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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】低温液化ガス汲み出し装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 9/00 20060101AFI20241213BHJP
   F17C 13/00 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
F17C9/00 A
F17C13/00 302Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021131024
(22)【出願日】2021-08-11
(65)【公開番号】P2023025729
(43)【公開日】2023-02-24
【審査請求日】2023-01-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】青木 淳
(72)【発明者】
【氏名】坂本 克矢
【審査官】永石 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-025591(JP,A)
【文献】特開2013-129908(JP,A)
【文献】米国特許第06134893(US,A)
【文献】特開昭60-207034(JP,A)
【文献】特開昭54-104001(JP,A)
【文献】実公昭46-005954(JP,Y1)
【文献】特公昭39-012175(JP,B1)
【文献】実開昭54-092567(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2008/0156382(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0118306(KR,A)
【文献】特開2005-320061(JP,A)
【文献】中国実用新案第213331554(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 9/00
F17C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温液化ガスが貯留された貯槽に一端側が挿入され、他端側が前記貯槽の外部に延出する汲み出し管と、該汲み出し管に直接又は間接的に支持されて前記貯槽内の前記低温液化ガスを前記汲み出し管に吐出するポンプと、前記貯槽の前記低温液化ガスを取り出す取出し口に設けられて前記汲み出し管が回動可能な状態で該汲み出し管の周囲をシールするウィルソンシールとを備えた低温液化ガス汲み出し装置であって、
前記ウィルソンシールの上方に設けられ、前記汲み出し管を前記ウィルソンシールと同軸で回動可能に支持するベアリングを備え、
前記ベアリングは、前記ウィルソンシールを囲むように設けられた架台によって支持されており、該架台は複数の分割片からなり、前記ベアリングを支持した状態で少なくとも一つの分割片を取り外し可能に構成されていることを特徴とする低温液化ガス汲み出し装置。
【請求項2】
前記架台は、前記ウィルソンシールを視認可能にする点検用窓を有することを特徴とする請求項に記載の低温液化ガス汲み出し装置。
【請求項3】
前記ポンプは、ポンプ支持部材を介して前記汲み出し管に間接的に支持されており、
該ポンプ支持部材は、上端が前記汲み出し管に固定され、下端で前記ポンプを支持していることを特徴とする請求項1又は2に記載の低温液化ガス汲み出し装置。
【請求項4】
前記ポンプの吐出口と前記汲み出し管の間にフレキシブルチューブが設けられていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の低温液化ガス汲み出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体ヘリウムなどの低温液化ガスを貯留する貯槽から低温液化ガスを汲み出す低温液化ガス汲み出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大学等の研究では、冷媒として低温液化ガスが用いられている。特に、液体ヘリウムは最も低温が得られる冷媒であるため、物理学分野を中心に様々な研究で利用されている。
【0003】
液体ヘリウムは冷媒として利用後、ヘリウムガスとなる。ヘリウムは貴重な資源であるため、冷媒として使用した後のヘリウムガスは研究所内や大学内のヘリウム供給拠点に集められ、精製後に再液化される。
再液化されたヘリウムは、一旦、大型のヘリウム貯槽(例えば5000L)に貯蔵される。再び研究に利用される際は、小分け容器(例えば100L)に汲み出されて各研究室に分配される。
【0004】
液体ヘリウムを大型のヘリウム貯槽から小分け容器に汲み出す際は、汲み出し管と呼ばれる真空断熱配管が用いられる。大型のヘリウム貯槽と小分け容器の圧力差により液体ヘリウムを汲み出すことも可能であるが、液体ヘリウムの汲み出し量が多い場合には多大な時間を要する。
そこで、液体ヘリウムの使用量が多い研究機関では、汲み出し管の先端に浸漬式のポンプが取り付けられた汲み出し装置が使用されており、ポンプの力で液体ヘリウムの汲み出しが行われている。
【0005】
上記のような従来の汲み出し装置の一例を図5に基づいて説明する。図5は、液体ヘリウムを貯留する貯槽3に設けられた従来の低温液化ガス汲み出し装置37を示すものであり、図5(a)は平面図、図5(b)は正面図である。
従来の低温液化ガス汲み出し装置37は、図5(b)に示すように、低温液化ガスである液体ヘリウムが貯留された貯槽3に一端側が挿入され、他端側が貯槽3の外部に延出する汲み出し管5と、貯槽3内の液体ヘリウムを汲み上げて汲み出し管5に吐出するポンプ7と、貯槽3の開口部に設けられて汲み出し管5が回動可能な状態で汲み出し管5の周囲をシールするウィルソンシール9とを備えている。
【0006】
汲み出し管5は、貯槽3に挿入される挿入部5aと、挿入部5aから屈曲して水平に延びる水平部5bと、水平部5bから屈曲して下方に延びる垂下部5cとで構成される三重構造の真空断熱配管である。挿入部5aの最も内側の配管(以下、「最内管」という)の先端にポンプ7が取り付けられており、汲み出し管5がウィルソンシール9を軸に回動すると(図5(a)参照)、ポンプ7も連動して回動する。
なお、図中の15は汲み出し管5の水平部5bを支持する汲み出し管サポート部材であり、39はポンプ7に電源を供給するリード線、41はリード線39を汲み出し管5内に気密に導入するためのフィードスルーである。
【0007】
上記は、汲み出し管5によってポンプ7が支持されているものであったが、ポンプ7を他の部材によって支持するようにした例が特許文献1に開示されている。
特許文献1は、貯槽の蓋部材に固定されたサポート部材によってポンプを支持するようにしたものであり、ポンプはフレキシブルチューブを介して汲み出し管と接続されている。上記の例は、可撓性を有するフレキシブルチューブを介してポンプと汲み出し管を接続したことにより、ポンプがサポート部材に固定されていても図5の例と同様に汲み出し管を回動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2021-25591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図5の従来の低温液化ガス汲み出し装置37の場合、汲み出し管5の最内管は一端が液体ヘリウムに浸漬されるので、侵入熱軽減のために薄肉となっており、重量の大きいポンプ7を取り付けることが困難である。
また、汲み出し管5の挿入部5aはウィルソンシール9によって支持されるため、ポンプ7の重量が大きいとウィルソンシール9の劣化を早めることとなる。
【0010】
さらに、ポンプ7の吐出口21がポンプ7の上面中央に位置していなかったり、ポンプ7の重心が汲み出し管5の挿入部5aの中心軸から大きく外れていたりすると、ウィルソンシール9に偏心荷重が生じる。このウィルソンシール9にかかる偏心荷重は、ポンプ7の重量が大きいほどより増大する。偏心荷重が増大すると、汲み出し管5とウィルソンシール9の間に発生する摩擦力も大きくなるので、汲み出し管5を回動させるのに必要な力も大きくなり操作性が悪化する。
上記のような理由から、図5の従来の低温液化ガス汲み出し装置37では、ポンプ7に対して重量や重心、吐出口21の位置など、多くの制限があった。
【0011】
この点、特許文献1の技術は上記課題を解決したものであるが、フレキシブルチューブに変形限度があることから、汲み出し管の回動範囲に制約を設けて運用する必要がある。
【0012】
また、一定以上の長さを有するフレキシブルチューブを用いる必要があるが、上述のようにフレキシブルチューブには変形限度があるので強く曲げることができない。したがって、特許文献1の低温液化ガス汲み出し装置を貯槽に取り付けるためには、貯槽に大きい開口部を設ける必要があり、貯槽への侵入熱を増大させる懸念があった。
【0013】
上述したように、特許文献1の技術は、図5の従来の低温液化ガス汲み出し装置37の課題を解決するものの、汲み出し管の回動範囲や、貯槽への侵入熱等の観点において改善の余地があった。
したがって、図5の従来の低温液化ガス汲み出し装置37の課題を解決するための新たな技術が求められていた。
【0014】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、ポンプの重量や重心、吐出口の位置などに対する制限を緩和してウィルソンシールへの偏心荷重を低減可能な低温液化ガス汲み出し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)本発明に係る低温液化ガス汲み出し装置は、低温液化ガスが貯留された貯槽に一端側が挿入され、他端側が前記貯槽の外部に延出する汲み出し管と、該汲み出し管に直接又は間接的に支持されて前記貯槽内の前記低温液化ガスを前記汲み出し管に吐出するポンプと、前記貯槽の前記低温液化ガスを取り出す取出し口に設けられて前記汲み出し管が回動可能な状態で該汲み出し管の周囲をシールするウィルソンシールとを備えたものであって、前記ウィルソンシールの上方に設けられ、前記汲み出し管を前記ウィルソンシールと同軸で回動可能に支持するベアリングを備えたことを特徴とするものである。
【0016】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記ベアリングは、前記ウィルソンシールを囲むように設けられた架台によって支持されており、該架台は複数の分割片からなり、前記ベアリングを支持した状態で少なくとも一つの分割片を取り外し可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0017】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記ベアリングは、前記ウィルソンシールを囲むように設けられた架台によって支持されており、該架台は、前記ウィルソンシールを視認可能にする点検用窓を有することを特徴とするものである。
【0018】
(4)また、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のものにおいて、前記ポンプは、ポンプ支持部材を介して前記汲み出し管に間接的に支持されており、該ポンプ支持部材は、上端が前記汲み出し管に固定され、下端で前記ポンプを支持していることを特徴とするものである。
【0019】
(5)また、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のものにおいて、前記ポンプの吐出口と前記汲み出し管の間にフレキシブルチューブが設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明においては、ウィルソンシールの上方に設けられ、汲み出し管をウィルソンシールと同軸で回動可能に支持するベアリングを備えたことにより、ポンプの重量や重心、吐出口の位置などの制限を緩和し、ウィルソンシールにかかる荷重及び偏心荷重を低減するので、多様なポンプが適用可能であると共に、汲み出し管を回動させる際の操作性も向上し、ウィルソンシールの摩耗や劣化も低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施の形態にかかる低温液化ガス汲み出し装置を説明する図である。
図2図1の架台部分を示す斜視図である。
図3図2の架台から分割片を一つ取り外した状態を示す図である。
図4】架台の他の態様を示す図である。
図5】従来の低温液化ガス汲み出し装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施の形態に係る低温液化ガス汲み出し装置1は、図1に示すように、低温液化ガスが貯留された貯槽3から低温液化ガスを汲み出す汲み出し管5と、貯槽3内の低温液化ガスを汲み出し管5に吐出するポンプ7と、貯槽3の低温液化ガスを取り出す取出し口に設けられたウィルソンシール9と、汲み出し管5をウィルソンシール9と同軸で回動可能に支持するベアリング11と、ウィルソンシール9を囲むように設けられてベアリング11を支持する架台13とを備えている。上記の各構成について、以下具体的に説明する。
なお、下記では貯槽3に貯留される低温液化ガスが液体ヘリウムである場合を例に説明する。
また、図5の従来の低温液化ガス汲み出し装置37と同様の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0023】
<汲み出し管>
汲み出し管5は、貯槽3に一端側が挿入され、他端側が貯槽3の外部に延出する三重構造の真空断熱配管である。ポンプ7が汲み上げた液体ヘリウムは、汲み出し管5の最内管を通流して貯槽3の外部に汲み出される。
【0024】
汲み出し管5は、図5の従来例と同様に、ウィルソンシール9を貫通して貯槽3に挿入される挿入部5aと、挿入部5aから屈曲して水平に延びる水平部5bと、水平部5bから屈曲して下方に延びる垂下部(図示を省略)とで構成されており、水平部5bは下端に車輪が設けられた汲み出し管サポート部材15によって支持されている。
使用者は、汲み出し管サポート部材15を把持して動かすことによって汲み出し管5を回動させることができる。
【0025】
<ポンプ>
ポンプ7は、貯槽3内の液体ヘリウムに浸漬されて液体ヘリウムを汲み上げ、汲み上げた液体ヘリウムを昇圧して汲み出し管5に吐出するものである。
【0026】
本実施の形態では、比較的大型の液体ヘリウムポンプを使用することを想定し、ポンプ7を支持するポンプサポート部材17を設けている。ポンプサポート部材17は、下端にポンプ7が取り付けられ、上端が汲み出し管5の最も外側の配管(以下、「最外管」という)に取り付け金具19によって取り付けられている。
ポンプサポート部材17を用いることで、汲み出し管5において比較的強度の高い最外管にポンプ7を取り付けることができるので、薄肉の最内管にポンプ7を取り付ける場合と比べてポンプ7の重量制限を緩和できる。
また、ポンプ7を取り付けた汲み出し管5はベアリング11に支持されているので、従来例のように荷重がウィルソンシール9にかかることがなく、ポンプ7の重量制限をさらに緩和できる。
【0027】
また、従来例のように汲み出し管5の最内管に直接ポンプ7を取り付ける場合には、最低限ポンプ7を支持可能な強度を有するように最内管の板厚を設定する必要があったが、本実施の形態ではそのような強度を必要としないので、従来例より薄肉にして侵入熱を軽減できる。
【0028】
なお、ポンプサポート部材17の材質は、汲み出し管5よりも小さい熱伝導度であるものが好ましい。ポンプサポート部材17の重量はウィルソンシール9にかかる荷重に影響しないので、重量を考慮せずにポンプサポート部材17の材質を選択できる。したがって、比較的重量があるものの断熱性能に優れ、低温でも大きな強度を有するガラス繊維複合材を用いることもできる。
【0029】
上記は、ポンプ7がポンプサポート部材17を介して間接的に汲み出し管5に支持されている例であるが、ポンプ7が小型で軽量な場合には、図5の従来例と同様に汲み出し管5の最内管でポンプ7を直接支持するようにしてもよい。
【0030】
なお、図1のポンプ7は、昇圧された液体へリウムを吐出する吐出口21がポンプ7の側面に設けられており、水平方向に液体へリウムが吐出される。そのため吐出口21には、水平方向に吐出された液体ヘリウムを導入して垂直方向に吐出する導入配管23が取り付けられており、導入配管23はフレキシブルチューブ25を介して汲み出し管5の最内管と接続されている。
フレキシブルチューブ25をポンプ7の吐出口21と汲み出し管5の間に設けることにより、フレキシブルチューブ25がポンプ7の振動を吸収するので、汲み出し管5の最内管に振動が伝搬しにくくなる。また、フレキシブルチューブ25は、導入配管23の熱収縮も吸収するので、フレキシブルチューブ25を設けない場合と比べて汲み出し管5の破損リスクを低減できる。
【0031】
<ウィルソンシール>
ウィルソンシール9は、汲み出し管5が回動可能な状態で汲み出し管5の周囲をシールするものである。本実施の形態の貯槽3においては、貯槽3の開口部に第1蓋部材27が設けられており、第1蓋部材27の中央には貯槽3の開口部より小径の小径開口部が形成されている。小径開口部の縁には円筒状に突出する円筒突出部29が設けられている。円筒突出部29の上端(本発明の取出し口)には第2蓋部材31が設けられており、第2蓋部材31にウィルソンシール9が設けられている。即ち、本実施の形態のウィルソンシール9は、汲み出し管5が第2蓋部材31を貫通する部分を気密にシールしている。
【0032】
貯槽3内の液体ヘリウムの蒸発により発生するヘリウムガスは低温(約-269℃)であり、しかも、ヘリウムは非常に原子が小さいため漏れが発生しやすい。この条件下で、気密性を確保しつつ、汲み出し管5を回転させることが可能な部材としては、ウィルソンシール9が好適であり一般的に使用されている。
【0033】
なお、図1のように第1蓋部材27の上に第1蓋部材27より小径の円筒突出部29及び第2蓋部材31を設けることで、ポンプ7を交換する時などに小径の第2蓋部材31を開放して作業を行うことができ、大径の第1蓋部材27を開放して行うのと比べて作業が簡易になる。
もっとも、円筒突出部29及び第2蓋部材31を設けない場合には、貯槽3の開口部が本発明の取出し口となるので、第1蓋部材27にウィルソンシール9を設けて、汲み出し管5と第1蓋部材27の間を気密にシールすればよい。
【0034】
<ベアリング>
ベアリング11は、架台13の上端に設けられ、ウィルソンシール9の上方において汲み出し管5をウィルソンシール9と同軸で回動可能に支持するものである。本発明においてベアリング11の種類は限定されないが、本実施の形態のベアリング11はスラストベアリングを用いている。
【0035】
ベアリング11は、環状に配置・保持された複数のボール又はコロ等の転動部材11aを、2つの円環部材(第1円環部材11b、第2円環部材11c)で挟んだ構成になっている。第1円環部材11bは汲み出し管5の挿入部5aに固定され、汲み出し管5と一体となって回動する。第2円環部材11cは、第2円環部材11cの中心とウィルソンシール9の中心が一致するように架台13の上面に固定されている。
【0036】
上記のように構成されたベアリング11を備えたことにより、汲み出し管5の挿入部5aはベアリング11と架台13によって支持される。したがって、汲み出し管5及び汲み出し管5に取り付けられたポンプ7やポンプサポート部材17の重量は、ベアリング11と架台13にかかることになるので、従来例と比べてウィルソンシール9にかかる荷重を低減し、ウィルソンシール9の摩耗を低減できる。
【0037】
また、図1のように、ポンプサポート部材17を介してポンプ7を汲み出し管5の最外管に取りつけたり、水平方向に吐出口が形成されたポンプ7を用いたりすると、汲み出し管5にかかる荷重の向きが汲み出し管5の回動軸と一致しないことが一般的である。
この場合、ベアリング11を備えていない図5の従来例では、ウィルソンシール9に多大な偏心荷重がかかり、ウィルソンシール9のオーリングに大きな摩擦力が発生する。その結果、汲み出し管5を回動操作する際の操作性が著しく低下し、ウィルソンシール9の磨耗や劣化が早まって頻繁なメンテナンスが必要となる。
【0038】
この点、本実施の形態では、ベアリング11によって汲み出し管5がウィルソンシール9に対して芯出しされた状態で保持されているので、汲み出し管5を回動する際の操作性もよく、ウィルソンシール9の摩耗をさらに低減できるので、メンテナンス周期の長期化が期待できる。
【0039】
<架台>
架台13は、ウィルソンシール9を囲うように設けられ、ウィルソンシール9の上方でベアリング11を支持するものである。
本実施の形態の架台13は、図2に示すように二つの分割片13aから構成されている。各分割片13aは、一方の分割片13aを取り外した状態でも他方の分割片13aでベアリング11を支持できる強度を有しており、図3に示すようにベアリング11を支持した状態で一つの分割片13aを取り外すことができる。
【0040】
これにより、ウィルソンシール9に通常運転における以上の荷重を掛けることなく、ウィルソンシール9の日常的な目視確認、メンテナンスが容易となり、リーク(漏れ)等の不具合を早期に発見できる。
【0041】
図2図3は二つの分割片13aによって架台13を構成する例であるが、三つ以上の分割片13aによって架台13を構成するようにしてもよい。その場合にも、ベアリング11を支持した状態で少なくとも一つの分割片13aを取り外し可能に構成するのが好ましい。
【0042】
また、架台13の他の態様として、図4に示すように、ウィルソンシール9を視認可能にする点検用窓33を有する架台35を用いてもよい。
図4のように架台35に点検用窓33を設けることにより、ベアリング11、架台35を分解等することなく、ウィルソンシール9の目視確認、メンテナンスが可能となる。
【0043】
なお、図2図3のように分割片13aから構成される架台13の場合においても、分割片13aに上述した点検用窓33を設けてもよい。
もっとも本実施の形態は、前述したようにウィルソンシール9にかかる荷重や偏心荷重が低減されるので、必要なメンテナンスの頻度も少なくなる事が期待できる。
【0044】
上記のように、本実施の形態においては、汲み出し管5の挿入部5aを支持すると共に汲み出し管5をウィルソンシール9の軸に合わせて芯出しするベアリング11を設けたことにより、ウィルソンシール9にかかる荷重及び偏心荷重を低減できる。これにより、ウィルソンシール9の摩耗・劣化を防ぎ、汲み出し管5を回動する際の操作性が向上する。また、図1のようなポンプサポート部材17を介して汲み出し管5の最外管にポンプ7を取り付ける態様も可能となり、ポンプ7の重量や重心、吐出口の位置などの制限が緩和され、様々な種類のポンプ7が使用可能となる。
【符号の説明】
【0045】
1 低温液化ガス汲み出し装置
3 貯槽
5 汲み出し管
5a 挿入部
5b 水平部
5c 垂下部
7 ポンプ
9 ウィルソンシール
11 ベアリング
11a 転動部材
11b 第1円環部材
11c 第2円環部材
13 架台
13a 分割片
15 汲み出し管サポート部材
17 ポンプサポート部材
19 取り付け金具
21 吐出口
23 導入配管
25 フレキシブルチューブ
27 第1蓋部材
29 円筒突出部
31 第2蓋部材
33 点検用窓
35 架台(他の態様)
37 低温液化ガス汲み出し装置(従来例)
39 リード線
41 フィードスルー
図1
図2
図3
図4
図5