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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】多層構造体及びそれを含む包装材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20241213BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20241213BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
B32B27/32 C
B32B27/28 102
B65D65/40 D
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020132868
(22)【出願日】2020-08-05
(65)【公開番号】P2021028167
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2019147494
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110002206
【氏名又は名称】弁理士法人せとうち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 真
(72)【発明者】
【氏名】ワウト ルイテン
(72)【発明者】
【氏名】フランク ベールマンズ
【審査官】山中 隆幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/080076(WO,A1)
【文献】特開2006-028496(JP,A)
【文献】特開2003-063543(JP,A)
【文献】特開2003-054591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B、B65D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リサイクル樹脂(a)を主成分とするリサイクル樹脂層(A)、ポリオレフィン樹脂(b)を主成分とする層(B)、及び二層以上のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(c)を主成分とするバリア層(C)を少なくとも有する多層構造体であって、
バリア層(C)がリサイクル樹脂層(A)の外側及び内側に位置し、
リサイクル樹脂層(A)が、炭素数が30以下であり、かつエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(c)よりもSP値が低い化合物(X)をさらに含有し、
前記化合物(X)が脂環式飽和炭化水素及びその誘導体、脂環式不飽和炭化水素及びその誘導体、芳香族炭化水素、又はハロゲン化炭化水素である多層構造体。
【請求項2】
化合物(X)のSP値が11.5以下である、請求項1に記載の多層構造体。
【請求項3】
リサイクル樹脂層(A)が熱可塑性樹脂を主成分とするポストコンシューマリサイクル品からなる、請求項1又は2に記載の多層構造体。
【請求項4】
バリア層(C)がエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(c)のみからなる、請求項1~のいずれかに記載の多層構造体。
【請求項5】
ポリオレフィン樹脂(b)がポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む、請求項1~のいずれかに記載の多層構造体。
【請求項6】
リサイクル樹脂層(A)の厚みが、全体厚みの10%以上である、請求項1~のいずれかに記載の多層構造体。
【請求項7】
バリア層(C)とリサイクル樹脂層(A)の間に、さらに接着性樹脂層(D)を有する、請求項1~のいずれかに記載の多層構造体。
【請求項8】
リサイクル樹脂層(A)とは反対側のバリア層(C)表面に、さらに接着性樹脂層(D)を介して層(B)を有する、請求項1~のいずれかに記載の多層構造体。
【請求項9】
樹脂層(A)とは反対側のバリア層(C)表面に、さらに接着性樹脂層(D)を介して層(B)を有する、請求項1~のいずれかに記載の多層構造体。
【請求項10】
樹脂層(E)、ポリオレフィン樹脂(b)を主成分とする層(B)、及び二層以上のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(c)を主成分とするバリア層(C)を少なくとも有する多層構造体であって、
バリア層(C)が樹脂層(E)の外側及び内側に位置し、
樹脂層(E)が、炭素数が30以下であり、かつエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(c)よりもSP値が低い化合物(X)をさらに含有し、
前記化合物(X)が脂環式飽和炭化水素及びその誘導体、脂環式不飽和炭化水素及びその誘導体、芳香族炭化水素、又はハロゲン化炭化水素であり、
樹脂層(E)の全体厚みに対する割合が20%以上である多層構造体。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の多層構造体を含む包装材。
【請求項12】
請求項11に記載の包装材を用いた包装製品であって、前記包装材が内容物を包囲する包装製品。
【請求項13】
前記内容物が食品である、請求項12に記載の包装製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクル樹脂を主成分とするリサイクル樹脂層、ポリオレフィン樹脂を主成分とする層、及び二層以上のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂を主成分とするバリア層を有する多層構造体及びそれを含む包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン層と、バリア性に優れるエチレン-ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略称することがある)層とを含む多層構造体は、そのバリア性を活かして食品包装容器、燃料容器等各種用途に用いられている。このような多層構造体はフィルム、シート、カップ、トレー、ボトル等の各種成形品として用いられる。このとき、上記各種成形品を得る際に発生する端部や不良品等を回収し、溶融成形してポリオレフィン層とEVOH層を含む多層構造体の少なくとも1層として再利用する場合がある。このような回収技術は、廃棄物削減や経済性の点で有用であり、広く採用されている。
【0003】
特許文献1には、(A)エチレン含有率が20~60モル%のエチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物、(B)ポリオレフィン系樹脂、及び(C)多価金属硫酸塩水和物の完全脱水物又は部分脱水物を含む樹脂組成物において、(A)エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物を(B)ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.1~30重量部含有し、且つ(C)多価金属硫酸塩水和物の完全脱水物又は部分脱水物を前記(A)エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物100重量部に対して1重量部以上、100重量部未満含有することを特徴とする樹脂組成物、当該樹脂組成物からなる層を含む多層構造体が記載されている。これによれば、EVOH樹脂層とポリオレフィン系樹脂層とを含む多層構造体の回収物を再使用するにあたり、(C)多価金属硫酸塩水和物の完全脱水物又は部分脱水物を含有させることにより、ダイリップ付着物の発生を抑制できるとされている。
【0004】
特許文献2には、3層フィルム複合体からなる積層体であって、第1バリア層と第2バリア層との間にリサイクル材料を有する積層体が記載されており、第1バリア層と第2バリア層として、アルミニウム;酸化ケイ素、酸化アルミニウムのようなセラミックバリアを有するプラスチックフィルム;金属蒸着バリアを有するプラスチックフィルム;エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、シクロオレフィン共重合体(COC)、非晶質、芳香族、又は部分的芳香族ポリアミド(PA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-193327号公報
【文献】DE102017123135A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1には、炭素数が30以下であり、かつエチレン-ビニルアルコール共重合体よりもSP値が低い化合物が、多層構造体の回収物に含まれ得ることについての記載はなく、当該SP値の低い化合物が多層構造体からマイグレーションすると、臭気等が発生する課題があることについての記載もなかった。また、特許文献2には、3層フィルム複合体からなる積層体として、アルミニウム箔とアルミニウム箔との間にリサイクル材料を有する積層体が記載されているが、当該積層体では耐屈曲性に問題があり、また、列挙されるバリア層の中にはリサイクル材料に由来する臭気等の抑制が不十分な場合もあり、改善が望まれていた。また、より限定的な課題として、食品包装材として用いる際に、比較的低極性の長鎖脂肪酸等を含む食品を内容物とする場合には、SP値の低い化合物が該食品にマイグレーションしやすいおそれがあり、改善が望まれていた。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、炭素数が30以下であり、かつエチレン-ビニルアルコール共重合体よりもSP値が低い化合物がリサイクル樹脂層からマイグレーションするのを抑制するとともに、耐屈曲性に優れた多層構造体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、リサイクル樹脂(a)を主成分とするリサイクル樹脂層(A)、ポリオレフィン樹脂(b)を主成分とする層(B)、及び二層以上のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(c)を主成分とするバリア層(C)を少なくとも有する多層構造体であって、バリア層(C)がリサイクル樹脂層(A)の外側及び内側に位置し、リサイクル樹脂層(A)が、炭素数が30以下であり、かつエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(c)よりもSP値が低い化合物(X)をさらに含有する多層構造体を提供することによって解決される。
【0009】
このとき、化合物(X)のSP値が11.5以下が好適であり、リサイクル樹脂層(A)が熱可塑性樹脂を主成分とするポストコンシューマリサイクル品からなることが好適である。化合物(X)が脂肪族飽和炭化水素及び芳香族炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種であることが好適であり、バリア層(C)がエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(c)のみからなることが好適である。ポリオレフィン樹脂(b)がポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが好適であり、リサイクル樹脂層(A)の厚みが、全体厚みの10%以上であることが好適である。バリア層(C)とリサイクル樹脂層(A)の間に、さらに接着性樹脂層(D)を有することが好適であり、リサイクル樹脂層(A)とは反対側のバリア層(C)表面に、さらに接着性樹脂層(D)を介して層(B)を有することが好適である。
【0010】
また、上記課題は、樹脂層(E)、ポリオレフィン樹脂(b)を主成分とする層(B)、及び二層以上のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(c)を主成分とするバリア層(C)を少なくとも有する多層構造体であって、バリア層(C)が樹脂層(E)の外側及び内側に位置し、樹脂層(E)が、炭素数が30以下であり、かつエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(c)よりもSP値が低い化合物(X)をさらに含有し、樹脂層(E)の全体厚みに対する割合が20%以上である多層構造体を提供することによっても解決される。
【0011】
前記多層構造体を含む包装材が好適な実施態様であり、前記包装材を用いた包装製品であって、前記包装材が内容物を包囲する包装製品も好適な実施態様である。また、前記内容物が食品である包装製品も好適な実施態様である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の多層構造体は、炭素数が30以下であり、かつエチレン-ビニルアルコール共重合体よりもSP値が低い化合物を含むリサイクル樹脂層の外側と内側に、エチレン-ビニルアルコール共重合体を主成分とするバリア層が配置されてなるため、当該化合物がリサイクル樹脂層からマイグレーションするのを抑制できるとともに、耐屈曲性に優れた多層構造体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の多層構造体は、リサイクル樹脂(a)を主成分とするリサイクル樹脂層(A)、ポリオレフィン樹脂(b)を主成分とする層(B)、及び二層以上のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(c)(以下、「EVOH(c)」と略記することがある)を主成分とするバリア層(C)を少なくとも有する。
【0014】
本発明の多層構造体において、二層以上のEVOH(c)を主成分とするバリア層(C)がリサイクル樹脂層(A)の外側及び内側に位置することが重要である。これにより、炭素数が30以下であり、かつEVOH(c)よりもSP値が低い化合物(X)がリサイクル樹脂層(A)からマイグレーションするのを抑制できるとともに、耐屈曲性に優れた多層構造体を提供できる。
【0015】
後述する実施例において本発明者が検討したところ、EVOH(c)を主成分とするバリア層(C)がリサイクル層(A)の片面にのみ配置された多層構造体や、当該バリア層(C)を設けなかった多層構造体では、当該多層構造体を用いて作製された包装材において臭気を抑制できず、リサイクル樹脂層(A)からのマイグレーションが抑制できなかった。特に、当該バリア層(C)を設けなかった多層構造体では、多層構造体から溶媒に溶出する溶出量も多く、酸素透過速度(OTR)の値も非常に高かった。EVOH(c)の代わりに6ナイロン又はポリアクリロニトリル(PAN)をバリア層としてリサイクル樹脂層(A)の外側及び内側に配置した多層構造体では、当該多層構造体を用いて作製された包装材において臭気を抑制できていたが、多層構造体から溶媒に溶出する溶出量が多く、リサイクル樹脂層(A)からのマイグレーションが抑制できなかった。そして、酸素透過速度(OTR)の値も高く、屈曲試験でピンホールの数が多く、耐屈曲性に劣る多層構造体であることが確認された。また、EVOH(c)の代わりにアルミニウム箔をバリア層としてリサイクル樹脂層(A)の外側及び内側に配置した多層構造体では、当該多層構造体を用いて作製された包装材において臭気を抑制できず、リサイクル樹脂層(A)からのマイグレーションが抑制できなかった。そして、酸素透過速度(OTR)の値も高く、屈曲試験でピンホールの数が多く、耐屈曲性に劣る多層構造体であることが確認された。
【0016】
これに対し、EVOH(c)を主成分とするバリア層(C)がリサイクル樹脂層(A)の外側及び内側に配置された多層構造体では、当該多層構造体を用いて作製された包装材において臭気を抑制できており、多層構造体から溶媒に溶出する溶出量も少なく、リサイクル樹脂層(A)からのマイグレーションを抑制できていた。そして、酸素透過速度(OTR)の値も低く、屈曲試験でピンホールの数が少なく、耐屈曲性に優れた多層構造体であることが確認された。このことは本発明者の検討によって明らかになったことであり、本発明の構成を採用する意義が大きいことが分かる。
【0017】
本発明におけるリサイクル樹脂層(A)はリサイクル樹脂(a)を主成分とする。主成分とするとは、層(A)を構成する樹脂中のリサイクル樹脂(a)の含有量が80質量%以上であることを示し、90質量%以上が好ましい。中でも、リサイクル樹脂層(A)がリサイクル樹脂(a)のみからなることが好適な実施態様である。本発明におけるリサイクル樹脂(a)は、製造工程中のトリムやオフスペック品を回収して得られる熱可塑性樹脂ではなく、市場に流通した製品を回収して得られる熱可塑性樹脂からなる。すなわち、リサイクル樹脂層(A)が熱可塑性樹脂を主成分とするポストコンシューマリサイクル品からなることが好適な実施態様である。市場に流通した製品を回収して得られる熱可塑性樹脂には、印刷のインク、アンチブロッキング(AB)剤、酸化防止剤、油分、滑剤、帯電防止剤、結晶核剤、接着剤、顔料、光安定剤、粘着付与材、発泡剤、可塑剤等の成分が含まれ得ることになる。このような成分を含む熱可塑性樹脂を再利用すると、前記成分がマイグレーションして、臭気等が発生するといった問題があった。特に、包装材として再利用すると、内側にマイグレーションした場合には包装材に含まれる内容物を汚染することになり、外側にマイグレーションした場合には表層におけるヒートシール性を低下させるという問題があった。本発明の多層構造体は、リサイクル樹脂層(A)から前記成分がマイグレーションすることを抑制できるため、かかる問題を解決できる。
【0018】
本発明で用いられるリサイクル樹脂(a)としては、具体的には、後述するポリオレフィン樹脂(b)、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(c)等の熱可塑性樹脂だけでなく、ポリオレフィン;ポリアミド;ポリエステル;ポリスチレン;ポリ塩化ビニル;アクリル系樹脂;ポリウレタン;ポリカーボネート;ポリ酢酸ビニル等の熱可塑性樹脂が挙げられる。中でも、リサイクル樹脂(a)がポリオレフィン樹脂(b)及びエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(c)を含む多層構造体の回収物からなることが好適な実施態様である。リサイクル樹脂(a)を得る方法としては、市場に流通した製品を回収し、当該製品を粉砕した後に溶融成形することが好ましい。粉砕する方法としては特に限定されず、ボールミル、振動ミル、ジェット粉砕機等を用いて粉砕する方法が挙げられる。溶融成形する方法としては特に限定されず、押出成形法、射出成型法等が挙げられ、溶融成形温度としては、180~280℃が好ましい。
【0019】
本発明におけるリサイクル樹脂層(A)は、炭素数が30以下であり、かつエチレン-ビニルアルコール共重合体(c)よりもSP値が低い化合物(X)を含有する。本発明者の検討により、マイグレーションの対象となる化合物(X)よりも、SP値の高いEVOH(c)をリサイクル樹脂層(A)の外側及び内側に配置することにより、SP値の低い化合物(X)のマイグレーションを抑制できることが明らかとなった。EVOH(c)のSP値は、通常11.6~16.2であり、このようなEVOH(c)よりも化合物(X)のSP値が低い場合にマイグレーションを抑制できる。特に、本発明の多層構造体を含む包装材を食品包装材として用いる際に、比較的低極性の長鎖脂肪酸等を含む食品を内容物とする場合には、SP値の低い化合物が該食品にマイグレーションすることを効果的に抑制できる。化合物(X)のSP値としては11.5以下が好ましく、11.4以下がより好ましい。一方、化合物(X)のSP値は、通常5以上である。化合物(X)としては、具体的には、nヘキサン、nヘプタン、nオクタン等の脂肪族飽和炭化水素及びその誘導体;ヘキセン、ヘプテン、オクテン等の脂肪族不飽和炭化水素及びその誘導体;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環式飽和炭化水素及びその誘導体;シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の脂環式不飽和炭化水素及びその誘導体;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、フェノール等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル;ブタノール、ペンタノール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等のアルデヒドが挙げられる。中でも、化合物(X)が、脂肪族飽和炭化水素、脂環式不飽和炭化水素、芳香族炭化水素及びアルコールからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、脂肪族飽和炭化水素、脂環式不飽和炭化水素及び芳香族炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。一例として、洗剤等に香料として含まれるリモネン(炭素数10の脂環式不飽和炭化水素)はリサイクル樹脂層(A)に残留し、リサイクルした際に内容物に移行したり、臭気として外部に漏れたりすることがある。化合物(X)の炭素数としては、25以下が好ましく、20以下がより好ましく、15以下がさらに好ましい。前記炭素数は、通常5以上である。特に、リサイクル樹脂層(A)に含まれ得る化合物(X)が炭素数8以上の飽和炭化水素または脂環式不飽和炭化水素である場合に、マイグレーションを効果的に抑制できる。リサイクル樹脂層(A)に含まれる化合物(X)は、1種類であっても良く、2種類以上であっても良い。
【0020】
本発明におけるリサイクル樹脂層(A)中の化合物(X)の含有量は、リサイクル樹脂の原料である、市場に流通した製品により異なるが、例えばリサイクル樹脂層(A)を分離しガスクロマトグラフィーにて測定した際に検出される濃度が10ppm以上であってもよい。このように、本発明の多層構造体は、リサイクル樹脂層(A)がポストコンシューマリサイクル品からなる場合のように、化合物(X)の濃度が比較的高い場合であっても、マイグレーションを効果的に抑制できる。
【0021】
本発明における層(B)はポリオレフィン樹脂(b)を主成分とする。主成分とするとは、層(B)を構成する樹脂中のポリオレフィン樹脂(b)の含有量が80質量%以上であることを示し、90質量%以上が好ましい。本発明で用いられるポリオレフィン樹脂(b)としては、ポリエチレン(低密度、直鎖状低密度、中密度、高密度等)、エチレンと1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン類又はアクリル酸エステルを共重合したエチレン系共重合体等のポリエチレン樹脂;ポリプロピレン、プロピレンとエチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン類を共重合したプロピレン系共重合体等のポリプロピレン樹脂;ポリ(1-ブテン)、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、上述のポリオレフィンに無水マレイン酸を作用させた変性ポリオレフィン;アイオノマー樹脂等が挙げられる。中でも、ポリオレフィン樹脂(b)がポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが好適な実施態様である。また、上記ポリエチレン樹脂がメタロセン触媒で重合されたポリエチレン樹脂であることも好適な実施態様である。ポリオレフィン樹脂(b)は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0022】
本発明におけるバリア層(C)はエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(c)を主成分とする。主成分とするとは、バリア層(C)を構成する樹脂中のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(c)の含有量が80質量%以上であることを示し、90質量%以上が好ましい。中でも、化合物(X)のマイグレーションを効果的に抑制できることから、バリア層(C)がエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(c)のみからなることが好適な実施態様である。
【0023】
EVOH(c)は、エチレン-ビニルエステル共重合体をけん化することで得られる。ビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表的なものとして挙げられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等)も使用できる。EVOH(c)のエチレン含有量は20~60モル%が好ましい。エチレン含有量が20モル%未満の場合には、熱安定性が低下するおそれがある。エチレン含有量は23モル%以上がより好ましい。また、エチレン含有量が60モル%を超えるとバリア性が低下するおそれがある。多層構造体からの化合物(X)の溶出量をより少なくする観点から、エチレン含有量は55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましく、43モル%以下が特に好ましい。一方、EVOH(c)のビニルエステル単位のけん化度はバリア性の観点から、80%以上が好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。EVOH(c)のエチレン含有量及びケン化度は、核磁気共鳴(NMR)法により求められる。
【0024】
EVOH(c)は、本発明の効果を阻害しない範囲、一般的には5モル%以下の範囲で、エチレン及びビニルエステル以外の重合性単量体が共重合されていてもよい。このような重合性単量体としては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン;(メタ)アクリル酸エステル;アルキルビニルエーテル;N-(2-ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド又はその4級化物、N-ビニルイミダゾール又はその4級化物、N-ビニルピロリドン、N,N-ブトキシメチルアクリルアミド、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン等が挙げられる。
【0025】
バリア層(C)には本発明の効果を阻害しない範囲でEVOH(c)以外の樹脂が含まれていてもよい。EVOH(c)以外の樹脂としては、ポリオレフィン;ポリアミド;ポリエステル;ポリスチレン;ポリ塩化ビニル;アクリル系樹脂;ポリウレタン;ポリカーボネート;ポリ酢酸ビニル等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0026】
また、バリア層(C)には本発明の効果を阻害しない範囲で各種添加剤を含有していてもよい。このような添加剤の例としては、酸化防止剤、可塑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、フィラー、他の樹脂等が挙げられ、具体的には下記のものが挙げられる。EVOH(c)中の添加剤の含有量は、通常、10質量%以下であり、5質量%以下が好適であり、1質量%以下がより好適である。
【0027】
酸化防止剤:2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、4,4’-チオビス-(6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’-チオビス-(6-t-ブチルフェノール)等。
紫外線吸収剤:エチレン-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレート、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)5-クロロベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オキトシキベンゾフェノン等。
可塑剤:フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、ワックス、流動パラフィン、リン酸エステル等。
帯電防止剤:ペンタエリスリットモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、硫酸化ポリオレフィン類、ポリエチレンオキシド、カーボワックス等。
滑剤:エチレンビスステアロアミド、ブチルステアレート等。
着色剤:カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、インドリン、アゾ系顔料、ベンガラ等。
充填剤:グラスファイバー、アスベスト、バラストナイト、ケイ酸カルシウム、タルク、モンモリロナイト等。
【0028】
本発明の多層構造体は、リサイクル樹脂(a)を主成分とするリサイクル樹脂層(A)、ポリオレフィン樹脂(b)を主成分とする層(B)、及び二層以上のEVOH(c)を主成分とするバリア層(C)を少なくとも有する。二層以上のバリア層(C)としては、同じEVOH(c)を使用してもよいし、異なるEVOH(c)を使用してもよく、上記説明したEVOH(c)が好適に用いられる。
【0029】
本発明の多層構造体は、二層以上のEVOH(c)を主成分とするバリア層(C)がリサイクル樹脂層(A)の外側及び内側に位置するが、接着力を高める観点から、バリア層(C)とリサイクル樹脂層(A)の間に、さらに接着性樹脂層(D)を有することが好ましい。接着性樹脂層(D)としては、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性された変性ポリオレフィン樹脂を好適に用いられる。ポリオレフィン樹脂としては、上記ポリオレフィン樹脂(b)の説明で挙げられたものを好適に使用できる。不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル等が挙げられる。中でも、無水マレイン酸変性ポリオレフィンがより好適に使用される。これらは1種類を単独で用いても、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0030】
本発明の多層構造体において、リサイクル樹脂層(A)とは反対側のバリア層(C)表面に、さらに接着性樹脂層(D)を介して層(B)を有することが好適な実施態様である。これにより、機械的強度が高くなる利点を有する。本発明の多層構造体としては、4層~15層が好ましく、例えば、以下のような構成が好適に採用される。任意に他の層を追加してもよい。
【0031】
4層 B/C/A/C、C/B/A/C
【0032】
5層 B/C/A/C/B、C/B/A/C/B、C/B/A/B/C、B/C/D/A/C、C/B/A/D/C
【0033】
6層 B/C/B/A/C/B、C/B/C/A/C/B、B/C/D/A/C/B、B/C/D/A/B/C、B/C/D/A/D/C、
【0034】
7層 B/C/B/A/B/C/B、C/B/C/B/A/C/B、B/C/D/A/D/C/B、B/C/D/A/B/D/C、B/D/C/D/A/C/B
【0035】
8層 B/C/B/A/B/C/B/C、C/B/C/B/A/C/B/C、B/C/D/A/D/C/D/B、B/C/D/A/B/D/C/B、B/D/C/D/A/D/C/B
【0036】
9層 B/C/B/A/B/C/B/C/B、C/B/C/B/A/C/B/C/B、B/C/D/A/D/C/B/D/B、B/C/D/A/C/B/D/C/B、B/D/C/D/A/D/C/D/B
【0037】
本発明の多層構造体の製造方法としては、ドライラミネート法等のラミネート法;共射出成形法;共押出成形法等が例示されるが、特に限定されない。共押出成形法としては、共押出ラミネート法、共押出シート成形法、共押出インフレーション成形法、共押出ブロー成形法等を挙げられる。
【0038】
本発明の多層構造体におけるリサイクル樹脂層(A)の厚み(1層当たりの厚み)は、20~200μmが好ましい。リサイクル樹脂層(A)の厚みが20μm未満の場合、リサイクル効率が低下するおそれがあり、30μm以上がより好ましく、45μm以上がさらに好ましく、60μm以上が特に好ましい。一方、リサイクル樹脂層(A)の厚みが200μmを超える場合、マイグレーションが増大するおそれがあり、180μm以下がより好ましく、150μm以下がさらに好ましく、130μm以下が特に好ましい。また、本発明の多層構造体において、リサイクル樹脂層(A)の厚みが、全体厚みの10%以上が好適な実施態様である。リサイクル樹脂層(A)の全体厚みに対する割合が高い場合であっても化合物(X)のマイグレーションが効果的に抑制される。前記割合としては、20%以上であってもよく、40%以上であってもよく、60%以上であってもよい。
【0039】
本発明の多層構造体における層(B)の厚み(1層当たりの厚み)は、5~65μmが好ましい。層(B)の厚みが5μm未満の場合、機械的強度が不足するおそれがあり、8μm以上がより好ましく、12μm以上がさらに好ましく、15μm以上が特に好ましい。一方、層(B)の厚みが65μmを超える場合、リサイクル効率が低下するおそれがあり、60μm以下がより好ましく、55μm以下がさらに好ましく、50μm以下が特に好ましい。
【0040】
本発明の多層構造体におけるバリア層(C)の厚み(1層当たりの厚み)は、0.5~20μmが好ましい。バリア層(C)の厚みが0.5μm未満の場合、バリア性が不十分となるおそれがあり、1μm以上がより好ましい。一方、バリア層(C)の厚みが20μmを超える場合、柔軟性が低下するとともにコスト高となるおそれがあり、16μm以下がより好ましく、12μm以下がさらに好ましく、8μm以下が特に好ましい。
【0041】
本発明の多層構造体が接着性樹脂層(D)を有する場合、厚み(1層当たりの厚み)は、0.5~20μmが好ましい。接着性樹脂層(D)の厚みが0.5μm未満の場合、機械的強度が不足するおそれがあり、1μm以上がより好ましく、2μm以上がさらに好ましい。一方、接着性樹脂層(D)の厚みが20μmを超える場合、コスト高となるおそれがあり、16μm以下がより好ましく、12μm以下がさらに好ましく、10μm以下が特に好ましい。
【0042】
本発明の多層構造体の合計厚みは、容量や用途に応じて適宜設定できる。コストの観点から、前記合計厚みは、300μm以下が好ましく、250μm以下がより好ましく、200μm以下がさらに好ましい。一方、機械的強度を確保する観点から、前記合計厚みは、30μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。
【0043】
本発明の多層構造体の他の実施形態としては、樹脂層(E)、ポリオレフィン樹脂(b)を主成分とする層(B)、及び二層以上のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(c)を主成分とするバリア層(C)を少なくとも有する多層構造体であって、バリア層(C)が樹脂層(E)の外側及び内側に位置し、樹脂層(E)が、炭素数が30以下であり、かつエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(c)よりもSP値が低い化合物(X)をさらに含有し、樹脂層(E)の全体厚みに対する割合が20%以上である。
【0044】
上記他の実施形態における多層構造体では、樹脂層(E)の厚みが、全体厚みの20%以上であることを特徴とする。このように、上記他の実施形態における多層構造体は、樹脂層(E)の全体厚みに対する割合が高い場合であっても化合物(X)のマイグレーションが効果的に抑制できる。前記割合としては、40%以上であってもよく、60%以上であってもよい。
【0045】
上記他の実施形態における多層構造体における層(B)、バリア層(C)、化合物(X)、その他の樹脂及び添加剤並びに各層及び多層構造体の構成については、上述と同様のものを用いることができる。また、上記他の実施形態における多層構造体における樹脂層(E)は、リサイクル樹脂(a)を主成分とするものであってもよい。すなわち、樹脂層(E)がリサイクル樹脂層(A)と同じ構成であってもよく、上述したリサイクル樹脂層(A)で使用されるものと同様のものを用いることができる。
【0046】
本発明の多層構造体は、フィルム、シート、カップ等の包装材として好適に用いられる。後述する実施例からも明らかなように、本発明の多層構造体を用いて作製された包装材では、臭気が抑制され、多層構造体から溶媒に溶出する溶出量も少なく、リサイクル樹脂層(A)からの化合物(X)のマイグレーションが抑制できている。さらに、酸素透過速度(OTR)の値も低く、耐屈曲性にも優れている。したがって、本発明の多層構造体を含む包装材を用いた包装製品であって、前記包装材が内容物を包囲する包装製品がより好適な実施態様であり、特に内容物が食品である包装製品に適している。
【実施例
【0047】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、実施例中「部」、「%」とあるのは、特に断わりのない限り、質量基準を意味する。
【0048】
(実施例1) 市販の冷凍唐揚げ用の包装材トレーを20枚回収、洗浄し、粉砕した後、210℃の条件で溶融押出成形し、リサイクル樹脂(a)を得た。リサイクル樹脂(a)に含まれる化合物(X)は、イソオクタンで溶出し、LC-MSで分離同定した。検出された成分のSP値をFedorsの式(Polym.Eng.Sci.,14[2],147(1974))により求め、同様にバリア層(C)のEVOHのSP値(14.0)を求めたところ、該EVOHよりもSP値が下回る成分として、nオクタン(SP値7.5)及びブチルアルコール(SP値11.4)等が含まれていた。
【0049】
共押出多層キャスト製膜装置を用いて、層(B)が低密度ポリエチレン(LDPE;日本ポリエチレン社製「ノバテックLC600」)からなり、接着性樹脂層(D)が無水マレイン酸変性ポリエチレン(三井化学株式会社製「AdmerNF500」)からなり、バリア層(C)がEVOH(株式会社クラレ製「エバールF171」、エチレン含有量32モル%)からなり、リサイクル樹脂層(A)が上記リサイクル樹脂(a)からなる多層構造体(内層側から順に(B)/(D)/(C)/(D)/(A)/(D)/(C)/(D)/(B)=20μm/4μm/4μm/4μm/100μm/4μm/4μm/4μm/20μmの層厚み構成を有する9層共押出多層キャストフィルム)を得た。
【0050】
得られた多層構造体及び包装材の各特性を以下の要領で評価した。
【0051】
(溶出量) 各実施例及び比較例で得られた多層構造体に対して、EN 1186-15:2002 (E)に従い、溶媒に対する溶出する成分の溶出量を測定した。具体的には、多層構造体の片側1dmをイソオクタン溶液に40℃、1日間暴露した後、溶媒を揮発させた残留物の重量を測定することで溶出量を算出した。
【0052】
(OTR)
各実施例及び比較例で得られた多層構造体の酸素透過速度(OTR)を、MOCON社製「MOCON OX-TRAN2/20型」を用い、20℃、65%RH条件下でJIS K 7126-2(等圧法;2006年)に準じて測定し、その平均値を求めた。
【0053】
(屈曲後ピンホール)
各実施例及び比較例で得られた多層構造体について、ASTM F392-74に準じて、テスター産業社製「BE1006恒温槽付ゲルボフレックステスター」を使用し、23℃の環境下で、屈曲を100回繰り返した。屈曲後のピンホールの数をA4サイズ(210mm×297mm)の範囲内で測定した。測定は各2サンプルについて行い、その平均値を求めた。屈曲後のピンホール数が少ない程、柔軟性(耐屈曲性)に優れる。
【0054】
(臭気)
上記で得られた屈曲後の多層構造体を10cm角に二枚切り取り、四方を100℃でヒートシールして包装材を作製した。包装材をアルミ袋に入れて40℃の条件下で10日間保管した後、アルミ袋を開封して、以下の基準で臭気を官能評価した。
A:臭気はなかった
B:仄かに臭気があった
C:明らかな臭気があった
【0055】
(実施例2~5、比較例1~5)
リサイクル樹脂層(A)、ポリオレフィン層(B)、バリア層(C)、接着性樹脂層(D)を表1に示す通りとしたこと以外は実施例1と同様にして、多層構造体を得た。得られた多層構造体及び包装材の各種評価結果を表1に示す。
なお、バリア層(C)を構成する樹脂として、実施例3ではEVOH(株式会社クラレ製「エバールE171」、エチレン含有量44モル%)を用い、比較例3では6ナイロン(6-Ny)を用い、比較例4ではポリアクリロニトリル(PAN)を用いた。また、比較例1では外層側にバリア層(C)を設けず、比較例2ではバリア層(C)を一切用いなかった。比較例5では、バリア層(C)を設ける代わりにアルミニウム箔を積層した。
【0056】
【表1】