IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ インテグリス・インコーポレーテッドの特許一覧

特許7603808ガスの高純度送達を有する吸着剤型貯蔵容器および送達容器、ならびに関連する方法
<>
  • 特許-ガスの高純度送達を有する吸着剤型貯蔵容器および送達容器、ならびに関連する方法 図1
  • 特許-ガスの高純度送達を有する吸着剤型貯蔵容器および送達容器、ならびに関連する方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】ガスの高純度送達を有する吸着剤型貯蔵容器および送達容器、ならびに関連する方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 11/00 20060101AFI20241213BHJP
【FI】
F17C11/00 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023524777
(86)(22)【出願日】2021-10-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-06
(86)【国際出願番号】 US2021055718
(87)【国際公開番号】W WO2022087045
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】63/104,966
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】デプレ, ジョーゼフ アール.
(72)【発明者】
【氏名】スウィーニー, ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】スターム, エドワード エー.
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-523707(JP,A)
【文献】特開2000-161595(JP,A)
【文献】特表2020-523544(JP,A)
【文献】特表2017-532283(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0088352(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00-13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬ガスと吸着剤とを収容する吸着剤型貯蔵システムであって、内部と、内部の吸着剤と、吸着剤に吸着された試薬ガスとを収容する貯蔵容器を備え、貯蔵システムが、
吸着剤を提供することと、
吸着剤を容器内部に配置することと、
容器内部の吸着剤を高温かつ減圧に曝露して、残留水分及び揮発性不純物を除去することと、
容器内部の吸着剤を高温かつ減圧に曝露した後、1000sccm未満の低流量で試薬ガスを容器内部に添加することであって、試薬ガスが吸着剤に吸着される、試薬ガスを容器内部に添加することと、
を行うように構成されており、
貯蔵システムが、容器から試薬ガスを分注することができ、分注された試薬ガスが、CO、CO、N、CH、及びHO、並びにそれらの組み合わせから選択される、150ppm(体積基準、ppmv)未満の総量の不純物を含む、貯蔵システム。
【請求項2】
容器から試薬ガスを分注することができ、分注された試薬ガスが、25ppm(体積基準)未満のCO、25ppm(体積基準)未満のCO、25ppm(体積基準)未満のN、25ppm(体積基準)未満のCH、及び25ppm(体積基準)未満のHOのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の貯蔵システム。
【請求項3】
容器から試薬ガスを分注することができ、分注された試薬ガスが、10ppm(体積基準)未満のCO、10ppm(体積基準)未満のCO、10ppm(体積基準)未満のN、10ppm(体積基準)未満のCH、及び10ppm(体積基準)未満のHOのうちの2つ以上を含む、請求項1に記載の貯蔵システム。
【請求項4】
容器から試薬ガスを分注することができ、分注された試薬ガスが、25ppm未満のCO、25ppm未満のCO、25ppm未満のN、25ppm未満のCH、及び25ppm未満のHOを含む、請求項1に記載の貯蔵システム。
【請求項5】
吸着剤が、炭素系吸着剤、金属有機構造体、又はゼオライトである、請求項1に記載の貯蔵システム。
【請求項6】
吸着剤が、顆粒、ビーズ、ペレット、又は成形モノリスの形態である、請求項1に記載の貯蔵システム。
【請求項7】
容器の内部圧力が760Torr未満である、請求項1に記載の貯蔵システム。
【請求項8】
試薬ガスが水素化物又はハロゲン化物である、請求項1に記載の貯蔵システム。
【請求項9】
水素化物が、アルシン、シラン、ゲルマン、メタン、及びホスフィンから選択され、
ハロゲン化物が、BF、SiF、PF、PF、GeF、及びNFから選択される、
請求項8に記載の貯蔵システム。
【請求項10】
吸着剤が、微粒子の形態である、請求項1に記載の貯蔵システム。
【請求項11】
吸着剤を収容する容器に試薬ガスを貯蔵するためのプロセスであって、
吸着剤を提供することと、
吸着剤を容器内部に配置することと、
容器内部の吸着剤を高温かつ減圧に曝露して、残留水分及び揮発性不純物を除去することと、
容器内部の吸着剤を高温かつ減圧に曝露した後、1000sccm未満の低流量で試薬ガスを容器内部に添加することであって、試薬ガスが吸着剤に吸着される、試薬ガスを容器内部に添加することと、
を含み、
貯蔵システムが、容器から試薬ガスを分注することができ、分注された試薬ガスが、CO、CO、N、CH、及びHO、並びにそれらの組み合わせから選択される、150ppm未満の総量の不純物を含む、プロセス。
【請求項12】
容器内に試薬ガスを貯蔵することと、
容器から試薬ガスを分注することと、を含み、分注された試薬ガスが、CO、CO、N、CH、及びHO、並びにそれらの組み合わせから選択される、50ppm(体積基準)未満の総量の不純物を含む、
請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
容器から試薬ガスを分注することを含み、分注された試薬ガスが、25ppm(体積基準)未満のCO、25ppm(体積基準)未満のCO、25ppm(体積基準)未満のN、25ppm(体積基準)未満のCH、及び25ppm(体積基準)未満のHOのうちの1つ以上を含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項14】
容器から試薬ガスを分注することを含み、分注された試薬ガスが、25ppm(体積基準)未満のCO、25ppm(体積基準)未満のCO、25ppm(体積基準)未満のN、25ppm(体積基準)未満のCH、及び25ppm(体積基準)未満のHOを含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項15】
試薬ガスを容器内部に添加する前に、
吸着剤を試薬ガスを含む不動態化ガスと接触させることによって、吸着剤を不動態化することと、
吸着剤を不動態化するのに有効な15~2500分の時間の後に吸着剤から不動態化ガスを除去することと、
をさらに含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項16】
吸着剤を容器内部に配置する前に吸着剤を熱分解することをさらに含み、
吸着剤を容器内部に配置することが、熱分解した吸着剤を周囲雰囲気に曝露することなく、吸着剤が40℃と65℃の間の温度である間に、吸着剤の熱分解の終了から30分以内に、不活性雰囲気下で行われる、請求項11に記載のプロセス。
【請求項17】
試薬ガスを容器内部に添加することが、目標圧力よりも少なくとも10%大きい圧力(Torr、絶対圧力)を容器内部に生成するのに十分な量で行われ、
プロセスが、
前記圧力で、試薬ガスが、吸着剤に吸着された吸着試薬ガスと、容器のヘッドスペースに収容されたガス状試薬ガスとの間で平衡化することを可能にすることと、
試薬ガスの平衡化を可能にした後、試薬ガスの一部を除去して、内部の前記圧力を目標圧力まで低減させることと、
をさらに含む、請求項11に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試薬ガスが固体吸着剤媒体に対して吸着関係に保持されている貯蔵容器から高純度試薬ガスを貯蔵および選択的に分注するための貯蔵分注システムおよび関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス状原料(「試薬ガス」と呼ばれることもある)は、様々な産業および産業用途で使用されている。産業用途のいくつかの例には、とりわけ、イオン注入、エピタキシャル成長、プラズマエッチング、反応性イオンエッチング、メタライゼーション、物理蒸着、化学蒸着、原子層堆積、プラズマ堆積、フォトリソグラフィー、洗浄、およびドーピングなどの半導体材料またはマイクロ電子装置の処理に使用されるものが含まれ、これらの使用は、とりわけ、半導体、マイクロ電子、光起電力、およびフラットパネルディスプレイ装置および製品の製造方法に含まれる。
【0003】
半導体材料および装置ならびに様々な他の工業プロセスおよび用途の製造において、高純度の試薬ガスの信頼性の高い供給源が依然として必要とされている。試薬ガスの例には、とりわけ、シラン、ゲルマン(GeH)、アンモニア、ホスフィン(PH)、アルシン(AsH)、ジボラン、スチビン、硫化水素、セレン化水素、テルル化水素、ハロゲン化物(塩素、臭素、ヨウ素、フッ素)化合物が含まれる。これらのガスの多くは、任意選択的に、準大気圧の試薬ガスを収容する貯蔵容器など、高度な注意および多くの安全上の予防措置を伴って貯蔵、輸送、取り扱い、および使用されなければならない。
【0004】
産業用途の試薬ガスを収容し、貯蔵し、輸送し、分注するために、様々な異なる種類の容器が使用される。本明細書で「吸着剤ベースの容器」と呼ばれるいくつかの容器は、容器内に含まれる多孔質吸着剤材料を使用するガスを収容し、試薬ガスは吸着剤材料に吸着されることによって貯蔵される。吸着試薬ガスは、準大気圧または超大気圧で、容器内に凝縮形態または気体形態でも存在する試薬ガスの添加量と平衡状態で容器内に収容され得る。
【0005】
ガス状原料は、濃縮された実質的に純粋な形態での使用のために送達されなければならず、製造システムにおけるガスの効率的な使用のためのガスの信頼性の高い供給を提供するパッケージ形態で利用可能でなければならない。
【0006】
使用のためのシステムを調製するときに吸着剤ベースの貯蔵システム内に収容される不純物の量を一般に低減するための様々なプロセスステップおよび技術が記載されている。国際特許公開第2017/079550号を参照されたい。
【0007】
現在の市販の吸着剤型貯蔵システムは、容器からの選択的送達のために多くの種類の高純度試薬ガスを収容する。これらの貯蔵システムは、窒素(N)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、メタン(CH)、および水蒸気(HO)の総量として測定される、10,000ppmv(体積基準のppm)未満の量の大気不純物(窒素(N)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、メタン(CH)、水蒸気(HO))などの比較的低レベルの不純物を含む試薬ガスを送達することができる。いくつかの試薬ガスでは、これらの大気不純物の総量は5,000ppmvと低くてもよく、他の試薬ガスでは、その量は500ppmvと低くてもよい。しかし、より低レベルの不純物を含む試薬ガスを送達する改善された吸着剤型貯蔵システムが依然として必要とされている。
【0008】
吸着剤型貯蔵および送達システムを調製する現在および以前の市販の方法に基づいて、これらの製品の供給業者は、500ppmvをはるかに下回る総大気不純物のレベルを含む、著しく低レベルの大気不純物を達成する市販の貯蔵システムを処理および組み立てる方法および技術を開発してはいない(尚、「総大気不純物」は、窒素(N)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、メタン(CH)、および水蒸気(HO)の総量(合計)として測定される)。
【発明の概要】
【0009】
一態様では、本発明は、試薬ガスおよび吸着剤を収容する吸着剤型貯蔵システムに関する。システムは、内部と、内部に吸着剤と、吸着剤に吸着された試薬ガスとを含む貯蔵容器を含む。システムは、容器から試薬ガスを分注することができ、分注された試薬ガスは、CO、CO、N、CH、およびHO、ならびにそれらの組み合わせから選択される、150、50、25、または10ppm(体積基準)(ppmv)未満の総量の不純物を含む。
【0010】
別の態様では、本発明は、吸着剤を収容する容器に試薬ガスを貯蔵するプロセスに関する。このプロセスは、吸着剤を提供することと、吸着剤を容器内部に配置し、残留水分および揮発性不純物を除去するために、容器内部の吸着剤を高温かつ減圧に曝露することと、を含む。容器内部の吸着剤を高温かつ減圧に曝露した後、試薬ガスを容器内部に添加する。試薬ガスは吸着剤に吸着され、大気圧より低い圧力で容器内に収容される。試薬ガスは容器内に貯蔵され、容器から選択的に分注することができ、分注された試薬ガスは、CO、CO、N、CH、およびHO、ならびにそれらの組み合わせから選択される、150ppm未満の総量の不純物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】複数の異なる試薬ガスを貯蔵容器に注入するための多試薬ガスシステムを示す図である。
図2】本明細書の例示的な貯蔵システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面は、概略的であり、例示的であり、非限定的であり、必ずしも縮尺通りではない。
【0013】
本開示は、容器から試薬ガスを選択的に分注するために、密閉容器内の吸着剤材料に試薬ガスを貯蔵するための貯蔵システムに関する。システムは、容器内の吸着剤に貯蔵された試薬ガスを流体分注条件下で容器から選択的に脱着(送達)することを可能にする試薬ガスの可逆的貯蔵および分注システムとして有用である。システムは、容器から様々な試薬ガスのいずれかを分注することができ、送達された試薬ガスは、比較的少量の大気不純物、例えば、窒素(N)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、メタン(CH)、および水蒸気(HO)のうちの1つ以上の少量を個別に、および一緒に測定されたこれらの不純物の低い総量(合計)を含む。
【0014】
本開示はまた、容器に収容された吸着剤に貯蔵された試薬ガスを含む、記載された貯蔵システムを調製および組み立てるために使用することができる様々なステップまたは技術を記載する。容器に貯蔵された吸着剤および試薬ガスを収容するために貯蔵システムを調製および組み立てる有用なステップは、吸着剤および吸着試薬ガスを収容する容器内に存在する(同等の本発明のものではない貯蔵システムと比較して)不純物の量を減少させ、その後、試薬ガスが貯蔵容器から送達されるときに試薬ガス中に存在する不純物の量を低減する。
【0015】
一般に、記載の例示的な方法は、吸着剤を収容する容器に試薬ガスを貯蔵するためのプロセスに関する。例示的なプロセスは、吸着剤を提供することと、吸着剤を容器内部に配置することと、容器内部の吸着剤を高温かつ減圧に曝露して、取り扱いおよびパッケージ構築中に多孔質吸着剤媒体上または多孔質吸着剤媒体内に吸着された可能性のある微量大気不純物を脱着および除去することと、を含む。
【0016】
試薬ガスが貯蔵後に容器から排出されるときに試薬中に存在する大気不純物の量を低減するために、吸着剤注入容器に試薬ガスを添加する前に、吸着剤の様々な他の任意選択の処理をその場(容器内)で行ってもよい。例えば、有用な任意選択のステップは、貯蔵される特定の試薬ガスと反応し得る活性表面部位の多孔質吸着剤を化学的に不動態化することであり得る。そのような処理の詳細は、使用される特定の吸着剤、ならびに容器および吸着剤を使用して吸着、貯蔵、輸送および送達される試薬ガスの特定の種類に依存する。そのような処理は、ルイス酸または塩基部位を中和するための物理的または化学的手段を含み得る。
【0017】
さらに一般的には、容器内部の吸着剤を高温かつ減圧に曝露した後、もしくは任意の追加のまたは代替のその場の処理の後、試薬ガスを容器内部に添加して、試薬ガスを吸着剤に吸着させ、貯蔵および容器からの選択的送達(排出)のために容器内に収容されるようにする。試薬ガスは、超大気圧または準大気圧などの任意の圧力で容器内に添加および収容されてもよい。
【0018】
試薬ガスは、容器内に有用な期間にわたって貯蔵することができ、使用のために容器から選択的に分注する(排出され、送達される)ことができ、分注された試薬ガスは、例えば、CO、CO、N、CH、およびHO、ならびにそれらの組み合わせから選択される、150ppm(体積基準)未満の総量の不純物を含み、例えば、分注された試薬ガスは、50、25、15、または10ppmv未満である総量のこれらの不純物を含み得る。
【0019】
代替的または追加的に、排出される試薬ガスは、CO、CO、N、CH、およびHO、ならびにそれらの組み合わせから選択される個々の不純物の1つ以上の各々を個別に少量含むことができる。例えば、分注された試薬ガスは、25、20、15、10、または5ppmv未満のこれらの不純物のいずれかを含み得る。代替的または追加的に、分注された試薬ガスは、各々個別に測定された25、20、15、10、または5ppmv未満の2つ以上の異なる成分、例えば、個別に測定された25、20、15、10、または5ppmv未満のCO、CO、N、CH、およびHOの2つ以上の組み合わせを含み得る。
【0020】
従来、吸着剤型貯蔵システムに収容される試薬ガスの純度は、貯蔵のために最初に容器に添加される試薬ガスの純度、すなわち、容器内で貯蔵のために試薬ガスが貯蔵容器に充填される前の試薬ガスの純度に関して測定、監視、および説明されてきた。しかしながら、貯蔵容器、吸着剤、ならびにそれらの調製および組み立ての種類に応じて、この純度の測定値は、容器から貯蔵および送達される試薬ガスの純度を表すものではない可能性がある。
【0021】
ゼオライトは、様々な試薬ガスとも相互作用することができる金属および酸化物を含み、大気中の水分および夾雑物に対して高い親和性を有することも知られている。金属有機構造体(MOF)は、定義により、吸着試薬ガス種と不可逆的に相互作用することができる金属イオンおよびクラスター、主に遷移金属を組み込む。これらの特殊吸着剤の合成はまた、結晶性MOF構造の細孔構造内に低レベルで残される可能性がある反応性有機配位子および溶媒を使用し、後に吸着試薬ガスと反応または相互作用する。したがって、多孔質貯蔵媒体への吸着、貯蔵、および輸送後に、原料ガスの純度分析によって送達される試薬ガスの純度を定義することは、ますます代表的なものでなくなっている。
【0022】
さらに、貯蔵された試薬ガスの使用者は、貯蔵容器の構成要素(例えば、吸着剤または容器)の一部として貯蔵容器に導入され得るか、または容器もしくは容器の構成要素の組み立て、注入、もしくは取り扱い中に導入され得るより低レベルの大気不純物を含む、ますます高いレベルの試薬ガスの純度を必要とし続ける。
【0023】
本明細書は、吸着剤型貯蔵システム、または吸着剤型貯蔵システムに試薬ガスを供給するために使用され、吸着剤型貯蔵システムに貯蔵され、そこから送達される試薬ガスに移送され得るシステムおよび装置に存在する不純物、特に(排他的ではないが)大気不純物の量を制御または低減する方法に関する。本明細書によれば、吸着剤含有容器に貯蔵された試薬ガスの純度は、最初に貯蔵容器に注入(充填)するために試薬ガスを貯蔵容器に添加した時点では測定することができず、しかし代わりに、試薬ガスが容器から送達(分注、排出)されるときに測定することができる。
【0024】
本明細書によれば、吸着剤型貯蔵システムの構成要素の調製、取り扱い、および組み立てに使用することができるステップおよび技術は、貯蔵システムの構成要素から大気不純物を除去するか、または窒素(N)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、メタン(CH)、および水蒸気(HO)などの大気ガス(「大気不純物」)への貯蔵システムの構成要素(特に吸着剤)の曝露を低減または防止する方法で行われる。有用な方法は、(吸着剤を含む)貯蔵容器、貯蔵容器に試薬ガスを添加するシステム、またはその両方に存在するこれらの大気不純物の量を低減して、試薬ガスが最終的に貯蔵容器から分注されるときに試薬ガス中に存在するこれらの大気不純物の量を望ましく低減することである。
【0025】
記載の貯蔵システムは、その内部に吸着剤材料を収容する容器を含む。吸着剤材料は、貯蔵容器から試薬ガスを収容し、貯蔵し、送達するのに有効である。試薬ガスは吸着剤に吸着され、容器内部のガスとして存在し、試薬ガスの一部は吸着剤に吸着され、別の部分は気体形態または凝縮した気体形態であり、吸着部分と平衡状態にある。試薬ガスは、最初に、容器内の所望の初期貯蔵圧力に基づいて、吸着剤に対して所望の(例えば、最大)容量の試薬ガスまで容器に充填することができ、これは準大気圧(760Torr未満)または超大気圧であってもよい(初期貯蔵圧力は、初期量の試薬ガスの平衡後の注入ステップの「使用圧力」または「目標圧力」と呼ばれ、以下を参照されたい)。試薬ガスは、貯蔵のために吸着剤に吸着され、吸着試薬ガスと平衡状態で気体形態または凝縮形態で存在する。その後、容器内部の吸着剤および吸着試薬ガスを分注条件に曝露することによって、使用のために容器からガスを選択的に送達(分注)することができる。
【0026】
本明細書で使用される場合、「分注条件」という用語は、吸着剤を有する容器に保持された試薬ガスを脱着するのに有効な1つ以上の条件を意味し、その結果、試薬ガスが吸着された吸着剤から係合解除された試薬ガスが、使用のために吸着剤および容器から分注される。有用な分注条件は、試薬ガスを脱着させ、吸着剤によって放出させる温度および圧力の条件、例えば、試薬ガスの熱媒介脱着を行うために吸着剤(および吸着剤を収容する容器)を加熱すること、試薬ガスの圧力媒介脱着を行うために吸着剤を減圧状態に曝露すること、これらの組み合わせ、および他の有効条件などを含み得る。
【0027】
容器内部の圧力(初期「使用」圧力)は、約760Torr(絶対圧力)未満を意味する準大気圧であってもよく、超大気圧であってもよい。準大気圧貯蔵について、容器の貯蔵中、または試薬ガスを貯蔵および分注するための容器の使用中、容器内部の圧力は、760Torr未満、例えば、700、600、400、200、100、50、20Torr未満、またはさらに低い圧力であり得る。超大気圧貯蔵について、容器の貯蔵中、または試薬ガスを貯蔵および分注するための容器の使用中、容器内部の圧力は、約760~50,000Torr、例えば約1,000~約30,000Torrの範囲であり得る。
【0028】
記載された容器および方法は、吸着部分と凝縮またはガス状部分との間の平衡状態で、記載されたように貯蔵され得る任意の試薬ガスを貯蔵、取り扱い、および送達するのに有用である場合がある。記載された容器は、危険、有害、またはその他の危険な試薬ガスを貯蔵するために特に望ましい場合がある。記載された容器および方法が有用である試薬ガスの例示的な例には、非限定的な例として、シラン、メチルシラン、トリメチルシラン、水素、メタン、窒素、一酸化炭素、アルシン、ホスフィン、ホスゲン、塩素、BCI、(同位体濃縮材料を含む)BF、ジボラン(B(その重水素類似体を含む))、六フッ化タングステン、フッ化水素、塩化水素、ヨウ化水素、臭化水素、ゲルマン、アンモニア、スチビン、硫化水素、シアン化水素、セレン化水素、テルル化水素、重水素化水素、トリメチルスチビン、ハロゲン化物(塩素、臭素、ヨウ素、フッ素)、NF、CIF、(同位体濃縮材料を含む)GeFなどのガス状化合物、SiF、AsF、PF、有機化合物、有機金属化合物、炭化水素、(CFSbなどの有機金属第V族化合物、および、ハロゲン化ホウ素(例えば、三ヨウ化ホウ素、三臭化ホウ素、三塩化ホウ素)、ハロゲン化ゲルマニウム(例えば、四臭化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム)、ハロゲン化ケイ素(例えば、四臭化ケイ素、四塩化ケイ素)、ハロゲン化リン(例えば、三塩化リン、三臭化リン、三ヨウ化リン)、ハロゲン化ヒ素(例えば、五塩化ヒ素)、およびハロゲン化窒素(例えば、三塩化窒素、三臭化窒素、三ヨウ化窒素)を含む他のハロゲン化化合物が含まれる。容器に収容され、吸着剤に吸着された試薬ガスはまた、2つ以上のガスの組み合わせ、例えば水素ガスと三フッ化ホウ素または四フッ化ゲルマニウムなどのフッ素含有ガスの組み合わせを含むことができる。これらの化合物の各々について、すべての同位体が企図される。
【0029】
吸着剤ベースの貯蔵システムにおける不純物のレベルを低減する方法および技術は、様々な種類の吸着剤材料に含まれる不純物を低減するのに有効であり得、吸着剤の特定の種類または組成に依存しない。様々な種類の吸着剤材料のいずれも、吸着剤型貯蔵システム内に存在する不純物を低減し、吸着剤を使用して貯蔵される試薬ガス中に存在する大気不純物の量を低減するために、本明細書に記載の方法と共に有用であり、その方法から利益を受け得る。
【0030】
例示的な吸着剤には、炭素系材料(例えば、活性炭)、シリカライト、(ゼオライト系イミダゾレート構造体を含む)金属有機構造体(MOF)材料、ポリマー構造体(PF)材料、ゼオライト、多孔質有機ポリマー(POP)、共有結合性有機構造体(COF)などから選択される吸着剤材料が含まれる。吸着剤は、顆粒、微粒子、ビーズ、ペレット、または成形モノリスなどの任意のサイズ、形状、または形態であってもよい。
【0031】
吸着剤材料の特定の例は、米国特許第5,704,967号、米国特許第6,132,492号、およびPCT国際特許公開第2017/008039号、PCT国際特許公開第2017/079550号に言及されており、これらの各々の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
金属有機構造体には、一般に、結晶構造中の金属イオンまたは金属酸化物クラスターに配位した有機リンカーから作製された高多孔質材料が含まれる。様々なクラスのMOFが知られており、ZIF様MOF(ゼオライト系イミダゾール構造体)、MIL(マテリアル・インスティテュート・ラヴォワジエ)、MOF材料(例えば、MIL-100)、IRMOF様材料(例えばIRMOF-1)、M-MOF-74/CPO-27-M様パドルホイールMOF(ここで、MはZn、Fe、Co、Mg、Ni、Mn、またはCuであってもよく)、Zn酸化物ノード構造体、DMOF様MOF材料(例えばDMOF-1)を含む。
【0033】
吸着剤として有用または好ましいMOFの1つのクラスは、ゼオライト系イミダゾレート構造体すなわち「ZIF」のクラスである。ゼオライト系イミダゾレート構造体は、イミダゾレートリンカーによって接続された、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)または亜鉛(Zn)などの四面体配位遷移金属を含むMOFの一種であり、特定のZIF組成内で、またはZIF構造の単一遷移金属原子に対して同じであっても異なっていてもよい。ZIF構造は、四面体トポロジーに基づく拡張構造体を生成するためにイミダゾレート単位を介して連結された四面体配位遷移金属を含む。ZIFは、ゼオライトおよび他の無機微孔質酸化物材料に見られるものと同等の構造トポロジーを形成すると言われている。
【0034】
様々な炭素材料が吸着剤として有用である。それらには、ポリアクリロニトリル、スルホン化ポリスチレン-ジビニルベンゼン、ポリ塩化ビニリデンなどの合成炭化水素樹脂の熱分解によって形成された炭素、セルロースチャー、木炭、ヤシ殻、ピッチ、木材、石油、石炭などの天然源材料から形成された活性炭、ナノ細孔炭素などが含まれる。
【0035】
炭素吸着剤(ナノ細孔炭素)の1つの特定の例は、0.5~約1nmの間の細孔(スリット)サイズを有し、大きいミクロ細孔容積(>40%、マクロ細孔(>5nm)および空隙容積がわずか10%程度)および大きい表面積(例えば、約1,100m/g)を有する高密度(例えば、約1.1g/cc程度)を有し得る熱分解物に形成され得る、ポリ塩化ビニリデン(PVCD)ポリマーまたは共重合体の炭素熱分解物である。微視的には、このようなナノ細孔炭素材料は、幾分ランダムな配向で折り畳まれて交互配置され、比較的高い電気伝導率および熱伝導率をもたらすグラフェンシート(sp2混成グラファイト面)からなる。その全体が参照により本明細書に組み込まれる国際特許公開第2017/079550号を参照されたい。
【0036】
有用または好ましい炭素吸着剤は、記載されているようなシステムの吸着剤として容器内に配置される前に実質的に純粋である種類および特徴のものであり得る。有効な炭素吸着剤材料の純度は、炭素の灰分に関して特徴付けられ得る。例えば、有用なまたは好ましい炭素吸着剤は、標準試験によって測定される、例えばASTM D2866-83またはASTM D2866.99によって測定される、0.01重量%以下の灰分を含み得る。炭素純度は、粒子励起X線発光技術(PIXE)によって測定して、好ましくは少なくとも99.99%であり得る。
【0037】
本明細書によれば、試薬ガスの貯蔵および送達中に容器、吸着剤、および試薬ガス中に存在する大気不純物の量を低減するために、吸着剤に対して、貯蔵システムの一部として吸着剤を収容するために容器に対して、または(容器に試薬ガスを注入するステップを含む)貯蔵システムの組み立て中に、様々なステップの1つ以上を行ってもよい。容器内の試薬ガスの典型的な貯蔵期間の後、試薬ガスが容器に貯蔵され、容器から送達されるときに、試薬ガス中に大気不純物の量が低減する。吸着剤および試薬ガスが収容された容器を含む記載のシステムの典型的な貯蔵期間(常温、25℃)は、数週間(例えば、1、2、6、または8週間)または数ヶ月(例えば、3、6、9、または12か月)の期間であってもよく、その間およびその後、有用または好ましいシステムは、例えば代替の貯蔵システムと比較して、記載の比較的低レベルの大気不純物を含む試薬ガスを送達することができる。
【0038】
貯蔵システム内の不純物、特に吸着剤に含まれる存在する不純物を低減するための1つの技術として、吸着剤は、吸着剤に含まれる不純物の量を低減する熱分解ステップによって処理されてもよい。熱分解ステップは、吸着剤が容器に添加される前に行われてもよく、熱分解ステップの加熱条件に耐えるのに十分に熱的に安定な任意の吸着剤に対して行われてもよい。熱分解に耐えることができる吸着剤の例には、炭素系吸着剤が含まれる。
【0039】
熱分解ステップは、一般に、無酸素環境で熱分解するステップを指す。熱分解は、吸着剤を任意の適切な熱分解条件に曝露することによって行われてもよく、所望または有用である場合、周囲の開始温度から所望の高温熱分解温度まで、例えば600℃~1000℃の温度範囲での温度上昇を含む漸進的な方法で行われてもよい。熱分解プロセスステップの時間は、所望に応じて、任意の有効時間、例えば1~7日の範囲の総時間、またはそれより長い時間であってもよい。熱分解ステップが行われてもよい雰囲気は、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、および水分を含まない不活性雰囲気とすることができる。例示的な雰囲気は、窒素、アルゴン、およびフォーミングガス(窒素中5%の水素の混合物)を含む。その全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際特許公開第2017/079550号、米国特許出願公開第2020/0206717号を参照されたい。
【0040】
熱分解ステップに続いて、熱分解によって処理された吸着剤は、個別に測定された、窒素(N)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、メタン(CH)、および水蒸気(HO)の各々について、約50、40、または20ppmv未満のレベルの大気不純物を含み得る。吸着剤は、窒素(N)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、メタン(CH)、および水蒸気(HO)の総量の70、60、または50ppm未満を、これらの不純物のすべてを合計して(総量で)含み得る。
【0041】
熱分解温度に耐えることができる吸着剤の熱分解に続いて、または他の種類の吸着剤を調製する別のステップに続いて、大気不純物のレベルが低減された、記載されているような貯蔵システムを調製する有用な方法は、吸着剤が貯蔵容器に配置される前およびそのときに(例えば、熱分解に続いて)吸着剤を大気ガスに曝露することを防止する方法で吸着剤を取り扱うためのステップおよび技術を含むことができる。
【0042】
一例として、熱分解ステップ後および熱分解された吸着剤を貯蔵容器に入れる前に、吸着剤の大気不純物への曝露を低減または防止するために、熱分解の対象となる吸着剤(例えば、熱分解された炭素型吸着剤)を熱分解ステップの直後に貯蔵容器に配置してもよい。例えば、熱分解された吸着剤は、乾燥した不活性な(例えば、窒素雰囲気)パージされた収容システム内の直接注入を介して、周囲環境に曝露されることなく容器(貯蔵システムの容器)(または代替的にガス不透過性バッグなどのプレパッケージ)内に直接パッケージまたは装填することができる。吸着剤材料は、熱分解炉から絶縁ゲートを通ってパッケージ(例えば、制御された環境における容器、シリンダ、またはガス不透過性バッグ)に直接移動させてもよい。培地は、制御された雰囲気(例えば、任意選択的に周囲環境を冷却して大気中の水分含有量を低減する乾燥窒素)内にあり、周囲雰囲気(すなわち、空気)に曝露されず、熱分解ステップ後の短時間内、例えば熱分解ステップの終了後30分以内などに、パッケージに装填され得る。吸着剤の吸着容量は高温で低減するため、吸着剤媒体は、40℃~65℃の高温で、任意選択的に乾燥した低酸素(例えば、1、0.5、または0.1体積%未満の酸素を含む)環境(例えば、濃縮窒素)内で、短時間(例えば、30分、20分、または10分未満)で熱分解ステップからパッケージに移送してもよい。同じ雰囲気およびタイミングを使用する様々な例示的な方法では、媒体は、貯蔵容器(例えば、シリンダ)またはガス不透過性パッケージ(例えば、「ガス不透過性バッグ」)などの異なるパッケージに直接装填されてもよい(国際特許公開第2017/079550号を参照)。一時的ガス不透過性パッケージが使用される場合、そのパッケージはまた、媒体が貯蔵容器に移送されるまで媒体をさらに保護するために、任意選択の乾燥材料、脱酸素剤、またはその両方を含み得る。
【0043】
このようなステップによれば、熱分解可能な吸着剤を熱分解炉内で熱分解ステップの対象となり、熱分解された吸着剤を形成してもよい。熱分解された吸着剤は、排出場所で熱分解炉から排出されてもよく、熱分解された吸着剤は、排出場所で貯蔵容器内に直接配置されてもよく、例えば、ガス貯蔵分注容器内部に送達されてもよい。国際特許公開第2017/079550号、米国特許公開第2020/0206717号を参照されたい。これらのステップは、熱分解炉を収容するエンクロージャを含む製造設備で行われてもよい。エンクロージャは、熱分解炉の排出場所に吸着剤注入ステーションをさらに収容(密閉)してもよく、吸着剤注入ステーションは、熱分解物吸着剤をパッケージ(例えば、ガス貯蔵容器、ガス不透過性バッグ、または別のパッケージ)内に配置するように構成される。エンクロージャには、窒素などの不活性(任意選択的および好ましくは低酸素)ガス環境、または製造プロセスを促進する1つ以上の添加ガスが供給されてもよい。エンクロージャはまた、水分、酸素、または別の大気不純物を制御するための活性ゲッタを備えてもよい。炭素熱分解物吸着剤は、濃縮された不活性雰囲気下(例えば、少なくとも99または99.9%(体積基準)の窒素、ヘリウム、アルゴン、キセノンおよびクリプトンのうちの1つ以上を含む)、または水素、硫化水素、もしくは他の適切なガス、または不活性ガスと還元ガスとの組み合わせの還元雰囲気下でパッケージ内に配置されてもよい。
【0044】
貯蔵システム内の、特に容器の材料に含まれる大気不純物の存在を低減するための別の技術によって、容器、特に容器内部は、容器の使用中に容器内部の大気不純物の存在を低減する材料から調製され得る。貯蔵システム(例えば、バルブ)の容器または他の構成要素は、貯蔵容器内部への不純物の導入を低減するように選択または処理することができる金属、金属合金、被覆金属、プラスチック、ポリマー、またはそれらの組み合わせなどの材料で作られてもよい。研磨された滑らかで低い表面粗さの表面、例えば容器壁は、容器内部に収容される試薬ガスとの反応性が低く、その周囲からのガスまたは水分の吸着が少なくなる可能性があり、したがって、記載のように貯蔵容器の内面として好ましい場合がある。国際特許公開第2017/079550号(例えば、段落[0029]および[0030])を参照されたい。貯蔵容器内部の有用または好ましい材料の特定の例は、容器に収容される吸着剤または試薬ガスの種類に基づいて選択されてもよい。高ニッケル金属合金または高度に研磨された(低い表面粗さ)または被覆金属または高性能プラスチックは、特に貯蔵された試薬ガスとしてのハロゲン化物ガスとの相互作用および不純物を最小限に抑えるのに役立ち得る。
【0045】
代替的または追加的に、特に容器の材料に含まれるような貯蔵システム中の大気不純物の存在をさらに低減するために、吸着剤を添加する前に、(任意選択の材料の)容器を加熱および任意の減圧ステップに曝露して、容器の材料内に収容され得る、例えば容器の材料内、例えば容器の側壁および底部内、または容器もしくはバルブなどの貯蔵システムの他の構成要素内に微量に吸着される不純物の量を低減してもよい。容器またはシステムの他の構成要素は、金属、金属合金、被覆金属、研磨金属、プラスチック、ポリマー、またはそれらの組み合わせなどの材料で作製されてもよい。これらの材料のいずれも、水分、別の大気不純物、または有機揮発性材料などの非常に少量または微量の吸着不純物を含んでもよい。
【0046】
吸着剤が容器内部に添加され収容される前に容器を洗浄、乾燥、不動態化、パージ、または加熱するステップは、容器が吸着剤を収容していない間に、容器または貯蔵システムの他の構成要素を、例えば高温、減圧、化学的または物理的機構などにより、材料に含まれ得る不純物を放出(脱気)するか、そうでなければ材料から除去する任意の適切な条件に曝露することによって行われてもよい。これらのステップのうちの1つ以上は、任意の吸着剤を容器内部に添加する前に行われてもよい。
【0047】
容器またはシステムの材料から吸着不純物を除去するために、任意選択の減圧で容器を加熱するステップは、容器またはシステムの材料が熱的に安定している温度を含む有用な温度および圧力で、任意の効果的な方法で行われてもよい。容器または貯蔵システムに使用される特定の材料は、他の材料よりも安定性が低く、加熱ステップ中に使用される温度は、特定の材料が安定したままであり、分解しない温度である。加熱ステップは、周囲の開始温度から、貯蔵、輸送、および使用中に容器が遭遇するであろう温度よりも高い所望の高温までの温度上昇を含む漸進的な方法で、例えば110℃~300℃の温度範囲で行われてもよく、加熱ステップは、所望かつ効果的に、8時間~40時間の様々な範囲の時間にわたって行われてもよい。好ましい加熱ステップはまた、真空雰囲気中で、650Torr未満の圧力など、例えば3Torr未満、または1×10-4Torr未満、または1×10-5Torr未満の圧力で行われてもよい。
【0048】
特に吸着剤に含まれるような、貯蔵システム内の大気不純物の存在を低減するための別の特定の技術として、吸着剤を貯蔵容器内に配置した後、吸着剤を加熱および減圧ステップに供して、吸着剤中に存在する不純物の量を低減してもよい。吸着剤および吸着剤を収容する容器を、容器内に吸着剤を配置した後に吸着剤に含まれ得る大気不純物の量を除去することができる任意の適切な加熱および圧力条件に、吸着剤および吸着剤を収容する容器を曝露することによって、吸着剤に過度に有害な熱的影響を生じさせることなく、容器に収容された吸着剤に対して加熱ステップを行ってもよい。加熱ステップは、吸着剤および容器内部に試薬ガスを添加する前に行われる。
【0049】
容器内の吸着剤を加熱して大気不純物を除去するステップは、吸着剤が熱的に安定している温度を含む有用な温度および圧力で、任意の効果的な方法で行われてもよい。特定の吸着剤材料は、他の吸着剤材料よりも安定性が低く、加熱ステップ中に使用される温度は、特定の吸着剤が安定なままであり、分解しない温度である。加熱ステップは、周囲の開始温度から所望の高温まで、例えば110℃~300℃の温度範囲で温度を上昇させることを含む漸進的な方法で実行されてもよく、加熱ステップは、所望かつ効果的に、8時間~40時間、またはそれ以上の様々な範囲で行われてもよい。好ましい加熱ステップは、5Torr未満の圧力、例えば1×10-5または1×10-6Torr未満の圧力などの真空雰囲気で行われてもよい。
【0050】
記載される方法はまた、吸着剤が容器内に配置される前または後に、吸着剤を化学的に不動態化するステップを含み得る。化学的不動態化ステップは、吸着剤の表面部位をガス(不動態化ガス)の形態の化学物質に曝露して、残留吸着不純物(例えば、大気不純物)を除去するか、または吸着剤の活性表面部位を中和もしくは不活性化するステップを含み得る。不動態化ステップの不動態化ガスの量および種類、ならびに吸着剤への不動態化ガスの曝露時間は、吸着剤の種類、ならびに吸着剤への吸着によって貯蔵される試薬ガスの種類に依存する場合がある。
【0051】
単一の例として、吸着剤を化学的に不動態化するステップは、後続の注入ステップで容器に充填されるのと同じ試薬ガスである試薬ガスに吸着剤を曝露することによって、吸着剤を収容する容器内で行われてもよい。すなわち、容器に貯蔵される試薬ガスは、吸着剤を不動態化するステップにおいて不動態化ガスとして使用される。吸着剤は、容器内に試薬ガスを貯蔵する目的で容器に同じ試薬ガスを充填する前に、吸着剤上の活性表面部位と反応してそれらの部位を不活性化することによって、吸着剤を化学的に不動態化する任意の圧力および任意の時間で試薬ガスに曝露されてもよい。任意選択的に、吸着剤は、不活性で非反応性のガス中、高圧であるが低濃度の不動態化ガスとしての試薬ガスに、例えば2、5、または10%(体積%)の濃度に希釈し、1,000、2,000、または5,000Torrに加圧するなどして曝露されてもよい。
【0052】
例えば、化学的不動態化ステップでは、吸着剤は、比較的低い圧力、例えば760Torr未満の圧力、例えば1、2、5、または10Torr、最大50、100、200、または500Torrなどの範囲の圧力で試薬ガスに曝露されてもよい。吸着剤を不動態化ガスに曝露する時間は、任意の有用な時間、例えば15~2500分、例えば60~1000分の範囲の時間である場合がある。不動態化ステップは、常温で、または高温、例えば、60℃~300℃、例えば85℃~250℃の範囲の温度で行われてもよい。吸着剤を不動態化ガスに所望の時間曝露した後、不動態化ガスは、減圧、例えば3Torr未満の圧力、例えば1×10-5または1×10-6Torr未満の圧力に曝露することによって吸着剤から除去される。
【0053】
吸着剤を処理して吸着剤中に存在する大気不純物の量を低減する別の任意選択のステップによれば、吸着剤を「置換ガス」と、任意選択的に高圧および高温で、任意選択的に曝露の複数サイクルを通して接触させて、不純物を吸着剤から置換ガス中に除去させてもよい。このステップにより、吸着剤から不純物を置換するのに有効な方法で吸着剤を置換ガスと接触させ、次いで置換ガスを吸着剤から除去して、より少ない量の大気不純物を含む吸着剤を得る。圧力および温度は制御することができ、上昇させ、任意選択的に調節してもよく、すなわち、より高い圧力とより低い圧力との間またはより高い温度とより低い温度との間で循環させてもよい。
【0054】
置換ガスは、窒素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、またはクリプトンのうちの1つまたは組み合わせなどの不活性ガスであってもよい。代替的に、置換ガスは、水素または硫化水素などの還元ガス、または不活性ガスと還元ガスとの組み合わせ、例えば残りの窒素中の約5%(体積%)の水素の混合物であってもよい。
【0055】
吸着剤を調製し、吸着剤を貯蔵容器内部に配置する所望のステップの後、吸着剤が曝露されるかまたは含む大気不純物の量を低減または最小限にするために吸着剤を記載されるように処理しながら、容器を所望の圧力まで試薬ガスで注入(「装填」または「充填」)し、試薬ガスを容器内部に導入して、試薬ガスを吸着剤に吸着させることができる。
【0056】
容器内に存在するようになる、すなわち、試薬ガスを容器に充填するステップ中に容器または試薬ガスに添加され得る大気不純物の量を低減または制御するために、注入(充填)ステップ中に容器および吸着剤に対して様々なステップを行ってもよく、特定の注入装置を注入ステップ中に使用することができる。これらには、一般に、可能な限り最高の純度の試薬ガスの使用、または貯蔵容器への導入前の試薬ガスの精製と、大気ガスまたは複数の試薬ガスへの装置(特に内部空間)の曝露を低減する方法で処理、取り扱い、および使用される注入装置の使用と、容器への試薬ガスの添加中または添加後に、注入装置および容器から大気不純物を除去するのに有効であり得る注入プロセスのステップとのうちのいずれか1つ以上が含まれ、これらのいずれかは、単独で、またはこれらの2つ以上の組み合わせで有用であり得る。
【0057】
一例として、図1は、各々がそれ自体の試薬ガス源(112a、112b、112c,112d)および(図示されているように、複数のバルブを含む)導管(114a、114b、114c、114d)を有する個々の注入ステーション110a、110b、110c、および110dを含むシステム100の非限定的な例を示す。使用時には、各試薬ガス源は異なる試薬ガス(122、124、126、128)を含み、各個々の導管114(a、b、c、またはd)は、受容容器(116a、116b、116c、または116d)に注入するために単一の種類の試薬ガスのみを流すために使用される。
【0058】
各注入ステーションはまた、注入ステップ中に受容容器およびその内容物の温度を正確に監視および制御するのに有効な温度監視および制御システム(例えば、ジャケット)132a、132b、132c、および132dを含む。各注入ステーションはまた、注入ステップ中に受容容器の内圧を正確に監視および制御するのに有効な圧力監視および制御システムを含む。例示的な注入ステーションは、受容容器、注入ステップ中に受容容器に入る試薬ガス、または注入ステップ中の受容容器の内容物(試薬ガス、吸着剤、またはその両方)の温度を、所望の設定点温度に対して、設定点温度より3℃を超えない範囲で高いまたは低い、例えば設定点温度より1℃または0.5℃を超えない範囲で高いまたは低い範囲内の温度まで監視および制御することができる温度制御システムを含むことができる。
【0059】
各ステーションは、少なくとも有用なまたは多数の注入サイクル(一サイクルは1つの容器116に注入する)、例えば少なくとも100、500または1000の注入ステップ(単一の注入ステップは1つの貯蔵容器に試薬ガスを注入する)のために専用とすることができ、1つの特定の種類の試薬ガスのみを受容容器に注入する。単一の試薬源を有する注入ステーションの使用、すなわち、注入ステーションの長期使用よりも1種類の試薬ガスのみを貯蔵容器に注入するための注入ステーションの使用は、1つの試薬ガスから異なる試薬ガスへの切り替え中にステーションおよび関連する導管が環境不純物に過度に曝露されるのを回避するのに有効である場合がある。専用注入ステーションはまた、ステーションによって注入された貯蔵容器間の異なる種類の試薬ガスの交差汚染の可能性を低減する。
【0060】
同様に、受容容器間の交差汚染の可能性を防止するために、各注入ステーションは、任意選択的に(図示のように)単一の試薬ガス源112(a、b、c、またはd)のみと、単一の出口134(a、b、c、またはd)のみとを含むことができ、そこには注入ステーションを使用してガス源から試薬ガス(122、124、126、または128)を受容容器に流すために、受容容器(116a、b、c、またはd)を接続することができる。
【0061】
任意選択的に、注入ステーション110a、110b、110c、および110dの各々、またはすべてについて独立して、導管114a、114b、114c、または114dの内面、または注入ステップ中に試薬ガスと接触する任意の表面は、金属、金属合金、被覆金属、プラスチック、ポリマー、またはそれらの組み合わせなどの材料で作ることができ、表面を通過する試薬ガスの流れの間に表面から試薬ガスへの不純物の導入を回避するように選択または処理することができる。導管の研磨された滑らかで低い表面粗さの表面は、導管を通って流れる試薬ガスとの反応性が低く、周囲からのガスまたは水分の吸着が少なく、内面として好ましい可能性がある。国際特許公開第2017/079550号(例えば、段落[0029]および[0030])を参照されたい。導管の内部の有用または好ましい材料の特定の例は、容器に収容される吸着剤または試薬ガスの種類に基づいて選択されてもよい。高ニッケル金属合金または高度に研磨された(低い表面粗さ)または被覆金属または高性能プラスチックは、ハロゲン化物ガスとの相互作用および不純物を最小限に抑えるのに役立ち得る。
【0062】
環境不純物をさらに除去するために、パージバルブ(130a、130b、130c、130d)が各注入ステーションの導管内に存在する。パージバルブは、注入サイクルの間、注入サイクルの前、または一定量の試薬ガスが導管を通って流れなかった、例えば導管を通って流れることなく導管内の定位置に保持されていた注入ステーションの不使用期間(例えば、少なくとも2、4、6、または8時間)の後に導管をパージするのに有用である場合がある。
【0063】
パージバルブは、任意選択的にスクラバーまたは他の種類の試薬ガス廃棄物容器に直接接続し得、注入ステップの直前に開いて、導管内に存在する試薬ガスの量をパージする(スクラバーまたは廃棄物容器に送る)ことができ、その結果、受容容器(116a、b、c、またはd)に添加されることになる試薬ガスは、試薬ガス源(112a、112b、112c、または112d)に貯蔵され、導管(114a、114b、114c、または114d)内に一定時間存在(または静止)しなかった試薬ガスである。このパージステップ中に導管から放出される試薬ガスの量は、少なくとも、試薬ガス源(112a、112b、112c、または112d)とパージバルブ(130a、130b、130c、または130d)との間に延在する導管の容積にほぼ等しい試薬ガスの容積であってもよい。
【0064】
代替的または追加的に、環境不純物をさらに除去するために、試薬ガスは、比較的低いガス圧、速度、またはその両方で注入ステーションの導管を通って流れる可能性がある。
【0065】
注入システムの導管および流路内の低い試薬ガス圧力は、導管またはシステムを通って流れる試薬ガスと、導管またはシステムの内面で利用可能な任意の反応部位との反応を最小限にする、または遅くさせるのに有効であり得る。導管内の試薬ガスの例示的な圧力は、25または15psig未満など、50ポンド/平方インチ(ゲージ)(psig)未満であり得る。
【0066】
また、追加的または代替的に、容器に貯蔵され、容器から送達される試薬ガス中に存在するようになる環境不純物の存在を低減するために、注入システム(例えば、その導管)を通って容器に入る比較的低い速度の試薬ガスを使用して注入ステップを行ってもよく、容器を試薬ガスで注入しながら、受容容器内のガス圧の比較的遅い増加を達成することができる。
【0067】
注入システム、例えばその導管を通って受容容器に入る試薬ガスの有用な速度の例は、1000標準立方センチメートル/分(sccm)未満、例えば500sccm未満または250sccm未満の速度であり得る。これは、注入ステーションから出て貯蔵容器に試薬ガスが流入する時点での注入システムの出口における試薬ガスの流れであってもよい。
【0068】
貯蔵容器に流れ込む試薬ガスの有用な圧力上昇速度の例は、100Torr/時間未満、例えば1Torr/分未満、または0.5Torr/分未満の容器内の圧力上昇であり得る。
【0069】
低速の注入速度または低速の圧力上昇速度は、理論的には、注入ステップ中に試薬ガスに導入され得る注入ステップ中に生成される不純物を低減することができるが、これは、低速で制御された注入速度が、反応速度または反応性を増加させ得る吸着熱に起因するシステムまたはシステムの個々の構成要素(容器、試薬ガス、および吸着剤媒体)の圧力および温度のスパイクを防止すると考えられているためである。より詳細には、貯蔵容器を所定の最大注入容量の試薬ガスで直接注入することは、吸着剤および試薬ガスの著しい吸着加熱を引き起こし、目標よりもはるかに高い容器の内部圧力のかなり急速な増加をもたらし、吸着剤が冷却されて吸着容量が戻るにつれて最終的に低下する。貯蔵容器を低い注入速度および遅い速度を使用することによって、貯蔵容器内の温度、圧力、またはその両方の急速な増加(スパイク)を回避または最小限にすることができる。容器内の吸着剤および試薬ガスの温度、圧力、またはその両方の過度の上昇を回避することにより、試薬ガスが貯蔵容器内部に添加されている間に、試薬ガス、容器、および媒体(吸着剤)の間の反応の程度を制御または低減することができる。
【0070】
図1のシステム100などのシステムを使用して、または図1に示す個々の注入ステーション(例えば、110a)を使用して、試薬ガスを受容容器に流れ込ませる注入ステップは、試薬ガスを容器に(所望の内圧まで)添加することと、容器内への試薬ガスの流れが停止された後、所望の圧力で、容器を静止させて、容器の内部圧力が(試薬ガスが吸着剤に吸着または吸着剤から脱着することによって)平衡に達することを可能にすることと、平衡を達成した後、容器内部から、例えば容器内部のヘッドスペースから一定量の試薬ガスを除去する(パージする)ことにより、容器内部の圧力が低下することとを含むサイクルで行ってもよい。パージ後、容器は、内部の試薬ガスの低減した量および圧力との第2の(調整された)平衡に達することができる。
【0071】
例示的な方法によれば、図1を参照すると、導管が最初に試薬ガス源からの試薬ガスを含み、試薬ガス源へのバルブ(140a、140b、140c、または140d)が開いている状態で、注入ステーション(例えば、110a)の導管(例えば、114a)は、導管114a内に画定された空間の体積以上の量(体積基準)で、バルブ130aを通る試薬ガスの放出によって最初にパージされる場合がある。次いで、試薬ガス(例えば、122)は、低圧で遅く、試薬ガス源(例えば、112a)から導管(例えば、114a)を通って、吸着剤を収容し、所望の設定点温度、例えば、設定点温度より1℃上以内または1℃下以内に正確に維持される受容容器(例えば、116a)に流れ込む。容器内部での圧力上昇速度が遅い注入速度(受容容器への試薬ガスの速度)は、注入ステップ中の容器内の温度および圧力(すなわち、温度または圧力「スパイク」)の急速な上昇を回避することによって、試薬ガス、容器、および吸着剤媒体の間の反応性レベルが低減する可能性があるため、受容容器に放出される大気不純物の減少をもたらす可能性がある。
【0072】
例示的な方法では、試薬ガスは、貯蔵容器の使用圧力(別名「目標圧力」または「最終注入圧力」)、すなわち、容器が容器の使用のための試薬ガスの量を含み、使用のために容器から試薬ガスを貯蔵、輸送、および選択的に放出するときの容器の初期圧力を超える量で受容容器に添加される。注入プロセスのこの初期段階で使用圧力よりも大きくてもよい容器の内圧は、試薬ガスで注入されたときに容器の貯蔵、輸送、および使用中に容器が遭遇する最大圧力、またはその圧力より低く使用圧力より高い圧力であると予想される圧力である場合がある。準大気圧の試薬ガスを収容するように設計された容器の場合、説明したように過剰量の試薬ガスが添加された容器の内圧の例は、少なくとも760、1000、または1200Torrの圧力であり得る。例えば、650Torrの目標圧力(最終注入圧力)で、容器は最初に700Torr~1000Torrの範囲、例えば760Torrよりも大きい、または800Torrよりも大きい範囲で注入し、目標650Torrにポンプで戻す前に平衡化させてもよい。
【0073】
別の方法で測定すると、説明したように、過剰量の試薬ガスが添加された(試薬ガスの準大気圧貯蔵用に設計された)容器の内圧の例は、目標圧力(「使用圧力」)よりも少なくとも10、20、または50%高い圧力であり得る。例えば、容器が使用中に760Torrの圧力で試薬ガスを収容する場合(「使用圧力」とは、試薬ガスの貯蔵、輸送および選択的送達のために容器が試薬ガスで満たされているときの容器の圧力を意味する)、容器はこのステップで過剰な試薬ガスで注入されて、760Torrの「使用圧力」よりも10、20、または50%大きい内圧、すなわち、それぞれ836Torr、912Torr、または1,140Torrの内圧を達成することができる。
【0074】
過剰量の試薬ガスを添加した後、容器を平衡化し、これは、吸着剤に吸着された試薬ガスの量と、容器のヘッドスペース容積内のガスとして存在するガス状試薬ガスの量とが熱力学的平衡になることを意味する。過剰量の試薬ガスを添加した後、容器は、平衡を達成するのに十分な時間にわたって(例えば、一定温度で)保持され、ヘッドスペース内のガスとして収容されるガス状試薬ガスは、吸着剤からヘッドスペースのガス状試薬ガスに移動したある量の大気不純物を潜在的に含む。次いで、ヘッドスペース内の試薬ガスは、含まれる不純物と共に、不純物を除去し、容器をより低い試薬ガス含有量およびより低い圧力、例えば試薬ガス含有量および容器内の試薬ガスを輸送および貯蔵する目的で意図されるような初期圧力、例えば「目標圧力」または「使用圧力」にするために、容器から放出することができる。
【0075】
過剰量の試薬ガスを添加した後に記載された平衡に達するのに必要な時間は、吸着剤の種類、試薬ガスの種類、容器の総容積および容器内のヘッドスペースの容積に対する吸着剤の量、容器に添加される試薬ガスの量、容器内部の圧力などの要因に応じて異なり得る。試薬ガスを記載された過剰圧力に添加し、ある量の試薬ガスを不純物と共に放出した後の例示的な時間は、30分~1000時間、例えば1時間~500時間、例えば2時間~100時間などの範囲の時間であり得る。
【0076】
さらに他の代替または追加の手段は、ガス取り扱いおよび注入装置(例えば、ガス取り扱い注入マニホールド)の大気ガス、例えば周囲雰囲気(システムの直近の環境に存在する「室内空気」)への曝露を制御することによって、注入中に試薬ガスに導入され得る大気中の夾雑物の量を制御するのに有用であり得る。これらの手段は、図1のシステムの出口(例えば、出口134a、b、c、またはd)に配置されたチェックバルブを含むことができる。チェックバルブは、貯蔵容器が出口の位置で取り外されるかまたは交換される(システムと係合または係合解除される)ときに、周囲雰囲気(室内空気)の注入システムの管路への逆向きの流れ(または「逆流」)を効果的に防止することができる。
【0077】
代替的または追加的に、注入システムの導管または他の構成要素を通る不活性ガスの低レベルの流れ(「トリクルパージ」)を維持することは、ガス取り扱いシステム内で封止が破られたときはいつでも、例えば、システムの内部空間(例えば、導管)が周囲空気または「室内空気」に流体的に曝露されたときはいつでも維持することができる。このようにして、不活性ガスは、導管およびシステムの他の流れ制御構造を通って連続的に掃引し、任意の開口部で管路に戻る雰囲気(室内空気)の拡散を最小限に抑える。例えば、50sccm以上の超高純度窒素の流れ、または25sccmの純ヘリウムの流れを使用して、システムの内部位置への空気の侵入を最小限に抑えることができる。
【0078】
任意選択的または追加的に、ガス注入システムおよび送達マニホールド(出口)によって取り扱われる試薬ガスは、吸着剤が注入された受容貯蔵容器に侵入する直前にインラインガス精製器を通過することができる。このようにして、システム(例えば、導管、制御装置など)に導入された可能性のある夾雑物(大気不純物)は、試薬ガスが容器に入る前にppb(10億分率)レベルまで除去することができる。そのような使用時点精製器は、当業者によって取り扱われる特定の試薬ガスのために設計することができる。そのような精製器は、注入時点で夾雑物、例えば大気不純物を選択的に除去するために、高度に選択的な吸着剤または分子ふるい材料で注入することができる。
【0079】
試薬ガスを容器に添加するとき、または試薬ガスが注入ステーションに導入されるとき、試薬ガスは、不純物として非常に少量の大気ガスを含むことができることを含めて、高純度状態にあり得る。
【0080】
水素化物試薬ガスの例は、(吸着剤を収容する)貯蔵容器に最初に装填されたとき、または注入ステーションの原料として(例えば、図1の試薬ガス源112aに収容されるように)含まれたとき、個別に測定された窒素(N)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、メタン(CH)、および水蒸気(HO)の各々について約2ppmv未満のレベルの大気不純物を含むことができる。試薬ガスは、窒素(N)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、メタン(CH)、および水蒸気(HO)の総量5ppmv未満を含み得る。好ましい水素化物ガス源は、これらの個々の大気不純物の各々より低レベル、例えば、1ppmv未満、または0.5ppmvもしくは0.2ppmv未満である個々の列挙された不純物の各々の最大量を含み得る。好ましい水素化物ガス源は、1ppmv未満、または0.5ppmvもしくは0.2ppmv未満であるこれらの不純物の総量(合計)を含み得る。
【0081】
これらの不純物の有用な、許容される、または好ましい量は、個別にまたは全体として、試薬ガスとしてのフッ化物ガスについて異なり得る。フッ化物試薬ガスの場合、貯蔵容器に収容された吸着剤に装填されたとき、または注入ステーション(例えば、図1の112)の試薬源として、個々の大気不純物の各々の最大量は、好ましくは、個別に測定された窒素(N)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、メタン(CH)、および水蒸気(HO)の各々について約10ppmv未満であり得る。試薬ガスは、窒素(N)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、メタン(CH)および水蒸気(HO)の総量50ppmv未満を含み得る。好ましいフッ化物ガス源は、これらの個々の大気不純物の各々より低レベル、例えば、2ppmv未満、例えば1ppmv未満である、列挙された個々の不純物の各々の最大量を含み得る。好ましいフッ化物ガス源は、4ppmv未満、または3ppmvもしくは2.5ppmv未満のこれらの大気不純物の総量(合計)を含み得る。
【0082】
試薬ガスが容器に添加される前、または試薬ガスが容器に装填するための注入ステーション(例えば、試薬ガス源112に収容されるように、)に導入されるときの試薬ガス中の個々の大気不純物の量およびすべての(合計)大気不純物の量は、容器内の吸着剤での吸着および脱着後、および貯蔵容器からの試薬ガスの送達時に試薬ガス中に存在する量よりも低くなる。試薬ガスの取り扱い、処理、移動、およびパッケージのプロセス中に、追加の大気不純物が試薬ガスに導入されて、パッケージされた試薬ガスの供給を生じさせる。
【0083】
本明細書の方法、技術、および装置により、試薬ガスが貯蔵容器に(例えば、試薬ガスが図1の注入ステーション110aの試薬ガス源112aに収容されてから)添加される時点またはその前の時点から、試薬ガスが(貯蔵のために)容器に収容され、容器から使用のために選択的に送達される時点までの間などの注入ステップ中に試薬ガスが曝露される大気不純物の量を低減または最小限にすることを試みる。本明細書では、貯蔵容器から選択的に送達された試薬ガスに含まれる大気不純物の量は、容器内での貯蔵後に、容器自体から、吸着剤から、および試薬ガスのバルクガス源(例えば、図1の源112a、b、c、またはd)から試薬ガスを貯蔵し、輸送し、次いで使用のために選択的に放出することができる個々の貯蔵容器に試薬ガスを移送するために使用される装置および取り扱い技術から、低減されたまたは最小量のこれらの不純物を試薬ガスに提示するように設計された技術および装置を使用することによって低減することができることを認識している。
【0084】
図2は、本開示の流体供給システム(パッケージ)の斜視切欠図であり、吸着剤は、その上に流体(試薬ガス)を可逆的に貯蔵するための容器に収容されている。
【0085】
図示のように、流体供給システム210は、円筒形の側壁214と、側壁の底部の床部とを有する容器212を含む。側壁および床部は、吸着剤218が配置された容器の内部容積216を密閉している。吸着剤218は、所望の試薬ガスに対する吸着親和性を有し、容器からの排出(放出、分注)のための分注条件下で試薬ガスを脱着することができる種類のものである。容器212は、その上端部分においてキャップ220に接合されており、キャップは、その外周部分において平坦な特徴を有することができ、その上面において上方に延在するボス228に外接し得る。キャップ220は、流体分注システムの対応するねじ付き下部226を受容する中央ねじ開口部を有する。これらの特定の構造は、説明したような容器および説明したような供給システムに適しており、有用であるが、容器の他の代替的な構造および供給システムの関連する構造は、図2に示すものの代替として知られ、有用である。
【0086】
流体分注システム210は、バルブヘッド222を含み、バルブヘッドには、流体分注バルブ要素(図2には図示せず)が配置され、流体分注バルブ要素は、それに結合された手動操作ハンドホイール230の動作によって全開位置と全閉位置との間で並進可能である。流体分注システムは、バルブがハンドホイール230の操作によって開かれたときに容器から流体を分注するための出口ポート224を含む。ハンドホイール230の代わりに、流体分注システムは、流体分注システム内のバルブをバルブの全開位置と全閉位置との間で並進させるために空気圧で作動可能な空気圧バルブアクチュエータなどの自動バルブアクチュエータを備えてもよい。
【0087】
出口ポート224は、並進可能なバルブ要素を含む、バルブヘッド222内のバルブチャンバと連通する対応する管状延長部の開放端によって画定される。そのような管状延長部は、その外面にねじ込まれて、例えば集積回路または他のマイクロ電子装置などの半導体製造製品の製造に適合した試薬ガス利用ツール、またはソーラーパネルまたはフラットパネルディスプレイの製造に適合した試薬ガス利用ツールなど、下流の使用場所に分注された流体を送達するためのフロー回路への流体分注システムの結合に対応してもよい。ねじ付きの特徴の代わりに、管状延長部は、他の結合構造、例えば迅速継手で構成されてもよく、または使用場所への流体の分注に適合されてもよい。
【0088】
容器212の内部容積216の吸着剤218は、本明細書に記載の任意の適切な種類のものであってもよく、例えば、粉末、微粒子、ペレット、ビーズ、モノリス、錠剤、または他の適切なもしくは有用な形態の吸着剤であるか、それらを含み得る。吸着剤は、貯蔵および輸送条件の間に容器に貯蔵され、分注条件下で容器から選択的に分注される対象の試薬ガスに対する吸着親和性を有するように選択される。そのような分注条件は、例えば、吸着剤に吸着された形態で貯蔵されている流体(試薬ガス)の脱着、および流体分注システムを介した容器から出口ポート224および関連するフロー回路への流体(試薬ガス)の排出に対応するためのバルブヘッド222内のバルブ要素の開放を含み得、出口ポート224における圧力は、流体供給パッケージからの流体の圧力媒介脱着および排出を引き起こす。例えば、分注アセンブリは、そのような圧力媒介脱着および分注のために容器内部の圧力よりも低い圧力、例えば上述のフロー回路によって流体供給パッケージに結合された下流の試薬ガス利用ツールに適した準大気圧にあるフロー回路に結合されてもよい。
【0089】
あるいは、分注条件は、吸着剤218の加熱に関連してバルブヘッド222内のバルブ要素を開いて、流体供給パッケージから排出するための流体(試薬ガス)の熱媒介脱着を引き起こすことを含み得る。所望に応じて、任意の他の代替または追加の脱着媒介条件および技術、またはそのような条件および技術の任意の組み合わせも使用され得る。
【0090】
流体供給パッケージ210(吸着剤型貯蔵システム)は、任意の注入方法によって、準大気圧または超大気圧であり得る所望の圧力まで、吸着剤上に貯蔵するための流体を充填し得る。流体は、出口ポート224を通過して内部に注入し得る。あるいは、バルブヘッド222には、容器に充填するための別個の流体導入ポートが設けられてもよい。
【0091】
容器内の流体(試薬ガス)は、任意の適切な圧力条件で貯蔵され得る。流体貯蔵媒体として吸着剤を使用する利点は、流体を任意選択的に低圧、例えば準大気圧または低超大気圧で貯蔵され得、それによって高圧ガスシリンダと同様に、高圧で試薬ガスを貯蔵する流体供給パッケージに対する流体供給パッケージの安全性を高めることである。
【0092】
図2の流体供給パッケージは、パッケージされた試薬ガスのための効果的な貯蔵媒体を提供するために、本明細書に記載の任意の吸着剤と共に使用され得、そこから試薬ガスを特定の使用場所または特定の試薬ガス利用装置に供給するための分注条件下で試薬ガスを選択的に脱着する場合がある。試薬ガスは、製造プロセスにおいて試薬ガスを使用するために、分注条件で使用するために容器から送達されてもよい。このプロセスは、半導体材料またはマイクロ電子装置を処理するためのものであってもよく、例示的なプロセスには、とりわけ、イオン注入、エピタキシャル成長、プラズマエッチング、反応性イオンエッチング、メタライゼーション、物理蒸着、化学蒸着、原子層堆積、プラズマ堆積、フォトリソグラフィー、洗浄、およびドーピングが含まれる。
【0093】
試薬ガスは、半導体製品、フラットパネルディスプレイ、ソーラーパネル、またはそれらの構成要素もしくはサブアセンブリの製造プロセスで使用するために送達されるものであってもよい。試薬ガスは、シラン、ジシラン、ゲルマン、三フッ化ホウ素、ホスフィン、アルシン、ジボラン、アセチレン、四フッ化ゲルマニウム、四フッ化ケイ素、または別の有用な試薬ガスなど、これらのプロセスの1つの原料として有用な任意の種類の試薬ガスであり得る。試薬ガスはまた、とりわけ、四フッ化ゲルマニウムおよび水素ガス(H)、三フッ化ホウ素および水素ガスなどの2つ以上の異なるガスの組み合わせを含み得る。
【0094】
記載された有用で好ましい貯蔵システム、ならびに記載された貯蔵システムを調製するために使用される方法および装置によれば、記載された技術によって試薬ガスを収容するように調製された容器は、以前の市販の吸着剤型貯蔵システムと比較して、実質的により少ない量の大気不純物を含有するように試薬ガスを分注することができる。例えば、記載の有用な貯蔵システムは、窒素(N)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、メタン(CH)、および水蒸気(HO)の総量(合計)として測定して、150ppmv未満、例えば50ppmv未満、または25、15、または10ppmv未満の大気不純物の総量を含む試薬ガスを送達することができる。有用で好ましい貯蔵システムは、個々に測定されたこれらの大気不純物の各々が低レベルでもある試薬ガスを送達することができ、例えば、窒素(N)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、メタン(CH)、および水蒸気(HO)の各々が(個々に測定された)25、20、15、20、または5ppmv未満を含む試薬ガスを送達することができる。
【0095】
他の貯蔵システムと比較して比較的少量の大気不純物を含むように送達することができる記載されるような容器に貯蔵された試薬ガスは、それらの不純物のより低レベルに基づいて半導体処理装置(「ツール」)の性能を改善することができる。
【0096】
ツールに送達される試薬ガス中の特定の種類の不純物は、ツール内の試薬ガスの供給源間の最小限のまたは不注意な連通のために交差汚染を生じさせる可能性がある。記載のシステムおよび方法は、例えば、図1に示すような専用の注入ステーションを含む記載の注入システムを使用して処理および注入される貯蔵容器間の試薬ガス間の交差汚染を制御または最小限にすることができる。そのようなシステムは、注入された貯蔵容器間の異なる種類の試薬ガスの交差汚染の可能性を低減するのに有効である。このように交差汚染を制御または低減することにより、本明細書に記載の方法で貯蔵容器に注入および貯蔵された試薬ガスを使用するシステムの性能が改善される。
【0097】
注入された貯蔵容器間の試薬ガスの交差汚染の有害な影響の一例として、イオン注入に使用される所望の(異なる)試薬ガスの貯蔵容器内の1つの試薬ガスの交差汚染は、ビームスペクトル分析で明らかなように、プロセス、特に生成されるイオンビームの製造に有害な影響を及ぼす可能性がある。イオン注入装置のビームラインは、ツールへの湾曲経路を通る磁気加速を介して原子質量単位(amu)でイオン種を分離する。ビームは、注入のためにウェハ表面に特定の原子質量単位の種類を送達するように制御される。試薬ガス中の夾雑物(貯蔵システムを使用して注入された別の貯蔵容器からの交差夾雑物)が所望の種に原子質量単位においてあまりにも近い場合、夾雑物同位体種(例えば、炭素-12、12C)は、イオン注入ステップ中に所望の同位体種(例えば、ホウ素-11、11B)から分離されない可能性があり、汚染同位体種は、所望の同位体種と共にイオンビーム中に存在することになり、その後、意図せずにウェハに注入されることになる。原子質量単位が12の炭素は、原子質量単位が11のホウ素を送達するように調整されたビームにとって問題のある夾雑物であり得る。
図1
図2