(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 23/14 20060101AFI20241213BHJP
【FI】
C08L23/14
(21)【出願番号】P 2021567353
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2020047106
(87)【国際公開番号】W WO2021132000
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2019234958
(32)【優先日】2019-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】鈴江 真士
(72)【発明者】
【氏名】袋田 裕史
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-195032(JP,A)
【文献】特開昭62-195033(JP,A)
【文献】特開2013-079375(JP,A)
【文献】国際公開第2018/025863(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0299442(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08F 6/00-246/00
251/00-283/00
283/02-289/00
291/00-297/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程1、工程2及び工程3を含む
、ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法
であって、
前記ヘテロファジックプロピレン重合材料は、
プロピレン系重合体Aとプロピレン系重合体Bとプロピレン共重合体Cとを含むヘテロファジックプロピレン重合材料であって、
プロピレン系重合体Aは、プロピレンに由来する単量体単位を80質量%以上含有し、かつ極限粘度が2.0dL/g以下であり、
プロピレン系重合体Bは、プロピレンに由来する単量体単位を80質量%以上含有し、かつ極限粘度が2.1~4.9dL/gであり、
プロピレン共重合体Cは、エチレン及び炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンに由来する単量体単位を30~55質量%とプロピレンに由来する単量体単位とを含有し、かつ極限粘度が1.5~4.5dL/gであり、
プロピレン系重合体A、プロピレン系重合体B及びプロピレン共重合体Cの含有量が、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全質量を100質量%として、それぞれ50~75質量%、5~20質量%及び5~40質量%である、ヘテロファジックプロピレン重合材料である、
ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法。
工程1:水素/プロピレン比が1000molppm以上である条件で、液相で、プロピレンを含む単量体を重合し、少なくとも一部のプロピレン系重合体Aを得る工程1-1;及び、
水素/プロピレン比が50000molppm以上である条件で、気相で、プロピレンを含む単量体を重合し、少なくとも一部のプロピレン系重合体Aを得る工程1-2
からなる群より選ばれる少なくとも一種の工程
工程2:水素/プロピレン比が40molppm以上1000molppm未満である条件で、液相で、プロピレンを含む単量体を重合し、少なくとも一部のプロピレン系重合体Bを得る工程2-1;及び、
水素/プロピレン比が40molppm以上50000molppm未満である条件で、気相で、プロピレンを含む単量体を重合し、少なくとも一部のプロピレン系重合体Bを得る工程2-2
からなる群より選ばれる少なくとも一種の工程
工程3:水素/プロピレン比が9000molppm以上310000molppm以下である条件で、エチレン及び炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンとプロピレンとを含む単量体を重合し、プロピレン共重合体Cを得る工程
【請求項2】
前記ヘテロファジックプロピレン重合材料は、
プロピレン系重合体Aの極限粘度が0.3~1.2dL/gであり、
プロピレン系重合体Bの極限粘度が2.5~4.0dL/gであり、
プロピレン共重合体Cの極限粘度が2.0~4.0dL/gであり、
プロピレン共重合体C中、エチレン及び炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンに由来する単量体単位の含有量は35~50質量%であり、
プロピレン系重合体A、プロピレン系重合体B及びプロピレン共重合体Cの含有量が、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全質量を100質量%として、それぞれ60~75質量%、7~18質量%、及び7~33質量%である、請求項1に記載のヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法。
【請求項3】
前記ヘテロファジックプロピレン重合材料は、
プロピレン共重合体C中、エチレン及び炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンに由来する単量体単位の含有量は36~48質量%である、請求項1又は2に記載のヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法。
【請求項4】
前記ヘテロファジックプロピレン重合材料は、
プロピレン共重合体C中、エチレン及び炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンに由来する単量体単位の含有量は38~45質量%である、請求項3に記載のヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法。
【請求項5】
工程1-1の水素/プロピレン比が1500molppm以上100000molppm以下であり、
工程1-2の水素/プロピレン比が65000molppm以上1500000molppm以下であり、
工程2-1の水素/プロピレン比が50molppm以上900molppm以下であり、
工程2-2の水素/プロピレン比が100molppm以上35000molppm以下であり、
工程3の水素/プロピレン比が12000molppm以上250000molppm以下である、請求項
1~4のいずれか一項に記載のヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法。
【請求項6】
工程1-1の水素/プロピレン比が3000molppm以上50000molppm以下であり、
工程1-2の水素/プロピレン比が80000molppm以上1000000molppm以下であり、
工程2-1の水素/プロピレン比が75molppm以上750molppm以下であり、
工程2-2の水素/プロピレン比が300molppm以上20000molppm以下であり、
工程3の水素/プロピレン比が15000molppm以上200000molppm以下である、請求項
1~5のいずれか一項に記載のヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロファジックプロピレン重合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポリプロピレン系樹脂組成物及びそれからなる成形体が記載され、上記ポリプロピレン系樹脂組成物が、重合体成分(I)と重合体成分(II)とからなるプロピレン系ブロック共重合体、いわゆるヘテロファジックプロピレン重合材料、を含有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、高い寸法安定性を有する成形体を製造できる材料は、各種用途に有用である。
【0005】
そこで、本発明は、寸法安定性に優れる成形体を製造できるヘテロファジックプロピレン重合材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のヘテロファジックプロピレン重合材料は、プロピレン系重合体Aとプロピレン系重合体Bとプロピレン共重合体Cとを含むヘテロファジックプロピレン重合材料であって、プロピレン系重合体Aは、プロピレンに由来する単量体単位を80質量%以上含有し、かつ極限粘度が2.0dL/g以下であり、プロピレン系重合体Bは、プロピレンに由来する単量体単位を80質量%以上含有し、かつ極限粘度が2.1~4.9dL/gであり、プロピレン共重合体Cは、エチレン及び炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンに由来する単量体単位を30~55質量%とプロピレンに由来する単量体単位とを含有し、かつ極限粘度が1.5~4.5dL/gであり、プロピレン系重合体A、プロピレン系重合体B及びプロピレン共重合体Cの含有量が、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全質量を100質量%として、それぞれ50~75質量%、5~20質量%及び5~40質量%である。
【0007】
上記ヘテロファジックプロピレン重合材料において、プロピレン系重合体Aの極限粘度が0.3~1.2dL/gであり、プロピレン系重合体Bの極限粘度が2.5~4.0dL/gであり、プロピレン共重合体Cの極限粘度が2.0~4.0dL/gであり、プロピレン共重合体C中、エチレン及び炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンに由来する単量体単位の含有量は35~50質量%であり、プロピレン系重合体A、プロピレン系重合体B及びプロピレン共重合体Cの含有量が、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全質量を100質量%として、それぞれ60~75質量%、7~18質量%、及び7~33質量%であることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、寸法安定性に優れる成形体を製造できるヘテロファジックプロピレン重合材料を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[定義]
本明細書において、用語「α-オレフィン」は、α位に炭素-炭素不飽和二重結合を有する脂肪族不飽和炭化水素を意味する。
本明細書において、用語「ヘテロファジックプロピレン重合材料」は、プロピレンに由来する単量体単位を80質量%以上含有するプロピレン系重合体(ただし、該プロピレン系重合体の全質量を100質量%とする。)のマトリックスの中で、エチレン及び炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンに由来する単量体単位とプロピレンに由来する単量体単位とを含有するプロピレン共重合体が分散した構造を有する混合物を意味する。
【0010】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において、数値範囲を表す「下限~上限」の記載は、「下限以上、上限以下」を表し、「上限~下限」の記載は、「上限以下、下限以上」を表す。すなわち、これらの記載は、上限及び下限を含む数値範囲を表す。
【0011】
〔ヘテロファジックプロピレン重合材料〕
本実施形態のヘテロファジックプロピレン重合材料は、プロピレン系重合体Aとプロピレン系重合体Bとプロピレン共重合体Cとを含むヘテロファジックプロピレン重合材料であって、プロピレン系重合体Aは、プロピレンに由来する単量体単位を80質量%以上含有し、かつ極限粘度が2.0dL/g以下であり、プロピレン系重合体Bは、プロピレンに由来する単量体単位を80質量%以上含有し、かつ極限粘度が2.1~4.9dL/gであり、プロピレン共重合体Cは、エチレン及び炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンに由来する単量体単位を30~55質量%とプロピレンに由来する単量体単位とを含有し、かつ極限粘度が1.5~4.5dL/gであり、プロピレン系重合体A、プロピレン系重合体B及びプロピレン共重合体Cの含有量が、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全質量を100質量%として、それぞれ50~75質量%、5~20質量%及び5~40質量%である。このようなヘテロファジックプロピレン重合材料は、寸法安定性に優れる成形体を製造できる。
【0012】
本明細書において、極限粘度([η]、単位:dL/g)は、以下の方法によって、テトラリンを溶媒として用いて、温度135℃で測定される値である。
【0013】
ウベローデ型粘度計を用いて濃度0.1g/dL、0.2g/dL及び0.5g/dLの3点について還元粘度を測定する。還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法により、極限粘度を求める。外挿法による極限粘度の計算方法は、例えば、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載されている。
【0014】
プロピレン系重合体Aの極限粘度は、0.3~1.2dL/gであってもよく、0.4~1.0dL/gであってもよく、0.5~0.8dL/gであってもよい。
【0015】
プロピレン系重合体Aは、例えば、プロピレン単独重合体であってもよく、プロピレン以外の単量体に由来する単量体単位を含んでいてもよい。プロピレン系重合体Aが、プロピレン以外の単量体に由来する単量体単位を含む場合、この含有量は、プロピレン系重合体Aの全質量を基準として、例えば、0.01質量%以上20質量%未満であってもよい。
【0016】
プロピレン以外の単量体としては、例えば、エチレン及び炭素数4以上12以下のα-オレフィンが挙げられる。中でも、エチレン及び炭素数4~10のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン及び1-オクテンからなる群より選択される少なくとも一種がより好ましく、エチレン及び1-ブテンからなる群より選択される少なくとも一種が更に好ましい。
【0017】
プロピレン以外の単量体に由来する単量体単位を含むプロピレン系重合体としては、例えば、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体及びプロピレン-エチレン-1-オクテン共重合体が挙げられる。
【0018】
プロピレン系重合体Aは、成形体の剛性の観点から、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体が好ましく、プロピレン単独重合体がより好ましい。
【0019】
本実施形態のヘテロファジックプロピレン重合材料は、プロピレン系重合体Aを1種のみ含有してもよく、2種以上含有してもよい。
【0020】
プロピレン系重合体Bの極限粘度は、2.5~4.0dL/gであってもよく、2.6~3.9dL/gであってもよく、2.8~3.7dL/gであってもよい。
【0021】
プロピレン系重合体Bは、例えば、プロピレン単独重合体であってもよく、プロピレン以外の単量体に由来する単量体単位を含んでいてもよい。プロピレン系重合体Bが、プロピレン以外の単量体に由来する単量体単位を含む場合、この含有量は、プロピレン系重合体Aの全質量を基準として、例えば、0.01質量%以上20質量%未満であってもよい。
【0022】
プロピレン以外の単量体としては、例えば、エチレン及び炭素数4以上12以下のα-オレフィンが挙げられる。中でも、エチレン及び炭素数4~10のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン及び1-オクテンからなる群より選択される少なくとも一種がより好ましく、エチレン及び1-ブテンからなる群より選択される少なくとも一種が更に好ましい。
【0023】
プロピレン以外の単量体に由来する単量体単位を含むプロピレン系重合体としては、例えば、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体及びプロピレン-エチレン-1-オクテン共重合体が挙げられる。
【0024】
プロピレン系重合体Bは、成形体の剛性の観点から、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体が好ましく、プロピレン単独重合体がより好ましい。
【0025】
本実施形態のヘテロファジックプロピレン重合材料は、プロピレン系重合体Bを1種のみ含有してもよく、2種以上含有してもよい。
【0026】
プロピレン共重合体Cの極限粘度は、2.0~4.0dL/gであってもよく、2.1~3.5dL/gであってもよく、2.1~3.0dL/gであってもよい。
【0027】
プロピレン共重合体Cにおいて、エチレン及び炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンに由来する単量体単位の含有量は、35~50質量%であってもよく、36~48質量%であってもよく、38~45質量%であってもよい。
【0028】
プロピレン共重合体Cにおいて、エチレン及び炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンとしては、エチレン及び炭素数4~10のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン及び1-デセンからなる群より選択される少なくとも一種がより好ましく、エチレン及び1-ブテンからなる群より選択される少なくとも一種が更に好ましい。
【0029】
プロピレン共重合体Cとしては、例えば、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-エチレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-デセン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体及びプロピレン-1-デセン共重合体が挙げられる。中でも、上記プロピレン共重合体Cとしては、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体又はプロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体が好ましく、プロピレン-エチレン共重合体がより好ましい。
【0030】
本実施形態のヘテロファジックプロピレン重合材料は、プロピレン共重合体Cを1種のみ含有してもよく、2種以上含有してもよい。
【0031】
本実施形態のヘテロファジックプロピレン重合材料としては、例えば、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-1-ヘキセン)-(プロピレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン-1-ヘキセン)-(プロピレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン-1-ヘキセン)-(プロピレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-1-オクテン)-(プロピレン-1-オクテン)重合材料、及び(プロピレン-1-オクテン)-(プロピレン-1-デセン)重合材料が挙げられる。中でも(プロピレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)重合材料、又は(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-ブテン)重合材料が好ましく、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料がより好ましい。
【0032】
ここで、上記記載は「(プロピレンに由来する単量体単位を80質量%以上含有するプロピレン系重合体の種類)-(プロピレン共重合体Cの種類)」を示す。すなわち、「(プロピレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料」との記載は、「プロピレン系重合体A及びBがプロピレン単独重合体であり、プロピレン共重合体Cがプロピレン-エチレン共重合体であるヘテロファジックプロピレン重合材料」を意味する。他の類似の表現においても同様である。
【0033】
プロピレン系重合体A、プロピレン系重合体B及びプロピレン共重合体Cの含有量は、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全質量を100質量%として、それぞれ60~75質量%、7~18質量%、及び7~33質量%であってもよい。
【0034】
本実施形態のヘテロファジックプロピレン重合材料は、プロピレン系重合体Aの極限粘度が0.3~1.2dL/gであり、プロピレン系重合体Bの極限粘度が2.5~4.0dL/gであり、プロピレン共重合体Cの極限粘度が2.0~4.0dL/gであり、プロピレン共重合体C中、エチレン及び炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンに由来する単量体単位の含有量は35~50質量%であり、プロピレン系重合体A、プロピレン系重合体B及びプロピレン共重合体Cの含有量が、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全質量を100質量%として、それぞれ60~75質量%、7~18質量%、及び7~33質量%であることが寸法安定性の観点から好ましい。
【0035】
ヘテロファジックプロピレン重合材料のアイソタクチックペンタッド分率([mmmm]分率ともいう)は、樹脂組成物からなる成形体の剛性及び寸法安定性の観点から、0.950以上であることが好ましく、0.970以上であることがより好ましい。成分Aのアイソタクチックペンタッド分率は、例えば、1.000以下であってもよい。アイソタクチックペンタッド分率が1に近い重合体は、分子構造の立体規則性が高く、結晶性が高いと考えられる。
【0036】
アイソタクチックペンタッド分率は、ペンタッド単位での、アイソタクチック分率を意味する。すなわち、アイソタクチックペンタッド分率は、ペンタッド単位でみたときに、プロピレンに由来する単量体単位が5個連続してメソ結合した構造の含有割合を示す。なお、対象の成分が共重合体である場合には、プロピレンに由来する単量体単位の連鎖について測定される値をいう。
【0037】
本明細書において、アイソタクチックペンタッド分率は、13C-NMRスペクトルで測定される値をいう。具体的には、13C-NMRスペクトルによって得られるメチル炭素領域の全吸収ピークの面積に対するmmmmピークの面積の比を、アイソタクチックペンタッド分率とする。なお、13C-NMRスペクトルによるアイソタクチックペンタッド分率の測定方法は、例えば、A.ZambelliらによるMacromolecules,6,925(1973)に記載されている。ただし、13C-スペクトルによって得られる吸収ピークの帰属は、Macromolecules,8,687(1975)の記載に基づくものとする。
【0038】
ヘテロファジックプロピレン重合材料に対して、必要に応じて、耐熱安定剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、結晶核剤、滑剤、着色剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、難燃剤、石油樹脂、発泡剤、発泡助剤、有機又は無機フィラー等の添加剤を添加することができる。添加剤の添加量は、ヘテロファジックプロピレン重合材料全体に対して、0.01重量%以上であることが好ましく、また、30重量%以下であることが好ましい。添加剤は、1種単独で用いてもよいし、また、任意の割合で2種以上を併用してもよい。
【0039】
〔ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法〕
上記ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法の一例を説明する。この製造方法は、工程1、工程2及び工程3を含む。
【0040】
工程1:水素/プロピレン比が1000molppm以上である条件で、液相で、プロピレンを含む単量体を重合し、少なくとも一部のプロピレン系重合体Aを得る工程1-1;及び、
水素/プロピレン比が50000molppm以上である条件で、気相で、プロピレンを含む単量体を重合し、少なくとも一部のプロピレン系重合体Aを得る工程1-2
からなる群より選ばれる少なくとも一種の工程
工程2:水素/プロピレン比が40molppm以上1000molppm未満である条件で、液相で、プロピレンを含む単量体を重合し、少なくとも一部のプロピレン系重合体Bを得る工程2-1;及び、
水素/プロピレン比が40molppm以上50000molppm未満である条件で、気相で、プロピレンを含む単量体を重合し、少なくとも一部のプロピレン系重合体Bを得る工程2-2
からなる群より選ばれる少なくとも一種の工程
工程3:水素/プロピレン比が9000molppm以上310000molppm以下である条件で、炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンとプロピレンとを含む単量体を重合し、プロピレン共重合体Cを得る工程
【0041】
ただし、本明細書において、水素/プロピレン比は、下記のように定義される。
液相で重合する場合、水素/プロピレン比は、反応器供給部における気体である水素と液体であるプロピレンとの物質量の比をいう。
気相で重合する場合、水素/プロピレン比は、反応装置出口における気体である水素と気体であるプロピレンとの物質量の比をいう。
本明細書において、例えば「水素/プロピレン比が1molppmである」との記載は、「水素/プロピレン比が1×10-6mol/molである」と同義であり、1molのプロピレンに対し、水素が1×10-6molであることを意味する。
【0042】
[工程1-1]
工程1-1では、例えば、液相重合反応器を用いて、重合触媒及び水素の存在下で、プロピレンを含む単量体を重合する。重合に用いる単量体の構成は、プロピレン系重合体Aを構成する単量体単位の種類及び含有量に基づき適宜調整できる。単量体中のプロピレンの含有量は、単量体の全質量に対して、例えば、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0043】
液相重合反応器としては、例えば、ループ型液相反応器及びベッセル型液相反応器が挙げられる。
【0044】
重合触媒としては、例えば、チーグラー・ナッタ型触媒やメタロセン系触媒等が挙げられ、好ましくは、チーグラー・ナッタ型触媒である。チーグラー・ナッタ型触媒としては、例えば、マグネシウム化合物にチタン化合物を接触させて得られる固体触媒成分等のTi-Mg系触媒;及び、マグネシウム化合物にチタン化合物を接触させて得られる固体触媒成分と有機アルミニウム化合物と必要に応じて電子供与性化合物等の第3成分とを含有する触媒が挙げられ、好ましくは、マグネシウム化合物にチタン化合物を接触させて得られる固体触媒成分と有機アルミニウム化合物と必要に応じて電子供与性化合物等の第3成分とを含有する触媒であり、更に好ましくは、マグネシウム化合物にハロゲン化チタン化合物を接触させて得られる固体触媒成分と有機アルミニウム化合物と電子供与性化合物とを含有する触媒である。少量のオレフィンを接触させ、予備活性化させた触媒を重合触媒として用いることもできる。
【0045】
重合触媒として、上記固体触媒成分、n-ヘキサン、トリエチルアルミニウム、tert-ブチル-n-プロピルジメトキシシラン等の存在下で、オレフィンを予備重合させて得られる予備重合触媒成分を用いることもできる。予備重合に用いるオレフィンは、ヘテロファジックプロピレン重合材料を構成するオレフィンのうちのいずれかであることが好ましい。
【0046】
重合温度は、例えば0~120℃とすることができる。重合圧力は、例えば常圧~10MPaGとすることができる。
【0047】
工程1-1の水素/プロピレン比は、1500molppm以上100000molppm以下であってもよく、3000molppm以上50000molppm以下であってもよい。
【0048】
[工程1-2]
工程1-2では、例えば、気相重合反応器を用いて、重合触媒及び水素の存在下で、プロピレンを含む単量体を重合する。重合に用いる単量体の構成は、プロピレン系重合体Aを構成する単量体単位の種類及び含有量に基づき適宜調整できる。単量体中のプロピレンの含有量は、単量体の全質量に対して、例えば、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0049】
気相重合反応器としては、例えば、流動層型反応器及び噴流層型反応器が挙げられる。
【0050】
気相重合反応器は、直列に接続された複数の反応領域を有する多段気相重合反応装置であってもよい。多段気相重合反応装置は、直列に接続された複数の重合槽を有する多段気相重合反応装置であってもよい。このような装置によれば、プロピレン系重合体Aの極限粘度を上記範囲に調整し易いと考えられる。
【0051】
多段気相重合反応装置は、例えば、鉛直方向に延びる円筒部と、円筒部に形成され、下方に行くほど内径が小さくなると共に下端にガス導入用開口を有する縮径部とを備え、縮径部の内面と縮径部よりも上方の円筒部の内面とによって囲まれ、その内部に噴流層が形成される噴流層型オレフィン重合反応領域と、流動層型オレフィン重合反応領域とを備えることができる。
【0052】
多段気相重合反応装置は、鉛直方向に複数の反応領域を有することが好ましい。多段気相重合反応装置は、プロピレン系重合体Aの極限粘度の観点から、例えば、鉛直方向に複数の反応領域を有し、そのうち最上段が流動層型オレフィン重合反応領域であり、残りが複数の噴流層型オレフィン重合反応領域であることが好ましい。このような装置においては、例えば、装置の上部から固体成分を供給し、装置の下部から気体成分を供給することにより、反応領域に流動層又は噴流層を形成する。気体成分は、プロピレンを含む単量体及び水素の他に、窒素等の不活性ガスを含んでいてもよい。当該装置において、噴流層型オレフィン重合反応領域の数は、3以上が好ましい。
【0053】
複数の反応領域を鉛直方向に設ける場合、下段の反応領域は、上段の反応領域の斜め下方向に配置されていてもよい。このような装置においては、例えば、上段の反応領域で得られた固体成分を斜め下方向に排出し、排出された固体成分は、下段の反応領域に、斜め上方向から供給される。この場合、気体成分は、例えば、下段の反応領域の上部から排出した気体成分を、上段の反応領域の下部から供給する。
【0054】
重合触媒の具体例は、上記同様である。
【0055】
重合温度は、例えば0~120℃であってもよく、20~100℃であってもよく、40~100℃であってもよい。重合圧力は、例えば常圧~10MPaGであってもよく、1~5MPaGであってもよい。
【0056】
工程1-2の水素/プロピレン比は、65000molppm以上1500000molppm以下であってもよく、80000molppm以上1000000molppm以下であってもよい。
【0057】
[工程2-1]
工程2-1では、例えば、液相重合反応器を用いて、重合触媒及び水素の存在下で、プロピレンを含む単量体を重合する。重合に用いる単量体の構成は、プロピレン系重合体Bを構成する単量体単位の種類及び含有量に基づき適宜調整できる。単量体中のプロピレンの含有量は、単量体の全質量に対して、例えば、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0058】
工程2-1で用いる液相重合反応器としては、例えば、ループ型液相反応器及びベッセル型液相反応器が挙げられる。
【0059】
重合触媒の具体例は、上記同様である。
【0060】
重合温度は、例えば0~120℃とすることができる。重合圧力は、例えば常圧~10MPaGとすることができる。
【0061】
工程2-1の水素/プロピレン比は、50molppm以上900molppm以下であってもよく、75molppm以上750molppm以下であってもよい。
【0062】
[工程2-2]
工程2-2では、例えば、気相重合反応器を用いて、重合触媒及び水素の存在下で、プロピレンを含む単量体を重合する。重合に用いる単量体の構成は、プロピレン系重合体Bを構成する単量体単位の種類及び含有量に基づき適宜調整できる。単量体中のプロピレンの含有量は、単量体の全質量に対して、例えば、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0063】
工程2-2で用いる気相重合反応器としては、例えば、流動層型反応器及び噴流層型反応器が挙げられる。
【0064】
重合触媒の具体例は、上記同様である。
【0065】
重合温度は、例えば0~120℃であってもよく、20~100℃であってもよく、40~100℃であってもよい。重合圧力は、例えば常圧~10MPaGであってもよく、1~5MPaGであってもよい。
【0066】
工程2-2の水素/プロピレン比は、100molppm以上35000molppm以下であってもよく、300molppm以上20000molppm以下であってもよい。
【0067】
[工程3]
工程3は、液相でも気相でもよいが、例えば、気相で実施される。液相で実施される場合、例えば、ループ型、ベッセル型等の液相反応器を用いることができる。気相で実施される場合、例えば、流動層型反応器、噴流層型反応器等の気相反応器を用いることができる。
【0068】
工程3では、例えば、重合触媒及び水素の存在下で、炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンとプロピレンとを含む単量体を重合する。重合に用いる単量体の構成は、プロピレン共重合体Cを構成する単量体単位の種類及び含有量に基づき適宜調整できる。重合に用いる単量体中の炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンの含有量は、単量体の全質量に対して、例えば、30~55質量%であってもよく、35~50質量%であってもよい。
【0069】
重合触媒の具体例は、上記同様である。
【0070】
液相で重合する場合、重合温度は、例えば40~100℃であり、重合圧力は、例えば常圧~5MPaGである。気相で重合する場合、重合温度は、例えば40~100℃であり、重合圧力は、例えば0.5~5MPaGである。
【0071】
工程3の水素/プロピレン比は、12000molppm以上250000molppm以下であってもよく、15000molppm以上200000molppm以下であってもよい。
【0072】
プロピレン系重合体A、プロピレン系重合体B及びプロピレン共重合体Cを、それぞれの工程で作製し、重合触媒を失活させてから、これらを溶液状態、溶融状態等で混合してもよいが、触媒を失活させることなく、得られた重合体を次の工程に供給することにより、連続的に重合体を作製してもよい。触媒を失活させることなく連続的に重合する場合、前工程の重合触媒は、後工程の重合触媒としても作用する。
【0073】
工程1、工程2及び工程3の順序に特に制限はない。工程1は、工程1-1及び工程1-2を含むことが好ましく、工程2は、工程2-2を含むことが好ましい。
【0074】
本実施形態に係る製造方法は、例えば、工程1-1と工程1-2と工程2-2と工程3とをこの順に含んでいてもよい。
【0075】
本実施形態に係る製造方法は、成形体の寸法安定性の観点から、工程1-1の水素/プロピレン比が1500molppm以上100000molppm以下であり、工程1-2の水素/プロピレン比が65000molppm以上1500000molppm以下であり、工程2-1の水素/プロピレン比が50molppm以上900molppm以下であり、工程2-2の水素/プロピレン比が100molppm以上35000molppm以下であり、工程3の水素/プロピレン比が12000molppm以上250000molppm以下であることが好ましく、工程1-1の水素/プロピレン比が3000molppm以上50000molppm以下であり、工程1-2の水素/プロピレン比が80000molppm以上1000000molppm以下であり、工程2-1の水素/プロピレン比が75molppm以上750molppm以下であり、工程2-2の水素/プロピレン比が300molppm以上20000molppm以下であり、工程3の水素/プロピレン比が15000molppm以上200000molppm以下であることがより好ましい。
【0076】
すなわち、本実施形態に係るヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法は、工程1、工程2及び工程3を含んでいてもよい。
【0077】
工程1:水素/プロピレン比が1000molppm以上である条件で、液相で、プロピレンを含む単量体を重合し、少なくとも一部のプロピレン系重合体Aを得る工程1-1;及び、
水素/プロピレン比が50000molppm以上である条件で、気相で、プロピレンを含む単量体を重合し、少なくとも一部のプロピレン系重合体Aを得る工程1-2
からなる群より選ばれる少なくとも一種の工程
工程2:水素/プロピレン比が40molppm以上1000molppm未満である条件で、液相で、プロピレンを含む単量体を重合し、少なくとも一部のプロピレン系重合体Bを得る工程2-1;及び、
水素/プロピレン比が40molppm以上50000molppm未満である条件で、気相で、プロピレンを含む単量体を重合し、少なくとも一部のプロピレン系重合体Bを得る工程2-2
からなる群より選ばれる少なくとも一種の工程
工程3:水素/プロピレン比が9000molppm以上310000molppm以下である条件で、炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンとプロピレンとを含む単量体を重合し、プロピレン共重合体Cを得る工程
【0078】
上記ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法において、工程1-1の水素/プロピレン比が1500molppm以上100000molppm以下であり、工程1-2の水素/プロピレン比が65000molppm以上1500000molppm以下であり、工程2-1の水素/プロピレン比が50molppm以上900molppm以下であり、工程2-2の水素/プロピレン比が100molppm以上35000molppm以下であり、工程3の水素/プロピレン比が12000molppm以上250000molppm以下であることができる。
【0079】
上記ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法において、工程1-1の水素/プロピレン比が3000molppm以上50000molppm以下であり、工程1-2の水素/プロピレン比が80000molppm以上1000000molppm以下であり、工程2-1の水素/プロピレン比が75molppm以上750molppm以下であり、工程2-2の水素/プロピレン比が300molppm以上20000molppm以下であり、工程3の水素/プロピレン比が15000molppm以上200000molppm以下であることができる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例を挙げて本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0081】
実施例及び比較例における各項目の測定及び評価方法を下記に示す。
【0082】
〔極限粘度([η]、単位:dL/g)〕
ウベローデ型粘度計を用いて濃度0.1g/dL、0.2g/dL及び0.5g/dLの3点について還元粘度を測定した。極限粘度は、参考文献「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491項に記載の計算方法、すなわち、還元粘度を濃度に対してプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求めた。テトラリンを溶媒として用いて、温度135℃で測定を行った。
【0083】
〔得られたヘテロファジックプロピレン重合材料中のエチレン単位含有量(単位:質量%)〕
高分子ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店刊)の第619頁に記載のIRスペクトル測定に準拠し、IRスペクトル法によって得られたヘテロファジックプロピレン重合材料中のエチレン単位含有量を求めた。なお、ここでいう「エチレン単位」とはエチレン由来の構造単位を意味する。ヘテロファジックプロピレン重合材料中のエチレン含量を、ヘテロファジックプロピレン重合材料中のエチレン-プロピレン共重合体の割合(X)で除して、プロピレン共重合体C中のエチレン含量を求めた。なお、ヘテロファジックプロピレン重合材料中のエチレン-プロピレン共重合体の割合(X)は、後述の方法により求めた。
【0084】
実施例及び比較例の寸法安定性及びゲル数の評価には、次の方法で作製したペレットを使用した。ヘテロファジックプロピレン重合材料100重量部に対して、ステアリン酸カルシウム(日本油脂製)0.05重量部、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート0.1重量部、及び6-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンゾ[d,f][1.3.2]ジオキサフォスフェピン(スミライザーGP、住友化学株式会社製)0.1重量部を混合した後、単軸押出機(田辺プラスチックス株式会社製、バレル内径:40mm、スクリュー回転数:100rpm、シリンダー温度:200℃)を用いて溶融混練し、得られた溶融混練物を、その後に、ダイ部より押し出した。この押出物を冷水により冷却固化、切断して、ペレットを得た。
【0085】
〔寸法安定性〕
前述の方法でペレット化した実施例及び比較例のヘテロファジックプロピレン重合材料を射出成形して得られる射出成形体の線膨張係数を測定することにより寸法安定性を評価した。
【0086】
[射出成形体の製造]
ヘテロファジックプロピレン重合材料を以下の条件で射出成形して射出成形体を製造した。射出成形機として、住友重機械工業株式会社製 SE180D、型締力180トン、金型として、100mm×400mm×3mm(厚さ)、端面から1点ゲートを用いて、成形温度180℃、射出速度5mm/sec、金型温度30℃の条件で射出成形した。
【0087】
[線膨張係数の測定]
射出成形体の線膨張係数を、SIIナノテクノロジー株式会社製 熱機械分析装置TMA/SS6100を用い、以下の方法により測定した。
【0088】
射出成形体の長手方向の中央部から5×10×3(mm)の試験片を切り出した。試験片を上記装置にセットして、5℃/分の昇温速度で-50℃から130℃まで昇温し、成形時の残留歪みを取り除いた。その後、装置に射出成形時のMD方向(樹脂の流れ方向)又はTD方向(MD方向に対して直交方向)の寸法変化が測定できるように、試験片を再びセットし、23℃における寸法を正確に測定した。5℃/分の昇温速度で-20から80℃に昇温し、その間のMD方向及びTD方向の寸法変化を測定した。単位長さ及び単位温度あたりの寸法変化を線膨張係数として求めた。MD方向の線膨張係数とTD方向の線膨張係数の和を2で除した値を「MDTD平均線膨張係数」(単位:1/℃)とした。MDTD線膨張係数の値が小さいほど寸法安定性が良好であることを示す。
【0089】
〔ゲル数〕
前述の方法でペレット化した実施例及び比較例のヘテロファジックプロピレン重合材料を押出成形して得られるシートのゲル数を測定した。
【0090】
[シートの製造]
ゲル数測定用シートは、次の方法に従って作製した。スクリュー直径20mmの単軸押出機(田辺プラスチック機械株式会社製VS20-14型)により、樹脂温度230℃で、材料をシート状に溶融押出し、溶融押出されたシート状物を、30℃の冷却水を通水した冷却ロールにより冷却して、厚さ50μmのシートを作製した。
【0091】
[ゲル数の測定]
シートの表面を、EPSON社製スキャナーGT-X970により観察し、シート表面の画像を得た。得られたシート表面の画像を900dpi、8bitの条件でコンピューターに取り込み、閾値が120以上の部分を白、閾値が120未満の部分を黒とする2値化処理を行った。2値化処理は、旭化成エンジニアリング社製画像解析ソフト“A像君”を用いた。白部分をゲルとした。ゲルの形状は不定形であるので、円相当径をゲルの大きさとした。シート100cm2当たりの直径100μm以上であるゲルの数(単位:個/100cm2)を求めた。
【0092】
〔参考例:固体触媒成分の製造〕
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた100mLのフラスコを窒素で置換した後、該フラスコに、トルエン36.0mL、及び四塩化チタン22.5mLを投入し、撹拌し、四塩化チタン溶液を得た。フラスコ内の温度を0℃とした後、同温度でマグネシウムジエトキシド1.88gを30分おきに4回投入した後、0℃で1.5時間撹拌した。次いで、2-エトキシメチル-3,3-ジメチルブタン酸エチル0.60mLをフラスコ内に投入した後でフラスコ内の温度を10℃に昇温した。その後、同温度で2時間撹拌し、トルエン9.8mLを投入した。次いで、フラスコ内の温度を昇温し、60℃の時点でフラスコ内に2-エトキシメチル-3,3-ジメチルブタン酸エチル3.15mLを投入し、110℃まで昇温した。同温度で3時間、フラスコ内の混合物を撹拌した。
【0093】
得られた混合物を固液分離して固体を得た。該固体を100℃にてトルエン56.3mLで3回洗浄した。
【0094】
洗浄後の固体にトルエン38.3mLを投入し、スラリーを形成した。該スラリーに四塩化チタン15.0mL、2-エトキシメチル-3,3-ジメチルブタン酸エチル0.75mLを投入して混合物を形成し、110℃で1時間混合物を攪拌した。その後、攪拌した混合物を固液分離し、該固体を60℃にてトルエン56.3mLで3回洗浄し、さらに室温にてヘキサン56.3mLで3回洗浄し、洗浄後の固体を減圧乾燥して固体触媒成分を得た。
【0095】
この固体触媒成分について、チタン原子含有量は2.53質量%であり、エトキシ基含有量は0.44質量%であり、内部電子供与体含有量は13.7質量%であった。また、レーザ回折・散乱法による中心粒径は59.5μmであり、体積基準の粒子径分布において10μm以下である成分の累積百分率は5.3%であった。XPS分析による酸素原子1s軌道に由来し、結合エネルギーが532~534eVの範囲にピーク位置を有するピーク成分量は85.0%であり、前記結合エネルギーが529~532eVの範囲にピーク位置を有するピーク成分量は15.0%であった。水銀圧入法による全細孔容積は1.43mL/gであり、細孔半径5~30nmの範囲の細孔の合計容積は0.160mL/gであり、細孔半径30~700nmの範囲の細孔の合計容積は0.317mL/gであり、比表面積は107.44m2/gであった。
【0096】
〔実施例1:ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造〕
[予備重合]
内容積3Lの撹拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水及び脱気処理したn-ヘキサン1.0L、トリエチルアルミニウム(以下、「TEA」と記載することがある)35mmol、tert-ブチル-n-プロピルジメトキシシラン3.5mmolを収容させた。その中に参考例で製造した固体触媒成分22gを添加し、オートクレーブ内の温度を約10℃に保ちながらプロピレン22gを約30分かけて連続的に供給して予備重合を行った。その後、予備重合スラリーを内容積150Lの攪拌機付きSUS316L製オートクレーブに移送し、液状ブタン100Lを加えて、予備重合触媒成分のスラリーとした。
【0097】
[本重合]
本重合には、スラリー重合反応器と、多段気相重合反応装置と、気相重合反応器2槽とを直列に配置した装置を用いた。具体的には、下記重合工程1-1、重合工程1-2、及び下記重合工程2においてプロピレン単独重合体を製造し、生成ポリマーを失活することなく後段に移送し、下記重合工程3においてエチレン-プロピレン共重合体を製造した。
【0098】
[重合工程1-1(スラリー重合反応器を用いたプロピレン単独重合)]
攪拌機付きSUS304製ベッセル型のスラリー重合反応器を用いて、プロピレンの単独重合を行った。すなわち、プロピレン、水素、TEA、tert-ブチル-n-プロピルジメトキシシラン及び上述した予備重合触媒成分のスラリーを反応器に連続的に供給し、重合反応を行った。反応条件は以下のとおりとした。
【0099】
重合温度:50℃
攪拌速度:150rpm
反応器の液レベル:18L
プロピレンの供給量:25kg/時間
水素の供給量:160NL/時間
水素/プロピレン比:12000molppm
TEAの供給量:31.3mmol/時間
tert-ブチル-n-プロピルジメトキシシランの供給量:6.39mmol/時間 予備重合触媒成分のスラリーの供給量(重合触媒成分換算):0.94g/時間
重合圧力:3.93MPa(ゲージ圧)
【0100】
スラリー重合反応器出口からサンプリングしたプロピレン単独重合体の極限粘度[η]L1は0.69dL/gであった。
【0101】
実施例及び比較例の水素/プロピレン比は、ベッセル型のスラリー重合反応器及びループ型液相重合反応器では水素/プロピレンの反応器供給部における気体である水素と液体であるプロピレンの物質量の比、気相重合反応装置では反応装置出口における気体である水素と同じく気体であるプロピレンの物質量の比を示す。
【0102】
[重合工程1-2(多段気相重合反応装置によるプロピレン単独重合(気相重合))] 鉛直方向に6段の反応領域を有し、その内最上段が流動層であり、残りの5段が噴流層である多段気相重合反応装置を用いて、プロピレン単独重合を行った。
【0103】
前段のスラリー重合反応器から上記多段気相重合反応装置の最上段である流動層に、ポリプロピレン粒子及び液状プロピレンを含むスラリーを失活させることなく連続供給した。
【0104】
多段気相重合反応装置内でのポリプロピレン粒子の段間移送は、ダブル弁方式により行った。この移送手段は、上段の反応領域と下段の反応領域を1インチサイズの配管で接続し、配管に二つの開閉弁を設け、下側の弁を閉じた状態で上側の弁を開け、上段の反応領域から弁の間にパウダーを溜め込み、その後、上側の弁を閉じた後に下側の弁を開けることで下段の反応領域にポリプロピレン粒子を移送するものである。
【0105】
上記構成の多段気相重合反応装置の下部からプロピレン及び水素を連続的に供給した。
これにより、各反応領域にそれぞれ流動層又は噴流層を形成させ、ガス組成及び圧力を一定に保つようプロピレンと水素の供給量をコントロールし、過剰ガスをパージしながらプロピレンの単独重合を更に行った。反応条件は以下のとおりとした。
【0106】
重合温度:80℃
重合圧力:1.80MPa(ゲージ圧)
【0107】
当該反応器において、反応器内の水素/プロピレン比を230000molppmとした。
【0108】
当該反応器出口からサンプリングしたプロピレン単独重合体の極限粘度[η]G1は0.65dL/gであった。[η]L1と[η]G1とは、ほぼ同じ値であり、重合工程1-2までで得られたプロピレン単独重合体が、プロピレン系重合体Aである。実施例1において、[η]G1がプロピレン系重合体Aの極限粘度である。
【0109】
[重合工程2(流動層型反応器によるプロピレン単独重合(気相重合))]
前段の多段気相重合反応装置から排出されるポリプロピレン粒子を流動層型反応器に連続的に供給した。流動層型反応器はガス分散板を備えたものであり、前段の多段気相重合反応装置から流動層型反応器へのポリプロピレン粒子の移送手段は、上記のダブル弁方式で行った。
【0110】
上記構成の流動層型反応器にプロピレン及び水素を連続的に供給し、ガス組成及び圧力を一定に保つようにガス供給量の調整及び過剰ガスをパージしながら、ポリプロピレン粒子の存在下、プロピレンの単独重合を行った。反応条件は以下のとおりとした。
【0111】
重合温度:80℃
重合圧力:1.76MPa(ゲージ圧)
【0112】
当該反応器において、反応器出口ガスの水素/プロピレン比を1700molppmとした。
【0113】
当該反応器出口からサンプリングしたプロピレン系重合体の極限粘度[η]G2は1.05dL/gであった。重合工程2の反応器出口から得られたポリマーは、プロピレン系重合体Aとプロピレン系重合体Bとの混合物である。プロピレン系重合体Bの極限粘度[η]Bは以下の方法により算出した。
[η]B=([η]G2-[η]G1×xi)/xii ・・・(5)
xi:重合工程2の反応器出口から得られたポリマーの全質量に対する、プロピレン系重合体Aの質量の比(プロピレン系重合体Aの質量/(プロピレン系重合体Aとプロピレン系重合体Bとの合計質量))
xii:重合工程2の反応器出口から得られたポリマーの全質量に対する、プロピレン系重合体Bの質量の比(プロピレン系重合体Bの質量/(プロピレン系重合体Aとプロピレン系重合体Bとの合計質量))
ここで、xi、xiiは、重合時の物質収支から求めることができる。
【0114】
[重合工程3(流動層型反応器によるプロピレン-エチレン共重合(気相重合))]
重合工程2の流動層型反応器から排出されるポリプロピレン粒子をさらに後段の流動層型反応器に連続的に供給した。重合工程3の流動層型反応器は、重合工程2の流動層型反応器と同様に、ガス分散板を備えたものであり、重合工程2の流動層型反応器から重合工程3の流動層型反応器へのポリプロピレン粒子の移送手段は、ダブル弁方式で行った。
【0115】
上記構成の流動層型反応器にプロピレン、エチレン及び水素を連続的に供給し、ガス組成及び圧力を一定に保つようにガス供給量の調整及び過剰ガスをパージしながら、ポリプロピレン粒子の存在下、プロピレンとエチレンとの共重合を行い、ヘテロファジックプロピレン重合材料を得た。反応条件は以下のとおりとした。
【0116】
重合温度:70℃
重合圧力:1.72MPa(ゲージ圧)
【0117】
当該反応器において、反応器出口ガスの濃度比は、エチレン/(プロピレン+エチレン)が38.4モル%であり、水素/プロピレンが69000molppmであった。
【0118】
得られたヘテロファジックプロピレン重合材料中のエチレン-プロピレン共重合体の割合(X)は、プロピレン単独重合体とヘテロファジックプロピレン重合材料全体の結晶融解熱量をそれぞれ測定し、次式を用いて計算により求めた。結晶融解熱量は、示差走査型熱分析(DSC)により測定した。
X=1-(ΔHf)T/(ΔHf)P
(ΔHf)T:ヘテロファジックプロピレン重合材料全体の融解熱量(J/g)
(ΔHf)P:プロピレン単独重合体の融解熱量(J/g)
【0119】
当該反応器出口からサンプリングしたプロピレン系重合体の極限粘度[η]G3は1.33dL/gであった。重合工程3の反応器出口から得られたポリマーは、プロピレン系重合体Aとプロピレン系重合体Bとプロピレン系重合体Cの混合物である。プロピレン系重合体Cの極限粘度[η]Cは以下の方法により算出した。
[η]C=([η]G3-[η]G2×(1-X))/X ・・・(6)
【0120】
得られたヘテロファジックプロピレン重合材料の極限粘度([η]Total)は、1.33dL/gであり、エチレン含有量は9.4質量%であった。また、プロピレン系重合体Aとプロピレン系重合体Bとプロピレン系重合体Cとの重合比は、それぞれ65/12/23であった。プロピレン系重合体C中のエチレンの含有量は41質量%であり、プロピレン系重合体Cの極限粘度[η]Cは2.3dL/gであった。
【0121】
〔実施例2:ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造〕
[予備重合]
内容積3Lの撹拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水及び脱気処理したn-ヘキサン1.4L、TEA49mmol、tert-ブチル-n-プロピルジメトキシシラン4.9mmolを収容させた。その中に参考例で製造した固体触媒成分21gを添加し、オートクレーブ内の温度を約10℃に保ちながらプロピレン103gを約30分かけて連続的に供給して予備重合を行った。その後、予備重合スラリーを内容積260Lの攪拌機付きSUS316L製オートクレーブに移送し、液状ブタン180Lを加えて、予備重合触媒成分のスラリーとした。
【0122】
[本重合]
本重合には、スラリー重合反応器と、多段気相重合反応装置と、気相重合反応器2槽とを直列に配置した装置を用いた。具体的には、下記重合工程1-1、重合工程1-2、及び下記重合工程2においてプロピレン単独重合体を製造し、生成ポリマーを失活することなく後段に移送し、下記重合工程3においてエチレン-プロピレン共重合体を製造した。
【0123】
[重合工程1-1(スラリー重合反応器を用いたプロピレン単独重合)]
攪拌機付きSUS304製ベッセル型のスラリー重合反応器を用いて、プロピレンの単独重合を行った。すなわち、プロピレン、水素、TEA、tert-ブチル-n-プロピルジメトキシシラン及び上述した予備重合触媒成分のスラリーを反応器に連続的に供給し、重合反応を行った。反応条件は以下のとおりとした。
【0124】
重合温度:50℃
攪拌速度:150rpm
反応器の液レベル:18L
プロピレンの供給量:25kg/時間
水素の供給量:150NL/時間
水素/プロピレン比:11300molppm
TEAの供給量:34.3mmol/時間
tert-ブチル-n-プロピルジメトキシシランの供給量:7.76mmol/時間
予備重合触媒成分のスラリーの供給量(重合触媒成分換算):0.72g/時間
重合圧力:3.99MPa(ゲージ圧)
【0125】
スラリー重合反応器出口からサンプリングしたプロピレン単独重合体の極限粘度[η]L1は0.65dl/gであった。
【0126】
[重合工程1-2(多段気相重合反応装置によるプロピレン単独重合(気相重合))]
鉛直方向に6段の反応領域を有し、その内最上段が流動層であり、残りの5段が噴流層である多段気相重合反応装置を用いて、プロピレン単独重合を行った。
【0127】
前段のスラリー重合反応器から上記多段気相重合反応装置の最上段である流動層に、ポリプロピレン粒子及び液状プロピレンを含むスラリーを失活させることなく連続供給した。
【0128】
多段気相重合反応装置内でのポリプロピレン粒子の段間移送は、ダブル弁方式により行った。この移送手段は、上段の反応領域と下段の反応領域を1インチサイズの配管で接続し、配管に二つの開閉弁を設け、下側の弁を閉じた状態で上側の弁を開け、上段の反応領域から弁の間にパウダーを溜め込み、その後、上側の弁を閉じた後に下側の弁を開けることで下段の反応領域にポリプロピレン粒子を移送するものである。
【0129】
上記構成の多段気相重合反応装置の下部からプロピレン及び水素を連続的に供給した。これにより、各反応領域にそれぞれ流動層又は噴流層を形成させ、ガス組成及び圧力を一定に保つようプロピレンと水素の供給量をコントロールし、過剰ガスをパージしながらプロピレンの単独重合を更に行った。反応条件は以下のとおりとした。
【0130】
重合温度:80℃
重合圧力:1.99MPa(ゲージ圧)
【0131】
当該反応器において、反応器内の水素/プロピレン比を229000molppmとした。
【0132】
当該反応器出口からサンプリングしたプロピレン単独重合体の極限粘度[η]G1は0.68dl/gであった。[η]L1と[η]G1とは、ほぼ同じ値であり、重合工程1-2までで得られたプロピレン単独重合体が、プロピレン系重合体Aである。実施例2において、[η]G1がプロピレン系重合体Aの極限粘度である。
【0133】
[重合工程2(流動層型反応器によるプロピレン単独重合(気相重合))]
前段の多段気相重合反応装置から排出されるポリプロピレン粒子を流動層型反応器に連続的に供給した。流動層型反応器はガス分散板を備えたものであり、前段の多段気相重合反応装置から流動層型反応器へのポリプロピレン粒子の移送手段は、上記のダブル弁方式で行った。
【0134】
上記構成の流動層型反応器にプロピレン及び水素を連続的に供給し、ガス組成及び圧力を一定に保つようにガス供給量の調整及び過剰ガスをパージしながら、ポリプロピレン粒子の存在下、プロピレンの単独重合を行った。反応条件は以下のとおりとした。
【0135】
重合温度:80℃
重合圧力:1.59MPa(ゲージ圧)
【0136】
当該反応器において、反応器出口ガスの水素/プロピレン比を2100molppmとした。
【0137】
当該反応器出口からサンプリングしたプロピレン系重合体の極限粘度[η]G2は1.14dl/gであった。重合工程2の反応器出口から得られたポリマーは、プロピレン系重合体Aとプロピレン系重合体Bとの混合物である。プロピレン系重合体Bの極限粘度[η]Bは実施例1と同様に算出した。
【0138】
[重合工程3(流動層型反応器によるプロピレン-エチレン共重合(気相重合))]
重合工程2の流動層型反応器から排出されるポリプロピレン粒子をさらに後段の流動層型反応器に連続的に供給した。重合工程3の流動層型反応器は、重合工程2の流動層型反応器と同様に、ガス分散板を備えたものであり、重合工程2の流動層型反応器から重合工程3の流動層型反応器へのポリプロピレン粒子の移送手段は、ダブル弁方式で行った。
【0139】
上記構成の流動層型反応器に、重合工程1-1に供給したトリエチルアルミニウム1モルに対して2.0モルに相当する量のテトラエトキシシランを添加した。また当該反応器にプロピレン、エチレン及び水素を連続的に供給し、ガス組成及び圧力を一定に保つようにガス供給量の調整及び過剰ガスをパージしながら、ポリプロピレン粒子の存在下、プロピレンとエチレンとの共重合を行い、ヘテロファジックプロピレン重合材料を得た。反応条件は以下のとおりとした。
【0140】
重合温度:70℃
重合圧力:1.54MPa(ゲージ圧)
【0141】
当該反応器において、反応器出口ガスの濃度比は、エチレン/(プロピレン+エチレン)が30.8モル%であり、水素/プロピレンが52300molppmであった。
【0142】
得られたヘテロファジックプロピレン重合材料中のエチレン-プロピレン共重合体の割合(X)は、実施例1と同様に求めた。
【0143】
当該反応器出口からサンプリングしたプロピレン系重合体の極限粘度[η]G3は1.21dl/gであった。重合工程3の反応器出口から得られたポリマーは、プロピレン系重合体Aとプロピレン系重合体Bとプロピレン系重合体Cの混合物である。プロピレン系重合体Cの極限粘度[η]Cは実施例1と同様に算出した。
【0144】
得られたヘテロファジックプロピレン重合材料の極限粘度([η]Total)は、1.21dL/gであり、エチレン含有量は4.9質量%であった。また、プロピレン系重合体Aとプロピレン系重合体Bとプロピレン系重合体Cとの重合比は、それぞれ72/18/10であった。プロピレン系重合体C中のエチレンの含有量は51質量%であり、プロピレン系重合体Cの極限粘度[η]Cは1.9dL/gであった。
【0145】
〔実施例3:ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造〕
[予備重合]
内容積3Lの撹拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水及び脱気処理したn-ヘキサン1.7L、TEA60mmol、tert-ブチル-n-プロピルジメトキシシラン6.0mmolを収容させた。その中に参考例で製造した固体触媒成分25gを添加し、オートクレーブ内の温度を約10℃に保ちながらプロピレン25gを約30分かけて連続的に供給して予備重合を行った。その後、予備重合スラリーを内容積260Lの攪拌機付きSUS316L製オートクレーブに移送し、液状ブタン180Lを加えて、予備重合触媒成分のスラリーとした。
【0146】
[本重合]
本重合には、スラリー重合反応器と、多段気相重合反応装置と、気相重合反応器2槽とを直列に配置した装置を用いた。具体的には、下記重合工程1-1、重合工程1-2、及び下記重合工程2においてプロピレン単独重合体を製造し、生成ポリマーを失活することなく後段に移送し、下記重合工程3においてエチレン-プロピレン共重合体を製造した。
【0147】
[重合工程1-1(スラリー重合反応器を用いたプロピレン単独重合)]
攪拌機付きSUS304製ベッセル型のスラリー重合反応器を用いて、プロピレンの単独重合を行った。すなわち、プロピレン、水素、TEA、tert-ブチル-n-プロピルジメトキシシラン及び上述した予備重合触媒成分のスラリーを反応器に連続的に供給し、重合反応を行った。反応条件は以下のとおりとした。
【0148】
重合温度:50℃
攪拌速度:150rpm
反応器の液レベル:18L
プロピレンの供給量:25kg/時間
水素の供給量:175NL/時間
水素/プロピレン比:13100molppm
TEAの供給量:34.7mmol/時間
tert-ブチル-n-プロピルジメトキシシランの供給量:7.15mmol/時間
予備重合触媒成分のスラリーの供給量(重合触媒成分換算):0.96g/時間
重合圧力:4.12MPa(ゲージ圧)
【0149】
スラリー重合反応器出口からサンプリングしたプロピレン単独重合体の極限粘度[η]L1は0.64dl/gであった。
【0150】
[重合工程1-2(多段気相重合反応装置によるプロピレン単独重合(気相重合))]
鉛直方向に6段の反応領域を有し、その内最上段が流動層であり、残りの5段が噴流層である多段気相重合反応装置を用いて、プロピレン単独重合を行った。
【0151】
前段のスラリー重合反応器から上記多段気相重合反応装置の最上段である流動層に、ポリプロピレン粒子及び液状プロピレンを含むスラリーを失活させることなく連続供給した。
【0152】
多段気相重合反応装置内でのポリプロピレン粒子の段間移送は、ダブル弁方式により行った。この移送手段は、上段の反応領域と下段の反応領域を1インチサイズの配管で接続し、配管に二つの開閉弁を設け、下側の弁を閉じた状態で上側の弁を開け、上段の反応領域から弁の間にパウダーを溜め込み、その後、上側の弁を閉じた後に下側の弁を開けることで下段の反応領域にポリプロピレン粒子を移送するものである。
【0153】
上記構成の多段気相重合反応装置の下部からプロピレン及び水素を連続的に供給した。これにより、各反応領域にそれぞれ流動層又は噴流層を形成させ、ガス組成及び圧力を一定に保つようプロピレンと水素の供給量をコントロールし、過剰ガスをパージしながらプロピレンの単独重合を更に行った。反応条件は以下のとおりとした。
【0154】
重合温度:80℃
重合圧力:2.00MPa(ゲージ圧)
【0155】
当該反応器において、反応器内の水素/プロピレン比を255000molppmとした。
【0156】
当該反応器出口からサンプリングしたプロピレン単独重合体の極限粘度[η]G1は0.64dl/gであった。[η]L1と[η]G1とは、ほぼ同じ値であり、重合工程1-2までで得られたプロピレン単独重合体が、プロピレン系重合体Aである。実施例3において、[η]G1がプロピレン系重合体Aの極限粘度である。
【0157】
[重合工程2(流動層型反応器によるプロピレン単独重合(気相重合))]
前段の多段気相重合反応装置から排出されるポリプロピレン粒子を流動層型反応器に連続的に供給した。流動層型反応器はガス分散板を備えたものであり、前段の多段気相重合反応装置から流動層型反応器へのポリプロピレン粒子の移送手段は、上記のダブル弁方式で行った。
【0158】
上記構成の流動層型反応器にプロピレン及び水素を連続的に供給し、ガス組成及び圧力を一定に保つようにガス供給量の調整及び過剰ガスをパージしながら、ポリプロピレン粒子の存在下、プロピレンの単独重合を行った。反応条件は以下のとおりとした。
【0159】
重合温度:80℃
重合圧力:1.60MPa(ゲージ圧)
【0160】
当該反応器において、反応器出口ガスの水素/プロピレン比を1800molppmとした。
【0161】
当該反応器出口からサンプリングしたプロピレン系重合体の極限粘度[η]G2は0.94dl/gであった。重合工程2の反応器出口から得られたポリマーは、プロピレン系重合体Aとプロピレン系重合体Bとの混合物である。プロピレン系重合体Bの極限粘度[η]Bは実施例1と同様に算出した。
【0162】
[重合工程3(流動層型反応器によるプロピレン-エチレン共重合(気相重合))]
重合工程2の流動層型反応器から排出されるポリプロピレン粒子をさらに後段の流動層型反応器に連続的に供給した。重合工程3の流動層型反応器は、重合工程2の流動層型反応器と同様に、ガス分散板を備えたものであり、重合工程2の流動層型反応器から重合工程3の流動層型反応器へのポリプロピレン粒子の移送手段は、ダブル弁方式で行った。
【0163】
上記構成の流動層型反応器にプロピレン、エチレン及び水素を連続的に供給し、ガス組成及び圧力を一定に保つようにガス供給量の調整及び過剰ガスをパージしながら、ポリプロピレン粒子の存在下、プロピレンとエチレンとの共重合を行い、ヘテロファジックプロピレン重合材料を得た。反応条件は以下のとおりとした。
【0164】
重合温度:70℃
重合圧力:1.39MPa(ゲージ圧)
【0165】
当該反応器において、反応器出口ガスの濃度比は、エチレン/(プロピレン+エチレン)が40.1モル%であり、水素/プロピレンが71000molppmであった。
【0166】
得られたヘテロファジックプロピレン重合材料中のエチレン-プロピレン共重合体の割合(X)は、実施例1と同様に求めた。
【0167】
当該反応器出口からサンプリングしたプロピレン系重合体の極限粘度[η]G3は1.31dl/gであった。重合工程3の反応器出口から得られたポリマーは、プロピレン系重合体Aとプロピレン系重合体Bとプロピレン系重合体Cの混合物である。プロピレン系重合体Cの極限粘度[η]Cは実施例1と同様に算出した。
【0168】
得られたヘテロファジックプロピレン重合材料の極限粘度([η]Total)は、1.31dL/gであり、エチレン含有量は9.0質量%であった。また、プロピレン系重合体Aとプロピレン系重合体Bとプロピレン系重合体Cとの重合比は、それぞれ72/8/20であった。プロピレン系重合体C中のエチレンの含有量は45質量%であり、プロピレン系重合体Cの極限粘度[η]Cは2.8dL/gであった。
【0169】
〔実施例4:ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造〕
[予備重合]
内容積3Lの撹拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水及び脱気処理したn-ヘキサン1.7L、TEA60mmol、tert-ブチル-n-プロピルジメトキシシラン6.0mmolを収容させた。その中に参考例で製造した固体触媒成分25gを添加し、オートクレーブ内の温度を約10℃に保ちながらプロピレン25gを約30分かけて連続的に供給して予備重合を行った。その後、予備重合スラリーを内容積260Lの攪拌機付きSUS316L製オートクレーブに移送し、液状ブタン180Lを加えて、予備重合触媒成分のスラリーとした。
【0170】
[本重合]
本重合には、スラリー重合反応器と、多段気相重合反応装置と、気相重合反応器2槽とを直列に配置した装置を用いた。具体的には、下記重合工程1-1、重合工程1-2、及び下記重合工程2においてプロピレン単独重合体を製造し、生成ポリマーを失活することなく後段に移送し、下記重合工程3においてエチレン-プロピレン共重合体を製造した。
【0171】
[重合工程1-1(スラリー重合反応器を用いたプロピレン単独重合)]
攪拌機付きSUS304製ベッセル型のスラリー重合反応器を用いて、プロピレンの単独重合を行った。すなわち、プロピレン、水素、TEA、tert-ブチル-n-プロピルジメトキシシラン及び上述した予備重合触媒成分のスラリーを反応器に連続的に供給し、重合反応を行った。反応条件は以下のとおりとした。
【0172】
重合温度:50℃
攪拌速度:150rpm
反応器の液レベル:18L
プロピレンの供給量:25kg/時間
水素の供給量:176NL/時間
水素/プロピレン比:13200molppm
TEAの供給量:37.9mmol/時間
tert-ブチル-n-プロピルジメトキシシランの供給量:7.64mmol/時間
予備重合触媒成分のスラリーの供給量(重合触媒成分換算):1.0g/時間
重合圧力:4.12MPa(ゲージ圧)
【0173】
スラリー重合反応器出口からサンプリングしたプロピレン単独重合体の極限粘度[η]L1は0.64dl/gであった。
【0174】
[重合工程1-2(多段気相重合反応装置によるプロピレン単独重合(気相重合))]
鉛直方向に6段の反応領域を有し、その内最上段が流動層であり、残りの5段が噴流層である多段気相重合反応装置を用いて、プロピレン単独重合を行った。
【0175】
前段のスラリー重合反応器から上記多段気相重合反応装置の最上段である流動層に、ポリプロピレン粒子及び液状プロピレンを含むスラリーを失活させることなく連続供給した。
【0176】
多段気相重合反応装置内でのポリプロピレン粒子の段間移送は、ダブル弁方式により行った。この移送手段は、上段の反応領域と下段の反応領域を1インチサイズの配管で接続し、配管に二つの開閉弁を設け、下側の弁を閉じた状態で上側の弁を開け、上段の反応領域から弁の間にパウダーを溜め込み、その後、上側の弁を閉じた後に下側の弁を開けることで下段の反応領域にポリプロピレン粒子を移送するものである。
【0177】
上記構成の多段気相重合反応装置の下部からプロピレン及び水素を連続的に供給した。これにより、各反応領域にそれぞれ流動層又は噴流層を形成させ、ガス組成及び圧力を一定に保つようプロピレンと水素の供給量をコントロールし、過剰ガスをパージしながらプロピレンの単独重合を更に行った。反応条件は以下のとおりとした。
【0178】
重合温度:80℃
重合圧力:2.00MPa(ゲージ圧)
【0179】
当該反応器において、反応器内の水素/プロピレン比を253000molppmとした。
【0180】
当該反応器出口からサンプリングしたプロピレン単独重合体の極限粘度[η]G1は0.64dl/gであった。[η]L1と[η]G1とは、ほぼ同じ値であり、重合工程1-2までで得られたプロピレン単独重合体が、プロピレン系重合体Aである。実施例4において、[η]G1がプロピレン系重合体Aの極限粘度である。
【0181】
[重合工程2(流動層型反応器によるプロピレン単独重合(気相重合))]
前段の多段気相重合反応装置から排出されるポリプロピレン粒子を流動層型反応器に連続的に供給した。流動層型反応器はガス分散板を備えたものであり、前段の多段気相重合反応装置から流動層型反応器へのポリプロピレン粒子の移送手段は、上記のダブル弁方式で行った。
【0182】
上記構成の流動層型反応器にプロピレン及び水素を連続的に供給し、ガス組成及び圧力を一定に保つようにガス供給量の調整及び過剰ガスをパージしながら、ポリプロピレン粒子の存在下、プロピレンの単独重合を行った。反応条件は以下のとおりとした。
【0183】
重合温度:80℃
重合圧力:1.59MPa(ゲージ圧)
【0184】
当該反応器において、反応器出口ガスの水素/プロピレン比を1600molppmとした。
【0185】
当該反応器出口からサンプリングしたプロピレン系重合体の極限粘度[η]G2は1.07dl/gであった。重合工程2の反応器出口から得られたポリマーは、プロピレン系重合体Aとプロピレン系重合体Bとの混合物である。プロピレン系重合体Bの極限粘度[η]Bは実施例1と同様に算出した。
【0186】
[重合工程3(流動層型反応器によるプロピレン-エチレン共重合(気相重合))]
重合工程2の流動層型反応器から排出されるポリプロピレン粒子をさらに後段の流動層型反応器に連続的に供給した。重合工程3の流動層型反応器は、重合工程2の流動層型反応器と同様に、ガス分散板を備えたものであり、重合工程2の流動層型反応器から重合工程3の流動層型反応器へのポリプロピレン粒子の移送手段は、ダブル弁方式で行った。
【0187】
上記構成の流動層型反応器にプロピレン、エチレン及び水素を連続的に供給し、ガス組成及び圧力を一定に保つようにガス供給量の調整及び過剰ガスをパージしながら、ポリプロピレン粒子の存在下、プロピレンとエチレンとの共重合を行い、ヘテロファジックプロピレン重合材料を得た。反応条件は以下のとおりとした。
【0188】
重合温度:70℃
重合圧力:1.49MPa(ゲージ圧)
【0189】
当該反応器において、反応器出口ガスの濃度比は、エチレン/(プロピレン+エチレン)が39.8モル%であり、水素/プロピレンが70800molppmであった。
【0190】
得られたヘテロファジックプロピレン重合材料中のエチレン-プロピレン共重合体の割合(X)は、実施例1と同様に求めた。
【0191】
当該反応器出口からサンプリングしたプロピレン系重合体の極限粘度[η]G3は1.30dl/gであった。重合工程3の反応器出口から得られたポリマーは、プロピレン系重合体Aとプロピレン系重合体Bとプロピレン系重合体Cの混合物である。プロピレン系重合体Cの極限粘度[η]Cは実施例1と同様に算出した。
【0192】
得られたヘテロファジックプロピレン重合材料の極限粘度([η]Total)は、1.30dL/gであり、エチレン含有量は9.1質量%であった。また、プロピレン系重合体Aとプロピレン系重合体Bとプロピレン系重合体Cとの重合比は、それぞれ69/12/19であった。プロピレン系重合体C中のエチレンの含有量は47質量%であり、プロピレン系重合体Cの極限粘度[η]Cは2.3dL/gであった。
【0193】
〔実施例5:ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造〕
[予備重合]
内容積3Lの撹拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水及び脱気処理したn-ヘキサン1.7L、TEA60mmol、tert-ブチル-n-プロピルジメトキシシラン6.0mmolを収容させた。その中に参考例で製造した固体触媒成分25gを添加し、オートクレーブ内の温度を約10℃に保ちながらプロピレン25gを約30分かけて連続的に供給して予備重合を行った。その後、予備重合スラリーを内容積260Lの攪拌機付きSUS316L製オートクレーブに移送し、液状ブタン180Lを加えて、予備重合触媒成分のスラリーとした。
【0194】
[本重合]
本重合には、スラリー重合反応器と、多段気相重合反応装置と、気相重合反応器2槽とを直列に配置した装置を用いた。具体的には、下記重合工程1-1、重合工程1-2、及び下記重合工程2においてプロピレン単独重合体を製造し、生成ポリマーを失活することなく後段に移送し、下記重合工程3においてエチレン-プロピレン共重合体を製造した。
【0195】
[重合工程1-1(スラリー重合反応器を用いたプロピレン単独重合)]
攪拌機付きSUS304製ベッセル型のスラリー重合反応器を用いて、プロピレンの単独重合を行った。すなわち、プロピレン、水素、TEA、tert-ブチル-n-プロピルジメトキシシラン及び上述した予備重合触媒成分のスラリーを反応器に連続的に供給し、重合反応を行った。反応条件は以下のとおりとした。
【0196】
重合温度:50℃
攪拌速度:150rpm
反応器の液レベル:18L
プロピレンの供給量:25kg/時間
水素の供給量:176NL/時間
水素/プロピレン比:13200molppm
TEAの供給量:37.9mmol/時間
tert-ブチル-n-プロピルジメトキシシランの供給量:7.55mmol/時間
予備重合触媒成分のスラリーの供給量(重合触媒成分換算):0.96g/時間
重合圧力:4.12MPa(ゲージ圧)
【0197】
スラリー重合反応器出口からサンプリングしたプロピレン単独重合体の極限粘度[η]L1は0.66dl/gであった。
【0198】
[重合工程1-2(多段気相重合反応装置によるプロピレン単独重合(気相重合))]
鉛直方向に6段の反応領域を有し、その内最上段が流動層であり、残りの5段が噴流層である多段気相重合反応装置を用いて、プロピレン単独重合を行った。
【0199】
前段のスラリー重合反応器から上記多段気相重合反応装置の最上段である流動層に、ポリプロピレン粒子及び液状プロピレンを含むスラリーを失活させることなく連続供給した。
【0200】
多段気相重合反応装置内でのポリプロピレン粒子の段間移送は、ダブル弁方式により行った。この移送手段は、上段の反応領域と下段の反応領域を1インチサイズの配管で接続し、配管に二つの開閉弁を設け、下側の弁を閉じた状態で上側の弁を開け、上段の反応領域から弁の間にパウダーを溜め込み、その後、上側の弁を閉じた後に下側の弁を開けることで下段の反応領域にポリプロピレン粒子を移送するものである。
【0201】
上記構成の多段気相重合反応装置の下部からプロピレン及び水素を連続的に供給した。これにより、各反応領域にそれぞれ流動層又は噴流層を形成させ、ガス組成及び圧力を一定に保つようプロピレンと水素の供給量をコントロールし、過剰ガスをパージしながらプロピレンの単独重合を更に行った。反応条件は以下のとおりとした。
【0202】
重合温度:80℃
重合圧力:1.99MPa(ゲージ圧)
【0203】
当該反応器において、反応器内の水素/プロピレン比を253000molppmとした。
【0204】
当該反応器出口からサンプリングしたプロピレン単独重合体の極限粘度[η]G1は0.66dl/gであった。[η]L1と[η]G1とは、ほぼ同じ値であり、重合工程1-2までで得られたプロピレン単独重合体が、プロピレン系重合体Aである。実施例5において、[η]G1がプロピレン系重合体Aの極限粘度である。
【0205】
[重合工程2(流動層型反応器によるプロピレン単独重合(気相重合))]
前段の多段気相重合反応装置から排出されるポリプロピレン粒子を流動層型反応器に連続的に供給した。流動層型反応器はガス分散板を備えたものであり、前段の多段気相重合反応装置から流動層型反応器へのポリプロピレン粒子の移送手段は、上記のダブル弁方式で行った。
【0206】
上記構成の流動層型反応器にプロピレン及び水素を連続的に供給し、ガス組成及び圧力を一定に保つようにガス供給量の調整及び過剰ガスをパージしながら、ポリプロピレン粒子の存在下、プロピレンの単独重合を行った。反応条件は以下のとおりとした。
【0207】
重合温度:79℃
重合圧力:1.60MPa(ゲージ圧)
【0208】
当該反応器において、反応器出口ガスの水素/プロピレン比を1800molppmとした。
【0209】
当該反応器出口からサンプリングしたプロピレン系重合体の極限粘度[η]G2は1.09dl/gであった。重合工程2の反応器出口から得られたポリマーは、プロピレン系重合体Aとプロピレン系重合体Bとの混合物である。プロピレン系重合体Bの極限粘度[η]Bは実施例1と同様に算出した。
【0210】
[重合工程3(流動層型反応器によるプロピレン-エチレン共重合(気相重合))]
重合工程2の流動層型反応器から排出されるポリプロピレン粒子をさらに後段の流動層型反応器に連続的に供給した。重合工程3の流動層型反応器は、重合工程2の流動層型反応器と同様に、ガス分散板を備えたものであり、重合工程2の流動層型反応器から重合工程3の流動層型反応器へのポリプロピレン粒子の移送手段は、ダブル弁方式で行った。
【0211】
上記構成の流動層型反応器にプロピレン、エチレン及び水素を連続的に供給し、ガス組成及び圧力を一定に保つようにガス供給量の調整及び過剰ガスをパージしながら、ポリプロピレン粒子の存在下、プロピレンとエチレンとの共重合を行い、ヘテロファジックプロピレン重合材料を得た。反応条件は以下のとおりとした。
【0212】
重合温度:70℃
重合圧力:1.49MPa(ゲージ圧)
【0213】
当該反応器において、反応器出口ガスの濃度比は、エチレン/(プロピレン+エチレン)が34.3モル%であり、水素/プロピレンが67600molppmであった。
【0214】
得られたヘテロファジックプロピレン重合材料中のエチレン-プロピレン共重合体の割合(X)は、実施例1と同様に求めた。
【0215】
当該反応器出口からサンプリングしたプロピレン系重合体の極限粘度[η]G3は1.25dl/gであった。重合工程3の反応器出口から得られたポリマーは、プロピレン系重合体Aとプロピレン系重合体Bとプロピレン系重合体Cの混合物である。プロピレン系重合体Cの極限粘度[η]Cは実施例1と同様に算出した。
【0216】
得られたヘテロファジックプロピレン重合材料の極限粘度([η]Total)は、1.25dL/gであり、エチレン含有量は6.4質量%であった。また、プロピレン系重合体Aとプロピレン系重合体Bとプロピレン系重合体Cとの重合比は、それぞれ70/12/18であった。プロピレン系重合体C中のエチレンの含有量は35質量%であり、プロピレン系重合体Cの極限粘度[η]Cは2.0dL/gであった。
【0217】
〔比較例1:ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造〕
[予備重合]
ジャケット付きのSUS製反応器中に、脱気・脱水されたn-へキサンと、特開平7-216017号公報の実施例5に記載の方法で製造した固体触媒成分(a)と、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン(b)と、TEA(c)とを、固体触媒成分の量に対するTEAの量の割合が1.67mmol/g、TEAの量に対するシクロヘキシルエチルジメトキシシランの量の比が0.13mmol/mmolになるように供給して、プロピレンの予備重合度が3.5の予備重合触媒成分を調製した。予備重合度は、固体触媒成分1g当たりに生成した予備重合体のグラム数で定義される。
【0218】
[本重合]
(I)第一段階の重合工程
(I-1)液相重合
2つのSUS製ループ型液相重合反応器で重合反応を行った。まず、ループ型液相重合反応器の内部気体をプロピレンで十分置換した。その後、第一のループ型液相重合反応器へ、TEA、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン(シクロヘキシルエチルジメトキシシラン/TEAの比率=0.15mol/mol)、及び前記の予備重合触媒成分を3.7g/時間の速度で連続して供給し、さらに内温を70℃に、プロピレン及び水素の供給により圧力を4.5MPaに調整しながら、プロピレンと水素とを水素/プロピレン供給量比が8500molppmとなるようにそれぞれ供給して重合を開始した。
【0219】
第一のループ型液相重合反応器から第二のループ型液相重合反応器へポリプロピレン粒子及び液状プロピレンを含むスラリーを失活させることなく連続供給した。第二のループ型液相重合反応器では内温を70℃に、プロピレン及び水素の供給により圧力を4.5MPaに調整しながら、プロピレンと水素を水素/プロピレン比が8500molppmとなるようにそれぞれ供給して重合を継続的に行った。
【0220】
第二のループ型液相重合反応器出口からサンプリングしたプロピレン単独重合体の極限粘度は1.06dL/gであった。
【0221】
ついで、第二のループ型液相重合反応器で生成された粉末状のプロピレン単独重合体を抜き出して流動層型気相重合反応器へ移した。該気相重合反応器は、直列に配置された第一流動層型気相重合反応器、第二流動層型気相重合反応器及び第三流動層型気相重合反応器で構成され、第一流動層型気相重合反応器は第二のループ型液相重合反応器と第二流動層型気相重合反応器に接続され、第二流動層型気相重合反応器は第一流動層型気相重合反応器と第三流動層型気相重合反応器に接続されている。
【0222】
(I-2)気相重合
第一及び第二流動層型気相重合反応器にてプロピレン単独重合を継続的に行った。第一流動層型気相重合反応器では、反応温度80℃で反応圧力2.1MPaを保つようにプロピレンを連続的に供給し、気相部の水素濃度を7.5mol%に保つように水素を供給しながら、第二のループ型液相重合反応器から移送された粉末状のプロピレン単独重合体成分の存在下に気相重合を継続的に行って重合体成分を生成させた。
【0223】
ついで、この重合体成分の一部を断続的に第二流動層型気相重合反応器に移し、反応温度80℃で、反応圧力が1.7MPa、気相部の水素濃度が7.5mol%に保たれるようにプロピレンと水素とを連続的に供給しながら気相重合を継続して、プロピレン単独重合体成分を生成させた。得られたプロピレン単独重合体成分(以下、「重合体成分(I)」ともいう)の極限粘度は、1.06dL/gであった。
【0224】
第一及び第二流動層型気相重合反応器内の水素/プロピレン比は、いずれも80000molppmであった。
【0225】
(II)第二段階の重合工程
得られたプロピレン単独重合体成分の一部をジャケット付き流動層型気相重合反応器(第三流動層型気相重合反応器)に移し、プロピレン及びエチレンの共重合によるプロピレン-エチレン共重合体成分(以下、「重合体成分(II)」ともいう)の製造を開始した。反応温度70℃で反応圧力が1.4MPaに保たれるようにプロピレン/エチレン=2/1(質量比)の割合で、プロピレンとエチレンとを連続的に供給し、気相部の水素濃度が2.1mol%に保たれるように混合ガス濃度を調整しながら気相重合を継続して、重合体成分(II)を生成させた。
【0226】
ついで、第三流動層型気相重合反応器内の粉末を断続的に失活槽へ導き、水で触媒成分の失活処理を行った後、該粉末を65℃の窒素により乾燥して、ヘテロファジックプロピレン重合材料を得た。
【0227】
得られたヘテロファジックプロピレン重合材料の極限粘度([η]Total)は、1.4dL/gであり、エチレン含有量は7.0質量%であった。また、重合体成分(I)と重合体成分(II)との重合比は、79/21であった。この比は、最終的に得られたプロピレン系ブロック共重合体の質量と重合体成分(I)の量とから算出した。重合体成分(II)中のエチレンの含有量は33質量%であり、重合体成分(II)の極限粘度[η]IIは2.7dL/gであった。
【0228】
第三流動層型気相重合反応器内の水素/プロピレン比は、39000molppmであった。
【0229】
結果のまとめを表1および表2に示す。
【0230】
【0231】
【0232】
表1および表2の記載において、「P部」及び「EP部」は、それぞれ「プロピレンに由来する単量体単位を80質量%以上含有するプロピレン系重合体部分」及び「エチレンとプロピレンに由来する単量体単位とを含有するプロピレン共重合体部分」を示す。
【0233】
表1および表2から、実施例に係る射出成形体は、MDTD平均線膨張係数が低く、寸法安定性に優れることがわかる。すなわち、本実施形態に係るヘテロファジックプロピレン重合材料は、寸法安定性に優れる成形体を製造できることを確認した。