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  • 特許-検体検査システム、及び搬送方法 図1A
  • 特許-検体検査システム、及び搬送方法 図1B
  • 特許-検体検査システム、及び搬送方法 図2
  • 特許-検体検査システム、及び搬送方法 図3
  • 特許-検体検査システム、及び搬送方法 図4
  • 特許-検体検査システム、及び搬送方法 図5
  • 特許-検体検査システム、及び搬送方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】検体検査システム、及び搬送方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20241213BHJP
   G01N 35/04 20060101ALI20241213BHJP
   B65G 54/02 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
G01N35/02 G
G01N35/04 G
B65G54/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023510215
(86)(22)【出願日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 JP2021043172
(87)【国際公開番号】W WO2022208988
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2021055002
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】矢野 茂
(72)【発明者】
【氏名】東 信二
(72)【発明者】
【氏名】松家 健史
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/170488(WO,A1)
【文献】特開昭61-217434(JP,A)
【文献】特開2016-166890(JP,A)
【文献】特開2021-010254(JP,A)
【文献】特開2000-275251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/02
G01N 35/04
B65G 54/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電磁誘導コイルを二次元に配置された、キャリアの搬送面を複数個配置し、電磁誘導コイルに電流を流すことにより磁力を発生させる搬送部に、検体の分析や前処理を行う処理ユニットを接続した検体検査システムであって、
前記キャリアに磁石を組み込み、前記電磁誘導コイルに電流を印加することで前記キャリアを搬送させるキャリア制御手段と、
前記搬送部を移動する前記キャリアの位置を検出するキャリア検出手段と、
前記キャリア検出手段により、前記搬送部を移動する前記キャリアの位置を検出し、前記キャリアの到着位置までの距離に応じて前記キャリアの搬送速度を算出する搬送速度計算部と、
前記搬送部の前記キャリアの位置及び状態を管理するキャリア管理部と、
前記キャリアの移動元、移動先及び経路を管理する搬送路管理部と、
前記移動元に位置する移動元キャリアが前記移動先に存在することが可能になるまでの待機時間を算出する待機時間計算部と、
前記移動元キャリアの前記移動先への移動にかかる移動時間を計算する移動時間計算部と、を備え、
前記搬送速度計算部は前記移動時間と前記待機時間とを比較し、その比較結果に基づき前記移動元キャリアが停滞しない搬送速度を算出し、前記キャリア制御手段は算出した搬送速度で前記移動元キャリアを搬送させる、
ことを特徴とする検体検査システム。
【請求項3】
請求項1記載の検体検査システムであって、
前記待機時間計算部の算出結果に基づき、搬送可と判断される場合、前記搬送速度計算部は搬送速度を算出する、
ことを特徴とする検体検査システム。
【請求項4】
請求項1記載の検体検査システムであって、
同一経路上に前記移動先に位置する移動先キャリア及び前記移動元キャリアを同時に搬送させる場合において、前記待機時間は、前記移動先キャリアが前記移動先から移動することにより前記移動元キャリアが前記移動先に存在することが可能になるまでの時間として算出される、
ことを特徴とする検体検査システム。
【請求項5】
請求項4記載の検体検査システムであって、
同一経路上に前記移動元キャリアに後続する後続キャリアを同時に搬送させる場合において、前記移動元キャリアの前記移動時間を参照し、前記後続キャリアの搬送速度を変化させる、
ことを特徴とする検体検査システム。
【請求項6】
複数の電磁誘導コイルを二次元に配置された、キャリアの搬送面を複数個配置し、電磁誘導コイルに電流を流すことにより磁力を発生させる搬送部による搬送方法であって、
前記キャリアに磁石を組み込み、前記電磁誘導コイルに電流を印加することで前記キャリアを搬送させ、
前記搬送部を移動する前記キャリアの位置を検出し、
検出した前記搬送部を移動する前記キャリアの位置から、前記キャリアの到着位置までの距離に応じて前記キャリアの搬送速度を算出し、
前記搬送部の前記キャリアの位置及び状態と、前記キャリアの移動元、移動先及び経路を管理し、
前記移動元に位置する移動元キャリアが前記移動先に存在することが可能になるまでの待機時間を算出し、
前記移動元キャリアの前記移動先への移動にかかる移動時間を算出し、
前記移動時間と前記待機時間とを比較し、その比較結果に基づき前記移動元キャリアが停滞しない搬送速度を算出し、算出した搬送速度で前記移動元キャリアを搬送させる、
ことを特徴とする搬送方法。
【請求項8】
請求項6記載の搬送方法であって、
前記待機時間の算出結果に基づき、搬送可と判断される場合、搬送速度を算出する、
ことを特徴とする搬送方法。
【請求項9】
請求項6記載の搬送方法であって、
同一経路上に前記移動先に位置する移動先キャリア及び前記移動元キャリアを同時に搬送させる場合において、前記待機時間は、前記移動先キャリアが前記移動先から移動することにより前記移動元キャリアが前記移動先に存在することが可能になるまでの時間として算出される、
ことを特徴とする搬送方法。
【請求項10】
請求項9記載の搬送方法であって、
同一経路上に前記移動元キャリアに後続する後続キャリアを同時に搬送させる場合において、前記移動元キャリアの前記移動時間を参照し、前記後続キャリアの搬送速度を変化させる、
ことを特徴とする搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体検査システムに係り、特に検査試料の入った試験管の搬送技術に関する。
【背景技術】
【0002】
血液、血漿、血清、尿など、ヒトから採取した生体試料の成分を分析するための分析システムは、こられ生体試料をいれた試験管を遠心、開栓し、分析ユニットまで搬送する搬送ラインが必要である。この分析システムの搬送ラインに電磁回路の巻き線に電流を供給し、試験管を保持する磁石付きのキャリアとの間に電磁力を発生させて、キャリアを移動させる技術がある(特許文献3)。この技術を採用し、電磁コイルを二次元に配置した二次元搬送ラインがある。
【0003】
一方で、電磁力の技術を、前述のキャリアのように対象物の移動に応用されている。特許文献1では、電磁相互作用により移動される可動子により物品の搬送を行う技術が開示されている。しかし、特許文献1では、固定の搬送路に相当する固定子に沿って可動子が動作することとなる。
【0004】
また、特許文献2も同様に、輸送要素は、あらかじめ定められた経路に沿って移動させられる1つ以上の磁石の磁気引力によって、経路に沿って移動させられる、との記載があり、固定の搬送路上をキャリアが動作することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020―075780号公報
【文献】特表2014-520018号
【文献】特開2020―205698号公報
【文献】特開2015―017868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ベルト搬送ラインと分析ユニットから構成される従来の自動分析システムは、分析ユニットが故障した場合や、試薬不足などの理由により分析ユニットで分析できない状態にあるためオフライン設定をした場合など、ベルト搬送ラインから分析ユニットにキャリアを搬送することができない状況になる。この状態は短時間であれば大きな問題とはならないが、長期化する場合、分析ユニットへ搬入させるキャリアがベルト搬送ラインに停滞する時間が長くなる。この1つのキャリアの停滞が、上流に位置するキャリアの搬送を妨げ、渋滞するキャリア数が増加し、分析ユニットで測定が完了した検体を搭載したキャリアに影響が及ぶことになる。この渋滞は、キャリアが搬出できないことから、分析ユニットの分注箇所にも影響するようになり、分析効率を低下させることになる。さらにキャリアの停滞が続くことで、分析ユニットの搬入位置まで渋滞が進み、自動分析システムの投入位置の付近であるベルト搬送部の左側まで進む可能性がある。
【0007】
このように、渋滞は分析システム全体のパフォーマンスを低下させる可能性がある。また、ベルト搬送ラインは、ベルト駆動を一つのモーターで行うため、1本のベルトで搬送できるキャリア数を制限することからキャリアの集積率が高くなく、空きエリアを有効に活用できない。
【0008】
一方で、電磁搬送技術を採用した二次元搬送ラインを採用した場合、搬送ラインを複線化することで、キャリアの渋滞箇所を回避する迂回経路を選択して、渋滞回避ができる。しかしながら、渋滞を回避するために余剰な二次元搬送ラインを確保することは、二次元搬送ラインの休遊箇所が存在することとなり、十分に効率的な搬送を得られない。
【0009】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、キャリアの搬送速度を制御し、分析効率を低下させることのない検体検査システム、及び搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明においては、複数の電磁誘導コイルを二次元に配置された搬送面を複数個配置し、電磁誘導コイルに電流を流すことにより磁力を発生させる搬送部に、検体の分析や前処理を行う処理ユニットを接続した検体検査システムであって、前記キャリアに磁石を組み込み、前記電磁誘導コイルに電流を印加することで前記キャリアを搬送させるキャリア制御手段と、前記搬送部を移動する前記キャリアの位置を検出するキャリア検出手段と、前記キャリア検出手段により、前記搬送部を移動する前記キャリアの位置を検出し、前記キャリアの到着位置までの距離に応じて前記キャリアの搬送速度を算出する搬送速度計算部と、を具備し、算出した前記キャリアの搬送速度に基づき前記キャリア各々の搬送速度を変化させる検体検査システムを提供する。
【0011】
また、上記の目的を達成するため、本発明においては、複数の電磁誘導コイルを二次元に配置された、キャリアの搬送面を複数個配置し、電磁誘導コイルに電流を流すことにより磁力を発生させる搬送部による搬送方法であって、前記キャリアに磁石を組み込み、前記電磁誘導コイルに電流を印加することで前記キャリアを搬送させ、前記搬送部を移動する前記キャリアの位置を検出し、検出した前記搬送部を移動する前記キャリアの位置から、前記キャリアの到着位置までの距離に応じて前記キャリアの搬送速度を算出し、算出した前記キャリアの搬送速度に基づき前記キャリア各々の搬送速度を変化させる搬送方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電磁搬送システムを採用した二次元搬送ラインの使用効率を向上させ、かつ二次元搬送ラインに接続された分析装置の処理効率を十分に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】実施例1に係る、電磁搬送技術を用いた自動分析システムを示す図。
図1B】実施例1に係る、電磁搬送技術を用いた自動分析システムを示す図。
図2】実施例1に係る、二次元電磁搬送ラインのキャリア搬送例を示す図。
図3】実施例1に係る、二次元電磁搬送ラインのキャリア群の搬送例を示す図。
図4】実施例1に係る、電磁搬送ラインの処理部の一構成例を示す図。
図5】二次元電磁搬送ラインの速度算出ロジックを説明する図。
図6】従来のベルト搬送技術を用いた自動分析システムを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に従い、本発明の検体検査システム、及び方法を実施するための形態について説明する。特に、検体検査システムの一例として分析ユニットを有する自動分析システムを例示して説明するが、本発明は、分析ユニットを有さない、開栓や分注等の前処理ユニット(特許文献4参照)のみの検体検査自動化システムにも適用可能である。
【0015】
まず、図6を用いて従来の自動分析システムの課題を説明する。同図に示すように、ベルト搬送ラインと分析ユニットから構成される従来の自動分析システムは、分析ユニット605が故障した場合や、試薬不足などの理由により分析ユニット605で分析できない状態にあるためオフライン設定をした場合など、ベルト搬送ラインから分析ユニット605にキャリア608を搬送することができない状況になる。この状態は短時間であれば大きな問題とはならい。しかし、この状態が長期化する場合、分析ユニット605へ搬入させるキャリア608がベルト搬送ラインに停滞する時間が長くなる。この1つのキャリアの停滞が、上流に位置するキャリアの搬送を妨げ、渋滞するキャリア数が増加し、分析ユニット604で測定が完了した検体を搭載したキャリア609に影響が及ぶことになる。この渋滞は、キャリア609が搬出できないことから、分析ユニット604の分注箇所にも影響するようになり、分析ユニット604の分注動作、ひいては分析効率を低下させることになる。さらにキャリア608の停滞が続くことで、分析ユニット604の搬入位置まで渋滞が進み、さらにその渋滞は、自動分析システムの投入位置の付近であるベルト搬送部602の左側まで進む可能性がある。
【実施例1】
【0016】
実施例1は、複数の電磁誘導コイルを二次元に配置された搬送面を複数個配置し、電磁誘導コイルに電流を流すことにより磁力を発生させる搬送部に、検体の分析や前処理を行う処理ユニットを接続した検体検査システムであって、前記キャリアに磁石を組み込み、前記電磁誘導コイルに電流を印加することで前記キャリアを搬送させるキャリア制御手段と、前記搬送部を移動する前記キャリアの位置を検出するキャリア検出手段と、前記キャリア検出手段により、前記搬送部を移動する前記キャリアの位置を検出し、前記キャリアの到着位置までの距離に応じて前記キャリアの搬送速度を算出する搬送速度計算部と、を具備し、算出した前記キャリアの搬送速度に基づき前記キャリア各々の搬送速度を変化させる検体検査システム、及びその搬送方法の実施例である。
【0017】
図1A図1Bに、本実施例の二次元搬送ラインを用いた自動分析システムの構成例を示す。生化学や免疫の検査を行う自動分析ユニットを二次元搬送ラインと並行に接続され、主にインターフェース部103に接続される検体搬送システムや検体前処理システムから検体試料が搬入される。また、検体投入・収納部102から、緊急検体や精度管理検体、キャリブレーション検体などを投入することができる。自動分析システムに投入される検体は、患者から採取した血液や尿などの試料が充填されており、磁石を備え付けた検体キャリアに搭載されている。また検体試料の容器には、患者を特定するための1次元バーコードや2次元バーコード、もしくは患者、および試料を特定するための情報を書き込んだRFIDタグなどの検体特定情報が付属されている。
【0018】
これらの患者の検体が自動分析システムに投入されると、自動分析システムは検体特定情報を付属の読み取り機で読取り、図4に示す管理端末401で該当の検体の依頼情報があるか検索し、依頼情報がない場合、検査室ホストであるLaboratory Information System(LIS)108に問い合わせを行い、検査の依頼情報を入手する。管理端末401は、LIS108から受信した依頼情報に基づき、どの項目をどの分析ユニットで測定するかを計算し、検体を分析ユニットにどの順序で搬送するかを計算し、行先情報を作成し、搬送ライン管理部402へ通知する。搬送ライン管理部402は、行先情報から経路情報を生成する。
【0019】
しかし、搬送ライン制御部403内のキャリア検出手段4033により、二次元搬送ライン上のキャリアの位置を把握し、搬送路上に障害となるキャリアが存在するかを確認する。この検出した情報は、キャリア管理部4022を経由して搬送路管理部4021にも通知される。通常、搬送路管理部4021が経路情報を生成する際、障害となる搬送路を選択せずに、別の搬送経路を計算することが考えられる。しかし、二次元搬送ライン上に搬送路を作成するにも物理的に有限であり、別経路を選択することで、別キャリアの搬送を妨げる可能性がある。
【0020】
具体的には、図2に示すように、分析ユニット104の背面に位置する二次元電磁搬送ライン101が複数接続されている。試験管を搭載したキャリアの存在するポジション201のように黒丸で示し、キャリアの存在しないポジション202のように白丸で示す。管理端末401は、依頼情報に基づき、キャリア205が、ポジション203、もしくはポジション204に搬送させる計画をしている。ポジション203は、分析ユニット104に接続される二次元搬送ラインの上に停滞する左のキャリア群(バッファ)の一つの最後尾にあたり、ポジション204は、もう一つのキャリア群に最後尾にあたる。
【0021】
同時間帯に、キャリア206が緊急検体として、経路212を使用しようとした場合、管理端末401は、キャリア205が経路212を使用して、待機しているキャリア数の少ない右のキャリア群の最後尾に位置させようとした場合、キャリア206の搬送を妨げることになり、緊急検体の測定結果の遅延につながる可能性がある。
【0022】
この場合、キャリア206を先に搬送させ、キャリア205をキャリア206の後に搬送させることも可能である。しかし、キャリア206を搬送させるまで、キャリア205が待機することになり、キャリア205に続く、キャリア207、さらにはキャリア208も待機することとなる。これらの待機時間は、渋滞を招くことになるため、キャリア205、キャリア207、キャリア208は、少しでも搬送させたほうが、自動分析システムに多くの検体を搬入することができる。上記の理由により、バッファの最後尾にキャリアを停止させることがある。
【0023】
図3に示すようにキャリア303、キャリア304、キャリア305が選択する搬送路上にキャリア301からキャリア302のように複数のキャリアが停滞している場合、キャリア302が2ポジション移動するために1.0秒かかり、その後キャリア306が移動を開始する。言い換えると、隣り合うキャリアのうち下流に位置するキャリアが移動するには、1.5秒かかることになる。したがって、キャリア301の位置するポジションが空くのは、キャリア302の移動を開始してから4.5秒となる。
【0024】
そこで、本実施例においては、複数のキャリアが停滞する列に搬送する場合、停滞の列を長くさせないため、搬送ライン管理部402の待機時間計算部4024は、キャリア管理部4022が検出した情報に基づき、キャリアが停滞している個数から、キャリアが停滞する列の最後尾のキャリアが待機する時間を求める。
【0025】
次に移動時間計算部4023が、始点からキャリアが停滞する列の最後尾である到達点まで距離から、待機時間計算部4024が算出した最後尾のキャリアが到達点から移動するまでのキャリアの待機時間内に、キャリアを移動させるようキャリアの移動速度を算出する。更に、後続のキャリアに対しても、同様な移動速度の変化をさせることで、キャリアの停滞や停滞するキャリア列の延伸を避けつつ、複数キャリアの移動を妨げることなく、搬送できるキャリア数を増加させることができる。
【実施例2】
【0026】
一方で、管理端末401が決定するキャリアの移動距離が複数の二次元電磁搬送ラインにまたがるような遠い行先の場合、搬送路管理部4021が搬送路上の状態を確認し、障害となるキャリアが存在しない場合、搬送するキャリアは最高速度で搬送することができる。最高速度は、試験管内部の検査試料が飛び散ったり、飛び跳ねたりしない速度となり、0.5-1.0m/sとなる。最高速度は、搬送面やキャリアの素材、相性により変更去る可能性がある。仮に通常の搬送速度が0.5m/s、最高速度が1.0m/sとした場合、平均で搬送時間が約1.3秒の短縮できる。この短縮される時間は、通常の搬送速度で搬送した場合の二次元電磁搬送タイルの75%の移動距離に相当する。このように速度を速めることの優位性もあることがわかる。
【0027】
図5に、搬送速度算出部4032、キャリア検出手段4033、キャリア空時間算出部4044などを有する搬送ライン制御部403の搬送速度算出部4032の処理フローの一例を示す。この処理フローは、搬送ライン制御部403で処理され、あらかじめ搬送経路、待機時間が指示されている。
【0028】
ステップ502は、まず初期値としての搬送速度係数を1.0として設定する。ステップ503では、搬送経路管理部4021から指示された搬送経路を確認し、移動距離を算出する。ステップ504は、ステップ503で算出した移動距離から、
移動時間=加速時間+(搬送距離―加減速距離)÷速度+減速時間で求めることができる。ここで加速時間、減速時間は、先に説明した試験管に充填される検体試料の飛び散りのない加速度でなければならないため、固定時間を考えることができる。
【0029】
ステップ505では、搬送区の搬送可否判断、すなわち、キャリア検出手段4033の情報をもとに到達点までにキャリアが存在しないことを確認する。万が一、到達点までに搬送路にキャリアが存在した場合、当該キャリアの手前のポジションを到達点とする方法もあるし、その場で停止する方法もある。本実施例では、キャリアバッファ部の最後尾に搬送することを前提として説明する。ステップ505で、搬送経路の途中にキャリアが存在した場合、ステップ506へ進む。一方、ステップ505で搬送経路の途中にキャリアが存在しない場合、ステップ508に進む。ステップ506では、待機時間計算部4024で算出した情報との乖離がないかを確認するため、キャリア検出手段4033の最新の情報から、搬送先のポジションが空くまでの時間をキャリア空時間算出部4034で、図3で説明したキャリアの空く時間を算出する。
【0030】
キャリアの空き時間=(待機キャリア数-1)×(1ポジション移動時間×2)+1ポジションの移動時間となる。
【0031】
ステップ507では、ステップ504とステップ506で算出した時間を比較し、キャリアの空き時間>移動時間となるかを計算する。この計算には、前述の通り、加速時間、減速時間は固定時間と想定しているため、低速区間の時間を比較し、
搬送速度係数=(移動時間―加速・減速時間)/(キャリア空き時間―加速・減速時間)で搬送速度係数を求める。ステップ508では、ステップ502とステップ507で求めた搬送速度係数を使用し、搬送速度を決定すし、ステップ509で二次元電磁搬送ライン101にキャリアの駆動指示を行う。これにより、停滞するキャリア群の最後尾ポジションが空く時間までに、キャリアが移動するため、キャリアが停止することなく搬送することが可能となる。なお、搬送先ポジションのキャリアが空くまでの時間が、キャリアの移動時間より短い状況では、搬送速度を規定値より高速に移動させることが可能である。しかし、前述した通り、試験管に充填される検体試料の飛び散りがない最高速度である必要がある。そのため、ステップ508で求めた搬送速度が最高速度を上回った場合、最高速度にする必要がある。
【実施例3】
【0032】
図3に示すキャリア303、304、305は、夫々が1.0秒で動作可能な状態である。しかしながら、キャリア303とキャリア304の間隔が2ポジション以下となると、キャリア304は、移動時間は1.0秒未満、例えば0.8秒となる。しかし、キャリア同士の衝突回避のため、キャリア304が移動開始するためには、移動先のポジションであるキャリア303がいる位置が空き状態になるまで動作しない。そのため、移動時間計算部4023は、移動中のキャリア303の移動時間を参照し、キャリア304の速度を変化させることで、キャリア同士の衝突を回避することが可能となる。
【0033】
本発明は、以上に説明した実施例に限定されるものではなく、さらに、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を、他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の実施例に含まれる構成を追加・削除・置換することも可能である。
【符号の説明】
【0034】
101 二次元電磁搬送ライン
102 同時分析システムの投入・収納部
103 インターフェース部
104、105、106、107 分析ユニット
108 Laboratory Information System(LIS)
201 キャリアの存在するポジション
202 キャリアの存在しないポジション
203、204 キャリアの到達点
205、206 キャリアの始動点
207、208 移動中のキャリア
211、212、213 搬送路
301,302、306 停滞中のキャリア
304、305 移動待ちのキャリア
401 管理端末
4011 システム管理部
4012 トラブル監視部
4013 処理能力算定部
402 搬送ライン管理部
4021 搬送路管理部
4022 キャリア管理部
4023 移動時間計算部
4024 待機時間計算部
403 搬送ライン制御部
4031 キャリア制御手段
4032 搬送速度算出部
4033 キャリア検出手段
4044 キャリア空時間算出部
502 搬送速度係数セット
503 搬送路の確認処理
504 キャリアの移動時間算出処理
505 搬送区の搬送可否の判断処理
506 キャリア到達点のキャリア待機時間の算出処理
507 搬送速度係数の再計算処理
508 搬送速度係数からの搬送速度算出処理
509 搬送指示処理
601 ベルト搬送ライン行き
602 ベルト搬送ライン戻り
603 検体投入・収納部
604、605 分析ユニット
606、607 キャリアバッファ部
608 ベルト搬送用キャリア
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6