(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20241216BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20241216BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
G03G15/20 510
G03G21/00 530
G03G15/16
(21)【出願番号】P 2020147593
(22)【出願日】2020-09-02
【審査請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2020019617
(32)【優先日】2020-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】尾花 陽光
(72)【発明者】
【氏名】古市 祐介
(72)【発明者】
【氏名】足立 知哉
【審査官】内藤 万紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-062024(JP,A)
【文献】特開2005-212975(JP,A)
【文献】特開平10-104890(JP,A)
【文献】特開平11-084781(JP,A)
【文献】特開2012-008454(JP,A)
【文献】特開2013-064842(JP,A)
【文献】特開2007-047558(JP,A)
【文献】特開平11-352840(JP,A)
【文献】特開2013-190627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/00
G03G 15/16
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記記録媒体に画像を定着させる定着装置と、
を備える画像形成装置であって、
前記定着装置は、前記記録媒体を加熱する加熱部材を備え、
前記加熱部材は、
記録媒体の搬送方向に対して直交する前記記録媒体の幅方向に配置される基材と、
発熱体と、
第1電極部と、
第2電極部と、
前記発熱体と前記第1電極部とを接続する第1導電経路と、
前記発熱体から前記記録媒体の幅方向のうちの第1方向に伸びて前記第2電極部に接続される第2導電経路と、
前記第2導電経路から分岐して前記第1方向とは反対の第2方向に伸びて前記第1導電経路を介さずに前記第2導電経路又は前記第2電極部に接続される第3導電経路と、
を有し、
前記定着装置によって前記記録媒体に画像が定着される前に前記記録媒体
の画像形成面とは反対の面を冷却する冷却手段を備え、
前記冷却手段は、前記記録媒体の幅方向中央側よりも少なくとも幅方向一端側で冷却能力が高い画像形成装置。
【請求項2】
前記冷却手段は、前記記録媒体に送風する送風手段を備える請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記冷却手段は、前記送風手段から前記記録媒体へエアを誘導する誘導路を備え、
前記記録媒体へエアを吹き出す前記誘導路の開口部は、前記記録媒体の幅方向中央よりも少なくとも幅方向一端に近い位置に配置される請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記冷却手段は、前記送風手段から前記記録媒体へエアを誘導する誘導路を備え、
前記記録媒体へエアを吹き出す前記誘導路の開口部が、前記記録媒体の幅方向中央側よりも少なくとも幅方向一端側で大きく形成される請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記記録媒体に画像を定着させる定着装置と、
を備える画像形成装置であって、
前記定着装置は、前記記録媒体を加熱する加熱部材を備え、
前記加熱部材は、
記録媒体の搬送方向に対して直交する前記記録媒体の幅方向に配置される基材と、
発熱体と、
第1電極部と、
第2電極部と、
前記発熱体と前記第1電極部とを接続する第1導電経路と、
前記発熱体から前記記録媒体の幅方向のうちの第1方向に伸びて前記第2電極部に接続される第2導電経路と、
前記第2導電経路から分岐して前記第1方向とは反対の第2方向に伸びて前記第1導電経路を介さずに前記第2導電経路又は前記第2電極部に接続される第3導電経路と、
を有し、
前記定着装置によって前記記録媒体に画像が定着される前に前記記録媒体を冷却する冷却手段を備え、
前記冷却手段は、前記記録媒体に接触して冷却する冷却部材を備え、
前記冷却手段は、前記記録媒体の幅方向中央側よりも少なくとも幅方向一端側で冷却能力が高い画像形成装置。
【請求項6】
前記冷却部材は、前記記録媒体の幅方向中央よりも少なくとも幅方向一端に近い位置で前記記録媒体に接触する請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記記録媒体に対する前記冷却部材の接触面は、前記記録媒体の幅方向中央側よりも少なくとも幅方向一端側で大きい請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記冷却部材は、前記記録媒体に画像を転写する転写部材である請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記転写部材は、無端状のベルト部材であり、
前記冷却手段は、前記ベルト部材に送風する送風手段を備える請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記冷却手段は、前記送風手段から転写ベルトへエアを誘導する誘導路を備え、
前記誘導路は、前記転写ベルトの内側に配置される請求項9に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機又はプリンタなどの画像形成装置として、トナーを用いて画像を形成する電子写真方式の画像形成装置が知られている。
【0003】
一般的に、電子写真方式の画像形成装置には、転写されたトナー画像を用紙に定着させる定着装置が搭載されている。定着装置は、用紙を加熱するヒータなどの加熱部材を備えている。用紙が定着装置を通過する際に、加熱部材によって用紙が加熱されると、用紙上のトナーが熱によって溶融することにより用紙に定着される。
【0004】
例えば、特許文献1(特開2016-62024号公報)には、長手状の基板に、発熱体及び電気接点、これらを電気的に接続する導体パターンなどが設けられた板状のヒータを備える定着装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような導体パターンが基板に設けられているヒータにおいては、発熱体を発熱させる際、導体パターンへの通電により導体パターンでもわずかながら発熱が生じる。このため、厳密には、ヒータ全体の発熱分布は、導体パターンの発熱の影響を受けることになる。
【0006】
従って、導体パターンの発熱分布によっては、それが原因でヒータの温度分布にばらつきが生じる場合がある。そして、そのような場合、加熱される記録媒体及び記録媒体上のトナーの温度にもばらつきが生じるため、画像の光沢度又は定着性に影響を与える懸念がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、記録媒体に画像を形成する画像形成部と、前記記録媒体に画像を定着させる定着装置と、を備える画像形成装置であって、前記定着装置は、前記記録媒体を加熱する加熱部材を備え、前記加熱部材は、記録媒体の搬送方向に対して直交する前記記録媒体の幅方向に配置される基材と、発熱体と、第1電極部と、第2電極部と、前記発熱体と前記第1電極部とを接続する第1導電経路と、前記発熱体から前記記録媒体の幅方向のうちの第1方向に伸びて前記第2電極部に接続される第2導電経路と、前記第2導電経路から分岐して前記第1方向とは反対の第2方向に伸びて前記第1導電経路を介さずに前記第2導電経路又は前記第2電極部に接続される第3導電経路と、を有し、前記定着装置によって前記記録媒体に画像が定着される前に前記記録媒体の画像形成面とは反対の面を冷却する冷却手段を備え、前記冷却手段は、前記記録媒体の幅方向中央側よりも少なくとも幅方向一端側で冷却能力が高いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、記録媒体が加熱されたときの記録媒体の温度のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図2】本実施形態に係る定着装置の概略構成図である。
【
図5】前記定着装置が備える加熱ユニットの斜視図である。
【
図9】前記ヒータにコネクタが接続された状態を示す斜視図である。
【
図11】全ての抵抗発熱体を発熱させた場合のブロックごとの給電線の発熱量を示す図である。
【
図12】一部の発熱部のみを発熱させた場合のブロックごとの給電線の発熱量を示す図である。
【
図13】用紙を冷却する冷却手段として送風ファンを用いた例を示す図である。
【
図14】送風ファンと用紙との位置関係を示す図である。
【
図15】送風ファンとヒータとの位置関係を示す図である。
【
図16】送風ファンからのエアを誘導するダクトを設けた例を示す図である。
【
図17】ダクトの開口部と用紙との位置関係を示す図である。
【
図18】ダクトの開口部とヒータとの位置関係を示す図である。
【
図19】ダクトの開口部の大きさを左右で異ならせた例を示す図である。
【
図20】ダクトの開口部を用紙の幅方向中央を含む3箇所以上に設けた例を示す図である。
【
図21】ダクトの開口部を用紙の幅方向中央から両端に渡って連続して設けた例を示す図である。
【
図22】前記冷却手段として冷却ローラを用いた例を示す図である。
【
図23】冷却ローラと用紙との位置関係を示す図である。
【
図24】冷却ローラとヒータとの位置関係を示す図である。
【
図25】前記冷却手段として冷却ガイドを用いた例を示す図である。
【
図27】冷却ガイドの接触面と用紙との位置関係を示す図である。
【
図28】冷却ガイドの接触面とヒータとの位置関係を示す図である。
【
図29】冷却ガイドの接触面の大きさを用紙幅方向に渡って異ならせた例を示す図である。
【
図30】前記冷却手段として中間転写ベルトを用いた例を示す図である。
【
図31】中間転写ベルト内に配置されたダクトの断面図である。
【
図32】中間転写ベルトを冷却する好ましい位置を説明するための図である。
【
図33】中間転写ベルトに対する感光体の他の配置例を示す図である。
【
図34】ダクト内の流路を仕切り板などによって2分割した例を示す図である。
【
図35】小型化されたヒータを説明するための図である。
【
図39】さらに別の定着装置の構成を示す図である。
【
図40】本発明を直接転写式の画像形成装置に適用した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材又は構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【0012】
図1に示す画像形成装置100は、画像形成部200と、転写部300と、定着部400と、記録媒体供給部500と、記録媒体排出部600と、を備えている。
【0013】
画像形成部200には、4つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkと、露光装置6と、が設けられている。各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、画像形成装置本体に対して着脱可能に構成されている。また、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの異なる色の現像剤を収容している以外、基本的に同様の構成である。具体的に、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、表面に画像を担持する像担持体である感光体2と、感光体2の表面を帯電させる帯電手段である帯電ローラ3と、感光体2上にトナー画像を形成する現像手段である現像装置4と、感光体2の表面をクリーニングするクリーニング手段であるクリーニングブレード5と、を備えている。また、露光装置6は、画像情報に基づいて感光体2の帯電面を露光して静電潜像を形成する手段(書き込み手段)である。
【0014】
転写部300には、記録媒体である用紙に画像を転写する転写装置8が設けられている。なお、画像が形成(転写)される記録媒体は、紙(普通紙、厚紙、薄紙、コート紙、ラベル紙、封筒などを含む)のほか、OHPシートなどの樹脂製のシートであってもよい。転写装置8は、中間転写ベルト11と、4つの一次転写ローラ12と、二次転写ローラ13と、を有している。中間転写ベルト11は、表面に画像を担持してその画像を用紙に転写する転写部材であり、無端状のベルト部材で構成されている。各一次転写ローラ12は、中間転写ベルト11を介してそれぞれ別の感光体2に接触している。これにより、中間転写ベルト11と各感光体2との間に、中間転写ベルト11と各感光体2とが接触する一次転写ニップが形成されている。一方、二次転写ローラ13は、中間転写ベルト11を介して中間転写ベルト11を張架する複数のローラの1つに接触し、中間転写ベルト11との間に二次転写ニップを形成している。
【0015】
定着部400には、用紙に画像を定着させる定着装置9が設けられている。定着装置9の構成については後で詳しく説明する。
【0016】
記録媒体供給部500には、用紙Pを収容する給紙カセット14と、給紙カセット14から用紙Pを送り出す給紙ローラ15と、が設けられている。
【0017】
記録媒体排出部600には、用紙を画像形成装置外に排出する一対の排紙ローラ17と、排紙ローラ17によって排出された用紙を載置する排紙トレイ18と、が設けられている。
【0018】
次に、
図1を参照しつつ本実施形態に係る画像形成装置100の印刷動作について説明する。
【0019】
印刷動作開始の指示があると、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkの感光体2、及び中間転写ベルト11が回転を開始する。また、給紙ローラ15が回転することにより、給紙カセット14から用紙Pが送り出される。送り出された用紙Pは、一対のタイミングローラ16に接触して一旦停止される。
【0020】
各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkでは、まず、帯電ローラ3によって感光体2の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント画像情報に基づいて、露光装置6が各感光体2の表面(帯電面)に露光する。これにより、露光された部分の電位が低下して各感光体2の表面に静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置4からトナーが供給され、各感光体2上にトナー画像が形成される。各感光体2上に形成されたトナー画像は、各感光体2の回転に伴って一次転写ニップ(一次転写ローラ12の位置)に達すると、回転する中間転写ベルト11上に順次重なり合うように転写される。かくして、中間転写ベルト11上にフルカラーのトナー画像が形成される。また、感光体2から中間転写ベルト11へトナー画像が転写された後、各感光体2上に残留するトナーはクリーニングブレード5によって除去される。
【0021】
中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト11の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ13の位置)へ搬送され、タイミングローラ16によって搬送されてきた用紙P上に転写される。そして、トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置9へと搬送され、定着装置9によって用紙Pにトナー画像が定着される。その後、用紙Pは排紙ローラ17によって排紙トレイ18へ排出され、一連の印刷動作が完了する。
【0022】
以上の印刷動作の説明は、フルカラー画像を形成するときの動作についてであるが、4つの作像ユニットのうち、いずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つの作像ユニットを使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0023】
続いて、本実施形態に係る定着装置9の構成について説明する。
【0024】
図2に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、定着ベルト20と、加圧ローラ21と、ヒータ22と、ヒータホルダ23と、ステー24と、温度センサ19と、を備えている。
【0025】
定着ベルト20は、用紙Pの未定着トナー担持面側(画像形成面側)に配置される回転部材であって、未定着トナーを用紙Pに定着させる定着部材である。定着ベルト20は、例えば、外径が25mmで厚みが40~120μmの筒状基体を有する無端状のベルト部材で構成される。基体の材料は、ポリイミドのほか、PEEKなどの耐熱性樹脂又はニッケル、あるいはSUSなどの金属材料であってもよい。また、耐久性を高めると共に離型性を確保するため、基体の外周面に、PFA又はPTFEなどのフッ素樹脂から成る離型層が設けられてもよい。また、基体と離型層との間に、ゴムなどから成る弾性層が設けられてもよい。さらに、基体の内周面に、ポリイミド又はPTFEなどから成る摺動層が設けられてもよい。
【0026】
加圧ローラ21は、定着ベルト20の外周面に対向するように配置された対向部材である。また、加圧ローラ21は、定着ベルト20の外周面に圧接されて、定着ベルト20との間にニップ部Nを形成する加圧部材でもある。加圧ローラ21は、例えば、外径が25mmであって、鉄製の芯金と、この芯金の外周面に設けられたシリコーンゴム製の弾性層と、弾性層の外周面に設けられたフッ素樹脂製の離型層とを有するローラなどにより構成される。
【0027】
ヒータ22は、定着ベルト20の内側に配置され、定着ベルト20及び定着ベルト20を介して用紙を加熱する加熱部材である。本実施形態では、ヒータ22が、板状の基材50と、基材50上に設けられた第1絶縁層51と、第1絶縁層51上に設けられた導体層52と、導体層52を被覆する第2絶縁層53と、により構成されている。導体層52は、発熱部60を有している。
【0028】
基材50は、例えば、ステンレス(SUS)、鉄、又はアルミニウム等の金属材料で構成される。また、基材50の材料として、金属材料のほか、セラミック、ガラス等を用いることも可能である。基材50にセラミックなどの絶縁材料を用いた場合は、基材50と導体層52との間の第1絶縁層51を省略することが可能である。一方、金属材料は、急速加熱に対する耐久性に優れ、加工もしやすいため、低コスト化を図るのに好適である。金属材料の中でも、特にアルミニウム又は銅は熱伝導性が高く、温度ムラが発生しにくい点で好ましい。また、ステンレスはこれらに比べて安価に製造できる利点がある。
【0029】
各絶縁層51,53は、例えば、耐熱性ガラスなどの絶縁性を有する材料で構成される。また、これらの材料として、セラミックあるいはポリイミドなどを用いてもよい。また、基材50の第1絶縁層51及び第2絶縁層53が設けられる面とは反対側の面に、別途絶縁層が設けられてもよい。
【0030】
本実施形態では、発熱部60が基材50よりもニップ部N側に配置されているが、これとは反対に、基材50が発熱部60よりもニップ部N側に配置されてもよい。ただしその場合は、発熱部60の熱が基材50を介して定着ベルト20に伝達されることになるため、基材50は窒化アルミニウムなどの熱伝導率の高い材料で構成されることが望ましい。
【0031】
また、本実施形態では、ヒータ22から定着ベルト20への熱伝達効率を高めるため、ヒータ22が定着ベルト20の内周面に対して直接接触するように配置されている。また、これに限らず、ヒータ22は、定着ベルト20に対して、非接触、あるいは低摩擦シートなどを介して間接的に接触するように配置されてもよい。また、定着ベルト20に対するヒータ22の接触箇所は、定着ベルト20の外周面であってもよい。ただし、定着ベルト20の外周面の傷付きによる定着品質の低下を回避するため、ヒータ22が接触する面は、定着ベルト20の内周面であることが望ましい。
【0032】
ヒータホルダ23は、定着ベルト20の内側でヒータ22を保持する保持部材である。ヒータホルダ23は、ヒータ22の熱によって高温になりやすいため、耐熱性の材料で構成されることが望ましい。特に、ヒータホルダ23が、LCP又はPEEKなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂で構成される場合は、ヒータホルダ23の耐熱性を確保しつつ、ヒータ22からヒータホルダ23への伝熱が抑制されるので、効率的に定着ベルト20を加熱することが可能である。
【0033】
ステー24は、定着ベルト20の内側に配置される補強部材である。ステー24によってヒータホルダ23のニップ部N側の面とは反対の面が支持されることにより、ヒータホルダ23が加圧ローラ21の加圧力によって撓むのが抑制される。これにより、定着ベルト20と加圧ローラ21との間に均一な幅のニップ部Nが形成される。ステー24は、その剛性を確保するため、SUS又はSECCなどの鉄系金属材料によって形成されることが好ましい。
【0034】
温度センサ19は、ヒータ22の温度を検知する温度検知手段である。温度センサ19の検知結果に基づいてヒータ22の出力が制御されることにより、定着ベルト20の温度が所望の温度(定着温度)となるように維持される。温度センサ19は、接触型又は非接触型のいずれでもよい。例えば、温度センサ19として、サーモパイル、サーモスタット、サーミスタ、又はNCセンサなどの公知の温度センサを適用可能である。
【0035】
本実施形態に係る定着装置9においては、印刷動作が開始されると、ヒータ22に電力が供給されることにより、発熱部60が発熱し、定着ベルト20が加熱される。また、加圧ローラ21が回転駆動され、定着ベルト20が従動回転を開始する。そして、定着ベルト20の温度が所定の目標温度(定着温度)に到達した状態で、
図2に示すように、未定着トナー画像が担持された用紙Pが、定着ベルト20と加圧ローラ21との間(ニップ部N)に搬送されることにより、未定着トナーが加熱及び加圧されてトナー画像が用紙Pに定着される。
【0036】
図3は、本実施形態に係る定着装置9の斜視図、
図4は、その分解斜視図である。
【0037】
図3及び
図4に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、矩形の枠状に形成された装置フレーム40を備えている。装置フレーム40は、一対の側壁部28及び前壁部27を一体に有する第1装置フレーム25と、後壁部29を有する第2装置フレーム26と、によって構成されている。第1装置フレーム25と第2装置フレーム26は、一対の側壁部28に設けられた複数の係合突起28aが後壁部29に設けられた複数の係合孔29aに係合することにより組み付けられる。
【0038】
定着ベルト20及び加圧ローラ21は、一対の側壁部28によって支持される。このため、各側壁部28には、加圧ローラ21の回転軸などを挿通させるための挿通溝28bが設けられている。挿通溝28bは、その一端側(後壁部29側)で開口し、これとは反対側の端では開口しない突き当て部が形成されている。この突き当て部には、加圧ローラ21の回転軸を回転可能に支持する軸受30が設けられている。加圧ローラ21が各側壁部28によって支持された状態では、加圧ローラ21の軸方向の一端に設けられた駆動伝達部材としての駆動伝達ギヤ31が、側壁部28よりも外側に露出した状態で配置される。これにより、定着装置9が画像形成装置本体に搭載されると、駆動伝達ギヤ31が画像形成装置本体に設けられているギヤに連結され、駆動源からの駆動力を伝達可能な状態となる。また、駆動伝達ギヤ31に代えて、駆動伝達ベルトを張架するプーリ又はカップリング機構などの駆動伝達部材を用いてもよい。
【0039】
定着ベルト20の長手方向の両端には、定着ベルト20及びステー24などを支持する一対の支持部材32が設けられている。各支持部材32には、ガイド溝32aが形成されている。
図4に示すように、一対の支持部材32と、定着ベルト20、ステー24、ヒータホルダ23、及びヒータ22を組み付けた状態で、各支持部材32のガイド溝32aを各側壁部28の挿通溝28bの縁に沿わせながら各支持部材32を各側壁部28に組み付けることにより、定着ベルト20、ステー24、ヒータホルダ23及びヒータ22が、各側壁部28に支持される。また、各支持部材32が、後壁部29との間に設けられた付勢部材としての一対のバネ33によって付勢されることにより、定着ベルト20が加圧ローラ21へ加圧され、ニップ部が形成される。
【0040】
また、後壁部29には、画像形成装置本体に対する定着装置本体の位置決めを行う位置決め部としての孔部29bが設けられている。一方、画像形成装置本体には、位置決め部としての突起101(
図4参照)が設けられている。この突起101が、定着装置9の孔部29bに対して挿入されることで、突起101と孔部29bが嵌合し、画像形成装置本体に対する定着装置本体の位置決めがなされる。なお、孔部29bが設けられる位置は、後壁部29の長手方向の中央よりもいずれか一方の端寄りの位置であることが好ましい。このような位置に孔部29bが設けられることにより、孔部29bが設けられない端側では、温度変化に伴う長手方向の伸縮が許容され、装置フレーム40の歪を抑制することが可能である。
【0041】
図5は、ヒータ22などを一対の支持部材32によって支持した加熱ユニットの斜視図、
図6は、その加熱ユニットの分解斜視図である。
【0042】
図5に示すように、ヒータ22及びヒータホルダ23は、
図5の左右方向へ長く伸びる長手状の部材である。ヒータ22及びヒータホルダ23は、定着装置に組み込まれ、定着装置が画像形成装置に搭載された状態で、ヒータ22及びヒータホルダ23の長手方向が定着装置を通過する用紙Pの幅方向U(以下、「記録媒体幅方向」という場合がある。)となるように配置される。また、
図6に示すように、ヒータ22及びヒータホルダ23と同様にステー24も、記録媒体幅方向Uへ長手状に配置される。なお、用紙Pの幅方向Uは、用紙Pの搬送方向に対して直交する方向である。また、本明細書中でいう「記録媒体幅方向」、「ヒータの長手方向」、「基材の長手方向」、「定着ベルトの長手方向」、及び「排紙トレイの幅方向」は、いずれも同じ方向を意味する。
【0043】
図5及び
図6に示すように、ヒータホルダ23には、ヒータ22を収容するための矩形の収容凹部23aが設けられている。収容凹部23aは、ヒータ22とほぼ同等の形状及びサイズに形成されている。ただし、収容凹部23aの長手方向寸法L2はヒータ22の長手方向寸法L1よりも若干長く設定されている。このため、熱膨張によってヒータ22がその長手方向に伸びても、ヒータ22と収容凹部23aとの干渉を回避できる。
【0044】
一対の支持部材32は、定着ベルト20の内側に挿入されて定着ベルト20を支持するC字状のベルト支持部32bと、定着ベルト20の端面に接触して定着ベルト20の長手方向の移動(片寄り)を規制するフランジ状のベルト規制部32cと、ヒータホルダ23及びステー24の長手方向の両端近傍部分が挿入されてこれらを支持する支持凹部32dと、を有している。定着ベルト20は、その長手方向の両端にベルト支持部32bが挿入されることで、ベルト非回転時において基本的に周方向(ベルト回転方向)の張力が作用しない、いわゆるフリーベルト方式で支持される。
【0045】
また、
図5及び
図6に示すように、ヒータホルダ23の長手方向の中央よりも一端側には、位置決め部としての位置決め凹部23eが設けられている。この位置決め凹部23eに対して、
図5及び
図6における左側の支持部材32の嵌合部32eが嵌合することにより、ヒータホルダ23と支持部材32との位置決めがなされる。一方、
図5及び
図6における右側の支持部材32には、嵌合部32eは設けられておらず、ヒータホルダ23との長手方向の位置決めはされない。このように、支持部材32に対するヒータホルダ23の位置決めをヒータホルダ23の長手方向の片側のみとすることで、温度変化に伴うヒータホルダ23の長手方向の伸縮が許容される。
【0046】
また、
図6に示すように、ステー24の長手方向の両端近傍部分には、各支持部材32に対するステー24の移動を規制する段差部24aが設けられている。各段差部24aは支持部材32に突き当たることで支持部材32に対するステー24の長手方向の移動を規制する。ただし、これら段差部24aのうち少なくとも一方は、支持部材32に対して隙間(ガタ)を介して配置される。このように、少なくとも一方の段差部24aが支持部材32に対して隙間を介して配置されることにより、温度変化に伴うステー24の伸縮が許容される。
【0047】
図7は、本実施形態に係るヒータ22の平面図、
図8は、その分解斜視図である。
【0048】
図8に示すように、ヒータ22の基材50上には、第1絶縁層51を介して発熱部60を構成する複数の抵抗発熱体59が配置されている。各抵抗発熱体59は、上記記録媒体幅方向Uでもある基材50の長手方向Zに渡って一列に並んで配置されている。導体層52は、複数の抵抗発熱体59のほか、複数の電極部61と、複数の給電線(導電部)62と、が設けられている。各抵抗発熱体59は、複数の給電線62を介して複数の電極部61のいずれか2つに電気的に接続されている。
図7に示すように、各抵抗発熱体59の全体及び各給電線62の大部分は、第2絶縁層53によって覆われ、絶縁性が確保されている。また、各抵抗発熱体59は、互いに間隔をあけて配列されているため、隣り合う抵抗発熱体59同士の間は絶縁領域(第2絶縁層53)が介在している。一方、各電極部61は、後述のコネクタが接続できるように、第2絶縁層53によってほとんど覆われておらず露出した状態となっている。
【0049】
抵抗発熱体59は、例えば、銀パラジウム(AgPd)又はガラス粉末などを調合したペーストをスクリーン印刷などにより基材50に塗工し、その後、当該基材50を焼成することによって形成することができる。また、抵抗発熱体59の材料として、銀合金(AgPt)又は酸化ルテニウム(RuO2)などの抵抗材料を用いてもよい。
【0050】
電極部61及び給電線62は、抵抗発熱体59よりも小さい抵抗値の導体で構成されている。例えば、電極部61及び給電線62は、銀(Ag)あるいは銀パラジウム(AgPd)などの材料を基材50上にスクリーン印刷することによって形成される。
【0051】
図9は、ヒータ22に給電部材としてのコネクタ70が接続された状態を示す斜視図である。
【0052】
図9に示すように、コネクタ70は、樹脂製のハウジング71と、ハウジング71に設けられた複数のコンタクト端子72と、を有している。各コンタクト端子72は、板バネで構成されている。また、各コンタクト端子72には、給電用のハーネス73が接続されている。
【0053】
図9に示すように、コネクタ70は、ヒータ22及びヒータホルダ23を一緒に挟むようにして取り付けられる。これにより、ヒータ22及びヒータホルダ23は、コネクタ70によって一緒に保持される。また、この状態で、コネクタ70の各コンタクト端子72の先端(接触部72a)が、それぞれ対応する電極部61に弾性的に接触(圧接)することにより、各コンタクト端子72と各電極部61とが電気的に接続される。また、
図9に示すヒータ22の長手方向の端とは反対側の端にある電極部61に対しても、同様にコネクタ70が接続される。これにより、コネクタ70を介して画像形成装置に設けられた電源から発熱部60へ電力が供給可能な状態となる。
【0054】
以下、
図10に基づき、本実施形態に係るヒータ22の構成についてさらに詳しく説明する。
【0055】
図10に示すように、本実施形態に係るヒータ22には、7つの抵抗発熱体59A~59Gと、3つの電極部61A~61Cと、これらを接続する4つの給電線62A~62Dと、が設けられている。3つの電極部61A~61Cのうち、2つの電極部61A,61Cは、各抵抗発熱体59A~59Gよりも基材50の長手方向Zの一端側(
図10における左側)に配置され、残りの1つの電極部61Bは、各抵抗発熱体59A~59Gよりも基材50の長手方向Zの他端側(
図10における右側)に配置されている。各抵抗発熱体59A~59Gは、一端側に配置される2つの電極部61A,61Cのうちのいずれかと、他端側に配置される1つの電極部61Bに対して、電気的に接続されている。
【0056】
詳しくは、7つの抵抗発熱体59A~59Gのうち、両端以外の各抵抗発熱体59B~59Fは、第1給電線62Aを介して第1電極部61Aに並列に接続されると共に、第2給電線62Bを介して第2電極部61Bに並列に接続されている。一方、両端の各抵抗発熱体59A,59Gは、第3給電線62C又は第4給電線62Dを介して第3電極部61Cに並列に接続されると共に、第2給電線62Bを介して第2電極部61Bに並列に接続されている。
【0057】
このような接続構造とすることで、本実施形態では、両端以外の各抵抗発熱体59B~59Fで構成される第1発熱部60Aと、両端の各抵抗発熱体59A,59Gで構成される第2発熱部60Bとを、互いに独立して発熱制御することが可能である。具体的に、第1電極部61A及び第2電極部61Bに電圧を印加して両電極部61A,61B間に電位差を生じさせた場合は、両端以外の各抵抗発熱体59B~59Fが通電し、第1発熱部60Aのみが発熱する。一方、第3電極部61C及び第2電極部61Bに電圧を印加して両電極部61C,61B間に電位差を生じさせた場合は、両端の各抵抗発熱体59A,59Gが通電するため、第2の発熱部60Bのみが発熱する。また、全ての電極部61A~61Cに電圧を印加して第1電極部61Aと第2電極部61の間及び第3電極部61Cと第2電極部61Bの間でそれぞれ電位差を生じさせた場合は、全ての抵抗発熱体59A~59Gが通電するため、第1の発熱部60A及び第2の発熱部60Bの両方が発熱する。例えば、A4サイズ(通紙幅:210mm)以下の比較的小さい幅サイズの用紙を通紙する場合は、第1の発熱部60Aのみを発熱させ、A3サイズ(通紙幅:297mm)以上の比較的大きい幅サイズの用紙を通紙する場合は、第1の発熱部60Aに加え第2の発熱部60Bも発熱させることで、用紙幅に応じた発熱領域とすることが可能である。
【0058】
ここで、本実施形態に係るヒータ22に生じる温度のばらつき(温度分布偏差)について説明する。
【0059】
一般的に、上記のような抵抗発熱体が給電線を介して電極部に接続されたヒータにおいては、抵抗発熱体を発熱させる際、給電線への通電により給電線でもわずかながら発熱が生じる。従って、給電線の発熱分布によっては、ヒータの温度分布にばらつきが生じる虞がある。特に、画像形成装置の高速化に伴い、発熱量を増大させるべく発熱体へ流れる電流を大きくすると、給電線で生じる発熱量も大きくなるため、その影響を無視できなくなる。
【0060】
図11では、全ての抵抗発熱体59A~59Gに対して電流が20%ずつ流れた場合に、抵抗発熱体59A~59Gごとに区画された各ブロック内で発生する各給電線62A,62B,62Dの発熱量とその合計値を示す。ここで、基材50の抵抗発熱体59が設けられている面に沿って長手方向Zと交差する方向Y(
図10参照)を、基材50の「短手方向」と称すると、本実施形態では、各給電線62A,62B,62Dの短手方向Yに伸びる部分は短く、その部分における発熱量はわずかであることから無視し、長手方向Zに伸びる部分で発生する発熱量のみを算出している。また、発熱量(W)は下記式(1)で表されることから、
図11の表に示す発熱量は、便宜的に各給電線に流れる電流(I)の二乗として算出している。よって、算出された発熱量の数値は、あくまで簡易的に算出された値であり、実際の発熱量とは異なるものである。
【0061】
【0062】
発熱量の算出方法について、
図11における第1ブロック及び第2ブロックを例に説明すると、第1ブロックにおいては、第1給電線62Aに流れる電流が100%、第4給電線62Dに流れる電流が20%であるので、それぞれの二乗の合計値である10400(10000+400)が第1ブロックにおける給電線の合計発熱量となる。また、第2ブロックにおいては、第1給電線62Aに流れる電流が80%、第2給電線62Bに流れる電流が20%、第4給電線62Dに流れる電流が20%であるので、これらの二乗の合計値である7200(6400+400+400)が第2ブロックにおける給電線の合計発熱量となる。また、他のブロックにおいても、同様にして発熱量を算出している。
【0063】
そして、各ブロックの合計発熱量を縦軸に表したものが、
図11中のグラフである。このグラフを見てわかるように、各給電線の合計発熱量は、両端側のブロックで大きく、反対に中央側のブロックでは低くなる。また、中央に対して対称のブロック同士(例えば、第1ブロックと第7ブロック)における各給電線の合計発熱量も異なっている。このように、給電線の発熱分布には基材の長手方向Zに渡ってばらつきがあるため、このばらつきによってヒータの発熱分布にもばらつきが発生する。
【0064】
また、このような給電線の発熱に起因する温度のばらつきは、全ての抵抗発熱体を発熱させる場合(
図11に示す例)だけに限らず、一部の抵抗発熱体を発熱させる場合でも発生し得る。特に、ヒータの小型化又は画像形成装置の高速化に伴って、給電線に意図しない分流が生じた場合は、温度のばらつきが顕著となる虞がある。また、意図しない分流は、ヒータを短手方向に小型化すべく、給電線の幅をヒータの短手方向に小さくした結果、給電線の抵抗値が大きくなった場合、あるいは画像形成装置を高速化するため、抵抗発熱体の発熱量を増加させるべく、抵抗発熱体の抵抗値を小さくした場合に、発生しやすくなる。すなわち、小型化又は高速化に伴って給電線の抵抗値と抵抗発熱体の抵抗値とが相対的に接近した場合は、これまで通電しなかった経路にも通電し得る(意図しない分流が発生し得る)状態となる。
【0065】
例えば、
図12に示すように、両端以外の各抵抗発熱体59B~59F(第1発熱部60A)のみに通電した場合に、図の左から2番目の抵抗発熱体59Bを通過した電流の一部が、その先の第2給電線62Bの分岐部Xにて第2電極部61B側とは反対側(図の左側)にも流れる意図しない分流が発生することがある。分流した電流は、
図12における左端の抵抗発熱体59Aを通過し、さらに、第3給電線62C、第3電極部61C、第4給電線62Dを介して右端の抵抗発熱体59Gを通過した後、第2給電線62Bに合流する。
【0066】
このように、意図しない分流は、分岐部Xから
図12中の一点鎖線K3で示す経路を通って第2給電線62Bに至る。また、このような意図しない分流は、本実施形態に係るヒータ22のような、ヒータ22の導電経路が、両端以外の各抵抗発熱体59B~59F(第1発熱部60A)と第1電極部61Aとを接続する第1導電経路K1と、両端以外の各抵抗発熱体59B~59Fからヒータ22の長手方向(又は用紙の幅方向)のうちの第1方向S1(
図12における右方向)に伸びて第2電極部61Bに接続される第2導電経路K2と、第2導電経路K2から分岐して第1方向S1とは反対の第2方向S2(
図12における左方向)に伸びて第1導電経路K1を介さずに第2導電経路K2又は第2電極部61Bに接続される分第3導電経路K3と、を少なくとも有する構成であれば生じ得る。なお、本実施形態では、第3導電経路K3を構成する部分として、第2給電線62Bの一部(分岐部Xから
図12における左側の部分)と、第3給電線62Cと、第4給電線62Dのほか、両端の各抵抗発熱体59A,59G(第2発熱部60B)と、第3電極部61Cと、が含まれているが、第3導電経路K3が抵抗発熱体と電極部を含まない給電線のみの場合であっても、意図しない分流は生じる可能性がある。
【0067】
図12中の表及びグラフに、意図しない分流が発生した場合のブロックごとの各給電線62A,62B,62Dで生じる発熱量及びその合計値を示す。この例では、両端以外の各抵抗発熱体59B~59Fへ電流が20%ずつ均等に流れた場合に、そのうちの一部の電流が分岐部Xにおいて5%分流したとして、発熱させるブロック(第2ブロック~第6ブロック)ごとの各給電線62A,62B,62Dの発熱量を算出している。なお、発熱量の算出方法は、
図11に示す例で説明した方法と同様である。
【0068】
図12中の表及びグラフに示すように、この場合も、給電線の合計発熱量は、両端側のブロックで大きく、反対に中央側のブロックでは低くなり、ばらつきが発生する。ただし、
図12の場合は、
図11とは反対に、グラフの右側のブロックよりも左側のブロックの温度が高くなっている。なお、
図11及び
図12では、電流が一方向に流れる様子を示しているが、ヒータ22に流れる電流は直流でもよいし交流でもよい。
【0069】
以上のように、本実施形態に係る定着装置においては、ヒータ22の長手方向に渡って温度のばらつきが発生するため、加熱される用紙上のトナーの温度にもばらつきが発生する。その結果、画像の光沢度又は濃度にもばらつきが生じ、画質が低下する虞がある。
【0070】
そこで、本実施形態に係る画像形成装置においては、上記のようなヒータの温度分布のばらつきに起因する画像の光沢度又は濃度のばらつきを抑制するため、以下のような対策を講じている。
【0071】
図13は、用紙を冷却する冷却手段として送風ファン(送風手段)を用いた例を示す図である。
【0072】
図13に示すように、本実施形態に係る画像形成装置においては、用紙Pに画像が転写される転写位置A(二次転写ニップ)と用紙Pに画像が定着される定着位置B(定着ニップ)との間に、用紙Pを冷却する冷却手段として送風ファン35が設けられている。送風ファン35は、転写位置Aと定着位置Bとの間で用紙Pに対してエアを吹き付けて用紙Pを冷却する。このとき、吹き付けられるエアによって用紙P上の未定着トナーTが乱れないように、エアが吹き付けられる用紙Pの面は、未定着トナーTが付着する画像形成面とは反対の面であることが好ましい。
【0073】
また、
図14に示すように、送風ファン35は、図中の矢印V方向に搬送される用紙Pに対してその幅方向Uの両端eに対応する位置にそれぞれ設けられている。このため、各送風ファン35から用紙Pへ送風されると、吹き付けられたエアによって用紙Pの主に幅方向両端e及びその近傍部分が冷却される。これにより、用紙Pは、その幅方向中央m側よりも両端e側で温度が低くなるように冷却される。すなわち、用紙Pは、上述のヒータ22の温度分布(
図11、
図12参照)とは逆に、両端e側で温度が低くなるように冷却される。
【0074】
このように、本実施形態では、ヒータ22によって高い温度で加熱される用紙Pの幅方向両端e側が、あらかじめ温度が低くなるように冷却されることにより、用紙Pが定着位置B(定着ニップ)へ進入して加熱された際に、用紙Pの幅方向両端e側が幅方向中央m側よりも高い温度となるのを抑制することができる。これにより、用紙Pがその幅方向Uに渡って異なる温度で加熱されることによる画像の光沢度又は濃度のばらつきを抑制できるようになる。
【0075】
また、用紙Pの幅方向両端e側の温度を効果的に下げるため、送風ファン35は、用紙Pの幅方向中央mよりも幅方向両端eに近い位置に配置されていることが好ましい。より具体的には、送風ファン35の特に送風口35a(
図14参照)が、用紙Pの幅方向中央mよりも幅方向両端eに近い位置に配置されていることが好ましい。ここで、送風口35aが用紙Pの幅方向中央mよりも幅方向両端eに近い位置に配置されるとは、用紙Pの幅方向各端eから送風口35aの最も近い部分までの用紙幅方向Uの距離が、用紙Pの幅方向中央mから送風口35aの最も近い部分までの用紙幅方向Uの距離よりも短くなることをいう。例えば、
図14に示す例の場合、用紙Pの幅方向中央mから送風口35aの最も近い部分までの用紙幅方向Uの距離は、図中の距離βであるのに対して、用紙Pの各端eから送風口35aの最も近い部分までの用紙幅方向Uの距離は、送風口35aが用紙Pの各端eに対して重なるように配置されているため0である。
【0076】
また、送風ファン35の位置は、ヒータ22の温度分布に基づいて決定してもよい。例えば、上述の
図11に示す例の場合は、ヒータ22の長手方向一端側の第7ブロックで温度(合計発熱量)が最高となり、上述の
図12に示す例の場合は、反対側の第2ブロックで温度(合計発熱量)が最高となる。このため、いずれの場合においても、用紙Pの幅方向両端側で温度が高くなるのを抑制できるように、
図15に示すように、各送風ファン35の送風口35aを、ヒータ22を抵抗発熱体59A~59Gごとに分割した7つのブロックJ1~J7のうち、第2ブロックJ2及び第7ブロックJ7の少なくとも一方に対応する位置に配置するのが好ましい。
【0077】
また、ヒータ22のブロックJ1~J7ごとの発熱温度は、各ブロックJ1~J7内の抵抗発熱体59及び給電線62に流れる電流の合計値に対応するので、送風ファン35の送風口35aの位置を、各ブロックJ1~J7内に流れる電流の合計値に基づいて決定してもよい。すなわち、各ブロックJ1~J7内に流れる電流の合計値が最も大きいブロックに対応する位置に、送風口35aを配置することにより、用紙Pの幅方向両端e側で温度が高くなるのを抑制できる。
【0078】
また、
図11又は
図12に示す例のように、ヒータ22の発熱の仕方に応じてヒータ22の長手方向の一端側と他端側とで発熱温度が異なる場合は、各送風ファン35の風量(風速)を変更して冷却能力を調整できるようにしてもよい。この場合、発熱温度が高い端部側の送風ファン35の風量を、温度が低い端部側の送風ファン35の風量よりも多くすることにより、発熱温度の高い側での冷却能力を高め、用紙Pの温度のばらつきを抑制できる。
【0079】
また、送風ファン35は、用紙Pの幅方向の一端側のみに設けられていてもよい。例えば、
図11又は
図12に示す例のように、ヒータ22の長手方向の一端側と他端側とで温度が異なる場合、ヒータの温度が高い端側に対応する位置のみに、送風ファン35が設けられていてもよい。
【0080】
また、送風ファン35を用紙Pの近くに配置できない場合は、
図16に示す例のように、冷却手段が、送風ファン35のほか、送風ファン35から用紙Pへエアを誘導する誘導路としてのダクト36を備えていてもよい。この場合、
図17に示すように、ダクト36の開口部36aを、用紙Pの幅方向Uの両端eに対応する位置にそれぞれ配置することにより、送風ファン35からのエアを用紙Pの主に幅方向両端e及びその近傍部分に吹き付けることができる。これにより、用紙Pは、その幅方向両端e側で温度が低くなるように冷却されるので、用紙Pが定着装置9によって加熱された際に、用紙Pの幅方向両端e側が幅方向中央m側よりも高い温度となるのを抑制することができる。また、ダクト36を用いることにより、1つの送風ファン35から噴き出されるエアを用紙Pの幅方向両端eにそれぞれ振り分けることができるので、送風ファン35の設置数を減らすことができ、小型化及び低コスト化を図れる。
【0081】
また、用紙Pの幅方向両端e側の温度を効果的に下げるため、ダクト36の開口部36aは、用紙Pの幅方向中央mよりも幅方向両端eに近い位置に配置されていることが好ましい。すなわち、用紙Pの幅方向各端eからダクト36の開口部36aの最も近い部分までの用紙幅方向Uの距離が、用紙Pの幅方向中央mからダクト36の開口部36aの最も近い部分までの用紙幅方向Uの距離よりも短ければよい。
【0082】
また、上述の送風ファン35の位置と同様、ダクト36の開口部36aの位置も、ヒータ22の温度分布又は各ブロック内で流れる電流の合計値に基づいて決定されてもよい。例えば、
図18に示すように、ダクト36の各開口部36aが、
図11に示す例の場合に最も温度が高くなる(電流の合計値が最も大きい)第7ブロックJ7と、
図12に示す例の場合に最も温度が高くなる(電流の合計値が最も大きい)第2ブロックJ2に対応する位置に配置されることにより、いずれの場合においても、用紙Pの幅方向両端e側で温度が高くなるのを抑制できるようになる。
【0083】
また、ヒータ22の長手方向の一端側と他端側で発熱温度にばらつきがある場合は、
図19に示す例のように、ダクト36の一方の開口部36aと他方の開口部36aのそれぞれの用紙搬送方向(記録媒体搬送方向)Vの大きさd1、d2を互いに異ならせてもよい。この場合、発熱温度が高い端部側の開口部36aの大きさd1を、発熱温度が低い端部側の開口部36aの大きさいd2よりも大きくすることにより、発熱温度の高い側での冷却能力を高め、用紙Pの温度のばらつきを抑制できる。また、ヒータ22の発熱温度が変化する場合は、その温度変化に対応して、ダクト36の各開口部36aの開口面積を変更可能にしたり、複数の送風ファン35を用いてダクト36の開口部36aごとに噴き出すエアの風量(風速)を変更可能にしたりすることにより、冷却能力を調整可能にしてもよい。
【0084】
また、
図20に示す例のように、ダクト36の開口部36aは、用紙Pの幅方向中央mと両端eを含む3箇所以上に配置されていてもよい。この場合、相対的に用紙Pの幅方向端e側に配置される開口部36aほど用紙搬送方向Vの大きさdが大きくなるようにすることにより、用紙Pの幅方向端e側での冷却能力を高めることができる。
【0085】
さらに、
図21に示す例のように、ダクト36の開口部36aが、用紙Pの幅方向中央mから幅方向両端eに渡って連続して設けられていてもよい。この場合も、各開口部36aの用紙搬送方向Vの大きさdが、用紙Pの幅方向中央m側よりも幅方向両端e側で大きくなることにより、用紙Pの幅方向端e側での冷却能力を高めることができる。
【0086】
なお、
図20に示す例又は
図21に示す例においては、ダクト36の開口部36aが、用紙Pの幅方向中央mを基準に対称となるように形成されているが、ヒータ22の長手方向の一端側と他端側とで発熱温度が異なる場合は、発熱温度に応じて一端側と他端側の開口部36aの用紙搬送方向Vの大きさdを異ならせ、ダクト36の開口部36aが非対称となるようにしてもよい。
【0087】
また、ダクト36の開口部36aは、用紙Pの幅方向の一端側のみに設けられていてもよい。例えば、用紙Pの幅方向両端のうち、温度が高い端側に対応する位置のみに、ダクト36の開口部36aが設けられていてもよい。
【0088】
次に、
図22~
図24に示す例は、冷却手段として、用紙に対して接触することにより用紙を冷却する冷却部材を用いた例である。
【0089】
図22に示すように、この例では、冷却部材として、転写位置Aと定着位置Bとの間に、回転可能な冷却ローラ37が設けられている。冷却ローラ37は、少なくとも表面(外周面)が用紙Pよりも熱伝導率の良い金属材料などで構成されている。このため、
図22に示すように、冷却ローラ37が用紙Pに接触すると、用紙Pから冷却ローラ37へ伝熱されることにより、用紙Pが冷却される。
【0090】
また、
図23に示すように、冷却ローラ37は、用紙Pの幅方向Uの両端eに対応する位置にそれぞれ設けられている。このため、用紙Pと各冷却ローラ37とが接触すると、用紙Pの主に幅方向両端e及びその近傍部分が冷却される。これにより、用紙Pは、その幅方向中央m側よりも両端e側で温度が低くなるように冷却される。すなわち、この場合も、用紙Pは、ヒータ22の温度分布とは逆に、両端e側で温度が低くなるように冷却されるので、用紙Pの幅方向両端e側が幅方向中央m側よりも高い温度となるのを抑制することができる。これにより、ヒータ22の温度分布のばらつきに起因する画像の光沢度又は濃度のばらつきを抑制することが可能である。
【0091】
また、用紙Pが冷却ローラ37に接触すると、冷却ローラ37が回転することにより、用紙Pに対して接触する冷却ローラ37の面が変わるため(同じ面で接触しないため)、用紙Pから冷却ローラ37への伝熱を効果的に行うことができる。冷却ローラ37は、用紙Pとの接触により従動回転する場合であってもよいし、駆動源により回転駆動するように構成されていてもよい。また、
図22に示すように、冷却ローラ37が接触する用紙Pの面は、冷却ローラ37との接触によって用紙P上の未定着トナーTが乱れないように、未定着トナーTが付着する画像形成面とは反対の面であることが好ましい。
【0092】
また、この例では、冷却ローラ37を用紙Pに対してより確実に接触させるべく、
図22に示すように、冷却ローラ37(接触面37a)が、転写位置Aと定着位置Bとを通る直線αよりも、用紙Pの画像形成面側(図における左側)に進入した位置に配置されている。さらに、転写位置Aと定着位置Bとの間で用紙Pに張力が作用するように、定着位置Bにおいて用紙Pが搬送される速度が、転写位置Aにおいて用紙Pが搬送される速度よりも若干速く設定されている。このため、転写位置Aと定着位置Bとの間で用紙Pが搬送されると、用紙Pに張力が作用し、その張力によって用紙Pが冷却ローラ37に押し付けられる。これにより、用紙Pと冷却ローラ37との接触を確実に行うことができ、用紙Pが効果的に冷却されるようになる。また、冷却ローラ37と転写位置Aとの間、又は冷却ローラ37と定着位置Bとの間に、搬送ローラ対などの他の回転体対があってもよい。その場合、前記直線αは、冷却ローラ37の用紙搬送方向の上流側及び下流側に最も近い回転体対のニップ部を通る直線であればよい。
【0093】
また、用紙Pの幅方向両端e側の温度を効果的に下げるため、用紙Pに対して接触する冷却ローラ37の接触面37a(
図23参照)は、用紙Pの幅方向中央mよりも幅方向両端eに近い位置に配置されていることが好ましい。すなわち、用紙Pの幅方向各端eから冷却ローラ37の接触面37aの最も近い部分までの用紙幅方向Uの距離が、用紙Pの幅方向中央mから冷却ローラ37の接触面37aの最も近い部分までの用紙幅方向Uの距離よりも短くなればよい。
【0094】
また、上述の例と同様に、冷却ローラ37及びその接触面37aの位置は、ヒータ22の温度分布又は各ブロック内で流れる電流の合計値に基づいて決定されてもよい。例えば、
図24に示すように、冷却ローラ37及びその接触面37aが、
図11に示す例の場合に最も温度が高くなる(電流の合計値が最も大きい)第7ブロックJ7と、
図12に示す例の場合に最も温度が高くなる(電流の合計値が最も大きい)第2ブロックJ2に対応する位置に配置されることにより、いずれの場合においても、用紙Pの幅方向両端側で温度が高くなるのを抑制できるようになる。
【0095】
また、冷却ローラ37の冷却能力を高めるために、冷却ローラ37を空冷する送風ファンを設けたり、冷却ローラ37をヒートパイプローラで構成したりしてもよい。また、上述の例と同様、冷却ローラ37も、用紙Pの幅方向の一端側のみに設けられていてもよいし、用紙幅方向Uに渡って3箇所以上に設けられていてもよい。さらに、冷却ローラ37は、転写位置Aと定着位置Bとの間で用紙搬送方向Vに渡って複数設けられていてもよい。
【0096】
続いて、
図25~
図29に示す例は、冷却部材として、用紙Pに対して相対的に摺接する冷却ガイド38を用いた例である。
【0097】
このように、冷却部材として、冷却ガイド38などの回転しない部材を用いてもよい。冷却ガイド38は、上述の冷却ローラ37と同様、少なくとも用紙Pに接触する表面が用紙Pよりも熱伝導率の良い金属材料などで構成されている。このため、
図25に示すように、冷却ガイド38が用紙Pに接触すると、用紙Pから冷却ガイド38へ伝熱されることにより、用紙Pが冷却される。
【0098】
また、この例では、冷却ガイド38の表面が、上述の冷却ローラ37よりも曲率の小さい(曲率半径の大きい)曲面で形成されていることにより、用紙Pに対する接触面積(用紙搬送方向Vの接触範囲)が大きくなる。このため、冷却能力が高まり、用紙Pを効果的に冷却できる。なお、上述の例と同様、冷却ガイド38が接触する用紙Pの面は、用紙P上の未定着トナーTが乱れないように、未定着トナーTが付着する画像形成面とは反対の面であることが好ましい。
【0099】
図26に示すように、冷却ガイド38は、用紙幅方向Uに渡って凹凸状に形成されており、用紙Pの幅方向両端e及びその近傍部分のみに接触するように構成されている。これにより、用紙Pが冷却ガイド38に接触すると、用紙Pの主に幅方向両端e及びその近傍部分が冷却され、上述の例と同様に、用紙Pの幅方向両端e側が幅方向中央m側よりも高い温度となるのが抑制される。
【0100】
また、この例においても、用紙Pと冷却ガイド38との接触をより確実に行うべく、
図25に示すように、冷却ガイド38(接触面38a)が、転写位置Aと定着位置Bとを通る直線αよりも、用紙Pの画像形成面側(図における左側)に進入した位置に配置されている。このため、用紙Pに作用する張力によって、用紙Pを冷却ガイド38に押し付けて、用紙Pと冷却ガイド38との接触を確実に行うことができ、用紙Pを効果的に冷却できる。
【0101】
また、この例においても、上述の例と同様、用紙Pの幅方向両端e側の温度を効果的に下げるため、
図27に示すように、用紙Pに対して接触する冷却ガイド38の接触面38aは、用紙Pの幅方向中央mよりも幅方向両端eに近い位置に配置されていることが好ましい。すなわち、上述の例と同様、用紙Pの幅方向各端eから冷却ガイド38の接触面38aの最も近い部分までの用紙幅方向Uの距離が、用紙Pの幅方向中央mから冷却ガイド38の接触面38aの最も近い部分までの用紙幅方向Uの距離よりも短ければよい。
【0102】
また、冷却ガイド38の接触面38aの位置は、ヒータ22の温度分布又は各ブロック内で流れる電流の合計値に基づいて決定されてもよい。例えば、
図28に示すように、冷却ガイド38の接触面38aが、
図11に示す例の場合に最も温度が高くなる(電流の合計値が最も大きい)第7ブロックJ7と、
図12に示す例の場合に最も温度が高くなる(電流の合計値が最も大きい)第2ブロックJ2に対応する位置に配置されることにより、いずれの場合においても、用紙Pの幅方向両端側で温度が高くなるのを抑制できるようになる。
【0103】
また、
図29に示す例のように、冷却ガイド38の接触面38aの用紙搬送方向Vの大きさfが、用紙Pの幅方向中央m側よりも幅方向両端e側で大きくなるようにしてもよい。この場合、用紙Pの幅方向端e側での冷却能力を高めることができる。
【0104】
また、冷却ガイド38の冷却能力を高めるために、冷却ガイド38を空冷する送風ファンを設けてもよい。また、冷却ガイド38は、用紙Pに対してその幅方向の一端側のみで接触してもよいし、幅方向Uの3箇所以上で接触するように構成されてもよい。さらに、冷却ガイド38は、転写位置Aと定着位置Bとの間で、用紙搬送方向Vに渡って複数設けられていてもよい。
【0105】
さらに、
図30~
図34に示す例は、冷却手段として、中間転写ベルト11を用いた例である。
【0106】
図30に示すように、この例では、用紙を冷却する冷却手段(冷却部材)として、中間転写ベルト11と、中間転写ベルト11に送風する送風ファン(送風手段)41と、この送風ファン41から中間転写ベルト11へエアを誘導する誘導路としてのダクト42と、が設けられている。送風ファン41からエアが噴出されると、そのエアはダクト42を介して中間転写ベルト11に吹き付けられる。これにより、まず、中間転写ベルト11が冷却される。そして、冷却された中間転写ベルト11が用紙Pに接触することにより、用紙Pが冷却される。
【0107】
図31に示すように、中間転写ベルト11内に配置されたダクト42の一部は、中間転写ベルト11の幅方向W(用紙幅方向U)の両端g又はその近傍に対応する位置で開口している。このため、ダクト42の開口部42aから噴き出されたエアは、中間転写ベルト11の主に幅方向両端g及びその近傍部分に吹き付けられる。これにより、中間転写ベルト11の幅方向両端g側の温度が幅方向中央i側よりも低くなるように冷却される。
【0108】
このように、中間転写ベルト11の主に幅方向両端g側が冷却されることにより、中間転写ベルト11と用紙Pとが接触すると、用紙Pの主に幅方向両端e側が冷却される。すなわち、温度の低い中間転写ベルト11の幅方向両端g側の部分が用紙Pの幅方向両端e側の部分に接触することにより、用紙Pの幅方向両端e側が効果的に冷却される。これにより、上述の例と同様に、用紙Pの幅方向両端e側の温度が幅方向中央m側の温度よりも低くなり、用紙Pの幅方向両端e側が幅方向中央m側よりも高い温度となるのが抑制される。
【0109】
図30に示すように、エアが吹き付けられる中間転写ベルト11の面は、外周面に担持される画像(トナー)が乱れないように、中間転写ベルト11の内周面であることが好ましい。またその場合、ダクト42が中間転写ベルト11の内側に配置されるため、省スペース化及び小型化も図れる。
【0110】
また、
図32に示すように、中間転写ベルト11を冷却する位置(エアを吹き付ける位置)は、中間転写ベルト11の回転方向Cにおいて、最下流の感光体2とのニップ部(一次転写ニップ)から、用紙Pに画像が転写される転写位置A(二次転写ニップ)までの範囲H1内のいずれかの位置であることが好ましい。反対に、中間転写ベルト11を冷却する位置が、転写位置Aから最下流の感光体2とのニップ部までの範囲H3であると、中間転写ベルト11を冷却しても、中間転写ベルト11がクリーニング部材55及び感光体2に接触することによって、冷却による温度偏差が緩和され、用紙Pを効果的に冷却することができなくなるからである。従って、中間転写ベルト11を冷却する位置を上記範囲H1内とすることにより、冷却された部分が感光体2及びクリーニング部材55に接触するのを回避でき、用紙Pを効果的に冷却できるようになる。また、より好ましくは、中間転写ベルト11を冷却する位置が、
図32に示す転写位置Aから回転方向Cとは反対方向へ向かって中間転写ベルト11の4分の1の長さまでの範囲H2であるのがよい。この場合、転写位置Aに近い位置あるいは直前の位置で中間転写ベルト11を冷却できるため、より一層効果的に用紙Pを冷却できるようになる。
【0111】
また、このような中間転写ベルト11に対するダクト42の配置は、
図32に示すような各感光体2が中間転写ベルト11の図の上側に配置された例に限らず、
図33に示すような各感光体2が中間転写ベルト11の図の下側に配置された構成においても適用可能である。
図33に示す例の場合、
図32に示す例に比べて、最下流の感光体2と中間転写ベルト11とのニップ部から転写位置Aまでの範囲H1が短くなるが、可能であれば、この範囲H1内で中間転写ベルト11を冷却できるようにダクト42を配置することにより、上記と同様に用紙Pを効果的に冷却できるようになる。
【0112】
また、上述の
図17に示すダクト36の開口部36aと同様に、中間転写ベルト11にエアを吹き付けるダクト42の開口部42aも、用紙Pの幅方向両端eに近い位置、又は中間転写ベルト11の幅方向両端gに近い位置に対応して配置されていることが好ましい。また、ダクト42の開口部42aの形状、大きさ、又は数も、上述の
図19~
図21に示す例に倣って適宜変更可能である。
【0113】
また、
図34に示す例のように、ダクト42内の流路を、仕切り板などによって2分割し、片側のダクト入口から中間転写ベルト11の幅方向一端側と他端側のそれぞれにエアを誘導できるようにしてもよい。この場合、1つの送風ファン41から噴き出されたエアを、中間転写ベルト11の幅方向両端側にそれぞれ吹き付けることができるので、送風ファン41を中間転写ベルト11の幅方向Wの片側のみに設けることができ、小型化及び低コスト化を図れる。
【0114】
以上のように、本発明に係る画像形成装置は、用紙の幅方向中央側よりも幅方向端側で高い冷却能力を有する冷却手段を備えることにより、ヒータの温度分布とは反対に、用紙の幅方向端部側の部分の温度が低くなるようにあらかじめ用紙を冷却することができる。これにより、ヒータの温度分布のばらつきに起因する画像の光沢度又は濃度のばらつきを抑制できるようになり、ひいては画質の向上を図れるようになる。また、ヒータの温度分布のばらつきに起因する画質の低下を改善できることにより、温度分布のばらつきが発生しやすい小型のヒータ、又は高速化のために発熱量を増大させたヒータを用いた構成にも対応できるようになる。
【0115】
このため、本発明は、特に次のような小型のヒータを備える画像形成装置に適用された場合に大きな効果が期待できる。具体的は、
図35に示すような基材50の短手方向寸法Qに対する抵抗発熱体59の短手方向寸法Rの比(R/Q)が、25%以上となるヒータ22に対して本発明を適用した場合に、大きな効果を期待できる。さらに、このような短手方向の寸法比(R/Q)が、40%以上となるヒータ22であれば、本発明を適用することの効果はより大きくなる。なお、
図35に示す例では、ヒータ22の基材50が長方形に形成されているため、基材50の短手方向寸法Qはどの長手方向位置でも同じ寸法であるが、基材50の縁に凹凸があり、長手方向Zの位置によって短手方向寸法Qが変化する場合は、抵抗発熱体59が配置されている長手方向範囲内で基材50の短手方向寸法Qが最小となる部分を対象にして、上記短手方向の寸法比(R/Q)が成立すればよい。
【0116】
また、ヒータにおける温度のばらつきを抑制するために、PTC特性を有する抵抗発熱体を用いてもよい。PTC特性とは、温度が高くなると抵抗値が高くなる(一定電圧をかけた場合に、ヒータ出力が下がる)特性である。PTC特性を有する発熱部とすることで、低温では高出力によって高速で立ち上がり、高温では低出力により過昇温を抑制することができる。例えば、PTC特性のTCR係数を300~4000ppm/度程度にすれば、ヒータに必要な抵抗値を確保しながら、低コスト化を図れる。より好ましくは、TCR係数を500~2000ppm/度とするのがよい。
【0117】
抵抗温度係数(TCR)は、下記式(3)を用いて算出することができる。式(3)中のT0は基準温度、T1は任意温度、R0は基準温度T0における抵抗値、R1は任意温度T1における抵抗値である。例えば、
図10に示す上述のヒータ22において、第1電極部61Aと第2電極部61Bとの間の抵抗値が、25℃(基準温度T0)で10Ω(抵抗値R0)であり、125℃(任意温度T1)で12Ω(抵抗値R1)であった場合は、式(3)から抵抗温度係数は2000ppm/℃となる。
【0118】
【0119】
また、定着装置が備えるヒータは、
図35に示すようなブロック状(四角形状)の抵抗発熱体59を有するヒータ22に限らず、
図36に示すような、直線を折り返したような形状の抵抗発熱体59を有するヒータ22、又はその他の形状の抵抗発熱体を有するヒータであってもよい。
【0120】
また、画像形成装置が備える定着装置は、上述の定着装置に限らず、
図37~
図39に示すような定着装置であってもよい。以下、
図37~
図39に示す各定着装置の構成について簡単に説明する。
【0121】
図37に示す定着装置9は、定着ベルト20の加圧ローラ21側とは反対側に、押圧ローラ90が配置されている点において、上述の定着装置とは異なっている。この場合、押圧ローラ90とヒータ22とによって定着ベルト20を挟んで加熱するように構成されている。一方、加圧ローラ21側では、定着ベルト20の内周にニップ形成部材91が配置されている。ニップ形成部材91は、ステー24によって支持されており、ニップ形成部材91と加圧ローラ21とによって定着ベルト20を挟んでニップ部Nを形成している。
【0122】
次に、
図38に示す定着装置9では、上述の押圧ローラ90が省略されており、定着ベルト20とヒータ22との周方向接触長さを確保するために、ヒータ22が定着ベルト20の曲率に合わせて円弧状に形成されている。その他は、
図37に示す定着装置9と同じ構成である。
【0123】
続いて、
図39に示す定着装置9では、定着ベルト20のほかに加圧ベルト92が設けられ、加熱ニップ(第1ニップ部)N1と定着ニップ(第2ニップ部)N2とが分けて構成されている。すなわち、加圧ローラ21に対して定着ベルト20側とは反対側にも、ニップ形成部材91とステー93が配置され、ニップ形成部材91とステー93を内包するように加圧ベルト92が配置されている。その他は、
図2に示す定着装置9と同じ構成である。
【0124】
このような、
図37~
図39に示すような定着装置を備える画像形成装置においても、本発明を適用することにより、ヒータの温度分布のばらつきに起因する画像の光沢度又は濃度のばらつきを抑制できるようになり、画質の向上を図って小型化又は高速度化に対応できるようになる。
【0125】
また、上述の実施形態では、中間転写ベルト11を介して感光体2上の画像を用紙Pに転写する、いわゆる中間転写式の画像形成装置に本発明を適用した場合を例に説明したが、本発明は、
図40に示すような、中間転写ベルトを介さずに感光体2上の画像を用紙Pに直接転写する直接転写式の画像形成装置にも適用可能である。
図40に示すように、直接転写式の画像形成装置においても、感光体2から用紙Pに画像を転写する転写位置Aと、用紙P上の画像を定着させる定着位置Bとの間に、上述の送風ファン35などの冷却手段を配置することにより、ヒータの温度分布のばらつきに起因する画像の光沢度又は濃度のばらつきを抑制することが可能である。また、本発明は、カラー画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0126】
9 定着装置
35 送風ファン(送風手段)
36 ダクト(誘導路)
36a 開口部
37 冷却ローラ(冷却部材)
37a 接触面
38 冷却ガイド(冷却部材)
38a 接触面
41 送風ファン(送風手段)
42 ダクト(誘導路)
50 基材
59 抵抗発熱体(発熱体)
60 発熱部
61A 第1電極部
61B 第2電極部
100 画像形成装置
200 画像形成部
P 用紙(記録媒体)
K1 第1導電経路
K2 第2導電経路
K3 第3導電経路
S1 第1方向
S2 第2方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0127】