(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】果実の落下試験方法及び落下試験装置
(51)【国際特許分類】
G01N 3/303 20060101AFI20241216BHJP
【FI】
G01N3/303 C
(21)【出願番号】P 2021146970
(22)【出願日】2021-09-09
【審査請求日】2024-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2020176943
(32)【優先日】2020-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 高志
(72)【発明者】
【氏名】大林 栄
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0209882(US,A1)
【文献】特開2013-124132(JP,A)
【文献】北澤 裕明 他,モモ果実の繰り返し衝撃に対する易損性の部位別評価,食総研報,2014年,No.78,pp.31-36
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/303
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
果実の衝撃への耐性を検定するため、果実を落下させた際の衝撃によって当該果実が受けた損傷を確認する果実の落下試験方法であって、
個々の前記果実と前記果実を載置した硬質板の上面との間に、硬材からなるディスクを挟み込み、前記果実が当該ディスクに接した状態を維持したまま、前記硬質板を落下させることを特徴とする果実の落下試験方法。
【請求項2】
前記硬質板を落下させる際に、前記果実と前記ディスクに帯状体を巻き付けて固定することにより、前記果実が前記ディスクに接した状態を維持させる、請求項1記載の果実の落下試験方法。
【請求項3】
前記硬質板を落下させる際に、前記果実と前記硬質板の上面との間に前記ディスクを挟み込んだ状態で、前記果実と前記硬質板に帯状体を巻き付けて固定することにより、前記果実が前記ディスクに接した状態を維持させる、請求項1記載の果実の落下試験方法。
【請求項4】
前記ディスクは、直径が5~15mmであり、厚さが0.5~3mmである、請求項1又は2記載の果実の落下試験方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載の方法に用いられる果実の落下試験装置であって、
前後左右の側壁からなるフレームと、
前記フレーム内に配置される、果実を収容するためのケースと、
前記フレームの左右両端の内側に設けられ、その開閉動作により前記ケースを落下させる一対のハネ部と、を備え、
前記ケースは、底面に前記果実を載置するための硬質板を備えるとともに、当該硬質板の上面に硬材からなるディスクが配置されており、
前記一対のハネ部は、矩形板状で、それぞれ長辺方向を軸方向として、前後の前記側壁において軸支されており、閉時は水平に固定され、内側端部においてそれぞれ前記ケースを下方から支持する一方、開時は固定が解除され、前記ケースが自重により落下するように構成されている、果実の落下試験装置。
【請求項6】
前記ディスクは、前記硬質板と接する側の面に凸部が設けられており、
前記硬質板の上面には、前記ディスクの凸部と嵌合して前記ディスクの水平方向へのずれを防止するための凹部が設けられており、
前記硬質板には、前記果実と前記硬質板の上面との間に前記ディスクを挟み込んだ状態で、前記果実を固定するための帯状体が設けられている、請求項5記載の果実の落下試験装置。
【請求項7】
前記ディスクは、直径が5~15mmであり、厚さが0.5~3mmである、請求項5又は6記載の果実の落下試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イチゴなどの傷付きやすい果実の落下損傷耐性を簡易に検定又は評価できる落下試験方法及びそれに用いられる落下試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イチゴは、国産果実合計卸売価額の20%近くを占めており、その卸売価格と共に主要品目中でトップクラスである。また、香港・台湾などでの需要により、輸出量も大きく増大している。しかしながら、イチゴ果実は流通中における落下などにより傷がつきやすいとされ、外観の劣化により、納入先や輸出先でのクレームにつながっている。また、損傷は品質劣化を加速するとされており、棚もちの低下にもつながる可能性がある。そのため、イチゴ果実の易損性を簡易に検定又は評価できる損傷試験系が求められている。
【0003】
製品の落下損傷耐性を評価するために通常用いられる落下試験機は、工業製品の規格に合わせているため、落下高さが20cm以上になる。また、イチゴ果実の落下試験として、非特許文献1記載の方法及び装置が提案されている。非特許文献1では、イチゴ果実を詰めたトレーを上下方向から2枚のアルミ板で挟んで固定し、その状態で繰り返し落下させてイチゴ果実の損傷評価を行ったことが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】北澤裕明ら、日本包装学会誌、Vol.21、No.2(2012年)、p.125-132
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の製品落下試験における20cm以上の高さからの落下衝撃は、傷付きやすいイチゴ果実にとって過剰な強さである。また、従来の工業製品用の落下試験機は非常に高価であり、導入コストが高いという問題があった。
【0006】
また、落下時の底部とイチゴ果実との接触面積は、衝撃時に果実に伝わる力の強さに大きく影響しているが、果実をトレーに詰めて落下させる場合、底部と果実の接触面積が一定とならず、果実に加わる衝撃がランダムになるため、果実の落下損傷耐性を比較することは困難であった。従来の方法では、包材の緩衝効果を確認するのが目的であり、果実の落下損傷耐性を検定又は評価することには適していなかった。
【0007】
したがって、本発明の課題は、イチゴのように傷付きやすい果実の落下損傷耐性を簡易に検定又は評価できる落下試験方法及びそれに用いられる落下試験装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、果実の衝撃への耐性を検定するため、果実を落下させた際の衝撃によって当該果実が受けた損傷を確認する果実の落下試験方法であって、個々の前記果実と前記果実を載置した硬質板の上面との間に、硬材からなるディスクを挟み込み、前記果実が当該ディスクに接した状態を維持したまま、前記硬質板を落下させることを特徴とする果実の落下試験方法を提供する。
【0009】
ここで、前記硬質板を落下させる際に、前記果実と前記ディスクに帯状体を巻き付けて固定することにより、前記果実が前記ディスクに接した状態を維持させるようにしてもよい。
【0010】
あるいは、前記硬質板を落下させる際に、前記果実と前記硬質板の上面との間に前記ディスクを挟み込んだ状態で、前記果実と前記硬質板に帯状体を巻き付けて固定することにより、前記果実が前記ディスクに接した状態を維持させるようにしてもよい。
【0011】
また、前記ディスクは、直径が5~15mmであり、厚さが0.5~3mmであってもよい。
【0012】
本発明は、上記方法に用いられる果実の落下試験装置であって、前後左右の側壁からなるフレームと、前記フレーム内に配置される、果実を収容するためのケースと、前記フレームの左右両端の内側に設けられ、その開閉動作により前記ケースを落下させる一対のハネ部と、を備え、前記ケースは、底面に前記果実を載置するための硬質板を備えるとともに、当該硬質板の上面に硬材からなるディスクが配置されており、前記一対のハネ部は、矩形板状で、それぞれ長辺方向を軸方向として、前後の前記側壁において軸支されており、閉時は水平に固定され、内側端部においてそれぞれ前記ケースを下方から支持する一方、開時は固定が解除され、前記ケースが自重により落下するように構成されている、果実の落下試験装置を提供する。
【0013】
ここで、前記ディスクは、前記硬質板と接する側の面に凸部が設けられていてもよく、前記硬質板の上面には、前記ディスクの凸部と嵌合して前記ディスクの水平方向へのずれを防止するための凹部が設けられていてもよい。また、前記硬質板には、前記果実と前記硬質板の上面との間に前記ディスクを挟み込んだ状態で、前記果実を固定するための帯状体が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の果実の落下試験方法によれば、個々の果実と当該果実を載置した硬質板の上面との間に、硬材からなるディスクを挟み込み、果実がディスクに接した状態を維持したまま、硬質板を落下させる構成となっているため、落下時の個々の果実への衝撃印加面積は、果実と硬質板の上面との間に挟み込まれたディスクの大きさと等しくなる。衝撃印加面積は、果実に印加される衝撃の強さに大きく影響するため、衝撃印加面積を一定とすることで、果実に印加される衝撃の強さも一定にすることができ、それにより果実間の落下損傷耐性(易損性)を比較することが可能となる。
【0015】
また、硬質板を落下させる際に、果実とディスクに、あるいは、果実と硬質板に、帯状体を巻き付けて固定することによって、果実を傷付けることなく、かつ簡易な方法で、果実がディスクに接した状態を維持したまま、前記硬質板を落下させることができる。
【0016】
さらに、本発明の果実の落下試験装置によれば、前後左右の側壁からなるフレームと、フレーム内に配置される、果実を収容するためのケースと、フレームの左右両端の内側に設けられ、その開閉動作により前記ケースを落下させる一対のハネ部と、を備え、前記一対のハネ部は、矩形板状で、それぞれ長辺方向を軸方向として、前後の側壁において軸支されており、閉時は水平に固定され、内側端部においてそれぞれケースを下方から支持する一方、開時は固定が解除され、ケースが自重により落下するように構成されているため、従来よりも簡易かつ小型化・軽量化した装置で落下試験を実施することが可能となる。そのため、装置の導入コストを低減できるうえに、持ち運びも可能となり、場所を選ばずに落下試験を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施の形態の落下試験装置の実施例の構成を示す正面図である。(A)は「閉時」(ハネ部固定時)、(B)は「開時」(ハネ部解放時)、の状態を示す。
【
図2】落下試験装置の実施例の構成(ハネ部固定時)を示す左側面図である。
【
図3】実施例におけるハネ部開閉装置5aの構成を説明するための部分拡大図である。(A)は「開時」(ハネ部解放時)の状態を示す正面図、(B)は「開時」(ハネ部解放時)の状態を示す側断面図、(C)は「閉時」(ハネ部固定時)の状態を示す側断面図である。
【
図4】本実施の形態の落下試験方法の実施例を説明するための図である。(A)はケース内で果実と硬質板との間にディスクを挟み込んだ状態を示す上面図、(B)は果実とディスクに帯状体を巻き付けた状態を示す斜視図である。
【
図5】他の実施例における硬質板、ディスク及び帯状体の構成を説明するための図である。(A)は上面図、(B)は硬質板にディスクを固定する方法を示すX-X軸部分断面図、(C)はX-X軸断面図、(D)は果実と硬質板に帯状体を巻き付けた状態を示す正面図である。
【
図6】さらに別の実施例における硬質板及びディスクの構成を説明するための部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本実施の形態の果実の落下試験方法について図面を参照して説明する。
図1は、本方法に用いられる果実の落下試験装置1の実施例の構成を示す正面図、
図2は当該実施例の構成を示す左側面図である。
図3は実施例のハネ部開閉装置5aの構成を示す部分拡大図である。
図4は、本実施の形態の落下試験方法の実施例を説明するための図である。
図4(A)は、果実Fが硬質板32の上面に載置された状態を示す、ケース3の平面図であり、
図4(B)は、果実Fとディスク33に帯状体36を巻き付けて固定した状態を示す斜視図である。
図5は、他の実施例における硬質板321、ディスク331及び帯状体361の構成を説明するための図である。
図5(A)は上面図、
図5(B)は硬質板321にディスク331を固定する方法を示すX-X軸部分断面図、(C)はX-X軸断面図、(D)は果実Fと硬質板321に帯状体361を巻き付けて固定した状態を示す正面図である。
図6は、さらに別の実施例における硬質板及びディスクの構成を説明するための部分断面図である。
【0019】
本実施の形態に係る果実の落下試験方法は、果実の衝撃への耐性を検定するため、果実を落下させた際の衝撃によって当該果実が受けた損傷を確認する果実の落下試験方法である。
【0020】
対象とする果実は、以下に例示したイチゴ果実に限定されず、モモ、オウトウなどの傷付きやすい果実をはじめ、様々な果実に適用することができる。
【0021】
上記果実は硬質板32の上面に載置される。落下試験の際に最も衝撃を受けやすい部材である硬質板32は、耐久性があり、経年劣化しにくい金属製とすることが好ましく、具体的にはアルミニウムやステンレスなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
そして、個々の果実と、当該果実を載置した硬質板32の上面と、の間に、ディスク33を挟み込む。このディスク33は、硬質板32の上面と果実との間に介在させることにより、落下時に硬質板32から伝えられた衝撃を、果実に定量的に伝えるためのものである。
【0023】
すなわち、ディスク33を介在させずに硬質板32の上面に直接果実を載置した場合は、硬質板32と果実との接触面積(衝撃印加面積)が一定にならず、落下時に果実に加えられる衝撃の強さがランダム(非定量的)になる。一方、硬質板32の上面と果実との間にディスク33を介在させ、落下時の衝撃印加面積をディスク33との接触面積に限定することにより、果実に加えられる衝撃の強さを一定に制御することができる。衝撃の強さを一定とすることにより、衝撃により果実が受ける損傷の程度も一定となるため、果実間の落下損傷耐性を比較することが可能となる。
【0024】
上記ディスク33は、アルミニウム、その他金属などの硬材からなる薄い円盤である。ディスク33の寸法は特に限定されないが、対象とする果実の形状等に応じて全体が果実表面に接することができる寸法とする。また、落下時に各果実に加えられる衝撃の強さを一定にするため、同時に試験される各果実に用いられるディスク33は、全て略同一の物が用いられる。具体的には、ディスク33の直径は、例えば5~15mmとすることができる。また、ディスク33の厚さは、例えば0.5~3mmとすることができる。
【0025】
ディスク33は、硬質板32上の所定の位置に固定されていてもよい。具体的には、
図5及び
図6に示されるように、ディスク331の硬質板321と接する側の面に設けられた凸部332を、硬質板321の上面の所定位置に、当該凸部332と嵌合するように形成された凹部333に対して嵌め込むことにより、ディスク331の水平方向へのずれを防止することができる。このとき、ディスク331の硬質板321の上面より突き出た部分の高さは、0.5mm~3mm程度とすることができる。ディスクの固定手段は、上記の他に、接着剤やテープ、磁力などを利用するものであってもよい。
【0026】
また、硬質板32の上面には、複数個の果実を載置することができるが、その場合、果実同士の接触を避ける必要がある。落下時の衝撃により果実同士が衝突すると、ディスク33との接触面以外からも衝撃が印加されるため、各果実に印加される衝撃の強さを一定にすることができず、果実間の落下損傷耐性を比較することが困難になるからである。具体的には、
図4に示されるように、仕切板35により区切られた区画に、果実を各1個ずつ収容することにより、個々の果実の接触を避けることができる。
【0027】
次に、上記硬質板32を、上面に果実を載置させた状態で自由落下させることで、果実に落下時の衝撃を加える。硬質板32が落下した際の衝撃が、ディスク33を介して、果実に伝えられる。
【0028】
ここで、硬質板32の落下高さは、果実間の損傷程度を比較できる限りにおいて限定されず、対象とする果実の易損性に応じて変えることができるが、通常では3~15cm、さらには4~7cmとすることができる。
【0029】
また、本実施の形態においては、果実を載置した硬質板32を繰り返し落下させることもできる。1回の落下では果実に加えられる衝撃が小さいために、果実間での損傷の有無や程度を比較することが難しい場合がある。その場合、上記のように落下高さを高くすることで果実に印加される衝撃の強度を増加することもできるが、落下試験装置1の設計変更が必要になる。そのため、落下回数を多くして、果実に繰り返し衝撃を加えることによって、蓄積疲労による損傷を発生させることで、より容易に果実間の損傷の比較を行えるようにすることができる。落下させる回数は特に限定されず、対象とする果実の易損性に応じて変えることができるが、通常では1~9回、さらには1~6回とすることができる。
【0030】
なお、落下面は平面であってもよいし、ブロックなどの障害物を配置してもよい。障害物を配置する場合、その硬さを変化させることによって、落下時に加えられる衝撃の強さを変化させることができる。
【0031】
本実施の形態においては、果実がディスク33に接した状態を維持したまま、硬質板32を落下させる必要がある。果実がディスク33に接していないと、落下時に果実に加えられる衝撃の強さを一定にできないためである。通常、果実を固定していないと、表面の形状が曲面又は不定形である果実の場合、硬質板32の上面で果実が転がってしまい、ディスク33と接した状態を維持することができない。
【0032】
果実とディスク33とを接触させた状態で維持する手段としては、特に限定されないが、例えば
図4に示されるように、前記果実と前記ディスク33に紙片などの帯状体36を巻き付けて固定する方法などを挙げることができる。あるいは、
図5に示されるように、個々の果実に対応する小型の硬質板321を用いて、果実と硬質板321に帯状体361を巻き付けて固定する方法を挙げることもできる。
【0033】
帯状体36は、果実を傷付けずに固定できるように、樹脂、紙、布などの柔軟性を有する素材で形成されていることが望ましい。さらに好適には、
図5に示されるように、帯状体361は両端に面ファスナー(362,363)を備えた構成とすることができる。かかる構成により、面ファスナーのフック部362とループ部363を閉じ合わせることで果実の固定が容易となり、また再利用も可能となるため経済的である。
【0034】
このようにして、果実がディスク33に接した状態を維持したまま、硬質板32を落下させた後は、衝撃による果実の損傷の有無や、損傷の大きさを確認する。本実施の形態においては、落下により果実に加えられる衝撃の強さが一定となるため、果実間の損傷の大きさを比較することで果実間の易損性(落下損傷耐性)の比較が可能となる。
【0035】
次に、上記の落下試験方法に用いられる果実の落下試験装置1の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0036】
図1、
図2に示されるように、本実施の形態に係る落下試験装置1は、フレーム2と、その内側に配置されるケース3と、フレーム2の左右両端の内側に設けられる一対のハネ部4a,4bと、から主に構成されている。
【0037】
フレーム2は、前後左右の側壁21,21,22,22からなる角筒状に構成される。フレーム2は床面を備えていてもよいが、ケース3内に果実を配置するなどの作業の妨げとなるため、天井面は備えていない。また、落下試験の様子が観察しやすいよう、フレーム2はアクリル樹脂などの透明又は半透明の素材により構成されていることが好ましい。
【0038】
左右一対のハネ部4a,4bは、その開閉動作によりケース3を落下させるものである。ハネ部4a,4bは矩形板状の部材であり、それぞれ長辺方向を軸方向として、フレーム2の前後の側壁21,21において、軸41,41により軸支されている。
【0039】
図1(A)に示されるように、開閉動作の「閉時」において、ハネ部4a,4bは水平に固定され、その内側端部42,42において、それぞれケース3を下方から支持するように構成されている。すなわち、ハネ部4a,4bを軸支する軸41は、ハネ部4a,4bの短辺方向中央よりもやや外側(側壁22側)に寄っており、ハネ部4a,4bの重心は軸41よりも内側寄りとなる。そのため、外側端部43,43を上方から係止することで、ハネ部4a,4bの回動を止めて水平に固定することができる。
【0040】
一方、
図1(B)に示されるように、開閉動作の「開時」においては、上述の外側端部43,43に対する上方からの係止を解除することで、ハネ部4a,4bの固定が解除され(開放され)、ハネ部4a,4bが回動可能となる。そうすると、ハネ部4a,4bは重心のある内側が下になるように回動するため、内側端部42,42により下方から支持されていたケース3は、自重により落下することになる。
【0041】
なお、ハネ部4a,4bにおいて、軸41から内側端部42までの短辺方向の長さは、その開閉動作を妨げないよう、側壁21における軸41の設置高さ、これはケース3の落下高さに略等しいが、それよりも短くなっている。
【0042】
ハネ部4a,4bの解放によるケース3の落下高さは、前述の通り、果実間の損傷程度を比較できる限りにおいて限定されず、対象とする果実の易損性に応じて変えることができるが、通常では3~15cm、さらには4~7cmとすることができる。
【0043】
なお、前述の通り、落下面は平面であってもよいし、ブロックなどの障害物を配置してもよい。
【0044】
ケース3は、フレーム2の内側に配置され、落下試験の対象である果実を収容するためのものである。ケース3は、底面に果実を載置するための硬質板32を備えている。硬質板32については、前述の通りである。また、この硬質板32の上面には、前述のディスク33が配置されている。なお、硬質板32の上面に配置されるディスク33の数は、硬質板32の上面に載置される果実の数と同じである。
【0045】
ディスク33は、前述の通り、硬質板32上の所定の位置に固定されていてもよい。具体的には、
図5及び
図6に示されるように、ディスク331の硬質板321と接する側の面に設けられた凸部332を、硬質板321の上面の所定位置に、当該凸部332と嵌合するように形成された凹部333に対して嵌め込むことにより、ディスク331の水平方向へのずれを防止することができる。このとき、ディスク331の硬質板321の上面より突き出た部分の高さは、0.5mm~3mm程度とすることができる。ディスクの固定手段は、上記の他に、接着剤やテープ、磁力などを利用するものであってもよい。
【0046】
硬質板32の上面に複数の果実が載置される場合は、前述の通り、当該果実同士の接触を避けるため、ケース3の内部は、例えば仕切板35により区切られ、各区画に果実Fを各1個ずつ収容するようにすることができる(
図4(A)参照)。
【0047】
また、ケース3には、前述のように、落下時に果実とディスク33とを接触させた状態で維持する手段として、例えば紙片などの帯状体36が備えられていてもよい。この帯状体36は、例えば果実Fとディスク33に巻き付けて固定するために用いることができる(
図4参照)。あるいは、
図5に示されるように、個々の果実に対応する小型の硬質板321を用いる場合には、帯状体361は硬質板321に備えられていてもよい。この帯状体361は、例えば果実Fと硬質板321に巻き付けて固定するために用いることができる。
【0048】
このように帯状体36で果実を固定することにより、果実同士の接触を防止することも可能となる。帯状体36は、前述のように、柔軟性を有する素材で形成されていることが望ましい。さらに好適には、
図5に示されるように、帯状体361は両端に面ファスナー(362,363)を備えた構成とすることができる。かかる構成により、面ファスナーのフック部362とループ部363を閉じ合わせることで果実の固定が容易となり、また再利用も可能となるため経済的である。
【0049】
上述のように、本実施の形態に係る果実の落下試験装置1においては、ハネ部4a,4bの開閉(固定及び開放)という簡単な操作により、果実の落下試験を実施することができる。それゆえ、繰り返し落下させる操作も簡易に行うことができ、傷付きやすい果実を対象とする比較的低い高さからの繰り返し落下試験に特に適した構造となっている。
【0050】
次に、本実施の形態に係る果実の落下試験装置1の使用方法及び作用を説明する。
【0051】
(1)はじめに、
図4に示されるように、ケース3の硬質板32の上面に、対象となる果実Fを載置する。このとき、個々の果実Fと硬質板32の上面との間に、ディスク33を挟み込むようにする。また、落下時に果実Fがディスク33に接した状態を維持できるよう、果実Fとディスク33若しくは硬質板32を、例えば紙片などの帯状体36を巻き付けることにより固定する。
【0052】
硬質板32の上面と果実Fとの間にディスク33を介在させ、落下時の衝撃印加面積をディスク33との接触面積に限定することにより、果実に加えられる衝撃の強さを一定に制御することができる。衝撃の強さを一定とすることにより、衝撃により果実が受ける損傷の程度も一定となるため、果実間の落下損傷耐性を比較することが可能となる。
【0053】
また、果実Fとディスク33若しくは硬質板32を固定することにより、硬質板32の上面で果実Fが転がってディスク33から離れてしまうのを避けることができる。
【0054】
(2)次に、フレーム2の左右両端の内側に備えられたハネ部4a,4bの外側端部43,43に上方から係止することで、ハネ部4a,4bを水平に固定する(
図1(A)参照)。
【0055】
ハネ部4a,4bは、フレーム2の前後の側壁21,21において、軸41,41により軸支されている。軸41は、ハネ部4a,4bの短辺方向中央よりもやや外側(側壁22側)に寄っており、ハネ部4a,4bの重心は軸41よりも内側寄りとなる。そのため、外側端部43,43に上方から係止し、ハネ部4a,4bの回動を止めることによって、ハネ部4a,4bを水平に固定することができる。
【0056】
(3)次に、水平に固定されたハネ部4a,4bの内側端部42,42の上に、ケース3の下面の左右両端部を引掛けるようにして載置する(
図1(A)参照)。
【0057】
(4)さらに、
図1(B)に示されるように、ハネ部4a,4bの外側端部43,43に対する上方からの係止を解除することにより、ケース3を自重により落下させる。
【0058】
すなわち、ハネ部4a,4bの固定が解除され(開放され)ることにより、ハネ部4a,4bが回動可能となって、ハネ部4a,4bは重心のある内側が下になるように(すなわち、内側端部42が側壁22側に近づくように)回動する。そうすると、ハネ部4a,4bの内側端部42,42により下方から支持されていたケース3を、自重により落下させることができる。
【0059】
ハネ部4a,4bにおいて、軸41から内側端部42までの短辺方向の長さは、側壁21における軸41の設置高さ、これはケース3の落下高さに略等しいが、それよりも短くなっている。本実施の形態において、落下高さは対象とする果実の易損性に応じて変えることができるが、通常3~15cmである。そのため、装置全体も小型化・軽量化することが可能となる。
【0060】
なお、1度の落下では果実の損傷を確認できない場合には、上記(2)~(4)を繰り返すことで複数回の落下試験を行うこともできる。繰り返し落下させることで、果実に疲労蓄積による損傷が発生するためである。
【0061】
(5)最後に、落下したケース3内から果実Fを回収し、衝撃による果実の損傷の有無や、損傷の大きさを確認する。損傷の有無の判定は、果実に圧迫による変形又はすれ傷が発生していれば、損傷有りと判定することができる。
【0062】
本実施の形態においては、果実と硬質板32との間にディスク33を介在させることで、落下時の衝撃印加面積を一定にでき、それにより果実に加えられる衝撃の強さが一定となる。したがって、果実間の損傷の有無や大きさを比較することで、果実間の易損性(落下損傷耐性)の比較が可能となる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本実施の形態を詳しく説明する。
【0064】
(実施例1)
図1、
図2に示されるように、果実の落下試験装置1は、フレーム2と、その内側に配置されるケース3と、フレーム2の左右両端の内側に設けられる一対のハネ部4a,4bと、フレーム2の左右両端に設けられる一対のハネ部開閉装置5a,5bと、を備えている。
【0065】
フレーム2は、幅255mm、奥行210mm、高さ125mmの角筒状であり、前後左右の側壁21,21,22,22により構成される。また、フレーム2は透明なアクリル樹脂により構成されているため、内部の様子を観察することができる。
【0066】
左右の側壁22,22の長辺方向中央付近の高さ58mmの位置には、ハネ部開閉装置5a,5bのピストン52をフレーム2内に挿通させるための穴が設けられている。また、このピストン52を挿通させるための穴の左右で若干下側の位置には、ハネ部開閉装置5a,5bをネジ止めするための一対の穴が設けられている。
【0067】
左右一対のハネ部4a,4bは、縦46mm、横187mm、厚さ5mmの矩形板状の部材である。ハネ部4a,4bは、それぞれ長辺方向を軸方向として、フレーム2の前後の側壁21,21において、高さ47mm、左右両端から24mm中央寄りの位置に、軸41により軸支されている。
【0068】
図1(A)に示されるように、ハネ部4a,4bをその長辺方向に軸支する軸41は、ハネ部4a,4bの短辺方向中央よりもやや外側(側壁22側)に寄っている。具体的には、短辺方向における軸41から内側端部42までの長さは、軸41から外側端部43までの長さの略2倍である。そのため、ハネ部4a,4bの重心は軸41よりも内側寄りとなっている。
【0069】
左右一対のハネ部開閉装置5a,5bは、それぞれハネ部4a,4bを開閉させることにより、果実を収容するケース3を落下させるためのものである。
図2に示されるように、ハネ部開閉装置5a,5bは、フレーム2の左右の側壁22,22の長辺方向中央付近の外側に取付けられている。
図3に示されるように、ハネ部開閉装置5a,5bは、プレート51と、ピストン52と、コイルばね53と、フック54と、から主に構成されている。
【0070】
プレート51は、縦38mm、横82mm、厚さ10mmの矩形板状の部材である。プレート51の長辺方向中央付近の上部には、ピストン52を水平方向に挿通させる穴が設けられている。また、プレート51のフレーム2側の左右両端の位置には、一対のスペーサー511,511が貼付固定されている。これにより、スペーサー511,511間には、フック54を回動可能に取付けるための空間が確保される。スペーサー511は、縦38mm、横12mm、厚さ5mmの矩形板状である。
【0071】
プレート51の左右両端であり、前記ピストン52を挿通させる穴より若干下側の位置には、プレート51とスペーサー511とを水平方向に貫通する一対の穴が設けられている。この穴は、ハネ部開閉装置5a,5bを左右の側壁22,22に固定するネジ56,56を挿通させるための穴である。
【0072】
ピストン52は、
図3(B)、(C)に示されるように、プレート51と左右の側壁22とを水平方向に貫通するように備えられた、直径8mm、長さ40mmの略円柱状のステンレス製部材である。また、ピストン52の長手方向略中央には、フック54の切欠き541を嵌合させるための溝523が周方向に刻設されている。さらに、ピストン52の両端部には、ピストン52よりも若干大きい直径を有する円盤である内側先端部521及び外側先端部522が、それぞれ接合されている。
【0073】
ピストン52の外側(フレーム2とは反対側)にはコイルばね53が巻き付けられており、外側先端部522とプレート51の外側面との間にコイルばね53が挟み込まれている。ハネ部4a,4bの固定時において、ピストン52は
図3(C)に示す位置に固定されており、コイルばね53は、外側先端部522とプレート51の外側面との間で圧縮されている。
【0074】
このとき、フレーム2の内側に内側先端部521が突出し、ハネ部4a,4bの外側端部43の上面を係止することによって、ハネ部4a,4bを水平に固定するように構成されている。すなわち、ハネ部4a,4bの重心は軸41よりも内側寄りとなっているため、ハネ部4a,4bの解放時には内側端部42が下になるように回動する。それゆえ、ピストン52の内側先端部521によってハネ部4a,4bの外側端部43の上面を係止して、ハネ部4a,4bの回動を止めることで、ハネ部4a,4bを水平に固定することができる。
【0075】
一方、ハネ部4a,4bの解放時においてコイルばね53は、ピストン52をフレーム2の外側方向(すなわち、
図3(B)における矢印方向)に引き抜くように付勢させる。なお、ピストン52の内側先端部521の直径は、プレート51に設けられたピストン52を挿通させる穴の孔径よりも大きいことから、コイルばね53によって付勢されたピストン52の全体が前記穴から飛び出すことはない。
【0076】
フック54は、縦60mm、横10mmの略矩形の薄板状に形成された鉄製部材であり、ピストン52の内側先端部521をフレーム2の内側に突出した位置で固定したり、当該固定を解除したりするものである。
【0077】
フック54は、
図2及び
図3に示されるように、プレート51のフレーム2側の中央やや後方寄りに、上下両端がプレート51から突き出るように軸支されている。フック54は、その中央やや下方寄りの位置において、フレーム2に対してピン55により軸支されている。
【0078】
フック54のピストン52に対応する位置には、略半円形の切欠き541が設けられている。ハネ部4a,4bの固定時においては、
図2及び
図3(C)に示されるように、切欠き541がピストン52の溝523に嵌合するように、フック54の上端がコイルばね58で引っ張られている。このコイルばね58の一方の端は、フック54の上端に設けられた穴に掛合されており、他端は、プレート51の上側端面の前方寄りに螺着されたネジ57に固定されている。
【0079】
また、フック54の下端は、ネジ542により、スイッチSに繋げられたインナーワイヤ543と螺合されている。インナーワイヤ543はアウターワイヤ544に挿通され、アウターワイヤ544は、プレート51の下端に設けられたワイヤー案内部512の挿通孔を通って、スイッチS(図示せず)に繋げられる。
【0080】
スイッチSは、ハネ部4a,4bの開閉動作を制御するものである。スイッチSの開時においては、
図3(A)に示されるように、インナーワイヤ543が引っ張られることで、フック54の下端が矢印方向に回動する。次いで、てこの原理でフック54の上端が矢印方向に回動し、切欠き541とピストン52の溝523との嵌合が解除される。すると、コイルばね53によりピストン52が付勢されて、ハネ部4a,4bの外側端部43を上方から係止していた内側先端部521が、
図3(C)の位置から
図3(B)の位置に移動する。その結果、ハネ部4a,4bの外側端部43を上方から係止していた内側先端部521が左右の側壁22の方向に引っ込むため、ハネ部4a,4bの固定が解除され(開放され)、ハネ部4a,4bが回動可能となるように構成されている。
【0081】
一方、スイッチSの閉時においては、インナーワイヤ543が弛緩することで、コイルばね58の弾性力によってフック54の上端がピストン52側に引っ張られ、切欠き541が溝523と嵌合できるように構成されている。その際、ハネ部開閉装置5aのピストン52を手でフレーム2の内側方向に押し込み、フック54の切欠き541がピストン52の溝523に嵌合するようにする。
【0082】
ケース3はフレーム2の内側に配置され、縦115mm、横175mm、高さ35mmの箱形であり、
図4に示されるように、収容部31とフタ34により主に構成されている。収容部31は、底面としての硬質板32と、前後左右の側壁と、内部を6区画に区切る3枚の仕切板35,・・・と、を備えている。フタ34は、収容部31に嵌合し、落下時に収容部31から果実が飛び出すのを防ぐものである。また、フレーム2と同様に、ケース3は硬質板32を除いて透明なアクリル樹脂により構成されているため、内部の様子を観察することができる。
【0083】
硬質板32は、アルミニウム製の矩形薄板である。硬質板32の上面には、アルミニウム製のディスク33が、1区画につき1枚配置されている。また、硬質板32の上面には、1区画につき1個の果実Fが載置される。
図4(A)に示されるように、仕切板35で区切られた各区画に果実Fを1個ずつ収容することにより、落下時に果実同士が衝突してランダムな損傷が発生するのを防ぐことが可能となる。
【0084】
上記の落下試験装置1を用いた果実の落下試験方法は、次の通りである。
【0085】
(1)はじめに、ケース3内に試験対象であるイチゴ果実F(品種A及びB、各3個)を収容する。すなわち、収容部31内の仕切板35で区切られた全6区画に、イチゴ果実Fを1個ずつ収容する(
図4(A)参照)。試験中にイチゴ果実Fが転がってディスク33から離れてしまわないよう、果実Fとディスク33に帯状体36として幅10mm程度の細長い紙片を巻き付けて固定する(
図4(B)参照)。その後、果実Fを収容した収容部31にフタ34を嵌合させる。
【0086】
(2)次に、スイッチSを「閉」に入れた状態で、ハネ部開閉装置5aのピストン52を手でフレーム2の内側方向に押し込み、フック54の切欠き541がピストン52の溝523に嵌合するようにする。インナーワイヤ543が弛緩状態にあり、フック54の上端はコイルばね58の弾性力によってピストン52側に引っ張られているため、ピストン52は
図4(C)の位置で固定される。続いて、ハネ部開閉装置5bについても同様の操作を行う。
【0087】
(3)上記でハネ部開閉装置5a,5bのピストン52をフレーム2の内側に突出した状態で固定した後は、ハネ部4a,4bの内側端部42の上面を、ピストン52の内側先端部521により係止することで、ハネ部4a,4bを水平に固定する(
図1(A)参照)。
【0088】
(4)上記で水平に固定されたハネ部4a,4bの内側端部42,42の上に、(1)で果実を収容したケース3の下面の左右両端部を引掛けるようにして載置する(
図1(A)参照)。
【0089】
(5)次いで、スイッチSを「閉」から「開」に切り替えて、
図1(B)のようにハネ部4a,4bの固定を解除する(解放する)。すなわち、スイッチSを「開」に入れ、インナーワイヤ543が引っ張られることで、てこの原理でフック54の上端が矢印方向に回動し、切欠き541とピストン52の溝523との嵌合が解除される。すると、コイルばね53の弾性力によりピストン52が付勢されて、
図3(C)の位置から
図3(B)の位置に移動し、ハネ部4a,4bが回動可能となる。
【0090】
(6)上記の結果、ケース3は自重により落下する。落下高さは、側壁21における軸41の設置高さに略等しく、約50mmである。落下により、イチゴ果実Fはディスク33との接触面から一定の強さの衝撃を受ける。さらに、(2)~(5)の操作を2回繰り返すことで、イチゴ果実Fに疲労蓄積による損傷を発生させる。
【0091】
(7)最後に、落下したケース3内からイチゴ果実Fを回収し、衝撃による果実の損傷の有無や、損傷の大きさを確認する。その結果、品種Aでは、すべてのサンプルにおいて目に見える損傷は発生しなかったのに対し、品種Bでは、すべてのサンプルにおいてディスク33との接触面の果皮に凹み及び変色が確認された。これにより、品種Aに比べて品種Bは落下損傷耐性が劣る(易損性が高い)ことが示された。
【0092】
(8)また、上記で用いたサンプルと同じ品種A及びBのイチゴ果実を冷蔵保存(5℃、1日間)したものを用いて(1)~(7)の落下試験を実施したところ、上記と同様の結果が得られた。これにより、冷蔵保存した果実に対しても本落下試験方法を適用可能であることが示された。
【0093】
(実施例2)
次に、
図5を用いて、果実の落下試験装置1で使用される硬質板、ディスク及び帯状体の他の実施例の構成について説明する。
図5中、(A)は上面図、(B)は硬質板にディスクを固定する方法を示すX-X軸部分断面図、(C)はX-X軸断面図、(D)は果実と硬質板に帯状体を巻き付けた状態を示す正面図である。本実施例において、前記した落下試験装置1と同様の構成については、記載を省略することがある。
【0094】
図5に示す他の実施例において、硬質板321は、一辺の長さが50mm程度、厚さ3mmの略正方形のステンレス製薄板である。この硬質板321の上面の中央付近には、
図5(B)に示されるように、ディスク331の硬質板321と接する側の面に設けられた凸部332と嵌合するように、凹部333が形成されている。ディスク331は、直径10mm、厚さ2mmのアルミニウム製円盤である。ディスク331の硬質板321と接する側の面の中央付近には、高さ0.5mmの凸部332が設けられている。
【0095】
図5(B)に示されるように、本実施例において凹部333は二段凹部構造となっている。すなわち、凹部333は、ディスク331の直径に略等しい口径を有する第1の凹部の下側に、さらに凸部332と嵌合する形状の第2の凹部が形成されることにより、二段凹部構造となっている。なお、凸部332と凹部333を嵌合させたとき、ディスク331の硬質板321の上面より突き出た部分の高さは1.5mmとなる。
【0096】
このように構成されたディスク331の凸部332を硬質板321の凹部333に対して嵌め込むことにより、ディスク331の水平方向へのずれを防止することができるうえに、硬質板321の上に固定されたディスク331の取外しが容易となる。
【0097】
また、
図5(A)及び(C)に示されるように、硬質板321の下側には帯状体361が貼付固定されている。この帯状体361は、幅30mm程度、長さ150mm程度の柔軟性を有する樹脂製テープで構成されており、硬質板321は帯状体361の中央付近に固定されている。帯状体361の一方の端部の上面側又は下面側には、面ファスナーのフック部362が設けられている。また、帯状体361の他方の端部には、フック部362が設けられた面と上下反対側の面に、面ファスナーのループ部363が設けられている。
【0098】
このように構成された帯状体361は、
図5(D)に示されるように、両端のフック部362とループ部363を閉じ合わせることにより、果実Fと硬質板321に帯状体361を巻き付けて容易に固定することができる。また、果実Fの大きさに応じてフック部362とループ部363を閉じ合わせる位置を調整することにより、果実Fを損傷させずにしっかりと固定することができる。
【0099】
かかる構成を有する硬質板321、ディスク331及び帯状体361からなるユニットは、前記ケース3の内部に1つ又は複数配置される。具体的には、硬質板321の上面の所定位置にディスク331を固定し、ディスク331の上に試験対象である果実Fを載置する。帯状体361を果実Fと硬質板321に巻き付けて固定した状態で、当該ユニットを、ケース3の収容部31の底面に配置する。
【0100】
このように、小型の硬質板321の中央部に各1個の果実Fを固定したユニットを個々に分離できる構成とすることにより、帯状体361による果実Fの固定作業が楽に行えるうえに、仕切板35がなくても試験中の果実同士の衝突を防ぐことができ、ケース3の軽量化も可能となる。
【0101】
(実施例3)
次に、
図6を用いて、果実の落下試験装置1で使用される硬質板及びディスクの、さらに別の実施例の構成について説明する。
図6は硬質板にディスクを固定する方法を示す部分断面図である。本実施例において、前記した落下試験装置1と同様の構成については、記載を省略することがある。
【0102】
図6に示すさらに別の実施例において、硬質板321は、一辺の長さが50mm程度、厚さ3mmの略正方形のステンレス製薄板である。この硬質板321の上面の中央付近には、ディスク331の硬質板321と接する側の面に設けられた凸部332と嵌合するように、凹部333が形成されている。ディスク331は、直径10mm、厚さ2mmのアルミニウム製円盤である。ディスク331の硬質板321と接する側の面の中央付近には、高さ0.5mmの凸部332が設けられている。
【0103】
本実施例では、
図6に示されるように、凹部333は、凸部332と嵌合する形状の一段凹部構造として形成されている。なお、凸部332と凹部333を嵌合させたとき、ディスク331の硬質板321の上面より突き出た部分の高さは1.5mmとなる。
【0104】
このように構成されたディスク331の凸部332を硬質板321の凹部333に対して嵌め込むことにより、ディスク331の水平方向へのずれを防止することができるうえに、硬質板321の上に固定されたディスク331の取外しが容易となる。
【0105】
かかる構成を採用することにより、凸部332の形状が同一であり、ディスク331の直径のみを変化させた様々なサイズのディスクを用意しておき、果実Fの大きさに応じて適切なサイズのディスクに交換することが容易となる。
【0106】
また、
図6には図示されないが、硬質板321の下側には、実施例2で述べたような帯状体361が貼付固定されていてもよい。
【0107】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態及び実施例について詳述してきたが、具体的な構成は、これらに限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0108】
例えば、前記実施例では、イチゴ果実の落下試験方法及びそれに用いられる落下試験装置について説明したが、これに限定されるものではなく、モモ、オウトウ、スモモ(プラム)、ネクタリン、アンズ、サクランボ、アメリカンチェリー、ビワ、洋ナシ、プルーン、マンゴーといった傷付きやすい果実に対しても、本発明を適用することができる。
【0109】
例えば、前記実施例では、果実を繰り返し落下させる落下試験方法について説明したが、これに限定されるものではなく、1回の落下により果実の衝撃への耐性を評価可能である場合は、繰り返し落下させないこととすることも可能である。また、衝撃への耐性が高い果実を試験対象とする場合は、例えば4回、5回、6回、・・・というように、果皮に損傷が発生するまで落下回数を増やすことも可能である。
【0110】
例えば、前記実施例では、落下高さを50mmに設定した落下試験装置について説明したが、これに限定されるものではなく、対象とする果実の落下損傷耐性に応じて任意の落下高さに設定することが可能である。
【0111】
例えば、前記実施例では、コイルばねにより付勢されたピストンを回動可能なフックで固定及び開放できるように構成されたハネ部開閉装置を用いて、ハネ部の開閉動作を行う落下試験装置について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ハネ部4a,4bの内側端部42,42にそれぞれ帯ゴムの一端を固定し、当該帯ゴムの他端をフレーム2の側壁21の内側に1箇所設けられたハンドルに結び付け、ハネ部4a,4bを上記帯ゴムにより引っ張ることで平行に固定し(閉時)、開時は上記ハンドルを開放して帯ゴムの他端を解放することにより、ハネ部4a,4bを開放することができるように構成された、ハネ部開閉機構を採用することもできる。
【0112】
例えば、前記実施例では、個々の果実を収容するスペースを6区画設けた落下試験装置について例示したが、これに限定されるものではなく、果実の大きさや同時に試験するサンプル数に応じて、より多くの又はより少ない区画数とすることもできる。
【符号の説明】
【0113】
1 :落下試験装置
2 :フレーム
21,22 :側壁
3 :ケース
32,321:硬質板
33,331:ディスク
36,361:帯状体
4a,4b :ハネ部
42 :内側端部
F :果実