(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】ウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20241216BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20241216BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20241216BHJP
B23K 26/38 20140101ALI20241216BHJP
【FI】
H01L21/78 Q
H01L21/78 B
H01L21/78 F
H01L21/78 X
H01L21/78 V
H01L21/52 D
H01L21/78 M
B23K26/53
B23K26/38 Z
(21)【出願番号】P 2020162153
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古田 健次
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-206936(JP,A)
【文献】特開2014-212282(JP,A)
【文献】特開2013-179316(JP,A)
【文献】特開2006-140303(JP,A)
【文献】国際公開第2014/080918(WO,A1)
【文献】特開2017-033972(JP,A)
【文献】特開2020-145212(JP,A)
【文献】特開2003-338467(JP,A)
【文献】特開2012-089709(JP,A)
【文献】特開平10-074712(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0057410(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-0825798(KR,B1)
【文献】特開2000-182995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/52
B23K 26/53
B23K 26/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の交差する複数の分割予定ラインによって区画された領域のそれぞれにデバイスを有するウェーハの加工方法であって、
該ウェーハの裏面側に接着フィルムを貼着する接着フィルム貼着ステップと、
少なくとも該ウェーハの裏面側に貼着された該接着フィルムを該ウェーハの裏面側から該分割予定ラインに沿って切断する接着フィルム切断ステップと、
該ウェーハに対して透過性を有する波長のレーザービームを該ウェーハの内部に集光させて照射し、該分割予定ラインに沿って改質層を形成する改質層形成ステップと、
該接着フィルム切断ステップを実施した後、該ウェーハの裏面側に該接着フィルムを介して伸縮性を有する裏面側テープを貼着する裏面側テープ貼着ステップと、
該接着フィルム切断ステップおよび該改質層形成ステップを実施した後、該ウェーハに対して外力を付与することで該改質層を起点に該ウェーハを分割する分割ステップと、
を有
し、
該分割ステップは、該ウェーハの裏面側テープを拡張することで該改質層を起点に該ウェーハをデバイスチップへと分割するエキスパンドステップを含む、
ウェーハの加工方法。
【請求項2】
該接着フィルム貼着ステップの前または後に、該ウェーハの表面側に表面側テープを貼着する表面側テープ貼着ステップを有する、
請求項1に記載のウェーハの加工方法。
【請求項3】
該改質層形成ステップでは、該表面側テープおよび該ウェーハに対して透過性を有する波長のレーザービームを該表面側テープ越しに該ウェーハの表面側から照射する、
請求項2に記載のウェーハの加工方法。
【請求項4】
該分割ステップは、ブレーキングローラーで該ウェーハの裏面側テープを介して該ウェーハを押圧しながら該ブレーキングローラーを回転移動させ、該改質層を起点に該ウェーハを分割するブレーキングステップを含む、
請求項
1乃至3のいずれか1項に記載のウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
裏面にDAF(Die Attach Film)と称されるシート状の接着フィルムを予め貼着した半導体ウェーハを個々のデバイスへと分割することで、DAFが裏面に装着された半導体チップを形成し、裏面のDAFを介して基板上に半導体チップをダイボンディングする方法が広く採用されている(特許文献1参照)。
【0003】
ウェーハを分割する方法としては、ウェーハの裏面にDAFおよびエキスパンドシートを貼着し、ウェーハに対して透過性を有する波長のレーザービームで改質層を形成した後、エキスパンドシートを拡張することでDAFを破断する方法が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-182995号公報
【文献】特開2003-338467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、チップサイズが小さい場合には、エキスパンドシートを拡張した際の引き伸ばし量も小さくなるため、DAFを確実に破断できない領域が発生する可能性がある。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、チップサイズが小さい場合にもDAFを確実に破断することができるウェーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のウェーハの加工方法は、表面の交差する複数の分割予定ラインによって区画された領域のそれぞれにデバイスを有するウェーハの加工方法であって、該ウェーハの裏面側に接着フィルムを貼着する接着フィルム貼着ステップと、少なくとも該ウェーハの裏面側に貼着された該接着フィルムを該ウェーハの裏面側から該分割予定ラインに沿って切断する接着フィルム切断ステップと、該ウェーハに対して透過性を有する波長のレーザービームを該ウェーハの内部に集光させて照射し、該分割予定ラインに沿って改質層を形成する改質層形成ステップと、該接着フィルム切断ステップを実施した後、該ウェーハの裏面側に該接着フィルムを介して伸縮性を有する裏面側テープを貼着する裏面側テープ貼着ステップと、該接着フィルム切断ステップおよび該改質層形成ステップを実施した後、該ウェーハに対して外力を付与することで該改質層を起点に該ウェーハを分割する分割ステップと、有し、該分割ステップは、該ウェーハの裏面側テープを拡張することで該改質層を起点に該ウェーハをデバイスチップへと分割するエキスパンドステップを含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明のウェーハの加工方法は、該接着フィルム貼着ステップの前または後に、該ウェーハの表面側に表面側テープを貼着する表面側テープ貼着ステップを有してもよい。
【0009】
また、本発明のウェーハの加工方法において、該改質層形成ステップでは、該表面側テープおよび該ウェーハに対して透過性を有する波長のレーザービームを該表面側テープ越しに該ウェーハの表面側から照射してもよい。
【0014】
また、本発明のウェーハの加工方法において、該分割ステップは、ブレーキングローラーで該ウェーハの裏面側テープを介して該ウェーハを押圧しながら該ブレーキングローラーを回転移動させ、該改質層を起点に該ウェーハを分割するブレーキングステップを含んでもよい。
【発明の効果】
【0016】
本願発明は、チップサイズが小さい場合にもDAFを確実に破断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態に係るウェーハの加工方法の加工対象のウェーハの一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るウェーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図2に示す表面側テープ貼着ステップの一例を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図2に示す接着フィルム貼着ステップ後のウェーハを示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図2に示す接着フィルム切断ステップの一例の一状態を一部断面で示す側面図である。
【
図7】
図7は、
図2に示す接着フィルム切断ステップの別の例の一状態を一部断面で示す側面図である。
【
図8】
図8は、
図2に示す改質層形成ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
【
図9】
図9は、
図2に示す分割ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
【
図10】
図10は、第1変形例に係るウェーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、第2変形例に係るウェーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0019】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係るウェーハ10の加工方法について、図面に基づいて説明する。まず、実施形態の加工対象であるウェーハ10の構成について説明する。
図1は、実施形態に係るウェーハ10の加工方法の加工対象のウェーハ10の一例を示す斜視図である。
【0020】
図1に示すように、ウェーハ10は、シリコン(Si)、サファイア(Al
2O
3)、ガリウムヒ素(GaAs)または炭化ケイ素(SiC)等を基板11とする円板状の半導体ウェーハ、光デバイスウェーハ等のウェーハである。ウェーハ10は、基板11の表面12に格子状に設定された複数の分割予定ライン13と、分割予定ライン13によって区画された領域に形成されたデバイス14と、を有している。
【0021】
デバイス14は、例えば、IC(Integrated Circuit)、またはLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサである。デバイス14が形成された表面12と反対側に位置するウェーハ10の面を裏面15とする。
【0022】
ウェーハ10は、分割予定ライン13に沿って個々のデバイス14に分割されて、デバイスチップ19(
図12参照)に製造される。なお、デバイスチップ19は、実施形態において、正方形状であるが、長方形状であってもよい。実施形態において、ウェーハ10は、基板11が直径8inchかつ厚み150μmのシリコンであり、一辺0.15mm角のデバイスチップ19に個片化される。
【0023】
次に、実施形態に係るウェーハ10の加工方法を説明する。
図2は、実施形態に係るウェーハ10の加工方法の流れを示すフローチャートである。実施形態のウェーハ10の加工方法は、
図2に示すように、表面側テープ貼着ステップ101と、接着フィルム貼着ステップ102と、接着フィルム切断ステップ103と、改質層形成ステップ104と、分割ステップ106と、を含む。
【0024】
(表面側テープ貼着ステップ101)
図3は、
図2に示す表面側テープ貼着ステップ101の一例を示す斜視図である。
図4は、
図3に示すウェーハ10を示す断面図である。なお、
図4に示すウェーハ10の断面図および以降の同様の断面図では、分割予定ライン13およびデバイス14の数を減らしてかつ大きく描写している。表面側テープ貼着ステップ101は、ウェーハ10の表面12側に表面側テープ20を貼着するステップである。なお、表面側テープ貼着ステップ101は、実施形態では接着フィルム貼着ステップ102を実施する前に実施されるが、本発明では接着フィルム貼着ステップ102を実施した後に実施されてもよく、省略されてもよい。
【0025】
表面側テープ20は、ウェーハ10を環状のフレーム21に固定するための粘着テープであり、例えば、ダイシングテープである。表面側テープ20は、例えば、合成樹脂で構成された基材層と、基材層に積層されかつ粘着性を有する合成樹脂で構成された糊層と、を含む。フレーム21は、ウェーハ10の外径より大きな開口を有し、金属や樹脂等の材質で構成される。
【0026】
表面側テープ貼着ステップ101では、まず、ウェーハ10をフレーム21の開口の所定の位置に位置決めする。次に、表面側テープ20を、フレーム21の一方の面側およびウェーハ10の表面12側に貼着させる。この際、
図3に示すようなローラー25等を用いて表面側テープ20をウェーハ10の表面12側に密着させることによって、
図4に示すように、表面側テープ20に分割予定ライン13とデバイス14との凹凸を吸収させる。これにより、ウェーハ10を表面側テープ20およびフレーム21に固定させる。
【0027】
(接着フィルム貼着ステップ102)
図5は、
図2に示す接着フィルム貼着ステップ102後のウェーハ10を示す断面図である。接着フィルム貼着ステップ102は、ウェーハ10の裏面15側に接着フィルム30を貼着するステップである。なお、接着フィルム貼着ステップ102は、実施形態では表面側テープ貼着ステップ101を実施した後に実施されるが、本発明では表面側テープ貼着ステップ101を実施する前に実施されてもよい。
【0028】
接着フィルム30は、粘着性を有する樹脂で構成された絶縁性の接着部材である。接着フィルム30は、ウェーハ10から個々のデバイス14に分割され個片化されたデバイスチップ19(
図12参照)を、実装基板(例えば、
図13に示す実装基板40)等に固定させるために用いられる。接着フィルム30の外径は、ウェーハ10の外径と略同等である。
【0029】
接着フィルム貼着ステップ102では、
図5に示すように、表面側テープ20およびフレーム21に固定されたウェーハ10の裏面15側から、接着フィルム30を貼着し、ウェーハ10の裏面15の略全体を覆った状態で密着させる。
【0030】
(接着フィルム切断ステップ103)
図6は、
図2に示す接着フィルム切断ステップ103の一例の一状態を一部断面で示す側面図である。接着フィルム切断ステップ103は、ウェーハ10の裏面15側に貼着された接着フィルム30をウェーハ10の裏面15側から分割予定ライン13に沿って切断するステップである。なお、接着フィルム切断ステップ103は、実施形態では改質層形成ステップ104を実施する前に実施されるが、本発明では改質層形成ステップ104を実施した後に実施されてもよい。
【0031】
図6に示す接着フィルム切断ステップ103では、切削装置200によって、接着フィルム30を切断する。切削装置200は、透明体から形成されたチャックテーブル210と、切削ユニット220と、チャックテーブル210と切削ユニット220とを相対的に移動させる不図示の移動ユニットと、不図示の撮像ユニットと、を備える。
【0032】
切削ユニット220は、円板形状の切削ブレード221と、切削ブレード221の回転軸となるスピンドル222と、スピンドル222に装着され切削ブレード221が固定されるマウントフランジ223と、を備える。切削ブレード221およびスピンドル222は、切削対象のウェーハ10を保持するチャックテーブル210の保持面211に対して平行な回転軸を備える。切削ブレード221は、スピンドル222の先端に装着される。
【0033】
図6に示す接着フィルム切断ステップ103では、まず、チャックテーブル210の保持面211に表面側テープ20を介してウェーハ10の表面12側を吸引保持する。なお、この際、フレーム21をウェーハ10の表面12より下方に押し下げた状態で不図示のクランプ部材等で固定することによって、ウェーハ10の表面12は、チャックテーブル210の保持面211に固定される。
【0034】
図6に示す接着フィルム切断ステップ103では、次に、切削ユニット220とウェーハ10との位置合わせを行う。具体的には、不図示の移動ユニットが、チャックテーブル210を切削ユニット220の下方の加工領域まで移動させ、不図示の撮像ユニットでウェーハ10を撮影しアライメントすることで、切削ブレード221の加工点を、ウェーハ10の分割予定ライン13に位置合わせする。この際、ウェーハ10の分割予定ライン13を有する表面12側は、チャックテーブル210の保持面211に保持されているため、撮像ユニットは、透明体から形成されたチャックテーブル210越しにウェーハ10を撮像する。なお、撮像ユニットが赤外線カメラを含み、接着フィルム30越しにチャックテーブル210側から分割予定ライン13が赤外線カメラによって確認でできる場合は、チャックテーブル210は透明体でなくてもよい。
【0035】
図6に示す接着フィルム切断ステップ103では、次に、ウェーハ10の裏面15に向けて切削水の供給を開始させる。次に、不図示の移動ユニットによって、チャックテーブル210と切削ユニット220の切削ブレード221とを分割予定ライン13に沿って相対的に移動させながら、切削ブレード221がウェーハ10の裏面15に到達するまで、またはウェーハ10に所定切込み量の溝を形成するまで切り込ませて、接着フィルム30を切断する。
【0036】
接着フィルム切断ステップ103では、少なくとも接着フィルム30を切断すればよいが、ウェーハ10ごと加工してもよい。この場合、ウェーハ10の表面12側からの残し量を50μm以上に設定することが好ましい。
【0037】
接着フィルム切断ステップ103では、レーザービーム321によって接着フィルム30を切断してもよい。
図7は、
図2に示す接着フィルム切断ステップ103の別の例の一状態を一部断面で示す側面図である。
【0038】
図7に示す接着フィルム切断ステップ103では、レーザー加工装置300によって、接着フィルム30を切断する。レーザー加工装置300は、透明体から形成されたチャックテーブル310と、レーザービーム照射ユニット320と、チャックテーブル310とレーザービーム照射ユニット320とを相対的に移動させる不図示の移動ユニットと、不図示の撮像ユニットと、を備える。
【0039】
図7に示す接着フィルム切断ステップ103では、まず、チャックテーブル310の保持面311に表面側テープ20を介してウェーハ10の表面12側を吸引保持する。なお、この際、フレーム21をウェーハ10の表面12より下方に押し下げた状態で不図示のクランプ部材等で固定することによって、ウェーハ10の表面12は、チャックテーブル310の保持面311に固定される。
【0040】
図7に示す接着フィルム切断ステップ103では、次に、レーザービーム照射ユニット320とウェーハ10との位置合わせを行う。具体的には、不図示の移動ユニットがチャックテーブル310を加工位置まで移動させ、不図示の撮像ユニットでウェーハ10を撮像しアライメントすることで、レーザービーム照射ユニット320の照射部を、ウェーハ10の分割予定ライン13に位置合わせする。この際、撮像ユニットでは、ウェーハ10の分割予定ライン13を有する表面12側は、チャックテーブル310の保持面311に保持されているため、撮像ユニットは、透明体から形成されたチャックテーブル310越しにウェーハ10を撮像する。なお、撮像ユニットが赤外線カメラを含み、接着フィルム30越しにチャックテーブル310側から分割予定ライン13が赤外線カメラによって確認でできる場合は、チャックテーブル310は透明体でなくてもよい。
【0041】
図7に示す接着フィルム切断ステップ103では、レーザービーム照射ユニット320に対してチャックテーブル310を相対的に移動させながら、ウェーハ10の裏面15側からパルス状のレーザービーム321を、ウェーハ10に貼着された接着フィルム30に集光点322を位置付けて照射する。レーザービーム321は、接着フィルム30に対して吸収性を有する波長のレーザービームである。接着フィルム切断ステップ103では、接着フィルム30の表面または表面近傍に集光点322を位置付けたレーザービーム321を、分割予定ライン13に沿って照射することによって、分割予定ライン13に沿って接着フィルム30を切断する。
【0042】
(改質層形成ステップ104)
図8は、
図2に示す改質層形成ステップ104の一状態を一部断面で示す側面図である。改質層形成ステップ104は、分割予定ライン13に沿ってウェーハ10の内部に改質層16を形成するステップである。なお、改質層形成ステップ104は、実施形態では接着フィルム切断ステップ103を実施した後に実施されるが、本発明では接着フィルム切断ステップ103を実施する前に実施されてもよい。
【0043】
改質層16とは、密度、屈折率、機械的強度またはその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域のことを意味する。改質層16は、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、およびこれらの領域が混在した領域等である。改質層16は、ウェーハ10の他の部分よりも機械的な強度等が低い。
【0044】
図8に示すように、改質層形成ステップ104では、レーザービーム321によるステルスダイシング加工を施すことによって改質層16を形成する。レーザービーム321は、ウェーハ10に対して透過性を有する波長のレーザービームである。なお、実施形態では、表面側テープ貼着ステップ101において、ウェーハ10の表面12側に表面側テープ20を貼着している。したがって、レーザービーム321は、表面側テープ20およびウェーハ10に対して透過性を有する波長のレーザービームである。
【0045】
改質層形成ステップ104では、まず、接着フィルム30を介してウェーハ10の裏面15側をチャックテーブル310に吸引保持する。次に、不図示の移動ユニットによってチャックテーブル310を加工位置まで移動させる。次に、不図示の撮像ユニットでウェーハ10を撮像することによって、分割予定ライン13を検出する。分割予定ライン13が検出されたら、ウェーハ10の分割予定ライン13と、レーザービーム照射ユニット320の照射部との位置合わせを行うアライメントを遂行する。
【0046】
改質層形成ステップ104では、次に、レーザービーム照射ユニット320に対してチャックテーブル310を相対的に移動させながら、ウェーハ10の表面12側から表面側テープ20越しにパルス状のレーザービーム321を、ウェーハ10の内部に集光点322を位置付けて照射する。改質層形成ステップ104では、ウェーハ10の内部に集光点322を位置付けたレーザービーム321を、分割予定ライン13に沿って照射することによって、
図8に示すように、基板11の内部に分割予定ライン13に沿った改質層16が形成される。すなわち、接着フィルム切断ステップ103において切断した接着フィルム30の切断ラインに沿った改質層16が形成される。
【0047】
(分割ステップ106)
図9は、
図2に示す分割ステップ106の一状態を一部断面で示す側面図である。分割ステップ106は、接着フィルム切断ステップ103および改質層形成ステップ104を実施した後に実施される。分割ステップ106は、ウェーハ10に対して外力を付与することで改質層16を起点にウェーハ10を分割するステップである。
【0048】
図9に示すように、実施形態の分割ステップ106では、ブレーキング装置400によって、ウェーハ10に対して外力を付与する。すなわち、実施形態の分割ステップ106は、ブレーキングローラー420でウェーハ10の表面側テープ20を介してウェーハ10を押圧しながらブレーキングローラー420を回転させ、改質層16を起点にウェーハ10を分割するブレーキングステップを含む。ブレーキング装置400は、ウェーハ10を載置する樹脂パッド410と、ブレーキングローラー420と、を備える。
【0049】
分割ステップ106では、まず、接着フィルム30を介してウェーハ10の裏面15側を樹脂パッド410上に載置させる。次に、ブレーキングローラー420でウェーハ10の表面側テープ20を介してウェーハ10を押圧しながらブレーキングローラー420を回転移動させる。すなわち、ブレーキングローラー420を、ウェーハ10側に押圧しながら、ウェーハ10の表面側テープ20上で転動させる。
【0050】
これにより、ウェーハ10に対して外力が付与されるので、改質層16からクラックが伸展し、改質層16とクラックとの連結によって、改質層16を起点にウェーハ10が分割される。ここで、接着フィルム30は、接着フィルム切断ステップ103において既に分割予定ライン13に沿って切断されているので、ウェーハ10は、各々の裏面15に接着フィルム30が貼着されたデバイスチップに個片化される。
【0051】
〔第1変形例〕
次に、第1変形例に係るウェーハ10の加工方法を説明する。
図10は、第1変形例に係るウェーハ10の加工方法の流れを示すフローチャートである。第1変形例のウェーハ10の加工方法は、
図10に示すように、表面側テープ貼着ステップ101-1と、接着フィルム貼着ステップ102と、接着フィルム切断ステップ103と、改質層形成ステップ104と、分割ステップ106-1と、実装ステップ107と、を含む。なお、第1変形例の接着フィルム貼着ステップ102、接着フィルム切断ステップ103、および改質層形成ステップ104の手順は、実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0052】
(表面側テープ貼着ステップ101-1)
第1変形例の表面側テープ貼着ステップ101-1でウェーハ10の表面12側に貼着する表面側テープ20-1は、実施形態の表面側テープ20と比較して、伸縮性を有する点で異なる。第1変形例の表面側テープ貼着ステップ101-1の手順は、実施形態の表面側テープ貼着ステップ101と同様であるため、説明を省略する。
【0053】
(分割ステップ106-1)
図11は、
図10に示す分割ステップ106-1の一状態を一部断面で示す側面図である。
図12は、
図10に示す分割ステップ106-1の
図11の後の一状態を一部断面で示す側面図である。第1変形例の分割ステップ106-1は、ウェーハ10の表面側テープ20-1を拡張することで改質層16を起点にウェーハ10をデバイスチップ19へと分割するエキスパンドステップを含む。
【0054】
図11および
図12に示すように、第1変形例の分割ステップ106-1では、拡張装置500によって、表面側テープ20-1に面方向かつ放射方向の外力を与える。拡張装置500は、チャックテーブル501と、クランプ部502と、昇降ユニット503と、を備える。
【0055】
分割ステップ106-1では、まず、
図11に示すように、表面側テープ20-1を介してウェーハ10の表面12側をチャックテーブル501の保持面に載置し、フレーム21の外周部をクランプ部502で固定する。次に、
図12に示すように、昇降ユニット503によって、チャックテーブル501を上昇させる。この際、表面側テープ20-1は、外周部がフレーム21を介してクランプ部502で固定されているため、フレーム21の内縁とウェーハ10の外縁との間の部分が面方向に拡張される。
【0056】
分割ステップ106-1では、表面側テープ20-1の拡張の結果、表面側テープ20-1に放射状に引張力が作用する。表面側テープ20-1に放射状の引張力が作用すると、
図12に示すように、表面側テープ20-1が貼着されたウェーハ10が、分割予定ライン13に沿った改質層16を起点にして、個々のデバイス14毎に分割されて、デバイスチップ19毎に個片化される。
【0057】
(実装ステップ107)
図13は、
図10に示す実装ステップ107の一状態を一部断面で示す側面図である。実装ステップ107は、デバイスチップ19の裏面15側に配設された接着フィルム30によりデバイスチップ19を実装基板40へと実装するステップである。
【0058】
第1変形例の実装ステップ107では、表面側テープ20-1からデバイスチップ19をピックアップせず、まず、表面側テープ20-1に支持された状態のデバイスチップ19と対面する位置にデバイスチップ19を実装する実装基板40を準備する。次に、表面側テープ20-1を介してデバイスチップ19を実装基板40側へと押圧する。これにより、デバイスチップ19の裏面15側に配設された接着フィルム30によりデバイスチップ19を実装基板40へと実装する。
【0059】
〔第2変形例〕
次に、第2変形例に係るウェーハ10の加工方法を説明する。
図14は、第2変形例に係るウェーハ10の加工方法の流れを示すフローチャートである。第2変形例のウェーハ10の加工方法は、
図14に示すように、表面側テープ貼着ステップ101と、接着フィルム貼着ステップ102と、接着フィルム切断ステップ103と、改質層形成ステップ104と、裏面側テープ貼着ステップ105と、分割ステップ106-2と、を含む。なお、第2変形例の表面側テープ貼着ステップ101、接着フィルム貼着ステップ102、接着フィルム切断ステップ103、および改質層形成ステップ104の手順は、実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0060】
(裏面側テープ貼着ステップ105)
図15は、
図14に示す裏面側テープ貼着ステップ105の一状態を示す断面図である。
図16は、
図14に示す裏面側テープ貼着ステップ105の
図15の後の一状態を示す断面図である。裏面側テープ貼着ステップ105は、少なくとも接着フィルム切断ステップ103を実施した後に実施される。裏面側テープ貼着ステップ105は、第2変形例において、改質層形成ステップ104を実施した後に実施される。裏面側テープ貼着ステップ105は、ウェーハ10の裏面15側に接着フィルム30を介して裏面側テープ50を貼着するステップである。
【0061】
第2変形例に係るウェーハ10の加工方法では、裏面側テープ貼着ステップ105の前に、表面側テープ貼着ステップ101においてウェーハ10の表面12側に表面側テープ20が貼着されている。そこで、第2変形例の裏面側テープ貼着ステップ105では、ウェーハ10の裏面15側に接着フィルム30を介して裏面側テープ50を貼着するとともに、表面側テープ20をウェーハ10から除去する。
【0062】
裏面側テープ50は、後述の分割ステップ106-2において面方向に拡張されることでウェーハ10を分割するための粘着テープである。裏面側テープ50は、伸縮性を有する。裏面側テープ50は、例えば、合成樹脂で構成された基材層と、基材層に積層されかつ粘着性を有する合成樹脂で構成された糊層と、を含む。
【0063】
裏面側テープ貼着ステップ105では、まず、
図15に示すように、表面側テープ20をウェーハ10の外周部で切り落とす。この際、例えば、カッター26等をウェーハ10の外周部の表面側テープ20に沿わせた状態で、ウェーハ10を軸心回りに回転させる。これにより、表面側テープ20のウェーハ10の表面12に貼着されている部分から、フレーム21に貼着されている部分を含む表面側テープ20外周側の部分(
図15に示す切断ライン27より径方向外側の部分)およびフレーム21を切り離す。
【0064】
裏面側テープ貼着ステップ105では、次に、
図16に示すように、ウェーハ10の裏面15と対面する位置に、裏面側テープ50およびフレーム51を準備する。フレーム51は、ウェーハ10の外径より大きな開口を有し、金属や樹脂等の材質で構成される。次に、裏面側テープ50を、フレーム51のウェーハ10と対面する面とは反対側の面側、およびウェーハ10の接着フィルム30を介した裏面15側に貼着させる。この際、
図16に示すようなローラー55等を用いて裏面側テープ50をウェーハ10の裏面15側に接着フィルム30を介して密着させる。次に、表面側テープ20をウェーハ10の表面12側から剥離させる。
【0065】
(分割ステップ106-2)
第2変形例の分割ステップ106-2は、ウェーハ10の裏面側テープ50を拡張することで改質層16を起点にウェーハ10をデバイスチップ19へと分割するエキスパンドステップを含む。第2変形例の分割ステップ106-2は、第1変形例の分割ステップ106-1と比較して、ウェーハ10をデバイスチップ19へと分割するために、表面側テープ20-1の代わりに裏面側テープ50を拡張する点で異なる。
【0066】
第2変形例の分割ステップ106-2では、
図11および
図12に示す拡張装置500にウェーハ10を固定する際、裏面側テープ50を介してウェーハ10の裏面15側を固定する。第2変形例の分割ステップ106-2において、上記以外の手順は、第1変形例の分割ステップ106-1と同様であるため、説明を省略する。
【0067】
なお、第2変形例のウェーハ10の加工方法において、分割ステップ106-2では、
図9に示す実施形態の分割ステップ106のように、ブレーキング装置400によって、ウェーハ10に対して外力を付与してもよい。すなわち、分割ステップ106-2では、ブレーキングローラー420でウェーハ10の裏面側テープ50を介してウェーハ10を押圧しながらブレーキングローラー420を回転させ、改質層16を起点にウェーハ10を分割するブレーキングステップを含んでもよい。この場合、裏面側テープ貼着ステップ105で貼着する裏面側テープ50は、伸縮性を有しなくてもよい。
【0068】
以上説明したように、実施形態および各変形例のウェーハ10の加工方法では、ダイボンディング用の接着フィルムであるDAFとエキスパンドシートとが一体になった所謂2in1タイプの接着フィルムを使用せず、ダイボンディング用の接着フィルムをウェーハ10の一方の面(裏面15)に貼り付け、ダイシングテープをウェーハ10のもう一方の面(表面12)に貼り付ける構成としている。これにより、一方の面から接着フィルムを加工し、もう一方の面からウェーハ10にステルスダイシング加工を施すことができるため、エキスパンドシートの拡張に伴ってDAFを破断する従来の方法とは異なり、デバイス14のサイズによらずDAFを確実に破断することができる。
【0069】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、改質層形成ステップ104において、実施形態ではレーザービーム321をウェーハ10の表面12側からウェーハ10の内部に集光させて照射したが、ウェーハ10の裏面15側からウェーハ10の内部に集光させて照射してもよい。
【0070】
ウェーハ10の裏面15側から改質層16を形成する場合は、例えば、改質層16を形成した後に接着フィルム30をウェーハ10の裏面15に貼着してもよいし、接着フィルム30をウェーハ10の裏面15に貼着した後に、レーザービーム321を接着フィルム30越しに照射させてもよい。また、裏面15側から改質層16を形成した後、接着フィルム30をウェーハ10の裏面15に貼着する前に、ウェーハ10の裏面15を研削加工してもよい。更に、接着フィルム30を切断する接着フィルム切断ステップ103の後に、第2変形例のように、分割のための裏面側テープ50を貼着することが好ましい。これらの場合、接着フィルム切断ステップ103および改質層形成ステップ104のどちらにおいてもウェーハ10を裏面15側から加工するので、ウェーハ10の表裏を反転させる手間を抑制することができるという効果を奏する。
【0071】
また、実施形態および各変形例の分割ステップ106、106-1、106-2では、ブレーキングステップおよびエキスパンドステップのいずれかを含んだが、どちらのステップも含んでもよい。特に、ブレーキングステップを実施した後に、エキスパンドステップを実施してチップ間隔を広げることによって、小さなサイズのチップであってもチップを好適にピックアップすることができる。
【符号の説明】
【0072】
10 ウェーハ
11 基板
12 表面
13 分割予定ライン
14 デバイス
15 裏面
16 改質層
19 デバイスチップ
20、20-1 表面側テープ
21、51 フレーム
30 接着フィルム
40 実装基板
50 裏面側テープ
321 レーザービーム
420 ブレーキングローラー