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特許7603928乾式吹付け工法、および、乾式吹付け装置
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  • 特許-乾式吹付け工法、および、乾式吹付け装置 図1
  • 特許-乾式吹付け工法、および、乾式吹付け装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】乾式吹付け工法、および、乾式吹付け装置
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/32 20060101AFI20241216BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20241216BHJP
   E21D 11/10 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
B28B1/32 A
C04B28/02
E21D11/10 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021026386
(22)【出願日】2021-02-22
(65)【公開番号】P2022128071
(43)【公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000223159
【氏名又は名称】東和耐火工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】明石 昌之
(72)【発明者】
【氏名】安藤 重裕
(72)【発明者】
【氏名】田中 勉
(72)【発明者】
【氏名】関野 一雄
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-163657(JP,A)
【文献】特開2008-223359(JP,A)
【文献】実開昭49-028633(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2012/0097755(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-32/02
C04B 40/00-40/06
B28B 1/00- 1/54
B28C 1/00- 9/04
E21D 11/00-19/06
E21D 23/00-23/26
E04G 21/00-21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吹付け対象物に向けて流れる搬送気体の流路にセメントを含む粉体材料を供給する供給工程と、
搬送気体の流路に供給される粉体材料を搬送気体によって吹付け対象物に向けて搬送する搬送工程と、
搬送工程で搬送される粉体材料を、水を含む液体材料と混合して吹付け材を形成しつつ該吹付け材を搬送気体と共に吹付け対象物に吹付ける吹付け工程とを備える乾式吹付け工法であって、
搬送気体の流路は、搬送気体が下から上へ向けて流れる気体上昇部を備えており、
気体上昇部へ流入する搬送気体の圧力は、0.010MPa以上0.050MPa以下であり、
供給工程は、気体上昇部に粉体材料を供給することで行う、
乾式吹付け工法。
【請求項2】
搬送工程では、粉体材料を含む搬送気体の圧力は、0.030MPa以上0.10MPa以下である、
請求項1に記載の乾式吹付け工法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の乾式吹付け工法で用いる乾式吹付け装置であって、
吹付け対象物へ向けて搬送気体を流通させる搬送気体の流路と、
搬送気体の流路に搬送気体を供給する気体供給機と、
搬送気体の流路に粉体材料を供給する粉体供給機と、
吹付け材を噴射する噴射機と、
を備えており、
搬送気体の流路は、搬送気体が下から上へ向けて流れる気体上昇部を備えており、
粉体供給機は、気体上昇部に粉体材料を供給可能であり、
気体上昇部へ流入する搬送気体の圧力は、0.010MPa以上0.050MPa以下である、
乾式吹付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントを含む粉体材料と水を含む液体材料とが混合されてなる吹付け材を気体と共に対象物に吹付ける乾式吹付け工法、および、該乾式吹付け工法で用いる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セメントを含む粉体材料と水を含む液体材料とを混合して形成した吹付け材を吹付け対象物に吹付けることで、吹付け対象物の表面に吹付け材を施工する方法が知られている。例えば、掘削したトンネルや地下空間などの建設工事では、掘削面に速硬性のセメント組成物(具体的には、コンクリート及びモルタル)を吹付け材として吹付けることで、掘削面の崩落が防止されている。
【0003】
吹付け材を吹付け対象物に吹付ける方法としては、吹付け用ノズルから吹付け材を、高圧コンプレッサーで圧搾された圧搾気体と共に噴射して吹付け対象物に吹付ける方法が知られている。具体的には、吹付け対象物に向けて流れる圧搾気体の流路に粉体材料を供給する供給工程と、圧搾気体の流路に供給される粉体材料を圧搾気体によって吹付け対象物に向けて圧送する圧送工程と、圧送工程で圧送される粉体材料を吹付け用ノズル内で液体材料と混合して吹付け材を形成しつつ該吹付け材を圧搾気体と共に吹付け対象物に吹付ける吹付け工程とを備える乾式吹付け工法が知られている(特許文献1参照)。また、斯かる乾式吹付け工法で粉体材料を圧搾気体の流路に供給する粉体供給機として、圧搾気体の流路のうち圧搾気体が上から下へ流れる気体降下部に粉体材料を供給するものが知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-12867号公報
【文献】実開昭52-104954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように、吹付け材を圧搾気体と共に吹付け用ノズルから噴射して吹付け対象物に吹付けた場合、吹付けに伴う衝撃によって、吹付け材の一部がはね返り、吹付け対象物の周囲に飛散し、作業環境の悪化を招く要因となる。
【0006】
また、はね返りを抑制する方法として粉体材料を送風機から供給される低圧空気で搬送する方法が考えられるが、低圧気体の流路のうち気体降下部に粉体材料を供給すると、粉体材料が流路に堆積し易いため、粉体材料を定量的に安定して搬送することが困難になる。
【0007】
そこで、本発明は、吹付け対象物への吹付けを行った際に生じるはね返りを抑制できると共に、粉体材料を定量的に安定して搬送できる乾式吹付け工法、および、該乾式吹付け工法で用いる乾式吹付け装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る乾式吹付け工法は、吹付け対象物に向けて流れる搬送気体の流路にセメントを含む粉体材料を供給する供給工程と、搬送気体の流路に供給される粉体材料を搬送気体によって吹付け対象物に向けて搬送する搬送工程と、搬送工程で搬送される粉体材料を、水を含む液体材料と混合して吹付け材を形成しつつ該吹付け材を搬送気体と共に吹付け対象物に吹付ける吹付け工程とを備える乾式吹付け工法であって、搬送気体の流路は、搬送気体が下から上へ向けて流れる気体上昇部を備えており、気体上昇部へ流入する搬送気体の圧力は、0.010MPa以上0.050MPa以下であり、供給工程は、気体上昇部に粉体材料を供給することで行う。
【0009】
斯かる構成によれば、搬送気体が下から上へ向けて流れる気体上昇部に粉体材料を供給することで、粉体材料が搬送気体によって下から上へ巻き上げられるため、粉体材料が搬送気体中に分散し易い。これにより、粉体材料が搬送気体の流路に堆積し難くなるため、粉体材料を定量的に安定して搬送できる。また、気体上昇部へ流入する搬送気体の圧力が上記の範囲であることで、吹付け対象物への吹付けを行った際に生じるはね返りを抑制できる。
【0010】
搬送工程では、粉体材料を含む搬送気体の圧力は、0.030MPa以上0.10MPa以下であることが好ましい。
【0011】
斯かる構成によれば、搬送工程では、粉体材料を含む搬送気体の圧力が上記の範囲であることで、吹付け対象物への吹付けを行った際に生じるはね返りをより効果的に抑制できる。
【0012】
本発明に係る乾式吹付け装置は、上記の乾式吹付け工法で用いる乾式吹付け装置であって、吹付け対象物へ向けて搬送気体を流通させる搬送気体の流路と、搬送気体の流路に搬送気体を供給する気体供給機と、搬送気体の流路に粉体材料を供給する粉体供給機と、吹付け材を噴射する噴射機と、を備えており、搬送気体の流路は、搬送気体が下から上へ向けて流れる気体上昇部を備えており、粉体供給機は、気体上昇部に粉体材料を供給可能であり、気体上昇部へ流入する搬送気体の圧力は、0.010MPa以上0.050MPa以下である。
【0013】
斯かる構成によれば、気体供給機によって搬送気体の流路に搬送気体を供給しつつ、粉体供給機によって気体上昇部に粉体材料を供給することで、粉体材料が搬送気体によって下から上へ巻き上げられるため、粉体材料が搬送気体中に分散し易い。これにより、粉体材料が搬送気体の流路に堆積し難くなるため、粉体材料を定量的に安定して搬送できる。また、気体上昇部へ流入する搬送気体の圧力が上記の範囲であることで、吹付け対象物への吹付けを行った際に生じるはね返りを抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、吹付け対象物への吹付けを行った際に生じるはね返りを抑制できると共に、粉体材料を定量的に安定して搬送できる乾式吹付け工法、および、該乾式吹付け工法で用いる乾式吹付け装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る乾式吹付け装置における気流上昇部および粉体供給機の概略を示した断面図。
図2】本発明の他の実施形態に係る乾式吹付け装置における気流上昇部および粉体供給機の概略を示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
本発明に係る乾式吹付け工法は、セメントを含む粉体材料と水を含む液体材料とを混合して吹付け材を形成しつつ該吹付け材を気体と共に対象物に吹付けるものである。
【0018】
粉体材料に含まれるセメントとしては、特に限定されるものではなく、市場で入手できる種々のセメントを用いることができる。具体的には、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメント、アルミナセメント、及び、カルシウムアルミネート系、カルシウムサルフォアルミネート系、カルシウムフルオロアルミネート系等の超速硬セメント等からなる群から選択される一つを用いてもよく、複数を混合して用いてもよい。
【0019】
粉体材料は、骨材を含むものであってもよい。骨材としては、粗骨材、及び、細骨材を用いてもよく、細骨材のみを用いてもよい。つまり、骨材として粗骨材、及び、細骨材を用いる場合には、吹付け材は、コンクリートを構成するものとなり、骨材として細骨材のみを用いる場合には、吹付け材は、モルタルを構成するものとなる。
【0020】
粗骨材は、5mmのふるい目を通過しないものが85質量%以上となるサイズのものを用いることができる。具体的には、粗骨材としては、砂岩砕石、玉砂利(川砂利)、天然軽量粗骨材(パーライト、ヒル石等)、副産軽量粗骨材、人工軽量粗骨材、再生骨材等が挙げられる。粉体材料中の粗骨材の含有量としては、特に限定されるものではなく、例えば、セメントに対して70質量%以上200質量%以下であってもよく、200質量%以上300質量%以下であってもよい。
【0021】
細骨材は、10mmのふるい目をすべて通過し、5mmのふるい目を通過するものが85質量%以上となるサイズのものを用いることができる。具体的には、細骨材としては、山砂、川砂、陸砂、及び、海砂等の天然砂や、砂岩,石灰岩等を人工的に破砕して形成された砕砂(より詳しくは、石灰砕砂等)、膨張性頁岩等を粉砕・造粒・焼成したものや真珠岩等を破砕・加熱発泡させた軽量骨材等が挙げられる。粉体材料中の細骨材の含有量としては、特に限定されるものではなく、例えば、セメントに対して70質量%以上200質量%以下であってもよく、200質量%以上300質量%以下であってもよい。
【0022】
なお、上記の粗骨材及び細骨材のサイズは、JIS A 1102に従う骨材のふるい分け試験方法によって測定されるもので、JIS Z 8801-1の試験用ふるい目を表したものである。
【0023】
また、粉体材料は、さらに他の材料を含むものであってもよい。例えば、粉体材料は、繊維材(ガラス繊維、鋼繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維、ポリプロピレン繊維、炭素繊維等)、混和材(高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、膨張材等)、混和剤(減水剤、増粘剤、消泡剤、急結材等)、を含むものであってもよい。
【0024】
液体材料に含まれる水としては、特に限定されず、例えば、一般的な上水道水を用いることができる。また、液体材料は、水以外の材料を含むものであってもよい。例えば、液体材料は、モルタルやコンクリートを混練する際に使用する減水剤等の混和剤、ポリマーディスパージョン液、収縮低減剤、凝結調整剤、急結材等を含むものであってもよい。
【0025】
粉体材料に対する液体材料の質量割合(液/粉体比)としては、特に限定されず、好ましくは10質量%以上24質量%以下、より好ましくは12質量%以上16質量%以下である。
【0026】
吹付け材が硬化した際の圧縮強度としては、特に限定されず、好ましくは20N/mm以上、より好ましくは40N/mm以上である。なお、圧縮強度は、JSCE-F561(吹付けコンクリートの圧縮強度試験用供試体の作り方)に準じて40cm×40cm×25cmの型枠(補修面積:0.16m)に吹付け材を吹付け、2日後にコア抜きして両端部を成形(Φ10×20cm)することでコア硬化体を得た。該コア硬化体を材齢28日まで20℃の水中にて養生した後、JIS A 1108に準じて、測定することができる。
【0027】
本発明に係る乾式吹付け工法は、上記のように構成される粉体材料および液体材料を用いて行う。具体的には、本発明に係る乾式吹付け工法は、吹付け対象物に向けて流れる搬送気体の流路に粉体材料を供給する供給工程と、搬送気体の流路に供給される粉体材料を搬送気体によって吹付け対象物に向けて搬送する搬送工程とを備える。また、本発明に係る乾式吹付け工法は、搬送工程で搬送される粉体材料を液体材料と混合して吹付け材を形成しつつ該吹付け材を搬送気体と共に吹付け対象物に吹付ける吹付け工程を備える。
【0028】
供給工程では、搬送気体の流路のうち、搬送気体が下から上へ向けて流れる気体上昇部に粉体材料を供給する。粉体材料の供給量としては、特に限定されず、好ましくは1kg/min以上20kg/min以下であり、より好ましくは2kg/min以上12kg/min以下である。気体上昇部へ流入する搬送気体の圧力としては、0.010MPa以上0.050MPa以下であり、好ましくは0.015MPMPa以上0.047MPa以下であり、より好ましくは0.020MPa以上0.045MPa以下である。
【0029】
搬送工程では、粉体材料を含む搬送気体の圧力は、好ましくは0.030MPa以上0.10MPa以下であり、より好ましくは0.040MPa以上0.080MPa以下であり、さらに好ましくは0.050MPa以上0.075MPa以下である。
【0030】
上記のような供給工程、搬送工程、および、吹付け工程は、吹付け対象物へ向けて搬送気体を流通させる搬送気体の流路と、搬送気体の流路に搬送気体を供給する気体供給機と、搬送気体の流路に粉体材料を供給する粉体供給機と、吹付け材を噴射する噴射機とを備える乾式吹付け装置を用いて行うことができる。
【0031】
気体供給機としては、特に限定されず、例えば、リングブロア、ルーツブロア、ターボブロア等の低圧力式送風機等を用いることができる。これらの中でも、低圧力式送風機としては、風量を高める観点から、ルーツブロアを用いることが好ましい。
【0032】
粉体供給機としては、特に限定されず、例えば、乾式ローター型、チャンバー型等の粉体供給機を用いることができる。乾式ローター型の粉体供給機としては、例えば、図1に示すように、複数のシリンダ1を備え、該シリンダ1への粉体材料Xの充てんと、シリンダ1から搬送気体の流路2への粉体材料Xの供給とを繰り返し行う粉体供給機10が挙げられる。具体的には、乾式ローター型の粉体供給機10は、気体供給機(図示せず)から供給される搬送気体が下から上へ向けて流れる気体上昇部2aを備える。そして、粉体材料Xが充てんされたシリンダ1が気体上昇部2aに配置されることで、気体上昇部2aを流れる搬送気体がシリンダ1内を流通し、シリンダ1内の粉体材料Xを下から上に巻き上げる。これにより、粉体材料Xが搬送気体の流路2に供給されて搬送される。
【0033】
また、他の粉体供給機を用いる場合としては、図2に示すように、粉体供給機10’が気体上昇部2aと配管20を介して連結され、粉体供給機10’から配管20を介して気体上昇部2aに粉体材料Xを供給するように構成してもよい。粉体供給機10’から配管20を介して気体上昇部2aに粉体材料Xを供給する方法としては、特に限定されず、例えば、風圧によって粉体材料を気体上昇部2aまで搬送する方法であってもよく、粉体供給機10’と気体上昇部2aとの連結状態によっては、粉体供給機10’から気体上昇部2aに粉体材料Xを落下させる方法であってもよい。
【0034】
噴射機としては、特に限定されず、例えば、乾式吹付け用ノズル(図示せず)等を用いて行うことができる。該乾式吹付け用ノズルは、搬送工程で搬送される粉体材料が供給されるように構成される。また、乾式吹付け用ノズルは、粉体材料とは別ルートで液体材料が供給されるように構成される。さらに、乾式吹付け用ノズルは、内部で粉体材料と液体材料とを混合して吹付け材を形成しつつ該吹付け材を搬送気体と共に噴射して吹付け対象物に吹付け可能に構成される。
【0035】
以上のように、本発明に係る乾式吹付け工法、および、乾式吹付け装置によれば、対象物への吹付けを行った際に生じるはね返りを抑制できると共に、粉体材料を定量的に搬送できる。
【0036】
即ち、搬送気体が下から上へ向けて流れる気体上昇部2aに粉体材料Xを供給することで、粉体材料Xが搬送気体によって下から上へ巻き上げられるため、粉体材料Xが搬送気体中に分散し易い。これにより、粉体材料Xが搬送気体の流路に堆積し難くなるため、粉体材料Xを定量的に安定して搬送できる。また、気体上昇部2aへ流入する搬送気体の圧力が上記の範囲であることで、吹付け対象物への吹付けを行った際に生じるはね返りを抑制できる。
【0037】
また、搬送工程では、粉体材料Xを含む搬送気体の圧力が上記の範囲であることで、吹付け対象物への吹付けを行った際に生じるはね返りをより効果的に抑制できる。
【0038】
なお、本発明に係る乾式吹付け工法、および、乾式吹付け装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上記した複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよく(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよく)、更に、他の各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【実施例
【0039】
以下、実施例、及び、比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
<使用材料>
・セメント:住友大阪セメント社製 普通ポルトランドセメント
・細骨材:珪砂3号、珪砂4号、珪砂6号
・水:上水導水
・液体混和剤:住友大阪セメント社製 ライオンボンドA
【0041】
<吹付け材の配合>
吹付け材の配合は、下記表1に示す。
【0042】
<搬送気体の流路の閉塞の評価>
気体供給機として低圧送風機(アンレット社製 品名:3葉アンレットルーツブロアBH80)、コンプレッサー(北越工業社製 品名:PDS265SD-5C3)を用いた。粉体供給機としては、図1に示す構成を備える乾式ローター型の装置(東和耐火工業社製 品名:TOWA式ロータリーガン)を用いた。
実施例では、搬送気体の流路における粉体材料を供給する供給位置において、気体上昇部が形成されるように粉体供給機を構成し、比較例では、前記供給位置において、搬送気体が上から下へ流れる気体降下部が形成されるように粉体供給機を構成した。
そして、粉体材料を5kg/minの速度で1分間搬送するように、搬送気体の流路に粉体材料を供給し、搬送気体の流路の閉塞の有無を評価した。具体的には、吹付け開始から1分間で閉塞がなければ「〇」、閉塞によって粉体搬送ができなくなれば「×」とした。なお、気体上昇部または気体降下部に流入する搬送気体の圧力(気体供給機と粉体供給機とを連結する搬送気体の流路における搬送気体の圧力)、搬送開始時の粉体供給機の出口圧力(粉体材料を含む搬送気体の圧力)、閉塞の有無については、下記表2に示す。
【0043】
<リバウンド率(はね返り率)の測定>
JSCE-F 563に基づいて、はね返り率の試験を行った。具体的には、吹付けの対象物として、100cm×100cmの底面を有する型枠を使用し、該型枠の質量(以下、当初型枠質量とも記す)を測定した。また、粉体材料を上記の搬送条件で搬送して乾式吹付け用ノズルに供給すると共に、液体材料を乾式吹付けノズルに供給し、吹付け材を対象物(型枠)に3分間吹付けた。そして、吹付けによってはね返った吹付け材の質量(はね返り量)を測定した。さらに、得られた測定結果を用いて、下記(1)式により、はね返り率を算出した。そして、はね返り率が10%以下であるものを「〇」、10%を超えるものを「×」として評価した。評価結果については下記表1に示す。

・はね返り率
=はね返り量÷(粉体材料の搬送量+液体材料の供給量)×100・・・(1)
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
<まとめ>
表2を見ると、各実施例は、各比較例と比較して、搬送気体の流路に閉塞が生じ難く(粉体材料が堆積し難く)、且つ、リバウンド率が低いことが認められる。つまり、本発明のように、搬送気体が下から上へ向けて流れる気体上昇部において搬送気体の圧力が所定の範囲となるように構成し、斯かる気体上昇部に粉体材料を供給することで、粉体材料を定量的に搬送することができると共に、吹付け材のはね返りを抑制することができる。
図1
図2