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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】食品切除装置、及び、食品切除システム
(51)【国際特許分類】
   A22C 17/00 20060101AFI20241216BHJP
   B26D 3/26 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
A22C17/00
B26D3/26 602G
B26D3/26 602M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021168152
(22)【出願日】2021-10-13
(65)【公開番号】P2023058251
(43)【公開日】2023-04-25
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】柏原 直哉
(72)【発明者】
【氏名】田中 基雅
(72)【発明者】
【氏名】今村 光
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-136003(JP,A)
【文献】特開昭60-156342(JP,A)
【文献】実開昭63-008874(JP,U)
【文献】特公昭51-013710(JP,B2)
【文献】特開2002-211509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C 17/00
B26D 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品の端部を切除する回転刃と、
前記食品の端部をすくい上げて、前記食品の切断必要部位を前記回転刃に誘導するすくい爪ブロックと、を備え、
前記すくい爪ブロックは、
前記食品の端部を迎え入れる前端部に向かって上面が下方傾斜する案内面と、
前記案内面の後方側に形成されて前記回転刃が上方から挿入される受溝と、
前記前端部の下方に向かってエアを吹き出すエア吹き出し部と、を備えていることを特徴とする食品切除装置。
【請求項2】
前記エア吹き出し部は、前記すくい爪ブロックの下方に所定幅で開口し、当該すくい爪ブロックの前記前端部の下方に連通するエア案内溝を備えていることを特徴とする請求項1に記載の食品切除装置。
【請求項3】
前記エア案内溝の前端側には、前記前端部に向かって下方傾斜して延びる傾斜片が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の食品切除装置。
【請求項4】
前記エア案内溝の一部は、前記受溝の下方に配置されて前記受溝と上下方向で連通していることを特徴とする請求項2または3に記載の食品切除装置。
【請求項5】
前記すくい爪ブロックは、前記食品を載置する載置面との間に隙間が確保されることを特徴する請求項1~4のいずれか1項に記載の食品切除装置。
【請求項6】
食品を略水平な一方向に搬送する搬送装置と、
前記食品の端部を切除する食品切除装置と、
前記食品切除装置を、略水平方向において、前記搬送装置の搬送方向と交差する向きに移動させる交差移動装置と、
前記食品切除装置を鉛直軸周りに旋回させる旋回装置と、を備え、
食品切除装置は、
前記食品の端部を切除する回転刃と、
前記食品の端部をすくい上げて、前記食品の切断必要部位を前記回転刃に誘導するすくい爪ブロックと、を備え、
前記すくい爪ブロックは、
前記食品の端部を迎え入れる前端部に向かって上面が下方傾斜する案内面と、
前記案内面の後方側に形成されて前記回転刃が上方から挿入される受溝と、
前記前端部の下方に向かってエアを吹き出すエア吹き出し部と、を備えていることを特徴とする食品切除システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食肉等の食品の端部を切除する食品切除装置、及び、食品切除システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
食肉の生産工程において、屠畜・解体・脱骨の工程を経た食肉には、余分な皮・脂肪、及び、筋が含まれることがある。これらの除去・整形(トリミング)は、現状人手ですべて行われている。刃物を持った作業は危険であり、低温下の作業は非常に重労働である。さらに人手不足などの背景から近年はロボットによる自動化が求められている。
【0003】
食肉の余剰部の除去を自動化する装置としては、ウォータージェットを用いたもの等が知られている。しかし、この装置は高価で大型な装置であることから、より安価で小型の装置の案出が望まれている。
【0004】
食品を取り扱う技術以外では、布や紙等の薄いワークを回転刃を用いて切除する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に記載の装置は、丸刃式の回転刃の下方にカット台が配置され、そのカット台に、回転刃が上方から挿入される切溝と、切溝方向にワークを案内するすくい爪が設けられている。すくい爪は、前端部側に向かって収斂するように、その上面側が前下方に傾斜している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開昭63-8874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
食肉等の食品の端部(余剰部)を切除する装置に、特許文献1に記載の技術を適用することが考えられる。しかし、食肉等の食品は、軟質で載置台上に貼り付きやすいうえ、切除部の形状やサイズにばらつきがあることから、すくい爪上に切除対象部を安定して誘導することが難しく、切除対象部である食品の端部の切除が不安定になることが懸念される。具体的には、すくい爪による食品の端部のすくい上げ時に、すくい爪の先端部が食品の端部に接触したときに食品の端部が不規則な方向に撓み、食品の端部が回転刃の方向に安定姿勢で誘導されなくなる。
【0008】
そこで本発明は、簡単な構成により食品の端部を安定して切除することができる食品切除装置、及び、食品切除システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る食品切除装置、及び、食品切除システムは、上記課題を解決するために、以下の構成を採用した。
即ち、本発明に係る食品切除装置は、食品の端部を切除する回転刃と、前記食品の端部をすくい上げて、前記食品の切断必要部位を前記回転刃に誘導するすくい爪ブロックと、を備え、前記すくい爪ブロックは、前記食品の端部を迎え入れる前端部に向かって上面が下方傾斜する案内面と、前記案内面の後方側に形成されて前記回転刃が上方から挿入される受溝と、前記前端部の下方に向かってエアを吹き出すエア吹き出し部と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
上記の構成により、食品が食品切除装置まで搬送されてくると、エア吹き出し部からすくい爪ブロックの先端部の下方に向けてエアが吹き出される。これにより、食品の端部が上方に吹き上げられ、すくい爪ブロックの案内面上にスムーズに乗り上がる。案内面上に乗り上がった食肉の端部は、案内面に沿ってすくい爪ブロック上の受溝部分に誘導される。受溝部分では、回転刃の回転によって食肉の端部が切除される。
【0011】
前記エア吹き出し部は、前記すくい爪ブロックの下方に所定幅で開口し、当該すくい爪ブロックの前記前端部の下方に連通するエア案内溝を備えるようにしても良い。
【0012】
この場合、エア案内溝にエアが供給されると、そのエアは、エア案内溝を通ってすくい爪ブロックの前端部の下方に吹き出される。このとき、食品を載置する載置面からすくい爪ブロックにはエアの吹出圧による反力が作用する。これにより、すくい爪ブロックと載置面の間には適切な隙間が維持される。この結果、食品の載置面に対するすくい爪ブロックの干渉が回避され、食品の端部を安定して切除することが可能になる。
【0013】
前記エア案内溝の前端側には、前記前端部に向かって下方傾斜して延びる傾斜片が設けられるようにしても良い。
【0014】
この場合、エア案内溝を通ってすくい爪ブロックの前端部に吹き出されるエアは、傾斜片に当たることにより、すくい爪ブロックの前端部の下方に向いて吹き出されるようになる。この結果、吹き出されたエアが載置面上の食品の端部の下面側に吹き込み、食品の端部がより上方に浮き上がり易くなる。したがって、本構成を採用した場合には、すくい爪ブロックによる食品の端部のより安定したすくい上げと、回転刃による食品の端部の確実な切除が可能になる。
【0015】
前記エア案内溝の一部は、前記受溝の下方に配置されて前記受溝と上下方向で連通するようにしても良い。
【0016】
この場合、エア案内溝内に供給されたエアの一部は、受溝と回転刃の間の隙間にも流れ込むようになる。このため、受溝の周縁に付着する食品の破断屑がエアによって引き剥がされ、受溝の周縁への破断屑の堆積が防止される。これにより、食品切除装置を連続使用した場合にも、受溝の周縁に堆積した食品の破断屑が、回転刃への食品の端部の安定した誘導を阻害するのを防ぐことができる。したがって、本構成を採用した場合には、食品の端部を常に安定して切除することが可能になる。
また、本構成の場合、受溝がエア案内溝を通してすくい爪ブロックの下方に開口することから、メンテナンス時に、すくい爪ブロックの下方から受溝の内部を容易に清掃することができる。
【0017】
前記すくい爪ブロックは、前記食品を載置する載置面との間に隙間が確保されることが望ましい。
【0018】
この場合、食品を載置した搬送装置の載置面がすくい爪ブロックの下方を通過する際に、載置面がすくい爪ブロックと干渉するのを回避することができる。また、本食品切除装置は、エア吹き出し部からすくい爪ブロックの前端部にエアを吹き出すことで食品の端部を浮き上がられることができるため、すくい爪ブロックと載置面の間に隙間があっても食品の端部をすくい爪ブロックの案内面上に確実に誘導することができる。
【0019】
また、本発明に係る食品切除システムは、食品を略水平な一方向に搬送する搬送装置と、前記食品の端部を切除する食品切除装置と、前記食品切除装置を、略水平方向において、前記搬送装置の搬送方向と交差する向きに移動させる交差移動装置と、前記食品切除装置を鉛直軸周りに旋回させる旋回装置と、を備え、食品切除装置は、前記食品の端部を切除する回転刃と、前記食品の端部をすくい上げて、前記食品の切断必要部位を前記回転刃に誘導するすくい爪ブロックと、を備え、前記すくい爪ブロックは、前記食品の端部を迎え入れる前端部に向かって上面が下方傾斜する案内面と、前記案内面の後方側に形成されて前記回転刃が上方から挿入される受溝と、前記前端部の下方に向かってエアを吹き出すエア吹き出し部と、を備えていることを特徴とする。
【0020】
上記の構成により、食品が搬送装置によって所定速度で食品切除装置方向に搬送されてくると、食品の特定の端部の切除角度と回転刃の向きが合致するように食品切除装置の鉛直軸周りの角度が旋回装置によって調整される。食品切除装置は、この状態において、交差移動装置によって搬送装置の搬送方向と交差する向きに所定速度で移動操作される。この結果、食品切除装置の回転刃は、搬送装置による食品の移動ベクトルと、交差移動装置による食品切除装置の移動ベクトルの合成ベクトルによって決まる方向において食品の特定の端部を横切るようになる。このとき、食品の特定の端部は、予め決められた位置と角度で切除されることになる。
また、食品切除装置が食品の端部を切除する際には、すくい爪ブロックのエア吹き出し部から前端部下方に向かってエアが吹き出され、食品の端部がすくい爪ブロックの案内面上に安定して乗り上がるようになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る食品切除装置、及び、食品切除システムは、すくい爪ブロックに、当該すくい爪ブロックの前端部の下方に向かってエアを吹き出すエア吹き出し部が設けられている。このため、エア吹き出し部から吹き出されるエアにより、食品の端部を載置面から浮き上がらせ、すくい爪ブロック上の案内面上に安定して乗り上がらせることができる。したがって、本発明に係る食品切除装置、及び、食品切除システムを採用した場合には、簡単な構成により、回転刃によって食品の端部を安定して切除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態の食品切除システムの概略構成図。
図2】切除する食品の一例を示す平面図。
図3】実施形態の食品切除装置の斜視図。
図4】実施形態の食品切除装置のすくい爪ブロックを示す斜視図。
図5】実施形態の食品切除装置の縦断面図。
図6】実施形態の食品切除装置の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は、本実施形態の食品切除システム1の概略構成図である。図2は、食品切除システム1で取り扱う食品の一例である鳥の腿部の肉片2を示す平面図である。なお、肉片2は、解体と脱骨の工程を終え、骨の配置に沿って全体を展開した腿部の肉片である。
食品切除システム1は、図1に示すように、上面に肉片2を載置した載置台3(例えば、樹脂製のパレット)を略水平な一方向に搬送する搬送装置10と、載置台3上に載置された肉片2の端部2a(図2参照)を切除する食品切除装置11と、食品切除装置11を、略水平方向において、搬送装置10の搬送方向と直交する方向(以下、単に「直交方向」と称する。)に移動させる交差移動装置12と、食品切除装置11を鉛直軸Ov周りに旋回させる旋回装置13と、を備えている。
なお、図1では、パレット等の載置台3に肉片2が載置される搬送装置10の形態が記載されているが、搬送装置10は、連続移動するコンベアベルトの上に肉片2を載置して搬送するものであっても良い。
【0025】
搬送装置10は、サーボモータ14によって回転駆動される無端ベルト15を備えている。載置台3は、無端ベルト15に、無端ベルト15の送り方向に沿って複数取り付けられている。搬送装置10の上流側には、軟骨等を取り除いた肉片2が作業者よって載せ置かれる載置エリアA1と、載置台3上の肉片2の画像情報を撮像装置25を通して取得する撮像エリアA2が設けられている。食品切除装置11、交差移動装置12、旋回装置13等は、搬送装置10の撮像エリアA2よりも下流側に配置されている。
【0026】
食品切除装置11は、肉片2の端部2aを切除する回転刃16と、載置台3上に載置された肉片2の端部2aをすくい上げて、肉片2の切断必要部位を回転刃16に誘導するすくい爪ブロック17と、を備えている。回転刃16は、丸刃式の回転刃であり、モータ23によって回転駆動される。モータ23の回転軸は、水平方向に延びている。
【0027】
交差移動装置12は、床面F上に設置された支持フレーム18の上部(搬送装置10よりも上方位置)に取り付けられている。交差移動装置12は、支持アーム19がリニアガイド20に案内されて直交方向に移動可能とされている。支持アーム19は、直交方向に沿って延びるボールねじ21に支持されている。ボールねじ21は、サーボモータ22によって回転駆動される。したがって、支持アーム19は、サーボモータ22による回転により、直交方向に移動操作される。
【0028】
旋回装置13は、支持アーム19に取り付けられている。旋回装置13は、減速機付きのサーボモータによって構成されている。サーボモータの回転軸13aは、鉛直軸Ovに沿って下方に延び、回転軸13aの下端に食品切除装置11が取り付けられている。
【0029】
搬送装置10、交差移動装置12、旋回装置13の各サーボモータは、制御装置24によって制御される。制御装置24は、撮像エリアA2で撮像装置25によって撮像した肉片2の画像情報を取得し、取得した画像情報に基づいて各肉片2の切断位置と切断角度を特定する。制御装置24は、食品切除装置11の回転刃16によって各肉片2の切断必要部位を切除し得るように前記各サーボモータを制御する。
【0030】
載置台3に載置されて食品切除装置11まで搬送されてくる肉片2は、例えば、図2に示すような形態とされている。
図2に示す肉片2は、肉片2の本体部2bの周囲に、皮や脂肪、筋等の切除対象部位(以下、これらの部位を単に「端部2a」と称する。)が4箇所配置されている。本実施形態では、上述のように撮像装置25から取得した画像情報を基にして、各端部2aの切断位置と切断角度が特定され、各端部2aが切断線L1,L2,L3,L4に沿って回転刃16によって切断される。
【0031】
図3は、食品切除装置11の斜視図であり、図4は、食品切除装置11のすくい爪ブロック17の斜視図である。図5図6は、食品切除装置11の縦断面図である。図5は、載置台3上の肉片2の端部2aを切除する直前の状態を示し、図6は、肉片2の端部2aを切除している状態を示している。
これらの図に示すように、食品切除装置11のすくい爪ブロック17は、金属によって略L字状の側面視形状に形成されている。即ち、すくい爪ブロック17は、水平方向に延びる略一定幅のブロック本体部17aと、ブロック本体部17aの延び方向の一端側から鉛直上方に延びる略一定幅のブロック取付部17bと、を有する。ブロック本体部17aの延び方向の他端側は、肉片2が載置台3に載置されて搬送されてきたときに肉片を迎え入れる側となる。以下、ブロック本体部17aの延出方向の他端部を「前端部」と称し、ブロック本体部17aの延出方向の一端側部分を「後部」と称する。
【0032】
ブロック本体部17aの上面は、後部から延び方向の中央領域の前端部寄り部分にかけが前端部側に向かって緩やかに下方傾斜している。以下、この部分を「緩傾斜域」と称する。ブロック本体部17aの上面のうちの、緩傾斜域によりも前端部寄り部分は、前端部に向かって緩傾斜域よりも急角度で下方傾斜している。この急角度で下方傾斜する部分は、肉片2の端部2aを案内する案内面26とされている。ブロック本体部17aの上面の緩傾斜域には、回転刃16の下部領域が上方から挿入される受溝27が形成されている。受溝27は、ブロック本体部17aの幅方向略中央において、ブロック本体部17aの延び方向に沿ってスリット状に形成されている。
【0033】
また、ブロック本体部17aには、当該ブロック本体部17aの前端部の下方に向かって高圧のエアを吹き出すエア吹き出し部28が設けられている。エア吹き出し部28は、ブロック本体部17aの後部側の端面から前方に延びるエア導入孔28aと、ブロック本体部17aの延び方向の中央領域から前端部の近傍にかけて、ブロック本体部17a(すくい爪ブロック17)の下方に所定幅で開口するエア案内溝28bと、エア案内溝28bの前端側において、ブロック本体部17aの前端部に向かって下方傾斜して延びる傾斜片28cと、を備えている。
【0034】
エア導入孔28aの後端部には、エア導入ホース29を接続するための接続プラグ30が取り付けられている。エア導入ホース29は、図示しないエア供給装置に接続されている。エア導入孔28aには、エア導入ホース29を介してエア供給装置から高圧のエアが供給される。
【0035】
エア案内溝28bは、ブロック本体部17aのうちの、エア導入孔28aと連通する位置から傾斜片28cの付根部の近傍に達する範囲に亘って略一定幅に形成されている。エア案内溝28bは、前端側の一部を除く主要な領域が受溝27の下方に配置されている。エア案内溝28bは、受溝27と上下方向で連通している。なお、エア案内溝28bの溝幅は、受溝27の溝幅よりも充分に広くなっている。このため、エア案内溝28bの溝幅によって決まるエア吹き出し部28の前部側の吹き出し幅は、回転刃16の厚み(受溝27の幅)に比較して充分に広く設定されている。
【0036】
また、すくい爪ブロック17のブロック取付部17bは、回転刃駆動用のモータ23(図1参照)を支持するブロック(旋回装置13の回転軸13aに固定されたブロック)にボルト締結等によって一体に固定されている。
【0037】
ここで、すくい爪ブロック17は、実際に食品切除装置11によって肉片2の端部を切除する際に、図5図6に示すように、肉片2の載置される載置台3の上面3a(載置面)との間に微小な隙間dができるように旋回装置13に保持される。エア導入孔28aからエア案内溝28b内に導入された高圧のエアは、図5図6中の矢印で示すように、ブロック本体部17aの前端部側の下面と載置台3の上面3aとの間の隙間dを通って前端部側に流れる。
【0038】
また、傾斜片28cは、エア案内溝28bの前縁部の下端よりも僅かに高い位置からブロック本体部17aの前端部に向かって下方傾斜している。より具体的には、傾斜片28cは、上面側が案内面26の前端側部分を構成し、下面側がエア案内溝28bの前縁部の下端よりも高い位置から前端部側に向かって下方傾斜している。傾斜片28cの前端部は、ブロック本体部17aの下面の他の部位よりも低い位置(載置台3の上面3aに近接する位置)まで延びている。したがって、エア案内溝28bに沿って前端部側に流れる高圧のエアは、傾斜片28cの下面に案内され、ブロック本体部17aの前端部の下方に向かって吹き出される。このとき、傾斜片28cの前端部では載置台3の上面3aとの間の隙間が狭まっているため、前方に吹き出されるエアの流速は増速される。
【0039】
<食品切除システム1の動作>
つづいて、食品切除システム1の動作について説明する。
肉片2は、図1に示す載置エリアA1において、搬送装置10を流れる載置台3上に作業者によって載せ置かれる。この後、載置台3とともに撮像エリアA2まで移動した肉片2は、撮像装置25によって撮像され、撮像された画像情報が制御装置24に送られる。
制御装置24では、送られた画像情報を基にして肉片2の切断位置と切断角度を特定し、制御信号を旋回装置13と交差移動装置12に出力する。
【0040】
旋回装置13と交差移動装置12は、対象とする載置台3上の肉片2が規定の位置まで移動した時点で、制御装置24からの制御信号に基づいて作動を開始する。具体的には、最初に、食品切除装置11の回転刃16の向きが肉片2の切除対象の端部2aの切除角度(切断線の角度)と合致するように旋回装置13が旋回する。この後、食品切除装置11が搬送装置10の搬送方向と直交する向きに所定速度で移動するように交差移動装置12が作動する。この間、食品切除装置11の回転刃16は所定の回転速度で回転する。この結果、食品切除装置11の回転刃16は、搬送装置10による載置台3(肉片2)の移動ベクトルと、交差移動装置12による食品切除装置11の移動ベクトルの合成ベクトルによって決まる方向において肉片2の切除対象の端部2aを横切るようになる。このとき、肉片2の端部2aは、予め決められた位置と角度で切除される。
【0041】
また、食品切除装置11の回転刃16によって肉片2の端部が切除される際には、図5に示すように、すくい爪ブロック17のエア吹き出し部28から高圧のエアが吹き出される。高圧のエアは、すくい爪ブロック17の前端部の下方に向けて吹き出されるため、すくい爪ブロック17の前端部に近づく載置台3上の肉片2の端部2aに対し、その下面側に回り込むように吹き付けられる。この結果、肉片2の端部2aは、図5に示すように、上方に浮き上がり、すくい爪ブロック17の案内面26上に安定して乗り上がる。
この後、肉片2と食品切除装置11の相対移動が進むと、肉片2の端部2aは、案内面26によって案内されつつ受溝27の位置まで移動し、図6に示すように、切断対象部位が回転刃16によって切断される。
【0042】
<実施形態の効果>
以上のように、本実施形態の食品切除装置11は、すくい爪ブロック17に、すくい爪ブロック17の前端部の下方に向かってエアを吹き出すエア吹き出し部28が設けられている。このため、エア吹き出し部28から吹き出されるエアにより、肉片2の端部2aを載置台3の上面から浮き上がらせ、すくい爪ブロック17上の案内面26上に安定して乗り上がらせることができる。この結果、肉片2の端部2aは、案内面26に沿って安定姿勢で回転刃16に誘導され、切断対象部位を確実に切除される。また、肉片2の端部2aに孔や窪みがある場合でも、エアの吹き出しによって肉片2の端部2aを案内面26上に乗り上がらせることができるため、肉片2の端部2aの切除を確実に行うことができる。
したがって、本実施形態の食品切除装置を採用した場合には、簡単な構成により、回転刃16によって肉片2の端部2aを安定して切除することができる。
【0043】
また、本実施形態の食品切除装置11は、下方に所定幅で開口するエア案内溝28bがすくい爪ブロック17に設けられ、そのエア案内溝28bがすくい爪ブロック17の前端部の下方に連通してエア吹き出し部28の一部を構成している。このため、エア案内溝28bにエアが供給されると、そのエアは、エア案内溝28bと載置台3の上面3aの間の隙間を通ってすくい爪ブロック17の前端部の下方に吹き出される。このとき、すくい爪ブロック17は、載置台3の上面3aからエアの吹出圧による反力を受けるため、すくい爪ブロック17と載置台3の間には適切な隙間が維持される。
したがって、本構成を採用した場合には、載置台3の上面3aに対するすくい爪ブロック17の干渉を回避し、肉片2の端部2aを安定して切除することが可能になる。
【0044】
また、本実施形態の食品切除装置11は、すくい爪ブロック17のエア案内溝28bの前端側に、すくい爪ブロック17の前端部に向かって下方傾斜して延びる傾斜片28cが設けられている。このため、エア案内溝28bを通ってすくい爪ブロック17の前端部に吹き出されるエアは、傾斜片28cに当たることにより、すくい爪ブロック17の前端部の下方に向いて吹き出される。この結果、吹き出されたエアが載置台3上の肉片2の端部2aの下面側に吹き込み、肉片2の端部2aがより上方に浮き上がり易くなる。
したがって、本構成を採用した場合には、すくい爪ブロック17による肉片2の端部2aのより安定したすくい上げと、回転刃16による肉片2の端部2aの確実な切除が可能になる。
【0045】
さらに、本実施形態の食品切除装置11は、エア案内溝28bの一部がすくい爪ブロック17の受溝27の下方に配置され、受溝27と上下方向で連通している。このため、エア案内溝28b内に供給されたエアの一部は、受溝27と回転刃16の間の隙間にも流れ込む。これにより、回転刃16の回転時に受溝27の周縁に付着する肉片2の破断屑がエアによって引き剥がされ、受溝27の周縁への破断屑の堆積が防止される。この結果、食品切除装置11を連続使用した場合にも、受溝27の周縁に堆積した肉片2の破断屑が、回転刃16への肉片2の端部2aの安定した誘導を阻害するのを防ぐことが可能になる。
したがって、本構成を採用した場合には、肉片2の端部2aを常に安定して切除することが可能になる。
【0046】
また、本構成の食品切除装置11は、受溝27がエア案内溝28bを通してすくい爪ブロック17の下方に開口することから、メンテナンス時に、すくい爪ブロック17の下方から受溝27の内部を容易に清掃できる、という利点もある。
【0047】
また、本構成の食品切除装置11では、すくい爪ブロック17と載置台3の上面3a(載置面)との間に隙間dが確保されている。このため、肉片2を載置した載置台3の上面3a(載置面)がすくい爪ブロック17の下方を通過する際に、載置台3の上面3aがすくい爪ブロック17と干渉するのを回避することができる。本実施形態の食品切除装置11は、エア吹き出し部28からすくい爪ブロック17の前端部にエアを吹き出すことで肉片2の端部を上方に浮き上がられることができるため、すくい爪ブロック17と載置台3の上面3aの間に隙間dがあっても肉片2の端部をすくい爪ブロック17の案内面26上に確実に誘導することができる。
【0048】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
例えば、上記の実施形態では、端部を切除する食品が鶏肉(食肉)の肉片であるが、取り扱う食品は、肉片に限定されるものではない。食品としては、餃子や焼売の皮や、薄焼き卵等の他の様々なものであって良い。本発明に係る食品切除装置は、載置台等に貼り付き易い軟質な食品を扱うときに特に有効となる。
【符号の説明】
【0049】
1…食品切除システム
2…肉片(食品)
3a…上面(載置面)
2a…端部
10…搬送装置
11…食品切除装置
12…交差移動装置
13…旋回装置
16…回転刃
17…すくい爪ブロック
26…案内面
27…受溝
28…エア吹き出し部
28b…エア案内溝
28c…傾斜片
d…隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6