(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】ブランキングアパーチャアレイシステム及び荷電粒子ビーム描画装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20241216BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20241216BHJP
H01J 37/305 20060101ALI20241216BHJP
H01J 37/147 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
H01L21/30 541W
H01L21/30 541B
G03F7/20 504
H01J37/305 B
H01J37/147 C
(21)【出願番号】P 2021189582
(22)【出願日】2021-11-22
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 啓
(72)【発明者】
【氏名】木村 隼人
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-152485(JP,A)
【文献】特開2015-228471(JP,A)
【文献】特開2014-39011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
H01L 21/027
H01J 37/00-37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチ荷電粒子ビーム照射装置に用いられるブランキングアパーチャアレイシステムにおいて、
ビーム照射に使用される制御データの1つである第1データ及び前記第1データから生成された前記第1データの誤りを検出するための第1誤り検出符号を出力するデータ出力回路と、
直列に接続された複数のレジスタを含み、前記データ出力回路から入力された前記第1データ及び前記第1誤り検出符号を転送するシフトレジスタと、
前記複数のレジスタのうちの1つである第1レジスタから出力された前記第1データを前記第1レジスタから受け取るバッファと、
前記バッファから出力された前記第1データに基づく電圧を受ける電極と、
前記複数のレジスタのうちの最終段のレジスタから前記第1データ及び前記第1誤り検出符号を受け取り、
前記最終段のシフトレジスタから受け取った前記第1データから、前記第1データの誤りを検出するための第2誤り検出符号を生成し、
前記最終段のレジスタからの前記第1誤り検出符号と、前記第2誤り検出符号とが一致する場合に一致を示し、不一致である場合に不一致を示す検出信号を生成する、
誤り検出回路と、
を備えるブランキングアパーチャアレイシステム。
【請求項2】
マルチ荷電粒子ビーム照射装置に用いられるブランキングアパーチャアレイシステムにおいて、
ビーム照射に使用される制御データの1つである第1データ及び前記第1データから生成された前記第1データの誤りを検出するための第1誤り検出符号を出力するデータ出力回路と、
直列に接続された複数のレジスタを含み、前記データ出力回路から入力された前記第1データ及び前記第1誤り検出符号を転送するシフトレジスタと、
前記複数のレジスタのうちの1つである第1レジスタから出力された前記第1データを前記第1レジスタから受け取るバッファと、
前記バッファから出力された前記第1データに基づく電圧を受ける電極と、
前記複数のレジスタのうちの最終段のレジスタから前記第1誤り検出符号を受け取り、
前記バッファから出力され、前記第1レジスタによって受け取られ、前記シフトレジスタを介して転送された前記第1データを前記最終段のレジスタから受け取り、
前記最終段のレジスタから受け取った前記第1データから、前記第1データの誤りを検出するための第2誤り検出符号を生成し、
前記最終段のレジスタからの前記第1誤り検出符号と、前記第2誤り検出符号とが一致する場合に一致を示し、不一致である場合に不一致を示す検出信号を生成する、
誤り検出回路と、
を備えるブランキングアパーチャアレイシステム。
【請求項3】
前記第1データ及び前記第1誤り検出符号は次の制御データである第2データが前記シフトレジスタに送り込まれると同時にシフトされ、前記誤り検出回路入力に入力される、
請求項1又は請求項2に記載のブランキングアパーチャアレイシステム。
【請求項4】
前記第1データ及び前記第2誤り検出符号を前記データ出力回路に出力する制御装置を備える、
請求項1又は請求項2に記載のブランキングアパーチャアレイシステム。
【請求項5】
移動可能なステージと、
前記ステージに向けて荷電粒子ビームを照射するビーム源と、
前記ビーム源と前記ステージとの間に位置する、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の前記ブランキングアパーチャアレイシステムと、
前記第1データ及び前記第2誤り検出符号を前記データ出力回路に出力する制御装置と、
を備える荷電粒子ビーム描画装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、概してブランキングアパーチャアレイシステム及び荷電粒子ビーム描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造にマスクが使用される。微細な素子を形成するために、マスクのパターンも微細であることが要求される。微細なパターンを有するマスクを形成するために、マスクの材料に対して、電子ビームを使用してパターンが描画される。マスクを効率的に形成するために、複数の電子ビームを使用する描画方式(マルチビーム描画方式)が使用され得る。
【0003】
マルチビーム描画方式では、電子ビームが、複数のアパーチャを有するマスク(成形アパーチャアレイプレート)を通過させられて、マルチビームが形成される。マルチビームは、複数のアパーチャを有するブランキングアパーチャアレイ機構に向かう。各ビームは、ブランキングアパーチャアレイ機構によって、個別に偏向され、偏向されたビームは遮蔽物に当たることにより、マスクに到達しない。
【0004】
ブランキングアパーチャアレイ機構は、各アパーチャの周囲に、当該アパーチャを通過するビームを偏向させるための機構を含む。この機構は電極、及び電極に電圧を印加するための電子回路の素子を含む。電子回路は、ブランキングアパーチャアレイ機構の外部から供給された、ブランキングアパーチャアレイ機構のブランカを制御するためのデータを伝送するとともに、電極に印加される電圧を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
描画のための電子ビームの放射により、ブランキングアパーチャアレイ機構中の電子回路の素子がダメージを受け得る。ダメージの蓄積により、素子の特性は劣化し得る。特性の劣化が、或る臨界点を超えると、電子回路の素子は故障し得、この場合、ブランキングアパーチャアレイ機構は正確に動作できなくなる。例として、電子回路の故障により、ブランキングアパーチャを制御するためのデータが正しく伝送されない。また、微細化に伴い大容量データを高速で転送するため、ビットエラーレートが低くてもまれに転送異常が発生する可能性がある。マスクは非常に微細なパターンを有するため、わずか1ビットのデータの伝送の失敗でさえマスクに欠陥を生成し得る。
【0007】
これを回避するために、描画の前にブランキングアパーチャアレイ機構が診断され得る。診断の時点で故障が発見された場合、描画の前に対処することが可能である。しかしながら、描画装置はほぼ常時稼働しているので、確率的に上記異常は描画の最中に発生する場合が多い。描画の最中に故障が検出されれば、例えば、故障を補償するように制御データを変更することにより、故障に対処することが可能である。このため、描画中に故障を検出する技術が望まれる。
【0008】
一方、描画は大量のデータが高速で伝送されることを要し、また、故障の検出ための描画の中断は望まれない。よって、描画中に、描画をできるだけ阻害しない形で故障を検出できる荷電粒子ビーム装置が望まれる。また、マルチビーム方式では大容量のデータを高速で送るため、ビットエラーレートが低くてもデータ変化することが起こり得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態による、マルチ荷電粒子ビーム照射装置に用いられるブランキングアパーチャアレイシステムは、データ出力回路と、シフトレジスタと、バッファと、電極と、誤り検出回路と、を含む。上記データ出力回路は、ビーム照射に使用される制御データの1つである第1データ及び上記第1データから生成された上記第1データの誤りを検出するための第1誤り検出符号を出力する。上記シフトレジスタは、直列に接続された複数のレジスタを含み、上記データ出力回路から入力された上記第1データ及び上記第1誤り検出符号を転送する。上記バッファは、上記複数のレジスタのうちの1つである第1レジスタから出力された上記第1データを上記第1レジスタから受け取る。上記電極は、上記バッファから出力された上記第1データに基づく電圧を受ける。上記誤り検出回路は、上記複数のレジスタのうちの最終段のレジスタから上記第1データ及び上記第1誤り検出符号を受け取り、上記最終段のシフトレジスタから受け取った上記第1データから、上記第1データの誤りを検出するための第2誤り検出符号を生成し、上記最終段のレジスタからの上記第1誤り検出符号と、上記第2誤り検出符号とが一致する場合に一致を示し、不一致である場合に不一致を示す検出信号を生成する。
【発明の効果】
【0010】
描画の進捗を大きく妨げることなく、描画中に制御データを転送する経路を検査することが可能なブランキングアパーチャアレイシステム及び荷電粒子ビーム描画装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る描画装置の要素を示す。
【
図2】
図2は、第1実施形態の制御装置のハードウェアによる構成を示す。
【
図3】
図3は、第1実施形態の成形アパーチャアレイプレートの構造をxy面に沿って示す。
【
図4】
図4は、第1実施形態のブランキングアパーチャアレイ機構の構造をxz面に沿って示す。
【
図5】
図5は、第1実施形態のブランキングアパーチャアレイ機構の構造をxy面に沿って示す。
【
図6】
図6は、第1実施形態のブランキングアパーチャアレイ機構の回路及び関連する要素を示す。
【
図7】
図7は、第1実施形態の制御回路の一部の要素及び接続、並びに関連する要素を示す。
【
図9】
図9は、第1実施形態の描画装置中のデータの転送及び生成を概略的に示す。
【
図10】
図10は、第2実施形態の制御回路の一部の要素及び接続、並びに関連する要素を示す。
【
図11】
図11は、第2実施形態の描画装置中のデータの転送及び生成を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に実施形態が図面を参照して記述される。以下の記述において、略同一の機能及び構成を有する構成要素は同一の参照符号を付され、繰返しの説明は省略される場合がある。略同一の機能及び構成を有する複数の構成要素が相互に区別されるために、参照符号の末尾にさらなる数字又は文字が付される場合がある。
【0013】
或る実施形態についての記述は全て、明示的に又は自明的に排除されない限り、別の実施形態の記述としても当てはまる。また、各機能ブロックは、ハードウェア、コンピュータソフトウェアのいずれか又は両者を組み合わせたものとして実現されることが可能である。各機能ブロックが、以下の例のように区別されていることは必須ではない。例えば、一部の機能が例示の機能ブロックとは別の機能ブロックによって実行されてもよい。さらに、例示の機能ブロックがさらに細かい機能サブブロックに分割されていてもよい。
【0014】
以下、xyz直交座標系が用いられて、実施形態が記述される。
【0015】
1.第1実施形態
1.1.構造(構成)
図1は、第1実施形態に係る描画装置の要素(構成)を示す。描画装置1は、例として、マルチ荷電粒子ビーム描画装置である。いくつかの要素は、後にさらに詳しく記述される。
【0016】
描画装置1は、制御回路系2及び描画機構3を含む。描画機構3は、荷電粒子ビームを生成し、この生成した荷電粒子ビームを試料6に照射することにより、試料6にパターンを描画する。試料6の例は、レジストが塗布されたマスク、又は、レチクルを含む。制御回路系2は、描画機構3の動作を制御する。
【0017】
描画機構3は、真空チャンバ31を含む。真空チャンバ31の内部は、描画装置1による試料6への描画の間、例えば真空に保たれる。真空チャンバ31は、ライティングチャンバ31a及び鏡筒31bから構成されている。
【0018】
ライティングチャンバ31aは、例えば直方体の形状を有し、内部に空間を有する。ライティングチャンバ31aは、試料6を収容する。ライティングチャンバ31aは、上面において開口を有し、開口において鏡筒31bの内部空間と接続されている。
【0019】
描画装置1は、また、ライティングチャンバ31a内において、ステージ310を含む。ステージ310の上面上には、描画の間、試料6が配置される。ステージ310は、試料6を実質的に水平に保持した状態で、x軸及びy軸に沿って移動することができる。ステージ310の上面上には、ミラー312x及びミラー312yが設けられている。ミラー312xはy軸に沿って延び、ミラー312yはx軸に沿って延びる。ミラー312x及び312yは、ステージ310の位置の検出のための基準として使用される。
【0020】
鏡筒31bは、z軸に沿って延びる円筒の形状を有し、例えばステンレスからなる。鏡筒31bの下端は、ライティングチャンバ31aの内部に位置する。また、描画装置1は、鏡筒31b内において、電子銃320、照明レンズ330、縮小レンズ331、及び対物レンズ332、成形アパーチャアレイプレート340、制限アパーチャアレイプレート341、ブランキングアパーチャアレイ機構(ブランキングアパーチャアレイシステム、ブランキングアパーチャアレイ基板)350、並びに偏向器360及び361を有する。
【0021】
電子銃320は、鏡筒31bの内部の上部に位置する。電子銃320は、例えば熱陰極型の電子銃であり、陰極、ウェネルト電極、及び陽極等の要素を含む。電子銃320は、電圧を受けると、z軸に沿った下方(-z方向)へ電子ビームEBを射出する。電子ビームEBは、z軸に沿って進行するに連れてxy面に沿って広がって行く。
【0022】
照明レンズ330は、環状の電磁レンズであり、電子銃320のz軸に沿った下方に位置する。照明レンズ330は、照明レンズ330に到達した、xy面に広がりを持つ電子ビームEBを、z軸に沿って平行に進行するように整形する。
【0023】
成形アパーチャアレイプレート340は、照明レンズ330のz軸に沿った下方に位置する。成形アパーチャアレイプレート340は、複数のアパーチャを有し、成形アパーチャアレイプレート340に入射する電子ビームEBの一部を、複数のアパーチャを通過させて、複数の電子ビームEBmへと分岐させる。
【0024】
ブランキングアパーチャアレイ機構350は、成形アパーチャアレイプレート340のz軸に沿った下方(-z方向)に位置する。ブランキングアパーチャアレイ機構350は、複数の電子ビームEBmを個別にブランキングする。ブランキングアパーチャアレイ機構350は、成形アパーチャアレイプレート340の開口のz軸に沿った下方(-z方向)にそれぞれが位置する複数のアパーチャ、及び各アパーチャの周囲に設けられたブランカを有する。各ブランカによって、当該ブランカが設けられた対象のアパーチャに入射した電子ビームEBmがブランキングされる。
【0025】
縮小レンズ331は、環状の電磁レンズであり、ブランキングアパーチャアレイ機構350のz軸に沿った下方(-z方向)に位置する。縮小レンズ331は、ブランキングアパーチャアレイ機構350を通過した互いに平行な複数の電子ビームEBmを、制限アパーチャアレイプレート341のアパーチャの中心へと集束させる。
【0026】
制限アパーチャアレイプレート341は、xy面に沿って広がる板状の形状を有し、xy面の中央においてアパーチャを有する。アパーチャは、縮小レンズ331を通過した複数の電子ビームEBmの集束点(クロスオーバーポイント)の近傍に位置する。ブランキングアパーチャアレイ機構350に設けられたブランカによってビームが偏向されたビームは、この制限アパーチャアレイプレート341の中央に設けられたアパーチャを通過することができず、制限アパーチャアレイプレート341に当たり、ブランキングされる。制限アパーチャアレイプレート341は、複数の電子ビームEBmにアパーチャを通過させることによって、電子ビームEBmのxy面に沿った形状を整形する。整形された複数の電子ビームEBmは、或る形状のショットを形成する。
【0027】
偏向器360は、制限アパーチャアレイプレート341のz軸に沿った下方(-z方向)に位置する。偏向器360には、制限アパーチャアレイプレート341から放射されるショット形状の電子ビームEBmが入射する。偏向器360は、電極の複数の対を含む。
図1では、図が不要に煩雑になることを避けるために、1対の電極のみが示されている。各対を構成する2つの電極は対向している。各電極は電圧を受け、偏向器360は、複数の電極への電圧の印加に応じて、入射した電子ビームEBmをx軸に沿って及び(又は)y軸に沿って偏向する。
【0028】
対物レンズ332は、環状の電磁レンズであり、偏向器360を囲む。対物レンズ332は、偏向器360と協働し、電子ビームEBmを試料6の特定の位置へとフォーカスする。
【0029】
偏向器361は、偏向器360のz軸に沿った下方(-z方向)に位置する。偏向器361には、偏向器360を通過した電子ビームEBmが入射する。偏向器360は、電極の複数の対を含む。
図1では、図が不要に煩雑になることを避けるために、1対の電極のみが示されている。各対を構成する2つの電極は対向している。各電極は電圧を受け、偏向器360は、複数の電極への電圧の印加に応じて、入射した電子ビームEBmをx軸に沿って及び(又は)y軸に沿って偏向する。
【0030】
制御回路系2は、制御装置21、電源装置22、レンズ駆動装置23、BAA制御ユニット24、照射量制御ユニット25、偏向器アンプ27、及びステージ駆動装置28を含む。
【0031】
制御装置21は、電源装置22、レンズ駆動装置23、BAA制御ユニット24、照射量制御ユニット25、偏向器アンプ27、及びステージ駆動装置28を制御する。制御装置21は、例えば、描画装置1のユーザからの入力を受け取り、この受け取った入力に基づいて、電源装置22、レンズ駆動装置23、BAA制御ユニット24、照射量制御ユニット25、偏向器アンプ27、及びステージ駆動装置28を制御する。
【0032】
電源装置22は、制御装置21から制御データを受け取り、この受け取った制御データに基づいて、電子銃320に電圧を印加する。
【0033】
レンズ駆動装置23は、制御装置21から制御データを受け取り、この受け取った制御データに基づいて、照明レンズ330を制御する。具体的には、レンズ駆動装置23は、電子ビームEBに対する照明レンズ330の強度、すなわち、電子ビームEBを屈折させる強度を制御する。レンズ駆動装置23は、照明レンズ330の強度を、照明レンズ330のz軸の上方から照明レンズ330に入射した、進行とともにxy面に沿って広がる電子ビームEBをz軸に実質的に平行な電子線に整形するように制御する。
【0034】
レンズ駆動装置23は、また、制御装置21から制御データを受け取り、この受け取った制御データに基づいて、縮小レンズ331の強度を制御する。レンズ駆動装置23は、縮小レンズ331の強度を、ブランキングアパーチャアレイ機構350のブランカによってブランキング偏向されることなく縮小レンズ331のz軸の上方から縮小レンズ331に入射した電子ビームEBmが制限アパーチャアレイプレート341のアパーチャの中心へと集束するように、制御する。
【0035】
レンズ駆動装置23は、さらに、制御装置21から制御データを受け取り、この受け取った制御データに基づいて、対物レンズ332の強度を制御する。レンズ駆動装置23は、対物レンズ332の強度を、対物レンズ332のz軸の上方から対物レンズ332に入射した電子ビームBMが試料6の上面にフォーカスするように、制御する。なお、レンズ駆動装置23は、電子ビームBMを縮小しても良い。
【0036】
BAA制御ユニット24は、制御装置21からBAA制御データを受け取り、この受け取った制御データに基づいて、ブランキングアパーチャアレイ機構350を制御する。
【0037】
照射量制御ユニット25は、制御装置21から制御データを受け取り、この受け取った制御データに基づいて、照射量制御データを生成する。照射量制御ユニット25は、生成した照射量制御データをBAA制御ユニット24に供給して、BAA制御ユニット24を介して電子ビームBMの試料6に対する照射量を制御する。
【0038】
偏向器アンプ27は、制御装置21から制御データを受け取り、この受け取った制御データに基づいて、偏向器360及び361のそれぞれを制御するための制御信号を生成する。この生成された制御信号は、それぞれ、偏向器360及び361に供給される。偏向器360のための信号は、偏向器360の各対の2つの電極の電位差を指定する。同様に、偏向器361のための信号は、偏向器361の各対の2つの電極の電位差を指定する。偏向器アンプ27は、偏向器360が、電子ビームEBmを制御装置21により指定される量及び(又は)向きだけ偏向させる電圧を受けるように、偏向器360のための信号を生成する。同様に、偏向器アンプ27は、偏向器361が、電子ビームEBmを制御装置21により指定される量及び(又は)向きだけ偏向させる電圧を受けるように、偏向器361のための信号を生成する。
【0039】
ステージ駆動装置28は、図示せぬレーザセンサ等の手段を用いて、ミラー312x及び312yの位置を測定し、この測定された位置に基づいてステージ310の位置を検出する。また、ステージ駆動装置28は、制御装置21から制御データを受け取り、この受け取った制御データに基づいて、ステージ310を駆動する。ステージ310の駆動により、試料6が、所望の位置へ移動する。
【0040】
図2は、第1実施形態の制御装置21の構成を示し、特に、ハードウェアによる構成を示す。
図2に示されるように、制御装置21は、プロセッサ211、ROM(read only memory)212、記憶装置213、入力装置214、出力装置215、及びインターフェイス216を含む。
【0041】
ROM212は、プロセッサを制御するためのプログラムを不揮発に記憶する。記憶装置213は、揮発性のメモリ、不揮発性のメモリ、及び(又は)ハードディスクを含み、データを保持する。プロセッサ211は、例えば、CPU(central processing unit)であり、ROM212に記憶されていて、記憶装置213にロードされたプログラムを実行することにより、種々の動作を行う。プロセッサ211は、プログラムに従って、記憶装置213、入力装置214、出力装置215、及びインターフェイス216を制御する。プログラムは、制御装置21、特にプロセッサ211に、種々の動作を行わせることができるように構成されている。
【0042】
入力装置214は、キーボード、マウス、及びタッチパネルの1つ以上を含み、描画装置1のユーザが指示及び(又は)パラメータを入力することを可能にする。出力装置215は、ディスプレイを含み、描画装置1のユーザに種々の情報を提示する。インターフェイス216は、制御装置21による電源装置22、レンズ駆動装置23、BAA制御ユニット24、照射量制御ユニット25、偏向器アンプ27、及びステージ駆動装置28との通信を司る。
【0043】
図3は、第1実施形態の成形アパーチャアレイプレート340の構造をxy面に沿って概略的に示す。
図3に示されるように、成形アパーチャアレイプレート340は、xy面に沿って広がり、例えば、矩形の形状を有する。成形アパーチャアレイプレート340は、例えば、ベースとしてシリコンを有し、ベースの表面を薄膜により覆われている。薄膜は、例えば、クロムであり、めっき又はスパッタにより形成されることが可能である。成形アパーチャアレイプレート340は、複数のアパーチャ340aを有する。アパーチャ340aは、成形アパーチャアレイプレート340のz軸に沿って対向する2つの面、すなわち上面と底面を貫く。アパーチャ340aは、例えば、x軸とy軸に沿って行列状に配列されている。アパーチャ340aは、例えば正方形であり、互いに実質的に同じ形状を有する。
【0044】
電子銃320から射出した電子ビームEBは、照明レンズ330によってz軸に沿って平行になるように整形され、成形アパーチャアレイプレート340の上面に入射する。入射した電子ビームEBのうちの一部は、成形アパーチャアレイプレート340によって遮蔽され、残りはアパーチャ340aを通過する。このような電子ビームEBの選択的な遮蔽と通過により、電子ビームEBが、z軸に沿って下方へ進行する複数の電子ビームEBmに分割(マルチ化)される。
【0045】
図4は、第1実施形態のブランキングアパーチャアレイ機構350の構造をxz面に沿って示す。
図4に示されるように、ブランキングアパーチャアレイ機構350は、基部351を含む。基部351はxy面に沿って広がる。
【0046】
基部351の上面上に、基板352が設けられている。基板352は、例えば、シリコン等の半導体からなる。基板352は、底面の縁において基板352の上面上に位置しており、中央部352aにおいて縁よりも薄い。また、基板352は、中央部352aにおいて、複数のアパーチャ353を含む。各アパーチャ353は、基板352の上面と底面に亘る。アパーチャ353は、xy面において配列されている。各アパーチャ353は、成形アパーチャアレイプレート340のアパーチャ340aのz軸に沿った下方に位置し、xy面において、例えば、アパーチャ340aのxy面における形状と相似の形状を有し、アパーチャ340aのxy面における形状よりやや大きい。また、各アパーチャ353の中心は、xy面上において成形アパーチャアレイプレート340のアパーチャ340aの中心と実質的に一致する。アパーチャ353は、成形アパーチャアレイプレート340のアパーチャ340aを通過した電子ビームEBmを通過させる。
【0047】
ブランキングアパーチャアレイ機構350は、また、複数の電極対354を含む。各電極対354は、それぞれ1つのアパーチャ340aのために設けられており、電極355及び356を含み、ブランカとして機能する。電極355及び356は、例えば銅を含むか、銅からなる。各電極対354の電極355及び356は、互いに離れており、当該電極対354が設けられる対象の1つのアパーチャ353を挟む。
【0048】
基板352のうち、隣り合う電極対354の間(ある電極対354の電極355と隣接した電極対354の電極356との間)の部分に、制御回路357が設けられている。各制御回路357は、1つの電極対354のために設けられている。各制御回路357は、種々の制御信号を受け取り、この受け取った制御信号に基づいて、当該制御回路357が設けられる対象の1つの電極対354に電圧を印加する。各制御回路357は、基板352に形成された複数のトランジスタ及び抵抗などの素子を含む。
【0049】
基板352の中央部352aの端に、データ出力回路359が設けられている。各データ出力回路359は、BAA制御ユニット24から制御データDLSを受け取り、この受け取った制御データDLSから、制御データDLSとは異なる形式の制御データDLをパラレルに出力する。データ出力回路359は、基板352に形成された複数のトランジスタ及び抵抗などの素子を含む。
【0050】
図5は、第1実施形態のブランキングアパーチャアレイ機構350の構造をxy面に沿って示す。
図5に示されるように、各電極356は、矩形から一辺が除かれた形状を有する。電極356の3つの辺は、当該電極356によって囲まれるアパーチャ353の3つの辺に沿って延びる。
図5は、例として、各電極356が、アパーチャ353のx軸に平行な2つの辺と、y軸に平行な2つの辺のうちの左側の辺に沿う構造を示す。
【0051】
各電極355は、対応するアパーチャ353の辺のうちの、当該電極355と電極対354を構成する電極356が沿わない辺に沿って延びる。
図5は、各電極355が、y軸に平行な2つの辺のうちの右側の辺に沿う構造を示す。
【0052】
電極356は接地されている。各電極355は、当該電極355に対応する1つの制御回路357と電気的に接続されている。
【0053】
各制御回路357は、上記のように、種々の制御信号を受け取る。制御信号は、クロック信号及び制御データDLを含む。制御信号は、BAA制御ユニット24から供給される。制御回路357は、また、内部電源電位VCC(例えば、5V)のノードと接続されている。
【0054】
各電極356は、共通(接地)電位VSS(例えば、0V)のノードと接続されている。
【0055】
図6は、第1実施形態のブランキングアパーチャアレイ機構350の回路図であり、さらに関連する要素を示す。
図6に示されるように、ブランキングアパーチャアレイ機構350は、複数のデータ出力回路359(359A、359B、…)を有する。各データ出力回路359は、BAA制御ユニット24からクロックを受け取り、また、当該データ出力回路359用の制御データDLS(DLSA、DLSB、…)を受け取る。すなわち、データ出力回路359Aは、BAA制御ユニット24から制御データDLSAを受け取り、データ出力回路359Bは、BAA制御ユニット24から制御データDLSBを受け取る。他のデータ出力回路359についても同様である。制御データDLSは、複数のビットからなる。
【0056】
各データ出力回路359は、制御回路357の組と接続されている。各データ出力回路359は、受け取った制御データDLSに基づいて、複数の制御データDLを並列に出力する。また、各データ出力回路359は、或る制御データDLについての誤り検出符号EDTを出力する。この実施形態では誤り検出符号EDTはデータ出力回路359によって生成されるものとして説明するが、BAA制御ユニット24によって生成されてもよい。データ出力回路359によって出力された誤り検出符号EDTは、当該データ出力回路359と制御回路357を介して接続された誤り検出回路358によって受け取られる。この受け取られた誤り検出符号EDTは、以下、送信誤り検出符号EDTと称される。
【0057】
制御データDLは、制御回路357の組に供給される。ブランキングアパーチャアレイ機構350は、さらに、ブランキングアパーチャアレイ機構350に含まれるデータ出力回路359の数と同じ数の誤り検出回路358、及び論理和(OR)ゲート3582を含む。各制御回路357は、後述のようにレジスタを含んでおり、制御回路357の組は、レジスタを介してデータを転送することができる。制御回路357の詳細については、後述される。
【0058】
各誤り検出回路358は、或る1組の制御回路357のために設けられており、当該1組の制御回路357のうちの或る複数の制御回路357と接続されている。誤り検出回路358と、対応する制御回路357の組との接続の詳細は、後述される。
【0059】
各誤り検出回路358は、当該誤り検出回路358と接続された複数の制御回路357から制御データDLを受け取る。各誤り検出回路358は、制御回路357を介して、データ出力回路359から、或る制御データDLと、当該制御データDLについての送信誤り検出符号EDTを受け取る。各誤り検出回路358は、この受け取った制御データDLと、送信誤り検出符号EDTとに基づいて、受け取った制御データDL中の誤りを検出する。具体的には、以下の通りである。
【0060】
各誤り検出回路358は、受け取ったデータ、すなわち制御データDLから、或る手法で誤り検出符号を生成する。使用され得る手法は、いかなるタイプのものであってもよく、手法の例は、CRC(cyclic redundancy check)、及びチェックサムを含む。以下、誤り検出回路358で生成される誤り検出符号は、算出誤り検出符号EDCと称される。
【0061】
或る制御データDLについての送信誤り検出符号EDTと算出誤り検出符号EDCとは、制御データDLが、データ出力回路359から正しく誤り検出回路358に伝送されていれば、一致しているはずである。この事実に基づいて、誤り検出回路358は、送信誤り検出符号EDTと算出誤り検出符号EDCとを照合する。
【0062】
誤り検出回路358は、或る制御データDLについての送信誤り検出符号EDTと、算出誤り検出符号EDCとが不一致である場合、不一致の旨を示す検出信号を出力する。この検出信号は、例えば、デジタル信号であり、ハイレベルによって不一致の検出を示す。
【0063】
ORゲート3582は、全ての誤り検出回路358からの検出信号を受け取る。ORゲート3582は、受け取られた検出信号のいずれか1つがハイレベルを有している場合、誤り検出の旨を示すハイレベルの報知信号を出力する。ORゲート3582によって出力された報知信号は、制御装置21に送信される。制御装置21は、誤り検出の旨を示す報知信号を受け取ると、例えば、
図2の出力装置215を使用して、誤り検出の旨をユーザに知らせる。
【0064】
図7は、第1実施形態のブランキングアパーチャアレイ機構350の一部のより詳細な回路図であり、1つのデータ出力回路359と直接又は間接的に接続される要素を代表として示す。他のデータ出力回路359と接続される部分も、
図7に示される要素及び接続を有する。
【0065】
上記のように、制御データDLSから、複数の制御データDLが形成される。
図7は、4つの制御データDLの例を示す。4つの制御データDLは、制御データDLa、DLb、DLc、及びDLdと称される。各制御回路357は、制御データDLa、DLb、DLc、又はDLdを受け取る。制御データDLa、DLb、DLc、及びDLdについての送信誤り訂正符号EDTは、それぞれ、送信誤り訂正符号EDTa、EDTb、EDTc、及びEDTdと称される場合がある。制御データDLa、DLb、DLc、及びDLdをそれぞれ受け取る制御回路357は、制御回路357a、357b、357c、及び357dと称される場合がある。
【0066】
各制御回路357は、1つのレジスタ(例えば、D型フリップフロップ)3571(3571a、3571b、3571c、3571d)、少なくとも1つのバッファ3572、及びレベルシフタ3573を含む。
図7及び以下の記述は、各制御回路357が1つのバッファ3572を含む例に基づく。
【0067】
各レジスタ3571及び各バッファ3572は、1ビットのデータを保持する。各制御回路357において、レジスタ3571の出力は、バッファ3572の入力に接続されている。各バッファ3572は、例えば、BAA制御ユニット24から制御信号を受け取り、この制御信号に基づいて、入力で受け取られているデータ保持し、また、制御信号に基づいて保持しているデータを出力する。各制御回路357は、直列接続された複数のバッファ3572を含んでいてもよい。
【0068】
各制御回路357において、バッファ3572の出力は、レベルシフタ3573の入力に接続されている。レベルシフタ3573は、受け取った入力の電圧レベルを変換して、入力に応じた大きさの電圧を出力する。出力される電圧は、当該電圧を出力する制御回路357が制御する対象の1つの電極355に印加される。各電極355への電圧の印加により、上記のように、当該電極355と、当該電極355と対を構成する電極356との間に電位差が形成される。この電位差によって、電極355及び356の間の領域に進入する電子ビームEBmの軌道が曲げられ、当該電子ビームEBmがブランキングされる。
【0069】
レジスタ3571は、BAA制御ユニット24から制御信号として、例えばクロックを受け取る。レジスタ3571は、信号線によって、データ出力回路359と接続されている。レジスタ3571は、信号線上で、データ出力回路359から制御データDL及び、当該制御データDLについての送信誤り訂正符号EDTを受け取る。レジスタ3571は、制御信号に基づいて、データ出力回路359から入力された制御データDL及び送信誤り訂正符号EDTを保持し、また、制御信号に基づいて、保持している制御データDL及び送信誤り訂正符号EDTをバッファ3572へ出力する。
【0070】
制御回路357aのレジスタ3571は、レジスタ3571aと称される。同様に、制御回路357bのレジスタ3571、制御回路357cのレジスタ3571、及び制御回路357dのレジスタ3571は、それぞれ、レジスタ3571b、3571c、及び3571dと称される。
【0071】
各レジスタ3571aは、隣のレジスタ3571aと信号線によって直列に接続され、直列接続されたレジスタ3571はシフトレジスタを構成する。すなわち、或るレジスタ3571aの出力は、別のレジスタ3571aの入力と直接に接続されている。同様に、レジスタ3571bは、直列に接続されてシフトレジスタを構成し、レジスタ3571cは、直列に接続されてシフトレジスタを構成し、レジスタ3571cは、直列に接続されてシフトレジスタを構成する。
【0072】
誤り検出回路358は、制御データDLの数と同じ数のレジスタ3580を含み、すなわち、現行の例では、レジスタ3580a、3580b、3580c、及び3580dを含む。レジスタ3580aは、直列接続されたレジスタ3571aの最終段のレジスタ3571aの出力を受け取る。同様に、レジスタ3580b、3580c、及び3580dは、それぞれ、直列接続されたレジスタ3571bの最終段のレジスタ3571bの出力、直列接続されたレジスタ3571cの最終段のレジスタ3571cの出力、及び直列接続されたレジスタ3571dの最終段のレジスタ3571dの出力を受け取る。誤り検出回路358は、レジスタ3580に保持されているデータについての算出誤り検出符号EDCを算出する。
【0073】
図8は、
図7の一部を示す。第n(nは自然数)段のレジスタ3571a、第n段のレジスタ3571b、第n段のレジスタ3571c、第n段のレジスタ3571dは、或る複数の電子ビームEBmのブランキングの制御のための制御データDLを受け取る。そのような制御データDLは、例えば、或る任意の種類の1回の動作でのブランキングを制御するためのデータである。このような或る1つの段中の3571a、3571b、3571c、及び3571dは、或る制御データDLを構成する制御データDLa、DLb、DLc、及びDLdを受け取り、以下、同じ段中のレジスタ3571a、3571b、3571c、及び3571dは、以下、レジスタセット3571Gと称される。
【0074】
第n段のレジスタ3571a、3571b、3571c、及び3571d中の制御データDLは、バッファセット3572Gに転送される。バッファセット3572Gは、或る1つの段中のレジスタセット3571Gの4つのレジスタ3571がそれぞれ含まれる4つの制御回路357の各々における計4つのバッファ3572からなる。
【0075】
1.2.動作
図9は、第1実施形態の描画装置1中のデータの転送及び生成を概略的に示す。特に、
図9は、或るレジスタセット3571G、このレジスタセット3571Gと接続されたるバッファセット3572G、及び誤り検出回路358中のデータについて示す。
【0076】
図9の最上段の部分に示されるように、データ出力回路359は、制御データAを出力する。制御データAは、或るビット列からなる制御データDLであり、或るビットの値の制御データDLa、DLb、DLc、及びDLdからなり、或る複数の電子ビームEBmのブランキングの制御のために互いに関連する複数ビットからなる。例えば、制御データAは、或る任意の種類の1回の動作でのブランキングを制御するためのデータである。出力された制御データAは、レジスタ3571を介して、或る段のレジスタセット3571Gにより受け取られる。
【0077】
図9の上から2段目の部分に示されるように、制御データAは、制御データAを受け取ったレジスタセット3571Gが含まれる制御回路357に含まれるバッファセット3572Gに転送される。
【0078】
具体的には、制御データAのうちの制御データDLaとして受け取られたデータは、第n段のレジスタ3571aが含まれる制御回路357中のバッファ3572に転送される。同様に、制御データAのうちの制御データDLbとして受け取られたデータは、第n段のレジスタ3571bが含まれる制御回路357中のバッファ3572に転送される。制御データAのうちの制御データDLcとして受け取られたデータは、第n段のレジスタ3571cが含まれる制御回路357中のバッファ3572に転送される。制御データAのうちの制御データDLdとして受け取られたデータは、第n段のレジスタ3571dが含まれる制御回路357中のバッファ3572に転送される。この後、制御データAは、バッファセット3572Gから、レベルシフタ3573の組に転送される(図示せず)。
【0079】
また、制御データAは、レジスタセット3571Gの段より後ろの段のレジスタ3571を介して、誤り検出回路358まで転送される。すなわち、制御データAのうちの制御データDLaとして受け取られたデータは、第n段のレジスタ3571aから、第(n+1)段及びそれ以降のレジスタ3571aを介して、誤り検出回路358のレジスタ3580aに到達する。制御データAのうちの制御データDLbとして受け取られたデータは、第n段のレジスタ3571bから、第(n+1)段及びそれ以降のレジスタ3571bを介して、誤り検出回路358のレジスタ3580bに到達する。制御データAのうちの制御データDLcとして受け取られたデータは、第n段のレジスタ3571cから、第(n+1)段及びそれ以降のレジスタ3571cを介して、誤り検出回路358のレジスタ3580cに到達する。制御データAのうちの制御データDLdとして受け取られたデータは、第n段のレジスタ3571dから、第(n+1)段及びそれ以降のレジスタ3571dを介して、誤り検出回路358のレジスタ3580dに到達する。
【0080】
図9の上から3段目の部分に示されるように、誤り検出回路358は、制御データAについての誤り検出符号(算出誤り検出符号EDC)を算出する。また、データ出力回路359は、制御データAについての誤り検出符号(送信誤り検出符号EDT)を算出し、制御データAについて送信誤り検出符号EDTを出力する。制御データAについての送信誤り検出符号EDTは、制御データDLAを構成する制御データDLa、DLb、DLc、及びDLdのそれぞれについての送信誤り検出符号EDTa、EDTb、EDTc、及びEDTdのからなる。制御データAについての送信誤り検出符号EDTは、レジスタセット3571Gによって受け取られる。一方、制御データAについての送信誤り検出符号EDTは、制御データDL(例えば、制御データA)と異なり、バッファセット3572Gに転送されない。その目的で、BAA制御ユニット24は、送信誤り検出符号EDTがレジスタ3571に保持されている場合、データの取り込みを指示する、
図7を参照して記述される制御信号をバッファセット3572Gに供給しない。
【0081】
図9の最下段の部分に示されるように、制御データAについての送信誤り検出符号EDTは、制御データDLと同様に、レジスタセット3571Gの段より後ろの段のレジスタ3571を介して、誤り検出回路358によって受け取られる。
【0082】
図9は、制御データAのすぐ後に、制御データAについての送信誤り検出符号EDTがデータ出力回路359から出力される例を示す。しかしながら、送信誤り検出符号EDTが出力されるタイミングは、
図9の例に限られない。例えば、制御データAに先立って、制御データAについての送信誤り検出符号EDTが出力されてもよい。また、制御データAと、制御データAについての送信誤り検出符号EDTとの間に、別の制御データ及び(又は)別の送信誤り検出符号EDTが出力されてもよい。
【0083】
1.3.利点(効果)
ブランキングアパーチャアレイ機構350は誤り検出回路358を含み、誤り検出回路358は、レベルシフタ3573に供給される制御データDLを受け取り、この受け取った制御データDLから算出誤り検出符号EDCを算出し、当該制御データDLについての送信誤り検出符号EDTを受け取り、算出誤り検出符号EDCと送信誤り検出符号EDTを比較する。或る制御データDLについての送信誤り検出符号EDTと算出誤り検出符号EDCは、制御データDLが、データ出力回路359から正しく誤り検出回路358に伝送されていれば、一致しているはずである。このため、算出誤り検出符号EDCと送信誤り検出符号EDTが一致していることは、直列接続されたレジスタ3571が正常であることを示す。よって、算出誤り検出符号EDCと送信誤り検出符号EDTの照合によって、データ出力回路359から出力された制御データDLを受け取る全レジスタ3571が正常であることを確認することが可能である。
【0084】
このような検査に必要なデータの転送は、第1実施形態が適用されないケースでの直列接続されたレジスタ3571中の制御データDLの転送に、送信誤り検出符号EDTの転送のみを付加的に含む。すなわち、送信誤り検出符号EDTの転送は、制御データDLの転送に挿入されるのみによって可能である。送信誤り検出符号EDTは、わずかなビットのみからなる。よって、データの検査のために、制御データDLの転送、ひいては、描画が大きく妨げられることは抑制される。すなわち、第1実施形態が適用されないケースでの描画の進捗を大きく妨げることなく、描画中に制御データDLを転送する経路が検査されることが可能である。
【0085】
2.第2実施形態
第2実施形態は、ブランキングアパーチャアレイ機構350の構成、及びこれに関連する点において、第1実施形態と異なる。第2実施形態は、その他の点については、第1実施形態と同じである。以下、第2実施形態の構成及び動作のうち、第1実施形態での点と異なる点が主に記述される。
【0086】
2.1.構成
図10は、第2実施形態のブランキングアパーチャアレイ機構350のより詳細な回路図であり、1つのデータ出力回路359と直接又は間接的に接続される要素を代表として示す。第2実施形態のブランキングアパーチャアレイ機構350は、第1実施形態のブランキングアパーチャアレイ機構350との区別のために、ブランキングアパーチャアレイ機構350Bと称される場合がある。
【0087】
ブランキングアパーチャアレイ機構350Bは、制御回路357の詳細の点で、第1実施形態のブランキングアパーチャアレイ機構350と異なる。第2実施形態の制御回路357は、第1実施形態の制御回路357との区別のために、制御回路357Bと称される場合がある。
【0088】
各制御回路357Bにおいて、バッファ3572は、出力において、当該制御回路357B中のレジスタ3571の入力にさらに接続されている。各制御回路357が直列接続された複数のバッファ3572を含んでいる場合、最終段のバッファ3572の出力が、レジスタ3571に接続される。
【0089】
ここまでの記述は、全ての制御回路357Bにおいて、バッファ3572の出力が当該制御回路357B中のレジスタ3571の入力にさらに接続されている例に関する。実施形態は、この構成に限られず、全ての制御回路357Bのうちの1つ以上においてのみ、バッファ3572の出力が当該制御回路357B中のレジスタ3571の入力にさらに接続されていてもよい。
【0090】
2.2.動作
図11は、第2実施形態の描画装置1中のデータの転送及び生成を概略的に示す。特に、
図11は、或るレジスタセット3571G、このレジスタセット3571Gと接続されたバッファセット3572G、及び誤り検出回路358中のデータについて示す。
【0091】
図11の最上段の部分に示されるように、制御データAが、レジスタセット3571Gによって受け取られ、バッファセット3572Gに転送される。
【0092】
図11の上から2段目の部分に示されるように、制御データBがレジスタセット3571Gによって受け取られ
る。
【0093】
図11の上から3段目の部分に示されるように、制御データAが図示せぬレベルシフタ3573の組に転送されるとともに、レジスタセット3571Gに再度転送される。併せて、制御データBが、バッファセット3572Gに転送される。
【0094】
図11の最下段の部分に示されるように、レジスタセット3571G中の制御データAは、第1実施形態の
図9を参照して記述されるのと同じく、レジスタセット3571Gの段より後ろの段のレジスタ3571を介して、誤り検出回路358まで転送される。
【0095】
この後は、制御データAについて、第1実施形態の
図9の上から第3段及び最下段を参照して記述される処理と同じ処理が行われる。
すなわち、制御データAについての算出誤り検出符号EDCが誤り検出回路358によって算出され、また、制御データAについての送信誤り検出符号EDTが、データ出力回路359から、レジスタ3571を介して、誤り検出回路358まで転送される。
【0096】
誤り検出回路358は、第1実施形態と同じく、こうして取得された制御データAについての算出誤り検出符号EDCと送信誤り検出符号EDTを比較する。
【0097】
2.3.利点
第2実施形態によれば、第1実施形態と同じく、誤り検出回路358は、算出誤り検出符号EDCと送信誤り検出符号EDTを比較する。このため、第1実施形態と同じ利点を得られる。
【0098】
さらに、各制御回路357Bは当該制御回路357Bのバッファ3572の出力と接続されたレジスタ3571を含み、誤り検出回路358は、バッファ3572からレジスタ3571を介して受け取られた制御データDLから算出誤り検出符号EDCを算出する。或るレジスタ3571中の制御データDLは、バッファ3572に正しく伝送されていれば、当該レジスタ3571によって受け取られた形態と一致しているはずである。このため、第2実施形態のように生成された算出誤り検出符号EDCと送信誤り検出符号EDTとが一致していることは、直列接続されたレジスタ3571に加えて、バッファ3572が正常であることを示す。よって、第2実施形態の算出誤り検出符号EDCと送信誤り検出符号EDTの照合によって、データ出力回路359から出力された制御データDLを受け取る全て各レジスタ3571、及び当該制御データDLを伝送する全バッファ3572が正常であることが確認されることが可能である。
【0099】
第1及び第2実施形態は、ブランキングアパーチャアレイ機構350及び350Bが描画装置1に使用される例に基づいて記述されたが、この例に限られない。ブランキングアパーチャアレイ機構350及び350Bは、検査装置に使用されてもよい。
【0100】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0101】
1…描画装置、2…制御回路系、3…描画機構、6…試料、31…真空チャンバ、31a…ライティングチャンバ、31b…鏡筒、310…ステージ、312…ミラー、320…電子銃、330…照明レンズ、331…縮小レンズ、332…対物レンズ、340…成形アパーチャアレイプレート、341…制限アパーチャアレイプレート、350…ブランキングアパーチャアレイ機構、351…基部、352…基板、353…アパーチャ、354…電極対、355…電極、356…電極、357…制御回路、3571…レジスタ、3571G…レジスタセット、3572…バッファ、3572G…バッファセット、3573…レベルシフタ、3580…レジスタ358…誤り検出回路、3582…ORゲート、359…データ出力回路、360…偏向器、361…偏向器、21…制御装置、22…電源装置、23…レンズ駆動装置、24…BAA制御ユニット、25…照射量制御ユニット、27…偏向器アンプ、28…ステージ駆動装置、211…プロセッサ、212…ROM、213…記憶装置、214…入力装置、215…出力装置、216…インターフェイス、DL、DLa、DLb、DLc、DLd…制御データ。