(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】造形システム、造形方法、コンピュータプログラム、記録媒体及び制御装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/34 20140101AFI20241217BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20241217BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20241217BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20241217BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20241217BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20241217BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20241217BHJP
B29C 64/141 20170101ALI20241217BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B23K26/34
B23K26/21 Z
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
B29C64/393
B29C64/268
B29C64/141
B22F3/105
(21)【出願番号】P 2019559622
(86)(22)【出願日】2018-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2018045281
(87)【国際公開番号】W WO2019117076
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2017/044624
(32)【優先日】2017-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】上野 和樹
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-102257(JP,A)
【文献】特表2016-502589(JP,A)
【文献】特開2017-190505(JP,A)
【文献】特開2016-002565(JP,A)
【文献】特開2007-029977(JP,A)
【文献】特開2011-88154(JP,A)
【文献】特表2017-523068(JP,A)
【文献】特開2002-144061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
B33Y 10/00 - 50/02
B29C 64/00 - 64/40
B22F 3/105
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
層で構成された構造物を造形する造形システムであって、
対象物にエネルギビームを照射しつつ、前記対象物に造形材料を供給することにより、ワークに前記構造物を形成する造形処理を行う造形装置と、
前記エネルギビームの照射領域と前記ワークとの相対的な位置を変更可能な変更装置と、
前記変更装置による前記ワークに対する前記エネルギビームの照射領域の移動軌跡に基づき、一の層において、前記構造物の第1の領域と、前記第1の領域とは異なる前記構造物の第2の領域と、で異なる造形処理の条件を、前記造形装置に設定する制御装置と
を備え
、
前記制御装置は、異なる前記条件を設定することにより、前記第1の領域の特性と、前記第2の領域の特性との差を低減する制御を行う造形システム。
【請求項2】
前記特性は、前記対象物の表面からの前記構造物の高さ及び前記対象物の表面に沿った方向における前記構造物のサイズ、のいずれかを含む
請求項
1に記載の造形システム。
【請求項3】
前記造形処理の条件は、前記エネルギビームから前記対象物のうち前記エネルギビームの照射領域が設定された領域部分への熱の伝達量を含む
請求項1
又は2に記載の造形システム。
【請求項4】
前記造形処理の条件は、前記第1の領域に前記照射領域が設定された場合における前記伝達量が、前記第2の領域に前記照射領域が設定された場合における前記伝達量よりも少ないことである
請求項
3に記載の造形システム。
【請求項5】
前記造形処理の条件は、前記第1の領域の前記エネルギビームから伝達される熱量は、前記第2の領域の前記エネルギビームから伝達される熱量と異なることである
請求項1から
4のいずれか一項に記載の造形システム。
【請求項6】
層で構成された構造物を造形する造形システムであって、
対象物にエネルギビームを照射しつつ、前記対象物に造形材料を供給することにより、ワークに前記構造物を形成する造形処理を行う造形装置と、
前記エネルギビームの照射領域と前記ワークとの相対的な位置を変更可能な変更装置と、
前記変更装置による前記ワークに対する前記エネルギビームの照射領域の移動軌跡に基づき、一の層において、前記構造物の第1の領域と、前記第1の領域とは異なる前記構造物の第2の領域と、で異なる造形処理の条件を、前記造形装置に設定する制御装置と
を備え、
前記造形処理の条件は、前記エネルギビームから前記第1の領域に伝達された熱の拡散特性と、前記エネルギビームから前記第2の領域に伝達された熱の拡散特性とが異なることである
造形システム。
【請求項7】
前記造形処理の条件は、前記エネルギビームから前記第1の領域に伝達された熱は、前記エネルギビームから前記第2の領域に伝達された熱よりも拡散されにくいことである
請求項
5に記載の造形システム。
【請求項8】
層で構成された構造物を造形する造形システムであって、
対象物にエネルギビームを照射しつつ、前記対象物に造形材料を供給することにより、ワークに前記構造物を形成する造形処理を行う造形装置と、
前記エネルギビームの照射領域と前記ワークとの相対的な位置を変更可能な変更装置と、
前記変更装置による前記ワークに対する前記エネルギビームの照射領域の移動軌跡に基づき、一の層において、前記構造物の第1の領域と、前記第1の領域とは異なる前記構造物の第2の領域と、で異なる造形処理の条件を、前記造形装置に設定する制御装置と
を備え、
前記エネルギビームの照射領域は、前記構造物が形成される既存構造物の表面の少なくとも一部であり、
前記第1の領域は、前記第2の領域よりも、前記照射領域が設定されない前記既存構造物の他の表面に近接した領域を含む
造形システム。
【請求項9】
層で構成された構造物を造形する造形システムであって、
対象物にエネルギビームを照射しつつ、前記対象物に造形材料を供給することにより、ワークに前記構造物を形成する造形処理を行う造形装置と、
前記エネルギビームの照射領域と前記ワークとの相対的な位置を変更可能な変更装置と、
前記変更装置による前記ワークに対する前記エネルギビームの照射領域の移動軌跡に基づき、一の層において、前記構造物の第1の領域と、前記第1の領域とは異なる前記構造物の第2の領域と、で異なる造形処理の条件を、前記造形装置に設定する制御装置と
を備え、
前記第2の領域における熱の拡散経路は、前記第1の領域における熱の拡散経路よりも大きい
造形システム。
【請求項10】
前記造形処理の条件は、前記エネルギビームの特性を含む
請求項1から
9のいずれか一項記載の造形システム。
【請求項11】
前記エネルギビームの特性は、前記エネルギビームの単位面積当たりの強度又はエネルギ量、前記エネルギビームのフォーカス位置、前記エネルギビームのデフォーカス量及び前記エネルギビームの強度分布の少なくとも一つを含む
請求項
10に記載の造形システム。
【請求項12】
層で構成された構造物を形成する造形方法であって、
ワークに対してエネルギビームの照射領域を変更する変更工程と、
前記変更工程に伴い、前記構造物を形成する造形処理の条件で、対象物に前記エネルギビームを照射し、前記対象物に造形材料を供給することで、前記ワークに層で構成された前記構造物を形成する造形工程と、
前記造形工程において、前記変更工程での前記ワークに対する前記エネルギビームの照射領域の移動軌跡に基づき、一の層において、前記構造物の第1の領域と、前記第1の領域とは異なる前記構造物の第2の領域と、で異なる造形処理の条件を設定する条件設定工程と
を含
み、
前記異なる前記条件を設定することにより、前記第1の領域の特性と、前記第2の領域の特性との差を低減する造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、造形物を形成する造形システム、造形方法、コンピュータプログラム、記録媒体及び制御装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、粉状の材料をエネルギビームで溶融した後に、溶融した材料を再固化させることで造形物を形成する造形装置が記載されている。このような造形装置では、適切な造形物を形成することが技術的課題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2017/014909号明細書
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によれば、照射系により対象物にエネルギビームを照射しつつ、供給系により前記エネルギビームの照射領域に前記造形材料を供給することにより造形物を形成する造形処理を行う造形装置と、前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置を変更可能な変更装置とを備え、前記対象物の第1の領域に行われる前記造形処理の条件と、前記対象物の第2の領域に行われる前記造形処理の条件とを異ならせる造形システムが提供される。
【0005】
第2の態様によれば、照射系により対象物にエネルギビームを照射しつつ、供給系により前記エネルギビームの照射領域に前記造形材料を供給することにより造形物を形成する造形処理を行う造形装置と、前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置を変更可能な変更装置とを備え、前記対象物のうち前記照射領域が複数回設定される第1の領域に行われる前記造形処理の条件と、前記対象物のうち前記照射領域が前記第1の領域に設定される回数より少ない回数設定される第2の領域に行われる前記造形処理の条件とを異ならせる造形システムが提供される。
【0006】
第3の態様によれば、照射系により対象物にエネルギビームを照射しつつ、供給系により前記エネルギビームの照射領域に前記造形材料を供給することにより前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置の変更方向に造形物を成長させて造形処理を行う造形装置と、前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置を変更可能な変更装置とを備え、第1タイミングにおいて前記造形処理を行った前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置関係に、第2タイミングにおいて前記造形処理を行うときの前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置関係がなるとき、第2タイミングにおける前記造形処理の条件を第1タイミングにおける前記造形処理の条件と変える造形システムが提供される。
【0007】
第4の態様によれば、照射系により対象物に光学系を介してエネルギビームを照射しつつ、供給系により前記エネルギビームの照射領域に前記造形材料を供給することにより層状構造物が複数積層された積層構造物を形成する造形処理を行う造形装置と、前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置を変更可能な変更装置とを備え、前記光学系の焦点深度の大きさは、前記層状構造物の1つの層の厚さより大きく2つの層の厚さより小さい造形システムが提供される。
【0008】
第5の態様によれば、照射系により対象物上の照射領域にエネルギビームを照射しつつ、供給系により前記照射領域に前記造形材料を供給することにより造形物を形成する造形処理を行う造形装置と、前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置を変更可能な変更装置と、を備え、前記エネルギビームの照射領域と前記対象物との相対的な位置を第1の方向に設定する第1期間の後に、前記第1の方向と交差する第2の方向に前記エネルギビームの照射領域と前記対象物との相対的な位置を変更し、次いで、第2期間において前記エネルギビームの照射領域と前記対象物との相対的な位置を前記第1の方向と平行な方向に変更し、前記第1期間と前記第2期間の少なくとも一方の少なくとも一部で前記造形処理を行う造形システムが提供される。
【0009】
第6の態様によれば、対象物にエネルギビームを照射しつつ、前記エネルギビームの照射領域に造形材料を供給することにより造形物を形成する造形処理を行うことと、前記エネルギビームの照射領域と前記対象物との相対的な位置を変更することと、前記対象物の第1の領域に行われる前記造形処理の条件と、前記対象物の第2の領域に行われる前記造形処理の条件とを異ならせることとを含む造形方法が提供される。
【0010】
第7の態様によれば、対象物にエネルギビームを照射しつつ、前記エネルギビームの照射領域に造形材料を供給することにより造形物を形成する造形処理を行うことと、前記エネルギビームの照射領域と前記対象物との相対的な位置を変更することと、前記対象物のうち前記照射領域が複数回設定される第1の領域に行われる前記造形処理の条件と、前記対象物のうち前記照射領域が前記第1の領域に設定される回数より少ない回数設定される第2の領域に行われる前記造形処理の条件とを異ならせることとを含む造形方法が提供される。
【0011】
第8の態様によれば、対象物にエネルギビームを照射しつつ、前記エネルギビームの照射領域に造形材料を供給することにより造形物を形成する造形処理を行うことと、前記エネルギビームの照射領域と前記対象物との相対的な位置を変更することと、第1タイミングにおいて前記造形処理を行った前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置関係に、第2タイミングにおいて前記造形処理を行うときの前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置関係がなるとき、第2タイミングにおける前記造形処理の条件を第1タイミングにおける前記造形処理の条件と異ならせることとを含む造形方法が提供される。
【0012】
第9の態様によれば、対象物にエネルギビームを照射することと、前記対象物に造形材料を供給することと、前記対象物に前記エネルギビームを照射しつつ、前記エネルギビームの照射領域に前記造形材料を供給することにより層状構造物が複数積層された積層構造物を形成する造形処理を行うこととを含み、前記エネルギビームを照射することは、焦点深度の大きさが前記層状構造物の1つの層の厚さより大きく2つの層の厚さより小さい光学系を介して前記エネルギビームを照射することを含む造形方法が提供される。
【0013】
第10の態様によれば、上述した造形方法をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムが提供される。
【0014】
第11の態様によれば、上述した又は後述するコンピュータプログラムが記録された記録媒体が提供される。
【0015】
第12の態様によれば、照射系により対象物にエネルギビームを照射しつつ、供給系により前記エネルギビームの照射領域に前記造形材料を供給することにより造形物を形成する造形処理を行う造形装置と、前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置を変更可能な変更装置とを備える造形システムを制御するコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、前記対象物の第1の領域に行われる前記造形処理の条件と、前記対象物の第2の領域に行われる前記造形処理の条件とを異ならせる処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムが提供される。
【0016】
第13の態様によれば、照射系により対象物にエネルギビームを照射しつつ、供給系により前記エネルギビームの照射領域に前記造形材料を供給することにより造形物を形成する造形処理を行う造形装置と、前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置を変更可能な変更装置とを備える造形システムを制御するコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、前記対象物のうち前記照射領域が複数回設定される第1の領域に行われる前記造形処理の条件と、前記対象物のうち前記照射領域が前記第1の領域に設定される回数より少ない回数設定される第2の領域に行われる前記造形処理の条件とを異ならせる処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムが提供される。
【0017】
第14の態様によれば、照射系により対象物にエネルギビームを照射しつつ、供給系により前記エネルギビームの照射領域に前記造形材料を供給することにより前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置の変更方向に造形物を成長させて造形処理を行う造形装置と、前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置を変更可能な変更装置とを備える造形システムを制御するコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、第1タイミングにおいて前記造形処理を行った前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置関係に、第2タイミングにおいて前記造形処理を行うときの前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置関係がなるとき、第2タイミングにおける前記造形処理の条件を第1タイミングにおける前記造形処理の条件と変える処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムが提供される。
【0018】
第15の態様によれば、照射系により対象物に光学系を介してエネルギビームを照射しつつ、供給系により前記エネルギビームの照射領域に前記造形材料を供給することにより層状構造物が複数積層された積層構造物を形成する造形処理を行う造形装置と、前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置を変更可能な変更装置とを備える造形システムを制御するコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、前記光学系の焦点深度の大きさを、前記層状構造物の1つの層の厚さより大きく2つの層の厚さより小さくする処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムが提供される。
【0019】
第16の態様によれば、照射系により対象物上の照射領域にエネルギビームを照射しつつ、供給系により前記照射領域に前記造形材料を供給することにより造形物を形成する造形処理を行う造形装置と、前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置を変更可能な変更装置と、を備える造形システムを制御するコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、前記エネルギビームの照射領域と前記対象物との相対的な位置を第1の方向に設定する第1期間の後に、前記第1の方向と交差する第2の方向に前記エネルギビームの照射領域と前記対象物との相対的な位置を変更し、次いで、第2期間において前記エネルギビームの照射領域と前記対象物との相対的な位置を前記第1の方向と平行な方向に変更し、前記第1期間と前記第2期間の少なくとも一方の少なくとも一部で前記造形処理を行う処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムが提供される。
【0020】
第17の態様によれば、照射系により対象物にエネルギビームを照射しつつ、供給系により前記エネルギビームの照射領域に前記造形材料を供給することにより造形物を形成する造形処理を行う造形装置と、前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置を変更可能な変更装置と、前記対象物の第1の領域に行われる前記造形処理の条件と、前記対象物の第2の領域に行われる前記造形処理の条件とを異ならせるように、前記造形装置及び前記変更装置を制御する制御信号を受信する受信装置とを備える造形システムが提供される。
【0021】
第18の態様によれば、照射系により対象物にエネルギビームを照射しつつ、供給系により前記エネルギビームの照射領域に前記造形材料を供給することにより造形物を形成する造形処理を行う造形装置と、前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置を変更可能な変更装置と、前記対象物のうち前記照射領域が複数回設定される第1の領域に行われる前記造形処理の条件と、前記対象物のうち前記照射領域が前記第1の領域に設定される回数より少ない回数設定される第2の領域に行われる前記造形処理の条件とを異ならせるように、前記造形装置及び前記変更装置を制御する制御信号を受信する受信装置とを備える造形システムが提供される。
【0022】
第19の態様によれば、照射系により対象物にエネルギビームを照射しつつ、供給系により前記エネルギビームの照射領域に前記造形材料を供給することにより前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置の変更方向に造形物を成長させて造形処理を行う造形装置と、前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置を変更可能な変更装置と、第1タイミングにおいて前記造形処理を行った前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置関係に、第2タイミングにおいて前記造形処理を行うときの前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置関係がなるとき、第2タイミングにおける前記造形処理の条件を第1タイミングにおける前記造形処理の条件と変えるように、前記造形装置及び前記変更装置を制御する制御信号を受信する受信装置とを備える造形システムが提供される。
【0023】
第20の態様によれば、照射系により対象物に光学系を介してエネルギビームを照射しつつ、供給系により前記エネルギビームの照射領域に前記造形材料を供給することにより層状構造物が複数積層された積層構造物を形成する造形処理を行う造形装置と、前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置を変更可能な変更装置と、前記光学系の焦点深度の大きさが、前記層状構造物の1つの層の厚さより大きく2つの層の厚さより小さくなるように、前記造形装置及び前記変更装置を制御する制御信号を受信する受信装置とを備える造形システムが提供される。
【0024】
第21の態様によれば、照射系により対象物上の照射領域にエネルギビームを照射しつつ、供給系により前記照射領域に前記造形材料を供給することにより造形物を形成する造形処理を行う造形装置と、前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置を変更可能な変更装置と、前記エネルギビームの照射領域と前記対象物との相対的な位置を第1の方向に設定する第1期間の後に、前記第1の方向と交差する第2の方向に前記エネルギビームの照射領域と前記対象物との相対的な位置を変更し、次いで、第2期間において前記エネルギビームの照射領域と前記対象物との相対的な位置を前記第1の方向と平行な方向に変更し、前記第1期間と前記第2期間の少なくとも一方の少なくとも一部で前記造形処理を行うように、前記造形装置及び前記変更装置を制御する制御信号を受信する受信装置とを備える造形システムが提供される。
【0025】
第22の態様によれば、照射系により対象物にエネルギビームを照射しつつ、供給系により前記エネルギビームの照射領域に前記造形材料を供給することにより造形物を形成する造形処理を行う造形装置と、前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置を変更可能な変更装置とを備える造形システムを制御する制御装置であって、前記対象物の第1の領域に行われる前記造形処理の条件と、前記対象物の第2の領域に行われる前記造形処理の条件とを異ならせる処理を行う制御装置が提供される。
【0026】
第23の態様によれば、照射系により対象物にエネルギビームを照射しつつ、供給系により前記エネルギビームの照射領域に前記造形材料を供給することにより造形物を形成する造形処理を行う造形装置と、前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置を変更可能な変更装置とを備える造形システムを制御する制御装置であって、前記対象物のうち前記照射領域が複数回設定される第1の領域に行われる前記造形処理の条件と、前記対象物のうち前記照射領域が前記第1の領域に設定される回数より少ない回数設定される第2の領域に行われる前記造形処理の条件とを異ならせる処理を行う制御装置が提供される。
【0027】
第24の態様によれば、照射系により対象物にエネルギビームを照射しつつ、供給系により前記エネルギビームの照射領域に前記造形材料を供給することにより前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置の変更方向に造形物を成長させて造形処理を行う造形装置と、前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置を変更可能な変更装置とを備える造形システムを制御する制御装置であって、第1タイミングにおいて前記造形処理を行った前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置関係に、第2タイミングにおいて前記造形処理を行うときの前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置関係がなるとき、第2タイミングにおける前記造形処理の条件を第1タイミングにおける前記造形処理の条件と変える処理を行う制御装置が提供される。
【0028】
第25の態様によれば、照射系により対象物に光学系を介してエネルギビームを照射しつつ、供給系により前記エネルギビームの照射領域に前記造形材料を供給することにより層状構造物が複数積層された積層構造物を形成する造形処理を行う造形装置と、前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置を変更可能な変更装置とを備える造形システムを制御する制御装置であって、前記光学系の焦点深度の大きさを、前記層状構造物の1つの層の厚さより大きく2つの層の厚さより小さくする処理を行う制御装置が提供される。
【0029】
第26の態様によれば、照射系により対象物上の照射領域にエネルギビームを照射しつつ、供給系により前記照射領域に前記造形材料を供給することにより造形物を形成する造形処理を行う造形装置と、前記エネルギビームと前記対象物との相対的な位置を変更可能な変更装置と、を備える造形システムを制御する制御装置であって、前記エネルギビームの照射領域と前記対象物との相対的な位置を第1の方向に設定する第1期間の後に、前記第1の方向と交差する第2の方向に前記エネルギビームの照射領域と前記対象物との相対的な位置を変更し、次いで、第2期間において前記エネルギビームの照射領域と前記対象物との相対的な位置を前記第1の方向と平行な方向に変更し、前記第1期間と前記第2期間の少なくとも一方の少なくとも一部で前記造形処理を行う処理を行う制御装置が提供される。
【0030】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、本実施形態の造形システムの構造を示す断面図である。
【
図2】
図2(a)から
図2(c)の夫々は、ワーク上のある領域において光を照射し且つ造形材料を供給した場合の様子を示す断面図である。
【
図3】
図3(a)及び
図3(b)の夫々は、造形面上での照射領域の移動軌跡を示す平面図である。
【
図4】
図4(a)から
図4(c)の夫々は、3次元構造物を形成する過程を示す断面図である。
【
図5】
図5(a)は、造形面上における照射領域の移動経路を示す平面図であり、
図5(b)は、照射領域の移動経路が交差する領域に形成される造形物及び照射領域の移動経路が交差しない領域に形成される造形物を示す断面図であり、
図5(c)は、照射領域の移動経路が交差する領域に形成される造形物及び照射領域の移動経路が交差しない領域に形成される造形物を示す平面図である。
【
図6】
図6(a)から
図6(c)の夫々は、造形物の高さのばらつきを抑制するように制御される造形材料の供給レートを示すグラフである。
【
図7】
図7は、造形材料の供給レートと材料ノズルからの造形材料の供給量との関係を示すグラフである。
【
図8】
図8(a)は、ガス噴出装置が不活性ガスを噴出している場合の造形材料の供給態様を示す断面図であり、
図8(b)は、ガス噴出装置が不活性ガスを噴出していない場合の造形材料の供給態様を示す断面図である。
【
図9】
図9(a)は、遮蔽部材が非遮蔽状態にある場合の造形材料の供給態様を示す断面図であり、
図9(b)は、遮蔽部材が遮蔽状態にある場合の造形材料の供給態様を示す断面図である。
【
図10】
図10(a)は、材料ノズルが供給状態にある場合の造形材料の供給態様を示す断面図であり、
図10(b)は、材料ノズルが非供給状態にある場合の造形材料の供給態様を示す断面図である。
【
図11】
図11(a)から
図11(c)の夫々は、造形物の高さのばらつきを抑制するように制御される熱伝達レートを示すグラフである。
【
図12】
図12は、熱伝達レートと照射領域上での光の強度との関係を示すグラフである。
【
図13】
図13(a)は、遮光部材が遮光状態にある場合の光の照射態様を示す断面図であり、
図13(b)は、遮光部材が非遮光状態にある場合の光の照射態様を示す断面図である。
【
図14】
図14(a)は、フォーカス位置が造形面上に設定されている場合の光の照射態様を示す断面図であり、
図14(b)は、フォーカス位置が造形面から離れた位置に設定されている場合の光の照射態様を示す断面図である。
【
図15】
図15(a)及び
図15(b)の夫々は、造形物の高さのばらつきを抑制するように制御される照射領域の移動速度を示すグラフである。
【
図16】
図16(a)は、造形面上における照射領域の移動経路を示す平面図であり、
図16(b)は、照射領域の移動速度と造形物の高さとの関係を示すグラフである。
【
図17】
図17は、造形物の高さのばらつきを抑制するように、照射領域の移動速度に基づいて制御される造形材料の供給レートを示すグラフである。
【
図18】
図18は、照射領域の移動速度と造形材料の供給レートと造形物の高さとの関係を示すグラフである。
【
図19】
図19は、造形物の高さのばらつきを抑制するように、照射領域の移動速度に基づいて制御される熱伝達レートを示すグラフである。
【
図20】
図20は、照射領域の移動速度と熱伝達レートと造形物の高さとの関係を示すグラフである。
【
図21】
図21(a)は、既存構造物における熱が相対的に拡散されにくい領域及び熱が相対的に拡散されやすい領域の位置の一例を示す斜視図であり、
図21(b)は、熱が相対的に拡散されにくい領域に形成される造形物及び熱が相対的に拡散されやすい領域に形成される造形物を示す断面図である。
【
図22】
図22は、造形物の高さのばらつきを抑制するように、熱の拡散度合いに基づいて制御される造形材料の供給レートを示すグラフである。
【
図23】
図23は、造形物の高さのばらつきを抑制するように、熱の拡散度合いに基づいて制御される熱伝達レートを示すグラフである。
【
図24】
図24は、造形物の高さのばらつきを抑制するように、熱の拡散度合いに基づいて制御される照射領域の移動速度を示すグラフである。
【
図25】
図25(a)は、光ELが相対的に高頻度に照射される領域及び光ELが相対的に低頻度に照射される領域の位置の一例を示す斜視図であり、
図25(b)は、光ELが相対的に高頻度に照射される領域に形成される造形物及び光ELが相対的に低頻度に照射される領域に形成される造形物を示す断面図である。
【
図26】
図26は、造形物の高さのばらつきを抑制するように、光が照射される頻度に基づいて制御される造形材料の供給レートを示すグラフである。
【
図27】
図27は、造形物の高さのばらつきを抑制するように、光が照射される頻度に基づいて制御される熱伝達レートを示すグラフである。
【
図28】
図28は、造形物の高さのばらつきを抑制するように、光が照射される頻度に基づいて制御される照射領域の移動速度を示すグラフである。
【
図29】
図29は、造形面に形成されるマークを示す平面図及び断面図である。
【
図30】
図30(a)及び
図30(b)の夫々は、
図29に示すマークを形成する場合における造形面上での照射領域の移動軌跡を示す平面図である。
【
図31】
図31(a)から
図31(d)の夫々は、サイズ制御動作によってサイズが制御されたマークを示す平面図である。
【
図32】
図32は、熱伝達レートとマークのサイズとの関係を示すグラフである。
【
図33】
図33は、照射領域の移動速度とマークのサイズとの関係を示すグラフである。
【
図34】
図34は、照射領域のサイズとマークのサイズとの関係を示すグラフである。
【
図35】
図35(a)及び
図35(b)の夫々は、マークのサイズとマークを構成する線状構造物の数との間の関係を示す平面図であり、
図35(c)から
図35(d)の夫々は、マークのサイズとマークを構成する線状構造物の長さとの間の関係を示す平面図である。
【
図36】
図36(a)から
図36(d)の夫々は、高さ制御動作によって高さが制御されたマークを示す平面図である。
【
図37】
図37は、供給レートとマークの高さとの関係を示すグラフである。
【
図38】
図38は、熱伝達レートとマークの高さとの関係を示すグラフである。
【
図39】
図39は、照射領域の移動速度とマークの高さとの関係を示すグラフである。
【
図40】
図40(a)及び
図40(b)の夫々は、マークの高さとマークを構成する構造層の数との間の関係を示す断面図である。
【
図41】
図41(a)から
図41(c)の夫々は、形状制御動作によって表面の形状が制御されたマークを示す断面図である。
【
図42】
図42(a)から
図42(c)の夫々は、形状制御動作によって連結面の形状が制御されたマークを示す断面図である。
【
図43】
図43(a)は、印章として対象物に押し付けられるマークを示す平面図及び断面図であり、
図43(b)は、マークが押し付けられた対象物に転写された印影を示す平面図である。
【
図44】
図44(a)から
図44(c)の夫々は、対象物の対象面と相補の関係になるように連結面の形状が制御されたマークを示す断面図である。
【
図45】
図45(a)は、複数のマークを形成している期間における特定ガスの特性の制御態様の一例を示すグラフであり、
図45(b)は、
図45(a)に示す制御態様で特定ガスの特性が制御された場合に形成される複数のマークを示す平面図であり、
図45(c)は、単一のマークを形成している期間における特定ガスの特性の制御態様の一例を示すグラフであり、
図45(d)は、
図45(c)に示す制御態様で特定ガスの特性が制御された場合に形成されるマークを示す平面図である。
【
図46】
図46(a)から
図46(c)の夫々は、研磨動作が行われている過程での研磨対象面の状態を示す断面図である。
【
図47】
図47(a)は、造形動作が行われている期間中の照射領域の移動経路を示す平面図であり、
図47(b)は、研磨動作が行われている期間中の照射領域の移動経路を示す平面図である。
【
図48】
図48(a)は、造形動作が行われている期間中の照射領域の移動経路を示す平面図であり、
図48(b)は、研磨動作が行われている期間中の照射領域の移動経路を示す平面図である。
【
図49】
図49は、第1変形例の造形システムが備える照射光学系の焦点深度を示す断面図である
【
図50】
図50(a)は、造形面上のある領域部分に照射領域が設定された場合に、第1変形例の造形システムによって形成される構造層を示す断面図であり、
図50(b)は、
図50(a)に示す領域部分と同じ領域部分に再び照射領域が設定された場合に、第1変形例の造形システムによって形成される構造層を示す断面図である。
【
図51】
図51(a)及び
図51(b)の夫々は、造形面と照射光学系の焦点深度の範囲との間の位置関係を示す断面図である。
【
図52】
図52は、第2変形例の造形システムの構造を示す断面図である。
【
図53】
図53(a)は、第3変形例の造形システムが備える照射光学系の構造を示す断面図であり、
図53(b)は、第3変形例の照射光学系が備える光学系の構造を示す斜視図である。
【
図54】
図54は、第4変形例の造形システムが備える造形装置の構造を示す断面図である。
【
図55】
図55は、第5変形例の造形システムが備える造形装置の構造を示す断面図である。
【
図56】
図56は、第6変形例によって造形される造形物の構成を示す断面図である。
【
図57】
図57は、第7変形例によって造形される造形物の構成を示す断面図である。
【
図59】
図59は、第8変型例で用いられる供給量変更装置の一例を示す断面図である。
【
図60】
図60は、第8変型例で用いられる供給量変更装置の一例を示す断面図である。
【
図61】
図61(a)は、造形面上での照射領域の移動軌跡を示す平面図であり、
図61(b)は、
図61(a)に示す移動軌跡に沿って照射領域が移動した場合に形成される造形物の一部を示す断面図である。
【
図62】
図62(a)は、造形面上での照射領域の移動軌跡を示す平面図であり、
図62(b)は、
図62(a)に示す移動軌跡に沿って照射領域が移動した場合に形成される造形物の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しながら、処理装置、処理方法、マーキング方法、造形システム、造形方法、コンピュータプログラム、記録媒体及び制御装置の実施形態について説明する。以下では、レーザ肉盛溶接法(LMD:Laser Metal Deposition)により、造形材料Mを用いた付加加工を行うことで3次元構造物STを形成するための処理を実行可能な造形システム1を用いて、処理装置、処理方法、マーキング方法、造形システム、造形方法、コンピュータプログラム、記録媒体及び制御装置の実施形態を説明する。尚、レーザ肉盛溶接法(LMD)は、ダイレクト・メタル・デポジション、ダイレクト・エナジー・デポジション、レーザクラッディング、レーザ・エンジニアード・ネット・シェイピング、ダイレクト・ライト・ファブリケーション、レーザ・コンソリデーション、シェイプ・デポジション・マニュファクチャリング、ワイヤ-フィード・レーザ・デポジション、ガス・スルー・ワイヤ、レーザ・パウダー・フージョン、レーザ・メタル・フォーミング、セレクティブ・レーザ・パウダー・リメルティング、レーザ・ダイレクト・キャスティング、レーザ・パウダー・デポジション、レーザ・アディティブ・マニュファクチャリング、レーザ・ラピッド・フォーミングと称してもよい。
【0033】
また、以下の説明では、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸から定義されるXYZ直交座標系を用いて、造形システム1を構成する各種構成要素の位置関係について説明する。尚、以下の説明では、説明の便宜上、X軸方向及びY軸方向のそれぞれが水平方向(つまり、水平面内の所定方向)であり、Z軸方向が鉛直方向(つまり、水平面に直交する方向であり、実質的には上下方向)であるものとする。また、X軸、Y軸及びZ軸周りの回転方向(言い換えれば、傾斜方向)を、それぞれ、θX方向、θY方向及びθZ方向と称する。ここで、Z軸方向を重力方向としてもよい。また、XY平面を水平方向としてもよい。
【0034】
(1)造形システム1の構造
初めに、
図1を参照しながら、本実施形態の造形システム1の全体構造について説明する。
図1は、本実施形態の造形システム1の構造の一例を示す断面図である。
【0035】
造形システム1は、3次元構造物ST(つまり、3次元方向のいずれの方向においても大きさを持つ3次元の物体であり、立体物)を形成可能である。造形システム1は、3次元構造物STを形成するための基礎(つまり、母材)となるワークW上に、3次元構造物STを形成可能である。造形システム1は、ワークWに付加加工を行うことで、3次元構造物STを形成可能である。ワークWが後述するステージ43である場合には、造形システム1は、ステージ43上に、3次元構造物STを形成可能である。ワークWがステージ43によって保持されている既存構造物である場合には、造形システム1は、既存構造物上に、3次元構造物STを形成可能である。この場合、造形システム1は、既存構造物と一体化された3次元構造物STを形成してもよい。既存構造物と一体化された3次元構造物STを形成する動作は、既存構造物に新たな構造物を付加する動作と等価である。或いは、造形システム1は、既存構造物と分離可能な3次元構造物STを形成してもよい。尚、
図1は、ワークWが、ステージ43によって保持されている既存構造物である例を示している。また、以下でも、ワークWがステージ43によって保持されている既存構造物である例を用いて説明を進める。
【0036】
上述したように、造形システム1は、レーザ肉盛溶接法により3次元構造物STを形成可能である。つまり、造形システム1は、積層造形技術を用いて物体を形成する3Dプリンタであるとも言える。尚、積層造形技術は、ラピッドプロトタイピング(Rapid Prototyping)、ラピッドマニュファクチャリング(Rapid Manufacturing)、又は、アディティブマニュファクチャリング(Additive Manufacturing)とも称される。
【0037】
3次元構造物STを形成するために、造形システム1は、
図1に示すように、材料供給装置3と、造形装置4と、光源5と、ガス供給装置6と、制御装置7とを備える。材料供給装置3と、造形装置4と、光源5と、ガス供給装置6と、制御装置7とは、筐体C内に収容されている。
図1に示す例では、造形装置4が、筐体Cの上部空間UCに収容され、材料供給装置3、光源5、ガス供給装置6及び制御装置7が、上部空間UCの下方に位置する筐体Cの下部空間LCに収容される。但し、材料供給装置3、造形装置4、光源5、ガス供給装置6及び制御装置7の夫々の筐体C内での配置位置が
図1に示す配置位置に限定されることはない。
【0038】
材料供給装置3は、造形装置4に造形材料Mを供給する。材料供給装置3は、造形装置4が3次元構造物STを形成するために単位時間あたりに必要とする分量の造形材料Mが造形装置4に供給されるように、当該必要な分量に応じた所望量の造形材料Mを供給する。
【0039】
造形材料Mは、所定強度以上の光ELの照射によって溶融可能な材料である。このような造形材料Mとして、例えば、金属性の材料及び樹脂性の材料の少なくとも一方が使用可能である。但し、造形材料Mとして、金属性の材料及び樹脂性の材料とは異なるその他の材料が用いられてもよい。造形材料Mは、粉状の又は粒状の材料である。つまり、造形材料Mは、粉粒体である。但し、造形材料Mは、粉粒体でなくてもよく、例えばワイヤ状の造形材料やガス状の造形材料が用いられてもよい。
【0040】
造形装置4は、材料供給装置3から供給される造形材料Mを加工して3次元構造物STを形成する。造形材料Mを加工するために、造形装置4は、造形ヘッド41と、駆動系42と、ステージ43とを備える。更に、造形ヘッド41は、照射光学系411と、材料ノズル(つまり造形材料Mを供給する供給系)412とを備えている。造形ヘッド41と、駆動系42と、ステージ43とは、チャンバ44内に収容されている。
【0041】
照射光学系411は、射出部413から光ELを射出するための光学系(例えば、集光光学系)である。具体的には、照射光学系411は、光ELを発する光源5と、光ファイバやライトパイプ等の不図示の光伝送部材を介して光学的に接続されている。照射光学系411は、光伝送部材を介して光源5から伝搬してくる光ELを射出する。照射光学系411は、照射光学系411から下方(つまり、-Z側)に向けて光ELを照射する。照射光学系411の下方には、ステージ43が配置されている。ステージ43にワークWが搭載されている場合には、照射光学系411は、ワークWに向けて光ELを照射する。具体的には、照射光学系411は、光ELが照射される(典型的には、集光される)領域としてワークW上に設定される照射領域EAに光ELを照射可能である。更に、照射光学系411の状態は、制御装置7の制御下で、照射領域EAに光ELを照射する状態と、照射領域EAに光ELを照射しない状態との間で切替可能である。尚、照射光学系411から射出される光ELの方向は真下(つまり、-Z軸方向と一致)には限定されず、例えば、Z軸に対して所定の角度だけ傾いた方向であってもよい。
【0042】
材料ノズル412は、造形材料Mを供給する供給アウトレット414を有する。材料ノズル412は、供給アウトレット414から造形材料Mを供給(具体的には、噴射、噴出、吹き付ける)する。材料ノズル412は、造形材料Mの供給源である材料供給装置3と、不図示のパイプ等を介して物理的に接続されている。材料ノズル412は、パイプを介して材料供給装置3から供給される造形材料Mを供給する。材料ノズル412は、パイプを介して材料供給装置3から供給される造形材料Mを圧送してもよい。即ち、材料供給装置3からの造形材料Mと搬送用の気体(例えば、窒素やアルゴン等の不活性ガス)とを混合してパイプを介して材料ノズル412に圧送してもよい。尚、
図1において材料ノズル412は、チューブ状に描かれているが、材料ノズル412の形状は、この形状に限定されない。材料ノズル412は、材料ノズル412から下方(つまり、-Z側)に向けて造形材料Mを供給する。材料ノズル412の下方には、ステージ43が配置されている。ステージ43にワークWが搭載されている場合には、材料ノズル412は、ワークWに向けて造形材料Mを供給する。尚、材料ノズル412から供給される造形材料Mの進行方向はZ軸方向に対して所定の角度(一例として鋭角)だけ傾いた方向であるが、-Z側(つまり、真下)であってもよい。
【0043】
本実施形態では、材料ノズル412は、照射光学系411が光ELを照射する照射領域EAに向けて造形材料Mを供給するように、照射光学系411に対して位置合わせされている。つまり、材料ノズル412が造形材料Mを供給する領域としてワークW上に設定される供給領域MAと照射領域EAとが一致する(或いは、少なくとも部分的に重複する)ように、材料ノズル412と照射光学系411とが位置合わせされている。尚、照射光学系411から射出された光ELによって形成される溶融池MPに、材料ノズル412が造形材料Mを供給するように位置合わせされていてもよい。
【0044】
駆動系42は、造形ヘッド41を移動させる。駆動系42は、X軸、Y軸及びZ軸の少なくともいずれかに沿って造形ヘッド41を移動させる。造形ヘッド41がX軸及びY軸の少なくとも一方に沿って移動すると、照射領域EAは、ワークW上をX軸及びY軸の少なくとも一方に沿って移動する。更に、駆動系42は、X軸、Y軸及びZ軸の少なくともいずれかに加えて、θX方向、θY方向及びθZ方向の少なくとも一つに沿って造形ヘッド41を移動させてもよい。駆動系42は、例えば、モータ等を含む。尚、駆動系42は、照射光学系411と材料ノズル412とを別々に移動させてもよい。具体的には、例えば、駆動系42は、射出部413の位置、射出部413の向き、供給アウトレット414の位置及び供給アウトレット414の向きの少なくとも一つを調整可能であってもよい。この場合、照射光学系411が光ELを照射する照射領域EAと、材料ノズル412が造形材料Mを供給する供給領域MAとが別々に制御可能となる。尚、駆動系42は、造形ヘッド41をX軸回りの回転軸、Y軸回りの回転軸に沿って回転可能にしてもよい。
【0045】
ステージ43は、ワークWを保持可能である。更に、ステージ43は、保持したワークWをリリース可能である。上述した照射光学系411は、ステージ43がワークWを保持している期間の少なくとも一部において光ELを照射する。更に、上述した材料ノズル412は、ステージ43がワークWを保持している期間の少なくとも一部において造形材料Mを供給する。尚、材料ノズル412が供給した造形材料Mの一部は、ワークWの表面からワークWの外部へと(例えば、ステージ43の周囲へと)散乱する又はこぼれ落ちる可能性がある。このため、造形システム1は、ステージ43の周囲に、散乱した又はこぼれ落ちた造形材料Mを回収する回収装置を備えていてもよい。尚、ステージ43は、ワークWを保持するために、機械的なチャックや真空吸着チャック等を備えていてもよい。
【0046】
光源5は、例えば、赤外光、可視光及び紫外光のうちの少なくとも一つを、光ELとして射出する。但し、光ELとして、その他の種類の光が用いられてもよい。光ELは、レーザ光である。この場合、光源5は、レーザ光源(例えば、レーザダイオード(LD:Laser Diode)等の半導体レーザを含んでいてもよい。レーザ光源としては、ファイバ・レーザやCO2レーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ等であってもよい。但し、光ELはレーザ光でなくてもよいし、光源5は任意の光源(例えば、LED(Light Emitting Diode)及び放電ランプ等の少なくとも一つ)を含んでいてもよい。
【0047】
ガス供給装置6は、パージガスの供給源である。パージガスは、不活性ガスを含む。不活性ガスの一例として、窒素ガス又はアルゴンガスがあげられる。ガス供給装置6は、造形装置4のチャンバ44内にパージガスを供給する。その結果、チャンバ44の内部空間は、パージガスによってパージされた空間となる。尚、ガス供給装置6は、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスが格納されたボンベであってもよく、不活性ガスが窒素ガスである場合には、大気を原料として窒素ガスを発生する窒素ガス発生装置であってもよい。
【0048】
制御装置7は、造形システム1の動作を制御する。制御装置7は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)、メモリを含んでいてもよい。制御装置7は、CPUがコンピュータプログラムを実行することで、造形システム1の動作を制御する装置として機能する。このコンピュータプログラムは、制御装置7が行うべき後述する動作を制御装置7(例えば、CPU)に行わせる(つまり、実行させる)ためのコンピュータプログラムである。つまり、このコンピュータプログラムは、造形システム1に後述する動作を行わせるように制御装置7を機能させるためのコンピュータプログラムである。CPUが実行するコンピュータプログラムは、制御装置7が備えるメモリ(つまり、記録媒体)に記録されていてもよいし、制御装置7に内蔵された又は制御装置7に外付け可能な任意の記憶媒体(例えば、ハードディスクや半導体メモリ)に記録されていてもよい。或いは、CPUは、実行するべきコンピュータプログラムを、ネットワークインタフェースを介して、制御装置7の外部の装置からダウンロードしてもよい。また、制御装置7は、造形システム1の内部に配置されていなくてもよく、例えば、造形システム1外にサーバ等として配置されていてもよい。この場合、制御装置7と造形システム1とは、有線、無線等の通信回線やネットワークで接続されていてもよい。有線を使って物理的に接続する場合、例えばIEEE1394、RS-232x、RS-422、RS-423、RS-485、USB等のシリアル接続、パラレル接続、あるいは10BASE-T、100BASE-TX、1000BASE-T等のネットワークを介した電気的な接続であってもよい。また、無線を使って接続する場合、IEEE802.1x、OFDM方式等の無線LANやBluetooth(登録商標)等の電波、赤外線、光通信等を利用してもよい。この場合、制御装置7と造形システム1とは通信回線やネットワークを介して各種の情報の送受信が可能となるように構成されていてもよい。また、制御装置7は、上記通信回線やネットワークを介して造形システム1にコマンドや制御パラメータ等の情報を送信可能であってもよい。造形システム1は、制御装置7からのコマンドや制御パラメータ等の情報を上記通信回線やネットワークを介して受信する受信装置を備えていてもよい。なお、CPUが実行するコンピュータプログラムを記録する記録媒体としては、CD-ROM、CD-R、CD-RWやフレキシブルディスク、MO、DVD-ROM、DVD-RAM、DVD-R、DVD+R、DVD-RW、DVD+RW、Blu-ray(登録商標)等の磁気ディスクや磁気テープ等の磁気媒体、光ディスク、光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ、その他のプログラムを格納可能な媒体が含まれていてもよい。またプログラムには、上記記録媒体に格納されて配布されるものの他、インターネット等のネットワーク回線を通じてダウンロードによって配布される形態のものも含まれる。さらに記録媒体にはプログラムを記録可能な機器、例えば上記プログラムがソフトウェアやファームウェア等の形態で実行可能な状態に実装された汎用もしくは専用機器を含む。さらにまたプログラムに含まれる各処理や機能は、コンピュータで実行可能なプログラムソフトウエアにより実行してもよいし、各部の処理を所定のゲートアレイ(FPGA、ASIC)等のハードウェア、又はプログラムソフトウエアとハードウェアの一部の要素を実現する部分的ハードウエアモジュールとが混在する形式で実現してもよい。特に、本実施形態では、制御装置7は、照射光学系411による光ELの射出態様を制御する。射出態様は、例えば、光ELの強度及び光ELの射出タイミングの少なくとも一方を含む。光ELがパルス光である場合には、射出態様は、例えば、パルス光の発光時間の長さ及びパルス光の発光時間と消光時間との比(いわゆる、デューティ比)の少なくとも一方を含んでいてもよい。更に、制御装置7は、駆動系42による造形ヘッド41の移動態様を制御する。移動態様は、例えば、移動量、移動速度、移動方向及び移動タイミングの少なくとも一つを含む。更に、制御装置7は、材料ノズル412による造形材料Mの供給態様を制御する。供給態様は、例えば、供給量(特に、単位時間当たりの供給量)及び供給タイミングの少なくとも一方を含む。尚、制御装置7は、造形システム1の内部に設けられていなくてもよく、例えば、造形システム1外にサーバ等として設けられていてもよい。
【0049】
(2)造形システム1による造形動作
続いて、造形システム1による造形動作(つまり、3次元構造物STを形成するための動作)について説明する。上述したように、造形システム1は、レーザ肉盛溶接法により3次元構造物STを形成する。このため、造形システム1は、レーザ肉盛溶接法に準拠した既存の造形動作を行うことで、3次元構造物STを形成してもよい。以下、レーザ肉盛溶接法による3次元構造物STの造形動作の一例について簡単に説明する。
【0050】
造形システム1は、形成するべき3次元構造物STの3次元モデルデータ(例えば、CAD(Computer Aided Design)データ)等に基づいて、ワークW上に3次元構造物STを形成する。3次元モデルデータとして、造形システム1内に設けられた計測装置45で計測された立体物の計測データ、造形システム1とは別に設けられた3次元形状計測機、例えばワークWに対して移動可能でワークWに接触可能なプローブを有する接触型の3次元座標測定機や、非接触型の3次元計測機(一例としてパターン投影方式の3次元計測機、光切断方式の3次元計測機、タイム・オブ・フライト方式の3次元計測機、モアレトポグラフィ方式の3次元計測機、ホログラフィック干渉方式の3次元計測機、CT(Computed Tomography)方式の3次元計測機、MRI(Magnetic resonance imaging)方式の3次元計測機等の計測データを用いてもよい。尚、3次元モデルデータとしては、例えばSTL(Stereo Lithography)フォーマット、VRML(Virtual Reality Modeling Language)フォーマット、AMF(Additive Manufacturing File Format)、IGES(Initial Graphics Exchange Specification)フォーマット、VDA-FS(Association of German Automotive Manufactures-Surfaces Interface)フォーマット、HP/GL(Hewlett-Packard Graphics Language)フォーマット、ビットマップフォーマット等を用いることができる。造形システム1は、3次元構造物STを形成するために、例えば、Z軸方向に沿って並ぶ複数の層状の部分構造物(以下、“構造層”と称する)SLを順に形成していく。例えば、造形システム1は、3次元構造物STをZ軸方向に沿って輪切りにすることで得られる複数の構造層SLを1層ずつ順に形成していく。その結果、複数の構造層SLが積層された積層構造体である3次元構造物STが形成される。以下、複数の構造層SLを1層ずつ順に形成していくことで3次元構造物STを形成する動作の流れについて説明する。
【0051】
まず、各構造層SLを形成する動作について説明する。造形システム1は、制御装置7の制御下で、ワークWの表面又は形成済みの構造層SLの表面に相当する造形面CS上の所望領域に照射領域EAを設定し、当該照射領域EAに対して照射光学系411から光ELを照射する。尚、照射光学系411から照射される光ELが造形面CS上に占める領域を照射領域EAと称してもよい。本実施形態においては、光ELのフォーカス位置(つまり、集光位置)が造形面CSに一致している。その結果、
図2(a)に示すように、照射光学系411から射出された光ELによって造形面CS上の所望領域に溶融池(つまり、光ELによって溶融した金属のプール)MPが形成される。更に、造形システム1は、制御装置7の制御下で、造形面CS上の所望領域に供給領域MAを設定し、当該供給領域MAに対して材料ノズル412から造形材料Mを供給する。ここで、上述したように照射領域EAと供給領域MAとが一致しているため、供給領域MAは、溶融池MPが形成された領域に設定されている。このため、造形システム1は、
図2(b)に示すように、溶融池MPに対して、材料ノズル412から造形材料Mを供給する。その結果、溶融池MPに供給された造形材料Mが溶融する。造形ヘッド41の移動に伴って溶融池MPに光ELが照射されなくなると、溶融池MPにおいて溶融した造形材料Mは、冷却されて再度固化(つまり、凝固)する。その結果、
図2(c)に示すように、再固化した造形材料Mが造形面CS上に堆積される。つまり、再固化した造形材料Mの堆積物による造形物が形成される。
【0052】
このような光の照射ELによる溶融池MPの形成、溶融池MPへの造形材料Mの供給、供給された造形材料Mの溶融及び溶融した造形材料Mの再固化を含む一連の造形処理が、造形面CSに対して造形ヘッド41をXY平面に沿って相対的に移動させながら繰り返される。つまり、造形面CSに対して造形ヘッド41が相対的に移動すると、造形面CSに対して照射領域EAもまた相対的に移動する。従って、一連の造形処理が、造形面CSに対して照射領域EAをXY平面に沿って(つまり、二次元平面内において)相対的に移動させながら繰り返される。この際、光ELは、造形面CS上において造形物を形成したい領域に設定された照射領域EAに対して選択的に照射される一方で、造形面CS上において造形物を形成したくない領域に設定された照射領域EAに対して選択的に照射されない(造形物を形成したくない領域には照射領域EAが設定されないとも言える)。つまり、造形システム1は、造形面CS上を所定の移動軌跡に沿って照射領域EAを移動させながら、造形物を形成したい領域の分布パターン(つまり、構造層SLのパターン)に応じたタイミングで光ELを造形面CSに照射する。その結果、溶融池MPもまた、照射領域EAの移動軌跡に応じた移動軌跡に沿って造形面CS上を移動することになる。具体的には、溶融池MPは、造形面CS上において、照射領域EAの移動軌跡に沿った領域のうち光ELが照射された部分に順次形成される。更に、上述したように照射領域EAと供給領域MAとが一致しているため、供給領域MAもまた、照射領域EAの移動軌跡に応じた移動軌跡に沿って造形面CS上を移動することになる。その結果、造形面CS上に、凝固した造形材料Mによる造形物の集合体に相当する構造層SLが形成される。つまり、溶融池MPの移動軌跡に応じたパターンで造形面CS上に形成された造形物の集合体に相当する構造層SL(つまり、平面視において、溶融池MPの移動軌跡に応じた形状を有する構造層SL)が形成される。なお、造形物を形成したくない領域に照射領域EAが設定されている場合、光ELを照射領域EAに照射するとともに、造形材料Mの供給を停止してもよい。また、造形物を形成したくない領域に照射領域EAが設定されている場合に、造形材料Mを照射領域ELに供給するとともに、溶融池MPができない強度の光ELを照射領域ELに照射してもよい。
【0053】
造形面CS上にある一つの構造層SLを形成している層形成期間中において、照射領域EAは、
図3(a)に示すように、Y軸方向に沿った照射領域EAの移動とX軸方向に沿った照射領域EAの移動とが繰り返される第1の移動軌跡に沿って移動してもよい。
図3(a)に示す例では、照射領域EAは、照射領域EAの+Y側への移動、照射領域EAの+X側への移動、照射領域EAの-Y側への移動及び照射領域EAの+X側への移動が繰り返される移動軌跡に沿って移動する。この場合、造形システム1は、造形面CS上で造形物を形成したい領域に照射領域EAが設定されたタイミングで、光ELを照射する。特に、
図3(a)に示す例では、照射領域EAのY軸方向に沿った移動量(特に、照射領域EAの移動方向がX軸方向に切り替わるまでの1回の移動分の移動量)が、照射領域EAのX軸方向に沿った移動量よりも多い。この場合には、造形システム1は、照射領域EAがY軸(或いは、X軸及びY軸のうち、照射領域EAの1回の移動分の移動量が多いいずれか一方の軸)に沿って移動している期間中に光ELを照射し、照射領域EAがX軸(或いは、X軸及びY軸のうち、照射領域EAの1回の移動分の移動量が少ないいずれか他方)に沿って移動している期間中に光ELを照射しない。尚、
図3(a)に示す移動軌跡は、いわゆるラスタスキャンでの走査に対応する移動軌跡であると言える。この場合には、照射領域EAの移動軌跡が造形面CS上で交差する可能性がゼロとは限らないものの、照射領域EAの移動軌跡が交差することはほとんどない。
【0054】
或いは、層形成期間中において、照射領域EAは、
図3(b)に示すように、構造層SLのパターンに沿った第2の移動軌跡に沿って移動してもよい。この場合も、造形システム1は、造形面CS上で造形物を形成したい領域に照射領域EAが設定されたタイミングで、光ELを照射する。但し、照射領域EAが構造層SLのパターンに沿った第2の移動軌跡に沿って移動しているため、照射領域EAは、実質的には、造形面CS上で造形物を形成したい領域と概ね重なっているとも言える。従って、造形システム1は、照射領域EAが移動している期間中は光ELを照射し続けてもよい。この場合、溶融池MPもまた、構造層SLのパターンに沿った第2の移動軌跡に沿って移動することになる。結果、照射領域EAが構造層SLと相対的に移動する方向に造形物を成長させる造形処理が行われる。尚、
図3(b)に示す移動軌跡は、いわゆるベクタースキャンでの走査に対応する移動軌跡であると言える。この場合には、制御装置7は、照射領域EAの移動軌跡が造形面CS上で交差しない(特に、溶融池MPの移動軌跡が造形面CS上で交差しない)ように、照射領域EAの移動軌跡を設定してもよい。但し、造形物を形成したい領域の造形面CS上での分布パターンによっては、照射領域EAの移動軌跡(特に、溶融池MPの移動軌跡)が造形面CS上で交差する可能性がある。
【0055】
尚、上述では、造形面CSに対して造形ヘッド41(すなわち光EL)を移動させることにより、造形面CSに対して照射領域EAを移動させたが、造形面CSを移動させてもよいし、造形ヘッド41(すなわち光EL)と造形面CSの両方を動かしてもよい。
【0056】
造形システム1は、このような構造層SLを形成するための動作を、制御装置7の制御下で、3次元モデルデータに基づいて繰り返し行う。具体的には、まず、3次元モデルデータを積層ピッチでスライス処理してスライスデータを作成する。尚、造形システム1の特性に応じてこのスライスデータを一部修正したデータを用いてもよい。造形システム1は、ワークWの表面に相当する造形面CS上に1層目の構造層SL#1を形成するための動作を、構造層SL#1に対応する3次元モデルデータ、即ち構造層SL#1に対応するスライスデータに基づいて行う。その結果、造形面CS上には、
図4(a)に示すように、構造層SL#1が形成される。その後、造形システム1は、構造層SL#1の表面(つまり、上面)を新たな造形面CSに設定した上で、当該新たな造形面CS上に2層目の構造層SL#2を形成する。構造層SL#2を形成するために、制御装置7は、まず、造形ヘッド41がZ軸に沿って移動するように駆動系42を制御する。具体的には、制御装置7は、駆動系42を制御して、照射領域EA及び供給領域MAが構造層SL#1の表面(つまり、新たな造形面CS)に設定されるように、+Z側に向かって造形ヘッド41を移動させる。これにより、光ELのフォーカス位置が新たな造形面CSに一致する。その後、造形システム1は、制御装置7の制御下で、構造層SL#1を形成する動作と同様の動作で、構造層SL#2に対応するスライスデータに基づいて、構造層SL#1上に構造層SL#2を形成する。その結果、
図4(b)に示すように、構造層SL#2が形成される。以降、同様の動作が、ワークW上に形成するべき3次元構造物STを構成する全ての構造層SLが形成されるまで繰り返される。その結果、
図4(c)に示すように、複数の構造層SLが積層された積層構造物によって、3次元構造物STが形成される。
【0057】
(3)ばらつき抑制動作
続いて、造形動作によって形成される造形物(つまり、各構造層SLを構成する造形物)の特性のばらつきを抑制するためのばらつき抑制制御動作について説明する。本実施形態では、造形システム1は、第1のばらつき抑制動作、第2のばらつき抑制動作、第3のばらつき抑制動作及び第4のばらつき抑制動作の少なくとも一つを行う。このため、以下では、第1のばらつき抑制動作から第4のばらつき抑制動作について順に説明する。
【0058】
尚、以下の説明では、造形物の特性として、造形物の造形面CSからの高さ(つまり、Z軸方向のサイズ又はZ軸方向の大きさであり、実質的には、造形物の厚み)を用いるものとする。つまり、以下の説明では、造形物の高さのばらつきを抑制するためのばらつき抑制動作について説明する。但し、造形物の特性として、造形物の高さ以外の任意の特性が用いられてもよい。例えば、造形物の特性として、造形物の造形面CSからの高さに加えて又は代えて、造形面CSに沿った造形物のサイズ(つまり、X軸方向及びY軸方向の少なくとも一方のサイズであり、例えば、幅)が用いられてもよい。
【0059】
(3-1)第1のばらつき抑制動作
はじめに、第1のばらつき抑制動作について説明する。第1のばらつき抑制動作は、造形面CS上に任意の一つの構造層SLを形成している層形成期間中に造形面CS上の同じ領域に2回以上照射領域EAが設定される場合に、造形物の高さのばらつきを抑制するための動作に相当する。尚、第1のばらつき抑制動作は、任意の一つの構造層SLにおける当該構造層SLが位置する面内の位置ごとの高さ(構造層SLが位置する面と交差する方向の大きさ)のばらつきを抑制するための動作としてもよい。
【0060】
具体的には、
図5(a)に示すように、造形面CS上にある一つの構造層SLを形成している層形成期間中において、照射領域EAは、造形面CS上での構造層SLのパターンに応じた移動軌跡に沿って、造形面CS上を移動する。ここで、構造層SLのパターンによっては、造形面CS上で照射領域EAの移動軌跡が交差する可能性がある。
図5(a)に示す例では、造形面CS上の領域WA1において、照射領域EAの移動軌跡が交差している。照射領域EAの移動軌跡が交差する造形面CS上の領域WA1には、照射領域EAが2回以上設定される。一方で、照射領域EAの移動軌跡と重なる一方で照射領域EAの移動軌跡が交差しない造形面CS上の領域WA2には、照射領域EAが1回だけ設定される。つまり、造形面CSは、層形成期間中に照射領域EAが2回以上設定される領域WA1と、層形成期間中に照射領域EAが1回だけ設定される領域WA2とを含む。尚、領域WA1は、層形成期間中に照射領域EAがM回(Mは2以上の整数)設定される領域とすることができ、領域WA2は、層形成期間中に照射領域EAがN回(Nは1以上の整数であり、N<Mの関係を満たす)設定される領域とすることができる。言い換えると、領域WA1に対する造形処理の回数は領域WA2に対する造形処理の回数と異なり、具体的には、領域WA1に対する造形処理の回数は領域WA2に対する造形処理の回数よりも多い。更に言い換えると、領域WA2に対する造形処理の回数は領域WA1に対する造形処理の回数よりも少ない。
【0061】
領域WA1では、上述した光の照射ELによる溶融池MPの形成、溶融池MPへの造形材料Mの供給、供給された造形材料Mの溶融及び溶融した造形材料Mの再固化を含む一連の造形処理が、領域WA1が照射領域EAの少なくとも一部と一致する異なるタイミングで2回以上行われる可能性がある。つまり、領域WA1では、造形面CS上での溶融池MPの移動軌跡が交差する可能性がある。一方で、領域WA2では、一連の造形処理が2回以上行われることはない。領域WA2では、領域WA2が照射領域EAの少なくとも一部と一致するタイミングで、一連の造形処理が多くても1回行われるだけである。つまり、領域WA2では、造形面CS上での溶融池MPの移動軌跡が交差することはない。尚、一つの構造層SLを形成している層形成期間中において、2回目以降の造形処理のために形成される溶融池MPの少なくとも一部は、1回目の造形処理により領域WA1に形成された造形物に形成されてもよい。すなわち、2回目以降の造形処理のために形成される溶融池MPの少なくとも一部は、造形材料Mで形成されてもよい。
【0062】
領域WA1において一連の造形処理が2回以上行われる一方で領域WA2において一連の造形処理が1回だけ行われる、別の言い方をすると、領域WA1への造形処理の回数と領域WA2への造形処理の回数とが異なると、以下に示す技術的課題が生ずる。具体的には、領域WA1では、領域WA2と比較して、より多くの造形材料Mが供給、溶融及び再固化される可能性がある。このため、領域WA1と領域WA2とに同じ高さの造形物を形成するべき状況下で領域WA1と領域WA2とを区別することなく一連の造形処理が行われると、領域WA1に形成される造形物の高さと領域WA2に形成される造形物の高さとが一致しない可能性がある。典型的には、
図5(b)に示すように、領域WA1に形成される造形物の高さh1は、一連の造形処理が行われる回数が多い分だけ、領域WA2に形成される造形物の高さh2よりも高くなる可能性がある。つまり、層形成期間中に造形面CS上のある領域に2回以上照射領域EAが設定される場合に造形物の高さがばらつく可能性がある。尚、以下では、説明の簡略化のため、領域WA1に形成される造形物を、“造形物S1”と称し、領域WA2に形成される造形物を、“造形物S2”と称する。
【0063】
そこで、本実施形態では、制御装置7(言い換えれば、制御装置7の制御下にある造形システム1)は、第1のばらつき抑制動作を行うことで、造形物S1の高さh1と造形物S2の高さh2とのばらつきを抑制する。尚、本実施形態において、「一の造形物の高さと他の造形物の高さとのばらつきを抑制する」動作は、ばらつき抑制動作が行われない場合と比較して、一の造形物の高さと他の造形物の高さとの差分を小さくする(つまり、差を低減する)動作を含む。「一の造形物の高さと他の造形物の高さとのばらつきを抑制する」動作は、一の造形物の高さと他の造形物の高さとを一致させる(つまり、同一にする)動作を含む。
【0064】
尚、
図5(c)に示すように、領域WA1と領域WA2とに同じサイズの造形物を形成するべき状況下で、領域WA1に形成される造形物のサイズ(ここでは、X軸方向のサイズであり、実質的には幅)w1が、領域WA2に形成される造形物のサイズw2よりも大きくなる可能性もある。つまり、層形成期間中に造形面CS上のある領域に2回以上照射領域EAが設定される場合に造形物のサイズがばらつく可能性がある。このため、上述したように、造形物のサイズ(特に、XY平面に沿ったサイズ)は、第1のばらつき抑制動作によってばらつきを抑制するべき造形物の特性となり得る。この場合、第1のばらつき抑制動作は、任意の一つの構造層SLにおける当該構造層SLが位置する面内の位置ごとの、当該面に沿った方向の大きさのばらつきを抑制するための動作としてもよい。逆に言えば、領域WA1と領域WA2とに同じ特性の造形物を形成するべき状況下で領域WA1と領域WA2とを区別することなく一連の造形処理が行われると、領域WA1に形成される造形物の特性と領域WA2に形成される造形物の特性とが一致しなくなる可能性があるという条件を満たす任意の特性が、第1のばらつき抑制動作によってばらつきを抑制するべき造形物の特性として用いられてもよい。以下に説明する第2から第4のばらつき抑制動作についても同様である。
【0065】
制御装置7は、供給領域MA(つまり、照射領域EA又は溶融池MP)に対して単位時間当たりに供給される造形材料Mの供給量を制御する(例えば、調整、変更又は設定する、以下同じ)ことで、造形物の高さのばらつきを抑制する第1のばらつき抑制動作を行ってもよい。以下、供給領域MAに対して単位時間当たりに供給される造形材料Mの供給量を、説明の便宜上、“供給レート”と称する。尚、造形材料Mの供給量の単位として重量又は体積を用いてもよい。制御装置7は、供給レートを制御することに加えて又は代えて、照射領域EA(つまり、供給領域MA)を介して単位時間当たりに光ELから造形面CSに伝達される熱量を制御することで、造形物の高さのばらつきを抑制する第1のばらつき抑制動作を行ってもよい。以下、照射領域EAを介して単位時間当たりに光ELから造形面CSに伝達される熱量を、説明の便宜上、“熱伝達レート”と称する。制御装置7は、供給レート及び熱伝達レートの少なくとも一方を制御することに加えて又は代えて、造形面CSに対する照射領域EA(つまり、供給領域MA又は溶融池MP)の相対的な移動速度を制御することで、造形物の高さのばらつきを抑制する第1のばらつき抑制動作を行ってもよい。以下、供給レートを制御する第1のばらつき抑制動作、熱伝達レートを制御する第1のばらつき抑制動作及び照射領域EAの移動速度を制御する第1のばらつき抑制動作について順に説明する。
【0066】
(3-1-1)造形材料Mの供給レートを制御する第1のばらつき抑制動作
はじめに、
図6(a)から
図6(c)を参照しながら、造形材料Mの供給レートを制御する第1のばらつき抑制動作について説明する。尚、説明の簡略化のために、
図6(a)から
図6(c)の夫々は、層形成期間中において領域WA1に照射領域EAが2回設定される場合における造形材料Mの供給レートの制御方法を示している。
【0067】
図6(a)から
図6(c)の夫々は、横軸が時間を示し且つ縦軸が造形材料Mの供給レートを示すグラフである。時間の経過と共に照射領域EAが造形面CS上で移動するため、
図6(a)から
図6(c)の横軸は、実質的には、造形面上で照射領域EAが設定されている位置に対応している。つまり、
図6(a)から
図6(c)の夫々は、造形面CS上のある領域部分に照射領域EAが設定されている期間中の、当該領域部分に対する造形材料Mの供給レートを示している。
【0068】
図6(a)に示すように、制御装置7は、(i)領域WA1に1回目に照射領域EAが設定されている期間中の領域WA1に対する供給レートが、領域WA2に対する供給レートと同じになり、且つ、(ii)領域WA1に2回目に照射領域EAが設定されている期間中の領域WA1に対する供給レートがゼロになるように、供給レートを制御してもよい。言い換えれば、制御装置7は、(i)照射領域EAが初めて設定された領域WA1に対する供給レートが、領域WA2に対する供給レートと同じになり、且つ、(ii)照射領域EAが再度設定された領域WA1に対する供給レートがゼロになるように、供給レートを制御してもよい。尚、制御装置7は、照射領域EAが再度設定された領域WA1に対する供給レートが、照射領域EAが初めて設定された領域WA1に対する供給レートよりも低くなるように、供給レートを制御してもよい。
【0069】
或いは、制御装置7は、(i)領域WA1に2回目に照射領域EAが設定されている期間中の領域WA1に対する供給レートが、領域WA2に対する供給レートと同じになり、且つ、(ii)領域WA1に1回目に照射領域EAが設定されている期間中の領域WA1に対する供給レートがゼロになるように、供給レートを制御してもよい。つまり、制御装置7は、(i)あるタイミングで照射領域EAが設定された領域WA1に対する供給レートが、領域WA2に対する供給レートと同じになり、且つ、(ii)それ以外のタイミングで照射領域EAが設定された領域WA1に対する供給レートがゼロになるように、供給レートを制御してもよい。層形成期間中において領域WA1に照射領域EAが2回以上設定される場合においても同様に、制御装置7は、(i)あるタイミングで照射領域EAが設定された領域WA1に対する供給レートが、領域WA2に対する供給レートと同じになり、且つ、(ii)それ以外のタイミングで照射領域EAが設定された領域WA1に対する供給レートがゼロになるように、供給レートを制御してもよい。尚、制御装置7は、あるタイミングで照射領域EAが設定された領域WA1に対する供給レートが、領域WA2に対する供給レートと同じになり、且つそれ以外のタイミングで照射領域EAが設定された領域WA1に対する供給レートが、領域WA2に対する供給レートよりも低くなるように、供給レートを制御してもよい。
【0070】
このように供給レートが制御された結果、層形成期間中に領域WA1に供給された造形材料Mの総量と、層形成期間中に領域WA2に供給された造形材料Mの総量とが同じになる。より具体的には、層形成期間中にある大きさの領域WA1に供給された造形材料Mの総量と、層形成期間中に同じ大きさの領域WA2に供給された造形材料Mの総量とが同じになる。つまり、層形成期間中に領域WA1に供給された造形材料Mの総量を領域WA1の面積で除した値(つまり、単位面積当たりの造形材料Mの供給量)と、層形成期間中に領域WA2に供給された造形材料Mの総量を領域WA2の面積で除した値とが同じになる。このため、領域WA1及び領域WA2では、単位面積当たりで同じ量の造形材料Mが供給、溶融及び再固化される。その結果、領域WA1に形成される造形物S1の高さh1と領域WA2に形成される造形物S2の高さh2とのばらつきが抑制される。つまり、造形材料Mの供給レートが制御されなかった場合と比較して、造形物S1の高さh1と造形物S2の高さh2との差分が小さくなる。典型的には、造形物S1の高さh1と造形物S2の高さh2とが一致する。その結果、造形物の集合体である3次元構造物STの形成精度が向上する。尚、供給レートと層形成期間中に各領域WA1、WA2に供給された造形材料Mの総量との関係が非線形である場合には、この非線形な関係を考慮して供給レートを制御すればよい。また、供給レートと造形物の高さh1、h2との関係が非線形である場合には、この非線形な関係を考慮して供給レートを制御すればよい。
【0071】
或いは、
図6(b)及び
図6(c)に示すように、制御装置7は、領域WA1に照射領域EAが設定されるたびに領域WA1に造形材料Mが供給されるように(つまり、領域WA1への供給レートがゼロにならないように)、供給レートを制御してもよい。この場合、制御装置7は、領域WA1に1回目に照射領域EAが設定されている期間中の領域WA1に対する供給レート及び領域WA1に2回目に照射領域EAが設定されている期間中の領域WA1に対する供給レートの双方が、領域WA2に対する供給レートよりも小さくなるように、供給レートを制御する。尚、制御装置7は、
図6(b)に示すように、領域WA1に1回目に照射領域EAが設定されている期間中の領域WA1に対する供給レートと領域WA1に2回目に照射領域EAが設定されている期間中の領域WA1に対する供給レートとが異なるように、供給レートを制御してもよい。或いは、制御装置7は、
図6(c)に示すように、領域WA1に1回目に照射領域EAが設定されている期間中の領域WA1に対する供給レートと領域WA1に2回目に照射領域EAが設定されている期間中の領域WA1に対する供給レートとが同一になるように、供給レートを制御してもよい。
図6(b)又は
図6(c)に示すように供給レートが制御された場合には、領域WA1に対する供給レートと領域WA2に対する供給レートとが常に同一である場合と比較して、層形成期間中に領域WA1に供給された造形材料Mの総量と、層形成期間中に領域WA2に供給された造形材料Mの総量との差分が小さくなる。その結果、領域WA1に形成される造形物S1の高さh1と領域WA2に形成される造形物S2の高さh2とのばらつきが抑制される。
【0072】
制御装置7は、領域WA1に照射領域EAが設定されるたびに領域WA1に造形材料Mが供給されるように供給レートを制御する場合には、層形成期間中に領域WA1に供給された造形材料Mの総量と、層形成期間中に領域WA2に供給された造形材料Mの総量とが同じになるように、領域WA1に1回目に照射領域EAが設定されている期間中の領域WA1に対する供給レート及び領域WA1に2回目に照射領域EAが設定されている期間中の領域WA1に対する供給レートを制御してもよい。その結果、
図6(b)に示すように供給レートが制御された場合と同様に、層形成期間中に領域WA1に供給された造形材料Mの総量と、層形成期間中に領域WA2に供給された造形材料Mの総量とが同じになる。領域WA1に形成される造形物S1の高さh1と領域WA2に形成される造形物S2の高さh2とのばらつきがより適切に抑制される。尚、供給レートと層形成期間中に各領域WA1、WA2に供給された造形材料Mの総量との関係が非線形である場合には、この非線形な関係を考慮して供給レートを制御すればよい。また、供給レートと造形物の高さh1、h2との関係が非線形である場合には、この非線形な関係を考慮して供給レートを制御すればよい。
【0073】
尚、層形成期間中において領域WA1に照射領域EAが2回以上設定される場合においても同様に、制御装置7は、領域WA1に照射領域EAが設定されている各期間中の領域WA1に対する供給レートが、領域WA2に対する供給レートよりも小さくなるように、供給レートを制御してもよい。更に、制御装置7は、層形成期間中に領域WA1に供給された造形材料Mの総量と、層形成期間中に領域WA2に供給された造形材料Mの総量とが同じになるように、領域WA1に照射領域EAが設定されている各期間中の領域WA1に対する供給レートを制御してもよい。尚、層形成期間中に領域WA1に供給された造形材料Mの総量と、層形成期間中に領域WA2に供給された造形材料Mの総量とが、異なるように供給レートを制御してもよい。
【0074】
続いて、
図7から
図10を参照して、造形材料Mの供給レートを制御するための具体的方法について説明する。
【0075】
制御装置7は、供給レートを制御するために、材料ノズル412からの造形材料Mの単位時間当たりの供給量(つまり、噴射量)を制御してもよい。具体的には、
図7に示すように、材料ノズル412からの造形材料Mの単位時間当たりの供給量が多くなるほど、供給レートは大きくなる。このため、制御装置7は、材料ノズル412からの造形材料Mの単位時間当たりの供給量を制御することで、供給レートを制御することができる。材料ノズル412からの造形材料Mの単位時間当たりの供給量を制御するために、制御装置7は、材料供給装置3を制御して、材料供給装置3から材料ノズル412への造形材料Mの単位時間当たりの供給量を制御してもよい。或いは、材料ノズル412からの造形材料Mの単位時間当たりの供給量を制御するために、制御装置7は、材料ノズル412を制御してもよい。例えば、材料ノズル412内の造形材料Mの供給経路中に配置されるバルブを材料ノズル412が備えている場合には、制御装置7は、当該バルブを制御して、材料ノズル412からの造形材料Mの単位時間当たりの供給量を制御してもよい。
【0076】
制御装置7は、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、供給レートを制御するために、材料ノズル412から供給される造形材料Mの少なくとも一部を供給領域MA(つまり、照射領域EA又は溶融池MP)に到達する前に吹き飛ばすために造形装置4が備えるガス噴出装置461を制御してもよい。具体的には、ガス噴出装置461は、材料ノズル412と供給領域MAとの間における造形材料Mの供給経路の少なくとも一部に向けて、不活性ガスを噴出する。尚、ガス噴出装置461は、材料ノズル412と供給領域MAとの間における造形材料Mの供給経路の方向と交差する方向に沿って不活性ガスを噴出してもよい。ガス噴出装置461が噴出する不活性ガスは、例えば、ガス供給装置6からガス噴出装置461に供給される。ガス噴出装置461が不活性ガスを噴出している場合には、
図8(a)に示すように、材料ノズル412から供給される造形材料Mの少なくとも一部は、供給領域MAに到達される前に、供給領域MAから離れるように吹き飛ばされる。つまり、材料ノズル412から供給される造形材料Mの少なくとも一部は、供給領域MAに到達しない。一方で、ガス噴出装置461が不活性ガスを噴出していない場合には、
図8(b)に示すように、材料ノズル412から供給される造形材料Mは、供給領域MAから離れるように吹き飛ばされることはない。つまり、材料ノズル412から供給される造形材料Mは、供給領域MAに到達する。その結果、ガス噴出装置461が不活性ガスを噴出している場合には、ガス噴出装置461が不活性ガスを噴出していない場合と比較して、供給領域MAに対する造形材料Mの単位時間当たりの供給量が少なくなる。つまり、ガス噴出装置461が不活性ガスを噴出している場合には、ガス噴出装置461が不活性ガスを噴出していない場合と比較して、供給レートは小さくなる。このため、制御装置7は、ガス噴出装置461を制御することで、供給レートを制御することができる。
【0077】
制御装置7は、
図9(a)及び
図9(b)に示すように、供給レートを制御するために、材料ノズル412と供給領域MAとの間における造形材料Mの供給経路に挿脱可能に造形装置4に配置される遮蔽部材462を制御してもよい。具体的には、遮蔽部材462は、不図示の駆動系(例えば、アクチュエータ等)によって、造形材料Mの供給経路に対して移動可能である。尚、遮蔽部材462は、材料ノズル412と供給領域MAとの間における造形材料Mの供給経路の方向と交差する方向に沿って移動可能であってもよい。遮蔽部材462の移動に伴い、遮蔽部材462の状態は、遮蔽部材462が造形材料Mの供給経路を遮っていない非遮蔽状態(
図9(a)参照)と、遮蔽部材462が造形材料Mの供給経路を遮っている遮蔽状態(
図9(b)参照)との間で切替可能である。遮蔽部材462が非遮蔽状態にある場合には、
図9(a)に示すように、材料ノズル412から供給される造形材料Mは、遮蔽部材462によって遮られることなく、供給領域MAに到達する。一方で、遮蔽部材462が遮蔽状態にある場合には、
図9(b)に示すように、材料ノズル412から供給される造形材料Mの少なくとも一部は、供給領域MAに到達する前に、遮蔽部材462によって遮られる。つまり、材料ノズル412から供給される造形材料Mの少なくとも一部は、供給領域MAに到達しない。その結果、遮蔽部材462が遮蔽状態にある場合には、遮蔽部材462が非遮蔽状態にある場合と比較して、供給領域MAに対する造形材料Mの単位時間当たりの供給量が少なくなる。つまり、遮蔽部材462が遮蔽状態にある場合には、遮蔽部材462が非遮蔽状態にある場合と比較して、供給レートは小さくなる。このため、制御装置7は、遮蔽部材462を制御することで、造形材料Mの供給レートを制御することができる。尚、遮蔽部材462の状態は、遮蔽部材462が造形材料Mの供給経路の一部を遮る半遮蔽状態であってもよい。また、一箇所の供給領域MAに間欠的に造形材料Mが供給されるように遮蔽部材462の状態を制御してもよい。この場合、非遮蔽状態と遮蔽状態との比(デューティ比)を制御して、当該一箇所の供給領域MAに対する造形材料Mの単位時間当たりの供給量を制御してもよい。このとき、非遮蔽状態と遮蔽状態との各々の時間は、単位時間よりも短くなってもよい。
【0078】
尚、ガス噴出装置461及び遮蔽部材462は、いずれも、材料ノズル412から供給される造形材料Mの少なくとも一部が供給領域MAに到達することを抑制するための供給量変更装置であると言える。このため、ガス噴出装置461及び遮蔽部材462とは異なる任意の供給量変更装置を造形装置4が備えている場合には、制御装置7は、造形材料Mの供給レートを制御するために、任意の供給量変更装置を制御してもよい。尚、任意の供給量変更装置は、材料供給装置3及び材料供給装置3から材料ノズル412の供給アウトレット414に至る供給路のうち少なくとも一方に設けられてもよい。このような供給量変更装置としては、例えば通過流量を変更可能なバルブを用いてもよい。また、このような通過流量を変更可能なバルブは、材料供給装置3内及び供給路の少なくとも一方に設けられてもよい。このようなバルブとして、例えばバタフライバルブ、ゲートバルブ、グローブバルブ、ボールバルブ等を用いてもよい。
【0079】
制御装置7は、供給レートを制御するために、材料ノズル412からの造形材料Mの供給方向(つまり、噴射方向)を制御してもよい。具体的には、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、制御装置7は、造形面CSに対する材料ノズル412の向きを制御することで、材料ノズル412からの造形材料Mの供給方向を制御してもよい。材料ノズル412の向きは、駆動系42を用いて材料ノズル412を移動させることで制御可能である。但し、この場合には、駆動系42は、照射光学系411と材料ノズル412とを別々に移動させる。材料ノズル412の向きの制御に伴い、材料ノズル412の状態は、供給領域MA(つまり、照射領域EA又は溶融池MP)に向けて造形材料Mを供給可能な供給状態(
図10(a)参照)と、供給領域MA(つまり、照射領域EA又は溶融池MP)に向けて造形材料Mを供給不可能な非供給状態(
図10(b)参照)との間で切替可能である。材料ノズル412が供給状態にある場合には、
図10(a)に示すように、材料ノズル412から供給される造形材料Mは、供給領域MAに到達する。一方で、材料ノズル412が非供給状態にある場合には、
図10(b)に示すように、材料ノズル412から供給される造形材料Mは、供給領域MAに到達しない。従って、材料ノズル412が非供給状態にある期間が長くなればなるほど、供給領域MAに対する造形材料Mの単位時間当たりの供給量が少なくなる。つまり、材料ノズル412が非供給状態にある期間が長くなればなるほど、造形材料Mの供給レートは小さくなる。このため、制御装置7は、造形材料Mの供給方向を制御することで、造形材料Mの供給レートを制御することができる。尚、材料ノズル412の状態は、供給領域MA(つまり、照射領域EA又は溶融池MP)の一部に向けて造形材料Mを供給可能な半供給状態であってもよい。この場合、材料ノズル412から造形材料が供給される上記一部の面積を変更して、造形材料Mの供給レートを制御してもよい。
【0080】
(3-1-2)熱伝達レートを制御する第1のばらつき抑制動作
続いて、
図11(a)から
図11(c)を参照しながら、熱伝達レートを制御する第1のばらつき抑制動作について説明する。尚、説明の簡略化のために、
図11(a)から
図11(c)の夫々は、層形成期間中において領域WA1に照射領域EAが2回設定される場合における造形材料Mの供給レートの制御方法を示している。
【0081】
図11(a)から
図11(c)の夫々は、横軸が時間を示し且つ縦軸が熱伝達レートを示すグラフである。時間の経過と共に照射領域EAが造形面CS上で移動するため、
図11(a)から
図11(c)の横軸は、上述した
図6(a)から
図6(c)の横軸と同様に、造形面CS上で照射領域EAが設定されている位置に対応している。
【0082】
図11(a)に示すように、制御装置7は、(i)領域WA1に1回目に照射領域EAが設定されている期間中の領域WA1に対する熱伝達レートが、領域WA2に対する熱伝達レートと同じになり、且つ、(ii)領域WA1に2回目に照射領域EAが設定されている期間中の領域WA1に対する熱伝達レートがゼロになるように、熱伝達レートを制御してもよい。言い換えれば、制御装置7は、(i)照射領域EAが初めて設定された領域WA1に対する熱伝達レートが、領域WA2に対する熱伝達レートと同じになり、且つ、(ii)照射領域EAが再度設定された領域WA1に対する熱伝達レートがゼロになるように、熱伝達レートを制御してもよい。尚、熱伝達レートがゼロになる状態は、光ELが照射されない状態と等価である。従って、制御装置7は、(i)照射領域EAが初めて設定された領域WA1に対して、領域WA2と同じように光ELを照射し、且つ、(ii)照射領域EAが再度設定された領域WA1に光ELを照射しないように、造形装置4を制御しているとも言える。尚、制御装置7は、2回目に照射領域が設定された領域WA1に対する熱伝達レートが1回目に照射領域が設定された領域WA1に対する熱伝達レートよりも低くなるように、熱伝達レートを制御してもよい。また、制御装置7は、2回目に照射領域が設定された領域WA1に対する光ELの単位時間当たりの強度又はエネルギ量が1回目に照射領域が設定された領域WA1に対する光ELの単位時間当たりの強度又はエネルギ量よりも低くなるように制御してもよい。
【0083】
或いは、制御装置7は、(i)領域WA1に2回目に照射領域EAが設定されている期間中の領域WA1に対する熱伝達レートが、領域WA2に対する熱伝達レートと同じになり、且つ、(ii)領域WA1に1回目に照射領域EAが設定されている期間中の領域WA1に対する熱伝達レートがゼロになるように、熱伝達レートを制御してもよい。つまり、制御装置7は、(i)あるタイミングで照射領域EAが設定された領域WA1に対する熱伝達レートが、領域WA2に対する熱伝達レートと同じになり、且つ、(ii)それ以外のタイミングで照射領域EAが設定された領域WA1に対する熱伝達レートがゼロになるように、熱伝達レートを制御してもよい。層形成期間中において領域WA1に照射領域EAが2回以上設定される場合においても同様に、制御装置7は、(i)あるタイミングで照射領域EAが設定された領域WA1に対する熱伝達レートが、領域WA2に対する熱伝達レートと同じになり、且つ、(ii)それ以外のタイミングで照射領域EAが設定された領域WA1に対する熱伝達レートがゼロになるように、熱伝達レートを制御してもよい。尚、制御装置7は、1回目に照射領域が設定された領域WA1に対する熱伝達レートが2回目に照射領域が設定された領域WA1に対する熱伝達レートよりも低くなるように、熱伝達レートを制御してもよい。また、制御装置7は、1回目に照射領域が設定された領域WA1に対する光ELの単位時間当たりの強度又はエネルギ量が2回目に照射領域が設定された領域WA1に対する光ELの単位時間当たりの強度又はエネルギ量よりも低くなるように制御してもよい。また、制御装置7は、あるタイミングで照射領域EAが設定された領域WA1に対する熱伝達レートが、領域WA2に対する熱伝達レートと同じになり、且つそれ以外のタイミングで照射領域EAが設定された領域WA1に対する熱伝達レートが領域WA2に対する熱伝達レートよりも低くなるように、熱伝達レートを制御してもよい。
【0084】
このように熱伝達レートが制御された結果、層形成期間中に光ELから領域WA1に伝達された熱の総量と、層形成期間中に光ELから領域WA2に伝達された熱の総量とが同じになる。より具体的には、層形成期間中に光ELからある大きさの領域WA1に伝達された熱の総量と、層形成期間中に光ELから同じ大きさの領域WA2に伝達された熱の総量とが同じになる。つまり、層形成期間中に光ELから領域WA1に伝達された熱の総量を領域WA1の面積で除した値(つまり、単位面積当たりに光ELから伝達された熱量)と、層形成期間中に光ELから領域WA2に伝達された熱の総量を領域WA2の面積で除した値とが同じになる。このため、領域WA1及び領域WA2では、単位面積当たりで同じ量の造形材料Mが供給、溶融及び再固化される。なぜならば、光ELから伝達される熱量が多くなるほど多くの量の造形材料Mが溶融される可能性があるところ、光ELから領域WA1に伝達された熱の総量と光ELから領域WA2に伝達された熱の総量とが同じであるがゆえに、領域WA1における造形材料Mの溶融量(具体的には、単位面積当たりの溶融量、以下同じ)と領域WA2における造形材料Mの溶融量とが同じになる可能性が相対的に高いからである。その結果、上述した供給レートが制御される場合と同様に、領域WA1に形成される造形物S1の高さh1と領域WA2に形成される造形物S2の高さh2とのばらつきが抑制される。その結果、造形物の集合体である3次元構造物STの形成精度が向上する。尚、熱伝達レートと造形物の高さh1、h2との関係が非線形である場合には、この非線形な関係を考慮して熱伝達レートを制御すればよい。
【0085】
熱伝達レートが制御される場合には更に、領域WA1では、領域WA2と同じ大きさの溶融池MPが形成される。なぜならば、光ELから伝達される熱量が多くなるほど大きな溶融池MPが形成される可能性があるところ、光ELから領域WA1に伝達された熱の総量と光ELから領域WA2に伝達された熱の総量とが同じであるがゆえに、領域WA1に形成される溶融池MPの大きさと領域WA2に形成される溶融池MPの大きさとが同じになる可能性が相対的に高いからである。その結果、上述した供給レートが制御される場合と同様に、領域WA1に形成される造形物S1の高さh1と領域WA2に形成される造形物S2の高さh2とのばらつきが抑制される。というのも、溶融池MPが大きくなるほど、溶融池MPで溶融した後に再固化した造形材料Mの幅(造形面CSに沿った方向のサイズ)が大きくなる可能性がある。このため、仮に、相対的に大きい溶融池MP及び相対的に小さい溶融池MPに同じ分量の造形材料Mが供給されるとすると、相対的に大きい溶融池MPが形成された部分には、相対的に幅が大きくなったことに起因して相対的に低い造形物が形成される一方で、相対的に小さい溶融池MPが形成された部分には、相対的に幅が小さくなったことに起因して相対的に高い造形物が形成される可能性がある。しかるに、本実施形態では、領域WA1に形成される溶融池MPの大きさと領域WA2に形成される溶融池MPの大きさとが同じになるため、領域WA1に形成される造形物S1の高さh1と領域WA2に形成される造形物S2の高さh2とのばらつきが抑制される。その結果、造形物の集合体である3次元構造物STの形成精度が向上する。
【0086】
或いは、
図11(b)及び
図11(c)に示すように、制御装置7は、領域WA1に照射領域EAが設定されるたびに領域WA1に光ELが照射されるように(つまり、領域WA1に対する熱伝達レートがゼロにならないように)、熱伝達レートを制御してもよい。この場合、制御装置7は、領域WA1に1回目に照射領域EAが設定されている期間中の領域WA1に対する熱伝達レート及び領域WA1に2回目に照射領域EAが設定されている期間中の領域WA1に対する熱伝達レートの双方が、領域WA2に対する熱伝達レートよりも小さくなるように、造形材料Mの供給レートを制御する。尚、制御装置7は、
図11(b)に示すように、領域WA1に1回目に照射領域EAが設定されている期間中の領域WA1に対する熱伝達レートと領域WA1に2回目に照射領域EAが設定されている期間中の領域WA1に対する熱伝達レートとが異なるように、熱伝達レートを制御してもよい。或いは、制御装置7は、
図11(c)に示すように、領域WA1に1回目に照射領域EAが設定されている期間中の領域WA1に対する熱伝達レートと領域WA1に2回目に照射領域EAが設定されている期間中の領域WA1に対する熱伝達レートとが同一になるように、熱伝達レートを制御してもよい。
図11(b)又は
図11(c)に示すように熱伝達レートが制御された場合には、領域WA1に対する熱伝達レートと領域WA2に対する熱伝達レートとが常に同一である場合と比較して、層形成期間中に領域WA1に伝達された熱の総量と、層形成期間中に領域WA2に伝達された熱の総量との差分が小さくなる。その結果、領域WA1に形成される造形物S1の高さh1と領域WA2に形成される造形物S2の高さh2とのばらつきが抑制される。尚、熱伝達レートと造形物の高さh1、h2との関係が非線形である場合には、この非線形な関係を考慮して熱伝達レートを制御すればよい。
【0087】
制御装置7は、領域WA1に照射領域EAが設定されるたびに領域WA1に光ELが照射されるように熱伝達レートを制御する場合には、層形成期間中に領域WA1に伝達された熱の総量と、層形成期間中に領域WA2に伝達された熱の総量とが同じになるように、領域WA1に1回目に照射領域EAが設定されている期間中の領域WA1に対する熱伝達レート及び領域WA1に2回目に照射領域EAが設定されている期間中の領域WA1に対する熱伝達レートを制御してもよい。その結果、
図11(a)に示すように熱伝達レートが制御された場合と同様に、層形成期間中に領域WA1に伝達された熱の総量と、層形成期間中に領域WA2に伝達された熱の総量とが同じになる。その結果、領域WA1に形成される造形物S1の高さh1と領域WA2に形成される造形物S2の高さh2とのばらつきがより適切に抑制される。
【0088】
尚、層形成期間中において領域WA1に照射領域EAが2回以上設定される場合においても同様に、制御装置7は、領域WA1に照射領域EAが設定されている各期間中の領域WA1に対する熱伝達レートが、領域WA2に対する熱伝達レートよりも小さくなるように、熱伝達レートを制御してもよい。更に、制御装置7は、層形成期間中に領域WA1に伝達された熱の総量と、層形成期間中に領域WA2に伝達された熱の総量とが同じになるように、領域WA1に照射領域EAが設定されている各期間中の領域WA1に対する熱伝達レートを制御してもよい。
【0089】
続いて、
図12から
図14を参照して、熱伝達レートを制御するための具体的方法について説明する。
【0090】
制御装置7は、熱伝達レートを制御するために、照射領域EA上での光ELの単位面積当たりの強度又はエネルギ量を制御してもよい。具体的には、
図12に示すように、照射領域EA上での光ELの単位面積当たりの強度又はエネルギ量が大きくなるほど、熱伝達レートは大きくなる。このため、制御装置7は、照射領域EA上での光ELの単位面積当たりの強度又はエネルギ量を制御することで、熱伝達レートを制御することができる。
【0091】
照射領域EA上での光ELの単位面積当たりの強度を制御するために、制御装置7は、光源5を制御してもよい。例えば、制御装置7は、光源5が射出する光ELの強度を制御してもよい。光ELがパルス光である場合には、パルス光の発光時間が長くなるほど(言い換えれば、パルス光の消光時間が短くなるほど)、照射領域EA上での光ELの単位面積当たりの強度が大きくなる。このため、光ELがパルス光である場合には、例えば、制御装置7は、光源5が射出する光ELのデューティ比を制御してもよい。
【0092】
照射領域EA上での光ELの単位面積当たりの強度又はエネルギ量を制御するために、制御装置7は、照射光学系411を制御してもよい。例えば、制御装置7は、照射光学系411が射出する光ELの強度又はエネルギ量を制御してもよい。この場合、照射光学系411は、照射光学系411内で光ELの強度又はエネルギ量を調整するための光学部材を備えていてもよい。
【0093】
照射領域EA上での光ELの単位面積当たりの強度又はエネルギ量を制御するために、制御装置7は、
図13(a)及び
図13(b)に示すように、照射光学系411と照射領域EAとの間における光ELの光路に挿脱可能に造形装置4に配置される遮光部材471を制御してもよい。具体的には、遮光部材471は、不図示の駆動系(例えば、アクチュエータ等)によって、光ELの光路に対して移動可能である。遮光部材471の移動に伴い、遮光部材471の状態は、光ELの光路を遮っている遮光状態(
図13(a)参照)と、光ELの光路を遮っていない非遮光状態(
図13(b)参照)との間で切替可能である。遮光部材471が遮光状態にある場合には、
図13(a)に示すように、照射光学系411から射出した光ELは、遮光部材471によって遮られる。光ELが透過できない材料から遮光部材471が形成されている場合には、光ELは、照射領域EAに到達しない。光ELの一部が透過可能な材料から遮光部材471が形成されている場合には、光ELの一部が、照射領域EAに到達しない。つまり、遮光部材471によって強度が減衰した光ELが、照射領域EAに照射される。一方で、遮光部材471が非遮光状態にある場合には、
図13(b)に示すように、照射光学系411から射出した光ELは、遮光部材471によって遮られることなく、照射領域EAに到達する。その結果、遮光部材471が遮光状態にある場合には、遮光部材471が非遮光状態にある場合と比較して、照射領域EA上での光ELの単位面積当たりの強度が小さくなる。尚、遮光部材471は、照射光学系411から射出した光ELの一部を遮蔽する半遮光状態となるように、制御装置7によって制御されてもよい。尚、制御装置7は、遮光部材471が遮光状態にある期間と遮光部材471が非遮光状態にある期間との比を制御してもよい。遮光部材471が遮光状態にある期間が長くなるほど(言い換えれば、遮光部材471が非遮光状態にある期間が短くなるほど)、照射領域EA上での光ELの単位面積当たりの強度が小さくなる。また、遮光部材471は、照射光学系411の内部に設けられていてもよく、光源5と照射光学系411との間の光路に設けられてもよい。
【0094】
制御装置7は、熱伝達レートを制御するために、光ELのフォーカス位置(言い換えれば、デフォーカス量)を制御してもよい。具体的には、フォーカス位置が造形面CSから離れるほど(つまり、デフォーカス量が大きくなるほど)、造形面CSに設定される照射領域EA上での光ELの単位面積当たりの強度又はエネルギ量が小さくなる。従って、フォーカス位置が造形面CSから離れるほど(つまり、デフォーカス量が大きくなるほど)、熱伝達レートは小さくなる。このため、制御装置7は、フォーカス位置を制御することで、熱伝達レートを制御することができる。フォーカス位置を制御するために、
図14(a)及び
図14(b)に示すように、制御装置7は、照射光学系411が備える集光光学素子472を制御してもよい。尚、
図14(a)は、フォーカス位置が造形面CS上に設定されているがゆえに、照射領域EA上での光ELの単位面積当たりの強度又はエネルギ量が相対的に大きい状態を示している。一方で、
図14(b)は、フォーカス位置が造形面CSから離れた位置に設定されているがゆえに、照射領域EA上での光ELの単位面積当たりの強度又はエネルギ量が相対的に小さい状態を示している。或いは、フォーカス位置を制御するために、制御装置7は、駆動系42を制御してもよい。具体的には、制御装置7は、造形面CSに対してZ軸に沿って造形ヘッド41(特に、照射光学系411)を移動させることで、造形面CSとフォーカス位置との間の相対位置を制御してもよい。後述するように、ステージ43を移動させる駆動系を造形装置4が備えている場合には、制御装置7は、造形ヘッド41に対してZ軸に沿ってステージ43(つまり、造形面CS)を移動させることで、造形面CSとフォーカス位置との間の相対位置を制御してもよい。尚、照射光学系411を構成する光学部材の一部を移動させることで、造形面CSとフォーカス位置との間の相対位置を制御してもよい。
【0095】
制御装置7は、熱伝達レートを制御するために、照射領域EA内での光ELの強度分布又はエネルギ量分布を制御してもよい。尚、上述した照射領域EA内での光ELの単位面積当たりの強度又はエネルギ量の制御及びフォーカス位置の制御は、照射領域EA内での光ELの強度分布の制御の一具体例である。照射領域EA内での光ELの強度分布を制御するために、制御装置7は、照射光学系411が備える強度分布を調整するための光学部材を制御してもよい。強度分布を調整するための光学部材としては、光ELの光路を横切る面内で所要の濃度分布を有するフィルタ、光ELの光路を横切る面内で所要の面形状を有する非球面な光学部材(例えば、屈折型の光学部材又は反射型の光学部材)、回折光学素子及び空間光変調器等の少なくとも一つを用いることができる。
【0096】
制御装置7は、熱伝達レートを制御するために、造形面CS上での照射領域EAの大きさ、形状及び位置の少なくとも一つを制御してもよい。造形面CS上での照射領域EAの大きさ、形状及び位置の少なくとも一つが変わると、造形面CS上での光ELの強度分布又はエネルギ量分布が変わる。従って、制御装置7は、造形面CS上での照射領域EAの大きさ、形状及び位置の少なくとも一つを制御することで、熱伝達レートを制御することができる。
【0097】
制御装置7は、熱伝達レートを制御するために、光ELの強度と相関を有する光ELの任意の特性を制御してもよい。制御装置7は、熱伝達レートを制御するために、熱伝達レートと相関を有する光ELの任意の特性を制御してもよい。このような光ELの任意の特性の一例として、造形面CS上での照射領域EAの大きさ、形状及び位置の少なくとも一つがあげられる。なぜならば、造形面CS上での照射領域EAの大きさ、形状及び位置の少なくとも一つが変わると、造形面CS上での光ELの強度分布が変わるからである。また、任意の特性の一例としては、造形面CSに向かう光ELの波長であってもよい。光ELの波長が異なると、造形材料Mでの光の吸収率が異なってくるため、単位時間当たりに光ELから造形面CSに伝達される熱量である熱伝達レートが変わる。尚、上述したように、2回目以降の造形処理においては、造形材料Mの造形物に溶融池が形成されることも考えられる。その場合、造形面CSと造形材料Mの光ELの吸収率が異なる可能性がある。例えば、造形面CSを形成する材料と造形材料Mとが異なる場合には、造形面CSと造形材料Mの光ELの吸収率が異なる可能性がある。このような場合も光ELの照射される部分の光ELの吸収率などを考慮して、熱伝達レートを制御してもよい。
【0098】
(3-1-3)照射領域EAの移動速度を制御する第1のばらつき抑制動作
続いて、
図15(a)及び
図15(b)を参照しながら、照射領域EAの移動速度を制御する第1のばらつき抑制動作について説明する。尚、説明の簡略化のために、
図15(a)及び
図15(b)の夫々は、層形成期間中において領域WA1に照射領域EAが2回設定される場合における照射領域EAの移動速度の制御方法を示している。
【0099】
図15(a)及び
図15(b)の夫々は、横軸が時間を示し且つ縦軸が照射領域EAの移動速度を示すグラフである。時間の経過と共に照射領域EAが造形面CS上で移動するため、
図15(a)及び
図15(b)の横軸は、上述した
図6(a)から
図6(c)の横軸と同様に、造形面CS上で照射領域EAが設定されている位置に対応している。
【0100】
図15(a)から
図15(b)に示すように、制御装置7は、領域WA1に1回目に照射領域EAが設定されている期間中の照射領域EAの移動速度及び領域WA1に2回目に照射領域EAが設定されている期間中の照射領域EAの移動速度の双方が、領域WA2に照射領域EAが設定されている期間中の照射領域EAの移動速度よりも速くなるように、照射領域EAの移動速度を制御する。尚、制御装置7は、
図15(a)に示すように、領域WA1に1回目に照射領域EAが設定されている期間中の照射領域EAの移動速度と領域WA1に2回目に照射領域EAが設定されている期間中の照射領域EAの移動速度とが異なるように、照射領域EAの移動速度を制御してもよい。或いは、制御装置7は、
図15(b)に示すように、領域WA1に1回目に照射領域EAが設定されている期間中の照射領域EAの移動速度と領域WA1に2回目に照射領域EAが設定されている期間中の照射領域EAの移動速度とが同じになるように、照射領域EAの移動速度を制御してもよい。
【0101】
ここで、照射領域EAの移動速度が速くなるほど、造形面CS上のある領域部分に照射領域EAが設定されている時間が短くなる。造形面CS上のある領域部分に照射領域EAが設定されている時間が短くなるほど、当該領域部分に対して光ELから伝達される熱量が少なくなる。造形面CS上のある領域部分に対して光ELから伝達される熱量が少なくなるほど、当該領域部分における造形材料Mの溶融量が減る。更に、照射領域EAの移動速度が速くなるほど、照射領域EAと同じ位置に設定される供給領域MAの移動速度が速くなる。供給領域MAの移動速度が速くなるほど、造形面CS上のある領域部分に供給領域MAが設定されている時間が短くなる。造形面CS上のある領域部分に供給領域MAが設定されている時間が短くなるほど、当該領域部分に対する造形材料光ELの供給量が少なくなる。造形面CS上のある領域部分に対する造形材料ELの供給量が少なくなるほど、当該領域部分における造形材料Mの溶融量が減る。このため、
図15(a)又は
図15(b)に示すように照射領域EAの移動速度が制御されると、照射領域EAの移動速度が常に一定である場合と比較して、層形成期間中に領域WA1で溶融した造形材料Mの総量と、層形成期間中に領域WA2で溶融した造形材料Mの総量との差分が小さくなる。より具体的には、層形成期間中にある大きさの領域WA1で溶融した造形材料Mの総量と、層形成期間中に同じ大きさの領域WA2で溶融した造形材料Mの総量との差分が小さくなる。つまり、層形成期間中に領域WA1で溶融した造形材料Mの総量を領域WA1の面積で除した値(つまり、単位面積当たりの造形材料Mの溶融量)と、層形成期間中に領域WA2で溶融した造形材料Mの総量を領域WA2の面積で除した値の差分が小さくなる。その結果、領域WA1に形成される造形物S1の高さh1と領域WA2に形成される造形物S2の高さh2とのばらつきが抑制される。
【0102】
制御装置7は、層形成期間中に領域WA1で溶融する造形材料Mの総量と、層形成期間中に領域WA2で溶融する造形材料Mの総量とが同じになるように、照射領域EAの移動速度を制御してもよい。例えば、領域WA1に照射領域EAがN(但し、Nは2以上の整数)回設定されることに起因して一連の造形処理がN回行われる場合には、制御装置7は、領域WA1に照射領域EAが設定されている各期間中の照射領域EAの移動速度が、領域WA2に照射領域EAが設定されている期間中の照射領域EAの移動速度のN倍になるように、照射領域EAの移動速度を制御してもよい。或いは、例えば、領域WA1に照射領域EAがN回設定されることに起因して一連の造形処理がN回行われる場合には、制御装置7は、領域WA1に照射領域EAが設定されている各期間中の照射領域EAの移動速度の平均が、領域WA2に照射領域EAが設定されている期間中の照射領域EAの移動速度と同じになるように、照射領域EAの移動速度を制御してもよい。その結果、領域WA1に形成される造形物S1の高さh1と領域WA2に形成される造形物S2の高さh2とのばらつきがより適切に抑制される。尚、照射領域EAの移動速度と造形物の高さh1、h2との関係が非線形である場合には、この非線形な関係を考慮して移動速度を制御すればよい。
【0103】
制御装置7は、照射領域EAの移動速度を制御するために、駆動系42を制御してもよい。つまり、制御装置7は、造形ヘッド41の移動速度(特に、XY平面に沿った方向の移動速度)を制御することで、造形面CSに対する照射領域EAの相対的な移動速度を制御してもよい。後述するように、ステージ43を移動させる駆動系を造形装置4が備えている場合には、制御装置7は、ステージ43の移動速度(特に、XY平面に沿った方向の移動速度)を制御することで、造形面CSに対する照射領域EAの相対的な移動速度を制御してもよい。後述するように、照射光学系411が光ELを偏向可能な光学部材(例えば、ガルバノスキャナ等)を備えている場合には、制御装置7は、光ELを偏向可能な光学部材を制御することで、造形面CSに対する照射領域EAの相対的な移動速度を制御してもよい。
【0104】
(3-2)第2のばらつき抑制動作
続いて、第2のばらつき抑制動作について説明する。第2のばらつき抑制動作は、光ELから伝達される熱に対する特性(以降、“熱特性”と称する)が異なる領域が造形面CSに存在する場合に、造形物の高さなどのばらつきを抑制するための動作に相当する。特に、第2のばらつき抑制動作は、造形面CSに対する照射領域EA(つまり、供給領域MA又は溶融池MP)の相対的な移動速度の違いに起因して熱特性が異なる領域が造形面CSに存在する場合に、造形物の高さのばらつきを抑制するための動作に相当する。
【0105】
具体的には、
図16(a)に示すように、造形面CS上にある一つの構造層SLを形成している層形成期間中において、造形面CS上での構造層SLのパターンに応じた移動軌跡に沿って照射領域EAが造形面CS上を移動することは上述したとおりである。ここで、照射領域EAは、移動軌跡に沿って常に一定の移動速度で移動するとは限らない。つまり、照射領域EAの移動速度は、層形成期間中に変わる可能性がある。例えば、
図16(a)に示すように、造形面CS上のある地点P3において、照射領域EAの移動方向が変わる可能性がある。この場合、
図16(b)に示すように、当初は一定であった照射領域EAの移動速度は、照射領域EAが地点P3に近づくにつれて徐々に減少していく。その後、照射領域EAの移動速度は、照射領域EAが地点P3に到達した時点で最小になる(例えば、ゼロになる)。その後、照射領域EAの移動速度は、照射領域EAが地点P3から遠ざかるにつれて徐々に増加していく。その後、照射領域EAの移動速度がある程度増加した後には、照射領域EAは、一定の移動速度で移動する。
【0106】
このように照射領域EAの移動速度が変化すると、造形面CS上のある領域部分に照射領域EAが設定されている時間もまた変化する。造形面CS上のある領域部分に照射領域EAが設定されている時間が変化すると、当該領域部分に対して光ELから伝達される熱量もまた変化する。このため、照射領域EAの移動速度が変化する場合には、光ELから伝達される熱量に関する熱特性が異なる領域が造形面CSに存在することになる。より具体的には、照射領域EAの移動速度が遅くなるほど、造形面CS上のある領域部分に照射領域EAが設定されている時間が長くなる。造形面CS上のある領域部分に照射領域EAが設定されている時間が長くなるほど、当該領域部分に対して光ELから伝達される熱量が多くなる。
【0107】
造形面CS上のある領域部分に光ELから伝達される熱量が変化すると、当該領域部分における造形材料Mの溶融量が変化する可能性がある。造形面CS上のある領域部分における造形材料Mの溶融量が変化すると、当該領域部分において溶融した造形材料Mから形成される造形物の高さ(或いは、サイズ等の任意の特性)もまた変化する可能性がある。より具体的には、造形面CS上のある領域部分に光ELから伝達される熱量が多くなるほど、当該領域部分における造形材料Mの溶融量が多くなる可能性がある。造形面CS上のある領域部分に造形材料Mの溶融量が多くなるほど、当該領域部分において溶融した造形材料Mから形成される造形物が高くなる可能性がある。このため、造形面CSに一定の高さの造形物を形成するべき状況下で照射領域EAの移動速度の変化を考慮することなく一連の造形処理が行われると、
図16(b)の下部に示すように、照射領域EAの移動速度に応じて高さが異なる造形物が形成される可能性がある。より具体的には、造形面CS上のある領域部分を移動する照射領域EAの移動速度が遅くなるほど、当該領域部分に形成される造形物が高くなる可能性がある。
【0108】
一例として、照射領域EAの移動速度が変わる場合には、
図16(a)及び
図16(b)に示すように、造形面CS上には、照射領域EAが第1の移動速度で移動する領域WA3と、照射領域EAが第1の移動速度よりも遅い第2の移動速度で移動する領域WA4とが存在すると言える。この場合、領域WA3と領域WA4とに同じ高さの造形物を形成するべき状況下で領域WA3と領域WA4とを区別することなく一連の造形処理が行われると、
図16(b)の下部に示すように、領域WA3に形成される造形物の高さと領域WA4に形成される造形物の高さとが一致しない可能性がある。典型的には、
図16(b)に示すように、領域WA3に形成される造形物の高さは、光ELから伝達される熱量が多くなる分だけ、領域WA4に形成される造形物の高さよりも高くなる可能性がある。
【0109】
そこで、本実施形態では、制御装置7(言い換えれば、制御装置7の制御下にある造形システム1)は、第2のばらつき抑制動作を行うことで、照射領域EAの移動速度の違いに起因して熱特性が異なる領域に形成される造形物の高さのばらつきを抑制する。例えば、制御装置7は、第2のばらつき抑制動作を行うことで、領域WA3に形成される造形物の高さと領域WA4に形成される造形物の高さとのばらつきを抑制する。
【0110】
制御装置7は、造形材料Mの供給レートを制御することで、造形物の高さのばらつきを抑制する第2のばらつき抑制動作を行ってもよい。具体的には、
図17に示すように、制御装置7は、照射領域EAの移動速度が遅くなるほど供給レートが小さくなるように、供給レートを制御してもよい。つまり、制御装置7は、造形面CS上のある領域部分を移動する照射領域EAの移動速度が遅くなるほど、当該領域部分に対する供給レートが小さくなるように、供給レートを制御してもよい。その結果、照射領域EAが相対的に遅い移動速度で移動する領域部分に形成される造形物が相対的に高くなる状況下において、当該領域部分に対する造形材料Mの供給量が少なくなる。造形材料Mの供給量が少なくなると、造形材料Mの溶融量もまた少なくなる。このため、照射領域EAが相対的に遅い移動速度で移動する領域部分に形成される造形物が相対的に高くなることが抑制される。その結果、照射領域EAの移動速度の違いに起因して熱特性が異なる領域に形成される造形物の高さのばらつきが抑制される。尚、移動速度と造形物の高さとの関係が非線形である場合には、この非線形な関係を考慮して供給レートを制御すればよい。
【0111】
一例として、
図18の1段目のグラフ(
図16(b)の上部のグラフと同一)に示すように照射領域EAの移動速度が変化する場合には、制御装置7は、
図18の2段目のグラフに示すように供給レートが変化するように、供給レートを制御してもよい。つまり、制御装置7は、照射領域EAが相対的に早い第1の移動速度で移動する領域WA3に対する供給レートが、照射領域EAが相対的に遅い第2の移動速度で移動する領域WA4に対する供給レートよりも大きくなるように、供給レートを制御してもよい。その結果、
図18の3段目に示すように、照射領域EAの移動速度の違いに起因して熱特性が異なる領域に、一定の高さの造形物が形成可能となる。つまり、領域WA3に形成される造形物の高さと領域WA4に形成される造形物の高さとのばらつきが抑制される。尚、
図18では、照射領域EAの移動速度に関わらず一定に維持された供給レート及びその場合に形成される造形物を、比較例として一点鎖線で示している。
【0112】
制御装置7は、供給レートを制御することに加えて又は変えて、熱伝達レートを制御することで、造形物の高さのばらつきを抑制する第2のばらつき抑制動作を行ってもよい。具体的には、
図19に示すように、制御装置7は、照射領域EAの移動速度が遅くなるほど熱伝達レートが小さくなるように、熱伝達レートを制御してもよい。つまり、制御装置7は、造形面CS上のある領域部分を移動する照射領域EAの移動速度が遅くなるほど、当該領域部分に対する熱伝達レートが小さくなるように、熱伝達レートを制御してもよい。その結果、照射領域EAが相対的に遅い移動速度で移動する領域部分に形成される造形物が相対的に高くなる状況下において、当該領域部分に対して光ELから伝達される熱量が少なくなる。伝達される熱量が少なくなると、造形材料Mの溶融量もまた少なくなる。このため、照射領域EAが相対的に遅い移動速度で移動する領域部分に形成される造形物が相対的に高くなることが抑制される。その結果、照射領域EAの移動速度の違いに起因して熱特性が異なる領域に形成される造形物の高さのばらつきが抑制される。尚、移動速度と造形物の高さとの関係が非線形である場合には、この非線形な関係を考慮して熱伝達レートを制御すればよい。
【0113】
一例として、
図20の1段目のグラフ(
図16(b)の上部のグラフと同一)に示すように照射領域EAの移動速度が変化する場合には、制御装置7は、
図20の2段目のグラフに示すように熱伝達レートが変化するように、熱伝達レートを制御してもよい。つまり、制御装置7は、照射領域EAが相対的に早い第1の移動速度で移動する領域WA3に対する熱伝達レートが、照射領域EAが相対的に遅い第2の移動速度で移動する領域WA4に対する熱伝達レートよりも大きくなるように、熱伝達レートを制御してもよい。その結果、
図20の3段目に示すように、照射領域EAの移動速度の違いに起因して熱特性が異なる領域に、一定の高さの造形物が形成可能となる。つまり、領域WA3に形成される造形物の高さと領域WA4に形成される造形物の高さとのばらつきが抑制される。尚、
図20では、照射領域EAの移動速度に関わらず一定に維持された熱伝達レート及びその場合に形成される造形物を、比較例として一点鎖線で示している。
【0114】
尚、第2のばらつき抑制動作において供給レート及び熱伝達レートの夫々を制御するための具体的方法は、上述した第1のばらつき抑制動作において供給レート及び熱伝達レートの夫々を制御するための具体的方法と同じであってもよい。このため、供給レート及び熱伝達レートの夫々を制御するための具体的方法についての説明は省略する。
【0115】
また、第2のばらつき抑制動作において抑制するべき造形物の高さのばらつきが生ずる原因の一つが、造形面CSに対する照射領域EA(つまり、供給領域MA)の相対的な移動速度が変化することであることは上述したとおりである。そうすると、照射領域EAの移動速度を制御して本来の移動速度から変えたとしても所望の構造層SL(更には、3次元構造物ST)を形成することができる場合には、制御装置7は、照射領域EAの移動速度を制御することで、造形物の高さのばらつきを抑制する第2のばらつき抑制動作を行ってもよい。この場合、照射領域EAの移動速度が制御されることで、造形物の高さのばらつきが生ずる原因(つまり、造形物の高さのばらつきが生ずるという技術的課題)そのものが解消される。このため、照射領域EAの移動速度を制御する第2のばらつき抑制動作は、造形物の高さのばらつきが生ずる原因を排除するための動作であるとも言える。一方で、照射領域EAの移動軌跡のパターンによっては、照射領域EAの移動速度を制御して本来の移動速度から変えることができない可能性がある。この場合には、制御装置7は、造形物の高さのばらつきを抑制する第2のばらつき抑制動作を行うために、照射領域EAの移動速度を制御しなくてもよい。尚、移動速度と造形物の高さとの関係が非線形である場合には、この非線形な関係を考慮して移動速度を制御すればよい。
【0116】
(3-3)第3のばらつき抑制動作
続いて、第3のばらつき抑制動作について説明する。第3のばらつき抑制動作は、第2のばらつき抑制動作と同様に、熱特性が異なる領域が造形面CSに存在する場合に、造形物の高さなどのばらつきを抑制するための動作に相当する。但し、第3のばらつき抑制動作は、表面の少なくとも一部が造形面CSに設定されている既存構造物(例えば、ワークW及び既に形成済みの構造層SLの少なくとも一方)における熱の拡散度合いの違いに起因して熱特性が異なる領域が造形面CSに存在する場合に、造形物の高さのばらつきを抑制するための動作に相当する。
【0117】
具体的には、3次元構造物STが形成される場合には、造形面CSに光ELが照射されることは上述したとおりである。造形面CSには、光ELから熱が伝達される。この熱は、造形面CSを介して既存構造物の内部にも伝達(実質的には、拡散)される。ここで、既存構造物の特性(例えば、構造、材質及び形状の少なくとも一方)によっては、既存構造物における熱の拡散度合い(つまり、拡散のしやすさ又はしにくさを示す指標)が均一であるとは限らない。つまり、光ELから伝達される熱の拡散度合いに関する熱特性が異なる領域が造形面CSに存在する可能性がある。例えば、造形面CS上には、光ELから伝達された熱が相対的に拡散されにくい領域と、光ELから伝達された熱が相対的に拡散されやすい領域とが存在する可能性がある。
【0118】
例えば、
図21(a)に示すように、既存構造物は、造形面CSが設定される表面SF1に加えて、造形面CSが設定されない表面SF2を有する。この場合、造形面CS上のある領域部分と表面SF2との近接度合いに応じて、造形面CS上のある領域部分に伝達された熱の拡散度合いを推定可能である。具体的には、
図21(a)に示すように、造形面CS上の領域WA5は、造形面CS上の領域WA6よりも表面SF2に近い。このため、領域WA5に伝達された熱の拡散経路(つまり、既存構造物の内部の拡散経路)は、領域WA6に伝達された熱の拡散経路よりも小さく又は少なくなる。従って、造形面CS上のある領域部分と造形面CSが設定されない表面SF2との間の距離が短くなるほど、当該領域部分に伝達された熱が拡散されにくくなる。尚、
図21(a)に示す例では、造形面CS上には、光ELから伝達された熱が相対的に拡散されにくい領域WA5と、光ELから伝達された熱が相対的に拡散されやすい領域WA6とが存在しているとも言える。
【0119】
熱が相対的に拡散されにくい領域WA5では、熱が相対的に拡散されやすい領域WA6と比較して、熱が相対的に長い時間蓄積される。その結果、領域WA5では、熱が相対的に長い時間蓄積される分だけ、領域WA6よりも多くの造形材料Mが溶融する可能性がある。このため、造形面CSに一定の高さの造形物を形成するべき状況下で熱の拡散度合いの違いを考慮することなく一連の造形処理が行われると、熱の拡散度合いの違いに応じて高さが異なる造形物が形成される可能性がある。より具体的には、造形面CS上のある領域部分に伝達された熱が拡散されにくくなるほど、当該領域部分に形成される造形物が高くなる可能性がある。一例として、例えば、領域WA5と領域WA6とに同じ高さの造形物を形成するべき状況下で領域WA5と領域WA6とを区別することなく一連の造形処理が行われると、
図21(b)に示すように、領域WA5に形成される造形物S5の高さh5と領域WA6に形成される造形物S6の高さh6とが一致しない可能性がある。
【0120】
そこで、本実施形態では、制御装置7(言い換えれば、制御装置7の制御下にある造形システム1)は、第3のばらつき抑制動作を行うことで、熱の拡散度合いの違いに起因して熱特性が異なる領域に形成される造形物の高さのばらつきを抑制する。例えば、制御装置7は、第3のばらつき抑制動作を行うことで、領域WA5に形成される造形物の高さと領域WA6に形成される造形物の高さとのばらつきを抑制する。
【0121】
制御装置7は、造形材料Mの供給レートを制御することで、造形物の高さのばらつきを抑制する第3のばらつき抑制動作を行ってもよい。具体的には、
図22に示すように、制御装置7は、熱が拡散しにくくなるほど供給レートが小さくなるように、供給レートを制御してもよい。つまり、制御装置7は、造形面CS上のある領域部分に伝達された熱が拡散されにくくなるほど、当該領域部分に対する供給レートが小さくなるように、供給レートを制御してもよい。その結果、熱が相対的に拡散しにくい領域部分に形成される造形物が相対的に高くなる状況下において、当該領域部分に対する造形材料Mの供給量が少なくなる。造形材料Mの供給量が少なくなると、造形材料Mの溶融量もまた少なくなる。このため、熱が相対的に拡散しにくい領域部分に形成される造形物が相対的に高くなることが抑制される。その結果、熱の拡散度合いの違いに起因して熱特性が異なる領域に形成される造形物の高さのばらつきが抑制される。尚、熱の拡散度合いと造形物の高さとの関係が非線形である場合には、この非線形な関係を考慮して供給レートを制御すればよい。
【0122】
制御装置7は、供給レートを制御することに加えて又は変えて、熱伝達レートを制御することで、造形物の高さのばらつきを抑制する第3のばらつき抑制動作を行ってもよい。具体的には、
図23に示すように、制御装置7は、熱が拡散しにくくなるほど熱伝達レートが小さくなるように、熱伝達レートを制御してもよい。つまり、制御装置7は、造形面CS上のある領域部分に伝達された熱が拡散されにくくなるほど、当該領域部分に対する熱伝達レートが小さくなるように、熱伝達レートを制御してもよい。その結果、熱が相対的に拡散しにくい領域部分に形成される造形物が相対的に高くなる状況下において、当該領域部分に対して伝達される熱量が少なくなる。伝達される熱量が少なくなると、造形材料Mの溶融量もまた少なくなる。このため、熱が相対的に拡散しにくい領域部分に形成される造形物が相対的に高くなることが抑制される。その結果、熱の拡散度合いの違いに起因して熱特性が異なる領域に形成される造形物の高さのばらつきが抑制される。尚、熱の拡散度合いと造形物の高さとの関係が非線形である場合には、この非線形な関係を考慮して熱伝達レートを制御すればよい。
【0123】
制御装置7は、供給レート及び熱伝達レートの少なくとも一方を制御することに加えて又は変えて、造形面CSに対する照射領域EAの相対的な移動速度を制御することで、造形物の高さのばらつきを抑制する第3のばらつき抑制動作を行ってもよい。具体的には、
図24に示すように、制御装置7は、熱が拡散しにくくなるほど照射領域EAの移動速度が速くなるように、照射領域EAの移動速度を制御してもよい。つまり、制御装置7は、造形面CS上のある領域部分に伝達された熱が拡散されにくくなるほど、当該領域部分に照射領域EAが設定されている場合の照射領域EAの移動速度が速くなるように、照射領域EAの移動速度を制御してもよい。造形面CS上のある領域部分に照射領域EAが設定されている場合の照射領域EAの移動速度が速くなるほど、当該領域部分に対する造形材料Mの供給量及び当該領域部分に対して光ELから伝達される熱量が少なくなることは、既に上述したとおりである。このため、
図24に示すように照射領域EAの移動速度が制御されると、熱が相対的に拡散しにくい領域部分に形成される造形物が相対的に高くなる状況下において、当該領域部分に対する造形材料Mの供給量及び当該領域部分に対して伝達される熱量が少なくなる。このため、熱が相対的に拡散しにくい領域部分に形成される造形物が相対的に高くなることが抑制される。その結果、熱の拡散度合いの違いに起因して熱特性が異なる領域に形成される造形物の高さのばらつきが抑制される。尚、熱の拡散度合いと造形物の高さとの関係が非線形である場合には、この非線形な関係を考慮して移動測度を制御すればよい。
【0124】
尚、第3のばらつき抑制動作において供給レート、熱伝達レート及び照射領域EAの移動速度の夫々を制御するための具体的方法は、上述した第1のばらつき抑制動作において供給レート、熱伝達レート及び照射領域EAの移動速度の夫々を制御するための具体的方法と同じであってもよい。このため、供給レート、熱伝達レート及び照射領域EAの移動速度の夫々を制御するための具体的方法についての説明は省略する。
【0125】
尚、第3のばらつき抑制動作の説明においては、熱特性として熱の経時的な特性を例に挙げて説明したが、熱に関する他の特性であってもよい。
【0126】
(3-4)第4のばらつき抑制動作
続いて、第4のばらつき抑制動作について説明する。第4のばらつき抑制動作は、第2のばらつき抑制動作と同様に、熱特性が異なる領域が造形面CSに存在する場合に、造形物の高さなどのばらつきを抑制するための動作に相当する。但し、第4のばらつき抑制動作は、光ELが照射される頻度の違いに起因して熱特性が異なる領域が造形面CSに存在する場合に、造形物の高さのばらつきを抑制するための動作に相当する。
【0127】
具体的には、3次元構造物STを構成する各構造層SLが形成される場合には、造形面CS上で照射領域EAが移動し且つ造形面CS上で造形物を形成したい領域に照射領域EAが設定されたタイミングで光ELが照射されることは上述したとおりである。ここで、照射領域EAの移動軌跡のパターン及び構造層SLのパターン(つまり、造形面CS上で造形物を形成したい領域の分布パターン)の少なくとも一方によっては、造形面CS上に、光ELが照射される頻度が異なる領域が存在する可能性がある。例えば、
図25(a)に示すように、造形面CS上に、光ELが相対的に高頻度に照射される領域WA7と、光ELが相対的に低頻度に照射される領域WA8とが存在する可能性がある。
【0128】
尚、造形面CS上のある領域に光ELが照射される頻度は、当該ある領域の一部に光ELが照射されてから次に当該ある領域の別の一部に光ELが照射されるまでの時間が短くなるほど、高くなる。造形面CS上のある領域に光ELが照射される頻度は、当該ある領域に単位時間当たりに光ELが照射される回数が多くなるほど、高くなる。造形面CS上のある領域に光ELが照射される頻度は、当該ある領域に単位面積当たりに光ELが照射される回数が多くなるほど、高くなる。
【0129】
光ELが相対的に高頻度に照射される領域WA7では、光ELが相対的に低頻度に照射される領域WA8と比較して、光ELから伝達される熱によって加熱した領域WA7が冷却される前に新たに領域WA7に照射された光からの熱によって更に領域WA7が加熱される可能性が高くなる。つまり、光ELが相対的に高頻度に照射される領域WA7では、光ELが相対的に低頻度に照射される領域WA8と比較して、光ELからの熱が放熱されにくくなる。言い換えれば、光ELが相対的に高頻度に照射される領域WA7では、光ELが相対的に低頻度に照射される領域WA8と比較して、光ELからの熱が相対的に長い時間蓄積される。その結果、領域WA7では、熱が相対的に長い時間蓄積される分だけ、領域WA8よりも多くの造形材料Mが溶融する可能性がある。このため、造形面CSに一定の高さの造形物を形成するべき状況下で光ELが照射される頻度の違いを考慮することなく一連の造形処理が行われると、光ELが照射される頻度の違いに応じて高さが異なる造形物が形成される可能性がある。より具体的には、造形面CS上のある領域に光ELが照射される頻度が高くなるほど、当該領域部分に形成される造形物が高くなる可能性がある。一例として、例えば、領域WA7と領域WA8とに同じ高さの造形物を形成するべき状況下で領域WA7と領域WA8とを区別することなく一連の造形処理が行われると、
図25(b)に示すように、領域WA7に形成される造形物S7の高さh7と領域WA8に形成される造形物S8の高さh8とが一致しない可能性がある。
【0130】
そこで、本実施形態では、制御装置7(言い換えれば、制御装置7の制御下にある造形システム1)は、第4のばらつき抑制動作を行うことで、光ELが照射される頻度の違いに起因して熱特性が異なる領域に形成される造形物の高さのばらつきを抑制する。例えば、制御装置7は、第4のばらつき抑制動作を行うことで、領域WA7に形成される造形物の高さと領域WA8に形成される造形物の高さとのばらつきを抑制する。
【0131】
制御装置7は、造形材料Mの供給レートを制御することで、造形物の高さのばらつきを抑制する第4のばらつき抑制動作を行ってもよい。具体的には、
図26に示すように、制御装置7は、光ELが照射される頻度が高くなるほど供給レートが小さくなるように、供給レートを制御してもよい。つまり、制御装置7は、造形面CS上のある領域部分に光ELが照射される頻度が高くなるほど、当該領域部分に対する供給レートが小さくなるように、供給レートを制御してもよい。その結果、光ELが照射される頻度が高い領域部分に形成される造形物が相対的に高くなる状況下において、当該領域部分に対する造形材料Mの供給量が少なくなる。造形材料Mの供給量が少なくなると、造形材料Mの溶融量もまた少なくなる。このため、光ELが照射される頻度が高い領域部分に形成される造形物が相対的に高くなることが抑制される。その結果、光ELが照射される頻度の違いに起因して熱特性が異なる領域に形成される造形物の高さのばらつきが抑制される。尚、光ELが照射される頻度と造形物の高さとの関係が非線形である場合には、その非線形な関係を考慮して供給レートを制御してもよい。
【0132】
制御装置7は、供給レートを制御することに加えて又は変えて、熱伝達レートを制御することで、造形物の高さのばらつきを抑制する第4のばらつき抑制動作を行ってもよい。具体的には、
図27に示すように、制御装置7は、光ELが照射される頻度が高くなるほど熱伝達レートが小さくなるように、熱伝達レートを制御してもよい。つまり、制御装置7は、造形面CS上のある領域部分に光ELが照射される頻度が高くなるほど、当該領域部分に対する熱伝達レートが小さくなるように、熱伝達レートを制御してもよい。その結果、光ELが照射される頻度が高い領域部分に形成される造形物が相対的に高くなる状況下において、当該領域部分に対して伝達される熱量が少なくなる。伝達される熱量が少なくなると、造形材料Mの溶融量もまた少なくなる。このため、光ELが照射される頻度が高い領域部分に形成される造形物が相対的に高くなることが抑制される。その結果、光ELが照射される頻度の違いに起因して熱特性が異なる領域に形成される造形物の高さのばらつきが抑制される。尚、光ELが照射される頻度と造形物の高さとの関係が非線形である場合には、その非線形な関係を考慮して熱伝達レートを制御してもよい。
【0133】
制御装置7は、供給レート及び熱伝達レートの少なくとも一方を制御することに加えて又は変えて、造形面CSに対する照射領域EAの相対的な移動速度を制御することで、造形物の高さのばらつきを抑制する第4のばらつき抑制動作を行ってもよい。具体的には、
図28に示すように、制御装置7は、光ELが照射される頻度が高くなるほど照射領域EAの移動速度が速くなるように、照射領域EAの移動速度を制御してもよい。つまり、制御装置7は、造形面CS上のある領域部分に光ELが照射される頻度が高くなるほど、当該領域部分に照射領域EAが設定されている場合の照射領域EAの移動速度が速くなるように、照射領域EAの移動速度を制御してもよい。造形面CS上のある領域部分に照射領域EAが設定されている場合の照射領域EAの移動速度が速くなるほど、当該領域部分に対する造形材料Mの供給量及び当該領域部分に対して光ELから伝達される熱量が少なくなることは、既に上述したとおりである。このため、
図28に示すように照射領域EAの移動速度が制御されると、光ELが照射される頻度が高い領域部分に形成される造形物が相対的に高くなる状況下において、当該領域部分に対する造形材料Mの供給量及び当該領域部分に対して伝達される熱量が少なくなる。このため、光ELが照射される頻度が高いい領域部分に形成される造形物が相対的に高くなることが抑制される。その結果、光ELが照射される頻度の違いに起因して熱特性が異なる領域に形成される造形物の高さのばらつきが抑制される。尚、光ELが照射される頻度と造形物の高さとの関係が非線形である場合には、その非線形な関係を考慮して移動速度を制御してもよい。
【0134】
尚、第4のばらつき抑制動作において供給レート、熱伝達レート及び照射領域EAの移動速度の夫々を制御するための具体的方法は、上述した第1のばらつき抑制動作において供給レート、熱伝達レート及び照射領域EAの移動速度の夫々を制御するための具体的方法と同じであってもよい。このため、供給レート、熱伝達レート及び照射領域EAの移動速度の夫々を制御するための具体的方法についての説明は省略する。
【0135】
尚、第4のばらつき抑制動作の説明においては、熱特性として熱の経時的な特性を例に挙げて説明したが、熱に関する他の特性であってもよい。
【0136】
(3-5)ばらつき抑制動作の変形例
上述した説明では、制御装置7は、造形面CS上の異なる領域に形成される造形物の高さ(或いは、サイズ等の任意の特性)のばらつきを抑制するために、造形材料Mの供給レート、熱伝達レート及び造形面CSに対する照射領域EAの移動速度の少なくとも一つを制御している。しかしながら、逆に言えば、制御装置7は、供給レート、熱伝達レート及び造形面CSに対する照射領域EAの移動速度の少なくとも一つを制御することで、造形面CS上に形成される造形物(更には、構造層SL及び3次元構造物ST)の特性を制御することができる。このため、制御装置7は、造形面CS上に形成される造形物(更には、構造層SL及び3次元構造物ST)の特性が所望の特性となるように、供給レート、熱伝達レート及び造形面CSに対する照射領域EAの移動速度の少なくとも一つを制御してもよい。つまり、制御装置7は、特性のばらつきを抑制する目的とは異なる目的で、供給レート、熱伝達レート及び造形面CSに対する照射領域EAの移動速度の少なくとも一つを制御してもよい。例えば、制御装置7は、後述するマーキング動作で形成されるマークの特性(例えば、高さ及びサイズの少なくとも一方)を制御するために、供給レート、熱伝達レート及び造形面CSに対する照射領域EAの移動速度の少なくとも一つを制御してもよい。
【0137】
上述した説明では、熱特性が異なる複数の領域が造形面CSに存在する原因の一例として、造形面CSに対する照射領域EAの相対的な移動速度の違い、表面の少なくとも一部が造形面CSに設定されている既存構造物における熱の拡散度合いの違い、及び、光ELが照射される頻度の違いについて説明している。しかしながら、その他の理由で、熱特性が異なる領域が造形面CSに存在する可能性もある。この場合においても、熱特性が異なる領域に同じ特性の造形物を形成するべき状況下で熱特性の違いを考慮することなく一連の造形処理が行われると特性がばらついた造形物が形成される可能性がある。このため、制御装置7は、上述した原因とは異なるその他の原因で熱特性が異なる領域に形成される造形物の高さのばらつきを抑制するためのばらつき抑制動作を行ってもよい。尚、熱特性が異なる複数の領域が造形面CSに存在する場合として、造形面CSの場所ごとに材料の種類や密度等が異なる場合が挙げられる。
【0138】
(4)マーキング動作
続いて、上述した造形動作を用いて造形面CSにマークSMを形成するためのマーキング動作について説明する。
【0139】
(4-1)マーキング動作の概要
マーキング動作は、上述した造形動作を用いて造形面CS上に所定の分布パターンで分布する造形物を形成することで、当該造形物の集合体から構成されるマークSMを造形面CSに形成するための動作である。
【0140】
マークSMは、造形面CSに沿った平面上で所定の意味を有する記号に関するマークを含んでいてもよい。記号は、例えば、任意の文字を意味する記号、任意の数字を意味する記号、任意の図形を意味する記号、任意の印を意味する記号及びその他何らかの意味を有する記号の少なくとも一つを含んでいてもよい。例えば、
図29は、造形面CS上に、アルファベットのNを意味する記号に関するマークSM1、感嘆符を意味する記号に関するマークSM2及び円形の図形を意味する記号に関するマークSM3が造形面CS上に形成されている例を示している。
【0141】
マークSMは、
図29の下部に示すように、造形面CSから凸状に突き出た構造物である。マークSMは、単一の構造層SLを含む構造物であってもよい。つまり、マークSMは、単一の構造層SLから構成されていてもよい。この場合、マークSMの高さ(つまり、造形面CSからマークSMの上面(つまり、+Z側の面)までの長さ、以下同じ)は、構造層SLの高さと同じになる。或いは、マークSMは、積層された複数の構造層SLを含む構造物であってもよい。つまり、マークSMは、積層された複数の構造層SLから構成されていてもよい。この場合、マークSMの高さは、積層された複数の構造層SLの高さと同じになる。従って、マークSMの高さは、典型的には、マークSMを構成する構造層SLの数が増えるほど高くなる。
【0142】
但し、マークSMの高さの最大値は、造形面CSに沿った方向におけるマークSMのサイズの最小値を超えない。つまり、マークSMのうち最も高い部分の高さは、マークSMのうち最も細い部分のサイズを超えない。例えば、
図29に示す例では、マークSM1の高さの最大値hm1は、造形面CSに沿った方向におけるマークSM1のサイズの最小値wm1を超えない。マークSM2の高さの最大値hm2は、造形面CSに沿った方向におけるマークSM2のサイズの最小値wm2を超えない。但し、高さの最大値が造形面CSに沿った方向におけるマークSMのサイズの最小値を超えているマークSMが形成されてもよい。
【0143】
このようなマークSMを形成するために、制御装置7は、まず、造形面CSに形成するべきマークSMに関する座標データを取得する。座標データは、造形面CS上でマークSMが分布する位置(つまり、マークSMを構成する造形物を形成するべきマーク形成領域が分布する位置)を示すデータである。造形面CSが平面であることから、座標データは、2次元座標系上でマークSMが分布する位置に対応付けられた(或いは、関連付けられた)データに相当する。このような座標データの一例として、フォントデータ(例えば、ビットマップフォントデータ等)及び画像データ(例えば、ビットマップ画像データ等)のうちの少なくとも一方があげられる。制御装置7は、座標データを提供する他の装置から座標データを取得してもよい。或いは、制御装置7は、制御装置7自身で座標データを生成してもよい。この場合、制御装置7は、まず、造形面CSに形成するべきマークSMに対応する記号を示す記号情報を取得する。例えば、制御装置7は、造形面CSに形成したい記号を入力するためにユーザが操作可能な入力装置から、当該記号を指定するユーザの操作内容に関する情報を、記号情報として取得する。その後、制御装置7は、取得した記号情報を、座標データに変換する。例えば、制御装置7は、記号情報が示す記号を、二次元平面上での記号パターンに変換し、当該記号パターンが分布する領域の2次元平面上での座標を特定する。その結果、制御装置7は、特定した座標を示す座標データを取得することができる。
【0144】
座標データを取得した後、制御装置7は、座標データに基づいて造形動作を行うことで、マークSMを形成する。具体的には、制御装置7は、座標データに基づいて少なくとも一つの構造層SLを形成することで、当該構造層SLから構成されるマークSMを形成する。各構造層SLを形成する場合には、制御装置7は、
図30(a)に示すように、Y軸方向に沿った照射領域EAの移動とX軸方向に沿った照射領域EAの移動とを繰り返すように造形面CSに対して照射領域EAを移動させながら、座標データが示すマーク形成領域と照射領域EAとが重なるタイミングで光ELを照射するように、造形装置4を制御してもよい。言い換えると、照射領域EAを造形面CS上でラスタスキャンするように移動させてもよい。或いは、制御装置7は、
図30(b)に示すように、座標データが示すマーク形成領域の分布パターンに沿って照射領域EAを移動させながら光ELを照射するように、造形装置4を制御してもよい。言い換えると、照射領域EAを造形面CS上でベクタースキャンするように移動させてもよい。いずれにせよ、造形面CS上には、マークSMに応じたパターン(つまり、溶融池MPの移動軌跡に応じたパターン)の構造層SLが形成される。
【0145】
尚、制御装置7は、マーキング動作を行っている期間の少なくとも一部において、上述したばらつき抑制動作を行ってもよい。つまり、制御装置7は、マーキング動作を行っている期間の少なくとも一部において、上述したばらつき抑制動作を行うことで、マーキング動作によって形成されるマークSMの特性(例えば、高さ及びサイズの少なくとも一方)のばらつきを抑制してもよい。例えば、マークSMを形成する期間の少なくとも一部において、造形面CS上の同じ領域に2回以上照射領域EAが設定される場合には、制御装置7は、上述した第1のばらつき抑制動作を行ってもよい。例えば、マークSMを形成する期間の少なくとも一部において、造形面CSに対する照射領域EAの相対的な移動速度の違いに起因して熱特性が異なる領域が造形面CSに存在する場合には、制御装置7は、上述した第2のばらつき抑制動作を行ってもよい。例えば、マークSMを形成する期間の少なくとも一部において、表面の少なくとも一部が造形面CSに設定されている既存構造物における熱の拡散度合いの違いに起因して熱特性が異なる領域が造形面CSに存在する場合には、制御装置7は、上述した第3のばらつき抑制動作を行ってもよい。例えば、マークSMを形成する期間の少なくとも一部において、光ELが照射される頻度の違いに起因して熱特性が異なる領域が造形面CSに存在する場合には、制御装置7は、上述した第4のばらつき抑制動作を行ってもよい。
【0146】
(4-2)マークSMの特性を制御するための特性制御動作
続いて、マーキング動作によって形成されるマークSMの特性を制御するための特性制御動作について説明する。本実施形態では、造形システム1は、特性制御動作の一例として、マークSMのサイズを制御するサイズ制御動作、マークSMの高さを制御する高さ制御動作、マークSMの表面(特に、マークSMを構成する凸状の構造物の上面)の形状を制御する形状制御動作、及び、マークSMの色調を制御する色調制御動作の少なくとも一つを行う。このため、以下では、サイズ制御動作、高さ制御動作、形状制御動作及び色調制御動作について順に説明する。尚、造形システム1は、マークSMのその他の特性を制御するための特性制御動作を行ってもよい。
【0147】
(4-2-1)サイズ制御動作
はじめに、サイズ制御動作について説明する。サイズ制御動作は、マークSMのサイズ(特に、X軸方向及びY軸方向の少なくとも一方のサイズであり、例えば、幅)を制御するための特性制御動作である。尚、マークSMのサイズは、造形面CSの面内方向におけるサイズであってもよい。造形システム1は、制御装置7の制御下で、サイズ制御動作を行うことで、所望のサイズのマークSMを形成することができる。更には、造形システム1は、制御装置7の制御下で、サイズ制御動作を行うことで、夫々同じ記号を示しながらもサイズが異なる複数のマークSMを形成することができる。更には、造形システム1は、制御装置7の制御下で、サイズ制御動作を行うことで、マークSMの形成中にマークSMのサイズを変えながらマークSMを形成することができる。
【0148】
例えば、
図31(a)から
図31(d)は、いずれも、造形面CSに形成された線状の図形に関するマークSM11及び円形の図形に関するマークSM12を示している。
図31(a)に示す例では、制御装置7は、マークSM11のサイズ(具体的には、Y軸方向のサイズであり、幅)が、所望の第1サイズwm11になり、且つ、マークSM12のサイズが、所望の第2サイズwm12になるように、サイズ制御動作を行っている。
図31(b)に示す例では、制御装置7は、マークSM11のサイズが、第1サイズwm11よりも小さい所望の第3サイズwm13になり、且つ、マークSM12のサイズが、第2サイズwm12よりも大きい所望の第4サイズwm14になるように、サイズ制御動作を行っている。尚、
図31(a)及び
図31(b)に示す例では、制御装置7は、マークSM11の一の部分のサイズと、一の部分とは異なるマークSM11の他の部分のサイズとが同じになるように(つまり、マークSM11の形成中にサイズを変えないように)、サイズ制御動作を行っているとも言える。
図31(c)に示す例では、制御装置7は、マークSM11の長手方向(つまり、X軸方向)に沿って、マークSM11のサイズが第1サイズwm11から第1サイズwm11よりも大きい第5サイズwm15にまで連続的に変化する(ここでは、大きくなる)ように、サイズ制御動作を行っている。
図31(d)に示す例では、制御装置7は、マークSM11の長手方向に沿って、マークSM11のサイズが第1サイズwm11から第5サイズwm15にまで段階的に又は離散的に変化する(ここでは、大きくなる)ように、サイズ制御動作を行っている。尚、
図31(c)及び
図31(d)に示す例では、制御装置7は、マークSM11の一の部分のサイズと、一の部分とは異なるマークSM11の他の部分のサイズとが異なるものとなるように(つまり、マークSM11の形成中にサイズを変えるように)、サイズ制御動作を行っているとも言える。
【0149】
制御装置7は、熱伝達レートを制御することで、マークSMのサイズを制御してもよい。具体的には、造形面CSのある領域部分に対する熱伝達レートが大きくなるほど、当該領域部分に光ELから伝達される熱量が大きくなる。造形面CSのある領域部分に伝達される熱量が多くなるほど、当該領域部分に形成される溶融池MPのサイズが大きくなる。造形面CSのある領域部分における溶融池MPのサイズが大きくなるほど、当該領域部分に形成される造形物のサイズが大きくなる。造形面CSのある領域部分に形成される造形物のサイズが大きくなるほど、当該造形物から構成されるマークSMのサイズも大きくなる。つまり、
図32に示すように、熱伝達レートが大きくなるほど、マークSMのサイズも大きくなる。従って、制御装置7は、熱伝達レートを制御することで、マークSMのサイズを制御することができる。尚、サイズ制御動作を含む特性制御動作において熱伝達レートを制御するための具体的方法は、上述したばらつき抑制動作において熱伝達レートを制御するための具体的方法と同じであってもよい。従って、特性制御動作の説明においては、熱伝達レートを制御するための具体的方法についての説明は省略する。尚、熱伝達レートとマークSMのサイズとの関係が非線形な関係となる場合には、この非線形な関係を考慮して熱伝達レートを制御してもよい。
【0150】
制御装置7は、造形面CSに対する照射領域EAの相対的な移動速度を制御することで、マークSMのサイズを制御してもよい。具体的には、造形面CSのある領域部分における照射領域EAの移動速度が遅くなるほど、造形面CS上のある領域部分に照射領域EAが設定されている時間が長くなる。造形面CS上のある領域部分に照射領域EAが設定されている時間が長くなるほど、当該領域部分に対して光ELから伝達される熱量が多くなる。造形面CS上のある領域部分に伝達される熱量が多くなるほど、当該領域部分に形成される造形物のサイズ(更には、マークSMのサイズ)が大きくなる。つまり、
図33に示すように、照射領域EAの移動速度が遅くなるほど、マークSMのサイズも大きくなる。従って、制御装置7は、照射領域EAの移動速度を制御することで、マークSMのサイズを制御することができる。尚、サイズ制御動作を含む特性制御動作において照射領域EAの移動速度を制御するための具体的方法は、上述したばらつき抑制動作において照射領域EAの移動速度を制御するための具体的方法と同じであってもよい。従って、特性制御動作の説明においては、照射領域EAの移動速度を制御するための具体的方法についての説明は省略する。尚、移動速度とマークSMのサイズとの関係が非線形な関係となる場合には、この非線形な関係を考慮して移動速度を制御してもよい。
【0151】
制御装置7は、照射領域EAのサイズを制御することで、マークSMのサイズを制御してもよい。具体的には、造形面CS上のある領域部分に設定される照射領域EAのサイズが大きくなるほど、当該領域部分において光ELが実際に照射される領域のサイズが大きくなる。造形面CS上のある領域部分において光ELが実際に照射される領域のサイズが大きくなるほど、当該領域部分に形成される溶融池MPのサイズが大きくなる。造形面CSのある領域部分における溶融池MPのサイズが大きくなるほど、当該領域部分に形成される造形物のサイズ(更には、マークSMのサイズ)が大きくなる。つまり、
図34に示すように、照射領域EAのサイズが大きくなるほど、マークSMのサイズも大きくなる。従って、制御装置7は、照射領域EAのサイズを制御することで、マークSMのサイズを制御することができる。尚、照射領域EAのサイズとマークSMのサイズとの関係が非線形な関係となる場合には、この非線形な関係を考慮して照射領域EAのサイズを制御してもよい。
【0152】
照射領域EAのサイズを制御するために、制御装置7は、照射光学系411を制御してもよい。例えば、制御装置7は、照射領域EAのサイズを制御するために照射光学系411が備えている光学部材を制御することで、照射領域EAのサイズを制御してもよい。このような光学部材の一例として、集光光学素子、光ELが通過可能な開口の形状及び大きさの少なくとも一方を変更可能な絞り部材、並びに、照射光学系411の光軸に交差する面(つまり、光ELの伝搬方向に交差する面)内において光ELが通過可能な領域と光ELを遮光可能な領域とを可変に設定可能な光成形部材等の少なくとも一つがあげられる。或いは、照射光学系411に対する造形面CSの相対的な位置(特に、Z軸方向における相対的な位置)が変わると照射領域EAのサイズもまた変わり得るがゆえに、制御装置7は、駆動系42を制御して照射光学系411に対する造形面CSの相対的な位置を制御することで、照射領域EAのサイズを制御してもよい。
【0153】
図35(a)から
図35(b)に示すように、あるマークSMが、複数の線状構造物LPから構成されることがある。このような複数の線状構造物LPから構成されるマークSMは、例えば、
図5(a)及び
図30(a)に示すように、Y軸方向に沿って照射領域EAを移動させながら光ELを照射する動作と光ELを照射することなくX軸方向に沿って照射領域EAを移動させる動作とが繰り返される場合に形成される可能性がある。具体的には、Y軸方向に沿って照射領域EAを移動させながら光ELを照射することでY軸方向に延伸するように形成される複数の線状構造物LPが、X軸方向に沿って隙間なく又は隙間を空けて形成されると、当該複数の線状構造物LPの集合体に相当するマークSMが形成可能である。
【0154】
このようにマークSMが複数の線状構造物LPから構成される場合には、制御装置7は、マークSMを構成する複数の線状構造物LPの数を制御することで、マークSMのサイズ(特に、複数の線状構造物LPが並ぶ方向に沿ったサイズ)を制御してもよい。具体的には、
図35(a)及び
図35(b)に示すように、マークSMを構成する複数の線状構造物LPの数が少なくなるほど、マークSMのサイズが小さくなる。
図35(a)及び
図35(b)は、N1本の線状構造物LPから構成されるマークSMのサイズwm16よりも、N2(但し、N2<N1)本の線状構造物LPから構成されるマークSMのサイズwm17が小さくなる例を示している。
【0155】
このようにマークSMが複数の線状構造物LPから構成される場合には、制御装置7は、マークSMを構成する複数の線状構造物LPの長さを制御することで、マークSMのサイズ(特に、複数の線状構造物LPの長手方向又は延伸方向に沿ったサイズ)を制御してもよい。具体的には、
図35(c)及び
図35(d)に示すように、マークSMを構成する複数の線状構造物LPの長さが短くなるほど、マークSMのサイズが小さくなる。
図35(c)及び
図35(d)は、相対的に長い(具体的には、長さがwm18となる)線状構造物LPから構成されるマークSMのサイズwm18よりも、相対的に短い(具体的には、長さがwm19(但し、wm19<wm18)となる)線状構造物LPから構成されるマークSMのサイズwm19が小さくなる例を示している。
【0156】
尚、制御装置7は、造形材料Mの供給レートの制御、熱伝達レートの制御、移動速度の制御及び線状構造物の数の制御のうち少なくとも2つを組み合わせて制御してもよい。
【0157】
(4-2-2)高さ制御動作
続いて、高さ制御動作について説明する。高さ制御動作は、マークSMの高さを制御するための特性制御動作である。造形システム1は、制御装置7の制御下で、特性制御動作を行うことで、所望の高さのマークSMを形成することができる。更には、造形システム1は、制御装置7の制御下で、高さ制御動作を行うことで、夫々同じ記号を示しながらも高さが異なる複数のマークSMを形成することができる。更には、造形システム1は、制御装置7の制御下で、高さ制御動作を行うことで、マークSMの形成中のマークSMの高さを変えながらマークSMを形成することができる。
【0158】
例えば、
図36(a)から
図36(d)は、いずれも、造形面CSに形成された線状の図形に関するマークSMを示している。
図36(a)に示す例では、制御装置7は、マークSMの高さが所望の第1高さhm21になるように、高さ制御動作を行っている。
図36(b)に示す例では、制御装置7は、マークSMの高さが、第1高さhm21よりも高い所望の第2高さhm22になるように、高さ制御動作を行っている。尚、
図36(a)及び
図36(b)に示す例では、制御装置7は、マークSMの一の部分の高さと、一の部分とは異なるマークSMの他の部分の高さとが同じになるように(つまり、マークSMの形成中に高さを変えないように)、高さ制御動作を行っているとも言える。
図36(c)に示す例では、制御装置7は、マークSMの長手方向(つまり、X軸方向)に沿って、マークSMの高さが第1高さhm21から第1高さhm21よりも高い第3高さhm23にまで連続的に変化する(ここでは、高くなる)ように、高さ制御動作を行っている。
図36(d)に示す例では、制御装置7は、マークSMの長手方向に沿ってマークSMの高さが第1高さhm21から第3高さhm23にまで段階的に又は離散的に変化する(ここでは、高くなる)ように、高さ制御動作を行っている。特に、
図36(c)及び
図36(d)に示す例では、制御装置7は、造形面CS上で照射領域EA(つまり、溶融池MP)をY軸方向に沿って移動させることで形成されるY軸方向に延伸するマークSMを構成する各部分の高さ(つまり、Y軸方向に交差するZ軸方向に沿った高さ)が、当該各部分のY軸方向に沿った位置に応じて異なるように、高さ制御動作を行っている。尚、
図36(c)及び
図36(d)に示す例では、制御装置7は、マークSMの一の部分の高さと、一の部分とは異なるマークSMの他の部分の高さとが異なるものとなるように(つまり、マークSMの形成中に高さを変えるように)、高さ制御動作を行っているとも言える。尚、制御装置7は、マークSMの長手方向に沿ってマークSMの高さが連続的に変化するように、高さ制御動作を行ってもよい。
【0159】
制御装置7は、造形材料Mの供給レートを制御することで、マークSMの高さを制御してもよい。具体的には、造形面CSのある領域部分に対する供給レートが大きくなるほど、当該領域部分に対する造形材料Mの供給量が多くなる。造形面CSのある領域部分に対する造形材料Mの供給量が多くなるほど、当該領域部分における造形材料Mの溶融量が多くなる。造形面CSのある領域部分における造形材料Mの溶融量が多くなるほど、当該領域部分に形成される造形物が高くなる。造形面CSのある領域部分に形成される造形物が高くなるほど、当該造形物から構成されるマークSMも高くなる。つまり、
図37に示すように、供給レートが大きくなるほど、マークSMが高くなる。従って、制御装置7は、供給レートを制御することで、マークSMの高さを制御することができる。尚、高さ制御動作を含む特性制御動作において供給レートを制御するための具体的方法は、上述したばらつき抑制動作において供給レートを制御するための具体的方法と同じであってもよい。従って、特性制御動作の説明においては、供給レートを制御するための具体的方法についての説明は省略する。尚、供給レートとマークSMの高さとの関係が非線形な関係である場合には、この非線形な関係を考慮して供給レートを制御してもよい。
【0160】
制御装置7は、熱伝達レートを制御することで、マークSMの高さを制御してもよい。具体的には、造形面CSのある領域部分に対する熱伝達レートが大きくなるほど、当該領域部分に光ELから伝達される熱量が大きくなる。造形面CSのある領域部分に伝達される熱量が多くなるほど、当該領域部分における造形材料Mの溶融量が多くなる可能性がある。造形面CS上のある領域部分に造形材料Mの溶融量が多くなるほど、当該領域部分に形成される造形物(更には、マークSM)が高くなる。つまり、
図38に示すように、熱伝達レートが大きくなるほど、マークSMが高くなる。従って、制御装置7は、熱伝達レートを制御することで、マークSMの高さを制御することができる。尚、熱伝達レートとマークSMの高さとの関係が非線形な関係である場合には、この非線形な関係を考慮して熱伝達レートを制御してもよい。
【0161】
制御装置7は、造形面CSに対する照射領域EAの相対的な移動速度を制御することで、マークSMの高さを制御してもよい。具体的には、上述したように、造形面CSのある領域部分における照射領域EAの移動速度が遅くなるほど、当該領域部分に対して光ELから伝達される熱量が多くなる。造形面CS上のある領域部分に伝達される熱量が多くなるほど、当該領域部分に形成される造形物(更には、マークSM)が高くなる。つまり、
図39に示すように、照射領域EAの移動速度が遅くなるほど、マークSMが高くなる。従って、制御装置7は、照射領域EAの移動速度を制御することで、マークSMの高さを制御することができる。尚、移動速度とマークSMの高さとの関係が非線形な関係である場合には、この非線形な関係を考慮して移動速度を制御してもよい。
【0162】
上述したように、マークSMは、積層された複数の構造層SLを含む構造物である場合がある。この場合には、制御装置7は、マークSMを構成する複数の構造層SLの数(つまり、構造層SLの積層数)を制御することで、マークSMの高さを制御してもよい。具体的には、
図40(a)及び
図40(b)に示すように、マークSMを構成する複数の構造層SLの数が少なくなるほど、マークSMが低くなる。
図40(a)及び
図40(b)は、L1個の構造層SLから構成されるマークSMの高さhm24よりも、L2(但し、L2>L1)個の構造層SLから構成されるマークSMの高さwm25が高くなる例を示している。
【0163】
尚、制御装置7は、造形材料Mの供給レートの制御、熱伝達レートの制御、移動速度の制御及び積層数の制御のうち少なくとも2つを組み合わせて制御してもよい。
【0164】
(4-2-3)形状制御動作
続いて、形状制御動作について説明する。形状制御動作は、マークSMの表面(特に、マークSMを構成する凸状の構造物の上面)の形状を制御するための特性制御動作である。造形システム1は、制御装置7の制御下で、形状制御動作を行うことで、表面の形状が所望の形状となるマークSMを形成することができる。例えば、
図41(a)に示すように、制御装置7は、表面が平面(特に、造形面CSに対して平行な平面)を含むマークSMを形成するように、形状制御動作を行ってもよい。例えば、
図41(b)に示すように、制御装置7は、表面が曲面を含むマークSMを形成するように、形状制御動作を行ってもよい。例えば、
図41(c)に示すように、制御装置7は、表面が造形面CSに対して傾斜した平面を含むマークSMを形成するように、形状制御動作を行ってもよい。
【0165】
制御装置7は、上述したサイズ制御動作と同様の動作を行ってマークSMを構成する造形物のサイズを制御することで、マークSMの表面の形状を制御してもよい。制御装置7は、上述した高さ制御動作と同様の動作を行ってマークSMを構成する造形物の高さを制御することで、マークSMの表面の形状を制御してもよい。制御装置7は、所望の形状の3次元構造物STを形成するための通常の造形動作と同様の動作を行うことで、表面の形状が所望の形状となっているマークSMを形成してもよい。
【0166】
造形システム1は、制御装置7の下で、マークSMの表面の形状及びマークSMの高さのうち少なくとも一方を制御して、造形面CS上に形成されたマークSMの表面を結ぶ仮想的な連結面VSの形状(特に、構造層SLの積層方向であるZ軸を含む断面の形状)を制御してもよい。造形システム1は、制御装置7の制御下で、形状制御動作及び高さ制御動作のうちの少なくとも一方を行うことで、連結面VSの形状が所望の形状となる複数のマークSMを形成することができる。例えば、
図42(a)に示すように、制御装置7は、連結面VSが平面(特に、造形面CSに対して平行な平面)を含むマークSMを形成するように、形状制御動作を行ってもよい。例えば、
図42(b)に示すように、制御装置7は、連結面VSが曲面を含むマークSMを形成するように、形状制御動作及び高さ制御動作のうち少なくとも一方を行ってもよい。例えば、
図42(c)に示すように、制御装置7は、連結面VSが造形面CSに対して傾斜した平面を含むマークSMを形成するように、形状制御動作及び高さ制御動作のうち少なくとも一方を行ってもよい。
【0167】
上述したように、マークSMは、造形面CSから突き出た凸状の構造物である。この場合、マークSMは、マークSMの表面が対象物TGに押し付けられることでマークSMのパターンに対応する印影を対象物TGに対して転写するための印章として使用可能である。例えば、
図43(a)は、ワークWの表面に相当する造形面CS上に、アルファベットのNとCとが反転したパターンを有するマークSMが形成されている例を示している。このようなマークSMの表面に塗料を塗布した後、当該マークSMの表面を対象物TGの対象面TGSに押し付けると、
図43(b)に示すように、アルファベットのNとCとを含む印影が対象面TGSに転写される。
【0168】
このようにマークSMが対象物に押し付けられる場合には、制御装置7は、対象物TGの特性に基づいて連結面VSの形状を制御するように、形状制御動作を行ってもよい。具体的には、制御装置7は、対象物TGの表面のうちマークSMが押し付けられる対象面TGSの形状(具体的には、対象面TGSに交差する軸を含む断面の形状)に基づいて、連結面VSの形状を制御するように、形状制御動作を行ってもよい。この場合、制御装置7は、連結面VSの形状と対象面TGSの形状とが相補の関係になるように、連結面VSの形状を制御してもよい。例えば、
図44(a)に示すように、制御装置7は、対象面TGSが平面となる場合において、連結面VSが対象面TGSと相補の関係を有する平面となるマークSMを形成するように、形状制御動作を行ってもよい。例えば、
図44(b)に示すように、制御装置7は、対象面TGSが凹状の曲面となる場合において、連結面VSが対象面TGSと相補の関係を有する凸状の曲面となるマークSMを形成するように、形状制御動作を行ってもよい。例えば、
図44(c)に示すように、制御装置7は、対象面TGSが凸状の平面となる場合において、連結面VSが対象面TGSと相補の関係を有する凹状の平面となるマークSMを形成するように、形状制御動作を行ってもよい。このように形状制御動作が行われると、形状制御動作が行われない場合と比較して、マークSMの表面を対象物TGの対象面TGSに対して適切に押し付けることができる。具体的には、マークSMの表面を対象面TGSに押し付けた際に、マークSMの表面と対象面TGSとの間に隙間ができにくくなる。その結果、対象面TGSがどのよう形状であっても、マークMSのパターンに応じた印影が対象面TGSに適切に転写可能となる。
【0169】
対象物TGの特性に基づいて連結面VSの形状を制御する場合には、制御装置7は、対象物TGの特性に関する特性情報を取得し、当該取得した特性情報に基づいて連結面VSの形状を制御してもよい。制御装置7は、対象物TGの特性を計測する計測装置の計測結果を、特性情報として取得してもよい。この場合、計測装置は、造形システム1が備えていてもよいし、造形システム1とは別個に用意されてもよい。或いは、制御装置7は、特性情報を保有する他の装置から、特性情報を取得してもよい。
【0170】
尚、上述の説明では、対象物TGの特性は対象面TGSの形状であったが、対象物TGの特性は対象物TGの硬度、弾性等であってもよい。
【0171】
(4-2-4)色調制御動作
続いて、色調制御動作について説明する。色調制御動作は、マークSMの色調(特に、マークSMの表面の色調)を制御するための特性制御動作である。造形システム1は、制御装置7の制御下で、色調制御動作を行うことで、所望の色調のマークSMを形成することができる。更には、造形システム1は、制御装置7の制御下で、色調制御動作を行うことで、夫々同じ記号を示しながらも色調が異なる複数のマークSMを形成することができる。更には、造形システム1は、制御装置7の制御下で、色調制御動作を行うことで、マークSMの形成中にマークSMの色調を変えながらマークSMを形成することができる。
【0172】
制御装置7は、チャンバ44の内部空間における特定ガスの特性を制御することで、マークSMの色調を制御してもよい。特に、制御装置7は、チャンバ44の内部空間に位置する溶融池MPの周囲の空間における特定ガスの特性を制御することで、マークSMの色調を制御してもよい。この場合、制御装置7は、特定ガスの特性が、マークSMの色調を所望の色調に設定することが可能な所望の特性となるように、特定ガスの特性を制御してもよい。特定ガスは、マークSMの色調に対して影響を及ぼす所定の気体を含む。このような特定ガスの一例として、酸素ガスがあげられる。
【0173】
特定ガスの特性は、特定ガスの濃度(つまり、チャンバ44の内部空間(特に、当該内部空間のうちの溶融池MPの周囲の空間)における特定ガスの濃度)を含んでいてもよい。特定ガスがパージガスに含まれている(つまり、ガス供給装置6が、特定ガスを含むパージガスを供給する)場合には、制御装置7は、パージガス中での特定ガスの濃度(つまり、パージガスにおける特定ガスの含有量)を制御することで、チャンバ44の内部空間における特定ガスの濃度を制御してもよい。特定ガスがパージガスに含まれていない(つまり、ガス供給装置6がパージガスとは別の供給経路を介して特定ガスを供給する又はガス供給装置6とは異なる装置が特定ガスを供給する)場合には、制御装置7は、チャンバ44の内部空間に供給されるパージガス及び特定ガスの少なくとも一方の流量を制御することで、チャンバ44の内部空間における特定ガスの濃度を制御してもよい。尚、チャンバ44の内部空間全体における特定ガスの濃度の制御に変えて、溶融池MPの周囲の空間のみにおける特定ガスの濃度の制御を行ってもよい。
【0174】
制御装置7は、
図45(a)に示すように、第1のマークSM21を形成している期間中の特定ガスの特性と、第1のマークSM21とは異なる第2のマークSM22を形成している期間中の特定ガスの特性とが異なるように、特定ガスの特性を制御してもよい。この場合、
図45(b)に示すように、第1マークSM21の色調は、第2マークSM22の色調とは異なるものとなる。制御装置7は、
図45(c)に示すように、第1のマークSM21のうちの第1部分SM21-1を形成している期間中の特定ガスの特性と、第1のマークSM21のうちの第1部分SM21-1とは異なる第2部分SM21-2を形成している期間中の特定ガスの特性とが異なるように、特定ガスの特性を制御してもよい。この場合、
図45(d)に示すように、第1マークSM21の第1部分SM21-1の色調は、第1マークSM21の第2部分SM21-2の色調とは異なるものとなる。
【0175】
(4-2-5)特性制御動作の変形例
上述した説明では、制御装置7は、マーキング動作によって形成されたマークSMの特性を制御するために、特性制御動作を行っている。しかしながら、制御装置7は、マークSMに限らず、造形動作によって形成された造形物、構造層SL及び3次元構造物STの少なくとも一つの特性を制御するために、上述した特性制御動作を行ってもよい。つまり、制御装置7は、造形物、構造層SL及び3次元構造物STの少なくとも一つのサイズを制御するために、上述したサイズ制御動作を行ってもよい。制御装置7は、造形物、構造層SL及び3次元構造物STの少なくとも一つの高さを制御するために、上述した高さ制御動作を行ってもよい。制御装置7は、造形物、構造層SL及び3次元構造物STの少なくとも一つの形状を制御するために、上述した形状制御動作を行ってもよい。制御装置7は、造形物、構造層SL及び3次元構造物STの少なくとも一つの色調を制御するために、上述した色調制御動作を行ってもよい。
【0176】
(5)加工動作(研磨動作)
造形システム1は、3次元構造物ST及びマークSMの少なくとも一方の表面の少なくとも一部を加工するための加工動作を行ってもよい。尚、マーキング動作によって形成したマークSMは、造形動作によって形成した3次元構造物STの一具体例である。このため、加工動作に説明においては、3次元構造物STは、3次元構造物ST及びマークSMの少なくとも一方を意味するものとする。
【0177】
本実施形態では、造形システム1は、加工動作の一例として、3次元構造物STの表面(特に、3次元構造物STを構成する最上層の構造層SLの上面)の少なくとも一部を研磨するための研磨動作を行ってもよい。以下、研磨動作について説明する。尚、以下では、説明の便宜上、研磨動作によって研磨される面を、研磨対象面PSと称する。尚、造形システム1は、3次元構造物を1以上の構造層SLの側面(構造層SLが積層される方向と交差する方向を向いた面)の少なくとも一部を研磨するための研磨動作を行ってもよい。
【0178】
本実施形態では、「研磨対象面PSを研磨する研磨動作」は、「研磨動作を行う前と比較して、研磨対象面PSを滑らかにする、研磨対象面PSの平坦度を上げる(つまり、平坦にする)、及び/又は、研磨対象面PSの表面粗さを細かくする(つまり、小さくする)動作」を含む。尚、研磨対象面PSが研磨されると、研磨対象面PSが研磨される前と比較して、研磨対象面PSの色調が変わる可能性がある。従って、「研磨対象面PSを研磨する研磨動作」は、「研磨動作を行う前と比較して、研磨対象面PSの色調を変える動作」を含んでいてもよい。研磨対象面PSが研磨されると、研磨対象面PSが研磨される前と比較して、研磨対象面PSの反射率(例えば、任意の光に対する反射率)及び拡散率(例えば、任意の光に対する拡散率)の少なくとも一方が変わる可能性がある。従って、「研磨対象面PSを研磨する研磨動作」は、「研磨動作を行う前と比較して、研磨対象面PSの反射率及び拡散率の少なくとも一方を変える動作」を含んでいてもよい。
【0179】
このような研磨対象面PSは、研磨動作によって研磨することで滑らかに(或いは、平坦に又は表面粗さを細かく)することが可能な相対的に粗い面(つまり、凹凸が形成されている面)となっている可能性がある。例えば、上述したように、本実施形態では、粉状の又は粒状の造形材料Mを溶融した後に再固化させることで3次元構造物STが形成される。このため、3次元構造物STの表面の少なくとも一部には、溶融しなかった造形材料Mが付着している可能性がある。この場合、溶融しなかった造形材料Mが付着している面は、研磨動作によって滑らかにすることが可能な相対的に粗い面となり得る。更には、3次元構造物STの表面の少なくとも一部には、意図しなかった形状で再固化してしまった造形材料Mが付着している可能性がある。この場合、意図しなかった形状で再固化してしまった造形材料Mが付着している面は、研磨動作によって滑らかにすることが可能な相対的に粗い面となり得る。例えば、上述したように、本実施形態では、各構造層SLが形成される期間中において、造形ヘッド41は、X軸及びY軸の少なくとも一方に沿って(つまり、XY平面に沿って)移動する。この場合、造形面CSに対する造形ヘッド41の相対的な移動態様によっては、XY平面に沿った構造層SLの表面(ひいては、3次元構造層STの表面)の少なくとも一部に、造形ヘッド41の移動パターン(典型的には、移動のピッチ)に応じた規則的な又は不規則な凹凸が現れる可能性がある。この場合、規則的な又は不規則な凹凸が現れる面は、研磨動作によって滑らかにすることが可能な相対的に粗い面となり得る。
【0180】
このような研磨対象面PSを研磨するために、造形システム1は、制御装置7の制御下で、研磨対象面PSに光ELを照射する。つまり、本実施形態では、光ELで研磨対象面PSを研磨する。具体的には、制御装置7は、
図46(a)に示すように、研磨対象面PS上のある領域部分に照射領域EAを設定し、当該照射領域EAに対して照射光学系411から光ELを照射する。尚、
図46(a)は、研磨対象面PSが、研磨動作によって研磨するべき規則的な又は不規則な凹凸が現れる面である例を示している。このとき、制御装置7は、必要に応じて、造形ヘッド41を移動させて、研磨対象面PS上の所望の領域部分に照射領域EAを設定する。照射領域EAに光ELが照射されると、
図46(b)に示すように、研磨対象面PSのうち照射領域EAが設定された領域部分内の造形材料Mが、光ELによって再度溶融する。凹凸を形成するように固化していた造形材料Mが溶融すると、溶融した造形材料Mの自重及び表面張力の少なくとも一方により、溶融した造形材料Mの表面(つまり、界面)が平面に近づく又は平面になる。つまり、溶融した造形材料Mの表面(つまり、界面)の滑らかさが向上する。その後、造形ヘッド41の移動に伴って溶融した造形材料Mに光ELが照射されなくなると、溶融した造形材料Mは、冷却されて再度固化(つまり、凝固)する。その結果、
図46(c)に示すように、滑らかになった(或いは、平坦度が向上した、及び/又は、表面粗さが細かくなった)表面を有するように再固化した造形材料Mが、3次元構造物STの表面を構成することになる。このように、研磨動作によって研磨対象面PSが研磨される。
【0181】
制御装置7は、このような光の照射ELによる造形材料Mの溶融及び溶融した造形材料Mの再固化を含む一連の研磨処理を、造形ヘッド41を3次元構造物STに対して相対的に移動させながら繰り返し行う。つまり、制御装置7は、一連の研磨処理を、研磨対象面PSに対して照射領域EAを相対的に移動させながら繰り返し行う。具体的には、例えば、制御装置7は、Y軸方向に沿った照射領域EAの移動とX軸方向に沿った照射領域EAの移動と繰り返しながら、一連の研磨処理を繰り返し行ってもよい。つまり、制御装置7は、
図3(a)を参照して説明したラスタスキャンでの走査に対応する移動軌跡に沿って照射領域EAを移動させながら、一連の研磨処理を繰り返し行ってもよい。この場合、制御装置7は、X軸及びY軸のうち1回の移動分の移動量が多いいずれか一方の軸に沿って照射領域EAが移動している期間中に光ELを照射して研磨対象面PSを研磨する一方で、X軸及びY軸のうち1回の移動分の移動量が少ないいずれか他方の軸に沿って照射領域EAが移動している期間中に光ELを照射しない。但し、制御装置7は、
図3(b)を参照して説明したベクタースキャンでの走査に対応する移動軌跡に沿って照射領域EAを移動させながら、一連の研磨処理を繰り返し行ってもよい。
【0182】
造形動作(或いは、マーキング動作)及び研磨動作の双方において照射領域EAがラスタスキャンでの走査に対応する移動軌跡に沿って移動する場合には、制御装置7は、造形動作において光ELが照射されている期間中の照射領域EAの移動方向と、研磨動作において光ELが照射されている期間中の照射領域EAの移動方向とが交差する(つまり、異なるものとなる)ように、照射領域EAを移動させてもよい。具体的には、
図47(a)及び
図47(b)に示すように、造形動作において光ELが照射されている期間中の照射領域EAの移動方向がY軸方向である場合には、制御装置7は、研磨動作において光ELが照射されている期間中の照射領域EAの移動方向がX軸方向になるように、研磨動作中の照射領域EAの移動方向を設定してもよい。或いは、造形動作において光ELが照射されている期間中の照射領域EAの移動方向がX軸方向である場合には、研磨動作において光ELが照射されている期間中の照射領域EAの移動方向がY軸方向になるように、研磨動作中の照射領域EAの移動方向を設定してもよい。その結果、造形システム1は、造形動作時に造形ヘッド41の移動パターン(典型的には、移動のピッチ)に起因して生じた凹凸が存在する研磨対象面PSを、当該凹凸を滑らかにする(特に、研磨対象面PSから当該凹凸を除去する)ように適切に研磨することができる。尚、造形動作において光ELが照射されている期間中の照射領域EAの移動方向と、研磨動作において光ELが照射されている期間中の照射領域EAの移動方向とは直交していなくてもよい。
【0183】
或いは、造形動作(或いは、マーキング動作)及び研磨動作の双方において照射領域EAがラスタスキャンでの走査に対応する移動軌跡に沿って移動する場合において、制御装置7は、造形動作において光ELが照射されている期間中の照射領域EAの移動方向と、研磨動作において光ELが照射されている期間中の照射領域EAの移動方向とが揃う(つまり、同じになる)ように、照射領域EAを移動させてもよい。この場合であっても、研磨対象面PSを研磨することができることに変わりはない。但し、この場合には、制御装置7は、造形動作において光ELが照射されていない期間中の照射領域EAの1回分の移動量(つまり、移動のピッチ)と、研磨動作において光ELが照射されていない期間中の照射領域EAの1回分の移動量とが異なるものとなるように、照射領域EAを移動させてもよい。特に、制御装置7は、造形動作において光ELが照射されていない期間中の照射領域EAの移動量よりも、研磨動作において光ELが照射されていない期間中の照射領域EAの移動量が小さくなるように、照射領域EAを移動させてもよい。例えば、具体的には、
図48(a)及び
図48(b)に示すように、造形動作において光ELが照射されていない期間中の照射領域EAの移動量が第1移動量P1である場合には、制御装置7は、研磨動作において光ELが照射されていない期間中の照射領域EAの移動量が第1移動量P1よりも小さい第2移動量P2となるように、照射領域EAを移動させてもよい。その結果、造形システム1は、造形動作時に造形ヘッド41の移動パターンに起因して生じた凹凸が存在する研磨対象面PSを、当該凹凸を滑らかにするように適切に研磨することができる。尚、造形動作において光ELが照射されていない期間中の照射領域EAの移動のピッチに対して、研磨動作において光ELが照射されていない期間中の照射領域EAの移動のピッチは、大きくてもよく、また小さくてもよい。
【0184】
制御装置7は、造形動作において光ELが照射されている期間中の照射領域EAの大きさと、研磨動作において光ELが照射されている期間中の照射領域EAの大きさとが異なるものとなるように、照射領域EAのサイズを制御してもよい。例えば、制御装置7は、造形動作において光ELが照射されている期間中の照射領域EAが、研磨動作において光ELが照射されている期間中の照射領域EAよりも大きくなるように、照射領域EAのサイズを制御してもよい。例えば、制御装置7は、造形動作において光ELが照射されている期間中の照射領域EAが、研磨動作において光ELが照射されている期間中の照射領域EAよりも小さくなるように、照射領域EAのサイズを制御してもよい。この場合であっても、造形システム1は、造形動作時に造形ヘッド41の移動パターンに起因して生じた凹凸が存在する研磨対象面PSを、当該凹凸を滑らかにするように適切に研磨することができる。尚、照射領域EAのサイズを制御するための具体的方法は、上述したサイズ制御動作において照射領域EAのサイズを制御するための具体的方法と同じであってもよい。
【0185】
(6)変形例
(6-1)第1変形例
はじめに、造形システム1の第1変形例について説明する。上述した説明では、層形成期間中に照射領域EAが2回以上設定される領域WA1に形成される造形物S1の高さh1と、層形成期間中に照射領域EAが1回設定される領域WA2に形成される造形物S2の高さh2とのばらつきを抑制するために、制御装置7が第1のばらつき抑制動作を行っている。一方で、第1変形例における造形システム1aは、第1のばらつき抑制動作を行わなくても造形物S1の高さh1と造形物S2の高さh2とのばらつきを抑制することができる。
【0186】
具体的には、造形システム1aは、造形装置4に代えて造形装置4aを備えているという点で、造形システム1とは異なる。造形装置4aは、集光光学系である照射光学系411aを照射光学系411に代えて備えているという点で、造形装置4とは異なる。照射光学系411aは、造形物S1の高さh1と造形物S2の高さh2とのばらつきを抑制するように光学特性が予め設定(言い換えれば、設計又は調整)されているという点で、照射光学系411とは異なる。造形システム1aのその他の構成要件は、造形システム1と同じであってもよい。
【0187】
照射光学系411aの光学特性は、造形物S1の高さh1と造形物S2の高さh2とのばらつきを抑制するように予め設定されている。本実施形態では、照射光学系411aの光学特性として、焦点深度を用いる。従って、照射光学系411aの焦点深度は、造形物S1の高さh1と造形物S2の高さh2とのばらつきを抑制するように予め設定されている。焦点深度は、照射光学系411aの光学特性の他の一例である開口数(NA:Numerical Aperture)と相関を有する。従って、照射光学系411aの開口数が、造形物S1の高さh1と造形物S2の高さh2とのばらつきを抑制するように、予め設定されているともいえる。尚、本説明における焦点深度とは、光ELの単位面積当たりの強度又はエネルギ量が造形材料Mを溶融できる強度よりも大きくなる、光軸方向(光の進行方向)における範囲を指してもよい。
【0188】
照射光学系411aの焦点深度は、造形システム1aが形成する構造層SLの設計上の高さ(つまり、厚さ)h0に基づいて設定されている。具体的には、照射光学系411aの焦点深度は、
図49に示すように、焦点深度の大きさ(言い換えれば、Z軸に沿った幅)が構造層SLの設計上の高さh0の2倍未満になるという第1条件を満たすように、設定されている。つまり、照射光学系411aの焦点深度は、積層された2つ以上の構造層SLが焦点深度の範囲内に同時に位置することができない(つまり、積層された2つ以上の構造層SLの一部が焦点深度の範囲から外れる)という第1条件を満たすように、設定されている。
【0189】
このような条件が満たされている場合において、領域WA1に照射領域EAが2回設定される状況を想定する。この場合、領域WA1に1回目の照射領域EAが設定されると、
図50(a)に示すように、当該領域WA1に、その高さhaが高さh0に一致する造形物SOaが形成される。その後、領域WA1に2回目の照射領域EAが設定されると、当該領域WA1に既に形成された造形物SOa上に、新たな造形物SObが形成される可能性がある。しかしながら、焦点深度の大きさが高さh0の2倍未満であるため、
図50(b)に示すように、仮に新たな造形物SObが形成されたとしても、その高さhbは、高さh0よりも小さくなる。なぜなら、焦点深度の範囲から外れた領域では、光ELの強度不足によって造形材料Mが溶融しないからである。一方で、第1条件が満たされていない場合には、領域WA1に2回目の照射領域EAが設定されると、造形物SOa上に、高さhbが高さh0に一致する造形物SObが形成される可能性がある。このため、第1条件が満たされている場合には、第1条件が満たされていない場合と比較して、領域WA1に形成される造形物S1の高さh1(=造形物SOaの高さhaと造形物SObの高さhbとの総和)と領域WA2に形成される造形物S2の高さh2(=造形物SOaの高さha)とのばらつきが抑制される。つまり、造形システム1aは、上述したように造形材料Mの供給レート、光ELから伝達される熱に関する熱伝達レート及び照射領域EAの移動速度の少なくとも一つを制御しなくても、造形物S1の高さh1と造形物S2の高さh2とのばらつきを適切に抑制することができる。
【0190】
造形物は、造形面CS上に形成される。更に、造形材料Mが照射光学系411aの焦点深度の範囲内において溶融するがゆえに、造形物は、焦点深度の範囲内に形成される。従って、造形物は、
図51(a)及び
図51(b)に示すように、造形面CSと、照射光学系411aの物体面側(
図51(a)及び
図51(b)に示す例では、+Z側であり、上側)における焦点深度の範囲の境界UBとの間に形成される。そうすると、構造層SLの設計上の高さh0と同じ造形物を造形面CS上に形成するためには、
図51(a)及び
図51(b)に示すように、造形面CSと境界UBとの間の間隔が高さh0以上となるように、造形面CSに対して照射光学系413が位置合わせされていてもよい。
図51(a)は、造形面CSと境界UBとの間の間隔が高さh0と一致する例を示している。この場合には、造形面CS上に、高さがh0となる造形物が形成される。一方で、
図51(b)は、造形面CSと境界UBとの間の間隔が高さh0より大きくなる例を示している。この場合には、造形面CS上に、高さが少なくともh0となる造形物が形成される。尚、
図51(a)に示すように、造形面CSと境界UBとの間の間隔が高さh0と一致する状態は、光ELのフォーカス位置が造形面CSに設定される状態と等価である。同様に、
図51(b)に示すように、造形面CSと境界UBとの間の間隔が高さh0より大きくなる状態は、光ELのフォーカス位置が造形面CSよりも照射光学系411aの物体面側にシフトした位置に設定される状態と等価である。
【0191】
但し、照射光学系411aの焦点深度の大きさが、構造層SLの設計上の高さh0未満になってしまうと、造形面CSと境界UBとの間の間隔を高さh0以上にすることができない。その結果、造形面CS上に、高さがh0となる造形物を形成することができなくなってしまう。このため、照射光学系411aの焦点深度は、焦点深度の大きさが構造層SLの設計上の高さh0以上になるという第2条件も合わせて満たすように、設定されていてもよい。
【0192】
尚、第1変形例において、造形システム1aは第1のばらつき抑制動作も併せて行ってもよい。
【0193】
(6-2)第2変形例
続いて、
図52を参照しながら、造形システム1の第2変形例について説明する。第2変形例における造形システム1bは、造形装置4に代えて造形装置4bを備えているという点で、造形システム1とは異なる。造形装置4bは、駆動系45bを備えているという点で、造形装置4とは異なる。造形システム1aのその他の構成要件は、造形システム1と同じであってもよい。
【0194】
駆動系45bは、ステージ43を移動させる。駆動系45bは、X軸、Y軸及びZ軸の少なくともいずれかに沿ってステージ43を移動させる。駆動系45bは、X軸、Y軸及びZ軸の少なくともいずれかに加えて、θX方向、θY方向及びθZ方向の少なくとも一つに沿ってステージ43を移動させてもよい。駆動系45bは、例えば、モータ等を含む。ステージ43が移動すると、ステージ43が保持しているワークW(更には、ワークW上の構造層SL)が、造形ヘッド41に対して移動する。つまり、ワークW又は構造層SLの表面の少なくとも一部である造形面CSが、造形ヘッド41から光ELが照射される照射領域EA(つまり、造形ヘッド41から造形材料Mが供給される供給領域MA)に対して移動する。従って、第2変形例では、制御装置7は、駆動系42に加えて又は代えて駆動系45bを制御することで、造形面CSに対する照射領域EAの相対的な移動速度を制御可能である。
【0195】
(6-3)第3変形例
続いて、
図53(a)及び
図53(b)を参照しながら、造形システム1の第3変形例について説明する。第3変形例における造形システム1cは、造形装置4に代えて造形装置4cを備えているという点で、造形システム1とは異なる。造形装置4cは、照射光学系411に代えて照射光学系411cを備えているという点で、造形装置4とは異なる。照射光学系411cは、
図53(a)に示すように、光ELを偏向可能な光学系491cを備えているという点で、照射光学系411とは異なる。造形システム1aのその他の構成要件は、造形システム1と同じであってもよい。
【0196】
図53(b)に示すように、光学系491cは、フォーカスレンズ4911cと、ガルバノミラー4912cと、fθレンズ4913cとを備える。光ELは、フォーカスレンズ4911cと、ガルバノミラー4912cと、fθレンズ4913cとを介して、造形面CS(更には、必要に応じて研磨対象面PS)に照射される。
【0197】
フォーカスレンズ4911cは、1以上のレンズで構成され、その少なくとも一部のレンズの光軸方向に沿った位置を調整することで、光ELの集光位置(つまり、光学系491cの焦点位置)を調整するための光学素子である。ガルバノミラー4912cは、光ELが造形面CSを走査する(つまり、照射領域EAが造形面CS上を移動する)ように、光ELを偏向する。ガルバノミラー4912cは、X走査ミラー4912Xと、Y走査ミラー4912Yとを備える。X走査ミラー4912Xは、光ELをY走査ミラー4912Yに向けて反射する。X走査ミラー4912Xは、θY方向(つまり、Y軸周りの回転方向)に揺動又は回転可能である。X走査ミラー4912Xの揺動又は回転により、光ELは、造形面CSをX軸方向に沿って走査する。X走査ミラー4912Xの揺動又は回転により、照射領域EAは、造形面CS上をX軸方向に沿って移動する。Y走査ミラー4912Yは、光ELをfθレンズ4913cに向けて反射する。Y走査ミラー4912Yは、θX方向(つまり、X軸周りの回転方向)に揺動又は回転可能である。Y走査ミラー4912Yの揺動又は回転により、光ELは、造形面CSをY軸方向に沿って走査する。Y走査ミラー4912Yの揺動又は回転により、照射領域EAは、造形面CS上をY軸方向に沿って移動する。fθレンズ4913cは、ガルバノミラー4912cからの光ELを造形面CS上に集光するための光学素子である。
【0198】
従って、第3変形例では、制御装置7は、駆動系42に加えて又は代えて光学系491c(特に、ガルバノミラー4912c)を制御することで、造形面CSに対する照射領域EAの相対的な移動速度を制御可能である。
【0199】
尚、第3変形例において、造形材料Mを供給する材料ノズル412は、照射領域EAの造形面CS上での位置に応じて、照射領域EAが造形面CS上に形成する溶融池MPに造形材料Mを供給することができるように、X軸、Y軸及びZ軸の少なくとも一つに沿って移動可能であってもよい。
【0200】
(6-4)第4変形例
続いて、造形システム1の第4変形例について説明する。上述した説明では、造形システム1が備える造形ヘッド41は、造形動作に用いられる光EL及び研磨動作に用いられる光ELの双方を射出する。つまり、造形動作が行われている期間中の光ELの照射光学系411内での光路は、研磨動作が行われている期間中の光ELの照射光学系411内での光路と同じになる。一方で、第4変形例の造形システム1dは、造形動作に用いられる光ELを射出する造形ヘッド41とは別個に、研磨動作に用いられる光ELを射出する研磨ヘッド41dを備えている。
【0201】
具体的には、造形システム1dは、造形装置4に代えて造形装置4dを備えているという点で、造形システム1とは異なる。造形装置4dは、研磨ヘッド41d及び駆動系42dを備えているという点で、造形装置4とは異なる。造形システム1dのその他の構成要件は、造形システム1と同じであってもよい。このため、以下、
図54を参照しながら、第4変形例の造形装置4dについて更に説明する。尚、造形システム1が備える構成要件と同じ構成要件については、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0202】
図54に示すように、造形装置4dは、上述した造形ヘッド41、駆動系42、ステージ43に加えて、研磨ヘッド41d及び駆動系42dを備えている。研磨ヘッド41dは、照射光学系411dを備えている。
【0203】
照射光学系411dは、射出部413dから光ELdを射出するための光学系(例えば、集光光学系)である。具体的には、照射光学系411dは、光ELを発する光源5と、光ファイバやライトパイプ等の不図示の光伝送部材を介して光学的に接続されている。照射光学系411dは、光伝送部材を介して光源5から伝搬してくる光ELを、光ELdとして射出する。つまり、光源5が発した光ELは、光源5と造形装置4dとの間又は造形装置4d内に配置された光分岐器によって2つの光ELに分岐され、一方の光ELが造形ヘッド41に伝搬し、他方の光ELが研磨ヘッド41dに伝搬する。照射光学系411dは、照射光学系411dから下方(つまり、-Z側)に向けて光ELdを照射する。照射光学系411dの下方には、ステージ43が配置されている。ステージ43に3次元構造物STが搭載されている場合には、照射光学系411dは、3次元構造物STに向けて光ELdを照射する。具体的には、照射光学系411dは、光ELdが照射される領域として研磨対象面PS上に設定される円形の(或いは、その他任意の形状の)照射領域EAdに光ELdを照射する。照射領域EAdは、造形ヘッド41からの光ELが照射される照射領域EAとは異なる位置に設定されるが、同じ位置に設定されてもよい。照射領域EAdは、照射領域EAと重複することはないが、少なくとも部分的に重複していてもよい。更に、照射光学系411dの状態は、制御装置7の制御下で、照射領域EAdに光ELdを照射する状態と、照射領域EAdに光ELdを照射しない状態との間で切替可能である。
【0204】
駆動系42dは、研磨ヘッド41dを移動させる。具体的には、駆動系42dは、X軸、Y軸及びZ軸の夫々に沿って研磨ヘッド41dを移動させる。尚、駆動系42dの構造は、駆動系42の構造と同一であってもよい。従って、駆動系42dの構造についての詳細な説明は省略する。
【0205】
研磨ヘッド41dが造形ヘッド41とは別個に用意されるため、研磨ヘッド41dは、造形ヘッド41とは異なる方向から光ELdを照射する。つまり、光ELdは、光ELの光路とは異なる光路を伝搬して研磨対象面PSに照射される。このため、研磨ヘッド41dは、造形ヘッド41が光ELを照射している期間の少なくとも一部において、光ELdを照射することができる。つまり、造形システム1dは、造形動作と研磨動作とを並行して行うことができる。言い換えると、造形システム1dは、造形動作が行われる時間帯(又は時期)と研磨動作が行われる時間帯(又は時期)とをそれらの少なくとも一部が重なった状態とすること、或いは造形動作が行われるタイミングと研磨動作が行われるタイミングとの少なくとも一部を重ねることができる。具体的には、造形システム1dは、造形ヘッド41が光ELを造形面CS上の一の領域に照射することで3次元構造物STの一部を形成している期間の少なくとも一部において、造形面CS上の他の領域に既に形成済みの3次元構造物STの他の一部の表面の少なくとも一部である研磨対象面PSに光ELdを照射することで、当該研磨対象面PSを研磨することができる。その結果、3次元構造物STを形成し且つ研磨するためのスループットが向上する。つまり、第4変形例の造形システム1dは、上述した造形システム1が享受可能な効果と同様の効果を享受しつつも、研磨された3次元構造物STを形成するためのスループットを向上させることができる。
【0206】
但し、造形装置4dが造形ヘッド41とは別個に研磨ヘッド41dを備える場合であっても、造形システム1dは、造形動作によって3次元構造物STが形成された後に、研磨動作を行ってもよい。この場合であっても、第4変形例の造形システム1dは、上述した造形システム1が享受可能な効果と同様の効果を享受することができることに変わりはない。
【0207】
尚、
図54では、共通の光源5が射出した光ELが造形ヘッド41及び研磨ヘッド41dに伝搬されている。しかしながら、造形システム1dは、造形動作で用いられる光ELを射出する光源5とは別個に、研磨動作で用いられる光ELdを射出する光源5dを備えていてもよい。光源5dは、光源5dが射出する光ELと同じ特性(例えば、強度や、波長や、偏光等)の光ELdを射出してもよい。光源5dは、光源5が射出する光ELと異なる特性(例えば、強度や、波長や、偏光等)の光ELdを射出してもよい。光源5dは、光源5が射出する光ELとは異なる種類のエネルギビームを射出してもよい。
【0208】
(6-5)第5変形例
続いて、造形システム1の第5変形例について説明する。上述した説明では、造形システム1は、単一の造形ヘッド41を備えている。一方で、第5変形例の造形システム1eは、複数の造形ヘッド41を備えている。具体的には、造形システム1eは、造形装置4に代えて造形装置4eを備えているという点で、造形システム1とは異なる。造形装置4eは、複数の造形ヘッド41を備えているという点で、造形装置4とは異なる。造形システム1eのその他の構成要件は、造形システム1と同じであってもよい。このため、以下、
図55を参照しながら、第5変形例の造形装置4eについて更に説明する。尚、造形システム1が備える構成要件と同じ構成要件については、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0209】
図55に示すように、造形装置4eは、複数の造形ヘッド41を備えている。複数の造形ヘッド41は、X軸及びY軸のいずれか一方(
図55に示す例では、Y軸)に沿って直線状に並ぶように支持フレーム48eに組みつけられている。駆動系42は、X軸、Y軸及びZ軸の少なくともいずれかに沿って支持フレーム48eを移動させる。つまり、駆動系42は、X軸、Y軸及びZ軸の少なくともいずれかに沿って複数の造形ヘッド41をまとめて移動させる。
【0210】
このような第5変形例の造形システム1eによれば、複数の光ELを造形面CSに同時に照射して3次元構造物STを形成することができる。このため、その結果、3次元構造物STを形成するためのスループットが向上する。つまり、第5変形例の造形システム1eは、上述した造形システム1が享受可能な効果と同様の効果を享受しつつも、3次元構造物STを形成するためのスループットを向上させることができる。
【0211】
尚、複数の造形ヘッド41は、支持フレーム48eに組み付けられていなくてもよい。この場合、造形装置4eは、複数の造形ヘッド41を夫々移動させるための複数の駆動系42を備えていてもよい。
【0212】
(6-6)第6変形例
上述した説明では、造形物の造形面CSからの高さを造形物の位置に応じて異ならせるとき、造形面CSは平面である場合を例として説明している。しかしながら、造形面CS自体は、平面には限定されない、即ち、造形面CS自体は造形面CS上での位置に応じて異なる高さ(Z軸方向の位置)であってもよい。例えば、
図56(a)に示すように、造形面CSが曲面であってもよい。このとき、曲面状の造形面CSの上部に造形される構造層SL#1の上面がXY平面に沿うように、言い換えると、構造層SL#1の上面のZ軸方向の高さが構造層SL#1のX軸方向及びY軸方向の位置によらずに一定となるように、造形物のX軸方向の位置及びY軸方向の位置に応じた高さが異なっていてもよい。また、
図56(b)に示すように、造形面CSが凹凸状であってもよい、このときにも、凹凸状の造形面CSの上部に造形される構造層SL#1の上面がXY平面に沿うように、言い換えると、構造層SL#1の上面のZ軸方向の高さが構造層SL#1のX軸方向及びY軸方向の位置によらずに一定となるように、造形物のX軸方向の位置及びY軸方向の位置に応じた高さが異なっていてもよい。また、
図56(c)に示すように、造形面CSは、構造層SL#1の上面であってもよい。いずれの場合にも、造形面CSの面形状によらずに、造形物SL#1(更には、構造層SL#2)の上面を平らにすることができる。この場合において構造層SL#1(更には、構造層SL#2)の上面を所定の曲面としてもよい。
【0213】
(6-7)第7変形例
上述した説明では、造形物の造形面CSからの高さを造形物の位置に応じて異ならせている。しかしながら、造形物の造形面CSからの高さは造形物の位置に応じて異なっていなくてもよい(一定であってもよい)。例えば、
図57に示すように、既に造形された構造層SL#1の高さ(Z軸方向(積層方向)のサイズ)と異なる高さの構造層SL#2を、構造層SL#1の上に造形してもよい。この場合、最終的に造形される3次元構造物STの積層方向(Z軸方向)の高さの精度を高精度にすることができる。
【0214】
(6-8)第8変形例
造形材料Mを供給する供給する材料ノズル412は、ワークWの外側の位置に供給領域MAが位置している状態から、ワークW上、ひいては造形面CS上の造形開始位置SPに供給領域MAが位置している状態までの間の期間(以下、第1期間と称する)において、造形材料Mを供給し続けてもよい。材料ノズル412から造形材料Mの供給を開始した時点から供給される単位時間当たりの供給量が安定する時点までの間が長くかかるような場合には、造形開始位置SPでの単位時間当たりの供給量を安定させることができる。
【0215】
このとき、材料ノズル412から造形面CSに造形材料MAが衝突して、造形面CSを傷つける恐れがある。この場合には、
図58(a)に示すように、
図8において説明したガス噴出装置461を設けてもよい。そして、第1期間においてガス噴出装置461から、造形材料Mの供給経路を横切る方向からガスを噴出させ、材料ノズル412から供給領域MAへ向かうはずの造形材料MをワークW、ひいては造形面CSの外側へ向けてもよい。そして、
図58(b)に示すように、材料ノズル412による供給領域MAが造形開始位置SPに位置した後の期間(以下、第2期間と称する)では、ガス噴出装置461のガス噴出動作を停止して、材料ノズル412からの造形材料Mの供給領域MAへの供給が開始されるようにしてもよい。ここで、材料ノズル412による供給領域MAが造形開始位置SPに位置した時点から、照射光学系411による光ELの照射領域EAへの照射を開始してもよい。
【0216】
尚、第1期間における造形材料Mの単位時間当たりの供給量は、造形物を形成している第2期間における造形材料Mの単位時間当たりの供給量よりも小さくすることができる。また、上述の説明では、ガス噴出装置461を用いて、材料ノズル412から供給領域MAへ向かうはずの造形材料MをワークW、ひいては造形面CSの外側へ向けたが、
図9を用いて説明した遮蔽部材462を使用してもよく、
図10を用いて説明した供給ノズル412の供給方向(噴射方向)を変えてもよい。また、ガス噴出装置461及び遮蔽部材462とは異なる任意の供給量変更装置を造形装置4が備えている場合には、制御装置7は、造形材料Mの供給レートを制御するために、任意の供給量変更装置を制御してもよい。尚、任意の供給量変更装置は、
図59に示すように材料供給装置3内に設けられた供給量変更装置3aであってもよく、
図60に示すように材料供給装置3から材料ノズル412の供給アウトレット414に至る供給路に設けられた供給量調整装置481であってもよい。このような供給量変更装置3a及び481としては、例えば通過流量を変更可能なバルブを用いてもよい。尚、
図59及び
図60に夫々示した供給量変更装置3a及び481は、
図8及び
図9を用いて説明した、ガス噴出装置461及び遮蔽部材462とは異なる任意の供給量変更装置として用いることができる。
【0217】
(6-9)第9変形例
図30を用いて説明した例では、Y軸方向に沿った照射領域EAの1回分の移動(つまり、移動方向が変わるまでの移動であり、ラスタスキャンにおける1本の走査線に沿った移動)に着目すると、照射領域EAのY軸方向に沿った移動の際にマーク形成領域と照射領域EAとが重なるタイミングで光ELを照射し、その1回分の移動(更には、その1回分の移動中に行われる複数回の光ELの照射)で造形される造形物の高さは同じになっている。しかしながら、照射領域EAの所定方向(例えば、Y軸方向又はX軸方向等の造形面CS内の方向)の移動時に光ELを複数回照射して、所定方向に並んだ複数の造形物を造形する場合、それらの造形物の高さ(Z軸方向の造形面CSからの高さ)は互いに異なっていてもよい。例えば、
図61(a)において、ラスタスキャンの同じ走査線に沿って並ぶ領域WA9と領域WA10とに対して、造形材料Mの供給レート、熱伝達レート、及び照射領域EAの移動速度等のうち少なくとも1つを異なるものとしてもよい。この動作により、例えば
図61(b)に示すように、Z軸方向において造形面CSからの高さが互いに異なる造形物を造形することができる。
【0218】
また、上述の例では、照射領域EAの1回分の移動(つまり、ラスタスキャンにおける1本の走査線に沿った移動)で造形される複数の造形物の高さを互いに変えたが、複数の走査線に沿って照射領域EAを移動させるラスタスキャンにおける、互いに異なる走査線に沿った照射領域EAの移動(更には、移動中に行われる造形材料Mの供給)によって造形される複数の造形物の間で高さ(Z軸方向の造形面CSからの高さ)を変えてもよい。例えば、
図62(a)に示すように、互いに異なる走査線上に並ぶ領域WA9と領域WA11とに対して、造形材料Mの供給レート、熱伝達レート、及び照射領域EAの移動速度等のうち少なくとも1つを異なるものとしてもよい。この動作により、例えば
図62(b)に示すように、Z軸方向において造形面CSからの高さが互いに異なる造形物を造形することができる。
【0219】
尚、第9変形例では、造形面CSに対するマーキング動作を例に挙げたが、この第9変形例は、造形面CS自体が積層造形された造形物の面である場合であっても適用できる。
【0220】
(6-10)その他の変形例
上述した説明では、造形装置4は、造形材料Mに光ELを照射することで、造形材料Mを溶融させている。しかしながら、造形装置4は、任意のエネルギビームを造形材料Mに照射して溶融池MPを形成し、その溶融池MPで造形材料Mを溶融させてもよい。この場合、造形装置4は、照射光学系411に加えて又は代えて、任意のエネルギビームを照射可能なビーム照射装置を備えていてもよい。任意のエネルギビームは、限定されないが、電子ビーム、イオンビーム等の荷電粒子ビーム又は電磁波を含む。
【0221】
上述した説明では、造形システム1は、レーザ肉盛溶接法により3次元構造物STを形成可能である。しかしながら、造形システム1は、造形材料Mに光EL(或いは、任意のレーザビーム)を照射することで3次元構造物STを形成可能なその他の方式により造形材料Mから3次元構造物STを形成してもよい。その他の方式として、例えば、粉末焼結積層造形法(SLS:Selective Laser Sintering)等の粉末床溶融結合法(Powder Bed Fusion)、結合材噴射法(Binder Jetting)又は、レーザメタルフュージョン法(LMF:Laser Metal Fusion)があげられる。
【0222】
上述の各実施形態の構成要件の少なくとも一部は、上述の各実施形態の構成要件の少なくとも他の一部と適宜組み合わせることができる。上述の各実施形態の構成要件のうちの一部が用いられなくてもよい。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態で引用した全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【0223】
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う処理装置、処理方法、マーキング方法、造形システム、造形方法、コンピュータプログラム、記録媒体及び制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0224】
1 造形システム
3 材料供給装置
4 造形装置
41 造形ヘッド
411 照射光学系
412 材料ノズル
42 駆動系
43 ステージ
5 光源
W ワーク
M 造形材料
SL 構造層
CS 造形面
EA 照射領域
MA 供給領域
MP 溶融池