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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】情報取得システム及び情報取得方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20241217BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H01L21/30 564C
H01L21/68 N
H01L21/30 569C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021061510
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022157344
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧 準之輔
(72)【発明者】
【氏名】東 広大
(72)【発明者】
【氏名】小西 凌
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-022559(JP,A)
【文献】特開2004-053413(JP,A)
【文献】特開2008-109027(JP,A)
【文献】特開2014-078571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
H01L 21/304
B05C 11/10
G01B 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板保持部に保持された基板を処理する基板処理装置に関する情報を取得する情報取得システムにおいて、
前記基板保持部により前記基板の代わりに保持されるベース体と、
前記ベース体に対して固定される一端側と、可動な他端側とを各々備える干渉検知部と、
前記基板保持部に保持された前記ベース体の周辺における検知対象部材との干渉による前記干渉検知部の変形に応じて変動する信号を取得するための信号取得部と、
を備え
前記基板保持部は前記ベース体と共に回転可能であり、
当該基板保持部及びベース体の回転中の前記干渉検知部の変形に応じて、前記検知対象部材の高さの情報を取得する情報取得システム。
【請求項2】
基板保持部に保持された基板を処理する基板処理装置に関する情報を取得する情報取得システムにおいて、
前記基板保持部により前記基板の代わりに保持されるベース体と、
前記ベース体に対して固定される一端側と、可動な他端側とを各々備える干渉検知部と、
前記基板保持部に保持された前記ベース体の周辺における検知対象部材との干渉による前記干渉検知部の変形に応じて変動する信号を取得するための信号取得部と、
を備え
前記干渉検知部は梁状体であり、前記一端側は前記ベース体の中央部側に固定され、前記他端側は前記ベース体の縁部へ向けて伸びる情報取得システム。
【請求項3】
前記ベース体には切り欠きまたは孔である当該ベース体の厚さ方向の一方側と他方側とを接続する接続路が設けられ、
前記梁状体は前記ベース体の厚さ方向の一方側に設けられ、
前記梁状体の他端側には前記接続路に進入して前記ベース体の厚さ方向の他方側に突出して、当該他方側に位置する前記検知対象部材に向う突起が設けられ、
前記ベース体における前記接続路の外縁は、前記梁状体に接する請求項記載の情報取得システム。
【請求項4】
前記ベース体の厚さ方向の他方側は下方側であり、
前記ベース体には、当該ベース体の下方側を撮像して画像データを取得するための撮像部が設けられ、
前記画像データに基づいて前記ベース体と前記干渉検知部との距離についての情報を取得する情報取得部が設けられる請求項記載の情報取得システム。
【請求項5】
前記干渉検知部は前記ベース体の上側に設けられ、
前記干渉検知部の他端側と前記ベース体との間には隙間が介在する請求項1または2記載の情報取得システム。
【請求項6】
基板保持部に保持された基板を処理する基板処理装置に関する情報を取得する情報取得システムにおいて、
前記基板保持部により前記基板の代わりに保持されるベース体と、
前記ベース体に対して固定される一端側と、可動な他端側とを各々備える干渉検知部と、
前記基板保持部に保持された前記ベース体の周辺における検知対象部材との干渉による前記干渉検知部の変形に応じて変動する信号を取得するための信号取得部と、
を備え
前記干渉検知部は前記ベース体の上側に設けられ、
前記干渉検知部の他端側と前記ベース体との間には隙間が介在する情報取得システム。
【請求項7】
基板保持部に保持された基板を処理する基板処理装置に関する情報を取得する情報取得方法において、
前記基板保持部により前記基板の代わりにベース体を保持する工程と、
前記ベース体に対して固定される一端側と可動な他端側と、を各々備える干渉検知部について、前記基板保持部に保持される当該ベース体の周辺における検知対象部材と干渉させて変形させる工程と、
前記干渉検知部の変形に応じて変動する信号を取得する工程と、
前記ベース体と共に前記基板保持部を回転させる工程と、
当該基板保持部及びベース体の回転中の前記干渉検知部の変形に応じて、前記検知対象部材の高さの情報を取得する工程と、
を備える情報取得方法。
【請求項8】
基板保持部に保持された基板を処理する基板処理装置に関する情報を取得する情報取得方法において、
前記基板保持部により前記基板の代わりにベース体を保持する工程と、
前記ベース体に対して固定される一端側と可動な他端側と、を各々備える干渉検知部について、前記基板保持部に保持される当該ベース体の周辺における検知対象部材と干渉させて変形させる工程と、
前記干渉検知部の変形に応じて変動する信号を取得する工程と、
を備え
前記干渉検知部は梁状体であり、前記一端側は前記ベース体の中央部側に固定され、前記他端側は前記ベース体の縁部へ向けて伸びる情報取得方法。
【請求項9】
前記ベース体には切り欠きまたは孔である当該ベース体の厚さ方向の一方側と他方側とを接続する接続路が設けられ、前記梁状体は前記ベース体の厚さ方向の一方側に設けられ、
前記梁状体の他端側には前記接続路に進入して前記ベース体の厚さ方向の他方側に突出して、当該他方側に位置する前記検知対象部材に向う突起が設けられ、
前記ベース体における前記接続路の外縁は、前記梁状体に接し、
前記突起と前記検知対象部材とを干渉させ、前記梁状体を変形させる工程を含む請求項記載の情報取得方法。
【請求項10】
前記ベース体の厚さ方向の他方側は下方側であり、
前記ベース体に設けられる撮像部により、当該ベース体の下方側を撮像して画像データを取得する工程と、
前記画像データに基づいて前記ベース体と前記干渉検知部との距離についての情報を取得する工程と、
を備える請求項記載の情報取得方法。
【請求項11】
前記干渉検知部は前記ベース体の上側に設けられ、当該干渉検知部の他端側は当該基材から浮いて設けられ、
前記干渉検知部の他端側と前記ベース体との間には隙間が介在し、
前記干渉検知部と前記検知対象部材との干渉により、前記隙間が狭くなるように当該干渉検知部を変形させる工程と、
を備える請求項7または8記載の情報取得方法。
【請求項12】
基板保持部に保持された基板を処理する基板処理装置に関する情報を取得する情報取得方法において、
前記基板保持部により前記基板の代わりにベース体を保持する工程と、
前記ベース体に対して固定される一端側と可動な他端側と、を各々備える干渉検知部について、前記基板保持部に保持される当該ベース体の周辺における検知対象部材と干渉させて変形させる工程と、
前記干渉検知部の変形に応じて変動する信号を取得する工程と、
を備え
前記干渉検知部は前記ベース体の上側に設けられ、当該干渉検知部の他端側は当該基材から浮いて設けられ、
前記干渉検知部の他端側と前記ベース体との間には隙間が介在し、
前記干渉検知部と前記検知対象部材との干渉により、前記隙間が狭くなるように当該干渉検知部を変形させる工程を備える情報取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報取得システム及び情報取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、半導体ウエハ(以下、ウエハと記載する)がキャリアに格納された状態で基板処理装置に搬送されて処理を受ける。この処理としては、例えば塗布液の供給による塗布膜の形成や現像などの液処理が挙げられる。その液処理の際には、カップ内に収納されたウエハに対してノズルから処理液が供給される。特許文献1には、ウエハの下面に対向する環状突起を備えたカップを備える現像装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-13932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板処理装置にて処理される基板の近くに位置する部材が、不適切な位置に配置されることによる処理の不具合の発生を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の情報取得システムは、基板保持部に保持された基板を処理する基板処理装置に関する情報を取得する情報取得システムにおいて、
前記基板保持部により前記基板の代わりに保持されるベース体と、
前記ベース体に対して固定される一端側と、可動な他端側とを各々備える干渉検知部と、
前記基板保持部に保持された前記ベース体の周辺における検知対象部材との干渉による前記干渉検知部の変形に応じて変動する信号を取得するための信号取得部と、
を備え
前記基板保持部は前記ベース体と共に回転可能であり、
当該基板保持部及びベース体の回転中の前記干渉検知部の変形に応じて、前記検知対象部材の高さの情報を取得する。
本開示の他の情報取得システムは、基板保持部に保持された基板を処理する基板処理装置に関する情報を取得する情報取得システムにおいて、
前記基板保持部により前記基板の代わりに保持されるベース体と、
前記ベース体に対して固定される一端側と、可動な他端側とを各々備える干渉検知部と、
前記基板保持部に保持された前記ベース体の周辺における検知対象部材との干渉による前記干渉検知部の変形に応じて変動する信号を取得するための信号取得部と、
を備え、
前記干渉検知部は梁状体であり、前記一端側は前記ベース体の中央部側に固定され、前記他端側は前記ベース体の縁部へ向けて伸びる。
本開示のさらに他の情報取得システムは、基板保持部に保持された基板を処理する基板処理装置に関する情報を取得する情報取得システムにおいて、
前記基板保持部により前記基板の代わりに保持されるベース体と、
前記ベース体に対して固定される一端側と、可動な他端側とを各々備える干渉検知部と、
前記基板保持部に保持された前記ベース体の周辺における検知対象部材との干渉による前記干渉検知部の変形に応じて変動する信号を取得するための信号取得部と、
を備え、
前記干渉検知部は前記ベース体の上側に設けられ、
前記干渉検知部の他端側と前記ベース体との間には隙間が介在する。
【発明の効果】
【0006】
本開示は、基板処理装置にて処理される基板の近くに位置する部材が、不適切な位置に配置されることによる処理の不具合の発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の実施形態に係る情報取得システムをなす基板処理装置の平面図である。
図2】前記基板処理装置に含まれるレジスト膜形成モジュールの縦断正面図である。
図3】前記レジスト膜形成モジュールの平面図である。
図4】前記情報取得システムを構成する検査用ウエハ及び演算装置を示す説明図である。
図5】前記検査用ウエハの縦断側面図である。
図6】前記検査用ウエハの平面図である。
図7】前記検査用ウエハの斜視図である。
図8】前記検査用ウエハに設けられる第1の梁状体の動作を示す説明図である。
図9】前記検査用ウエハに設けられる第2の梁状体の動作を示す説明図である。
図10】前記検査用ウエハにより取得される検出信号の例を示す説明図である。
図11】カメラにより取得される環状突起の画像を示す説明図である。
図12】カメラにより取得されるノズルの画像を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施形態)
本開示の一実施形態に係る情報取得システム1について図1に示す。情報取得システム1は、基板処理装置2、検査用ウエハ6及び演算装置9により構成されている。先ず、情報取得システム1を構成する各部の概要を説明する。上記の基板処理装置2は、搬送機構により円形の基板であるウエハWを処理モジュール間で搬送して処理を行う。この処理にはレジスト膜形成用の処理モジュールにおいて、カップ4内に格納されたウエハWにレジストを供給して当該レジスト膜を形成することが含まれる。
【0009】
検査用ウエハ6は上記の搬送機構によってウエハWの代わりに、上記の処理モジュール(レジスト膜形成モジュール3)に搬送される。この検査用ウエハ6には、干渉検知部が設けられている。この干渉検知部がカップ4の構成部材である環状突起46、及び/またはノズル51Bに干渉するか否かによって、当該検査用ウエハ6から出力される検出信号が変動する。その検出信号については演算装置9に無線で送信され、この検出信号の波形が演算装置9に含まれる表示部95に表示されることで、ウエハWを処理する際に、環状突起46及び/またはノズル51Bが適正な位置に配置されているか否かの検査が可能となっている。なお、上記のノズル51BはEBR(Edge Bead Removal)用のノズルである。EBRは、溶剤をノズルから吐出してウエハWの表面全体に形成された膜(本実施形態ではレジスト膜)のうち、当該ウエハWの周縁部を被覆する部位を限定的に除去する処理である。
【0010】
また検査用ウエハ6には、環状突起46及びノズル51Bを各々撮像して画像データを取得する撮像部であるカメラ81、82も設けられている。情報取得システム1はこの画像データに基づいて、上記のレジスト膜形成モジュール3にウエハWが載置されるときの当該ウエハWと環状突起46との距離(後述のH0)、当該ウエハWとEBR用のノズル51Bとの距離(後述のH1)を夫々取得することが可能である。これらの距離の取得方法については第2の実施形態で説明するが、当該距離の取得を行うためのシステムの構成については、この第1の実施形態の説明中でその一部を述べる。
【0011】
以下、基板処理装置2について詳しく説明する。基板処理装置2は、キャリアブロックD1と処理ブロックD2とにより構成されている。キャリアブロックD1と処理ブロックD2とは左右に並び、互いに接続されている。ウエハWは、搬送容器であるキャリアCに格納された状態で、図示しないキャリアC用の搬送機構によってキャリアブロックD1に搬送される。キャリアブロックD1はキャリアCを載置するステージ21を備えている。またキャリアブロックD1には、開閉部22と、搬送機構23と、が設けられている。開閉部22はキャリアブロックD1の側壁に形成された搬送口を開閉する。搬送機構23はステージ21上のキャリアCに対して、上記の搬送口を介してウエハWの搬送を行う。
【0012】
処理ブロックD2は、左右方向に伸びるウエハWの搬送路24と、当該搬送路24に設けられる搬送機構25と、を備えている。当該搬送機構25及び上記の搬送機構23により、キャリアCと処理ブロックD2に設けられる各処理モジュールとの間で、ウエハWが搬送される。処理モジュールは、搬送路24の前方側、後方側の各々に左右に複数並べて設けられている。後方側の処理モジュールは加熱モジュール26であり、レジスト膜中の溶剤を除去するための加熱処理を行う。前方側の処理モジュールはレジスト膜形成モジュール3である。また、搬送路24のキャリアブロックD1寄りの位置には、ウエハWが仮置きされる受け渡しモジュールTRSが設けられている。当該受け渡しモジュールTRSを介して、キャリアブロックD1と処理ブロックD2との間でウエハWが受け渡される。
【0013】
続いて、レジスト膜形成モジュール3について図2の縦断側面図及び図3の平面図を参照しながら説明する。レジスト膜形成モジュール3は基板保持部であるスピンチャック31を備え、当該スピンチャック31は、ウエハWの裏面側中央部を吸着して水平に保持する。スピンチャック31は鉛直に伸びる軸32を介して回転機構33に接続され、当該回転機構33によってスピンチャック31に保持されたウエハWが鉛直軸回りに回転する。また、軸32を囲む円形の囲い板34が設けられており、当該囲い板34を貫通するように鉛直方向に伸びる昇降ピン35が3本(図2では2本のみ表示)設けられている。昇降機構36により昇降ピン35が昇降し、スピンチャック31と、既述の搬送機構25との間でウエハWが受け渡される。
【0014】
スピンチャック31に保持されるウエハWの周縁部の下側から側方に亘って、当該ウエハWを囲むように円形のカップ4が設けられており、当該カップ4は、カップ本体41、下側ガイド部42、中間ガイド部43、上側ガイド部44により構成される。カップ本体41はウエハWの周に沿った円環状の凹部をなすように形成され、ウエハWから落下あるいは飛散した処理液(レジスト及び溶剤)を受ける。カップ本体41を構成する各部を、外円筒部41A、底部本体41B、内円筒部41Cとして示している。外円筒部41A、内円筒部41Cは起立した筒状部材で、上記の円環状凹部の側壁をなす。底部本体41Bは外円筒部41Aの下端と内円筒部41Cの下端とを接続する水平な環状板であり、円環状凹部の底部をなす。底部本体41Bには、カップ4内を排気するための排気管45Aが設けられると共に、上記の凹部から処理液を排液するための排液口45Bが開口している。
【0015】
続いて下側ガイド部42について述べると、この下側ガイド部42は、既述の囲い板34の周縁部上から、内円筒部41C上を通過して外円筒部41Aへ向けて広がるように形成される円環部材であり、スピンチャック31に保持されるウエハWの下方に位置する。そして、下側ガイド部42の上面は傾斜面42A、42Bとして形成されており、傾斜面42Aは傾斜面42Bよりもカップ4の中心側に位置している。傾斜面42Aはカップ4の外方に向うにつれて上り、傾斜面42Bはカップ4の外方に向かうにつれて下ることで、下側ガイド部42の縦断面については山型に形成されている。傾斜面42Bは、ウエハWから落下あるいは飛散して付着した処理液が底部本体41Bへ流下されるようにガイドする。
【0016】
傾斜面42A、42Bがなす山型の頂部は上方へ突出して環状突起46を形成し、当該環状突起46は既述のスピンチャック31に載置されるウエハWの周に沿うと共に当該ウエハWの周縁部に近接する。環状突起46はウエハWの表面に供給される処理液が、ウエハWの裏面に回り込んでウエハWの中心寄りの位置に付着したり、処理液のミストがウエハWの裏面の中心寄りの位置に付着したりすることを防止する。下側ガイド部42の高さは、囲い板34及びカップ本体41に対して調整可能であり、従って環状突起46の高さはウエハWの下面に対して調整可能となっている。図2中、環状突起46とウエハWの下面との距離(カップ離間距離とする)をH0として示している。
【0017】
カップ4を構成する中間ガイド部43は、外円筒部41Aの内周面に取り付けられる垂直壁43Aと、垂直壁43Aの上端からカップ4の中心側へ向けて斜め上方に伸び出す傾斜部43Bと、を備えている。なお、傾斜部43Bには縦方向に液排出用の貫通孔43Cが穿孔されている。また、カップ4を構成する上側ガイド部44は、外円筒部41Aの内周面に取り付けられる垂直壁44Aと、垂直壁の上端からカップ4の中心部へ向けて水平に伸び出す水平部44Bと、水平部44Bの先端から垂直上方へと伸びる筒状の口壁44Cと、を備えている。垂直壁44Aは、中間ガイド部43の垂直壁43Aよりも上方に設けられており、水平部44Bは、中間ガイド部43の傾斜部43Bよりも上方に位置する。
【0018】
次に、レジスト膜形成モジュール3に設けられるレジスト供給機構5A及びEBR処理機構5Bについて説明する。レジスト供給機構5Aは、レジスト供給ノズル51A、レジスト供給部52A、アーム53A、移動機構54A及び待機部55Aを備える。レジスト供給ノズル51Aは、レジスト供給部52Aから圧送されるレジストを鉛直下方に吐出する。アーム53Aはレジスト供給ノズル51Aを支持し、移動機構54Aによって昇降自在且つ水平移動自在に構成されている。カップ4の外側に上方に開口する待機部55Aが設けられており、移動機構54Aによりレジスト供給ノズル51Aは、待機部55Aの開口内とカップ4内との間を移動する。カップ4内に移動したレジスト供給ノズル51Aは、回転するウエハWの中心部上にレジストを吐出し、スピンコーティングによってウエハWの表面全体にレジスト膜が形成される。
【0019】
EBR処理機構5Bは、溶剤供給ノズル51B、溶剤供給部52B、アーム53B、移動機構54B及び待機部55Bを備える。溶剤供給ノズル51BはEBR用のノズルであり、溶剤供給部52Bから圧送される溶剤を、ウエハWの中心側から周縁側へ斜め下方に向うように吐出する。つまり鉛直方向に対して傾いた向きに溶剤が吐出される。アーム53Bは溶剤供給ノズル51Bを支持し、移動機構54Bによって昇降自在且つ水平移動自在に構成されている。カップ4の外側に、上方に開口する待機部55Bが設けられており、移動機構54Bにより溶剤供給ノズル51Bは、待機部55Bの開口内と、カップ4内におけるウエハWの上方の処理位置との間を移動する。なお図3は実線で処理位置に移動した状態の溶剤供給ノズル51Bを示しており、既述のEBRは、回転するウエハWに対して、当該処理位置における溶剤供給ノズル51Bから溶剤が吐出されることで行われる。
【0020】
例えばアーム53Bに対して溶剤供給ノズル51Bは、その高さを調整自在に取り付けられる。従って、図2に示す処理位置における溶剤供給ノズル51BとウエハWの表面との距離(ノズル離間距離とする)H1は調整自在であり、このノズル離間距離H1の変更により、溶剤供給ノズル51Bから吐出された溶剤のウエハWにおける着液位置が変化する。なお、図3のみに表示しているが、カップ4の近傍には当該カップ4に向けて光照射可能な照明部48が設けられている。カメラ82による溶剤供給ノズル51Bの撮像時に、当該照明部48により溶剤供給ノズル51Bに光が照射される。
【0021】
基板処理装置2は、コンピュータにより構成される制御部20を備えており(図1参照)、コンパクトディスク、ハードディスク、メモリーカード及びDVDなどの記憶媒体に格納されたプログラムがインストールされる。インストールされたプログラムにより、基板処理装置2の各部に制御信号が出力されるように、プログラムには命令(各ステップ)が組み込まれている。そしてこの制御信号によって、搬送機構23、25によるウエハWの搬送、各処理モジュールによるウエハWの処理が行われる。
【0022】
ところで作業員によるレジスト膜形成モジュール3の組み立て時や調整時のエラーにより、カップ離間距離H0及び/または第2の距離であるノズル離間距離H1が適正範囲から外れた状態となる場合が有る。カップ離間距離H0が不適切な状態でウエハWに処理が行われると、環状突起46がウエハWに接触して当該ウエハWの裏面を傷つけたり、環状突起46がウエハWから離れすぎることでその役割を十分に果たせなかったりするおそれが有る。また、ノズル離間距離H1が不適切な状態でウエハWに処理が行われると、溶剤供給ノズル51BがウエハWに接触してウエハWを傷つけたり、着液位置の異常によるレジスト膜の除去領域の幅の異常が発生したりする。
【0023】
上記の検査用ウエハ6は、ウエハWの代わりにスピンチャック31に吸着保持される。その検査用ウエハ6により、検知対象部材(環状突起46及びノズル51B)に対する上記した干渉の検知を行うことは、カップ離間距離H0、ノズル離間距離H1が夫々適正範囲より小さいか否かという環状突起46の高さ、溶剤供給ノズル51Bの高さについての情報を取得することになる。その高さの情報の取得が行われることで、ウエハWと環状突起46との接触や、溶剤供給ノズル51BのウエハWに対する接触及び着液位置が異常になることついて、未然に防ぐことができる。
【0024】
以下、検査用ウエハ6の構成について、図4図5の縦断側面図、図6の平面図を参照しながら説明する。図4図5は互いに異なる位置の縦断側面を示している。なお図6では、図4図5に示す一部の構成要素を省略している。検査用ウエハ6は円形のベース体61と、基板62とを備えている。ベース体61はウエハWと同じ大きさの基板であり、その下面は、ウエハWの下面と同様に平坦面として構成されている。そのため、ベース体61はウエハWと同様に、搬送機構23、25による搬送及びスピンチャック31による吸着保持が可能となっている。図4図6は、そのようにスピンチャック31に吸着保持された状態のベース体61(即ち、吸着保持された状態の検査用ウエハ6)を示している。
【0025】
ベース体61の上側に、基板62が積層されて設けられている。当該基板62は、ベース体61の中央部上に設けられる本体部63を備えている。なお、図6及び後述の図7では図示の便宜上本体部63を円形に示しているが、円形に限られず任意の形状とすることができる。当該本体部63上には各種の回路部品や機器が設けられており、図中では一まとめにして部品群64として示している。
【0026】
部品群64を構成する部品及び機器としては、CPUや無線で各種データ(信号を含む)を送受信する通信機器などが含まれる。各センサやカメラで取得されたデータは、この通信機器により演算装置9に無線送信することが可能である。また、この通信機器を介して当該データを取得するためのトリガとなる信号を各カメラや各センサに送信することができる。なお、後述のようにカメラ81、82等は、基板62以外の基板に搭載されているが、基板同士を接続するワイヤー60を介して、このように演算装置9へのデータ送信や、トリガ信号の受信が可能である。またベース体61の中央部には、部品群64、各センサ、各カメラ、後述の照明部85に電力を供給するためのバッテリ65が設けられている。
【0027】
図7を参照してベース体61上の基板62についてさらに説明すると、当該基板62の本体部63はベース体61に対して固定されている。この本体部63の周縁の一部が、本体部63の周縁へ向けて伸長して、ベース体61の径方向に沿った細長の梁状体66を形成している。ベース体61の周縁部には、この梁状体66の先端側に重なる位置に、当該ベース体61を厚さ方向に貫通する貫通孔67が形成されている。当該貫通孔67はベース体61の縦方向の一方側(上側)と他方側(下側)とを接続する接続路をなす。
【0028】
図7中の矢印の先に、この貫通孔67の周囲の各部を拡大して示している。梁状体66の先端側の下面には、下方へ突出してこの貫通孔67に進入する突起68が設けられている。突起68の先端(下端)は、本体部63の下面よりも下方に位置しており、当該本体部63の下面から例えば1mm程度突出している(図4参照)。また、突起68は、梁状体66の先端よりも若干、基端側に離れて位置しており、梁状体66の先端は貫通孔67よりもベース体61の周縁寄りに位置している。そのような突起68及び貫通孔67の配置により、梁状体66については貫通孔67よりも基端側の部位、貫通孔67よりも先端側の部位が、夫々ベース体61に接して支持されている。つまり、ベース体61において貫通孔67の外縁を含む上面領域が、梁状体66を支持している。
【0029】
第1の梁状体である上記の梁状体66はいわゆるカンチレバーをなし、環状突起46の高さについての情報を取得するための第1の干渉検知部として構成されている。さらに詳しく述べると、梁状体66の下面は、ベース体61に対して固定されておらず、また縦方向(ベース体61の厚さ方向)に可撓性を有している。上記のように梁状体66が接続される本体部63はベース体61に固定されているため、梁状体66の基端はベース体61に対して固定されている。従って、当該梁状体66は一端側がベース体61の中央部側に固定される一方で、ベース体61の周縁部に向けて伸びる他端側がベース体61に対して可動な構成とされている。そして、梁状体66の基端部(一端部)の上側に歪みゲージ(歪みセンサ)69が設けられている。第1の信号取得部をなす歪みゲージ69は、上記の部品群64に含まれる部品と共にホイートストンブリッジ回路を構成し、当該回路から出力される電圧信号が検出信号として演算装置9へ無線送信される。
【0030】
ベース体61がスピンチャック31によって吸着されるときに、梁状体66の突起68は、環状突起46の上方に位置する。ウエハWの下面及びベース体61の下面は共に平坦面であるため、スピンチャック31に載置されたときには各々同じ高さとなる。従って、カップ離間距離H0(ウエハWと環状突起46との間の距離)が基準値以下でウエハWと環状突起46とが干渉する場合は、図8に示すように検査用ウエハ6の突起68と環状突起46との間でも干渉が起きる。そのように突起68が干渉することで、梁状体66の先端側が上方へ押し上げられるように変形する。この梁状体66の変形に応じて歪みゲージ69も変形し、この変形によって起こる当該歪みゲージ69の抵抗変化に応じて上記のホイートストンブリッジ回路から出力される信号が変動する。従って、この信号を監視することで環状突起46と突起68との間での干渉の有無を検出することができるので、ウエハWと環状突起46との間で干渉が起きるか否かを判断することができる。
【0031】
また、ベース体61の上面の周縁部には、梁状体66が設けられる位置とは周方向に異なる位置に切り欠きが設けられている。この切り欠きよりもベース体61の中央部側に、第2の梁状体である梁状体71の基端部が固定されて設けられている。梁状体71の先端側はベース体61の径方向に沿って切り欠き上を伸びるように細長に形成されている。従って、梁状体71の先端部はベース体61から浮いた状態となっている。即ち、ベース体61との間には、上記の切り欠きがなす隙間が介在しており、当該隙間を72として示している。
【0032】
梁状体71についても梁状体66と同様にカンチレバーをなし、処理位置における溶剤供給ノズル51Bの高さについての情報を取得するための第2の干渉検知部として構成されている。上記のように隙間72上に設けられることで、梁状体71の先端部は上下に可動な構成とされている。梁状体71の基端部の上側に歪みゲージ73が設けられている。第2の信号取得部である歪みゲージ73は、歪みゲージ69と同様に部品群64に含まれる部品と共にホイートストンブリッジ回路を構成し、当該回路からの電圧信号が検出信号として演算装置9へ無線送信される。
【0033】
スピンチャック31に検査用ウエハ6を吸着した状態で当該スピンチャック31を回転させる(共に検査用ウエハ6も回転させる)と、ノズル離間距離H1が基準値以下であるときに、図9に示すように梁状体71に溶剤供給ノズル51Bの下端が干渉する場合が有る。そのように干渉することで、梁状体71の先端側が隙間72を介して下方へ押し下げられ、隙間72が狭くなるように変形する。この梁状体71の変形に応じて歪みゲージ73も変形し、当該歪みゲージ73を含むホイートストンブリッジ回路から出力される信号が変動する。従ってこの信号を監視することで、溶剤供給ノズル51Bと梁状体71との間での干渉の有無を検出することができ、溶剤供給ノズル51Bの処理位置が適正か否かを判断することができる。
【0034】
また、図5図6に示すようにベース体61の周縁部において、梁状体66、71から周方向に離れた位置に2つの基板80が設けられており、これら2つの基板80同士も周方向に互いに離れている。一の基板80上にはカメラ81が、他の基板80上にはカメラ82が夫々設けられており、各々視野がベース体61の周縁に向けられている。カメラ81、82は、夫々環状突起46撮像用、溶剤供給ノズル51B撮像用である。カメラ81の光軸上にミラー83が配置されており、またベース体61には貫通孔84が形成されている。検査用ウエハ6がスピンチャック31に保持される際に、貫通孔84は環状突起46上に位置し、当該環状突起46の周方向における一部の上面が、当該貫通孔84を介してミラー83に写される。カメラ81はそのミラー83に写った環状突起46の一部の上面を撮像することができる。また、ベース体61には照明部85が2つ埋設されている。各照明部85は、貫通孔84をベース体61の周方向に挟むように配置されており、下方に光を照射する。カメラ81により撮像が行われる際には、各照明部85から下方の被写体に光が照射される。
【0035】
ベース体61上には例えば、その側壁がベース体61の周に沿った円形のカバー86が設けられており、上記した基板62の本体部63、バッテリ65、カメラ81、82、ミラー83を覆う。ただし、カメラ82による溶剤供給ノズル51Bの撮像を妨げないように、カバー86の側壁には当該カメラ82の光軸上に開口部が設けられている。また、上記した梁状体66、71の変形を妨げないように、例えば当該カバー86の側壁の下端部は切り欠かれており、この切り欠きを介して梁状体66、71の先端側はカバー86の外側に突出している。また、カバー86の側端は、溶剤供給ノズル51Bとの干渉を防ぐために処理位置における溶剤供給ノズル51Bよりも、ベース体61の中心寄りに位置する。
【0036】
図4図5に示した例では、カバー86の中央部は、カバー86の周縁部に比べて高さが大きく、上方に向う凸部87を形成するように形成されている。このようなカバー86の構成に合わせて、既述したようにベース体61の中央部にバッテリ65及び部品群64を配置することができ、ベース体61の重心を中央部に位置させることができる。そのためベース体61をスピンチャック31に載置した際に、自重によるベース体61の垂れ下がりを防止することができる。従って、その垂れ下がりによって梁状体66、71、カメラ81、82の高さが変化して、測定結果に影響を与えてしまうことを防止することができる。従って、凸部87を備えるカバー86は、異常の検出精度を高めることに寄与する。ただし、比較的厚さを大きく形成することで、上面が平坦面をなす形状のカバー86として構成されていてもよい。
【0037】
また、例えば作業員が検査用ウエハ6をキャリアCに搭載したり、メンテナンスしたりするなどして取り扱う際に、比較的狭い領域を通過させるものとする。その際にカバー86の上面は、梁状体66、71よりも高い位置に位置するので、検査用ウエハ6が当該狭い領域を画成する壁と衝突するとしてもカバー86が衝突し、梁状体66、71の壁と衝突が防止される。従って、梁状体66、71が塑性変形したり、破損したりすることが抑制される。従ってカバー86によって、梁状体66、71を効果的に保護することができる。
【0038】
続いて、演算装置9について図4を参照して説明する。演算装置9はコンピュータであり、バス91を備えている。そして、バス91に、プログラム格納部92、無線送受信部93、メモリ94、表示部95、操作部96が各々接続されている。プログラム格納部92には、コンパクトディスク、ハードディスク、メモリーカード及びDVDなどの記憶媒体に格納されたプログラム90がインストールされる。当該演算装置は、上記の離間距離H0、H1を算出する情報取得部として構成される。
【0039】
無線送受信部93は、検査用ウエハ6に対してデータを取得するためのトリガとなる信号を無線送信し、且つ上記した歪みゲージ69、73を含む各回路からの検出信号、カメラ81、82により取得された画像データを無線受信する。メモリ94には、各センサ、カメラから取得したデータが記憶される。後述する干渉の有無の判断の基準となる参照データも、当該メモリ94に記憶される。また、例えば第2の実施形態で画像データから離間距離H0、H1を取得するためのデータが格納されるが、これについては第2の実施形態で述べる。
【0040】
操作部96はマウスやキーボードなどにより構成され、情報取得システム1のユーザーは当該操作部96を介して、プログラム90により行い得る処理の実行を指示することができる。また、例えば演算装置9は基板処理装置2の制御部20に接続され、例えば検査用ウエハ6がスピンチャック31に保持されたら、各種のデータの取得が可能になったことを示す信号が制御部20から演算装置9に送信される。
【0041】
続いて、以上に述べた情報取得システム1の運用手順を説明する。先ず、検査用ウエハ6が格納されたキャリアCを基板処理装置2のステージ21に搬送する。当該検査用ウエハ6は、搬送機構23→受け渡しモジュールTRS→搬送機構25→レジスト膜形成モジュール3の順で搬送され、昇降ピン35を介してスピンチャック31に載置されて吸着、保持される。然る後、溶剤供給ノズル51Bが待機部55Bから処理位置に移動する。
【0042】
作業員が演算装置9から所定の指示を行うと、スピンチャック31が回転し、検査用ウエハ6が比較的低い速度で1回転する。この1回転時には、環状突起46と梁状体66の突起68との干渉が起こらず、且つ溶剤供給ノズル51Bと梁状体71との干渉が起こらないようにレジスト膜形成モジュール3の各部の高さを調整済みの状態で行う。この1回転時における歪みゲージ69、71を含む各回路からの検出信号が各々演算装置9に送信されて、参照データとして記憶される。検査用ウエハ6の1回転後、溶剤供給ノズル51Bは待機部55Bに戻る。そして、検査用ウエハ6は昇降ピン35を介して搬送機構25に受け渡され、受け渡しモジュールTRS、搬送機構23を順に介して、キャリアCに戻される。
【0043】
その後に任意のタイミングで、検査用ウエハ6が格納されたキャリアCを基板処理装置2のステージ21に搬送する。そして、参照データを取得した際と同様に検査用ウエハ6をレジスト膜形成モジュール3に搬送し、スピンチャック31に載置されて吸着、保持し、溶剤供給ノズル51Bを処理位置に移動させる。参照データの取得時と同様に例えば作業員が指示を行うと、スピンチャック31により検査用ウエハ6が1回転し、この1回転中における歪みゲージ69、71を含む各回路からの検出信号が各々演算装置9に送信されて、干渉の検知用データとして記憶される。データ取得後の検査用ウエハ6については、参照データ取得後の検査用ウエハ6と同様にキャリアCに戻される。
【0044】
作業員は、取得された干渉の検知用データの信号波形と、参照データの信号波形とを表示部95に表示し、比較して干渉の有無を検出する。図10は歪みゲージ69を含む回路から得られた信号波形例を示している。参照データの信号波形例を実線で示し、図8で示した干渉が起きた場合の検知用データの信号波形例を点線、一点鎖線で夫々示している。点線、一点鎖線の信号波形は、後述するように異なる態様の干渉によって取得される。図に示すように参照データは、データ取得中の各時刻で信号レベルに大きな変化は無い。干渉が無い場合の検知用データは、参照データと同様ないしは概ね同様の信号波形となる。
【0045】
例えば環状突起46を構成する下側ガイド部42が傾いて取り付けられることで、環状突起46の周方向の一部のみと干渉した場合は点線の波形で示すように、検査用ウエハ6の回転中における特定の時刻の信号レベルが、参照データの信号レベルに対して大きく異なったものとなる。検査用ウエハ6の回転中に環状突起46と突起68と接触し続ける場合は一点鎖線の波形で示すように、データ取得中の各時刻の信号レベルが、参照データの信号レベルと大きく異なる。
【0046】
このように信号波形の違いから干渉の有無の判断が可能である。作業員が干渉の判断を行うとしたが、プログラム90が判断を行うようにしてもよい。なお、歪みゲージ69を含む回路から得られる信号波形について示したが、歪みゲージ73を含む回路から得られる信号波形についても同様である。つまり、参照データの信号レベルはデータ取得中の各時刻で大きな変更は無く、ノズルとの干渉する場合には図10の点線で示すように特定のタイミングで大きく変化する。
【0047】
作業員は、上記の参照データと検知用データとの比較から環状突起46または溶剤供給ノズル51Bの高さ調整が必要と判断したら、そのように調整を行う。その後、ウエハWが格納されたキャリアCが基板処理装置2のステージ21に搬送される。ウエハWは搬送機構23→受け渡しモジュールTRS→搬送機構25→レジスト膜形成モジュール3→搬送機構25→加熱モジュール26→搬送機構25→受け渡しモジュールTRSの順で搬送され、搬送機構23によりキャリアCに戻される。このように搬送されるにあたり、レジスト膜形成モジュール3ではスピンチャック31により回転されるウエハWの表面の中心部に、レジスト供給ノズル51Aからレジストが吐出されてスピンコートにより、ウエハWの表面全体にレジスト膜が形成される。その後、溶剤供給ノズル51Bが待機部55Bから処理位置に移動し、回転するウエハWの周縁部に溶剤が供給され、当該周縁部のレジスト膜が除去される。
【0048】
上記したように情報取得システム1を構成する検査用ウエハ6においては、一端のみが各々当該検査用ウエハ6に固定された梁状体66、71に夫々歪みゲージ69、73を設けている。そして当該梁状体66、71が干渉検知用部材として、異常な高さに配置される環状突起46、溶剤供給ノズル51Bに対して干渉する構成とされている。上記の構成により梁状体66、71は干渉によって比較的大きく歪み、歪みゲージ69、73についても比較的大きく歪む。そのため比較的大きな信号変動を検出することができるので、この信号変動に基づいて干渉についての検出を行うことができる。そして、この干渉の検出結果に基づいて作業員がレジスト膜形成モジュール3の調整を行うことができる。従って、当該レジスト膜形成モジュール3でウエハWに対する処理が不良になることが防止されるので、当該ウエハWから製造される半導体製品の歩留りの低下を防ぐことができる。
【0049】
なお、上記の梁状体66、71の一方のみを設け、環状突起46の干渉、溶剤供給ノズル51Bにおける干渉のうちの一方のみを検出してもよい。また、既述した干渉の検出を行うにあたり検査用ウエハ6を回転させている。ただし、環状突起46が高さ異常となると、昇降ピン35を下降させて検査用ウエハ6をスピンチャック31に吸着させる際に、環状突起46と梁状体66との間での干渉が起こり、その干渉について検出することができる。つまり、環状突起46との干渉を検出するにあたり、検査用ウエハ6を回転させることが必須とは限られない。
【0050】
ところで、既述したように梁状体66は下方からベース体61に支持される。梁状体66が環状突起46と干渉すると上下に振動するが、仮にベース体61の支持が無いとすると、例えば検査用ウエハ6が繰り返し使用されて上記の干渉が繰り返されるうちに、梁状体66の先端側が上記の振動によって垂れ下がるように変形してしまうことが考えられる。即ち、梁状体66の下方からの支持はそのような梁状体66の変形を抑え、検査用ウエハ6の寿命の長期化を図ることができる。
【0051】
また図10にて点線で示した波形例が得られる場合のように、環状突起46の周方向の一部のみが高さ異常となる場合、検査用ウエハ6の回転により、梁状体66に接続される突起68には横方向から環状突起46が当接することになる。そのように横方向からの干渉であるため、梁状体66の先端側には上方へ向う力が発生する一方、梁状体66の基端側には下方へ向う力が発生する。つまり、横方向から見て、当該梁状体66が捩れる(梁状体66の伸長方向に伸びる軸周りに回転する)ように力が発生する。しかし、梁状体66の基端側はベース体61に支持されているので下方向の変形や捩れが抑制され、上側への変形が促される。つまり、変形初期に上方向に変形し易い状態となるため、梁状体66の先端は大きく上方へ撓む。
【0052】
また、上記のような横方向からの干渉が起きたとき、梁状体66について検査用ウエハ6の半径方向断面で考えると、干渉した側では上方向に向う力が発生し、その反対側では下方に向う力が発生する。このとき梁状体66における干渉側とは反対側でも、ベース体61が梁状体66を下方で支持するため、上記同様に下方向の変形や捩れが抑制され、上方向への変形が促される。従って、干渉による大きな信号変化を取り出すことができ、検出精度が高くなる。
【0053】
このようにベース体61において梁状体66の基端側を支持する部位、具体的には貫通孔67よりもベース体61の中心寄りで梁状体66に重なる部位については、梁状体66の先端側を上方へより確実に撓ませるためのガイドと言うことができる。ベース体61が梁状体66、71を下方で支持する部分は本実施形態では当該梁状体66、71の下面に沿った面を成しているが、梁状体66、71の長手方向及び/または検査用ウエハ6の周方向に異なる複数個所を有していてもよい。即ち、間隔が空いた複数点で梁状体66、71が下方から支持されるようにしてもよい。また、梁状体66、71について、伸長方向に向けて見た縦断面は、横方向寸法よりも縦方向(上下方向)寸法が短い形状となっており、横方向より縦方向に変形し易い構造となっている。
なお、突起68はベース体61の上下を接続する接続路をなす貫通孔67に進入する構成とされているが、当該接続路としてベース体61の周縁部に、ベース体61の中心側に向う切り欠きを設け、当該切り欠き内に突起68が進入する構成であってもよい。そして、その切り欠きの外縁を含む領域で梁状体66を支持することで、当該領域を既述のガイドとして作用させることができる。
【0054】
(第2の実施形態)
第2の実施形態として、カメラ81から取得される画像データを用いてカップ離間距離H0を取得し、カメラ82から取得される画像データを用いてノズル離間距離H1を取得する。カップ離間距離H0の取得方法について説明する。図11は、カメラ81により撮像される環状突起46の上面の周方向の一部における画像データである。点線の枠は画像の画素を示している。このように取得される画像データから環状突起46の幅L3の画素数について検出する(ステップS1)。予め取得しておいた当該幅L3の画素数とカップ離間距離H0との対応関係に基づき、カップ離間距離H0を算出する(ステップS2)。この対応関係としては、カップ離間距離H0、幅L3の画素数を変数とし、H0が大きくなるにつれてL3が小さくなる関係となることを表した任意の次数の方程式を用意しておけばよい。そして、その対応関係より算出されたカップ離間距離H0が演算装置9の表示部95に表示される(ステップS3)。
【0055】
ノズル離間距離H1の取得方法について説明する。図12はカメラ82により撮像される溶剤供給ノズル51Bの側面の画像データである。当該画像データにおいて、溶剤供給ノズル51Bの幅L4に対応する画素数が検出される(ステップT1)。続いて画像データにおいて、ステップT1で特定された溶剤供給ノズル51Bの下端と、基準高さH10(画像データ中、予め設定された高さの画素)との間の高さH20における画素数が検出される(ステップT2)。当該H20について、ノズル基準高さとする。そして、事前に取得しておいた溶剤供給ノズル51Bの幅L4/ステップT1で取得した幅L4に対応する画素数、について演算され、この演算値が1画素における距離とされる(ステップT3)。そして、ステップT2で求めたノズル基準高さH20の画素数×ステップT3で求めた1画素における距離が算出される。つまり、画像データ上の画素数であるノズル基準高さH20について、実際の高さ(距離)への変換がなされる(ステップT4)。
【0056】
また、スピンチャック31にウエハWを吸着保持したときのウエハWの表面と、スピンチャック31に検査用ウエハ6を吸着保持したときにカメラ82で取得される画像における既述の基準高さH10と、の高さの差(H30とする)を予め取得しておく。上記のステップT4で求めた実際のノズル基準高さH20と、高さの差H30とに基づいて、ノズル離間距離H1を算出する(ステップT5)。具体的に、図12に示すように画像中でノズル51Bが基準高さH20よりも上側に写るときにはH20+H30、画像中でノズル51Bが基準高さH20よりも下側に写るときにはH30-H20として、ノズル離間距離H1を算出する。算出されたノズル離間距離H1が、演算装置9の表示部95に表示される(ステップT6)。なお、このように予め取得しておいた高さの差H30を用いるのはベース体61上に設けられることで、カメラ82の視界が制限されるためである。
【0057】
以上のステップS1~S3、T1~T6は、上記のプログラム90により行われる。これらのステップを実行するための幅L3の画素数とカップ離間距離H0との対応関係、高さの差H30、溶剤供給ノズル51Bの実際の幅L4については、予め取得して演算装置9のメモリ94に格納しておく。
【0058】
カップ離間距離H0及びノズル離間距離H1を取得する場合の情報取得システム1の運用手順を説明すると、第1の実施形態で述べたようにキャリアCから検査用ウエハ6をレジスト膜形成モジュール3に搬送し、スピンチャック31に吸着保持する。そして、ノズル51Bが待機部55Bから処理位置に移動する。ユーザーが演算装置9から所定の指示を行うと、スピンチャック31が例えば所定の角度の刻みで間欠的に回転し、回転の停止時にカメラ81、82による撮像が行われて画像データが取得される。取得された画像データは、演算装置9に順次、無線送信される。検査用ウエハ6が1回転すると、溶剤供給ノズル51Bは待機部55Bに戻り、検査用ウエハ6はキャリアCに戻される。
【0059】
カメラ81により取得された各画像データに対して、上記したステップS1~S3が実行され、カップ離間距離H0が算出されて画面表示される。また、カメラ82により取得された複数の画像データのうち、例えば演算装置9のプログラム90によって図12に示したように溶剤供給ノズル51Bが写されたものが選択される。そして、当該選択された画像データに対して上記したステップT1~T6が実行され、ノズル離間距離H1が算出されて画面表示される。このように表示された離間距離H0、H1を見た作業員が、必要に応じて環状突起46及び/またはノズル51Bの高さ調整を行うようにする。
【0060】
第1の実施形態で示した干渉の検出、及び第2の実施形態で示した離間距離H0、H1の取得のうちの一方が選択して行われるように述べたが、これらを両方行ってもよい。一方のみを選択して行う場合、離間距離H0、H1を取得するようにすれば、これらの離間距離H0、H1が比較的大きくなることで発生する各不具合も未然に防止することができる。ただし、取得される画像のぶれを防ぐために、カメラ81、82による撮像時には、上記したように検査用ウエハ6の回転を停止させる。しかし、干渉の検出を行うにあたっては、そのような検査用ウエハ6の回転を停止させる必要が無い。従って、検査に要する時間が短くて済むという利点が有る。
【0061】
なお、上記の第2の実施形態では、カメラ81により複数回撮像を行い、環状突起46の周方向の各部における画像を取得して各画像データからカップ離間距離H0を取得しているが、1箇所のみの画像データを取得し、当該箇所のみのカップ離間距離H0を取得してもよい。また、第1の実施形態においては梁状体66、81に干渉によって、出力される信号が変動する構成とすればよいため、歪みゲージ69、73を用いることには限られない。具体的には例えば歪みゲージ69、73の代わりに振動センサを設け、振動についての検出信号が演算装置9へ出力される構成としてもよい。なお、歪みゲージ69、73について梁状体66、71の基端側に設けるように示したが、信号の変動が検出できればよく、そのように基端側に設けることに限られない。
【0062】
既述した情報取得システム1では制御部20と演算装置9とが別々に設けられているが、制御部20が演算装置9の役割を兼用する構成であってもよい。また、各データについて既述の例では演算装置9に無線送信されるが、例えば検査用ウエハ6のベース体61に着脱自在のメモリを搭載し、当該メモリに格納されるようにしてもよい。その場合、データの取得を終えてキャリアCに戻された検査用ウエハ6から作業員が当該メモリを取り外し、演算装置9に各データを移せばよい。従って、検査用ウエハ6については画像データを無線送信するように構成されていなくてもよい。なお、有線で検査用ウエハ6と演算装置9とが接続され、各種のデータが演算装置9に送信される構成であってもよい。
【0063】
ところでカメラ82については溶剤供給ノズル51Bを撮像するように設けられているが、レジスト供給ノズル51Aを撮像可能であるように設け、レジスト供給ノズル51AとウエハWの表面との距離が取得されるようにしてもよい。また、基板処理装置2に設けられる液処理モジュールとしてはレジスト膜形成モジュール3に限られない。ノズルから反射防止膜や絶縁膜などのレジスト膜以外の塗布膜形成用の処理液をウエハWの表面に供給して成膜するモジュールであってもよいし、ノズルから洗浄液、現像液、あるいは複数のウエハWを互いに貼り合わせるための接着剤をウエハWの表面に供給するモジュールであってもよい。そのようにレジスト以外の処理液を供給するノズルとウエハW表面との間の高さの情報についても、既述した実施形態の手法により取得することができる。
【0064】
さらにノズルからウエハWの周縁部に供給される処理液としては溶剤に限られず、例えば塗布膜形成用の塗布液であってもよい。このノズルとウエハW表面との高さについての情報を、既述した各手法により取得することができる。なお検査用ウエハ6は、キャリアCによって外部から基板処理装置2に搬送されることには限られない。例えば、基板処理装置2内に当該検査用ウエハ6の格納用のモジュールを設けて、当該モジュールとレジスト膜形成モジュール3との間で搬送がなされるようにしてもよい。
【0065】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更及び組み合わせがなされてもよい。
【符号の説明】
【0066】
W ウエハ
31 スピンチャック
6 検査用ウエハ
61 ベース体
66、71 梁状体
69 歪みゲージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12