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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】食肉加工品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/10 20160101AFI20241213BHJP
   A23L 7/157 20160101ALI20241213BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20241213BHJP
   A23L 13/40 20230101ALI20241213BHJP
   A23L 13/70 20230101ALI20241213BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20241213BHJP
【FI】
A23L5/10 E
A23L7/157
A23L13/00 Z
A23L13/40
A23L13/70
A23L17/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022511954
(86)(22)【出願日】2021-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2021011689
(87)【国際公開番号】W WO2021200333
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2024-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2020060788
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020132180
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健太
(72)【発明者】
【氏名】榎田 成華
(72)【発明者】
【氏名】石川 千弘
(72)【発明者】
【氏名】上林 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】奥原 太
(72)【発明者】
【氏名】水野 和久
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特許第6320605(JP,B1)
【文献】特開2005-318871(JP,A)
【文献】国際公開第2018/123257(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/164801(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/015401(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/076879(WO,A1)
【文献】特許第5154714(JP,B2)
【文献】小林 功,食品のテクスチャー改良を目的とした加工澱粉の使い方,オレオサイエンス,2015年,第15巻第9号,407-414,DOI: 10.5650/oleoscience.15.407
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/10
A23L 7/157
A23L 13/00
A23L 13/70
A23L 13/40
A23L 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食肉とピックル液とを混合して食肉にタンブリング処理をするタンブリング工程と、
前記タンブリング工程後の食肉に油脂加工澱粉を添加してミキシング処理をするミキシング工程と、
前記ミキシング工程の後、前記食肉を油ちょうするフライ工程と、を含み、
前記タンブリング工程において、前記油脂加工澱粉を前記食肉100質量部に対して質量部以上質量部以下添加し、
前記ミキシング工程において、前記油脂加工澱粉を前記食肉100質量部に対して質量部以上質量部以下添加する、ことを特徴とする、食肉加工品の製造方法。
【請求項2】
前記ミキシング工程において、更に重曹を前記食肉100質量部に対して0.1質量部以上0.3質量部以下添加する、請求項1に記載の食肉加工品の製造方法。
【請求項3】
前記ミキシング工程において、更に大豆タンパクを前記食肉100質量部に対して0.1質量部以上質量部以下添加する、請求項1または2に記載の食肉加工品の製造方法。
【請求項4】
食肉とピックル液とを混合して食肉にタンブリング処理をするタンブリング工程と、
前記タンブリング工程後の食肉に油脂加工澱粉を添加してミキシング処理をするミキシング工程と、
前記ミキシング工程の後、前記食肉を焼成する焼成工程と、を含み、
前記タンブリング工程において、前記油脂加工澱粉を前記食肉100質量部に対して質量部以上質量部以下添加し、
前記ミキシング工程において、前記油脂加工澱粉を前記食肉100質量部に対して1質量部以上3質量部以下添加する、ことを特徴とする、食肉加工品の製造方法。
【請求項5】
前記タンブリング工程において、前記ピックル液100質量部に対して前記油脂加工澱粉を1質量部以上50質量部以下添加する、請求項に記載の食肉加工品の製造方法。
【請求項6】
食肉とピックル液とを混合して食肉にタンブリング処理をするタンブリング工程と、
前記タンブリング工程後の食肉に油脂加工澱粉を添加してミキシング処理をするミキシング工程と、を含み、
前記タンブリング工程において、前記油脂加工澱粉を前記食肉100質量部に対して質量部以上質量部以下添加し、
前記ミキシング工程において、前記油脂加工澱粉を前記食肉100質量部に対して質量部以上質量部以下添加して前記食肉の保形性を向上させる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食肉加工品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食肉を加工した食肉加工品は、製品歩留まりを向上させるために従来から様々な工夫がなされている。特許文献1には、食感が良好で製品歩留まりの高い食肉加工品を得るための食肉改質剤に関する技術が開示されている。特許文献1に開示されている技術では、トランスグルタミナーゼと食酢とを含んでいる食肉改質剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-189926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
食肉加工品を製造する際には、食品ロスの低減、及びコストの低減のために、製品歩留まりを向上させることが重要である。また、製品歩留まりを向上させるためには、食肉加工品の保形性を向上させることも重要である。このような課題に鑑み本発明の目的は、食肉加工品の製品歩留まりを向上させることが可能な食肉加工品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様にかかる食肉加工品の製造方法は、下記の[1]~[18]に示すとおりである。
[1]
食肉に油脂加工澱粉を添加してミキシング処理をするミキシング工程を含むことを特徴とする、食肉加工品の製造方法。
[2]
前記ミキシング工程において、前記油脂加工澱粉を前記食肉100質量部に対して0.7質量部以上20質量部以下添加する、[1]に記載の食肉加工品の製造方法。
[3]
前記ミキシング工程において、前記油脂加工澱粉を前記食肉100質量部に対して3質量部以上10質量部以下添加する、[1]に記載の食肉加工品の製造方法。
[4]
前記ミキシング工程において、前記油脂加工澱粉を前記食肉100質量部に対して3質量部以上7質量部以下添加する、[1]に記載の食肉加工品の製造方法。
[5]
前記ミキシング工程において、前記油脂加工澱粉を前記食肉100質量部に対して3質量部以上5質量部以下添加する、[1]に記載の食肉加工品の製造方法。
[6]
前記ミキシング工程において、更に重曹を前記食肉100質量部に対して0.01質量部以上1質量部以下添加する、[1]~[5]のいずれか一項に記載の食肉加工品の製造方法。
[7]
前記ミキシング工程において、更に大豆タンパクを前記食肉100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下添加する、[1]~[6]のいずれか一項に記載の食肉加工品の製造方法。
[8]
前記ミキシング工程の前に、食肉とピックル液とを混合して食肉にタンブリング処理をするタンブリング工程を含み、
前記タンブリング工程において、前記油脂加工澱粉を前記食肉100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下添加する、[1]~[7]のいずれか一項に記載の食肉加工品の製造方法。
[9]
前記ミキシング工程の後、前記食肉を油ちょうするフライ工程を更に備える、[1]~[8]のいずれか一項に記載の食肉加工品の製造方法。
[10]
前記ミキシング工程において、前記油脂加工澱粉を前記食肉100質量部に対して1質量部以上3質量部以下添加する、[1]に記載の食肉加工品の製造方法。
[11]
前記ミキシング工程の前に、食肉とピックル液とを混合して食肉にタンブリング処理をするタンブリング工程を含み、
前記タンブリング工程において、前記油脂加工澱粉を前記食肉100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下添加する、[10]に記載の食肉加工品の製造方法。
[12]
前記タンブリング工程において、前記ピックル液100質量部に対して前記油脂加工澱粉を1質量部以上50質量部以下添加する、[11]に記載の食肉加工品の製造方法。
[13]
前記ミキシング工程の後、前記食肉を焼成する焼成工程を更に備える、[10]~[12]のいずれか一項に記載の食肉加工品の製造方法。
[14]
食肉とピックル液とを混合して食肉にタンブリング処理をするタンブリング工程を含み、
前記タンブリング工程において前記食肉100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下の油脂加工澱粉を添加することを特徴とする、
食肉加工品の製造方法。
[15]
前記タンブリング工程において、前記ピックル液100質量部に対して前記油脂加工澱粉を1質量部以上50質量部以下添加する、[14]に記載の食肉加工品の製造方法。
[16]
前記タンブリング工程の後、前記食肉を油ちょうするフライ工程を更に備える、[14]または[15]に記載の食肉加工品の製造方法。
[17]
前記タンブリング工程の後、前記食肉を焼成する焼成工程を更に備える、[14]または[15]に記載の食肉加工品の製造方法。
[18]
食肉に油脂加工澱粉を添加してミキシング処理をするミキシング工程を含み、
前記ミキシング工程において、前記油脂加工澱粉を前記食肉100質量部に対して0.7質量部以上20質量部以下添加して前記食肉の保形性を向上させる、方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、食肉加工品の製品歩留まりを向上させることが可能な食肉加工品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実験1の製造フローを説明するための図である。
図2】実験1の結果を示す側面写真である。
図3】実験1の結果を示す側面写真である。
図4】実験2の製造フローを説明するための図である。
図5】実験3の製造フローを説明するための図である。
図6】実験4の製造フローを説明するための図である。
図7】実験5の製造フローを説明するための図である。
図8】実験6の製造フローを説明するための図である。
図9】実験7の製造フローを説明するための図である。
図10】実験8の製造フローを説明するための図である。
図11】実験9の製造フローを説明するための図である。
図12】実験10の製造フローを説明するための図である。
図13】実験11の製造フローを説明するための図である。
図14】実験12の製造フローを説明するための図である。
図15】実験13の製造フローを説明するための図である。
図16】実験14の製造フローを説明するための図である。
図17】実験15の製造フローを説明するための図である。
図18】実験16の製造フローを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本発明の骨子>
まず、本発明の第1~第3の製造方法(食肉加工品の製造方法)の骨子について説明する。
【0009】
本発明の第1の製造方法は、食肉に油脂加工澱粉を添加してミキシング処理をするミキシング工程を含み、ミキシング工程において油脂加工澱粉を食肉100質量部に対して0.7質量部以上20質量部以下添加することを特徴としている。本発明の第1の製造方法は、ミキシング工程の後に食肉を油ちょうするフライ工程を備えるフライ食品等(唐揚げ等)に好適に用いることができる。
【0010】
本発明の第2の製造方法は、食肉に油脂加工澱粉を添加してミキシング処理をするミキシング工程を含み、ミキシング工程において油脂加工澱粉を食肉100質量部に対して0.7質量部以上3質量部以下添加することを特徴としている。本発明の第2の製造方法は、ミキシング工程の後に食肉を焼成する焼成工程を備える焼成食品等(グリルチキン、サラダチキン等)に好適に用いることができる。
【0011】
本発明の第3の製造方法は、食肉とピックル液とを混合して食肉にタンブリング処理をするタンブリング工程を含み、当該タンブリング工程において食肉100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下の油脂加工澱粉を添加することを特徴としている。本発明の第3の製造方法は、タンブリング工程の後に食肉を油ちょうするフライ工程を備えるフライ食品等(唐揚げ等)に好適に用いることができる。また、本発明の第3の製造方法は、タンブリング工程の後に食肉を焼成する焼成工程を備える焼成食品等(グリルチキン、サラダチキン等)にも好適に用いることができる。
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
<実施の形態1>
まず、本発明の実施の形態1として、上述の第1の製造方法について説明する。
上述のように第1の製造方法は、食肉に油脂加工澱粉を添加してミキシング処理をするミキシング工程を含み、ミキシング工程において油脂加工澱粉を食肉100質量部に対して0.7質量部以上20質量部以下添加することを特徴としている。本実施の形態にかかる第1の製造方法では、ミキシング工程において上記の分量の油脂加工澱粉を添加しているので、食肉の保形性を向上させることができる。以下、本実施の形態にかかる第1の製造方法について詳細に説明する。なお、以下では、ミキシング工程の前にタンブリング工程を備える製造方法を例として説明する。
【0014】
本実施の形態にかかる製造方法は、まず、食肉とピックル液とを混合して食肉にタンブリング処理を施している。ここでタンブリング処理とは、タンブラー(回転機構を有する、内面に凸部を有するドラム)を使用して、水等を含む液(ピックル液)を食肉に物理的に浸透させる処理をいう。食肉にタンブリング処理を施すことで、ピックル液の成分を食肉に浸透させることができ、食肉に風味を付加したり食感を向上させたりすることができる。タンブリング処理は、食肉に水分を加える処理であるので、「加水処理」と称することもある。
【0015】
食肉にタンブリング処理を施す際は、例えば、食肉100質量部に対してピックル液を10質量部以上60質量部以下、好ましくは20質量部以上40質量部以下加えることが好ましい。タンブリング処理による歩留まり(タンブリング歩留まり)は特に限定されるものではないが、110%以上が好ましく、115%以上がより好ましく、120%以上がさらに好ましく、また、160%以下が好ましく、140%以下がより好ましい。
【0016】
「タンブリング歩留まり」とは、タンブリング前の食肉の質量に対するタンブリング後の食肉の質量の割合であり、下記の式を用いて算出することができる。なお、タンブリング後の食肉の質量は、タンブリング工程後の食肉をザル等に移して吸収しきれなかったピックル液を除いた上で測定する。
【0017】
タンブリング歩留まり(%)=(タンブリング後質量(g)/タンブリング前質量(g))×100
【0018】
また、本実施の形態で用いられる食肉は、食肉であれば特に限定されず、例えば、豚肉、牛肉、鶏肉、山羊肉、羊肉、馬肉、猪肉、鹿肉、兎肉、熊肉、鴨肉、鳩肉、アヒル肉、鶉肉及び七面鳥肉などの畜肉、獣肉及び食鳥肉、ならびに、サーモン、タイ、マグロ、サケ、カジキマグロ、タラ、カツオ、イワシ等の魚類、及び、アマエビ、イセエビ、クルマエビ等のエビ類、ケガニ、ズワイガニ、タラバガニ等のカニ類、及び、アカイカ、ケンサキイカ、コウイカ、スルメイカ、ホタルイカ、ヤリイカ等のイカ類、及び、イイダコ、マダコ等のタコ類などの魚介類、及び、カキ、ホタテ、アワビ、アサリ、シジミ、サザエ、アカガイ、ホッキガイなどの貝類からなる群から選ばれる1種または2種以上を使用することができる。特に本発明の効果がより得られやすいという観点から、畜肉、獣肉及び食鳥肉からなる群から選ばれる1種または2種以上を使用することが好ましく、豚肉、牛肉及び鶏肉からなる群から選ばれる1種または2種以上を使用することがより好ましい。例えば、本実施の形態では、鶏もも肉や鶏むね肉を用いることが特に好ましい。また、本実施の形態では、食肉にタマネギ、ニンジン等の野菜類;砂糖、上白糖、食塩、グルタミン酸ナトリウム等の調味料;醤油、食酢、油脂、キャノーラ油、ブレンドオイル、酒、みりん等の液体調味料;ナツメグ、こしょう、白こしょう、ガーリックパウダー、ジンジャーパウダー、ターメリックパウダー等のスパイス類;亜硝酸ナトリウム等の発色剤;ソルビン酸ナトリウムやグリシン;酢酸Na等の保存料;アスコルビン酸ナトリウム等の酸化防止剤;コチニール色素などの着色料;カゼインナトリウム等の乳化剤;水、氷等の水分;貝殻焼成カルシウム、卵殻カルシウム、炭酸カルシウム等の栄養強化剤;その他、香料等の、通常食品に用いられる成分等を添加してもよい。
【0019】
また、本実施の形態で用いられるピックル液の成分は、食肉に風味等を付加できるのであれば特に限定されることはないが、例えば、澱粉(コーンスターチなどの化工していない澱粉や、リン酸架橋澱粉、アセチル化澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉等の化工澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、リン酸架橋タピオカ澱粉等);砂糖、上白糖、食塩、グルタミン酸ナトリウム等の調味料;醤油、食酢、油脂、キャノーラ油、ブレンドオイル、酒、みりん等の液体調味料;ナツメグ、こしょう、白こしょう、ガーリックパウダー、ジンジャーパウダー、ターメリックパウダー等のスパイス類;亜硝酸ナトリウム等の発色剤;ソルビン酸ナトリウムやグリシン;酢酸Na等の保存料;アスコルビン酸ナトリウム等の酸化防止剤;コチニール色素などの着色料;カゼインナトリウム等の乳化剤;水、氷等の水分;貝殻焼成カルシウム、卵殻カルシウム、炭酸カルシウム等の栄養強化剤等が挙げられる。その他、香料等の、通常食品に用いられる成分を含んでもよい。
【0020】
本実施の形態にかかる製造方法は、タンブリング工程の後、食肉にミキシング処理をするミキシング工程を実施している。ミキシング工程は、油脂加工澱粉を含むミキシング粉に、食肉を入れて混合する工程であり、ミキシング工程によりミキシング粉が食肉にすり込まれる。このようにミキシング工程を行うことで、食肉に内側の衣を形成することができる。なお、食肉の外側の衣は後述のバッタリングにより形成される。
【0021】
ミキシング工程を実施する際は、例えば、ミキシング粉と食肉とを容器に入れて機械でミキシングしてもよい。また、タンブラーにミキシング粉と食肉とを入れて、タンブラーを用いてミキシングを行ってもよい。また、ミキシング粉と食肉とをボウルに入れて人手でミキシングを行ってもよい。
【0022】
本実施の形態で用いられるミキシング粉は、例えば、水に溶解して使用してもよい。
また、増粘剤、乳化剤、重曹、大豆粉、リン酸塩やpH調整剤など、通常食肉に使用される素材であれば特に限定されることはないが、例えば、澱粉(コーンスターチなどの化工していない澱粉や、リン酸架橋澱粉、アセチル化澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉等の化工澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、リン酸架橋タピオカ澱粉等);砂糖、上白糖、食塩、グルタミン酸ナトリウム等の調味料;醤油、食酢、油脂、キャノーラ油、ブレンドオイル、酒、みりん等の液体調味料;ナツメグ、こしょう、白こしょう、ガーリックパウダー、ジンジャーパウダー、ターメリックパウダー等のスパイス類;亜硝酸ナトリウム等の発色剤;ソルビン酸ナトリウムやグリシン;酢酸Na等の保存料;アスコルビン酸ナトリウム等の酸化防止剤;コチニール色素などの着色料;カゼインナトリウム等の乳化剤;水、氷等の水分;貝殻焼成カルシウム、卵殻カルシウム、炭酸カルシウム等の栄養強化剤等、その他、香料等の、通常食品に用いられる成分を含んでもよい。
【0023】
更に本実施の形態にかかる製造方法では、ミキシング工程において油脂加工澱粉を添加(混合)している。
【0024】
本実施の形態で用いる油脂加工澱粉は、原料澱粉に食用油脂および食用油脂類縁物質からなる群から選択される1種または2種以上を添加した後、混合、加熱する操作を備えた工程を経て生産される澱粉質素材を指す。
【0025】
油脂加工澱粉を製造するための原料澱粉に制限はなく、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、コムギ澱粉、コメ澱粉、サゴ澱粉、甘藷澱粉、緑豆澱粉、エンドウ豆澱粉およびこれらの化工澱粉、たとえばアセチル化;エーテル化;リン酸架橋化、アジピン酸架橋化などの架橋化を、単独もしくは組み合わせたものなどが挙げられる。特に、本実施の形態では、油脂加工澱粉として、油脂加工タピオカ澱粉および油脂加工コーンスターチからなる群から選択される1種または2種を用いることが好ましい。油脂加工タピオカ澱粉および油脂加工コーンスターチの原料であるタピオカ澱粉およびコーンスターチは、未化工澱粉であっても化工澱粉であってもよいが、化工澱粉であることが好ましい。
【0026】
また、油脂加工澱粉は、好ましくは油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉、および油脂加工アセチル化タピオカ澱粉であり、より好ましくは油脂加工アセチル化タピオカ澱粉である。
【0027】
また、油脂加工澱粉の原料である食用油脂として、大豆油、ハイリノールサフラワー油等のサフラワー油、コーン油、ナタネ油、エゴマ油、アマニ油、ヒマワリ油、落花生油、綿実油、オリーブ油、コメ油、パーム油、ヤシ油、ゴマ油、椿油、茶油、カラシ油、カポック油、カヤ油、クルミ油、ケシ油などが挙げられる。また、食用油脂として、ヨウ素価が100以上の油脂を用いることがより好ましく、さらに140以上の油脂を用いることが好ましい。ヨウ素価が140以上の油脂として、具体的には、ハイリノールサフラワー油、アマニ油などがあり、より好ましくはハイリノールサフラワー油である。
【0028】
また、食用油脂類縁物質として、モノグリセリン脂肪酸エステル;ポリグリセリン脂肪酸エステル;ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル;有機酸脂肪酸エステル;ショ糖脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリソルベート;リン脂質などが挙げられるが、本実施の形態では、ポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましく、ジグリセリンモノオレイン酸エステルがより好ましい。
【0029】
ここで、油脂加工澱粉調製時の食用油脂または食用油脂類縁物質の配合量は、例えば、100質量部の原料澱粉に対して、食用油脂および食用油脂類縁物質の合計で0.005質量部以上としてもよく、0.008質量部以上が好ましく、0.02質量部以上がさらに好ましい。また、100質量部の原料澱粉に対しての食用油脂または食用油脂類縁物質の配合量は、例えば、食用油脂および食用油脂類縁物質の合計で2質量部以下とし、1.5質量部以下が好ましく、より好ましくは0.8質量部以下とする。
【0030】
油脂加工澱粉の製造に用いる澱粉と食用油脂の組み合わせは、柔らかくジューシーな食肉加工食品を得るとともに、食肉加工食品の歩留まりを向上させる観点から、好ましくは架橋タピオカ澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチおよびワキシーコーンスターチからなる群から選ばれる1種または2種以上と、ヨウ素価が100以上の油脂との組み合わせである。
油脂加工澱粉の製造方法は、たとえば、以下の工程を含む:
原料澱粉に、食用油脂および食用油脂類縁物質からなる群から選択される1種または2種以上を配合して混合物を調製する工程、ならびに
混合物を調製する工程で得られた混合物を加熱処理する工程。
【0031】
ここで、混合物を調製する工程において、油脂加工澱粉の酸化臭を抑制する観点から、混合物がpH調整剤を含む構成としてもよい。
pH調整剤とは、食品に利用可能なpH調整剤であればよく、原料澱粉および食用油脂の種類に応じて選択することができるが、水への溶解性や、最終製品への味などの影響から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩;およびリン酸水素2ナトリウム、リン酸2水素ナトリウム等のリン酸塩類;およびクエン酸3ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、コハク酸2ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、フマル酸1ナトリウム等の上記以外の有機酸塩等が好ましく、これらの一種以上を配合するのが好ましい。さらに好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩類を一種以上用いる。
【0032】
また、油脂加工澱粉の酸化臭をさらに効果的に抑制する観点からは、pH調整剤として、1質量%水溶液の25℃におけるpHが6.5以上であるものを用いることが好ましく、より好ましくは8.0以上、さらに好ましくは10以上である。
混合物を調製する工程において、混合物がタンパク質を含む構成としてもよい。
タンパク質に制限はなく、植物タンパク質、動物タンパク質等の精製物やタンパク質を含む食品素材等が挙げられる。
このうち、植物タンパク質として、たとえば小麦タンパク質、大豆タンパク質、トウモロコシタンパク質等の植物タンパク質が挙げられる。植物タンパク質を含む食品素材としては脱脂大豆粉、全脂大豆粉等が挙げられ、好ましくは脱脂大豆粉が挙げられる。
また、動物タンパク質として、卵白タンパク質、卵黄タンパク質等の卵タンパク質、ホエータンパク質、カゼイン等の乳タンパク質、血漿タンパク質、血球タンパク質等の血液タンパク質、畜肉タンパク質、魚肉タンパク質等の食肉タンパク質が挙げられ、動物タンパク質を含む食品素材としては乾燥全卵、乾燥卵白等が挙げられる。
【0033】
次に、混合物を加熱処理する工程について説明する。
混合物を加熱処理する工程において、混合物を調製する工程で得られた混合物を加熱することにより、油脂加工澱粉が得られる。
加熱処理については、たとえば150℃以上の高温で加熱、焙焼すると澱粉粒の損傷により、澱粉の粘度が低下し、澱粉本来の保水性が失われる懸念がある。すると、食肉加工食品に加えたときに歩留まりの減少などが生じるおそれがある。そのため、加熱処理は、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃未満の低温でおこない、より好ましくは40~110℃程度の低温で加熱処理する。こうすることにより、澱粉の損傷を押さえ、食肉改良効果がより高くなる。なお、加熱温度の下限に制限はないが、加熱期間を適度に短縮して生産性を向上させる観点から、たとえば40℃以上とする。
【0034】
加熱処理する期間は、澱粉の状態および加熱温度に応じて適宜設定され、たとえば0.5時間以上25日以下、好ましくは5時間以上20日以下であり、より好ましくは6時間以上18日以下である。
【0035】
本実施の形態にかかる製造方法では、ミキシング工程において、油脂加工澱粉を食肉100質量部に対して0.7質量部以上20質量部以下、好ましくは2質量部以上15質量部以下、より好ましくは3質量部以上10質量部以下、更に好ましくは3質量部以上7質量部以下、更により好ましくは3質量部以上5質量部以下、添加する。このように、ミキシング工程において油脂加工澱粉を添加することで、食肉の保形性を向上させることができる。
【0036】
また、本実施の形態にかかる製造方法では、ミキシング工程において、更に重曹を食肉100質量部に対して0.01質量部以上1質量部以下、好ましくは0.05質量部以上0.8質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上0.5質量部以下、更に好ましくは0.1質量部以上0.3質量部以下添加してもよい。重曹を添加することで、食肉の食感を向上させることができる。
【0037】
また、本実施の形態にかかる製造方法では、ミキシング工程において、更に大豆タンパクを食肉100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下、好ましくは0.5質量部以上3質量部以下、より好ましくは1質量部以上2質量部以下添加してもよい。大豆タンパクを添加することで、食肉の食感を向上させることができる。
【0038】
本実施の形態にかかる製造方法では、ミキシング工程の後、食肉を所定の形に成形する工程を備えていてもよい。例えば、唐揚げを製造する場合は、ミキシング後の食肉を丸めて成形してもよい。
【0039】
本実施の形態にかかる製造方法では、ミキシング工程の後(成形した後でも良い)に食肉を油ちょうするフライ工程を備える。食肉を油ちょうする際は、ミキシング工程の後(成形した後でも良い)の食肉をバッター液に入れてバッタリングし、バッタリング後の食肉を油で所定の時間揚げる。バッター液は、例えば、水、唐揚げ粉、馬鈴薯でん粉等を所定の割合で混合して調製することができるが、バッター液の原料はこれらに限定されることはない。また、油にはキャノーラ油等の油を使用することができるが、油はこれに限定されることはない。なお、本実施の形態では、バッタリングした後に成形し、その後に油ちょうするようにしてもよい。
【0040】
以上で説明した本実施の形態にかかる製造方法では、ミキシング工程において上記の分量の油脂加工澱粉を添加しているので、食肉の保形性を向上させることができる。具体的には、ミキシング工程において上記の分量の油脂加工澱粉を添加した場合は、成形後の食肉の形状を保つことができる。また、例えば食肉を油で揚げている最中に食肉の形状が変形することを抑制することができる。例えば、食肉を油に投入し、食肉が鍋の底に衝突した際に、食肉が変形することを抑制することができる。このように本実施の形態にかかる製造方法では、食肉の保形性を向上させることができるので、食肉加工品の製品歩留まりを向上させることができる。
【0041】
なお、本実施の形態では更に、タンブリング工程において油脂加工澱粉を添加してもよい。換言すると、タンブリング工程とミキシング工程の両方において、油脂加工澱粉を添加してもよい。タンブリング工程において油脂加工澱粉を添加する場合は、食肉100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下、好ましくは0.5質量部以上8質量部以下、より好ましくは1質量部以上5質量部以下添加してもよい。
【0042】
タンブリング工程において油脂加工澱粉を添加する場合は、例えば、ピックル液に油脂加工澱粉を添加してタンブリングしてもよく、タンブリングの途中で油脂加工澱粉を添加してもよい。また、ピックル液に油脂加工澱粉を添加してタンブリングし、タンブリングの途中で油脂加工澱粉を追加で添加してもよい。タンブリングの途中で油脂加工澱粉を添加する場合は、例えば、タンブリングを一時停止してタンブラー内に油脂加工澱粉を投入し(つまり、既に投入してあるピックル液に油脂加工澱粉を混合し)、その後、タンブリングを再開するようにしてもよい。また、タンブリングを一時停止し、油脂加工澱粉を添加したピックル液をタンブラーに投入し、その後、タンブリングを再開するようにしてもよい。
【0043】
例えば、タンブリング工程において油脂加工澱粉を添加する場合は、ピックル液100質量部に対して油脂加工澱粉を1質量部以上50質量部以下、好ましくは3質量部以上40質量部以下、より好ましくは5質量部以上20質量部以下、更により好ましくは5質量部以上10質量部以下添加するようにしてもよい。ピックル液に対する油脂加工澱粉の量をこの範囲とすることで、食肉の表面にピックル液(油脂加工澱粉)を効果的に付着(コーティング)させることができる。
【0044】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2として、上述の第2の製造方法について説明する。
上述のように第2の製造方法は、食肉に油脂加工澱粉を添加してミキシング処理をするミキシング工程を含み、ミキシング工程において、油脂加工澱粉を食肉100質量部に対して0.7質量部以上3質量部以下添加することを特徴としている。本実施の形態にかかる第2の製造方法では、ミキシング工程において上記の分量の油脂加工澱粉を添加しているので、食肉の焼成歩留まりを向上させることができる。以下、本実施の形態にかかる第2の製造方法について詳細に説明する。なお、以下では、ミキシング工程の前にタンブリング工程を備える製造方法を例として説明する。
【0045】
本実施の形態にかかる製造方法は、まず、食肉とピックル液とを混合して食肉にタンブリング処理を施している。なお、タンブリング処理については実施の形態1で説明したタンブリング処理と同様であるので重複した説明は省略する。また、このとき使用する食肉およびピックル液についても、実施の形態1で説明した食肉およびピックル液と同様であるので重複した説明は省略する。
【0046】
本実施の形態にかかる製造方法は、タンブリング工程の後、食肉にミキシング処理をするミキシング工程を実施している。本実施の形態にかかる製造方法においても、ミキシング工程において油脂加工澱粉を添加(混合)している。なお、本実施の形態にかかるミキシング工程についても実施の形態1で説明したミキシング工程と同様であるので重複した説明は省略する。
【0047】
本実施の形態にかかる製造方法では、ミキシング工程の後に食肉を焼成する焼成工程を備える。例えば、焼成工程は、蒸気加熱で所定の時間食肉を焼成する工程であってもよい。焼成工程は、例えば80℃以上250℃以下の温度で所定の時間焼成する工程であってもよい。
【0048】
ここで、食肉を焼成処理した場合は、食肉からドリップ液が流れ出るが、このドリップ液の量が多いと焼成歩留まりが低下する。本実施の形態にかかる製造方法では、ミキシング工程において、油脂加工澱粉を食肉100質量部に対して0.7質量部以上3質量部以下、好ましくは1質量部以上3質量部以下添加する。このように、ミキシング工程において油脂加工澱粉を添加することで、食肉を焼成処理した際に食肉から流れ出るドリップ液の量を少なくすることができる。したがって、食肉の焼成歩留まりを向上させることができるので、食肉加工品の製品歩留まりを向上させることができる。
【0049】
焼成歩留まりは特に限定されるものではないが、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましい。「焼成歩留まり」とは、焼成前の食肉の質量に対する焼成後の食肉の質量の割合であり、下記の式を用いて算出することができる。
【0050】
焼成歩留まり(%)=(焼成後の質量(g)/焼成前の質量(g))×100
【0051】
なお、本実施の形態では更に、タンブリング工程において油脂加工澱粉を添加してもよい。換言すると、タンブリング工程とミキシング工程の両方において、油脂加工澱粉を添加してもよい。タンブリング工程において油脂加工澱粉を添加する場合は、食肉100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下、好ましくは0.5質量部以上8質量部以下、より好ましくは1質量部以上5質量部以下添加してもよい。
【0052】
タンブリング工程において油脂加工澱粉を添加する場合は、例えば、ピックル液に油脂加工澱粉を添加してタンブリングしてもよく、タンブリングの途中で油脂加工澱粉を添加してもよい。また、ピックル液に油脂加工澱粉を添加してタンブリングし、タンブリングの途中で油脂加工澱粉を追加で添加してもよい。タンブリングの途中で油脂加工澱粉を添加する場合は、例えば、タンブリングを一時停止してタンブラー内に油脂加工澱粉を投入し(つまり、既に投入してあるピックル液に油脂加工澱粉を混合し)、その後、タンブリングを再開するようにしてもよい。また、タンブリングを一時停止し、油脂加工澱粉を添加したピックル液をタンブラーに投入し、その後、タンブリングを再開するようにしてもよい。
【0053】
例えば、タンブリング工程において油脂加工澱粉を添加する場合は、ピックル液100質量部に対して油脂加工澱粉を1質量部以上50質量部以下、好ましくは3質量部以上40質量部以下、より好ましくは5質量部以上20質量部以下、更により好ましくは5質量部以上10質量部以下添加するようにしてもよい。ピックル液に対する油脂加工澱粉の量をこの範囲とすることで、食肉の表面にピックル液(油脂加工澱粉)を効果的に付着(コーティング)させることができる。
【0054】
<実施の形態3>
次に、本発明の実施の形態3として、上述の第3の製造方法について説明する。
上述のように第3の製造方法は、食肉とピックル液とを混合して食肉にタンブリング処理をするタンブリング工程を含み、当該タンブリング工程において0.1質量部以上10質量部以下の油脂加工澱粉を添加することを特徴としている。本実施の形態にかかる第3の製造方法では、タンブリング工程において上記の分量の油脂加工澱粉を添加しているので、食肉の焼成歩留まりを向上させることができる。以下、本実施の形態にかかる第3の製造方法について詳細に説明する。
【0055】
本実施の形態にかかる製造方法は、まず、食肉とピックル液とを混合して食肉にタンブリング処理を施している。このとき本実施の形態にかかる製造方法では、タンブリング工程において油脂加工澱粉を食肉100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下、0.5質量部以上8質量部以下、より好ましくは1質量部以上5質量部以下添加する。
【0056】
本実施の形態においても、タンブリング工程において油脂加工澱粉を添加する場合は、例えば、ピックル液に油脂加工澱粉を添加してタンブリングしてもよく、タンブリングの途中で油脂加工澱粉を添加してもよい。また、ピックル液に油脂加工澱粉を添加してタンブリングし、タンブリングの途中で油脂加工澱粉を追加で添加してもよい。タンブリングの途中で油脂加工澱粉を添加する場合は、例えば、タンブリングを一時停止してタンブラー内に油脂加工澱粉を投入し(つまり、既に投入してあるピックル液に油脂加工澱粉を混合し)、その後、タンブリングを再開するようにしてもよい。また、タンブリングを一時停止し、油脂加工澱粉を添加したピックル液をタンブラーに投入し、その後、タンブリングを再開するようにしてもよい。
【0057】
例えば、タンブリング工程において油脂加工澱粉を添加する場合は、ピックル液100質量部に対して油脂加工澱粉を1質量部以上50質量部以下、好ましくは3質量部以上40質量部以下、より好ましくは5質量部以上20質量部以下、更により好ましくは5質量部以上10質量部以下添加するようにしてもよい。ピックル液に対する油脂加工澱粉の量をこの範囲とすることで、食肉の表面にピックル液(油脂加工澱粉)を効果的に付着(コーティング)させることができる。
【0058】
なお、油脂加工澱粉を添加する点以外のタンブリング処理については実施の形態1で説明したタンブリング処理と同様であるので重複した説明は省略する。また、このとき使用する食肉およびピックル液についても、実施の形態1で説明した食肉およびピックル液と同様であるので重複した説明は省略する。
【0059】
本実施の形態にかかる製造方法では、タンブリング工程の後に食肉を焼成する焼成工程を備えていてもよい。例えば、焼成工程は、蒸気加熱で所定の時間食肉を焼成する工程であってもよい。焼成工程は、例えば80℃以上250℃以下の温度で所定の時間焼成する工程であってもよい。
【0060】
ここで、食肉を焼成処理した場合は、食肉からドリップ液が流れ出るが、このドリップ液の量が多いと焼成歩留まりが低下する。本実施の形態にかかる製造方法では、タンブリング工程において、油脂加工澱粉を食肉100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下、好ましくは0.5質量部以上8質量部以下、より好ましくは1質量部以上5質量部以下添加する。このように、タンブリング工程において油脂加工澱粉を添加することで、食肉を焼成処理した際に食肉から流れ出るドリップ液の量を少なくすることができる。したがって、食肉の焼成歩留まりを向上させることができるので、食肉加工品の製品歩留まりを向上させることができる。
【0061】
焼成歩留まりは特に限定されるものではないが、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましい。なお、焼成歩留まりについては、実施の形態2で説明した方法と同様の方法を用いて算出することができる。
【0062】
また、本実施の形態にかかる製造方法では、タンブリング工程の後に食肉を油ちょうするフライ工程を備えていてもよい。食肉を油ちょうする際は、タンブリング工程の後の食肉をバッター液に入れてバッタリングし、バッタリング後の食肉を油で所定の時間揚げる。バッター液は、例えば、水、唐揚げ粉、馬鈴薯でん粉等を所定の割合で混合して調製することができるが、バッター液の原料はこれらに限定されることはない。また、油にはキャノーラ油等の油を使用することができるが、油はこれに限定されることはない。また、本実施の形態では、バッタリングする前に食肉を成形してもよく、またバッタリングした後に食肉を成形し、その後に油ちょうするようにしてもよい。
【0063】
本実施の形態にかかる製造方法では、タンブリング工程において油脂加工澱粉を食肉100質量部に対して1質量部以上5質量部以下添加しているので、食肉を油ちょうした場合にも、食肉加工品の製品歩留まりを向上させることができる。例えば、フライ後の焼成歩留まりは、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましい。
【0064】
以上、本発明の実施の形態1~3について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、他の食肉加工品の製造方法にも適用することができる。例えば、上記フライ工程や焼成工程の代わりに、食肉を煮てもよく、また茹でてもよい。例えば、上記食肉加工品の製造方法は、唐揚げ、竜田揚げ、ビーフカツ、豚カツ、チキンカツ、魚フライ、ベーコン、焼き豚、ステーキ、焼肉、角煮、グリルチキン、サラダチキンなどの製造に用いることができる。
【実施例
【0065】
次に、本発明の実施例について説明する。以下の実験1~3、実験12では、鶏もも肉を油で揚げて唐揚げを製造した場合について説明する。また、以下の実験4~実験7では、鶏むね肉をスチーム加熱処理(180℃)してグリルチキンを製造した場合について説明する。また、以下の実験8~実験11では、鶏むね肉をスチーム加熱処理(85℃)してサラダチキンを製造した場合について説明する。なお、以下の実験1~実験12で用いた材料については、特に説明がない限り共通の材料を用いている。
【0066】
<実験1>
まず、実験1について説明する。実験1では、鶏もも肉の唐揚げを製造した際の唐揚げの保形性について調べた。実験1-1~実験1-15にかかるサンプルは下記の方法を用いて作製した。
【0067】
(サンプルの作製)
図1に、実験1にかかるサンプルの作製フローを示す。まず、鶏もも肉(1枚肉)を1つ当たり約30gとなるようにカットした。次に、表1に記載の配合でピックル液を調整した。そして、カットした鶏もも肉100質量部に対してピックル液を40質量部添加し、これらをタンブラーに投入して90分間タンブリング処理を行った。
【0068】
タンブリング処理後、鶏もも肉をザルに移して、余分なピックル液を取り除いた。その後、ボウルに下記の油脂加工澱粉(以下、スターチとも記載する)と鶏もも肉とを入れて、3分間、手でかき混ぜてミキシングを行った。添加したスターチの種類と添加量は表2に示す通りである。ここで、スターチの添加量は、鶏もも肉に対する添加量(質量%)である。なお、使用したスターチは次の通りである。
・アセチル化タピオカ油脂加工澱粉 (K-1、日本食品化工社製)
・オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム (エヌクリーマー46、日本エヌエスシー社製)
・アルファー化ハイアミロースコーンスターチ (ジェルコールAH-F、株式会社J-オイルミルズ社製)
・油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉
なお、上記「油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉」は下記の方法を用いて作製した。
100質量部のリン酸架橋タピオカ澱粉に、ハイリノールサフラワー油0.1質量部、ジグリセリンモノオレイン酸エステル0.05質量部、および25%炭酸ナトリウム水溶液0.4質量部(炭酸ナトリウム当量として0.1質量部)を加え、混合機(スーパーミキサー、株式会社カワタ製)で3000rpm、3分間均一に混合し、混合物を得た。この混合物を棚段式乾燥機にて、70℃10日間加熱し、油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉を得た。
【0069】
また、実験1-6~実験1-8、実験1-14、実験1-15では更に重曹(炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム):株式会社八宝商会製)を添加した。また、実験1-9、実験1-10では大豆タンパク(ニューフジプロSHE:不二製油株式会社製)を添加した。重曹と大豆タンパクの添加量は表2に示す通りである。ここで、重曹と大豆タンパクの添加量はそれぞれ、鶏もも肉に対する添加量(質量%)である。
【0070】
ミキシング後、鶏もも肉を手で丸めて成形した。そして、成形後の鶏もも肉(成形物)を10分間、静置した。このとき、成形直後と成形後10分経過の成形物の写真を撮影し、成形物の外観を観察して保形性を調べた。その後、水、唐揚げ粉(厨房王 ジューシー唐揚げ粉:株式会社ダイショー製)、馬鈴薯でん粉を10:8:2の割合で混合し、粉の塊がなくなるまで入念に混ぜ合わせてバッター液を調製した。このバッター液を、成形物に加えてバッタリングした成形物を得た。そして、バッタリングした成形物を約180℃のキャノーラ油で4分間油ちょうした後、よく油切りして金属バットに移して室温で放冷した。また、油ちょう後の唐揚げの写真を撮影して外観を観察した。
【0071】
(評価)
ミキシング後、鶏もも肉を手で丸めて成形した成形物を10分間静置し、このときの成形物の外観の変化を観察して保形性を調べた。成形物の保形性は、下記の基準で評価した。
[保形性]
A・・・ 10分間静置しても形状を保っている(高さを保っている)。
B・・・ 10分間静置しても形状をほぼ保っている(高さをほぼ保っている)。
C・・・ 10分間静置した後、高さが低くなった。
【0072】
また、ボウルに油脂加工澱粉と鶏もも肉を入れて、3分間、手でかき混ぜてミキシングを行った際の作業性を評価した。
[作業性]
A・・・ さらさらしてべたつきなし
B・・・ べたつきがあり、作業性が若干悪いが問題がないレベル
C・・・ べたつきがあり、作業性が良くない
【0073】
(実験結果)
表2に、実験1の実験結果を示す。表2に示すように、油脂加工澱粉(スターチ)を添加してミキシングを行った場合は、全体的に保形性が良好であった。実験1-1~実験1-5に着目すると、スターチの添加量が3%以上10%以下の範囲で成形物の保形性が良好であった。図2は、成形直後と成形後10分間静置した後の成形物の側面の写真である。図2に示すように、実験1-1では、10分間静置した後の成形物の高さは、成形直後の成形物の高さよりも低くなり、保形性が良くなかった。一方、実験1-2、及び実験1-3では、10分間静置した後の成形物の高さは、成形直後の成形物の高さとほぼ同程度であり、保形性が良好であった。
【0074】
また、図3は、フライ後の唐揚げの外観を撮影した写真である。図3に示すように、フライ後においても、実験1-2、及び実験1-3では成形物の高さが保たれており、保形性が良好であった。つまり、フライ後においても成形後の形状が保たれていた。
【0075】
作業性に着目すると、スターチの添加量が増えるほど作業性が低下する傾向にあった。具体的には、実験1-2(添加量3%)では、さらさらしてべたつきもなく、肉同士もそれほど結着していなかった。実験1-3(添加量5%)では、やや粘度が出てくるが、作業性に問題はなかった。実験1-4(添加量7%)では、油脂加工アセチル化タピオカ澱粉が若干なじみにくく、粘度も出てきて、持ち上げても肉同士が結着していて落ちづらくなり、作業性が若干悪化した。実験1-5(添加量10%)では、油脂加工アセチル化タピオカ澱粉がなじみにくく、ボウルの底にこびりついた。また、粘度もあり、作業性が良くなかった。
【0076】
実験1-1~実験1-5の唐揚げを試食したところ、スターチを添加したことによる風味への影響はなかった。また、スターチの添加量を増やすほど、鶏肉の繊維感が強調されてやや硬くなっていく印象であった。また、スターチを添加した実験1-2~実験1-5では、スターチを添加していない実験1-1よりもジューシー感が向上した。
【0077】
次に、実験1-6~実験1-8について説明する。実験1-6~実験1-8では、スターチの添加量を5%に固定し、重曹を0.1%、0.2%、0.3%それぞれ添加した。実験1-6~実験1-8では、保形性および作業性が共に良好であった。重曹を添加したことによる作業性への影響はなかった。また、フライ後の唐揚げを試食したところ、重曹の添加量が0.3%の場合は、若干異風味を感じたが、味には大きな変化はなかった。また、重曹を添加したことにより、肉質が若干硬くなり、食感がプリッとしていた。重曹の添加量を増やすとその傾向は強くなった。また、重曹の添加によりジューシー感が若干低下した。
【0078】
次に、実験1-9、実験1-10について説明する。実験1-9、実験1-10では、スターチの添加量を5%に固定し、大豆タンパクを1.0%、2.0%それぞれ添加した。実験1-9、実験1-10では、保形性が良好であった。よって大豆タンパクを添加することで歩留まりが向上する。一方、大豆タンパクを2.0%添加した実験1-10では、作業性があまり良くなかった。具体的には、大豆タンパクは粉がなじみにくく、ボウルの底にこびりついた。特に、実験1-10では、べたつきがひどく、作業性があまり良くなかった。また、フライ後の唐揚げを試食したところ、大豆タンパクを2%添加した実験1-10では異風味があった。
【0079】
次に、実験1-11~実験1-15について説明する。実験1-11~実験1-15では、油脂加工アセチル化タピオカ澱粉とは異なる種類のスターチを用いた。実験1-11~実験1-15では、スターチとして油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉を添加した。なお、実験1-14、実験1-15では、更に重曹を添加した。スターチおよび重曹の添加量は、表2に示すとおりである。
【0080】
表2に示すように、実験1-11では保形性の評価がBであったが、それ以外は保形性の評価がAであり良好であった。作業性については、実験1-11~実験1-15においてすべて良好であった。フライ油投入時、油脂加工アセチル化タピオカ澱粉の方が油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉よりも硬めの感触でまとまりもやや良く感じた。また、実験1-14、実験1-15において重曹を入れても粘りや作業性にほぼ変化はなかった。
【0081】
実験1-11~実験1-15についてフライ後の唐揚げを試食したところ、油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉は、スターチの添加による異風味は感じられなかった。また、油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉を添加した場合は、スターチを添加していない実験1-1よりもジューシー感が向上した。また、重曹を添加して肉が硬くなった。
【0082】
以上の実験1の結果から、油脂加工澱粉(スターチ)を添加してミキシングを行った場合は、全体的に保形性が良好であった。特に、スターチの添加量が3%以上10%以下の範囲で成形物の保形性が良好であった。また、保形性と作業性の両方を考慮すると、スターチの添加量は3%以上7%以下が好ましく、3%以上5%以下がより好ましかった。
【0083】
また、スターチに加えて、重曹、大豆タンパクを添加してミキシングを行った場合も、成形物の保形性が良好であった。更に、油脂加工アセチル化タピオカ澱粉の代わりに油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉を添加した場合でも、成形物の保形性が良好であった。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
<実験2>
次に、実験2について説明する。実験2では、鶏もも肉の唐揚げを製造した際の、フライ中およびフライ後における唐揚げの保形性について調べた。実験2-1~実験2-6にかかるサンプルは、下記の方法を用いて作製した。
【0087】
(サンプルの作製)
図4に、実験2にかかるサンプルの作製フローを示す。まず、鶏もも肉(1枚肉)を1つ当たり約30gとなるようにカットした。次に、表3に記載の配合でピックル液を調整した。実験2では、ピックル液にスターチ(油脂加工アセチル化タピオカ澱粉)を添加した。そして、カットした鶏もも肉100質量部に対してピックル液を40質量部添加した。このときの鶏もも肉100質量部に対するスターチの量は3質量部となる。その後、これらをタンブラーに投入して90分間タンブリング処理を行った。
【0088】
タンブリング処理後、鶏もも肉をザルに移して、余分なピックル液を取り除いた。その後、ボウルに油脂加工澱粉と鶏もも肉とを入れて、3分間、手でかき混ぜてミキシングを行った。また、実験2-3~実験2-6では、油脂加工澱粉(スターチ:油脂加工アセチル化タピオカ澱粉)を添加した。添加したスターチの種類と添加量は表4示す通りである。ここで、スターチの添加量は、鶏もも肉に対する添加量(質量%)である。また、実験2-5~実験2-6では更に、油脂加工澱粉に重曹を0.1%添加した。ここで、重曹の添加量は、鶏もも肉に対する添加量(質量%)である。
【0089】
ミキシング後、鶏もも肉を手で丸めて成形した(成形あり)。また、実験2では、成形しないサンプル(つまり、手で丸めないサンプル)も準備した(成形なし)。その後、実験1と同様にバッター液を調製し、このバッター液をサンプルに加えてバッタリングした。そして、バッタリングしたサンプルを約180℃のキャノーラ油で4分間油ちょう(フライ)した後、よく油切りして金属バットに移して室温で放冷した。
【0090】
(評価)
実験2では、各サンプルのフライ中およびフライ後の形状について観察した。フライ中の形状は下記の基準で評価した。
[フライ中の形状]
A・・・ フライ中に形状を維持していた。
C・・・ フライ中に平べったく広がった。
【0091】
また、フライ後の形状は下記の基準で評価した。
[フライ後の形状]
A・・・ フライ後に高さを保っていた。
C・・・ フライ後に高さを保っていなかった。
【0092】
(実験結果)
表4に、実験2の実験結果を示す。表4に示すように、油脂加工澱粉(スターチ)を添加した場合は、成形のあり/なしに関わらずに、フライ中の形状が良好であった。具体的には、実験2-3、実験2-4では、サンプルを油に投入した後、鍋底にサンプルが接触してもあまり広がらず、そのままの形状を維持していた。実験2-5、実験2-6においても同様に、サンプルを油に投入した後、鍋底にサンプルが接触してもあまり広がらず、そのままの形状を維持していた。一方、実験2-1、実験2-2では、サンプルを油に投入した後、鍋底にサンプルが接触し、その衝撃でサンプルが平べったく広がった。
【0093】
また、表4に示すように、油脂加工澱粉(スターチ)を添加した場合は、成形のあり/なしに関わらずに、フライ後の形状が良好であった。つまり、フライ中に形状を維持していた実験2-3~実験2-6では、その形状がフライ後においても維持されており、このためフライ後においてもサンプルの高さが保たれていたといえる。
【0094】
【表3】
【0095】
【表4】
【0096】
<実験3>
次に、実験3について説明する。実験3では、鶏もも肉の唐揚げを製造した際の、フライ中およびフライ後における唐揚げの保形性について調べた。実験3-1~実験3-6にかかるサンプルは、下記の方法を用いて作製した。
【0097】
(サンプルの作製)
図5に、実験3にかかるサンプルの作製フローを示す。まず、鶏もも肉(1枚肉)を1つ当たり約30gとなるようにカットした。次に、表5に記載の配合でピックル液を調整した。実験3では、ピックル液にスターチ(油脂加工アセチル化タピオカ澱粉)を添加した。そして、カットした鶏もも肉100質量部に対してピックル液を40質量部添加した。このときの鶏もも肉100質量部に対するスターチの量は3質量部となる。その後、これらをタンブラーに投入して90分間タンブリング処理を行った。
【0098】
タンブリング処理後、鶏もも肉をザルに移して、余分なピックル液を取り除いた。その後、ボウルに油脂加工澱粉と鶏もも肉を入れて、3分間、手でかき混ぜてミキシングを行った。また、実験3-3~実験3-6では、油脂加工澱粉(スターチ:油脂加工アセチル化タピオカ澱粉)を添加した。添加したスターチの種類と添加量は表6に示す通りである。ここで、スターチの添加量は、鶏もも肉に対する添加量(質量%)である。また、実験3-5~実験3-6では更に、重曹を0.1%添加した。ここで、重曹の添加量は、鶏もも肉に対する添加量(質量%)である。
【0099】
ミキシング後、実験1と同様にバッター液を調製した。そして、このバッター液を鶏もも肉100質量部に対して40質量部添加し、その後、20秒間、手でかき混ぜてミキシングを行った。その後、鶏もも肉を手で丸めて成形した(成形あり)。また、実験3では、成形しないサンプル(つまり、手で丸めないサンプル)も準備した(成形なし)。そして、このようにして準備したサンプルを約180℃のキャノーラ油で4分間油ちょう(フライ)した後、よく油切りして金属バットに移して室温で放冷した。
【0100】
(評価)
実験3では、各サンプルのフライ中およびフライ後の形状について観察した。フライ中の形状およびフライ後の形状の評価基準は実験2と同様である。
【0101】
(実験結果)
表6に、実験3の実験結果を示す。表6に示すように、油脂加工澱粉(スターチ)を添加した場合は、成形のあり/なしに関わらずに、フライ中の形状が良好であった。具体的には、実験3-3、実験3-4では、サンプルを油に投入した後、鍋底にサンプルが接触してもあまり広がらず、そのままの形状を維持していた。実験3-5、実験3-6においても同様に、サンプルを油に投入した後、鍋底にサンプルが接触してもあまり広がらず、そのままの形状を維持していた。一方、実験3-1、実験3-2では、サンプルを油に投入した後、鍋底にサンプルが接触し、その衝撃でサンプルが平べったく広がった。
【0102】
また、表6に示すように、油脂加工澱粉(スターチ)を添加した場合は、成形のあり/なしに関わらずに、フライ後の形状が良好であった。つまり、フライ中に形状を維持していた実験3-3~実験3-6では、その形状がフライ後においても維持されており、このためフライ後においてもサンプルの高さが保たれていたといえる。
【0103】
また、実験3は実験2と比べて、バッタリング後に成形をしている点が異なるが、この製造フローの違いによるフライ中およびフライ後の形状への影響は特に見られなかった。
【0104】
【表5】
【0105】
【表6】
【0106】
<実験4>
次に、実験4について説明する。以下の実験4~実験7では、鶏むね肉をスチーム加熱処理(180℃)してグリルチキンを製造した場合について説明する。実験4-1~実験4-3にかかるサンプルは下記の方法を用いて作製した。
【0107】
(サンプルの作製)
図6に、実験4にかかるサンプルの作製フローを示す。まず、鶏むね肉(1枚肉)を1つ当たり約75g~105gとなるようにカットした。次に、表7に記載の配合でピックル液を調整した。そして、カットした鶏むね肉100質量部に対してピックル液を20質量部添加し、これらをタンブラーに投入して90分間タンブリング処理を行った。
【0108】
タンブリング処理後、鶏むね肉をザルに移して、余分なピックル液を取り除いた。その後、実験4-2、実験4-3では、ボウルに油脂加工澱粉と鶏むね肉を入れて、3分間、手でかき混ぜてミキシングを行った。実験4-1では、油脂加工澱粉を加えることなく同様にボウルに鶏むね肉を入れてミキシングを行った。添加したスターチの種類と添加量は表9に示す通りである。ここで、スターチの添加量は、鶏むね肉に対する添加量(質量%)である。なお、実験4-3では、ミキシングの際、スターチが十分溶けなかったため、水を対肉で5%追加で添加した。
【0109】
ミキシング後、鶏むね肉をホテルパンに並べ、スチームコンベクションオーブン(株式会社ラショナル・ジャパン製、SCCWE61)を用いて、コンビモード、180℃、スチーム100%で9分30秒加熱して、各々のサンプルを焼成した。
【0110】
(評価)
実験4では、タンブリング前の鶏むね肉の質量とタンブリング後の鶏むね肉の質量とを測定して、タンブリング歩留まり(%)を求めた。具体的には下記の式を用いて、タンブリング歩留まりを算出した。なお、タンブリング後の質量は、鶏むね肉をザルに移して、余分なピックル液を取り除いた後の鶏むね肉の質量を測定した。
タンブリング歩留まり(%)=(タンブリング後の質量(g)/タンブリング前の質量(g))×100
【0111】
また、焼成前の鶏むね肉の質量と焼成後の鶏むね肉の質量とを測定して、焼成歩留まり(%)を求めた。具体的には下記の式を用いて、焼成歩留まりを算出した。
焼成歩留まり(%)=(焼成後の質量(g)/焼成前の質量(g))×100
【0112】
(実験結果)
表8にタンブリング歩留まりを示す。表8に示すように、実験4では、タンブリング歩留まりは105.7%であった。また、表9に焼成歩留まりを示す。表9に示すように、実験4-2では焼成歩留まりが79.7%であり、最も良い結果となった。また、実験4-3では焼成歩留まりが76.2%であり、次に良い結果となった。一方、実験4-1では焼成歩留まりが72.9%であった。したがって、ミキシング時に油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(油脂加工澱粉)を添加することで、焼成歩留まりが向上した。
【0113】
各々のサンプルを試食したところ、油脂加工アセチル化タピオカ澱粉を3%添加したサンプルでは、表面にゼラチンのような層が一部に形成されていた。一方、油脂加工アセチル化タピオカ澱粉を1%添加したサンプルでは、表面に違和感もなく、肉のパサつきも抑えられており良好であった。
【0114】
【表7】
【0115】
【表8】
【0116】
【表9】
【0117】
<実験5>
次に、実験5について説明する。実験5では、スターチとして油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(実験4参照)に加えてアルファー化ハイアミロースコーンスターチを添加した場合について検討した。実験5-1、及び実験5-2にかかるサンプルは下記の方法を用いて作製した。
【0118】
(サンプルの作製)
図7に、実験5にかかるサンプルの作製フローを示す。まず、鶏むね肉(1枚肉)を1つ当たり約130gとなるようにカットした。次に、表7に記載の配合でピックル液を調整した。そして、カットした鶏むね肉100質量部に対してピックル液を20質量部添加し、これらをタンブラーに投入して90分間タンブリング処理を行った。
【0119】
タンブリング処理後、鶏むね肉をザルに移して、余分なピックル液を取り除いた。その後、ボウルに油脂加工澱粉と鶏むね肉を入れて、3分間、手でかき混ぜてミキシングを行った。また、実験5-2では、油脂加工澱粉(スターチ)として油脂加工アセチル化タピオカ澱粉を1%、添加した。ここで、スターチの添加量は、鶏むね肉に対する添加量(質量%)である。
【0120】
ミキシング後、鶏むね肉をホテルパンに並べ、スチームコンベクションオーブンを用いて、コンビモード、180℃、スチーム100%で11分加熱して、各々のサンプルを焼成した。
【0121】
(評価)
実験5においても実験4と同様の方法を用いて、タンブリング歩留まりおよび焼成歩留まりをそれぞれ求めた。
【0122】
(実験結果)
表10にタンブリング歩留まりを示す。表10に示すように、実験5では、タンブリング歩留まりは114.6%であった。また、表11に焼成歩留まりを示す。表11に示すように、実験5-2では焼成歩留まりが75.2%であった。一方、実験5-1では焼成歩留まりが72.1%であった。したがって、ミキシング時に油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(油脂加工澱粉)を添加することで、焼成歩留まりが向上した。また、実験5の結果から、スターチとして油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(実験4参照)に加えてアルファー化ハイアミロースコーンスターチを添加した場合であっても、焼成歩留まりが向上することがわかった。なお、実験4-2と実験5-2とを比較すると、実験4-2の焼成歩留まりのほうが実験5-2の焼成歩留まりよりも高いため、アルファー化ハイアミロースコーンスターチを添加しない方が、焼成歩留まりが向上するといえる。
【0123】
また、各々のサンプルを試食したところ、実験5-2では実験5-1と比べて肉が柔らかくジューシーであり、食感が良好であった。
【0124】
【表10】
【0125】
【表11】
【0126】
<実験6>
次に、実験6について説明する。実験6では、スターチの添加量の下限値について検討した。図8は、実験6にかかるサンプルの作製フローである。なお、実験6-1~実験6-4にかかるサンプルの作製フローについてはスターチの添加量が異なるのみであり、これ以外は実験5の場合と基本的に同様である。実験6-2~実験6-4では、スターチの添加量をそれぞれ1%、0.5%、0.3%としている。ここで、スターチの添加量は、鶏むね肉に対する添加量(質量%)である。また、実験6においても実験4と同様の方法を用いて、タンブリング歩留まりおよび焼成歩留まりをそれぞれ求めた。
【0127】
(実験結果)
表12にタンブリング歩留まりを示す。表12に示すように、実験6では、タンブリング歩留まりが118.2%であった。また、表13に焼成歩留まりを示す。表13に示すように、実験6-2では焼成歩留まりが78.4%であり良好であった。一方、実験6-3では焼成歩留まりが69.0%、実験6-4では焼成歩留まりが69.2%となり、実験6-1の焼成歩留まりである69.5%と同程度であった。これらの結果から、焼成歩留まりを向上させるためには、スターチを1%以上添加する必要があるといえる。
【0128】
また、各々のサンプルを試食したところ、実験6-2が最もしっとり感があり、実験6-3が次にしっとり感があった。また、実験6-1、実験6-4はパサつきがあった。また、実験6-3は、実験6-2よりもしっとり感が劣るものの、ぬめりが多少抑えられていた。
【0129】
実験4~実験6の結果を考慮すると、ミキシング工程において添加する油脂加工澱粉(スターチ)の量は1質量%以上3質量%以下が好ましいといえる。
【0130】
【表12】
【0131】
【表13】
【0132】
<実験7>
次に、実験7について説明する。実験7では、ピックル液にスターチを添加した場合の効果について検討した。実験7-1、及び実験7-2にかかるサンプルは下記の方法を用いて作製した。
【0133】
(サンプルの作製)
図9に、実験7にかかるサンプルの作製フローを示す。まず、鶏むね肉(1枚肉)を1つ当たり約130gとなるようにカットした。次に、表14に記載の配合でピックル液を調整した。実験7では、ピックル液にスターチ(油脂加工アセチル化タピオカ澱粉)を添加した。そして、カットした鶏むね肉100質量部に対してピックル液を20質量部添加した。このとき、鶏むね肉100質量部に対するスターチの量は1質量部となる。その後、これらをタンブラーに投入して90分間タンブリング処理を行った。
【0134】
タンブリング処理後、鶏むね肉をザルに移して、余分なピックル液を取り除いた。その後、実験7-2は、スターチとして鶏むね肉に対して1%の油脂加工アセチル化タピオカ澱粉と鶏むね肉とをボウルに入れて、3分間、手でかき混ぜてミキシングを行った。ここで、スターチの添加量は、鶏むね肉に対する添加量(質量%)である。
【0135】
ミキシング後、鶏むね肉をホテルパンに並べ、スチームコンベクションオーブンを用いて、コンビモード、180℃、スチーム100%で11分加熱して、各々のサンプルを焼成した。
【0136】
(評価)
実験7においても実験4と同様の方法を用いて、タンブリング歩留まりおよび焼成歩留まりをそれぞれ求めた。
【0137】
(実験結果)
表15にタンブリング歩留まりを示す。表15に示すように、実験7では、タンブリング歩留まりが115.9%であった。また、表16に焼成歩留まりを示す。表16に示すように、実験7-2では焼成歩留まりが80.9%であった。一方、実験7-1では焼成歩留まりが75.5%であった。
【0138】
これらの結果から、ピックル液にスターチを添加してタンブリング処理をした場合は、ミキシングを省略しても焼成歩留まりが上昇する傾向にあった(実験4-1参照)。また、ピックル液にスターチを添加してタンブリング処理をし、その後ミキシングを行った場合は、ミキシングを省略した場合よりも焼成歩留まりが上昇した。よって、焼成歩留まりの向上には、スターチを添加したミキシング処理を行うことが効果的であるといえる。
【0139】
また、各々のサンプルを試食したところ、実験7-2では実験7-1と比べて肉が柔らかくジューシーであり、食感が良好であった。
【0140】
【表14】
【0141】
【表15】
【0142】
【表16】
【0143】
<実験8>
次に、実験8について説明する。以下の実験8~実験11では、鶏むね肉をスチーム加熱処理(85℃)してサラダチキンを製造した場合について説明する。実験8-1~実験8-3にかかるサンプルは下記の方法を用いて作製した。
【0144】
(サンプルの作製)
図10に、実験8にかかるサンプルの作製フローを示す。また、表17に実験8の実験条件を示す。まず、鶏むね肉(1枚肉)を1つ当たり約130gとなるようにカットした。実験8では、実験8-1および実験8-2ではそれぞれ3個のカット肉を用いて、実験8-3では4個のカット肉を用いて実験を行った。次に、表17に記載の配合でピックル液を調整した。なお、綿実油ブレンドオイルには、美味得徳(J―オイルミルズ社製)を使用した。そして、カットした鶏むね肉100質量部に対してピックル液を30質量部添加し、これらをタンブラーに投入して90分間タンブリング処理を行った。
【0145】
このとき、実験8-1および実験8-2では、油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を添加することなくタンブリングを行った。一方、実験8-3では、タンブリング時に油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を、鶏むね肉100質量部に対して5質量部添加してタンブリングを行った。なお、表17では、スターチを添加してタンブリングした場合を「添加タンブリング」と記載している(以下、同様である)。
【0146】
タンブリング処理後、鶏むね肉をザルに移して、余分なピックル液を取り除いた。その後、実験8-2にかかるサンプルについては、鶏むね肉とそれに対して1%の油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)とをタンブラーに再び入れて、3分間、ミキシングを行った。ここで、スターチの添加量は、鶏むね肉に対する添加量(質量%)である。なお、表17では、スターチを添加してミキシングした場合を「添加ミキシング」と記載している(以下、同様である)。
【0147】
そして、タンブリング後の実験8-1および実験8-3にかかるサンプル、及びミキシング後の実験8-2にかかるサンプルをそれぞれホテルパンに並べ、スチームコンベクションオーブンを用いて、スチームモード、85℃で25分加熱して、各々のサンプルを焼成した。
【0148】
(評価)
実験8においても実験4と同様の方法を用いて、タンブリング歩留まりおよび焼成歩留まりをそれぞれ求めた。
【0149】
(実験結果)
表18にタンブリング歩留まりを示す。表18に示すように、ピックル液に油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を添加していない実験8-1および実験8-2では、タンブリング歩留まりは115.3%であった。一方、ピックル液に油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を添加した実験8-3では、タンブリング歩留まりは111.9%であった。よって、油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を添加した場合は、タンブリング歩留まりが若干低下した。
【0150】
また、表19に焼成歩留まりを示す。表19に示すように、実験8-1では焼成歩留まりが69.6%、実験8-2では焼成歩留まりが75.4%、実験8-3では焼成歩留まりが81.0%であった。このように、実験8-3における焼成歩留まりが最も良い結果となった。したがって、タンブリング工程における油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)の添加量を5%とした場合は、焼成歩留まりが向上することがわかった。なお、ドリップ量とは、焼成時に鶏むね肉から出てきた液体の量であり、ドリップ量が少ないほど焼成歩留まりが良い傾向にある。
【0151】
また、各々のサンプルを試食したところ、実験8-3では肉の食感が全体的に柔らかく加工肉っぽさが若干感じられた。また、実験8-2では表面の食感は柔らかいが、中心は肉本来の食感を残していた。実験8-2ではパサつきが抑えられており、より自然な食感であった。
【0152】
【表17】
【0153】
【表18】
【0154】
【表19】
【0155】
<実験9>
次に、実験9について説明する。実験9-1~実験9-3にかかるサンプルは、下記の方法を用いて作製した。
【0156】
(サンプルの作製)
図11に、実験9にかかるサンプルの作製フローを示す。また、表20に実験9の実験条件を示す。まず、鶏むね肉(1枚肉)を1つ当たり約130gとなるようにカットした。次に、表20に記載の配合でピックル液を調整した。そして、カットした鶏むね肉100質量部に対してピックル液を30質量部添加し、これらをタンブラーに投入して90分間タンブリング処理を行った。なお、実験9-3では、氷水の分量を実験9-1、実験9-2と比べて1/3となるようにしたため、カットした鶏むね肉100質量部に対してピックル液を約14.4質量部添加したこととなっている。
【0157】
また、実験9-1および実験9-2では、油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を添加することなくタンブリングを行った。一方、実験9-3では、タンブリング時に油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を、鶏むね肉100質量部に対して1質量部添加してタンブリングを行った。つまり、実験9の実験9-3では、実験8と比べて油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)の添加量を減らしているが、ピックル液の氷水の分量を減らすことでピックル液の粘度を高めている。具体的には、実験9-3では、ピックル液100質量部に対する油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)の量は6.94質量部となる。これにより、実験9-3では、鶏むね肉の表面にピックル液(スターチ)を効果的に付着(コーティング)させることができる。
【0158】
タンブリング処理後、鶏むね肉をザルに移して、余分なピックル液を取り除いた。その後、実験9-2にかかるサンプルについては、鶏むね肉とそれに対して1%の油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)とをタンブラーに再び入れて、3分間、ミキシングを行った。ここで、スターチの添加量は、鶏むね肉に対する添加量(質量%)である。
【0159】
そして、タンブリング後の実験9-1および実験9-3にかかるサンプル、及びミキシング後の実験9-2にかかるサンプルをそれぞれホテルパンに並べ、スチームコンベクションオーブンを用いて、スチームモード、85℃で25分加熱して、各々のサンプルを焼成した。加熱後、粗熱をとり、真空パックをして冷凍保存した。
【0160】
(評価)
実験9においても実験4と同様の方法を用いて、タンブリング歩留まりおよび焼成歩留まりをそれぞれ求めた。また、タンブリング前の質量と焼成後の質量とを用いて全体的な歩留まりを算出した。なお、歩留まりは、下記の式を用いて算出した。
歩留まり(%)=(焼成後の質量(g)/タンブリング前の質量(g))×100
【0161】
(実験結果)
表21にタンブリング歩留まりを示す。表21に示すように、ピックル液に油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を添加していない実験9-1および実験9-2では、タンブリング歩留まりは117.2%であった。一方、ピックル液に油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を添加した実験9-3では、タンブリング歩留まりは111.1%であった。
【0162】
また、表22に焼成歩留まりを示す。表22に示すように、実験9-1では焼成歩留まりが71.2%、実験9-2では焼成歩留まりが79.7%、実験9-3では焼成歩留まりが87.1%であった。このように、実験9-3における焼成歩留まりが最も良い結果となった。また、実験8の実験8-3(タンブリング工程において油脂加工アセチル化タピオカ澱粉を5%添加)と、実験9の実験9-3(タンブリング工程において油脂加工アセチル化タピオカ澱粉を1%添加、氷水を1/3に減らした)と、を比べると、実験8-3では焼成歩留まりが81.0%であったのに対して、実験9-3では焼成歩留まりが87.1%であった。よって、実験9-3では実験8-3よりも焼成歩留まりが良好であった。
【0163】
この理由は、実験9-3では、ピックル液の氷水の分量を減らすことでピックル液の粘度を高めているので、鶏むね肉の表面にピックル液(スターチ)を効果的に付着(コーティング)させることができたからであると考えられる。つまり、実験9-3では、油脂加工アセチル化タピオカ澱粉の添加量を1%にしているが、ピックル液の氷水の分量を減らすことでピックル液の粘度を高めて、鶏むね肉の表面にスターチを効果的に付着させることができ、焼成歩留まりが向上したと考えられる。なお、ドリップ量とは、焼成時に鶏むね肉から出てきた液体の量であり、ドリップ量が少ないほど焼成歩留まりが良い傾向にある。
【0164】
また、表22に示すように、実験9-3では、タンブリング前の質量と焼成後の質量とを用いて算出した歩留まりが96.6%であり、歩留まりが良好であった。
【0165】
また、冷凍保存後に解凍したサンプルを試食したところ、全体的に焼成当日よりも肉が締まった感じがして食感の差が小さかった。また、実験9-3では肉の食感が柔らかく最もジューシーであった。
【0166】
【表20】
【0167】
【表21】
【0168】
【表22】
【0169】
<実験10>
次に、実験10について説明する。実験10-1~実験10-3にかかるサンプルは、下記の方法を用いて作製した。
【0170】
(サンプルの作製)
図12に、実験10にかかるサンプルの作製フローを示す。また、表23に実験10の実験条件を示す。まず、鶏むね肉(1枚肉)を1つ当たり約120gとなるようにカットした。実験10では、各実験あたり(つまり、1試験区あたり)6個のカット肉を用いて実験を行った。
【0171】
次に、表23に記載の配合でピックル液を調整した。そして、カットした鶏むね肉100質量部に対してピックル液を30質量部添加し、これらをタンブラーに投入して90分間タンブリング処理を行った。なお、実験10-3では、氷水の分量を実験10-1、実験10-2と比べて1/3となるようにしたため、カットした鶏むね肉100質量部に対してピックル液を約14.4質量部添加したこととなっている。
【0172】
また、実験10-1では、タンブリング時に油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を、鶏むね肉100質量部に対して1質量部添加してタンブリングを行った。また、実験10-2では、油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を添加することなくタンブリングを行った。また、実験10-3では、タンブリング時に油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を、鶏むね肉100質量部に対して1質量部添加してタンブリングを行った。なお、実験10-3では、ピックル液の氷水の分量を減らすことでピックル液の粘度を高めている。具体的には、実験10-3では、ピックル液100質量部に対する油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)の量は7.45質量部であり、実験10-1の3.45質量部よりも多い。これにより、実験10-3では、鶏むね肉の表面にピックル液(スターチ)を効果的に付着(コーティング)させることができる。
【0173】
タンブリング処理後、鶏むね肉をザルに移して、余分なピックル液を取り除いた。その後、実験10-2にかかるサンプルについては、鶏むね肉とそれに対して1%の油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)とをタンブラーに再び入れて、3分間、ミキシングを行った。ここで、スターチの添加量は、鶏むね肉に対する添加量(質量%)である。
【0174】
そして、タンブリング後の実験10-1および実験10-3にかかるサンプル、及びミキシング後の実験10-2にかかるサンプルをそれぞれホテルパンに並べ、スチームコンベクションオーブンを用いて、スチームモード、85℃で25分加熱して、各々のサンプルを焼成した。加熱後、粗熱をとり、真空パックをして冷凍保存した。
【0175】
(評価)
実験10においても実験4と同様の方法を用いて、タンブリング歩留まりおよび焼成歩留まりをそれぞれ求めた。また、実験9と同様の方法を用いて、歩留まり(全体的な歩留まり)を求めた。
【0176】
(実験結果)
表24にタンブリング歩留まりを示す。表24に示すように、ピックル液に油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を添加していない実験10-2では、タンブリング歩留まりは115.5%であった。一方、ピックル液に油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を添加した実験10-1では、タンブリング歩留まりは111.5%であった。ピックル液に油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を添加した実験10-3では、タンブリング歩留まりは107.2%であった。
【0177】
また、表25に焼成歩留まりを示す。表25に示すように、実験10-1では焼成歩留まりが83.3%、実験10-2では焼成歩留まりが94.1%、実験10-3では焼成歩留まりが88.9%であった。このように、実験10では、タンブリング工程またはミキシング工程において油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を添加しているので、全体的に焼成歩留まりが良い結果となった。特に実験10では、実験10-2、及び実験10-3における焼成歩留まりが良好であった。なお、ドリップ量とは、焼成時に鶏むね肉から出てきた液体の量であり、ドリップ量が少ないほど焼成歩留まりが良い傾向にある。
【0178】
また、表25に示すように、実験10-2および実験10-3では、タンブリング前の質量と焼成後の質量とを用いて算出した歩留まりがそれぞれ、94.1%および88.9%であり、実験10-1の歩留まり83.3%と比べて良好であった。
【0179】
また、冷凍保存後に解凍したサンプルを試食したところ、実験10-2および実験10-3では、実験10-1と比べてパサつきが少なかった。また、実験10-2では鶏肉断面の中心と表面とで食感が異なっており、中心はややしっとり、表面はとてもしっとりしていた。実験10-3は、全体的にしっとりしており、表面のぬめりもなく実験10-2よりも自然な食感であった。
【0180】
【表23】
【0181】
【表24】
【0182】
【表25】
【0183】
<実験11>
次に、実験11について説明する。実験11では実験10と比べて、鶏むね肉のカットサイズと加熱時間が異なる。実験11-1~実験11-3にかかるサンプルは、下記の方法を用いて作製した。
【0184】
(サンプルの作製)
図13に、実験11にかかるサンプルの作製フローを示す。また、表26に実験11の実験条件を示す。まず、鶏むね肉(1枚肉)を1つ当たり約30gとなるようにカットした。実験11では、各実験あたり(つまり、1試験区あたり)18個のカット肉を用いて実験を行った。
【0185】
次に、表26に記載の配合でピックル液を調整した。そして、カットした鶏むね肉100質量部に対してピックル液を30質量部添加し、これらをタンブラーに投入して90分間タンブリング処理を行った。なお、実験11-3では、氷水の分量を実験11-1、実験11-2と比べて1/3となるようにしたため、カットした鶏むね肉100質量部に対してピックル液を約14.4質量部添加したこととなっている。
【0186】
また、実験11-1では、タンブリング時に油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を、鶏むね肉100質量部に対して1質量部添加してタンブリングを行った。また、実験11-2では、油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を添加することなくタンブリングを行った。また、実験11-3では、タンブリング時に油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を、鶏むね肉100質量部に対して1質量部添加してタンブリングを行った。なお、実験11-3では、ピックル液の氷水の分量を減らすことでピックル液の粘度を高めている。具体的には、実験11-3では、ピックル液100質量部に対する油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)の量は7.45質量部であり、実験11-1の3.45質量部よりも多い。これにより、実験11-3では、鶏むね肉の表面にピックル液(スターチ)を効果的に付着(コーティング)させることができる。
【0187】
タンブリング処理後、鶏むね肉をザルに移して、余分なピックル液を取り除いた。その後、実験11-2にかかるサンプルについては、油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を1%添加した鶏むね肉をタンブラーに再び入れて、3分間、ミキシングを行った。ここで、スターチの添加量は、鶏むね肉に対する添加量(質量%)である。
【0188】
そして、タンブリング後の実験11-1および実験11-3にかかるサンプル、及びミキシング後の実験11-2にかかるサンプルをそれぞれホテルパンに並べ、スチームコンベクションオーブンを用いて、スチームモード、85℃で13分加熱して、各々のサンプルを焼成した。加熱後、粗熱をとり、真空パックをして冷凍保存した。
【0189】
(評価)
実験11においても実験4と同様の方法を用いて、タンブリング歩留まりおよび焼成歩留まりをそれぞれ求めた。また、実験9と同様の方法を用いて、歩留まり(全体的な歩留まり)を求めた。
【0190】
(実験結果)
表27にタンブリング歩留まりを示す。表27に示すように、ピックル液に油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を添加していない実験11-2では、タンブリング歩留まりは115.4%であった。一方、ピックル液に油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を添加した実験11-1では、タンブリング歩留まりは113.6%であった。ピックル液に油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を添加した実験11-3では、タンブリング歩留まりは107.0%であった。
【0191】
また、表28に焼成歩留まりを示す。表28に示すように、実験11-1では焼成歩留まりが77.1%、実験11-2では焼成歩留まりが82.1%、実験11-3では焼成歩留まりが88.3%であった。このように、実験11では、タンブリング工程またはミキシング工程において油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を添加しているので、全体的に焼成歩留まりが良い結果となった。特に実験11では、実験11-2、及び実験11-3における焼成歩留まりが良好であった。なお、ドリップ量とは、焼成時に鶏むね肉から出てきた液体の量であり、ドリップ量が少ないほど焼成歩留まりが良い傾向にある。
【0192】
また、表28に示すように、実験11-2および実験11-3では、タンブリング前の質量と焼成後の質量とを用いて算出した歩留まりがそれぞれ、94.7%および94.5%であり、実験11-1の歩留まりである87.6%と比べて良好であった。
【0193】
また、冷凍保存後に解凍したサンプルを試食したところ、実験11-2および実験11-3では、実験11-1と比べてパサつきが少なかった。また、実験11-2では鶏肉断面の中心と表面とで食感が異なっており、中心はややしっとり、表面はとてもしっとりしていた。実験11-3は、全体的にしっとりしており、表面のぬめりもなく実験11-2よりも自然な食感であった。
【0194】
【表26】
【0195】
【表27】
【0196】
【表28】
【0197】
<実験12>
次に、実験12について説明する。実験12では、鶏もも肉を用いて唐揚げを製造した。実験12-1~実験12-4にかかるサンプルは、下記の方法を用いて作製した。
【0198】
(サンプルの作製)
図14に、実験12にかかるサンプルの作製フローを示す。また、表29に実験12の実験条件を示す。まず、鶏もも肉(1枚肉)を1つ当たり約30gとなるようにカットした。実験12では、各実験あたり(つまり、1試験区あたり)15個のカット肉を用いて実験を行った。
【0199】
次に、表29に記載の配合でピックル液を調整した。そして、カットした鶏もも肉100質量部に対してピックル液を30質量部添加し、これらをタンブラーに投入して90分間タンブリング処理を行った。なお、実験12-3では、氷水の分量を他と比べて1/3となるようにしたため、カットした鶏むね肉100質量部に対してピックル液を約17.6質量部添加したこととなっている。
【0200】
また、実験12-1、実験12-4では、タンブリング時に油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を、鶏もも肉100質量部に対して5質量部添加してタンブリングを行った。また、実験12-2では、油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を添加することなくタンブリングを行った。また、実験12-3では、タンブリング時に油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を、鶏もも肉100質量部に対して5質量部添加してタンブリングを行った。なお、実験12-3では、ピックル液の氷水の分量を減らすことでピックル液の粘度を高めている。具体的には、実験12-3では、ピックル液100質量部に対する油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)の量は39.54質量部であり、実験12-1、実験12-4の20質量部よりも多い。これにより、実験12-3では、鶏もも肉の表面にピックル液(スターチ)を効果的に付着(コーティング)させることができる。
【0201】
タンブリング処理後、鶏もも肉をザルに移して、余分なピックル液を取り除いた。その後、実験12-2、実験12-4にかかるサンプルについては、鶏もも肉とそれに対して5%の油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)をタンブラーに再び入れて、3分間、ミキシングを行った。ここで、スターチの添加量は、鶏もも肉に対する添加量(質量%)である。
【0202】
そして、タンブリング後の実験12-1、実験12-3にかかるサンプル、及びミキシング後の実験12-2、実験12-4にかかるサンプルにバッター液を加えてバッタリングした。バッター液は、水、唐揚げ粉(厨房王 ジューシー唐揚げ粉:株式会社ダイショー製)、馬鈴薯でん粉を10:8:2の割合で混合し、粉の塊がなくなるまで入念に混ぜ合わせて調製した。その後、バッタリングしたサンプルを約170℃のキャノーラ油で4分30秒間油ちょうし、よく油切りして金属バットに移して室温で放冷した。油ちょう後、粗熱をとり冷凍保存した。
【0203】
(評価)
実験12においても実験4と同様の方法を用いて、タンブリング歩留まりおよび焼成歩留まりをそれぞれ求めた。
【0204】
(実験結果)
表30にタンブリング歩留まりを示す。表30に示すように、実験12-1ではタンブリング歩留まりが120.6%、実験12-2ではタンブリング歩留まりが123.2%、実験12-3ではタンブリング歩留まりが110.5%、実験12-4ではタンブリング歩留まりが118.7%であった。
【0205】
また、表31に焼成歩留まりを示す。表31に示すように、実験12-1では焼成歩留まりが74.5%、実験12-2では焼成歩留まりが70.8%、実験12-3では焼成歩留まりが75.8%、実験12-4では焼成歩留まりが76.9%であった。このように、実験12では、タンブリング工程およびミキシング工程の少なくとも一方において油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を添加しているので、全体的に焼成歩留まりが良い結果となった。特に実験12では、タンブリング工程において油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を添加することで、焼成歩留まりがより良好であった(実験12-1、実験12-3、実験12-4参照)。
【0206】
【表29】
【0207】
【表30】
【0208】
【表31】
【0209】
<実験13>
次に、実験13について説明する。実験13では、鶏もも肉を用いて唐揚げを製造した。実験13-1~実験13-3にかかるサンプルは、下記の方法を用いて作製した。
【0210】
(サンプルの作製)
図15に、実験13にかかるサンプルの作製フローを示す。まず、鶏もも肉(1枚肉)を1つ当たり約30gとなるようにカットした。実験13では、各実験あたり(つまり、1試験区あたり)13個のカット肉を用いて実験を行った。
【0211】
次に、表32に記載の配合でピックル液を調整した。そして、カットした鶏もも肉100質量部に対してピックル液を20質量部添加し、これらをタンブラーに投入して90分間タンブリング処理を行った。このとき、実験13-1では、タンブリング時に油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を、鶏もも肉100質量部に対して5質量部添加してタンブリングを行った。また、実験13-2では、油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を添加することなくタンブリングを行った。また、実験13-3では、油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を添加することなく60分間タンブリング処理を行った後、タンブリング処理を一時停止して(ピックル液を切らずに)、油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を添加し、その後、再度、タンブリング処理を30分間行った。なお、実験13-3で添加した油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)の量は、鶏もも肉100質量部に対して5質量部である。
【0212】
タンブリング処理後、鶏もも肉をザルに移して、余分なピックル液を取り除いた。その後、実験13-2にかかるサンプルについては、鶏もも肉と5%の油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)とを混合して、ミキシングを行った。ここで、スターチの添加量は、鶏もも肉に対する添加量(質量%)である。
【0213】
そして、タンブリング後の実験13-1、実験13-3にかかるサンプル、及びミキシング後の実験13-2にかかるサンプルにバッター液を加えてバッタリングした。バッター液は、水、唐揚げ粉(厨房王 ジューシー唐揚げ粉:株式会社ダイショー製)、馬鈴薯でん粉を10:8:2の割合で混合し、粉の塊がなくなるまで入念に混ぜ合わせて調製した。その後、バッタリングしたサンプルを約170℃のキャノーラ油で4分30秒間油ちょうし、よく油切りして金属バットに移して室温で放冷した。油ちょう後、粗熱をとり冷凍保存した。
【0214】
(評価)
実験13においても実験4と同様の方法を用いて、タンブリング歩留まりおよび焼成歩留まりをそれぞれ求めた。
【0215】
(実験結果)
表33に、各歩留まりを示す。表33に示すように、実験13-1ではタンブリング歩留まりが111.1%、実験13-2ではタンブリング歩留まりが112.0%、実験13-3ではタンブリング歩留まりが112.4%であった。よって、実験13-1~実験13-3ではタンブリング歩留まりに大きな差はなかった。
【0216】
焼成歩留まりに着目すると、実験13-1では焼成歩留まりが73.5%、実験13-2では焼成歩留まりが81.9%、実験13-3では焼成歩留まりが80.1%であった。このように、実験13では、タンブリング工程およびミキシング工程の少なくとも一方において油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を添加しているので、全体的に焼成歩留まりが良い結果となった。また、全体的な歩留まりを示す「焼成後重量/タンブリング前重量×100」の値についても同様の傾向を示した。特に実験13-2、実験13-3では焼成歩留まり、及び全体的な歩留まりが良好であった。また、実験13-3では、タンブリング処理を一時停止して油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を添加しており、ミキシング工程を省略することができるので、製造工程を簡略化することができる。
【0217】
また、サンプルを試食したところ、実験13-1にかかるサンプルでは、パサついている食感であったが、衣にぬめりなどはなかった。実験13-2にかかるサンプルでは、ジューシーで柔らかい食感であった。また、衣の一部がサクサクした食感であった。実験13-3にかかるサンプルでは、ジューシーで柔らかい食感であった。よって、タンブリング処理の途中でスターチを添加した場合(実験13-3)であっても、試食結果は良好であった。
【0218】
【表32】
【0219】
【表33】
【0220】
<実験14>
次に、実験14について説明する。実験14-1~実験14-3にかかるサンプルは、下記の方法を用いて作製した。
【0221】
(サンプルの作製)
図16に、実験14にかかるサンプルの作製フローを示す。まず、鶏むね肉(1枚肉)を1つ当たり約130gとなるようにカットした。実験14では、各実験あたり(つまり、1試験区あたり)5個のカット肉を用いて実験を行った。
【0222】
次に、表34に記載の配合でピックル液を調整した。なお、綿実油ブレンドオイルには、美味得徳(J―オイルミルズ社製)を使用した。そして、カットした鶏むね肉100質量部に対してピックル液を20質量部添加し、これらをタンブラーに投入して90分間タンブリング処理を行った。このとき、実験14-1では、タンブリング時に油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を、鶏むね肉100質量部に対して1質量部添加してタンブリングを行った。また、実験14-2では、油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を添加することなくタンブリングを行った。また、実験14-3では、油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を添加することなく60分間タンブリング処理を行った後、タンブリング処理を一時停止して(ピックル液を切らずに)、油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を添加し、その後、再度、タンブリング処理を30分間行った。なお、実験14-3で添加した油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)の量は、鶏むね肉100質量部に対して1質量部である。
【0223】
タンブリング処理後、鶏むね肉をザルに移して、余分なピックル液を取り除いた。その後、実験14-2にかかるサンプルについては、鶏むね肉と1%の油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)とを混合して、ミキシングを行った。ここで、スターチの添加量は、鶏むね肉に対する添加量(質量%)である。
【0224】
そして、タンブリング後の実験14-1および実験14-3にかかるサンプル、及びミキシング後の実験14-2にかかるサンプルをそれぞれホテルパンに並べ、スチームコンベクションオーブンを用いて、スチームモード、85℃で25分加熱して、各々のサンプルを焼成した。加熱後、粗熱をとり、真空パックをして冷凍保存した。
【0225】
(評価)
実験14においても実験4と同様の方法を用いて、タンブリング歩留まりおよび焼成歩留まりをそれぞれ求めた。また、実験9と同様の方法を用いて、歩留まり(全体的な歩留まり)を求めた。
【0226】
(実験結果)
表35に歩留まりを示す。表35に示すように、実験14-1ではタンブリング歩留まりが114.6%、実験14-2ではタンブリング歩留まりが114.8%、実験14-3ではタンブリング歩留まりが114.2%であった。よって、実験14-1~実験14-3ではタンブリング歩留まりに大きな差はなかった。
【0227】
焼成歩留まりに着目すると、実験14-1では焼成歩留まりが75.7%、実験14-2では焼成歩留まりが79.3%、実験14-3では焼成歩留まりが77.3%であった。このように、実験14では、タンブリング工程およびミキシング工程の少なくとも一方において油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を添加しているので、全体的に焼成歩留まりが良い結果となった。また、全体的な歩留まりを示す「焼成後重量/タンブリング前重量×100」の値についても同様の傾向を示した。また、実験14-3では、タンブリング処理を一時停止して油脂加工アセチル化タピオカ澱粉(スターチ)を添加しており、ミキシング工程を省略することができるので、製造工程を簡略化することができる。
【0228】
また、サンプルを試食したところ、実験14-1にかかるサンプルでは、パサついた食感であったが、表面のぬめりは少なかった。実験14-2にかかるサンプルでは、ジューシーで柔らかい食感であった。特に、表面付近が柔らかい食感であった。実験14-3にかかるサンプルでは、実験14-1にかかるサンプルよりもパサつきが抑えられており、実験14-2にかかるサンプルよりも表面のぬめりは少なかった。よって、タンブリング処理の途中でスターチを添加した場合(実験14-3)であっても、試食結果は良好であった。
【0229】
【表34】
【0230】
【表35】
【0231】
<実験15>
次に、実験15について説明する。実験15では、鶏むね肉を冷凍した後、解凍した際の歩留まりについて調べた。実験15-1、実験15-2にかかるサンプルは、下記の方法を用いて作製した。
【0232】
(サンプルの作製)
図17に、実験15にかかるサンプルの作製フローを示す。まず、2kgの鶏むね肉(1枚肉)を1つ当たり約85gとなるようにカットした。次に、表36に記載の配合でピックル液を調整した。そして、カットした鶏むね肉100質量部に対してピックル液を20質量部添加し、これらをタンブラーに投入して40分間タンブリング処理を行った。
【0233】
タンブリング処理後、スターチとして鶏むね肉に対して5%の油脂加工アセチル化タピオカ澱粉をタンブラーに入れて、20分間ミキシングを行った(つまり、タンブラーを用いてミキシングを行った)。ここで、スターチの添加量は、鶏むね肉に対する添加量(質量%)である。また、比較例として、スターチを添加せずに更に20分間タンブリングを行ったサンプルも作成した。実験15-1はミキシングを行わなかったサンプル(つまり、スターチを添加せずにタンブリングを60分間行ったサンプル)であり、実験15-2はスターチを添加してミキシングを行ったサンプルである。
【0234】
ミキシング後(実験15-1の場合はタンブリング後)、鶏むね肉の重量を測定した。その後、鶏むね肉をジッパー付き袋に入れ、-20℃の冷凍庫にて4日間保管した。冷凍保管4日後、鶏むね肉をステンレス製バットに並べ、4℃の冷蔵庫にて24時間または48時間保管し、解凍した。24時間後または48時間後、鶏むね肉をザルに移し、余分なピックル液を取り除いた。ピックル液を取り除いた後、鶏むね肉の重量を測定した。
【0235】
(評価)
ミキシング後(実験15-1の場合はタンブリング後)の重量と冷解凍後の重量との差を冷解凍歩留まりとした。
【0236】
(実験結果)
表37に冷解凍歩留まりを示す。表37に示すように、4℃の冷蔵庫で24時間保管して解凍した場合は、実験15-1(ミキシングなし)の冷解凍歩留まりが90%、実験15-2(ミキシングあり)の冷解凍歩留まりが96%であった。また、4℃の冷蔵庫で48時間保管して解凍した場合は、実験15-1(ミキシングなし)の冷解凍歩留まりが89%、実験15-2(ミキシングあり)の冷解凍歩留まりが94%であった。よって、油脂加工アセチル化タピオカ澱粉を添加してミキシングを行った実験15-2では、冷解凍歩留まりが向上した。
【0237】
【表36】
【0238】
【表37】
【0239】
<実験16>
次に、実験16について説明する。実験16では、鶏もも肉を油ちょうした後、温蔵ケースで保管した場合の歩留まりについて調べた。実験16-1、実験16-2にかかるサンプルは、下記の方法を用いて作製した。
【0240】
(サンプルの作製)
図18に、実験16にかかるサンプルの作製フローを示す。まず、鶏もも肉(1枚肉)を1つ当たり約90gとなるようにカットした。次に、表38に記載の配合でピックル液を調整した。そして、カットした鶏もも肉100質量部に対してピックル液を20質量部添加し、これらをタンブラーに投入して40分間タンブリング処理を行った。
【0241】
タンブリング処理後、スターチとして鶏もも肉に対して3%の油脂加工アセチル化タピオカ澱粉をタンブラーに入れて、20分間ミキシングを行った(つまり、タンブラーを用いてミキシングを行った)。ここで、スターチの添加量は、鶏もも肉に対する添加量(質量%)である。また、比較例として、スターチを添加せずに更に20分間タンブリングを行ったサンプルも作成した。実験16-1はタンブリングを60分間行ったサンプル(スターチ添加なし)であり、実験16-2はスターチを添加してミキシングを行ったサンプルである。
【0242】
その後、鶏もも肉に、表39に示す配合のバッター液でバッタリングし、表40に示す配合のブレッダー粉をまぶした。そして、180℃に加熱したキャノーラ油で2分間油ちょうした。その後、ショックフリーザー(ホシザキ社製)を用いて、-30℃で90分間急速凍結を行った。
【0243】
次に、凍結後の鶏もも肉を、180℃に加熱したキャノーラ油で4分30秒間油ちょうした。そして、調理後に、実験16-1および実験16-2のサンプルを10個ずつ、80℃の温蔵ケースに入れて6時間保管した。
【0244】
(評価)
温蔵ケースで6時間保管する前の重量と、温蔵ケースで6時間保管した後の重量をそれぞれ測定し、これらの重量の差を、温蔵ケースで保管した後の歩留まりとした。
【0245】
(実験結果)
表41に温蔵ケースで保管した後の歩留まりを示す。表41に示すように、実験16-1(スターチなし)では歩留まりが90%、実験16-2(スターチ添加+ミキシングあり)では歩留まりが91%であった。よって、油脂加工アセチル化タピオカ澱粉を添加してミキシングを行った実験16-2では、温蔵ケースで保管した後の歩留まりが向上した。
【0246】
【表38】
【0247】
【表39】
【0248】
【表40】
【0249】
【表41】
【0250】
この出願は、2020年3月30日に出願された日本出願特願2020-060788、及び2020年8月4日に出願された日本出願特願2020-132180を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
図1
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