(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20241216BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20241216BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20241216BHJP
B24B 1/00 20060101ALI20241216BHJP
B24B 19/02 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
H01L21/78 Q
H01L21/78 F
H01L21/78 B
H01L21/78 Y
B23K26/53
B24B27/06 M
B24B1/00 Z
B24B19/02
(21)【出願番号】P 2020149340
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺西 俊輔
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-130638(JP,A)
【文献】国際公開第2012/014716(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/108327(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0186730(US,A1)
【文献】特開平1-214109(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0130821(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/53
B24B 27/06
B24B 1/00
B24B 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向と、該第1の方向と交差する第2の方向とに形成された複数の分割予定ラインと、該分割予定ラインに区画されたチップ領域と、を有するウエーハからチップを形成するウエーハの加工方法であって、
該分割予定ラインに沿って、表面から所望するチップの厚み以上の深さの溝を形成する溝形成ステップと、
該ウエーハの裏面から該ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザービームの集光点を生成するチップの厚みに相当する深さに位置づけ、該集光点と該ウエーハとを相対的に移動しながら該レーザービームを照射し、改質層及び該改質層から伸長するクラックを形成して表面に平行な分離起点を形成する分離起点形成ステップと、
該分離起点によってチップを該ウエーハから剥離するチップ剥離ステップと、
を備え
、
該チップ領域にはデバイスが形成され、
該デバイスが不良であると判定された該チップ領域において、該溝形成ステップと、該分離起点形成ステップと、該チップ剥離ステップと、を実施することで、不良であると判定されたデバイスを選択的にくり抜き、
不良であると判定されたデバイスをくり抜いた該チップ領域に、代わりに良であると判定されたデバイスを埋め込むことを特徴とするウエーハの加工方法。
【請求項2】
該分離起点形成ステップにおいて、該レーザービームは該チップ領域毎に少なくとも2種類以上の異なるチップ厚みに応じた深さに位置づけて照射され、
該溝形成ステップにおいて、該溝が形成される該チップ領域で所望されるチップ厚み以上の深さの溝が形成され、
該チップ剥離ステップにおいて、該チップ領域毎に少なくとも2種類以上の異なる厚みのチップが形成されることを特徴とする、請求項1に記載のウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハからチップを形成するウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエーハを研削及び切断することで、ウエーハからチップを形成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ウエーハから所望厚みのチップを形成する新たな方法が望まれていた。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ウエーハから所望厚みのチップを形成する新たなウエーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のウエーハの加工方法は、第1の方向と、該第1の方向と交差する第2の方向とに形成された複数の分割予定ラインと、該分割予定ラインに区画されたチップ領域と、を有するウエーハからチップを形成するウエーハの加工方法であって、該分割予定ラインに沿って、表面から所望するチップの厚み以上の深さの溝を形成する溝形成ステップと、該ウエーハの裏面から該ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザービームの集光点を生成するチップの厚みに相当する深さに位置づけ、該集光点と該ウエーハとを相対的に移動しながら該レーザービームを照射し、改質層及び該改質層から伸長するクラックを形成して表面に平行な分離起点を形成する分離起点形成ステップと、該分離起点によってチップを該ウエーハから剥離するチップ剥離ステップと、を備え、該チップ領域にはデバイスが形成され、該デバイスが不良であると判定された該チップ領域において、該溝形成ステップと、該分離起点形成ステップと、該チップ剥離ステップと、を実施することで、不良であると判定されたデバイスを選択的にくり抜き、不良であると判定されたデバイスをくり抜いた該チップ領域に、代わりに良であると判定されたデバイスを埋め込むことを特徴とする。
【0007】
該分離起点形成ステップにおいて、該レーザービームは該チップ領域毎に少なくとも2種類以上の異なるチップ厚みに応じた深さに位置づけて照射され、該溝形成ステップにおいて、該溝が形成される該チップ領域で所望されるチップ厚み以上の深さの溝が形成され、該チップ剥離ステップにおいて、該チップ領域毎に少なくとも2種類以上の異なる厚みのチップが形成されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ウエーハから所望厚みのチップを形成する新たなウエーハの加工方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るウエーハの加工方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、
図1のウエーハの加工方法の加工対象であるウエーハの一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1の分離起点形成ステップを説明する断面図である。
【
図4】
図4は、
図1の分離起点形成ステップを説明する上面図である。
【
図5】
図5は、
図1の溝形成ステップの第1例を説明する断面図である。
【
図6】
図6は、
図1の溝形成ステップの第1例を説明する上面図である。
【
図7】
図7は、
図1の溝形成ステップの第2例を説明する断面図である。
【
図8】
図8は、
図1のチップ剥離ステップを説明する断面図である。
【
図9】
図9は、変形例1に係るウエーハの加工方法の溝形成ステップの第1例を説明する断面図である。
【
図10】
図10は、変形例1に係るウエーハの加工方法の溝形成ステップの第1例を説明する上面図である。
【
図11】
図11は、変形例1に係るウエーハの加工方法の溝形成ステップの第2例を説明する断面図である。
【
図12】
図12は、変形例1に係るウエーハの加工方法の分離起点形成ステップを説明する断面図である。
【
図13】
図13は、変形例1に係るウエーハの加工方法の分離起点形成ステップを説明する上面図である。
【
図14】
図14は、実施形態2に係るウエーハの加工方法の分離起点形成ステップを説明する断面図である。
【
図15】
図15は、実施形態2に係るウエーハの加工方法の分離起点形成ステップを説明する上面図である。
【
図16】
図16は、実施形態2に係るウエーハの加工方法の溝形成ステップの第1例を説明する断面図である。
【
図17】
図17は、実施形態2に係るウエーハの加工方法の溝形成ステップの第1例を説明する上面図である。
【
図18】
図18は、実施形態2に係るウエーハの加工方法の溝形成ステップの第2例を説明する断面図である。
【
図19】
図19は、実施形態2に係るウエーハの加工方法のチップ剥離ステップを説明する断面図である。
【
図20】
図20は、実施形態3に係るウエーハの加工方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係るウエーハの加工方法を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係るウエーハの加工方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図2は、
図1のウエーハの加工方法の加工対象であるウエーハ100の一例を示す斜視図である。
図3は、
図1の分離起点形成ステップ1001を説明する断面図である。
図4は、
図1の分離起点形成ステップ1001を説明する上面図である。
図4は、
図3の状態を裏面104側から見た図である。
図5は、
図1の溝形成ステップ1002の第1例を説明する断面図である。
図6は、
図1の溝形成ステップ1002の第1例を説明する上面図である。
図6は、
図5の状態を表面101側から見た図である。
図7は、
図1の溝形成ステップ1002の第2例を説明する断面図である。
図8は、
図1のチップ剥離ステップ1003を説明する断面図である。実施形態1に係るウエーハの加工方法は、
図1に示すように、分離起点形成ステップ1001と、溝形成ステップ1002と、チップ剥離ステップ1003と、を備える。
【0013】
実施形態1に係るウエーハの加工方法の加工対象であるウエーハ100は、例えば、シリコン、サファイア、シリコンカーバイド(SiC)、ガリウムヒ素などを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハなどである。ウエーハ100は、
図2に示すように、平坦な表面101において、第1の方向と、第1の方向と交差する第2の方向とに沿ってそれぞれ形成された複数の分割予定ライン102と、複数の分割予定ライン102によって区画されたチップ領域103と、を有する。ウエーハ100は、実施形態1では、チップ領域103毎にチップ160(デバイス、
図8参照)が形成されている。ウエーハ100は、実施形態1では、さらに、第1の方向と第2の方向とが互いに直交して、複数の分割予定ライン102が格子状に形成されているが、本発明ではこれに限定されない。
【0014】
ウエーハ100は、実施形態1では、各ステップに応じて、
図2の符号110及び符号120のそれぞれの矢印で示すように、表面101または表面101の裏側の裏面104に粘着テープ105が貼着され、粘着テープ105の外縁部に環状のフレーム106が装着されて、各ステップの処理が施されるが、本発明ではこれに限定されない。
【0015】
分離起点形成ステップ1001は、
図3に示すように、ウエーハ100の裏面104からウエーハ100に対して透過性を有する波長のレーザービーム12の集光点13を、生成するチップ160(
図8参照)の厚み130に相当する深さに位置づけ、集光点13とウエーハ100とを相対的に移動しながらレーザービーム12を照射し、
図3及び
図4に示すように、当該深さに改質層131及び改質層131から伸長するクラック132を形成して表面101に平行な分離起点135を形成するステップである。
【0016】
分離起点形成ステップ1001では、まず、ウエーハ100の表面101に粘着テープ105を貼着する。分離起点形成ステップ1001では、次に、
図3に示すように、レーザー加工装置10の保持テーブル15により、粘着テープ105を介してウエーハ100の表面101側を保持面16で保持する。ここで、保持テーブル15は、実施形態1では、例えば、凹部が形成された円盤状の枠体と、凹部内に嵌め込まれ、多数のポーラス孔を備えたポーラスセラミック等から形成された円盤形状の吸着部と、を備え、吸着部の上面が、不図示の吸引源から導入される負圧によりウエーハ100を吸引保持する保持面16である。
【0017】
分離起点形成ステップ1001では、次に、
図3に示すように、レーザー加工装置10のレーザー発振器11により発振するレーザービーム12の集光点13の鉛直方向の位置を、例えばレーザー発振器11もしくは保持テーブル15を鉛直方向に沿って昇降移動させる不図示の昇降移動ユニットや、レーザービーム12の焦点位置を鉛直方向に沿って昇降移動させるレーザー発振器11内に設けられた不図示の集光ユニット等により、ウエーハ100の表面101からチップ160(
図8参照)の厚み130の分だけ高い位置に位置づける。なお、レーザービーム12をウエーハ100の裏面104から照射する実施形態1では、ウエーハ100の表面101からチップ160の厚み130の分だけ高い位置は、チップ160の厚み130に相当する深さに対応する。
【0018】
分離起点形成ステップ1001では、そして、
図3に示すように、例えばレーザー発振器11もしくは保持テーブル15を表面101に平行な方向に沿って移動させる不図示の移動ユニットにより、集光点13とウエーハ100とを表面101に平行な所定の方向(
図4の紙面の上下方向)に沿って相対的に移動しながら、レーザービーム12をウエーハ100の裏面104側からウエーハ100に向けて連続的に垂直照射することにより、ウエーハ100の表面101からチップ160(
図8参照)の厚み130の分だけ高い位置に、当該所定の方向に延びた直線状に改質層131を形成する。分離起点形成ステップ1001では、例えば、レーザー加工装置10のレーザー発振器11によりパルス状のレーザービーム12をウエーハ100に照射する。
【0019】
分離起点形成ステップ1001で形成する改質層131は、レーザービーム12の集光点13においてウエーハ100の母材をアモルファス状態とした層であり、表面101に平行な方向に残留応力が働く。分離起点形成ステップ1001では、この残留応力により、
図3及び
図4に示すように、改質層131から当該所定の方向に交差する方向に伸長するクラック132を形成する。分離起点形成ステップ1001で形成する改質層131とクラック132とは、いずれも後述するチップ剥離ステップ1003で剥離処理が行われる際の分離起点135となる。
【0020】
分離起点形成ステップ1001では、
図4に示すように、複数の直線状の改質層131を、クラック132の改質層131からの有効伸長長さに応じた間隔(実施形態1では有効伸長長さの約2倍(1.9倍以上2.1倍以下)の間隔)で互いに平行に形成して、表面101に平行な分離起点135を大きな間隔や偏重が生じないように十分に均質に形成する。分離起点形成ステップ1001では、実施形態1では、例えば、改質層131を約10μm間隔で形成し、クラック132の改質層131からの有効伸長長さが約5μmである。ここで、クラック132の改質層131からの有効伸長長さとは、分離起点135として十分に有効に機能するクラック132の改質層131からの長さのことである。分離起点形成ステップ1001では、実施形態1では、
図3及び
図4に示す矢印の方向にしたがって、ウエーハ100の全面にわたってレーザービーム12を照射して改質層131及びクラック132を形成しているが、本発明ではこれに限定されず、チップ領域103に相当する領域のみに改質層131及びクラック132を形成してもよい。なお、実際には、分離起点形成ステップ1001では改質層131をさらに複数形成しているが、
図4及び
図6では省略して一部の改質層131のみを記載している。
【0021】
溝形成ステップ1002は、分割予定ライン102に沿って、表面101から所望するチップ160(
図8参照)の厚み130以上の深さの溝を形成するステップである。溝形成ステップ1002は、ウエーハ100の厚み以下の深さの溝を形成する所謂ハーフカットである。
【0022】
溝形成ステップ1002では、まず、分離起点形成ステップ1001の処理後のウエーハ100の表面101に貼着されている粘着テープ105を剥がし、ウエーハ100の裏面104に粘着テープ105を貼着する。溝形成ステップ1002では、次に、第1例では
図5に示すように、切削加工装置20の保持テーブル25により粘着テープ105を介してウエーハ100の裏面104側を保持面26で保持し、第2例では
図7に示すように、レーザー加工装置30の保持テーブル35により粘着テープ105を介してウエーハ100の裏面104側を保持面36で保持する。保持テーブル25,35は、いずれも、保持テーブル15と同様の構造を有する。
【0023】
その後、溝形成ステップ1002の第1例では、
図5に示すように、切削加工装置20の切削ブレード21を回転させながらウエーハ100の表面101から厚み130以上の深さ140まで切り込ませて、例えば切削ブレード21もしくは保持テーブル25を表面101に平行な方向に沿って移動させる不図示の移動ユニットにより、切削ブレード21とウエーハ100とを分割予定ライン102に沿って相対的に移動させることにより、ウエーハ100を切削加工して、分割予定ライン102に沿って深さ140の切削溝141を形成する。溝形成ステップ1002の第1例では、分割予定ライン102毎に切削加工し、
図6に示すように、全ての分割予定ライン102に沿って深さ140の切削溝141を形成する。なお、実際には、
図6に示すよりも、分離起点形成ステップ1001で形成する改質層131の方が溝形成ステップ1002の第1例で形成する切削溝141よりも間隔が狭くなるように密に形成している。
【0024】
また、溝形成ステップ1002の第2例では、
図7に示すように、レーザー加工装置30のレーザー発振器31によりウエーハ100に対して吸収性を有する波長のレーザービーム32を発振してウエーハ100に照射しながら、例えばレーザー発振器31もしくは保持テーブル35を表面101に平行な方向に沿って移動させる不図示の移動ユニットにより、レーザービーム32とウエーハ100とを分割予定ライン102に沿って相対的に移動することにより、ウエーハ100をレーザービーム32により昇華もしくは蒸発させるいわゆるアブレーション加工して、分割予定ライン102に沿って厚み130以上の深さ150のレーザー加工溝151を形成する。溝形成ステップ1002の第2例では、例えば、レーザー加工装置30のレーザー発振器31によりパルス状のレーザービーム32をウエーハ100に照射する。溝形成ステップ1002の第2例では、溝形成ステップ1002の第1例と同様に、全ての分割予定ライン102に沿って深さ150のレーザー加工溝151を形成する。
【0025】
チップ剥離ステップ1003は、
図8に示すように、分離起点形成ステップ1001で形成した分離起点135によってチップ160をウエーハ100から剥離するステップである。
図8に示す例では、溝形成ステップ1002の第1例の後に実施される場合のチップ剥離ステップ1003を示しているが、溝形成ステップ1002の第2例の後に実施される場合でも同様である。
【0026】
チップ剥離ステップ1003では、まず、
図8に示すように、チップ剥離装置40の保持テーブル45により、ウエーハ100の裏面104側を、粘着テープ105を介して保持面46で保持する。保持テーブル45は、保持テーブル15と同様の構造を有する。
【0027】
チップ剥離ステップ1003では、次に、チップ剥離装置40の超音波ホーン41の下端に設けられた吸着片43をウエーハ100のチップ領域103の表面101側に接触させてから、超音波発振器42により超音波ホーン41に超音波を付与して超音波振動させ、超音波振動させた超音波ホーン41により吸着片43を介してウエーハ100のチップ領域103に超音波振動を付与することにより当該チップ領域103の分離起点135を破壊して、ウエーハ100から当該チップ領域103に形成されているチップ160を剥離する。
【0028】
チップ剥離ステップ1003では、このウエーハ100から剥離したチップ160を、吸着片43により上方から吸着保持してピックアップして、個片化されたチップ160を得る。ここで、吸着片43は、実施形態1では、例えば、下面に不図示の吸引源から負圧が導入されて、負圧によりチップ160を上方から吸着保持する。チップ剥離ステップ1003では、実施形態1では、チップ領域103毎にチップ160の剥離及びピックアップを行い、ウエーハ100に形成された全てのチップ160を個片化して得る。なお、チップ剥離ステップ1003では、吸着片43による吸着のみでチップ160を剥離できる場合は、超音波発振器42を備えないチップ剥離装置40で実施してもよい。
【0029】
以上のような構成を有する実施形態1に係るウエーハの加工方法は、分離起点形成ステップ1001で、チップ160の底面に沿ってウエーハ100に対して透過性を有する波長のレーザービーム12の集光点13をチップ160の所望の厚み130に相当する深さに位置づけてレーザービーム12を照射して分離起点135を形成し、溝形成ステップ1002で、分割予定ライン102に沿って溝(第1例では切削溝141、第2例ではレーザー加工溝151)を形成し、チップ剥離ステップ1003で分離起点135を起点にチップ160をウエーハ100から剥離する。このため、実施形態1に係るウエーハの加工方法は、ウエーハ100に対して透過性を有する波長のレーザービーム12の集光点13の位置づける高さを変更することにより、ウエーハ100から所望の厚み130のチップ160を形成することができるという作用効果を奏する。また、実施形態1に係るウエーハの加工方法は、チップ160の底面全体に、ウエーハ100の表面101と平行な面方向に改質層131と改質層131から延びたクラック132とからなる分離起点135がつらなった分離層を形成しているため、チップ160を良好に剥離することができる。
【0030】
また、実施形態1に係るウエーハの加工方法は、分離起点形成ステップ1001で、ウエーハ100に対して透過性を有する波長のレーザービーム12をウエーハ100のチップ160が形成された表面101とは反対側である裏面104側から照射して分離起点135を形成する。このため、実施形態1に係るウエーハの加工方法は、表面101にデバイス(チップ160)が形成されていた場合、レーザービーム12が阻害されることなく、良好に分離起点135を形成することができる。また、実施形態1に係るウエーハの加工方法は、表面101にデバイス(チップ160)が形成されていた場合、チップ160が分離起点135の形成のために照射するレーザービーム12からダメージを受ける影響を低減できる。
【0031】
また、実施形態1に係るウエーハの加工方法は、研削装置を用いず所望する厚みのチップ160を形成することができる。さらに、実施形態1に係るウエーハの加工方法は、溝形成ステップ1002をレーザー加工装置30で行った場合、レーザー加工装置10,30のみで所望する厚みのチップ161を形成することができ、レーザー加工装置10,30を同じ装置とすることで、装置の設置面積の縮小や、生産にかかるコストの低減を実現できる。また、従来であればチップを剥離する際に粘着テープの粘着力を低下させるステップが必要であるが、実施形態1に係るウエーハの加工方法は、ウエーハ100の内部に形成された分離起点135を起点にチップ160を剥離するため、粘着テープ105の粘着力を低下させるステップが不要となる。また、実施形態1に係るウエーハの加工方法は、分離起点形成ステップ1001でウエーハ100の裏面104側からレーザービーム12の照射を行った後、溝形成ステップ1002とチップ剥離ステップ1003とをウエーハ100の表面101側から連続して実施するため、後述する変形例1が粘着テープ105の貼り替えが二回必要なのに対し粘着テープ105の貼り替えが分割起点形成ステップ1001の後に実施する1回のみとなり、工数が削減される。
【0032】
〔変形例1〕
本発明の変形例1に係るウエーハの加工方法を図面に基づいて説明する。
図9は、変形例1に係るウエーハの加工方法の溝形成ステップ1002の第1例を説明する断面図である。
図10は、変形例1に係るウエーハの加工方法の溝形成ステップ1002の第1例を説明する上面図である。
図10は、
図9の状態を表面101側から見た図である。
図11は、変形例1に係るウエーハの加工方法の溝形成ステップ1002の第2例を説明する断面図である。
図12は、変形例1に係るウエーハの加工方法の分離起点形成ステップ1001を説明する断面図である。
図13は、変形例1に係るウエーハの加工方法の分離起点形成ステップ1001を説明する上面図である。
図13は、
図12の状態を裏面104側から見た図である。
図9から
図13は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0033】
変形例1に係るウエーハの加工方法は、実施形態1に係るウエーハの加工方法において、分離起点形成ステップ1001と溝形成ステップ1002との実施順序を入れ替えたものであり、その他の処理は実施形態1と同様である。すなわち、変形例1に係るウエーハの加工方法では、溝形成ステップ1002は、分離起点形成ステップ1001の前に実施される。
【0034】
変形例1に係る溝形成ステップ1002は、まずウエーハ100の裏面104に粘着テープ105を貼着する点、及び、第1例では
図9及び
図10に示すように、第2例では
図11に示すように、分離起点135が形成されていないウエーハ100に溝(第1例では切削溝141、第2例ではレーザー加工溝151)を形成する点を除き、実施形態1と同様である。
【0035】
変形例1に係るウエーハの加工方法の分離起点形成ステップ1001は、溝形成ステップ1002の処理後のウエーハ100の裏面104に貼着されている粘着テープ105を剥がし、ウエーハ100の表面101に粘着テープ105を貼着する点、及び、
図12及び
図13に示すように、溝(第1例では切削溝141、第2例ではレーザー加工溝151)が形成されているウエーハ100に分離起点135を形成する点を除き、実施形態1と同様である。
図12及び
図13に示す例では、溝形成ステップ1002の第1例の後に実施される場合の分離起点形成ステップ1001を示しているが、溝形成ステップ1002の第2例の後に実施される場合でも同様である。
【0036】
変形例1に係るウエーハの加工方法のチップ剥離ステップ1003は、分離起点形成ステップ1001の処理後のウエーハ100の表面101に貼着されている粘着テープ105を剥がし、ウエーハ100の裏面104に粘着テープ105を貼着してから実施する点を除き、実施形態1と同様である。
【0037】
以上のような構成を有する変形例1に係るウエーハの加工方法は、実施形態1において、分離起点形成ステップ1001と溝形成ステップ1002との実施順序を入れ替えたものであるので、実施形態1と同様の作用効果を奏するものとなる。
【0038】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係るウエーハの加工方法を図面に基づいて説明する。
図14は、実施形態2に係るウエーハの加工方法の分離起点形成ステップ1001を説明する断面図である。
図15は、実施形態2に係るウエーハの加工方法の分離起点形成ステップ1001を説明する上面図である。
図15は、
図14の状態を裏面104側から見た図である。
図16は、実施形態2に係るウエーハの加工方法の溝形成ステップ1002の第1例を説明する断面図である。
図17は、実施形態2に係るウエーハの加工方法の溝形成ステップ1002の第1例を説明する上面図である。
図17は、
図16の状態を表面101側から見た図である。
図18は、実施形態2に係るウエーハの加工方法の溝形成ステップ1002の第2例を説明する断面図である。
図19は、実施形態2に係るウエーハの加工方法のチップ剥離ステップ1003を説明する断面図である。
図14から
図19は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0039】
実施形態2に係るウエーハの加工方法は、
図19に示すように、実施形態1において、ウエーハ100の一方側の半分の領域170から厚み130-1のチップ160-1を生成し、ウエーハ100の他方側の半分の領域180から厚み130-2のチップ160-2を生成するように変更したものであり、その他の処理は実施形態1と同様である。実施形態2では、厚み130-1と厚み130-2とは、互いに異なる。
【0040】
実施形態2に係るウエーハの加工方法の分離起点形成ステップ1001は、実施形態1において、ウエーハ100の領域170,180毎にレーザービーム12の集光点13を位置づける深さを変更して、分離起点135を形成する深さを変更したものであり、その他の処理は実施形態1と同様である。実施形態2に係るウエーハの加工方法の分離起点形成ステップ1001では、具体的には、
図14及び
図15に示すように、領域170では、レーザービーム12の集光点13を、生成するチップ160-1(
図19参照)の厚み130-1に相当する深さに位置づけた状態でレーザービーム12を照射して当該深さに改質層131及びクラック132を形成して分離起点135を形成し、領域180では、レーザービーム12の集光点13を、生成するチップ160-2(
図19参照)の厚み130-2に相当する深さに位置づけた状態でレーザービーム12を照射して当該深さに改質層131及びクラック132を形成して分離起点135を形成する。
【0041】
実施形態2に係るウエーハの加工方法の溝形成ステップ1002は、実施形態1において、第1例では
図16及び
図17に示すように、第2例では
図18に示すように、表面101から所望するチップ160-1,160-2(
図19参照)のうち厚い方(
図16及び
図18に示す例ではチップ160-1)の厚み130-1以上の深さ(第1例では深さ140、第2例では深さ150)の溝(第1例では切削溝141、第2例ではレーザー加工溝151)を形成するように変更したものであり、その他の処理は実施形態1と同様である。
【0042】
なお、実施形態2に係るウエーハの加工方法の溝形成ステップ1002では、上記形態に限定されず、チップ領域103を囲繞する溝(第1例では切削溝141、第2例ではレーザー加工溝151)を、当該チップ領域103で所望されるチップ(チップ160-1,160-2)の厚み(厚み130-1,130-2)以上の深さ(第1例では深さ140、第2例では深さ150)に形成してもよい。実施形態2に係るウエーハの加工方法の溝形成ステップ1002では、分割予定ライン102が隣接するチップ領域103で所望されるチップ(チップ160-1,160-2)の厚み(厚み130-1,130-2)に応じて、分割予定ライン102毎に溝(第1例では切削溝141、第2例ではレーザー加工溝151)の深さ(第1例では深さ140、第2例では深さ150)を変更してもよい。
【0043】
実施形態2に係るウエーハの加工方法のチップ剥離ステップ1003は、
図19に示すように、実施形態1において、領域170で厚み130-1のチップ160-1の剥離及びピックアップを行い、領域180で厚み130-2のチップ160-2の剥離及びピックアップを行うように変更したものであり、その他の処理は実施形態1と同様である。
【0044】
実施形態2では、ウエーハ100の2つの領域170,180毎に2種類の異なる厚み130-1,130-2のチップ160-1,160-2を生成したが、本発明ではこれに限定されず、例えば3種類以上でもよく、ウエーハ100のチップ領域103毎に少なくとも2種類の異なる厚みのチップを生成するいかなる形態でもよい。この場合、分離起点形成ステップ1001では、ウエーハ100のチップ領域103毎に少なくとも2種類の異なるチップの厚みに応じた深さにレーザービーム12の集光点13を位置づけてレーザービーム12を照射して分離起点135を形成し、溝形成ステップ1002では、チップ領域103を囲繞する溝をチップ領域103毎に所望されるチップの厚み以上の深さに形成する。
【0045】
従来では、1枚のウエーハから異なる厚みのチップを形成する場合、個片化したチップ毎に研削厚みを変更するという非効率な方法が取られていた。しかしながら、以上のような構成を有する実施形態2に係るウエーハの加工方法は、チップ領域103毎に分離起点135を形成する深さを2種類以上(
図14から
図19の例では2種類)に変更することで、2種類以上(
図14から
図19の例では2種類)の異なる厚み130-1,130-2のチップ160-1,160-2を形成することができる。このため、実施形態2に係るウエーハの加工方法は、従来よりも効率よく、1枚のウエーハ100から異なる厚み130-1,130-2のチップ160-1,160-2を形成できるという作用効果を奏する。
【0046】
なお、実施形態2に係るウエーハの加工方法は、変形例1を適用して、分離起点形成ステップ1001と溝形成ステップ1002との実施順序を入れ替えてもよい。
【0047】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3に係るウエーハの加工方法を図面に基づいて説明する。
図20は、実施形態3に係るウエーハの加工方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図21は、
図20の分離起点形成ステップ1001を説明する断面図である。
図22は、
図20の分離起点形成ステップ1001を説明する上面図である。
図22は、
図21の状態を裏面104側から見た図である。
図23は、
図20の溝形成ステップ1002の第1例を説明する断面図である。
図24は、
図20の溝形成ステップ1002の第1例を説明する上面図である。
図24は、
図23の状態を表面101側から見た図である。
図25は、
図20の溝形成ステップ1002の第2例を説明する断面図である。
図26は、
図20のチップ剥離ステップ1003を説明する断面図である。
図27は、
図20のチップ剥離ステップ1003を説明する上面図である。
図27は、
図26の状態を表面101側から見た図である。
図28は、
図20の接着剤充填ステップ1004を説明する断面図である。
図29は、
図20の接着剤充填ステップ1004を説明する上面図である。
図29は、
図28の状態を表面101側から見た図である。
図30は、
図20のチップ固定ステップ1005を説明する断面図である。
図31は、
図20のチップ固定ステップ1005を説明する上面図である。
図31は、
図30の状態を表面101側から見た図である。
図20から
図31は、実施形態1,2と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0048】
実施形態3に係るウエーハの加工方法は、
図20に示すように、デバイス判定ステップ1011と、分離起点形成ステップ1001と、溝形成ステップ1002と、チップ剥離ステップ1003と、接着剤充填ステップ1004と、チップ固定ステップ1005と、を備える。
【0049】
デバイス判定ステップ1011は、ウエーハ100上に形成されているチップ160毎に、チップ160が不良であるか否かを検出するステップである。ここで、チップ160が不良であるとは、チップ160が製品として使用できる品質を満たしていない状態をいう。デバイス判定ステップ1011では、例えば、不図示のデバイス検出器(プローバ)の複数のプローブ針をチップ160に形成された電極に接触させ、プローブ針と電気的に接続される不図示のテスターによりプローブ針を介してチップ160に所定の電気信号入力し、チップ160から返信される電気信号に基づいてチップ160が不良であるか否かを検出する。デバイス判定ステップ1011では、本発明ではこれに限定されず、チップ160が不良であるか否かを検出するその他の種々の周知の検査を実施してもよい。
【0050】
実施形態3に係るウエーハの加工方法は、デバイス判定ステップ1011で全てのチップ160が不良でないと判定した場合(デバイス判定ステップ1011でNo)、処理を終了する。実施形態3に係るウエーハの加工方法は、デバイス判定ステップ1011で少なくとも1つのチップ160が不良であると判定した場合(デバイス判定ステップ1011でYes)、不良と判定したチップ160のウエーハ100内の位置、チップ領域103の大きさ及び厚み130等の情報を、実施形態3に係るウエーハの加工方法の各ステップを実施する各装置(レーザー加工装置10、切削加工装置20、レーザー加工装置30及びチップ剥離装置40)を制御する不図示の制御ユニットに送信し、処理を分離起点形成ステップ1001に進める。
【0051】
なお、上記の制御ユニットは、実施形態3では、コンピュータシステムを含む。制御ユニットが含むコンピュータシステムは、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。制御ユニットの演算処理装置は、制御ユニットの記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、上記各装置を制御するための制御信号を、制御ユニットの入出力インターフェース装置を介して上記各装置の各構成要素に出力する。
【0052】
実施形態3に係るウエーハの加工方法の分離起点形成ステップ1001は、
図21及び
図22に示すように、実施形態1において、デバイス判定ステップ1011で不良と判定したチップ160が形成されたチップ領域103においてのみ、当該チップ160の厚み130に相当する深さに分離起点135を形成するように変更したものであり、その他の処理は実施形態1と同様である。
【0053】
実施形態3に係るウエーハの加工方法の溝形成ステップ1002は、第1例では
図23及び
図24に示すように、第2例では
図25に示すように、実施形態1において、デバイス判定ステップ1011で不良と判定したチップ160が形成されたチップ領域103を囲繞する分割予定ライン102の部分においてのみ、当該チップ160の厚み130以上の深さ(第1例では深さ140、第2例では深さ150)の溝(第1例では切削溝141、第2例ではレーザー加工溝151)を形成するように変更したものであり、その他の処理は実施形態1と同様である。
【0054】
なお、実施形態3に係るウエーハの加工方法の溝形成ステップ1002の第1例では、具体的には、当該分割予定ライン102の部分毎に、切削ブレード21を当該分割予定ライン102の部分上に位置付け、切削ブレード21を回転させながら深さ140の切削溝141を形成する高さまで鉛直方向に下降させて切削加工をし、その後切削ブレード21を鉛直方向に上昇させて退避させるという、いわゆるチョッパーカットを行うが、本発明ではチョッパーカットに限定されず、実施形態1と同様の方法でチップ領域103を囲繞する分割予定ライン102に沿って深さ140の切削溝141を形成してもよい。
【0055】
実施形態3に係るウエーハの加工方法のチップ剥離ステップ1003は、
図26及び
図27に示すように、実施形態1において、デバイス判定ステップ1011で不良と判定したチップ160のみの剥離及びピックアップを行うように変更したものであり、その他の処理は実施形態1と同様である。実施形態3に係るウエーハの加工方法のチップ剥離ステップ1003では、デバイス判定ステップ1011で不良と判定したチップ160をピックアップすることにより、当該チップ160が形成されていたウエーハ100のチップ領域103及び当該チップ領域103を囲繞する分割予定ライン102の部分を含む領域に、チップ160の厚み130に対応する深さの凹部162を形成する。
【0056】
従来であれば、チップを厚み方向に完全切断して剥離する場合は、剥離するチップ領域のみ粘着テープの粘着力を低下させた後に剥離するという手順が必要であったが、実施形態3に係るチップ剥離ステップ1003では、ウエーハ100の内部に形成した分離起点135を起点に剥離するため、剥離したいチップ160が形成されたチップ領域103のみの粘着テープ105の粘着力を低下させるというステップが不要になる。
【0057】
接着剤充填ステップ1004は、
図28及び
図29に示すように、接着剤供給装置50により、チップ剥離ステップ1003で形成した凹部162に接着剤53を供給して充填するステップである。接着剤53は、実施形態3では、追ってチップ固定ステップ1005で供給するチップ165(
図30及び
図31参照)を固定するための、空気中で固化する液状の樹脂であり、例えば、周知の有機溶剤や界面活性剤等を含む接着剤が好適に使用される。
【0058】
接着剤充填ステップ1004では、
図28に示すように、接着剤供給装置50の保持テーブル55により、凹部162が形成されたウエーハ100の裏面104側を、粘着テープ105を介して保持面56で保持する。保持テーブル55は、実施形態1の保持テーブル15と同様の構造を有する。接着剤充填ステップ1004では、次に、接着剤供給装置50の接着剤供給源52から供給される接着剤53を、ノズル51より凹部162に供給して、追ってチップ固定ステップ1005でチップ165を供給した際に凹部162からちょうど溢れない程度の深さまで充填する。
【0059】
チップ固定ステップ1005は、
図30及び
図31に示すように、チップ固定装置60により、接着剤充填ステップ1004で凹部162に充填された接着剤53上にチップ165を供給し、接着剤53にチップ165を押しつけて固定するステップである。なお、チップ165は、実施形態3では、チップ剥離ステップ1003でウエーハ100から剥離したチップ160と同様の仕様、形状及びサイズであり、なおかつ、デバイス判定ステップ1011と同様の判定方法で不良ではない(良である)と判定されるものである。
【0060】
チップ固定ステップ1005では、
図30に示すように、チップ固定装置60の保持テーブル65により、凹部162に接着剤53が充填されたウエーハ100の裏面104側を、粘着テープ105を介して保持面66で保持する。保持テーブル65は、実施形態1の保持テーブル15と同様の構造を有する。チップ固定ステップ1005では、次に、チップ165を吸着保持したチップ固定装置60の吸着部61を凹部162内の接着剤53上に位置付け、チップ165の上面がウエーハ100の表面101と同一平面上になる高さまで吸着部61でチップ165を接着剤53に押し付けた後、チップ165の吸着保持を解除する。
【0061】
なお、チップ固定ステップ1005において、凹部162の底面を基準としたチップ165の上面の高さは、チップ165の厚みに接着材53の厚みが加算された高さとなるため、その前に実施する分離起点形成ステップ1001において、分離起点135をチップ160の厚み130よりも深い深さに形成しても良い。また、チップ固定ステップ1005の実施後には、ウエーハ100の表面101を粘着テープ105に保持し、裏面104側を研削するステップを備えても良い。
【0062】
なお、実施形態3に係るウエーハの加工方法は、
図21から
図31に示す例では、1つのチップ160が不良であると判定され、この不良と判定された1つのチップ160が形成されたチップ領域103において分離起点形成ステップ1001以降の各ステップの処理を実施しているが、本発明ではこれに限定されず、複数のチップ160が不良であると判定され、これらの不良と判定された複数のチップ160が形成されたチップ領域103毎に分離起点形成ステップ1001以降の各ステップの処理を実施してもよい。
【0063】
従来では、複数の半導体デバイスのウエーハ同士を積層し、積層した半導体デバイスのウエーハを貫く貫通電極を形成してウエーハ同士を接続してから、積層したウエーハを分割することで積層したチップを形成する積層プロセス(Wafer On Wafer、WOW)を実施する場合には、あるウエーハで不良のチップがあると、その不良のチップ上に積層されたチップも使用できなくなってしまっていた。しかしながら、以上のような構成を有する実施形態3に係るウエーハの加工方法は、不良であると判定されたチップ160(デバイス)を選択的にくり抜いて、くり抜いたチップ領域103に代わりに良であると判定されたチップ165を埋め込むことで、ウエーハ100上の全てのチップ領域103に形成されたチップ160,165を良と判定される状態にできるので、WOWプロセスを実施する場合に使用できなくなるチップ160の発生を抑制できるという作用効果を奏する。
【0064】
なお、実施形態3に係るウエーハの加工方法は、変形例1を適用して、分離起点形成ステップ1001と溝形成ステップ1002との実施順序を入れ替えてもよい。
【0065】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0066】
12 レーザービーム
13 集光点
100 ウエーハ
101 表面
102 分割予定ライン
103 チップ領域
104 裏面
130,130-1,130-2 厚み
131 改質層
132 クラック
135 分離起点
140,150 深さ
141 切削溝
151 レーザー加工溝
160,160-1,160-2,165 チップ