(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】描画装置及び描画方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20241216BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20241216BHJP
H01J 37/20 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
H01L21/30 541D
H01L21/30 541W
H01L21/30 541L
G03F7/20 504
H01J37/20 A
(21)【出願番号】P 2021102369
(22)【出願日】2021-06-21
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】中山 貴仁
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 修
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 裕登
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-260248(JP,A)
【文献】特開2015-213113(JP,A)
【文献】特開2014-127569(JP,A)
【文献】特開2014-157953(JP,A)
【文献】特開2011-227768(JP,A)
【文献】特開2004-095862(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0181828(US,A1)
【文献】米国特許第04442361(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H01J 37/00-37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームを放出する荷電粒子源と、
前記荷電粒子ビームを描画対象物に照射する描画部と、
前記描画対象物を保持するステージと、
前記ステージを、前記ステージの面内方向及び前記ステージの上面と垂直方向に移動させる駆動部
であって、前記ステージを前記垂直方向に移動させるアクチュエータを備える駆動部と、
前記描画対象物の前記上面の高さ位置を測定する第1測定器と、
前記描画対象物の前記面内方向の位置を測定する第2測定器と
前記ステージを前記面内方向に移動させながら、前記荷電粒子ビームを照射させるとともに、前記描画対象物の
前記荷電粒子ビームが照射される領域の前記高さ位置
と前記アクチュエータの感度係数とに基づき、前記
領域の高さが一定になるように、前記駆動部を制御して前記ステージを前記垂直方向に移動させ
、前記ステージを前記垂直方向に移動させることにより、前記第2測定器の設置誤差に依存して前記面内方向に生じる位置ずれを補正する制御部と、
を備える描画装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記描画対象物に前記荷電粒子ビームを照射しながら、前記描画対象物の前記上面の前記高さ位置を測定する請求項1に記載の描画装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記アクチュエータの
前記感度係数を求め、更新する、
請求項1
または2に記載の描画装置。
【請求項4】
描画対象物を保持したステージを前記ステージの面内方向に移動させながら、前記描画対象物に荷電粒子ビームを照射させるとともに、前記描画対象物の
前記荷電粒子ビームが照射される領域の高さ位置
と、前記ステージを前記ステージの上面と垂直方向に移動させるアクチュエータの感度係数とに基づき、前記
領域の高さが一定になるよう、駆動部を制御して前記ステージを前
記垂直方向に移動させ
、前記ステージを前記垂直方向に移動させることにより、前記描画対象物の前記面内方向の位置を測定する測定器の設置誤差に依存して前記面内方向に生じる位置ずれを補正する、描画方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、描画装置及び描画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、LSI(Large Scale Integrated Circuit)等の高集積化に伴い、半導体デバイスは年々微細化されている。半導体デバイスは、縮小投影型露光装置を用いて、石英上に形成された高精度の原画パターン(マスク、或いは特にステッパやスキャナで用いられるものはレチクルともいう。以下、総称してマスクと記載する)をウェーハ上に縮小転写することで形成される。マスクは、電子ビームなどを用いた荷電粒子ビーム描画装置(以下、電子ビームを用いた荷電粒子ビーム描画装置を「電子ビーム描画装置」と記載する)によって描画される。ここで、描画とは、電子ビーム等を対象物に照射することによって対象物(例えばマスク)に所望のパターンを形成することを意味する。
【0003】
電子ビーム描画装置として、例えば、一度に複数の電子ビームを照射するマルチビーム方式の電子ビーム描画装置(以下、マルチビーム描画装置と記載することがある)が知られている。このマルチビーム描画装置では、例えば、電子銃から放出された電子ビームが、複数の開口部(穴)を有するアパーチャ部材(成形アパーチャアレイ基板とも記載する)を通過することでマルチビームが形成される。そして、マルチビームを形成する各電子ビームは、ブランキングプレートにおいてブランキング制御される。ブランキングプレートを通過した電子ビームは、光学系で縮小され、描画対象のマスク上の所望の位置に照射される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
電子ビーム描画装置では、電子ビームの焦点は、対物レンズを用いて、マスクの表面に合わせられる。電子ビーム描画装置は、マスクの表面に凹凸が存在する場合、描画中にダイナミック(動的)に焦点補正(ダイナミックフォーカス)を行う必要がある。ダイナミックフォーカスを行うと、マスクの表面において電子ビームの像が所望の像から回転し、電子ビームの像の倍率が所望の倍率から変動するため、マスクに照射される電子ビームの位置精度が劣化してしまう。特に、マルチビーム描画装置では、シングルビーム描画装置と比較して1回の照射で同時に照射される電子ビームの本数が多い(例えば数十万本)。そのため、マルチビーム全体に対して電子ビームの像の回転と電子ビームの像の倍率変動とが生じると、許容できない位置誤差が生じ得る。そのため、マルチビーム描画装置では、マスクのビーム照射位置の高さに応じて電子ビームのダイナミックフォーカスと、回転、伸縮の調整を同時に行うことが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、実施形態は、マスク表面高さを一定に保ち、マスク面内の位置誤差の抑制が可能な荷電粒子ビーム描画装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る描画装置は、荷電粒子ビームを放出する荷電粒子源と、荷電粒子ビームを描画対象物に照射する描画部と、描画対象物を保持するステージと、ステージを、ステージの面内方向及びステージの上面と垂直方向に移動させる駆動部であって、ステージを垂直方向に移動させるアクチュエータを備える駆動部と、描画対象物の上面の高さ位置を測定する第1測定器と、描画対象物の面内方向の位置を測定する第2測定器と、ステージを面内方向に移動させながら、荷電粒子ビームを照射させるとともに、描画対象物の荷電粒子ビームが照射される領域の高さ位置とアクチュエータの感度係数とに基づき、領域の高さが一定になるように、駆動部を制御してステージを垂直方向に移動させ、ステージを垂直方向に移動させることにより、第2測定器の設置誤差に依存して面内方向に生じる位置ずれを補正する制御部と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
実施形態によれば、マスク表面高さを一定に保ち、マスク面内の位置誤差の抑制が可能な描画装置及び描画方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るマルチビーム描画装置の概略図である。
【
図2】
図2は、XY平面におけるZステージ、ミラー、保持部、及びXY座標検出器の関係の一例を示した図である。
【
図3】
図3は、Zステージ、及びミラーの斜視図である。
【
図4】
図4は、YZ平面におけるZステージ、及びミラーの一例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、YZ平面におけるZステージ、及びミラーの一例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、YZ平面におけるZステージ、及びミラーの一例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、YZ平面におけるZステージ、及びミラーの一例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、YZ平面におけるZステージと、保持部と、マスクとの関係の一例を示した図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る描画方法の一例のフローチャートである。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る描画方法の一例のフローチャートである。
【
図11】
図11は、第1実施形態の変形例1に係るマルチビーム描画装置の部分概略図である。
【
図12】
図12は、YZ平面におけるXステージと、第1Z駆動部と、第2Z駆動部と、Zステージと、保持部と、の関係の一例を示した図である。
【
図13】
図13は、YZ平面におけるXステージと、第3Z駆動部と、Zステージと、第4Z駆動部と、保持部と、の関係の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付す。また、以下に示す各実施形態は、この実施形態の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、実施形態の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。実施形態の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
<1>第1実施形態
図1は、第1実施形態に係る荷電粒子マルチビームを用いた描画装置の概略図である。本実施形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の他の荷電粒子ビームでもよい。
【0012】
図1に示す描画装置1は、マスクやウェーハ等の対象物に電子ビームを照射して所望のパターンを描画する描画部2と、描画部2による描画動作を制御する制御部3とを備える。
【0013】
描画部2は、電子ビーム鏡筒(単に鏡筒と記載しても良い)100及び描画室(チャンバーと記載しても良い)200を有している。
【0014】
電子ビーム鏡筒100及び描画室200は、密封された内部空間を形成する。そして、空気中の気体分子と電子ビームとの干渉を避けるため、または電子ビーム鏡筒100上部に設けられ、高熱になる電子銃を保護するため、描画装置1は、電子ビーム鏡筒100及び描画室200の中の気体を排気する排気機構(不図示)を備える。排気機構には、例えばターボ分子ポンプなどの真空ポンプが用いられる。
【0015】
電子ビーム鏡筒100内には、電子銃110、照明レンズ120、成形アパーチャアレイ基板130、ブランキングプレート140、縮小レンズ150、制限アパーチャ部材160、対物レンズ170、及び偏向器180が配置されている。
【0016】
電子銃110(荷電粒子源)は、電子ビーム400(荷電粒子ビーム)を放出する。
【0017】
照明レンズ120は、電子銃110から放出された電子ビーム400を、成形アパーチャアレイ基板130全体に対してほぼ垂直に照明するように制御する。照明レンズ120は、例えば電磁レンズである。
【0018】
成形アパーチャアレイ基板130は、電子ビーム400から所定の形状のマルチビーム500を形成する。具体的には、成形アパーチャアレイ基板130には、開口部(穴)が所定の配列ピッチでマトリクス状に形成されている。各開口部は、共に同じ寸法形状の矩形又は円形で形成される。例えば、電子ビーム400の一部がこれらの複数の開口部を通過することで、複数(例えば数十万本)の電子ビームからなるマルチビーム500が形成される。
【0019】
ブランキングプレート140は、成形アパーチャアレイ基板130の複数の開口部を通過したマルチビーム500のブランキング制御を行う。具体的には、ブランキングプレート140には、形成されたマルチビーム500の各々に対応するように複数の開口部が形成されている。ブランキングプレート140の各開口部には、対となる2つの電極の組(ブランカ:ブランキング偏向器)が、それぞれ配置される。各電子ビーム用の2つの電極の一方には、電圧を印加するアンプ(不図示)が配置され、各電子ビーム用の2つの電極の他方は接地される。各開口部を通過する電子ビームは、それぞれ独立に、対となる2つの電極に印加される電圧によって偏向される。この電子ビームの偏向によって、ブランキング制御される。このように、複数のブランカが、成形アパーチャアレイ基板130の複数の開口部を通過したマルチビーム500のうち、それぞれ対応する電子ビームのブランキング制御を行う。
【0020】
縮小レンズ150は、ブランキングプレート140で偏向されなかったマルチビーム500を、制限アパーチャ部材160に形成された中心の開口部でクロスオーバーを形成するように偏向する。縮小レンズ150は、例えば電磁レンズである。
【0021】
制限アパーチャ部材160は、中心に開口部(穴)を備える。制限アパーチャ部材160は、ブランキングプレート140によって制限アパーチャ部材160を通過するようにブランキング制御された各電子ビームを、中心の開口部を通過させる。制限アパーチャ部材160は、ブランキングプレート140によって制限アパーチャ部材160を通過しないようにブランキング制御された各電子ビームを遮蔽する。このように制限アパーチャ部材160によって電子ビームを遮蔽することを「電子ビームをオフする」等と記載する。また、制限アパーチャ部材160によって電子ビームを通過させることを「電子ビームをオンする」等と記載する。このように、制限アパーチャ部材160は、ブランキングプレート140のブランカによってオフになるように偏向された各電子ビームを遮蔽する。そして、電子ビームがオンになってからオフになるまでに制限アパーチャ部材160を通過した電子ビームが、1回分のショットのビームとなる。以下、制限アパーチャ部材160を通過したマルチビームをマルチビーム600と表記する。
【0022】
対物レンズ170は、制限アパーチャ部材160を通過したマルチビーム600の焦点を調整し、所望の縮小率の像を形成する。対物レンズ170は、例えば電磁レンズである。
【0023】
偏向器180は、制限アパーチャ部材160を通過した各電子ビーム(マルチビーム600全体)を同方向にまとめて偏向する。これにより、所望のマルチビーム600が後述するマスク等の描画対象物300上に照射される。偏向器180は、少なくとも4極の電極群により構成される。
【0024】
描画室200内には、基台210と、それぞれ基台210上に支持されるY駆動部220、X駆動部240、Z駆動部260、ステージ270、ミラー271、保持部272、ひさし273、及びアースピン274が、例えば順次配置される。また、描画室200の側面には、XY座標検出器280、描画室の上面には、Z座標検出器290が設けられる。これら座標検出器は、検出回路を有する。
【0025】
基台210上に設けられるY駆動部220は、ステージ270をステージ面内のY方向に沿って動かす駆動機構である。Y駆動部220は、例えばモーターやエアベアリングなどを備える。
【0026】
X駆動部240は、ステージ270をステージ面内のX方向(Y方向と直交する方向)に沿って動かす駆動機構である。X駆動部240は、例えばモーターやエアベアリングなどを備える。
【0027】
Z駆動部260は、ステージ270をステージ面に垂直なZ方向に沿って動かす。Z駆動部260は、複数の圧電素子等応答性のよいアクチュエータで構成することができる。この場合、個々のアクチュエータを独立して制御することが可能である。つまり、個々のアクチュエータを独立して制御することで、ステージ270の傾きを制御し、バランス調整を行うことができる。また、Z駆動部260としては、一つのアクチュエータであっても良い。なお、Z駆動部260に用いられるアクチュエータとしては、横移動を昇降に変換するモーター等バックラッシがあるものは適当ではない。応答性がよく(例えば動作速度が数10Hz以上)、十分なストローク(例えば数μm)が得られ、ダイレクトドライブできる構成であればよく、圧電アクチュエータに限定されるものではない。Z駆動部260は、描画中に描画対象物300の高さムラ等を補正する為に用いられる。従って、Y駆動部220、X駆動部240、及びZ駆動部260により、ステージ270を、ステージ270の面内方向及びステージ270の上面の垂直方向に移動させる駆動部が構成される。
【0028】
ミラー271は、ステージ270のY方向の座標(Y座標)を測定するためのYミラー2711、及びX方向の座標(X座標)を測定するためのXミラー2712により構成される。
【0029】
XY座標検出器280は、ステージ270のY座標及びX座標を検出するためのレーザー測定機構である。
図2に示すように、XY座標検出器280は、ステージ270のY座標を測定するためのY座標検出器281と、ステージ270のX座標を測定するためのX座標検出器282と、を備える。Y座標検出器281及びX座標検出器282は、それぞれYミラー2711及びXミラー2712に向かってレーザー光を照射し、反射したレーザー光の位相に基づいて距離を測定する。XY座標検出器280とミラー271とを含む構成が、ステージ270(描画対象物300)の面内方向の位置ずれを測定する1つの測定器として機能する。
【0030】
Z座標検出器290は、マスク等の描画対象物300のZ座標(以下、「高さ位置」とも表記する)を検出するためのレーザー測定機構である。具体的にはZ座標検出器290は、描画対象物300に対して斜め方向にレーザー光293を照射し、描画対象物300の表面(上面)によって反射されたレーザー光293を受光することで、描画対象物300のZ座標を測定する。
【0031】
保持部272は、ステージ270上に設けられ、マスク等の描画対象物300が支持される。描画対象物300として、例えば、ウェーハや、ウェーハにエキシマレーザーを光源としたステッパやスキャナ等の縮小投影型露光装置や極端紫外線露光装置を用いてパターンを転写するマスクブランク等の露光用のマスクが挙げられる。以下例示として、描画対象物としてマスクを用いて説明する。
【0032】
ひさし273は、ステージ270上に設けられ、アースピン274を備える。アースピン274はマスク300に接触し、ひさし273を介して接地する。
【0033】
制御部3は、制御回路310と、偏向制御回路320と、ステージ位置検出回路330と、ステージ駆動制御回路340と、感度更新回路350と、角度判定回路360と、マップ生成回路370と、記憶部380と、を備える。
【0034】
制御回路310は、制御部3の全体を制御する。
【0035】
偏向制御回路320は、電子銃110、照明レンズ120、縮小レンズ150、対物レンズ170、及び偏向器180を制御する。
【0036】
ステージ位置検出回路330は、XY座標検出器280、及びZ座標検出器290を制御する。
【0037】
ステージ駆動制御回路340は、Y駆動部220、X駆動部240、及びZ駆動部260を制御する。
【0038】
感度更新回路350は、記憶部380に記憶されたデータに基づいてZ駆動部260におけるアクチュエータの感度係数を導出する。詳細については後述する。
【0039】
角度判定回路360は、ミラー271のミラー角度を算出する。詳細については後述する。
【0040】
マップ生成回路370は、マスク300の表面におけるZマップを生成する。詳細については後述する。
【0041】
記憶部380は、例えば不揮発性の記憶部であり、種々のデータを記憶する。
【0042】
なお、制御回路310と、偏向制御回路320と、ステージ位置検出回路330と、ステージ駆動制御回路340と、感度更新回路350と、角度判定回路360と、マップ生成回路370と、はコンピュータで実行されるソフトウェアであっても良い。
【0043】
図2は、XY平面におけるステージ270、ミラー271、保持部272、及びY座標検出器281、X座標検出器282の一例を示した配置図である。
【0044】
図2に示すように、ステージ270の上には、マスク300を配置するためのマスク配置領域275が設けられる。そして、マスク配置領域275には、複数(
図2では例えば3つ)の保持部272が設けられる。
【0045】
図3は、ステージ270、及びミラー271の斜視図である。
図4~
図7は、YZ平面におけるステージ270、及びミラー271の一例を示す断面図である。
【0046】
図4に示すように、Y座標検出器281に向けられたYミラー2711のレーザー光反射面と、ステージ270上面との角度Θ(ミラー角度)が90度であることが好ましい。
【0047】
図5に示すように、Yミラー2711のミラー角度Θが90度より大きい場合、ステージ270がZ方向に距離dh1だけ移動すると、
図6に示すように、Yミラー2711がY座標検出用レーザー光を反射するZ座標2711Bは、Z座標2711Aから距離dh1だけ変動する。このとき、Y方向においても、距離dw1だけ変動してしまう。
図7に示すように、Yミラー2711のミラー角度Θが90度未満である場合も同様である。このように、Yミラー2711のミラー角度Θが90度よりも大きいまたは小さい場合、ステージ270を、Z方向のみ移動させたにも関わらず、Y方向の座標が変動してしまう。
【0048】
なお、
図4~
図7では、Yミラー2711に焦点を当てて説明した。しかし、Xミラー2712に関しても同様である。従って、Yミラー2711またはXミラー2712のミラー角度Θが90度ではない場合、すなわちYミラー2711及びXミラー2712を含む測定器に設置誤差が生じた場合、ステージ270の高さ位置に基づいて、面内方向に位置ずれが生じる。
【0049】
次に、
図8に、YZ平面におけるステージ270と、保持部272と、マスク300の一例を示す。
【0050】
図8に示すように、保持部272上に配置されるマスク300は、中心が下方にたわみ、端部が上方にたわんでいる。このたわみは、例えば気圧変動により変動する。
図8の場合、マスク300の中心のZ座標(300A)と、マスク300の端部のZ座標(300B)との距離はdh2となる。
【0051】
図8のように、マスク300がたわんでいたり、凹凸がある場合、照射位置の高さに応じてマルチビーム600の焦点を調整する必要がある。
【0052】
本実施形態に係る描画装置1では、描画位置の高さが一定になるようにステージ270の位置を制御する。
【0053】
以下に、本実施形態に係る描画装置1を用いた描画方法の一例について説明する。
図9は、本実施形態に係る描画方法の一例のフローチャートである。
【0054】
[S1001]
制御回路310は、マスク300に描画を行う前に、Z駆動部260を駆動するアクチュエータの感度を測定する。ここで、
図10を用いて、アクチュエータの感度の測定方法について説明する。
【0055】
[S2001]
アクチュエータの感度を測定するに際し、保持部272上にマスクを配置しても良いし、保持部272上にマスク300を配置しなくても良い。また、Z駆動部260の感度を測定する為のマークをマスク300に設けても良いし、ステージ270に直接設けても良い。
【0056】
ステージ駆動制御回路340は、アクチュエータ動作させ、ステージ270をZ方向に駆動する。Z座標の設定値svは、例えば記憶部380に記憶されている。
【0057】
[S2002]
Z座標検出器290は、マスク300、またはステージ270に設けられたマークのZ座標を測定する。そして、Z座標検出器290は、測定したマークのZ座標の測定値Zmeasを、記憶部380に記憶する。
【0058】
[S2003]
制御回路310は、測定すべきマークのZ座標を全て測定したか否かを判定する。制御回路310は、測定すべきマークのZ座標を全て測定した場合、測定終了(S2003、YES)とし、ステップS2004に進む。全て測定していない場合、ステップS2001に戻る。
【0059】
[S2004]
感度更新回路350は、記憶部380に記憶されたZ座標の設定値svと、測定値Zmeasと、を読み出して、アクチュエータの感度係数kを算出する。一例としては、Z座標が設定値svのときのZ高さをZmeas、Z座標が設定値sv+ΔsvのときのZ高さをZmeas+ΔZmeasとすると、ΔZmeas=k*Δsvを満たすようなkを算出し、記憶部380に記憶する。なお、感度更新は、描画中に実行されてもよい。
【0060】
[S1002]
制御回路310は、ミラー271のミラー角度を測定する。
【0061】
具体的には、ステージ駆動制御回路340は、Z駆動部260によりステージ270を移動させながら、ステージ270上の基準マークを走査してマーク位置を検出することによりステージ位置を検出する。そして、ステージ位置検出回路330は、XY座標検出器280を介して、Y座標、及びX座標の変動を検出する。XY座標検出器280は、例えばY座標、及びX座標の変動を記憶部380に記憶する。そして、角度判定回路360は、例えば記憶部380に記憶されたY座標、及びX座標を読み出し、Z座標との関係に基づいて、Yミラー2711のミラー角度と、Xミラー2712のミラー角度と、を算出する。そして、角度判定回路360は、算出したYミラー2711のミラー角度と、Xミラー2712のミラー角度と、に基づいて、Yミラー2711のミラー角度係数fと、Xミラー2712のミラー角度係数gと、を算出し、記憶部380に記憶する。
【0062】
[S1003]
これらの事前測定を行った後、マスク300に描画を開始する。
【0063】
[S1004]
制御回路310は、記憶部380に記憶されているZ駆動部260を構成するアクチュエータの感度係数kを読み出す。
【0064】
[S1005]
制御回路310は、記憶部380に記憶されているYミラー2711のミラー角度係数fと、Xミラー2712のミラー角度係数gと、を読み出す。
【0065】
[S1006]
ステージ位置検出回路330は、マスク300の表面の高さを取得する。具体的には、ステージ駆動制御回路340は、Y駆動部220、及びX駆動部240を駆動させる。そして、ステージ位置検出回路330は、マスク300の所定の領域のX座標及びY座標に対応するZ座標を検出する。なお、マスク300の表面の高さは、記憶部380に記憶されているZマップ(Y座標、X座標と、Z座標との対応関係を示すマップ)を読み出すことにより、取得されてもよい。この場合、マップ生成回路370は、事前に検出されたデータを用いてマスク300の表面のZマップを生成し、記憶部380に記憶させる。なお、このとき、ひさし273が配置されているため、Z座標検出器290ではマスク300外周の高さ測定ができないが、
図11に示すように、Z座標検出器290に代えてX(Y)駆動部240上にZ座標検出器251を設け、ステージ270との距離を測定してマスク300の表面の高さを測定することにより、リアルタイムで高さ測定が可能である。
【0066】
[S1007]
制御回路310は、マスク300の描画中に、ステージ270の高さを補正する。具体的には、制御回路310は、予め求められた感度係数k及びマスク表面のZ座標に基づき、マスク300のマルチビームが照射される領域のZ座標が一定となるように、ダイナミックにステージ駆動制御回路340を制御する。このとき、ミラー角度係数f、ミラー角度係数gに基づき、XY位置ずれを求め、XY位置ずれを吸収するように、Y駆動部220、X駆動部240を駆動制御してステージトラッキングを行う。
【0067】
このようにして、上述した、ミラー271の反射面の傾きや、マスクのたわみ、凹凸を考慮してマスク300のZ座標の制御ができる。その結果、描画位置におけるマスク面の高さを一定に制御することができる。
【0068】
[S1008]
制御回路310は、描画が終了したか否かを判断し、終了するまでステップS1004~S1008を繰り返す。
【0069】
上述した実施形態に係る描画装置1では、予め求められた感度係数k及びマスク表面のZ座標を用いて、ダイナミックにステージ270のZ座標を変動させることにより、マスク300のマルチビームが照射される領域のZ座標を一定にすることができる。
【0070】
また、本実施形態に係る描画装置1は、マスク300への描画前に、Yミラー2711のミラー角度係数fと、Xミラー2712のミラー角度係数gと、を算出し、Z座標の変動に伴うXY方向の位置ずれを求めて偏向器180により照射位置を制御する。これにより、Z座標を変動しても、高い位置精度で描画することができる。
【0071】
<2>第2実施形態
次に、第2実施形態について説明する。第1実施形態では、Z駆動部260を、マスク300の描画中にダイナミックに駆動できる構成として説明した。しかし、第2実施形態では、マスク300のZ座標を制御する他の構成を説明する。なお、第1実施形態と同じ構成についての説明は省略する。
【0072】
図12を用いてマスク300のZ座標を調整するための機構について説明する。
【0073】
図12に示すように、ステージ270の下部には、Z駆動部として、第1Z駆動部261と、第2Z駆動部262と、が設けられている。
【0074】
第1Z駆動部261は、ステージ270をZ方向に沿って動かす駆動機構である。第1Z駆動部261としては、例えば超音波モーターを用いることができる。第1Z駆動部261は、マスク300の厚さの公差を例えば数百μmの範囲で補正する為に用いられ、描画中は固定される。第1Z駆動部261は、大きな公差を補正できる一方で応答性が悪くなるので、マスク300への描画中にダイナミックに動作できない。そのため、第1Z駆動部261は、スタティック(静的)な駆動部として用いられる。
【0075】
第2Z駆動部262は、ステージ270をZ方向に沿って動かす駆動機構である。第2Z駆動部262としては、1つ、または複数のアクチュエータ(圧電素子)を用いることができる。第2Z駆動部262は、実施形態1と同様に、描画中にマスク300の高さを補正する為に用いられる。第2Z駆動部262は、例えば数μm以上の範囲でZ座標を補正できるものを用いることができる。第2Z駆動部262は、第1Z駆動部261より応答性が良いものを用いることにより、マスク300への描画中にダイナミックに動作できる。そのため、第2Z駆動部262は、ダイナミックな駆動部として用いられる。
【0076】
なお、第1Z駆動部261と、第2Z駆動部262と、の位置は入れ替わっても良い。第1Z駆動部261、第2Z駆動部262は、それぞれステージ駆動制御回路340によって制御される。
【0077】
図13を用いてマスク300のZ座標を調整するための更に他の機構について説明する。
【0078】
図13は、YZ平面における第3Z駆動部263と、ステージ270と、第4Z駆動部264と、保持部272と、の一例を示した図である。
【0079】
図13に示すように、ステージ270の下方には、第3Z駆動部263が設けられている。また、ステージ270上には、保持部272との間に、第4Z駆動部264が設けられている。第3Z駆動部263は、上述した第1Z駆動部261と同様にスタティックな駆動部として用いられる。また、第4Z駆動部264は、上述した第2Z駆動部262と同様にダイナミックな駆動部として用いられる。
【0080】
以上のように、本実施形態に係る描画装置1によれば、スタティックな駆動部と、ダイナミックな駆動部と、を組み合わせることで、第1実施形態と比較し、更に柔軟にマスク300の表面のZ座標の補正を行うことができる。
【0081】
また、上述した各実施形態において、Z駆動部260を動作させるために必要な領域におけるZ座標を取得し、Z調整すればよい。例えばストライプ毎に調整してもよい。
【0082】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施することが可能である。また、図面については、すべての構成を示すものではなく、一部不図示としている。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示された構成要件を適宜組み合わせることによって種々の発明が抽出される。例えば、開示された構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、所定の効果が得られるものであれば、発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0083】
1…描画装置 2…描画部 3…制御部 100…電子ビーム鏡筒 110…電子銃 120…照明レンズ 130…成形アパーチャアレイ基板 140…ブランキングプレート 150…縮小レンズ 160…制限アパーチャ部材 170…対物レンズ 180…偏向器 200…描画室 210…基台 220…Y駆動部 240…X駆動部 251…Z座標検出器 260、261、262、263、264…Z駆動部 270…ステージ 271…ミラー 272…保持部 273…ひさし 274…アースピン 275…マスク配置領域 280…XY座標検出器 281…Y座標検出器 282…X座標検出器 290…Z座標検出器 293…レーザー光 300…マスク 310…制御回路 320…偏向制御回路 330…ステージ位置検出回路 340…ステージ駆動制御回路 350…感度更新回路 360…角度判定回路 370…マップ生成回路 380…記憶部 400…電子ビーム 500…マルチビーム 600…マルチビーム 2711…Yミラー 2712…Xミラー