(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】試験測定装置及び被試験材料特性測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 22/00 20060101AFI20241216BHJP
【FI】
G01N22/00 S
G01N22/00 X
G01N22/00 V
(21)【出願番号】P 2020100990
(22)【出願日】2020-06-10
【審査請求日】2023-05-17
(32)【優先日】2019-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・クラウスカ
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-224414(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0187266(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0355109(US,A1)
【文献】米国特許第05691474(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N22/00-G01N22/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDream3)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射コンポーネント及び吸収コンポーネントを有し、被試験材料の第1面と接触するように構成される基準ユニットと、
上記被試験材料の上記第1面と反対側の第2面と接触するように構成される計測器と
を具え、
上記計測器が、
上記被試験材料を通して上記基準ユニットの上記吸収コンポーネントに向けて所定周波数の第1
ミリ波信号を出力するように構成された第1送信機と、
上記被試験材料からの第1反射信号を受信するように構成された第1受信機と
上記被試験材料を通して上記基準ユニットの上記反射コンポーネントに向けて上記所定周波数の第2
ミリ波信号を出力するように構成された第2送信機と、
上記反射コンポーネントからの第2反射信号を受信するように構成された第2受信機
と
を有する試験測定装置。
【請求項2】
上記計測器は、上記第1
ミリ波信号、上記第2
ミリ波信号、上記第1反射信号及び上記第2反射信号に基づいて、上記被試験材料が所定要件を満たしているかどうかを判定するよう構成されるプロセッサを更に有する請求項1の試験測定装置。
【請求項3】
上記プロセッサは、上記第1反射信号に基づいて、上記被試験材料が反射基準に合格したかどうかを判定する更に構成される請求項2の試験測定装置。
【請求項4】
上記プロセッサは、上記第2反射信号に基づいて、上記被試験材料が透過基準に合格したかどうかを判定するように更に構成される請求項2又は3の試験測定装置。
【請求項5】
反射コンポーネント及び吸収コンポーネントを有し、被試験材料の第1面と接触するように構成される基準ユニットと、上記被試験材料の上記第1面と反対側の第2面と接触するように構成される計測器とを有する試験測定装置を用いて上記被試験材料の特性を測定する方法であって、
上記計測器の第1送信器が、上記被試験材料を通して
上記基準ユニットの上記吸収コンポーネントに向かって所定周波数の第1
ミリ波信号を送信する処理と、
上記計測器の第1受信器が、上記第1
ミリ波信号の送信に応答して第1応答信号を受信する処理と
、
上記計測器の第2送信器が、上記被試験材料を通して
上記基準ユニットの上記反射コンポーネントに向かって
上記所定周波数の第2
ミリ波信号を送信する処理と、
上記計測器の第2受信器が、上記第2
ミリ波信号の送信に応答して第2応答信号を受信する処理と、
上記計測器が、上記第1応答信号及び上記第2応答信号に基づいて、上記被試験材料の透過率、反射率又は挿入損失を求める処理と
を具える被試験材料特性測定方法。
【請求項6】
上記第1送信器が、上記
被試験材料なしで、上記吸収コンポーネントに向かって所定周波数の上記第1
ミリ波信号を送信する処理と、
上記第1受信器が、上記第1
ミリ波信号の送信に応答して第3応答信号を受信する処理と、
上記第2送信器が、上記
被試験材料なしで、上記反射コンポーネントに向かって
上記所定周波数の上記第2
ミリ波信号を送信する処理と
、
上記第2受信器が、上記第2
ミリ波信号の送信に応答して第4応答信号を受信する処理
と
を有する校正処理を更に具える請求項
5の被試験材料特性測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被試験材料のレーダーに対する特性を測定する装置及び方法に関し、特に、被試験材料のレーダーの透過率や反射率を測定するミリ波材料試験装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、多くの車両が、自動緊急ブレーキや車線変更アシストなどの高度運転支援システム(ADAS:advanced driver assistance systems)を有している。これらの高度運転支援システムには、多くの場合、レーダーを使用して他の車両又は他の物体が存在するかどうかを検出し、例えば、必要に応じて、車両を減速させる機能がある。レーダーは、電波を放射し、放射した対象物の表面からの電波の反射を受け取って、対象物の範囲、角度、相対速度を決定するために使用される。従来、多くのレーダー・システムは24GHz帯の周波数を使用してきたが、多くの新しい車両は77GHz帯の周波数を使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】「コーナーキューブ」の記事、Wikipedia(日本語版)、[オンライン]、[2020年6月8日検索]、インターネット<https://ja.wikipedia.org/wiki/コーナーキューブ>
【文献】「金型の抜き勾配」、ものづくりウェブ、[online]、[2020年6月8日検索]、インターネット<https://d-engineer.com/mold/nukikoubai.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両の様々なコンポーネントは、レーダーの放射周波数と相互作用したり、レーダーの放射周波数をブロックしたりすることがある。このため、レーダー・システムが、これらの望ましい帯域の周波数で適切にレーダーを放射し、受信できるか、車両の様々なコンポーネントについて確認する試験を行う必要がある。従来、これらを試験するために、同軸ケーブル・システムが使用されている。しかし、77GHz帯の周波数を処理できる同軸ケーブルは、多くの場合、非常に高価で壊れやすい。
【0006】
本発明の実施形態は、これら及び他の従来技術の欠陥に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被試験材料のレーダーに関する特性を測定できる小型で堅牢なミリ波の試験測定装置を提供する。試験測定装置には、計測器と基準ユニットがあり、試験材料を試験する際には、これらの間に被試験材料を挟んで使用する。基準ユニットには、被試験材料との接触面上に吸収コンポーネントと反射コンポーネントがある。基準ユニットは、被試験材料の第1面で被試験材料と接触する。計測器は、被試験材料の第1面の裏の第2面で被試験材料と接触する。
【0008】
計測器には、被試験材料の第2面と接触する接触面上に、レーダー信号の第1送信機及び第1受信機と、第2送信機及び第2受信機とを有する送受信面がある。第1送信機は、被試験材料を通して基準ユニットの吸収コンポーネントに向けて、所定周波数の第1レーダー信号を出力する。第1受信機は、被試験材料からの第1反射信号を受信する。このとき、吸収コンポーネントは、レーダー信号を吸収するので、第1レーダー信号を反射しない。よって、第1反射信号は、被試験材料からのものとなる。第2送信機は、被試験材料を通して基準ユニットの反射コンポーネントに向けて、所定周波数の第2レーダー信号を出力する。第2受信機は、反射コンポーネント及び被試験材料からの第2反射信号を受信する。反射コンポーネントには、例えば、コーナーキューブを用いても良く、これは、信号が入射された方向に向けて、信号を反射する(非特許文献1参照)。計測器は、第1及び第2反射信号に基づいて、被試験材料のレーダー信号に関する透過率、反射率、挿入損失等を求める。これらの結果は、表示部を通してユーザに表示されても良い。このとき、シンプルに、透過率、反射率、挿入損失等に関する基準に合格しているか否かだけを表示しても良い。
【0009】
計測器の被試験材料との接触面と、基準ユニットの被試験材料との接触面には、吸収コンポーネントと第1送機及び第1受信機の位置関係、反射コンポーネントと第2送信機及び第2受信機の位置関係が適切な位置関係となるようアライメントするアライメント機構を設けても良い。
【0010】
また、測定を開始する前に、被試験材料なしで、計測器の接触面と、基準ユニットの接触面とを接触させた状態にして、校正処理(例えば、計測器の目盛り(透過率、反射率、挿入損失等)をゼロにする処理)を行っても良い。また、被試験材料がない状態で、反射コンポーネントへ向けてレーダー信号を放射し、それに応じた反射信号を記録しておいても良く、被試験材料がある状態とない状態における反射信号の差異によって、被試験材料の特性を評価するようにしても良い。
【0011】
本発明の実施形態の態様、特徴及び効果は、図面を参照した以下の説明から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明のいくつかの実施形態によるミリ波材料試験装置の例の図である。
【
図2】
図2は、被試験材料を試験するのに使用されている状態の
図1のミリ波材料試験装置の例を示す。
【
図3】
図3は、
図1のミリ波材料試験装置の接触面のブロック図である。
【
図4】
図4は、
図1のミリ波材料試験装置の基準ユニットの接触面のブロック図である。
【
図5】
図5は、
図1のミリ波材料試験装置の動作を示すフローチャートの例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願は、ミリ波(millimeter waves)材料試験装置を開示し、これは、手で持ち運びできるサイズ(ハンドヘルド)であり、自動車製造及び自動車修理の支援などに利用できる。ミリ波材料試験装置は、これらに限定するものではないが、例えば、塗料、コーティング、バンパー、ドア・パネルなどの材料を、レーダーの透過率、反射率、挿入損失等に関して試験ができる。ミリ波材料試験装置は、被試験材料について、レーダー信号が被試験材料を充分に通過するか、被試験材料から反射されるか等を確認するのに利用できる。
【0014】
図1は、本発明のいくつかの実施形態によるミリ波材料試験装置100の例を示す。ミリ波材料試験装置100には、計測器102と基準ユニット104があっても良い。計測器102には、試験の状態に関する情報をユーザに出力する表示部106があっても良い。ミリ波材料試験装置100は、軽くてハンドヘルドな装置であり、レーダー・システム(特に自動車レーダー・システム)を適切に動作させる上で、材料がレーダーを適切に透過させることができるか確認するのに、材料を迅速に試験できる。いくつかの実施形態では、ミリ波材料試験装置100が、バッテリ駆動であってもよい。
【0015】
また、ミリ波材料試験装置100には、1つ以上のユーザ入力部があっても良く、これには、例えば、試験を実行するボタン108と、校正を実行するボタン110とがあっても良い。ただし、1つ以上のユーザ入力部は、
図1に示すボタン108及び110に限定されず、限定するものではないが、例えば、スイッチ、ジョイスティック、タッチスクリーン、キーボードなど任意の入力装置があっても良い。
【0016】
また、計測器102は、被試験材料の第2面との接触面上の一部分が、レーダー信号の送受信面(transmitter and receiver surface)112となっており、基準ユニット104
の対応する面400(図1に示さず)や被試験材
料と相互作用する。当業者であれば理解できるように、計測器102には、更に、限定するものではないが、1つ以上のプロセッサ、記憶媒体、通信インタフェース、電源など、多数のハードウェア・コンポーネントがあっても良い。
【0017】
図2は、材料200を試験するのに使用されている状態のミリ波材料試験装置100を示す。材料200は、計測器102と基準ユニット104との間に配置される。以下で詳しく説明するように、計測器102の送受信面112と基準ユニット104の対応する面400には、材料200を介して計測器102と基準ユニット104を互いに位置合わせするアライメント機構がある。アライメント機構は、後述する吸収コンポーネント404と第1送信機及び第1受信機の位置関係、反射コンポーネント406と第2送信機及び第2受信機の位置関係が適切な位置関係となるようにアライメント(位置合わせ)を行う。アライメント機構としては、例えば、送受信面112と基準ユニット104の接触面400との間に、対応する磁石、対応するピン及び穴、その他の何らかの位置合わせ機構があっても良い。
【0018】
ユーザは、試験実行ボタン108等を選択して、計測器102と基準ユニット102との間の材料200を試験するように指示できる。以下でより詳細に説明するように、試験の結果に基づいて、表示部106が、ユーザに関連情報を表示できる。例えば、
図2に示すように、表示部106は、被試験材料200が透過試験及び反射試験に合格したか否かを出力しても良い。この例では、表示部106は、単純に材料200が合格したか又は不合格かだけを出力しているが、本発明の実施形態は、こうした要約の出力に限定されず、材料の透過性、反射性、挿入損失等をグラフで表すなど、より多くの情報を提供してもよい。
【0019】
図3は、本発明のいくつかの実施形態による計測器102の送受信面112の例を示す。送受信面112には、第1及び第2トランスデューサ(transducer:送受信機)ペア305及び307がある。これら2つのトランスデューサ・ペアの夫々は、送信機ペア(2つの送信機)302と受信機ペア(2つの受信機)304から構成される。各トランスデューサ・ペアは、別々にアクティブ状態(能動状態)にできる。プリント回路基板でも良い送受信面112上に受信サイド及び送信サイドを配
置でき、このため、一般的なアンテナのように、表面波の結合(送受信面112における伝播)は、正味ゼロであり、送受信面112と直交する信号に対して主に感度が良い。
【0020】
回路306は、送受信面112の端に位置する。回路306は、送受信面112上の保護パネルの下にあっても良い。回路306には、例えば、周波数変調(FM)連続波(CW)チャープ・レーダー集積回路があっても良く、これは、複数の入出力チャンネルをサポートしても良い。送信機302及び受信機304のアンテナは、送受信面112の表面に直接印刷しても良い。
【0021】
また、送受信面112には、アライメント機構がある。アライメント機構は、送受信面112が、基準ユニット104の対応する面400と確実に位置合わせできるようにする。図3に示す実施形態では、送受信面112に多数の様々な磁石308(N極性又はS極性)があり、これらが、基準ユニット104内の反対極性の対応する磁石と、磁力で引き合うようになっている。このため、磁力によって、送受信面112と基準ユニット104の対応する面400が自動で適切に位置合わせされる。
【0022】
図4は、基準ユニット104の面400の例を示す。面400は、被試験材料200の第1面と接触する接触面でもある。基準ユニット104の面400には、計測器102の送受信面112を基準ユニット104の面400に位置合わせする対応するアライメント機構がある。
図4では、アライメント機構には、送受信面112上の磁石に対して反対極性の対応する磁石402がある。これによって、後述する吸収コンポーネント404と送受信面112の第1送信機及び第1受信機(のアンテナ)の位置関係、反射コンポーネント406と送受信面112の第2送信機及び第2受信機(のアンテナ)の位置関係が適切な関係に位置合わせされる。
【0023】
面400には、吸収(又は無反射)コンポーネント404と反射コンポーネント406もある。吸収コンポーネント404は、送信されたレーダーを吸収して、計測器102が材料200から直接反射している信号を決定できるようにする。反射コンポーネント406は、計測器102に信号を反射して、被試験材料がどの程度うまく信号を通過させるかを計測器102が決定できるようにする。
【0024】
吸収コンポーネント404は、送信信号を吸収する任意のコンポーネント又は面であっても良く、また、反射コンポーネント406は、信号を反射する任意のコンポーネント又は面であっても良い。いくつかの実施形態において、反射コンポーネント406は、コーナーキューブであって、これは、相互に垂直に組み合わせた3つの平坦な面から構成されるレトロリフレクタ(retroreflector:再帰反射器)であり、信号が来た信号源の方向へ信号を反射する。コーナーキューブは、角度や配置に関係なく、非接触で反射率の高い区画が必要な状況に効果的である。コーナーキューブを使用すると、入射信号がアルミニウム、銀、銅などの高反射率材料の複数の面で反射され、配置にずれがある場合でも、信号源に直接戻ることができる(非特許文献1参照)。アルミニウムのような酸化被覆のある金属表面は、酸化物の形態が低損失であり、酸化被覆の下の反射するアルミニウムへの透過性が高いので、反射が良好に機能する。
【0025】
コーナーキューブは、金属で成形(鋳造)して、次いでめっきしても良いし、実施形態によっては、コーナーキューブをプラスチックで作り、次いでめっきしてもよい。コーナーキューブの露出領域は、表面全体に誘電体膜を取り付けて覆っても良いし、表面を保護処理しても良いし、自然に酸化させても良い。成形部品であるために、コーナーキューブは比較的低コストで入手可能であり、基準ユニット104の外側の端又は後方には、反射コンポーネント406を成形するコストを削減するために、大きな抜き勾配(draft angle:金型から成形品をスムーズに離型させるための勾配;非特許文献2参照)又は空洞を設けても良い。
【0026】
いくつかの実施形態では、面112及び400の両方が、滑らかで摩耗を防止するようになっており、被試験材料に傷を付けることなく、被試験材料に沿って、計測器102及び基準ユニット104をスライドさせることが可能となっている。このため、例えば、1つの被試験材料(例えば、自動車のバンパーなど)の様々な部分を試験でき、更には、小型であることから、自動車本体に固定されてしまった部材であっても、場合によっては、被試験材料を移動させるのでなく、計測器102及び基準ユニット104の方を移動させて試験が行える。
【0027】
図5は、本発明のいくつかの実施形態によるミリ波材試験装置100の動作例を示すフローチャートである。最初に、オプションの工程500において、ユーザは、計測器102の校正を行なっても良い。これを行うために、ユーザは、基準ユニット104を計測器102上に直接配置して、計測器102と基準ユニット104の両方のアライメント機構で、計測器の送受信面112を、基準ユニットの面400に位置合わせしても良い。次いで、ユーザは、ボタン110を選択して、計測器102を校正する(例えば、透過率、反射率、挿入損失等をゼロに合わせる)。
【0028】
工程502では、上述した材料200のような被試験材料が、計測器102と基準ユニット104との間に配置される。材料200は、例えば、車のフェンダー・パネル又はドア・パネルであってもよい。材料が大きい場合もあるので、面112及び400のアライメント機構によって、計測器102と基準ユニット104が確実にアライメントできるようにして、材料の正確な測定を行えるようにする。
【0029】
工程504では、被試験材料の試験実行の入力を計測器102から受ける。材料の試験実行の入力を受けると、工程506において、第1トランスデューサ・ペア305の送信機302が、所定周波数の信号を出力し、対応する受信機304が戻ってくる信号(リターン信号)を測定しても良い。工程508では、第2トランスデューサ・ペア307の送信機302が、所定周波数の信号を出力し、対応する受信機304がリターン信号を測定しても良い。上述したように、1つ目の送信信号は、吸収コンポーネント404に向けて出力され、そのために、対応する受信機304によって測定されたリターン信号は、全信号が材料200から反射されたものである。所定周波数で送信されるもう一方の信号は、反射コンポーネント406に向かって出力されるので、対応する受信機304で測定されたリターン信号は、反射コンポーネント406からの反射信号に、材料200で反射された全信号を加えたものである。いくつかの実施形態では、所定の周波数は変更可能である。いくつかの実施形態では、計測器102が、複数の離散的な所定周波数で試験信号を送信及び測定できる。いくつかの実施形態では、計測器102は、所定の周波数範囲全体にわたって周波数掃引(周波数を連続的に変化させる)してもよい。
【0030】
工程510では、2つのリターン信号を用いて、計測器102内のプロセッサが、材料200が所定の周波数で信号を適切に通過させるか否かを判断しても良い。いくつかの実施形態では、計測器102内のプロセッサが、材料の挿入損失を求め、また、挿入損失が許容範囲内にあるかどうかを判定しても良い。挿入損失は、送信信号及び受信信号に基づく任意の既知方法を用いて求められる。プロセッサは、
図2に示すように、合格/不合格の結果を出力するか、又は、プロセッサが送信信号の周波数に対する受信信号の応答をグラフで表示するなど、より詳細な結果を出力しても良い。所定周波数は、ユーザによって選択されても良いし、計測器102内のメモリに記憶されていても良い。
図5に示す動作によれば、本発明によるミリ波材料試験装置100は、塗料、コーティング、バンパー、ドア・パネルなどの材料を、レーダーの透過率や反射率などに関して試験し、材料がレーダー・システムを動作させるのに必要なレーダーを通過させるか否か(障害を発生させないか)等を迅速に出力できる。
【0031】
基準ユニット104と計測器102は、材料200から分離でき、材料の別の部分を試験するために、材料200に対して横に滑らせて移動させたりできる。また、磁石やピンとホール機構などのアライメント機構により、基準ユニット104と計測器102を、材料200の次の読み取りのために確実にアライメント(位置合わせ)できる。本体が小型なこともあり、例えば、被試験材料が既に自動車本体に固定されているなど、移動させることが困難な状況であっても、状況によっては、試験を実施できる。
【0032】
本発明の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本発明の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本発明の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0033】
開示された態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はこれらの任意の組み合わせで実現されても良い。開示された態様は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって運搬されるか又は記憶される命令として実現されても良い。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。本願で説明するコンピュータ可読媒体は、コンピューティング装置によってアクセス可能な任意の媒体を意味する。限定するものではないが、一例としては、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含むことができる。
【0034】
コンピュータ記憶媒体とは、コンピュータ読み取り可能な情報を記憶するために使用することができる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、コンピュータ記憶媒体としては、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリやその他のメモリ技術、コンパクト・ディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、DVD(Digital Video Disc)やその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置やその他の磁気記憶装置、及び任意の技術で実装された任意の他の揮発性又は不揮発性の取り外し可能又は取り外し不能の媒体を含んでいても良い。
【0035】
通信媒体とは、コンピュータ可読情報の通信に利用できる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、通信媒体には、電気、光、無線周波数(RF)、赤外線、音又はその他の形式の信号の通信に適した同軸ケーブル、光ファイバ・ケーブル、空気又は任意の他の媒体を含むことができる。
【0036】
実施例
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0037】
実施例1は、試験測定装置であって、
反射コンポーネント及び吸収コンポーネントを有し、被試験材料の第1面と接触するように構成される接触面を有する基準ユニットと、
上記被試験材料の上記第1面と反対側の第2面と接触するように構成される接触面を有する計測器と
を具え、
上記計測器が、
上記被試験材料を通して上記基準ユニットの上記吸収コンポーネントに向けて所定周波数の第1信号を出力するように構成された第1送信機と、
上記被試験材料からの第1反射信号を受信するように構成された第1受信機と
上記被試験材料を通して上記基準ユニットの上記反射コンポーネントに向けて上記所定周波数の第2信号を出力するように構成された第2送信機と、
上記反射コンポーネントからの第2反射信号を受信するように構成された第2受信機と、
を有している。
【0038】
実施例2は、実施例1の試験測定装置であって、上記計測器は、上記第1信号、上記第2信号、上記第1反射信号及び上記第2反射信号に基づいて、上記被試験材料が所定の要件を満たしているかどうかを判定するよう構成されるプロセッサを更に有する。
【0039】
実施例3は、実施例2の試験測定装置であって、上記プロセッサは、上記第1反射信号に基づいて上記被試験材料が反射基準に合格したかどうかを判定し、上記第2反射信号に基づいて上記被試験材料が透過基準に合格したかどうかを判定するように更に構成される。
【0040】
実施例4は、実施例2又は3の試験測定装置であって、上記計測器は、上記被試験材料が所定の要件を満たすかどうかの判定結果を出力するよう構成された表示部を更に有している。
【0041】
実施例5は、実施例1から4のいずれかの試験測定装置であって、上記第1送信機及び上記第1受信機と上記吸収コンポーネントとを対応する位置関係にすると共に、上記第2送信機及び上記第2受信機と上記反射コンポーネントとを対応する位置関係にするために、上記基準ユニットの上記接触面を上記計測器の上記接触面とアライメントするように構成されたアライメント機構を更に具えている。
【0042】
実施例6は、実施例5の試験測定装置であって、上記アライメント機構は、上記基準ユニットの上記接触面上の磁石と、上記計測器の上記接触面上の対応する磁石とを有する。
【0043】
実施例7は、実施例1から6のいずれかの試験測定装置であって、上記基準ユニットは、校正動作中に、上記計測器と直接接触するよう更に構成される。
【0044】
実施例8は、実施例7の試験測定装置であって、上記計測器は、上記校正動作を開始するための入力手段を有する。
【0045】
実施例9は、実施例1から8のいずれかの試験測定装置であって、上記第1送信機と上記第1受信機は、2つの第1送信機と2つの第1受信機を有する第1トランスデューサ・ペアである。
【0046】
実施例10は、実施例9の試験測定装置であって、上記第2送信機と上記第2受信機は、2つの第2送信機と2つの第2受信機を有する第2トランスデューサ・ペアである。
【0047】
実施例11は、実施例1から10のいずれかの試験測定装置であって、上記所定周波数は、レーダー・システムの出力信号に関する周波数である。
【0048】
実施例12は、実施例1から11のいずれかの試験測定装置であって、上記試験測定装置はハンドヘルドである。
【0049】
実施例13は、被試験材料の特性を測定する方法であって、
被試験材料を通して吸収コンポーネントに向かって所定周波数の第1信号を送信する処理と、
上記第1信号の送信に応答して第1応答信号を受信する処理と
上記被試験材料を通して反射コンポーネントに向かって上記所定周波数の第2信号を送信する処理と、
上記第2信号の送信に応答して第2応答信号を受信する処理と、
上記被試験材料の挿入損失を求める処理と
を具えている。
【0050】
実施例14は、実施例13の方法であって、上記材料の上記挿入損失が所定要件を満たしているかどうかを判定する処理を更に具えている。
【0051】
実施例15は、実施例14の方法であって、上記被試験材料が上記所定要件を満たしているかどうかの判定結果を表示する処理を更に具えている。
【0052】
実施例16は、実施例13から15のいずれかの方法であって、アライメント機構によって計測器の接触面と基準ユニットの接触面をアライメントさせる処理を更に具えている。
【0053】
実施例17は実施例16の方法であって、ここで、アライメント機構は、基準ユニットの上記接触面上の磁石と、上記計測器の上記接触面上の相補的な磁石と有している。
【0054】
実施例18は、実施例13から17のいずれかの方法であって、
上記被試験材料なしで、上記吸収コンポーネントに向かって上記所定周波数の上記第1信号を送信する処理と、
上記第1信号の送信に応答して第3応答信号を受信する処理と、
上記被試験材料なしで、上記反射コンポーネントに向かって上記所定周波数の上記第2信号を送信する処理と
上記第2信号の送信に応答して第4応答信号を受信する処理と、
を有する校正処理を更に具えている。
【0055】
実施例19は、実施例13から18のいずれかの方法であって、上記第1信号を送信する上記第1送信機と、上記第1応答信号を受信する上記第1受信機は、2つの第1送信機と2つの第1受信機とを有する第1トランスデューサ・ペアである。
【0056】
実施例20は、実施例13から19のいずれかの方法であって、上記所定周波数はレーダー・システムの出力信号に関する周波数である。
【0057】
実施例21は、実施例13から20のいずれかの方法であって、上記第2信号を送信する上記第2送信機と、上記第2応答信号を受信する上記第2受信機は、2つの第2送信機と2つの第2受信機とを有する第2トランスデューサ・ペアである。
【0058】
開示された主題の上述のバージョンは、記述したか又は当業者には明らかであろう多くの効果を有する。それでも、開示された装置、システム又は方法のすべてのバージョンにおいて、これらの効果又は特徴のすべてが要求されるわけではない。
【0059】
加えて、本願の記述は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例の状況において開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例の状況においても利用できる。
【0060】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
【0061】
説明の都合上、本発明の具体的な実施例を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲を除いて限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0062】
100 ミリ波材料試験装置
102 計測器
104 基準ユニット
106 表示部
108 試験実行ボタン
110 校正実行ボタン
112 送受信面(接触面の一部分)
200 被試験材料
302 送信機ペア
304 受信機ペア
305 第1トランスデューサ・ペア
306 回路
307 第2トランスデューサ・ペア
308 アライメント機構の磁石
400 基準ユニットの接触面
402 アライメント機構の磁石
404 吸収コンポーネント
406 反射コンポーネント