IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミツトヨの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】クロマティックレンジセンサシステム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20241216BHJP
【FI】
G01B11/00 B
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021075694
(22)【出願日】2021-04-28
(65)【公開番号】P2021181983
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2024-03-13
(31)【優先権主張番号】16/861,024
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/001,328
(32)【優先日】2020-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(74)【代理人】
【識別番号】100188260
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 愼二
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ダニエル トバイアソン
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-246173(JP,A)
【文献】特開2017-150993(JP,A)
【文献】特開2020-27087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00 - 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光発生回路、
波長検出回路、および、
CMM制御回路、
を有する座標測定装置(CMM)と、
前記CMMに接続可能に構成されたクロマティックレンジセンサ(CRS)光学プローブと、
前記CRS光学プローブのミスアライメント誤差を補正するための円筒校正データを提供するために用いられる円筒校正部材と、
前記CRS光学プローブのミスアライメント誤差を補正するための球状校正データを提供するために用いられる球状校正部材と、
を備えるシステムであって、
前記CRS光学プローブは、少なくとも共焦点アパーチャー及び色分散光学部材を含んだ共焦点光学経路を有する光学ペンを備え、前記光学ペンは、回転軸に関する半径方向に沿って半径距離検出ビームを向け、前記半径距離検出ビームを前記回転軸周りに回転させ、測定軸に沿ったワークの被測定面付近の異なる距離において異なる波長光が焦点を結ぶように構成され、
前記円筒校正部材は、Z軸に沿って延在する中心軸を有する少なくとも第1円筒校正面を有し、
前記CRS光学プローブは、前記円筒校正部材に関する前記Z方向に沿った第1Z座標位置で、前記回転軸周りに前記半径距離検出ビームを回転させて、該回転動作中に取得する第1の円筒半径距離データセットを提供するように構成され、
前記円筒半径距離データセットが前記回転軸周りの前記半径距離検出ビームの検知回転角度を参照し、前記検知回転角度を参照する前記第1の円筒半径距離データセットが演算処理されて、前記円筒校正データが決定されるようになっており、
前記球状校正部材は、球状校正面を有し、
前記CRS光学プローブは、前記球状校正面上の複数の第1表面部の各々の表面部に対して、前記球状校正部材から概ね第1スタンドオフ距離の位置で前記光学ペンを使って、前記回転軸周りに前記半径距離検出ビームを回転させて、該回転動作中に取得する球状半径距離データセットを提供するように構成され、
前記光学ペンが前記球状半径距離データセットを取得するために走査軸方向に移動し、検出された表面部のそれぞれに対応する半径距離データの各セットが演算処理されて、前記光学ペンに最も近い点であることを表す、検出最近接表面点が決定されるようになっており、前記球状校正データは、前記複数の表面部に対応する検出最近接表面点のうちの少なくとも一部に基づいて決定されるように構成されている、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムは、
前記円筒校正データおよび前記球状校正データの演算によって、前記CRS光学プローブ用の校正データを決定するように構成されている、ことを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1記載のシステムにおいて、
前記球状校正面は、該球状校正面の共通の中心点からそれぞれ同じ半径距離にある複数の点を含んでいる、ことを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1記載のシステムにおいて、前記球状校正面上の前記複数の第1表面部は、前記球状校正面上の複数の区域を含み、該複数の区域は、前記球状校正部材の赤道周りに互いに等距離である、ことを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1記載のシステムにおいて、
前記球状校正面は、複数の第2表面部を有し、
前記CRS光学プローブは、前記複数の第2表面部の各々の表面部に対して、前記球状校正部材から概ね前記第1スタンドオフ距離の位置で前記光学ペンを使って、前記回転軸周りに前記半径距離検出ビームを回転させて、その回転動作中に取得する球状半径距離データセットを提供するように構成され、
前記複数の第2表面部の検出された表面部のそれぞれに対応する半径距離データの各セットが演算処理されて、前記光学ペンに最も近い点であることを表す、検出最近接表面点が決定され、
前記球状校正データは、少なくとも、前記複数の第2表面部に対応する前記検出最近接表面点の一部に基づいて決定されるように構成されている、ことを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1記載のシステムにおいて、
前記球状校正面上の前記複数の第1表面部は、前記球状校正面上の複数の第1区域を含み、前記複数の第1区域は、前記球状校正部材の第1赤道周りに互いに等距離であり、
前記球状校正面上の前記複数の第2表面部は、前記球状校正面上の複数の第2区域を含み、前記複数の第2区域は、前記球状校正部材の第2赤道周りに互いに等距離である、
ことを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1記載のシステムにおいて、前記球状校正面上の前記複数の第1表面部の各表面部に対して、前記CRS光学プローブは、前記球状校正部材から概ね第2スタンドオフ距離の位置で前記光学ペンを使って、前記回転軸周りに前記半径距離検出ビームを回転させて、前記回転動作中に取得する球状半径距離データセットを提供するように構成され、
検出された各々の表面部に対応する半径距離データの各セットは演算処理されて、前記光学ペンに最も近い点であることを表す、検出最近接表面点が決定され、前記球状校正データが、少なくとも、前記第2スタンドオフ距離に対応する前記検出最近接表面点の一部に基づいて決定されるように構成されている、ことを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1記載のシステムは、前記CRS光学プローブに対して前記円筒校正部材および前記球状校正部材を位置決めするように構成された定盤を備える、ことを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1記載のシステムにおいて、
前記CRS光学プローブは、
前記光学ペンが前記球状校正部材に対して第1配向である条件で、前記複数の第1表面部の各表面部に対して、前記回転軸周りに前記半径距離検出ビームを回転させて、前記回転動作中に取得された球状半径距離データセットを提供し、
前記光学ペンが前記球状校正部材に対して前記第1配向とは異なる第2配向である条件で、前記球状校正面上の複数の第2表面部の各表面部に対して、前記回転軸周りに前記半径距離検出ビームを回転させて、前記回転動作中に取得された球状半径距離データセットを提供するように構成されている、ことを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項1記載のシステムにおいて、前記円筒校正部材は、前記第1円筒校正面の表面又は内部に形成された第1の角度基準特徴部セットを備え、
該第1の角度基準特徴部セットは、前記半径距離検出ビームによって検出可能に構成され、前記第1円筒校正面の表面又は内部に、前記中心軸周りに互いに既知の角度又は角度間隔で配置されている、ことを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項1記載のシステムにおいて、
前記円筒校正部材がリングゲージである、ことを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項1記載のシステムにおいて、
前記円筒校正部材が第1円筒校正部材であり、前記第1円筒校正面がZ方向に沿って前記中心軸から既知の第1半径R1の距離に設けられており、
該システムは、第2円筒校正面をさらに備え、該第2円筒校正面は、
前記第1円筒校正部材の一部、及び、
第2円筒校正部材の一部
のうちの少なくとも一方であり、
前記第2円筒校正面は、前記Z方向に延在する第2中心軸を有し、前記第2円筒校正面は、Z方向に沿って前記中心軸から前記第1半径R2とは異なる既知の第2半径R2の距離に設けられ、
前記CRS光学プローブは、前記第2円筒校正面に対して前記Z方向に沿ったZ座標位置で、前記回転軸周りに前記半径距離検出ビームを回転させて、前記回転動作中に取得された第2の円筒半径距離データセットを提供するように構成され、
前記第2の円筒半径距離データセットは、前記半径距離検出ビームの前記回転軸周りの検知回転角度を参照し、前記検知回転角度を参照する前記第2の円筒半径距離データセットは、前記円筒校正データを決定するために前記第1の円筒半径距離データセットに加えられて演算処理されるように構成されている、ことを特徴とするシステム。
【請求項13】
回転クロマティックレンジセンサのミスアライメント誤差を補正するための校正データを提供する方法であって、
前記回転クロマティックレンジセンサは、回転軸に関する半径方向に沿って、半径距離検出ビームを向けて、前記半径距離検出ビームを前記回転軸周りに回転させて、測定軸に沿ったワークの被測定面付近の異なる距離において異なる波長光が焦点を結ぶように構成され、
前記方法は、
少なくとも、Z方向に沿った中心軸をもった第1円筒校正面を有する円筒校正部材を提供し、
前記円筒校正部材を前記回転クロマティックレンジセンサに対してある関係で配置し、
前記回転クロマティックレンジセンサを動作させて、前記円筒校正部材に関する前記Z方向に沿った第1Z座標位置で、前記回転軸周りに前記半径距離検出ビームを回転させて、前記回転中に取得される第1の円筒半径距離データセットを提供し、ここで、前記円筒半径距離データセットは、前記半径距離検出ビームの前記回転軸周りの検知回転角度を参照し、
前記検知回転角度を参照する前記第1の円筒半径距離データセットを演算処理して、第1の円筒校正データセットを決定し、
複数の第1表面部をもった球状校正面を有する球状校正部材を提供し、
前記球状校正部材を前記回転クロマティックレンジセンサに対してある関係で配置し、
前記複数の第1表面部に対して、前記回転クロマティックレンジセンサを動作させて、前記球状校正部材から概ね第1スタンドオフ距離の位置で前記回転クロマティックレンジセンサの光学ペンを使って、前記回転軸周りに前記半径距離検出ビームを回転させて、前記回転中に取得される球状半径距離データセットを、それぞれの前記表面部に対応して提供し、前記半径距離検出ビームを走査軸方向にも移動させて、前記球状半径距離データセットを取得し、
検出された表面部のそれぞれに応じた半径距離データの各セットを演算処理して、前記回転クロマティックレンジセンサの前記光学ペンに最も近い点であることを表わす、検出最近接表面点を決定し、
前記複数の表面部に応じた前記検出最近接表面点の少なくとも一部に基づいて、球状校正データを決定する、ことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13記載の方法は、さらに、
前記円筒校正データと前記球状校正データを演算処理して、前記クロマテッィクレンジセンサ用の校正データを生成することを含む、ことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項13記載の方法において、
前記球状校正面は、複数の第2表面部を有し、
前記方法は、
前記クロマティックレンジセンサを動作させて、前記複数の第2表面部の各表面部に対して、前記球状校正部材から概ね前記第1スタンドオフ距離の位置で前記光学ペンを使って、前記回転軸周りに前記半径距離検出ビームを回転させて、前記回転動作中に取得する球状半径距離データを提供することと、
前記複数の第2表面部のうちの検出された各表面部に対応する半径距離データの各セットを演算処理して、前記光学ペンに最も近い点であることを表わす、検出最近接表面点を決定することと、
前記複数の表面部に対応する前記検出最近接表面点の少なくとも一部に基づいて、前記球状校正データを決定することと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項13記載の方法は、さらに、
前記回転クロマティックレンジセンサを動作させて、前記複数の第1表面部に対して、前記球状校正部材から概ね前記第2スタンドオフ距離の位置で前記回転クロマティックレンジセンサの前記光学ペンを使って、前記回転軸周りに前記半径距離検出ビームを回転させて、前記回転動作中に取得された球状半径距離データセットを提供することと、
前記第2スタンドオフ距離で検出された各表面部に対応する半径距離データの各セットを演算処理して、前記回転クロマティックレンジセンサの前記光学ペンに最も近い点であることを表わす、検出最近接表面点を決定することと、
前記第2スタンドオフ距離での前記複数の表面部に対応する前記検出最近接表面点の少なくとも一部に基づいて、前記球状校正データを決定することと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項13記載の方法は、さらに、
前記光学ペンが前記球状校正部材に対して第1配向である条件で、前記回転クロマティックレンジセンサを動作させて、前記複数の第1表面部に対して、前記回転軸周りに前記半径距離検出ビームを回転させて、前記回転動作中に取得する球状半径距離データセットを提供することと、
前記光学ペンが前記球状校正部材に対して前記第1配向とは異なる第2配向である条件で、前記回転クロマティックレンジセンサを動作させて、前記球状校正面上の複数の第2表面部の各表面部に対して、前記回転軸周りに前記半径距離検出ビームを回転させて、前記回転動作中に取得する球状半径距離データセットを提供することと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
CRS光学プローブを含むクロマティックレンジセンサ(CRS)と、
前記CRS光学プローブのミスアライメント誤差を補正するための円筒校正データを提供可能な円筒校正部材と、
前記CRS光学プローブのミスアライメント誤差を補正するための球状校正データを提供可能な球状校正部材と、
前記CRS光学プローブに対して前記円筒校正部材および前記球状校正部材を位置決めするように構成されたステージと、を備え、
前記円筒校正部材は、少なくとも、Z方向の中心軸をもった第1円筒校正面を有し、前記CRS光学プローブは、前記円筒校正部材に関する前記Z方向の第1Z座標位置で、前記回転軸周りに半径距離検出ビームを回転させて、前記回転中に取得される第1の円筒半径距離データセットを提供するように構成され、前記円筒半径距離データセットは、前記回転軸周りの前記半径距離検出ビームの検知回転角度を参照し、前記検知回転角度を参照する前記第1の円筒半径距離データセットが演算処理されて、前記円筒校正データが決定されるように構成され、
前記球状校正部材は、球状校正面を有し、前記球状校正面上の複数の第1表面部の各表面部に対して、前記CRS光学プローブは、前記球状校正部材から概ね第1スタンドオフ距離の位置で光学ペンを使って、前記回転軸周りに前記半径距離検出ビームを回転させて、前記回転中に取得される対応する球状半径距離データセットを提供し、かつ前記光学ペンを走査軸方向にも移動させて前記球状半径距離データセットを取得するように構成され、検出された各表面部に対応する半径距離データの各セットは演算処理されて、前記光学ペンに最も近い点を表わす、検出最近接表面点が決定され、前記球状校正データが、前記複数の表面部に応じた前記検出最近接表面点の少なくとも一部に基づいて決定されるように構成される、
ことを特徴とする校正システム。
【請求項19】
請求項18記載の校正システムにおいて、前記ステージは定盤からなり、前記円筒校正部材および前記球状校正部材が前記定盤に載置されていることを特徴とする校正システム。
【請求項20】
請求項18記載の校正システムは、さらに、検出された各表面部に対応する半径距離データの各セットを演算して、前記光学ペンに最も近いことを表わす、前記検出最近接表面点を決定し、前記複数の表面部に対応する前記検出最近接表面点の少なくとも一部に基づいて、前記球状校正データを決定するように構成された制御部を備える、ことを特徴とする校正システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広く精密測定装置に関し、特に、ワークの測定値を決定するのに用いる座標測定機(CMMs)用のクロマティックレンジセンサ光学プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
ある種類の三次元座標測定機は、ワーク表面をプローブでスキャンし、スキャン後に、ワークの三次元プロファイルを算出する。ある種類の走査プローブは、ワーク表面に沿った様々なポイントに対して、プローブを機械的に接触させることによって、ワークを直接測定する。多くの場合、機械的接触はボールによる。
【0003】
他の三次元座標測定機は、ワーク表面と非接触でワークを測定する光学プローブを利用する。ある光学プローブ(例えば、三角測距プローブ)は、ワーク表面のポイント測定に光を利用する。そして、光学プローブは、ワーク表面の二次元(2D)断面の画像処理用(イメージング用)のビデオカメラ(例えば、ステレオビジョンシステム、または、構造化された光システム)を併せ持っている。あるシステムは、ワークの幾何学的部分の座標を画像処理ソフトウェアで決定している。
【0004】
また、光学測定検出器と機械的測定検出器の両方を使用する「複合型の」三次元座標測定機も知られている。そのような測定機の1つが、米国特許第4,908,951号公報(特許文献1)に記載されており、その測定機は2個のスピンドルを持っている。一方のスピンドルは、機械式接触プローブを運ぶためのものであり、他方のスピンドルは、ビデオカメラを保持するためのものである。このビデオカメラの光路は、レーザプローブがZ軸すなわちビデオカメラの光軸に沿ってビデオカメラと同時に測定できるように、設定されている。
【0005】
米国特許第5,825,666号公報(特許文献2)には、光学三次元座標測定機が記載されており、その測定機の光学的接触プローブは、標準的プローブの接触子の遠方端を第1ターゲットに設定している。標準的なプローブがビデオカメラに取り付けられ、ビデオカメラがそのカメラ上のターゲットをイメージングする。X-Y座標系でのターゲットの移動および位置は、その測定機のコンピュータ画像処理装置に表示される。第2ターゲットは、プローブの近接端に取り付けられており、Z座標の移動および位置を表示する。第2ターゲットは、光検出器を覆い隠すかもしれないが、X-Y平面に平行な光ビームによって、そのカメラ上に焦点を結ぶことができる。ここで、2つの第2ターゲットは、X-Y平面に平行、かつ互いに直交するビームに照らされることができる。そして、スタープローブ(star probes)を使用するとき、Z軸周りの回転は、コンピュータによって計算される。また、複数のプローブ、プローブホルダー、および、カメラへの選択的な取付用の複数レンズをそれぞれ保持するための自動交換ラックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第4,908,951号公報
【文献】米国特許第5,825,666号公報
【文献】米国特許第7,876,456号公報
【文献】米国特許第7,990,522号公報
【文献】米国特許公開20120050723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光学プローブ及び/又は座標測定機は、光学プローブの光学ペンを軸周りに回転させるために、例えば、回転機構を含む場合がある。加えて、光学ペンが、光源の光路に配置された反射素子を含む場合もある。この反射素子は、測定光を光源光とは異なる方向に向ける。
【0008】
これに関する問題には、回転光学ペンを用いた座標測定機で取得された測定値の誤差が含まれ、例えば、半径の誤差、回転角の誤差、z位置の誤差のように非線形成分を有し得る誤差が含まれる。従来、そのような誤差を処理するために干渉計を使った校正が行なわれている。しかし、干渉計を使った校正は、特に回転プローブの校正は、精度よく実行することが難しい。加えて、そのような校正は、製造工場のような測定現場での実行が難しい。
【0009】
これらの問題を解決できるシステムおよび方法、つまり、座標測定機に接続されたクロマティックレンジセンサの光学プローブを校正するためのシステムおよび方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる校正システムは、座標測定装置(CMM)の校正データを提供するためのものである。この校正システムは、光発生回路と波長検出回路とCMM制御回路とを有するCMM、及び、CMMに接続可能に構成されたクロマティックレンジセンサ(CRS)光学プローブを備えている。CRS光学プローブは、少なくとも共焦点アパーチャー及び色分散光学部材を含んだ共焦点光学経路を有する光学ペンを備えている。光学ペンは、回転軸に関する半径方向に沿って、半径距離検出ビームを向けるように構成され、その半径距離検出ビームを回転軸周りに回転させるように構成され、測定軸に沿ったワークの被測定面付近の異なる距離において異なる波長光が焦点を結ぶように構成されている。この校正システムは、円筒校正部材および球状校正部材を含んでいる。
【0011】
円筒校正部材は、CRS光学プローブのミスアライメント誤差を補正するための円筒校正データを提供するためのものであり、Z軸に沿って延在する中心軸を有する少なくとも第1の円筒校正面を有する。CRS光学プローブは、円筒校正部材に関するZ方向に沿った第1Z座標位置で、回転軸周りに半径距離検出ビームを回転させて、その回転動作中に取得する第1の円筒半径距離データセットを提供するように構成されている。円筒半径距離データセットは、回転軸周りの半径距離検出ビームの検知回転角度を参照している。この検知回転角度を参照する第1の円筒半径距離データセットが演算処理されて、円筒校正データが決定される。
【0012】
球状校正部材は、球状校正面を有し、CRS光学プローブのミスアライメント誤差を補正するための球状校正データを提供するために用いられる。球状校正面上の複数の第1表面部の各々の表面部に対して、CRS光学プローブは、球状校正部材から概ね第1スタンドオフ距離の位置で光学ペンを使って、回転軸周りに半径距離検出ビームを回転させて、その回転動作中に取得する球状半径距離データセットを、各々の表面部に応じて提供するように構成されている。また、光学ペンが走査軸方向に移動して(すなわち、これに応じて半径距離検出ビームが走査軸方向に移動して)、球状半径距離データセットが取得される。検出された表面部のそれぞれに対応する半径距離データの各セットが演算処理されて、光学ペンに最も近い点であることを表す、検出最近接表面点が決定される。球状校正データは、複数の表面部に対応する検出最近接表面点のうちの少なくとも一部に基づいて決定される。
【0013】
幾つかの実施態様では、回転クロマティックレンジセンサのミスアライメント誤差を補正するための校正データの提供方法が示される。回転クロマティックレンジセンサは、回転軸に関する半径方向に沿って、半径距離検出ビームを向けて、その半径距離検出ビームを回転軸周りに回転させるように構成され、円筒校正部材および球状校正部材が提供される。
【0014】
円筒校正部材は、少なくともZ方向に沿った中心軸をもった第1の円筒校正面を有する。その円筒校正部材を、回転クロマティックレンジセンサに対してある関係で配置する。回転クロマティックレンジセンサは、円筒校正部材に関するZ方向に沿った第1Z座標位置で、回転軸周りに半径距離検出ビームを回転させて、その回転中に取得される第1の円筒半径距離データセットを提供するように動作する。円筒半径距離データセットは、半径距離検出ビームの回転軸周りの検知回転角度を参照する。検知回転角度を参照する第1の円筒半径距離データセットは、演算処理されて、第1セットの円筒校正データが決定される。
【0015】
球状校正部材は、複数の第1表面部を持つ球状校正面を有し、回転クロマティックレンジセンサに対してある関係で配置されている。複数の第1表面部に対して、回転クロマティックレンジセンサは、球状校正部材から概ね第1スタンドオフ距離の位置で前記回転クロマティックレンジセンサの光学ペンを使って、前記回転軸周りに半径距離検出ビームを回転させて、その回転中に取得される球状半径距離データセットを、それぞれの表面部に対応して提供するように動作する。検出された表面部のそれぞれに対応する半径距離データの各セットは、演算処理されて、検出最近接表面点がセット毎に決定される。その点は、該回転クロマティックレンジセンサの光学ペンに最も近いことを表わす。球状校正データは、複数の表面部に対応する検出最近接表面点の少なくとも一部に基づいて決定される。
【0016】
幾つかの実施態様では、CRS光学プローブを含むクロマティックレンジセンサ(CRS)用の校正システムが提供される。この校正システムは、CRS光学プローブのミスアライメント誤差を補正するための円筒校正データを提供可能な円筒校正部材と、CRS光学プローブのミスアライメント誤差を補正するための球状校正データを提供可能な球状校正部材と、CRS光学プローブに対して円筒校正部材および球状校正部材を位置決めするためのステージ(例えば、定盤)と、を備える。
【0017】
幾つかの実施態様において、前記校正システムは、検出された表面部のそれぞれに対応する半径距離データの各セットを演算して、検出最近接表面点(光学ペンに最も近いことを表わす点)を表面部毎に決定し、また、複数の表面部に対応する検出最近接表面点の少なくとも一部に基づいて球状校正データを決定するために構成された制御部(例えば、1以上のコントローラ、制御回路など)を含む。この制御部は、また、円筒半径距離データに、半径距離検出ビームの回転軸周りの検知回転角度を参照させるように構成され、この検知回転角度を参照する第1の円筒半径距離データセットを演算処理し、円筒校正データを決定するように構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】光学ペンを有する代表的なクロマティックレンジセンサ(CRS)システムのブロック図である。
図2】座標測定機と、光学ペンを含むCRS光学プローブと、コントローラと、ユーザインタフェースとを備えた座標測定システムのブロック図である。
図3図3A及び図3Bは、第1実施形態に係る図2のCRS光学プローブの内部構造を示す図である。
図4図4A及び図4Bは、図3A及び図3Bの交換マウントおよび交換可能光学機構を含む光学ペンの構造を示す図である。
図5図2のプローブコントローラの構造を示すブロック図である。
図6】交換可能光学機構の回転部と、位置情報の測定およびレポート用のエンコーダとを含む光学ペンの一実施形態を示す構成図である。
図7図7A図7Cは、図6の光学ペンの代表的な校正コンポーネントを示す断面図。
図8図8A図8Cは、回転光学ペンを使用して測定した際に、測定誤差が生じるミスアライメントの例を示す概念図、及び、そのような誤差の補償のために考慮に入れられる可能性があるパラメータの例を示す概念図である。
図9図9A図9Dは、一実施形態に係るリングゲージの形状をした校正部材を示す図である。
図10】一実施形態に係る段付きリングゲージの形状をした校正部材を示す図。
図11図11A図11Cは、他の実施形態に係る段付きリングゲージの形状をした校正部材を示す断面図および概念図である。
図12図12A図12Cは、実施形態に係る1以上の精密ガラス管の形状をした校正部材を示す図である。
図13図13A図13Eは、実施形態に係る複数の精密金属管を入れ子状にした校正部材を示す図である。
図14】光学ペンに関連する半径の測定データセットの一例のグラフである。
図15図14の半径距離の測定データセットの一例に基づいて決定された補正後の勾配およびオフセットのグラフである。
図16】ゲージ距離(複数の位置)、及び、校正部材の中心軸に対する光学ペンの回転軸のオフセット(複数の位置)で取得された一実施形態に係る半径距離データのグラフ図。
図17】CMMの回転クロマティックレンジセンサ構造の校正手順を示す図である。
図18】CMM及び代表的な校正コンポーネントを含む座標測定システムの代表的な構成を示す図である。
図19】球状校正部材の形態の校正部材の一実施形態を説明する図である。
図20】CMMの回転クロマティックレンジセンサの代表的な校正手順の一実施形態を示すフロー図である。
図21】球状校正部材の半径距離の測定値から球状校正データを取得する代表的な手順の一実施形態を示すフロー図である。
図22】球状校正部材に対して光学ペンを第一の方向およびスタンドオフ距離にして、球状校正部材の複数の表面部の半径距離を測定する方法を示す概念図である。
図23】半径距離データを演算処理して、球状校正面の複数の表面部の各表面部において最も近い表面の点を決定すること、及び、その最も近い点を使って球状校正データを生成することを説明するための概念図である。
図24】半径距離データを演算処理して、球状校正面の複数の表面部の各表面部において最も近い表面の点を決定すること、及び、その最も近い点を使って球状校正データを生成することを説明するための概念図である。
図25図25A及び図25Bは、球状校正部材の表面部についての球状半径距離データを取得する方法の説明図である。
図26】球状校正部材に対して光学ペンを第二の方向およびスタンドオフ距離にして、球状校正部材の複数の表面部の半径距離を測定する方法を示す概念図である。
図27図27Aは、球状校正部材の半径距離測定値を得る光学ペンを備えたCMMの1つの理想的なアライメントを示す概念図であり、図27B及び図27Cは、光学ペン付きCMMを使って、球状校正部材の半径距離測定値を測定する場合の様々なミスアライメント誤差を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、座標測定機用として望ましい動作原理を備えた代表的なクロマティックレンジセンサ(CRS)システム100の基本構成を示すブロック図である。CRSシステム100には、米国特許第7,876,456号公報(特許文献3)および米国特許第7,990,522号公報(特許文献4)に記載の装置との類似点が幾つかある。図1に示すCRSシステム100は、光学機構120および電装部160を含み、場合によっては1回で1点を測定するクロマティックポイントセンサのシステムである。以降、図1の光学機構120を光学ペンとも呼ぶ。しかしながら、様々な実施形態では、クロマティックラインセンサなどの代替型クロマティックレンジシステムを利用してもよい。
【0020】
光学ペン120は、光ファイバーコネクタ109と、筐体131(例えばアセンブリ中空管)と、色分散光学部材150とを含む。光ファイバーコネクタ109は、筐体131の端部に取り付けられている。様々な実施形態においては、光ファイバーコネクタ109は筐体131に対してある角度で斜めに向けられるとよい。光ファイバーコネクタ109は、内蔵された入出力光ファイバーケーブル112を通じて、入出力用光ファイバー(詳細には示していない)を保持している。入出力用光ファイバーは、ファイバーアパーチャー195を通して光源からの測定光を出力し、そのファイバーアパーチャー195を通して反射された測定信号光を受け取る。
【0021】
測定動作中、ファイバー端部からファイバーアパーチャー(開口部)195を通って放射された広帯域光源光(例えば白色光)は、軸方向の色分散を促す単レンズまたは複合レンズを含む色分散光学部材150により集光され、共焦型のクロマティックセンサ装置で周知のように、光軸OAに沿った焦点が光の波長に応じて異なった距離になる。光源光は、光学ペン120から位置Zにあるワーク表面190上で焦点が合う波長光を含む測定光196を形成する(例えば、半径距離検出ビームとして機能してもよい)。ワーク表面190からの反射光は、再び、色分散光学部材150によってファイバーアパーチャー195上で焦点が合う。測定可能な測定光および反射光は、限定光線LR1,LR2によって、その境界が制限されている。軸方向の色分散により、1つの波長のみが、光学ペン120からワーク表面190までの測定距離に一致する前方の焦点距離FFを示す。ワーク表面190で最も良く焦点が合う波長が、ファイバーアパーチャー195で最も良く焦点が合う波長となるように、光学ペン120は構成される。ファイバーアパーチャー195が反射光を空間的にフィルタリングするので、最も良い焦点を合わせた光が、アパーチャー195を通って光ファイバーケーブル112のコアへ入るようになる。以下の詳述するように、光ファイバーケーブル112は反射信号光を波長検出器162に伝搬する。この波長検出器162は、ワーク表面190までの測定距離に対応する主強度の波長を決定するために用いられる。
【0022】
また図1は、破線で示された任意の反射素子155を概略的に示す。米国特許公開20120050723号公報(特許文献5)に詳細に記載の反射素子を、本発明の光源光SBの経路に配置してもよい。そのような実施例では、光軸OAと同軸である測定軸MAよりもむしろ、測定アプリケーションで必要とされる測定軸MA’に沿った異なる方向(例えば、光軸に直交する方向)へ、反射素子が測定光196’を反射させるとよい。そのような直交方向については、以下に詳述するように他の図に示す実施形態で用いている。
【0023】
電装部160は、ファイバー・カップラ(結合器)161、波長検出器162、光源164、信号演算器166および記憶部168を含む。様々な実施形態では、波長検出器162は、分光計または分光器アレンジメントを含んでいる。その波長検出器162の中の例えば回折格子のような分散光学部材は、光ファイバーケーブル112を通る反射光を受光し、さらに、結果として生じるスペクトル強度プロファイルを検出器アレイ163へ伝達する。波長検出器162は、関連する信号演算処理機能(例えば、いくつかの実施形態では信号演算器166により提供される機能)も備えているとよい。その機能とは、プロファイルデータから特定検出器の誤差成分を取り除いたり、またはプロファイルデータを補償したりする機能である。従って、波長検出器162および信号演算器166という特定の態様を統合してもよく、または区別をなくしてもよい。
【0024】
白色光源164は、信号演算器166によって制御されており、光学カップラ161(例えば、2×1光学カップラ)を介してファイバーケーブル112に接続されている。上述したように、軸方向の色収差を生成する光学ペン120を通って光は進み、光の波長に応じてその焦点長さは変化する。ファイバーを逆方向に通過する際に、最も効率よく伝達される光の波長は、位置Zにあるワーク表面190上に焦点の合った波長である。その後、波長依存の反射光の強度は、再びファイバー・カップラ161を通過して、約50%の光が波長検出器162に向けられるようになっている。この波長検出器162は、検出器アレイ163の測定軸に沿ったピクセルアレイ上に分布するスペクトル強度プロファイルを受け取り、対応するプロファイルデータを提供するように動作する。手短に言えば、例えばピーク位置座標のような、プロファイルデータのサブピクセル分解能距離指示座標(sub pixel-resolution distance indicating coordinate)が、信号演算器166により計算される。そして、波長ピークに対応する距離指示座標(DIC)により、距離の校正用ルックアップテーブルを介して表面までの測定距離が決まる。校正用ルックアップテーブルは記憶部168に記憶されている。距離指示座標(DIC)は、例えば、プロファイルデータのピーク領域に含まれるプロファイルデータの重心を決定する方法などの様々な方法で決定されるようになっている。また、ここで述べている回転システムにおいては、(例えば、記憶部168又は他の記憶部に保存されている)校正データを利用して、光学ペン120の回転角方向を少なくとも部分的にベースとして用いた測定距離の表示又は調整を実行することもできる。
【0025】
一般的に、光学ペン120には、Z軸方向における最小の測距距離ZMINと最大の測距距離ZMAXによって規定された測定範囲Rがある。いくつかの周知光学ペンの例における測定範囲Rは、公称スタンドオフ(nominal standoff)またはペン端からの動作可能距離のおよそ1/10であること(例えば、数十ミクロンから数ミリメートルまでの範囲)が好ましい。図1は、反射素子155を使用する場合に、その反射素子155の配置(例えば、x軸)によって規定される測定軸MA’に沿って測定範囲R’が定まることを示す。この場合、測定範囲R’は、X軸方向における最小の測距距離XMINと最大の測距距離XMAXによって規定される。
【0026】
幾つかの実施形態において、電装部160は、光学ペン120から分離して設けられている。カスタム設計されたブラケットを使用して、CMMに、図1の光学ペン120に類似の光学ペンを取り付けること、また、光ファイバーケーブル112に類似の光ファイバーを、CMM装置の外部の仮設経路に沿って、電装部160に類似の遠隔の電装部に向けて配線することが知られている。
【0027】
図2,3A,3Bに基づいて説明すると、光源・波長検出器の構成部分160A(例えば、波長検出器162と光源164が含まれる)のグループを幾つかの実施形態のCRS光学プローブアセンブリの中に含めるとよい。測定信号処理制御回路160B中のある構成成分のグループ(例えば、信号演算器166と記憶部168が含まれる)を、必要であれば(例えば、軽量プローブとコンパクトサイズを維持するため)、CRS光学プローブアセンブリの外部に離設してもよい。
【0028】
図2は、三次元座標測定システム200と、自動的に接続・交換可能なCRS光学プローブ装置215のブロック図である。すなわち、CRS光学プローブ装置215を他のタイプのCMMプローブへ自動交換することができる。ここでは、CRS光学プローブ装置を単にCRS光学プローブと呼ぶ。別途明細書中に言及のない場合、複数の図面において同様の接尾文字を持っている符号(例えば、符号1XXと同じ接尾文字XXを持っている符号2XX)は、基本的に類似の構成とする。そして、類似する構成1XXの記載に基づいて構成2XXへ変更することは、一般に、周知技術から容易に類推される。しかし、そのような類推にもかかわらず、異なる実施形態においては様々な構成の異なった態様が当然存在するのは明らかであるから、本発明の構成が周知技術の1つに限定して解釈されるべきではない。
【0029】
三次元座標測定システム200は、三次元座標測定機(CMM)のコントローラ202、コンピュータおよびユーザインタフェース206、プローブ信号処理制御回路207、および、三次元座標測定機(CMM)210を備えている。CMMコントローラ202は、プローブヘッド制御装置203、位置ラッチ204、および、モーション制御装置205を含んでいる。CRS光学プローブ215は、自動交換ジョイント要素236を含み、自動交換ジョイント接続機構230(自動ジョイント接続とも呼ぶ。)の係合ジョイント要素を介して、CMM210に接続される。
【0030】
CMM210は、データ転送回線201(例えばバス)を通して、他の構成部分のすべてと信号授受を行う。データ転送回線201は、コネクタ208(例えば、「マイクロD」型コネクタ)によって、CRS光学プローブ215への入力信号および出力信号を流すプローブヘッドケーブル211につながっている。CRS光学プローブ215は、例えば、図1で測定信号処理制御回路160Bについて説明したように、測定信号処理制御回路260Bを含んだプローブ信号処理制御回路207に制御され、この制御回路207との間でデータ交換を行っているが、CMM210の制御はCMMコントローラ202が行っている。ユーザは、コンピュータ及びユーザインタフェース206を通して、全ての構成部分を制御できる。
【0031】
上述の図2に基づいて説明すると、CRS光学プローブ215はプローブ電装部275を含み、このプローブ電装部275は、光源・波長検出器の構成部分260A(例えば、図1で構成部分160Aについて説明したように、光源および波長検出器)、および、被測定面290に測定光296を照射する光学ペン220を含んでいる。特定の一態様としては、被測定面290をネジ穴の内面とした。そのような表面を周知のCMMプローブ(例えば、接触プローブ)を使って完全に、かつ信頼性よく測定することは、困難であるか、または不可能である。本発明のCRS光学プローブによれば、測定の完全性、正確性および汎用性が向上されたことにより、そのような表面をも走査して測定できる。
【0032】
図5に基づいて説明すると、一実施形態として、光学ペン220、及び/又は、交換可能光学機構280に関するデータ(例えば、識別データ、校正データ、補償データなど)は、CRS光学プローブ215の外部(例えば、プローブ信号処理制御回路207)に格納することが好ましい。代替の態様として、そのようなデータの一部をCRS光学プローブ215中に格納、または、他のコードデータとして格納してもよい。
【0033】
図3A、3Bは、CMM210とCRS光学プローブ215’の構成図であり、図2のCRS光学プローブ215と同様である。図3Aは正面図であり、図3BはCMM210とCRS光学プローブ215を異なった角度から見た図である。図3Aと3Bで示されるように、CMM210はプローブヘッド213を含む。このプローブヘッド213は、プローブヘッドケーブル211を通してプローブ信号を送受信する。プローブヘッド213はCMMの主軸217に固定されている。プローブ自動ジョイント接続機構230を利用して、プローブ215’がプローブヘッド213に接続される。
【0034】
プローブヘッド213は、一実施形態においては、水平面内で360度回転するとともに、U字型ジョイントを含んでいる。プローブ自動ジョイント接続機構230は、プローブヘッド213にCRS光学プローブ215’を機械的に強固に締め付けて固定する電気機械型の接続機構になっており、プローブを外して他のプローブを取り付けることができるように構成されている。一実施形態では、プローブ自動ジョイント接続機構230は、第1及び第2自動交換ジョイント要素234,236を有して構成され、この第1自動交換ジョイント要素234がプローブヘッド213に取り付けられ、第2自動交換ジョイント要素236がCRS光学プローブ215’に取り付けられている。一実施形態では、プローブ自動ジョイント接続機構230には、対になる電気的接点または電気的接続部235が形成されており、プローブを取り付ければ、自動的に電気的接点が繋がり電気的接続がなされるように構成されている。
【0035】
CRS光学プローブ215’は、自動ジョイント接続機構230を通じて電源と制御信号を受ける。自動ジョイント接続機構230を通じてCRS光学プローブ215’に送られた信号は、電気的接続部235を通過する。図3A、3Bに示すように、CRS光学プローブ215’は、プローブアセンブリ216と、このプローブアセンブリ216に取り付けられた自動交換ジョイント要素236とを含む。自動交換ジョイント要素236は、プローブ自動ジョイント接続機構230を利用してプローブをCMMに自動接続するためのものである。また、プローブ215’に防護カバーまたはプローブ筐体269(図には模式的に示した。)も含めた方がよい。プローブアセンブリ216は、光学ペン220と、光源264及び波長検出器262を有するプローブ電装部275とを含む。これらは、プローブアセンブリ216のもつ様々な構造部材によって全て支持されている。
【0036】
図3Aと3Bに示す実施形態では、自動交換ジョイント要素236に固定されたベース部材218から構造部材が延設されている。光学ペン220(または、光学ペン120に類似する光学機構)は、光ファイバーコネクタ209と、アパーチャー295及び色分散光学部材250を有する共焦点光学経路とを含んで構成され、測定光296を出力する(例えば、半径距離検出ビームとして機能してもよい)。複数の実施形態では、光学ペン220は、色分散光学部材250の交換を可能にするための、繰返し高速交換可能な交換マウント285を有すると良い。電動の光源264(例えば、広帯域スペクトルLED光源)へは、自動交換ジョイント要素を通じた電力を供給し、プローブ電装部275のプローブ電源・信号制御回路部276に含まれている周知回路(例えば、市販のクロマティック測距システムに使用の回路など)に連動させるとよい。複数の実施形態では、プローブ電装部275はシリアル変換器277Sを含み、このシリアル変換器277Sは、様々なデータ信号をシリアル化(直列化)して、自動ジョイント接続機構230における比較的少ない本数のワイヤを通じて、パラレル変換器(例えば、プローブ信号処理制御回路207に含める。)に伝達する。
【0037】
図3Aで示された実施形態では、シリアル変換器277Sは、プローブ電源・信号制御回路部276に含まれている。しかし、他の形態で、送信すべきシリアル化データの多くがCRS波長検出器262にて生成される測定スペクトルプロファイルデータである場合は、シリアル変換器277SをCRS波長検出器262に含めた方がよい。一般的には、シリアル変換器277Sは、プローブ電装部275の望ましい位置、すなわち、十分に低いノイズレベルとクロストーク特性を提供可能な位置に配置された方がよい。
【0038】
光源264は、CRS光学プローブアセンブリ216で必要な光を発生させる。その光は、光ファイバーケーブル212を通して光学ペン220に送られる波長域の入力スペクトルプロファイルを持っている。CRS波長検出器262には、分光器アレンジメント262’および検出器アレイ263に連動する周知回路(例えば、市販のクロマティック測距システムに使用される回路など)を含めてもよい。なお、検出器アレイ263は、CRS波長検出器262の検出軸に沿って分布された複数画素から構成され、これら複数画素へは、被測定面を反射して共焦点光学経路に戻った反射光のそれぞれの波長光が照射されて、CRS波長検出器262が出力スペクトルプロファイルデータを提供できるようになっている。
【0039】
以上のように、測定光を発生し、かつ、ワークからの反射光を処理する機能をCRS光学プローブアセンブリ216自体が発揮できるようにした本発明の構成によって、CRS光学プローブアセンブリ216の自己収容動作および自動交換動作が可能になった。そのようなCRS光学プローブ装置は、CRS光学プローブアセンブリから自動ジョイントコネクタを通って外部素子までの光ファイバー接続も、自動ジョイントコネクタに平行して設けられるようなどんな他の仮設経路に沿った光ファイバー接続をも必要とせず、又は、含んでいない。言い換えると、そのようなCRS光学プローブアセンブリは、このCRS光学プローブアセンブリから外部に延びる光ファイバーに接続されていないし、又は、そのような光ファイバーを含んでいない。
【0040】
様々な実施形態では、プローブヘッド213から見てCRS光学プローブアセンブリ216の遠方端部に光学ペン220を取り付けることによって、CRS光学プローブアセンブリ216が構成される。図3Aと3Bの実施形態では、CRS光学プローブ215’は、ベース部材218と、このベース部材218に連結された波長検出器取付部材219Aと、前記ベース部材218に結合された光学ペン取付部材219Bとを含む。光学ペン取付部材219Bは、波長検出器262を保持しないで、光学ペン220を保持している。これにより、光学ペン220から撓みや振動に関連する熱と質量を隔離することができる。複数の実施形態では、取付部材219A,219Bの一方又は両方が、ベース部材218からCRS光学プローブアセンブリ216の遠方端部に向けて延びる中空管(例えば、炭素繊維管)を含んでいるとよい。
【0041】
一実施形態では、光学ペン220の質量中心は、CRS光学プローブ215’の残りの質量中心CMPAとプローブ自動ジョイント接続機構230の中心軸CAJとによって定義された1本の軸上又はその付近に配置されている。その構成を利用してCRS光学プローブ215’を移動させれば、プローブヘッド213の円滑動作(例えば、不要な追加トルク、振動、たわみなどの回避)が可能になる。また、本発明の一態様として、光学ペン220の中心軸CAOP(例えば、測定用の基準軸)が自動交換ジョイント接続機構230の中心軸CAJと同軸になるように、光学ペン220がプローブ自動ジョイント接続機構230に相対して取り付けられている。また、そのような構成において、CMMがその軸周りにプローブ自動ジョイント接続機構230を回転させると、X-Y平面内の測定基準軸が横移動することなく、光学ペン220をその軸周りに回転させることができる。そのような構成であれば、例えば、機械的安定性の向上、CMMによる位置決めに対する光学ペン220の測定位置計算の簡素化などといった利点をもたらす。
【0042】
図4A,4Bは、上述の図3A,3Bの光学ペン220の構成を具体的に示した図であり、これを用いて代表的な交換マウント285を含んだ実施形態を説明する。図4Aと4Bで示された実施形態では、光学ペン220はベース部材282と交換可能光学機構280を含む。交換可能光学機構280は、前板286、中空管231および色分散光学部材250を含む。光学ペンのベース部材282は、交換マウント285の第1係合片側部材285Aになる面を含んだベース筐体282Aを備えている。また、この表面に対応して、前板286は、交換マウント285の第2係合片側部材285Bになる面を含んでいる。
一実施形態として、第1及び第2係合片側部材285A,285Bの一方又は両方に取り付けた永久磁石285Cによって形成された保持力アレンジメントで、第2係合片側部材285Bが、第1係合片側部材285Aに対して強制的に取り付けられる。より一般的には、保持力アレンジメントは、バネで付勢された機械的ツメ部などの公知機構を用いればよい。そのような構成によれば、第2係合片側部材285Bを、プログラム制御(例えば、コンピュータ及びユーザインタフェース206による制御)によって、第1係合片側部材285Aと自動的に接続したり、第1係合片側部材285Aから自動的に切り離すことができる。
【0043】
例えば、一実施形態では、光学ペン220にプログラム制御で誘導されるカラー232などを設けるとよい。これにより、CMMの移動可能範囲内のプローブ・ラック上に設けられた係合フォークの腕に光学ペン220を挿入できる。次に、CMMはCRS光学プローブ215’を移動して、係合フォークの腕がカラー232を引っ掛けて、プローブ・ラックに交換可能光学機構280を引っ掛けた状態にして、交換マウント285の2つの係合片側部材285A,285Bを分離できる。また、逆の動作を行なえば、交換可能光学機構280を再びベース部材282に取り付けることもできる。さらに、そのような構成によれば、ワークとの側部衝突の場合には、交換可能光学機構280がベース部材282から分離するから、交換可能光学機構280の破損を防ぐことができる。
【0044】
一実施形態では、交換マウント285は、第1係合片側部材285Aに対して第1三角形パターン(例えば、正三角形)で固定された3つの球体又はボール285Dを含んでいるとよい。また、第2係合片側部材285Bに対して同じ係合パターンで形成された3方向の放射状V溝285Eを含んでいるとよい。交換マウント285をこのように構成すれば、交換可能光学機構280からの横向きの測定光296について、その測定光の向きが軸回りに120度間隔の3つの方向の中から選択された向きになるように、交換可能光学機構280を取り付けることができる。上記の実施形態は代表的な構成ではあるが、本発明がこれに制限されるわけではない。他にも様々な周知の交換マウントの構成を採用してもよく、適切な取付・取外の反復特性を具備する交換マウントを提供できるだろう。
【0045】
交換可能光学機構280は、色分散光学部材250(例えば、図1の色分散光学部材150に類似するもの)を含んでいる。一実施形態では、ベース部材282は、ファイバーコネクタ261を通して、LED光源264および分光器アレンジメント262’に接続される光ファイバー212の端部を含んでいる。通常は、共焦点アパーチャー295を囲んだ状態で配置された交換マウント285の第1係合片側部材285Aに相対する位置に固定された共焦点アパーチャー295付近に、光ファイバーの端部が配置されている。複数の実施形態では、光ファイバーの端部によって共焦点アパーチャー295が形成される。複数の実施形態では、共焦点アパーチャー295として、(例えば、光ファイバーを支えるホルダーかコネクタ上で)光ファイバー端部に近接した位置に接着された薄いアパーチャー、または、光ファイバー端部に隣接した薄いアパーチャーを採用できる。図4Aで示された実施形態では、ベース部材282は、光ファイバー保持部材283A(例えば、この実施形態のコネクタ209につながった光ファイバーコネクタなど)および光ファイバー端部位置決めアレンジメント283Bを有する光ファイバー端部位置決め機構283を含む。そして、これらは、交換マウント285の第1係合片側部材285Aに近接した位置にあるベース部材282に固定(例えば、接着)されている。
【0046】
本実施形態では、光ファイバー端部位置決め機構283は、光ファイバー(例えば、コネクタ209を通る光ファイバー)を保持する光ファイバー保持部材を有する。この光ファイバー保持部材は、交換マウント285の第1係合片側部材285Aに相対する位置で光ファイバー端部と共焦点アパーチャー295とを固定する。しかしながら、他の実施形態では、共焦点アパーチャー295がベース部材282に固定され、これとは別々に、必要に応じた適当な光ファイバー端部位置決め機構283によって、光ファイバーの端部が共焦点アパーチャー295に近接した位置に固定されるようにしてもよい。
【0047】
交換可能光学機構280は、共焦点アパーチャー295から測定光を受け、共焦点アパーチャー295へワークを反射した測定光を返す。そして、測定軸に沿ったそれぞれの測定距離での測定光の軸方向色分散光を供給する。また、一実施形態では、色分散光学部材250が、光学ペン220の軸に直交する方向(例えば、中空管231の中心軸を横切る方向など)に測定光を照射するための反射素子294を含む。
【0048】
図5は、図2に示したコンピュータ及びユーザインタフェース206とプローブ信号処理制御回路207のブロック図である。図5に示すように、プローブ信号処理制御回路207は、パラレル変換器277D、位置ラッチ515、CRS光学プローブID520および光学ペンID525を含む。プローブ信号処理制御回路207の各構成は、データ転送線201で互いに接続し、またコンピュータ及びユーザインタフェース206とも接続している。
【0049】
パラレル変換器277Dは、図3Aのシリアル変換器277Sに連動して様々なデータ信号をシリアル化して、比較的わずかな数のワイヤからなる自動ジョイント接続機構230を通じてそれを伝達する。シリアル変換器277Sとパラレル変換器277Dは、複数の実施形態において使用する低電圧差動信号(LVDS)の利用に関連する。簡潔に言うと、シリアル変換器とパラレル変換器との同期を確実に実行するために、同期信号がシリアル変換器とパラレル変換器の間に提供されている。関連のデータ信号が信号線に供給された後、同期信号をオンした位置において、パラレル変換器の動作が完了するまで、対応する信号線にクロック信号(例えば、前のクロック信号と正反対のクロック信号など)が送られる。
【0050】
位置ラッチ515は、XYZラッチ信号に関連する。簡潔に言うと、XYZラッチ信号は、CRS光学プローブの測定位置決め動作をCMMコントローラ202の測定位置決め動作に同期させるために供給される。一実施形態では、位置ラッチ515は、CMM210の座標位置が適切に同期するのを確実にするためにCMMコントローラ202の位置ラッチ204と交信する。言い換えれば、派生的な測定の全てについてその測定精度を確実に得るために、位置ラッチ515と位置ラッチ204を結合する。これにより、CMM機械座標(特定の測定中に、CRS光学プローブの位置を反映する)が、CRS光学プローブ測定(CRS光学プローブ位置に関連する測定)に適切に結合されるようになる。
【0051】
CRS光学プローブID520は、CRS光学プローブ215’を識別するために利用される(例えば、CRS光学プローブ215’に含まれていた識別素子から得られた識別信号を読み取って処理することによって識別する)。また、光学ペンID525は、交換可能光学機構280を識別するために利用される(例えば、交換可能光学機構280に含まれていた識別素子から得られた識別信号を読み取って処理することによって識別する)。CRS光学プローブ215’と交換可能光学機構280の適切な識別によって、CRS光学プローブ215’と交換可能光学機構280からの正確な動作およびその結果である正確な測定値を確認するために、適切な機器構成と校正データを利用することが可能になった。
【0052】
図6は、一実施形態に係る光学ペン220Aの構造図である。光学ペン220Aは、非回転又は固定部605と、交換可能光学機構280Aおよび測定光296の向きを回転させるための回転機構610と、位置情報の測定およびレポート用のエンコーダ630とを含む。位置情報とは、例えば、光学ペンについての回転角やZ軸位置情報など、また、校正部材の位置情報等であり、例えば、図7Aから図13E図16図20から図27Cを用いて詳述する。図6に示すように、ベース部材282Aは、非回転部605、回転機構610およびエンコーダ630の構成機器を含む。
【0053】
図6には、いくつかの代表的な「限定された(bounding)」コンフォーカル光線(または、光線セグメント)が示されている。特に、光線R1,R2は、転送レンズ251とアパーチャー295の間に示され、光線R3,R4は、転送レンズ251と色分散光学部材250の間に示されている。複数の実施形態では、転送レンズ251として、コリメートレンズ又はコリメートレンズに類似するレンズが採用される。そして、光線R3,R4が、ほぼ平行光か、または、ほぼ平行化された光となることで、ある実施形態では以下に詳述するような利益が生じる。光線R5,R6は、色分散光学部材250の中に示されており、測定光296として光線R7,R8が生じる。ここで、共焦点アパーチャーの動作位置297を、光学ペン220のレンズ群の最良の焦点位置に近接した位置またはその焦点位置に合わせるのがよい。特に、この実施形態では、転送レンズ251の焦点位置に近接した位置またはその焦点位置に合わせるのがよい。転送レンズ251は、ベース部材282Aの拡張部282AXの範囲内に配置されるとよい。
【0054】
図6に示すように回転機構610は回転部612を含む。この実施形態では特に、回転部612が、交換マウント285の第1の片側部材になる面を含んでいる。第1の片側部材は、図4A,4Bで説明したのと同様の構成で、前板286に配置された交換マウント285の第2の片側部材へ連結できるようになっている。また、回転機構610は、回転駆動用のモーター616及び歯車618と同様に、ベアリング614を含んでいて、回転部612を回転させることができる。代替の構成として、モーター及び回転アクチュエータ(例えば、モータースリーブ機構など)を利用してもよい。転送レンズ251がベース部材282Aに配置されているとき、回転による誤差/影響は小さくなる。これは、回転ジョイントを通る平行光R3,R4で示す大径平行光の伝達が、アライメントの変化に対してそれほど敏感でないからである。
【0055】
エンコーダ630は、光学ペン220Aの機器構成の位置情報(例えば、回転位置情報、Z軸位置情報)を検出し、その位置情報を例えば1以上のケーブル(例えば図2のプローブヘッドケーブル211)経由でレポートする。
【0056】
一実施形態では、交換可能光学機構280Aが、ID要素233(例えば、前板286に搭載される)を含むとよい。対応する読取器233Rは、光学ペンのベース部材282Aの中に配置される。ID要素233は、その交換可能光学機構280を表す特定の識別情報で符号化されるとよい。一実施形態のID要素233は、無線周波数識別装置(RFID)を含むとよく、受動型RFIDがよい。読取器233R(例えばRFID読取器)は、ID要素233からのデータを読み取れるように十分に接近した位置に設けられる。もし、読取器233RがID要素233に隣接して配置されていなければ、ベース部材282Aに孔を設けるとよい。これによって、ベース部材の材料が、ID要素233と読取器233R間の信号交換(例えば、無線信号、光学信号、光学画像など)を遮らないようにできる。ID要素233は、識別マーク(例えば単純なバーコード)又は色を備えるとよく、読取器233Rは、その識別マーク又は色に対応した信号を提供する光検出器を備えるとよい。また、ID要素233は、特定周波数の受動型共振回路を備えるとよく、読取器233Rは、その特定周波数に応答する信号を提供する励磁器/検出器を備えるとよい。読取器233Rは、その応答信号に基づく識別情報を、例えば、1以上のケーブルを通して(図2のプローブヘッドケーブル211参照)レポートする。
【0057】
図示を容易にするため、回転機構610およびエンコーダ630を機能ブロックの形式で示す。回転機構610およびコード化要素630の配置は、代表例に過ぎず、限定されない。この開示内容から自明である軽微な適応の範囲で、様々な構成を、交換可能光学機構の回転・伸縮用である類似の機器構成や、位置情報のレポート用である類似の機器構成に変更してもよい。
【0058】
校正および精度のため、校正データ又は校正情報によって光学ペンを特徴付けるとよい。校正データ又は校正情報は、半径距離データを含んでいるか、又は、半径距離データに基づく情報である。また、半径距離データとは、例えば以下の値に対応付けられている。
・交換可能光学機構の複数の回転位置、
・光学ペン220A、交換可能光学機構280、色分散光学部材250及び交換マウント285等に関する様々な焦点距離および測定距離。そのような校正データ又は校正情報は、様々なミスアライメントを補償する。ここでのミスアライメントを、回転位置、Z軸位置およびCRS測定距離の関数、並びに、その他の誤差(回転エンコーダ誤差、Zステージ誤差など)とすることができる。
【0059】
図7A図7Cは、図6の光学ペン220Aの代表的な校正コンポーネント740を示す図であり、その校正コンポーネント740を使用すれば、光学ペン220Aの校正に用いる半径距離およびその他のデータを取得することができる。図7Aは、校正コンポーネントを含む光学ペン構成の概要を示す概念図であり、図7B図7Cは、実施形態の詳細な説明図である。図7Aの光学ペン220Aは、非回転又は固定部605及び回転部610を有する。校正コンポーネント740は、移動して非回転部605に取り付けられた校正ゲージ拡張子744と、校正ゲージ又は校正部材746とを含む。図示のように校正ゲージ746は、校正ゲージ拡張子744によって、光学ペン220Aの回転部610に対して所定の位置に保持された円筒校正部材である。回転機構610が光学ペン220Aの中心軸(測定値を取得する際の基準軸)の周りに回転すると、(例えば、図7Cに示される測定光296を用いた)校正部材の測定が実行され、光学ペン220Aの校正用の半径距離測定値が得られる。
【0060】
校正ゲージ拡張子744による保持力が様々に配置されることで、光学ペン220Aの回転クロマティックレンジセンサ構造に対して校正部材746を所定の位置に保持することができる。例えば、交換マウント285についても上記と同様のメカニズムを使用できる。このような構成により、プログラム制御下(例えば、コンピュータ及びユーザインタフェース206での制御下)、校正拡張子744に対する校正部材746の接続・位置決め・校正拡張子744からの分離が自動的に行なわれる。
【0061】
図7B図7Cに示すように、校正コンポーネント740は拡張アクチュエータ742を含む。拡張アクチュエータ742は、軸受、モーター、歯車を含んでいるとよい(説明の簡略化のために図示していないが、図6の回転機構610の軸受614、モーター616及び歯車618と類似の機器構成である)。拡張アクチュエータ742によって、校正ゲージ拡張子744を、収容位置(図7B)と拡張された校正位置(図7A、7C)間で位置決めすることが容易になる。図7Bに、校正ゲージ拡張子744が収容位置にあって校正部材746’と接続していない状態の構造例を示す。校正ゲージ又は校正部材746’を使用する校正動作の際、校正ゲージ拡張子744が校正位置まで移動して伸びる。或いは、校正ゲージ拡張子744は、収容位置に収容されて、光学ペン220Aを使用する他の測定(例えば、図2に示すネジ穴の内面の測定)と干渉しないようにする。上述した通り、ある実施形態では、校正ゲージ拡張子744が校正位置まで移動して伸びた際、校正ゲージ拡張子744は図7Cのように校正部材746’と接続する。
【0062】
複数の実施形態では、校正部材746’が光学ペンに保持されるように、光学ペン220Aと校正部材746’が構成されている。例えば、校正部材746’は、退避期間中も、その退避位置で校正ゲージ拡張子に保持されてもよい。これによって、退避期間中の通常の測定動作においては、校正ゲージ拡張子744と校正部材746’が半径距離検出ビーム(すなわち、測定光296)を遮ったり、干渉したりしない。校正期間中は、校正部材746’は移動して、その校正位置において校正ゲージ拡張子に保持される。
【0063】
校正ゲージ拡張子744は、拡張アクチュエータ742によって、その伸縮方向における複数の校正位置のうちの1箇所に位置決めされてもよい。それによって、異なるCRS測定距離又は焦点長さの位置での校正半径距離データの収集が容易になる。そのような状況で、エンコーダは、校正部材の位置に対する光学ペン220AのZ軸位置情報をレポートする。上述した交換可能光学機構280Aと同様の方法で、校正部材746’にID要素を含めて、校正ゲージ拡張子744に、ID要素に対応した読取器を含めてもよい。
【0064】
拡張アクチュエータ742の代替の構成として、別の構成(例えば、モータースリーブ機構など)を利用してもよい。また、校正ゲージ拡張子744は、光学ペン220Aの回転CRS構造に対して、校正ゲージ又は校正部材746’を制約された関係で配置する。
【0065】
図7Cに示すように、校正ゲージ又は校正部材746’は、内周面748及び外周面750を有する円筒リングゲージを備える。その他の校正部材を使用してもよく、校正部材には様々な材料(例えば金属、ガラスなど)を使用することができる。1以上の内周面748及び外周面750は、プリントされた模様又はパターン面(例えば、図9A図9D参考)又はこれらの様々な組合せを含んでいてもよい。これによって、測定光296によるスキャンの際、光学ペン220Aの校正情報を生成するのに使用できる校正データが提供される。
【0066】
図8A図8Cに示す概念図は、光学ペンを使用した測定時の、測定誤差をもたらす幾つかのミスアライメントの例、及び、そのような誤差の補償のために考慮に入れられる可能性があるパラメータの例を誇張して示す。図8Aのように、理想のケースでは、光学ペン(図6の光学ペン220A参照)が基準中心軸820を持つ。理想的円筒830の表面を測定する場合、基準中心軸820は、円筒830の中心軸と整合(アライメント)する。理想的円筒830表面の法線に対する測定光(図7Cの測定光296参照)の入射角は、理想的には一定である。理想的な測定値は、理想的中心Cから円筒830の理想的トレース870に沿った理想点までの距離を表す。理想的トレース870に沿った理想点の一例を図8A図8Bに示す。これには、回転角ω=0での理想点Pideal850が含まれる。
【0067】
しかし、光学ペン又は他のコンポーネントのミスアライメントは、測定誤差を引き起こす(例えば、交換マウント285のミスアライメント等、様々な要因が原因になる)。例えば、光学ペンの光軸が、基準中心軸820からxyオフセット810していて、光学ペン長さLに沿った光学ペンの回転軸860が、光学ペン220Aの基準中心軸820に対してミスアライメントしている場合がある。加えて、反射素子294(図2図7B参照)が、光学ペンの光軸からミスアライメントしている場合もある。その結果、図8Bに詳しく示すように、測定点について測定した測定値が、非理想的中心S’の周りを旋回する位置Sから測定した値になってしまう。図8Bに示すように、これらのことが、他に可能性のあるミスアライメントと共に、測定点が非理想的トレース又は誤差を含んだトレース890上になってしまうことをもたらす。ミスアライメント誤差に関係する測定点の一例を図8A,8Bに示す。これには、回転角ω=0での測定点840が含まれる。なお、図示の例には、幾何学的に誇張された部分が含まれている(例えば、潜在的なミスアライメントや誤差を上手く説明するために、Z軸の縮尺が小さくなっている等)。
【0068】
図8Bに、高調波誤差を引き起こすミスアライメントの例を示す。ここで、基準中心軸m(すなわちマウント軸)は図8Aの基準中心軸820に対応している。回転軸rは図8Aの回転軸860に対応している。光学軸oは、ペンの光学長さLに沿ったペンの光軸と同一直線上にある。軸を指定するm,r,oは、様々なミスアライメントパラメータの下付き文字に使用され、そのうちのいくつかを図8Bに示す。マウント軸ミスアライメント角θmは、回転軸rに対するマウント軸mのミスアライメント角を表し、回転軸を含む平面であって、マウント軸ミスアライメント回転配向角φm(図示しない)だけ配向している平面内に生じる。回転軸ミスアライメント角θrは、回転軸rに対する光学軸oのミスアライメント角を表し、回転軸を含む平面であって、回転ミスアライメント配向角φr(図示しない)だけ配向している平面内に生じる。ペンを発した測定光は、ポインティング誤差も有する。ポインティング誤差は、(鉛直方向の)出力法線仰角誤差δθoによって示され、また、(水平方向の)出力法線回転軸誤差δφoの出力によって示される。
【0069】
図8Cは、図8Bと同様に誇張された幾何形状を用いており、光学ペンの様々なミスアライメントが引き起こす一次高調波誤差の例を示す。表に示すように、この例では、光学ペンのX軸オフセットδxが50μmであり、Y軸オフセットδyが-40μmであり、これらは図8Aのxyオフセット810のx成分およびy成分を構成する。表に示す他のパラメータは、上記の図8Bの説明で定義されたもので、一例として(誇張された)値を持っている。例えば、
マウント軸ミスアライメント角θmが6度であり、
マウント軸ミスアライメント回転配向角φmが240μmであり、
マウント軸クロック誤差δφm(図示しない)が5度であり、
理想的光学ペン長さLが2000μm(図8Bでは誤差を誇張するために短縮されている)であり、
回転軸ミスアライメント角θrが8度であり、
回転軸ミスアライメント配向角φrが40度であり、
出力法線回転軸誤差δφoが10度であり、
出力法線仰角誤差δθoが5度であり、
理想の校正測定距離が1000μmである。ある程度、回転関連誤差(記号φ)は、回転オフセット誤差と高調波誤差の位相に結合される。軸ミスアライメントと仰角誤差(記号θ)は、半径オフセット、Zオフセット及び高調波振幅誤差に結合される。図示のように、半径誤差は主に、約-180の半径オフセット誤差を振幅中心として振動する一次高調波である。Z誤差は主に、約180μmのオフセット定数である一定のZ誤差オフセットを振幅中心として振動する一次高調波誤差である。回転誤差は主に、約-50μmの回転オフセット定数を振幅中心として振動する一次高調波である。全3つのカーブは、僅かであるがより高い次数の高調波成分を持つ。この例では、潜在的なミスアライメントおよびそれがもたらす誤差を上手く説明するために、様々な点を誇張して示している。ある実施形態での実際のミスアライメントは、0.1~1度のオーダーであり、実際の誤差(xyオフセット以外)は、1桁のマイクロメートル以下のオーダーである。
【0070】
他の箇所でも説明されているように、所定の回転角ωと任意のZ位置で校正部材を測定して得た半径距離測定値は、校正データの作成に使用される。校正データは、座標測定機の光学ペンを使ってワークを測定して得られた測定データ(例えば、半径距離データ)を調整することにも同様に使用できる。校正部材を使って生成された半径距離データに追加される校正データは、校正情報の一部として使用でき、又は、校正情報の生成に使用できる。例えば、光学ペンに関するCRS距離を決定するために干渉計を使って得た測定値(例えば、様々な光波周波数での測定距離)、又は、校正部材の測定値を用いることができる。他の例では、校正部材の位置に対する光学ペンのZ軸情報を用いることができる。
他の例で、
複数の円筒校正部材から得た測定値、
複数の球状校正部材から得た測定値、又は、
複数のタイプの校正部材から得た測定値(例えば、円筒校正部材から得た測定値および球状校正部材から得た測定値)のように、
複数の校正部材から得た半径距離測定値を用いてもよい。
【0071】
図9A図9Dは、第一実施形態に係るリングゲージの形状をした校正部材946を示す。図9Aは円筒リングゲージ946の透視図であり、図9Bはその断面図である。円筒リングゲージ946の内周面904は、プリント又は加工されたパターン906のような、互いに既知の位置関係にある複数の既知の特徴部を有する。内周面904は、円筒校正面であり、内周面904のZ方向に沿った中心軸905は、校正測定の際に、CRS光学ペンの回転軸に略平行になるようにアライメントされている(例えば、図8Aの基準中心軸820及び回転軸860参照)。図示の第1の円筒校正面904は、Z軸に沿った中心軸905から既知の第1半径Rcの距離に配置される。
【0072】
図9C図9Dは、パターン例を概念的に示し、内周面904に塗布(プリント)又は形成されたパターンを平面に展開したプリント図又は加工図で示す。プリント又は加工されたパターン906は、第1の角度基準特徴部セット(例えば基準線など)を含んでいてもよい。角度基準特徴部は、第1の円筒校正面の表面又は内部に形成される。すなわち、角度基準特徴部は、第1の円筒校正面の表面又は内部に、半径距離検出ビームによって検出可能に構成され、その中心軸周りに互いに既知の角度又は角度間隔で配置される。パターンの特徴部は、図7A図7Cの光学ペン220Aのように、光学ペンが検出可能に構成される。例えば、プリントパターンであれば、白黒、グレースケール、又は、多色を用いて、加工パターンであれば、深さ又は形状を変える。これらを様々に組み合わせてもよい。
【0073】
図9Cに示すように、パターン906は、規則的又は不規則的な既知の間隔を設けて配置した回転表示部又は縦基準線908を有する。また、パターン906は、規則的又は不規則的な既知の間隔を設けて配置されたZ軸表示部又は傾斜基準線910を有する。
縦線908は、回転位置の校正情報を提供する。傾斜線910は、回転表示部又は縦基準線908との関係で、Z軸位置の校正情報を提供する。これらの線908,910は、一定の厚さで形成してもよいし、様々な厚さで形成してもよい。例えば、図示のように、縦線908の1本を他の縦線とは異なる厚さを持つ基準線にすれば、校正ゲージ946における特定の回転位置を表示できるようになる。校正ゲージ上での複数の特定位置(例えば中間点)を表示するために、複数の基準線を使用してもよい。加工パターンの場合、図9Cのパターン906は、校正部材の内周面904に形成される窪み又は突起の位置を示す加工図を表わしている。他の実施形態での内周面904は平坦である。
【0074】
説明の簡略化のため、図9Cのパターン906の縦線908を白色バーで示し、傾斜線910を黒色バーで示す。プリントパターンの場合、実際には、2種類のバーを同じ色(例えば黒色)にしたり、様々な色にしたり(例えば、バーに関する角度位置を表示)することができる。これらを様々に組み合わせてもよい。上記のように、加工パターンの場合は、異なる幅および深さの窪みを使うことで、校正情報の測定を容易にすることができる。
【0075】
図9Cには、校正測定のトレース(記録線)920の一例も示されている。光学ペン220Aが取得したトレース920の位置情報(例えば、図6のエンコーダ630がトレース920に関する測定値として提供した位置情報)は、トレース920に関する測定結果と一緒に、校正データ又は校正情報として使用されてもよい(例えば、半径距離測定データおよびZ位置測定データ)。若しくは、例えば、測定位置ごとの測定結果と理想結果との違いに基づいて、校正データ又は校正情報を作成するために使用されてもよい。
【0076】
図9Dのパターン906’は、傾斜線910を含まない点を除いて、図9Cのパターン906と同様である。そして、トレース920’が、縦線908のみを使って、校正部材に関する校正情報を測定する。Z軸校正情報が必要であれば、例えば、校正部材を所定の位置に移動させる際に、校正部材946の天面又は底面の端部を検出する等、他の方法での取得が可能である。他のパターンも一緒に使って校正してもよいし、他のパターンに置き換えて校正してもよい(例えば、傾斜した格子、横線と傾斜線、など)。
【0077】
図10は、第二実施形態に係る中心軸1005を有する校正部材1046の断面図である。校正部材1046は、段階的な直径を有するリングゲージであり、第1直径の第1内周面1048と、第1直径よりも小さい第2直径の第2内周面1048’とを有する。第1、第2内周面1048,1048’の一方又は両方に、校正測定用のパターン面(例えば、プリント又は加工パターン面、図9C図9D参照)を設けてもよい。段階的な直径を有するリングゲージ1046の使用は、Z軸に関する校正測定と同時に、複数の測定距離での校正測定を容易にする。校正ゲージ拡張子744(図7A図7C参照)は、測定光296に対する校正ゲージ1046の位置を第1延伸位置にすることができ、これにより、第1内周面1048の校正読取が容易になる。また、校正ゲージ拡張子744は、測定光296に対する校正ゲージ1046の位置を第2延伸位置にすることができ、これにより、第2内周面1048’の校正読取が容易になる。また、他の実施形態では、第1内周面1048から第2内周面1048’への変化の検出を、Z軸校正情報の取得に利用することができる。
【0078】
図11Aは、他の実施形態に係るリングゲージ形状の校正部材1146の透視図である。図11B図11Cは、図11Aと同様のリングゲージ形状の校正部材1146’の一態様を示す概念図である。図11Aの校正部材1146は、複数の円筒内周面1148i~1148nを有し、その直径は1149iから1149nまで段階的に変化する。同様に、図11B図11Cの校正部材1146’は、段階的に変化する直径1149i’~1149n’を有する複数の円筒内周面1148i’~1148n’を持つ。1以上の円筒内周面1148i~1148n又は1148i’~1148n’に、校正測定用のパターン面を設けてもよい(例えば、プリント又は加工パターン面、図9C図9D図13D及び図13E参照)。図11Aでは7段階の内周面が設けられ、図11B図11Cでは10段階の内周面が設けられる。図11Bに、リングゲージ1146’の10段階の内周面を展開した加工図を示す。図11Cは、代表的な測定データの3Dプロット図であり、これらのデータは、回転光学ペンによるZ方向へのスパイラススキャン中に収集された、リングゲージ1146’の円筒内周面1148i’~1148n ’における段階的な内径1149i’~1149n ’のデータである。これにより、第1内周面1048の校正読取が容易になる。校正部材1146,1146’における複数段の表面を利用すれば、Z軸校正データの取得と同時に、距離についての全ての測定範囲に渡る測定値(例えば、半径距離測定値)を容易に取得することができる。取得された測定値は、光学ペンのCRS距離の測定範囲のための校正情報の作成に利用することができる。
【0079】
図11Aに示すようにリングゲージ1146の外周面1150には、窪み1154付きの平坦面1152がある。平坦面1152と窪み1154があることで、校正ゲージ拡張子が、光学ペンの回転CRS構造に対して制約のある関係で、リングゲージ1146を配置する、ことが容易になる(図7A~7Cの光学ペン220Aの校正ゲージ拡張子744参照)。具体的には、(回転角ω=0に設定された)測定プラットフォームに光学ペンが取り付けられた場合、平坦面1152が、光学ペンの回転角ωのための基準面になる。また、窪み1154における直交する面が、Z軸方向のアライメントの基準になる。例えば、平坦面1152及び窪み1154は、これに対応した校正ゲージ拡張子におけるタブ又は突起(図示しない)を受け取れるような大きさ及び形状になっている。これにより、校正ゲージ拡張子は、回転CRS構造に対して制約のある関係でリングゲージ1146を保持することができる。他の位置決め方式(例えば、リングゲージの反対側の平坦面、異なる形状の窪み、校正部材のタブとこれに対応する校正ゲージ拡張子の窪み等、及び、これらの様々な組合せ)を使用してもよい。
【0080】
図12Aは他の実施形態に係る精密ガラス管の形状の校正部材1246を示す透過図であり、図12Bはその断面図である。図12Bによれば、精密ガラス管1246は、円筒内周面1204と円筒外周面1250とを有する。これら内周面1204及び外周面1250の一方又は両方に、校正測定用のパターン面を設けてもよい(例えば、プリント又は加工パターン面、図9C図9D図13D及び図13E参照)。円筒面のパターンは、非パターン部分を含んでいてもよく(例えば、基準線間のギャップ又は窓部)、これにより他の円筒面のパターンの測定が容易になる。例えば、円筒内周面1204のパターンは、ギャップ又は窓部(図13Dの窓部1374参照)を有し、これを通して、円筒面1250のパターンの特徴部の観察、測定又は他の方法による検出が可能になる。
【0081】
内周面1204及び外周面1205は、Z方向に沿った中心軸1205を持つ円筒校正面である。校正測定の際、中心軸1205は、CRS光学ペンの回転軸にできる限り平行になるようにアライメントされている(例えば、図8Aの基準中心軸820と回転軸860参照)。第1の円筒校正面1204は、図示の通り、Z方向の中心軸1205から既知の第1半径Riの距離に設けられている。第2の円筒校正面1250は、図示の通り、Z方向の中心軸1205から既知の第2半径Roの距離に設けられている。
【0082】
幾つかの実施形態の内周面1204は、1種類の校正情報の測定用のパターン(例えば、角度位置情報を測定し易くするパターン)を有する。また、外周面1250は、他の種類の校正情報を測定し易くするパターン(例えば、Z軸に関する位置情報を測定し易くするパターン)を有する。また、幾つかの実施形態では、外周面1250にパターン面を設けて、内周面1204にはパターン面を設けず、透光性又は半透光性の表面にしてもよい。距離測定値(半径方向の距離)を、内周面1204及び外周面1250の検出によって得る(例えば必要に応じて、材料についての既知の又は測定した屈折率を用いて、光学的厚さから物理的厚さへ変換すればよい)。また、角度位置およびZ軸位置の測定値を、外周面1250のパターンの特徴部を検出することによって得る。
【0083】
図12Cは、一実施形態に係る入れ子状の2つの精密ガラス管、すなわち、内管1258と外管1260を備える校正部材1246’を示す。内管1258は、円筒内周面からなる校正面1262と、円筒外周面からなる校正面1264とを有する。外管1260は、円筒内周面からなる校正面1266と、円筒外周面からなる校正面1268とを有する。これらの校正面1262,1264,1266,1268は、Z方向に沿った中心軸1205を持つ。校正測定の際、中心軸1205は、CRS光学ペンの回転軸にできる限り平行になるようにアライメントされている(例えば、図8Aの基準中心軸820と回転軸860参照)。校正面1262は、図示の通り、Z方向の中心軸1205から既知の半径R1iの距離に配置されている。校正面1264,1266は、図示の通り、それぞれZ方向の中心軸1205から概ね既知の半径R2iの距離に配置されている(説明の簡略化のため、2つの校正面1264,1266の半径の差は無視できるものとする)。校正面1268は、図示の通り、Z方向の中心軸1205から既知の半径R2oの位置に配置されている。
【0084】
内管1258の円筒内周面1262、内管1258の円筒外周面1264、外管1260の円筒内周面1266、および、外管1260の円筒外周面1268のうちの1以上の表面に、校正測定用のパターン面を設けてもよい(例えば、プリント又は加工パターン面、図9C図9D図13D及び図13E参照)。
【0085】
円筒面のパターンは、非パターン部分を含んでいてもよく(例えば、基準線間のギャップ又は窓部)、これによって、他の円筒面のパターンを測定し易くなる。例えば、内管1258の円筒内周面1262のパターンは、ギャップ又は窓部を有し、これを通して、外管1260の円筒内周面1266のパターンの特徴部の観察、測定又は他の方法による検出が、図12Bでの説明と同様に、可能になる。
【0086】
幾つかの実施形態では、外管1260の外周面1268にパターン面を設けて、その他の内管1258及び外管1260の表面は、パターン面を設けず、透光性又は半透光性の表面にする。距離測定値(半径方向の距離)は、内管1258の内周面1262、内管1258の外周面1264、外管1260の内周面1266および外管1260の外周面1268のうちの1以上の表面を検出することで取得される。また、回転位置およびZ軸位置の測定値は、外管1260の外周面1268のパターンの特徴部を検出することで取得される。パターン面と非パターン面の様々な組合せ、及び/又は、パターンの種類の様々な組合せを用いてもよい。また、入れ子状の管を追加してもよい。底部キャップ又は他の保持構造を使って、入れ子状の管1258,1260を互いに所定の位置に保持されていてもよい。入れ子状のガラス管の態様によれば、Z軸校正データの取得と同時に、光学ペンのCRS測定距離の全測定範囲に及ぶ校正情報の取得が容易になり、校正部材を再度位置決めしなくても複数のゲージ距離測定が可能になる。図12Bでの説明と同様に、必要に応じて、光学的距離又は光学的厚さを変換して物理的距離を得てもよい。
【0087】
図13A図13Eは、複数の精密金属管1358,1360,1370による入れ子形状の校正部材1346の実施形態を示す。図13A図13Eにおいては、説明の簡略化のため、入れ子状の金属管1358,1360,1370は誇張した大きさであり、また、金属管の間隔は無視できるものとし、又は、誇張されている。3を超える数の入れ子状の金属管を用いることもできる(例えば、7以上の管など)。
【0088】
図13Aは、校正部材1346の縦断面図である。精密金属管1358は内周面1362を有し、精密金属管1360は内周面1366を有し、精密金属管1370は内周面1372を有する。これらの内周面1362,1366,1372は、Z方向に伸びる中心軸1305を有し、この中心軸1305は、校正測定の際、CRS光学ペンの回転軸と略平行になるようにアライメントされている(例えば、図8Aの基準中心軸820及び回転軸860参照)。円筒校正面1362,1366,1372は、Z方向の中心軸1205から(図示の各R1,R2,R3のように)既知の半径の距離に配置されている。
【0089】
図13Bは、Z軸1305に沿って異なる長さL1,L2,L3を有する入れ子状金属管1358,1360,1370の実施形態の横断面図である。金属管1358の内周面1362、金属管1360の内周面1366、金属管1370の内周面1372のうちの1以上の表面の一部に、校正測定用のパターン面を設けてもよい(例えば、プリント又は加工パターン面、図9C及び図9D参照)。図10の段階的な直径を有するリングゲージ1046、及び、図11A図11Cの段階的な直径を有するリングゲージ1146,1146’における説明と同様の方法で校正測定が実行される。
【0090】
校正ゲージ拡張子744(図7A~7C参照)は、測定光296に関する第1延伸位置に校正ゲージ1346を位置決めできて、内周面1362の校正読取値の取得が容易になる。また、校正ゲージ拡張子744は、測定光296に関する第2延伸位置に校正ゲージ1346を位置決めできて、内周面1366の校正読取値の取得が容易になる。さらに、校正ゲージ拡張子744は、測定光296に関する第3延伸位置に校正ゲージ1346を位置決めできて、内周面1372の校正読取値の取得が容易になる。内周面1362,1366,1372のうちの1以上の表面のパターンに基づくZ軸校正情報に追加又は代替して、これらの内周面1362,1366,1372の変化の検出を、Z軸校正情報の取得に利用してもよい。他の構成も一緒に使って校正してもよいし、他の構成に置き換えて校正してもよい(例えば、図13D図13Dに詳述するように、外管の内周面にパターンを含めて、そのパターンを内管の開口部又は窓部を通して観察するように構成する等)。
【0091】
図13C図13Eは、全体として、Z軸1305に沿って同じ長さL1を有する入れ子状金属管1358,1360,1370を備えている校正ゲージ1346の実施形態を示す。これらを長さ方向に僅かにテーパー状にすることで(図示しない)、良好な同心度およびアライメントを備えた校正ゲージを提供し易くなる。後述の図13D図13Eにパターン例を概念的に示すように、(図示の金属管1358,1360のように)内管の側周面には、その管の側壁を貫通する窓部又は切片部形状のパターンが設けられている。測定光296は、これらの窓部又は切片部を通り抜けて、より大きい直径の管壁に達することができる。管1358の内周面1362、管1360の内周面1366および管1370の内周面1372の残りの部分のうちの少なくとも1部分に、上記と同様の方法による校正測定用のパターン面(例えば、プリント又は加工パターン面。図9C及び図9D参照)を設けてもよい。
【0092】
図示の校正部材1346は、管1358,1360,1370を互いに所定位置で保持するキャップ1380を有する。校正ゲージ拡張子744(図7A~7C参照)は、キャップ1380を係止して、回転CRS構造に対して制約のある関係で校正ゲージ1346を配置することができる。
図13D図13Eに示す入れ子状金属管の実施態様によれば、校正部材を各々のゲージ距離R1,R2,R3に再度位置決めすることなく、Z軸校正情報の取得と同時に、光学ペンのCRS距離の測定範囲に亘る校正情報を容易に取得することができる。
【0093】
図13Dは、校正部材1346を概念的に示す。校正部材1346の入れ子状の内管1358は、この内管を貫通する窓部1374の形状のパターンを有する。入れ子状の中央管1360は、この中央管を貫通する窓部1376の形状のパターンを有する。図13Dは、管1358,1360,1370の内周面1362,1366,1372に塗布(プリント)又は形成された1以上のパターンを平面に展開した窓部のプリント図/加工図で示されたパターン例を示す。
【0094】
測定動作において、回転CRS構造(図7A~7C参照)が、管1358の窓部1374の開口を通して、管1360の窓部1376を検出でき、また、外管1370の内周面1372の一部を検出できるように、内管1358の窓部1374と中央管1360の窓部1376の大きさが決められ、内管および中央管1358,1360が配置されている。回転CRS構造(図7A~7C参照)による窓部1374,1376と内周面1362,1366,1372の検出は、校正測定データを提供し、又は、校正データ又は校正情報の作成に利用される。
【0095】
加えて、内周面1362,1366,1372のうちの1以上の表面に、校正測定用にも使えるパターン面を設けてもよい(例えば、プリント又は加工パターン面、図9C及び図9D参照)。図示の管1358の内周面1362は、縦模様の線1308を含み、管1360の内周面1366は、傾斜線1310を含み、管1370の内周面1372は、傾斜線1310を含む。図示の窓部1374,1376は長方形であるが、窓部の一部又は全部に傾斜する辺があってもよい。傾斜する辺によって(例えば、傾斜線1310の代替として、又は、これに追加して利用することで)、Z軸校正測定データを提供することができる。
【0096】
図13Eの実施形態は、入れ子状の内管1358が、窓部の代わりに、当該管1358を貫通する切片部1382の形状のパターンを有すること、及び、入れ子状の中央管1360が、窓部の代わりに、当該管1360を貫通する切片部1384の形状のパターンを有することを除いて、図13Dの実施形態と同様である。図13Eに、管1358,1360,1370の内周面1362,1366,1372に塗布(プリント)又は形成された1以上のパターンを平面に展開した切片部のプリント図/加工図で示されたパターン例を示す。
【0097】
測定動作において、回転CRS構造(図7A~7C参照)が、管1358の切片部1382の開口を通して、管1360の切片部1384を検出でき、また、少なくとも一部がアライメントした状態の切片部1382,1384の開口部を通して、外管1370の内周面1372の一部を検出できるように、内管1358の切片部1382と中央管1360の切片部1384の大きさが決められ、また、内管および中央管1358,1360の互いの位置が決められる。回転CRS構造(図7A~7C参照)による切片部1382,1384及び内周面1362,1366,1372の検出は、校正測定(距離)データを提供することができ、これらのデータを校正データ又は校正情報として利用する又は、校正データ又は校正情報の生成に利用することができる。加えて、上述のように内周面1362,1366,1372のうちの1以上の表面に、校正測定用にも使えるパターン面(例えば、傾斜線1310のようなプリント又は加工パターン面)を設けてもよい。
【0098】
図14に、7つの校正用の段を測定するための円筒校正部材を使って収集し、(紙面をZ軸とする)円筒座標系にプロットした校正試験データのグラフを示す。例えば、段付き校正面として(例えば、図11A~11C、図13B参照)、及び/又は、全体として回転CRS装置のZ軸に直交する方向にアライメントされた複数の校正面(例えば、図12C図13C図13E参照)、等の、7以上の同心の校正面を備えた校正リングゲージを利用してもよい。縦軸が半径距離の測定値を示し、横軸が回転サイクルを単位としてプロットされた光学ペンの回転角を示す。
異なる半径距離条件での測定は、
Z軸方向に校正部材を再度位置決めするステップ(例えば、図11A~11C、図13Bの実施形態のように、階段状の面を有する校正部材を、図7A図7Cの校正ゲージ拡張子744を使って位置調整すること)、
プローブ信号処理制御回路(図2及び図5のプローブ信号処理制御回路207参照)の制御パラメータを可能な限り調整するステップ、
及び/又は、
伸縮部又は台部に組み込まれているZ軸ステージを走査して、スパイラルスキャンを実行するステップ、等を含む。
【0099】
表1に、回転CRS構造における誤差の要因を例示する。上述の図8Cも参照。
【0100】
【表1】
【0101】
ミスアライメント起因の誤差は、1組の数式によっても表現され得る。誤差の補正(例えば、試験測定結果の調整)用の校正データ又は校正情報を生成するため、その誤差を校正部材から収集された測定データと比較する場合がある。例えば、測定データへのカーブフィッティングを使用して、誤差を示す数式の係数を決定できる。
【0102】
一例として測定値の誤差は、次の関係式(1)で表される。
【0103】
【数1】
【0104】
ここで、D,ω(,Z)は、測定入力値のデータ変数(Zは上式にないが、収集可能な第3の測定入力値)である。
ΔR,Δφ,ΔZは、測定誤差である。
2次高調波までのフィッティング係数は、残りの記号であり、すべてを以下に定義する。
は、光学ペンからの補正された距離測定データを表し、非回転で線形になるように校正される。しかし、回転測定の際の測定装置の様々な機構的ミスアライメントの結果、オフセット誤差およびスケーリング誤差を有する場合がある。
ωは、光学ペンの回転エンコーダの補正された回転角出力値を表す。
は、光学ペンの回転エンコーダ・プラットフォームの補正されたZ軸ステージの位置出力値を表す。
【0105】
ΔRは、半径距離測定誤差を表し、次の係数を有する項を含む。
Roは、半径オフセットの定数項を表す。
は、半径線形(スケーリング)項の係数を表す。
R1は、半径1次高調波項の振幅係数を表す。
θR1は、半径1次高調波項の位相係数を表す。
R2は、半径2次高調波項の振幅係数を表す。
θR2は、半径2次高調波項の位相係数を表す。
【0106】
Δφは、回転測定誤差を表し、次の係数を有する項を含む。
φoは、回転オフセットの定数項を表す。
φは、回転線形(スケーリング)項の係数を表す。
Cφは、回転1次高調波項の振幅係数を表す。
θφは、回転1次高調波項の位相係数を表す。
Cφは、回転2次高調波項の振幅係数を表す。
θφは、回転2次高調波項の位相係数を表す。
【0107】
ΔZは、Z軸測定誤差を表し、次の係数を有する項を含む。
Zoは、Z軸オフセットの定数項を表す。
は、Z軸線形(スケーリング)項の係数を表す。
Z1は、Z軸1次高調波項の振幅係数を表す。
θZ1は、Z軸1次高調波項の位相係数を表す。
Z2は、Z軸2次高調波項の振幅係数を表す。
θZ2は、Z軸2次高調波項の位相係数を表す。
幾つかの実施形態では、ここでの二次高調波項は無視できるものとして扱われる。その他の実施形態では、二次および更に高次の高調波項を含んでいてもよい。
【0108】
回転CRS測定装置の十分に補正された測定値は、式(2)の関係の円筒座標系で表される。
【数2】
【0109】
右の項は上記での定義の通り。
RCPS,cは、十分に補正された半径距離の測定値を表す。
φRCPS,cは、十分に補正された回転角の測定値を表す。
RCPS,cは、Z軸距離の測定値を表す。
図14は、図11Bの校正部材の補正されたデータをZ軸に投影した一例であり、円筒座標系にプロットされている。データは、少なくとも半径オフセットが補正されている。
【0110】
データは、式(3)を用いて円筒座標系から直交座標系に変換される。
【数3】
【0111】
変換はデータの可視化に役立つ。図11Cは、図14から変換され、直交座標系にプロットされたデータの一例である。変換を使用すれば、データを規格化することもできる。例えば、データは、直交座標系に変換してもよいし、データをZ軸に揃えるために回転変換と並進変換を実行してもよい。また、その後、円筒座標系に戻す変換を実行してもよい。
【0112】
幾つかのケースでは、小半径の測定に関心が持たれる。そして、1つの校正部材の半径測定値への校正で十分である。これらのケースにおいて、線形係数R,φ,Zはゼロに設定され、フィッティングは、一定のオフセット項Ro,φo,Zoを含めるだけでよく、必要であれば高調波項を一緒に用いる(例えば、半径についての1次、2次高調波項のみが必要になる)。他のケースでは、測定が光学ペンの全ての半径範囲に及んで実行される。そして、分離された複数のリングゲージ、又は、望ましくは、1つの複数段のリングゲージを使って、半径測定の全測定範囲が校正される。必要ならば、異なる半径における潜在的な回転誤差およびZ軸誤差を、回転とZ軸の校正に必要なマーク又は形状を有している校正部材を使って、校正することができる。そのようなケースでは、線形フィッティングが、線形係数R,φ,Zと、一定のオフセット項Ro,φo,Zoの両方を含んでいる。フィッティングは、高調波係数と同様に、これらのパラメータにも同時に適合する。幾つかのケースでは、規則正しい整数回の回転サイクル(これにより、高調波成分が平均化される)に亘って、半径データを平均化することが望ましい(図14の「平均半径距離」のラベル参照)。また、その後、線形項とオフセット項を、複数のゲージ半径Riの平均半径データにだけフィッティングして、線形補正係数R,φ,Zと一定のオフセット補正項Ro,φo,Zoを決定する。
【0113】
一例として、図15は、図14の校正試験データと、トレース可能な容認値の表示とを示すグラフを示す。図15の縦軸は、平均半径距離を表し、横軸は、校正部材のゲージ番号(段付きゲージの場合の段番号)を表す。所定の半径距離又は段において、試験データとトレース可能な容認値の差分は、その距離又は段における半径誤差ΔRに対応している。試験データへの直線フィッティングは、良好な線形性を示すが、複数段の校正部材のトレース可能な容認値からの幾つかのオフセット誤差と勾配誤差が生じている。平均半径距離の測定値の線形フィッティング(点線)と、各段の半径のトレース容認値との関係(すなわち、式(1)からのΔR=Ro+R)から、補正された勾配RとオフセットRoの校正係数を用いてトレース容認値に測定値を校正する方法が導き出される。補正された勾配とオフセットを回転CRS構造の校正に使用することで、全ての測定範囲において半径測定を高精度で実行することができる。望ましくは、異なる半径位置における校正部材のZ軸または回転角の基準パターンを使って、同様の補正をZ軸および回転角にも適用されるとよい。
【0114】
図16は、異なる距離の範囲(図示する4つの異なるゲージ距離の位置)、および、異なるオフセットの範囲(図示するNのオフセット位置)で、より連続した校正距離の測定値を取得することをグラフィカルに示している。異なるゲージ距離とオフセットの位置における測定値を比較することで、例えば、同時にカーブフィッティングを同時に実行することで、機械的回転に起因する誤差(回転角に関して共通モードを持つ誤差)を、CRSペンの校正に起因する誤差(CRS距離の測定値に関して共通モードを持つ誤差)から分離することができる。
【0115】
ゲージの軸からのXYオフセットの使用(例えば、複数の距離ゲージ)、及び、複数のゲージ距離の段の使用によって、CRS測定範囲内のCRS距離毎の測定距離データが得られる。これによって、単にそれぞれのリングゲージ距離又は段の半径に基づく、区分的な線形校正とは対照的に、CRS距離の連続的な校正が容易になる。例えば、校正部材に中心を合わせた光学ペンの理想軸を用いて実行する第1校正は、高調波誤差を取り除くことができる。図16に示すように、1番目のオフセットでは、光学ペンの理想軸が校正部材の中心軸にアライメントされている。このデータは、偏差の少ない特定の半径測定の補正に利用できる。続いて、校正部材の中心軸から光学ペンの理想軸までのオフセットを複数通りにして(例えば、2番目からN番目までのオフセット)、各オフセットでの校正距離測定が実行される。生成データに、連続した半径距離での測定値を含めてもよい。XYオフセットは、リングゲージ又はこれに類似のワーク表面に対するセンサーのアライメントにおける僅かな振動偏差をもたらす。校正部材の表面の種類に応じて、そのような偏差から半径測定誤差が生じる場合もある。そのような実施形態では、表面の種類が既知で、角度偏差が確定的ならば、ルックアップテーブル又はこれに類似の計算を使用して、そのような誤差を補正することができる。
【0116】
光学ペンの軸をリングゲージの軸にアライメントでき、そのアライメントの状態(例えば、同じアライメント)で続けてワーク測定が実行される場合、ここに記載のリングゲージ(すなわち校正部材)が、その光学ペンの校正に特に有利である。それらの構成は、様々なプラットフォーム(それぞれ固定型の自動ジョイントを有するスカラ型組立ロボット、画像処理システム、CMMなど)で実現できる。例えば、それらの構成では、プローブが一定の向き(例えば、垂直)で保持され(すなわち、そのプローブをワーク測定の実行と同様に校正プロセスに使用できる)、校正プロセスのために、リングゲージを対応した一定の向き(例えば、垂直)でそのプラットフォームにマウントすることができる。
【0117】
図17は、CMMの回転CRS構造の一実施形態に係る校正手順1700を示すフロー図である。この手順1700は、例えば、ここに記載の校正部材を備えるCMMについての1以上の実施形態を使って、実行することができる。この手順によって、回転CRS構造のミスアライメント誤差を補正するための校正データ又は校正情報が提供される。回転CRS構造は、回転軸についての半径方向に沿って半径距離検出ビームを照射するように構成され、また、回転軸周りに半径距離検出ビームを回転させるように構成されている。
【0118】
手順1700は、ステップ1702で、プローブ信号処理制御回路(例えば、図2図5のプローブ信号処理制御回路207)がこの手順を呼び出すことによって開始される。この手順1700は、ステップ1702からステップ1710まである。ステップ1710で、校正部材(例えば、図7A図7Cの円筒校正部材746、図9A図9Dの円筒校正部材946、図10の円筒校正部材1046、図11A図11Cの円筒校正部材1146,1146’、図12A図12Bの円筒校正部材1246、図12Cの円筒校正部材1246’、図13A図13Eの円筒校正部材1346参照)が、CMMの回転CRS構造に対して位置決めされる(図6図7A図7C参照)。校正部材は、少なくとも第1の円筒校正面(例えば、図11A図11Cの表面1148i~1148nおよび1148i’~ 1148n’参照)を有し、この第1の円筒校正面は、CMMの回転軸に略平行にアライメントされた中心軸を有し、その中心軸はZ方向に沿っている。
【0119】
第1の円筒校正面は、該第1の円筒校正面の表面又は内部に形成された1以上の基準特徴部を含んでいるとよい。基準特徴部としては、第1の縦基準特徴部セット(例えば、図9Cの縦線908参照)や第1の傾斜基準特徴部セット(例えば、図9Cの傾斜線910参照)等である。基準特徴部は、半径距離検出ビームによって検出可能に構成され、また、互いに所定の位置に設けられてもよい(例えば、傾斜基準特徴部は、第1の円筒校正面の表面又は内部に、中心軸周りに互いに既知の角度又は角度間隔で配置してもよい)。
【0120】
校正部材は、回転CRS構造に対して制約された関係で配置されていてもよい。ここで、回転軸の方向と中心軸の方向とは、互いに一定の角度関係にあり、両者の平行度はある閾値以内であり、例えば5度以内である。校正部材は、例えば、回転CRS構造の校正ゲージ拡張子によって制約された状態で保持されていてもよい(例えば、図7A~7Cの校正ゲージ拡張子744参照)。手順1700は、ステップ1710からステップ1720へ進む。
【0121】
ステップ1720では、回転CRS構造を動作させて第1セットの半径距離測定データを提供する。該測定データは、校正部材に関するZ方向の第1のZ座標位置で、半径距離検出ビームを回転軸周りに回転させながら取得されたものであり、また、半径距離検出ビームの回転軸周りの検知回転角度を参照している。例えば、エンコーダ(図6のエンコーダ630参照)が、回転角度情報の検出値を提供できる。手順1700は、ステップ1720からステップ1730へ進む。
【0122】
ステップ1730で、この手順1700が追加セットの半径距離測定データを取得するかどうかを決定する。ステップ1730で、測定データの追加セットの取得が決定された場合、手順1700は、ステップ1730からステップ1740へ進む。
【0123】
ステップ1740では、追加セットの半径距離データの取得を容易化するために、光学調整が実行される。光学調整としては、校正ゲージ拡張子(例えば、図7A図7Cの校正ゲージ拡張子744)を利用して、段付き校正部材(例えば、図11A図11Cの校正部材1146)を再度位置決めすることである。又は、その他、校正部材および/又はCRSプローブの相互位置の調整、信号処理ルーチンの調整などである。ステップ1740から、手順1700は、ステップ1720に戻って、CRSプローブを動作させて、追加セットの半径距離測定データを取得する。
【0124】
ステップ1730で、半径距離測定データの追加セットを取得しない場合、手順はステップ1730からステップ1750へ進む。ステップ1750で、手順1700は、検知回転角度を参照する半径距離測定データの取得セットを処理して、校正データを決定する。この校正データは、回転軸周りの半径距離検出ビームの検知回転角度の関数として、半径距離測定誤差の特徴付け又はその補償に使用できるように構成されている。手順1700は、ステップ1750からステップ1760に進んで終了する、又は追加処理(校正データの保存および/又は追加校正データの決定など)を実行する。
【0125】
手順1700では、図示した動作よりも多くの又は少ない動作が実行されてもよいし、様々な順番で動作が実行されてもよい。例えば、一実施形態として、手順1700は、複数の測定距離についての半径距離データのセットを同時に取得してもよい(例えば、回転CRS装置のZ軸に直交する方向に全体的にアライメントされた複数の校正面を有する校正部材を測定する場合(図12C図13C図13E参照))。手順1700では、半径距離測定データのセットの取得が終わる前に、1以上のセットの半径距離測定データが処理されるようにしてもよい。他の例では、校正情報が、干渉計を使って取得されたデータを含むようにしてもよい。そのようなデータとしては、光学ペンに関する理想的なCRS距離データや、1以上の円筒形の校正面の半径などのデータである。手順1700を変更して、干渉計による取得データの回収動作、および/又は、干渉計による測定実行の動作が含まれるようにしてもよい。
【0126】
上述のように、円筒校正部材に追加または代替して、他の校正部材を採用してもよい。例えば、球状校正部材を採用してもよい。
【0127】
図18は、CMM210及び複数の校正部材を含む座標測定システム1800の代表的な構成を示す図である。座標測定システム1800は、図2の座標測定システム200と同様に構成され、ここでは、このシステムに含まれる特定の構成の詳細例を追加的に説明し、その動作例を説明する。これらには図2と類似又は同一の符号で示す。座標測定システム1800は、手動操作ユニット1810、及び、インタフェース機器202’とホストコンピュータ206(例えばコンピュータとユーザインタフェースを含む)からなるホスト機器システムを備える。インタフェース機器202’は、例えば、CMM210の動作を制御するモーション制御装置205と、プローブ信号処理制御回路207(例えば、他の構成にも含まれていてもよい。又は、代用として他の構成に含まれていてもよい。)と、CRS光学プローブ215に(例えば、信号制御回線201Aを介して)接続されるインタフェース回路(図示しない)と、を備える。
【0128】
手動操作ユニット1810は、インタフェース機器202’に(例えば、信号制御回線201Cを介して)接続され、及び/又は、これの一部であってもよく、また、CMM210の手動操作用のジョイスティック1811を含んでいてもよい。ホストコンピュータ206は、インタフェース機器202’に(例えば、信号制御回線201Bを介して)接続されている。このホストコンピュータ206は、ユーザ入力又はプログラム制御によるCMM210の動作を実行し、被測定面290を有するワークWの測定データを処理してもよい(例えば、被測定面290をワークWのネジ穴の内面としてもよい)。ホストコンピュータ206は、例えば測定条件や測定手順を入力するための入力手段1812(例えば、キーボード等)と、例えば測定結果を出力する出力手段1813(例えば、ディスプレイ、プリンタ等)と、を備える。ホストコンピュータ206とインタフェース機器202’は、一体でもよく、及び/又は、あえて区別する必要はない。また、信号制御回線201A~201Cは、一般データ転送回線/バス構成201の一部でもよい。
【0129】
CMM210は、定盤1852上に配置された駆動機構1851と、駆動機構1851にCRS光学プローブ215を取り付けるための取付部236(例えば、取付部236は、連結式のプローブヘッド213に取り付けられた自動交換ジョイント要素を含んでいてもよい)と、を備える。駆動機構1851は、CRS光学プローブ215を3次元的に移動させるための、x軸、y軸、及びz軸スライド機構1851X、1851Y、1851Zを含む。CRS光学プローブ215は、(例えば、検査プログラムの制御下、)自動ジョイント接続機構230において、自動的に収納ラック(図示しない)へ収納されてもよく、また、自動的に収納ラックから外されて取付部236に取り付けられてもよい。自動ジョイント接続機構230は、精密なキネマティック取付手段、光ファイバー接続、電気的接続など、を備えてもよく、これらが、既存の原理に従って、様々な交換型のCMMプローブやセンサーに共通の物理的インタフェースを提供する。測定動作又は校正動作の一部として、CRS光学プローブ215は、CMM210によって、ある面(例えば、ワークの被測定面290、又は、校正部材の被測定面など)に対して位置決めされ、その面に測定光296(例えば、半径距離検出ビーム)を照射する。
【0130】
図18に示すように、定盤1852(例えば、CMM210のステージとして機能する)は、その盤上に置かれた様々な校正部材を有する(例えば、該校正部材が、定盤1852に固定されてもよく、又は、既知の座標位置に配置されてもよい)。図18の例では、球状校正部材1898、円筒校正部材1846Aおよび円筒校正部材1846Bが、様々な校正処理に利用できるように、定盤1852上に置かれている。円筒校正部材1846A,1846Bは、それぞれの円筒校正面までの半径が異なる。上述のように、異なる半径の2つの円筒校正部材を有するのではなく、異なる半径の2つの円筒校正面を含む単一の円筒校正部材を用いてもよい。
【0131】
図19に第一実施形態の校正部材を示す。この校正部材は、球状校正部材1998であり、CMMのCRS光学プローブ(例えば、図18のCMM210の光学プローブ装置215参照)のミスアライメント誤差を補正するための球状校正データの取得に用いられる。この球状校正部材1998は、球状校正面1904を備え、通常は、支持構造1906によって定盤1852上に支持されている(例えば、定盤1852の一部になっていてもよく、又は定盤1852上に配置されていてもよい)。
【0132】
球状校正部材1998の半径Rs(直径でもよい)及び基準中心Csは既知であると想定される。図20~27Cを用いた詳細な説明の通り、この球状校正部材を使って測定される半径距離は、半径、回転角およびZ位置の球状校正情報など、球状校正データの決定に用いられる。
【0133】
円筒及び球状の校正データなど、校正データの決定用の半径距離測定値を取得するために、図18の校正部材1898又は図19の校正部材1998のような1以上の球状校正部材を、1以上の円筒校正部材(例えば、図18の円筒校正部材1846A,1846B参照)と一緒に使ってもよい。例えば、円筒半径の校正データを取得するため、1以上の円筒校正部材の半径距離測定値を取得してもよく、回転角及びZ位置の球状校正データを取得するため、1以上の球状校正部材の半径距離測定値を取得してもよい。
【0134】
半径校正データを取得するために円筒校正部材を使用し、また、回転角およびZ位置の校正データを取得するために球状校正部材を使用することは、使用する円筒校正部材をシンプル化し易い。それは、回転角およびZ位置の校正データを取得するために球状校正部材の半径距離測定値を代用することで、その回転角およびZ位置の校正データの取得のためのパターンを円筒校正部材に付与する必要が無くなるからである。もちろん、円筒や球状の校正部材など、様々な校正部材の半径距離測定値から、半径、回転角およびZ位置の校正データの様々な組合せを取得してもよい。
【0135】
図20は、CMMの回転CRS装置の校正手順2000を示す。この手順は、例えば、ここに示す1以上の校正部材を備えたCMMに用いられる。この手順2000は、回転CRS装置のミスアライメント誤差を補正するための校正データ又は校正情報を提供する。回転CRS装置は、その回転軸の半径方向へ半径距離検出ビームを照射し、回転軸周りに半径距離検出ビームを回転させるように構成されている。この手順2000は、例えば、プローブ信号処理制御回路(図2,5及び18のプローブ信号処理制御回路207)や、基本校正ルーチン回路などによって呼び出される。
【0136】
図示のように手順2000は、CMMの基本校正2002からスタートする。基本校正は(例えば、後で実行される手順2000の他のステップとともに)、製造工場で実行されてもよく、及び/又は、その他の時に(例えば測定現場などで)実行されてもよい。「基本校正」は、「工場校正」及び/又は「初期校正」とも呼ばれる。基本校正では、光学ペンからの一連の距離位置を移動する測定校正面(例えば、鏡などの反射面)を利用してもよい。各々の実際の距離は、既知であり、測定され、及び/又は、他の方法で(例えば、干渉計を利用して)決定されている。当該距離は、光学ペンでも測定される。
【0137】
実際の距離と光学ペンで測定された距離との差は、各距離での補正値の決定に利用される。その補正値を利用して補正テーブルを作成して、それぞれ補正された距離Dcを取得するようにしてもよい(例えば、補正テーブルに記録された距離間の距離が補間されるようにしてもよい)。
【0138】
基本校正2002は、例えば、校正オフセット情報を決定するための半径距離測定値の取得(例えば、図14~19、21~29、及びこれらの説明参照)など、他の校正データの取得や、光学ペンに対する1以上の校正部材の登録(例えば、円筒校正部材、球状校正部材など。例えば、図18,19を参照すると、円筒校正部材1846a,1846bの半径値および基準中心値の決定、定盤1852上の球状校正部材1898,1998の半径値Rsおよび基準中心値Csの決定)や、これらの組合せ等を含んでいてもよい。
【0139】
手順2000は、ステップ2002からステップ2004に進む。ステップ2004で、手順2000は、1以上の円筒校正部材を使って円筒校正データを取得する。例えば、図14-17に関して上述したように、ステップ2004が実行される。例えば、ペンに登録された円筒校正部材を使って、半径補正用の校正データを取得してもよい。この円筒校正部材は、例えば、Zステージの走査の有無によらず利用可能な2以上の段階的な半径を有し(例えば、異なる半径の3つのリングゲージを重ねたものが、1回のZ走査で測定され、又は、2つのリングゲージを用いて、Zステージの走査なしで2つの測定値が測定される)、少なくとも半径オフセット及び線形補正の係数データを、回転式ペンの機構上のミスアライメント誤差を補正するために取得することができる。
【0140】
このステップで、回転角、Z位置、第1および第2高調波の誤差校正情報を取得して、基準原点を確立してもよい。円筒校正部材は、光学ペンのための、例えば、オフセット、線形、回転についての第2高調波の補正情報など、より精確な半径補正情報を提供できる場合がある。ここでは、(例えば、以下のステップ2006における)球状校正部材を使った一般的な取得方法よりも精確であるという意味であり、円筒校正部材を用いると、並進動作軸が少なく、校正誤差が減少するからである。
【0141】
手順2000は、ステップ2004からステップ2006に進む。ステップ2006で、手順2000は、1以上の球状校正部材を用いて半径距離測定値を測定し、校正データを取得する。図21は、例えば、1以上の校正部材を備えたCMMで用いられる球状校正部材を測定し、校正データを取得する手順2100の代表的なフロー図である。手順2100は、例えば、図20の手順2000のステップ2006で呼び出される。図22~28は、球状校正部材の半径距離測定データの取得によって、校正データを決定するプロセスを説明する概念図であり、同様に、取得された校正データを用いた補償ルーチンを適用される誤差のタイプの例を示す。便宜上、手順2100の説明では、図22~25を参照する。
【0142】
図示のように手順2100は、ステップ2112からスタートし、回転CRS装置を動作させて、球状校正部材1998(例えば、図25A参照)の表面のうちの第1表面部(例えば、1区域)について、これに対応する球状半径距離データセットを提供する。光学ペン220の第1配向に従って、球状校正部材1998から概ね第1スタンドオフ位置又は第1距離Dの位置にある回転CRS装置の光学ペンを用いて、回転軸周りに半径距離検出ビームを回転させながらデータセットを取得する。プローブ測定ビーム(例えば、半径距離検出ビーム)が、プローブ/ペンの座標系のZ軸(球状校正部材の座標系のZ軸、及び、走査軸方向SAに対応した図22の配向方向)に沿って回転・移動する間に、半径距離データが取得され、光学ペンに最も近い円筒校正部材の一区域に対応した測定値が作成される。
【0143】
光学ペン220(及びこれに応じた半径距離検出ビーム296)が球状校正部材1998に対して走査軸方向SAに移動する際の複数の位置において、半径距離検出ビーム296は、光学ペン220の回転軸PA(例えば、光学ペン/プローブの座標系のZ軸に対応する軸)の周りを(例えば、回転角ωに従って)回転する。図25A,25Bに、表面部(例えば、一区域)の位置、および、これに応じた測定データ(例えば、検出された半径距離Rに応じたデータ)を示す。
【0144】
球状校正部材1998に対する走査軸方向SAに沿った光学ペン220の移動は、少なくとも部分的な相対的移動であってもよい。例えば(任意に)、球状校正部材1998を、ステージ上に置いてもよく、他の機構に載せてもよく(例えば、定盤上に配置する、又は、定盤の一部にする等)、球状校正部材1998を1次元以上の方向(例えば、1D、2D又は3D)に移動可能であればよい。これにより、球状校正部材1998に対して光学ペン220が相対的に移動することになる(すなわち、球状校正部材1998は、ステージ又は他の機構によって、光学ペン220と相対的に移動する)。
【0145】
図22に示すように、光学ペン220は、球状校正部材1998の表面1904からの第1スタンドオフ距離Dに位置決めされ、動作して球状校正部材1998の第1表面部(例えば、一区域)に応じた半径距離データを取得し、第1表面部に対して最も接近した点(最接近点)Pを決定することができる。第1表面部に対応したデータは、走査軸方向SAに沿った複数の位置で取得される(例えば、図25A,25B参照)。
【0146】
第1表面部に対応する半径距離データを取得する動作が、光学ペン220を有するCRS光学プローブを走査軸方向SAに沿った一連の位置へ移動させる動作(すなわち、スタンドオフ距離Dを維持しながらの移動)を含んでいてもよい。また、光学ペン220の半径距離検出ビームを回転させる各位置で、第1表面部の一部に対応した半径距離データ(すなわち、走査軸方向SAに沿った現在の位置に対応したデータ)を取得する動作を含んでいてもよい。
そのような動作に従えば、1つの表面部に対応する半径距離データを取得できる(例えば、1つの表面部の半径距離データ例をグラフィカルに表示した図25A参照)。手順2100は、ステップ2112からステップ2114に進む。
【0147】
手順2100は、ステップ2114で、球状校正部材の表面1904の表面部(例えば、一区域)に対する光学ペン220の最接近点(例えば、CP又はPi、図22のP~P図23、25A、27A~27CのCP、図26のP’~P’参照)を、その一区域について取得した球状半径距離データセットに基づいて決定する。図25Aを参照すると、最接近点CPは、回転角φi及び距離Ziにおける法線ベクトルと関係付けられる。例えば、スムージング処理、既知の半径(図19の半径Rs参照)に基づく球体フィッティングアルゴリズム、その他のフィッティング機能などを使って、最接近点CPを取得することができる。表面部又は区域(例えば、走査軸方向SAに沿ったZ軸走査の範囲)の大きさは、最接近点を(例えば、既知の半径に基づく球体フィッティングアルゴリズムを使用して)十分に精度よく決定できるような範囲内で選択されるとよい。手順2100は、ステップ2114からステップ2116に進む。
【0148】
ステップ2116で、手順2100は、スタンドオフ距離Dかつ同じ第1配向で、球状校正部材1998の他の表面部(例えば区域)に対応する半径距離データセットを取得するかどうかを決定する。一般には、与えられたスタンドオフ距離及び配向の条件で、球状校正部材の少なくとも2区域から半径距離データセットを取得する。図22に示すように、対応する4つの最接近点P,P,P及びPをそれぞれ(すなわち、各区域に1つ)決定するため、4つの区域の半径距離データセットを取得する。図示の簡略化のため、最接近点(すなわち、それぞれが1つの区域に対応している)は、球状校正部材1998(赤道EQは、区域について決定された最接近点P~Pによって定義されてもよい)の赤道EQ部分に沿って、間隔を空けて示される。一般には、区域及び/又はこれに対応する最接近点が、球状校正部材1998の球状校正面1904上において、均一に分布し、及び/又は、互いに等距離であるとよい。例えば、区域及び/又はこれに対応する最接近点が、球状校正部材1998の赤道EQに沿って均一に分布しているとよい。
【0149】
図22に示すように、光学ペン220の座標系のZ軸(すなわち、光学ペンの軸PAに対応する軸)は、球状校正部材1998の基準軸Zsに位置合わせ(又は平行に)される。球状校正部材1998の基準軸Zsは、通常、重力方向に位置合わせされ、及び/又は、CMM座標系のZ軸方向と平行にされている。
【0150】
表面1904の他の表面部又は区域に対応した半径距離データセットを取得するかどうかを決定するために、ある閾値を用いてもよい(例えば、ある閾値の数(4,6等)のデータセットが得られるまで、その数の区域に応じた半径距離データセットを取得してもよい)。望ましい補償精度、球状校正データに基づいて補償される校正誤差のタイプ、複数のスタンドオフ距離または配向におけるデータが得られたかどうか、利用可能なデータ処理リソースなど、様々な要因に基づいて、その閾値を決定するとよい。
【0151】
ステップ2116で、球状校正部材の他の表面部(例えば区域)に応じた半径距離データセットを、スタンドオフ距離および第1配向の条件で取得することが決まった場合、手順はステップ2116からステップ2118に進み、光学ペンが他の位置(例えば、赤道EQ周りの他の位置)に再度位置決めされ(図22の例では配向条件は変わらない)、球状校正部材から概ね第1スタンドオフ距離又は第1距離Dの位置で、球状校正部材の他の表面部(例えば、これに対応する最接近点Pを含む区域)に対応した別の半径距離データセットを取得する。その場所は、球状校正部材の赤道EQに沿っていてもよい(例えば、ある理想的な構成では、プローブ軸PAに直交する平面内にあってもよい)。球状校正部材を使って半径距離データの複数のセットを取得したい場合、対応する複数の場所が赤道に沿って互いに等間隔であってもよい。例えば、2つの表面部(例えば2つの区域)のデータを得る場合、それらの区域を赤道EQに沿って180度間隔にするとよい。手順2100は、ステップ2118からステップ2112に進み、球状校正部材の他の表面部のデータを取得する。
【0152】
ステップ2116で、球状校正部材の他の表面部に対応する半径距離データセットを、現状と同じ距離および配向の条件(例えば、第1、第2の配向など)で取得しないことが決まった場合、この手順は、ステップ2116からステップ2120に進む。ステップ2120で、この手順は、スタンドオフ距離および現状の配向(例えば、第1、第2の配向など)の条件で取得した表面部のデータセットに関する、半径距離データ、接近点情報、又は、これら両方を算出し、現状のスタンドオフ距離および現状の配向の条件での球状校正データ(例えば、半径、Z位置および回転角の球状校正データ)を生成、又は決定する。
【0153】
例えば、図23,24を参照すると、図22で検討した例では、赤道に沿った球状校正部材1998の表面1904の区域に対する光学ペン220の5つの最接近点CPが決定されている。いずれも既知である校正部材(図19参照)の半径Rs又は直径を使って、5点を1つの球体にフィットさせることができる。球状校正部材1998の中心である基準位置RPを決めるため、例えば、5点の座標を、CMM座標系に変換し、平均化してもよい。また、光学ペン軸PA及び/又は走査軸SA方向への5点の偏差に関する情報(例えば、現在のプローブの配向では、5点のうちのいくつかが赤道面から外れていること等)を用いて、Z位置校正情報を生成してもよい。また、回転エンコーダ情報(例えば、図6のエンコーダ630参照)を用いて、回転校正情報を生成してもよい。図24を参照して言えば、公称点と測定点の差を、校正データとして用いてもよいし、又は、校正データの生成に用いてもよい。このような差を(ΔR(φ,XYZ), Δφ(φ,XYZ), Δz(φ,XYZ))のように表すことができ、ここでφは回転角であり、zは光学ペン軸PA上のZ軸位置である(すなわち、プローブ/ペンの座標系のZ軸は、光学ペン軸PAに対応している)。このようにして各点の位置誤差に対応するデータを、回転角φと光学ペン軸PA上の位置zとの関数として得ることができる。
【0154】
接近点を精確に決めるのに十分である大きさを持った球状校正部材の複数の表面部(例えば区域)の半径距離を測定することによって校正データを取得することで、広い表面傾斜の測定における歪みを回避し易くなり、また、基準中心を見つける際に1つの表面区域のフィッティングを外挿することによる誤差を回避し易くなる。この球状校正部材をCMM用の標準サイズにしてもよく、それによって複数の配向条件での球状校正データの取得が容易になる(例えば、CMM座標系に対する光学ペン220の配向が異なっている図22,26参照)。手順2100は、ステップ2120から呼び出された手順に戻る。例えば、生成した球状校正データを提供するため、図20の手順2000に戻る。
【0155】
再び図20を参照し、手順2000は、ステップ2006からステップ2008へ進み、第1スタンドオフ距離で、球状校正部材1998に対する光学ペン220の他の配向条件での追加の校正データを取得するかどうかを決定する。球状校正部材に対する光学ペンの異なる配向条件では、重力が、回転測定ビームを用いて取得する測定値に異なる誤差を生じさせる。光学ペン220の様々な配向条件での校正測定値の取得は、より精度のよい校正データの取得を容易にする。そのような校正データは、光学ペンのZ軸が重力とは異なる配向に配置されている状態での測定が望まれている場合に有効である。言い換えると、CMM210及び光学ペン220の構成への重力の影響を補正するための球状校正データを、球状校正部材に対する光学ペンの複数の配向条件での半径距離データの取得によって得ることができる。
【0156】
ステップ2008において、第1スタンドオフ距離で、球状校正部材に対する光学ペンの他の配向条件での追加の校正データを取得することが決定された場合、手順2000は、ステップ2008からステップ2010へ進み、球状校正部材1998に対する光学ペン220の配向条件が変更される。
【0157】
図22,26は、球状校正部材1998に対して異なった光学ペン220の配向状態を示す概念図である。図22,26で、球状校正部材1998の座標系の基準軸Zsは縦向きで示され(例えば、重力ベクトルの向きに一致する)、CMM座標系のZ軸に平行になっている。図22では、光学ペン軸PAおよび光学ペン220の移動方向に沿った(例えば、球状校正部材1998の表面1904の一区域の走査のための)走査軸方向SAは、CMM座標系のZ軸および基準軸Zsに平行である。図26では、光学ペン軸PAおよび光学ペン220の移動方向に沿った走査軸方向SAは、CMM座標系のZ軸に平行ではない(すなわち、CMM座標系のZ軸に対して傾斜している)。そのため、図22の光学ペンは、球状校正部材1998に対して図26の光学ペンとは異なる配向条件になっている。
【0158】
ステップ2010で、球状校正部材に対する光学ペンの配向を変更(例えば、図22の配向から図26の配向への変更)した後、手順2000は、ステップ2006に戻り、球状校正部材に対する光学ペンの変更後の配向条件で、球状校正データを取得する。例えば図26を参照すると、半径距離データセットを、最接近点P1’,P2’,P3’,P4’に応じた4つの区域で取得するとよい。これらの点は、図示のとおり、球状校正部材1998の赤道EQ’部分に沿っていて、図22に示される赤道EQとは異なる。
【0159】
ステップ2008において、第1スタンドオフ距離で、球状校正部材1998に対する光学ペン220の他の配向条件での追加の校正データを取得しないことが決定された場合、手順2000は、ステップ2008からステップ2012へ進み、球状校正部材1998に対する光学ペン220の他のスタンドオフ位置条件又は距離条件での追加の校正データを取得するかどうかを決める。図14~17を用いて上述した方法と同様に、光学プローブの色分散の範囲内で、複数のスタンドオフ条件又は距離条件での球状校正データを取得することにより、校正オフセットおよびリニアスケーリングのデータを測定距離又は測定半径の関数として容易に生成することが可能になり、様々なミスアライメント誤差を補償することができる。
【0160】
ステップ2012で、球状校正部材1998に対する光学ペン220の他のスタンドオフ位置又は距離の条件での追加の校正データの取得が決まった場合、手順2000は、ステップ2012からステップ2014に進み、球状校正部材1998に対する光学ペン220のスタンドオフ位置又は距離を変更する。手順はステップ2014からステップ2006に進み、例えば、図22及び図26のスタンドオフ距離Dとは異なった変更後のスタンドオフ位置又は距離の条件で、球状校正データを取得する(例えば、変更後のスタンドオフ距離Dは、Dよりも大きくてもよいし、小さくてもよい)。なお、図27B図27Cは、異なるスタンドオフ距離の条件での測定例を示す。
【0161】
図27Aは、球状校正部材1998に対する半径距離測定値を取得する光学ペン220を備えたCMMの理想的な配置を示す概念図である。図27B図27Cは、様々なスタンドオフ距離の条件で球状校正部材1998に対する半径距離測定値を取得する工程での、様々なミスアライメント誤差を示す概念図である。
【0162】
図27Aの理想的な配置において、光学ペンを有するCRS光学プローブは、走査軸方向SAに移動する(例えば、図示の配向方向に上下移動する)。走査軸方向SAは、光学ペン220の軸PAに平行であり、光学ペンからの半径距離検出ビーム296は、光学ペンの軸PAに直交する。
CMMの基準点(X,Y,Z)CMM(例えば、光学ペンを有するCRS光学プローブがCMM又は他の機構に取り付けられているポイント)と、測定データ(ΔX,ΔY,ΔZ)CRSと、を使えば、(図示のように、基準中心(X,Y,Z)refを有し、支持構造1906に支持された球状校正部材1998上の点である)測定点の位置を精確に決定することができる。
図27Aの理想的な配置において、ΔZ成分は、基準点(X,Y,Z)CMMと半径距離検出ビームとの間の鉛直方向の長さLに対応する。また、三角関数成分ΔX/ΔYは、(例えば、光学ペン軸PAから球状校正部材1998の表面上の最接近点CPまでの半径距離検出ビームに沿った)水平方向のスタンドオフ距離Dに対応する。図27Aの理想的な配置とは対照的に、多くの場合、測定条件は理想的ではなく(例えば、非理想的な配置を含む)、また、例えば(プローブ、光学ペン、CMM等の)様々な構成のミスアライメントに起因する測定誤差(例えば、上記の表1に記載されているもの)が生じる。
【0163】
図27Bに、光学プローブ/光学ペン軸PAが、光学ペン220の移動方向である走査軸SAと整合していない場合に生じ得る、Z位置誤差ΔZおよび回転軸ミスアライメント角誤差θrを誇張して示す。理想的には、光学ペン220の半径距離検出ビーム296が、半径距離データを取得する(例えば、図27A参照)際の球状校正部材1998の表面の一区域における最接近点CPにおいて、球状校正部材1998の表面に垂直であるとよい。しかし、走査軸SAが、光学ペン220の軸PAと整合していない場合、半径距離検出ビーム296が、最接近点CPにおいて球状校正部材1998の表面に対して垂直にならない。この結果、Z位置誤差ΔZおよびミスアライメント角誤差θrのように、取得する半径距離データに誤差が生じる。これらの誤差の大きさ及び信号は、スタンドオフ距離、回転位置などの関数になっている。図27Bの例では、距離(例えばD1B,D2B)及び距離誤差(例えば、ΔZ1B,ΔZ2B)の決定及び/又はその知見によれば、(例えば、ある三角関数、及び/又は、他の計算および関係などに従うことで、)ミスアライメント角誤差θr及び/又は他の誤差を決定することが可能になる。
【0164】
図27Bのように、異なるスタンドオフ距離の条件で半径距離測定値を取得することができる。図示のように、球状校正部材1998の両側に、それぞれの最接近点CPRB,CPLBに応じて、例えば、実線の光学ペン220で示す(距離D1Bに応じた)第1スタンドオフ距離の条件、および、破線の光学ペン220で示す(距離D2Bに応じた)第2スタンドオフ距離の条件で、半径距離測定値を取得することができる。例えば、図27BのようなZ位置誤差ΔZの大きさは、スタンドオフ距離の関数で表すことができる。具体的には、図27Bのように、第1スタンドオフ距離は、距離D1Bに対応していて、(例えば、球状校正部材1998の周りに間隔を置いて設けられた異なる区域についてのデータセットを取得するために、)光学ペン220が球状校正部材1998の赤道EQ1Bの周りを移動することに伴って、そのZ位置誤差も変化する。そのZ位置誤差のピークは、第1Z位置誤差ΔZ1Bに対応している(例えば、図示のように最接近点CPRBの位置と関連している)。第2スタンドオフ距離は、距離D2Bに対応していて、赤道EQ1Bの周りの光学ペンの移動に伴って生じるZ位置誤差のピークは、第2Z位置誤差ΔZ2Bに対応している(例えば、図示のように最接近点CPRBの位置と関連している)。
【0165】
理想的には、光学ペン220の半径距離検出ビーム296は、光学ペン220の軸PAおよび走査軸方向SAに直交しているとよい(例えば、図27A参照)。図27Cに、半径距離検出ビームの角度が光学ペン軸PAに対して直角でない場合に生じ得る誤差の例を示す。例えば、反射部材294(図4A参照)のミスアライメントの場合、半径距離検出ビームは、光学ペン220の軸PA及び走査軸方向SAに対して直角にならない。この結果、例えば、上述の出力法線仰角誤差δθoのような、半径距離測定値の誤差が生じる。これらの誤差の大きさ及び信号は、比較的一定であり、又は、スタンドオフ距離、回転位置などの関数になっている。
【0166】
図27Cに示すように、異なるスタンドオフ距離の条件で測定値を取得することができる。球状校正部材1998の両側に、それぞれの最接近点CPRC,CPLCに応じて、例えば、実線の光学ペン220で示す第1スタンドオフ距離の条件、および、破線の光学ペン220で示す第2スタンドオフ距離の条件で、半径距離測定値を取得することができる。具体的に図27Cでは、第1スタンドオフ距離が距離D1Cに対応している。そして、(例えば、球状校正部材1998の周囲に或る間隔で設けられた互いに異なる区域のデータセットを取得するため、)光学ペンが球状校正部材1998の赤道EQ1C周りを移動する間(大きな変化を示す図27BのZ位置誤差とは反対に)、Z位置誤差が比較的一定になる。その比較的一定である(又はピークを示す)Z位置誤差は、(例えば、図のように最接近点CPRCの位置と関する)第1Z位置誤差ΔZ1Cに対応している。第2スタンドオフ距離は、距離D2Cに対応している。そして、光学ペンが赤道EQ1C周りを移動する間、比較的一定である(又はピークを示す)Z位置誤差は、(例えば、図のように最接近点CPRCの位置と関する)第2Z位置誤差ΔZ2Cに対応している。図27Cの例では、距離(例えばD1C,D2C)及び距離誤差(例えば、ΔZ1C,ΔZ2C)の決定及び/又は知見によれば、(例えば、ある三角関数、及び/又は、他の計算および関係などに従うことで、)半径距離測定値の誤差、例えば、(図27Cの例のように比較的一定である)図示の出力法線仰角誤差δθo、及び/又は、他の誤差を決定することが可能になる。
【0167】
ステップ2012で、球状校正部材1998に対する光学ペン220の他のスタンドオフ距離又は距離の条件での追加の校正データを取得しないことが決定された場合、手順2000は、ステップ2012からステップ2016へ進み、(例えば、他の校正部材又は校正機構を使って、)追加の校正データを取得するかどうかを決める。
ステップ2016で、追加の校正データを取得することが決定された場合、手順2000は、ステップ2004へ進む。ステップ2016で、追加の校正データを取得しないことが決定された場合、手順2000は終了し、又は追加の処理を実行する(取得した校正データや保存された校正データ等に基づく追加の校正データを生成する)。
【0168】
手順2000及び手順2100の実施形態は、図示されたものよりも多くの動作、又は、少ない動作を実行するものでもよく、様々な順序やシーケンスで実行するものでもよい。例えば、手順2000及び手順2100を組み合わせてもよい。また、(例えば、測定現場での校正において、この手順が呼び出された場合、)基本校正(例えば工場校正)を省略してもよく、代わりに、(例えば工場や他の場所で)予め決定済みの基本校正データを読み出してもよい。
【0169】
他の例では、様々な区域、配向、スタンドオフ位置又は距離に応じた球状校正データを取得するための調整が、様々な順序で行われる。例えば、手順2000は、ステップ2008/2010の前に、又は、並行して、ステップ2012/2014を実行してもよい。図20の説明では、この手順2000のループにおいて、ステップ2012/2014が相対的に外側に設けられ、ステップ2008/2010が相対的に内側に設けられている。CMMのXYZ軸のみを含む場合には、追加のスタンドオフデータを内側のループで実行する方が好ましいため、この順序を逆にしてもよい(例えば、ステップ2012/2014を内側のループに移動して、ステップ2008/2010を外側のループに移動する)。XYZ動作ほど再現性がない自動ジョイントの配向動作は、比較的遅い動作が望まれる。また、温度ドリフト又は他の要因からの影響もあるため、全てのXYZ軸の動作について全てのスタンドオフ条件で校正する際は、1つの配向条件での校正を、内側のループで実行することが求められる。異なるスタンドオフ条件での校正は、分離可能であり、外側ループに含まれるようにしてもよい。
【0170】
円筒校正部材を用いて異なる半径で収集した複数のデータセットについては、上述と同様に、球状校正部材からの異なるスタンドオフ距離の条件で収集した半径距離の複数のデータセットを使用して、オフセット及びリニアスケーリングの補正データを取得することができる。円筒校正部材の外周の表面部(例えば、区域)を異なるスタンドオフ距離で測定した半径距離測定値のセットは、異なるリングゲージの半径距離測定値、又は、1のリングゲージにおける異なる半径の段差の半径距離測定値のデータセットに類似する。オフセット及びリニアスケーリングの補正データを、円筒校正部材を使って収集した異なる半径条件での半径距離のデータセット、球状校正部材からの異なるスタンドオフ距離の条件で収集した半径距離のデータセット、及び/又は、これらの様々な組合せ、に基づいて取得してもよい。
【0171】
例えば、(便宜的に以下に再現する)式(1)を参照すると、1セットの関係式を使って、半径距離測定値の誤差を表現することができる。関係式中の項は、円筒校正データセット、球状校正データセット、及び/又は、これらの組合せに基づいて決定される(例えば、円筒校正データを使って決定された1つの項の改良又は確定を、球状校正データに基づいて行う)。
【0172】
【数4】
【0173】
例えば、半径距離誤差ΔRの補正は、工場での円筒校正データに基づいて行われ、回転誤差Δφ及びZ位置ΔZの誤差の補正は、球状校正データに基づいて行われる。
【0174】
例えば、オフセットRo、線形補正係数R、及び、第2高調波(CR2cos(4πφc+θR2))の各項は、基本校正(工場校正)の測定値、又は、円筒校正部材を使って取得した測定値に基づいている。第1高調波(CR1cos(2πφc+θR1))の項は、CMMの基準座標系(X,Y,ZCMM)に設定された、基本校正の測定値、円筒校正部材を使って取得した測定値、これらの組合せに基づいて決定される。要求される精度、プローブの剛性及びその他の点に応じて、これらのファクターは、プローブの垂直配向の条件で取得した測定値から決定され、全ての配向条件又は同じ配向条件での補正に適用される。又は、これらのファクターは、各配向の条件で取得された測定値から、配向条件ごとに決定される(以下の式(4)の記載参照)。
【0175】
回転角オフセットφo及びZオフセットZoの誤差は、回転角φcの関数で表されるスタンドオフ距離の条件で、球状校正部材の複数の区域における最接近点での測定値(図27B参照)に基づいて決定される。確定又は調整を、追加のスタンドオフ距離の条件で取得した測定値を使って実行してもよい。高次の高調波補正係数(例えば、Cφ1sin(2πφc+θφ1);Cφ2sin(4πφc+θφ2);CZ1sin(2πφc+θZ1);CZ2sin(4πφc+θZ2))と同様に、回転角の線形補正係数φ、及び、Z位置誤差の線形補正係数Zは、望ましくは、光学ペンの測定範囲に応じた異なるスタンドオフ距離の条件で取得した球状校正部材の半径距離測定値を使って決定する。高次の高調波補正係数が望まれる場合、追加の区域の半径距離測定値を取得する。(例えば、第1高調波の補正が望ましい場合は、1以上のスタンドオフ距離毎に4以上の区域の測定値を取得する。また、第1及び第2高調波の補正が望ましい場合は、1以上のスタンドオフ距離毎に8以上の区域の測定値を取得する。)幾つかの実刑形態では、(例えば、0度から360度まで回転可能なディジタル回転エンコーダによる回転の場合に、比較的小さいリニアスケーリング誤差又は、リニアスケーリング誤差の無い回転が得られるため、)Dcの項を0に設定してもよい。
【0176】
以上のように、重力方向に対する複数の光学プローブ/ペンの配向の条件で、球状校正部材の半径距離測定値を取得することによって、異なる配向の条件に対応した重力補償用の球状校正データを決定することができる。あるスタンドオフ距離の条件での、回転CRS測定装置の光学ペン220のZ軸の異なる配向に対する重力の補償を、以下の関係式(4)によって直交座標系で表すことができる。
【0177】
【数5】
ここで、Tは、以下のように表される。
【0178】
【数6】
【0179】
【数7】
【0180】
また、上記の項は、その配向で球状校正部材の赤道に沿って等間隔に配置された複数の区域のN個の最接近点で取得した測定データの平均を示す。
【0181】
【数8】
【0182】
上記の項は、容認された球状校正部材の中心座標を表す。式(4)の関係式を使って、異なる配向の条件での重力の補償を実行することができる。
【0183】
上記の通り、座標測定装置(CMM)の校正データを提供する校正システムが提供される。この校正システムは、光発生回路と波長検出回路とCMM制御回路とを有するCMM、及び、CMMに接続可能に構成されたクロマティックレンジセンサ(CRS)光学プローブを備える。CRS光学プローブは、少なくとも共焦点アパーチャー及び色分散光学部材を含んだ共焦点光学経路を有する光学ペンを備える。光学ペンは、回転軸に関する半径方向に沿って、半径距離検出ビームを向けるように構成され、その半径距離検出ビームを回転軸周りに回転させるように構成され、測定軸に沿ったワークの被測定面付近の異なる距離において異なる波長光が焦点を結ぶように構成される。この校正システムは、円筒校正部材および球状校正部材を含む。
【0184】
円筒校正部材は、CRS光学プローブのミスアライメント誤差を補正するための円筒校正データを提供するためのものであり、少なくとも第1の円筒校正面を有し、その円筒校正面の中心軸は、Z方向に沿って延びている。CRS光学プローブは、円筒校正部材に関するZ方向の第1Z座標位置で、回転軸周りに半径距離検出ビームを回転させて、その回転動作中に取得する第1の円筒半径距離データセットを提供するように構成されている。円筒半径距離データセットは、半径距離検出ビームの回転軸周りの検知回転角度を参照している。この検知回転角度を参照する第1の円筒半径距離データセットが演算処理されて、円筒校正データが決定される。
【0185】
球状校正部材は、球状校正面を有し、CRS光学プローブのミスアライメント誤差を補正するための球状校正データを提供するために用いられる。球状校正面上の複数の第1表面部の各々の表面部に対して、CRS光学プローブは、球状校正部材から概ね第1スタンドオフ距離の位置で光学ペンを使って、回転軸周りに半径距離検出ビームを回転させて、その回転動作中に取得する球状半径距離データセットを、各々の表面部に応じて提供するように構成されている。また、光学ペンが球状半径距離データセットを取得するために走査軸方向に移動して、検出された表面部のそれぞれに対応する半径距離データの各セットが演算処理されて、光学ペンに最も近い点であることを表す、検出最近接表面点が決定される。球状校正データは、複数の表面部に対応する検出最近接表面点の少なくとも一部に基づいて決定される。
【0186】
複数の実施形態において、円筒校正部材は、第1の円筒校正面の表面又は内部に形成された第1の角度基準特徴部セットを備え、該角度基準特徴部セットは、半径距離検出ビームによって検出可能に構成され、第1の円筒校正面の表面又は内部に、前記中心軸周りに互いに既知の角度又は角度間隔で配置されている。
【0187】
複数の実施形態において、円筒校正部材がリングゲージである。複数の実施形態において、前記円筒校正部材が第1の円筒校正部材であり、前記第1の円筒校正面がZ方向に沿って前記中心軸から既知の第1半径R1の距離に設けられており、前記校正システムが第2の円筒校正面をさらに備えている。前記第2の円筒校正面は、(i)前記第1の円筒校正部材の一部、及び、(ii)Z方向に延在する第2中心軸をもつ第2の円筒校正部材の一部のうちの少なくとも一方であり、前記第2の円筒校正面は、Z方向に沿って前記中心軸から前記第1半径R2とは異なる既知の第2半径R2の距離に設けられている。前記CRS光学プローブは、前記第2の円筒校正面に対して前記Z方向に沿ったZ座標位置で、回転軸周りに半径距離検出ビームを回転させて、その回転動作中に取得された第2の円筒半径距離データセットを提供するように構成されている。前記第2の円筒半径距離データセットは、前記半径距離検出ビームの前記回転軸周りの検知回転角度を参照していて、前記円筒校正データを決定するために前記第1の円筒半径距離データセットに加えられて演算処理される。
【0188】
複数の実施形態において、前記校正システムは、前記円筒校正データおよび前記球状校正データを演算処理することによって、前記CRS光学プローブ用の校正データを決定するように構成されている。
【0189】
複数の実施形態において、前記球状校正面は、該球状校正面の共通の中心点から同じ半径距離にある複数の点を含んでいる。
【0190】
複数の実施形態において、前記球状校正面上の前記複数の第1表面部は、前記球状校正面上の複数の区域を含み、該複数の区域は、前記球状校正部材の赤道周りに互いに等距離である。前記複数の区域のうちの1つの区域に対応する球状半径距離データを取得する際、前記光学プローブを該プローブのZ軸に沿って移動させる。
【0191】
複数の実施形態において、前記球状校正面は、複数の第2表面部を有し、前記複数の第2表面部の各々の表面部に対して、前記CRS光学プローブは、前記球状校正部材から概ね前記第1スタンドオフ距離の位置で前記光学ペンを使って、前記回転軸周りに前記半径距離検出ビームを回転させて、その回転動作中に取得する球状半径距離データセットを提供するように構成されている。前記複数の第2表面部の検出された表面部のそれぞれに対応する半径距離データの各セットが演算処理されて、前記光学ペンに最も近い点であることを表す、検出最近接表面点が決定される。前記球状校正データは、少なくとも、前記複数の第2表面部に対応する前記検出最近接表面点の一部に基づいて、決定される。
複数の実施形態において、前記球状校正面上の前記複数の第1表面部は、前記球状校正面上の複数の第1区域を含み、前記複数の第1区域は、前記球状校正部材の第1赤道周りに互いに等距離であり、
前記球状校正面上の前記複数の第2表面部は、前記球状校正面上の複数の第2区域を含み、前記複数の第2区域は、前記球状校正部材の第2赤道周りに互いに等距離である。
【0192】
複数の実施形態において、前記球状校正面上の前記複数の第1表面部の各表面部に対して、前記CRS光学プローブは、前記球状校正部材から概ね第2スタンドオフ距離の位置で前記光学ペンを使って、前記回転軸周りに前記半径距離検出ビームを回転させて、その回転動作中に取得する球状半径距離データセットを提供するように構成されている。前記第2スタンドオフ距離の位置で検出された各々の表面部に対応する半径距離データの各セットは演算処理されて、前記光学ペンに最も近い点であることを表す、検出最近接表面点が決定される。前記球状校正データは、少なくとも、前記第2スタンドオフ距離に対応する前記検出最近接表面点の一部に基づいて、決定される。
【0193】
複数の実施形態において、前記校正システムは、前記CRS光学プローブに対して前記円筒校正部材および前記球状校正部材を位置決めするように構成された定盤を備える。
【0194】
複数の実施形態において、前記CRS光学プローブは、前記光学ペンが前記球状校正部材に対して第1配向である条件で、前記複数の第1表面部の各表面部に対して、前記回転軸周りに前記半径距離検出ビームを回転させて、その回転動作中に取得された球状半径距離データセットを提供するように構成されている。また、前記CRS光学プローブは、前記光学ペンが前記球状校正部材に対して前記第1配向とは異なる第2配向である条件で、前記球状校正面上の複数の第2表面部の各表面部に対して、前記回転軸周りに前記半径距離検出ビームを回転させて、その回転動作中に取得された球状半径距離データセットを提供するように構成されている。
【0195】
回転クロマティックレンジセンサのミスアライメント誤差を補正するための校正データの提供方法が提供される。回転クロマティックレンジセンサは、回転軸に関する半径方向に沿って、半径距離検出ビームを向けるように構成され、その半径距離検出ビームを回転軸周りに回転させるように構成される。円筒校正部材および球状校正部材が提供される。
【0196】
円筒校正部材は、少なくとも、Z方向に沿った中心軸をもった第1の円筒校正面を有し、回転クロマティックレンジセンサに対してある関係で配置されている。回転クロマティックレンジセンサは、円筒校正部材に関するZ方向に沿った第1Z座標位置で、回転軸周りに半径距離検出ビームを回転させて、その回転中に取得される第1の円筒半径距離データセットを提供するように動作する。円筒半径距離データセットは、半径距離検出ビームの回転軸周りの検知回転角度を参照する。検知回転角度を参照する第1の円筒半径距離データセットは、演算処理されて、第1の円筒校正データセットが決定される。
【0197】
球状校正部材は、複数の第1表面部を持つ球状校正面を有し、回転クロマティックレンジセンサに対してある関係で配置されている。複数の第1表面部について、回転クロマティックレンジセンサは、球状校正部材から概ね第1スタンドオフ距離の位置で前記回転クロマティックレンジセンサの光学ペンを使って、前記回転軸周りに半径距離検出ビームを回転させて、その回転中に取得される球状半径距離データセットを、それぞれの表面部に対応して提供するように動作する。検出された表面部のそれぞれに対応する半径距離データの各セットは、演算処理されて、検出最近接表面点が決定される。その点は、該回転クロマティックレンジセンサの光学ペンに最も近いことを表わす。球状校正データは、複数の表面部に対応する検出最近接表面点の少なくとも一部に基づいて決定される。
【0198】
複数の実施形態において、前記円筒校正部材は、前記第1の円筒校正面の表面又は内部に形成された第1の角度基準特徴部セットを備え、該角度基準特徴部セットは、前記第1の円筒校正面の表面又は内部に、前記中心軸周りに互いに既知の角度又は角度間隔で配置されている。前記方法は、前記回転クロマティックレンジセンサを動作させて、前記第1の角度基準特徴部セットを検知することを含む。
【0199】
複数の実施形態において、前記円筒校正部材はリングゲージである。複数の実施形態において、前記円筒校正部材が第1の円筒校正部材であり、前記第1の円筒校正面がZ方向の前記中心軸から既知の第1半径R1の距離に設けられている。前記方法は、第2の円筒校正面を提供することを含み、該第2の円筒校正面は、(i)前記第1の円筒校正部材の一部、及び、(ii)第2の円筒校正部材の一部のうちの少なくとも一方であり、前記第2の円筒校正面は、Z方向の第2中心軸を有し、前記第2の円筒校正面は、Z方向の前記中心軸から既知の第2半径R2の距離に設けられ、前記第2半径R2は、前記第1半径R2とは異なっている。前記方法は、前記クロマティックレンジセンサを動作させて、前記第2の円筒校正面に関する前記Z方向のZ座標位置で、前記回転軸周りに前記半径距離検出ビームを回転させて、前記回転動作中に取得する第2の円筒半径距離データセットを提供することを含み、前記第2の円筒半径距離データセットは、前記半径距離検出ビームの前記回転軸周りの検知回転角度を参照している。前記検知回転角度を参照する前記第2の円筒半径距離データセットは、前記円筒校正データを決定するために前記第1の円筒半径距離データセットに加えられて演算処理される。
【0200】
複数の実施形態において、前記円筒校正データおよび前記球状校正データが演算処理されて、前記クロマティックレンジセンサ用の校正データが生成される。
【0201】
複数の実施形態において、前記球状校正面は、複数の第2表面部を有し、前記方法は、前記クロマティックレンジセンサを動作させて、前記複数の第2表面部の各表面部に対して、前記球状校正部材から概ね第1スタンドオフ距離の位置で前記光学ペンを使って、前記回転軸周りに前記半径距離検出ビームを回転させて、前記回転動作中に取得する球状半径距離データセットを提供することを含む。前記複数の第2表面部の検出された表面部のそれぞれに対応する半径距離データの各セットが演算処理されて、前記光学ペンに最も近い点であることを表わす、検出最近接表面点が決定される。前記複数の表面部に対応する前記検出最近接表面点の少なくとも一部に基づいて、前記球状校正データが決定される。
【0202】
複数の実施形態において、前記方法は、前記回転クロマティックレンジセンサを動作させて、前記複数の第1表面部に対して、前記球状校正部材から概ね前記第2スタンドオフ距離の位置で前記回転クロマティックレンジセンサの前記光学ペンを使って、前記回転軸周りに前記半径距離検出ビームを回転させて、前記回転動作中に取得する球状半径距離データセットを提供することを含む。前記第2スタンドオフ距離で検出された各表面部に対応する半径距離データの各セットが演算処理されて、前記回転クロマティックレンジセンサの前記光学ペンに最も近い点であることを表わす、検出最近接表面点が決定される。前記第2スタンドオフ距離での前記複数の表面部に対応する前記検出最近接表面点の少なくとも一部に基づいて、前記球状校正データが決定される。
【0203】
CRS光学プローブを含むクロマティックレンジセンサ(CRS)用の校正システムが提供される。この校正システムは、CRS光学プローブのミスアライメント誤差を補正するための円筒校正データを提供可能な円筒校正部材と、CRS光学プローブのミスアライメント誤差を補正するための球状校正データを提供可能な球状校正部材と、CRS光学プローブに対して円筒校正部材および球状校正部材を位置決めするように構成された定盤と、を備える。
【0204】
前記円筒校正部材は、少なくとも、Z方向の中心軸をもった第1の円筒校正面を有する。前記CRS光学プローブは、前記円筒校正部材に関するZ方向の第1Z座標位置で、回転軸周りに半径距離検出ビームを回転させて、その回転中に取得される第1の円筒半径距離データセットを提供するように構成されている。前記円筒半径距離データセットは、回転軸周りの半径距離検出ビームの検知回転角度を参照する。前記検知回転角度を参照する第1の円筒半径距離データセットは演算処理されて、円筒校正データが決定される。
【0205】
前記球状校正部材は、球状校正面を有する。前記球状校正面上の複数の第1表面部の各表面部に対し、前記CRS光学プローブは、前記球状校正部材から概ね第1スタンドオフ距離の位置で前記光学ペンを使って、前記回転軸周りに半径距離検出ビームを回転させて、その回転中に取得される球状半径距離データセットを、それぞれの表面部に応じて提供するように構成されている。検出された各表面部に対応する半径距離データの各セットは演算処理されて、前記光学ペンに最も近い点を表わす、検出最近接表面点が決定される。前記球状校正データは、複数の表面部に対応する検出最近接表面点の少なくとも一部に基づいて決定される。
【0206】
複数の実施形態では、円筒校正部材および球状校正部材が定盤に載置されている。
【0207】
本発明の好ましい実施形態を説明したが、ここに示した構成および動作手順についての多くの変形例が、この開示内容に基づいて当業者には明らかである。例えば、ここに開示されたCMMは、どのようなタイプの従来型CMMであってもよく、及び/又は、座標値の決定に光学プローブを利用するどのような他のタイプの機器であってもよい(例えば、光学プローブを利用するロボットプラットフォーム等)。他の例として、ここに開示されたCRS光学プローブに加えて、他のタイプの光学プローブをここに開示されたシステム装置及び構成に利用することもできる(例えば、他の非接触式の白色光光学プローブを利用する場合も、同様に、ここに開示された自由空間型光ファイバカップリングを介して光をその光学プローブに伝送することができること等)。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25A
図25B
図26
図27A
図27B
図27C