(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】ネガ型感光性樹脂組成物及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/038 20060101AFI20241213BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20241213BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20241213BHJP
C08G 59/24 20060101ALI20241213BHJP
C08G 59/32 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
G03F7/038 503
G03F7/004 503Z
G03F7/004 501
G03F7/20 501
G03F7/20 521
C08G59/24
C08G59/32
(21)【出願番号】P 2020215538
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2023-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】武内 弘明
(72)【発明者】
【氏名】近藤 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】山形 憲一
(72)【発明者】
【氏名】増島 正宏
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-042223(JP,A)
【文献】特開2004-133140(JP,A)
【文献】特開2018-146710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/038
G03F 7/004
G03F 7/20
C08G 59/24
C08G 59/32
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ基含有化合物(A)と、
光カチオン重合開始剤(I)と、
下記一般式(ahs1)で表される構成単位を有する樹脂と、
を含有し、
前記エポキシ基含有化合物(A)は、ノボラック型エポキシ樹脂を含み、
前記光カチオン重合開始剤(I)は、オニウムボレート塩を含
み、
前記一般式(ahs1)で表される構成単位を有する樹脂の含有量は、前記エポキシ基含有化合物(A)と前記一般式(ahs1)で表される構成単位を有する樹脂との合計を100質量部としたときに、0.5~10質量部である、ネガ型感光性樹脂組成物。
【化1】
[式中、Rは、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基である。Ya
x1は、単結合又は2価の連結基である。Wa
x1は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。n
ax1は、1以上の整数である。]
【請求項2】
前記オニウムボレート塩は、下記一般式(I1)で表される化合物である、請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【化2】
[式中、R
b01~R
b04は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアリール基、又はフッ素原子である。qは1以上の整数であって、Q
q+は、q価の有機カチオンである。]
【請求項3】
前記ノボラック型エポキシ樹脂は、下記一般式(anv0)で表されるエポキシ樹脂である、請求項1又は2に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【化3】
[式中、R
p1及びR
p2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基である。複数のR
p1は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。複数のR
p2は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。n
1は、1~5の整数である。R
EPは、エポキシ基含有基である。複数のR
EPは、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。]
【請求項4】
前記エポキシ基含有化合物(A)は、固形ビスフェノール型エポキシ樹脂をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記固形ビスフェノール型エポキシ樹脂は、下記一般式(abp1)で表されるエポキシ樹脂である、請求項4に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【化4】
[式中、R
EPは、エポキシ基含有基である。複数のR
EPは、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。R
a31及びR
a32は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、又は炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基である。na
31は、1~50の整数である。]
【請求項6】
前記エポキシ基含有化合物(A)は、下記一般式(ta1)で表される化合物をさらに含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【化5】
[式中、R
EPは、エポキシ基含有基である。複数のR
EPは、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。]
【請求項7】
前記一般式(ta1)で表される化合物の含有量は、前記エポキシ基含有化合物(A)の全質量部を100質量部としたときに、0.1~10質量部である、請求項
6に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物を用いて、支持体上に感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜を露光する工程と、
前記露光後の感光性樹脂膜を、有機溶剤を含有する現像液で現像して、ネガ型パターンを形成する工程と、
を有する、パターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネガ型感光性樹脂組成物及びパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表面弾性波(SAW)フィルター等の微小な電子デバイスの開発が進められている。このような電子デバイスを封止したパッケージは、表面弾性波の伝播、電子デバイスの可動部材の可動性を確保するための中空構造を有している。
前記パッケージは、感光性樹脂組成物を用いて、電極が形成された配線基板上が中空に保たれた中空構造を作製し、モールド成型することにより形成される。ここで用いられる感光性樹脂組成物においては、硬化膜の薄膜化及び強度が必要になる。
【0003】
また、感光性樹脂組成物は、半導体ウェーハと透明基板との間のスペーサ(壁材)にも用いられる。例えば、ネガ型の感光性樹脂組成物を用いて、半導体ウェーハの表面に感光性樹脂膜を形成し、該感光性樹脂膜に対して光、電子線等の放射線による選択的露光を行い、現像処理を施してパターンを形成した後、透明基板(例えばガラス基板)等と圧着してスペーサとされる。この感光性樹脂膜においては、フォトリソグラフィー法により、現像処理を施した際に、スペーサに必要とされる厚さの膜が形成され、かつ、良好な形状で残渣等が無く高解像度のパターニングが可能であることが必要になる。
【0004】
これらの要求に対し、従来、感光性樹脂組成物としては、エポキシ樹脂と光カチオン重合開始剤とを含有するものが提案されている。例えば、特許文献1の実施例には、特定のエポキシ樹脂と、光カチオン重合開始剤としてスルホニウムボレートと、を含有するネガ型感光性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のネガ型感光性樹脂組成物等、従来のネガ型感光性樹脂組成物においては、その配合バランスによって半導体ウェーハの表面にネガ型パターンを形成した際、両者の界面で、半導体ウェーハに接するネガ型パターン像(残膜)の周縁部に切れ込み、いわゆるアンダーカットが生じやすい、という課題があった。このアンダーカットが生じると、構造形成後のメッキ不良等につながるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、パターン形成において、アンダーカットを生じにくいネガ型感光性樹脂組成物、及びパターン形成方法を提供すること、を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、検討により、ネガ型感光性樹脂組成物を用いてネガ型パターンを形成した際にアンダーカットが生じる問題は、光カチオン重合開始剤としてアニオン部がボレートアニオンであるものを用いた場合に、特に顕著に現れやすい、という知見を得た。そして、かかる問題に対して、フェノール性水酸基を含む構成単位を有する樹脂、を併用することにより、アンダーカットの発生が抑えられることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の第1の態様は、エポキシ基含有化合物(A)と、光カチオン重合開始剤(I)と、下記一般式(ahs1)で表される構成単位を有する樹脂と、を含有し、前記エポキシ基含有化合物(A)は、ノボラック型エポキシ樹脂を含み、前記光カチオン重合開始剤(I)は、オニウムボレート塩を含むことを特徴とする、ネガ型感光性樹脂組成物である。
【0010】
【化1】
[式中、Rは、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基である。Ya
x1は、単結合又は2価の連結基である。Wa
x1は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。n
ax1は、1以上の整数である。]
【0011】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係るネガ型感光性樹脂組成物を用いて、支持体上に感光性樹脂膜を形成する工程と、前記感光性樹脂膜を露光する工程と、前記露光後の感光性樹脂膜を、有機溶剤を含有する現像液で現像して、ネガ型パターンを形成する工程と、を有することを特徴とする、パターン形成方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、パターン形成において、アンダーカットを生じにくいネガ型感光性樹脂組成物、及びパターン形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施例におけるアンダーカットの評価基準を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書及び本特許請求の範囲において、「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、芳香族性を持たない化合物等を意味するものと定義する。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。アルコキシ基中のアルキル基も同様である。
「アルキレン基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の2価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「ハロゲン化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であり、該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「フッ素化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基をいう。
「構成単位」とは、高分子化合物(樹脂、重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
「置換基を有していてもよい」と記載する場合、水素原子(-H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(-CH2-)を2価の基で置換する場合と、の両方を含む。
「露光」は、放射線の照射全般を含む概念とする。
【0015】
(ネガ型感光性樹脂組成物)
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物(以下単に「感光性組成物」ということがある)は、エポキシ基含有化合物(A)(以下「(A)成分」ともいう)と、光カチオン重合開始剤(I)(以下「(I)成分」ともいう)と、一般式(ahs1)で表される構成単位を有する樹脂(以下この樹脂を「(P)成分」ともいう)と、を含有する。
かかる感光性組成物を用いて感光性樹脂膜を形成し、該感光性樹脂膜に対して選択的に露光を行うと、該感光性樹脂膜の露光部では、(I)成分のカチオン部が分解して酸が発生し、該酸の作用により(A)成分中のエポキシ基が開環重合して、有機溶剤を含有する現像液に対する該(A)成分の溶解性が減少する一方で、該感光性樹脂膜の未露光部では、有機溶剤を含有する現像液に対する該(A)成分の溶解性が変化しないため、感光性樹脂膜の露光部と未露光部との間で、有機溶剤を含有する現像液に対する溶解性の差が生じる。そのため、該感光性樹脂膜を、有機溶剤を含有する現像液で現像すると、未露光部が溶解除去されて、ネガ型のパターンが形成される。
【0016】
<エポキシ基含有化合物(A)>
エポキシ基含有化合物((A)成分)は、露光によってネガ型のパターンを形成するのに充分なエポキシ基を1分子中に有する化合物が挙げられる。
本実施形態の感光性組成物で用いられる(A)成分は、ノボラック型エポキシ樹脂(以下「(A1)成分」ともいう)を含む。(A)成分は、(A1)成分に加え、これ以外のエポキシ基含有化合物を併用してもよい。ただし、前記(A)成分は、シランカップリング剤に該当するものを除くものとする。
【0017】
≪ノボラック型エポキシ樹脂≫
ノボラック型エポキシ樹脂((A1)成分)としては、下記一般式(anv0)で表されるエポキシ樹脂が好適に挙げられる。
【0018】
【化2】
[式中、R
p1及びR
p2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基である。複数のR
p1は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。複数のR
p2は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。n
1は、1~5の整数である。R
EPは、エポキシ基含有基である。複数のR
EPは、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。]
【0019】
前記式(anv0)中、Rp1、Rp2の炭素原子数1~5のアルキル基は、例えば炭素原子数1~5の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基である。直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。環状のアルキル基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
なかでもRp1、Rp2としては、水素原子又は直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、水素原子又は直鎖状のアルキル基がより好ましく、水素原子又はメチル基が特に好ましい。
式(anv0)中、複数のRp1は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。複数のRp2は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。
【0020】
前記式(anv0)中、n1は、1~5の整数であり、好ましくは2又は3であり、より好ましくは2である。
【0021】
前記式(anv0)中、REPは、エポキシ基含有基である。
REPのエポキシ基含有基としては、特に限定されるものではなく、エポキシ基のみからなる基;脂環式エポキシ基のみからなる基;エポキシ基又は脂環式エポキシ基と、2価の連結基とを有する基が挙げられる。
脂環式エポキシ基とは、3員環エーテルであるオキサシクロプロパン構造を有する脂環式基であって、具体的には、脂環式基とオキサシクロプロパン構造とを有する基である。
脂環式エポキシ基の基本骨格となる脂環式基としては、単環であっても多環であってもよい。単環の脂環式基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。また、多環の脂環式基としては、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等が挙げられる。また、これら脂環式基の水素原子は、アルキル基、アルコキシ基、水酸基等で置換されていてもよい。
エポキシ基又は脂環式エポキシ基と、2価の連結基とを有する基の場合、式中の酸素原子(-O-)に結合した2価の連結基を介してエポキシ基又は脂環式エポキシ基が結合することが好ましい。
【0022】
ここで、2価の連結基としては、特に限定されないが、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が好適なものとして挙げられる。
【0023】
置換基を有していてもよい2価の炭化水素基について:
かかる2価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。
2価の炭化水素基における脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
該脂肪族炭化水素基として、より具体的には、直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、又は構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
【0024】
前記直鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が1~10であることが好ましく、1~6がより好ましく、1~4がさらに好ましく、1~3が最も好ましい。直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[-CH2-]、エチレン基[-(CH2)2-]、トリメチレン基[-(CH2)3-]、テトラメチレン基[-(CH2)4-]、ペンタメチレン基[-(CH2)5-]等が挙げられる。
前記分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が2~10であることが好ましく、2~6がより好ましく、2~4がさらに好ましく、2又は3が最も好ましい。分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、-CH(CH3)-、-CH(CH2CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CH3)(CH2CH3)-、-C(CH3)(CH2CH2CH3)-、-C(CH2CH3)2-等のアルキルメチレン基;-CH(CH3)CH2-、-CH(CH3)CH(CH3)-、-C(CH3)2CH2-、-CH(CH2CH3)CH2-、-C(CH2CH3)2-CH2-等のアルキルエチレン基;-CH(CH3)CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2-等のアルキルトリメチレン基;-CH(CH3)CH2CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2CH2-等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0025】
前記構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、前記と同様のものが挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、炭素原子数が3~20であることが好ましく、3~12であることがより好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0026】
2価の炭化水素基における芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。この芳香環は、(4n+2)個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素原子数は、5~30であることが好ましく、5~20がより好ましく、6~15がさらに好ましく、6~12が特に好ましい。芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を2つ除いた基(アリーレン基またはヘテロアリーレン基);2以上の芳香環を含む芳香族化合物(例えばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を2つ除いた基;前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基)の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基におけるアリール基から水素原子をさらに1つ除いた基)等が挙げられる。前記アリール基またはヘテロアリール基に結合するアルキレン基の炭素原子数は、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0027】
2価の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
2価の炭化水素基としての、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよく、有していなくてもよい。該置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基、カルボニル基等が挙げられる。
【0028】
2価の炭化水素基としての、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基における脂環式炭化水素基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基等が挙げられる。
前記置換基としてのアルキル基としては、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基であることが最も好ましい。
前記置換基としてのアルコキシ基としては、炭素原子数1~5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
前記置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
前記置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、前記アルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
脂環式炭化水素基は、その環構造を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子を含む置換基で置換されてもよい。該ヘテロ原子を含む置換基としては、-O-、-C(=O)-O-、-S-、-S(=O)2-、-S(=O)2-O-が好ましい。
【0029】
2価の炭化水素基としての、芳香族炭化水素基は、当該芳香族炭化水素基が有する水素原子が置換基で置換されていてもよい。例えば当該芳香族炭化水素基中の芳香環に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。該置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基等が挙げられる。
前記置換基としてのアルキル基としては、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基であることが最も好ましい。
前記置換基としてのアルコキシ基、ハロゲン原子およびハロゲン化アルキル基としては、前記脂環式炭化水素基が有する水素原子を置換する置換基として例示したものが挙げられる。
【0030】
ヘテロ原子を含む2価の連結基について:
ヘテロ原子を含む2価の連結基におけるヘテロ原子とは、炭素原子および水素原子以外の原子であり、例えば酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0031】
ヘテロ原子を含む2価の連結基において、該連結基として好ましいものとしては、-O-、-C(=O)-O-、-C(=O)-、-O-C(=O)-O-;-C(=O)-NH-、-NH-、-NH-C(=O)-O-、-NH-C(=NH)-(Hはアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい。);-S-、-S(=O)2-、-S(=O)2-O-、一般式-Y21-O-Y22-、-Y21-O-、-Y21-C(=O)-O-、-C(=O)-O-Y21、-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-または-Y21-O-C(=O)-Y22-で表される基[式中、Y21およびY22はそれぞれ独立して置換基を有していてもよい2価の炭化水素基であり、Oは酸素原子であり、m”は0~3の整数である。]等が挙げられる。
前記へテロ原子を含む2価の連結基が-C(=O)-NH-、-NH-、-NH-C(=O)-O-、-NH-C(=NH)-の場合、そのHはアルキル基、アシル等の置換基で置換されていてもよい。該置換基(アルキル基、アシル基等)は、炭素原子数が1~10であることが好ましく、1~8であることがさらに好ましく、1~5であることが特に好ましい。
式-Y21-O-Y22-、-Y21-O-、-Y21-C(=O)-O-、-C(=O)-O-Y21-、-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-または-Y21-O-C(=O)-Y22-中、Y21およびY22は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。該2価の炭化水素基としては、上述した2価の連結基としての説明で挙げた「置換基を有していてもよい2価の炭化水素基」と同様のものが挙げられる。
Y21としては、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基またはエチレン基が特に好ましい。
Y22としては、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチレン基、エチレン基またはアルキルメチレン基がより好ましい。該アルキルメチレン基におけるアルキル基は、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~3の直鎖状のアルキル基がより好ましく、メチル基が最も好ましい。
式-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-で表される基において、m”は0~3の整数であり、0~2の整数であることが好ましく、0または1がより好ましく、1が特に好ましい。つまり、式-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-で表される基としては、式-Y21-C(=O)-O-Y22-で表される基が特に好ましい。なかでも、式-(CH2)a’-C(=O)-O-(CH2)b’-で表される基が好ましい。該式中、a’は、1~10の整数であり、1~8の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が最も好ましい。b’は、1~10の整数であり、1~8の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が最も好ましい。
【0032】
なかでも、REPにおけるエポキシ基含有基としては、グリシジル基が好ましい。
【0033】
また、(A1)成分としては、下記一般式(anv1)で表される構成単位を有する樹脂も好適に挙げられる。
【0034】
【化3】
[式中、R
EPは、エポキシ基含有基である。R
a22及びR
a23は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又はハロゲン原子である。]
【0035】
前記式(anv1)中、Ra22、Ra23の炭素原子数1~5のアルキル基は、前記式(anv0)中のRp1、Rp2の炭素原子数1~5のアルキル基と同様である。
Ra22、Ra23のハロゲン原子は、塩素原子又は臭素原子であることが好ましい。
前記式(anv1)中、REPは、前記式(anv0)中のREPと同様であって、グリシジル基が好ましい。
【0036】
以下に、前記式(anv1)で表される構成単位の具体例を示す。
【0037】
【0038】
(A1)成分は、前記構成単位(anv1)のみからなる樹脂であってもよく、構成単位(anv1)と他の構成単位とを有する樹脂であってもよい。
この他の構成単位としては、例えば、下記一般式(anv2)~(anv3)でそれぞれ表される構成単位が挙げられる。
【0039】
【化5】
[式中、R
a24は、置換基を有していてもよい炭化水素基である。R
a25~R
a26、R
a28~R
a30は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又はハロゲン原子である。R
a27は、エポキシ基含有基又は置換基を有していてもよい炭化水素基である。]
【0040】
前記式(anv2)中、Ra24は、置換基を有していてもよい炭化水素基である。置換基を有していてもよい炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、又は環状の炭化水素基が挙げられる。
該直鎖状のアルキル基は、炭素原子数が1~5であることが好ましく、1~4がより好ましく、1または2がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基またはn-ブチル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。
【0041】
該分岐鎖状のアルキル基は、炭素原子数が3~10であることが好ましく、3~5がより好ましい。具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、2,2-ジメチルブチル基等が挙げられ、イソプロピル基であることが好ましい。
【0042】
Ra24が環状の炭化水素基となる場合、該炭化水素基は、脂肪族炭化水素基でも芳香族炭化水素基でもよく、また、多環式基でも単環式基でもよい。
単環式基である脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環式基である脂肪族炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0043】
Ra24の環状の炭化水素基が芳香族炭化水素基となる場合、該芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。
この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素原子数は5~30であることが好ましく、5~20がより好ましく、6~15がさらに好ましく、6~12が特に好ましい。芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
Ra24における芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基);2以上の芳香環を含む芳香族化合物(例えばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を1つ除いた基;前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)等が挙げられる。前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環に結合するアルキレン基の炭素原子数は、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0044】
前記式(anv2)、(anv3)中、Ra25~Ra26、Ra28~Ra30は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又はハロゲン原子である。
炭素原子数1~5のアルキル基、ハロゲン原子は、それぞれ、前記Ra22、Ra23と同様である。
【0045】
前記式(anv3)中、Ra27は、エポキシ基含有基、又は置換基を有していてもよい炭化水素基である。Ra27のエポキシ基含有基は、前記式(anv0)中のREPと同様である。Ra27の置換基を有していてもよい炭化水素基は、前記式(anv2)中のRa24と同様である。
【0046】
以下に、前記式(anv2)~(anv3)でそれぞれ表される構成単位の具体例を示す。
【0047】
【0048】
(A1)成分が、構成単位(anv1)に加えて他の構成単位を有する場合、(A1)成分中の各構成単位の割合は、特に限定されるものではないが、(A1)成分を構成する全構成単位の合計に対して、エポキシ基を有する構成単位の合計が10~90モル%が好ましく、20~80モル%がより好ましく、30~70モル%がさらに好ましい。
【0049】
(A1)成分の市販品としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂として、JER-152、JER-154、JER-157S70、JER-157S65(以上、三菱ケミカル株式会社製)、EPICLON N-740、EPICLON N-740、EPICLON N-770、EPICLON N-775、EPICLON N-660、EPICLON N-665、EPICLON N-670、EPICLON N-673、EPICLON N-680、EPICLON N-690、EPICLON N-695、EPICLON HP5000(以上、DIC株式会社製)、EOCN-1020(以上、日本化薬株式会社製)等が挙げられる。
【0050】
(A1)成分としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の感光性組成物中、(A1)成分の含有量は、(A)成分の全質量部を100質量部としたときに、10~40質量部であることが好ましく、15~35質量部であることがより好ましく、20~30質量部であることがさらに好ましい。
【0051】
≪その他エポキシ基含有化合物≫
上記(A1)成分以外のエポキシ基含有化合物には、例えば、その構造中にグリシジルエーテル基を有する樹脂を用いることができる。
(A1)成分以外のエポキシ基含有化合物としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0052】
ビスフェノール型エポキシ樹脂について:
ビスフェノール型エポキシ樹脂(以下「(A2)成分」ともいう)としては、ビスフェノール骨格を含む構成単位を有する樹脂であればよく、そのなかでも固形ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。
固形ビスフェノール型エポキシ樹脂とは、25℃において固体状の、ビスフェノール骨格を含む構成単位を有する樹脂をいう。
(A2)成分におけるエポキシ当量は、例えば、800g/eq.以上であることが好ましく、800~1200g/eq.がより好ましく、900~1100g/eq.がさらに好ましい。
【0053】
(A2)成分としては、下記一般式(abp1)で表されるエポキシ樹脂が好適に挙げられる。
【0054】
【化7】
[式中、R
EPは、エポキシ基含有基である。複数のR
EPは、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。R
a31及びR
a32は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、又は炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基である。na
31は、1~50の整数である。]
【0055】
前記式(abp1)中、REPは、前記式(anv0)中のREPと同様であり、グリシジル基が好ましい。
前記式(abp1)中、Ra31、Ra32における炭素原子数1~5のアルキル基は、前記式(anv0)中のRp1、Rp2における炭素原子数1~5のアルキル基と同様である。なかでもRa31、Ra32としては、それぞれ、水素原子又はメチル基が好ましい。
Ra31、Ra32における炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基は、前記のRa31、Ra32における炭素原子数1~5のアルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基が挙げられる。
前記式(abp1)中、na31は、1~50の整数であり、好ましくは4~15の整数であり、より好ましくは5~8の整数である。
【0056】
(A2)成分として使用可能な市販品は、例えば、JER-4005、JER-4007、JER-4010(以上、三菱ケミカル株式会社製);JER-827、JER-828、JER-834、JER-1001、JER-1002、JER-1003、JER-1055、JER-1007、JER-1009、JER-1010(以上、三菱ケミカル株式会社製);EPICLON860、EPICLON1050、EPICLON1051、EPICLON1055(以上、DIC株式会社製)等が挙げられる。
【0057】
(A2)成分としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の感光性組成物中、(A2)成分の含有量は、(A)成分の全質量部を100質量部としたときに、60~90質量部であることが好ましく、65~85質量部であることがより好ましく、70~80質量部であることがさらに好ましい。
【0058】
(A1)成分と(A2)成分とを併用する場合、(A1)成分と(A2)成分との比率は、(A1)成分/(A2)成分で表される質量比として、1/9以上5/5以下であることが好ましく、1/9以上5/5未満であることがより好ましく、2/8以上4/6以下であることがさらに好ましく、2/8以上3/7以下であることが特に好ましい。
かかる質量比が前記の好ましい範囲内であれば、解像性がより高められ、かつ、基板への密着も優れたものとなる。
【0059】
脂肪族エポキシ樹脂について:
脂肪族エポキシ樹脂としては、例えば、下記一般式(ta1)で表される化合物(以下この化合物を「(A3)成分」ともいう)が好適に挙げられる。
(A3)成分を併用することで、パターン形成において、アンダーカットをより生じにくくなる。
【0060】
【化8】
[式中、R
EPは、エポキシ基含有基である。複数のR
EPは、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。]
【0061】
前記式(ta1)中、REPは、エポキシ基含有基であり、前記式(anv0)中のREPと同様である。
【0062】
(A3)成分として使用可能な市販品は、例えば、TEPIC、TEPIC-VL、TEPIC-PAS、TEPIC-G、TEPIC-S、TEPIC-SP、TEPIC-SS、TEPIC-HP、TEPIC-L、TEPIC-FL、TEPIC-UC等のTEPICシリーズ(日産化学株式会社製);MA-DGIC、DA-MGIC、TOIC(四国化成工業株式会社製)等が挙げられる。
【0063】
(A3)成分としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の感光性組成物中、(A3)成分の含有量は、(A)成分の全質量部を100質量部としたときに、0.1~10質量部であることが好ましく、0.5~5質量部であることがより好ましく、1~3.5質量部であることがさらに好ましい。
(A3)成分の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であれば、パターン形成において、アンダーカットをより生じにくくなる。一方、(A3)成分の含有量が多くなると、パターン形成において、感度が低下する傾向にあり、前記の好ましい範囲の上限値以下であれば、良好な感度が保たれやすくなる。
【0064】
また、脂肪族エポキシ樹脂としては、下記一般式(m1)で表される部分構造を含む化合物(以下「(m1)成分」ともいう)も挙げられる。
【0065】
【化9】
[式中、n
2は、1~4の整数である。*は結合手を示す。]
【0066】
前記式(m1)中、n2は、1~4の整数であり、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2である。
【0067】
(m1)成分としては、2価の連結基又は単結合を介して、上記一般式(m1)で表される部分構造の複数が結合した化合物が挙げられる。この中でも、2価の連結基を介して、上記一般式(m1)で表される部分構造の複数が結合した化合物が好ましい。
ここでの2価の連結基としては、特に限定されないが、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基が好適なものとして挙げられる。
ここでの、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基については、上記式(anv0)中のREP(エポキシ基含有基)において説明した、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基とそれぞれ同様であり、この中でもヘテロ原子を含む2価の連結基が好ましく、-Y21-C(=O)-O-で表される基、-C(=O)-O-Y21-で表される基がより好ましい。Y21としては、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基またはエチレン基が特に好ましい。
【0068】
脂肪族エポキシ樹脂として使用可能な市販品は、例えば、ADEKA RESIN EP-4080S、同EP-4085S、同EP-4088S(以上、株式会社ADEKA製);セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、セロキサイド8000、セロキサイド8010、EHPE-3150、EPOLEAD PB 3600、同PB 4700(以上、株式会社ダイセル製);デナコール EX-211L、EX-212L、EX-214L、EX-216L、EX-321L、EX-850L(以上、ナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられる。
【0069】
アクリル樹脂について:
アクリル樹脂としては、例えば、下記一般式(a1-1)~(a1-2)でそれぞれ表されるエポキシ基含有単位を有する樹脂が挙げられる。
【0070】
【化10】
[式中、Rは水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基である。Va
41は、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。na
41は0~2の整数である。R
a41及びR
a42はそれぞれエポキシ基含有基である。na
42は、0又は1である。Wa
41は、(na
43+1)価の脂肪族炭化水素基である。na
43は1~3の整数である。]
【0071】
前記式(a1-1)中、Rにおける、炭素原子数1~5のアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
Rにおける、炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基は、前記炭素原子数1~5のアルキル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基である。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
Rとしては、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子又はメチル基がより好ましい。
【0072】
前記式(a1-1)中、Va41は、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基であり、前記式(anv0)中のREPにおいて説明した、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基と同様の基が挙げられる。
上記の中でも、Va41の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基がより好ましく、直鎖状の脂肪族炭化水素基がさらに好ましく、直鎖状のアルキレン基が特に好ましい。
【0073】
前記式(a1-1)中、na41は、0~2の整数であり、0又は1が好ましい。
【0074】
前記の式(a1-1)、(a1-2)中、Ra41、Ra42は、エポキシ基含有基であり、前記式(anv0)中のREPと同様である。
【0075】
前記式(a1-2)中、Wa41における(na43+1)価の脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味し、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。前記脂肪族炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基、又は、直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基と構造中に環を含む脂肪族炭化水素基とを組み合わせた基が挙げられる。
【0076】
前記式(a1-2)中、na43は、1~3の整数であり、1又は2が好ましい。
【0077】
以下に、前記の式(a1-1)又は(a1-2)で表される構成単位の具体例を示す。
下記の式中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。
Ra51は、炭素原子数1~8の2価の炭化水素基を示す。Ra52は、炭素原子数1~20の2価の炭化水素基を示す。Ra53は、水素原子又はメチル基を示す。na51は、0~10の整数である。
Ra51、Ra52、Ra53は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
さらに、アクリル樹脂は、物理的、化学的特性を適度にコントロールする目的で他の重合性化合物から誘導される構成単位を有してもよい。
このような重合性化合物としては、公知のラジカル重合性化合物や、アニオン重合性化合物が挙げられる。このような重合性化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸類;2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2-メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシル基及びエステル結合を有するメタクリル酸誘導体類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アリールエステル類;マレイン酸ジエチル、フマル酸ジブチル等のジカルボン酸ジエステル類;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、ヒドロキシスチレン、α-メチルヒドロキシスチレン、α-エチルヒドロキシスチレン等のビニル基含有芳香族化合物類;酢酸ビニル等のビニル基含有脂肪族化合物類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有重合性化合物類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有重合性化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド結合含有重合性化合物類等が挙げられる。
【0083】
上記のアクリル樹脂が他の構成単位を有する場合、当該樹脂におけるエポキシ基含有単位の含有比率は、5~40モル%であることが好ましく、10~30モル%であることがより好ましく、15~25モル%であることがさらに好ましい。
【0084】
また、上記(A1)成分以外のエポキシ基含有化合物には、上述した樹脂以外に、下記化学式(A3-1)で表される化合物、下記化学式(A3-2)で表される化合物をそれぞれ使用してもよい。
下記化学式(A3-1)で表される化合物として使用可能な市販品は、例えば、TECHMORE VG-3101L(プリンテック株式会社製)等が挙げられる。
下記化学式(A3-2)で表される化合物として使用可能な市販品は、例えば、ショウフリー(登録商標)BATG(昭和電工株式会社製)等が挙げられる。
【0085】
【0086】
また、上記(A1)成分以外のエポキシ基含有化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル;ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラグリシジルエーテル、ジグリセリンテトラグリシジルエーテル、エリスリトールテトラグリシジルエーテル;キシリトールペンタグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタグリシジルエーテル、イノシトールペンタグリシジルエーテル;ジペンタエリスリトールヘキサグリシジルエーテル、ソルビトールヘキサグリシジルエーテル、イノシトールヘキサグリシジルエーテル等も挙げられる。
【0087】
本実施形態の感光性組成物において、(A)成分は、(A1)成分を含むものが用いられる。
かかる(A)成分としては、(A1)成分と(A2)成分とを含むものが好ましく、この中でも(A1)成分と固形ビスフェノール型エポキシ樹脂とを含むものがより好ましく、一般式(anv0)で表されるエポキシ樹脂と、一般式(abp1)で表されるエポキシ樹脂とを含むものがさらに好ましい。
また、かかる(A)成分としては、(A1)成分と(A2)成分と(A3)成分とを含むものが特に好ましい。
【0088】
(A)成分のポリスチレン換算質量平均分子量は、好ましくは100~300000であり、より好ましくは200~200000であり、さらに好ましくは300~200000である。このような質量平均分子量とすることにより、支持体との剥離が生じにくくなり、形成される硬化膜の強度が充分に高められる。
【0089】
実施形態の感光性組成物中の(A)成分の含有量は、形成しようとする感光性樹脂膜の膜厚等に応じて調整すればよい。
【0090】
<光カチオン重合開始剤(I)>
光カチオン重合開始剤((I)成分)は、紫外線、遠紫外線、KrF、ArF等のエキシマレーザー光、X線、電子線等といった活性エネルギー線の照射を受けてカチオンを発生し、そのカチオンが重合開始剤となり得る化合物である。
本実施形態の感光性組成物で用いられる(I)成分は、オニウムボレート塩(以下「(I1)成分」ともいう)を含む。
(I)成分は、(I1)成分に加え、これ以外の光カチオン重合開始剤を併用してもよい。
【0091】
上述のように、従来、ネガ型感光性樹脂組成物を用いてネガ型パターンを形成した際、光カチオン重合開始剤としてアニオン部がボレートアニオンであるものを用いた場合に、アンダーカットが生じやすいという特有な問題がある。かかる問題に対して、オニウムボレート塩を含有する本実施形態の感光性組成物は有用である。
【0092】
≪オニウムボレート塩≫
オニウムボレート塩((I1)成分)は、露光により比較的に強い酸を発生する。このため、(I1)成分を含有する感光性組成物を用いてパターンを形成することにより、充分な感度が得られて良好なパターンが形成される。また、(I1)成分の使用は、毒性や金属腐食のおそれも低い。
(I1)成分としては、例えば、下記一般式(I1)で表される化合物が好適に挙げられる。
【0093】
【化16】
[式中、R
b01~R
b04は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアリール基、又はフッ素原子である。qは1以上の整数であって、Q
q+は、q価の有機カチオンである。]
【0094】
・アニオン部
前記式(I1)中、Rb01~Rb04におけるアリール基は、炭素原子数が5~30であることが好ましく、5~20がより好ましく、6~15がさらに好ましく、6~12が特に好ましい。具体的には、ナフチル基、フェニル基、アントラセニル基などが挙げられ、入手が容易であることからフェニル基が好ましい。
Rb01~Rb04におけるアリール基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、特に限定されるものではないが、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基(直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、炭素原子数は1~5が好ましい)、ハロゲン化アルキル基が好ましく、ハロゲン原子又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基がより好ましく、フッ素原子又は炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基が特に好ましい。アリール基がフッ素原子を有することにより、アニオン部の極性が高まり好ましい。
中でも、式(I1)のRb01~Rb04としては、それぞれ、フッ素化されたフェニル基が好ましく、パーフルオロフェニル基が特に好ましい。
【0095】
前記式(I1)で表される化合物のアニオン部の好ましい具体例としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([B(C6F5)4]-);テトラキス[(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート([B(C6H4CF3)4]-);ジフルオロビス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([(C6F5)2BF2]-);トリフルオロ(ペンタフルオロフェニル)ボレート([(C6F5)BF3]-);テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート([B(C6H3F2)4]-)等が挙げられる。
中でも、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([B(C6F5)4]-)が特に好ましい。
【0096】
・カチオン部
前記式(I1)中、Qq+としては、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオンが好適に挙げられ、下記の一般式(ca-1)~(ca-5)でそれぞれ表される有機カチオンが特に好ましい。
【0097】
【化17】
[式中、R
201~R
207、およびR
211~R
212は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基、ヘテロアリール基、アルキル基またはアルケニル基を表す。R
201~R
203、R
206~R
207、R
211~R
212は、相互に結合して、式中のイオウ原子と共に環を形成してもよい。R
208~R
209は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~5のアルキル基を表す。R
210は、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、または置換基を有していてもよい-SO
2-含有環式基である。L
201は、-C(=O)-または-C(=O)-O-を表す。Y
201は、それぞれ独立に、アリーレン基、アルキレン基またはアルケニレン基を表す。xは、1または2である。W
201は、(x+1)価の連結基を表す。]
【0098】
R201~R207、およびR211~R212におけるアリール基としては、炭素原子数6~20の無置換のアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
R201~R207、およびR211~R212におけるヘテロアリール基としては、前記アリール基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されたものが挙げられる。ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。このヘテロアリール基として、9H-チオキサンテンから水素原子を1つ除いた基;置換ヘテロアリール基として、9H-チオキサンテン-9-オンから水素原子を1つ除いた基などが挙げられる。
R201~R207、およびR211~R212におけるアルキル基としては、鎖状又は環状のアルキル基であって、炭素原子数1~30のものが好ましい。
R201~R207、およびR211~R212におけるアルケニル基としては、炭素原子数が2~10であることが好ましい。
R201~R207、およびR210~R212が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、カルボニル基、シアノ基、アミノ基、オキソ基(=O)、アリール基、下記の式(ca-r-1)~(ca-r-10)でそれぞれ表される基が挙げられる。
【0099】
【化18】
[式中、R’
201は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基である。]
【0100】
前記の式(ca-r-1)~(ca-r-10)中、R’201は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基である。
【0101】
置換基を有していてもよい環式基:
該環式基は、環状の炭化水素基であることが好ましく、該環状の炭化水素基は、芳香族炭化水素基であってもよく、環状の脂肪族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。また、脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
【0102】
R’201における芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。該芳香族炭化水素基の炭素原子数は3~30であることが好ましく、5~30であることがより好ましく、5~20がさらに好ましく、6~15が特に好ましく、6~10が最も好ましい。ただし、該炭素原子数には、置換基における炭素原子数を含まないものとする。
R’201における芳香族炭化水素基が有する芳香環として具体的には、ベンゼン、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル、もしくはこれらの芳香環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環、又は、これらの芳香環もしくは芳香族複素環を構成する水素原子の一部がオキソ基などで置換された環が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
R’201における芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香環から水素原子を1つ除いた基(アリール基:例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基など)、前記芳香環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)、前記芳香環を構成する水素原子の一部がオキソ基などで置換された環(例えばアントラキノン等)から水素原子を1つ除いた基、芳香族複素環(例えば9H-チオキサンテン、9H-チオキサンテン-9-オンなど)から水素原子を1つ除いた基等が挙げられる。前記アルキレン基(アリールアルキル基中のアルキル鎖)の炭素原子数は、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0103】
R’201における環状の脂肪族炭化水素基は、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基が挙げられる。
この構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を1個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、炭素原子数が3~20であることが好ましく、3~12であることがより好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~30のものが好ましい。中でも、該ポリシクロアルカンとしては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等の架橋環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカン;ステロイド骨格を有する環式基等の縮合環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカンがより好ましい。
【0104】
なかでも、R’201における環状の脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンまたはポリシクロアルカンから水素原子を1つ以上除いた基が好ましく、ポリシクロアルカンから水素原子を1つ除いた基がより好ましく、アダマンチル基、ノルボルニル基が特に好ましく、アダマンチル基が最も好ましい。
【0105】
脂環式炭化水素基に結合してもよい、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が1~10であることが好ましく、1~6がより好ましく、1~4がさらに好ましく、1~3が最も好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[-CH2-]、エチレン基[-(CH2)2-]、トリメチレン基[-(CH2)3-]、テトラメチレン基[-(CH2)4-]、ペンタメチレン基[-(CH2)5-]等が挙げられる。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、-CH(CH3)-、-CH(CH2CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CH3)(CH2CH3)-、-C(CH3)(CH2CH2CH3)-、-C(CH2CH3)2-等のアルキルメチレン基;-CH(CH3)CH2-、-CH(CH3)CH(CH3)-、-C(CH3)2CH2-、-CH(CH2CH3)CH2-、-C(CH2CH3)2-CH2-等のアルキルエチレン基;-CH(CH3)CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2-等のアルキルトリメチレン基;-CH(CH3)CH2CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2CH2-等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0106】
置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基:
R’201の鎖状のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよい。
直鎖状のアルキル基としては、炭素原子数が1~20であることが好ましく、1~15であることがより好ましく、1~10が最も好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基等が挙げられる。
分岐鎖状のアルキル基としては、炭素原子数が3~20であることが好ましく、3~15であることがより好ましく、3~10が最も好ましい。具体的には、例えば、1-メチルエチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基などが挙げられる。
【0107】
置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基:
R’201の鎖状のアルケニル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよく、炭素原子数が2~10であることが好ましく、2~5がより好ましく、2~4がさらに好ましく、3が特に好ましい。直鎖状のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、ブチニル基などが挙げられる。分岐鎖状のアルケニル基としては、例えば、1-メチルビニル基、2-メチルビニル基、1-メチルプロペニル基、2-メチルプロペニル基などが挙げられる。
鎖状のアルケニル基としては、上記の中でも、直鎖状のアルケニル基が好ましく、ビニル基、プロペニル基がより好ましく、ビニル基が特に好ましい。
【0108】
R’201の環式基、鎖状のアルキル基またはアルケニル基における置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基、オキソ基、上記R’201における環式基、アルキルカルボニル基、チエニルカルボニル基等が挙げられる。
【0109】
なかでも、R’201は、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基が好ましい。
【0110】
R201~R203、R206~R207、R211~R212は、相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成する場合、硫黄原子、酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子や、カルボニル基、-SO-、-SO2-、-SO3-、-COO-、-CONH-または-N(RN)-(該RNは炭素原子数1~5のアルキル基である。)等の官能基を介して結合してもよい。形成される環としては、式中のイオウ原子をその環骨格に含む1つの環が、イオウ原子を含めて、3~10員環であることが好ましく、5~7員環であることが特に好ましい。形成される環の具体例としては、例えばチオフェン環、チアゾール環、ベンゾチオフェン環、チアントレン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、9H-チオキサンテン環、チオキサントン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、テトラヒドロチオフェニウム環、テトラヒドロチオピラニウム環等が挙げられる。
【0111】
前記式(ca-3)中、R208~R209は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~5のアルキル基を表し、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基が好ましく、アルキル基となる場合、相互に結合して環を形成してもよい。
【0112】
前記式(ca-3)中、R210は、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、又は置換基を有していてもよい-SO2-含有環式基である。
R210におけるアリール基としては、炭素原子数6~20の無置換のアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
R210におけるアルキル基としては、鎖状又は環状のアルキル基であって、炭素原子数1~30のものが好ましい。
R210におけるアルケニル基としては、炭素原子数が2~10であることが好ましい。
【0113】
前記の式(ca-4)、式(ca-5)中、Y201は、それぞれ独立に、アリーレン基、アルキレン基又はアルケニレン基を表す。
Y201におけるアリーレン基は、R’201における芳香族炭化水素基として例示したアリール基から水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
Y201におけるアルキレン基、アルケニレン基は、R’201における鎖状のアルキル基、鎖状のアルケニル基として例示した基から水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
【0114】
前記の式(ca-4)、式(ca-5)中、xは、1または2である。
W201は、(x+1)価、すなわち2価または3価の連結基である。
W201における2価の連結基としては、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基が好ましく、上記式(A1)中のREPで例示した置換基を有していてもよい2価の炭化水素基と同様の基が好ましい。W201における2価の連結基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、環状であることが好ましい。なかでも、アリーレン基の両端に2個のカルボニル基が組み合わされた基、又はアリーレン基のみからなる基が好ましい。アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、フェニレン基が特に好ましい。
W201における3価の連結基としては、前記W201における2価の連結基から水素原子を1個除いた基、前記2価の連結基にさらに前記2価の連結基が結合した基などが挙げられる。W201における3価の連結基としては、アリーレン基に2個のカルボニル基が結合した基が好ましい。
【0115】
前記式(ca-1)で表される好適なカチオンとして具体的には、下記式(ca-1-1)~(ca-1-24)でそれぞれ表されるカチオンが挙げられる。
【0116】
【0117】
【化20】
[式中、R”
201は、水素原子又は置換基である。該置換基としては、前記R
201~R
207およびR
210~R
212が有していてもよい置換基として挙げたものと同様である。]
【0118】
また、前記式(ca-1)で表されるカチオンとしては、下記一般式(ca-1-25)~(ca-1-35)でそれぞれ表されるカチオンも好ましい。
【0119】
【0120】
【化22】
[式中、R’
211はアルキル基である。R
halは、水素原子又はハロゲン原子である。]
【0121】
また、前記式(ca-1)で表されるカチオンとしては、下記化学式(ca-1-36)~(ca-1-48)でそれぞれ表されるカチオンも好ましい。
【0122】
【0123】
前記式(ca-2)で表される好適なカチオンとして具体的には、ジフェニルヨードニウムカチオン、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムカチオン等が挙げられる。
【0124】
前記式(ca-3)で表される好適なカチオンとして具体的には、下記式(ca-3-1)~(ca-3-6)でそれぞれ表されるカチオンが挙げられる。
【0125】
【0126】
前記式(ca-4)で表される好適なカチオンとして具体的には、下記式(ca-4-1)~(ca-4-2)でそれぞれ表されるカチオンが挙げられる。
【0127】
【0128】
また、前記式(ca-5)で表されるカチオンとしては、下記一般式(ca-5-1)~(ca-5-3)でそれぞれ表されるカチオンも好ましい。
【0129】
【化26】
[式中、R’
212はアルキル基又は水素原子である。R’
211はアルキル基である。]
【0130】
上記の中でも、カチオン部[(Qq+)1/q]は、一般式(ca-1)で表されるカチオンが好ましく、式(ca-1-1)~(ca-1-48)でそれぞれ表されるカチオンがより好ましく、式(ca-1-25)で表されるカチオン、式(ca-1-29)で表されるカチオン、式(ca-1-35)で表されるカチオン、式(ca-1-47)で表されるカチオン、式(ca-1-48)で表されるカチオンがさらに好ましい。
【0131】
以下に、好適な(I1)成分の具体例を挙げる。
【0132】
【0133】
(I1)成分としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の感光性組成物中、(I1)成分の含有量は、(A)成分の全質量部を100質量部としたときに、0.1~5質量部であることが好ましく、0.2~3質量部であることがより好ましく、0.5~1質量部であることがさらに好ましい。
(I1)成分の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、充分な感度が得られて、パターンのリソグラフィー特性がより向上する。加えて、硬化膜の強度がより高められる。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、感度が適度に制御され、良好な形状のパターンが得られやすくなる。
【0134】
≪その他光カチオン重合開始剤≫
上記(I1)成分以外の光カチオン重合開始剤としては、例えば、下記一般式(I2)で表される化合物(以下「(I2)成分」という)、下記一般式(I3-1)又は(I3-2)で表される化合物(以下「(I3)成分」という)が挙げられる。
【0135】
一般式(I2)で表される化合物((I2)成分)について:
(I2)成分は、下記一般式(I2)で表される化合物である。
(I2)成分は、露光により比較的に強い酸を発生するため、(I)成分を含有する感光性組成物を用いてパターンを形成する場合に、充分な感度が得られて良好なパターンが形成される。
【0136】
【化28】
[式中、R
b05は、置換基を有していてもよいフッ素化アルキル基、又はフッ素原子である。複数のR
b05は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。qは1以上の整数であって、Q
q+は、q価の有機カチオンである。]
【0137】
・アニオン部
前記式(I2)中、Rb05は、置換基を有していてもよいフッ素化アルキル基、又はフッ素原子である。複数のRb05は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。
Rb05におけるフッ素化アルキル基は、炭素原子数が1~10であることが好ましく、1~8がより好ましく、1~5がさらに好ましい。具体的には、炭素原子数1~5のアルキル基において、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基が挙げられる。
中でも、Rb05としては、フッ素原子又は炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、フッ素原子又は炭素原子数1~5のパーフルオロアルキル基がより好ましく、フッ素原子、トリフルオロメチル基又はペンタフルオロエチル基がさらに好ましい。
【0138】
式(I2)で表される化合物のアニオン部は、下記一般式(b0-2a)で表されるものが好ましい。
【0139】
【化29】
[式中、R
bf05は、置換基を有していてもよいフッ素化アルキル基である。nb
1は、1~5の整数である。]
【0140】
式(b0-2a)中、Rbf05における置換基を有していてもよいフッ素化アルキル基としては、前記Rb05で挙げた、置換基を有していてもよいフッ素化アルキル基と同様である。
式(b0-2a)中、nb1は、1~4の整数が好ましく、2~4の整数がより好ましく、3が最も好ましい。
【0141】
・カチオン部
式(I2)中、qは1以上の整数であって、Qq+は、q価の有機カチオンである。
このQq+としては、上記式(I1)中のQq+と同様のものが挙げられ、その中でも、一般式(ca-1)で表されるカチオンが好ましく、式(ca-1-1)~(ca-1-48)でそれぞれ表されるカチオンがより好ましく、式(ca-1-25)で表されるカチオン、式(ca-1-29)で表されるカチオン、式(ca-1-35)で表されるカチオン、式(ca-1-47)で表されるカチオンがさらに好ましい。
【0142】
以下に、好適な(I2)成分の具体例を挙げる。
【0143】
【0144】
一般式(I3-1)又は(I3-2)で表される化合物((I3)成分)について:
(I3)成分は、下記一般式(I3-1)又は(I3-2)で表される化合物である。
【0145】
【化31】
[式中、R
b11~R
b12は、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい環式基、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又はハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基である。mは1以上の整数であって、M
m+は、それぞれ独立に、m価の有機カチオンである。]
【0146】
{(I3-1)成分}
・アニオン部
式(I3-1)中、Rb12は、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい環式基、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又はハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であって、上述したR’201の説明中の環式基、鎖状のアルキル基、鎖状のアルケニル基のうち、置換基を有しないもの又はハロゲン原子以外の置換基を有するものが挙げられる。
Rb12としては、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又はハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい脂肪族環式基であることが好ましい。
鎖状のアルキル基としては、炭素原子数1~10であることが好ましく、3~10であることがより好ましい。脂肪族環式基としては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等から1個以上の水素原子を除いた基(ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい);カンファー等から1個以上の水素原子を除いた基であることがより好ましい。
Rb12の炭化水素基は、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよく、該置換基としては、前記式(I3-2)のRb11における炭化水素基(芳香族炭化水素基、脂肪族環式基、鎖状のアルキル基)が有していてもよいハロゲン原子以外の置換基と同様のものが挙げられる。
ここでいう「ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい」とは、ハロゲン原子のみからなる置換基を有する場合を排除するのみではなく、ハロゲン原子を1つでも含む置換基を有する場合(例えば、置換基がフッ素化アルキル基である場合等)を排除するものである。
【0147】
以下に、(I3-1)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0148】
【0149】
・カチオン部
式(I3-1)中、Mm+は、m価の有機カチオンである。
Mm+の有機カチオンとしては、上記一般式(ca-1)~(ca-5)でそれぞれ表されるカチオンと同様のものが好適に挙げられ、これらの中でも、上記一般式(ca-1)で表されるカチオンがより好ましい。この中でも、上記一般式(ca-1)中のR201、R202、R203のうちの少なくとも1つが、置換基を有していてもよい炭素原子数16以上の有機基(アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基またはアルケニル基)であるスルホニウムカチオンが、解像性やラフネス特性が向上することから特に好ましい。
前記の有機基が有していてもよい置換基としては、上記と同様であり、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、カルボニル基、シアノ基、アミノ基、オキソ基(=O)、アリール基、上記式(ca-r-1)~(ca-r-10)でそれぞれ表される基が挙げられる。
前記の有機基(アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基またはアルケニル基)における炭素原子数は、好ましくは16~25、より好ましくは16~20であり、特に好ましくは16~18であり、かかるMm+の有機カチオンとしては、例えば、上記式(ca-1-25)、(ca-1-26)、(ca-1-28)~(ca-1-36)、(ca-1-38)、(ca-1-46)、(ca-1-47)でそれぞれ表されるカチオンが好適に挙げられ、その中でも、上記式(ca-1-29)で表されるカチオンが特に好ましい。
【0150】
{(I3-2)成分}
・アニオン部
式(I3-2)中、Rb11は、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい環式基、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又はハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であって、上述したR’201の説明中の環式基、鎖状のアルキル基、鎖状のアルケニル基のうち、置換基を有しないもの又はハロゲン原子以外の置換基を有するものが挙げられる。
【0151】
これらのなかでも、Rb11としては、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい脂肪族環式基、又はハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基が好ましい。これらの基が有していてもよい置換基としては、水酸基、オキソ基、アルキル基、アリール基、ラクトン含有環式基、エーテル結合、エステル結合、又はこれらの組合せが挙げられる。
エーテル結合やエステル結合を置換基として含む場合、アルキレン基を介していてもよく、この場合の置換基としては、下記一般式(y-al-1)~(y-al-7)でそれぞれ表される連結基が好ましい。
なお、下記一般式(y-al-1)~(y-al-7)において、上記式(I3-2)中のRb11と結合するのが、下記一般式(y-al-1)~(y-al-7)中のV’101である。
【0152】
【化33】
[式中、V’
101は、単結合または炭素原子数1~5のアルキレン基である。V’
102は、炭素原子数1~30の2価の飽和炭化水素基である。]
【0153】
V’102における2価の飽和炭化水素基は、炭素原子数1~30のアルキレン基であることが好ましく、炭素原子数1~10のアルキレン基であることがより好ましく、炭素原子数1~5のアルキレン基であることがさらに好ましい。
【0154】
V’101およびV’102におけるアルキレン基としては、直鎖状のアルキレン基でもよく分岐鎖状のアルキレン基でもよく、直鎖状のアルキレン基が好ましい。
V’101およびV’102におけるアルキレン基として、具体的には、メチレン基[-CH2-];-CH(CH3)-、-CH(CH2CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CH3)(CH2CH3)-、-C(CH3)(CH2CH2CH3)-、-C(CH2CH3)2-等のアルキルメチレン基;エチレン基[-CH2CH2-];-CH(CH3)CH2-、-CH(CH3)CH(CH3)-、-C(CH3)2CH2-、-CH(CH2CH3)CH2-等のアルキルエチレン基;トリメチレン基(n-プロピレン基)[-CH2CH2CH2-];-CH(CH3)CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2-等のアルキルトリメチレン基;テトラメチレン基[-CH2CH2CH2CH2-];-CH(CH3)CH2CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2CH2-等のアルキルテトラメチレン基;ペンタメチレン基[-CH2CH2CH2CH2CH2-]等が挙げられる。
また、V’101又はV’102における前記アルキレン基における一部のメチレン基が、炭素原子数5~10の2価の脂肪族環式基で置換されていてもよい。当該脂肪族環式基は、R’201の環状の脂肪族炭化水素基(単環式の脂環式炭化水素基、多環式の脂環式炭化水素基)から水素原子をさらに1つ除いた2価の基が好ましく、シクロへキシレン基、1,5-アダマンチレン基又は2,6-アダマンチレン基がより好ましい。
【0155】
前記芳香族炭化水素基としては、フェニル基もしくはナフチル基がより好ましい。
前記脂肪族環式基としては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基であることがより好ましい。
前記鎖状のアルキル基としては、炭素原子数が1~10であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖状のアルキル基;1-メチルエチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基等の分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
【0156】
Rb11としては、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい環式基が好ましい。
以下に、(I3-2)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0157】
【0158】
・カチオン部
式(I3-2)中、Mm+は、m価の有機カチオンであり、前記式(I3-1)中のMm+と同様である。
【0159】
また、(I)成分は、樹脂膜の高弾性化、及び、残渣無く微細構造を形成しやすい点から、露光によりpKa(酸解離定数)が-5以下の酸を発生するカチオン重合開始剤であることが好ましい。より好ましくはpKaが-6以下、さらに好ましくはpKaが-8以下の酸を発生するカチオン重合開始剤を用いることにより、露光に対する高い感度を得ることが可能となる。(I)成分が発生する酸のpKaの下限は、好ましくは-15以上である。かかる好適なpKaの酸を発生するカチオン重合開始剤を用いることで、高感度化が図られやすくなる。
ここで「pKa(酸解離定数)」とは、対象物質の酸強度を示す指標として一般的に用いられているものをいう。なお、本明細書におけるpKaは、25℃の温度条件における値である。また、pKa値は、公知の手法により測定して求めることができる。また、「ACD/Labs」(商品名、Advanced Chemistry Development社製)等の公知のソフトウェアを用いた計算値を用いることもできる。
【0160】
以下に、好適な(I3)成分の具体例を挙げる。
【0161】
【0162】
本実施形態の感光性組成物において、(I)成分は、(I1)成分を含むものが用いられる。
かかる(I)成分としては、(I1)成分のみからなるもの、(I1)成分と(I3)成分とを含むものが好適に挙げられる。
【0163】
本実施形態の感光性組成物中、(I)成分の総含有量は、(A)成分の全質量部を100質量部としたときに、0.1~5質量部であることが好ましく、0.2~3質量部であることがより好ましく、0.5~1質量部であることがさらに好ましい。
(I)成分の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、充分な感度が得られて、パターンのリソグラフィー特性がより向上する。加えて、硬化膜の強度がより高められる。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、感度が適度に制御され、良好な形状のパターンが得られやすくなる。
【0164】
<一般式(ahs1)で表される構成単位を有する樹脂>
本実施形態の感光性組成物において、(P)成分は、一般式(ahs1)で表される構成単位(以下「構成単位(u1)」ともいう)を有する樹脂である。
(P)成分を含有することで、パターン形成において、アンダーカットを生じにくくなる。
【0165】
構成単位(u1)について:
構成単位(u1)は、下記一般式(ahs1)で表される構成単位である。
【0166】
【化36】
[式中、Rは、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基である。Ya
x1は、単結合又は2価の連結基である。Wa
x1は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。n
ax1は、1以上の整数である。]
【0167】
前記式(ahs1)中、Rにおける炭素原子数1~5のアルキル基は、炭素原子数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
Rにおける炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基は、前記炭素原子数1~5のアルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基である。該ハロゲン原子としては、特にフッ素原子が好ましい。
Rとしては、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基がより好ましく、水素原子又はメチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0168】
前記式(ahs1)中、Yax1は、単結合又は2価の連結基である。
前記の化学式中、Yax1における2価の連結基としては、特に限定されないが、置換基を有してもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が好適なものとして挙げられる。
【0169】
・置換基を有してもよい2価の炭化水素基:
Yax1が置換基を有してもよい2価の炭化水素基である場合、該炭化水素基は、脂肪族炭化水素基でもよいし、芳香族炭化水素基でもよい。
【0170】
・・Yax1における脂肪族炭化水素基
脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。該脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
前記脂肪族炭化水素基としては、直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、又は構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
【0171】
・・・直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基
該直鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が1~10であることが好ましく、炭素原子数1~6がより好ましく、炭素原子数1~4がさらに好ましく、炭素原子数1~3が最も好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[-CH2-]、エチレン基[-(CH2)2-]、トリメチレン基[-(CH2)3-]、テトラメチレン基[-(CH2)4-]、ペンタメチレン基[-(CH2)5-]等が挙げられる。
該分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が2~10であることが好ましく、炭素原子数3~6がより好ましく、炭素原子数3又は4がさらに好ましく、炭素原子数3が最も好ましい。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、-CH(CH3)-、-CH(CH2CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CH3)(CH2CH3)-、-C(CH3)(CH2CH2CH3)-、-C(CH2CH3)2-等のアルキルメチレン基;-CH(CH3)CH2-、-CH(CH3)CH(CH3)-、-C(CH3)2CH2-、-CH(CH2CH3)CH2-、-C(CH2CH3)2-CH2-等のアルキルエチレン基;-CH(CH3)CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2-等のアルキルトリメチレン基;-CH(CH3)CH2CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2CH2-等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0172】
前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有してもよく、有していなくてもよい。該置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基、カルボニル基等が挙げられる。
【0173】
・・・構造中に環を含む脂肪族炭化水素基
該構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、環構造中にヘテロ原子を含む置換基を含んでもよい環状の脂肪族炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、前記環状の脂肪族炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、前記環状の脂肪族炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては前記と同様のものが挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が3~20であることが好ましく、炭素原子数3~12であることがより好ましい。
環状の脂肪族炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0174】
環状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有してもよいし、有していなくてもよい。該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基等が挙げられる。
前記置換基としてのアルキル基としては、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基であることがより好ましい。
前記置換基としてのアルコキシ基としては、炭素原子数1~5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基がさらに好ましい。
前記置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
前記置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、前記アルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、その環構造を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子を含む置換基で置換されてもよい。該ヘテロ原子を含む置換基としては、-O-、-C(=O)-O-、-S-、-S(=O)2-、-S(=O)2-O-が好ましい。
【0175】
・・Yax1における芳香族炭化水素基
該芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。
この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でもよいし、多環式でもよい。芳香環の炭素原子数は5~30であることが好ましく、炭素原子数5~20がより好ましく、炭素原子数6~15がさらに好ましく、炭素原子数6~12が特に好ましい。ただし、該炭素原子数には、置換基における炭素原子数を含まないものとする。
芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を2つ除いた基(アリーレン基またはヘテロアリーレン基);2以上の芳香環を含む芳香族化合物(例えばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を2つ除いた基;前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基)の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基におけるアリール基から水素原子をさらに1つ除いた基)等が挙げられる。前記アリール基またはヘテロアリール基に結合するアルキレン基の炭素原子数は、1~4であることが好ましく、炭素原子数1~2であることがより好ましく、炭素原子数1であることが特に好ましい。
【0176】
前記芳香族炭化水素基は、当該芳香族炭化水素基が有する水素原子が置換基で置換されていてもよい。例えば当該芳香族炭化水素基中の芳香環に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。該置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基等が挙げられる。
前記置換基としてのアルキル基としては、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基であることがより好ましい。
前記置換基としてのアルコキシ基、ハロゲン原子およびハロゲン化アルキル基としては、前記環状の脂肪族炭化水素基が有する水素原子を置換する置換基として例示したものが挙げられる。
【0177】
・ヘテロ原子を含む2価の連結基:
Yax1がヘテロ原子を含む2価の連結基である場合、該連結基として好ましいものとしては、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-NH-、-NH-C(=NH)-(Hはアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい。)、-S-、-S(=O)2-、-S(=O)2-O-、一般式-Y21-O-Y22-、-Y21-O-、-Y21-C(=O)-O-、-C(=O)-O-Y21-、-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-、-Y21-O-C(=O)-Y22-または-Y21-S(=O)2-O-Y22-で表される基[式中、Y21およびY22はそれぞれ独立して置換基を有してもよい2価の炭化水素基であり、Oは酸素原子であり、m”は0~3の整数である。]等が挙げられる。
前記へテロ原子を含む2価の連結基が-C(=O)-NH-、-C(=O)-NH-C(=O)-、-NH-、-NH-C(=NH)-の場合、そのHはアルキル基、アシル等の置換基で置換されていてもよい。該置換基(アルキル基、アシル基等)は、炭素原子数が1~10であることが好ましく、1~8であることがさらに好ましく、1~5であることが特に好ましい。
一般式-Y21-O-Y22-、-Y21-O-、-Y21-C(=O)-O-、-C(=O)-O-Y21-、-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-、-Y21-O-C(=O)-Y22-または-Y21-S(=O)2-O-Y22-中、Y21およびY22は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい2価の炭化水素基である。該2価の炭化水素基としては、前記Yax1における2価の連結基としての説明で挙げた(置換基を有してもよい2価の炭化水素基)と同様のものが挙げられる。
Y21としては、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基またはエチレン基が特に好ましい。
Y22としては、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチレン基、エチレン基またはアルキルメチレン基がより好ましい。該アルキルメチレン基におけるアルキル基は、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~3の直鎖状のアルキル基がより好ましく、メチル基が最も好ましい。
式-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-で表される基において、m”は0~3の整数であり、0~2の整数であることが好ましく、0または1がより好ましく、1が特に好ましい。つまり、式-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-で表される基としては、式-Y21-C(=O)-O-Y22-で表される基が特に好ましい。なかでも、式-(CH2)a’-C(=O)-O-(CH2)b’-で表される基が好ましい。該式中、a’は、1~10の整数であり、1~8の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が最も好ましい。b’は、1~10の整数であり、1~8の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が最も好ましい。
【0178】
上記の中でも、Yax1としては、単結合、エステル結合[-C(=O)-O-、-O-C(=O)-]、エーテル結合(-O-)、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、又はこれらの組合せであることが好ましく、単結合、エステル結合[-C(=O)-O-、-O-C(=O)-]がより好ましい。
【0179】
前記式(ahs1)中、Wax1は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。
Wax1における芳香族炭化水素基としては、置換基を有してもよい芳香環から(nax1+1)個の水素原子を除いた基が挙げられる。ここでの芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素原子数は5~30であることが好ましく、炭素原子数5~20がより好ましく、炭素原子数6~15がさらに好ましく、炭素原子数6~12が特に好ましい。該芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
また、Wax1における芳香族炭化水素基としては、2以上の置換基を有してもよい芳香環を含む芳香族化合物(例えばビフェニル、フルオレン等)から(nax1+1)個の水素原子を除いた基も挙げられる。
上記の中でも、Wax1としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセンまたはビフェニルから(nax1+1)個の水素原子を除いた基が好ましく、ベンゼン又はナフタレンから(nax1+1)個の水素原子を除いた基がより好ましく、ベンゼンから(nax1+1)個の水素原子を除いた基がさらに好ましい。
【0180】
Wax1における芳香族炭化水素基は、置換基を有してもよく、有していなくてもよい。前記置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基等が挙げられる。前記置換基としてのアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基としては、Yax1における環状の脂肪族炭化水素基の置換基として挙げたものと同様のものが挙げられる。前記置換基は、炭素原子数1~5の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~3の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、エチル基又はメチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。Wax1における芳香族炭化水素基は、置換基を有していないことが好ましい。
【0181】
前記式(ahs1)中、nax1は、1以上の整数であり、1~10の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましく、1、2又は3がさらに好ましく、1又は2が特に好ましい。
【0182】
以下に、前記式(ahs1)で表される構成単位(u1)の具体例を示す。
以下の各式中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。
【0183】
【0184】
【0185】
【0186】
【0187】
(P)成分が有する構成単位(u1)は、1種でもよく2種以上でもよい。
(P)成分は、一般式(ahs1)で表される構成単位(u1)以外の構成単位を有していてもよい。
【0188】
(P)成分としては、1種又は2種以上の構成単位(u1)の繰り返し構造からなる重合体でもよいし、構成単位(u1)とこれ以外の構成単位との繰り返し構造からなる共重合体でもよい。これらの中でも、(P)成分は、1種又は2種以上の構成単位(u1)の繰り返し構造からなる重合体がより好ましく、1種の構成単位(u1)の繰り返し構造からなる単独重合体(ホモポリマー)がさらに好ましい。
【0189】
(P)成分が構成単位(u1)とこれ以外の構成単位との繰り返し構造からなる共重合体である場合、(P)成分中の構成単位(u1)の割合は、(P)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、50モル%以上が好ましく、50~95モル%がより好ましく、60~90モル%がさらに好ましい。
構成単位(u1)の割合を、前記の好ましい範囲の下限値以上とすることにより、パターン形成において、アンダーカットを生じにくくなる効果がより得られやすくなる。
【0190】
(P)成分としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の感光性組成物中、(P)成分の含有量は、(A)成分の全質量部を100質量部としたときに、1~20質量部であることが好ましく、3~15質量部であることがより好ましく、5~12質量部であることがさらに好ましい。
また、本実施形態の感光性組成物中、(P)成分の含有量は、(A)成分と(P)成分との合計を100質量部としたときに、0.5~10質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましく、2~10質量部であることがさらに好ましい。
(P)成分の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、パターン形成において、アンダーカットを生じにくくなる効果がより得られやすくなる。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、現像液に対する溶解性が維持されて、良好な形状のパターンが得られやすくなる。
【0191】
<その他成分>
本実施形態の感光性組成物は、上述した(A)成分、(I)成分及び(P)成分以外に、必要に応じてその他成分を含有してもよい。
実施形態の感光性組成物には、所望により、混和性のある添加剤、例えば金属酸化物(M)、シランカップリング剤、増感剤成分、溶剤、膜の性能を改良するための付加的樹脂、溶解抑制剤、塩基性化合物、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤などを適宜、添加含有させることができる。
【0192】
≪金属酸化物(M)≫
本実施形態の感光性組成物は、(A)成分、(I)成分及び(P)成分に加えて、強度が高められた硬化膜が得られやすいことから、さらに、金属酸化物(M)(以下「(M)成分」ともいう)を含有してもよい。また、(M)成分を併有することで、良好な形状で高解像のパターンを形成し得る。
(M)成分としては、例えば、ケイ素(金属ケイ素)、チタン、ジルコニウム、ハフニウム等の金属の酸化物が挙げられる。これらの中でも、ケイ素の酸化物が好ましく、この中でもシリカを用いることが特に好ましい。
【0193】
また、(M)成分の形状は、粒子状であることが好ましい。
かかる粒子状の(M)成分としては、体積平均粒子径が5~40nmの粒子群からなるものが好ましく、体積平均粒子径が5~30nmの粒子群からなるものがより好ましく、体積平均粒子径が10~20nmの粒子群からなるものがさらに好ましい。
(M)成分の体積平均粒子径が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、硬化膜の強度が高められやすくなる。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、パターンの形成において、残渣が生じにくくなり、より高解像のパターンが形成されやすくなる。加えて、樹脂膜の透明性が高められる。
(M)成分の粒子径は、露光光源に応じて適宜選択すればよい。一般的に、光の波長に対して、1/10以下の粒子径を持つ粒子は、光散乱の影響はほぼ考えなくてよいとされている。このため、例えばi線(365nm)でのフォトリソグラフィーにより微細構造を形成する場合、(M)成分としては、1次粒子径(体積平均値)10~20nmの粒子群(特に好ましくはシリカ粒子群)を用いることが好ましい。
【0194】
(M)成分としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(M)成分を含む場合の含有量は、(A)成分100質量部に対して、5~50質量部であることが好ましく、10~40質量部であることがより好ましい。
(M)成分の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、硬化膜の強度がより高められる。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、樹脂膜の透明性がより高められる。
【0195】
≪シランカップリング剤≫
本実施形態の感光性組成物は、基板との接着性を向上させるため、さらに接着助剤を含有していてもよい。この接着助剤としては、シランカップリング剤が好ましい。
シランカップリング剤としては、例えばカルボキシ基、メタクリロイル基、イソシアナート基、エポキシ基等の反応性置換基を有するシランカップリング剤が挙げられる。具体例としては、トリメトキシシリル安息香酸、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
シランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シランカップリング剤を含む場合の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましく、0.1~3質量部であることがさらに好ましい。
シランカップリング剤の含有量が、前記の好ましい範囲であると、硬化膜の強度がより高められる。加えて、硬化膜と基板との接着性がより強められる。
【0196】
≪増感剤成分≫
本実施形態の感光性組成物は、さらに、増感剤成分を含有してもよい。
増感剤成分としては、露光によるエネルギーを吸収して、そのエネルギーを他の物質に伝達し得るものであれば特に限定されるものではない。
増感剤成分として具体的には、ベンゾフェノン、p,p’-テトラメチルジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系光増感剤、カルバゾール系光増感剤、アセトフェン系光増感剤、1,5-ジヒドロキシナフタレン等のナフタレン系光増感剤、フェノール系光増感剤、9-エトキシアントラセン等のアントラセン系光増感剤、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン、フェノチアジン、アントロン等の公知の光増感剤を用いることができる。
増感剤成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
増感剤成分を含む場合の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1~15質量部であることが好ましく、0.3~10質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることがさらに好ましい。
増感剤成分の含有量が、前記の好ましい範囲であると、感度及び解像性がより高められる。
【0197】
≪溶剤≫
本実施形態の感光性組成物は、さらに、溶剤(以下「(S)成分」ということがある)を含有してもよい。
(S)成分としては、例えば、γ-ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、メチル-n-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類;2-メトキシブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、4-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、またはジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類または前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテルまたはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体[これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい];ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。
【0198】
(S)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
【0199】
(S)成分を含む場合の使用量は、特に限定されず、感光性組成物を基板等に液垂れが無く塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定される。
たとえば、固形分濃度が50質量%以上となるように(S)成分を使用することができ、固形分濃度が60質量%以上となるように(S)成分を使用することができる。
また、(S)成分を実質的に含まない態様(すなわち、固形分濃度が100質量%である態様)も採用できる。
【0200】
上述の「膜の性能を改良するための付加的樹脂」としては、下記化学式(Add-1)で表される化合物等が挙げられる。
下記化学式(Add-1)で表される化合物として使用可能な市販品は、例えば、TrisP-PA(本州化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0201】
【0202】
以上説明した本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は、ノボラック型エポキシ樹脂を含むエポキシ基含有化合物(A)と、オニウムボレート塩を含む光カチオン重合開始剤(I)と、一般式(ahs1)で表される構成単位を有する樹脂とを含有するものである。
従来、ノボラック型エポキシ樹脂と光カチオン重合開始剤とを含有するネガ型感光性樹脂組成物は、解像性や機械物性に優れているが、光カチオン重合開始剤としてスルホニウムボラート塩を用いた場合、中空構造開口部のレジスト硬化膜と基板との間にアンダーカットが生じることがある。アンダーカットは、構造形成後のメッキ不良などにつながることから、アンダーカットが生じないパターンを形成できるネガ型感光性エポキシ樹脂組成物が必要とされる。
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物においては、前記エポキシ基含有化合物(A)及び前記光カチオン重合開始剤(I)に、一般式(ahs1)で表される構成単位を有する樹脂をさらに加えることで、パターン形成において、アンダーカットを生じにくいパターンを形成することができる。
【0203】
かかる実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は、電子部品における中空封止構造の作製用の材料として有用なものである。
【0204】
また、かかる実施形態のネガ型感光性樹脂組成物によれば、中空封止構造の作製において、スペーサに必要とされる厚さの膜を形成でき、かつ、良好な形状で残渣等がなく高解像度のパターニングが可能である。
【0205】
さらに、本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は、厚膜で膜を形成した場合にも同様に前記パターニングが可能であり、良好な特性を得られるものである。これより、本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は、感光性レジストフィルム用の材料としても有用なものである。
【0206】
(感光性レジストフィルム)
本実施形態の感光性レジストフィルムは、基材フィルム上に、上述した実施形態の感光性組成物を用いて形成された感光性樹脂膜と、カバーフィルムとがこの順に積層したものである。
【0207】
本実施形態の感光性レジストフィルムは、例えば、基材フィルム上に、上述した実施形態の感光性組成物を塗布し、乾燥させて感光性樹脂膜を形成した後、その感光性樹脂膜上にカバーフィルムを積層することにより製造できる。
基材フィルム上への感光性組成物の塗布は、ブレードコーター、リップコーター、コンマコーター、フィルムコーター等による適宜の方法を用いて行えばよい。
感光性樹脂膜の厚さは、100μm以下が好ましく、より好ましくは5~50μmである。
【0208】
基材フィルムは、公知のものを使用でき、例えば熱可塑性樹脂フィルム等が用いられる。この熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステルが挙げられる。基材フィルムの厚さは、好ましくは2~150μmである。
【0209】
カバーフィルムには、公知のものを使用でき、例えばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が用いられる。カバーフィルムとしては、感光性樹脂膜との接着力が、基材フィルムよりも小さいフィルムが好ましい。
カバーフィルムの厚さは、好ましくは2~150μm、より好ましくは2~100μm、さらに好ましくは5~50μmである。
基材フィルムとカバーフィルムとは、同一のフィルム材料であってもよいし、異なるフィルム材料を用いてもよい。
【0210】
(パターン形成方法)
本実施形態のパターン形成方法は、上述した実施形態のネガ型感光性樹脂組成物を用いて、支持体上に感光性樹脂膜を形成する工程(以下「膜形成工程」という)と、前記感光性樹脂膜を露光する工程(以下「露光工程」という)と、前記露光後の感光性樹脂膜を、有機溶剤を含有する現像液で現像して、ネガ型パターンを形成する工程(以下「現像工程」という)と、を有する。
本実施形態のパターン形成方法は、例えば以下のようにして行うことができる。
【0211】
[膜形成工程]
まず、支持体上に、上述した実施形態の感光性組成物を、スピンコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法等の公知の方法で塗布し、ベーク(ポストアプライベーク(PAB))処理を、例えば50~150℃の温度条件にて2~60分間施し、感光性樹脂膜を形成する。
なお、当該膜形成工程は、前述の感光性レジストフィルムのうち、感光性樹脂膜を支持体上に配することでも行うことが可能である。
【0212】
支持体としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等が挙げられる。より具体的には、シリコン、窒化シリコン、チタン、タンタル、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、パラジウム、チタンタングステン、銅、クロム、鉄、アルミニウムなどの金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。
配線パターンの材料としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、金等が使用可能である。
【0213】
本実施形態のパターン形成方法は、例えば、通信端末に搭載されるSAWデバイス用途のタンタル酸リチウム(LiTaO3)基板、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)基板に有用な方法である。
【0214】
感光性組成物により形成される感光性樹脂膜の膜厚は、特に限定されるものではないが、10~100μm程度が好ましい。
【0215】
[露光工程]
次に、形成された感光性樹脂膜に対し、公知の露光装置を用いて、所定のパターンが形成されたマスク(マスクパターン)を介した露光、又はマスクパターンを介さない電子線の直接照射による描画等による選択的露光を行う。
前記選択的露光を行った後、必要に応じてベーク(ポストエクスポージャーベーク(PEB))処理を、たとえば80~150℃の温度条件にて40~1200秒間、好ましくは40~1000秒間、より好ましくは60~900秒間施す。
【0216】
露光に用いる波長は特に限定されず、放射線、例えば波長が300~500nmの紫外線、i線(波長365nm)又は可視光線を選択的に照射(露光)する。これらの放射線の線源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、アルゴンガスレーザーなどを用いることができる。
ここで放射線とは、紫外線、可視光線、遠紫外線、X線、電子線などを意味する。放射線照射量は、組成物中の各成分の種類、配合量、塗膜の膜厚などによって異なるが、例えば超高圧水銀灯使用の場合、100~2000mJ/cm2である。
【0217】
感光性樹脂膜の露光方法は、空気や窒素等の不活性ガス中で行う通常の露光(ドライ露光)であってもよく、液浸露光(Liquid Immersion Lithography)であってもよい。
【0218】
露光工程後の感光性樹脂膜は、透明性が高く、例えばi線(波長365nm)を照射した際のヘーズ値が、好ましくは3%以下、より好ましくは1.0~2.7%である。
このように、上述した実施形態の感光性組成物を用いて形成された感光性樹脂膜は、透明性が高い。このため、パターン形成における露光の際、光透過性が高まり、良好なリソグラフィー特性のネガ型パターンが得られやすい。
かかる露光工程後の感光性樹脂膜のヘーズ値は、JIS K 7136(2000)に準拠した方法を用いて測定される。
【0219】
[現像工程]
次に、前記露光後の感光性樹脂膜を、有機溶剤を含有する現像液(有機系現像液)で現像する。現像の後、好ましくはリンス処理を行う。必要に応じてベーク処理(ポストベーク)を行ってもよい。
【0220】
有機系現像液が含有する有機溶剤としては、(A)成分(露光前の(A)成分)を溶解し得るものであればよく、公知の有機溶剤の中から適宜選択できる。具体的には、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、ニトリル系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
【0221】
ケトン系溶剤としては、例えば、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、アセトン、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、メチルアミルケトン(2-ヘプタノン)等が挙げられる。これらの中でも、ケトン系溶剤としては、メチルアミルケトン(2-ヘプタノン)が好ましい。
【0222】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2-メトキシブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、4-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-エチル-3-メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2-エトキシブチルアセテート、4-エトキシブチルアセテート、4-プロポキシブチルアセテート、2-メトキシペンチルアセテート、3-メトキシペンチルアセテート、4-メトキシペンチルアセテート、2-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、4-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、メチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-エトキシプロピオネート、プロピル-3-メトキシプロピオネート等が挙げられる。これらの中でも、エステル系溶剤としては、酢酸ブチル又はPGMEAが好ましい。
【0223】
ニトリル系溶剤としては、例えば、アセトニトリル、プロピオ二トリル、バレロニトリル、ブチロ二トリル等が挙げられる。
【0224】
有機系現像液には、必要に応じて公知の添加剤を配合できる。該添加剤としては、例えば界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えばイオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。
界面活性剤としては、非イオン性の界面活性剤が好ましく、非イオン性のフッ素系界面活性剤、又は非イオン性のシリコン系界面活性剤がより好ましい。
界面活性剤を配合する場合、その配合量は、有機系現像液の全量に対して、通常0.001~5質量%であり、0.005~2質量%が好ましく、0.01~0.5質量%がより好ましい。
【0225】
現像処理は、公知の現像方法により実施することが可能であり、例えば、現像液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法(パドル法)、支持体表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している支持体上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出し続ける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0226】
リンス液を用いたリンス処理(洗浄処理)は、公知のリンス方法により実施できる。該リンス処理の方法としては、たとえば一定速度で回転している支持体上にリンス液を塗出し続ける方法(回転塗布法)、リンス液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。
リンス処理は、有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。
【0227】
上述した膜形成工程、露光工程及び現像工程により、パターンを形成できる。
【0228】
上述した実施形態のパターン形成方法においては、上述した一態様であるネガ型感光性樹脂組成物が用いられているため、パターン形成において、アンダーカットの発生が抑制されたパターンを形成することができる。
【0229】
(硬化膜)
本実施形態の硬化膜は、上述した実施形態のネガ型感光性樹脂組成物が硬化したものである。
【0230】
(硬化膜の製造方法)
本実施形態の硬化膜の製造方法は、上述した実施形態のネガ型感光性樹脂組成物を用いて、支持体上に感光性樹脂膜を形成する工程(i)と、前記感光性樹脂膜を硬化させて硬化膜を得る工程(ii)と、を有する。
工程(i)の操作は、上述した[膜形成工程]と同様にして行うことができる。ベーク処理は、例えば温度80~150℃の温度条件にて40~600秒間の条件で行うことができる。
工程(ii)での硬化処理は、例えば温度100~250℃、0.5~2時間の条件で行うことができる。
【0231】
実施形態の硬化膜の製造方法は、工程(i)及び工程(ii)以外に、その他工程を有してもよい。例えば、工程(i)と工程(ii)との間に、上述した[露光工程]を有してもよく、工程(i)で形成された感光性樹脂膜に対して選択的露光を行い、必要に応じてベーク(PEB)処理が施された感光性樹脂膜(プレ硬化膜)を硬化させて、硬化膜を得ることもできる。
上述した実施形態の硬化膜の製造方法によれば、アンダーカットの発生が抑制され、さらに、マスクパターンを忠実に再現した硬化膜が容易に製造できる。
【実施例】
【0232】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。
【0233】
<ネガ型感光性樹脂組成物の調製>
(比較例1、実施例1~7、参考例1)
表1及び表2に示す各成分を、3-メトキシブチルアセテートに混合して溶解し、PTFEフィルター(孔径1μm、PALL社製)を用いて濾過を行い、各例のネガ型感光性樹脂組成物(固形分60~65質量%の溶液)をそれぞれ調製した。
【0234】
【0235】
【0236】
表1及び表2中、各略号はそれぞれ以下の意味を有する。[ ]内の数値は、各成分の配合量(質量部;固形分換算)である。
(A1)-1:下記化学式(A1-1)で表されるノボラック型エポキシ樹脂。商品名「jER-157S70」、三菱ケミカル株式会社製。
【0237】
【0238】
(A2)-1:下記化学式(A2-1)で表される固形ビスフェノール型エポキシ樹脂。商品名「EPICLON1055」、DIC株式会社製。
(A3)-1:下記化学式(A3-1)で表されるエポキシ基含有化合物。商品名「TEPIC-VL」、日産化学株式会社製。
【0239】
【0240】
(P)-1:下記化学式(P-1)で表される構成単位の繰り返し構造からなるポリヒドロキシスチレン。商品名「VP-8000」、日本曹達株式会社製。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は8000、分子量分散度(Mw/Mn)は1.1。
【0241】
【0242】
(I1)-1:下記化学式(I1-5)で表される光カチオン重合開始剤。
【0243】
【0244】
(I2)-1:下記化学式(I2-1-2)で表される光カチオン重合開始剤。
(I3)-1:下記化学式(I3-1-1)で表される光カチオン重合開始剤。
【0245】
【0246】
(SC)-1:下記化学式(SC-1)で表される化合物。
【0247】
【0248】
<パターン形成>
膜形成工程:
シリコン基板上に、各例のネガ型感光性樹脂組成物をそれぞれ、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で、温度115℃で5分間のプレベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、膜厚20μmの感光性樹脂膜を形成した。
【0249】
露光工程:
次に、前記感光性樹脂膜に対し、ギャップを30μmとしてghi線を照射した。
その後、90℃のホットプレート上で、5分間の露光後加熱を行った。
【0250】
現像工程:
次に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を用いて、120秒間の現像を行い、ネガ型パターンの形成を試みた。その結果、直径60μmのホールパターンが形成された。
【0251】
[最適露光量(Eop)の評価]
上記<パターン形成>によってターゲットサイズのホールパターンが形成される最適露光量Eop(mJ/cm2)を求めた。これを「Eop(mJ/cm2)」として表3及び表4に示した。
【0252】
[アンダーカットの評価]
上記<パターン形成>で形成したホールパターンの断面形状を、走査型電子顕微鏡(製品名:S4500;日立製作所社製)で観察し、アンダーカット(シリコン基板に接するネガ型パターン像(残膜)の周縁部の切れ込み)の発生状態を、
図1に示す評価基準に基づいて評価した。その結果を表3及び表4に示した。
【0253】
図1に示した表は、アンダーカットの評価基準を示している。
表中の写真は、上記<パターン形成>で形成したホールパターンの断面を、前記走査型電子顕微鏡で観察したものである。符号10はシリコン基板、符号20は残膜部、符号30はホール部である。
丸で囲まれる領域、すなわち、シリコン基板10に接するネガ型パターン像(残膜)の周縁部、の切れ込み状態に応じて、アンダーカットの評価をC、B、Aに設定している。
この評価がBであれば、アンダーカットの発生が抑えられていることを意味する。
この評価がAであれば、アンダーカットの発生がより充分に抑えられていることを意味する。
【0254】
【0255】
表3に示す結果から、本発明を適用した実施例1~2のネガ型感光性樹脂組成物を用いて形成したパターンでは、アンダーカットの発生が抑えられていること、が確認できる。
【0256】
光カチオン重合開始剤としてオニウムボレート塩を含有する、比較例1のネガ型感光性樹脂組成物を用いて形成したパターンでは、アンダーカットが発生した。
一方、光カチオン重合開始剤として、アニオン部がリン系アニオンであるオニウム塩を含有する、参考例1のネガ型感光性樹脂組成物を用いて形成したパターンでは、アンダーカットの発生が抑えられていた。
これらの結果から、パターン形成の際に生じるアンダーカットは、光カチオン重合開始剤としてオニウムボレート塩を用いる場合に特有であること、が確認できる。
【0257】
【0258】
表4に示す結果から、(A1)成分及び(A2)成分に加えて、さらに(A3)成分を含有する、実施例3~7のネガ型感光性樹脂組成物を用いて形成したパターンでは、アンダーカットの発生がより充分に抑えられていること、が確認できる。
【符号の説明】
【0259】
10 シリコン基板、20 残膜部、30 ホール部