(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】レーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20241216BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20241216BHJP
【FI】
H01L21/78 B
B23K26/00 M
(21)【出願番号】P 2021050219
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】築地 修一郎
【審査官】久宗 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-212706(JP,A)
【文献】特開2011-237348(JP,A)
【文献】特開平06-258056(JP,A)
【文献】特開2020-088400(JP,A)
【文献】特開2015-099026(JP,A)
【文献】特開2013-068738(JP,A)
【文献】特開2020-075351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハにレーザー光線を照射してレーザー加工を施すレーザー照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線とを相対的に加工送りする送り手段と、レーザー加工すべき領域を撮像する主撮像手段と、補助撮像手段と、表示手段とを少なくとも備え、
該補助撮像手段は、対物レンズと、該対物レンズを介して画像を生成するカメラと、該カメラと該対物レンズとの間に配設されたハーフミラーと、該ハーフミラー及び該対物レンズを介して該チャックテーブルに保持されたウエーハを照明する光源と、該カメラと該ハーフミラーとの間に配設された第1の偏光板と、該光源と該ハーフミラーとの間に配設された第2の偏光板とを備え、
該第2の偏光板は、該光源から照射され該第2の偏光板を通過して該ハーフミラーで反射される光の偏光軸が第1の偏光板の偏光軸に対して所要角度回転した状態となるように配設されるレーザー加工装置。
【請求項2】
該補助撮像手段は、該チャックテーブルに保持されたウエーハにレーザー加工された領域を撮像して、レーザー加工により形成された加工溝とデブリとを撮像可能に構成された請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
該補助撮像手段を構成する該第1の偏光板と該第2の偏光板は、作用位置と、非作用位置とに選択的に位置付け可能であり、該非作用位置に位置付けられて該主撮像手段を構成する請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項4】
該所要角度は、90度である請求項1に記載のレーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックテーブルに保持されたウエーハにレーザー光線を照射してレーザー加工を施すレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、ダイシング装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
レーザー加工装置は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハにレーザー光線を照射してレーザー加工を施すレーザー照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー照射手段とを相対的に加工送りする送り手段と、レーザー加工すべき領域を撮像する撮像手段と、表示手段と、を少なくとも備え、ウエーハを高精度にレーザー加工することができる(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したレーザー加工装置を使用してウエーハの表面にアブレーション加工により加工溝を形成する場合、ウエーハの素材や厚みに対応してレーザー加工条件を適切に設定する必要があり、該設定が適切であるかを確認するために、ウエーハの表面に実際に形成された加工溝の状態を確認する場合がある。この加工溝の状態を、レーザー加工装置に元々備えられているアライメント工程で使用される従来の撮像手段を使用して撮像した場合、該加工溝の両側に該アブレーション加工によって生じるデブリが付着していることから、該加工溝と該デブリとの区別がつかず、加工溝の出来具合を正確に把握できないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、ウエーハの表面に形成された加工溝の状態を的確に確認することができるレーザー加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハにレーザー光線を照射してレーザー加工を施すレーザー照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線とを相対的に加工送りする送り手段と、レーザー加工すべき領域を撮像する主撮像手段と、補助撮像手段と、表示手段とを少なくとも備え、該補助撮像手段は、対物レンズと、該対物レンズを介して画像を生成するカメラと、該カメラと該対物レンズとの間に配設されたハーフミラーと、該ハーフミラー及び該対物レンズを介して該チャックテーブルに保持されたウエーハを照明する光源と、該カメラと該ハーフミラーとの間に配設された第1の偏光板と、該光源と該ハーフミラーとの間に配設された第2の偏光板とを備え、該第2の偏光板は、該光源から照射され該第2の偏光板を通過して該ハーフミラーで反射される光の偏光軸が第1の偏光板の偏光軸に対して所要角度回転した状態となるように配設されるレーザー加工装置が提供される。
【0008】
該補助撮像手段は、該チャックテーブルに保持されたウエーハにレーザー加工された領域を撮像して、レーザー加工により形成された加工溝とデブリとを撮像可能に構成されていることが好ましい。また、該補助撮像手段を構成する該第1の偏光板と該第2の偏光板は、作用位置と、非作用位置とに選択的に位置付け可能であり、該非作用位置に位置付けられて該主撮像手段を構成するようにしてもよい。さらに、該所要角度を90度にすることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のレーザー加工装置は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハにレーザー光線を照射してレーザー加工を施すレーザー照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線とを相対的に加工送りする送り手段と、レーザー加工すべき領域を撮像する主撮像手段と、補助撮像手段と、表示手段とを少なくとも備え、該補助撮像手段は、対物レンズと、該対物レンズを介して画像を生成するカメラと、該カメラと該対物レンズとの間に配設されたハーフミラーと、該ハーフミラー及び該対物レンズを介して該チャックテーブルに保持されたウエーハを照明する光源と、該カメラと該ハーフミラーとの間に配設された第1の偏光板と、該光源と該ハーフミラーとの間に配設された第2の偏光板とを備え、該第2の偏光板は、該光源から照射され該第2の偏光板を通過して該ハーフミラーで反射される光の偏光軸が第1の偏光板の偏光軸に対して所要角度回転した状態となるように配設されていることから、レーザー加工により形成された加工溝と、デブリとのコントラストが明確になり、加工溝の出来具合を良好に確認することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図1に示すレーザー加工装置に装着された撮像手段が主撮像手段として機能する状態を示す斜視図である。
【
図3】レーザー加工工程の実施態様を示す斜視図である。
【
図4】
図2に示す撮像手段が補助撮像手段として機能する状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に基づいて構成されるレーザー加工装置に係る実施形態について添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0012】
図1には、本実施形態に係るレーザー加工装置2の全体斜視図が示されている。本実施形態のレーザー加工装置2によって加工される被加工物は、図に示されているように、円板状のウエーハ10であり、粘着テープTを介して環状のフレームFに保持されている。
【0013】
レーザー加工装置2は、ウエーハ10を保持するチャックテーブル25と、チャックテーブル25に保持されたウエーハ10にレーザー光線を照射してレーザー加工を施すレーザー照射手段6と、チャックテーブル25とレーザー照射手段6から照射されるレーザー光線とを相対的に加工送りする送り手段30と、レーザー加工すべき領域を撮像する主撮像手段及びレーザー加工により形成された加工溝とデブリを撮像する補助撮像手段を兼ねる撮像手段7と、表示手段8と、を備えている。
【0014】
チャックテーブル25を含む保持手段20は、基台3上に、X軸方向において移動自在に搭載された矩形状のX軸方向可動板21と、X軸方向可動板21上の案内レール21a、21aに沿ってY軸方向に移動自在に搭載された矩形状のY軸方向可動板22と、Y軸方向可動板22の上面に固定された円筒状の支柱23と、支柱23の上端に固定された矩形状のカバー板26とを含んでいる。チャックテーブル25は、カバー板26上に形成された長穴を通って上方に延びる円形状の部材であって図示しない回転駆動手段により回転可能に構成されている。チャックテーブル25は、通気性を有する多孔質材料から形成されX軸方向及びY軸方向で規定される保持面25aを備えている。保持面25aは、支柱23を通る流路によって図示しない吸引手段に接続されている。なお、X軸方向は
図1にて矢印Xで示す方向であり、Y軸方向は矢印Yで示す方向であってX軸方向に直交する方向である。X軸方向及びY軸方向で規定される平面は実質上水平である。
【0015】
送り手段30は、保持手段20のチャックテーブル25とレーザー照射手段6から照射されるレーザー光線とを、相対的にX軸方向に移動させて加工送りするX軸移動手段31と、チャックテーブル25とレーザー照射手段6から照射されるレーザー光線とを、相対的にY軸方向に移動させるY軸移動手段32とを備えている。X軸移動手段31は、基台3上においてX軸方向に延びるボールねじ34と、ボールねじ34の片端部に連結されたモータ33とを有する。ボールねじ34のナット部(図示は省略)は、X軸方向可動板21の下面に形成されている。そしてX軸移動手段31は、ボールねじ34によりモータ33の回転運動を直線運動に変換してX軸方向可動板21に伝達し、基台3上の案内レール3a、3aに沿ってX軸方向可動板21をX軸方向に進退させる。Y軸移動手段32は、X軸方向可動板21上においてY軸方向に延びるボールねじ36と、ボールねじ36の片端部に連結されたモータ35とを有する。ボールねじ36のナット部(図示は省略)は、Y軸方向可動板22の下面に形成されている。そしてY軸移動手段32は、ボールねじ36によりモータ35の回転運動を直線運動に変換してY軸方向可動板22に伝達し、X軸方向可動板21上の案内レール21a、21aに沿ってY軸方向可動板22をY軸方向に進退させる。
【0016】
保持手段20の奥側には、基台3の上面から上方(Z軸方向)に延びる垂直壁部37aと、水平に延びる水平壁部37bとを備える枠体37が立設されている。水平壁部37bには、レーザー照射手段6及び撮像手段7の光学系が収容されている。水平壁部37bの先端下面にはレーザー照射手段6を構成する集光器61が配設され、集光器61とX軸方向に間隔をおいた位置に、撮像手段7の対物レンズ71が配設されている。上記のレーザー照射手段6は、ウエーハ10に対して吸収性を有する波長のレーザー光線を照射する手段であり、ウエーハ10の表面にアブレーション加工を施すレーザー加工条件に設定される。図示の対物レンズ71は、円筒状のケース内に対物レンズが収容されたものを示している。水平壁部37bの上方には、表示手段8が配設されている。上記したレーザー照射手段6、撮像手段7、表示手段8、移動手段30等は、後述する制御手段に電気的に接続され、該制御手段から指示される指示信号に基づいて制御されて、ウエーハ10に対するレーザー加工が実施される。
【0017】
図2を参照しながら、本実施形態の撮像手段7について説明する。
図2には、説明の都合上省略された枠体37の水平壁部37bに収容される撮像手段7の光学系が示されている。上記したように、本実施形態の撮像手段7は、後述するように、レーザー加工すべき領域を撮像する主撮像手段7Aとレーザー加工により形成された溝とデブリを撮像する補助撮像手段7B(
図4を参照)とを兼ねており、
図2は、撮像手段7が、レーザー加工すべき領域を撮像する主撮像手段7Aとして機能する状態を示している。
【0018】
撮像手段7は、
図2に示すように、対物レンズ71と、対物レンズ71を介して画像を生成するカメラ72と、カメラ72と対物レンズ71との間に配設されたハーフミラー73と、ハーフミラー73及び対物レンズ71を介して上記のチャックテーブル25に保持されたウエーハ10を照明する光源74と、カメラ72とハーフミラー73との間に配設された第1の偏光板75と、光源74とハーフミラー73との間に配設された第2の偏光板76とを備えている。光源74は、例えば可視光L1を照射する光源である。第1の偏光板75は、偏光軸が所定の方向(本実施形態ではY軸方向)に設定された偏光板であり、第1の偏光板75を光が通過する際には、Y軸方向に振動する光のみを透過する偏光板である。これに対し、第2の偏光板76は、
図2に示す実施形態では、偏光軸が矢印Zで示す上下方向に設定されており、これにより、光源74から照射され第2の偏光板76を通過してハーフミラー73で反射する光の偏光軸が、第1の偏光板75の偏光軸に対して90度回転した状態、すなわちY軸方向と直交するX軸方向になるように配設されている。カメラ72は、制御手段100に接続されており、カメラ72から制御手段100に伝達された画像は、表示手段8に表示される。なお、上記した実施形態では、光源74から照射された可視光L1が第2の偏光板76を通過してハーフミラー73で反射した後の光の偏光軸が、第1の偏光板75の偏光軸に対して90度回転した状態となるように配設したが、本発明はこれに限定されず、可視光L1が第2の偏光板76を通過してハーフミラー73で反射した後の光の偏光軸が、第1の偏光板75の偏光軸に対してウエーハ10の表面の状態に応じて適宜回転したものであればよい。すなわち、第1の偏光板75の偏光軸に対し、第2の偏光板76の偏光軸が所要角度回転していればよいのであり、X軸方向、Y軸方向に沿うように設定されることに限定されるものではない。
【0019】
さらに、本実施形態の撮像手段7の第1の偏光板75は、第1の偏光板保持プレート77に保持され、第2の偏光板76は、第2の偏光板保持プレート78に保持されている。第1の偏光板保持プレート77及び第2の偏光板保持プレート78は、図示を省略する保持機構によって保持され、水平方向に移動可能に構成されている。さらに、第1の偏光板保持プレート77には開口部77aが形成されていて、第1の偏光板保持プレート77を矢印R1で示す方向に移動させることにより、カメラ72によってチャックテーブル25に保持されたウエーハ10を撮像する際に、第1の偏光板75が作用する作用位置から、第1の偏光板75が作用しない非作用位置に選択的に移動させることができる。これと同様に、第2の偏光板保持プレート78にも開口部78aが形成されていて、第2の偏光板保持プレート78を矢印R2で示す方向に移動させることにより、光源74から光L1が照射される際に第2の偏光板76を通過するように作用する作用位置から、第2の偏光板76が作用しない非作用位置に選択的に移動させることができる。
図2に示す撮像手段7は、上記した第1の偏光板保持プレート77と、第2の偏光板保持プレート78とがいずれも上記の非作用位置に移動させられている。これにより、撮像手段7は、カメラ72によって、レーザー加工すべき領域を撮像する主撮像手段7Aとして機能する状態にされている。
【0020】
本実施形態のレーザー加工装置2は、概ね上記したとおりの構成を備えており、以下に、本実施形態の機能、作用について説明する。
【0021】
本実施形態のレーザー加工装置2を使用してレーザー加工を実施するに際し、まず、
図1に示すように、ウエーハ10をレーザー加工装置2に搬送し、保持手段20のチャックテーブル25に載置して吸引保持させる。ウエーハ10は、図に示すように、複数のデバイス12が分割予定ライン14によって区画された表面に形成されたものである。次いで、チャックテーブル25に保持されたウエーハ10を、上記した送り手段30を作動して撮像手段7の対物レンズ71の直下に位置付ける。このとき、撮像手段7は、
図2に基づいて説明したように、第1の偏光板保持プレート及び第2の偏光板保持プレート78を非作用位置に位置付けており、レーザー加工すべき領域を撮像するための主撮像手段7Aとして機能する状態とされている。次いで、
図2に示すように、光源74から照射した可視光L1を、非作用位置とされた第2の偏光板保持プレート78の開口部78aを通して矢印R3で示すようにハーフミラー73の反射面73bで反射させ、対物レンズ71側に導く。ハーフミラー73の反射面73bで反射した可視光L1は、チャックテーブル25に保持されたウエーハ10で反射して反射光L2となり、対物レンズ71を介してハーフミラー73に導かれ、ハーフミラー73の反射面73b、上面73aを透過(反射光L2の一部は光源74側に反射される。)する。さらに、反射光L2は、第1の偏光板保持プレート77の開口部77aを通過して矢印R4で示すように、カメラ72に導かれる。これにより、カメラ72は、画像を生成し、制御手段100を介して表示手段8に表示させる。
図2に示すように、カメラ72によって生成される画像には、レーザー加工によって加工溝を形成すべき領域である分割予定ライン14が含まれ、該分割予定ライン14の位置を検出する。次いで、チャックテーブル25を上記した回転駆動手段によって回転して、該分割予定ライン14をX軸方向に整合させ、加工すべき領域の位置を制御手段100に記憶し、アライメント工程を完了する。アライメント工程を実施したならば、
図3を参照しながら以下に説明するレーザー加工工程を実施する。
【0022】
上記したアライメント工程によって検出された分割予定ライン14の位置情報に基づき、チャックテーブル25を移動して、所定方向の分割予定ライン14の加工開始位置の直上にレーザー光線照射手段6の集光器61を位置付け、ウエーハ10の分割予定ライン14上にレーザー光線LBの集光点を位置付けて照射すると共に、上記したチャックテーブル25と共にウエーハ10をX軸方向に加工送りしてウエーハ10の所定の分割予定ライン14に沿ってアブレーション加工を施して加工溝110を形成する。所定の分割予定ライン14に沿って加工溝110を形成したならば、ウエーハ10をY軸方向に分割予定ライン14の間隔だけ割り出し送りして、Y軸方向で隣接する未加工の分割予定ライン14を集光器61の直下に位置付ける。そして、上記したのと同様にしてレーザー光線LBの集光点をウエーハ10の分割予定ライン14に位置付けて照射し、ウエーハ10をX軸方向に加工送りして加工溝110を形成する。同様にして、ウエーハ10をX軸方向、及びY軸方向に加工送りして、X軸方向に沿うすべての分割予定ライン14に沿って加工溝110を形成する。次いで、ウエーハ10を90度回転させて、既に加工溝110を形成した分割予定ライン14に直交する方向の未加工の分割予定ライン14をX軸方向に整合させる。そして、残りの分割予定ライン14に対しても、上記したのと同様にしてレーザー光線LBの集光点を位置付けて照射して、ウエーハ10の表面に形成された全ての分割予定ライン14に沿って加工溝110を形成し、レーザー加工工程が完了する。
【0023】
上記したように、レーザー加工工程が完了したならば、加工溝110の出来具合を確認すべく、以下に説明する加工溝確認工程を実施する。該加工溝確認工程を実施するに際し、上記した送り手段30を作動してチャックテーブル25を移動させて、撮像手段7の対物レンズ71の直下にウエーハ10を位置付ける。このとき、撮像手段7は、
図4に示すように、第1の偏光板保持プレート77を矢印R5で示す方向に移動させて作用位置に移動させると共に、第2の偏光板保持プレート78を矢印R6で示す方向に移動させて作用位置に移動させる。これにより、撮像手段7は、チャックテーブル25に保持されたウエーハ10のレーザー加工された領域、すなわち加工溝110が形成された領域を撮像して、レーザー加工により形成された加工溝110とその両側に付着した後述するデブリを撮像するのに好適な補助撮像手段7Bとして機能する状態とされる。
【0024】
上記したように、補助撮像手段7Bとされた撮像手段7の対物レンズ71の直下に、加工溝110が形成されたウエーハ10を位置付けたならば、光源74から可視光L1を照射する。この可視光L1は、第2の偏光板76を通過することにより上下方向に振動する成分の光L3のみが矢印R7で示す方向に進み、ハーフミラー73の反射面73bに導かれて反射され、対物レンズ71を介してウエーハ10の加工溝110が形成された領域に照射される。ウエーハ10の加工溝110を含む領域に照射された光L3は、ウエーハ10の加工溝110を含む領域で反射して反射光L4となり、対物レンズ71を介して矢印R8で示す方向に進み、ハーフミラー73を透過する(一部は反射面73bで反射される)。ハーフミラー73を透過した反射光L4は、第1の偏光板75に導かれ、反射光L4のうち、第1の偏光板75を通過した通過光L5のみが矢印R9で示す方向に進み、カメラ72によって画像が生成されて、制御手段100を介して表示手段8にその画像が表示される。
【0025】
ここで、上記した通過光L5について、さらに、より具体的に説明する。上記したように、光源74から照射された光L1は、偏光軸が上下方向(Z軸方向)に設定された第2の偏光板76を通過していることにより、ハーフミラー73にて反射された光L3の偏光軸は、第1の偏光板75の偏光軸に対して90度回転した方向、すなわちX軸方向になっている。この光L3が、ウエーハ10上で反射する際に、ウエーハ10上で正反射した場合は、その反射光の偏光軸の方向は変化せず、X軸方向のまま反射される。これに対し、ウエーハ10上で反射する際に、ウエーハ10上の細かい凹凸面等がある部分で反射した場合は、該凹凸面等で乱反射を起こし、様々な方向の偏光軸を含む反射光となる。ここで、本実施形態のウエーハ10上で正反射した反射光L4の成分が、第1の偏光板75に導かれた場合、第1の偏光板75の偏光軸がY軸方向を向いているため、偏光軸がX軸方向である反射光L4の成分は第1の偏光板75によって遮断され通過することができない。これに対し、反射光L4にウエーハ10上で乱反射した成分が含まれていると、第1の偏光板75に導かれた際に、第1の偏光板75の偏光軸の方向(Y軸方向)、及びY軸方向近い偏光軸の光の成分を含んでいるため、それらの反射光は、第1の偏光板75を通過して、カメラ72に到達して画像を生成する。
【0026】
図4に示すように、加工溝110が適正に形成された領域に光L3が照射された場合、該領域では、光L3は主に正反射して乱反射が少ない反射光を構成する。これに対し、加工溝110の両側に形成されたデブリは細かい凹凸面を含むことから、この領域に照射された光L3は乱反射して、様々な方向の偏光軸の光を含む反射光を構成する。このように正反射と乱反射とにより生成された反射光L4を、第1の偏光板75に導くと、正反射によって生成された反射光成分が遮断されて、デブリにおける乱反射によって生成された反射光のうち偏光軸がY軸方向及びY軸方向に近い光のみが透過した通過光L5を形成する。このように形成された通過光L5を、カメラ72に導いて画像を生成して表示手段8に表示させる(加工溝確認工程)。この結果、
図4に示すように、加工溝110と、デブリ120とのコントラストが明確になり、加工溝110の出来具合を良好に確認することが可能になる。なお、
図4の表示手段8に表示された画像は、説明の都合上、白黒を反転した画像を示したものである。
【0027】
本実施形態では、第1の偏光板75と、第2の偏光板76とを、第1の偏光板保持プレート77、第2の偏光板保持プレート78とにより保持して、作用位置と、非作用位置とで選択的に位置付けることが可能に構成して、主撮像手段7Aと、補助撮像手段7Bとを兼用する一つの撮像手段7として構成したことにより、撮像手段を配設するスペースが過大になることが防止される。
【0028】
上記した実施形態では、1つの撮像手段7によって、主撮像手段7Aと、補助撮像手段7Bとを兼用させるように構成したが、本発明はこれに限定されず、主撮像手段7Aと、補助撮像手段7Bとを、独立した別個の手段として構成し、上記のアライメント工程と、加工溝確認工程と、を別個に構成した主撮像手段7A及び補助撮像手段7Bによって実施するようにしてもよい。
【0029】
また、上記した実施形態では、複数のデバイス12が複数の分割予定ライン14によって区画された表面に形成されたウエーハ10を使用してレーザー加工を実施した例を示したが、本発明はこれに限定されず、デバイス12が形成されていない、いわゆるダミーウエーハを使用してもよい。さらに、上記した実施形態では、第1の偏光板75の偏光軸に対し、第2の偏光板76の偏光軸を90度回転した例を示したが、所要角度、すなわち0度よりも大きく回転していれば、ウエーハ10の表面で正反射した反射光を遮断する効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0030】
2:レーザー加工装置
3:基台
6:レーザー照射手段
61:集光器
7:撮像手段
71:対物レンズ
72:カメラ
73:ハーフミラー
74:光源
75:第1の偏光板
76:第2の偏光板
77:第1の偏光板保持プレート
77a:開口部
78:第2の偏光板保持プレート
78a:開口部
10:ウエーハ
12:デバイス
14:分割予定ライン
20:保持手段
21:X軸方向可動板
22:Y軸方向可動板
25:チャックテーブル
30:送り手段
31:X軸移動手段
32:Y軸移動手段
37:枠体
37a:垂直壁部
37b:水平壁部
100:制御手段
110:加工溝
120:デブリ