IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京応化工業株式会社の特許一覧

特許7603597細胞スクリーニングデバイスおよび細胞スクリーニングキット
<>
  • 特許-細胞スクリーニングデバイスおよび細胞スクリーニングキット 図1
  • 特許-細胞スクリーニングデバイスおよび細胞スクリーニングキット 図2
  • 特許-細胞スクリーニングデバイスおよび細胞スクリーニングキット 図3
  • 特許-細胞スクリーニングデバイスおよび細胞スクリーニングキット 図4
  • 特許-細胞スクリーニングデバイスおよび細胞スクリーニングキット 図5
  • 特許-細胞スクリーニングデバイスおよび細胞スクリーニングキット 図6
  • 特許-細胞スクリーニングデバイスおよび細胞スクリーニングキット 図7
  • 特許-細胞スクリーニングデバイスおよび細胞スクリーニングキット 図8
  • 特許-細胞スクリーニングデバイスおよび細胞スクリーニングキット 図9
  • 特許-細胞スクリーニングデバイスおよび細胞スクリーニングキット 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】細胞スクリーニングデバイスおよび細胞スクリーニングキット
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20241213BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
C12M1/00 A
G01N37/00 101
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021551226
(86)(22)【出願日】2020-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2020036545
(87)【国際公開番号】W WO2021065771
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2019178989
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】大坂 享史
【審査官】大西 隆史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-146548(JP,A)
【文献】国際公開第2015/198866(WO,A1)
【文献】特開2018-121568(JP,A)
【文献】国際公開第2018/105608(WO,A1)
【文献】特表2017-518752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00- 3/00
G01N 35/00-37/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板部と、
前記底板部上に設けられ、細胞載置面を構成する細胞載置部と、
前記底板部上に、前記細胞載置部とは区画して設けられた流体注入部と、
前記細胞載置部の前記細胞載置面に形成され、スクリーニングすべき細胞を個別に収容可能なサイズを有する複数のウェルと、
前記底板部と前記細胞載置部との間に設けられ、前記流体注入部まで流路端部が延びている流路と、
前記ウェルの内底面から前記流路に通じ、前記スクリーニングすべき細胞が通過できない内径を有する貫通孔と、
前記流体注入部に設けられ、前記流路端部を気密的に塞ぐ蓋部と、
前記蓋部の上面に設けられ前記流路に連通する開口部を有する流体注入ポートとを有し
前記流体注入ポートの周囲の前記蓋部の上面には、前記流体注入ポートの前記開口部から溢れ出た流体を貯留しえる流体貯留部が形成され、
前記細胞載置面と、前記蓋部との間には、前記流体貯留部に流体が溜まった場合に前記流体が前記細胞載置部へ流れることを防ぐ仕切り部が設けられていることを特徴とする細胞スクリーニングデバイス。
【請求項2】
前記底板部は、長辺と短辺とを有する矩形状をなし、前記底板部の長手方向の両側にそれぞれ前記流体注入部、前記蓋部、および前記流体注入ポートが形成され、前記二つの蓋部の間に、前記細胞載置部が配置されている、請求項に記載の細胞スクリーニングデバイス。
【請求項3】
前記細胞載置部は膜体であり、
前記膜体の上面には前記ウェルが複数格子状に並んで形成され、前記膜体の下面には前記ウェルのそれぞれの内底面に通じる前記貫通孔が形成され、
前記膜体の周囲を支持するとともに前記細胞載置面を囲む枠体が設けられ、
前記底板部には、前記枠体を着脱可能に固定するための係合部が設けられている、請求項1または2に記載の細胞スクリーニングデバイス。
【請求項4】
前記蓋部の周縁から起立した周壁部が形成されており、前記蓋部と前記周壁部は、前記底板部から着脱可能な外枠体として形成されている、請求項1~のいずれか1項に記載の細胞スクリーニングデバイス。
【請求項5】
前記蓋部の周縁には起立した周壁部が形成されており、前記蓋部と前記周壁部は、前記底板部から着脱可能な外枠体として形成され、
前記外枠体に、前記膜体を支持する前記枠体が着脱可能に固定されている、請求項に記載の細胞スクリーニングデバイス。
【請求項6】
前記底板部は、長辺と短辺とを有する矩形状をなし、前記底板部の長手方向の両側にそれぞれ、前記流体注入部、前記蓋部、および前記流体注入ポートが形成され、前記二つの蓋部の間に、前記細胞載置部が配置され、
前記蓋部、前記蓋部の周縁から起立した周壁部、および前記細胞載置部の周囲を囲む周壁部が、前記底板部から着脱可能な外枠体として形成されている、請求項1~のいずれか1項に記載の細胞スクリーニングデバイス。
【請求項7】
前記流体注入ポートは、前記蓋部の上面から起立した円筒状をなす、請求項1~のいずれか1項に記載の細胞スクリーニングデバイス。
【請求項8】
前記蓋部において、前記流路端部の天井面の少なくとも一部には、前記流体注入ポートへ近づくにつれ傾斜面状または階段状に上昇する泡排出面が形成されている、請求項1~のいずれか1項に記載の細胞スクリーニングデバイス。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の細胞スクリーニングデバイスと、
スクリーニングすべき細胞の分泌物に結合性を有する物質が固定化された担体粒子である検出粒子とを備えた細胞スクリーニングキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞をスクリーニングするための細胞スクリーニングデバイスおよび細胞スクリーニングキットに関する。本願は、2019年9月30日に日本に出願された特願2019-178989号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、特に創薬分野において、細胞解析のターゲッ卜が細胞群レベルから単一細胞レベルへと細分化され、細胞スクリーニングデバイスを用いて、微細なウェル内に細胞を1つ1つ捕捉したうえ、多数の細胞に一斉にスクリーニングテストを行い、目的の特性を有する細胞を選別する手法が使用されている。細胞をスクリーニングする方法としては、例えば、多数のウェル内に捕捉されている細胞を、特定の抗体と結合するキャッチャーなどの試薬を分散させた液と接触させ、キャッチャーと結合した分泌物を分泌した細胞を探し出し、ウェルから回収する方法などが採用されている。
【0003】
特許文献1は、本出願人等が先に提案した細胞スクリーニングデバイスを示す。この細胞スクリーニングデバイスは、水平に積層して配置された第1基板および第2基板を有し、第1基板の表面には細胞一つずつを収容できるウェルが多数形成され、各ウェルの底面から第1基板の裏面に達する連通孔がそれぞれ形成されている。これらの連通孔は、細胞が通り抜けられないほどに細い。第2基板には、前記連通孔を通じてウェルから流れ出した分泌物を受け止める蓄積部が形成され、蓄積部で分泌物と試薬とを反応させ、ターゲット細胞を特定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第WO2017/057234A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような細胞スクリーニングデバイスにおいては、蓄積部へ試薬を供給するために試薬導入部を設ける必要がある。例えばデバイスの端部に蓄積部へ連通する試薬導入部を設けた場合には、ウェルに細胞を捕捉し、蓄積部に分散液や試薬を満たした状態で細胞スクリーニングデバイスを持ち運んだり、水平状態から傾けたりすると、蓄積部の長手方向に分散液や試薬が流れ(スロッシング現象と称する)、分散液や試薬の一部が貫通孔を通じてウェルに流れ込み、ウェルに捕捉されていた細胞を持ち上げて、細胞がウェルから脱離してしまうおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様[1]に係る細胞スクリーニングデバイスは、底板部と、前記底板部上に設けられ、細胞載置面を構成する細胞載置部と、前記底板部上に、前記細胞載置部とは区画して設けられた流体注入部と、前記細胞載置部の前記細胞載置面に形成され、スクリーニングすべき細胞を個別に収容可能なサイズを有する複数のウェルと、前記底板部と前記細胞載置部との間に設けられ、前記流体注入部まで流路端部が延びている流路と、前記ウェルの内底面から前記流路に通じ、前記スクリーニングすべき細胞が通過できない内径を有する貫通孔と、前記流体注入部に設けられ、前記流路端部を塞ぐ蓋部と、前記蓋部に設けられ前記流路に連通する開口部を有する流体注入ポートとを有する。
【0007】
このような細胞スクリーニングデバイスによれば、流路の流路端部を蓋部で塞ぎ、この蓋部に流路に連通した開口部を有する流体注入ポートを設けたことにより、前記蓋部により流路内の流体の移動が抑制されるとともに、前記流体注入ポートを通じて流体を流路へ出し入れすることが可能である。したがって、細胞スクリーニングデバイスのウェルに細胞を捕捉し、流路に分散液などの流体を入れた状態で細胞スクリーニングデバイスを持ち運んだり、傾けたりした場合にも、流路に沿って流体が過剰に移動しにくくなり、スロッシング現象を抑えることができる。よって、分散液の一部が貫通孔を通じてウェルに流れ込み、ウェルに捕捉されていた細胞を離脱させるといった問題を抑制できる。
【0008】
態様[2]の細胞スクリーニングデバイスは、前記態様[1]において、前記流体注入ポートの周囲の前記蓋部に、前記流体注入ポートの前記開口部から溢れ出た流体を貯留しえる流体貯留部が形成され、前記細胞載置面と、前記蓋部との間には、前記流体貯留部に流体が溜まった場合に前記流体が前記細胞載置部へ流れることを防ぐ仕切り部が設けられている。この場合、前記流体注入ポートの前記開口部から流体が溢れ出た場合にも、流体貯留部が流体を受け止め、再度、流体注入ポートから流路内へ入ることが抑制でき、例えばコンタミネーションなどのおそれを低減できる。また、前記細胞載置面と、前記蓋部との間に仕切り部が形成されているから、前記流体貯留部に流体が溜まった場合にも前記流体が前記細胞載置部へ流れることを抑制できる。
【0009】
態様[3]の細胞スクリーニングデバイスは、前記態様[1]または[2]において、前記底板部は、長辺と短辺とを有する矩形状をなし、前記底板部の長手方向の両側にそれぞれ前記流体注入部、前記蓋部、および前記流体注入ポートが形成され、前記二つの蓋部の間に、前記細胞載置部が配置されている。この場合、2つの流体注入ポートの一方から流体を流路へ流し込みながら、他方の流体注入ポートから余剰分の流体を排出させるなど幅広い利用方法が可能となる。ただし、本発明は2つの流体注入ポートを設ける構成に限定されず、必要であれば片側だけでもよいし、3つ以上の流体注入ポートを設けることも可能である。
【0010】
態様[4]の細胞スクリーニングデバイスは、前記態様[1]~[3]のいずれかにおいて、前記細胞載置部は膜体であり、前記膜体の上面には前記ウェルが複数格子状に並んで形成され、前記膜体の下面には前記ウェルのそれぞれの内底面に通じる前記貫通孔が形成され、前記膜体の周囲を支持するとともに前記細胞載置面を囲む枠体が設けられ、前記底板部には、前記枠体を着脱可能に固定するための係合部が設けられている。この場合、底板部の係合部に枠体を係合させると、底板部上の正しい位置にウェルを有する膜体が位置決めされ、スクリーニング後に枠体を底板部から取り外すことも可能となる。
【0011】
態様[5]の細胞スクリーニングデバイスは、前記態様[1]~[4]のいずれかにおいて、前記蓋部の周縁から起立した周壁部が形成されており、前記蓋部と前記周壁部は、前記底板部から着脱可能な外枠体として形成されている。この場合、底板部と外枠体を別体として成形しておき、底板部に外枠体を取り付けるだけで、蓋部と周壁部の正確な位置決めが可能となり、組み立てが容易である。また、使用後に底板部から外枠体を取り外すこともでき、メンテナンスが容易になる。
【0012】
態様[6]の細胞スクリーニングデバイスは、前記態様[4]において、前記蓋部の周縁には起立した周壁部が形成されており、前記蓋部と前記周壁部は、前記底板部から着脱可能な外枠体として形成され、前記外枠体に、前記膜体を支持する前記枠体が着脱可能に固定されている。この場合、底板部と外枠体と枠体をそれぞれ別体として成形しておき、底板部に枠体と外枠体とを取り付けるだけで、膜体、蓋部、周壁部の正確な位置決めが可能となり、組み立てしやすさが向上できる。また、使用後に底板部から枠体と外枠体とを取り外すこともでき、メンテナンスが容易になる。
【0013】
態様[7]の細胞スクリーニングデバイスは、前記態様[1]~[5]のいずれかにおいて、前記底板部は、長辺と短辺とを有する矩形状をなし、前記底板部の長手方向の両側にそれぞれ、前記流体注入部、前記蓋部、および前記流体注入ポートが形成され、前記二つの蓋部の間に、前記細胞載置部が配置され、前記蓋部、前記蓋部の周縁から起立した周壁部、および前記細胞載置部の周囲を囲む周壁部が、前記底板部から着脱可能な外枠体として形成されている。この場合、底板部と外枠体とをそれぞれ別体として成形しておき、底板部に外枠体とを取り付けるだけで、細胞載置部、蓋部、周壁部、および二つの流体注入ポートの正確な位置決めが可能となり、組み立てやすさが向上できる。また、使用後に底板部から外枠体を取り外して分解することもでき、メンテナンスが容易になる。
【0014】
態様[8]の細胞スクリーニングデバイスは、前記態様[1]~[7]のいずれかにおいて、前記流体注入ポートが、前記蓋部の上面から起立した円筒状をなしている。この場合、流体注入ポートが円筒状をなしているので、ピペットやディスペンサーの円錐状に尖った先端をほぼ気密的に当てて流体の出し入れが容易である。
【0015】
態様[9]の細胞スクリーニングデバイスは、前記態様[1]~[8]のいずれかにおいて、前記蓋部において、前記流路端部の天井面の少なくとも一部には、前記流体注入ポートへ近づくにつれ傾斜面状または階段状に上昇する泡排出面が形成されている。この場合、蓋部の裏側の天井面に、流体注入ポートに向けて上昇する傾斜面または階段状の泡排出面が形成されているから、流路内に入り込んだ気泡を流体注入ポートから排出させやすく、気泡によるトラブルを抑制できる。
【0016】
態様[10]の細胞スクリーニングキットは、前記態様[1]~[9]のいずれかに記載の細胞スクリーニングデバイスと、スクリーニングすべき細胞の分泌物に結合性を有する物質が固定化された担体粒子である検出粒子とを備える。この細胞スクリーニングキットによれば、個々のウェルに細胞を取り込んだ状態で、ウェル内で検出粒子と細胞の分泌物とを反応させ、検出粒子からの発光等によってスクリーニングが行えるうえ、流路に分散液などの流体を入れた状態で細胞スクリーニングデバイスを持ち運んだり、傾けたりした場合にも、流路に沿って流体が移動しにくくなり、スロッシング現象を抑えることができる。よって、分散液の一部が貫通孔を通じてウェルに流れ込み、ウェルに捕捉されていた細胞や検出粒子をウェルから離脱させるといった問題を抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の細胞スクリーニングデバイスまたは細胞スクリーニングキットによれば、細胞スクリーニングデバイスのウェルに細胞を捕捉し、流路に分散液などの流体を入れた状態で細胞スクリーニングデバイスを持ち運んだり、傾けたりした場合にも、流路に沿って流体が移動しにくくなり、スロッシング現象を抑えて、分散液の一部が貫通孔を通じてウェルに流れ込み、ウェルに捕捉されていた細胞や検出粒子を離脱させるなどの問題を抑制できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態の細胞スクリーニングデバイスを示す平面図である。
図2】同実施形態の正面図である。
図3】同実施形態の正断面を示す斜視図である。
図4】同実施形態の中央部の正断面図である。
図5】同実施形態の端部の正断面図である。
図6】同実施形態の側断面図である。
図7】同実施形態の組立方法を示す斜視図である。
図8】同実施形態の細胞載置膜(細胞載置部)とウェルを示す拡大斜視図である。
図9】本発明の他の実施形態に係る細胞スクリーニングデバイスの正断面を示す斜視図である。
図10】本発明の他の実施形態に係る細胞スクリーニングデバイスの端部の正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1図6は、いずれも本発明の一実施形態に係る細胞スクリーニングデバイス1の完成状態を示し、図7はその細胞スクリーニングデバイス1の組み立て方法を示す。この実施形態の細胞スクリーニングデバイス1は、底板部2と、底板部2上に設けられ、細胞載置面4を構成する細胞載置膜(細胞載置部)6と、底板部2上に細胞載置膜6とは区画して設けられた一対の流体注入部8と、底板部2と細胞載置膜6との間に設けられ、流体注入部8まで流路端部12が延びている流路10とを有している。細胞載置膜6の細胞載置面4には、例えば図8に示すように、スクリーニングすべき細胞Cを個別に収容可能なサイズを有する複数のウェル50と、ウェル50の内底面から流路10に通じる貫通孔52が形成されている。貫通孔52は、スクリーニングすべき細胞Cが通過できない内径を有する。
【0020】
以下、細胞スクリーニングデバイス1の構造について詳細に説明する。この例の底板部2は、肉厚が一定の細長い矩形板状をなし、四隅は丸く面取りされている。底板部2には底面の外周縁に沿って僅かな突条2Bが全周に亘って形成されている。底板部2の形状は図示のものに限定されず、円板状や楕円形状、正方形状などいかなる形状であってもよいし、水平な流路10を形成できれば、底板部2の肉厚は一定でなくてもよい。底板部2は、一般的には、ターゲット細胞に無害な各種のプラスチックで形成されることが成型精度やコストの上で望ましいが、必要に応じては、セラミック、ガラス、金属などいかなる材質で形成されていてもよい。底板部2の表面に細胞に対する影響を和らげるための何らかのコーティングが施されていてもよい。
【0021】
図3に示すように、底板部2の上面には、中央部を囲むように、平面視して両端が半円形とされた長方形をなす係合壁18が、底板部2から垂直に起立した状態で一体的に形成されている。係合壁18は図示の形状に限定されず、単純な長方形状や円形、楕円形などであってもよい。この例の係合壁18の高さは全周に亘って等しくされている。係合壁18には、係合壁18を全周に亘って上から覆うように、外枠体20が着脱可能に取り付けられている。
【0022】
外枠体20は、平面視して両端が半円形をなす長方形の周壁部22と、周壁部22の内周側に一対、互いに平行に設けられた仕切り部28とを有し、全体が一体的に形成されている。外枠体20の材質は限定されず、一般的には細胞に無害な各種のプラスチックで形成されることが成型精度やコストの上で望ましいが、必要に応じては、セラミック、ガラス、金属などいかなる材質で形成されていてもよい。仕切り部28と仕切り部28の間には、直方体状の空間が開けられており、この中に細胞載置膜6が配置されている。
【0023】
外枠体20の周壁部22の上端は、全周に亘って外側へ折り返した断面形状をなし、この折り返し部分の内側に、下に向けて開く幅の細い係合溝24が全周に亘って一定の深さで形成されている。この係合溝24に、係合壁18の上端部が全周に亘って挿入され、周壁部22の折り返し部分で弾性的に締め付けられることにより、外枠体20が係合壁18に着脱可能に固定されている。外枠体20の長手方向の両先端には、水平に突き出す突起26がそれぞれ形成され、これら突起26を指先で持ち上げることにより、係合溝24から係合壁18が抜けて、底板部2と外枠体20が分離できるようになっている。
【0024】
外枠体20の周壁部22と、各仕切り部28とで囲まれる半円形の領域は、それぞれ流体注入部8とされている。これら流体注入部8において、周壁部22の下端と各仕切り部28の下端をつなぐように、半円形状をなす蓋部14が底板部2と平行に形成されている。蓋部14と底板部2との間には、流路10の両端となる流路端部12が形成され、蓋部14が流路端部12を気密的に塞ぐ構造となっている。このように蓋部14が形成されていることにより、流路10の両端である流路端部12が封止され、細胞スクリーニングデバイス1が傾いたり揺すられたりした場合にも、流路10および流路端部12を通じて流体が左右に過剰に流動することが防止されている。この例では、流路端部12の上下方向の厚さが一定であるが、後述する図10の実施形態のように、必要に応じては部分的に変更してもよい。
【0025】
この実施形態では、各蓋部14のほぼ中央に、それぞれ一ケ所ずつ円形の開口部16Aが形成され、これら開口部16Aに対応して、円筒形状をなす流体注入ポート16がそれぞれ蓋部14から直立して形成されている。流体注入ポート16の回りの蓋部14の表面が流体貯留部とされ、図5に示すように、流体注入ポート16から溢れた流体Lが溜まるようになっている。流体貯留部として、蓋部14の上面の流体注入ポート16の周囲に、積極的に凹部を形成してもよい。
【0026】
流体注入ポート16は、この実施形態では蓋部14から起立させているが、その代わりに、流体注入ポートを蓋部14に形成された平坦で上方へ突出しない開口部とする一方、蓋部14の表面に、この開口部を囲む円環状などの凹部を形成して、この凹部を流体貯留部とすることも可能である。
【0027】
流体注入ポート16の開口部16Aは流体注入ポート16から流体(試薬や分散液)を注入するためのピペット、マイクロピペット、ディスペンサーなどの器具の先端と馴染みがよい口径に形成され、器具の尖った先端を流体注入ポート16の開口部16Aに気密的に当接させることができる。流体注入ポート16の形状は円筒形に限らず、必要に応じては角筒状や多角形筒状であってもよいし、開口部16Aの周囲を僅かに盛り上げただけの環状、あるいは前述のように単なる開口部であってもよい。流体注入ポート16を蓋部14の表面に凹んで形成された逆円錐状の開口部としてもよい。
【0028】
仕切り部28の流体注入部8側の下端には、下面から一定高さを有する段部34が仕切り部28の全長に亘って形成され、この段部34の上方には、仕切り部28の上端に達する二本のリブ30がそれぞれ上下方向に延びて形成されている。リブ30により仕切り部28の撓み強度が高められている。また、仕切り部28には、段部34の下面に開口する一定深さの係合溝32と、この係合溝32の細胞載置膜6側に隣接する係合突条42がそれぞれ形成されている。
【0029】
外枠体20の周壁部22の直線状に延びる2箇所にも、図6に示すように、周壁部22の下面に開口する一定深さの係合溝32と、この係合溝32の細胞載置膜6側に隣接する係合突条42がそれぞれ形成されている。これら直線状に延びる2箇所の係合溝32と係合突条42は、仕切り部28の係合溝32と係合突条42とにそれぞれ連なって、平面視すると矩形状をなしている。
【0030】
周壁部22の直線状に延びる2箇所と、二つの仕切り部28とで囲まれる四角い空間には、平面視して矩形状をなす角筒状の枠体36が着脱可能に収容されている。枠体36の下端には、細胞載置膜6が図8に示すようにウェル50を上向きにして全面に亘って張られており、枠体36の下端と細胞載置膜6は全周に亘って隙間無く接合されている。枠体36は可撓性のあるプラスチック等で形成されており、外方へ広げる力がかかると僅かに四方の壁が外方へ広がり、細胞載置膜6に張力が印加され、細胞載置膜6の弛みを防止できるようになっている。
【0031】
細胞載置膜6の厚さは限定されないが、ターゲットとなる細胞が一つずつ入るウェル50を形成し、かつ、ウェル50の底から裏面側へ流体を流す微細な貫通孔52を形成する観点から、5~100μm程度であることが好ましく、より好ましくは、10~50μm程度とされる。細胞載置膜6は2層以上の多層膜であってもよい。その場合、上側の層にウェル50になる貫通孔を形成し、下側の層には貫通孔52となる貫通孔を開け、これら二つの層を貼り合わせて、ウェル50と貫通孔52を形成してもよい。
【0032】
細胞載置膜6の材質は限定されず、一般的には細胞に無害な各種のプラスチックで形成されることが成型精度やコストの上で望ましいが、必要に応じては、セラミック、多結晶または単結晶シリコン、ガラスなど無機化合物、金属などいかなる材質で形成されていてもよい。ウェル50および貫通孔52は、エッチング加工や、フォトリソグラフィーなどで形成することも可能である。
【0033】
ウェル50の平面形状は、捕獲すべき細胞Cの平均的形状に合わせて、配置密度を高める観点から図8に示すように六角形、あるいは円形であることが好ましいが、必要に応じては、正方形などの四角形や、他の多角形、楕円形などであってもよい。ウェル50の大きさは捕捉すべき細胞Cの大きさによって選択すべきであり限定はされないが、一つのウェル50内に一つずつ細胞Cが入るが、2つ以上の細胞Cは入りにくいように、一般的にはウェル開口部に入る円の最大径が1~100μm程度、深さが1~100μm程度とされるとよい。ウェル50の大きさが異なる細胞載置膜6を有する枠体36を複数種用意しておき、共通の底板部2および外枠体20に組み合わせて、細胞スクリーニングキットを構成してもよい。
【0034】
細胞Cの大きさの関係では、ウェル50を平面視してその中に入る円の最大径は、補集すべき細胞Cの最大径の0.5~2倍程度の大きさであるとよく、より好ましくは0.8~1.9倍である。ウェル50の深さは、補集すべき細胞Cの最大径の0.5~4倍程度の大きさであるとよく、より好ましくは0.8~1.9倍である。隣接するウェル50とウェル50の間の最短距離は、1~10μm程度であるとウェル50の密度を高められるので都合が良いが、この範囲に限定はされない。
【0035】
この例の貫通孔52は各ウェル50の底面の中央に二つずつ形成されている。このように複数形成されていると目詰まりしにくいので好都合であるが、本発明はこれには限定されず、中央に1個ずつまたは3個以上ずつ形成されていてもよいし、ウェル50の底面にランダムまたは格子点位置に複数の貫通孔52が形成されていてもよい。貫通孔52の内径は限定されないが、細胞Cが通過しないように、最小内径が10nm~20μm程度の範囲であることが好ましく、ウェル50内に捕獲すべき細胞Cの平均径の0.5倍以下が好ましい。
【0036】
枠体36の下端部の外周面には、図4および図6に示すように、上向きに折り返した形状とすることにより、上へ開く係合溝44と、下へ突き出す係合突条40が全周に亘って形成されている。係合溝44の深さおよび係合突条40の上下幅は、枠体36の全周に亘ってほぼ一定である。係合突条40は、外枠体20の下面に形成された係合溝32に挿入され、外枠体20の係合突条42は、枠体36の係合溝44に挿入される。これらの嵌合により、外枠体20の中央空間内に枠体36が収容された状態で、枠体36が外枠体20に固定される。
【0037】
この時、枠体36の下端面は、底板部2に形成されたスペーサ46の上面に当接して、スペーサ46の厚みにより、底板部2からの細胞載置膜6の離間量、すなわち、流路10の厚さが正確に規定される。この実施形態では、図7に示すように、係合壁18の内側に一対の平面視してコ字状をなすスペーサ46が、枠体36の下端形状に沿って形成され、スペーサ46同士の間には、切欠47が形成されている。枠体36を底板部2上に固定した状態では、これら切欠47を通じて流路10から各流路端部12へ流体が流れるようになっている。スペーサ46は図示したような形状でなくてもよく、枠体36の下面に数カ所で当接するようになっていればよい。場合によっては、スペーサ46を形成せずに、外枠体20との係合によって、底板部2からの枠体36の高さが正確に規定されるようにしてもよい。
【0038】
枠体36の下端部の内周面には、全周に亘って一定幅を有する傾斜面38が形成され、傾斜面38は下方へ行くほど細胞載置膜6の側へせり出している。このような傾斜面38が形成されていることにより、図4に示すように、細胞載置膜6のウェル50からターゲット細胞をピペット、マイクロピペット、ディスペンサー等の器具Pで吸い上げる際に、ターゲット細胞が補集されたウェル50がもしも枠体36の内周縁の間際の位置であっても、器具Pで細胞の吸い出しが容易に行えるようになっている。また、傾斜面38は枠体36への細胞載置膜6の接着面積を増やし、細胞載置膜6の接合強度を高める効果も果たしているし、枠体36の強度を高めるためにも役立っている。
【0039】
上記構成からなる細胞スクリーニングデバイスを製造する場合は、図7に示すように底板部2、枠体36、および外枠体20をそれぞれ別個に形成したうえ、まず、枠体36を外枠体20の下面にはめ込み、次に、外枠体20を底板部2の係合壁18にはめ込むことにより、図1図6に示すような完成状態となる。
【0040】
枠体36を外枠体20の下面にはめ込む過程では、図4および図6に示すように、外枠体20の係合突条42が、枠体36の係合溝44にはまり込み、かつ、枠体36の係合突条40が、外枠体20の係合溝32にはまり込むことにより、各係合部の弾力性によって両者が強固に固定される。同時に、係合突条40の内周面と、係合突条42の外周面は、少なくとも一方が上方へ行くほど僅かに外側へ傾く形状とされている。これにより、係合が進行すると、枠体36の四辺の係合突条40が、外枠体20の係合突条42によって外側へ引かれ、枠体36の下端部が四方へ僅かに広げられ、細胞載置膜6の四辺を引っ張る張力を生じ、細胞載置膜6に均一な張力が印加される。
【0041】
したがって、枠体36が自由状態にある時には細胞載置膜6にわずかな弛みがあったとしても、外枠体20へ枠体36を固定した時には、細胞載置膜6の弛みが解消され、細胞載置膜6の多数のウェル50が形成された細胞載置面4の平面度を高め、細胞を分散した分散液を細胞載置面4上に満たして、細胞スクリーニングデバイスを揺り動かすなどにより、細胞を偏り無く流動させて、ウェル50内に細胞を一つずつ捕獲することが容易になるという利点を有する。
【0042】
本実施形態を用いた細胞スクリーニングキットは、細胞スクリーニングデバイス1と、スクリーニングすべき細胞の分泌物に結合性を有する物質が固定化された担体粒子であるビーズ(検出粒子)Bとを備える。細胞スクリーニングキットは、例えば箱型などの外側容器の中に、一又は複数の細胞スクリーニングデバイス1と、検出粒子である多数の微細なビーズBを粉末状態でもしくは分散液に懸濁させて封入した内側容器とを収容した製品とされる。
【0043】
結合粒子の種類は限定されないが、例えば、ビーズ(磁気ビーズ、樹脂ビーズ等)、ハイドロゲル粒子(アルギン酸ナトリウムゲル、アガロースゲルなど)、金属粒子(金ナノ粒子)などからなる担体粒子と、担体粒子に付着されターゲットとなる抗体産生細胞から分泌される抗体に結合可能なキャッチャーであってもよい。結合粒子の粒径は限定されないが、一般的には粒子の最大径が100nm~50μmであることが好ましく、500nm~30μm程度であることがより好ましい。
【0044】
実際のスクリーニングを行う場合には、細胞と検出粒子であるビーズBとを分散液に分散させて細胞載置膜6上に満たし、細胞スクリーニングデバイス1を揺するか、貫通孔52を通して流路10へ排出するなどしてウェル50に細胞Cを一つずつ入れるとともに、各細胞Cとともに多数のビーズBをウェル50へ入れ、余分な分散液を貫通孔52を通して流路10へ排出する。この状態で細胞Cの分泌物中の抗体とビーズBのキャッチャーとを反応させれば、反応したビーズBのみを蛍光標識抗体で可視化して、ターゲット細胞を見つけることができる。
【0045】
上記構成から成る細胞スクリーニングデバイス1によれば、流路10の両端に位置する流路端部12を蓋部14でそれぞれ塞ぎ、これら蓋部14に流路10に連通した開口部16Aを有する流体注入ポート16を設けたことにより、蓋部14により流路端部12および流路10内の流体の移動が抑制されるとともに、流体注入ポート16を通じて流体を流路10へ出し入れすることが可能である。したがって、細胞スクリーニングデバイス1のウェル50に細胞Cを捕捉し、流路10に分散液などの流体を入れた状態で細胞スクリーニングデバイス1を持ち運んだり、傾けたりした場合にも、流路10および流路端部12に沿って流体が移動しにくくなり、スロッシング現象を抑えることができる。よって、分散液の一部が貫通孔52を通じてウェル50に流れ込み、ウェル50に捕捉されていた細胞CやビーズBを離脱させるといった問題を抑制できる。
【0046】
また、この実施形態では、流体注入ポート16の開口部16Aから流体が溢れ出た場合にも、流体貯留部(蓋部14の上面)が流体を受け止め、再度、流体注入ポート16から流路10内へ入ることが抑制でき、例えば外部からのコンタミネーションなどのおそれを低減できる。また、細胞載置面4と、蓋部14との間に仕切り部28が形成されているから、流体貯留部14に流体が溜まった場合にも流体が細胞載置部6へ流れることを抑制できる。
【0047】
また、この実施形態では、2つの流体注入ポート16が流路10の両端に形成されているから、一方の流体注入ポート16から流体を流路10へ流し込み、他方の流体注入ポート16から余剰分の流体を排出させるなど幅広い利用方法が可能となる。
【0048】
また、この実施形態では、底板部2のスペーサ46に枠体36の下端を当接させることにより、底板部2上の正しい位置に細胞載置膜6が位置決めされるため、ウェル50と流路10との間での流体の流れが所望どおりとなり、精度の高いスクリーニングが可能となる。
【0049】
また、この実施形態では、底板部2と外枠体20が別体として成形され、底板部2に外枠体20を取り付けるだけで、蓋部14と周壁部22を底板部2に対して正確な位置に配置できるから、細胞スクリーニングデバイス1の組み立てが容易である。使用後に底板部2から外枠体20を取り外すこともでき、メンテナンスが容易である。
【0050】
また、この実施形態では、底板部2と外枠体20と枠体36をそれぞれ別体として成形し、底板部2に枠体36と外枠体20とを取り付けるだけで、細胞載置膜6、蓋部14、周壁部22の正確な位置決めが可能となり、組み立てしやすさが向上できる。使用後に底板部2から枠体36と外枠体20とを取り外すこともでき、メンテナンスが容易である。
【0051】
また、この実施形態では、底板部2と外枠体20とをそれぞれ別体として成形し、底板部2に外枠体20とを取り付けるだけで、細胞載置部6、蓋部14、周壁部22、および二つの流体注入ポート16の正確な位置決めが可能となるから、組み立てやすい。
【0052】
また、この実施形態では、流体注入ポート16が円筒状をなしているので、ピペットやディスペンサーなどの円錐状に尖った先端をほぼ開口部16Aに気密的に当てて流体の出し入れが容易である。
【0053】
この実施形態の細胞スクリーニングキットは、個々のウェル50に細胞Cを取り込んだ状態で、ウェル50内で検出粒子Bと細胞の分泌物とを反応させ、検出粒子Bからの発光等によってスクリーニングが行えるうえ、流路10に分散液などの流体を入れた状態で細胞スクリーニングデバイス1を持ち運んだり、傾けたりした場合にも、流路10に沿って流体が移動しにくくなり、分散液の一部が貫通孔52を通じてウェル50に流れ込み、ウェル50に捕捉されていた細胞Cや検出粒子Bをウェル50から離脱させるといった問題を抑制できる。
【0054】
先の実施形態では、細胞スクリーニングデバイス1の両端に流体注入ポート16を設けた構成であったが、図9に示すように、細胞スクリーニングデバイス1の片側の蓋部14のみに流体注入ポート16を形成する構成も可能である。この場合、ひとつの流体注入ポート16のみから流体の出し入れが可能となる。
【0055】
また、先の実施形態では、蓋部14が平面状であったが、図10に示すように、蓋部14において、流路端部12の天井面の少なくとも一部に、流体注入ポート16へ近づくにつれ傾斜面状または階段状に上昇する泡排出面54を形成することも可能である。この場合、蓋部14の裏側の天井面が流体注入ポートに向けて上昇するから、流路端部12内に入り込んだ気泡Gが傾斜面54に沿って上昇し、流体注入ポート16から排出されやすくなり、気泡Gによって、貫通孔52が閉塞するなどのトラブルを抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の細胞スクリーニングデバイスまたは細胞スクリーニングキットによれば、細胞スクリーニングデバイスのウェルに細胞を捕捉し、流路に分散液などの流体を入れた状態で細胞スクリーニングデバイスを持ち運んだり、傾けたりした場合にも、流路に沿って流体が移動しにくくなり、スロッシング現象を抑えて、分散液の一部が貫通孔を通じてウェルに流れ込み、ウェルに捕捉されていた細胞や検出粒子を離脱させるなどの問題を抑制できる。よって、本発明は産業上の利用が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1:細胞スクリーニングデバイス、2:底板部、4:細胞載置面、
6:細胞載置膜(細胞載置部)、8:流体注入部、10:流路、12:流路端部、
14:蓋部(流体貯留部)、16:流体注入ポート、16A:開口部、
18:係合壁、20:外枠体、22:周壁部、24:係合溝、26:突起、
28:仕切り部、30:リブ、32:係合溝、34:段部、36:枠体、
36A:壁部、38:傾斜面、40:係合突条、42:係合突条、44:係合溝、
46:スペーサ、47:切欠、50:ウェル、52:貫通孔、
54:傾斜面(泡排出面)、C:細胞、B:ビーズ、L:分散液、G:気泡。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10