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特許7604895分散液、導電膜およびその製造方法、電極、並びに、太陽電池
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  • 特許-分散液、導電膜およびその製造方法、電極、並びに、太陽電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】分散液、導電膜およびその製造方法、電極、並びに、太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/20 20060101AFI20241217BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20241217BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20241217BHJP
   C08L 61/06 20060101ALI20241217BHJP
   C08L 61/34 20060101ALI20241217BHJP
   H01B 1/04 20060101ALI20241217BHJP
   H01B 1/24 20060101ALI20241217BHJP
   H01B 5/16 20060101ALI20241217BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H01G9/20 111D
H01G9/20 115A
C08K3/04
C08K7/06
C08L61/06
C08L61/34
H01B1/04
H01B1/24 A
H01B5/16
H01B13/00 501P
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020569534
(86)(22)【出願日】2020-01-21
(86)【国際出願番号】 JP2020001921
(87)【国際公開番号】W WO2020158507
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2019017429
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】吉原 明彦
(72)【発明者】
【氏名】太田 龍史
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/042917(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/108175(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/156293(WO,A1)
【文献】特開2017-160326(JP,A)
【文献】米国特許第03219607(US,A)
【文献】国際公開第2005/031204(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第101274831(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102924020(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 61/00- 61/34
C08K 3/00- 13/08
C08G 4/00- 16/06
H01B 1/00- 1/24
H01B 5/00- 5/16
H01B 13/00- 13/34
H01L 51/00- 51/56
H01M 4/00- 4/98
H01G 9/00- 9/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボン材料(A)、芳香族スルホン酸化合物とヒドロキシフェノール化合物とアルデヒド化合物との縮合物(B)、および溶媒(C)を含み、
前記芳香族スルホン酸化合物は、p-フェノールスルホン酸、o-フェノールスルホン酸、フェノールジスルホン酸、1-ナフトール-4-スルホン酸、2-ナフトール-6-スルホン酸、2-ナフトール-7-スルホン酸、1-ナフトール-6-スルホン酸、2-ナフトール-8-スルホン酸、4-アミノナフタレンスルホン酸およびスルファニル酸からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記ヒドロキシフェノール化合物は、ビスフェノールA、4,4-ビフェノール、3,3,5,5-テトラメチル-4,4-ビフェノール、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メタン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,1-ビス(2-ナフトール)、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)スルホン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタンおよび1,1,2,2、-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタンからなる群より選択される少なくとも1種である、太陽電池電極用分散液。
【請求項2】
前記縮合物(B)中における、芳香族スルホン酸化合物に由来する芳香族スルホン酸化合物単量体単位に対するヒドロキシフェノール化合物に由来するヒドロキシフェノール化合物単量体単位のモル比(ヒドロキシフェノール化合物単量体単位/芳香族スルホン酸化合物単量体単位)が1/9以上9/1以下である、請求項1に記載の太陽電池電極用分散液。
【請求項3】
前記縮合物(B)の重量平均分子量(標準ポリエチレングリコール換算)が500以上100000以下である、請求項1または2に記載の太陽電池電極用分散液。
【請求項4】
前記縮合物(B)がレゾール型である、請求項1~3のいずれかに記載の太陽電池電極用分散液。
【請求項5】
前記カーボン材料(A)が繊維状炭素ナノ構造体である、請求項1~のいずれかに記載の太陽電池電極用分散液。
【請求項6】
前記溶媒(C)が水を含み、前記分散液のpHが7未満である、請求項1~のいずれかに記載の太陽電池電極用分散液。
【請求項7】
前記カーボン材料(A)100質量部当たり、前記縮合物(B)を50質量部以上500質量部以下含む、請求項1~のいずれかに記載の太陽電池電極用分散液。
【請求項8】
請求項1~のいずれかに記載の太陽電池電極用分散液を用いて得られる太陽電池電極用導電膜。
【請求項9】
請求項に記載の太陽電池電極用導電膜を備える太陽電池用電極。
【請求項10】
請求項に記載の太陽電池用電極を備える太陽電池。
【請求項11】
請求項1~7のいずれかに記載の太陽電池電極用分散液を基材上に塗布し乾燥させて導電膜を形成する工程(1)と、
前記工程(1)で得られた導電膜を溶媒で洗浄し、前記導電膜から前記縮合物(B)の少なくとも一部を除去する工程(2)と、
を含む、太陽電池電極用導電膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散液、導電膜およびその製造方法、電極、並びに、太陽電池に関し、特に、分散液、該分散液を用いて得られる導電膜およびその製造方法、該導電膜を備える電極、並びに、該電極を備える太陽電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボン材料の1つであるカーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある。)は、導電性、熱伝導性、力学強度など種々の特性に優れていることから、従来から様々な工業的応用が検討されている。例えば、その優れた導電性に着目し、CNTで導電膜を形成する技術が従来から検討されている。
【0003】
CNTを含む導電膜は、例えば、CNT、溶媒、および分散剤を配合したカーボンナノチューブ分散液(以下、「CNT分散液」と称することがある。)を基材上に塗布し、乾燥することで、基材上に形成することができる。そして、かかる導電膜や、導電膜を基材上に備えた導電性フィルムの性能を向上させるべく、用いる分散剤、およびCNT分散液の改良が試みられている。
【0004】
例えば特許文献1では、CNTと分散剤としての芳香族ポリマーとからなる導電膜、および、該導電膜の上の樹脂層からなる層を備え、特定の光線透過率および表面抵抗率を有する透明導電性フィルムが、耐久性が高く、高導電性で光透過性に優れる旨が報告されている。
【0005】
また、例えば特許文献2では、CNTに対して特定の割合で、多糖類などの数平均分子量1万以上15万以下の分散剤を含み、pHを特定の範囲内に調整した水系のCNT分散液が、高分散性を維持しつつ、高せん断力に対する安定性に優れる旨が報告されている。
【0006】
そして、例えば特許文献3では、それぞれ特定の構造式で表される、スチレンスルホン酸モノマー残基、窒素原子上に置換または非置換の芳香族炭化水素基を有するマレイミド残基、およびイタコン酸およびフマル酸など由来の他のビニルモノマー残基を繰り返し構造単位として含み、それぞれの残基の含有割合が30~95モル%、5~70モル%、0~20モル%であるポリスチレンスルホン酸共重合体が、水性媒体中にCNT等を分散させる能力が高い旨が報告されている。
【0007】
さらに、例えば特許文献4では、CNTを溶媒に分散させるに当たり、分散剤として、スルホン酸基含有単量体単位を含み、且つエチレン性不飽和脂肪族カルボン酸単量体単位を特定の割合で含む重合体からなる高分子分散剤を用いることで、CNT分散液中のCNTの凝集を抑制しつつ、該分散液を用いて形成される導電膜と基材の接着性を優れたものとすることができる旨が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2009-163959号公報
【文献】特開2013-199419号公報
【文献】国際公開第2013/042482号
【文献】国際公開第2015/115102号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、CNT分散液等の分散液には、基材に対する塗布性(濡れ性)が求められる。また、分散液から形成される導電膜には、導電性や基材との優れた密着性が求められる。さらに、例えば、導電膜を色素増感型太陽電池の対向電極に用いるような場合には、優れた触媒活性が求められる。また、導電膜を用いて作製される太陽電池には、高い変換効率が求められる。
【0010】
しかし、上記従来の技術では、分散液の基材に対する塗布性(濡れ性)、および/または、分散液から形成される導電膜と基材との密着性が未だ不十分であった。そのため、上記従来の技術には、分散液の基材に対する塗布性(濡れ性)を向上させつつ、分散液から形成される導電膜の基材との密着性を向上させるという点において改善の余地があった。
【0011】
そこで、本発明は、基材に対する塗布性(濡れ性)を向上させることができ、基材との密着性が高い導電膜を形成することができる分散液を提供することを目的とする。また、本発明は、前記導電膜、該導電膜を備える電極、および該電極を備える太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者らは、分散液が、カーボン材料(A)、芳香族スルホン酸化合物とヒドロキシフェノール化合物とアルデヒド化合物との縮合物(B)、および溶媒(C)を含むことにより、基材に対する塗布性(濡れ性)を向上させることができ、基材との密着性が高い導電膜を形成することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の分散液は、カーボン材料(A)、芳香族スルホン酸化合物とヒドロキシフェノール化合物とアルデヒド化合物との縮合物(B)、および溶媒(C)を含む、ことを特徴とする。このように、カーボン材料(A)、芳香族スルホン酸化合物とヒドロキシフェノール化合物とアルデヒド化合物との縮合物(B)、および溶媒(C)を含むことにより、基材に対する塗布性(濡れ性)を向上させることができ、基材との密着性が高い導電膜を形成することができる。
なお、本明細書において、「芳香族スルホン酸化合物」は、「芳香族化合物における水素原子の何れかが-SOX(Xは水素原子または陽イオン)で置換された化合物」を意味し、「ヒドロキシフェノール化合物」は、「ヒドロキシ基(水酸基)を1個以上有する化合物」であって「芳香族スルホン酸化合物」以外のものを意味する。
【0014】
ここで、本発明の分散液は、前記縮合物(B)中における、芳香族スルホン酸化合物に由来する芳香族スルホン酸化合物単量体単位に対するヒドロキシフェノール化合物に由来するヒドロキシフェノール化合物単量体単位のモル比(ヒドロキシフェノール化合物単量体単位/芳香族スルホン酸化合物単量体単位)が1/9以上9/1以下であることが好ましい。縮合物(B)中における、芳香族スルホン酸化合物単量体単位とヒドロキシフェノール化合物単量体単位とのモル比が所定範囲内であれば、縮合物(B)の分散性を向上させることができると共に、基材との密着性が高い導電膜を効率よく形成することができる。
【0015】
そして、本発明の分散液は、前記縮合物(B)の重量平均分子量(標準ポリエチレングリコール換算)が500以上100000以下であることが好ましい。縮合物(B)の重量平均分子量(標準ポリエチレングリコール換算)が500以上100000以下であれば、カーボン材料の分散性を向上させることができ、基材に対する塗布性(濡れ性)を向上させることができる。それにより、基材との密着性が高い導電膜を効率よく形成することができ、導電性、膜強度、および電極として用いた場合における触媒活性が向上した導電膜を得ることができる。また、この導電膜を用いて作製される太陽電池は、高い変換効率が得られる。
【0016】
さらに、本発明の分散液は、前記縮合物(B)がレゾール型であることが好ましい。
【0017】
そして、本発明の分散液は、前記縮合物(B)が、下記一般式(1)または下記一般式(2)で表されることが好ましい。
【化1】
〔一般式(1)および一般式(2)中、Xは水素原子または陽イオンであり、Rは水酸基、-CH-OHまたは下記一般式(3)で表される基であり、m、n、oおよびpはそれぞれ1以上の整数である。〕
【化2】
〔一般式(3)中、lは、0から4の整数であり、Qは二価の有機基であり、Rは水酸基、-CH-OH、または水素原子である。〕
【0018】
さらに、本発明の分散液は、前記一般式(3)におけるQがスルホニル基であることが好ましい。
【0019】
そして、本発明の分散液は、前記カーボン材料(A)が繊維状炭素ナノ構造体であることが好ましい。
【0020】
さらに、本発明の分散液は、前記溶媒(C)が水を含み、前記分散液のpHが7未満であることが好ましい。
【0021】
そして、本発明の分散液は、前記カーボン材料(A)100質量部当たり、前記縮合物(B)を50質量部以上500質量部以下含むことが好ましい。
【0022】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の導電膜は、上述のいずれかの分散液を用いて得られることを特徴とする。本発明の分散液を用いれば、基材との密着性に優れる導電膜を提供することができる。
【0023】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の電極は、上述の導電膜を備えることを特徴とする。本発明の導電膜を備える電極は、優れた導電性を有する。
【0024】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の太陽電池は、上述の電極を備えることを特徴とする。本発明の電極を備える太陽電池は、高い変換効率を有する。
【0025】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の導電膜の製造方法は、上述のいずれかの分散液を基材上に塗布し乾燥させて導電膜を形成する工程(1)と、前記工程(1)で得られた導電膜を溶媒で洗浄し、前記導電膜から前記縮合物(B)の少なくとも一部を除去する工程(2)と、を含むことを特徴とする。本発明の導電膜の製造方法は、基材との密着性に優れる導電膜を効率よく製造することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、基材に対する塗布性(濡れ性)を向上させることができ、基材との密着性が高い導電膜を形成することができる分散液を提供することができる。
また、本発明によれば、基材との密着性が高い導電膜およびその製造方法、該導電膜を備え、高い導電性を有する電極、並びに、該電極を備え、高い変換効率を有する太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】太陽電池モジュールの一例の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(分散液)
本発明のカーボン材料分散液は、カーボン材料(A)、縮合物(B)、および溶媒(C)を含み、必要に応じて、任意のその他の成分をさらに含む。
本発明の分散液は、酸性であることが好ましい。分散液が酸性であることで、基板上に形成された導電層上に分散液を塗布する場合に、基板上に形成された導電層に対する浸食により、基板上に形成された導電層と分散液による導電層との密着性を向上させることができる。
【0029】
<カーボン材料(A)>
カーボン材料(A)としては、特に制限されることなく、導電性を有する、繊維状炭素ナノ構造体、グラフェン、フラーレン、カーボンナノホーン、グラファイト、活性炭、カーボンファイバー、多孔質カーボン、膨張黒鉛、カーボン粒子(例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック)などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、得られる導電膜の強度や触媒性能に優れる点で、繊維状炭素ナノ構造体が好ましい。
【0030】
<<繊維状炭素ナノ構造体>>
繊維状炭素ナノ構造体としては、具体的には、例えば、カップスタック型カーボンナノチューブなどの円錐状の構造体が積み重なってできた構造体、カーボンナノバット、カーボンナノチューブ(CNT)等の円筒形状の炭素ナノ構造体や、炭素の六員環ネットワークが扁平筒状に形成されてなるグラフェンナノリボン等の非円筒形状の炭素ナノ構造体などの炭素ナノ構造体を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
そして、上述した中でも、繊維状炭素ナノ構造体としては、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を用いることがより好ましい。なお、繊維状炭素ナノ構造体はCNTのみからなってもよい。CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を使用すれば、少ない配合量であっても、得られる導電膜に対して、導電性、膜強度、太陽電池用電極に用いる場合における触媒活性等の特性を効率的に付与することができるからである。
【0032】
繊維状炭素ナノ構造体中のCNTとしては、特に制限されることなく、単層カーボンナノチューブおよび/または多層カーボンナノチューブを用いることができる。CNTは、単層から5層までのカーボンナノチューブであることが好ましく、単層カーボンナノチューブであることがより好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。カーボンナノチューブの層数が少ないほど、配合量が少量であっても、比表面積が大きくなり、得られる導電膜に対して、太陽電池用電極に用いる場合における触媒活性等の特性を良好に付与することができる。
【0033】
また、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径は、1nm以上であることが好ましく、60nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが特に好ましい。繊維状炭素ナノ構造体の平均直径が1nm以上であれば、繊維状炭素ナノ構造体の分散性を高め、導電膜に安定的に導電性等の特性を良好に付与することができる。また、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径が60nm以下であれば、少ない配合量であっても、得られる導電膜に対して、太陽電池用電極に用いる場合における触媒活性等の特性を効率的に付与することができる。
なお、本発明において、「繊維状炭素ナノ構造体の平均直径」は、透過型電子顕微鏡(TEM)画像上で、例えば、20本の繊維状炭素ナノ構造体について直径(外径)を測定し、個数平均値を算出することで求めることができる。
【0034】
また、繊維状炭素ナノ構造体としては、平均直径(Av)に対する、直径の標準偏差(σ:標本標準偏差)に3を乗じた値(3σ)の比(3σ/Av)が0.20超0.60未満の繊維状炭素ナノ構造体を用いることが好ましく、3σ/Avが0.25超の繊維状炭素ナノ構造体を用いることがより好ましく、3σ/Avが0.40超の繊維状炭素ナノ構造体を用いることが特に好ましい。3σ/Avが0.20超0.60未満の繊維状炭素ナノ構造体を使用すれば、製造される導電膜の性能を更に向上させることができる。
なお、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)および標準偏差(σ)は、繊維状炭素ナノ構造体の製造方法や製造条件を変更することにより調整してもよいし、異なる製法で得られた繊維状炭素ナノ構造体を複数種類組み合わせることにより調整してもよい。
【0035】
そして、繊維状炭素ナノ構造体としては、前述のようにして測定した直径を横軸に、その頻度を縦軸に取ってプロットし、ガウシアンで近似した際に、正規分布を取るものが通常使用される。
【0036】
また、繊維状炭素ナノ構造体は、平均長さが、10μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、80μm以上であることが特に好ましく、600μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、400μm以下であることが特に好ましい。平均長さが10μm以上であれば、少ない配合量で導電膜中において導電パスを形成でき、また、導電膜の強度が高い。そして、平均長さが600μm以下であれば、分散液を塗布する際、基材への塗布性を向上させることができる。従って、繊維状炭素ナノ構造体の平均長さを上記範囲内とすれば、導電膜の表面抵抗率を十分に低下させることや導電膜に対して高い触媒活性を付与することができる。
なお、本発明において、「繊維状炭素ナノ構造体」の平均長さは、走査型電子顕微鏡(SEM)画像上で、例えば、20本の繊維状炭素ナノ構造体について長さを測定し、個数平均値を算出することで求めることができる。
【0037】
更に、繊維状炭素ナノ構造体は、通常、アスペクト比が10超である。なお、繊維状炭素ナノ構造体のアスペクト比は、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡を用いて、無作為に選択した繊維状炭素ナノ構造体100本の直径および長さを測定し、直径と長さとの比(長さ/直径)の平均値を算出することにより求めることができる。
【0038】
また、繊維状炭素ナノ構造体は、BET比表面積が、200m/g以上であることが好ましく、400m/g以上であることがより好ましく、600m/g以上であることが特に好ましく、2000m/g以下であることが好ましく、1800m/g以下であることがより好ましく、1600m/g以下であることが特に好ましい。繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が200m/g以上であれば、繊維状炭素ナノ構造体の分散性を高め、少ない配合量で、得られる導電膜に対して、導電性、太陽電池用電極に用いる場合における触媒活性等の特性を良好に付与することができる。また、繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が2000m/g以下であれば、得られる導電膜に対して、導電性、太陽電池用電極に用いる場合における触媒活性等の特性を良好に付与することができ、また、分散液の塗布性を安定化させることができる。
なお、本発明において、「BET比表面積」とは、BET法を用いて測定した窒素吸着比表面積を指す。
【0039】
また、繊維状炭素ナノ構造体は、吸着等温線から得られるt-プロットが上に凸な形状を示すことが好ましい。なお、「t-プロット」は、窒素ガス吸着法により測定された繊維状炭素ナノ構造体の吸着等温線において、相対圧を窒素ガス吸着層の平均厚みt(nm)に変換することにより得ることができる。すなわち、窒素ガス吸着層の平均厚みtを相対圧P/P0に対してプロットした、既知の標準等温線から、相対圧に対応する窒素ガス吸着層の平均厚みtを求めて上記変換を行うことにより、繊維状炭素ナノ構造体のt-プロットが得られる(de Boerらによるt-プロット法)。
【0040】
ここで、表面に細孔を有する物質では、窒素ガス吸着層の成長は、次の(1)~(3)の過程に分類される。そして、下記の(1)~(3)の過程によって、t-プロットの傾きに変化が生じる。
(1)全表面への窒素分子の単分子吸着層形成過程
(2)多分子吸着層形成とそれに伴う細孔内での毛管凝縮充填過程
(3)細孔が窒素によって満たされた見かけ上の非多孔性表面への多分子吸着層形成過程
【0041】
そして、上に凸な形状を示すt-プロットは、窒素ガス吸着層の平均厚みtが小さい領域では、原点を通る直線上にプロットが位置するのに対し、tが大きくなると、プロットが当該直線から下にずれた位置となる。かかるt-プロットの形状を有する繊維状炭素ナノ構造体は、繊維状炭素ナノ構造体の全比表面積に対する内部比表面積の割合が大きく、繊維状炭素ナノ構造体を構成する炭素ナノ構造体に多数の開口が形成されていることを示している。
【0042】
なお、繊維状炭素ナノ構造体のt-プロットの屈曲点は、0.2≦t(nm)≦1.5を満たす範囲にあることが好ましく、0.45≦t(nm)≦1.5の範囲にあることがより好ましく、0.55≦t(nm)≦1.0の範囲にあることが特に好ましい。繊維状炭素ナノ構造体のt-プロットの屈曲点がかかる範囲内にあれば、繊維状炭素ナノ構造体の分散性を高め、少ない配合量で導電膜の導電性等の特性を高めることができる。具体的には、屈曲点の値が0.2未満であれば、繊維状炭素ナノ構造体が凝集し易く分散性が低下し、屈曲点の値が1.5超であれば繊維状炭素ナノ構造体同士が絡み合いやすくなり分散性が低下する虞がある。
なお、「屈曲点の位置」は、前述した(1)の過程の近似直線Aと、前述した(3)の過程の近似直線Bとの交点である。
【0043】
更に、繊維状炭素ナノ構造体は、t-プロットから得られる全比表面積S1に対する内部比表面積S2の比(S2/S1)が0.05以上0.30以下であるのが好ましい。繊維状炭素ナノ構造体のS2/S1の値がかかる範囲内であれば、繊維状炭素ナノ構造体の分散性を高め、少ない配合量で導電膜の導電性等の特性を高めることができる。
ここで、繊維状炭素ナノ構造体の全比表面積S1および内部比表面積S2は、そのt-プロットから求めることができる。具体的には、まず、(1)の過程の近似直線の傾きから全比表面積S1を、(3)の過程の近似直線の傾きから外部比表面積S3を、それぞれ求めることができる。そして、全比表面積S1から外部比表面積S3を差し引くことにより、内部比表面積S2を算出することができる。
【0044】
因みに、繊維状炭素ナノ構造体の吸着等温線の測定、t-プロットの作成、および、t-プロットの解析に基づく全比表面積S1と内部比表面積S2との算出は、例えば、市販の測定装置である「BELSORP(登録商標)-mini」(日本ベル(株)製)を用いて行うことができる。
【0045】
更に、繊維状炭素ナノ構造体として好適なCNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、ラマン分光法を用いて評価した際に、Radial Breathing Mode(RBM)のピークを有することが好ましい。なお、三層以上の多層カーボンナノチューブのみからなる繊維状炭素ナノ構造体のラマンスペクトルには、RBMが存在しない。
【0046】
また、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、ラマンスペクトルにおけるDバンドピーク強度に対するGバンドピーク強度の比(G/D比)が、0.5以上10.0以下であることが好ましく、1.0以上5.0以下であることがより好ましい。G/D比が0.5以上10.0以下であれば、得られる導電膜に対して、太陽電池用電極に用いる場合における触媒活性等の特性を良好に付与することができる。
【0047】
また、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、XPSによる元素分析で、炭素原子と酸素原子の合計に対し、酸素原子量が5原子%以下であることが好ましく、2原子%以下であることがより好ましく、1原子%以下であることが特に好ましい。酸素原子量が好ましい範囲内であれば、得られる導電膜に対して、太陽電池用電極に用いる場合における触媒活性等の特性を良好に付与することができる。
【0048】
CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、CHNの元素分析による、炭素原子の割合は、85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、98質量%以上であることが特に好ましく、水素原子の割合は、1質量%以下であることが好ましく、0.8質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが特に好ましい。
炭素原子(水素原子)の割合が好ましい範囲内であれば、得られる導電膜に対して、太陽電池用電極に用いる場合における触媒活性等の特性を良好に付与することができる。
【0049】
なお、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、特に制限されることなく、アーク放電法、レーザーアブレーション法、化学的気相成長法(CVD法)などの既知のCNTの合成方法を用いて製造することができる。具体的には、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、例えば、カーボンナノチューブ製造用の触媒層を表面に有する基材上に原料化合物およびキャリアガスを供給し、化学的気相成長法(CVD法)によりCNTを合成する際に、系内に微量の酸化剤(触媒賦活物質)を存在させることで、触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させるという方法(スーパーグロース法;国際公開第2006/011655号参照)に準じて、効率的に製造することができる。なお、以下では、スーパーグロース法により得られるカーボンナノチューブを「SGCNT」と称することがある。
そして、スーパーグロース法により製造された繊維状炭素ナノ構造体は、SGCNTのみから構成されていてもよいし、SGCNTに加え、例えば、非円筒形状の炭素ナノ構造体等の他の炭素ナノ構造体を含んでいてもよい。
【0050】
分散液中のカーボン材料(A)の含有量は、特に制限されないが、分散液全体中、0.001質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることが特に好ましく、30.0質量%以下であることが好ましく、10.0質量%以下であることがより好ましく、5.0質量%以下であることがさらに好ましく、1.0質量%以下であることが特に好ましい。
【0051】
<縮合物(B)>
縮合物(B)は、芳香族スルホン酸化合物とヒドロキシフェノール化合物とアルデヒド化合物との縮合物であり、カーボン材料(A)の分散剤として機能する。
縮合物(B)はCNT等のカーボン材料(A)の分散性に優れ、また、溶媒洗浄により除去容易であるため、触媒活性が向上し、密着性が高く、また膜自体の強度の高い導電膜が得られ、ひいては、良好な対向電極等の電極を得ることができる。
【0052】
<<芳香族スルホン酸化合物>>
「芳香族スルホン酸化合物」は、「芳香族化合物における水素原子の何れかが-SOX(Xは水素原子または陽イオン)で置換された化合物」を意味する。
芳香族スルホン酸化合物としては、例えば、p-フェノールスルホン酸、o-フェノールスルホン酸、フェノールジスルホン酸等のフェノールスルホン酸(PSA);1-ナフトール-4―スルホン酸、2-ナフトール-6-スルホン酸、2-ナフトール-7-スルホン酸、1-ナフトール-6-スルホン酸、2-ナフトール-8-スルホン酸等のナフトールスルホン酸;4-アミノナフタレンスルホン酸等のナフタレンスルホン酸;スルファニル酸(4-アミノベンゼンスルホン酸);などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、縮合反応性、および、生成した縮合物の溶媒への溶解性の点で、フェノールスルホン酸(PSA)、4-アミノベンゼンスルホン酸が好ましい。
【0053】
<<ヒドロキシフェノール化合物>>
「ヒドロキシフェノール化合物」は、「ヒドロキシ基(水酸基)を1個以上有する化合物」であって「芳香族スルホン酸化合物」以外のものを意味する。
ヒドロキシフェノール化合物は、例えば、ビスフェノールA、4,4-ビフェノール、3,3,5,5-テトラメチル-4,4-ビフェノール、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メタン等のヒドロキシフェノール;2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,1-ビス(2-ナフトール)等のナフタレン骨格を有するもの;4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)スルホン等のヒドロキシジフェニルスルホン(BS);1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2、-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン等の多官能フェノール類;などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、製造の容易さ、基材との接着性、生成した縮合物の溶媒への溶解性の点で、ジヒドロキシジフェニルスルホン等の水酸基を2個以上4個以下有し、六員環を1個以上3個以下有し、スルホニル基等の連結基を有する化合物、が好ましい。
【0054】
<<アルデヒド化合物>>
アルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、グリオキサール等の脂肪族アルデヒド;フルフラール、ベンゾアルデヒド、サリチルアルデヒド、パラホルムアルデヒド等の環状構造をもつアルデヒド;等が挙げられる。
アルデヒド化合物としては、水溶液を用いてもよい。
アルデヒド化合物は、芳香族スルホン酸化合物と、ヒドロキシフェノール化合物との総使用量に対して、0.5倍モル以上2倍モル以下程度使用するのが好ましく、1.0倍モル以上1.9倍モル以下程度使用するのがより好ましい。上記下限以上であると、反応終了時の未反応の芳香族スルホン酸化合物およびヒドロキシフェノール化合物が多く残存するのを抑制することができ、上記上限以下であると、縮合物液中の遊離アルデヒド化合物が多くなるのを抑制することができる。
【0055】
芳香族スルホン酸化合物とヒドロキシフェノール化合物とアルデヒド化合物との縮合反応は、公知の方法により行われる。
例えば、芳香族スルホン酸化合物とヒドロキシフェノール化合物とアルデヒド化合物とを、酸触媒またはアルカリ触媒下で、縮合反応させてアルデヒド縮合物(縮合物(B))を製造する。
芳香族スルホン酸化合物とヒドロキシフェノール化合物とアルデヒド化合物とを縮合反応させるに際し、溶媒としては、水、アルコール等が使用される。
【0056】
酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、蓚酸、酢酸、トルエンスルホン酸、などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
アルカリ触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物;アンモニア、トリエチルアミン等のアミン類;などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、操作の簡便性の点で、水酸化ナトリウムが好ましい。
後述する縮合物(B)の構造として、ノボラック型を作製する場合は酸触媒、レゾール型を作製する場合は、アルカリ触媒を選択するとよい。
ところで、アルカリ触媒存在下で、芳香族スルホン酸化合物とヒドロキシフェノール化合物とアルデヒド化合物とを縮合反応させるに際しては、反応系に存在する強酸性成分を中和するのに必要なアルカリ量が使用される。ここで、反応系に存在する強酸性成分としては、遊離の硫酸並びにフェノール類に結合しているスルホン酸基が挙げられる。
【0057】
縮合物(B)を調製するに際し、反応温度、反応時間は特に制限はなく、所望の重量平均分子量(標準ポリエチレングリコール換算)の縮合物(B)の製造が管理上容易となる反応温度、反応時間を適宜選択すればよい。
【0058】
反応温度としては、特に制限されないが、60℃以上であることが好ましく、120℃以下であることが好ましい。
反応時間としては、特に制限されないが、3時間以上であることが好ましく、20時間以下であることが好ましい。
得られたホルムアルデヒド縮合物は、縮合反応後に単離してもよいし、反応生成物をそのまま使用してもよい。
【0059】
縮合物(B)の構造は、例えばランダムノボラック、ハイオルトノボラックなどノボラック型(熱可塑型)、ベンジルエーテルレゾール、アンモニアレゾール、アルカリレゾールなどレゾール型(熱硬化型)などがある。分散液を塗布乾燥した後の、CNT等のカーボン材料(A)と基材との密着性の観点から、縮合物(B)の構造は、レゾール型であることが好ましく、下記一般式(1)または下記一般式(2)で表されることがより好ましい。
【化3】
〔一般式(1)および一般式(2)中、Xは水素原子または陽イオンであり、Rは水酸基、-CH-OH、または下記一般式(3)で表される基であり、m、n、o、およびpは、それぞれ、1以上の整数であり、好ましくは、1≦m≦235の整数、1≦n≦206の整数、1≦o≦192の整数、1≦p≦206の整数である。〕
【化4】
〔一般式(3)中、lは0から4の整数であり、Qは、二価の有機基(例えば、-CH-、―C(CH-、-S-、-SO-(スルホニル基)、-NH-、-N=N-)、好ましくは、-S-、-SO-(スルホニル基)であり、より好ましくは-SO-(スルホニル基)であり、Rは水酸基、-CH-OH、または水素原子である。〕
【0060】
なお、一般式(1)におけるXとしての陽イオンは、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アンモニウムイオンなどが挙げられる。
【0061】
縮合物(B)中における、芳香族スルホン酸化合物に由来する芳香族スルホン酸化合物単量体単位に対するヒドロキシフェノール化合物に由来するヒドロキシフェノール化合物単量体単位のモル比(ヒドロキシフェノール化合物単量体単位/芳香族スルホン酸化合物単量体単位)は、1/9以上であることが好ましく、1/5以上であることがより好ましく、1/4以上であることがさらに好ましく、1/3以上であることが特に好ましく、9/1以下であることが好ましく、5/1以下であることがより好ましく、4/1以下であることがさらに好ましく、3/1以下であることが特に好ましい。
上記モル比が、上記下限以上であることにより、縮合物(B)の溶媒(C)への溶解性を向上させて、基材への密着性が高い導電膜を形成することができ、上記上限以下であることにより、カーボン材料(A)の分散性を向上させることができる。
【0062】
縮合物(B)の重量平均分子量(標準ポリエチレングリコール換算)は、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、2,000以上であることがさらに好ましく、5,000以上であることが特に好ましく、100,000以下であることが好ましく、50,000以下であることがより好ましく、30,000以下であることが特に好ましい。
縮合物(B)の重量平均分子量(標準ポリエチレングリコール換算)が、上記下限以上であることにより、得られる導電膜に対して、基材との密着性および膜強度を十分付与することができ、上記上限以下であることにより、カーボン材料の分散性、得られる導電膜のリンス性、得られる電極の電極性能が優れる。
【0063】
カーボン材料(A)100質量部当たりの縮合物(B)の含有量は、50質量部以上であることが好ましく、80質量部以上であることがより好ましく、130質量部以上であることが特に好ましく、500質量部以下であることが好ましく、350質量部以下であることがより好ましく、250質量部以下であることが特に好ましい。
上記含有量が、上記下限以上であることにより、得られる導電膜に対して、基材との密着性および膜強度を十分付与することができ、上記上限以下であることにより、カーボン材料の分散性、リンス性、得られる電極の電極性能が優れる。
【0064】
<溶媒(C)>
溶媒(C)は、水系でも有機溶剤系でもよいが、水系溶媒を用いることが好ましい(すなわち、溶媒(C)が水を含むことが好ましい)。ここで水系溶媒としては、その中でCNT等のカーボン材料(A)が分散しうるものであれば特に制限されず、水を単独で使用してもよく、水と混和する溶媒類の混合溶媒を用いてもよい。水と混和する溶媒としては、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル等)、エーテルアルコール(エトキシエタノール、メトキシエトキシエタノール等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル等)、ケトン類(アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジアセトンアルコール、フェノール等)、低級カルボン酸(酢酸等)、アミン類(トリエチルアミン、トリメタノールアミン等)、窒素含有極性溶媒(N,N-ジメチルホルムアミド、ニトロメタン、N-メチルピロリドン、アセトニトリル等)、硫黄化合物類(ジメチルスルホキシド等)などを挙げることができる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、水と混和する溶媒としては、分散液の安定性を向上させる観点からは、エーテル類、ケトン類、アルコール類が好ましい。
これらは、脱気などを適時行ってもよい。
【0065】
分散液の溶媒(C)が水を含む場合、分散液のpHは、特に制限されないが、0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましく、0.5以上であることが特に好ましく、7未満(すなわち酸性)であることが好ましく、6以下であることがより好ましく、5以下であることがさらに好ましく、4以下であることがさらにより好ましく、2.5以下であることが特に好ましい。分散液のpHを上記の範囲内とすることで、分散液の安定性を確保することができる。
なお、分散液のpHを下げるためには、酸性物質を添加すればよい。酸性物質としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、クエン酸、シュウ酸、酒石酸、ギ酸、リン酸、などが好ましく、リンス除去の容易さの観点から塩酸、硝酸がより好ましい。
【0066】
<その他の成分>
その他の成分としては、シリカ等の無機物、金属粒子、結着剤、導電助剤、界面活性化剤、消泡剤、老化防止剤、防腐剤等が挙げられる。これらは、公知のものを適宜使用すればよい。1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0067】
<分散液の製造方法>
分散液の製造方法としては、特に制限はないが、分散剤として機能する縮合物(B)を溶媒に溶解させて得られる縮合物(B)含有溶液を、カーボン材料(A)と溶媒(C)との混合物に加えてもよく、縮合物(B)と溶媒(C)との混合物にカーボン材料(A)を加えてもよい。なお、分散剤として機能する縮合物(B)を良溶媒(例えばアルカリ水溶液)に溶解させて得られる縮合物(B)含有アルカリ水溶液を、カーボン材料(A)と溶媒(C)(例えば酸性水溶液)との混合物に加えてもよい。
【0068】
分散液の混合処理や分散処理は、公知の方法を利用することができる。例えば、ナノマイザーやアルティマイザーなどの湿式ジェットミル、高圧ホモジナイザー、超音波分散機、ボールミル、サンドグラインダー、ダイノミル、スパイクミル、DCPミル、バスケットミル、ペイントコンディショナー、ホモミキサー等の高速攪拌装置などを用いる方法が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
予備分散として高圧ホモジナイザー、超音波分散機、ボールミル、サンドグラインダー、ダイノミル、スパイクミル、DCPミル、バスケットミル、ペイントコンディショナー、ホモミキサー等の高速攪拌装置などを用い、本分散としてナノマイザーやアルティマイザーなどの湿式ジェットミル、高圧ホモジナイザーなどを用いると、分散液の製造効率が向上する。
分散時の温度は、特に限定されないが、通常、溶媒の沸点以下であり、好ましくは60℃以下、より好ましくは40℃以下、好ましくは-10℃以上、より好ましくは0℃以上である。この範囲であれば、分散剤の溶解性・構造の制御ができ、カーボン材料(A)の分散性を向上させることができ、例えば、酸性溶液中で処理した場合などであってもカーボン材料(A)の変質などを抑えることができる。
【0069】
(導電膜)
本発明の導電膜は、上述した分散液を用いて形成される。そして、本発明の導電膜は、良好に分散したカーボン材料(A)を含有しているので、優れた導電性および機械的特性を有している。かかる導電膜は基材との密着性(接着性)および触媒活性に優れる。
本発明の導電膜は、例えば、後述する光電極基板や対向電極(触媒電極)基板の導電膜または対向電極(触媒電極)の触媒層として好適に用いられる。特に、対向電極(触媒電極)の触媒層として好適に用いられる。
【0070】
(導電膜の製造方法)
本発明の導電膜の製造方法は、本発明の分散液を基材上に塗布し乾燥させて導電膜を形成する工程(1)と、工程(1)で得られた導電膜を溶媒で洗浄し、導電膜から縮合物(B)の少なくとも一部を除去する工程(2)と、を含み、さらに、必要に応じて、導電膜中に含まれている縮合物(B)の一部を分解する工程(3)をさらに含む。
【0071】
<工程(1)>
工程(1)では、本発明の分散液を基材上に塗布し、塗布した分散液を乾燥させて、導電膜を形成する。
【0072】
<<基材>>
基材は、上述した分散液を塗布することができ、得られる導電膜を担持可能であれば形状、構成する材料、およびサイズ(厚みなど)は特に制限されず、目的とする用途によって適宜選択することができる。
なお、基材として、本発明の導電膜以外の公知の導電膜が形成された基材や、樹脂等のアンダーコート層を備える基材、酸素や水分に対するバリア性を有する有機/無機のバリア層を持つ基材を用いてもよい。
【0073】
そして、本発明の分散液を基材上に塗布する方法としては、公知の塗布方法を採用できる。
例えば、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、ロールナイフコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、グラビアオフセット法、インクジェット法、噴霧法等が挙げられる。これらの中でも、電極のパターンの形成がしやすい点で、スクリーン印刷法が好ましい。
また塗布は、1回だけでなく必要に応じて何度か行ってもよく、異なる2種類の塗布方法を組み合わせてもよい。
本発明の分散液を基材上に塗布する際の塗布厚み(ウェット厚)は、得られるフィルムの導電性が確保されれば、特に制限されないが、0.001μm以上であることが好ましく、0.005μm以上であることがより好ましく、0.01μm以上であることが特に好ましく、50μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることが特に好ましい。
また、本発明の分散液を基材上に塗布する際の、基材の単位面積当たりのCNTの塗布量としては、0.001mg/m以上であることが好ましく、0.005mg/m以上であることがより好ましく、0.01mg/m以上であることが特に好ましく、50g/m以下であることが好ましく、10g/m以下であることがより好ましく、3g/m以下であることが特に好ましい。
本発明の導電膜の形成においては、通常、用いるカーボン材の種類(形状)や厚みが、そのまま得られる導電膜に反映される。したがって、本発明の導電膜の厚みは、特に制限されないが、通常、100nmから1mmである。
例えば色素増感型太陽電池、有機薄膜太陽電池、ペロブスカイト型太陽電池等の有機系太陽電池の対向電極として用いる場合の、導電膜の厚みは、通常0.01μm~100μm、好ましくは0.1μm~20μm、より好ましくは0.5μm~10μmである。この範囲であると、電極としての導電性と触媒性能に優れ、モジュールとした場合、全体の直列抵抗等のバランスに優れる。
導電膜の厚みが上記範囲内であることで、より導電性に優れるものとなる。
また、本発明の導電膜は、導電性に優れる。本発明の導電膜のシート抵抗は、通常、0.01Ω/□~1000Ω/□、好ましくは0.1Ω/□~100Ω/□、より好ましくは0.5~20Ω/□である。
この導電膜の表面抵抗率は、低抵抗率計(例えば、株式会社三菱ケミカルアナリテック製、製品名「ロレスタ(登録商標)-GP MCP-T610」)を使用し、JIS K7194に準拠した方法で測定することができる。
【0074】
更に、塗布した分散液を乾燥する方法としては、公知の乾燥方法を採用できる。
例えば、風乾乾燥法、熱ロール乾燥法等の加熱乾燥法、減圧乾燥法、赤外線照射法、キセノンランプ、フラッシュランプなどを用いた光照射法、マイクロ波などを用いた電磁波加熱法などの方法により、基材上の分散液を乾燥し、基材上に導電膜を形成する。乾燥温度は、溶媒(C)の気化による除去が可能であり、かつ、基材の耐熱温度以下であれば特に制限されない。乾燥温度は、0℃以上であることが好ましく、15℃以上であることがより好ましく、室温以上であることがさらに好ましく、80℃以上であることが特に好ましく、250℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることが特に好ましい。
乾燥時間は、特に制限されないが、0.1分間以上であることが好ましく、150分間以下であることが好ましい。
乾燥雰囲気は、加湿雰囲気下、大気中、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中、真空などの減圧下など特に限定されない。
【0075】
そして、本発明の導電膜の製造方法においては、工程(1)の後、以下の工程(2)を行う。なお、より効率的に導電膜から縮合物(B)(分散剤)を除去する観点からは、工程(2)および工程(3)の双方を行うのが好ましい。
【0076】
<工程(2)>
工程(2)では、工程(1)で得られた導電膜を溶媒で洗浄し、縮合物(B)(分散剤)の少なくとも一部を導電膜から除去する。
前記洗浄は、例えば、工程(1)により得られた導電膜に対して行えばよい。洗浄では、導電膜と縮合物(B)を溶解可能な溶媒とを接触させ、導電膜中の縮合物(B)を溶媒中に溶出させることにより、導電膜中の縮合物(B)の一部を導電膜から除去する。
【0077】
なお、縮合物(B)を溶解可能な溶媒としては、特に制限されることなく、溶媒(C)と同じものを使用することができる。中でも、取り扱いの容易性などの観点からは、水、アルコール類、ケトン類、窒素含有極性溶媒などが好ましく、アルカリ性水溶液がより好ましい。
【0078】
そして、上述した縮合物(B)を溶解可能な溶媒を用いた導電膜の洗浄は、例えば、導電膜の溶媒中への浸漬、または、溶媒の導電膜への塗布により行なうことができる。なお、導電膜の洗浄は複数回に分けて行なってもよい。また、洗浄後の導電膜は、既知の方法を用いて乾燥させることができる。
なお、溶媒中への浸漬により縮合物(B)の除去を行なう場合には、浸漬時間は、30秒間以上とするのが好ましく、1分間以上とするのがより好ましく、3分間以上とするのが特に好ましく、また、1時間以下とするのが好ましく、30分間以下とするのがより好ましい。浸漬時間を30秒間以上とすれば、十分に縮合物(B)を除去することができるからである。また、浸漬時間を1時間以下とすれば、過度の洗浄により導電膜からカーボン材料が脱落したり、基材から導電膜が剥離したりするのを防止することができるからである。
【0079】
<工程(3)>
工程(3)では、少なくとも、工程(1)で得られた導電膜に対し、プラズマ処理、UV処理およびオゾン処理からなる群より選択される少なくとも1つの処理(以下、「分解処理」と称することがある。)を行って、少なくとも、導電膜中に含まれている縮合物(B)の一部を分解する。
なお、工程(2)および工程(3)の双方を行う場合、工程の順番は特に限定されないが、工程(2)での洗浄を経た導電膜に対し、工程(3)で分解処理を行うのが好ましい。即ち、工程(2)および工程(3)の双方を行う場合、工程(2)での洗浄の後に導電膜中に残存している縮合物(B)を工程(3)で分解することが好ましい。
【0080】
前記分解処理は、例えば、導電膜に対して行えばよい。導電膜の分解処理では、導電膜に対し、プラズマ処理、UV処理およびオゾン処理からなる群より選択される少なくとも1つの処理を行うことにより、少なくとも、導電膜中に含まれている縮合物(B)の一部を分解する。なお、分解処理の際に生じる分解物は、任意に、分解処理を行った後に洗浄などの手法を用いて除去してもよい。
なお、処理の容易性の観点からは、分解処理としては、UV処理を用いることが好ましい。
【0081】
ここで、上述した洗浄および/または分解処理を行った場合、導電膜中の縮合物(B)(分散剤)の量が減少し、導電膜のカーボンの含有割合が向上するが、カーボン材料(A)としてSGCNT等の長さが長いCNTを使用した場合、当該CNTは互いに絡まり合って網目構造を形成しているので、縮合物(B)(分散剤)が除去されても、層形状を良好に維持することができる。
【0082】
なお、洗浄および分解処理は、基材上に形成した導電膜に対して実施してもよいし、基材から剥離した導電膜に対して実施してもよい。
【0083】
本発明の導電膜の製造方法では、上述した洗浄および/または分解処理を行うことで、導電膜に含まれる縮合物(B)(分散剤)の含有割合が減り、一方、導電膜に含まれるカーボンの含有割合が増加する。また、導電膜の表面に存在する縮合物(B)(分散剤)が除去されて、より多くのカーボンが導電膜の表面に露出することになる。従って、導電膜の触媒活性が向上する。
【0084】
(電極)
本発明の電極は、本発明の導電膜を用いて得られるものである。本発明の電極は、例えば、色素増感型太陽電池(DSC)、有機薄膜太陽電池、およびペロブスカイト型太陽電池等の有機系太陽電池に好適に用いられる。
本発明の電極について、DSCを例にとり説明する。DSCは、通常、光電極、電解質層、対向電極がこの順に並んでなる構造を有する。
光電極は、光を受けることで、外部の回路に電子を放出し得る電極である。光電極は、通常、基材上に導電膜が形成されてなる光電極基板と、この光電極基板上に形成された多孔質半導体微粒子層と、この多孔質半導体微粒子層の表面に増感色素が吸着されて形成された増感色素層とを有する。
電解質層は、光電極と対向電極とを分離するとともに、電荷移動を効率よく行うための層である。
対向電極は、外部の回路から入ってきた電子を電解質層に効率よく渡すための電極である。対向電極は、通常、基材上に導電膜が形成されてなる対向電極基板と、この対向電極基板上に形成された触媒層とを有する。
【0085】
<光電極>
本発明において光電極は通常、基材上に本発明の導電膜が形成されてなる光電極基板と、この光電極基板上に形成された多孔質半導体微粒子層と、この多孔質半導体微粒子層の表面に増感色素が吸着されて形成された増感色素層とを有する。
【0086】
<基材>
基材は、その上に本発明の分散液が塗布でき、得られる導電膜を担持可能であれば形状、構成する材料、およびサイズ(厚みなど)は特に制限されず、目的とする用途によって適宜選択することができる。
基材を構成する材料のうち、無機材料としては、チタン、ステンレス、アルミ、鉄、金、銀などの金属、およびガラスなどが挙げられる。有機材料としては、炭素材料、プラスチック基板材料などが挙げられる。導電膜との密着性(接着性)、および導電性フィルムの延伸追従性や柔軟性を向上させる観点から、プラスチック基板材料が好ましい。さらにプラスチック基板材料としては、耐熱性が高く、耐薬品性およびガス遮断性に優れ、かつ低コストの材料が好ましい。また、プラスチック基板材料は、無着色で透明性を有するものであってもよい。そのような具体的なプラスチック基板材料としては、例えば、ポリエステル類(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)など)、スチレン類(シンジオタクチックポリスチレン(SPS)など)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルホン(PSF)、ポリエステルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、透明ポリイミド(PI)、シクロオレフィンコポリマー(商品名「アートン」(登録商標)など)および脂環式ポリオレフィン(商品名「ゼオノア」(登録商標)など)、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、セルロース、トリアセチルセルロース、アラミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリ塩化ビニル、脂環式アクリル樹脂、などが用いられる。中でも、化学的安定性とコストの観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、脂環式ポリオレフィンが特に好ましい。
基材にプラスチック基板材料を用いた場合、好ましい基材の厚みは、特に制限されず中程度の厚さから非常に薄い厚さまで種々の範囲をとることができる。かかる場合の基材の厚みは、1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることが特に好ましく、1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、250μm以下であることが特に好ましい。
また、基材としては、本発明の導電膜以外の公知の導電膜が形成された基材や、樹脂などのアンダーコート層を備える基材を用いてもよい。
前記公知の導電膜としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、チタンなどの金属;酸化スズ、酸化亜鉛などの導電性金属酸化物;インジウム-スズ酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)などの複合金属酸化物;カーボンナノチューブ、カーボンナノバット、グラフェン、フラーレン、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)などの炭素材料;およびこれら2種以上の組み合わせなどからなるものが挙げられる。これらの厚みは特に限定されないが、通常0.001μm以上、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上で、100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下である。
基材は、本発明の分散液を塗布する面または後述の多孔質半導体微粒子層を形成する面にグロー放電処理、コロナ放電処理やUVオゾン処理等の表面親水化処理が施されていてもよい。
また、基材の、本発明の分散液を塗布する面またはその反対側の面に、耐摩耗性、高表面硬度、耐溶剤性、耐汚染性、耐指紋性、反射防止性等を付与したハードコート処理、UVカット層、有機および/または無機の酸素・水分バリア層、易滑層、易接着層などが施されていてもよい。
本発明において光電極を構成する光電極基板は、特に限定されることなく、(1)基材/本発明の導電膜の順に積層されたものであっても、(2)基材/本発明の導電膜/公知の導電膜の順に積層されたものであっても、(3)基材/公知の導電膜/本発明の導電膜の順に積層されたものであっても良いが、性能が安定しており、製造容易であることから、前記(3)の態様が好ましい。中でも、導電性や耐久性に優れることから、基材(例えば、PEN)/公知の導電膜(例えば、ITO)/本発明の導電膜(例えば、CNT膜)の順に積層されてなるものがより好ましい。
【0087】
<<多孔質半導体微粒子層>>
以下、増感色素層を含む多孔質半導体微粒子層について例示説明する。
多孔質半導体微粒子層は、半導体微粒子を含有する多孔質状の層である。多孔質状の層であることで、増感色素の吸着量が増え、変換効率が高い色素増感型太陽電池が得られやすくなる。
【0088】
半導体微粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズなどの金属酸化物の粒子が挙げられる。半導体微粒子として酸化チタンが好ましい。半導体微粒子として酸化チタンを採用した層が、酸化チタン層である。
【0089】
半導体微粒子の粒子径(一次粒子の平均粒子径)は、1nm以上であることが好ましく、通常500nm以下、好ましくは150nm以下、より好ましくは80nm以下である。粒径は、1~100nmのものなどを一種単独または二種以上を組み合わせて用いてよい。また100nmより大きい粒子や、500nm以下の粒子をさらに組み合せてもよい。100nm以下の粒子径が小さいものを用いることで、多孔質半導体微粒子層の比表面積を増大させることができ、100nmより大きい粒子を使用すると、多孔質半導体微粒子層に散乱性を持たせ、太陽電池の入射光を効率的に利用できる。
【0090】
多孔質半導体微粒子層の厚みは、通常0.01μm以上であり、0.1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、30μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。この範囲だと、DSCにおいて入射光を効率的に利用できる。
【0091】
多孔質半導体微粒子層の形成方法は、特に制限されず、公知の方法を適宜選択して用いることができる。例えば、プレス法、水熱分解法、泳動電着法、エアロゾルディポジション法(AD法)、転写法、バインダーフリーコーティング法などの公知の方法により多孔質半導体微粒子層を形成することができる。
【0092】
多孔質半導体微粒子層を形成する際の加熱温度は、通常100℃以上600℃以下であり、基板にプラスチックなどを用いる場合は、200℃以下であることが好ましく、160℃以下であることがより好ましい。
また多孔質半導体微粒子層と基材の導電層との間に、バッファ層を形成してもよい。バッファ層の組成や製法は特に限定されないが、例えばチタン、スズ、ニオブなどの金属酸化物などを、スパッタ蒸着やCVD蒸着するか、対応する金属元素のアルコキシ化合物や塩化物を導電層に塗布することで形成される。バッファ層の厚みは、通常0.001nm~1000nm、好ましくは0.01nm~10nmである。この範囲であれば、電子の逆電反応や多孔質半導体微粒子層の導電層との密着性、モジュールの直列抵抗の低減などを向上させることができる。
【0093】
<<増感色素層>>
増感色素層は、光によって励起されて多孔質半導体微粒子層に電子を渡し得る化合物(増感色素)が、多孔質半導体微粒子層の表面に吸着されてなる層である。
【0094】
増感色素としては、特に制限はなく、公知の色素増感型太陽電池の増感色素を適宜選択して用いることができ、例えば、シアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、キサンテン色素、スクワリリウム色素、ポリメチン色素、クマリン色素、リボフラビン色素、ペリレン色素等の有機色素;鉄、銅、ルテニウム等の金属のフタロシアニン錯体やポルフィリン錯体等の金属錯体色素;などが挙げられる。例えばN3、N719、N749、D102、D131、D150、N205、HRS-1、MK-2、SK-1、CYCなどが代表的な増感色素として挙げられる。色素を溶解させる有機溶媒(色素溶媒)は、溶媒に存在している水分および気体を除去するために、予め脱気や蒸留精製、乾燥をしておくことが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;アセトニトリル等のニトリル類;ハロゲン化炭化水素;エーテル類;アミド類;エステル類;炭酸エステル類;ケトン類;炭化水素;芳香族;ニトロメタン;などの溶媒が好ましい。
またコール酸、デオキシコール酸などステロイド骨格を有するカルボン酸類などの共吸着剤を含有してもよい。これらの色素、溶媒、共吸着剤は一種単独または二種以上を併用して用いてもよい。
【0095】
増感色素層の形成方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択して用いることができ、例えば、増感色素の溶液中に多孔質半導体微粒子層を浸漬する方法や、増感色素の溶液を多孔質半導体微粒子層上に塗布する方法などの公知の方法により増感色素層を形成することができる。含侵や塗布したあと、上述の色素溶媒などで、多孔質半導体層を含む基板などを洗浄し、過剰な色素などを洗浄することが好ましい。増感色素層形成または洗浄後は、加熱、大気放置、減圧乾燥など公知の方法で乾燥すればよい。
【0096】
<対向電極>
本発明において対向電極は通常、基材上に本発明の導電膜が形成されてなる対向電極基板と、この対向電極基板上に形成された触媒層とを有する。
本発明において対向電極を構成する対向電極基板は、特に限定されることなく、(1)基材/本発明の導電膜の順に積層されたものであっても、(2)基材/本発明の導電膜/公知の導電膜の順に積層されたものであっても、(3)基材/公知の導電膜/本発明の導電膜の順に積層されたものであっても良いが、性能が安定しており、製造容易であることから、前記(3)の態様が好ましい。導電膜は材質により、触媒活性を示すものがあり、その場合、上記(1)~(3)の構成を有する対向電極基板はそのまま対向電極として使用可能である。例えば、本発明の導電膜がCNT膜である場合、当該導電膜は触媒活性を示し、触媒層を兼ねる。そのような対向電極としては、中でも、触媒活性や耐久性に優れることから、基材(例えば、PEN)/公知の導電膜(例えば、ITO)/本発明の導電膜(例えば、CNT膜)の順に積層されてなるものがより好ましい。
なお、基材や公知の導電膜は、前記光電極の説明において記載したものと同じものを使用可能であり、その好適態様も同じである。
【0097】
<<触媒層>>
触媒層は、有機系太陽電池において、対向電極から後述する電解質層に電子を渡すときの触媒として機能する。触媒層は、前記の通り、本発明の導電膜(CNT膜)により形成可能であるが、公知の触媒層を適宜選択して用いることもできる。例えば、触媒作用を有する、導電性高分子、カーボン材料、貴金属粒子、またはカーボン材料と貴金属粒子の両方を含むことが好ましい。
【0098】
[導電性高分子]
導電性高分子としては、例えば、ポリ(チオフェン-2,5-ジイル)、ポリ(3-ブチルチオフェン-2,5-ジイル)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル)、ポリ(2,3-ジヒドロチエノ-[3,4-b]-1,4-ジオキシン)(PEDOT)等のポリチオフェン;ポリアセチレンおよびその誘導体;ポリアニリンおよびその誘導体;ポリピロールおよびその誘導体;ポリ(p-キシレンテトラヒドロチオフェニウムクロライド)、ポリ[(2-メトキシ-5-(2’-エチルヘキシロキシ))-1,4-フェニレンビニレン]、ポリ[(2-メトキシ-5-(3’,7’-ジメチルオクチロキシ)-1,4-フェニレンビニレン)]、ポリ[2-2’,5’-ビス(2’’-エチルヘキシロキシ)フェニル]-1,4-フェニレンビニレン]等のポリフェニレンビニレン類;などを挙げることができる。
[貴金属粒子]
貴金属粒子としては、触媒作用のあるものであれば、特に制限はなく、公知の貴金属粒子を適宜選択して用いることができる。例えば、金属白金、金属パラジウムおよび金属ルテニウムなどの単独または合金、コアシェル構造のものが挙げられる。これらの粒子径は特に限定されないが、通常直径0.01nm~50nmである。
【0099】
触媒層の形成方法は、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択して用いることができる。例えば、導電性高分子、カーボン材料、貴金属粒子、またはカーボン材料と貴金属粒子の両方を適当な溶媒に溶解または分散させて得られる混合液を、導電膜上に塗布または噴霧し、該混合液の溶媒を乾燥させることにより行うことができる。カーボン材料や貴金属粒子を用いる場合、混合液にさらにバインダーを含有させてもよく、バインダーとしてはカーボン材料の分散性や基材との密着性の点から、水酸基、カルボキシル基、スルホニル基、リン酸基などの官能基、およびこれら官能基のナトリウム塩などをもつ高分子化合物を用いるのが好ましい。
【0100】
触媒層の厚みは、0.005μm以上であることが好ましく、100μm以下であることが好ましい。より好ましくは、0.01μm~50μm、さらに好ましくは0.1μm~10μm、特に好ましくは0.5μm~5μmである。この範囲であると、触媒層の膜強度、密着性、触媒性能、太陽電池のモジュールとしての直列抵抗などが低く、太陽電池の性能が優れる。
【0101】
<電解質層>
電解質層は、光電極と対向電極とを分離するとともに、電荷移動を効率よく行わせるための層である。電解質層としては、固体、液体、ゲル状などの半固体など特に制限されない。電解質層は、通常、支持電解質、酸化還元対(酸化還元反応において可逆的に酸化体および還元体の形で相互に変換しうる一対の化学種)、溶媒などを含有する。
【0102】
<<支持電解質>>
支持電解質としては、例えば、(i)ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属等の塩;(ii)ピリジニウム塩、イミダゾリウムイオン4級窒素原子をスピロ原子に持つ化合物、4級アンモニウムイオン等の陽イオンを含むイオン性液体;などが挙げられる。
【0103】
<<酸化還元対>>
酸化還元対としては、酸化された増感色素を還元し得るものであれば、公知のものを用いることができる。酸化還元対としては、例えば、ヨウ素化合物-ヨウ素、臭素化合物-臭素、亜鉛錯体、鉄錯体、コバルト錯体などが挙げられる。
【0104】
<<溶媒>>
溶媒は、電解質層の形成用溶媒として公知のものを用いることができる。溶媒としては、例えば、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、エチルメチルイミダゾリウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、炭酸プロピレン、グリコールエーテル、γ-ブチロラクトンなどの極性の高い溶媒が挙げられ、太陽電池モジュールの信頼性の点で、非プロトン性溶媒が好ましい。
【0105】
電解質層の形成方法は、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択して用いることができる。例えば、大気圧下または減圧下で電解質層の構成成分を含有する溶液(電解液)を光電極および/または対向電極上に塗布すること;光電極と対向電極を有するセルを作製し、その隙間に電解液を注入することで形成することができる。
【0106】
(太陽電池)
本発明の太陽電池は、上述した本発明の電極を備えるものである。本発明の太陽電池は、本発明の電極を備えるものであれば、特に限定されない。本発明の太陽電池としては、上述した色素増感型太陽電池、有機薄膜太陽電池、ペロブスカイト型太陽電池等の有機系太陽電池が挙げられる。ペロブスカイト型太陽電池の例としては、例えば、特開2014-049631号公報、特開2015-046583号公報、特開2016-009737号公報などに記載されている。かかる有機系太陽電池のほか、半導体基板の種類により、例えば、単結晶シリコン型太陽電池、多結晶シリコン型太陽電池、微結晶シリコン型太陽電池、多結合型シリコン系太陽電池等の結晶シリコン系太陽電池;アモルファスシリコン型太陽電池;GaAs系太陽電池、CIS系太陽電池、CdTe系太陽電池などの化合物系太陽電池;などに分類されるものが挙げられる。
また、本発明の太陽電池は、太陽を光源とするものに限定されず、例えば屋内照明を光源とするものであってもよい。
本発明の太陽電池は、本発明の電極を備えるものであるため、変換効率が高い。このような特性が特に活かされることから、本発明の太陽電池は、携帯型太陽電池や屋内用太陽電池として好ましく用いられる。
1つまたは複数の本発明の太陽電池セルにより太陽電池モジュールを構成してもよい。太陽電池セルの形状に特に制限はなく、Z型、W型、並列型、集電配列型、モノリシック型などがある。これらの太陽電池セルを1つまたは2つ以上組み合わせて直列や並列接続し、複数接続してもよい。接続方法は、公知の手段を用いればよく、半田、金属板、ケーブル、フラットケーブル、フレキシブル基材、ケーブルなどを適宜選択すればよい。
太陽電池セルまたはモジュールには、該モジュールから電流を取り出すために、取り出し電極を設置することができる。取り出し電極の位置、材料、作製方法など、特に制限はなく、公知の方法で実施すればよい。材料としては、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、銅、金、銀、半田などの金属や、カーボンなどのペースト、導電性テープなどを用いることができる。取り出し電極は、太陽電池モジュールの負極と正極のそれぞれに計2つ接続されるよう適宜作製することができる。
また、太陽電池のセルから発生した電子を効率よく収集する集電配線を電極に備えることができる。集電配線は、特に制限されず、公知の集電配線を適宜選択して用いることができる。集電配線は、例えば、スパッタ法、蒸着法、メッキ法などや、光硬化性および/または熱硬化性の銀やカーボンなどを含む導電性ペーストを用いるインクジェット法やスクリーン印刷法などの塗布法により作製することができる。この集電配線には、電解質から集電配線を保護する保護用のシールを用いることができる。保護用のシールとしては、低極性のアクリル樹脂、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエンおよびエポキシ樹脂など、熱および/または光硬化性樹脂やハイミランなどの熱可塑性樹脂を用いることができる。
さらに、太陽電池モジュールの電極間の離隔や、セル間の電気接続を行うために、それぞれ絶縁性のスペーサー粒子や、導電性の微粒子などを用いることができる。これらは、太陽電池モジュールの電解質封止および/または電極間を接着する熱および/または光硬化性樹脂やハイミランなど熱可塑性樹脂など封止樹脂の中に含有させて用いてもよい。
かかる太陽電池モジュールの例として、DSCモジュールの一例を図1に示す。DSCモジュール100は、隔壁8により区画された複数の(図示例では4つの)セルを直列接続してなる接続体を含むDSCモジュールであり、Z型の集積構造を有している。DSCモジュール100は、第1基材1および第1基材1上に互いに離隔させて設けられた複数の(図示例では4つの)第1電極である光電極2を備える第1基板3と、第2基材5および第2基材5上に互いに離隔させて設けられた複数の(図示例では4つの)第2電極である対向電極6を備える第2基板7とが、第1基板3および第2基板7の間に隔壁8を介在させた状態で、各セルを形成する光電極2と対向電極6とが機能層である電解質層4を介して互いに対向するように(即ち、セルを形成するように)、且つ、隣接するセル間で一方のセルの光電極2と他方のセルの対向電極6とが、導電性樹脂組成物からなるセル接続部9を介して電気的に接続されるように貼り合わされた構造を有している。そして、DSCモジュール100の各セルは、光電極2と、光電極2に対向する対向電極6と、光電極2と対向電極6との間に設けられた電解質層4とを備えている。また、DSCモジュール100は、光電極2を構成する光電極用導電層21と接続する第1取り出し電極12Aと、対向電極6を構成する対向電極用導電層61と接続する第2取り出し電極12Bとを備える。
【実施例
【0107】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。本実施例における測定乃至評価は、以下の方法によって行った。
【0108】
<(1)分散液(CNTおよび/またはKBペースト)の分散性>
まず、ポリエチレンナフタレート(PEN)製の基材上にインジウム-スズ複合酸化物(ITO)からなる導電層が形成されてなる透明導電性プラスチックフィルム(厚み:186μm、導電層側の表面抵抗:15Ω/□)を準備した。
次に、当該透明導電性プラスチックフィルムの導電層が形成されている側の面上に、各実施例または各比較例で得られたCNTおよび/またはKBペースト(分散液)を湿式ジェットミル(製造会社名:吉田機械株式会社、商品名:ナノヴェイタ)で分散させた上で、アプリケータ(製造会社名:松尾産業株式会社)を用いて、ギャップ30μmの条件で塗布して、炭素ナノ構造体(CNTおよび/またはKB)の塗膜を形成した。形成された塗膜を目視で状態を観察し、以下の基準に従って、CNTおよび/またはKBペーストの分散性を評価した。評価結果を表1に示す。
<<評価基準>>
A:凝集物がなく、塗布面にスジがない。
B:凝集物がある、および/または、塗布面にスジがある。
C:凝集物が多く、塗膜を形成できない。
【0109】
<(2)分散液(CNTおよび/またはKBペースト)のスクリーン印刷性>
まず、ポリエチレンナフタレート(PEN)製の基材上にインジウム-スズ複合酸化物(ITO)からなる導電層が形成されてなる透明導電性プラスチックフィルム(厚み:186μm、導電層側の表面抵抗:15Ω/□)を準備した。
次に、当該透明導電性プラスチックフィルムの導電層が形成されている側の面上に、各実施例または各比較例で得られたCNTおよび/またはKBペースト(分散液)を、100メッシュのスクリーンを用いたスクリーン印刷法により塗布して、イナートオーブン(ヤマト科学株式会社製)で、大気雰囲気、125℃、15分間乾燥させて、塗膜を形成した。形成された塗膜のうち任意の1cmの箇所を目視観察し、以下の基準に従って、CNTペーストのスクリーン印刷性を評価した。評価結果を表1に示す。なお、塗膜の目視観察においてピンホールが少ないほど、CNTおよび/またはKBペーストはスクリーン印刷性に優れることを示す。
<<評価基準>>
A:ピンホールの発生なし
B:直径1mm以下のピンホールの発生あり
C:直径1mmを超えるピンホールの発生あり
【0110】
<(3)導電膜の基材密着性>
まず、ポリエチレンナフタレート(PEN)製の基材上にインジウム-スズ複合酸化物(ITO)からなる導電層が形成されてなる透明導電性プラスチックフィルム(厚み:186μm、導電層側の表面抵抗:15Ω/□)を準備した。
次に、当該透明導電性プラスチックフィルムの導電層が形成されている側の面上に、各実施例または各比較例で得られたCNTおよび/またはKBペースト(分散液)を、100メッシュのスクリーンを用いたスクリーン印刷法により塗布して、イナートオーブン(ヤマト科学株式会社製)で、大気雰囲気、125℃、15分間乾燥させて、塗膜を形成した。その後、各実施例または各比較例のリンス液を用いてリンスを行った。リンス後の塗膜について、「表面のふくれ」および「塗布面のはがれ」を、形成された塗膜における任意の3箇所(各箇所1cm)を目視観察し、以下の基準に従って、導電膜の基材密着性を評価した。評価結果を表1に示す。
<<評価基準>>
A:「表面のふくれ」および「塗布面のはがれ」が3箇所において全く観察されない。
B:「表面のふくれ」および「塗布面のはがれ」が3箇所のうち2箇所において全く観察されず、「表面のふくれ」および「塗布面のはがれ」のいずれかが観察された1箇所において合計1個しか観察されない。
C:上記AおよびB以外の場合。
【0111】
<(4)太陽電池のエネルギー変換効率>
光源として、150Wキセノンランプ光源にAM1.5Gフィルタを装着した擬似太陽光照射装置(PEC-L11型、ペクセル・テクノロジーズ社製)を用いた。光量は、1sun〔AM1.5G、100mW/cm(JIS C8912のクラスA)〕に調整した。作製した太陽電池をソースメータ(2400型ソースメータ、Keithley社製)に接続し、以下の電流電圧特性の測定を行なった。
1sunの光照射下、バイアス電圧を0Vから0.8Vまで0.01V単位で変化させながら出力電流を測定した。出力電流の測定は、各電圧ステップにおいて、電圧を変化させた後、0.05秒後から0.15秒後までの値を積算することで行った。バイアス電圧を、逆方向に0.8Vから0Vまで変化させる測定も行い、順方向と逆方向の測定の平均値を光電流とした。
上記の電流電圧特性の測定結果より、エネルギー変換効率(%)を算出した。
以下の基準に従って、太陽電池のエネルギー変換効率を評価した。評価結果を表1に示す。
<<評価基準>>
A:変換効率が4.0%以上
B:変換効率が3.5%以上4.0%未満
C:変換効率が3.0%以上3.5%未満
D:変換効率が3.0%未満
【0112】
<(5)縮合物(B)(分散剤)の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)の測定>
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(日本ウォーターズ株式会社、alliance HPLCシステム)を用いて、以下の条件で、縮合物(B)(分散剤)の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を測定した。なお、重量平均分子量(Mw)は、標準ポリエチレングリコール換算で算出した値を用いた。
<測定条件>
カラム:「SHODEX GF1G-7B:1本」と、「SHODEX GF310HQ(充填剤粒子径:5μm、内径(I.D.):30cm):1本」とを直列に接続して使用した。
溶離液:LiCl水溶液(0.05mol/L)/アセトニトリル=40/60
流速:0.6mL/min
カラム温度:30℃
検出器:示差屈折率(RI)
注入量:50μL
【0113】
<(6)縮合物(B)(分散剤)の共重合比(モル比)の測定>
H-NMR(製造会社名:ブルッカージャパン株式会社、商品名:AVANCEIII(500MHz))にて、サンプル濃度1%で、各モノマーの特徴となるシグナル強度の比率から、共重合比を求めた。重溶媒はCDClを用いた。
【0114】
<単層カーボンナノチューブ(SGCNT)の準備>
国際公開第2006/011655号に従って、スーパーグロース法により得られる単層カーボンナノチューブ(SGCNT)を合成し以下のものが、得られた。
なお、長さ、直径、および直径分布は、任意に選んだ20本の平均値をTEMにより求め、比表面積は、窒素によりBET比表面積により求め、G/D比は、ラマンスペクトルより求めた。
長さ:500μm
直径:3.5nm:
直径分布(3σ/Av):0.57
比表面積:880m/g
G/D比:4.0
CH元素分析:C:99.9%、H0.1%
【0115】
<単層カーボンナノチューブ(HiPco)の準備>
単層カーボンナノチューブ(製造会社名:NanoIntegris社、商品名:HiPco(登録商標))を準備した。
【0116】
<カーボン粒子(KB)の準備>
カーボン粒子としてケッチェンブラック(製造会社名:ライオンスペシャリティケミカルズ株式会社、商品名:EC600JD、一次粒子径:34nm)を準備した。
【0117】
<合成例1:縮合物(B)(分散剤A)の準備>
反応容器に、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン(DSF)(A成分:ヒドロキシフェノール化合物)125.1g(0.50mol)、p-フェノールスルホン酸(FS)(B成分:芳香族スルホン酸化合物)87.0g(0.50mol)、および水210.4g(後述するC成分滴下後の固形分濃度が50質量%となりうる水量)を仕込み、48質量%の水酸化ナトリウム水溶液(C成分)68.3g(0.82mol)を滴下した。
次いで、80℃の温度条件下で、37質量%のホルムアルデヒド水溶液(D成分)81.2g(1.00mol)を滴下し、還流下(98℃~100℃)で4時間反応させた後、反応終了前に、水368.2g(仕込みモノマー(A成分+B成分)濃度が25質量%となりうる水量)を投入して、分散剤Aを含有する水溶液970gを得た。この分散剤Aの重量平均分子量をGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって測定したところ、790(標準ポリエチレングリコール換算)であり、H-NMRを測定したところ、A成分(ヒドロキシフェノール化合物):B成分(芳香族スルホン酸化合物)のモル比は1:1であった。
【0118】
<合成例2:縮合物(B)(分散剤B)の準備>
合成例1において、4時間反応させる代わりに、8時間反応させたこと以外は、合成例1と同様に操作を行なった。
この分散剤Bの重量平均分子量をGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって測定したところ、2400(標準ポリエチレングリコール換算)であり、H-NMRを測定したところ、A成分(ヒドロキシフェノール化合物):B成分(芳香族スルホン酸化合物)のモル比は1:1であった。
【0119】
<合成例3:縮合物(B)(分散剤C)の準備>
合成例1において、上記仕込み量(モル比)とする代わりに、下記仕込み量(モル比)としたこと以外は、合成例1と同様に操作を行なった。
この分散剤Cの重量平均分子量をGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって測定したところ、1130(標準ポリエチレングリコール換算)であり、H-NMRを測定したところ、A成分(ヒドロキシフェノール化合物):B成分(芳香族スルホン酸化合物)のモル比は1:3であった。
<<合成例3の仕込み量(モル比)>>
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン(A成分):p-フェノールスルホン酸(B成分)=1:3
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン(A成分):48質量%の水酸化ナトリウム水溶液(C成分)=1:0.75
(4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン(A成分)+p-フェノールスルホン酸(B成分)):(37質量%のホルムアルデヒド水溶液(D成分))=1:1.25
【0120】
<合成例4:縮合物(B)(分散剤D)の準備>
合成例1において、上記仕込み量(モル比)とする代わりに、下記仕込み量(モル比)としたこと以外は、合成例1と同様に操作を行なった。
この分散剤Dの重量平均分子量をGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって測定したところ、870(標準ポリエチレングリコール換算)であり、H-NMRを測定したところ、A成分(ヒドロキシフェノール化合物):B成分(芳香族スルホン酸化合物)のモル比は3:1であった。
<<合成例4の仕込み量(モル比)>>
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン(A成分):p-フェノールスルホン酸(B成分)=3:1
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン(A成分):48質量%の水酸化ナトリウム水溶液(C成分)=1:0.75
(4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン(A成分)+p-フェノールスルホン酸(B成分)):(37質量%のホルムアルデヒド水溶液(D成分))=1:1.25
【0121】
<合成例5:縮合物(B)(分散剤E)の準備>
合成例1において、4時間反応させる代わりに、16時間反応させたこと以外は、合成例1と同様に操作を行なった。
この分散剤Eの重量平均分子量をGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって測定したところ、3200(標準ポリエチレングリコール換算)であり、H-NMRを測定したところ、A成分(ヒドロキシフェノール化合物):B成分(芳香族スルホン酸化合物)のモル比は1:1であった。
【0122】
<分散剤F~Iの準備>
以下の分散剤F~Iを準備した。
分散剤F:フェノールスルホン酸樹脂(小西化学工業株式会社製)
分散剤G:β‐ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩(花王株式会社製、商品名:デモールRN)
分散剤H:フェノールスルホン酸ナトリウム(純正化学株式会社製)
分散剤I:ノリルフェノール(日華化学株式会社製)
【0123】
(実施例1)
<分散液の作製>
500mLのポリビンに、純水140gと塩酸を加えpH2.0にし、さらにエタノール(溶媒(C))を60g加え、200gの溶液を作製した。この溶液に、表1の質量比(ナノカーボン/分散剤)(カーボン材料(A)/縮合物(B))になるように作製した分散剤Aの30質量%アルカリ性溶液を加え、さらにSGCNTを更に加えてSGCNTが0.40質量%、pH2.0になるようなウエット状態の混合物を作製した。
この混合物を、ホモミキサーで6000rpm、30分間、水浴でポリビンを25℃に冷却しながら攪拌して粗分散液を得た。
得られた粗分散液を湿式ジェットミル(製造会社名:吉田機械株式会社、商品名:ナノヴェイタ)で、分散液を25℃に冷却しながら、100MPaで10Pass処理をし、分散液としてのCNTペーストを得た。
このCNTペースト(分散液)を用いて、各種評価を行った。
【0124】
<色素溶液の準備>
色素溶液として、増感色素溶液(濃度0.4mM)を準備した。
なお、増感色素としてルテニウム錯体(ソラロニクス社製:商品名N719)を用い、溶媒としてアセトニトリル:tert-ブタノール=1:1の溶媒を用いた。
【0125】
<光電極の作製>
ITO-PENフィルム(50mm×50mm 15Ω/□)上に、濃度5mMのチタンイソプロポキシドのイソプロピルアルコール溶液をバーコート法により塗布し、イナートオーブン(ヤマト科学株式会社製)で、150℃、15分間乾燥させた。熱硬化性のAgペースト(トーヨーケム株式会社製)を用いて、スクリーン印刷機(セリア製SFA-PC610CTN)を用いて印刷し、イナートオーブン(ヤマト科学株式会社製)で、130℃、30分間加熱し取り出し電極(厚み8μm)を形成し、さらに、水系の酸化チタンペースト(ペクセル・テクノロジーズ株式会社製、PECC-AW1-01)を使用し、スクリーン印刷機で、塗布し、イナートオーブン(ヤマト科学株式会社製)で150℃、15分間乾燥させ、多孔質半導体層を形成した(酸化チタン層の厚みは、8μmであった)。
この多孔質半導体層を形成した基材を、色素溶液(50cm各のバット)に入れ、40℃、2時間浸漬した。浸漬後、エタノール溶液で洗浄し、40℃/24時間、減圧下で乾燥をして、光電極を作製した。
【0126】
<対向電極の作製>
ITO-PENフィルム(50mm×50mm、15Ω/□)上に、上記作製したCNTペースト(分散液)を100メッシュのスクリーンを用いたスクリーン印刷法により塗布して、イナートオーブン(ヤマト科学株式会社製)で、大気雰囲気、125℃、15分間乾燥させて、塗膜を形成した。その後、アルカリ性のリンス液(NaOH溶液:pH10)を用いて、CNTペースト(分散液)を塗布した基材を洗浄し、60℃、減圧下、2時間の条件で乾燥して、本発明の導電膜が形成されたPEN基材(PEN+ITO+本発明の導電膜)の対向電極を作製した。
【0127】
<有機系太陽電池の作製>
真空貼り合せ装置にて、作製した光電極上に、シール剤(ポリブチレン系光硬化性樹脂と8質量%の絶縁性スペーサー樹脂(25μm))を貼り合せ後のシール剤幅0.9mm、高さ30μmになるようにディスペンサーで、1周囲むように塗布した後、電解液を酸化チタン層(多孔質半導体微粒子層)に塗布した。対向電極を真空貼り合せ装置に設置し、真空中で重ねあわせを行い、メタルハライドランプによりUV照射を積算光量3000mJ/cmで行って封止材を硬化させて、貼り合せを行った。真空中から大気圧に開放して、有機系太陽電池を取出した。
【0128】
(実施例2~9、比較例1~4)
実施例1において、表1の実施例1に示す条件で分散液(CNTペースト)の作製を行う代わりに、表1の実施例2~9および比較例1~4のいずれかに示す条件で分散液の作製および対向電極の作製を行ったこと以外、実施例1と同様に、分散液の作製、色素溶液の準備、光電極の作製、対向電極の作製、有機系太陽電池の作製、および、各種評価を行った。結果を表1に示す。
なお、表1における「中性のリンス液」としては、イオン交換水(pH7.0)を用いた。
具体的には、以下のように行った。
<実施例2>
実施例1において、アルカリ性のリンス液を用いる代わりに、中性のリンス液を用いたこと以外は、実施例1と同様に、分散液の作製、色素溶液の準備、光電極の作製、対向電極の作製、有機系太陽電池の作製、および、各種評価を行った。結果を表1に示す。
<実施例3>
実施例2において、単層カーボンナノチューブ(SGCNT)を用いる代わりに、単層カーボンナノチューブ(HiPco)を用いたこと以外は、実施例2と同様に、分散液の作製、色素溶液の準備、光電極の作製、対向電極の作製、有機系太陽電池の作製、および、各種評価を行った。結果を表1に示す。
<実施例4>
実施例2において、単層カーボンナノチューブ(SGCNT)0.40質量%を用いる代わりに、ケッチェンブラック(KB)4.00質量%を用いたこと以外は、実施例2と同様に、分散液の作製、色素溶液の準備、光電極の作製、対向電極の作製、有機系太陽電池の作製、および、各種評価を行った。結果を表1に示す。
<実施例5>
実施例1において、単層カーボンナノチューブ(SGCNT)を用いる代わりに、単層カーボンナノチューブ(SGCNT)とケッチェンブラック(KB)との混合物(配合比(質量%):80/20)を用いたこと以外は、実施例1と同様に、分散液の作製、色素溶液の準備、光電極の作製、対向電極の作製、有機系太陽電池の作製、および、各種評価を行った。結果を表1に示す。
<実施例6>
実施例2において、分散剤Aを用いる代わりに、分散剤Bを用いたこと以外は、実施例2と同様に、分散液の作製、色素溶液の準備、光電極の作製、対向電極の作製、有機系太陽電池の作製、および、各種評価を行った。結果を表1に示す。
<実施例7>
実施例2において、分散剤Aを用いる代わりに、分散剤Cを用いたこと以外は、実施例2と同様に、分散液の作製、色素溶液の準備、光電極の作製、対向電極の作製、有機系太陽電池の作製、および、各種評価を行った。結果を表1に示す。
<実施例8>
実施例2において、分散剤Aを用いる代わりに、分散剤Dを用いたこと以外は、実施例2と同様に、分散液の作製、色素溶液の準備、光電極の作製、対向電極の作製、有機系太陽電池の作製、および、各種評価を行った。結果を表1に示す。
<実施例9>
実施例2において、分散剤Aを用いる代わりに、分散剤Eを用いたこと以外は、実施例2と同様に、分散液の作製、色素溶液の準備、光電極の作製、対向電極の作製、有機系太陽電池の作製、および、各種評価を行った。結果を表1に示す。
<比較例1>
実施例2において、分散剤Aをカーボン材料の2.5質量倍用いる代わりに、分散剤Fをカーボン材料の20質量倍用いたこと以外は、実施例2と同様に、分散液の作製を行った。結果を表1に示す。なお、分散性が悪いため、スクリーン印刷で塗膜を得ることができず、その他の評価は未実施とした。
<比較例2>
実施例2において、分散剤Aをカーボン材料の2.5質量倍用いる代わりに、分散剤Gをカーボン材料の20質量倍用いたこと以外は、実施例2と同様に、分散液の作製、色素溶液の準備、光電極の作製、対向電極の作製、有機系太陽電池の作製、および、各種評価を行った。結果を表1に示す。
<比較例3>
実施例2において、分散剤Aをカーボン材料の2.5質量倍用いる代わりに、分散剤Hをカーボン材料の20質量倍用いたこと以外は、実施例2と同様に、分散液の作製、色素溶液の準備、光電極の作製、対向電極の作製、有機系太陽電池の作製、および、各種評価を行った。結果を表1に示す。
<比較例4>
実施例2において、分散剤Aをカーボン材料の2.5質量倍用いる代わりに、分散剤Iをカーボン材料の20質量倍用いたこと以外は、実施例2と同様に、分散液の作製、色素溶液の準備、光電極の作製、対向電極の作製、有機系太陽電池の作製、および、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0129】
【表1】
【0130】
表1より、実施例1~9の分散液を用いれば、基材に対する塗布性(濡れ性)を向上させる(スクリーン印刷性を向上させる)ことができ、基材との密着性が高い導電膜を形成することができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明によれば、基材に対する塗布性(濡れ性)を向上させることができ、基材との密着性が高い導電膜を形成することができる分散液を提供することができる。
また、本発明によれば、基材との密着性が高い導電膜およびその製造方法、該導電膜を備え、高い導電性を有する電極、並びに、該電極を備え、高い変換効率を有する太陽電池を提供することができる。
【符号の説明】
【0132】
1 第1基材
2 光電極
3 第1基板
4 電解質層
5 第2基材
6 対向電極
7 第2基板
8 隔壁
9 セル接続部(導電性樹脂組成物)
12A 第1取り出し電極
12B 第2取り出し電極
21 光電極用導電層
22 多孔質半導体微粒子層
61 対向電極用導電層
62 触媒層
100 DSCモジュール
図1