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  • 特許-金属錯体、組成物、膜及び発光素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】金属錯体、組成物、膜及び発光素子
(51)【国際特許分類】
   C07F 15/00 20060101AFI20241213BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20241213BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20241213BHJP
【FI】
C07F15/00 E CSP
C09K11/06 660
H05B33/14 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020130786
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2022027028
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 真
(72)【発明者】
【氏名】松本 龍二
(72)【発明者】
【氏名】津幡 義昭
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111087414(CN,A)
【文献】特表2015-530982(JP,A)
【文献】特開2021-127335(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0296251(US,A1)
【文献】特表2017-503856(JP,A)
【文献】特開2014-224101(JP,A)
【文献】国際公開第2015/008851(WO,A1)
【文献】特開2007-269734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される金属錯体。
【化1】
[式中、
Mは、ロジウム原子、パラジウム原子、イリジウム原子又は白金原子を表す。
は、1、2又は3を表し、nは、0を表す。但し、Mがロジウム原子又はイリジウム原子の場合、n+nは3であり、Mが白金原子又はパラジウム原子の場合、n+nは2である。
環RC1は、ピリジン環を表し、該ピリジン環は置換基としてアルキル基又はシクロアルキル基を有していてもよい。環RC1が複数個存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
環RC2は、ベンゼン環、ピリジン環又はジアザベンゼン環を表し、これらの環は置換基として式(D-A)、式(D-B)又は式(D-C)で表される基を有していてもよい。環RC2が複数個存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
環RC3は、ベンゼン環、ピリジン環又はジアザベンゼン環を表し、これらの環は置換基としてアルキル基又はシクロアルキル基を有していてもよい。環RC3が複数個存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
及びXは、それぞれ独立に、―C(R―で表される基を表す。
は、水素原子、アルキル基、又は、シクロアルキル基を表す。複数個存在するRは、同一でも異なっていてもよい。]
【化2】
[式中、
DA1、mDA2及びmDA3は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
DAは、ベンゼン環から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子3個を除いた基を表し、置換基としてアルキル基又はシクロアルキル基を有していてもよい。
ArDA1、ArDA2及びArDA3は、それぞれ独立に、フェニレン基を表し、置換基としてアルキル基又はシクロアルキル基を有していてもよい。ArDA1、ArDA2及びArDA3が複数個存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
DAは、フェニル基を表し、置換基としてアルキル基又はシクロアルキル基を有していてもよい。複数個存在するTDAは、同一でも異なっていてもよい。]
【化3】
[式中、
DA1、mDA2、mDA3、mDA4、mDA5、mDA6及びmDA7は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
DAは、ベンゼン環から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子3個を除いた基を表し、置換基としてアルキル基又はシクロアルキル基を有していてもよい。複数個存在するGDAは、同一でも異なっていてもよい。
ArDA1、ArDA2、ArDA3、ArDA4、ArDA5、ArDA6及びArDA7は、それぞれ独立に、フェニレン基を表し、置換基としてアルキル基又はシクロアルキル基を有していてもよい。ArDA1、ArDA2、ArDA3、ArDA4、ArDA5、ArDA6及びArDA7が複数個存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
DAは、フェニル基を表し、置換基としてアルキル基又はシクロアルキル基を有していてもよい。複数個存在するTDAは、同一でも異なっていてもよい。]
【化4】
[式中、
DA1は、0以上の整数を表す;
ArDA1は、フェニレン基を表し、置換基としてアルキル基又はシクロアルキル基を有していてもよい。ArDA1が複数個存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい;
DAは、フェニル基を表し、置換基としてアルキル基又はシクロアルキル基を有していてもよい。]
【請求項2】
式(1-1)で表される金属錯体である、請求項1に記載の金属錯体。
【化5】
[式中、
M、n、n、R及びA-G-Aは、前記と同じ意味を表す;
、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表し、RC21、RC22、RC23及びRC24は、それぞれ独立に、水素原子、式(D-A)、式(D-B)又は式(D-C)で表される基を表す。R、R、R、R、R、R、RC21、RC22、RC23及びRC24が複数個存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【請求項3】
C21、RC22、RC23及びRC24の少なくとも1つが、前記式(D-A)で表される基である、請求項2に記載の金属錯体。
【請求項4】
Mがイリジウム原子であり、n1が3である、請求項1~3のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の金属錯体と、
式(H-1)で表される化合物及び式(Y)で表される構成単位を含む高分子化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と、
を含有する組成物。
【化6】
[式中、
ArH1及びArH2は、それぞれ独立に、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基としてアルキル基又はシクロアルキル基を有していてもよい。
H1及びnH2は、それぞれ独立に、0又は1を表す。nH1が複数個存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。複数個存在するnH2は、同一でも異なっていてもよい。
H3は、0以上の整数を表す。
H1は、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又は2価の複素環基を表し、これらの基は置換基としてアルキル基又はシクロアルキル基を有していてもよい。LH1が複数個存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
H2は、-N(-RH21)-で表される基を表す。LH2が複数個存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。RH21は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基としてアルキル基又はシクロアルキル基を有していてもよい。]
【化7】
[式中、ArY1は、アリーレン基、2価の複素環基、又は、アリーレン基と2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基としてアルキル基又はシクロアルキル基を有していてもよい。]
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の金属錯体と、
正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料、電子注入材料、発光材料、酸化防止剤及び溶媒からなる群より選ばれる少なくとも一種の材料と、
を含有する組成物。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載の金属錯体を含有する膜。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか一項に記載の金属錯体を含有する発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属錯体(詳しくは、発光性を有する金属錯体)、並びに、該金属錯体を含有する組成物、膜及び発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子等の発光素子は、ディスプレイ及び照明の用途に好適に使用することが可能である。発光素子に用いる発光材料として、例えば、非特許文献1では、下記式で表される金属錯体CM2が提案されている。また、発光素子に用いる発光材料として、例えば、特許文献1では、下記式で表される金属錯体1が提案されている。
【0003】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公報2002-066552号
【非特許文献】
【0005】
【文献】M. A. Baldo et al., "Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence", Applied Physics Letters, 75, 4 (1999), pp. 4-6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の金属錯体は、発光スペクトル幅が十分に狭くなかった。
そこで、本発明は、発光スペクトル幅の狭い金属錯体を提供することを目的とする。本発明はまた、該金属錯体を含有する組成物、該金属錯体を含有する膜及び該金属錯体を含有する発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従来(例えば、上記文献に記載の金属錯体を発光素子に用いた場合)、発光素子の発光スペクトル幅が十分に狭くなかったため、所望の発光色以外の余分な発光色を削減する必要があった。そこで、本発明者らは、従来、削減されていた発光を発光素子に利用することに着目し、金属錯体の発光スペクトル幅を狭くして発光素子の発光スペクトル幅を狭くすることにより、削減される発光を減らして多くの発光を発光素子に利用でき、発光効率等の発光特性の優れた発光素子が得られると考えた。上記の考えに基づき、本発明者らは、鋭意検討を行った結果、特定の構造を満たすことにより、金属錯体の発光スペクトル幅の狭くなることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下を提供するものである。
【0008】
式(1)で表される金属錯体。
【0009】
【化2】
【0010】
[式中、
Mは、ロジウム原子、パラジウム原子、イリジウム原子又は白金原子を表す。
は、1、2又は3を表し、nは、0、1又は2を表す。但し、Mがロジウム原子又はイリジウム原子の場合、n+nは3であり、Mが白金原子又はパラジウム原子の場合、n+nは2である。
環RC1は、芳香族複素環を表し、該芳香族複素環は置換基を有していてもよい。環RC1が複数個存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
環RC2は、単環式の芳香族炭化水素環、単環式の芳香族複素環、又は、単環式の芳香族炭化水素環及び単環式の芳香族複素環からなる群から選ばれる2個以上の環が縮合した縮合環を表し、これらの環は置換基を有していてもよい。環RC2が複数個存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
環RC3は、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を表し、これらの環は置換基を有していてもよい。環RC2が複数個存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
及びXは、それぞれ独立に、―C(R―で表される基を表す。
は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、1価の複素環基、置換アミノ基又はハロゲン原子を表すか、2個のRが一体になって2価の基を形成する。これらの基は置換基を有していてもよい。複数個存在するRは、同一でも異なっていてもよい。
-G-Aは、アニオン性の2座配位子を表す。Gは、単結合、又は、A及びAとともに2座配位子を構成する原子団を表す。A及びAは、それぞれ独立に、炭素原子、酸素原子若しくは窒素原子又はそれらを有する原子団を表し、これらの原子団は、環を構成する原子団であってもよい。]
【0011】
環RC2が、ベンゼン環、ピリジン環又はジアザベンゼン環であり、これらの環は置換基を有していてもよい、上記の金属錯体。
【0012】
環RC3が、ベンゼン環、ピリジン環又はジアザベンゼン環であり、これらの環は置換基を有していてもよい、上記の金属錯体。
【0013】
環RC1が、ピリジン環又はジアザベンゼン環であり、これらの環は置換基を有していてもよい、上記のいずれかの金属錯体。
【0014】
環RC2の少なくとも1つが、式(D-A)、式(D-B)又は式(D-C)で表される基を置換基として有する、上記のいずれかの金属錯体。
【0015】
【化3】
【0016】
[式中、
DA1、mDA2及びmDA3は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
DAは、窒素原子、3価の芳香族炭化水素基又は3価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArDA1、ArDA2及びArDA3は、それぞれ独立に、アリーレン基又は2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。ArDA1、ArDA2及びArDA3が複数個存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
DAは、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数個存在するTDAは、同一でも異なっていてもよい。]
【0017】
【化4】
【0018】
[式中、
DA1、mDA2、mDA3、mDA4、mDA5、mDA6及びmDA7は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
DAは、窒素原子、3価の芳香族炭化水素基又は3価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数個存在するGDAは、同一でも異なっていてもよい。
ArDA1、ArDA2、ArDA3、ArDA4、ArDA5、ArDA6及びArDA7は、それぞれ独立に、アリーレン基又は2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。ArDA1、ArDA2、ArDA3、ArDA4、ArDA5、ArDA6及びArDA7が複数個存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
DAは、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数個存在するTDAは、同一でも異なっていてもよい。]
【0019】
【化5】
【0020】
[式中、
DA1は、0以上の整数を表す;
ArDA1は、アリーレン基又は2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。ArDA1が複数個存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい;
DAは、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【0021】
式(1-1)で表される金属錯体である、上記のいずれかの金属錯体。
【0022】
【化6】
【0023】
[式中、
M、n、n、R及びA-G-Aは、前記と同じ意味を表す;
、R、R、R、R、R、RC21、RC22、RC23及びRC24は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、1価の複素環基、置換アミノ基又はハロゲン原子を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。R、R、R、R、R、R、RC21、RC22、RC23及びRC24が複数個存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0024】
C21、RC22、RC23及びRC24の少なくとも1つが、前記式(D-A)で表される基である、上記の金属錯体。
【0025】
が、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基であり、これらの基は置換基を有していてもよい、上記のいずれかの金属錯体。
【0026】
Mがイリジウム原子であり、nが3である、上記のいずれかの金属錯体。
【0027】
上記のいずれかの金属錯体と、
式(H-1)で表される化合物及び式(Y)で表される構成単位を含む高分子化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と、
を含有する組成物。
【0028】
【化7】
【0029】
[式中、
ArH1及びArH2は、それぞれ独立に、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
H1及びnH2は、それぞれ独立に、0又は1を表す。nH1が複数個存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。複数個存在するnH2は、同一でも異なっていてもよい。
H3は、0以上の整数を表す。
H1は、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又は2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。LH1が複数個存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
H2は、-N(-RH21)-で表される基を表す。LH2が複数個存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。RH21は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【0030】
【化8】
【0031】
[式中、ArY1は、アリーレン基、2価の複素環基、又は、アリーレン基と2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【0032】
上記のいずれかの金属錯体と、
正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料、電子注入材料、発光材料、酸化防止剤及び溶媒からなる群より選ばれる少なくとも一種の材料と、
を含有する組成物。
【0033】
上記のいずれかの金属錯体を含有する膜。
【0034】
上記のいずれかの金属錯体を含有する発光素子。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、発光スペクトル幅の狭い金属錯体を提供することができる。更に、本発明によれば、該金属錯体を含有する組成物、該金属錯体を含有する膜及び該金属錯体を含有する発光素子を提供することができる。本発明の金属錯体を含有する組成物、膜及び発光素子の発光スペクトル幅は狭いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】実施例1の金属錯体M1の発光スペクトル、比較例1の金属錯体CM1の発光スペクトル、及び比較例2の金属錯体CM2の発光スペクトルを示すグラフである。
図2】実施例1の金属錯体M1の発光スペクトルのピーク位置に、比較例1の金属錯体CM1の発光スペクトルのピークと比較例2の金属錯体CM2の発光スペクトルのピークとを重ねたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0038】
<共通する用語の説明>
本明細書で共通して用いられる用語は、特記しない限り、以下の意味である。
【0039】
Meはメチル基、Etはエチル基、t-Buはtert-ブチル基、Buはブチル基、Phはフェニル基を表す。
【0040】
水素原子は、重水素原子であっても、軽水素原子であってもよい。
金属錯体を表す式中、中心金属との結合を表す実線は、イオン結合、共有結合又は配位結合を意味する。
【0041】
「高分子化合物」とは、分子量分布を有し、ポリスチレン換算の数平均分子量が1×10以上(例えば、1×10~1×10)である重合体を意味する。
高分子化合物は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフ卜共重合体のいずれであってもよいし、その他の態様であってもよい。
高分子化合物の末端基は、重合活性基がそのまま残っていると、高分子化合物を発光素子の作製に用いた場合に発光特性又は輝度寿命が低下する可能性があるので、好ましくは安定な基である。高分子化合物の末端基としては、好ましくは主鎖と共役結合している基であり、例えば、炭素-炭素結合を介して、高分子化合物の主鎖と結合するアリール基又は1価の複素環基が挙げられる。
「構成単位」とは、高分子化合物中に1個以上存在する単位を意味する。
【0042】
「低分子化合物」とは、分子量分布を有さず、分子量が1×10以下の化合物を意味する。
【0043】
「アルキル基」は、直鎖及び分岐のいずれでもよい。直鎖のアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~10である。分岐のアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~50であり、好ましくは3~30であり、より好ましくは4~10である。アルキル基は、置換基を有していてもよい。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、2-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、2-エチルブチル基、へキシル基、ヘブチル基、オクチル基、2-エチルへキシル基、3-プロピルへプチル基、デシル基、3,7-ジメチルオクチル基、2-エチルオクチル基、2-へキシルデシル基、ドデシル基、及び、これらの基における水素原子の一部又は全部が、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、フッ素原子等で置換された基(例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パ一フルオロブチル基、パ一フルオロへキシル基、パ一フルオロオクチル基、3-フェニルプロピル基、3-(4-メチルフェニル)プロピル基、3-(3,5-ジ-へキシルフェニル)プロピル基及び6-エチルオキシへキシル基)が挙げられる。
「シクロアルキル基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~50であり、好ましくは3~30であり、より好ましくは4~10である。シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。
シクロアルキル基としては、例えば、シクロへキシル基、シクロへキシルメチル基及びシクロへキシルエチル基が挙げられる。
【0044】
「アリール基」は、芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子1個を除いた残りの原子団を意味する。アリ一ル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6~60であり、好ましくは6~30であり、より好ましくは6~18であり、更に好ましくは6~10である。アリール基は、置換基を有していてもよい。
アリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アン卜ラセニル基、2-アン卜ラセニル基、9-アン卜ラセニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、2-フルオレニル基、3-フルオレニル基、4-フルオレニル基、2-フェニルフェニル基、3-フェニルフェニル基、4-フェニルフェニル基、及び、これらの基における水素原子の一部又は全部が、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、フッ素原子等で置換された基が挙げられる。アリール基は、これらの基が複数結合した基を含む。
【0045】
「アルコキシ基」は、直鎖及び分岐のいずれでもよい。直鎖のアルコキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~40であり、好ましくは4~10である。分岐のアルコキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~40であり、好ましくは4~10である。アルコキシ基は、置換基を有していてもよい。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、へキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2-エチルへキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7-ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基、及び、これらの基における水素原子の一部又は全部が、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、フッ素原子等で置換された基が挙げられる。
「シクロアルコキシ基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~40であり、好ましくは4~10である。シクロアルコキシ基は、置換基を有していてもよい。シクロアルコキシ基としては、例えば、シクロへキシルオキシ基が挙げられる。
【0046】
「アリールオキシ基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6~60であり、好ましくは6~48である。アリールオキシ基は、置換基を有していてもよい。
アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、1-アン卜ラセニルオキシ基、9-アン卜ラセニルオキシ基、1-ピレニルオキシ基、及び、これらの基における水素原子の一部又は全部が、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、フッ素原子等で置換された基が挙げられる。
【0047】
「芳香族炭化水素基」とは、芳香族炭化水素から、環を構成する炭素原子に直接結合している水素原子のうち1個以上の水素原子を除いた残りの原子団を意味する。例えば、「3価の芳香族炭化水素基」は、芳香族炭化水素から、環を構成する炭素原子に直接結合している水素原子のうち3個の水素原子を除いた残りの原子団である。
芳香族炭化水素基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6~60であり、好ましくは6~30であり、より好ましくは6~18である。芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ジヒドロフェナントレン、ナフタセン、フルオレン、ピレン、ペリレン又はクリセンから、環を構成する炭素原子に直接結合している水素原子のうち1個以上の水素原子を除いた基、及び、これらの基における水素原子の一部又は全部が置換基で置換された基が挙げられる。芳香族炭化水素基は、これらの基が複数結合した基を含む。
【0048】
「アリーレン基」は、芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた残りの原子団を意味する。アリ一レン基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6~60であり、好ましくは6~30であり、より好ましくは6~18である。アリ一レン基は、置換基を有していてもよい。
アリ一レン基としては、例えば、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、ジヒドロフェナントレンジイル基、ナフタセンジイル基、フルオレンジイル基、ピレンジイル基、ペリレンジイル基、クリセンジイル基、及び、これらの基における水素原子の一部又は全部が置換基で置換された基が挙げられる。アリーレン基は、好ましくは、式(A-1)~式(A-20)で表される基である。アリーレン基は、これらの基が複数結合した基を含む。
【0049】
【化9】
【0050】
【化10】
【0051】
【化11】
【0052】
【化12】
[式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表す。複数存在するR及びRは、各々、同一でも異なっていてもよく、R同士は互いに結合して、それぞれが結合する原子と共に環を形成していてもよい。]
【0053】
「P価の複素環基」(Pは、1以上の整数を表す。)とは、複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうちP個の水素原子を除いた残りの原子団を意味する。P価の複素環基の中でも、芳香族複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうちP個の水素原子を除いた残りの原子団である「P価の芳香族複素環基」が好ましい。
「芳香族複素環式化合物」は、オキサジアゾ一ル、チアジアゾ一ル、チアゾ一ル、オキサゾ一ル、チオフェン、ピロ一ル、ホスホール、フラン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、卜リアジン、ピリダジン、キノリン、イソキノリン、カルバゾ一ル、ジベンゾホスホール等の複素環自体が芳香族性を示す化合物、及び、フェノキサジン、フェノチアジン、ジベンゾボロール、ジベンゾシロール、ベンゾピラン等の複素環自体は芳香族性を示さなくとも、複素環に芳香環が縮環されている化合物を意味する。
P価の複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~60であり、好ましくは3~20であり、より好ましくは4~20である。P価の複素環基は、置換基を有していてもよい。P価の複素環基は、ピリジン、ジアザベンゼン、トリアジン、アザナフタレン、ジアザナフタレン、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾシロール、フェノキサジン、フェノチアジン、アクリジン、ジヒドロアクリジン、フラン、チオフェン、アゾール、ジアゾール又はトリアゾールから、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうち1個以上の水素原子を除いた基、及び、これらの基における水素原子の一部又は全部が置換基で置換された基が挙げられる。P価の複素環基は、これらの基が複数結合した基を含む。
P価の複素環基のうち、1価の複素環基としては、例えば、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジニル基、ピぺリジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、及び、これらの基における水素原子の一部又は全部が、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基等で置換された基が挙げられる。
2価の複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~60であり、好ましくは、3~20であり、より好ましくは4~20であり、更に好ましくは4~15である。2価の複素環基は、置換基を有していてもよい。
2価の複素環基としては、例えば、ピリジン、ジアザベンゼン、トリアジン、アザナフタレン、ジアザナフタレン、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾシロール、フェノキサジン、フェノチアジン、アクリジン、ジヒドロアクリジン、フラン、チオフェン、アゾール、ジアゾール又はトリアゾールから、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうち2個の水素原子を除いた2価の基、及び、これらの基における水素原子の一部又は全部が置換基で置換された基が挙げられる。2価の複素環基は、好ましくは、式(AA-1)~式(AA-34)で表される基である。2価の複素環基は、これらの基が複数結合した基を含む。
【0054】
【化13】
【0055】
【化14】
【0056】
【化15】
【0057】
【化16】
【0058】
【化17】
【0059】
【化18】
【0060】
【化19】
[式中、R及びRは、前記と同じ意味を表す。]
【0061】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示す。
【0062】
「アミノ基」は、置換基を有していてもよく、置換アミノ基が好ましい。アミノ基が有する置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリ一ル基又は1価の複素環基が好ましい。置換アミノ基としては、二置換アミノ基が好ましい。二置換アミノ基としては、例えば、ジアルキルアミノ基、ジシクロアルキルアミノ基及びジアリールアミノ基が挙げられる。
置換アミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビス(4-メチルフェニル)アミノ基、ビス(4-tert-ブチルフェニル)アミノ基及びビス(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)アミノ基が挙げられる。
【0063】
「架橋基」とは、加熱、紫外線照射、近紫外線照射、可視光照射、赤外線照射、ラジカル反応等に供することにより、新たな結合を生成することが可能な基である。架橋基は、好ましくは、式(XL-1)~式(XL-19)で表される架橋基である。
【0064】
【化20】
[式中、RXLは、メチレン基、酸素原子又は硫黄原子を表し、nXLは、0~5の整数を表す。RXLが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。nXLが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。*1は結合位置を表す。これらの架橋基は置換基を有していてもよく、該置換基が複数存在する場合、互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。]
【0065】
「置換基」とは、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基又はシクロアルキニル基を表す。置換基は架橋基であってもよい。
【0066】
本明細書において、「発光スペクトル幅の狭い」とは、発光スペクトルの半値幅(FWHM:Full Width at Half Maximumで表される)が狭いことを意味する。発光スペクトルの半値幅は、発光スペクトルにおいて、発光強度が1となる様に発光スペクトルを規格化したときに、発光強度が0.5となる最も長波長側の波長と、発光強度が0.5となる最も短波長側の波長をそれぞれ求め、両者の差を算出することで求めることができる。
【0067】
発光スペクトルは、後述の膜の作製方法と同様の方法により膜を作製し、該膜のPLスペクトルを室温で測定することで得ることができる。
【0068】
<式(1)で表される金属錯体>
本実施形態に係る金属錯体について説明する。本実施形態に係る金属錯体は、式(1)で表される金属錯体である。
式(1)で表される金属錯体の発光スペクトルの最大ピーク波長は、380nm以上750nm以下であってよく、400nm以上640nm以下であってよく、450nm以上620nm以下であってよく、495nm以上570nm以下であってよく、500nm以上550nm以下であってよい。
式(1)で表される金属錯体の発光スペクトルの半値幅は、100nmであってよく、80nm以下であってよく、60nm以下であってよく、40nm以下であってよく、本実施形態の発光素子の発光特性が優れるので、好ましくは35nm以下であり、より好ましくは30nm以下である。
【0069】
式(1)で表される金属錯体は、M(ロジウム原子、パラジウム原子、イリジウム原子又は白金原子)と、添え字nでその数を規定されている配位子と、添え字nでその数を規定されている配位子とから構成される。
【0070】
Mは、本実施形態の金属錯体の発光スペクトル幅が狭くなるので、イリジウム原子又は白金原子であることが好ましく、イリジウム原子であることがより好ましい。
【0071】
は、Mがロジウム原子又はイリジウム原子の場合、本実施形態の金属錯体の発光スペクトル幅が狭くなるので、2又は3であることが好ましく、3であることがより好ましい。また、nは、Mが白金原子又はパラジウム原子の場合、本実施形態の金属錯体の発光スペクトル幅が狭くなるので、2であることが好ましい。
【0072】
環RC1における芳香族複素環としては、例えば、前述の「P価の複素環基」の項で例示した芳香族複素環が挙げられ、これらの環は置換基を有していてもよい。
環RC1が有していてもよい置換基としては、好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基又は置換アミノ基であり、より好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基又は置換アミノ基であり、更に好ましくは、アルキル基又はシクロアルキル基であり、これらの基は更に置換基を有していてもよい。
環RC1が有していてもよい置換基におけるアリール基、1価の複素環基及び置換アミノ基としては、好ましくは、後述の式(D-A)、式(D-B)又は式(D-C)で表される基であり、より好ましくは、式(D-A)で表される基である。
環RC1が有していてもよい置換基が更に有していてもよい置換基としては、好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基又は置換アミノ基であり、より好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基又は置換アミノ基であり、更に好ましくは、アルキル基又はシクロアルキル基であり、これらの基は更に置換基を有していてもよいが、更に置換基を有さないことが好ましい。
環RC1が有していてもよい置換基が更に有していてもよい置換基におけるアリール基、1価の複素環基及び置換アミノ基の例及び好ましい範囲は、それぞれ、環RC1が有していてもよい置換基におけるアリール基、1価の複素環基及び置換アミノ基の例及び好ましい範囲と同じである。
【0073】
環RC2における単環式の芳香族炭化水素環としては、例えば、前述の「芳香族炭化水素基」の項で例示した芳香族炭化水素環の中で、単環式の芳香族炭化水素環が挙げられ、本実施形態の金属錯体の発光スペクトル幅が狭くなるので、好ましくは、置換基を有していてもよいベンゼン環である。
環RC2における単環式の芳香族複素環としては、例えば、前述の「P価の複素環基」の項で例示した芳香族複素環の中で、単環式の芳香族複素環が挙げられ、本実施形態の金属錯体の発光スペクトル幅が狭くなるので、好ましくは、ピリジン環又はジアザベンゼン環であり、これらの環は置換基を有していてもよい。
環RC2において、単環式の芳香族炭化水素環及び単環式の芳香族複素環からなる群から選ばれる2個以上の環が縮合した縮合環における、単環式の芳香族炭化水素環及び単環式の芳香族複素環の例及び好ましい範囲は、それぞれ、環RC2における単環式の芳香族炭化水素環及び単環式の芳香族複素環の例及び好ましい範囲と同じである。
環RC2において、単環式の芳香族炭化水素環及び単環式の芳香族複素環からなる群から選ばれる2個以上の環が縮合した縮合環における環の個数は、通常2~10個であり、好ましくは2~5個であり、より好ましくは2個又は3個であり、更に好ましくは2個である。環RC2において、単環式の芳香族炭化水素環及び単環式の芳香族複素環からなる群から選ばれる2個以上の環が縮合した縮合環は、好ましくは、単環式の芳香族炭化水素環が2個以上縮合した縮合環の芳香族炭化水素環であり、この環は置換基を有していてもよい。環RC2において、単環式の芳香族炭化水素環及び単環式の芳香族複素環からなる群から選ばれる2個以上の環が縮合した縮合環としては、好ましくは、本実施形態の金属錯体の発光スペクトル幅が狭くなるので、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、アザナフタレン環、ジアザナフタレン環、アザアントラセン環、ジアザアントラセン環、アザフェナントレン環又はジアザフェナントレン環であり、より好ましくは、ナフタレン環であり、これらの環は置換基を有していてもよい。
【0074】
環RC2が有していてもよい置換基としては、好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基又は置換アミノ基であり、より好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基又は置換アミノ基であり、更に好ましくは、アリール基、1価の複素環基又は置換アミノ基であり、これらの基は更に置換基を有していてもよい。
環RC2が有していてもよい置換基におけるアリール基、1価の複素環基及び置換アミノ基の例及び好ましい範囲は、それぞれ、環RC1が有していてもよい置換基におけるアリール基、1価の複素環基及び置換アミノ基の例及び好ましい範囲と同じである。
環RC2が有していてもよい置換基が更に有していてもよい置換基の例、及び好ましい範囲は、環RC1が有していてもよい置換基が更に有していてもよい置換基の例、及び好ましい範囲と同じである。
【0075】
環RC3における芳香族炭化水素環としては、例えば、前述の「芳香族炭化水素基」の項で例示した芳香族炭化水素環が挙げられ、本実施形態の金属錯体の発光スペクトル幅が狭くなるので、好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ジヒドロフェナントレン環又はフルオレン環であり、より好ましくは、ベンゼン環又はナフタレン環であり、更に好ましくは、ベンゼン環であり、これらの環は置換基を有していてもよい。
環RC3で表される芳香族複素環としては、例えば、前述の「P価の複素環基」の項で例示した芳香族複素環が挙げられ、本実施形態の金属錯体の発光スペクトル幅が狭くなるので、好ましくは、ピリジン環、ジアザベンゼン環、アザナフタレン環、ジアザナフタレン環、アザアントラセン環、ジアザアントラセン環、アザフェナントレン環、ジアザフェナントレン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環又はジベンゾチオフェン環であり、より好ましくは、ピリジン環、ジアザベンゼン環、アザナフタレン環又はジアザナフタレン環であり、更に好ましくは、ピリジン環又はジアザベンゼン環であり、これらの環は置換基を有していてもよい。
環RC3が有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲は、環RC1が有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲と同じである。
【0076】
は、本実施形態の金属錯体の発光スペクトル幅が狭くなるので、好ましくは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基又は置換アミノ基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、更に好ましくは、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
が有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲は、環RC1が有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲と同じである。
【0077】
「2個のRが一体になって2価の基を形成する」とは、Rの2個が、2価の基を構成して、該2個のRに直接結合する炭素原子2個が、該2価の基を介して、結合することを意味する。この2価の基としては、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、2価の複素環基、酸素原子、硫黄原子及び-N(Ry)-で表される基が挙げられ、好ましくは、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又は2価の複素環基であり、より好ましくは、アルキレン基又はアリーレン基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。2価の基はこれらの基が複数結合した基を含む。
2価の基が有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲は、環RC1が有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲と同じである。
「アルキレン基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~20であり、好ましくは1~15であり、より好ましくは1~10であり、更に好ましくは1~5である。アルキレン基は、置換基を有していてもよい。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基及びオクチレン基が挙げられる。
【0078】
「シクロアルキレン基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~20であり、好ましくは4~10である。シクロアルキレン基は、置換基を有していてもよい。シクロアルキレン基としては、例えば、シクロヘキシレン基が挙げられる。
2価の基におけるアルキレン基は、好ましくは、メチレン基、エチレン基又はプロピレン基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
2価の基におけるアリーレン基は、好ましくは、フェニレン基、ナフタレンジイル基、フルオレンジイル基であり、より好ましくは、フェニレン基であり、更に好ましくは、式(A-3)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
2価の基におけるアリーレン基としては、好ましくは、フェニレン基、ナフタレンジイル基、フルオレンジイル基であり、より好ましくは、フェニレン基であり、更に好ましくは、式(A-3)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
2価の基における2価の複素環基は、好ましくは、ピリジン、ジアザベンゼン、トリアジン、アザナフタレン、ジアザナフタレン、カルバゾール、ジベンゾフラン又はジベンゾチオフェンから、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうち2個の水素原子を除いた2価の基であり、より好ましくは、ピリジン、ジアザベンゼン又はトリアジンから、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうち2個の水素原子を除いた2価の基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
Ryは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ryは、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基であり、より好ましくはアリール基又は1価の複素環基であり、更に好ましくはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
Ryが有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲は、環RC1が有していてもよい置換基が更に有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲と同じである。
【0079】
[アニオン性の2座配位子]
-G-Aで表されるアニオン性の2座配位子としては、例えば、下記式で表される配位子が挙げられる。但し、A-G-Aで表されるアニオン性の2座配位子は、添え字nでその数を定義されている配位子とは異なる。
【0080】
【化21】
【0081】
【化22】
[式中、
*は、Mと結合する部位を表す;
L1は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基又はハロゲン原子を表し、これらの基は置換基を有していてもよい;複数存在するRL1は、同一でも異なっていてもよい;
L2は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基又はハロゲン原子を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【0082】
環RC2は、本実施形態の金属錯体の発光スペクトル幅が狭くなるので、好ましくは、単環式の芳香族炭化水素環又は単環式の芳香族複素環であり、より好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環又はジアザベンゼン環であり、更に好ましくは、ベンゼン環であり、これらの環は置換基を有していてもよい。
【0083】
環RC3は、本実施形態の金属錯体の発光スペクトル幅が狭くなるので、好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環又はジアザベンゼン環であり、より好ましくは、ベンゼン環であり、これらの環は置換基を有していてもよい。
【0084】
環RC1は、本実施形態の金属錯体の発光スペクトル幅が狭くなるので、好ましくは、ピリジン環、ジアザベンゼン環、アザナフタレン環又はジアザナフタレン環であり、より好ましくは、ピリジン環又はジアザベンゼン環であり、更に好ましくはピリジン環であり、これらの環は置換基を有していてもよい。
【0085】
本実施形態の金属錯体の発光スペクトル幅が狭くなるので、環RC2の少なくとも1つは、置換基を有することが好ましく、式(D-A)、式(D-B)又は式(D-C)で表される基を置換基として有することがより好ましく、式(D-A)で表される基を置換基として有することが更に好ましい。
「環RC2の少なくとも1つが置換基を有する」とは、環RC2が複数存在する場合(nが2又は3の場合)、複数存在する環RC2のうちの少なくとも1つの環が置換基を有していればよいが、本実施形態の金属錯体の発光スペクトル幅が狭くなるので、複数存在する環RC2のうちの少なくとも2つが置換基を有することが好ましく、複数存在する環RC2のすべてが置換基を有することがより好ましい。
【0086】
[式(D-A)、式(D-B)又は式(D-C)で表される基]
DA1~mDA7は、通常10以下の整数であり、好ましくは5以下の整数であり、より好ましくは2以下の整数であり、更に好ましくは0又は1である。mDA2~mDA7は、同一の整数であることが好ましく、mDA1~mDA7が同一の整数であることがより好ましい。
【0087】
DAは、好ましくは、3価の芳香族炭化水素基又は3価の複素環基であり、より好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環又はカルバゾール環から、環を構成する炭素原子又は窒素原子に直接結合する水素原子3個を除いた基であり、更に好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環又はトリアジン環から、環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子3個を除いた基であり、特に好ましくは、ベンゼン環から、環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子3個を除いた基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
DAが有していてもよい置換基は、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基又は1価の複素環基であり、より好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はシクロアルコキシ基であり、更に好ましくは、アルキル基又はシクロアルキル基であり、これらの基は置換基を有していてもよいが、更に置換基を有さないことが好ましい。
【0088】
DAは、好ましくは、式(GDA-11)~式(GDA-15)で表される基であり、より好ましくは、式(GDA-11)~式(GDA-14)で表される基であり、更に好ましくは、式(GDA-11)で表される基である。
【0089】
【化23】
[式中、
*は、式(D-A)におけるArDA1、式(D-B)におけるArDA1、式(D-B)におけるArDA2、又は、式(D-B)におけるArDA3との結合を表す。
**は、式(D-A)におけるArDA2、式(D-B)におけるArDA2、式(D-B)におけるArDA4、又は、式(D-B)におけるArDA6との結合を表す。
***は、式(D-A)におけるArDA3、式(D-B)におけるArDA3、式(D-B)におけるArDA5、又は、式(D-B)におけるArDA7との結合を表す。
DAは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。RDAが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。]
【0090】
DAは、好ましくは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はシクロアルコキシ基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基であり、これらの基は置換基を有していてもよいが、更に置換基を有さないことが好ましい。
DAが有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲は、GDAが有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲と同じである。
【0091】
ArDA1~ArDA7は、好ましくは、フェニレン基、フルオレンジイル基又はカルバゾールジイル基であり、より好ましくは、式(ArDA-1)~式(ArDA-6)で表される基であり、更に好ましくは、式(ArDA-1)~式(ArDA-3)で表される基であり、特に好ましくは、式(ArDA-1)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0092】
ArDA1~ArDA7が有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲は、GDAが有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲と同じである。
【0093】
【化24】
[式中、
DAは、前記と同じ意味を表す。
DBは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。RDBが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。]
【0094】
DBは、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基であり、より好ましくはアリール基又は1価の複素環基であり、更に好ましくはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0095】
DBが有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲は、GDAが有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲と同じである。
【0096】
DAが有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲は、GDAが有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲と同じである。
【0097】
DAは、好ましくは、式(TDA-1)~式(TDA-3)で表される基であり、より好ましくは、式(TDA-1)で表される基である。
【0098】
【化25】
[式中、RDA及びRDBは、前記と同じ意味を表す。]
【0099】
式(D-A)で表される基は、好ましくは式(D-A1)~式(D-A5)で表される基であり、より好ましくは式(D-A1)で表される基である。
【0100】
【化26】
[式中、
p1、Rp2、Rp3及びRp4は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基又はハロゲン原子を表す。Rp1、Rp2及びRp4が複数ある場合、それらはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
np1は、0~5の整数を表し、np2は0~3の整数を表し、np3は0又は1を表し、np4は0~4の整数を表す。複数あるnp1は、同一でも異なっていてもよい。]
【0101】
式(D-B)で表される基は、好ましくは式(D-B1)~式(D-B3)で表される基であり、より好ましくは式(D-B1)で表される基である。
【0102】
【化27】
[式中、
p1、Rp2及びRp3は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基又はハロゲン原子を表す。Rp1及びRp2が複数ある場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
np1は0~5の整数を表し、np2は0~3の整数を表し、np3は0又は1を表す。np1及びnp2が複数ある場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0103】
式(D-C)で表される基は、好ましくは式(D-C1)~式(D-C4)で表される基である。
【0104】
【化28】
[式中、
p4、Rp5及びRp6は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基又はハロゲン原子を表す。Rp4、Rp5及びRp6が複数ある場合、それらはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
np4は0~4の整数を表し、np5は0~5の整数を表し、np6は0~5の整数を表す。]
【0105】
np1は、好ましくは0~2の整数であり、より好ましくは0又は1である。np2は、好ましくは0又は1であり、より好ましくは0である。np3は好ましくは0である。np4は、好ましくは0~2の整数であり、より好ましくは0である。np5は、好ましくは0~3の整数であり、より好ましくは0又は1である。np6は、好ましくは0~2の整数であり、より好ましくは0又は1である。
【0106】
p1、Rp2、Rp3、Rp4、Rp5及びRp6におけるアルキル基又はシクロアルキル基としては、好ましくは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基又はtert-オクチル基である。
【0107】
p1、Rp2、Rp3、Rp4、Rp5及びRp6におけるアルコキシ基又はシクロアルコキシ基としては、好ましくは、メトキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基又はシクロへキシルオキシ基である。
【0108】
p1、Rp2、Rp3、Rp4、Rp5及びRp6は、好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいシクロアルキル基であり、より好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基であり、更に好ましくは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基又はtert-オクチル基である。
【0109】
式(1)で表される金属錯体は、本実施形態の金属錯体の発光スペクトル幅がより狭くなるので、式(1-1)で表される金属錯体であることが好ましい。
【0110】
及びRは、好ましくは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基又は置換アミノ基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基であり、更に好ましくは、水素原子であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
及びRにおけるアリール基、1価の複素環基及び置換アミノ基の例及び好ましい範囲は、それぞれ、環RC1が有していてもよい置換基におけるアリール基、1価の複素環基及び置換アミノ基の例及び好ましい範囲と同じである。
及びRが有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲は、環RC1が有していてもよい置換基が更に有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲と同じである。
【0111】
、R、R及びRは、好ましくは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基又は置換アミノ基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基であり、更に好ましくは、水素原子であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
、R、R及びRにおけるアリール基、1価の複素環基及び置換アミノ基の例及び好ましい範囲は、それぞれ、環RC1が有していてもよい置換基におけるアリール基、1価の複素環基及び置換アミノ基の例及び好ましい範囲と同じである。
、R、R及びRが有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲は、環RC1が有していてもよい置換基が更に有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲と同じである。
【0112】
C21、RC22、RC23及びRC24は、好ましくは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基又は置換アミノ基であり、より好ましくは、水素原子、アリール基、1価の複素環基又は置換アミノ基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
C21、RC22、RC23及びRC24におけるアリール基、1価の複素環基及び置換アミノ基の例及び好ましい範囲は、それぞれ、環RC1が有していてもよい置換基におけるアリール基、1価の複素環基及び置換アミノ基の例及び好ましい範囲と同じである。
C21、RC22、RC23及びRC24が更に有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲は、環RC1が有していてもよい置換基が更に有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲と同じである。
【0113】
本実施形態の金属錯体の発光スペクトル幅が狭くなるので、RC21、RC22、RC23及びRC24の少なくとも1つは、上記の式(D-A)、上記の式(D-B)又は上記の式(D-C)であることが好ましく、上記の式(D-A)又は上記の式(D-C)であることがより好ましく、上記の式(D-A)であることが更に好ましい。
【0114】
本実施形態の金属錯体の発光スペクトル幅が狭くなるので、RC21、RC22、RC23及びRC24のうち、RC22又はRC23が上記の式(D-A)、上記の式(D-B)又は上記の式(D-C)で基であることが好ましく、RC22が上記の式(D-A)、上記の式(D-B)又は上記の式(D-C)であることがより好ましい。
【0115】
は、本実施形態の合成が容易になるので、好ましくは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基であり、より好ましくは、アルキル基であり、更に好ましくは、メチル基である。
【0116】
本実施形態の金属錯体の発光スペクトル幅が狭くなるので、Mがイリジウム原子であり、nが3であることが好ましい。
【0117】
本実施形態の金属錯体の具体例としては、下記の式(Ir-101)~式(Ir-122)で表される金属錯体が挙げられる。
【0118】
【化29】
【0119】
【化30】
【0120】
【化31】
【0121】
【化32】
【0122】
【化33】
【0123】
【化34】
【0124】
【化35】
【0125】
【化36】
【0126】
【化37】
【0127】
【化38】
【0128】
【化39】
【0129】
本実施形態の金属錯体は、一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【0130】
本実施形態の金属錯体には、複数の幾何異性体が考えられ、いずれの幾何異性体であってもよいが、本実施形態の金属錯体の発光スペクトルの半値幅がより優れるので、facial体が金属錯体全体に対して80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることが更により好ましく、100モル%(すなわち、他の幾何異性体を含まないこと)が特に好ましい。
【0131】
<式(1)で表される金属錯体の製造方法>
本実施形態の金属錯体の製造方法を説明する。
【0132】
[製造方法]
式(1)で表される金属錯体は、例えば、配位子となる化合物と金属化合物とを反応させる方法により製造することができる。必要に応じて、金属錯体の配位子の官能基変換反応を行ってもよい。
【0133】
式(1)で表される金属錯体の中で、Mがイリジウム原子であり、nが2又は3であるものは、例えば、
(i)下記の式(M1-1)で表される化合物と、イリジウム化合物又はその水和物とを反応させることで、下記の式(M1-2)で表される金属錯体を合成する工程A1、及び、
(ii)下記の式(M1-2)で表される金属錯体と、下記の式(M1-1)で表される化合物又はA-G-Aで表される配位子の前駆体とを反応させる工程B1、
を含む方法により製造することができる。
【0134】
【化40】
【0135】
【化41】
【0136】
[上記の式(M1-1)及び式(M1-2)中、環RC1、環RC2、環RC3、X及びXは、それぞれ、上記の式(1)における環RC1、環RC2、環RC3、X及びXと同じ意味を表す。]
【0137】
工程A1において、イリジウム化合物としては、例えば、塩化イリジウム、トリス(アセチルアセトナト)イリジウム(III)、クロロ(シクロオクタジエン)イリジウム(I)ダイマー、及び酢酸イリジウム(III)が挙げられ、イリジウム化合物の水和物としては、例えば、塩化イリジウム・三水和物が挙げられる。
【0138】
工程A1及び工程B1は、通常、溶媒中で行う。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、2-メトキシエタノール、及び2-エトキシエタノール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、及びジグライム等のエーテル系溶媒;塩化メチレン、及びクロロホルム等のハロゲン系溶媒;アセトニトリル、及びベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;ヘキサン、デカリン、トルエン、キシレン、及びメシチレン等の炭化水素系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、及びN,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;並びに、アセトン、ジメチルスルホキシド、及び水;が挙げられる。
【0139】
工程A1及び工程B1において、反応時間は、通常、30分~150時間であり、反応温度は、通常、反応系に存在する溶媒の融点から沸点の間である。
【0140】
工程A1において、式(M1-1)で表される化合物の量は、イリジウム化合物又はその水和物1モルに対して、通常、2~20モルである。
【0141】
工程B1において、式(M1-1)で表される化合物又はA-G-Aで表される配位子の前駆体の量は、式(M1-2)で表される金属錯体1モルに対して、通常、1~100モルである。
【0142】
工程B1において、反応は、トリフルオロメタンスルホン酸銀等の銀化合物の存在下で行うことが好ましい。銀化合物を用いる場合、その量は、式(M1-2)で表される金属錯体1モルに対して、通常、2~20モルである。
【0143】
上記の式(M1-1)で表される化合物は、例えば、下記の式(M1-3)で表される化合物と、下記の式(M1-4)で表される化合物とを、Suzuki反応、Kumada反応、Stille反応等のカップリング反応させる工程により合成することができる。
【0144】
【化42】
[上記の式(M1-3)中、環RC1、環RC3、X及びXは、それぞれ、上記の式(1)における環RC1、環RC2、環RC3、X及びXと同じ意味を表す。また、式(M1-4)中、環RC2は、上記の式(1)における環RC2と同じ意味を表す。
及びWは、-B(ORW1で表される基、アルキルスルホニルオキシ基、シクロアルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
W1は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアミノ基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRW1は、同一でも異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する酸素原子とともに環構造を形成していてもよい。]
【0145】
-B(ORW1で表される基としては、例えば、下記の式(W-1)~式(W-10)で表される基が挙げられる。
【0146】
【化43】
【0147】
上記の「<式(1)で表される金属錯体の製造方法>」で説明した各反応において用いられる化合物、触媒及び溶媒は、各々、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0148】
<組成物>
本実施形態に係る組成物は、式(1)で表される金属錯体を含有する。
【0149】
また、本実施形態に係る組成物は、式(1)で表される金属錯体以外に、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料、電子注入材料、発光材料(式(1)で表される金属錯体とは異なる。)、酸化防止剤及び溶媒からなる群から選ばれる少なくとも一種の材料を、更に含有していてよい。
【0150】
本実施形態に係る組成物は、式(1)で表される金属錯体のうち一種を含有していてよく、二種以上を含有していてよい。
【0151】
[ホスト材料]
本実施形態の金属錯体は、正孔注入性、正孔輸送性、電子注入性及び電子輸送性から選ばれる少なくとも1つの機能を有するホスト材料との組成物とすることにより、本実施形態の金属錯体を用いて得られる発光素子の外部量子収率がより優れたものとなる。本実施形態の組成物において、ホスト材料は、一種単独で含有されていても、二種以上含有されていてもよい。
【0152】
本実施形態の金属錯体と、ホスト材料とを含有する組成物において、本実施形態の金属錯体の含有量は、本実施形態の金属錯体とホスト材料との合計を100質量部とした場合、通常、0.01~80質量部であり、好ましくは0.1~60質量部であり、より好ましくは0.5~40質量部であり、更に好ましくは1~20質量部である。
【0153】
ホスト材料の有する最低励起三重項状態(T)は、本実施形態の組成物を用いて得られる発光素子の外部量子収率がより優れるため、本実施形態の金属錯体の有する最低励起三重項状態(T)と同等のエネルギー準位、又は、より高いエネルギー準位であることが好ましい。
【0154】
ホスト材料としては、本実施形態の組成物を用いて得られる発光素子を溶液塗布プロセスにて作製する観点から、本実施形態の金属錯体を溶解することが可能な溶媒に対して溶解性を示すものであることが好ましい。
【0155】
ホスト材料は、低分子ホストと高分子ホストとに分類される。
【0156】
・低分子ホスト
低分子ホストは、好ましくは、式(H-1)で表される化合物である。
【0157】
【化44】
【0158】
ArH1及びArH2は、フェニル基、フルオレニル基、スピロビフルオレニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、フリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ピロリル基、インドリル基、アザインドリル基、カルバゾリル基、アザカルバゾリル基、ジアザカルバゾリル基、フェノキサジニル基又はフェノチアジニル基であることが好ましく、フェニル基、フルオレニル基、スピロビフルオレニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、ジベンゾチエニル基、ジベンゾフリル基、カルバゾリル基又はアザカルバゾリル基であることがより好ましく、フェニル基、フルオレニル基、スピロビフルオレニル基、ジベンゾチエニル基、ジベンゾフリル基又はカルバゾリル基であることが更に好ましく、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArH1及びArH2が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、1価の複素環基又は置換アミノ基が好ましく、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基又は置換アミノ基がより好ましく、アルキル基又はシクロアルキル基が更に好ましく、これらの基は更に置換基を有していてもよい。
ArH1及びArH2が有していてもよい置換基が更に有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、1価の複素環基又は置換アミノ基が好ましく、アルキル基又はシクロアルキル基がより好ましく、これらの基は更に置換基を有していてもよいが、更に置換基を有さないことが好ましい。
【0159】
H1は、好ましくは1である。nH2は、好ましくは0である。
H3は、通常、0以上10以下の整数であり、好ましくは0以上5以下の整数であり、更に好ましくは1以上3以下の整数であり、特に好ましくは1である。
【0160】
H1は、アリーレン基又は2価の複素環基であることが好ましい。
H1としては、例えば、式(A-1)~式(A-20)で表される基及び式(AA-1)~式(AA-34)で表される基が挙げられ、式(A-1)、式(A-2)、式(A-8)、式(A-9)、式(AA-1)~式(AA-4)、式(AA-10)~式(AA-15)又は式(AA-29)~式(AA-34)で表される基が好ましく、式(A-1)、式(A-2)、式(A-8)、式(A-9)、式(AA-2)、式(AA-4)、式(AA-10)~式(AA-15)で表される基がより好ましく、式(A-1)、式(A-2)、式(AA-2)、式(AA-4)又は式(AA-14)で表される基が更に好ましい。
【0161】
H1が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基又は1価の複素環基が好ましく、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基がより好ましく、これらの基は更に置換基を有していてもよい。
H1が有していてもよい置換基が更に有していてもよい置換基の例、及び好ましい範囲は、ArH1及びArH2が有していてもよい置換基が更に有していてもよい置換基の例、及び好ましい範囲と同じである。
【0162】
H21は、アリール基又は1価の複素環基であることが好ましく、これらの基は置換基を有していてもよい。
H21で表されるアリール基及び1価の複素環基の例及び好ましい範囲は、ArH1及びArH2で表されるアリール基及び1価の複素環基の例及び好ましい範囲と同様である。
H21が有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲は、ArH1及びArH2が有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲と同様である。
【0163】
式(H-1)で表される化合物は、式(H-2)で表される化合物であることが好ましい。
【0164】
【化45】
[式中、ArH1、ArH2、nH3及びLH1は、上記と同じ意味を表す。]
【0165】
ホスト材料に用いられる低分子化合物の具体例としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0166】
【化46】
【0167】
【化47】
【0168】
【化48】
【0169】
・高分子ホスト
ホスト材料に用いられる高分子化合物としては、例えば、後述の正孔輸送材料である高分子化合物、後述の電子輸送材料である高分子化合物が挙げられる。
【0170】
ホスト化合物として好ましい高分子化合物(以下、「高分子ホスト」ともいう。)に関して説明する。
【0171】
高分子ホストとしては、式(Y)で表される構成単位を含む高分子化合物であることが好ましい。
【0172】
ArY1で表されるアリーレン基としては、より好ましくは式(A-1)、式(A-2)、式(A-6)~式(A-10)、式(A-19)又は式(A-20)で表される基であり、更に好ましくは式(A-1)、式(A-2)、式(A-7)、式(A-9)又は式(A-19)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArY1で表される2価の複素環基としては、より好ましくは式(AA-1)~式(AA-4)、式(AA-10)~式(AA-15)、式(AA-18)~式(AA-21)、式(AA-33)又は式(AA-34)で表される基であり、更に好ましくは式(AA-4)、式(AA-10)、式(AA-12)、式(AA-14)又は式(AA-33)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArY1で表される少なくとも一種のアリーレン基と少なくとも一種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基における、アリーレン基及び2価の複素環基のより好ましい範囲、更に好ましい範囲は、それぞれ、前述のArY1で表されるアリーレン基及び2価の複素環基のより好ましい範囲、更に好ましい範囲と同様である。
【0173】
「少なくとも一種のアリーレン基と少なくとも一種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基」としては、例えば、下記式で表される基が挙げられ、これらは置換基を有していてもよい。
【0174】
【化49】
【0175】
ArY1で表される基が有してもよい置換基としては、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基,アリール基又は1価の複素環基であり、より好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、これらの基は更に置換基を有していてもよい。
ArY1で表される基が有していてもよい置換基が更に有していてもよい置換基は、好ましくは、アルキル基又はシクロアルキル基であり、これらの基は更に置換基を有していてもよいが、更に置換基を有さないことが好ましい。
【0176】
式(Y)で表される構成単位としては、例えば、式(Y-1)~式(Y-10)で表される構成単位が挙げられ、本実施形態の発光素子の発光効率の観点からは、好ましくは式(Y-1)~式(Y-3)で表される構成単位であり、電子輸送性の観点からは、好ましくは式(Y-4)~(Y-7)で表される構成単位であり、正孔輸送性の観点からは、好ましくは式(Y-8)~(Y-10)で表される構成単位である。
【0177】
【化50】
[式中、
Y1は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRY1は、同一でも異なっていてもよく、隣接するRY1同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。
Y1は、-C(RY2-、-C(RY2)=C(RY2)-又はC(RY2-C(RY2-で表される基を表す。RY2は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRY2は、同一でも異なっていてもよく、RY2同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。]
【0178】
Y1は、好ましくは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
Y2は、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基であり、より好ましくはアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0179】
Y1において、-C(RY2-で表される基中の2個のRY2の組み合わせは、好ましくは双方がアルキル基若しくはシクロアルキル基、双方がアリール基、双方が1価の複素環基、又は、一方がアルキル基若しくはシクロアルキル基で他方がアリール基若しくは1価の複素環基であり、より好ましくは一方がアルキル基若しくはシクロアルキル基で他方がアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。2個存在するRY2は互いに結合して、それぞれが結合する原子と共に環を形成していてもよく、RY2が環を形成する場合、-C(RY2-で表される基としては、好ましくは式(Y-A1)~(Y-A5)で表される基であり、より好ましくは式(Y-A4)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0180】
【化51】
【0181】
Y1において、-C(RY2)=C(RY2)-で表される基中の2個のRY2の組み合わせは、好ましくは双方がアルキル基若しくはシクロアルキル基、又は、一方がアルキル基若しくはシクロアルキル基で他方がアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0182】
Y1において、-C(RY2-C(RY2-で表される基中の4個のRY2は、好ましくは置換基を有していてもよいアルキル基又はシクロアルキル基である。複数あるRY2は互いに結合して、それぞれが結合する原子と共に環を形成していてもよく、RY2が環を形成する場合、-C(RY2-C(RY2-で表される基は、好ましくは式(Y-B1)~式(Y-B5)で表される基であり、より好ましくは式(Y-B3)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0183】
【化52】
[式中、RY2は上記と同じ意味を表す。]
【0184】
Y1は、好ましくはC(RY2-で表される基である。
【0185】
【化53】
【0186】
【化54】
[式中、
Y1は上記と同じ意味を表す。
Y3は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【0187】
Y3は、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基又は1価の複素環基であり、より好ましくはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0188】
【化55】
【0189】
[式中、
Y1は上記を同じ意味を表す。
Y4は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【0190】
Y4は、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基又は1価の複素環基であり、より好ましくはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0191】
Y1~RY4及びRY11で表される基が有していてもよい置換基の好ましい範囲は、ArY1で表される基が有していてもよい置換基の好ましい範囲と同様である。
【0192】
式(Y)で表される構成単位としては、例えば、式(Y-101)~式(Y-121)で表されるアリーレン基からなる構成単位、式(Y-201)~式(Y-206)で表される2価の複素環基からなる構成単位、式(Y-301)~式(Y-304)で表される少なくとも一種のアリーレン基と少なくとも一種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基からなる構成単位が挙げられる。
【0193】
【化56】
【0194】
【化57】
【0195】
【化58】
【0196】
【化59】
【0197】
【化60】
【0198】
【化61】
【0199】
【化62】
【0200】
【化63】
【0201】
【化64】
【0202】
式(Y)で表される構成単位であって、ArY1がアリーレン基である構成単位は、本実施形態の発光素子の発光効率が優れるので、高分子ホストに含まれる構成単位の合計量に対して、好ましくは0.5~100モル%であり、より好ましくは60~95モル%である。
【0203】
式(Y)で表される構成単位であって、ArY1が2価の複素環基、又は、少なくとも一種のアリーレン基と少なくとも一種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基である構成単位は、電荷輸送性が優れるので、高分子ホストに含まれる構成単位の合計量に対して、好ましくは0.5~30モル%であり、より好ましくは3~20モル%である。
【0204】
式(Y)で表される構成単位は、高分子ホスト中に、一種のみ含まれていてもよく、二種以上含まれていてもよい。
【0205】
高分子ホストは、正孔輸送性が優れるので、更に、式(X)で表される構成単位を含むことが好ましい。
【0206】
【化65】
【0207】
[式中、
X1及びaX2は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
ArX1及びArX3は、それぞれ独立に、アリーレン基又は2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArX2及びArX4は、それぞれ独立に、アリーレン基、2価の複素環基、又は、少なくとも一種のアリーレン基と少なくとも一種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。ArX2及びArX4が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
X1、RX2及びRX3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。RX2及びRX3が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。]
【0208】
X1は、通常0~5の整数であり、好ましくは0~2の整数であり、より好ましくは0又は1である。aX2は、通常0~5の整数であり、好ましくは0~2の整数であり、より好ましくは0である。
【0209】
X1、RX2及びRX3の好ましい範囲、より好ましい範囲は、RY4の好ましい範囲、より好ましい範囲と同様である。
ArX1、ArX2、ArX3及びArX4で表されるアリーレン基及び2価の複素環基の好ましい範囲、より好ましい範囲は、それぞれ、ArY1で表されるアリーレン基及び2価の複素環基の好ましい範囲、より好ましい範囲と同様である。
ArX2及びArX4で表される少なくとも一種のアリーレン基と少なくとも一種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基の例及び好ましい範囲等は、ArY1で表される少なくとも一種のアリーレン基と少なくとも一種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基の例及び好ましい範囲等と同様である。
ArX1、ArX2、ArX3及びArX4は、好ましくは置換基を有していてもよいアリーレン基である。
ArX1~ArX4及びRX1~RX3で表される基が有してもよい置換基の好ましい範囲は、ArY1で表される基が有してもよい置換基の好ましい範囲と同様である。
式(X)で表される構成単位は、高分子化合物に含まれる構成単位の合計量に対して、好ましくは0.1~99モル%であり、より好ましくは1~50モル%であり、更に好ましくは5~30モル%である
【0210】
式(X)で表される構成単位は、高分子ホスト中に、一種のみ含まれていてもよく、二種以上含まれていてもよい。
【0211】
式(X)で表される構成単位は、正孔輸送性が優れるので、高分子ホストに含まれる構成単位の合計量に対して、好ましくは0.1~50モル%であり、より好ましくは1~40モル%であり、更に好ましくは2~30モル%である。
【0212】
式(X)で表される構成単位としては、例えば、式(X1-1)~式(X1-11)で表される構成単位が挙げられる。
【0213】
【化66】
【0214】
【化67】
【0215】
【化68】
【0216】
【化69】
【0217】
【化70】
【0218】
高分子ホストにおいて、式(X)で表される構成単位は、一種のみ含まれていても、二種以上含まれていてもよい。
【0219】
高分子ホストとしては、例えば、表1の高分子化合物P-1~P-7が挙げられる。ここで、「その他」の構成単位とは、式(Y)で表される構成単位、式(X)で表される構成単位以外の構成単位を意味する。
【0220】
【表1】
【0221】
表中、p、q、r、s及びtは、各構成単位のモル比率を示す。p+q+r+s+t=100であり、かつ、100≧p+q+r+s≧70である。その他の構成単位とは、式(Y)で表される構成単位、式(X)で表される構成単位以外の構成単位を意味する。
【0222】
高分子ホストは、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよいし、その他の態様であってもよいが、上記観点から、複数種の原料モノマ―を共重合してなる共重合体であることが好ましい。
【0223】
<高分子ホストの製造方法>
高分子ホストは、ケミカル レビュー(Chem.Rev.),第109巻,897-1091頁(2009年)等に記載の公知の重合方法を用いて製造することができ、Suzuki反応、Yamamoto反応、Buchwald反応、Stille反応、Negishi反応及びKumada反応等の遷移金属触媒を用いるカップリング反応により重合させる方法が例示される。
【0224】
上記重合方法において、単量体を仕込む方法としては、単量体全量を反応系に一括して仕込む方法、単量体の一部を仕込んで反応させた後、残りの単量体を一括、連続又は分割して仕込む方法、単量体を連続又は分割して仕込む方法等が挙げられる。
【0225】
遷移金属触媒としては、特に限定されないが、パラジウム触媒、ニッケル触媒が挙げられる。
【0226】
重合反応の後処理は、公知の方法、例えば、分液により水溶性不純物を除去する方法、メタノール等の低級アルコールに重合反応後の反応液を加えて、析出させた沈殿を濾過した後、乾燥させる方法等を単独又は組み合わせて行う。高分子ホストの純度が低い場合、例えば、再結晶、再沈殿、ソックスレー抽出器による連続抽出、カラムクロマトグラフィー等の通常の方法にて精製することができる。
【0227】
[正孔輸送材料]
正孔輸送材料は、低分子化合物と高分子化合物とに分類される。正孔輸送材料は、架橋基を有していてもよい。
【0228】
低分子化合物としては、例えば、トリフェニルアミン及びその誘導体、N,N’-ジ-1-ナフチル-N,N’-ジフェニルベンジジン(α-NPD)、並びに、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(m-トリル)ベンジジン(TPD)等の芳香族アミン化合物が挙げられる。
【0229】
高分子化合物としては、例えば、ポリビニルカルバゾ一ル及びその誘導体;側鎖又は主鎖に芳香族アミン構造を有するポリアリ一レン及びその誘導体が挙げられる。高分子化合物は、電子受容性部位が結合された化合物でもよい。電子受容性部位としては、例えば、フラーレン、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、テ卜ラシアノエチレン、トリニトロフルオレノン等が挙げられ、好ましくはフラーレンである。
【0230】
本実施形態に係る組成物において、正孔輸送材料の配合量は、式(1)で表される金属錯体100質量部に対して、通常、1~400質量部であり、好ましくは5~150質量部である。
【0231】
正孔輸送材料は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0232】
正孔注入材料及び電子注入材料は、各々、低分子化合物と高分子化合物とに分類される。正孔注入材料及び電子注入材料は、架橋基を有していてもよい。
【0233】
低分子化合物としては、例えば、銅フタロシアニン等の金属フタロシアニン;力一ボン;モリブデン、タングステン等の金属酸化物;フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム、フッ化カリウム等の金属フッ化物が挙げられる。
【0234】
高分子化合物としては、例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレンビニレン、ポリチェニレンビニレン、ポリキノリン及びポリキノキサリン、並びに、これらの誘導体;芳香族アミン構造を主鎖又は側鎖に含む重合体等の導電性高分子が挙げられる。
【0235】
本実施形態に係る組成物において、正孔注入材料及び電子注入材料の配合量は、各々、式(1)で表される金属錯体100質量部に対して、通常、1~400質量部であり、好ましくは5~150質量部である。
【0236】
正孔注入材料及び電子注入材料は、各々、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0237】
[電子輸送材料]
電子輸送材料は、低分子化合物と高分子化合物とに分類される。電子輸送材料は、架橋基を有していてもよい。
【0238】
低分子化合物としては、例えば、8-ヒドロキシキノリンを配位子とする金属錯体、オキサジアゾ一ル、アントラキノジメタン、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、テ卜ラシアノアントラキノジメタン、フルオレノン、ジフェニルジシアノエチレン及びジフェノキノン、並びに、これらの誘導体が挙げられる。
【0239】
高分子化合物としては、例えば、ポリフェニレン、ポリフルオレン、及び、これらの誘導体が挙げられる。高分子化合物は、金属でド一プされていてもよい。
【0240】
本実施形態に係る組成物において、電子輸送材料の配合量は、式(1)で表される金属錯体100質量部に対して、通常、1~400質量部であり、好ましくは5~150質量部である。
【0241】
電子輸送材料は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0242】
[発光材料]
発光材料(式(1)で表される金属錯体とは異なる。)は、低分子化合物と高分子化合物とに分類される。発光材料は、架橋基を有していてもよい。
【0243】
低分子化合物としては、例えば、ナフタレン及びその誘導体、アン卜ラセン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、並びに、イリジウム、白金又はユーロピウムを中心金属とする三重項発光錯体が挙げられる。
【0244】
高分子化合物としては、例えば、フェニレン基、ナフタレンジイル基、フルオレンジイル基、フェナントレンジイル基、ジヒドロフェナントレンジイル基、式(X)で表される基、カルバゾ一ルジイル基、フェノキサジンジイル基、フェノチアジンジイル基、アントラセンジイル基、ピレンジイル基等を含む高分子化合物が挙げられる。
【0245】
発光材料は、好ましくは、三重項発光錯体及び又は高分子化合物を含む。
【0246】
本実施形態に係る組成物において、発光材料の含有量は、式(1)で表される金属錯体100質量部に対して、通常、0.1~400質量部である。
【0247】
[溶媒]
本実施形態に係る組成物は、式(1)で表される金属錯体と溶媒とを含有する液状組成物(インクともいう。)であってよい。このようなインクは、インクジェット法、ノズルプリント法等の印刷法を用いた発光素子の作製に好適である。
【0248】
インクの粘度は、印刷法の種類によって調整すればよいが、インクジェットプリン卜法等の溶液が吐出装置を経由する印刷法に適用する場合には、吐出時の目づまりと飛行曲がりが起こりづらいので、好ましくは25°Cにおいて1~20mPa・sである。
【0249】
インクに含まれる溶媒は、好ましくは、インク中の固形分を溶解又は均一に分散できる溶媒である。溶媒としては、例えば、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、クロロベンゼン、o-ジクロロべンゼン等の塩素系溶媒;THF、ジオキサン、アニソ一ル、4-メチルアニソ一ル等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、へキシルベンゼン、シクロへキシルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;シクロへキサン、メチルシクロへキサン、ペンタン、へキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、ビシクロへキシル等の脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロへキサノン、アセ卜フェノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルプアセテ-卜、安息香酸メチル、酢酸フェニル等のエステル系溶媒;エチレングリコール、グリセリン、1,2-へキサンジオール等の多価アルコール系溶媒;イソプロピルアルコール、シクロへキサノール等のアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が挙げられる。溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0250】
インクにおいて、溶媒の配合量は、式(1)で表される金属錯体100質量部に対して、通常、1000~100000質量部であり、好ましくは2000~20000質量部である。
【0251】
[酸化防止剤]
酸化防止剤は、式(1)で表される金属錯体と同じ溶媒に可溶であり、発光及び電荷輸送を阻害しない化合物であることが好ましい。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が挙げられる。
【0252】
本実施形態に係る組成物において、酸化防止剤の配合量は、式(1)で表される金属錯体100質量部に対して、通常、0.001~10質量部である。
【0253】
酸化防止剤は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0254】
<膜>
膜は、本実施形態の金属錯体を含有する。
膜は、発光素子における発光層として好適である。
【0255】
膜は、インクを用いて、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、キャピラリ-コート法、又はノズルコート法により作製することができる。
【0256】
膜の厚さは、通常、1nm~10μmである。
【0257】
<発光素子>
本実施形態に係る発光素子は、式(1)で表される金属錯体を含有する。
【0258】
本実施形態に係る発光素子は、例えば、陽極及び陰極からなる電極と、該電極間に設けられた式(1)で表される金属錯体を含有する層と、を有していてよい。
【0259】
[層構成]
式(1)で表される金属錯体を含有する層は、通常、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層の一種以上の層であり、好ましくは、発光層である。これらの層は、各々、発光材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料、電子注入材料を含む。これらの層は、各々、各層の材料を、上述した溶媒に溶解させてインクを調製し、上述した膜の作製と同じ方法を用いて形成することができる。
【0260】
本実施形態に係る発光素子は、陽極と陰極の間に発光層を有していてよい。本実施形態に係る発光素子は、正孔注入性及び正孔輸送性の観点からは、陽極と発光層との間に、正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも1層を有することが好ましく、電子注入性及び電子輸送性の観点からは、陰極と発光層との間に、電子注入層及び電子輸送層の少なくとも1層を有することが好ましい。
【0261】
正孔輸送層、電子輸送層、発光層、正孔注入層及び電子注入層の材料としては、式(1)で表される金属錯体の他、各々、上述した正孔輸送材料、電子輸送材料、発光材料、正孔注入材料及び電子注入材料等が挙げられる。
【0262】
正孔輸送層の材料、電子輸送層の材料及び発光層の材料は、架橋基を有していてよく、架橋基を有する材料を用いて各層を形成した後、該材料を架橋させることにより、層を不溶化させてよい。これにより、隣接する層の形成時に使用される溶媒に、各層の材料が溶解することを回避することができる。
【0263】
本実施形態に係る発光素子において、発光層、正孔輸送層、電子輸送層、正孔注入層、電子注入層等の各層の形成方法としては、低分子化合物を用いる場合、例えば、粉末からの真空蒸着法、溶液又は溶融状態からの成膜による方法が挙げられ、高分子化合物を用いる場合、例えば、溶液又は溶融状態からの成膜による方法が挙げられる。
【0264】
積層する層の順番、数及び厚さは、外部量子効率及び輝度寿命を勘案して調整する。
【0265】
[基板/電極]
発光素子における基板は、電極を形成することができ、かつ、有機層を形成する際に化学的に変化しない基板が好ましい。基板は、例えば、ガラス、プラスチック、シリコン等の材料からなる基板であってよい。基板は透明又は半透明であることが好ましく、不透明な基板の場合には、基板から最も遠くにある電極が透明又は半透明であることが好ましい。
【0266】
陽極の材料としては、例えば、導電性の金属酸化物、半透明の金属が挙げられ、好ましくは、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ;インジウムスズオキサイド(ITO)、インジウム亜鉛オキサイド等の導電性化合物;銀とパラジウムと銅との複合体(APC);NESA、金、白金、銀、銅である。
【0267】
陰極の材料としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム等の金属;それらのうち二種以上の合金;それらのうち一種以上と、銀、銅、マンガン、チタン、コバル卜、ニッケル、タングステン、錫のうち一種以上との合金;並びに、グラファイト及びグラファイト層間化合物が挙げられる。合金としては、例えば、マグネシウム-銀合金、マグネシウム-インジウム合金、マグネシウム-アルミニウム合金、インジウム-銀合金、リチウム-アルミニウム合金、リチウム-マグネシウム合金、リチウム-インジウム合金、カルシウム-アルミニウム合金が挙げられる。
【0268】
陽極及び陰極は、各々、2層以上の積層構造としてもよい。
【0269】
[用途]
発光素子を用いて面状の発光を得るためには、面状の陽極と陰極が重なり合うように配置すればよい。パターン状の発光を得るためには、面状の発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、非発光部にしたい層を極端に厚く形成し実質的に非発光とする方法、陽極若しくは陰極、又は、両方の電極をパターン状に形成する方法がある。これらのいずれかの方法でパターンを形成し、いくつかの電極を独立にON/OFFできるように配置することにより、数字、文字等を表示できるセグメントタイプの表示装置が得られる。ドットマ卜リックス表示装置とするためには、陽極と陰極を共にストライプ状に形成して直交するように配置すればよい。複数の種類の発光色の異なる高分子化合物を塗り分ける方法、カラ一フィルタ一又は蛍光変換フィルタ一を用いる方法により、部分カラ一表示、マルチカラ一表示が可能となる。ドットマトリックス表示装置は、パッシプ駆動も可能であるし、TFT等と組み合わせてアクティブ駆動も可能である。これらの表示装置は、コンピュータ、テレビ、携帯端末等のディスプレイに用いることができる。面状の発光素子は、液晶表示装置のバックライ卜用の面状光源、又は、面状の照明用光源として好適に用いることができる。フレキシブルな基板を用いれば、曲面状の光源及び表示装置としても使用できる。
【実施例
【0270】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0271】
LC-MSは、下記の方法で測定した。
測定試料を約2mg/mLの濃度になるようにクロロホルム又はテトラヒドロフランに溶解させ、LC-MS(Agilent製、商品名:1290 Infinity LC及び6230 TOF LC/MS)に約1μL注入した。LC-MSの移動相には、アセトニトリル及びテトラヒドロフランの比率を変化させながら用い、1.0mL/分の流量で流した。カラムは、SUMIPAX ODS Z-CLUE(住化分析センター製、内径:4.6mm、長さ:250mm、粒径3μm)を用いた。
【0272】
NMRは、下記の方法で測定した。
5~10mgの測定試料を約0.5mLの重クロロホルム(CDCl3)、重テトラヒドロフラン、重ジメチルスルホキシド、重アセトン、重N,N-ジメチルホルムアミド、重トルエン、重メタノール、重エタノール、重2-プロパノール又は重塩化メチレンに溶解させ、NMR装置(JEOL RESONANCE製、商品名:JNM-ECZ400S/L1、又は、ブルカー製、商品名:AVANCE600)を用いて測定した。
【0273】
化合物の純度の指標として、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)面積百分率の値を用いた。この値は、特に記載がない限り、HPLC(島津製作所製、商品名:LC-20A)でのUV=254nmにおける値とする。この際、測定する化合物は、0.01~0.2質量%の濃度になるようにテトラヒドロフラン又はクロロホルムに溶解させ、濃度に応じてHPLCに1~10μL注入した。HPLCの移動相には、アセトニトリル/テトラヒドロフランの比率を100/0~0/100(容積比)まで変化させながら用い、1.0mL/分の流量で流した。カラムは、SUMIPAX ODS Z-CLUE(住化分析センター製、内径:4.6mm、長さ:250mm、粒径3μm)又は同等の性能を有するODSカラムを用いた。検出器には、フォトダイオードアレイ検出器(島津製作所製、商品名:SPD-M20A)を用いた。
【0274】
薄膜の室温における発光スペクトルは、分光光度計(日本分光株式会社製、FP-6500)により室温にて測定した。発光スペクトルの半値幅(以下、「FWHM」ともいう。)は、分光光度計(日本分光株式会社製、FP-6500)により室温にて測定した。化合物をキシレンに、約8×10-4質量%の濃度で溶解させたキシレン溶液を試料として用いた。該試料を石英基板上にスピンコート法により80nmの厚さで成膜し、試料薄膜を形成した。励起光としては、波長325nmの紫外(UV)光を用いた。
【0275】
<実施例1>
金属錯体M1の合成
下記の方法で、金属錯体M1を合成した。
【0276】
【化71】
【0277】
【化72】
【0278】
【化73】
【0279】
【化74】
【0280】
(化合物L1Fの合成)
化合物L1Fは、特開2017-052709号公報に記載の方法に準じて合成した。
【0281】
(Stage1:化合物L1Bの合成)
反応容器内を窒素雰囲気にした後、化合物L1A(14.3g)、及びテトラヒドロフラン(191g)を加え、0℃に冷却した。そこへ、三フッ化ホウ素(11.5mL)をゆっくり加え、0℃で1時間撹拌した。-30℃に冷却した後、あらかじめ調製したベンジルマグネシウムクロリド-塩化リチウムテトラヒドロフラン溶液(0.4M、250mL)を1時間かけて滴下した。その後、-30℃で1時間撹拌した。そこへ、クロラニル(22.5g)をゆっくり加えた。得られた反応液を室温にした後、イオン交換水(180g)とn-ヘプタン(180g)をゆっくり加え、水層を除去した。得られた有機層をイオン交換水で洗浄し、得られた有機層に硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた後、ろ過した。得られたろ液を減圧濃縮することにより、粗生成物を得た。得られた粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン及びn-ヘキサンの混合溶媒)により精製し、50℃で減圧乾燥させることにより、化合物L1B(11.8g)を得た。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で化合物L1Bを分析したところ、化合物L1BのHPLC面積百分率値は92.3%であった。
H-NMR(400MHz、CDCl)δ(ppm)=8.84(s、1H),7.34-7.29(m、2H),7.25(t、1H),7.19-7.13(m、2H),7.11(s、1H),4.37(s、2H),3.88(s、3H).
【0282】
(Stage2:化合物L1Cの合成)
反応容器内を窒素雰囲気にした後、化合物L1B(18.3g)、及びテトラヒドロフラン(191g)を加え、0℃に冷却した。そこへ、メチルマグネシウムクロリドテトラヒドロフラン溶液(1M、200mL)を2時間かけて滴下した。その後、0℃で2時間撹拌した。そこへ、1M塩酸(200mL)をゆっくり加えた。得られた反応液を室温にした後、イオン交換水(180g)とヘプタン(180g)をゆっくり加え、水層を除去した。得られた有機層をイオン交換水で洗浄後、ろ過し、得られたろ液を減圧濃縮することにより、粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル及びn-ヘキサンの混合溶媒)により精製した後、酢酸エチル及びn-ヘキサン混合溶媒により洗浄し、50℃で減圧乾燥させることにより、化合物L1C(9.1g)を得た。HPLCで化合物L1Cを分析したところ、化合物L1CのHPLC面積百分率値は97.5%であった。
H-NMR(400MHz、CDCl)δ(ppm)=8.40(s、1H),7.32(t、2H),7.26(t、1H),7.13(d、2H),6.96(s、1H),4.41(s、2H),1.68(s、6H).
【0283】
(Stage3:化合物L1Dの合成)
反応容器内を窒素雰囲気にした後、硫酸(60mL)を加え、0℃に冷却した。そこへ、化合物L1C(6.0g)を加えた。0℃で1時間撹拌した後、得られた反応溶液を氷水に加えた。得られた水溶液にNaOH水溶液とヘプタン(60g)をゆっくり加え、水層を除去した。得られた有機層をイオン交換水で洗浄後、ろ過した。得られた有機層をイオン交換水で洗浄後、ろ過し、得られたろ液を減圧濃縮することにより、粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル及びn-ヘキサンの混合溶媒)により精製し、50℃で減圧乾燥させることにより、化合物L1D(3.5g)を白色固体として得た。HPLCで化合物L1Dを分析したところ、化合物L1DのHPLC面積百分率値は99.0%であった。
H-NMR(400MHz、CDCl)δ(ppm)=8.51(s、1H),7.55(d、2H),7.33-7.20(m、4H),4.05(s、2H),1.63(s、6H).
【0284】
(Stage4:化合物L1Eの合成)
反応容器内を窒素雰囲気にした後、60%水素化ナトリウム(1.7g)、ヨウ化メチル(10.2g)、テトラヒドロフラン(21mL)、及びジメチルホルムアミド(11mL)を加え、0℃に冷却した。そこへ、化合物L1D(3.5g)、及びテトラヒドロフラン(14mL)の混合溶液を1時間かけて滴下した。室温に昇温し1時間撹拌した後、55℃に昇温し4時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した後、イオン交換水(14mL)、及びn-ヘプタン(28mL)を加え、水層を除去した。得られた有機層をイオン交換水で洗浄後、ろ過し、得られたろ液を減圧濃縮することにより、粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル及びn-ヘキサンの混合溶媒)により精製した後、トルエン及びn-ヘプタン混合溶媒により繰り返し晶析し、50℃で減圧乾燥させることにより、化合物L1E(2.2g)を得た。HPLCで化合物L1Eを分析したところ、化合物L1EのHPLC面積百分率値は99.2%であった
H-NMR(400MHz、CDCl)δ(ppm)=8.56(s,1H),7.55-7.47(m、2H),7.43(s、1H),7.31-7.25(m、2H),1.70(s、6H),1.64(s、6H).
【0285】
(Stage5:化合物L1Gの合成)
反応容器内を窒素雰囲気にした後、化合物L1F(40.0g)、1-ブロモ-4-ヨードベンゼン(21.4g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.59g)、20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(152.2g)、及びトルエン(400mL)を加え、80℃で4時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した後、イオン交換水(200mL)を加え、水層を除去した。得られた有機層をイオン交換水で洗浄後、ろ過し、得られたろ液を減圧濃縮することにより、粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン及びn-ヘキサンの混合溶媒)により精製した後、トルエンとメタノールで晶析し、50℃で減圧乾燥させることにより、化合物L1G(36.7g)を得た。HPLCで化合物L1Gを分析したところ、化合物L1GのHPLC面積百分率値は99.0%であった
【0286】
(Stage6:化合物L1Hの合成)
反応容器内を窒素雰囲気にした後、化合物L1G(36.0g)、ビス(ピナコラト)ジボロン(16.5g)、ジメトキシエタン(360mL)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド・ジクロロメタン付加物(1.2g)及び酢酸カリウム(17.4g)を加え、80℃で5時間撹拌した。得られた反応溶液にセライト(6.9g)を加えた後、シリカゲルを敷いたろ過器でろ過し、得られたろ液を減圧濃縮後することにより、粗生成物を得た。得られた粗生成物にトルエンと活性炭を加え、室温で30分攪拌した後、セライトを敷いたろ過器でろ過し、得られたろ液を減圧濃縮後、トルエンとメタノールで晶析し、50℃で減圧乾燥させることにより、化合物L1H(35.6g)を白色固体として得た。HPLCで化合物L1Hを分析したところ、化合物L1HのHPLC面積百分率値は98.9%であった。
【0287】
(Stage7:化合物L1の合成)
反応容器内を窒素雰囲気にした後、化合物L1E(0.8g)、化合物L1H(2.1g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(40.0mg)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(60.9mg)、10質量%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(22.9g)、及びトルエン(16mL)を加え、90℃で5時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した後、イオン交換水(130mL)を加え、水層を除去した。得られた有機層をイオン交換水で洗浄後、ろ過し、得られたろ液を減圧濃縮することにより、粗生成物を得た。得られた粗生成物をトルエンとアセトニトリルで晶析し、50℃で減圧乾燥させることにより、化合物L1(2.0g)を得た。HPLCで化合物L1を分析したところ、化合物L1のHPLC面積百分率値は99.5%以上であった
H-NMR(400MHz、CDCl)δ(ppm)=8.90(s、1H)、8.18(d、2H)、7.93-7.84(m、6H)、7.69(d、4H)、7.60-7.48(m、6H)、7.33-7.27(m、2H)、1.83(s、4H)、1.77(s、6H)、1.75(s、6H)、1.43(s、12H)、0.78(s、18H).
【0288】
(Stage8:金属錯体M1aの合成)
遮光した反応容器内をアルゴンガス雰囲気にした後、塩化イリジウム(III)水和物(250mg)、化合物L1(1.2g)及び2-エトキシエタノール(12.5mL)を加え、130℃で18時間攪拌した。
得られた反応物を室温まで冷却した後、メタノール(16mL)に加え、室温で1時間攪拌した。その後、ろ過を行い、得られた残渣を減圧乾燥し、金属錯体M1aを含む黄色固体(0.80g)を得た。
【0289】
(Stage9:金属錯体M1の合成)
遮光した反応容器内をアルゴンガス雰囲気にした後、金属錯体M1aを含む赤色固体(0.77g)、化合物L1(0.35g)、トリフルオロメタンスルホン酸銀(I)(0.15g)、2,6-ルチジン(69μL)及びジエチレングリコールジメチルエーテル(15mL)を加え、150℃で4時間攪拌した。
得られた反応物を室温まで冷却した後、メタノール(50mL)に加え、室温で1時間攪拌した。その後、ろ過を行い、得られた残渣にトルエン(50mL)を加え、セライトを敷いたろ過器でろ過を行い、得られたろ液を減圧濃縮することにより固体を得た。
得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン/ヘキサン)、晶析(トルエン/エタノール)で順次精製した後、減圧乾燥することにより、金属錯体M1(0.54g、塩化イリジウム(III)水和物を3水和物とした場合のIrCl・3HO仕込量に対して収率49%)を黄色固体として得た。HPLCで金属錯体M1を分析したところ、金属錯体M1のHPLC面積百分率値は98.5%を示した。
LC-MS(APCI positive):m/z=2488.5[M]
H-NMR(400MHz、CDCl)δ(ppm)=8.08(s,3H)、7.95(s、3H)、7.89-7.86(m、6H)、7.84(d、3H)、7.79(s、3H)、7.70(d、3H)、7.53(d、3H)、7.52-7.46(m、6H)、7.43(d、3H)、7.36(d、3H)、7.30-7.20(m、6H)、7.11(d、12H)、1.79(s、9H)、1.73(s、9H)、1.61(s、9H)、1.52(s、24H)、1.32(s、9H)、1.20(s、36H)、0.61(s、54H).
【0290】
(高分子化合物IP1の合成)
高分子化合物IP1は、特開2012-036388号公報に記載の方法に従って合成した単量体PM1と単量体PM2と単量体PM3を用いて、特開2012-036388号公報に記載の方法で合成した。
【0291】
【化75】
【0292】
高分子化合物IP1は、仕込み原料の量から求めた理論値では、単量体PM1から誘導される構成単位と、単量体PM2から誘導される構成単位と、単量体PM3から誘導される構成単位とが、50:40:10のモル比で構成されてなる共重合体である。
【0293】
(薄膜L1の作製及び評価)
キシレンに、高分子化合物P1、及び金属錯体M1(高分子化合物P1/金属錯体M1=70質量%/30質量%)を固形分が2質量%となる濃度で溶解させた。得られたキシレン溶液を用いて、石英基板上にスピンコート法により80nmの厚さで成膜し、薄膜L1を形成した。
【0294】
薄膜L1の室温における発光スペクトルの最大ピーク波長は、分光光度計(日本分光株式会社製、FP-6500)により室温にて測定した。波長325nmの紫外(UV)光を用いて励起することにより、526nmに発光スペクトルの強度が最大となるピークを有する発光が観測された。図1に金属錯体M1の発光スペクトルを示す。
【0295】
当該発光スペクトルの半値幅は、30nmであった。結果を下記の表1に示す。
【0296】
<比較例1>
金属錯体CM1の合成
下記の方法で、金属錯体CM1を合成した。
【0297】
【化76】
【0298】
【化77】
【0299】
(Stage1:化合物CL1の合成)
反応容器内を窒素雰囲気にした後、化合物CL1A(25.0g)、化合物CL1B(52.5g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.23g)、20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(315g)、及びトルエン(440mL)を加え、70℃で4時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した後、イオン交換水(125mL)を加え、水層を除去した。得られた有機層をイオン交換水で洗浄後、ろ過し、得られたろ液を減圧濃縮することにより、粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン)により精製した後、トルエンとアセトニトリルで晶析し、50℃で減圧乾燥させることにより、化合物CL1(41.5g)を得た。HPLCで化合物CL1を分析したところ、化合物CL1のHPLC面積百分率値は99.5%以上であった
【0300】
(Stage8:金属錯体CM1aの合成)
遮光した反応容器内をアルゴンガス雰囲気にした後、塩化イリジウム(III)水和物(1.25g)、化合物CL1(3.92g)、イオン交換水(18.0mL)及び2-エトキシエタノール(81.5mL)を加え、105℃で21時間攪拌した。
得られた反応物を室温まで冷却した後、メタノール(16mL)に加え、室温で1時間攪拌した。その後、ろ過を行い、得られた残渣をトルエンとメタノールで洗浄し、減圧乾燥し、金属錯体CM1aを含む黄色固体(3.48g)を得た。
【0301】
(Stage9:金属錯体CM1の合成)
遮光した反応容器内をアルゴンガス雰囲気にした後、金属錯体CM1aを含む黄色固体(1.00g)、化合物CL1(2.04g)、トリフルオロメタンスルホン酸銀(I)(0.23g)、2,6-ルチジン(0.14g)及びジエチレングリコールジメチルエーテル(9.5g)を加え、160℃で3時間攪拌した。
得られた反応物を室温まで冷却した後、メタノール(50mL)に加え、室温で1時間攪拌した。その後、ろ過を行い、得られた残渣にトルエン(50mL)を加え、セライトを敷いたろ過器でろ過を行い、得られたろ液を減圧濃縮することにより固体を得た。
得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン/ヘキサン)、晶析(トルエン/ヘプタン)で順次精製した後、減圧乾燥することにより、金属錯体CM1(0.93g、塩化イリジウム(III)水和物を3水和物とした場合のIrCl・3HO仕込量に対して収率79%)を黄色固体として得た。HPLCで金属錯体M1を分析したところ、金属錯体M1のHPLC面積百分率値は99.5%以上を示した。
LC-MS(ESI positive):m/z=1714.8[M+K]
【0302】
(薄膜CL1の作製及び評価)
金属錯体M1に代えて、金属錯体CM1を用いた以外は、実施例1と同様にして、薄膜CL1を作製した。
【0303】
薄膜CL1の室温における発光スペクトルの最大ピーク波長は、分光光度計(日本分光株式会社製、FP-6500)により室温にて測定した。波長325nmの紫外(UV)光を用いて励起することにより、535nmに発光スペクトルの強度が最大となるピークを有する発光が観測された。図1に金属錯体CM1の発光スペクトルを示す。
【0304】
当該発光スペクトルの半値幅は、40nmであった。結果を下記の表1に示す。
【0305】
<比較例2>
金属錯体CM2の合成
金属錯体CM2は、American Dye Source社製を用いた。
【0306】
【化78】
【0307】
(薄膜CL2の作製及び評価)
金属錯体M1に代えて、金属錯体CM2を用いた以外は、実施例1と同様にして、薄膜CL2を作製した。
【0308】
薄膜CL2の室温における発光スペクトルの最大ピーク波長は、分光光度計(日本分光株式会社製、FP-6500)により室温にて測定した。波長325nmの紫外(UV)光を用いて励起することにより、506nmに発光スペクトルの強度が最大となるピークを有する発光が観測された。図1に金属錯体CM2の発光スペクトルを示す。
【0309】
当該発光スペクトルの半値幅は、56nmであった。結果を下記の表1に示す。
【0310】
【表2】
【0311】
図2は、実施例1の金属錯体M1の発光スペクトルのピーク位置に、比較例1の金属錯体CM1の発光スペクトルのピークと比較例2の金属錯体CM2の発光スペクトルのピークとを重ねたグラフである。
【0312】
表1に示された半値幅の値、及び図2に対比された発光スペクトルの幅の相違は、本発明の金属錯体の発光スペクトルの幅が、比較例の金属錯体よりも狭いことを示している。
【産業上の利用可能性】
【0313】
本発明によれば、発光スペクトル幅の狭い金属錯体を提供することができる。また、本発明によれば、該金属錯体を含有する組成物及び該金属錯体を含有する発光素子を提供することができる。
図1
図2