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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/10 20060101AFI20241217BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H05K3/10 E
H05K3/46 B
H05K3/46 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021071943
(22)【出願日】2021-04-21
(65)【公開番号】P2022166615
(43)【公開日】2022-11-02
【審査請求日】2024-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】浦島 航介
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 正也
(72)【発明者】
【氏名】米倉 元気
(72)【発明者】
【氏名】有福 征宏
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-88285(JP,A)
【文献】国際公開第2019/188344(WO,A1)
【文献】特開平2-87593(JP,A)
【文献】特開2013-212642(JP,A)
【文献】特開2005-286306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/10
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板上に設けられた導体配線と、該導体配線の周囲の少なくとも一部を被覆し、磁性材を含む絶縁体からなる絶縁磁性層と、を備える、配線基板の製造方法であって、
前記基板上に、絶縁材料層を形成する工程(I)と、
前記絶縁材料層に、前記基板とは反対側に開口する開口部を形成する工程(II)と、
少なくとも前記開口部の内側面上に、前記絶縁磁性層を形成する工程(III)と、
前記絶縁磁性層上に、導体配線を形成する工程(IV)と、
を備える、配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記工程(III)が、前記開口部の内側面上及び前記絶縁材料層の前記開口部以外の表面上に前記絶縁磁性層を形成する工程であり、
前記工程(IV)が、前記絶縁磁性層上に導体層を形成した積層体を作製する工程と、前記積層体の前記基板とは反対側の一部を除去することにより前記導体配線を形成する工程と、を含む、請求項1に記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記絶縁磁性層の被覆厚さは、0.1~100μmである、請求項1又は2に記載の配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記磁性材が、金属酸化物又はアモルファス金属である、請求項1~3のいずれか一項の配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記絶縁体の比透磁率が、2~1000である、請求項1~4のいずれか一項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項6】
前記絶縁体の比誘電率が、1~30である、請求項1~5のいずれか一項に記載の配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される移動体通信機器やその基地局装置、サーバー、ルーター等のネットワーク関連電子機器、あるいは大型コンピュータ等では、大容量の情報を低損失かつ高速で伝送・処理することが要求されている。かかる要求に対応するため、上述のような装置に搭載されるプリント配線板では、扱う電気信号の高周波数化が進んでいる。しかしながら、電気信号は、高周波になるほど減衰しやすくなる性質を有することから、高周波の電気信号を扱うプリント配線板には、従来以上に伝送損失を低くすることが求められる。
【0003】
上記の要求に対し、例えば、配線を含む導体層の表面粗さを小さくして、導体層の表面粗度が大きいことに起因する伝送損失を抑制すること(例えば、下記特許文献1を参照。)や、基板材料に、誘電率、誘電正接が小さいポリフェニレンエーテル含有樹脂等を用いて、誘電体に起因する伝送損失を低減すること(例えば、下記特許文献2を参照。)などの対策が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-016006号公報
【文献】国際公開第2014/034103号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポスト5G/6Gにおいて電気信号が更に高周波数化すると、上記の対策だけでは伝送損失の低下への対応が困難となる。
【0006】
そこで、本発明は、高周波帯の伝送損失が小さい配線基板を得ることができる配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、基板と、該基板上に設けられた導体配線と、該導体配線の周囲の少なくとも一部を被覆し、磁性材を含む絶縁体からなる絶縁磁性層と、を備える、配線基板を製造する方法であって、基板上に、絶縁材料層を形成する工程(I)と、絶縁材料層に、基板とは反対側に開口する開口部を形成する工程(II)と、少なくとも開口部の内側面上に、絶縁磁性層を形成する工程(III)と、絶縁磁性層上に、導体配線を形成する工程(IV)と、を備える、配線基板の製造方法を提供する。
【0008】
上記一側面の配線基板の製造方法によれば、高周波帯の伝送損失が小さい配線基板を得ることができる。このような効果が奏される理由として、高周波で発生した磁束が磁性材を含む絶縁体を通過することで、導体配線内部の渦電流が低減し、これにより表皮効果が小さくなることが考えられる。
【0009】
一側面において、上記工程(III)が、開口部の内側面上及び絶縁材料層の開口部以外の表面上に絶縁磁性層を形成する工程であり、上記工程(IV)が、絶縁磁性層上に導体層を形成した積層体を作製する工程と、積層体の基板とは反対側の一部を除去することにより導体配線を形成する工程と、を含んでいてもよい。
【0010】
上記の場合、開口部内に、基板側に位置する底面と、基板とは反対側に位置する上面と、底面と上面との間に位置する一対の側面と、を有する導体配線を形成することができるとともに、絶縁磁性層が、導体配線の少なくとも底面及び一対の側面を被覆する構造を有する配線基板を得ることができる。
【0011】
一側面において、信号伝搬のしやすさの観点から、絶縁磁性層の被覆厚さは、0.1~100μmであってもよい。
【0012】
一側面において、絶縁性の観点から、磁性材が、金属酸化物又はアモルファス金属であってもよい。
【0013】
一側面において、伝送損失を抑制する観点から、絶縁体の比透磁率は、2~1000であってもよい。
【0014】
一側面において、伝送損失を抑制する観点から、絶縁体の比誘電率は、1~30であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高周波帯の伝送損失が小さい配線基板を得ることができる配線基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、配線基板の製造方法の第一実施形態を示す模式断面図である。
図2図2は、図1に続く、配線基板の製造方法の第一実施形態を示す模式断面図である。
図3図3は、配線基板の製造方法の第二実施形態を示す模式断面図である。
図4図4は、図3に続く、配線基板の製造方法の第二実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0018】
なお、「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。また、以下で例示する材料は、特に断らない限り、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0019】
<絶縁磁性層形成用組成物>
絶縁磁性層形成用組成物は、磁性材を含む硬化性の組成物である。絶縁磁性層形成用組成物は、例えば、バインダ樹脂ワニスと、磁性粉とを混合して形成することができる。
【0020】
磁性材としては、例えば、金属単体、合金及び金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の磁性粉であってよい。合金は、固溶体、共晶、アモルファス(非晶質)金属、及び金属間化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。金属化合物としては、金属酸化物が挙げられる。
【0021】
磁性材は、絶縁性の観点から、金属酸化物又はアモルファス(非晶質)金属であってもよく、金属ガラス磁性粉であってもよい。金属酸化物としては、フェライトが挙げられる。アモルファス(非晶質)金属としては、Fe基ナノ結晶合金、Co基ナノ結晶合金が挙げられる。
【0022】
磁性粉は、一種の金属元素又は複数種の金属元素を含んでよい。磁性粉に含まれる金属元素は、例えば、卑金属元素、貴金属元素、遷移金属元素、又は希土類元素であってよい。磁性粉に含まれる金属元素は、例えば、鉄(Fe)、銅(Cu)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)、クロム(Cr)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、鉛(Pb)、銀(Ag)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)及びジスプロシウム(Dy)からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。磁性粉は、金属元素以外の元素を含んでもよい。磁性粉は、例えば、酸素、ホウ素、又はケイ素を含んでもよい。
【0023】
磁性粉としては、Fe-Si系合金、Fe-Si-Al系合金(センダスト)、Fe-Ni系合金(パーマロイ)Fe-Cu-Ni系合金(パーマロイ)、Fe-Cr-Si系合金、Fe-Cr系合金、Fe-Ni-Cr系合金(電磁ステンレス鋼)、Nd-Fe-B系合金(希土類磁石)、Al-Ni-Co系合金(アルニコ磁石)及びフェライトからなる群より選ばれる少なくとも一種の組成物を用いることができる。フェライトは、例えば、スピネルフェライト、六方晶フェライト、又はガーネットフェライトであってよい。
【0024】
Fe系合金は、Feアモルファス合金であってもよい。Feアモルファス合金粉は、主成分となるFeをSi等の他の元素と一緒に高温溶融した合金を急冷して得られる非晶質の粉末であり、金属ガラスとしても知られている。Feアモルファス合金粉は、当技術分野で周知の方法に従って製造することができる。Feアモルファス合金粉は、エプソンアトミックス株式会社製の製品名「AW2-08」、及び「KUAMET-6B2」、大同特殊鋼株式会社製の製品名「DAPMS3」、「DAPMS7」、「DAPMSA10」、「DAPPB」、「DAPPC」、「DAPMKV49」、「DAP410L」、「DAP430L」、及び「DAPHYBシリーズ」、並びに株式会社神戸製鋼所製の製品名「MH45D」、「MH28D」、「MH25D」、及び「MH20D」などの市販品を用いることができる。
【0025】
磁性粉は、上記の元素及び組成物のうち一種を含んでよく、上記の元素及び組成物のうち複数種を含んでもよい。
【0026】
磁性粉は、球状、略球状、フレーク状、又は楕円状であってもよい。また、磁性粉は、一部に角が形成されるその他の様々な形状であってもよい。流動性に優れる観点から、磁性粉は、球状であってもよい。
【0027】
磁性粉の平均粒子径は、0.005~50μmであってもよい。本明細書において記載する「平均粒子径」は、粒度分布における積算値50%(体積基準)での粒径を意味する。磁性粉は、細密充填するように、2~3種類の平均粒子径の粒子の混合物を用いることができる。
【0028】
磁性粉は、表面に被膜を有していてもよい。被膜は、例えば、無機塩、アクリル樹脂、ケイ素酸化合物などから形成することができる。また、磁性粉は、表面の全体又は一部が表面処理剤によって被覆されていてもよい。表面処理剤は、例えば、無機酸化物、リン酸系化合物及びリン酸塩系化合物、並びにシランカップリング剤等の無機系表面処理剤、モンタンワックス等の有機系表面処理剤、樹脂硬化物であってよい。表面処理剤として、後述するカップリング剤を使用することもできる。例えば、Fe系合金等の金属系の磁性粉は、その表面の全体又は一部が絶縁性材料によって被覆されていてもよい。絶縁性材料として、例えば、シリカ、チタニア、リン酸カルシウム、モンタンワックス、及びエポキシ樹脂硬化物が挙げられる。
【0029】
磁性粉は、表面が絶縁性材料で被覆された磁性粉(以下、絶縁被覆磁性粉という)を含んでよい。絶縁被覆磁性粉は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上の絶縁被覆磁性粉の平均粒子径は互いに同じであっても、異なっていてもよい。また、絶縁被覆磁性粉と、絶縁被覆を持たない磁性粉(以下、未被覆磁性粉という)とを併用してもよい。未被覆磁性粉の平均粒子径は、絶縁被覆磁性粉の平均粒子径と同じでもあっても、異なっていてもよい。例えば、絶縁性を発現させる観点から、未被覆磁性粉の平均粒子径は、絶縁被覆磁性粉の平均粒子径よりも小さくてもよい。
【0030】
絶縁被覆磁性粉は、絶縁被覆を有するFeアモルファス合金粉であってよい。このような絶縁被覆磁性粉は、例えば、エプソンアトミックス株式会社製の「KUAMET9A4」(Fe-Si-B系合金、D50:20μm、絶縁被覆あり)、及び新東工業株式会社製の「SAP-2D(C)」(Fe-Si-B-PNb-Cr系合金、D50:2.3μm、絶縁被覆あり)などの市販品を用いることができる。未被覆磁性粉は、例えば、新東工業株式会社製の「SAP-2D」(Fe-Si-B-PNb-Cr系合金、D50:2.3μm、絶縁被覆なし)や、戸田工業株式会社製のソフトフェライト粉「BSN-125」(Ni-Zn系合金、D50:10μm、絶縁被覆なし)などの市販品を用いることができる。
【0031】
絶縁磁性層形成用組成物における磁性粉の含有量は、組成物の全質量を100質量部としたときに、70~99質量部、又は80~90質量部であってもよい。
【0032】
バインダ樹脂ワニスは、樹脂組成物を用いることができる。
【0033】
樹脂組成物はエポキシ樹脂を含有することができる。
【0034】
エポキシ樹脂としては、例えば、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等の縮合環構造を有するエポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;ビスフェノールS型エポキシ樹脂;ビスフェノールAF型エポキシ樹脂;トリスフェノール型エポキシ樹脂;ノボラック型エポキシ樹脂;ナフトールノボラック型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂;tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;線状脂肪族エポキシ樹脂;ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;複素環式エポキシ樹脂;スピロ環含有エポキシ樹脂;シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂;トリメチロール型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂;ビキシレノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であってもよい。また、エポキシ樹脂は、温度25℃で液状又は固体状であってもよい。
【0036】
25℃で液状のエポキシ樹脂(以下、「液状エポキシ樹脂」ともいう。)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂を用いることができる。液状エポキシ樹脂は、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER807」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)、ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂)、ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂)、「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂)、新日鉄住金化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン)、三菱ケミカル社製の「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)、ADEKA社製の「EP-3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)等の市販品を用いることができる。
【0037】
25℃で固体状のエポキシ樹脂としては、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂を用いることができる。固体状エポキシ樹脂は、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N-695」、「N-680」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP-7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)、日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学社製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂)、大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」、三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂)、「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)、三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)、「157S70」(ノボラック型エポキシ樹脂)等の市販品を用いることができる。
【0038】
樹脂組成物は、硬化剤を含有してもよい。硬化剤としては、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、及びシアネートエステル系硬化剤などが挙げられる。硬化剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤、ノボラック構造を有するナフトール系硬化剤、含窒素フェノール系硬化剤、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤を用いることできる。
【0040】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤は、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金化学社製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495V」、「SN375」、「SN395」、DIC社製の「TD2090」、「TD2090-60M」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018」、「LA-3018-50P」、「EXB-9500」、「HPC-9500」、「KA-1160」、「KA-1163」、「KA-1165」、群栄化学社製の「GDP-6115L」、「GDP-6115H」、「ELPC75」等の市販品を用いることができる。
【0041】
ベンゾオキサジン系硬化剤は、昭和高分子社製の「HFB2006M」、四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」等の市販品を用いることができる。
【0042】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。
【0043】
シアネートエステル系硬化剤は、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等の市販品を用いることができる。
【0044】
樹脂組成物における硬化剤の含有量は、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量部としたときに、0.1質量部以上、0.3質量部以上、又は0.5質量部以上であってもよく、5質量部以下、3質量部以下、又は2質量部以下であってもよい。
【0045】
樹脂組成物は、硬化促進剤を含有してもよい。硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられ、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤が挙げられる。硬化促進剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられる。
【0047】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが挙げられる。
【0048】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。
【0049】
イミダゾール系硬化促進剤は、三菱ケミカル社製の「P200-H50」等の市販品を用いることができる。
【0050】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられる。
【0051】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0052】
樹脂組成物における硬化促進剤の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量部としたときに、0.001質量部以上、0.005質量部以上、又は0.01質量部以上であってもよく、0.1質量部以下、0.08質量部以下、又は0.05質量部以下であってもよい。
【0053】
樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含有してもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、シロキサン樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリアルキレン樹脂、ポリアルキレンオキシ樹脂、ポリイソプレン樹脂、ポリイソブチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0054】
フェノキシ樹脂は、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA構造含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン構造含有フェノキシ樹脂)が挙げられ、その他にも、新日鉄住金化学社製の「FX280」及び「FX293」、三菱ケミカル社製の「YX7180」、「YX6954」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7553BH30」、「YL7769」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」、「YL7891」、「YL7482」等の市販品を用いることができる。
【0055】
熱可塑性樹脂は、分子内に、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、及びポリカーボネート構造から選択される1種以上の構造を有していてもよい。これらの構造は主鎖に含まれていても側鎖に含まれていてもよい。ポリブタジエン構造は、一部又は全てが水素添加されていてもよい。ポリアルキレンオキシ構造は、炭素原子数2~15のポリアルキレンオキシ構造、炭素原子数3~10のポリアルキレンオキシ構造、又は炭素原子数5~6のポリアルキレンオキシ構造であってもよい。
【0056】
熱可塑性樹脂は、数平均分子量(Mn)が1,000以上、1,500以上、3,000以上、又は5,000以上であってもよく、1,000,000以下、又は900,000以下であってもよい。数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を使用して測定されるポリスチレン換算の数平均分子量を意味する。
【0057】
熱可塑性樹脂は、エポキシ樹脂と反応し得る官能基を有していてもよい。エポキシ樹脂と反応し得る官能基は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基、イソシアネート基及びウレタン基からなる群から選択される1種以上の官能基であってもよい。
【0058】
ポリブタジエン樹脂は、クレイバレー社製の「Ricon 130MA8」、「Ricon 130MA13」、「Ricon 130MA20」、「Ricon 131MA5」、「Ricon 131MA10」、「Ricon 131MA17」、「Ricon 131MA20」、「Ricon 184MA6」(酸無水物基含有ポリブタジエン)、日本曹達社製の「GQ-1000」(水酸基、カルボキシル基導入ポリブタジエン)、「G-1000」、「G-2000」、「G-3000」(両末端水酸基ポリブタジエン)、「GI-1000」、「GI-2000」、「GI-3000」(両末端水酸基水素化ポリブタジエン)、ナガセケムテックス社製の「FCA-061L」(水素化ポリブタジエン骨格エポキシ樹脂)等の市販品を用いることができる。
【0059】
ポリ(メタ)アクリル樹脂は、ナガセケムテックス社製のテイサンレジン、根上工業社製の「ME-2000」、「W-116.3」、「W-197C」、「KG-25」、「KG-3000」等の市販品を用いることができる。
【0060】
ポリカーボネート樹脂は、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等の市販品を用いることができる。
【0061】
熱可塑性樹脂は、信越シリコーン社製の「SMP-2006」、「SMP-2003PGMEA」、「SMP-5005PGMEA」、アミン基末端ポリシロキサンおよび四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミド(国際公開第2010/053185号、特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等)、旭化成せんい社製の「PTXG-1000」、「PTXG-1800」、クラレ社製の「KL-610」、「KL613」、カネカ社製の「SIBSTAR-073T」(スチレン-イソブチレン-スチレントリブロック共重合体)、「SIBSTAR-042D」(スチレン-イソブチレンジブロック共重合体)、電気化学工業社製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」、積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」、日立化成社製の「KS9100」及び「KS9300」、住友化学社製の「PES5003P」、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」及び「P3500」、ガンツ化成社製の「AC3832」等の市販品を用いてもよい。
【0062】
樹脂組成物における熱可塑性樹脂の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量部としたときに、0.1質量部以上、0.3質量部以上、又は0.5質量部以上であってもよく、20質量部以下、10質量部以下、5質量部以下、又は3質量部以下であってもよい。
【0063】
樹脂組成物は、1分子中に活性エステル基を1個以上有する活性エステル化合物を含有することができる。活性エステル化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
活性エステル化合物としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物を用いることができる。このような活性エステル化合物は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが挙げられる。
【0065】
活性エステル化合物は、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル化合物であってもよく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル化合物であってもよい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0066】
活性エステル化合物の具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が挙げられる。なお、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0067】
ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L-65TM」、「EXB-8150-65T」(DIC社製)、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9416-70BK」(DIC社製)、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として、「DC808」(三菱ケミカル社製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として、「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル化合物として「DC808」(三菱ケミカル社製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製)等の市販品を用いてもよい。
【0068】
樹脂組成物が活性エステル化合物及びエポキシ樹脂を含有する場合、エポキシ樹脂と活性エステル化合物との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[活性エステル化合物の活性エステル基の合計数]の比率で、1:0.01~1:5、1:0.05~1:3、又は、1:0.1~1:1.5であってもよい。
【0069】
樹脂組成物における活性エステル化合物の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量部としたときに、1質量部以上、1.5質量部以上、又は2質量部以上であってもよく、40質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、10質量部以下、8質量部以下、又は5質量部以下であってもよい。
【0070】
樹脂組成物は、1分子中にカルボジイミド基(-N=C=N-)を1個以上有するカルボジイミド化合物を含有することができる。カルボジイミド化合物としては、1分子中にカルボジイミド基を2個以上有する化合物を用いてもよい。カルボジイミド化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
カルボジイミド化合物としては、下記式(A)で表される構造を含有する化合物が挙げられる。
-(X)-N=C=N- …(A)
[式中、Xは、アルキレン基、シクロアルキレン基又はアリーレン基を表し、これらは置換基を有していてもよい。pは1~5の整数を表す。Xが複数存在する場合、それらは同一でも相異なってもよい。]
【0072】
Xで表されるアルキレン基の炭素原子数(置換基の炭素原子数は含まれない)は、1~20、1~10、1~6、1~4、又は1~3であってもよい。アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられる。
【0073】
Xで表されるシクロアルキレン基の炭素原子数(置換基の炭素原子数は含まれない)は、3~20、3~12、3~6であってもよい。シクロアルキレン基としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基が挙げられる。
【0074】
Xで表されるアリーレン基は、芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子を2個除いた基である。アリーレン基の炭素原子数(置換基の炭素原子数は含まれない)は、6~24、6~18、6~14、又は6~10であってもよい。アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基が挙げられる。
【0075】
Xで表されるアルキレン基、シクロアルキレン基又はアリール基は置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基及びアシルオキシ基が挙げられる。置換基として用いられるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。置換基としてのアルキル基、アルコキシ基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、その炭素原子数は、1~20、1~10、1~6、1~4、又は1~3であってもよい。置換基としてのシクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基の炭素原子数は、3~20、3~12、又は3~6であってもよい。置換基としてのアリール基は、芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子を1個除いた基であり、その炭素原子数は、6~24、6~18、6~14、又は6~10であってもよい。置換基としてのアリールオキシ基の炭素原子数は、6~24、6~18、6~14、又は6~10であってもよい。置換基としてのアシル基は、式:-C(=O)-Rで表される基(式中、Rはアルキル基又はアリール基を表す。)をいう。Rで表されるアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、その炭素原子数は、1~20、1~10、1~6、1~4、又は1~3であってもよい。Rで表されるアリール基の炭素原子数は、6~24、6~18、6~14、又は6~10であってもよい。置換基としてのアシルオキシ基は、式:-O-C(=O)-Rで表される基(式中、Rはアルキル基又はアリール基を表す。)をいう。
【0076】
式(A)中、pは1~5の整数を表す。pは、1~4、2~4、2又は3であってもよい。
【0077】
カルボジイミド化合物における式(A)で表される構造の含有量は、カルボジイミド化合物の分子全体の質量を100質量部としたとき、50質量部以上、60質量部以上、70質量部以上、80質量部以上又は90質量部以上であってもよい。カルボジイミド化合物は、末端構造を除いて、式(A)で表される構造から実質的になってもよい。カルボジイミド化合物の末端構造としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基が挙げられ、これらは置換基を有していてもよい。末端構造として用いられるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基は、Xで表される基が有していてもよい置換基について説明したアルキル基、シクロアルキル基、アリール基と同じであってよい。また、末端構造として用いられる基が有していてもよい置換基は、Xで表される基が有していてもよい置換基と同じであってよい。
【0078】
カルボジイミド化合物の重量平均分子量は、500以上、600以上、700以上、800以上、900以上又は1000以上であってもよく、5000以下、4500以下、4000以下、3500以下、又は3000以下であってもよい。カルボジイミド化合物の重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレンン換算)で測定することができる。
【0079】
カルボジイミド化合物が分子中にイソシアネート基(-N=C=O)を含有する場合、カルボジイミド化合物中のイソシアネート基の含有量(「NCO含有量」ともいう。)は、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下又は0.5質量%以下であってもよい。
【0080】
カルボジイミド化合物は、日清紡ケミカル社製のカルボジライト(登録商標)V-02B、V-03、V-04K、V-07及びV-09、ラインケミー社製のスタバクゾール(登録商標)P、P400、及びハイカジル510等の市販品を用いてもよい。
【0081】
樹脂組成物におけるカルボジイミド化合物の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量部としたときに、0.1質量部以上、0.3質量部以上、又は0.5質量部以上であってもよく、3質量部以下、2質量部以下、又は1.5質量部以下であってもよい。
【0082】
樹脂組成物は、さらに必要に応じて、他の添加剤を含んでいてもよい。他の添加剤としては、例えば、難燃剤、有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物、バインダー、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、並びに着色剤等の樹脂添加剤等が挙げられる。
【0083】
絶縁磁性層形成用組成物は、ペースト状であってもよい(以下、「ペースト」という)。ペーストは、磁性粉と、エポキシ基含有化合物と、硬化剤と、を含んでいてもよい。
【0084】
磁性粉は、上述した磁性粉を用いることができる。
【0085】
ペーストに含まれる磁性粉の平均粒子径は、0.05~200μm、0.5~100μm、又は1~50μmであってよい。磁性粉が被覆されている場合は、被覆膜を含めた磁性粉の平均粒子径が上記範囲内であってよい。
【0086】
ペーストにおける磁性粉の含有量は、ペーストの全質量を基準として、70質量%以上、又は80質量%以上であってよく、99質量%以下、又は90質量%以下であってよい。ペーストにおける磁性粉の含有量は、ペーストの全質量を基準として、70~99質量%、又は80~90質量%であってもよい。
【0087】
エポキシ基含有化合物は、分子内に1以上のエポキシ基を有する化合物を意味し、モノマー、並びにモノマーの重合化によって形成される構造単位を有するオリゴマー及びポリマーのいずれの形態であってもよい。エポキシ基含有化合物は、加熱処理によって硬化し、金属元素含有粉を結着するバインダ樹脂として機能することができる。エポキシ基含有化合物の一例として、一般的にエポキシ樹脂として知られる、分子内に2以上のエポキシ基を有するオリゴマー及びポリマーが挙げられる。エポキシ基含有化合物の他の例として、分子内に1以上のエポキシ基を有するが、重合化によって形成される構造単位を含まない化合物(以下、エポキシ化合物と称す)が挙げられる。このようなエポキシ化合物は、一般的に反応性希釈剤として知られている。エポキシ基含有化合物は、エポキシ樹脂、及びエポキシ化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0088】
エポキシ樹脂は、上述した樹脂組成物で配合されるものと同様のものを用いることができる。
よい。
【0089】
エポキシ化合物の分子量は、100以上であってよく、150以上であってよく、200以上であってよい。分子量が100以上であるエポキシ化合物を使用した場合、適切な硬化条件を設定することで硬化剤と反応する前の揮発を抑制することができる。また、低分子量であることで反応後の架橋点間の距離が短く硬化物が割れやすくなる不具合の発生を低減できる。一方、エポキシ化合物の分子量は、700以下であってよく、500以下であってよく、300以下であってよい。分子量が700以下であるエポキシ化合物を使用した場合、希釈剤として適切な粘度を容易に得ることができる。
【0090】
エポキシ化合物の分子量は、100~700、150~500、又は200~300であってもよい。このような範囲の分子量を有するエポキシ化合物を使用した場合、ペーストの粘度調整が容易となる。エポキシ化合物は、加熱時に揮発する有機溶剤等の成分とは異なり、加熱時に硬化して硬化物中に取り込まれる。そのため、エポキシ化合物を使用した場合、ペーストの粘度調整に寄与し、その一方で硬化物の特性低下を抑制することが可能である。
【0091】
エポキシ化合物は、分子内にエポキシ基を1個、又は2個以上含んでよい。エポキシ化合物は、例えば、n-ブチルグリシジルエーテル、バーサティック酸グリシジルエーテル、スチレンオキサイド、エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、及びトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種であってよい。エポキシ化合物は、遊離Naイオン、及び遊離Clイオンといったイオン性不純物が500ppm以下であってもよい。
【0092】
エポキシ基含有化合物のエポキシ当量は、80g/eq~350g/eq、100g/eq~300g/eq、120g/eq~250g/eqであってよい。エポキシ当量が上記範囲内である場合、エポキシ基含有化合物自体の粘度が低くなるため、ペーストの粘度を調整することが容易となる。
【0093】
エポキシ基含有化合物は、25℃において液状であるエポキシ基含有化合物を含むことが好ましい。本明細書において「25℃において液状である」とは、25℃におけるエポキシ基含有化合物の粘度が、200Pa・s以下であることを意味する。上記粘度は、E型粘度計を用い、温度:25℃、コーンプレートタイプ:SPP、コーン角度:1°34’、回転速度:2.5rpmの条件下で測定した値である。E型粘度計として、例えば、東機産業株式会社製のTV-33型粘度計を使用することができる。
【0094】
25℃において液状のエポキシ基含有化合物を使用した場合、通常、流動性を得るために使用される有機溶剤等の揮発性成分の配合量を大幅に減らすことができる。一実施形態において、有機溶剤を含まないペーストを構成することもできる。また、ペーストとして適切な流動性を確保しながら、磁性粉の含有量を容易に高めることができる。これらの観点から、エポキシ基含有化合物の粘度は、100Pa・s以下、50Pa・s以下、10Pa・s以下であってよい。
【0095】
上記エポキシ基含有化合物のなかでもエポキシ化合物の粘度は、ペースト粘度を調整する観点から、液状エポキシ樹脂の粘度よりも低くてもよい。エポキシ化合物の粘度は、1Pa・s以下、0.5Pa・s以下、0.1Pa・s以下であってよい。
【0096】
25℃において液状のエポキシ基含有化合物は、25℃において液状のエポキシ樹脂、及び25℃において液状のエポキシ化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含んでよい。25℃において液状のエポキシ樹脂の含有量は、エポキシ基含有化合物の全質量を基準として、50質量%以上、70質量%以上、90質量%以上、又は100質量%であってもよい。
【0097】
25℃において液状のエポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びアミノグリシジルエーテル型エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の液状エポキシ樹脂を含んでよい。
【0098】
25℃において液状のエポキシ基含有化合物は、市販品として入手することもできる。例えば、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂として、新日鐵化学株式会社から販売されている。例えば、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂として、製品名「YDF-8170C」(エポキシ当量165、粘度1,000~1,500mPa・s)を用いることができる。エポキシ化合物として、株式会社ADEKA製のアデカグリシロール(製品名)のシリーズが挙げられる。例えば、製品名「アデカグリシロールED-503G」(エポキシ当量135、粘度15mPa・s)を用いることができる。
【0099】
ペーストは、上記エポキシ基含有化合物に加えて、他の樹脂をさらに含んでもよい。他の樹脂は、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂を除く)及び熱可塑性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含んでよい。熱硬化性樹脂は、例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、及びポリアミドイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。エポキシ基含有化合物に加えてフェノール樹脂を使用した場合、フェノール樹脂は、エポキシ基含有化合物の硬化剤として機能することもできる。
【0100】
熱可塑性樹脂は、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、及びポリエチレンテレフタレートからなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。樹脂成分は、エポキシ基含有化合物に加えて、さらにシリコーン樹脂を含んでもよい。
【0101】
ペーストが、エポキシ基含有化合物以外の樹脂を含む場合、その他の樹脂の含有量は、エポキシ基含有化合物による効果を低減させない範囲で調整することが好ましい。例えば、その他の樹脂の含有量は、ペースト中の樹脂の全質量を基準として、50質量%以下、30質量%以下、又は10質量%以下であってよい。エポキシ基含有化合物とその他の樹脂との混合物の粘度が、25℃において50Pa・s以下となる範囲で、配合量を調整することができる。上記粘度は、E型粘度計を用いて、温度:25℃、コーンプレートタイプ:SPP、コーン角度:1°34’、回転速度:2.5rpmの条件下で測定した値である。E型粘度計として、例えば、東機産業株式会社製のTV-33型粘度計を使用することができる。
【0102】
硬化剤としては、ペーストに適度な粘性を付与し、かつエポキシ基含有化合物のエポキシ基と反応し硬化物を形成することができる化合物を用いることができる。硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤として一般的に使用される周知の硬化剤を用いることができる。硬化剤として、例えば、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、及びアミン系硬化剤が挙げられる。
【0103】
硬化剤は、低温から室温の温度範囲でエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤と、加熱に伴ってエポキシ樹脂を硬化させる加熱硬化型硬化剤とに分類される。低温から室温の温度範囲でエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤としては、例えば、脂肪族ポリアミン、ポリアミノアミド、及びポリメルカプタンが挙げられる。加熱硬化型硬化剤としては、例えば、芳香族ポリアミン、酸無水物、フェノールノボラック樹脂、及びジシアンジアミド(DICY)が挙げられる。低温から室温の温度範囲でエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤を用いた場合、エポキシ樹脂の硬化物のガラス転移点は低く、エポキシ樹脂の硬化物は軟らかい傾向がある。その結果、ペーストから形成された絶縁磁性層も軟らかくなる傾向がある。絶縁磁性層の耐熱性及び機械的強度を向上させる観点から、硬化剤は、加熱硬化型硬化剤を含むことが好ましい。
【0104】
加熱硬化型硬化剤のなかでも、ペーストの低粘度化の観点から、25℃において液状の硬化剤を使用することができる。液状の硬化剤としては、例えば、脂肪族ポリアミン、ポリメルカプタン、芳香族ポリアミン、及び酸無水物、及びイミダゾール系硬化剤からなる群から選択される少なくとも1種を使用することができる。ペーストの粘度上昇を抑えることができれば、25℃において固形の硬化剤を使用してもよく、液状の硬化剤と固形の硬化剤とを併用してもよい。固形の硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド、三級アミン、イミダゾール系硬化剤、及びイミダゾリン系硬化剤を使用することができる。例示した固形の硬化剤は、多官能であるか、又は触媒的に作用するため、少量でも十分に機能することができる。
【0105】
硬化剤は、アミン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、及びイミダゾリン系硬化剤からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。硬化剤は、少なくともアミン系硬化剤を含むことができる。アミン系硬化剤(より具体的には第3級アミン)、イミダゾール系硬化剤、及びイミダゾリン系硬化剤は、他の硬化剤との組合せにおいて硬化促進剤として使用することもできる。
【0106】
アミン系硬化剤は、分子内に少なくとも2つのアミノ基を有する化合物であってよい。アミン系硬化剤は、脂肪族アミン、及び芳香族アミンからなる群から選択される少なくとも1種を含む。脂肪族アミン化合物としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、n-プロピルアミン、2-ヒドロキシエチルアミノブロピルアミン、シクロへキシルアミン、4,4’-ジアミノ-ジシクロへキシルメタンが挙げられる。芳香族アミン化合物としては、例えば、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2-メチルアニリン、下式(1)で表されるアミン化合物、下式(2)で表されるアミン化合物が挙げられる。
【化1】

【化2】
【0107】
イミダゾール系硬化剤は、イミダゾール骨格を有する化合物であり、分子内の水素原子を置換基で置換したイミダゾール系化合物であってよい。イミダゾール系硬化剤は、アルキル基置換イミダゾール等のイミダゾール骨格を有する化合物であってよい。イミダゾール系硬化剤として、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、及び2-イソプロピルイミダゾールが挙げられる。イミダゾール系硬化剤は、四国化成工業株式会社製の「キュアゾール2E4MZ」(2-エチル-4-メチルイミダゾール)などの市販品を使用することができる。
【0108】
イミダゾリン系硬化剤は、イミダゾリン骨格を有する化合物であり、分子内の水素原子を置換基で置換したイミダゾリン系化合物であってよい。イミダゾリン系硬化剤は、アルキル基置換イミダゾリン等のイミダゾリン骨格を有する化合物であってよい。イミダゾリン系硬化剤として、例えば、イミダゾリン、2-メチルイミダゾリン、及び2-エチルイミダゾリンが挙げられる。
【0109】
25℃で液状のエポキシ樹脂との適合性及び保存安定性の観点から、硬化剤は芳香族アミンを含んでいてもよい。芳香族アミンの芳香環は、アミノ基以外の置換基を有していてもよい。例えば、炭素数1~5のアルキル基を有していてもよく、炭素数1又は3のアルキル基を有していてもよい。芳香族アミンにおける芳香環の数は、1つでも2つ以上であってもよい。芳香環の数が2以上である場合、芳香環同士は単結合で結合していても、アルキレン基等の連結基を介して結合していてもよい。
【0110】
ペーストの粘度の観点から、硬化剤は液状の芳香族アミンを含むことが好ましい。例えば、上記式(1)で表される化合物及び上記式(2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を使用することができる。
【0111】
硬化剤として使用できる液状の芳香族アミンは、市販品として入手することもできる。例えば、三菱ケミカル株式会社製の製品名「グレード:jERキュアWA」、日本化薬株式会社製の製品名「カヤハードAA」が挙げられる。
【0112】
ペーストにおける硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂等のエポキシ基含有化合物のエポキシ基の当量数と、硬化剤における活性基の当量数との比率を考慮して設定することができる。例えば、エポキシ基含有化合物のエポキシ基1当量に対する硬化剤の比率は、0.5~1.5当量であってよく、0.9~1.4当量であってよく、1.0~1.2当量であってよい。
【0113】
硬化剤における活性基の上記比率が0.5当量以上である場合、加熱硬化後のエポキシ樹脂の単位重量当たりのOH量が少なくなり、エポキシ樹脂の硬化速度が低下することを抑制できる。また、得られる硬化物のガラス転移温度の低下、及び硬化物の弾性率の低下を抑制できる。さらに、バインダ樹脂中の未反応の樹脂成分よって硬化物の絶縁信頼性が低下することを抑制できる。一方、硬化剤中の活性基の比率が1.5当量以下である場合、ペーストから形成される加熱硬化後の絶縁磁性層の機械的強度の低下を抑制できる。また、未反応の硬化剤によって硬化物の絶縁性が低下することを抑制できる。
【0114】
ペーストは、必要に応じて、さらに硬化促進剤を含んでよい。ペーストは、磁性粉と、エポキシ基含有化合物と、硬化剤と、硬化促進剤とを含んでよい。他の実施形態において、ペーストは、上記成分に加えて、例えば、カップリング剤及び難燃剤等の添加剤をさらに含んでもよい。
【0115】
硬化促進剤は、エポキシ樹脂と硬化剤との硬化反応を促進できる化合物であれば限定されない。硬化促進剤として、例えば、第3級アミン、イミダゾール系硬化促進剤、イミダゾリン系硬化促進剤、及びリン化合物が挙げられる。イミダゾール系硬化促進剤及びイミダゾリン系硬化促進剤として、イミダゾール系硬化剤及びイミダゾリン系硬化剤として先に例示した化合物を使用してもよい。液状の硬化剤のなかでも、液状の酸無水物を使用した場合は、硬化促進剤を併用することができる。ペーストは、1種又は2種以上の硬化促進剤を含んでよい。硬化促進剤を使用した場合、ペーストから形成された絶縁磁性層の機械的強度を向上させ、またペーストの硬化温度を容易に低下させることができる。
【0116】
硬化促進剤の配合量は、硬化促進効果が得られる量であればよく、特に限定されない。ただし、ペーストの吸湿時の硬化性及び流動性を改善する観点からは、硬化促進剤の配合量は、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計100質量部に対して、0.001質量部以上であってよい。上記硬化促進剤の配合量は、0.01質量部以上であってよく、0.1質量部以上であってよい。一方、上記硬化促進剤の配合量は、5質量部以下であってよく、4質量部以下であってよく、3質量部以下であってよい。硬化促進剤の配合量を0.001質量部以上にした場合、十分な硬化促進効果を容易に得ることができる。硬化促進剤の配合量が5質量部以下である場合、ペーストにおいて優れた保存安定性を容易に得ることができる。
【0117】
カップリング剤を使用した場合、ペースト中の磁性粉の分散性の向上、及びペースト粘度の制御が容易となる。また、バインダ樹脂と、磁性粉との密着性の向上が容易となる。さらに、ペーストから形成される絶縁磁性層の導体配線に対する密着性、可撓性、機械的強度の向上が容易となる。カップリング剤は、例えば、シラン系化合物(シランカップリング剤)、チタン系化合物、アルミニウム化合物(アルミニウムキレート類)、及びアルミニウム/ジルコニウム系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。シランカップリング剤は、例えば、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、酸無水物系シラン及びビニルシランからなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。また、シランカップリング剤は、アミノフェニル系のシランカップリング剤であってもよい。ペーストは、上記カップリング剤の少なくとも1種を含んでよく、上記2種以上のカップリング剤を含んでもよい。
【0118】
ペーストの環境安全性、リサイクル性、成形加工性及び低コストのために、ペーストは難燃剤を含んでよい。難燃剤は、例えば、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、水和金属化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤、窒素含有化合物、ヒンダードアミン化合物、有機金属化合物及び芳香族エンジニアリングプラスチックからなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。ペーストは、上記で例示した難燃剤の1種を含んでも、又は2種以上を含んでもよい。
【0119】
ペーストは、必要に応じて有機溶剤を含んでもよい。有機溶剤は、特に限定されない。例えば、バインダ樹脂を溶解可能な有機溶剤を使用することができる。有機溶剤は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ベンゼン、トルエン、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、シクロヘキサノン、及びキシレンからなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。作業性の観点から、有機溶剤は、常温(25℃)で液体であってもよい。作業性の観点から、有機溶剤の沸点は、50℃以上、160℃以下であってもよい。
【0120】
ペーストが有機溶剤を含む場合、その含有量は、ペーストの全質量を基準として、5質量%以下、3質量%以下、又は1質量%以下であってもよい。ペーストは、実質的に有機溶剤を含まないものであってもよい。本明細書おいて「実質的に含まない」とは、ペーストに対して有機溶剤を意図的に添加していないことを意味する。そのため、ペーストは、例えば、樹脂の製造時に使用され、樹脂中に残存した有機溶剤を含んでいてもよい。
【0121】
ペーストの粘度は、1Pa・s以上、10Pa・s以上、100Pa・s以上であってよい。1Pa・s以上の粘度に調整することで、塗布後の液ダレを抑制し、印刷後にパターン形状が崩れることを容易に防止することができる。また、ペースト中の磁性粉の沈降を抑止し、ペースト撹拌後の時間経過による塗布性の低下を容易に改善することができる。一方、ペーストの粘度は、600Pa・s以下、400Pa・s以下、200Pa・s以下であってよい。粘度を600Pa・s以下に調整することで、ペーストに流動性が生じ、良好な塗布性を容易に得ることができる。
【0122】
ペーストをスクリーン印刷に適用する場合、ペーストの粘度は、10Pa・s~400Pa・s、50Pa・s~300Pa・s、又は100Pa・s~250Pa・sであってよい。粘度を上記範囲に調整した場合、スクリーン印刷においては、版の開口部をペーストが透過しなくなる不具合の発生を抑制することができる。ペーストの粘度は、エポキシ基含有化合物の構造及び特性、硬化剤の構造及び特性、並びにこれらの組合せ及び配合比、さらに硬化促進剤及びカップリング剤等の添加剤の構造及び配合比等によって自在に調整することができる。ペーストは、粘度調整剤、チキソ性付与剤、及び分散安定剤等の添加剤を含んでもよい。
【0123】
<配線基板及びその製造方法>
配線基板は、基板と、該基板上に設けられた導体配線と、該導体配線の周囲の少なくとも一部を被覆し、磁性材を含む絶縁体からなる絶縁磁性層と、を備える。以下、この配線基板の製造方法について説明する。
【0124】
本実施形態の配線基板の製造方法は、基板上に、絶縁材料層を形成する工程(I)と、絶縁材料層に、基板とは反対側に開口する開口部を形成する工程(II)と、少なくとも開口部の内側面上に、絶縁磁性層を形成する工程(III)と、絶縁磁性層上に、導体配線を形成する工程(IV)と、を備える。
【0125】
本実施形態の配線基板の製造方法は、上記工程(III)が、開口部の内側面上及び絶縁材料層の開口部以外の表面上に絶縁磁性層を形成する工程であり、上記工程(IV)が、絶縁磁性層上に導体層を形成した積層体を作製する工程と、積層体の基板とは反対側の一部を除去することにより導体配線を形成する工程と、を含んでいてもよい。
【0126】
(第一実施形態)
図1及び図2は、配線基板の製造方法の第一実施形態を説明するための模式断面図である。第一実施形態の配線基板の製造方法は、基板10上に、絶縁材料層2を形成する工程(I)と、絶縁材料層2に、基板10に通じる開口部H1を形成する工程(II-1)と、開口部H1における基板10の表面上及び絶縁材料層2aの開口部を含む表面上に、絶縁磁性層30を形成する工程(III-1)と、絶縁磁性層30上に、導体配線20を形成する工程(IV)と、を備える。
【0127】
第一実施形態においては、工程(IV)が、絶縁磁性層30上に導体層6を形成した積層体50を作製する工程(IV-1)と、積層体50の基板10とは反対側の一部を除去する工程(IV-2)とを含むことができる。
【0128】
更に、工程(IV-1)は、絶縁磁性層30の表面上に、めっきシード層4を形成する工程(IV-1a)と、電解めっきにより、少なくとも開口部H1に導電材料を充填する工程(IV-1b)とを含んでいてもよい。
【0129】
[工程(I)]
工程(I)では、基板10上に絶縁材料層2を形成する(図1の(a)を参照)。基板10としては、例えば、公知のプリプレグを数枚張り合わせ、加圧加熱処理を行って得られるものが使用できる。かかるプリプレグとしては、調製された樹脂ワニスをガラス繊維、有機繊維等の繊維基材(強化繊維)に含浸させて公知の方法により作製されたものを用いることができ、例えば、ガラスエポキシ複合基板が挙げられる。また、プリプレグを貼り合わせるコア材として、金属基板又はセラミック基板を用いてもよい。更に、基板10としては、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、液晶ポリマー(LCP)等の低誘電樹脂材料を用いた基板など、公知の低誘電基板が使用できる。
【0130】
基板10を構成する樹脂材料としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などの樹脂が挙げられる。樹脂材料は、単独使用又は2種以上の併用であってもよい。
【0131】
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱硬化性フッ化ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂、フッ素樹脂、液晶ポリマーなどが挙げられる。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の含フッ素オレフィンの重合体が挙げられる。
【0132】
熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、マレイミド樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱可塑性フッ化ポリイミド樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、セルロース樹脂、液晶ポリマー、アイオノマーなどが挙げられる。
【0133】
基板10は、単層であってもよく、多層であってもよい。基板は、表面に接着層を有していてもよい。
【0134】
基板10の厚さは、10μm~1mmであってもよい。
【0135】
工程(I)では、後述の工程(II-1)又は工程(II-2)においてフォトリソグラフィープロセスにより微細な開口部H1又は開口部H2を容易に形成できる点から、絶縁材料層2を構成する材料として感光性樹脂材料を採用することが好ましい。
【0136】
感光性絶縁材料としては、液状又はフィルム状のものが挙げられ、膜厚平坦性とコストの観点からフィルム状の感光性絶縁材料が好ましい。また、微細な配線を形成できる点で、感光性絶縁材料は平均粒径500nm以下(より好ましくは50~200nm)のフィラ(充填材)を含有することができる。感光性絶縁材料のフィラ含有量は、フィラを除く感光性絶縁材料の質量100質量部に対して0~70質量部であってもよく、10~50質量部であってもよい。
【0137】
フィルム状の感光性絶縁材料を使用する場合、そのラミネート工程はなるべく低温で実施することが好ましく、取り扱い性とラミネート後の反りを小さくする観点から、40℃~120℃でラミネート可能な感光性絶縁フィルムを採用することができる。
【0138】
絶縁材料層2の硬化後の熱膨張係数は、反り抑制の観点から80×10-6/K以下であってもよく、高信頼性が得られる点で70×10-6/K以下であってもよい。また、絶縁材料の応力緩和性、高精細なパターンが得られる点で20×10-6/K以上であってもよい。
【0139】
絶縁材料層2の厚さは、形成する導体配線の厚みに合わせて適宜設定することができ、例えば、30μm以下、20μm以下、10μm以下、5μm以下、又は3μm以下であってもよい。絶縁材料層2の厚さは、絶縁信頼性の観点から1μm以上であってもよい。
【0140】
[工程(II-1)]
工程(II-1)では、絶縁材料層2に、基板10に通じる開口部H1を形成する。これにより基板10上に、開口部H1を含む絶縁材料層2aが形成される(図1の(b)を参照)。なお、開口部H1とは、絶縁材料層2の表面に対して、絶縁材料層2の厚さ方向に開口し、基板10の表面にまで至る凹んだ部位をいい、この開口部位の内壁(側面及び底面等)を含む。開口部H1は、溝部ということもできる。開口部H1は、図1の(b)に示すように、基板10の表面にまで至るように形成されていること、すなわち、絶縁材料層2aからなる側面と、基板10の表面からなる底面とによって構成されていることが好ましい。開口部H1の開口形状は、形成する導体配線のパターンに合わせて設定することができる。
【0141】
開口部H1の形成方法は、レーザアブレーション、フォトリソグラフィー、インプリント等が挙げられる。これらの方法のうち、微細化とコストの観点から、工程(I)において感光性樹脂材料からなる絶縁材料層2を形成し、フォトリソグラフィープロセス(露光及び現像)によって開口部H1を形成することが好ましい。感光性樹脂材料の露光方法としては、通常の投影露光方式、コンタクト露光方式、直描露光方式等を用いることができ、現像方法としては炭酸ナトリウム又はTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)のアルカリ水溶液を用いることが好ましい。絶縁材料層2に開口部H1を形成した後、絶縁材料を更に加熱硬化させてもよい。加熱温度は100℃~200℃、加熱時間は30分~3時間の間で実施される。また、開口された面に絶縁材料層2の残渣がある場合は、酸素プラズマ処理、アルゴンプラズマ処理、窒素プラズマ処理によって残渣を除去することができる。
【0142】
[工程(III-1)]
工程(III-1)では、開口部H1における基板10の表面上及び絶縁材料層2aの開口部を含む表面上に、絶縁磁性層30を形成する。絶縁磁性層30は、磁性材を含む絶縁体からなる。磁性材は、絶縁磁性層30中で分散されていてよい。なお、工程(III-1)において、開口部H1における基板10の表面上及び絶縁材料層2aの側面上が、開口部H1の内側面上である。
【0143】
絶縁磁性層30は、上述した絶縁磁性層形成用組成物によって形成することができる。具体的には、例えば、開口部H1における基板10の表面上及び絶縁材料層2aの開口部を含む表面上に、磁性材を含む絶縁磁性層形成用組成物を塗布すること、又は、磁性材を含む絶縁磁性層形成用組成物からなるシート(例えばフィルム状のシート)をラミネートすることなどによって絶縁磁性層形成用組成物からなる層を形成し、当該層を硬化させる方法が挙げられる。
【0144】
絶縁磁性層形成用組成物の塗布方法は、特に制限はないが、スクリーン印刷、転写印刷、オフセット印刷、ジェットプリンティング法、ディスペンサー、ジェットディスペンサ、ニードルディスペンサ、カンマコータ、スリットコータ、ダイコータ、グラビアコータ、スリットコート、凸版印刷、凹版印刷、グラビア印刷、ステンシル印刷、ソフトリソグラフ、バーコート、アプリケータ、粒子堆積法、スプレーコータ、スピンコータ、ディップコータ等によって塗布する方法が挙げられる。
【0145】
絶縁磁性層形成用組成物からなるシートは、例えば、上記塗布方法で、支持フィルム上に絶縁磁性層形成用組成物を塗布することで形成することができる。絶縁磁性層形成用組成物からなるシートのラミネート方法は、特に制限はないが、ロールラミネータ、ダイヤフラム式ラミネータ、真空ロールラミネータ、真空ダイヤフラム式ラミネータ等を採用することができる。
【0146】
絶縁磁性層形成用組成物の硬化は、例えば加熱により行うことができる。絶縁磁性層形成用組成物の硬化は、絶縁磁性層形成用組成物の乾燥による硬化であってよく、絶縁磁性層形成用組成物が熱硬化性樹脂を含む場合は、絶縁磁性層形成用組成物の熱硬化であってもよい。加熱温度及び加熱時間は、絶縁磁性層形成用組成物に含まれる溶剤の種類、熱硬化性樹脂の種類等に応じて適宜調整してよい。
【0147】
信号伝搬のしやすさの観点から、絶縁磁性層30の被覆厚さは、0.1~100μmであってもよく、0.2~30μmであってもよく、0.5~10μmであってもよい。
【0148】
本明細書において、絶縁磁性層30の被覆厚さとは、絶縁磁性層30が導体配線20と離れて設けられている場合は下記(i)、絶縁磁性層30が導体配線20と接するように設けられている場合は下記(ii)を意味する。
(i)絶縁磁性層30の導体配線20側の表面における点Aと、この点Aを通り、点Aから導体配線20までを最短距離で結ぶ線を延ばしたときに、絶縁磁性層30の導体配線20側とは反対側の表面と交差する点B、との距離。
(ii)絶縁磁性層30と導体配線20との界面に直交する方向における厚さ。
【0149】
伝送損失を抑制する観点から、絶縁磁性層30の比透磁率は、2~1000であってもよく、10~1000であってもよく、20~1000であってもよい。
【0150】
伝送損失を抑制する観点から、絶縁磁性層30の比誘電率は、1~30であってもよく、1~20であってもよく、1~10であってもよい。
【0151】
[工程(IV-1)]
工程(IV-1)では、工程(IV-1a)及び工程(IV-1b)によって、絶縁磁性層30上に導体層6を形成した積層体50を作製することができる(図2の(b)を参照)。
【0152】
[工程(IV-1a)]
工程(IV-1a)では、絶縁磁性層30の表面上に、めっきシード層4を形成する(図2の(a)を参照)。このめっきシード層4は、工程(IV-1b)で実施する電解めっきのための給電層となる。めっきシード層4は、例えば、無電解めっき又はスパッタリングにより形成することができる。めっきシード層4を構成する導体(例えば金属)は、導体配線20を構成する導体(例えば金属)と同じ導体であってよい。めっきシード層4の厚さは、例えば、0.001~5μmであってよい。
【0153】
[工程(IV-1b)]
工程(IV-1b)では、工程(IV-1a)に続いて、電解めっきにより、少なくとも開口部H1に導電材料を充填する。
【0154】
具体的には、めっきシード層4を給電層として、例えば、電解銅めっきを実施することができる。これにより、開口部H1に導電材料(例えば、銅含有材料)が充填され、更に絶縁材料層2aの上面を被覆するように導体層6が形成される(図2の(b)を参照)。
【0155】
第一実施形態においては、めっきシード層を設ける前に絶縁磁性層30の表面を改質する工程(PreIV-1a)が設けられていてもよい。
【0156】
[工程(PreIV-1a)]
工程(PreIV-1a)では、絶縁磁性層30表面を改質することができる。絶縁磁性層30の表面を改質によってナノレベルに粗化することで、絶縁磁性層30とめっきシード層4との優れた密着性と、その後に形成される導体配線の優れた形成性とを両立することができる。改質の方法としては、紫外線照射、電子線照射、オゾン水処理、コロナ放電処理、プラズマ処理等の方法が挙げられる。これらの方法のうち、真空設備を必要とせず、廃液等が発生しない紫外線照射が好ましい。改質に用いる紫外線照射のランプとして、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、真空紫外エキシマランプ等が挙げられるが、活性化効果の大きい、低圧水銀ランプあるいはエキシマランプが好ましい。
【0157】
改質は、大気中で行ってもよく、酸素雰囲気中で行ってもよい。改質の温度条件としては、25℃~100℃、より反応性を早める観点から、40℃~100℃、又は60℃~100℃であってもよい。改質後の絶縁磁性層30表面の純水との接触角は、40度以下、20度以下、又は10度以下であってもよい。また、改質処理は複数回繰り返してもよい。
【0158】
工程(IV-1)において、例えば、無電解めっき又はスパッタリングにより、絶縁磁性層上に導体層を形成する場合には、めっきシード層4を形成することを省略することができる。
【0159】
[工程(IV-2)]
工程(IV-2)では、積層体50の基板10とは反対側の一部を除去する。これにより、絶縁磁性層30上に、導体配線20が形成される(図2の(c)を参照)。例えば、絶縁材料層、絶縁磁性層及び導体層が、基板とは反対側の面で平坦化されるように、めっきシード層及び導体層の一部、絶縁磁性層の一部、絶縁材料層の一部を除去することができる。
【0160】
積層体の基板とは反対側の一部を除去する方法としては、積層体の基板とは反対側の面を研削又は研磨する方法が挙げられる。研削方法及び研磨方法は特に限定されないが、例えば、フライカット法による研削、CMP(Chemical Mechanical Polishing)による研磨、エッチング等であってよい。これらを組み合わせて適用することもできる。
【0161】
CMPは、例えば、砥粒と液状媒体とを含有するスラリを用いる公知の方法を使用することができる。フライカット法では、ダイヤモンドバイトによる研削装置を使用することができ、例えば、300mmウェハ対応のオートマチックサーフェースプレーナ(株式会社ディスコ製、商品名「DAS8930」)を用いることができる。
【0162】
以上の操作により、図2の(c)に示す配線基板100が得られる。配線基板100は、基板10、並びに、基板10上に設けられた、基板10側に位置する底面S2と、基板10とは反対側に位置する上面S1と、底面S2と上面S1との間に位置する一対の側面S3a、S3bと、を有する導体配線20、及び、導体配線20の底面S2及び一対の側面S3a、S3bを被覆する絶縁磁性層30、を備える。
【0163】
(第二実施形態)
図3及び図4は、配線基板の製造方法の第二実施形態を説明するための模式断面図である。第二実施形態の配線基板の製造方法は、基板10上に、絶縁材料層2を形成する工程(I)と、絶縁材料層2に、基板10とは反対側に開口し、底面を有する開口部H2を形成する工程(II-2)と、開口部H2の内側面上及び絶縁材料層2cの開口部以外の表面上に、絶縁磁性層30を形成する工程(III-2)と、絶縁磁性層30上に、導体配線20を形成する工程(IV)と、を備える。
【0164】
第二実施形態においては、工程(IV)が、絶縁磁性層30上に導体層6を形成した積層体52を作製する工程(IV-3)と、積層体52の基板とは反対側の面の一部を除去する工程(IV-4)とを含むことができる。
【0165】
更に、工程(IV-3)は、絶縁磁性層30の表面上に、めっきシード層4を形成する工程(IV-3a)と、電解めっきにより、少なくとも開口部H2に導電材料を充填する工程(IV-3b)とを含んでいてもよい。
【0166】
第二実施形態における工程(I)は、第一実施形態における工程(I)と同様である(図3の(a)を参照)。
【0167】
[工程(II-2)]
工程(II-2)では、絶縁材料層2に、基板10とは反対側に開口し、底面を有する開口部H2を形成する。これにより基板10上に、開口部H2を含む絶縁材料層2cが形成される(図3の(b)を参照)。なお、開口部H2とは、絶縁材料層2の表面に対して、絶縁材料層2の厚さ方向に開口するとともに底面を有する凹んだ部位をいい、この開口部位の内壁(側面及び底面等)を含む。開口部H2は、溝部ということもできる。開口部H2の開口形状は、形成する導体配線のパターンに合わせて設定することができる。
【0168】
開口部H2の形成方法は、レーザアブレーション、フォトリソグラフィー、インプリント等が挙げられる。
【0169】
[工程(III-2)]
工程(III-2)では、開口部H2の内側面上及び絶縁材料層2cの開口部以外の表面上に、絶縁磁性層30を形成する(図3の(c)を参照)。絶縁磁性層30の形成は、工程(III-1)と同様に行うことができる。
【0170】
[工程(IV-3)]
工程(IV-3)では、工程(IV-3a)及び工程(IV-3b)によって、絶縁磁性層30上に導体層6を形成した積層体を作製することができる(図4の(b)を参照)。
【0171】
[工程(IV-3a)]
工程(IV-3a)では、絶縁磁性層30の表面上に、めっきシード層4を形成する(図4の(a)を参照)。めっきシード層4の形成は、工程(IV-1a)と同様して行うことができる。
【0172】
[工程(IV-3b)]
工程(IV-3b)では、工程(IV-3a)に続いて、電解めっきにより、少なくとも開口部H2に導電材料を充填する。具体的には、めっきシード層4を給電層として、例えば、電解銅めっきを実施することができる。これにより、開口部H2に導電材料(例えば、銅含有材料)が充填され、更に絶縁材料層2cの上面を被覆するように導体層6が形成される(図4の(b)を参照)。
【0173】
第二実施形態においては、めっきシード層を設ける前に絶縁磁性層30の表面を改質する工程(PreIV-3a)が設けられていてもよい。絶縁磁性層30の表面の改質は、工程(PreIV-1a)と同様して行うことができる。
【0174】
工程(IV-3)において、例えば、無電解めっき又はスパッタリングにより、絶縁磁性層上に導体層を形成する場合には、めっきシード層4を形成することを省略することができる。
【0175】
[工程(IV-4)]
工程(IV-4)では、積層体52の基板10とは反対側の一部を除去する。これにより、絶縁磁性層30上に、導体配線20が形成される(図4の(c)を参照)。例えば、絶縁材料層、絶縁磁性層及び導体層が、基板とは反対側の面で平坦化されるように、めっきシード層及び導体層の一部、絶縁磁性層の一部、絶縁材料層の一部を除去することができる。
【0176】
積層体の基板とは反対側の一部を除去する方法については、工程(IV-2)と同様にすることができる。
【0177】
以上の操作により、図4の(c)に示す配線基板110が得られる。配線基板110は、基板10、並びに、基板10上に設けられた、基板10側に位置する底面S2と、基板10とは反対側に位置する上面S1と、底面S2と上面S1との間に位置する一対の側面S3a、S3bと、を有する導体配線20、及び、導体配線20の底面S2及び一対の側面S3a、S3bを被覆する絶縁磁性層30、を備える。
【実施例
【0178】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0179】
<絶縁磁性層形成用組成物の調製>
表1に示す組成で配合された軟膏容器内の全原料を、自公転撹拌機(シンキー株式会社製、「ARE-500」)で攪拌・混合することにより、バインダ樹脂ワニスIを得た。なお、攪拌・混合工程では、先ず、自公転撹拌機の公転速度を2000rpmに維持し、300秒攪拌・混合した。次に、自公転撹拌機の公転を止めて、薬さじを用いて容器内の混合物を撹拌した後、再び自公転撹拌機の公転速度を2000rpmに維持し、120秒攪拌・混合した。
【0180】
【表1】
【0181】
表1に示す各成分の詳細を以下に示す。
・YDF-8170C:日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製の商品名、ビスフェノールF型エポキシ樹脂
・jERキュアWA(「jERキュア」は登録商標):三菱ケミカル株式会社製の商品名、アミン系エポキシ樹脂硬化剤
・2E4MZ:四国化成株式会社製の硬化促進剤、2-エチル-4-メチルイミダゾール
・テイサンレジン HTR-860-P3:ナガセケムテックス株式会社製の商品名、アクリル樹脂(シクロヘキサノン溶液)
・KBM-573:信越シリコーン株式会社製の商品名、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン
【0182】
次に、バインダ樹脂ワニスIを8.5質量部と、磁性粉(SAP-2D(C):新東工業製)を73質量部とを計り取り、これらを50mlの軟膏容器に容れた。軟膏容器内のバインダ樹脂ワニスI及び磁性粉を、自公転撹拌機を用いて公転速度2000rpmで45秒撹拌した。次に、自公転撹拌機の公転を止めて、薬さじを用いて容器内の混合物を撹拌後、自公転撹拌機の公転速度2000rpmで45秒2回撹拌した。これにより、ペースト状の絶縁磁性層形成用組成物を得た。
【0183】
<絶縁材料層形成用の感光性絶縁フィルムの作製>
絶縁材料層を形成するために用いる感光性絶縁フィルムを、以下の手順で作製した。
【0184】
カルボキシル基とエチレン性不飽和基とを含有する光反応性樹脂として、酸変性したクレゾールノボラック型エポキシアクリレート(CCR-1219H、日本化薬株式会社製、商品名)50質量部と、光重合開始剤として、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(ダロキュアTPO、BASFジャパン株式会社製、商品名)5質量部及びエタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)(イルガキュアOXE-02、BASFジャパン株式会社製、商品名)5質量部と、熱硬化剤成分として、ビフェノール型エポキシ樹脂(YX-4000、三菱ケミカル株式会社製、商品名)10質量部と、無機フィラーとして、シリカ(平均粒径:50nm、ビニルシランでシランカップリング処理したもの)と、を混合して感光性樹脂組成物を調製した。なお、無機フィラーは、樹脂分100体積部に対し、10体積部になるように配合した。また、無機フィラーは、動的光散乱式ナノトラック粒度分布計「UPA-EX150」(日機装株式会社製)及びレーザー回折散乱式マイクロトラック粒度分布計「MT-3100」(日機装株式会社製)を用いて粒度分布を測定し、最大粒径が1μm以下となっていることを確認したものを用いた。
【0185】
上記で得られた感光性樹脂組成物の溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(G2-16、帝人株式会社製、商品名、厚さ:16μm)の表面上に塗布した。これを、熱風対流式乾燥機を用いて100℃で約10分間乾燥することにより、感光性絶縁フィルムを得た。感光性絶縁フィルムの厚さは50μmであった。
【0186】
<配線基板の作製>
(実施例1)
基板(ガラスクロス入り基板(サイズ:200mm角、厚さ1.5mm))上に、感光性絶縁フィルムを載置した。次いで、プレス式真空ラミネータ(MVLP-500、株式会社名機製作所製)を用いてプレスした。プレス条件は、プレス熱板温度80℃、真空引き時間20秒、ラミネートプレス時間60秒、気圧4kPa以下、圧着圧力0.4MPaとした。これにより、基板上に、厚さ20μmの絶縁材料層を設けた。
【0187】
次に、絶縁材料層に対して、下記の露光処理及び現像処理を施すことによって、開口部(深さ:50μm、幅:200μm)を形成した。
露光処理:絶縁材料層の上にパターンを形成したフォトツールを密着させ、i線ステッパー露光機(製品名:S6CK型露光機、レンズ:ASC3(Ck)、株式会社サーマプレシジョン製)を使用して、30mJ/cmのエネルギー量で露光した。
現像処理:露光処理後、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で、45秒間スプレー現像を行い、開口部を設けた。
【0188】
更に、現像処理後の絶縁材料層の表面にマスク露光機(EXM-1201型露光機、株式会社オーク製作所製)を使用して、2000mJ/cmのエネルギー量でポストUV露光した。次いで、クリーンオーブンで170℃、1時間の熱硬化を行った。
【0189】
上記で得られた絶縁磁性層形成用組成物を、開口部の内側面上及び絶縁材料層の開口部以外の表面上に、スプレーコートによって塗布し、乾燥し、硬化した。これにより、絶縁磁性層(厚さ:5μm)を形成した。次いで、絶縁磁性層上に、無電解めっきにより銅からなるめっきシード層(厚さ:0.5μm)を形成した。
【0190】
次に、形成しためっきシード層上に、めっきにより銅からなるめっき層(厚さ:35μm)を形成し、積層体A(基板/絶縁材料層/絶縁磁性層/めっきシード層/導体層(めっき層))を得た。
【0191】
積層体Aの基板とは反対側をフライカット法により研磨して、絶縁材料層の一部、絶縁磁性層の一部、めっきシード層の一部、及び導体層の一部を除去した。これにより、基板と、基板上に設けられた導体配線(厚さ:30μm、幅:190μm)と、導体配線の底面、上面及び一対の側面を被覆する厚さ5μmの絶縁磁性層と、を備える配線基板を得た。こうして、図2の(c)と同様の構成を有する配線基板を得た。
【0192】
(比較例1)
絶縁磁性層を設けなかったこと以外は実施例1と同様にして、配線基板を得た。なお、導体配線の大きさが実施例1と同じになるように、絶縁磁性層の厚さ分小さい開口部(深さ:50μm、幅:190μm)を設けた。
【0193】
<配線基板の伝送損失の評価>
上記で作製した配線基板の伝送損失について、トリプレート線路共振器法により評価した。なお、トリプレート線路共振器法には、ベクトル型ネットワークアナライザー(キーサイト・テクノロジー社製、E8364B)を用いた。測定条件は、ライン幅:0.15mm、ライン長:10mm、特性インピーダンス:約50Ω、周波数:10、30、50GHz、測定温度:25℃とした。比較例1の測定値を基準として、伝送損失が小さくなった場合には〇と評価し、伝送損失が変わらない又は大きくなった場合には×と評価した。
【0194】
【表2】
【符号の説明】
【0195】
2,2a,2b、2c、2d…絶縁材料層、4…めっきシード層、6…導体層、10…基板、20…導体配線、30…絶縁磁性層、50,52…積層体、100,110…配線基板、H1,H2…開口部。
図1
図2
図3
図4