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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】試験測定装置及び入力信号分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 13/02 20060101AFI20241216BHJP
   G01R 23/16 20060101ALI20241216BHJP
   G01R 29/02 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
G01R13/02
G01R23/16 D
G01R29/02 L
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020154060
(22)【出願日】2020-09-14
(65)【公開番号】P2021056215
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-08-21
(31)【優先権主張番号】62/900,422
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/018,198
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョーン・ジェイ・ピカード
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-103717(JP,A)
【文献】特開2005-233946(JP,A)
【文献】国際公開第2007/099971(WO,A1)
【文献】米国特許第8891602(US,B1)
【文献】特開平10-267972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 13/00
G01R 23/16
G01R 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を受けるように構成された入力部と、
上記信号をデジタル信号に変換するように構成されたアナログ・デジタル・コンバータと、
上記デジタル信号に基づいてリカバリ・クロック信号を求め、
上記デジタル信号の高速フーリエ変換のためのウィンドウ位置を設定し、
上記デジタル信号を上記ウィンドウ位置に基づいて一連の窓処理波形データに分離し、
高速フーリエ変換を使用して上記窓処理波形データの夫々を周波数領域窓処理波形データに変換し、
上記周波数領域窓処理波形データ夫々の高次スペクトル・データを求める
よう構成された1つ以上のプロセッサと、
上記周波数領域窓処理波形データの上記高次スペクトル・データを受け、上記高次スペクトル・データに基づいて上記窓処理波形データの夫々を分類するように構成されたニューラル・ネットワークと
を具える信号を分析するための試験測定装置。
【請求項2】
上記高次スペクトル・データを受け、閾値を突破しない上記高次スペクトル・データを通過させ、上記閾値を突破する上記高次スペクトル・データを極小値に設定するように構成された閾値ゲートを更に具える請求項1の試験測定装置。
【請求項3】
上記周波数領域窓処理波形データを受けて、受けたビット・パターンに基づいて特定のパスに送るよう構成されるマルチプレクサ・スイッチと、
上記周波数領域窓処理波形データを受けて、上記ビット・パターンを出力するように構成されたビット・パターン認識ニューラル・ネットワークと
を更に具え、
1つ以上の上記プロセッサには、上記パス夫々への上記周波数領域窓処理波形データの上記高スペクトル・データを決定する処理があり、上記パス夫々の上記高スペクトル・データに基づいて上記周波数領域窓処理波形データを分類するための上記パス夫々用の個別のニューラル・ネットワークが設けられる請求項1の試験測定装置。
【請求項4】
1つ以上の上記プロセッサが、上記周波数領域窓処理波形データ夫々の上記高次スペクトル・データを平均化するように構成され、上記個別のニューラル・ネットワークの夫々は、上記高次スペクトル・データの平均に基づいて上記窓処理波形データを分類するように構成される請求項3の試験測定装置。
【請求項5】
試験測定システムにおいて、入力信号を分析する方法であって、
入力信号を受ける処理と、
上記入力信号に基づいてリカバリ・クロック信号を求める処理と、
デジタル信号の高速フーリエ変換のためのウィンドウ位置を設定する処理と、
上記ウィンドウ位置に基づいて上記入力信号を一連の窓処理波形データに分離する処理と、
高速フーリエ変換を使用して上記窓処理波形データを周波数領域窓処理波形データに変換する処理と、
上記周波数領域窓処理波形データ夫々の高次スペクトル・データを求める処理と、
上記高次スペクトル・データに基づいてニューラル・ネットワークによって上記窓処理波形データの夫々を分類する処理と
を具える入力信号分析方法。
【請求項6】
閾値を突破しない上記高次スペクトル・データをニューラル・ネットワークへ送る処理と、上記閾値を突破する上記高次スペクトル・データを極小値に設定する処理とを更に具える請求項5の入力信号分析方法。
【請求項7】
ビット・パターン認識ニューラル・ネットワークによって上記周波数領域窓処理波形データに基づいてビット・パターンを検出する処理と、
上記ビット・パターンに基づいて上記周波数領域窓処理波形データを特定のニューラル・ネットワークに送り、上記ビット・パターンに基づいて上記周波数領域窓処理波形データ夫々の上記高次スペクトル・データを分類する処理と
を更に具える請求項5の入力信号分析方法。
【請求項8】
上記ビット・パターンに基づいて上記周波数領域窓処理波形データ夫々の上記高次スペクトル・データを分類する処理の前に、特定のビット・パターンに関して上記周波数領域窓処理波形データ夫々の上記高次スペクトル・データを平均する処理を更に具える請求項7の入力信号分析方法。
【請求項9】
試験測定装置の1つ以上のプロセッサによって実行されると、上記試験測定装置に請求項5から8のいずれかの方法を実行させるコンピュータ・プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試験測定システムに関連するシステム及び方法に関し、特に信号分析のための試験測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ジッタは、信号内のイベントの理想的なタイミングからの偏差を定義するために使用される周知の技術用語である。ジッタによって、データ・ビットのシーケンス中の重要なエッジの位置が、理想的な位置から間違った位置に配置されるという結果を生じる。このジッタは、リカバリ・クロックのエッジ位置のエラーの結果として生じることもあるし、システムの反射若しくはシステムのシンボル間干渉から生じることもあるし、又は、システムの伝達関数の結果として生じることもある。歪みのような他の影響が発生することもある。加えて、チャンネルのデータ・リカバリの精度と性能の特性を評価するのに役立つ、重要な別の波形の測定値もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-59912号公報
【文献】特開2018-159702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現代のシリアル・データ通信システムでは、シリアル・データ・クロックは、通常データと別個には送信されないので、ジッタは受信側でデータ・エラーを引き起こす可能性がある。そのため、波形パラメータやシステム特性の様々な測定値の特性を評価し、分類することは非常に重要である。
【0005】
被試験信号のジッタをより正確かつ迅速に特定し、測定するためには、試験測定装置を継続的に改善する必要がある。
【0006】
開示技術の実施形態は、これら及び他の従来技術の欠陥に取り組むものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願で開示されるのは、試験測定システムの例であって、擬似ランダム・バイナリ・シーケンス(PRBS)信号のような入力信号を分析するための短期間高速フーリエ変換(FFT)計算のような計算に基づくバイコヒーレンスと同期する関連するクロック・リカバリを適用することによって、信号を分析できる。本開示技術の例では、バイコヒーレンスは、ジッタを識別し、信号のシンボル間干渉(ISI)、クロック・エッジ・ジッタなどの歪みのような他の歪みを含む信号からジッタを分離するために利用される。バイコヒーレンスの結果のベクトル空間は、ニューラル・ネットワークに供給しても良く、これは、信号の様々な特性を認識し、分類するようにトレーニングされても良い。
【0008】
本発明の実施形態の態様、特徴及び効果は、添付の図面を参照し、以下の実施形態の説明を読むことで明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、バイスペクトル計算のための絶対位相基準位置のグラフの例である。
図2図2は、理想的な擬似ランダム・バイナリ・シーケンス信号の時間対周波数プロットを示す帯域幅図である。
図3図3は、本開示技術の形態による例示的な試験測定システムのブロック図である。
図4図4は、本開示技術の形態による別の例示的な試験測定システムのブロック図である。
図5図5は、本開示技術の形態による別の例示的な試験測定システムのブロック図である。
図6図6は、本開示技術の形態による別の例示的な試験測定システムのブロック図である。
図7図7は、入力信号のリカバリ・クロック信号と窓関数を示すタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
バイコヒーレンス(bicoherence)を理解するために、第1次及び第2次キュムラント(cumulant)の定義を与えることとする。定常プロセスの第1次キュムラントは、平均である。第1次キュムラントは、数式1で表記でき、ここで、Eは、期待値であり、これは、信号の平均値である。
【0011】
1x=E{x(t)} (1)
【0012】
もっと高次のキュムラントの場合、この平均値は、通常、引き算される。
【0013】
時間領域の第2次キュムラントは、自己相関関数であって、数式2に示すように記述され、ここで、上線は、複素共役を表す。
【0014】
【数2】
【0015】
自己相関(auto-correlation)は、数式2に示すように、フィルタの畳み込み積分と類似している。フィルタの畳み込み積分では、乗算、累積、シフトを実行する前に、フィルタ係数の時間的な順序を逆にする。自己相関の場合、x(n)と、kのシフトがあるx(n+k)の順序は、逆にはしない。第2次キュムラントを周波数領域に変換すると、それはオート・パワー・スペクトル(auto power spectrum)と呼ばれ、数式3で表される。xに、その複合共役を乗算すると、ゼロ位相を生じる。x(n)項の2乗は、パワー(電力)を表す。従って、パワー・スペクトルは、周波数領域の第2次キュムラントを表しており、数式3に示すように記述できる。
【0016】
【数3】
【0017】
数式3の別の表記が、数式4に示され、ここで、Xは、xのスペクトルである。
【0018】
【数4】
【0019】
3次元空間に変換された第3次キュムラントは、バイスペクトル(bispectrum)と呼ばれる。時間領域の第3次キュムラントは、数式5で示される。
【0020】
【数5】
【0021】
バイスペクトルは、数式6に示すように、第3次キュムラントのフーリエ変換として定義される。
【0022】
【数6】
【0023】
周波数領域での別の表記法を使ったバイスペクトルを、数式7において、3重積として示す。
【0024】
【数7】
【0025】
変数Bは、周波数f1及びf2でのバイスペクトルであり、X(f)は、信号x(t)のフーリエ変換である。上線は、複素共役を示す。複素数乗算の法則を使用すると、バイスペクトルの大きさ(magnitude:マグニチュード)は、各周波数における関数Xの大きさの積と等しくなる。バイスペクトルの位相は、各周波数におけるXの位相の合計(sum:和)である。バイスペクトルは、各周波数でのXの大きさに依存する。
【0026】
もしXが連続的な時間不変信号であって、もしX(f1)、X(f2)及びX(f1+f2)が完全に位相ロックされていて、そして、もしx(t)の複数の時点における時間的にランダムないくつかの時点において短期間のFFTが計算された場合には、バイスペクトルは、常に同じ値になるであろう。もし合算されると、各ポイントのバイスペクトルは、相殺(canceling)なしで合算される。短期間FFT夫々の位相は、波形上の絶対基準時間に対して調整される。
【0027】
しかし、もしXが時間で変化する信号である場合、つまり、もし各周波数の位相が時間的にランダムで、大きさが一定の場合、各バイスペクトルを合算するときに、相殺が生じがちになるであろう。その結果として、時間で変化する信号の位相と大きさの関係に応じて、ゼロに向かう傾向となろう。従って、擬似ランダム・バイナリ・シーケンス信号のような時間変化信号については、信号の位相がゼロに平均化されないようにクロック・リカバリが行われる。
【0028】
バイコヒーレンスは、数式8に示すように、バイスペクトルを正規化して、マグニチュード(大きさ)への依存を取り除く。
【0029】
【数8】
【0030】
ここで、nは、各FFTフレームのインデックスで、1から、波形レコード内のFFTフレームの個数まで変化する。数式8の分子には、スペクトルの大きさが含まれる。もし位相結合(phase coupling)が高いと、マグニチュード(大きさ)値が大きくなるが、この結合が低い場合はゼロに近づく。数式8の分母では、合算するのは、マグニチュード(大きさ)についてだけであり、基本的に、位相を全てゼロに設定し、そうして、バイスペクトルを正規化してバイコヒーレンスbを得るが、これは、最大値が1、最小値はゼロである。
【0031】
異なる周波数の2つの正弦波を加算し、非線形要素を通過させると、乗算プロセスが生じる。結果として得られる出力は、2つの周波数の正弦波から構成されるが、これは、数式9に示すように、2つの周波数の和と、2つの周波数の差である。
【0032】
sin(a)・sin(b)={cos(a-b)-cos(a+b)}/2 (9)
【0033】
従って、上記数式7に示したバイスペクトル方程式では、X(f1)とX(f2)は、同相の2つの正弦波であっても良く、X(f1+f2)は、非線形デバイスを通過した後の歪み成分であっても良い。このバイスペクトルは、一般に、非線形歪み成分の分析に使用されている。
【0034】
Xがコヒーレントな複数の周波数から構成される時間不変信号である場合、x(t)の時間レコードに沿って複数の短期間FFTを取ることによって、バイスペクトルを計算し、次いで、各FFTのバイスペクトルを合算しても良い。FFTのゼロ位相基準点は、通常、FFTの時間ウィンドウの最初のサンプルの時間位置として定義される。FFTウィンドウが時間レコードに沿って移動すると、X(f1)及びX(f2)の位相は、時間位置の関数として回転する。従って、その位相基準に基づくFFTからのバイスペクトルは、全てのFFT位置からのバイスペクトル合計がゼロに近づく原因となる。
【0035】
そのため、x(t)波形上に絶対位相基準位置が必要である。すると、各FFTの結果の位相は、図1に示すように、絶対時間位置に対して調整できる。図1では、正弦波100の位相は、絶対ゼロ位相基準点102に対して90度である。しかし、FFT1から算出された位相は0.0度、FFT2から算出される位相は180度になる。そこで、FFT1の位相値は、FFT1は、ゼロ位相基準104を有するように、オフセット1によって補正される。FFT2の位相値は、FFT2のゼロ位相基準106を有するように、オフセット2によって補正される。これによって、FFT1及びFFT2は、絶対ゼロ位相時間位置102に対する信号の90度位相を返答(return:リターン)できる。これにより、複数の時間ウィンドウを平均することによって、バイスペクトル値をより正確に計算できる。
【0036】
擬似ランダム・バイナリ・シーケンス(PRBS)信号は、PRBS信号の生成に使用される多項式の次数によって決まる長さの擬似ランダム・ビット・パターンを有する。従って、信号は時間不変ではなく、そのバイスペクトルは、ゼロに向かう傾向がある。
【0037】
ユニット・インターバル(UI)の倍数に配置された一連の理想的なステップ信号で構成される理想的なPRBS信号を検討してみよう。x(t)の時間tに関する微分(導関数)についての時間対周波数プロット200が、図2に示されている。これは理想化されたスペクトログラムなので、各パルスの周波数成分は同じである。図2は、時間と周波数の間の解像度のトレードオフのために、短期間FFTから現実には計算できない理想化されたスペクトログラムを示しているが、図2は、説明のために示している。例えば、1つのFFTウィンドウで1つのインパルスだけを得るには、FFTウィンドウは、1ビットのインターバルよりも非常に短いレコード長を持つことになろう。そのレコード長の時間ウィンドウ幅は、信号の低周波数成分を正確に測定するのには、十分な長さではないであろう。ジッタとISIの影響を求めるための、もっと高い解像度を得るのには、オーバー・サンプリングをすることが望ましいであろう。
【0038】
FFTウィンドウがもっと広くなると、FFTウィンドウは、信号の2つ以上のビット・インターバルを含み始める。ビット遷移が起こる各時間位置における理想的なインパルスについては、全ての周波数でそのスペクトルのマグニチュード(大きさ)が1であり、全ての周波数の位相は、個別の遷移夫々についてのインパルスの時間位置に関してゼロに等しい。
【0039】
しかし、もっと広いFFTウィンドウでは、エッジ間の遅延によって位相が変動するウィンドウ内の各インパルスに由来する複数の周波数を含むことになる。これらは、FFT演算中で合算されて、各周波数で単一の合成位相を提供する。もしFFTウィンドウ内に2つのインパルスしかない場合で、もしそれがノン・リターン・トゥ・ゼロ(NRZ)信号なら、定義上、一方は、立ち上がりエッジとなり、他方は、立ち下がりエッジとなるであろう。4レベル・パルス振幅変調(PAM4)信号は、2つの連続する立ち上がりエッジ若しくは2つの連続する立ち下がりエッジ、又は、1つの立ち上がりエッジ及び1つの立ち下がりエッジを有することがある。理想的なエッジの場合、立ち上がりの位相は、立ち下がりの位相から180度離れている。
【0040】
もし複数のエッジが1つのウィンドウ内にある場合、各エッジの位相、ジッタ、ISIなどが合算される。もし複数のエッジのパターンと位置が、あるウィンドウとその次のとで異なる場合、バイスペクトルの和は、より広い範囲に渡る差分が平均化されて、より小さなバイコヒーレンス値を生じることになろう。
【0041】
現在のオシロスコープのサンプリング・レートは、約200ギガ・サンプル毎秒(GS/s)であり、37.7ピコ秒(ps)の期間に、1/26.5ギガ・ヘルツ(GHz)のシンボル幅を有する53ギガ・ボー(GBd)のPAM4信号を取り込む。サンプル・レートの周期は5psであり、これは、1ビット・インターバル当たり7.547サンプルを生じる。4つのシンボル期間を含むFFTの長さは、約32ポイントである。
【0042】
試験測定装置のPRBS信号に対するチャンネルのインパルス応答が、理想的なビット・パターンで畳み込み積分されると、過去のビットのエッジは、後続のビットに影響を与える。これは、シンボル間干渉(inter-symbol interference:ISI)と呼ばれる。ISIは、先行するビット・パターンに依存する一定でない立ち上がり時間及び立ち下がり時間を生じさせる。ISIは、スペクトルの位相と大きさに、各エッジの微分に由来する影響を与える。これにより、エッジにジッタが生じ、これは、多くの場合、データ依存ジッタ(DDJ)として分類される。被試験デバイスからのトランスミッタ・クロック・ジッタによって、図2のスペクトログラムの垂直バーは広くなる。
【0043】
図3は、本開示技術の例による例示的な試験測定システム300を示す。信号x(n)は、試験測定装置の入力部で受信される。オプションで連続時間線形イコライザ(CTLE)302を設けて、試験装置やシリアル・データ・リンクの部分的なディエンベッド処理を実行しても良い。更に設けても良い別のオプションのフィルタ(図示せず)として、試験装置やチャンネル応答をディエンベッド処理するためのディエンベッド/エンベッド・フィルタがある。ディエンベッド/エンベッド・フィルタは、CTLE302の隣(CTLE302の前後いずれでも)に配置されることになろう。
【0044】
クロック・リカバリ304は、1つ以上のプロセッサによって実行される。クロック・リカバリ304は、入力信号を直接か又はCTLE302からの等化された入力波形を受けて、リカバリ・クロック波形やエッジ・クロスのリストを生成する。いくつかの例では、ずばりクロックそのもの(明示的クロック)をアナログ・デジタル・コンバータによって取得して使用しても良いし、ダブル・データ・レート(DDR)メモリ・システムで得られるようなバースト的な明示的クロックを使用しても良い。
【0045】
入力信号及びリカバリ・クロックは、ウィンドウ・シーケンサ306に送られる。いくつかの別の実施形態では、入力信号をウィンドウ・シーケンサ306に送るのではなく、CTLE302からの等化された信号を送っても良い。ウィンドウ・シーケンサ306は、1つ以上のプロセッサによって実行され、リカバリ・クロック信号及び入力波形データに対する任意の短期間FFTウィンドウの位置を把握する。更に後述するように、ウィンドウ・シーケンサ306によって、波形の特性を抽出するために、バイスペクトル又はバイコヒーレンス関数を有意義な方法で使用することが可能になる。
【0046】
いくつかの例では、オプションのリサンプラ308を設けても良い。リサンプラ308は、FFTウィンドウ・インターバル中の信号をリサンプルして、FFTの開始がユニット・インターバル(UI)の中心になるようにする。入力信号がPRBSシーケンスである場合、リサンプラ308は、サンプル・レートがウィンドウの開始時刻に対して非同期である効果を除去する。こうして、リサンプラ308は、アナログ・デジタル・サンプル・ジッタを除去する。つまり、リサンプリング後は、ウィンドウの開始位置ちょうどに常にデータ・サンプルが存在する。入力信号が連続している状況では、リサンプラ308は、波形上の絶対時間基準点に対してスペクトルの位相を保証するために用いることができる。
【0047】
FFT312を実行して信号を周波数領域に変換する前に、図3に示すような、テューキー(Tukey)ウィンドウのような窓関数310が、1つ以上のプロセッサによって適用される。窓関数310は、FFT312を実行する、信号の一部分を分離できる。FFT312は、1つ以上のプロセッサによって実行され、ウィンドウ・シーケンサ306によって決定される各時間位置において、窓(ウィンドウ)処理された波形データに適用される短期間FFTである。
【0048】
FFT312の位相基準点は、信号に関する高次スペクトル・データ314を計算する際に用いられる。クロック・リカバリ304からのリカバリ・クロックは、各FFTの位相基準点を配置するために使用される。リカバリ・クロックに基づく位相基準点の位置を使用すると、FFTウィンドウ中のエッジを、クロック位相基準位置に対してコヒーレントにできる。
【0049】
高次スペクトル・データ314は、1つ以上のプロセッサによって、FFT312からスペクトルを取り込み、そのデータをバイスペクトルに変換することによって求められる。高次スペクトル・データ314は、複素値のバイスペクトル、バイスペクトルの位相やバイコヒーレンスを含んでいても良い。バイコヒーレンスを求めるには、バイスペクトルを正規化して、マグニチュード値を求める。即ち、バイスペクトル・データ314は、高次スペクトル・データ314を後続の演算に供給する前に、マグニチュード(大きさ)値、位相値、複素値の中の少なくとも1つで表すことができる。本開示全体を通して、高次スペクトル・データ314は、バイスペクトル、バイコヒーレンス、又は、バイスペクトルの位相を含んでいても良い。また、高次スペクトル・データ314は、スペクトルに基づいて求められる第4次以上のような高次の統計値も含んでいて良い。
【0050】
閾値ゲート316は、指定された閾値レベルを超えるマグニチュードを有するバイスペクトル・サンプルを維持するために、いくつかの例で設けられる。閾値レベルは、マグニチュード閾値、位相閾値又は複素数閾値であっても良い。閾値レベルは、ユーザによって設定されても良いし、1つ以上のプロセッサによって決定されても良い。図示していないが、試験測定装置は、ユーザが指定する閾値レベルを受けるためのユーザ・インタフェースを含んでもよい。
【0051】
閾値ゲート316が、図3に示すように、マグニチュード閾値ゲート316である場合、マグニチュード閾値ゲート316は、マグニチュード(大きさ)が閾値以上であればバイスペクトルを通過させ、マグニチュードが閾値を下回る場合には、ゼロその他の低いレベルにバイスペクトルを設定する。これに代えて、バイスペクトルの位相が、バイコヒーレンスのマグニチュード(大きさ)の閾値又はバイスペクトルの位相に基づいてゲート(特定条件を満たすと出力)されても良い。いくつかの例では、バイスペクトルは、複素数値のままとし、複素数閾値が使用されても良い。
【0052】
閾値ゲート316の出力は、ニューラル・ネットワーク(neural network)318に送られる。ニューラル・ネットワーク318は、マグニチュード、位相又は複素数の中の少なくとも一つの形態で、バイスペクトルやバイコヒーレンスを受ける。ニューラル・ネットワーク318を通して、バイスペクトルやバイコヒーレンスに機械学習が適用されて、信号が分類及び解読される。即ち、ニューラル・ネットワーク318は、閾値でゲートされたバイスペクトル又はバイコヒーレンスを処理して、所望の学習された出力応答を得ることができる。ニューラル・ネットワーク318の出力は、限定するものではないが、ビット・エラー・レート、歪み、パターンをデコードしたもの、ジッタ測定値、ISI測定値、信号対雑音比などのような、多数の異なる出力であっても良い。ニューラル・ネットワークを図示しているが、本開示技術の例は、ニューラル・ネットワークに限定されず、ニューラル・ネットワークが、任意の形態の機械学習を意味していても良い。
【0053】
図4は、本開示技術の例による試験測定装置400の別の例を示す。この例では、図3と同様のコンポーネントには、同じ参照番号を与え、更なる説明は行わない。
【0054】
図4の試験測定装置400は、図3の試験測定装置300と類似しているが、第2の閾値ゲート402が設けられている。第2閾値ゲート402の閾値は、ユーザか又は試験測定装置400の1つ以上のプロセッサのいずれかによって設定されても良い。第2閾値ゲート402は、FFT312からの出力を受けて、閾値設定を突破(violate:違反)しないデータのみをニューラル・ネットワーク318に出力する。ニューラル・ネットワーク318は、次に、FFTの出力と高次スペクトル・データ314の出力の両方を使用して信号を分類できる。第2閾値ゲート402は、マグニチュード(大きさ)、位相、又は複素数の閾値ゲートの中の1つであっても良く、また、第1閾値ゲート316と同一の形式であっても良い。
【0055】
図5は、試験測定システム500の更に別の例を示す。図3及び図4と同様のコンポーネントには、同じ参照番号を与え、ここでは、更なる説明は行わない。FFT312及び高次スペクトル・データ314を含めると、それぞれ第2次及び第3次統計値の両方が組み入れられる。いくつかの例では、更に高い次数の統計値を、独立して使用するか又はもっと低い次数の統計値と組み合わせて使用するように、追加する可能性があっても良い。
【0056】
いくつかの代替例では、各FFT312ウィンドウ内の複数の同様のパターンに対応する複数のスペクトルの和を取り出し、これをリカバリ・クロックと参照することによって、信号上の高次スペクトル・データ314のウィンドウを処理しても良い。次に、同様のパターンのバイスペクトル・ウィンドウを合算する。例えば、1つのFFTウィンドウに5つのシンボル・インターバルがある場合、32個のパターンと32個の異なるバイコヒーレンスの結果のスペクトルが可能になる。試験測定装置500は、以下に詳述するように、多数の異なるニューラル・ネットワーク318を提供する。
【0057】
試験測定システム500では、入力信号x(n)は、CTLE302及び導関数502の両方で受信されるが、導関数502は、試験測定装置500の1つ以上のプロセッサによって実行され、入力信号x(n)の微分(derivative:導関数)を供給できる。導関数502の出力も、ウィンドウ・シーケンサ306に送られる。
【0058】
上述のように、FFTウィンドウ内に5つのUIがあると仮定した場合、32個のビット・パターンの可能性があるであろう。試験測定装置500には、ニューラル・ネットワーク・パターン識別部504がある。ニューラル・ネットワーク・パターン識別部504は、FFT312の出力を受けて、FFTウィンドウのパターンを分類する。ニューラル・ネットワーク・パターン識別部504は、ノイズやISIの存在しても、ウィンドウ内の数ビットのパターンを識別(identify:特定)できる。
【0059】
ニューラル・ネットワーク・パターン識別部504からの出力パターンは、マルチプレクサ・スイッチ506に送られる。マルチプレクサ・スイッチ506は、複数の異なるパス(経路)の中の1つを選択して、FFT312の出力を送り出すことができる。上記の例では、32個の異なるパターンがあるので、このような例では、32個の異なるパスが設けられるであろう。設けられる又は使用されるパスの数は、可能性のあるパターンの数に対応したものとして良い。
【0060】
各パスでは、上述のように、高次スペクトル・データ314が求められる。高次スペクトル・データ314の出力は、ニューラル・ネットワーク318に送られて、分類される。いくつかの例では、パスにオプションの合算又は平均化ブロック508が設けられても良い。高次スペクトル・データ314は、ノイズをゼロの方向に低減し、スペクトルのコヒーレントな成分を保持する傾向がある。しかし、ジッタは、パターンごとに位相に変化を生じさせるであろう。合算ブロック508は、前のビット・パターンと同じビット・パターンを含む高次スペクトル・データ314夫々の出力を平均する。これは、バイコヒーレンスの結果に現れるジッタを平均化してならすのに役立つ。ニューラル・ネットワーク318は、平均化されたバイコヒーレンスを瞬間的なバイコヒーレンス出力と比較して、ジッタの量を測定できる。
【0061】
図5に示されていないが、個々のパスは、いくつかの例において、更に閾値ゲート316を有していても良い。閾値ゲートは、瞬間的なバイコヒーレンス出力の夫々に関する平均閾値、又は、マグニチュード、位相、若しくは複数数の閾値のいずれかを含んでいても良い。
【0062】
また、ニューラル・ネット・パターン識別部504の出力は、伝達関数ブロック510に送られても良く、これは、1つ以上のプロセッサを使用して、伝達送関数を求める。FFT312の出力も、伝達関数ブロック510に送られる。伝達関数ブロック510は、トランスミッタ(送信装置)及びシリアル・データ・チャンネルの伝達関数を決定できる。これを行う1つの方法としては、理想的なパターン波形のスペクトルを、取得した波形のスペクトルで割り算し、次いで、逆FFT(IFFT)を実行してインパルス応答を得るものがあろう。他の公知の方法も同様に使用しても良い。
【0063】
図6は、別の例示的な試験測定システム600を示す。図3~5と同様のコンポーネントには、同じ参照番号を与え、ここでは、更なる説明は行わない。試験測定システム600には、第2マルチプレクサ・スイッチ602があっても良く、これは、多数の出力パスを有する。これら出力パスは、パターンの個数に対応している。
【0064】
ニューラル・ネットワーク・パターン識別部504によって、あるパターンが識別されると、マルチプレクサ・スイッチ602は、どのパスでFFT312からの出力を受けるかを決定する。各パスは、FFT312の各ウィンドウの同様のパターンを平均化するオプションの合算ブロック508を有していても良い。伝達関数ブロック510は、伝達関数を計算するのに、クロック・リカバリ304からのリカバリ・クロック信号と、オリジナルの入力信号x(n)に加えて、各合算ブロック508からの出力を取り入れることができる。
【0065】
以下では、入力信号x(n)の各セグメントの短期間FFT312を、時間レコードに沿った複数の異なるウィンドウ(windowed)時間位置において計算する方法について説明する。FFTウィンドウの最初のポイントは、ゼロ位相を表す時間位置である。バイコヒーレンスの計算に関して一定の位相基準を維持するため、各FFTウィンドウでゲートされた領域中の複数のビット・パターンを識別し、振り分ける必要がある。こうして、バイスペクトル出力を平均化するのに、同じビット・パターンのシーケンスのみが合算されることになる。次いで、数式8で上述したように、平均化されたバイスペクトルを正規化して、バイコヒーレンスを得る。
【0066】
FFT312のウィンドウの幅は、分析中の入力信号x(n)の整数個のビットである。FFT312のゼロ位相基準点は、ウィンドウの開始時刻である。上述した図2に示すように、各ビット遷移における理想的なステップ信号の導関数(微分)のスペクトルは、直流(つまり、ゼロ)から、そのナイキスト周波数まで、全周波数で一定の振幅である。FFT312ウィンドウ内の全ての理想的なインパルスの位相は、インパルスの時間位置に位相基準点を持つ全ての周波数でゼロである。しかし、各FFT312のゼロ位相基準点は、FFT312の始点にあり、各エッジを表す周波数の全帯域が、FFT312ウィンドウ内の他のエッジの位相と異なるものとなる。
【0067】
FFTの結果は、全てのエッジの周波数の和から得られる周波数と位相の単一のセット(グループ)を有する。ウィンドウ・インターバル内のビット・パターンの組み合わせの夫々は、そのスペクトル内における位相及びマグニチュードのユニークな(一意に決まる)セットを有すると予想され、これは、各パターンを異なる高スペクトル・データ314のパスに振り分けて合算することを目的として、ニューラル・ネットワーク318において、ウィンドウ内のビット・シーケンスをデコードするのに利用できる。
【0068】
図7は、リカバリ・クロック702、入力信号x(n)704及びテューキー・ウィンドウ(窓)関数706との関係を示す。図7の説明では、入力信号x(n)704は、PRBSデータ信号である。図7に示すように、ユニット・インターバル(UI)は、リカバリ・クロックの1パルスの幅である。
【0069】
図7に示すように、テューキー・ウィンドウ706の長さは、Nサンプル・ビットであり、クロック・サイクルの中心で開始及び終了する。各FFTのゼロ位相基準は、各ウィンドウの先頭に設定される。FFTウィンドウは、サンプル及びUIの個数に比べて比較的短く、これによって、ニューラル・ネットワーク318で分析するのに、バイスペクトルを合理的なサイズとすることができる。
【0070】
ウィンドウは、図7に示すように、UIの整数個であり、各FFTの開始は、UIの中心にある。FFT312と循環的なウィンドウの端部の過渡(transients)の窓処理(windowing)に取り組む1つの方法は、上述したいくつかの図で説明したように、データの微分(導関数)を計算することであり、次に、微分がゼロであるUIの中央部分において、FFTウィンドウの開始が中心にくるように配置することである。微分がゼロであるUIの中央部分に、FFTウィンドウの開始が中心にくるように設定すると、レコードの先頭と末尾における過渡的な漏洩(transient leakage)を回避できる。
【0071】
更に、テューキー・ウィンドウ(窓関数)を適用すると、FFTレコードの両端をゼロになるまで次第に小さく(taper:テーパ)することができる。これよれば、あるウィンドウ中の同じパターンであっても、先行するウィンドウによって異なるISIの影響を低減できるので、これら同じパターンが、特定の1つのバイスペクトル・パスへ振り分けられることになる。ウィンドウ・インターバルについて5ビットを使用する場合では、各パスは、あり得る32個のビット・パターンの中の1つを受け入れる。
【0072】
微分を取ると、高周波ノイズを高めることがあるので、いくつかの例では好ましくないことがある。しかし、バイコヒーレンス・パスは、振り分けられたビット・パターンを得ると、ノイズを除去するのに役立つバイコヒーレンスを計算できる。更に、パターン・パスは、図示するように、更なるノイズ及びジッタ変動を除去するために、類似ビット・パターンごとに平均化されても良い。
【0073】
リサンプラ・ブロック308は、FFTウィンドウのゼロ位相基準点に対して、サンプル・クロック・ジッタを除去できる。これにより、波形の時間領域のサンプルは、常にゼロ位相基準とちょうど同じ時刻に確実に発生する。
【0074】
本開示技術の例は、上述したように、5ビットのウィンドウ・インターバルに限定されず、試験測定装置のサンプル・レートに応じて、より小さくても、より大きくても良い。ウィンドウ内のエッジは、信号クロック・ジッタが原因のジッタがあるか、又は、ランダムな量で遅延することがあり、これらの組み合わせは、ウィンドウの1つの実例という点で、合算ブロック508から得られる平均が類似しているであろう。ジッタを最も良く観測するには、もっと小さいFFTウィンドウを作成し、エッジのもっと少ない、もっと小さいUIを取り入れることで行えるであろう。1ウィンドウにつき1つのエッジが理想であろうが、サンプル・レートは、このような構成を最適にサポートするのに十分な高さではないことがある。
【0075】
図3~7に示した試験測定装置の夫々では、異なるコンポーネントが、異なる配置で示されている。当業者であればわかるように、これらコンポーネントは、別の状況でアレンジされてもよく、例えば、閾値ゲートは、各バイコヒーレンス出力に配置されても良いし配置されなくても良く、リサンプラは、ある例では存在しても良いし他の例では存在しなくても良く、バイコヒーレンスの代わりにバイスペクトルを用いても良く、より高い次数の統計値が組み込まれても良く、ニューラル・ネットワークではなく機械学習アルゴリズムを使用しても良い、などである。
【0076】
当業者であれば容易にわかるように、上述した試験測定装置の各々は、実施例に示されていない追加のコンポーネントを取り入れても良い。例えば、各試験測定装置は、1つ以上のプロセッサ、追加のハードウェア又はファームウェア、1つ以上のメモリ・コンポーネント、ユーザ・インタフェース、ディスプレイなどを含んでいても良い。
【0077】
本開示技術の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本開示技術の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本開示技術の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0078】
開示された態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はこれらの任意の組み合わせで実現されても良い。開示された態様は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって運搬されるか又は記憶される命令として実現されても良い。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。本願で説明するコンピュータ可読媒体は、コンピューティング装置によってアクセス可能な任意の媒体を意味する。限定するものではないが、一例としては、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含んでいても良い。
【0079】
コンピュータ記憶媒体とは、コンピュータ読み取り可能な情報を記憶するために使用することができる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、コンピュータ記憶媒体としては、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリやその他のメモリ技術、コンパクト・ディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、DVD(Digital Video Disc)やその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置やその他の磁気記憶装置、及び任意の技術で実装された任意の他の揮発性又は不揮発性の取り外し可能又は取り外し不能の媒体を含んでいても良い。コンピュータ記憶媒体としては、信号そのもの及び信号伝送の一時的な形態は除外される。
【0080】
通信媒体とは、コンピュータ可読情報の通信に利用できる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、通信媒体には、電気、光、無線周波数(RF)、赤外線、音又はその他の形式の信号の通信に適した同軸ケーブル、光ファイバ・ケーブル、空気又は任意の他の媒体を含むことができる。
[実施例]
【0081】
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0082】
実施例1、信号を分析するための試験測定装置であって、信号を受けるように構成された入力部と、信号をデジタル信号に変換するように構成されたアナログ・デジタル・コンバータと、デジタル信号に基づいてリカバリ・クロック信号を求め、デジタル信号の高速フーリエ変換のためのウィンドウ位置を設定し、デジタル信号をウィンドウ位置に基づいて一連の窓処理波形データに分離し、高速フーリエ変換を使用して窓処理波形データの夫々を周波数領域窓処理波形データに変換し、周波数領域窓処理波形データ夫々の高次スペクトル・データを求めるよう構成された1つ以上のプロセッサと、周波数領域窓処理波形データの高次スペクトル・データを受け、高次スペクトル・データに基づいて各窓処理波形データを分類するように構成されたニューラル・ネットワークとを具えている。
【0083】
実施例2は、実施例1の試験測定装置であって、高次スペクトル・データを受け、閾値を突破しない高次スペクトル・データを通過させ、閾値を突破する高次スペクトル・データを極小値(nominal value:極わずかな値)に設定するように構成された閾値ゲートを更に具えている。
【0084】
実施例3は、実施例2の試験測定装置であって、上記極小値はゼロである。
【0085】
実施例4は、実施例1~3のいずれかの試験測定装置であって、高次スペクトル・データには、マグニチュード値、位相値、又は複素値の中の少なくとも1つが含まれる。
【0086】
実施例5は、実施例1~4のいずれかの試験測定装置であって、更に、周波数領域窓処理波形データを受けて、受けたビット・パターンに基づいて特定のパスに送るよう構成されたマルチプレクサ・スイッチと、周波数領域窓処理波形データを受けて、ビット・パターンを出力するように構成されたビット・パターン認識ニューラル・ネットワークとを更に具え、このとき、1つ以上のプロセッサには、各パスへの周波数領域窓処理波形データの高スペクトル・データを決定する処理があり、各パスの高スペクトル・データに基づいて周波数領域窓処理波形データを分類するための各パス用の個別のニューラル・ネットワークが設けられる。
【0087】
実施例6は、実施例5の試験測定装置であって、このとき、1つ以上のプロセッサが、周波数領域窓処理波形データ夫々の高次スペクトル・データを平均化するように構成され、個別のニューラル・ネットワークの夫々は、高次スペクトル・データの平均に基づいて窓処理波形データを分類するように構成されている。
【0088】
実施例7は、実施例5又は6のいずれかの試験測定装置であって、このとき、1つ以上のプロセッサは、ビット・パターン認識ニューラル・ネットワークの出力ビット・パターンに基づいて試験測定装置のチャンネルの伝達関数を決定するように更に構成される。
【0089】
実施例8は、実施例1~7のいずれかの試験測定装置であって、このとき、ニューラル・ネットワークは、窓処理波形データを分類する処理に基づいて、ビット・エラー・レート、歪み、パターンの復号(pattern decording)、ジッタ測定値、信号対雑音比及びシンボル間干渉の中の少なくとも1つを出力するように構成される。
【0090】
実施例9は、実施例1~8いずれかの試験測定装置であって、1つ以上のプロセッサが、テューキー窓関数を使用し、ウィンドウ位置に基づいてデジタル信号を一連の窓処理波形データに分離するように構成されている。
【0091】
実施例10は、試験測定システムにおいて、入力信号を分析する方法であって、入力信号を受ける処理と、入力信号に基づいてリカバリ・クロック信号を求める処理と、デジタル信号の高速フーリエ変換のためのウィンドウ位置を設定する処理と、ウィンドウ位置に基づいて入力信号を一連の窓処理波形データに分離する処理と、高速フーリエ変換を使用して窓処理波形データを周波数領域窓処理波形データに変換する処理と、周波数領域窓処理波形データ夫々の高次スペクトル・データを求める処理と、高次スペクトル・データに基づいてニューラル・ネットワークによって各窓処理波形データを分類する処理とを具えている。
【0092】
実施例11は、実施例10の方法であって、閾値を突破しない高次スペクトル・データをニューラル・ネットワークへ送る処理と、閾値を突破する高次スペクトル・データを極小値(nominal value:極わずかな値)に設定する処理とを更に具えている。
【0093】
実施例12は、実施例10又は11のいずれかの方法であって、このとき、高次スペクトル・データは、マグニチュード(大きさ)値、位相値、又は複素数値の中の少なくとも1つを含む。
【0094】
実施例13は、実施例10~12のいずれかの方法であって、ビット・パターン認識ニューラル・ネットワークによって周波数領域窓処理波形データに基づいてビット・パターンを検出する処理と、ビット・パターンに基づいて周波数領域窓処理波形データを特定のニューラル・ネットワークに送り、ビット・パターンに基づいて周波数領域窓処理波形データ夫々の高次スペクトル・データを分類する処理とを更に具えている。
【0095】
実施例14は、実施例13の方法であって、ビット・パターンに基づいて周波数領域窓処理波形データ夫々の高次スペクトル・データを分類する処理の前に、特定のビット・パターンに関して周波数領域窓処理波形データ夫々の高次スペクトル・データを平均する処理を更に具えている。
【0096】
実施例15は、実施例10~14のいずれかの方法であって、各窓処理波形データを分類する処理が、窓処理波形データを分類する処理に基づいて、ビット・エラー・レート、歪み、パターン復号、ジッタ測定値、信号対雑音比及びシンボル間干渉の中の少なくとも1つを出力する処理を有している。
【0097】
実施例16は、実施例10~15のいずれかの方法であって、ウィンドウ位置に基づいて入力信号を一連の窓処理波形データに分離する処理がテューキー窓関数を使用している。
【0098】
実施例17は、1つ以上の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、試験測定装置の1つ以上のプロセッサによって実行されると、試験測定装置に、入力信号に基づいてリカバリ・クロック信号を決定させ、デジタル信号の高速フーリエ変換のためのウィンドウ位置を設定させ、ウィンドウ位置に基づいて入力信号を一連の窓処理波形データに分離させ、高速フーリエ変換を使用して窓処理波形データの夫々を周波数領域窓処理波形データに変換させ、周波数領域窓処理波形データ夫々の高次スペクトル・データを求めさせ、ニューラル・ネットワークによって高次スペクトル・データに基づいて各窓処理波形データを分類させる命令を含んでいる。
【0099】
実施例18は、実施例17の1つ以上の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、試験測定装置に、閾値を突破しない高次スペクトル・データをニューラル・ネットワークへ送らせ、閾値を突破する高次スペクトル・データを極小値(nominal value)に設定させる命令を更に含んでいる。
【0100】
実施例19は、実施例17又は18のいずれかの1つ以上の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、試験測定に、ビット・パターン認識ニューラル・ネットワークによって周波数領域窓処理波形データに基づいてビット・パターンを検出させ、ビット・パターンに基づいて周波数領域窓処理波形データを特定のニューラル・ネットワークに送らせ、ビット・パターンに基づいて各周波数領域窓処理波形データの高次スペクトル・データを分類させる命令を更に含んでいる。
【0101】
実施例20は、実施例19の1つ以上の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、試験測定に、ビット・パターンに基づいて各周波数領域窓処理波形データの高次スペクトル・データを分類させる前に、特定のビット・パターンに関する周波数領域窓処理波形データの高次スペクトル・データを平均化させる命令を更に含んでいる。
【0102】
開示された主題の上述のバージョンは、記述したか又は当業者には明らかであろう多くの効果を有する。それでも、開示された装置、システム又は方法のすべてのバージョンにおいて、これらの効果又は特徴のすべてが要求されるわけではない。
【0103】
加えて、本願の記述は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例の状況において開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例の状況においても利用できる。
【0104】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
【0105】
説明の都合上、本発明の具体的な実施例を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本発明は、添付の請求項以外では、限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0106】
300 試験測定システム
302 連続時間線形イコライザ(CTLE)
304 クロック・リカバリ・ブロック
306 ウィンドウ・シーケンサ
308 リサンプラ
310 窓関数ブロック
312 高速フーリエ変換
314 高次スペクトル・データ
316 閾値ゲート
318 ニューラル・ネットワーク・ブロック
400 試験測定システム
402 第2閾値ゲート
500 試験測定システム
502 誘導関数ブロック
504 ニューラル・ネットワーク・パターン識別部
506 マルチプレクサ・スイッチ
508 合算又は平均化ブロック
510 伝達関数ブロック
600 試験測定システム
602 第2マルチプレクサ・スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7