された材料406における目に見える空隙が形成されないように、シームレスにすることができる。
【0037】
ここで図1Aおよび図1Bを参照すると、半導体処理装置30が図示される。半導体処理装置30は、その中に形成された凹部を有する表面を含む基材を収容する一つまたは複数の反応チャンバ3と、第一のバルブ31を介して反応チャンバの一つとガス連通している第一の反応物質のための第一の供給源21と、第二のバルブ32を介して反応チャンバの一つとガス連通している第二の反応物質のための第二の供給源22と、第三のバルブ33を介して反応チャンバの一つとガス連通している第三の反応物質のための第三の供給源25と、第四のバルブ34を介して反応チャンバの一つとガス連通しているエッチング剤源または第四の供給源26と、第一、第二、第三、および第四のガスバルブと動作可能に接続され:基材に第一の反応物質を第一のドーズ量で凹部上に導入することと、基材に第二の反応物質を第二のドーズ量で凹部上に導入することであって、第一および第二のドーズが重なり合う領域で重なり合い、第一および第二の領域が重なり合わない領域を残す、導入することと、基材に第三の反応物質を第三のドーズ量で導入することであって、第三の反応物質が第一および第二の領域が重なり合わない領域において第一または第二の反応物質と反応し、それによって材料を堆積させる、導入することと、凹部の堆積された材料をエッチングすることと、を制御するように構成および制御されたコントローラ27と、を含む。図示されていないが、半導体処理装置30は、(例えば、本明細書に記載の添加剤のための、不活性ガスなどのための)追加的な供給源および追加的構成要素を含み得る。
【0038】
任意で、半導体処理装置30は、基材、第一、第二、および第三の反応物質、エッチング剤および/または添加剤のうちの一つまたは複数の温度を上昇させることにより反応を活性化するためのヒーターを備える。ALDプロセスを実施するために特に設計された例示的単一ウェーハ反応器が、ASM International NV(Almere、オランダ)からPulsar(登録商標)、Emerald(登録商標)、Dragon(登録商標)及びEagle(登録商標)の商品名で市販されている。ALDプロセスを実施するために特に設計された例示的なバッチALD反応器はまた、ASM International NV からA400(商標)およびA412(商標)の商品名で市販されている。
【0039】
任意で、半導体処理装置30は、第一、第二、又は第三の反応物質および/またはエッチング剤および/または添加剤のプラズマを生成するように構成及び配置される制御装置と動作可能に接続する無線周波数源を備えることができる。プラズマ増強原子層堆積(PEALD)は、ASM International NV、Almere、オランダから入手可能なEagle(登録商標)XP8 PEALD反応器内で実施することができ、この装置は一つまたは複数の反応物質を活性化するためのプラズマ源を備える。
【0040】
プラズマを用いたプロセスサイクルは、本開示の少なくとも一部の実施形態で使用可能な、望ましくは本明細書に記載のシーケンスを実施するようにプログラムされた制御と併せて、半導体処理装置30を用いて実施されてもよい。図1Aに図示された装置において、反応チャンバ3の内部11(反応領域)に一対の導電性平板電極4、2を互いに平行に対向させて設け、一方の側に電源20からRFパワー(例えば、13.56MHzまたは27MHz)を印加し、他方の側12を電気的に接地することにより、プラズマが電極間で励起される。
【0041】
下部ステージ2(下部電極)には温度調節器が備えられ、その上に配置された基材1の温度は、比較的一定の温度に保持されうる。上部電極4はシャワープレートとしても機能し、反応物質ガス(および任意で希ガス)、前駆体ガス、およびエッチングガスはそれぞれガスライン41~44を通って、そしてシャワープレート4を通って反応チャンバ3に導入される。
【0042】
さらに、反応チャンバ3内には、排気ライン7を有する円形ダクト13が設けられており、これを通って反応チャンバ3の内部11内のガスが排気される。さらに、例えば、反応チャンバ3の下方に配置された搬送チャンバ5には、搬送チャンバ5の内部16(移送区域)を介して反応チャンバ3の内部11内にシールガスを導入するためのシールガスライン24が設けられている。反応区域と搬送区域とを分離するための分離プレート14が設けられている(基材を搬送チャンバ5に搬入および搬送チャンバ5から搬出するのに通過するゲートバルブはこの図から省略されている)。搬送チャンバには排気管6も設けられている。いくつかの実施形態では、多元素膜の堆積及び表面処理は同じ反応空間内で行われるため、基材を空気又は他の酸素含有雰囲気に曝すことなく全ての工程を連続的に実施することができる。いくつかの実施形態では、例えば、供給源21、22、25、および/または26のうちの一つまたは複数から、ガスを励起させるために遠隔プラズマユニットを使用することができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、図1Aに示す装置において、図1Bに図示する不活性ガスの流れと前駆体または反応物質ガスの流れとを切り替えるシステムを用いて、反応チャンバの圧力を実質的に変動させることなく前駆体または反応物質ガスをパルス状に導入することができる。図1Bは、本発明の実施形態によるフローパスシステム(FPS)を用いる前駆体供給システムを例示する(黒いバルブはバルブが閉じていることを示す)。図1Bの(a)に示すように、前駆体を反応チャンバ(図示せず)に供給する場合、まず、キャリアガス、例えばAr(またはHe)がバルブbおよびcを有するガスラインを通って流れ、そしてボトル(貯留部)20に入る。キャリアガスは、ボトル20内の蒸気圧に応じた量の前駆体ガスを運びながらボトル20から流出し、バルブfおよびeを有するガスラインを通って流れ、そして前駆体と共に反応チャンバに供給される。この場合、バルブaおよびdは閉じられている。キャリアガス(例えば、希ガス)のみを反応チャンバに供給する場合、図1Bの(b)に示すように、キャリアガスはボトル20を迂回しながらバルブを有するガスラインを通って流れる。この場合、バルブb、c、d、e、およびfは閉じられている。
【0044】
前駆体を、キャリアガスを用いて供給してもよい。ALDの場合、ALDは自己制御的吸着反応プロセスであるため、堆積させた前駆体分子の数は反応性表面部位の数によって決定され得、かつ飽和後の前駆体曝露とは無関係であり、前駆体の供給は、それにより反応性表面部位がサイクルごとに飽和されるようなものである。堆積のためのプラズマは、例えば、堆積サイクルを通して連続的に流れるガス中で、in situで生成されてもよい。他の実施形態では、プラズマは遠隔で生成され、反応チャンバに提供されてもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、デュアルチャンバ反応器(互いに近接して配置された基材を処理するための二つの区域又は区画)を使用することができ、反応物質ガス及び希ガスを共有ラインを介して供給することができるのに対して、前駆体ガスは非共有ラインを介して供給される。
【0046】
当業者は、本装置が、本明細書の他の箇所に記載された堆積プロセスを実行させるようにプログラムされたまたはそうでなければ構成された、コントローラ27のような一つまたは複数の制御装置を備えることを理解するであろう。コントローラは、さまざまな電源、加熱システム、ポンプ、ロボット、およびガスフローコントローラまたは反応器のバルブと通信することができる。
【0047】
本明細書に記載される構成および/または方法は本質的に例示的であり、これらの特定の実施形態または実施例は、数多くの変形が可能であるので、限定的な意味で考えられるべきではないことが理解されるべきである。本明細書に記載される特定のルーチンまたは方法は、任意の数の加工方策のうちの一つまたは複数を表す場合がある。それ故に、例示された様々な動作は、例示される逐次で実施されてもよく、他の逐次で実施されてもよく、または場合によっては省略されてもよい。
【0048】
本開示の主題は、本明細書で開示される様々なプロセス、システム、及び構成、並びに他の特徴、機能、動作及び/又は特性の、全ての新規かつ自明でない組み合わせ及び部分的組合せ、並びにその任意の及び全ての均等物を含む。
【符号の説明】
【0049】
1 基材
2 下部ステージ(下部電極)
3 反応チャンバ
4 上部電極
5 搬送チャンバ
6 排気管
7 排気ライン
11 反応チャンバの内部
13 円形ダクト
16 搬送チャンバの内部
20 ボトル(貯留部)
21 第一の供給源
22 第二の供給源
25 第三の供給源
26 第四の供給源
27 コントローラ
30 半導体処理装置
31 第一のバルブ
32 第二のバルブ
33 第三のバルブ
34 第四のバルブ
41~44 ガスライン
100 本発明の方法
400 構造
402 基材
404 凹部
406 材料
図1
図2
図3
図4