(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】二液型偏光膜形成用組成物
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20241213BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
(21)【出願番号】P 2020146090
(22)【出願日】2020-08-31
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】乾 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】幡中 伸行
(72)【発明者】
【氏名】太田 陽介
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/088030(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/082744(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/082745(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/082746(WO,A1)
【文献】特開平07-026140(JP,A)
【文献】特開2017-197602(JP,A)
【文献】特開2009-280771(JP,A)
【文献】国際公開第2018/198793(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/077261(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に重合性基及び活性水素反応性基を有する反応性添加剤ならびに溶剤を含むA剤と、二色性色素、重合性液晶化合物及び溶剤を含むB剤とから構成され、前記二色性色素はアミン構造を有するアゾ色素を含
む、二液型偏光膜形成用組成物の保管方法であって、
保管温度0~50℃で、前記A剤及びB剤を別々に保管
し、
前記A剤を、乾燥不活性ガス雰囲気下、プラスチック製容器又は金属製容器中で保管する、
保管方法。
【請求項2】
前記A剤中に含まれる溶剤の含水率は300ppm未満である、請求項1に記載の保管方法。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の保管方法で保管した二液型偏光膜形成用組成物を構成する、前記分子内に重合性基及び活性水素反応性基を有する反応性添加剤ならびに溶剤を含むA剤と、アミン構造を有するアゾ色素を含む二色性色素、重合性液晶化合物及び溶剤を含むB剤とを混合する工程を含む、偏光膜形成用組成物の製造方法。
【請求項4】
基材上に配向膜を形成する工程、
請求項1
又は2に記載の保管方法で保管した二液型偏光膜形成用組成物を構成する、前記分子内に重合性基及び活性水素反応性基を有する反応性添加剤ならびに溶剤を含むA剤と、アミン構造を有するアゾ色素を含む二色性色素、重合性液晶化合物及び溶剤を含むB剤とを混合して、偏光膜形成用組成物を得る工程、
前記配向膜上に、前記混合後の偏光膜形成用組成物を塗布して塗膜を得る工程、及び
前記塗膜を硬化させる工程
を含む、偏光膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二液型偏光膜形成用組成物及びその保管方法、偏光膜形成用組成物の製造方法ならびに偏光膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置の薄型化に伴い、重合性液晶化合物を基材又は配向膜上に塗布し、配向状態で硬化させることにより得られる液晶硬化層を備える偏光膜を使用した偏光板及び位相差板等の光学フィルムが開発されている。このような光学フィルムの製造においては、成膜性及び取扱性等の観点から、通常、重合性液晶化合物は、該重合性液晶化合物を溶媒等に溶解した偏光膜形成用組成物として、基材又は配向膜上に塗布される。基材又は配向膜上に組成物を塗布することで光学フィルムを製造する場合、当該基材又は配向膜と、得られる光学フィルムとの間の密着性がより高いと、加工時の剥離などが生じないことから高品質の光学フィルムが得られやすいため好ましいことが知られており、高密着性の光学フィルムを与える特性を備えた組成物が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、かかる組成物を長期的に保管後に偏光膜を形成すると、必ずしも良好な光学性能が得られないという課題があることがわかった。したがって、本発明の目的は、長期保管した後も良好な光学性能を有する偏光膜を得ることができる、偏光膜形成用組成物及びその保管方法、該組成物の製造方法ならびに偏光膜の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、前記課題を解決するために詳細に検討を重ねた結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、以下の好適な態様を包含する。
〔1〕分子内に重合性基及び活性水素反応性基を有する反応性添加剤ならびに溶剤を含むA剤と、二色性色素及び溶剤を含むB剤とから構成され、前記二色性色素はアミン構造を有するアゾ色素を含む、二液型偏光膜形成用組成物。
〔2〕重合性液晶化合物をさらに含む、〔1〕に記載の二液型偏光膜形成用組成物。
〔3〕前記A剤中に含まれる溶剤の含水率は300ppm未満である、〔1〕又は〔2〕に記載の二液型偏光膜形成用組成物。
〔4]前記A剤中に含まれる前記反応性添加剤の量は、前記重合性液晶化合物100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下である、〔2〕又は〔3〕に記載の二液型偏光膜形成用組成物。
〔5〕前記A剤及びB剤を別々に保管する、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の二液型偏光膜形成用組成物の保管方法。
〔6〕前記A剤をプラスチック製容器又は金属製容器中で保管する、〔5〕に記載の保管方法。
〔7〕前記A剤を乾燥不活性ガス雰囲気下で保管する、〔5〕又は〔6〕に記載の保管方法。
〔8〕〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の二液型偏光膜形成用組成物を構成する、前記分子内に重合性基及び活性水素反応性基を有する反応性添加剤ならびに溶剤を含むA剤と、アミン構造を有するアゾ色素を含む二色性色素及び溶剤を含むB剤とを混合する工程を含む、偏光膜形成用組成物の製造方法。
〔9〕基材上に配向膜を形成する工程、
〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の二液型偏光膜形成用組成物を構成する、前記分子内に重合性基及び活性水素反応性基を有する反応性添加剤ならびに溶剤を含むA剤と、アミン構造を有するアゾ色素を含む二色性色素及び溶剤を含むB剤とを混合して、偏光膜形成用組成物を得る工程、
前記配向膜上に、前記混合後の偏光膜形成用組成物を塗布して塗膜を得る工程、及び
前記塗膜を硬化させる工程
を含む、偏光膜の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、長期保管した後も良好な光学性能を有する偏光膜を得ることができる、偏光膜形成用組成物及びその保管方法、該組成物の製造方法ならびに偏光膜の製造方法を提供することができる。さらに、本発明の偏光膜形成用組成物から得られた偏光膜は、密着性が高く優れた外観を有する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更をすることができる。
【0008】
本発明の二液型偏光膜形成用組成物は、分子内に重合性基及び活性水素反応性基を有する反応性添加剤ならびに溶剤を含むA剤と、アミン構造を有するアゾ色素を含む二色性色素及び溶剤を含むB剤とから構成される。
【0009】
本発明の二液型偏光膜形成用組成物は、反応性添加剤及びアミン構造を有するアゾ色素、ならびにそれらを溶解する溶剤を必須の成分とし、上記反応性添加剤をA剤中に、アミン構造を有するアゾ色素をB剤中にそれぞれ別々に配合する。
【0010】
<A剤>
〔反応性添加剤〕
反応性添加剤とは、一般に偏光膜の密着性を向上させるために偏光膜形成用組成物に添加される物質を指す。A剤に含まれる反応性添加剤が有する重合性基とは、重合反応に関与する基を意味する。重合性基とは、例えば炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合等の炭素-炭素不飽和結合であってよく、具体的には例えばビニル基、(メタ)アクリル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。
【0011】
A剤に含まれる反応性添加剤が有する活性水素反応基とは、カルボキシ基(-COOH)、水酸基(-OH)、アミノ基(-NH2)等の活性水素を有する基に対して反応性を有する基を意味し、エポキシ基、グリシジル基、オキサゾリル基、カルボジイミド基、アジリジニル基、イミド基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、無水マレイン酸基、アルコキシシリル基等がその代表例である。反応性添加剤において、活性水素反応性基が少なくとも2つ存在することが好ましく、この場合、複数存在する活性水素反応性基は同一でも、異なるものであってもよい。
【0012】
反応性添加剤が有する、重合性基及び活性水素反応性基の個数は、通常、それぞれ1~20個であり、好ましくはそれぞれ1~10個である。
【0013】
好ましい一実施態様において、反応性添加剤は、重合性基としてビニル基及び/又は(メタ)アクリル基を含むことが好ましく、活性水素反応性基として、エポキシ基、グリシジル基、イソシアネート基及びアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含むことが好ましく、アクリル基とイソシアネート基とを有する反応性添加剤又はアクリル基とアルコキシシリル基とを有する反応性添加剤がより好ましい。
【0014】
反応性添加剤の具体例としては、メタクリロイルオキシグリシジルエーテルやアクリロイルオキシグリシジルエーテル等の、(メタ)アクリル基とエポキシ基とを有する化合物;オキセタンアクリレートやオキセタンメタクリレート等の、(メタ)アクリル基とオキセタニル基とを有する化合物;ラクトンアクリレートやラクトンメタクリレート等の、(メタ)アクリル基とラクトン基とを有する化合物;ビニルオキサゾリンやイソプロペニルオキサゾリン等の、ビニル基とオキサゾリル基とを有する化合物;イソシアナトメチルアクリレート、イソシアナトメチルメタクリレート、2-イソシアナトエチルアクリレート及び2-イソシアナトエチルメタクリレート等の、(メタ)アクリル基とイソシアネート基とを有する化合物;3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等の、(メタ)アクリル基とアルコキシシリル基とを有する化合物のオリゴマー等が挙げられる。また、メタクリル酸無水物、アクリル酸無水物、無水マレイン酸及びビニル無水マレイン酸等の、ビニル基やビニレン基と酸無水物とを有する化合物等が挙げられる。中でも、メタクリロイルオキシグリシジルエーテル、アクリロイルオキシグリシジルエーテル、イソシアナトメチルアクリレート、イソシアナトメチルメタクリレート、ビニルオキサゾリン、2-イソシアナトエチルアクリレート、2-イソシアナトエチルメタクリレート、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及び上記のオリゴマーが好ましく、イソシアナトメチルアクリレート、2-イソシアナトエチルアクリレート、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及び上記のオリゴマーが特に好ましい。
【0015】
反応性添加剤には、市販品をそのまま又は必要に応じて精製して用いることができる。市販品としては、例えば、Laromer(登録商標)PR9000(BASF社製)、カレンズAOI(登録商標)(昭和電工(株)製)、KBM-5103(信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0016】
A剤中に含まれる前記反応性添加剤の量は、後述する重合性液晶化合物100質量部に対して好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上、よりさらに好ましくは2質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは6質量部以下、よりさらに好ましくは5質量部以下である。前記反応性添加剤の量が前記下限値以上及び上限値以下であると本発明の二液型偏光膜形成用組成物から製造される偏光膜の配向性を損なうことなく、密着性が向上しやすい。反応性添加剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上の反応性添加剤を用いる場合、前記反応性添加剤の量はその合計量を表す。
【0017】
本発明の二液型偏光膜形成用組成物が後述する重合性液晶化合物を含まない場合、A剤中に含まれる前記反応性添加剤の量は、A剤及びB剤中に含まれる全二色性色素の合計100質量部に対して2質量部以上、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上であり、好ましくは200質量部以下、より好ましくは100質量部以下、さらに好ましくは80質量部以下である。
【0018】
〔溶剤〕
A剤中に含まれる溶剤の含水率は、好ましくは300ppm未満、より好ましくは250ppm未満、さらに好ましくは200ppm未満、さらにより好ましくは150ppm未満、特に好ましくは100ppm未満である。A剤中に含まれる溶剤の含水率が前記上限値未満であると、反応性添加剤が有する活性水素反応性基と水との反応が起こりにくいため、長期保管後も偏光膜の密着性を向上しやすく、また、優れた外観を有する偏光膜を得やすい。A剤中に含まれる溶剤の含水率の下限は0ppmである。A剤中に含まれる溶剤の含水率は、例えば溶剤を乾燥剤と共に不活性ガス下で蒸留する、又はモレキュラーシーブ等と一定期間共存させることにより前記範囲内に制御することができる。市販の脱水溶媒を使用することもできる。A剤中に含まれる溶剤の含水率は、例えばカールフィッシャー滴定装置を使用して求めることができる。
【0019】
そのような溶剤の具体例としては、例えばメタノール、エタノール、ブタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノール及びフェノール等のアルコール系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び乳酸エチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;ペンタン、ヘキサン及びヘプタン等の非塩素系脂肪族炭化水素溶剤;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素溶剤;トルエン、アニソール、トリメチルベンゼン及びキシレン等の非塩素系芳香族炭化水素溶剤;アセトニトリル等のニトリル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン及びジメトキシエタン等のエーテル系溶剤;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロトルエン、クロロホルム、クロロベンゼン及びジクロロベンゼン等の塩素系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド溶剤;ピリジン等のヘテロ環溶剤等が挙げられる。これら有機溶剤は、単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これら有機溶剤の中でも、ケトン系溶剤、非塩素系脂肪族炭化水素溶剤、非塩素系芳香族炭化水素溶剤及び塩素系溶剤が好ましい。
【0020】
溶剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上の溶剤を組み合わせて用いる場合、用いる溶剤全ての含水率が300ppm未満であることが好ましいが、含水率が300ppm以上の溶剤を含む場合、溶剤全体として含水率が300ppm未満であることが好ましい。
【0021】
A剤中の溶剤の含有量は、A剤中に含まれる全成分の総質量に対して、好ましくは50~99質量%、より好ましくは55~98質量%、さらに好ましくは60~97質量%である。A剤中の溶剤の含有量が上記範囲内であると、反応性添加剤等の比較的粘度の高い固形分を均一に溶解しやすく、後述する偏光膜の製造方法において、均一な塗膜の形成が可能になるため外観が良好な偏光膜を得やすい。
【0022】
A剤は、前記反応性添加剤、前記溶媒及び場合により後述する任意の成分を混合することによって調製することができる。混合方法、温度及び時間等の条件は特に限定されず、A剤中に含まれる成分の種類及び量によって適宜選択することができる。
【0023】
A剤の粘度(25℃)は、好ましくは0.1~15mPa・s、より好ましくは0.1~10mPa・sである。A剤の粘度が前記範囲内であると、取扱性に優れ、その後のB剤との混合が容易となりやすい。
【0024】
上述の通り、本発明の二液型偏光膜形成用組成物は、前記反応性添加剤をA剤中に、後述するアミン構造を有するアゾ色素をB剤中にそれぞれ別々に配合する。したがって、A剤は、後述するアミン構造を有するアゾ色素を実質的に含まない。「アミン構造を有するアゾ色素を実質的に含まない」とは、A剤中のアミン構造を有するアゾ色素の含有量が、反応性添加剤100質量部に対して好ましくは0.5質量部未満、より好ましくは0.1質量部未満、さらに好ましくは0.05質量部未満であることを意味する。好ましくは、A剤中のアミン構造を有するアゾ色素の含有量は、0質量部である。
【0025】
<B剤>
〔二色性色素〕
B剤に含まれる二色性色素は、アミン構造を有するアゾ色素を含む。本発明においてアミン構造とは、具体的には下記式(1A)
【化1】
[式中、A
a1及びA
a2は、互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~20のアルコキシ基、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~21のアルキルカルボニル基、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~21のアルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~20のアルキルスルホニル基又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数6~20のアリールスルホニル基を表すか、A
a1とA
a2とが互いに結合して、それらが結合する窒素原子とともに、ピロリジン環等の窒素含有複素環を表す。*は結合手を表す。]
で表される基が挙げられる。
【0026】
アミン構造を有する二色性色素は、例えば下記一般式(1)
【化2】
[式中、A
1及びA
3は、互いに独立に、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよい安息香酸フェニルエステル基又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。A
2は、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、置換基を有していてもよいナフタレン-1,4-ジイル基、置換基を有していてもよい4,4’-スチルベニレン基又は置換基を有していてもよい2価の複素環基を表す。ただし、A
1~A
3のうち少なくとも1つは上記式(1A)で示されるアミン構造を置換基として有する。pは0~4の整数を表し、pが2以上の整数である場合、複数のA
2は互いに同一でも異なっていてもよい]
で表される色素が挙げられる。
【0027】
1価の複素環基としては、キノリン、チアゾール、ベンゾチアゾール、チエノチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、オキサゾール及びベンゾオキサゾール等の複素環化合物から1個の水素原子を除いた基が挙げられる。2価の複素環基としては、前記複素環化合物から2個の水素原子を除いた基が挙げられる。
【0028】
A1及びA3におけるフェニル基、ナフチル基、安息香酸フェニルエステル基及び1価の複素環基、ならびにA2における1,4-フェニレン基、ナフタレン-1,4-ジイル基、4,4’-スチルベニレン基及び2価の複素環基が任意に有する、式(1A)で示されるアミン構造以外の置換基としては、炭素数1~6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基及びブトキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;トリフルオロメチル基等の炭素数1~6のフッ化アルキル基;シアノ基;ニトロ基;ハロゲン原子等;が挙げられる。なお、炭素数1~6のアルキル基の具体例は、メチル基、エチル基、ブチル基及びヘキシル基等が挙げられる。
【0029】
式(1)で表される二色性色素のなかでも、以下の式(1-1)~(1-8)でそれぞれ表される化合物が好ましい。
【0030】
【0031】
[式(1-1)~(1-8)中、
B1~B3のうち少なくとも1つ、B4~B7のうち少なくとも1つ、B8~B10のうち少なくとも1つ、B11~B12のうち少なくとも1つ、B13~B16のうち少なくとも1つ、B17~B20のうち少なくとも1つ、B21~B25のうち少なくとも1つ、及びB26~B30のうち少なくとも1つは、前記式(1A)で表されるアミン構造の置換基である。前記式(1A)で表されるアミン構造の置換基以外のB1~B30は、互いに独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子又はトリフルオロメチル基を表す。
n1~n4は、互いに独立に0~3の整数を表す。
n1が2以上である場合、複数のB2は互いに同一でも異なっていてもよく、
n2が2以上である場合、複数のB6は互いに同一でも異なっていてもよく、
n3が2以上である場合、複数のB9は互いに同一でも異なっていてもよく、
n4が2以上である場合、複数のB14は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0032】
B剤中に含まれる前記アミン構造を有するアゾ色素の含有量は、後述する重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは通常1質量部以上であり、好ましくは60質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下である。前記アミン構造を有する二色性色素の含有量が前記下限値未満であると光吸収が不十分となり、十分な偏光性能が得られず、前記上限値を超えると重合性液晶の配向を阻害する場合がある。アミン構造を有するアゾ色素は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上のアミン構造を有するアゾ色素を用いる場合、アミン構造を有するアゾ色素の含有量はその合計量を表す。
【0033】
本発明の二液型偏光膜形成用組成物が後述する重合性液晶化合物を含まない場合、B剤中に含まれる前記アミン構造を有するアゾ色素の量は、A剤及びB剤中に含まれる二色性色素全体に対して3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上であり、一般的に100質量部以下、好ましくは90質量部以下、より好ましくは85質量部以下である。
【0034】
〔溶剤〕
B剤中に含まれる溶剤は特に限定されないが、アミン構造を有するアゾ色素に対して不活性であり、該色素を完全に溶解し得る溶剤であることが好ましい。また、A剤とB剤とを混合して使用することから、A剤に使用した溶剤と相溶性の高い溶剤であることが好ましく、同じ溶剤であってもよい。また、B剤中に含まれる溶剤は単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
【0035】
B剤中の溶剤の含有量は、B剤中に含まれる成分の総質量に対して、好ましくは50~95質量%、より好ましくは60~90質量%、さらに好ましくは70~85質量%である。B剤中の溶剤の含有量が上記範囲内であると、前記二色性色素を均一に溶解しやすく、後述する偏光膜の製造方法において、均一な塗膜の形成が可能になるため外観が良好な偏光膜を得やすい。
【0036】
そのような溶剤の具体例としては、例えばメタノール、エタノール、ブタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノール及びフェノール等のアルコール系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び乳酸エチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;ペンタン、ヘキサン及びヘプタン等の非塩素系脂肪族炭化水素溶剤;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素溶剤;トルエン、アニソール、トリメチルベンゼン及びキシレン等の非塩素系芳香族炭化水素溶剤;アセトニトリル等のニトリル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン及びジメトキシエタン等のエーテル系溶剤;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロトルエン、クロロホルム、クロロベンゼン及びジクロロベンゼン等の塩素系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド溶剤;ピリジン等のヘテロ環溶剤等が挙げられる。これら有機溶剤は、単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
上述の通り、本発明の二液型偏光膜形成用組成物は、前記反応性添加剤をA剤中に、前記アミン構造を有するアゾ色素をB剤中にそれぞれ別々に配合する。したがって、B剤は、前記反応性添加剤を実質的に含まない。「反応性添加剤を実質的に含まない」とは、B剤中の反応性添加剤の含有量が、アミン構造を有するアゾ色素100質量部に対して好ましくは0.5質量部未満、より好ましくは0.1質量部未満、さらに好ましくは0.05質量部未満であることを意味する。好ましくは、B剤中の反応性添加剤の含有量は、0質量部である。
【0038】
〔重合性液晶化合物〕
本発明の二液型偏光膜形成用組成物は、さらに重合性液晶化合物を含むことが好ましい。前記重合性液晶化合物は本発明の二液型偏光膜形成用組成物を構成するA液及びB液のいずれに含まれてもよい。
【0039】
重合性液晶化合物とは、重合性基を有し、かつ液晶状態を示す化合物である。重合性基とは、該重合性液晶化合物の重合反応に関与する基を意味し、光重合性基であることが好ましい。ここで、光重合性基とは、後述する光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸等によって重合反応に関与し得る基のことをいう。重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。液晶性はサーモトロピック液晶でも、リオトロピック液晶でもよい。
【0040】
重合性液晶化合物は、ネマチック液晶相を示すサーモトロピック性液晶化合物であってもよいし、スメクチック液晶相を示すサーモトロピック性液晶化合物であってもよい。本発明において重合性液晶化合物は、より高い偏光特性が得られるという観点から、好ましくはスメクチック液晶相を示すサーモトロピック性液晶化合物であり、より好ましくは高次スメクチック液晶相を示すサーモトロピック性液晶化合物である。中でも、スメクチックB相、スメクチックD相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相、スメクチックK相又はスメクチックL相を示すサーモトロピック性液晶化合物がより好ましく、スメクチックB相、スメクチックF相又はスメクチックI相を示すサーモトロピック性液晶化合物がさらに好ましい。重合性液晶化合物が形成する液晶相がこれらの高次スメクチック相であると、偏光性能のより高い偏光膜を製造することができる。また、このように偏光性能の高い偏光膜はX線回折測定においてヘキサチック相やクリスタル相といった高次構造由来のブラッグピークが得られるものである。当該ブラッグピークは分子配向の周期構造に由来するピークであり、その周期間隔が3~6Åである膜を得ることができる。
【0041】
該重合性液晶化合物の例として、例えば以下の式(2)
U1-V1-W1-(X1-Y1)n-X2-Y2-X3-W2-V2-U2 (2)
[式(2)中、X1、X2、X3は、それぞれ独立に、2価の芳香族基又は2価の脂環式炭化水素基を表し、ここで、該2価の芳香族基又は2価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基に置換されていてもよく、該2価の芳香族基又は2価の脂環式炭化水素基を構成する炭素原子が、酸素原子又は硫黄原子又は窒素原子に置換されていてもよい。ただし、X1、X2、X3のうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基又は置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基である。また、nは1~3であり、nが2以上の場合においてX1はそれぞれ異なっていても良い。液晶性発現の観点からnは1又は2が好ましい。
Y1、Y2、W1及びW2は、互いに独立に、単結合又は二価の連結基である。
V1及びV2は、互いに独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基を構成する-CH2-は、-O-、-CO-、-S-又はNH-に置き換わっていてもよい。
U1及びU2は、互いに独立に、重合性基又は水素原子を表し、少なくとも1つは重合性基である。]
で表される化合物(以下、化合物(2)ということがある。)等が挙げられる。当該重合性液晶は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
化合物(2)において、X1、X2、X3のうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、又は置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基である。特に、X1又はX3は置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基であることが好ましく、該シクロへキサン-1,4-ジイル基は、トランス-シクロへキサン-1,4-ジイル基であることがさらに好ましい。置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、又は置換基を有していてもよいシクロへキサン-1,4-ジイル基が任意に有する置換基としては、メチル基、エチル基及びブチル基などの炭素数1~4のアルキル基、シアノ基及び塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子が挙げられる。好ましくは無置換である。また、Y1及びY2が同一構造である場合、X1、X2及びX3のうち少なくとも1つが異なる構造であることが好ましい。X1、X2及びX3のうち少なくとも1つが異なる非対称構造である場合には、スメクチック液晶性が発現しやすい傾向にある。
【0043】
Y1及びY2は、互いに独立に、単結合、-CH2CH2-、-CH2O-、-CH2CH2O-、-COO-、-OCO-、-N=N-、-CRa=CRb-、-C≡C-又は-CRa=N-が好ましく、Ra及びRbは、互いに独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。Y1及びY2は、-CH2CH2-、-COO-、-OCO-、-N=N-又は単結合であるとより好ましい。また、X1、X2及びX3が全て同一構造である場合、Y1及びY2が互いに異なる結合方式であることが好ましい。Y1及びY2が互いに異なる結合方式である場合には非対称構造となるため、スメクチック液晶性が発現しやすい傾向にある。
【0044】
W1及びW2は、互いに独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-又は-OCO-が好ましく、互いに独立に単結合又は-O-であることがより好ましい。
【0045】
V1及びV2で表される炭素数1~20のアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基及びイコサン-1,20-ジイル基などが挙げられる。V1及びV2は、好ましくは炭素数2~12のアルカンジイル基であり、より好ましくは直鎖状の炭素数6~12のアルカンジイル基である。直鎖状の炭素数6~12のアルカンジイル基とすることで結晶性が向上し、スメクチック液晶性を発現しやすい傾向にある。
置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルカンジイル基が任意に有する置換基としては、シアノ基及び塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子などが挙げられるが、該アルカンジイル基は、無置換であることが好ましく、無置換かつ直鎖状のアルカンジイル基であることがより好ましい。
【0046】
U1及びU2は、ともに重合性基であると好ましく、ともに光重合性基であるとより好ましい。光重合性基を有する重合性液晶化合物は、熱重合性基よりも低温条件下で重合できるため、液晶がより秩序度の高い状態で重合体を形成できる点で有利である。
【0047】
U1及びU2で表される重合性基は互いに異なっていてもよいが、同一であると好ましい。重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、メタクリロイルオキシ基、あるいは、アクリロイルオキシ基がより好ましい。また、重合性基は重合している状態であっても良いし、未重合の状態であっても良いが、好ましくは未重合の状態である。
【0048】
重合性液晶化合物(2)としては、少なくとも1つの重合性基を有し、スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物であれば特に限定されず、公知の重合性液晶化合物を用いることができるが、スメクチック液晶性を示しやすい構造としては、分子構造中に非対称性の分子構造を有する事が好ましく、具体的には以下(A-a)~(A-i)の部分構造を有する重合性液晶化合物であってスメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物である事がより好ましい。高次スメクチック液晶性を示しやすいという観点から(A-a)又は(A-b)又は(A-c)の部分構造を有する事がより好ましい。ここで、図中*は結合手であることを示す。
【0049】
【0050】
式(2)で表される化合物の具体例としては、式(2-1)~式(2-23)で表される化合物等が挙げられる。式(2)で表される化合物が、シクロヘキサン-1,4-ジイル基を有する場合、そのシクロヘキサン-1,4-ジイル基は、トランス体であることが好ましい。
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
式(2)で表される化合物の中でも、式(2-2)、(2-3)、(2-4)、(2-6)、(2-7)、(2-8)、(2-13)、(2-14)及び(2-15)でそれぞれ表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。重合性液晶化合物として、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
式(2)で表される化合物は、単独又は組み合わせて用いることができる。また、2種以上の重合性液晶化合物を組み合わせる場合には、少なくとも1種が式(2)で表される化合物であることが好ましく、2種以上が式(2)で表される化合物であることがより好ましい。2種類の重合性液晶化合物を組み合わせる場合の混合比としては、通常、1:99~50:50であり、好ましくは5:95~50:50であり、より好ましくは10:90~50:50である(質量比) 。重合性基を1つ有する重合性液晶化合物及び重合性基を2つ有する重合性液晶化合物を組み合わせる場合、その混合比(重合性基を1つ有する重合性液晶化合物:重合性基を2つ有する重合性液晶化合物)は、通常、1:99~50:50であり、好ましくは5:95~50:50であり、より好ましくは10:90~50:50である(質量比)。
【0056】
式(2)で表される化合物は、例えば、Lub et al. Recl. Trav. Chim. Pays-Bas, 115, 321-328(1996)、又は特許第4719156号等に記載の公知の方法で製造できる。
【0057】
本発明の二液型偏光膜形成用組成物中に含まれる前記重合性液晶化合物の量は、前記二液型偏光膜形成用組成物がB剤に含まれる場合、好ましくはB剤中の全固形分の好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは99質量%以下である。重合性液晶化合物の含有量が上記下限値以上及び上記上限値以下であると、配向性が高くなる傾向がある。ここで、固形分とは偏光膜形成用組成物から溶剤を除いた成分の合計量のことをいう。
【0058】
B剤は、前記アミン構造を有するアゾ色素、前記溶媒及び場合により後述する任意の成分を混合することによって調製することができる。混合方法、温度及び時間等の条件は特に限定されず、B剤中に含まれる成分の種類及び量によって適宜選択することができる。
【0059】
B剤の粘度(25℃)は、好ましくは0.1~15mPa・s、より好ましくは0.1~10mPa・sである。B剤の粘度が前記範囲内であると、取扱性に優れ、その後のA剤との混合が容易となりやすい。
【0060】
本発明の二液型偏光膜形成用組成物は、上記の成分以外に、重合開始剤、増感剤、重合禁止剤、レベリング剤、アミン構造を有するアゾ色素以外の二色性色素等の任意の成分を含んでもよい。
【0061】
〔重合開始剤〕
本発明の二液型偏光膜形成用組成物は重合開始剤を含有してよい。重合開始剤は、重合性液晶化合物等の重合反応を開始し得る化合物である。重合開始剤としては、光の作用により活性ラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。
【0062】
本発明の二液型偏光膜形成用組成物を構成するA剤もしくはB剤のうち一方、又は両方が重合開始剤を含有してよいが、A剤に重合開始剤を含有する場合、重合開始剤はアミン構造を有していない化合物であることが好ましい。
【0063】
重合開始剤としては、サーモトロピック液晶の相状態に依存しないという観点から、光の作用により活性ラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。
光重合開始剤は、重合性液晶化合物の重合反応を開始し得る化合物であれば、公知の光重合開始剤を用いることができる。具体的には、光の作用により活性ラジカル又は酸を発生できる光重合開始剤が挙げられ、中でも、光の作用によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤を用いることができ、例えば、活性ラジカルを発生する光重合開始剤としては、自己開裂型のベンゾイン系化合物、アセトフェノン系化合物、ヒドロキシアセトフェノン系化合物、α-アミノアセトフェノン系化合物、オキシムエステル系化合物、アシルホスフィンオキサイド系化合物、アゾ系化合物等を使用でき、水素引き抜き型のベンゾフェノン系化合物、アルキルフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンジルケタール系化合物、ジベンゾスベロン系化合物、アントラキノン系化合物、キサントン系化合物、チオキサントン系化合物、ハロゲノアセトフェノン系化合物、ジアルコキシアセトフェノン系化合物、ハロゲノビスイミダゾール系化合物、ハロゲノトリアジン系化合物、トリアジン系化合物等を使用できる。酸を発生する光重合開始剤としては、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩等を使用することができる。低温での反応効率に優れるという観点から自己開裂型の光重合開始剤が好ましく、特にアセトフェノン系化合物、ヒドロキシアセトフェノン系化合物、α-アミノアセトフェノン系化合物、オキシムエステル系化合物が好ましい。
【0064】
ベンゾイン系化合物としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル及びベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。
【0065】
アセトフェノン系化合物としては、例えば、ジエトキシアセトフェノンなどのジアルコキシアセトフェノン系化合物;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1,2-ジフェニル-2,2-ジメトキシエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパン-1-オンのオリゴマー等のヒドロキシアセトフェノン系化合物;2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン等のα-アミノアセトフェノン系化合物等が挙げられる。
【0066】
オキシムエステル系化合物としては、例えば、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等の化合物等が挙げられる。
【0067】
アシルホスフィンオキサイド系化合物としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0068】
ベンゾフェノン系化合物としては、例えばベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン及び2,4,6-トリメチルベンゾフェノン等が挙げられる。
【0069】
アルキルフェノン系化合物としては、例えばジエトキシアセトフェノン、2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1,2-ジフェニル-2,2-ジメトキシエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパン-1-オンのオリゴマー等が挙げられる。
【0070】
トリアジン系化合物としては、例えば2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシナフチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(フラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン及び2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0071】
重合開始剤として市販のものを用いることができる。市販の重合開始剤としては、イルガキュア(Irgacure)(登録商標)907、184、651、819、250及び369(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製);セイクオール(登録商標)BZ、Z及びBEE(精工化学株式会社製);カヤキュアー(kayacure)(登録商標)BP100及びUVI-6992(ダウ・ケミカル株式会社製);アデカオプトマーSP-152及びSP-170(株式会社ADEKA製);TAZ-A及びTAZ-PP(日本シイベルヘグナー株式会社製);並びに、TAZ-104(株式会社三和ケミカル製);等が挙げられる。重合開始剤は、1種類でも良いし、光の光源に合わせて2種類以上の複数の重合開始剤を混合しても良い。
【0072】
重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物の種類及びその量に応じて適宜調節できるが、重合性液晶化合物の含有量100質量部に対して、通常0.1~30質量部、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは0.5~8質量部である。重合開始剤の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶の配向を乱すことなく重合を行いやすい。
【0073】
〔増感剤〕
本発明の二液型偏光膜形成用組成物が重合性液晶化合物を含有する場合、前記組成物は増感剤を含有してもよい。本発明の二液型偏光膜形成用組成物を構成するA剤もしくはB剤のうち一方、又は両方が増感剤を含有してよいが、A剤に増感剤を含有する場合、増感剤はアミン構造を有していない化合物であることが好ましい。増感剤としては、光増感剤が好ましい。該増感剤としては、例えばキサントン及びチオキサントン等のキサントン化合物(例えば、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン等);アントラセン及びアルコキシ基含有アントラセン(例えば、ジブトキシアントラセン等)等のアントラセン化合物;フェノチアジン及びルブレン等が挙げられる。
【0074】
前記増感剤の含有量は、重合性液晶化合物の含有量100質量部に対して、好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは0.5~10質量部、さらに好ましくは0.5~8質量部である。増感剤の含有量が前記範囲内であると、重合性液晶化合物の重合反応を促進しやすい。
【0075】
〔重合禁止剤〕
本発明の二液型偏光膜形成用組成物が重合性液晶化合物を含有する場合、重合反応を安定的に進行させる観点から、前記組成物は重合禁止剤を含有してもよい。本発明の二液型偏光膜形成用組成物を構成するA剤もしくはB剤のうち一方、又は両方が重合禁止剤を含有してよいが、A剤に重合禁止剤を含有する場合、重合禁止剤はアミン構造を有していない化合物であることが好ましい。重合禁止剤により、重合反応の進行度合いをコントロールすることができる。
【0076】
前記重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、アルコキシ基含有ハイドロキノン、アルコキシ基含有カテコール(例えば、ブチルカテコール等)、ピロガロール、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル捕捉剤;チオフェノール類;β-ナフチルアミン類及びβ-ナフトール類等が挙げられる。
【0077】
二液型偏光膜形成用組成物が重合禁止剤を含有する場合、重合禁止剤の含有量は、重合性液晶化合物の含有量100質量部に対して、好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは0.5~10質量部、さらに好ましくは0.5~8質量部である。重合禁止剤の含有量が、上記範囲内であると、重合性液晶の配向を乱すことなく重合を行いやすい。
【0078】
〔レベリング剤〕
本発明の二液型偏光膜形成用組成物は、レベリング剤を含有してもよい。レベリング剤とは、当該組成物の流動性を調整し、当該組成物を塗布して得られる膜をより平坦にする機能を有するものであり、例えば、界面活性剤を挙げることができる。本発明の二液型偏光膜形成用組成物を構成するA剤もしくはB剤のうち一方、又は両方がレベリング剤を含有してよいが、A剤にレベリング剤を含有する場合、レベリング剤はアミン構造を有していない化合物であることが好ましい。
【0079】
レベリング剤としては、例えば、有機変性シリコーンオイル系、ポリアクリレート系及びパーフルオロアルキル系のレベリング剤が挙げられる。具体的には、DC3PA、SH7PA、DC11PA、SH28PA、SH29PA、SH30PA、ST80PA、ST86PA、SH8400、SH8700、FZ2123(以上、全て東レ・ダウコーニング(株)製)、KP321、KP323、KP324、KP326、KP340、KP341、X22-161A、KF6001(以上、全て信越化学工業(株)製)、TSF400、TSF401、TSF410、TSF4300、TSF4440、TSF4445、TSF-4446、TSF4452、TSF4460(以上、全てモメンティブ パフォーマンス マテリアルズ ジャパン合同会社製)、フロリナート(fluorinert)(登録商標)FC-72、同FC-40、同FC-43、同FC-3283(以上、全て住友スリーエム(株)製)、メガファック(登録商標)R-08、同R-30、同R-90、同F-410、同F-411、同F-443、同F-445、同F-470、同F-477、同F-479、同F-482、同F-483(以上、いずれもDIC(株)製)、エフトップ(商品名)EF301、同EF303、同EF351、同EF352(以上、全て三菱マテリアル電子化成(株)製)、サーフロン(登録商標)S-381、同S-382、同S-383、同S-393、同SC-101、同SC-105、KH-40、SA-100(以上、全てAGCセイミケミカル(株)製)、商品名E1830、同E5844((株)ダイキンファインケミカル研究所製)、BM-1000、BM-1100、BYK-352、BYK-353及びBYK-361N(いずれも商品名:BM Chemie社製)等が挙げられる。中でも、ポリアクリレート系レベリング剤及びパーフルオロアルキル系レベリング剤が好ましい。
【0080】
本発明の二液型偏光膜形成用組成物がレベリング剤を含有する場合、二液型偏光膜形成用組成物の固形分全体に対して、好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.05~3質量部である。レベリング剤の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物が含まれる場合に重合性液晶を水平配向させることが容易であり、かつ得られる偏光膜がより平滑となる傾向がある。レベリング剤の含有量が上記範囲を超えると、得られる偏光膜にムラが生じやすい傾向がある。なお、レベリング剤を2種以上含有していてもよい。
【0081】
〔アミン構造を有するアゾ色素以外の二色性色素〕
本発明の二液型偏光膜形成用組成物は、アミン構造を有するアゾ色素以外の二色性色素を含有してもよい。そのような二色性色素としては、300~700nmの範囲に吸収極大波長(λMAX)を有するものが好ましく、例えばアミン構造を有さないアゾ色素、アントラキノン色素、オキサジン色素、アクリジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素及び等が挙げられる。アミン構造を有するアゾ色素以外の二色性色素は単独でも、2種以上を組み合わせてもよい。
【0082】
アミン構造を有さないアゾ色素としては、例えば前述の式(1)においてA1~A3の置換基としてアミン構造を含まないものが挙げられる。
【0083】
アントラキノン色素としては、式(1-9)
【化8】
[式中、R
1~R
8は、互いに独立に、水素原子、-R
x、-NH
2、-NHR
x、-NR
x
2、-SR
x又はハロゲン原子を表し、R
xは、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基を表す]
で表される化合物が好ましい。
【0084】
オキサジン色素としては、式(1-10)
【化9】
[式中、R
9~R
15は、互いに独立に、水素原子、-R
x、-NH
2、-NHR
x、-NR
x
2、-SR
x又はハロゲン原子を表し、R
xは、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基を表す]
で表される化合物が好ましい。
【0085】
アクリジン色素としては、式(1-11)
【化10】
[式中、R
16~R
23は、互いに独立に、水素原子、-R
x、-NH
2、-NHR
x、-NR
x
2、-SR
x又はハロゲン原子を表し、R
xは、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基を表す]
で表される化合物が好ましい。
【0086】
式(1-9)、式(1-10)及び式(1-11)における、Rxで表される炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基等が挙げられ、炭素数6~12のアリール基としては、フェニル基、トルイル基、キシリル基及びナフチル基等が挙げられる。
【0087】
シアニン色素としては、式(1-12)
【化11】
[式中、D
1及びD
2は、互いに独立に、式(1-12a)~式(1-12d)
【化12】
のいずれかで表される基を表し、n5は1~3の整数を表す]
で表される化合物及び式(1-13)
【化13】
[式中、D
3及びD
4は、互いに独立に、式(2-13a)~式(2-13h)
【化14】
のいずれかで表される基を表し、n6は1~3の整数を表す]
で表される化合物が好ましい。
【0088】
前述するアミン構造を有するアゾ色素と当該アミン構造を有するアゾ色素以外の二色性色素を組み合わせて使用する場合、全二色性色素の総含有量は重合性液晶化合物の含有量100質量部に対して、通常1~60質量部であり、好ましくは1~20質量部であり、より好ましくは1~15質量部である。二色性色素の総含有量が上記範囲内であれば、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく、重合させることができる。二色性色素の含有量が少なすぎると、光吸収が不十分となり、十分な偏光性能が得られず、多すぎると、重合性液晶化合物の配向を阻害するおそれがある。そのため、重合性液晶化合物が、液晶状態を保持できる範囲で、二色性色素の含有量を定めることもできる。
【0089】
<保管方法>
本発明の二液型偏光膜形成用組成物を保管する場合、A剤及びB剤は別々に保管する。別々に保管するとは、例えば独立した2つの容器にA剤及びB剤をそれぞれ保管する態様又は、間に仕切りを有し2剤が保管中に混合しないような1つの容器中にA剤及びB剤を保管する態様等が挙げられる。本発明においては、A剤及びB剤を独立した2つの容器中で保管する態様が好ましい。
【0090】
A剤を保管する容器としては、プラスチック製容器、金属製容器及びガラス製容器が挙げられ、プラスチック製容器又は金属製容器であることが好ましい。A剤を保管する容器がプラスチック製容器又は金属製容器であると、A剤中の反応性添加剤の副反応が起こりにくいため好ましい。プラスチック製容器の材質としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ノルボルネン系ポリマー、ポリスチレン、ポリアミド、ポリ(4-メチルペンテン-1)、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、アクリロニトリルーブタジエン-スチレン共重合体、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、セルロースエステル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、環状オレフィンポリマー又は環状オレフィンコポリマー等の環状ポリオレフィン、非晶性ポリアリレートなどのポリオレフィン、ポリエステル、テフロン等が挙げられるが、これらに限定されない。金属製容器の材質としては、例えばSUSなどのスチール、ブリキ、アルミニウム等が挙げられるが、これらに限定されない。A剤を保管する容器がプラスチック製容器である場合、組成物の劣化を引き起こし得る紫外線等の影響を受けにくいことから、遮光性のあるプラスチック製容器(例えば褐色のプラスチック製容器)であることが好ましい。また、容器の外部表面にコーティング等を施してもよい。
【0091】
B剤を保管する容器としては、特に限定されず、容器の材質として、例えばプラスチック、金属、ガラス等が挙げられる。B剤を保管する容器は、上記同様に遮光性のある容器であることが好ましい。
【0092】
A剤及びB剤を保管する容器の形状は特に限定されない。例えば一斗缶、ポリタンク等の六面体形状、ペール缶、下げ缶等の円筒形状等が挙げられる。また、A剤及びB剤の容量も特に限定されず、所望の量を容器中に保管することができる。
【0093】
A剤を保管する場合、A剤は乾燥不活性ガス雰囲気下で保管することが好ましい。本明細書において、乾燥ガスとは一般に露点が-50℃以下のガスを指し、不活性ガスとは、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム等の反応性の低いガスを指す。乾燥不活性ガス雰囲気下で保管するとは、例えば保管容器中の気相部を乾燥不活性ガスで満たした後密封して保管する態様、保管容器自体を乾燥不活性ガスで満たした空間に保管する態様等が挙げられる。乾燥不活性ガス雰囲気下で保管することにより、周囲雰囲気中の水分等とA剤中の反応性添加剤が有する活性水素反応基との副反応が避けられるため、本発明の二液型偏光膜形成用組成物から得られる偏光膜の密着性を高めやすいほか、長期保管後の光学性能が良好となりやすい。
【0094】
B剤を保管する場合の雰囲気は特に限定されないが、乾燥不活性ガス雰囲気下で保管することが好ましい。
【0095】
保管する容器容量に対するA剤及びB剤の充填量は特に限定されないが、A剤及びB剤の充填量は、通常、保管容器容量の30%以上、好ましくは50%以上であり、混合時の扱いやすさの観点から通常90%以下である。
【0096】
A剤及びB剤を保管する温度は特に限定されないが、温度が高すぎると重合性液晶化合物の重合反応が開始される可能性があり、温度が低すぎるとA剤及びB剤中の固形分が析出する可能性があるため、保管温度は通常0~50℃、好ましくは10~40℃、さらに好ましくは15~35℃である。
【0097】
A剤とB剤とを混合した状態で3か月程度保管すると、良好な光学性能を有する偏光膜を製造することが難しいことがある。本発明の二液型偏光膜形成用組成物は、そのような長期間(例えば3か月以上)保管した後も良好な光学性能を有する偏光膜を得られる点で有利である。A剤及びB剤を保管する期間は特に限定されないが通常3年以内である。
【0098】
本発明の二液型偏光膜形成用組成物は、上記の様に反応性添加剤及びアミン構造を有するアゾ色素を含む二色性色素を別々に保管することにより、長期間保管後も良好な光学性能を有する偏光膜を得ることができる。このことについて本発明者らが検討した結果、反応性添加剤と、二色性色素の中でもアミン構造を有するアゾ色素とを共に一定期間(例えば3か月)保管した偏光膜形成用組成物から得られる偏光膜では、偏光膜中の液晶化合物の分子配向が乱れやすく(すなわち液晶化合物が一方向に並ばなくなる)、得られる偏光膜の光学特性が低下する傾向にあることを見出した。
【0099】
<偏光膜形成用組成物の製造方法>
本発明において、偏光膜形成用組成物は、二液型偏光膜形成用組成物を構成するA剤とB剤とを混合することによって得ることができる。なお、本明細書において「二液型偏光膜形成用組成物」とは、二液型偏光膜形成用組成物を構成するA剤とB剤とが別々に分かれた状態にある組成物のことを指し、A剤とB剤とが混合された状態にある組成物を、「偏光膜形成用組成物」とする。
【0100】
本発明の二液型偏光膜形成用組成物のA剤及びB剤を混合するタイミングは、反応性添加剤とアミン構造を有するアゾ色素との反応が進まない程度の期間である限り限定されず、含まれる反応性添加剤及びアミン構造を有するアゾ色素の種類及び量、混合条件及び環境等に応じて適宜決定すればよい。
【0101】
A剤及びB剤を混合する方法は、特に限定されず、既知の混合方法を用いることができる。例えばプラネタリーミキサー、ニーダーミキサー等の撹拌翼を有する混合装置を用いて混合する方法や、スタティックミキサー等を用いて静的混合する方法が挙げられる。
【0102】
A剤及びB剤を混合する際の周囲温度は、特に限定されないが、好ましくは0~50℃、より好ましくは15~40℃、さらに好ましくは20~35℃で混合する。湿度(相対湿度)も特に限定されないが、好ましくは30~60%RH、より好ましくは40~55%RHである。また、混合は通常、常圧(大気圧)下で実施する。
【0103】
混合する時間も特に限定されず、二液型偏光膜形成用組成物に含まれる成分の種類及び量によって適宜調整できる。混合時間は、通常0.5~12時間、好ましくは0.5~6時間である。
【0104】
<偏光膜の製造方法>
本発明の偏光膜の製造方法は、
基材上に配向膜を形成する工程、
本発明の二液型偏光膜形成用組成物を構成する、分子内に重合性基及び活性水素反応性基を有する反応性添加剤ならびに溶剤を含むA剤と、アミン構造を有するアゾ色素を含む二色性色素及び溶剤を含むB剤とを混合して、偏光膜形成用組成物を得る工程、
前記配向膜上に、前記混合後の偏光膜形成用組成物を塗布して塗膜を得る工程、及び
前記塗膜を硬化させる工程
を含む。
【0105】
〔基材〕
偏光膜の形成に使用する基材としては、ガラス基材及びプラスチック基材が挙げられる。Roll-to-Roll加工が可能であり、生産性が高いという点でガラス基材よりもプラスチック基材の方が好ましい。プラスチック基材を構成するプラスチックとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィン;環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース及びセルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド及びポリフェニレンオキシド;等のプラスチックが挙げられる。
【0106】
市販のセルロースエステル基材としては、“フジタックフィルム”(富士写真フイルム株式会社製);“KC8UX2M”、“KC8UY”及び“KC4UY”(以上、コニカミノルタオプト株式会社製)等が挙げられる。
【0107】
市販の環状オレフィン系樹脂としては、“Topas”(登録商標)(Ticona社(独)製)、“アートン”(登録商標)(JSR株式会社製)、“ゼオノア(ZEONOR)”(登録商標)、“ゼオネックス(ZEONEX)”(登録商標)(以上、日本ゼオン株式会社製)及び“アペル”(登録商標)(三井化学株式会社製)が挙げられる。このような環状オレフィン系樹脂を、溶剤キャスト法、溶融押出法等の公知の手段により製膜して、基材とすることができる。市販されている環状オレフィン系樹脂基材を用いることもできる。市販の環状オレフィン系樹脂基材としては、“エスシーナ”(登録商標)、“SCA40”(登録商標)(以上、積水化学工業株式会社製)、“ゼオノアフィルム”(登録商標)(オプテス株式会社製)及び“アートンフィルム”(登録商標)(JSR株式会社製)が挙げられる。
【0108】
本発明の偏光膜と基材から偏光板が得られる。基材の厚さは、実用的な取り扱いができる程度の質量である点では、薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向がある。基材の厚さは、通常、5~300μmであり、好ましくは20~200μmである。また、基材を剥離して二色性色素を含む重合性液晶化合物の重合体を転写することによって、本発明の偏光膜のみを適用する事が可能であるため、さらなる薄膜化効果が得られる。
【0109】
〔配向膜〕
本発明において配向膜は、高分子化合物からなる膜であり、重合性液晶化合物を所望の方向に液晶配向させる、配向規制力を有するものである。
【0110】
配向膜は、重合性液晶化合物の液晶配向を容易にする。水平配向、垂直配向、ハイブリッド配向、傾斜配向等の液晶配向の状態は、配向膜及び重合性液晶化合物の性質によって変化し、その組み合わせは任意に選択することができる。例えば、配向膜が配向規制力として水平配向を発現させる材料であれば、重合性液晶化合物は水平配向又はハイブリッド配向を形成することができ、垂直配向を発現させる材料であれば、重合性液晶化合物は垂直配向又は傾斜配向を形成することができる。水平、垂直等の表現は、偏光膜平面を基準とした場合の、配向した重合性液晶の長軸の方向を表す。水平配向とは、偏光膜平面に対して平行な方向に、配向した重合性液晶の長軸を有する配向である。ここでいう「平行」とは、偏光膜平面に対して0°±20°の角度を意味する。垂直配向とは、偏光膜平面に対して垂直な方向に、配向した重合性液晶の長軸を有することである。ここでいう垂直とは、偏光膜平面に対して90°±20°のことを意味する。
【0111】
配向規制力は、配向膜が配向性ポリマーから形成されている場合は、表面状態やラビング条件によって任意に調整することが可能であり、光配向性ポリマーから形成されている場合は、偏光照射条件等によって任意に調整することが可能である。また、重合性液晶化合物の、表面張力や液晶性等の物性を選択することにより、液晶配向を制御することもできる。
【0112】
配向膜としては、配向膜上に偏光膜を形成する際に使用される溶剤に不溶であり、また、溶剤の除去や液晶の配向のための加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。配向膜としては、配向性ポリマーからなる配向膜、光配向膜及びグルブ(groove)配向膜、配向方向に延伸してある延伸フィルム等が挙げられ、好ましくは光配向膜である。
【0113】
配向膜の厚さは、通常10~5000nmの範囲であり、好ましくは10~1000nmの範囲であり、より好ましくは30~300nmである。
【0114】
配向性ポリマーとしては、分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミド及びその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸及びポリアクリル酸エステル類等が挙げられる。中でも、ポリビニルアルコールが好ましい。これらの配向性ポリマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0115】
配向性ポリマーからなる配向膜は、通常、配向性ポリマーが溶剤に溶解した組成物(以下、「配向性ポリマー組成物」ともいう。)を基材に塗布し、溶剤を除去する、又は配向性ポリマー組成物を基材に塗布し、溶剤を除去し、ラビングすること(ラビング法)で得られる。
【0116】
前記溶剤としては、水;メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び乳酸エチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;ペンタン、ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリル等のニトリル系溶剤;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等のエーテル溶剤;クロロホルム及びクロロベンゼン等の塩素置換炭化水素溶剤;等が挙げられる。これら溶剤は、単独でもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0117】
配向性ポリマー組成物中の配向性ポリマーの濃度は、配向性ポリマーが溶剤に完溶できる範囲であればよいが、溶液に対して固形分換算で0.1~20質量%が好ましく、0.1~10質量%がより好ましい。
【0118】
配向性ポリマー組成物として、市販の配向膜材料をそのまま使用してもよい。市販の配向膜材料としては、サンエバー(登録商標)(日産化学工業株式会社製)又はオプトマー(登録商標)(JSR株式会社製)等が挙げられる。
【0119】
配向性ポリマー組成物を基材に塗布する方法としては、スピンコーティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法及びアプリケータ法等の塗布方法や、フレキソ法等の印刷法等の公知の方法が挙げられる。本発明の配向膜を、Roll-to-Roll形式の連続的製造方法により製造する場合、当該塗布方法には通常、グラビアコーティング法、ダイコーティング法又はフレキソ法等の印刷法が採用される。
【0120】
配向性ポリマー組成物に含まれる溶剤を除去することにより、配向性ポリマーの乾燥塗膜が形成される。溶剤の除去方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥法及び減圧乾燥法等が挙げられる。
【0121】
ラビングする方法としては、ラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールに、配向性ポリマー組成物を基材に塗布しアニールすることで基材表面に形成された配向性ポリマーの膜を、接触させる方法が挙げられる。
【0122】
光配向膜は、通常、光反応性基を有するポリマーやオリゴマー又はモノマーからなる。重合性液晶を連続形成する場合には、耐溶剤性等の観点から分子量5000以上のポリマーが好ましく、親和性の観点から重合性液晶が(メタ)アクリロイル基の場合には、アクリルポリマーが好ましい。光配向膜は、光反応性基を有するポリマーやオリゴマー又はモノマー及び溶剤を含む組成物(以下、「光配向膜形成用組成物」ともいう)を基材に塗布し、溶剤を乾燥除去した後に偏光(好ましくは、偏光UV)を照射することで得られる。光配向膜は、照射する偏光の偏光方向を選択することにより、配向規制力の方向を任意に制御できる点でより好ましい。
【0123】
光反応性基とは、光を照射することにより液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光を照射することで生じる分子の配向誘起又は異性化反応、二量化反応、光架橋反応、又は光分解反応のような、液晶配向能の起源となる光反応を生じるものである。当該光反応性基の中でも、二量化反応又は光架橋反応を起こすものが、配向性に優れる点で好ましい。以上のような反応を生じ得る光反応性基としては、不飽和結合、特に二重結合を有するものが好ましく、炭素-炭素二重結合(C=C結合)、炭素-窒素二重結合(C=N結合)、窒素-窒素二重結合(N=N結合)、及び炭素-酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも一つを有する基がより好ましい。
【0124】
C=C結合を有する光反応性基としては例えば、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾ-ル基、スチルバゾリウム基、カルコン基及びシンナモイル基等が挙げられる。C=N結合を有する光反応性基としては、芳香族シッフ塩基及び芳香族ヒドラゾン等の構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基及びホルマザン基等や、アゾキシベンゼンを基本構造とするものが挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基及びマレイミド基等が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基及びハロゲン化アルキル基等の置換基を有していてもよい。
【0125】
光配向膜形成用組成物の溶剤としては、光反応性基を有するポリマー及びモノマーを溶解するものが好ましく、該溶剤としては、例えば前記の配向性ポリマー組成物の溶剤として挙げられた溶剤等が挙げられる。
【0126】
光配向膜形成用組成物に対する、光反応性基を有するポリマー又はモノマーの含有量は、当該光反応性基を有するポリマー又はモノマーの種類や製造しようとする光配向膜の厚さによって適宜調節できるが、0.2質量%以上とすることが好ましく、0.3~10質量%の範囲が特に好ましい。また、光配向膜の特性が著しく損なわれない範囲で、ポリビニルアルコールやポリイミド等の高分子材料や光増感剤が含まれていてもよい。
【0127】
光配向膜形成用組成物を拡散防止層に塗布する方法としては、配向性ポリマー組成物を拡散防止層に塗布する方法と同様の方法が挙げられる。塗布された光配向膜形成用組成物から、溶剤を除去する方法としては、例えば、配向性ポリマー組成物から溶剤を除去する方法と同じ方法が挙げられる。
【0128】
偏光を照射するには、基材の上に塗布された光配向膜形成用組成物から、溶剤を除去したものに直接、偏光を照射する形式でも、基材から偏光を照射し、偏光を透過させて照射する形式でもよい。また、当該偏光は、実質的に平行光であることが特に好ましい。照射する偏光の波長は、光反応性基を有するポリマー又はモノマーの光反応性基が、光エネルギーを吸収し得る波長領域のものがよい。具体的には、波長250~400nmの範囲のUV(紫外光)が特に好ましい。当該偏光照射に用いる光源としては、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrF、ArF等の紫外光レーザー等が挙げられ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ及びメタルハライドランプがより好ましい。これらのランプは、波長313nmの紫外光の発光強度が大きいため好ましい。前記光源からの光を、適当な偏光子を通過して照射することにより、偏光を照射することができる。かかる偏光子としては、偏光フィルターやグラントムソン、グランテーラー等の偏光プリズムやワイヤーグリッドタイプの偏光子を用いることができる。
【0129】
なお、ラビング又は偏光照射を行う時に、マスキングを行えば、液晶配向の方向が異なる複数の領域(パターン)を形成することもできる。
【0130】
グルブ(groove)配向膜は、膜表面に凹凸パターン又は複数のグルブ(溝)を有する膜である。等間隔に並んだ複数の直線状のグルブを有する膜に液晶分子を置いた場合、その溝に沿った方向に液晶分子が配向する。
【0131】
グルブ配向膜を得る方法としては、感光性ポリイミド膜表面にパターン形状のスリットを有する露光用マスクを介して露光後、現像及びリンス処理を行って凹凸パターンを形成する方法、表面に溝を有する板状の原盤に、硬化前のUV硬化性樹脂の層を形成し、樹脂層を基材へ移してから硬化する方法、及び基材上に形成した硬化前のUV硬化性樹脂の膜に、複数の溝を有するロール状の原盤を押し当てて凹凸を形成し、その後硬化する方法等が挙げられる。具体的には、特開平6-34976号公報及び、特開2011-242743号公報記載の方法等が挙げられる。
【0132】
配向乱れの小さな配向を得るためには、グルブ配向膜の凸部の幅は0.05~5μmであることが好ましく、凹部の幅は0.1~5μmであることが好ましく、凹凸の段差の深さは2μm以下であることが好ましく、0.01~1μm以下であることが好ましい。
【0133】
〔偏光膜〕
上記の様にして得られた配向膜上に、前記偏光膜形成用組成物を塗布し塗膜を形成し、その後、重合性液晶が重合しない条件で偏光膜形成用組成物に含まれる溶剤を除去することにより、基材表面に偏光膜形成用組成物の乾燥塗膜が形成される。溶剤の除去方法としては、例えば自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥及び減圧乾燥法等が挙げられる。
【0134】
前記乾燥塗膜を加熱する等して、前記乾燥塗膜に含まれる重合性液晶化合物を液晶配向、特にスメクチック相の状態に配向させた後、この液晶配向を保持したまま、前記乾燥塗膜にエネルギーを照射することにより、重合性液晶化合物を重合させる。偏光膜形成用組成物が重合開始剤を含有している場合は、重合開始剤が活性化される条件のエネルギーを照射するのが好ましい。重合開始剤が光重合開始剤である場合は、エネルギーは光であることが好ましい。照射する光は、前記乾燥塗膜に含まれる重合開始剤の種類、又は重合性液晶の種類(特に、該重合性液晶化合物が有する重合性基の種類)及びその量に応じて適宜選択される。
【0135】
かかる光としては、可視光、紫外光及びレーザー光からなる群より選択される光や活性電子線等が挙げられるが、中でも、重合反応の進行をコントロールし易い点や、重合に係る装置として当分野で広範に用いられているものが使用できるという点で、紫外光が好ましい。よって、紫外光によって、重合できるように、偏光膜形成用組成物に含有される重合性液晶化合物及び重合開始剤の種類を選択しておくと好ましい。また、重合させる際には、紫外光照射とともに適当な冷却手段により、前記乾燥塗膜を冷却することで重合温度をコントロールするのが好ましい。このような冷却により、より低温で重合性液晶化合物を重合すれば、基材に耐熱性が低いものを用いたとしても、適切に偏光膜を製造できる。
【実施例】
【0136】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。尚、例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、それぞれ質量%及び質量部を意味する。
【0137】
<実施例1>
〔光配向膜形成用組成物の調製〕
特開2013-033249号公報記載の下記成分を混合し、得られた混合物を80℃で1時間撹拌することにより、光配向膜形成用組成物を得た。
【0138】
〔A剤の調製〕
下記の成分を混合し、25℃で1時間撹拌することで、A剤(1)を得た。なお、溶剤として使用したオルトキシレンの含水率は<100ppmであった。
調製したA剤(1)をSUS製缶に入れ、気相部を乾燥窒素で置換して封止した。
【0139】
〔B剤の調製〕
下記の成分を混合し、80℃で1時間撹拌することで、B剤(1)を得た。二色性色素には、特開2013-101328号公報の実施例に記載のアゾ色素を用いた。なお、溶剤として使用したオルトキシレンの含水率は<100ppmであった。
調製したB剤(1)をSUS製缶に入れ、気相部を乾燥窒素で置換して封止した。
【0140】
<偏光膜の作成方法>
(1)光配向膜の形成
基材としてトリアセチルセルロースフィルム(KC8UX2M、コニカミノルタ(株)製)を用い、膜表面にコロナ処理を施した後に、上記光配向膜形成用組成物を塗布して、120℃で乾燥して乾燥塗膜を得た。この乾燥塗膜上に偏光UVを照射して光配向膜を形成し、光配向膜付きフィルムを得た。偏光UV処理は、UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、波長365nmで測定した強度が100mJ/cm2の条件で行った。このようにして、光配向膜付きフィルムを得た。
【0141】
(2)偏光膜の形成
A剤(1)とB剤(1)を調製してから25℃で3か月間保管後に、A剤(1)とB剤(1)とを混合し、25℃で1時間撹拌することで、偏光膜形成用組成物(1)を得た。前記偏光膜形成用組成物(1)を得た直後に、上記で得た光配向膜付きフィルム上に、前記偏光膜形成用組成物(1)をバーコート法により塗布した後に、120℃の乾燥オーブンにて1分間加熱乾燥することにより十分に溶剤を除去した後、室温まで冷却して重合性液晶化合物をスメクチック液晶状態に相転移させた。次いで、UV照射装置(ユニキュアVB-15201BY-A;ウシオ電機株式会社製)を用いて、露光量1000mJ/cm2(365nm基準)の紫外線を、偏光膜形成用組成物(1)から形成された層に照射することにより、該乾燥塗膜に含まれる重合性液晶化合物を、前記重合性液晶化合物のスメクチック液晶状態を保持したまま重合させ、該乾燥塗膜から偏光膜(1)を形成した。この偏光膜(1)の膜厚をレーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製 OLS3000)により測定したところ、2.3μmであった。かくして得られたものは、偏光膜と基材とを含む偏光子(偏光膜積層体)である。この偏光膜(1)に対して、X線回折装置X’Pert PRO MPD(スペクトリス株式会社製)を用いてX線回折測定を行った結果、2θ=20.2°付近にピーク半価幅(FWHM)=約0.17°のシャープな回折ピーク(ブラッグピーク)が得られた。また、ラビング垂直方向からの入射でも同等な結果を得た。ピーク位置から求めた秩序周期(d)は約4.4Åであり、高次スメクチック相を反映した構造を形成することを確認した。
【0142】
<含水率の測定>
溶剤の含水率は、カールフィッシャー水分率計(京都電子工業(株)製 MKC-710M)を用いて電量滴定法により測定した。
【0143】
<偏光度Py、単体透過率Tyの測定>
以下のようにして、偏光膜(1)の偏光度Py及び単体透過率Tyを測定した。波長380nm~780nmの範囲で透過軸方向の透過率(Ta1)及び吸収軸方向の透過率(Tb2)を、分光光度計(島津製作所(株)製 UV-3150)に偏光子付フォルダーをセットした装置を用いてダブルビーム法で測定した。該フォルダーは、リファレンス側は光量を50%カットするメッシュを設置した。
下記式(式1)及び(式2)を用いて、各波長における単体透過率、偏光度を算出し、さらにJIS Z 8701の2度視野(C光源)により視感度補正を行い、視感度補正単体透過率(Ty)及び視感度補正偏光度(Py)を算出した。その結果、Ty=42%でありPy=98%と高度に配向したスメクチック液晶由来の高い性能を示した。
単体透過率Ty(%)= (Ta1+Tb2)/2 (式1)
偏光度Py(%)= (Ta1-Tb2)/(Ta1+Tb2)×100 (式2)
【0144】
<密着性の評価>
得られた偏光膜(1)の表面と裏面にそれぞれ25mm幅のセロテープ(ニチバン製)を貼付し、表面及び裏面それぞれについて90°ピール試験を行った。剥離が生じなかったものを〇、試験箇所の一部のみ剥離が生じたものを△、試験箇所全体に剥離が生じたものを×とした。
【0145】
<外観の評価>
得られた偏光膜(1)を目視で確認し、異物の有無を確認した。異物が目視で確認されないものを〇、異物がやや確認されるものを△、異物が多数確認されるものを×とした。
【0146】
<実施例2及び3>
A剤の保管容器を表に記載の通りとした以外は、実施例1と同様にして、偏光膜形成用組成物(2)・(3)及び偏光膜(2)・(3)を得た。得られた偏光膜のPy、Ty、密着性、外観を実施例1と同様にして評価した。
【0147】
<実施例4>
A剤を保管する容器の気相部を空気とした以外は、実施例1と同様にして、偏光膜形成用組成物(4)及び偏光膜(4)を得た。得られた偏光膜のPy、Ty、密着性、外観を実施例1と同様にして評価した。
【0148】
<実施例5>
反応性添加剤として以下の化合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、偏光膜形成用組成物(5)及び偏光膜(5)を得た。得られた偏光膜のPy、Ty、密着性、外観を実施例1と同様にして評価した。
反応性添加剤: カレンズAOI(昭和電工(株)製) 2.0部
【0149】
<実施例6>
反応性添加剤として以下の化合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、偏光膜形成用組成物(6)及び偏光膜(6)を得た。得られた偏光膜のPy、Ty、密着性、外観を実施例1と同様にして評価した。
反応性添加剤: KBM-5103(信越化学工業(株)製) 5.0部
【0150】
<実施例7及び8>
A剤の溶剤を表に記載の通りとした以外は、実施例1と同様にして、偏光膜形成用組成物(7)・(8)及び偏光膜(7)・(8)を得た。なお、使用したトルエンの含水率は<100ppm、アニソールの含水率は250ppmであった。得られた偏光膜のPy、Ty、密着性、外観を実施例1と同様にして評価した。
【0151】
<実施例9~12>
B剤の溶剤を表に記載の通りとした以外は、実施例1と同様にして、偏光膜形成用組成物(9)~(12)及び偏光膜(9)~(12)を得た。なお、使用した各溶剤の含水率は、ジプロピレングリコールジメチルエーテル:800ppm、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート:1000ppm、γ-ブチロラクトン(GBL):300ppm、イソホロン:800ppmであった。得られた偏光膜のPy、Ty、密着性、外観を実施例1と同様にして評価した。
【0152】
<実施例13>
二色性色素の添加量を表に記載の通りとした以外は、実施例1と同様にして、偏光膜形成用組成物(13)及び偏光膜(13)を得た。得られた偏光膜のPy、Ty、密着性、外観を実施例1と同様にして評価した。
【0153】
<実施例14>
A剤中に(1-2)で表される二色性色素を添加し、B剤中に(1-1)及び(1-3)で表される二色性色素を添加した以外は実施例1と同様にして偏光膜形成用組成物(14)及び偏光膜(14)を得た。得られた偏光膜のPy、Ty、密着性、外観を実施例1と同様にして評価した。
【0154】
<比較例1>
実施例1と同様にしてA剤とB剤を調製した後、SUS製缶で二液を25℃で1時間撹拌して混合した。二液を混合した後、乾燥窒素下で封止し、25℃で3か月間保管後に塗工を行い、得られた偏光膜のPy、Ty、密着性、外観を実施例1と同様にして評価した。
【0155】
<比較例2>
反応性添加剤を使用しない以外は比較例1と同様にして偏光膜形成用組成物を調製し、乾燥窒素下で封止し、25℃で3か月間保管後に塗工を行い、得られた偏光膜のPy、Ty、密着性、外観を実施例1と同様にして評価した。
【0156】
<比較例3及び4>
反応性添加剤を表に記載の通りに変更した以外は比較例1と同様にしてA剤とB剤を調製した後、SUS製缶で二液を25℃で1時間撹拌して混合した。二液を混合した後、乾燥窒素下で封止し、25℃で3か月間保管後に塗工を行い、得られた偏光膜のPy、Ty、密着性、外観を実施例1と同様にして評価した。
【0157】
<比較例5>
A剤中に二色性色素を加え、B剤中から二色性色素を除いた以外は実施例1と同様にして得られた偏光膜のPy、Ty、密着性、外観を実施例1と同様にして評価した。
【0158】
【0159】
反応性添加剤とアミン構造を有するアゾ色素を含む二色性色素が別々に保管された実施例1~14の組成物からは、2剤を調製してから3か月保管後に塗工を行っても、良好な光学特性、高い密着性及び優れた外観を有する偏光膜を得ることができる。一方、反応性添加剤とアミン構造を有するアゾ色素を含む二色性色素とを混合後3か月保管した比較例1、3及び4、ならびに反応性添加剤とアミン構造を有するアゾ色素を含む二色性色素が同一の剤中に含まれる比較例5の組成物からは、光学特性、密着性及び外観のいずれも劣る偏光膜が得られた。反応性添加剤を含まない比較例2の組成物から得られる偏光膜は密着性に劣ることが分かる。