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特許7605103ハイドロクロロフルオロカーボンの製造方法、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法、1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテンの製造方法
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  • 特許-ハイドロクロロフルオロカーボンの製造方法、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法、1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテンの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】ハイドロクロロフルオロカーボンの製造方法、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法、1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/35 20060101AFI20241217BHJP
   C07C 19/10 20060101ALI20241217BHJP
   C07C 17/25 20060101ALI20241217BHJP
   C07C 17/20 20060101ALI20241217BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20241217BHJP
【FI】
C07C17/35
C07C19/10
C07C17/25
C07C17/20
C07B61/00 300
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021516158
(86)(22)【出願日】2020-04-22
(86)【国際出願番号】 JP2020017335
(87)【国際公開番号】W WO2020218336
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2019084194
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】鎌塚 達也
(72)【発明者】
【氏名】竹内 優
【審査官】一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/018412(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/039521(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/003896(WO,A1)
【文献】特表2005-536424(JP,A)
【文献】特開平04-089437(JP,A)
【文献】特開2016-079100(JP,A)
【文献】特表2018-526385(JP,A)
【文献】特表平08-504208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 1/00-409/44
C07B 31/00-63/04
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CrおよびAlから選ばれる少なくとも1種の金属元素を有する金属化合物を含む触媒の存在下、炭素数3~8の飽和のハイドロフルオロカーボンと、炭素数1または2の含塩素化合物とを反応させて、炭素数3~8の飽和のハイドロクロロフルオロカーボンを製造することを特徴とする、ハイドロクロロフルオロカーボンの製造方法であって、
前記ハイドロフルオロカーボンが、式(1)で表される化合物であり、
前記ハイドロクロロフルオロカーボンが、式(2)で表される化合物であり、
前記含塩素化合物が、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロトリフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、クロロフルオロメタン、1,1-ジクロロエチレン、1,2-ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、または、テトラクロロエチレンである、製造方法。
式(1) X-L-Y
式(2) X-L-Z
Xは、-CH (3-a) を表す。
Yは、-CH (3-b) を表す。
Zは、-CH Cl (3-b-c) を表す。
Lは、少なくとも一部の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素数が1~6のアルキレン基を表す。
aは、0または1を表す。
bは、1または2を表す。
cは、1または2を表す。
ただし、aが0の場合、bは1または2を表し、aが1の場合、bは2を表す。
また、bが1の場合、cは1または2を表し、bが2の場合、cは1を表す。
【請求項2】
前記金属化合物が、金属酸化物、金属酸化物の部分ハロゲン化物、または、金属ハロゲン化物である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記Lが、一部の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素数が1~3のアルキレン基である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記aが1であり、前記bが2であり、前記cが1である、請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記含塩素化合物が、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、または、テトラクロロエチレンである、請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ハイドロフルオロカーボンと前記含塩素化合物とを気相で反応させる、請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
反応温度が100~450℃である、請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ハイドロフルオロカーボンが1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパンであり、
前記ハイドロクロロフルオロカーボンが3-クロロ-1,1,2,2-テトラフルオロプロパンである、請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
CrおよびAlから選ばれる少なくとも1種の金属元素を有する金属化合物を含む触媒の存在下、1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパンと、炭素数1または2の含塩素化合物とを反応させて、3-クロロ-1,1,2,2-テトラフルオロプロパンを製造し、製造された3-クロロ-1,1,2,2-テトラフルオロプロパンを脱フッ化水素反応させて1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンを製造することを特徴とする、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法であって、
前記含塩素化合物が、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロトリフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、クロロフルオロメタン、1,1-ジクロロエチレン、1,2-ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、または、テトラクロロエチレンである、製造方法。
【請求項10】
前記ハイドロフルオロカーボンが1,1,2,2,3,3,4,4,5-ノナフルオロペンタンであり、
前記ハイドロクロロフルオロカーボンが5-クロロ-1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロペンタンである、請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
CrおよびAlから選ばれる少なくとも1種の金属元素を有する金属化合物を含む触媒の存在下、1,1,2,2,3,3,4,4,5-ノナフルオロペンタンと、炭素数1または2の含塩素化合物とを反応させて、5-クロロ-1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロペンタンを製造し、製造された5-クロロ-1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロペンタンを脱フッ化水素反応させて1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテンを製造することを特徴とする、1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテンの製造方法であって、
前記含塩素化合物が、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロトリフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、クロロフルオロメタン、1,1-ジクロロエチレン、1,2-ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、または、テトラクロロエチレンである、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロクロロフルオロカーボンの製造方法、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法、1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境への影響が小さく、洗浄剤、冷媒、作動流体、噴射剤、熱媒体、発泡剤、溶媒等の各種用途に使用できる化合物としてハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)が注目されている。HCFOのなかでも、不燃性が高く、上記用途に優れる化合物として1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(CF-CF=CClH、HCFO-1224yd)や1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(CFH-CF=CClH、HCFO-1233yd)等の、炭素-炭素二重結合の末端炭素に塩素原子が結合したHCFOが知られている。
なお、本明細書において、ハロゲン化炭化水素については、化合物名の後の括弧内にその化合物の略称を記すが、本明細書では必要に応じて化合物名に代えてその略称を用いる。また、略称として、ハイフン(-)より後ろの数字およびアルファベット小文字部分だけ(例えば、「HCFO-1233yd」においては「1233yd」)を用いる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第1990/008754号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
HCFOを効率的に合成するための原料の一つの候補として、ハイドロクロロフルオロカーボン(以下、「HCFC」とも記す。)が挙げられる。
所定のHCFCを製造する方法として、例えば、特許文献1には、ジフルオロメチレン基を有するHCFCをフッ化水素と反応させて、上記HCFCをフッ素化させる方法が記載されている。しかし、特許文献1に記載の製造方法では、フッ素化反応を制御することは難しく、所定のHCFCを選択的に得ることは困難であり、より高選択率で得られる方法が望まれていた。
このように、HCFCの製造に関しては、より効率的な方法が望まれている。特に、工業的な点から、比較的合成しやすいハイドロフルオロカーボンから、HCFCを高い選択率で製造できることが望ましい。
本発明は、HCFCを高い選択率で製造できる、HCFCの製造方法の提供を課題とする。
また、本発明は、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法、および、1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテンの製造方法の提供も課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0006】
(1) CrおよびAlから選ばれる少なくとも1種の金属元素を有する金属化合物を含む触媒の存在下、炭素数3~8の飽和のハイドロフルオロカーボンと、炭素数1または2の含塩素化合物とを反応させて、炭素数3~8の飽和のハイドロクロロフルオロカーボンを製造することを特徴とする、ハイドロクロロフルオロカーボンの製造方法。
(2) 前記金属化合物が、金属酸化物、金属酸化物の部分ハロゲン化物、または、金属ハロゲン化物である、(1)に記載の製造方法。
(3) 前記ハイドロフルオロカーボンが、後述する式(1)で表される化合物であり、
前記ハイドロクロロフルオロカーボンが、後述する式(2)で表される化合物である、(1)または(2)に記載の製造方法。
(4) Lが、一部の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素数が1~3のアルキレン基である、(1)~(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5) aが1であり、bが2であり、cが1である、(1)~(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6) 前記含塩素化合物が、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、または、テトラクロロエチレンである、(1)~(5)のいずれかに記載の製造方法。
(7) 前記ハイドロフルオロカーボンと前記含塩素化合物とを気相で反応させる、(1)~(6)のいずれかに記載の製造方法。
(8) 反応温度が100~450℃である、(1)~(7)のいずれかに記載の製造方法。
(9) 前記ハイドロフルオロカーボンが1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパンであり、
前記ハイドロクロロフルオロカーボンが3-クロロ-1,1,2,2-テトラフルオロプロパンである、(1)~(8)のいずれかに記載の製造方法。
(10) (9)に記載の方法によって製造される3-クロロ-1,1,2,2-テトラフルオロプロパンを脱フッ化水素反応させて1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンを製造することを特徴とする、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法。
(11) 前記ハイドロフルオロカーボンが1,1,2,2,3,3,4,4,5-ノナフルオロペンタンであり、
前記ハイドロクロロフルオロカーボンが5-クロロ-1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロペンタンである、(1)~(8)のいずれかに記載の製造方法。
(12) (11)に記載の方法によって製造される5-クロロ-1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロペンタンを脱フッ化水素反応させて1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテンを製造することを特徴とする、1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテンの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、HCFCを高い選択率で製造できる、HCFCの製造方法を提供できる。
また、本発明によれば、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法、および、1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテンの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】反応装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のハイドロクロロフルオロカーボンの製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」とも記す。)は、CrおよびAlから選ばれる少なくとも1種の金属元素(以下、「金属A」とも記す。)を有する金属化合物を含む触媒(以下、「触媒X」とも記す。)の存在下、炭素数3~8のハイドロフルオロカーボン(以下、「化合物1」とも記す。)と、炭素数が1または2の含塩素化合物(以下、「Cl化合物」とも記す。)とを反応させて、炭素数3~8のハイドロクロロフルオロカーボン(以下、「化合物2」とも記す。)を製造する方法である。つまり、本発明の製造方法は、触媒の存在下、化合物1とCl化合物とを接触させて、化合物2を製造する方法である。
以下では、まず、本発明の製造方法で用いられる成分について詳述し、その後、製造方法の手順について詳述する。
なお、成分に関する記載としては、先に、化合物1および化合物2について詳述する。
【0010】
化合物1の炭素数は3~8であり、化合物2をより高い選択率で製造できる点から、3~6であることが好ましく、3~5であることがより好ましい。
【0011】
化合物1としては、式(1)で表される化合物が好ましい。
式(1) X-L-Y
Xは、-CH(3-a)を表す。
aは、0または1を表す。
【0012】
Yは、-CH(3-b)を表す。
bは、1または2を表す。
ただし、aが0の場合、bは1または2を表し、aが1の場合、bは2を表す。
つまり、化合物1としては、CF-L-CHF、CF-L-CHF、CHF-L-CHFが挙げられる。
【0013】
Lは、少なくとも一部の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素数が1~6のアルキレン基を表す。なかでも、化合物1の入手性の点から、一部の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素数が1~3のアルキレン基が好ましい。
Lとしては、炭素数が1~3のペルフルオロアルキレン基がより好ましい。
【0014】
化合物2としては、式(2)で表される化合物が好ましい。
式(2) X-L-Z
XおよびLの定義は、式(1)中のXおよびLとそれぞれ同義である。
Zは、-CHCl(3-b-c)を表す。
bは、1または2を表す。
cは、1または2を表す。
ただし、bが1の場合、cは1または2を表し、bが2の場合、cは1を表す。
つまり、Zとしては、-CHClF、-CHCl、-CHClが挙げられる。
【0015】
式(1)および式(2)中の上記a、b、cの関係は、以下の表1のように表される。表1において、「X」「Y」「Z」は、上述した式(1)および式(2)中の「X」「Y」「Z」に対応している。
また、表1中の「X」「Y」「Z」欄は、a、b、cが取り得る数値と、その場合の構造を表している。例えば、「(a=0) CF」とは、aが0である場合、XはCFを表すことを意味している。
【0016】
【表1】
【0017】
本発明の製造方法の好適態様の一つとして、化合物1の末端に位置する炭素原子に結合するフッ素原子を塩素原子に置換できる。その際、両末端のうちのフッ素原子の置換数が少ない末端炭素原子に置換しているフッ素原子を塩素原子に選択的に置換できる。本発明の製造方法においては、式(1)中のXとYとを比較すると、Yのほうがフッ素原子の置換数が少なく、Yの位置において、フッ素原子と塩素原子との置換が進行する。この原理は定かではないが、炭素原子に結合するフッ素原子の数が少ないほど、C-F結合が弱くなるためと推測される。
また、フッ素原子から塩素原子への置換数は、反応条件等を調整することにより制御できる。例えば、表1に示すように、YがCHFである場合、1つのフッ素原子が塩素原子に置換してCHClFが形成されるか、2つのフッ素原子が塩素原子に置換してCHClが形成される。
より具体的には、上述したa、b、cの関係は、上記表1の態様1~4の場合を表している。例えば、「態様4」の場合は、「X」欄および「Y」欄より化合物1がCHF-L-CHFであり、「X」欄および「Z」欄より化合物2がCHF-L-CHClとなることを表している。
つまり、本発明の製造方法においては、a、b、cは以下の4つの態様を取り得る。
(態様1)aが0であり、bが1であり、cが1である。
(態様2)aが0であり、bが1であり、cが2である。
(態様3)aが0であり、bが2であり、cが1である。
(態様4)aが1であり、bが2であり、cが1である。
化合物2の炭素数は3~8であり、化合物2をより高い選択率で製造できる点から、3~6が好ましく、3~5がより好ましい。
化合物2中の塩素原子の数は、1が好ましい。つまり、本発明の製造方法は、化合物1のフッ素原子の1つのみを塩素に置換する反応に、特に好適に利用できる。例えば、化合物1として1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパンを用いた場合、化合物2として3-クロロ-1,1,2,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244ca)を製造できる。また、例えば、化合物1として1,1,2,2,3,3,4,4,5-ノナフルオロペンタン(HFC-449pccc)を用いた場合、化合物2として5-クロロ-1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロペンタン(HCFC-448occc)を製造できる。
【0018】
また、例えば、化合物1として1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロヘキサンを用いた場合、化合物2として6-クロロ-1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6-ドデカフルオロヘキサンおよび6,6-ジクロロ-1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5-ウンデカフルオロヘキサンを製造できる。
【0019】
本発明の製造方法において、上述したように、原料として化合物1を用いる。化合物1は、1種でもよく、2種以上であってもよい。
原料中には化合物1の他に、不純物を含む場合がある。不純物としては、化合物1の製造原料や化合物1を製造する際に化合物1以外に生成する副生物等が挙げられる。なお、原料中に上記不純物が含まれる場合、不純物から生成する副生物は、蒸留、抽出蒸留、共沸蒸留、膜分離、二層分離、吸着等の既知の手段により除去してもよい。不純物としては、本発明の反応条件において不活性な化合物であることが好ましい。
【0020】
Cl化合物の炭素数は1または2であり、1が好ましい。
Cl化合物は、飽和化合物であっても、不飽和結合(例えば、二重結合)を有する不飽和化合物であってもよい。
Cl化合物中の塩素原子の数は、特に限定されないが、化合物2をより高い選択率で製造できる点から、1分子当たりの含塩素量が多い方が好ましい。すなわち、炭素数が1の場合は、塩素原子の数は、2~4がより好ましく、3~4がより好ましい。炭素数が2の飽和化合物の場合は、塩素原子の数は、2~6が好ましく、3~6がより好ましく、4~6がさらに好ましい。炭素数が2の不飽和化合物の場合は、塩素原子の数は、2~4が好ましく、3~4がさらに好ましい。
Cl化合物の具体例としては、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロトリフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、クロロフルオロメタン、1,1-ジクロロエチレン、1,2-ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンが挙げられる。
なかでも、化合物2の選択率をさらに向上できる点から、Cl化合物は、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、または、テトラクロロエチレンであることが好ましく、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、または、テトラクロロエチレンであることがより好ましく、四塩化炭素、クロロホルム、または、ジクロロメタンであることがさらに好ましく、四塩化炭素、または、クロロホルムであることが特に好ましい。
Cl化合物としては、2種以上を用いてもよい。
【0021】
触媒Xは、金属Aを有する金属化合物を含んでいればよく、化合物2をより高い選択率で製造できる点から、金属Aを有する、金属酸化物、金属酸化物の部分ハロゲン化物、または、金属ハロゲン化物を含むことが好ましい。つまり、触媒Xは、金属Aを有する金属酸化物、金属Aを有する金属酸化物の部分ハロゲン化物、または、金属Aを有する金属ハロゲン化物を含むことが好ましい。
なかでも、触媒Xは、金属Aを有する金属酸化物の部分ハロゲン化物を含むことがより好ましい。
触媒Xとしては1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
上記金属酸化物の部分ハロゲン化物は、金属酸化物の一部が、ハロゲン(F、Cl、Br、I等)化された化合物である。上記金属ハロゲン化物は、金属と、ハロゲンとからなる化合物である。金属酸化物の部分ハロゲン化物および金属ハロゲン化物は、1種のハロゲンのみを含んでいてもよく、2種以上のハロゲンを含んでいてもよい。
【0023】
金属酸化物の部分ハロゲン化物としては、金属酸化物がフッ素化された、金属酸化物の部分フッ化物が好ましい。この場合、金属酸化物の部分フッ化物は、フッ素以外のハロゲンを含んでいてもよい。
また、金属ハロゲン化物としては、金属フッ化物が好ましい。金属フッ化物は、フッ素以外のハロゲンを含んでいてもよい。
【0024】
上記金属酸化物、上記金属酸化物の部分ハロゲン化物、および、上記金属ハロゲン化物は、CrおよびAlの両方を含んでいてもよい。
なかでも、化合物1の転化率がより高くなる点から、Crを有する金属酸化物、Crを有する金属酸化物の部分ハロゲン化物、または、Crを有する金属ハロゲン化物が好ましい。
【0025】
上記金属酸化物、上記金属酸化物の部分ハロゲン化物、および、上記金属ハロゲン化物は、耐久性の向上等の種々の目的のために、金属A以外の金属を含んでいてもよい。
他の金属の具体例としては、Na、K、Mg、Ca、Zr、Fe、Zn、Ni、Co、Mnが挙げられる。なかでも、触媒の物理的・化学的耐久性を高め、化合物2をより効率よく製造できる点から、Na、K、Mg、Zn、または、Mnを含むことが好ましく、MgまたはZnを含むことがさらに好ましい。
なお、触媒が金属A以外の金属を含む場合、化合物1の転化率がより優れる。転化率がより向上する点から、他の金属としてはNa、K、Mg、Zn、および、Mnが好ましく、MgおよびZnがさらに好ましい。
【0026】
触媒XにCrが含まれる場合、Crの含有量としては、化合物1の転化率を向上できる点から、触媒に含まれる金属全質量(100質量%)に対して、1質量%以上が好ましく、5質量以上%がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。上限は、100質量%である。
触媒XにAlが含まれる場合、Alの含有量としては、化合物1の転化率を向上できる点から、触媒に含まれる金属全質量(100質量%)に対して、5質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。上限は、100質量%である。
触媒Xに金属A以外の金属が含まれる場合には、金属Aの含有量は、金属全質量(100質量%)に対して、90~99.9質量%が好ましく、95~99質量%がより好ましい。一方、金属A以外の金属は、金属全質量(100質量%)に対して、0.1~10質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましい。
【0027】
反応に供する触媒の水分含有量は低いことが好ましい。具体的には、触媒を反応器内に配置して、反応器内に触媒1gあたり3.94NmL/minとなるようにNを供給して、反応器出口から得られるガス中の水分が100体積ppm以下であることが好ましく、50体積ppm以下であることがより好ましい。
【0028】
触媒としては、具体的には、部分フッ素化されたクロム亜鉛複合酸化物(クロム亜鉛複合酸化物の部分フッ化物)、部分フッ素化されたクロムアルミニウムマグネシウム複合酸化物(クロムアルミニウムマグネシウム複合酸化物の部分フッ化物)、部分フッ素化されたアルミナ(アルミナの部分フッ化物)、部分フッ素化されたクロム酸化物(クロム酸化物の部分フッ化物)が挙げられる。なかでも、化合物1の転化率に優れる点から、部分フッ素化されたクロム亜鉛複合酸化物(クロム亜鉛複合酸化物の部分フッ化物)、および、部分フッ素化されたクロム酸化物(クロム酸化物の部分フッ化物)が好ましい。
【0029】
触媒Xは、反応性を向上させるために、ペレット状に成形されて使用されてもよく、担体に担持して使用されてもよい。
担体としては、活性炭、カーボンブラック、カーボンファイバー等のカーボン材料、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物等の酸化物材料が挙げられ、活性炭、アルミナ、シリカ、ジルコニア、アルカリ金属酸化物、および、アルカリ土類金属酸化物が好ましい。これらの中でも、比表面積が大きく、触媒Xを担持させやすいことから、活性炭、アルミナ、および、ジルコニアがより好ましい。
【0030】
触媒Xをペレット状に成形する方法としては、触媒Xを粉末に解砕して、打錠機等により成形する方法が挙げられる。
ペレット状の触媒Xとしては、例えば、直径3.0mm程度、高さ4.0mm程度の円柱状に成形したものを用いることができる。また、必要に応じて、触媒Xにバインダーを混合してもよい。バインダーの使用量は、触媒X100質量部に対して、100質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。この場合、触媒Xとバインダーとの混合物から打錠機等によりペレット状の触媒を成形できる。
なお、バインダーの具体例としては、カーボン、セルロース、アルミナ、シリカが挙げられる。
【0031】
触媒Xは、反応性を向上させるために、あらかじめ不活性雰囲気中(例えば、窒素気流中)で乾燥されていることが好ましい。操作の簡便化および作業効率の向上の点からは、触媒Xは、反応器内に収容した状態で、上記同様に乾燥されてもよい。
また、あらかじめ反応器に収容する前に、触媒Xを乾燥してもよい。
【0032】
触媒Xの比表面積は、各触媒の種類に依存し、一般的に小さいほど転化率が低く、大きいほど選択率が低くなり劣化が早くなる傾向がある。
例えば、上記バインダーを用いない場合、上記金属酸化物および上記金属酸化物の部分ハロゲン化物の比表面積は10~400m/gが好ましく、上記金属ハロゲン化物の比表面積は3~300m/gが好ましい。
上記バインダーを用いる場合は、バインダーの比表面積にも依存するため一概には言えないが、例えば、高比表面積のカーボンバインダーを用いた場合、触媒とカーボンバインダーとの混合物における比表面積は、20~1200m/g程度が好ましい。
なお、本明細書において、比表面積はBET法で測定される値である。
【0033】
また、触媒Xは、反応性向上の点(特に、化合物1の転化率向上の点)から、あらかじめ活性化処理が施されていることが好ましい。活性化処理の方法としては、加熱下または非加熱下で触媒Xを活性化処理剤と接触させる方法が挙げられる。活性化処理剤としては、ハロゲン含有化合物が挙げられ、具体的には、塩化水素、フッ化水素、クロロカーボン、フルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、クロロオレフィン、フルオロオレフィン、クロロフルオロオレフィン、ハイドロフルオロオレフィン、ハイドロクロロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィンが挙げられる。また、原料である化合物1をハロゲン含有化合物として用いてもよい。
なお、金属酸化物に対して、上記活性化処理を施すことにより、金属酸化物の部分ハロゲン化物を生成できる。
【0034】
触媒Xは、反応器に収容される前に活性化処理が行われていてもよいが、操作が簡便で作業効率が良いため、反応器に収容した状態で活性化処理を行うことが好ましい。そのため、活性化処理剤を、触媒Xを収容した反応器に導入して活性化処理を行うことが好ましい。活性化処理剤は、常温のまま反応器に導入してもよいが、効率的に活性化処理を行える点から、反応器に導入する際に加熱等により温度調節を行うことが好ましい。活性化処理剤を導入する際には、不活性なガス(希釈ガス)を合わせて導入してもよい。希釈ガスの具体例としては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴンが挙げられる。
また、活性化処理の効率を高めるために、反応器内を加熱した状態で活性化処理をすることが好ましい。その際、活性化処理剤を供給する際の反応器の温度は、50~500℃が好ましく、100~400℃がより好ましく、150~350℃がさらに好ましい。活性化処理剤の滞留時間は、1~1000秒間が好ましく、2~500秒間がより好ましい。
【0035】
また、触媒Xに対しては、上述した、反応前の活性化処理の他に、再活性化処理を行うことができる。特に、触媒Xの活性が落ち、化合物1の転化率が低下したときには、触媒Xに対して、再活性化処理を行うことができる。これにより、触媒Xの活性を再生させて触媒Xを再利用できる。
【0036】
再活性化処理の方法としては、使用前の活性化処理と同様に、触媒Xを加熱下または非加熱下で再活性化処理のための処理剤(再活性化処理剤)と接触させる方法が挙げられる。再活性化処理剤の具体例としては、酸素、塩素、フッ化水素、塩化水素、含ハロゲン炭化水素、パーハロゲン化カーボンが挙げられる。
また、再活性化処理において、副反応の抑制および触媒の耐久性向上等の点から、再活性化処理剤を希釈するために窒素、二酸化炭素、希ガス(ヘリウム等)、水蒸気等の不活性ガスを用いることができる。
【0037】
触媒Xが再活性化不可能な程度まで活性が低下した場合や、化合物2の製造を停止する場合、反応器から触媒Xを抜き出し、触媒Xを詰め替える操作を行うことがある。触媒Xを抜き出す際は、反応器内に残っている、または、触媒Xに付着している有機物や酸分を除去するために、事前に不活性ガスで反応器をパージすることが好ましい。使用する不活性ガスの具体例としては、窒素、ヘリウムが挙げられる。空気によるパージは、触媒中に6価クロム等の有害物質を形成される可能性があるため、好ましくない場合がある。
【0038】
上記反応(液相反応、気相反応)において、使用される化合物1に対する使用されるCl化合物のモル比(Cl化合物のモル量/化合物1のモル量)は、Cl化合物ごとに異なる。
Cl化合物として四塩化炭素、ジクロロメタンを用いる場合、化合物2をより高い選択率で製造できる点から、0.05~5が好ましく、副生物の生成を抑え、反応器の容積効率を向上させる点から、0.1~2.5がより好ましく、0.15~2がさらに好ましく、0.15~0.8が特に好ましい。
Cl化合物としてクロロホルムを用いる場合、化合物2をより高い選択率で製造できる点から、0.03~3.3が好ましく、副生物の生成を抑え、反応器の容積効率を向上させる点から、0.06~2がより好ましく、0.1~1.5がさらに好ましい。
その他のCl化合物を用いる場合、化合物2をより高い選択率で製造できる点から0.02~10が好ましく、副生物の生成を抑え、反応器の容積効率を向上させる点から、0.05~5がより好ましく、0.1~3がさらに好ましい。
【0039】
上記反応は、反応器を用いて行う。
反応器としては、形状および構造は特に限定されない。例えば、後述する気相反応の場合、内部に触媒Xを充填できる円筒状の縦型反応器が挙げられる。円筒状の縦型反応器としては、多管式反応器が好ましい。
反応器の材質の具体例としては、ガラス、鉄、ニッケル、ステンレス鋼、鉄またはニッケルを主成分とする合金が挙げられる。
反応器は、電気ヒータ等の加熱部を内部に備えていてもよい。反応器は、内部の温度を測定するための温度計が挿入される、さや管を有していてもよい。
反応器として多管式反応器を用いる場合は、各反応管の圧力損失を、すべての反応管の圧力損失の平均値に対して±20%以内とすることが好ましく、±15%以内とすることがより好ましく、±10%以内とすることがさらに好ましい。各反応管の触媒充填量が一定となるように調整することで反応管ごとの圧力損失の差を小さくできる。
【0040】
本発明の製造方法における、化合物1とCl化合物との反応は、液相反応および気相反応のいずれでもよい。
液相反応とは、化合物1とCl化合物とをそれぞれ液体の状態で反応させることをいう。
気相反応とは、化合物1とCl化合物とをそれぞれ気体の状態で反応させることをいう。
上記反応は、バッチ式で行なってもよいし、半連続式、連続流通式で行なってもよい。
【0041】
液相反応について詳細に説明する。
液相反応の具体的な手順としては、例えば、液体状態の化合物1と触媒Xとの混合物が存在する反応器内に、連続的または非連続的にCl化合物を供給し、反応によって生成する化合物2を反応器内から連続または非連続的に抜き出す手順が挙げられる。
液相反応における反応温度は、反応収率および製造効率の点から、20℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましく、250℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましく、150℃以下がさらに好ましい。
液相反応における反応時間は、反応収率および製造効率の点から、0.1~100時間が好ましく、0.2~50時間がより好ましく、0.5~20時間がさらに好ましい。反応時間は、反応器内での原料の滞留時間を意味する。
液相反応は、必要に応じて、溶媒の存在下にて実施してもよい。溶媒の具体例としては、CF(CFCF(ただし、式中mは、3~6の整数を表す。)で表される炭素数5~8の直鎖パーフルオロアルキル化合物が挙げられる。
【0042】
次に、気相反応について詳細に説明する。
気相反応の具体的な手順としては、ガス状態に加熱された原料である化合物1とCl化合物とを反応器内に連続的に供給して、反応器に充填された触媒Xと、ガス状態の化合物1およびCl化合物とを接触させて、化合物2を得る手順が挙げられる。
流量の調整、副生物の抑制、触媒失活の抑制等に有効である点から、上記反応に不活性なガス(希釈ガス)を反応器に供給してもよい。希釈ガスの具体例としては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴンが挙げられる。
【0043】
気相反応における反応温度(反応器内の温度)は、化合物2をより効率よく製造できる点から、100~450℃が好ましく、120~380℃がより好ましく、140~360℃がさらに好ましく、160~340℃が特に好ましい。
なお、上記反応温度が100℃以上(好ましくは160℃以上)の場合、化合物1の転化率が高まる。また、上記反応濃度が450℃以下の場合、化合物2の選択率が高まる。
反応器内の温度は、反応器に供給される原料の温度および圧力を調整することにより制御できる。必要に応じて、電気ヒータやマイクロウェーブ発生機等により反応器内を補助的に加熱できる。
【0044】
気相反応における反応時間は、0.1~1000秒間が好ましく、0.2~800秒間がより好ましく、0.5~600秒間がさらに好ましい。
反応時間は、原料の反応器内での滞留時間に相当し、原料の反応器への供給量(流量)を調節することにより制御できる。
【0045】
気相反応における反応系の圧力(反応器内の圧力)は、0~2.0MPaが好ましく、0~1.5MPaがより好ましい。陰圧でもよい。反応器内の圧力は、取り扱い性の点から、0~1.0MPaがさらに好ましい。本明細書において、特に断らない限り、圧力はゲージ圧を示す。
【0046】
生成物中における副生物の含有量は、生成物全質量に対して、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。上記副生物の含有量の下限は、通常、0質量%である。ここで生成物とは、化合物1とCl化合物との反応により生成した炭素数が3以上のハロゲン化炭化水素を意味する。
生成物に不純物が含まれる場合、得られた生成物から化合物2を分離する処理を実施してもよい。分離する処理としては、蒸留等の公知の方法が挙げられる。
【0047】
次に、気相反応のより詳細な態様を、図1を参照して説明する。図1に示す反応装置20は、気相反応に使用される反応装置の一例である。
反応装置20は、反応器1を備える。反応器1には、化合物1の供給ライン2、Cl化合物の供給ライン3、および、希釈ガスである窒素の供給ライン4が接続されている。
反応器1は、電気ヒータ等の加熱部を備えることが好ましい。
化合物1の供給ライン2、および、Cl化合物の供給ライン3は、それぞれ別々に反応器1に接続されてもよいが、反応器1の手前で連結されて反応器1に接続されてもよい。例えば、図1に示すように、化合物1の供給ライン2、Cl化合物の供給ライン3、および、窒素の供給ライン4を連結する。これにより、化合物1とCl化合物と窒素との混合物が、混合物供給ライン5を経由して、反応器1に供給される。
【0048】
図1に示す反応装置20においては、化合物1の供給ライン2、Cl化合物の供給ライン3、および、窒素の供給ライン4には、それぞれ、電気ヒータ等を備えた予熱器(プレヒータ)2a、3aおよび4aが設けられている。反応器1に供給される化合物1、Cl化合物および窒素は、それぞれ、予熱器2a、3aおよび4aによって所定の温度に予熱されてから反応器1に供給されることが好ましい。これにより、化合物1、Cl化合物および窒素を、反応器1の内部で所定の反応温度まで効率よく昇温できる。予熱器2a、3aおよび4aは、必須ではないが、設置されることが好ましい。
【0049】
反応器1の出口には、熱交換器等の冷却部6を介して、出口ライン7が接続されている。出口ライン7には、さらに、水蒸気および酸性液の回収槽8、アルカリ洗浄装置9、ならびに、脱水塔10が順に接続されている。
反応器1から取り出された反応混合物は、出口ライン7以降の処理によって、塩化水素、フッ化水素等の酸性物質、水蒸気、水が除去される。こうして得られたガスを、以下、「出口ガス」という。出口ガス中の各成分が、ガスクロマトグラフィ(GC)等の分析装置11により分析および定量される。
【0050】
出口ガスには、化合物2が含まれる。出口ガスに含まれる化合物2以外の化合物としては、未反応原料である化合物1およびCl化合物が挙げられる。
出口ガスに含まれる化合物2以外の化合物は、使用するCl化合物の種類によっても異なる。
例えば、Cl化合物として四塩化炭素を用いる場合、出口ガスに含まれる化合物2以外の化合物としては、四塩化炭素、トリクロロフルオロメタン(CFC-11)、ジクロロジフルオロメタン(CFC-12)、クロロトリフルオロメタン(CFC-13)も挙げられる。
また、Cl化合物としてクロロホルムを用いる場合、出口ガスに含まれる化合物2以外の化合物としては、クロロホルム、ジクロロフルオロメタン(HCFC-21)、クロロジフルオロメタン(HCFC-22)、トリフルオロメタン(HFC-23)も挙げられる。
また、Cl化合物としてテトラクロロエチレンを用いる場合、出口ガスに含まれる化合物2以外の化合物としては、テトラクロロエチレン、トリクロロフルオロエチレン(CFO-1111)、1,1-ジクロロジフルオロエチレン(CFO-1112a)、1,2-ジクロロジフルオロエチレン(CFO-1112)、ペンタクロロフルオロエタン(CFC-111)、1,2―テトラクロロジフルオロエタン(CFC-112)、1,1―テトラクロロジフルオロエタン(CFC-112a)、1,1,2-トリクロロトリフルオロエタン(CFC-113)、1,1,1-トリクロロトリフルオロエタン(CFC-113a)、1,2-ジクロロテトラフルオロエタン(CFC-114)、1,1-ジクロロテトラフルオロエタン(CFC-114a)、テトラクロロフルオロエタン(HCFC-121)、トリクロロジフルオロエタン(HCFC-122)、ジクロロトリフルオロエタン(HCFC-123)、クロロテトラフルオロエタン(HCFC-124)も挙げられる。
また、Cl化合物としてジクロロメタンを用いる場合、出口ガスに含まれる化合物2以外の化合物としては、クロロフルオロメタン(HCFC-31)、ジフルオロメタン(HFC-32)も挙げられる。
【0051】
出口ガスに含まれる化合物2以外の成分は、蒸留等の既知の手段により、望まれる程度に除去できる。
反応装置20においては、反応器1から出た反応混合物や出口ガスから、蒸留等によって未反応原料を分離し、原料の一部として反応器に戻すことができる。これにより化合物2の生産性を向上できる。
【0052】
本発明の製造方法において、化合物1が1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245ca)である場合、化合物2として3-クロロ-1,1,2,2-テトラフルオロプロパン(244ca)が得られる。
以下、原料として、245caを用いた場合について詳述する。
【0053】
245caは公知の方法で製造でき、例えば、国際公開第1994/27939号に記載の方法によって製造できる。
【0054】
原料として245caを用いて気相反応により244caを製造する際には、244caを粗ガスの成分として得ることができる。粗ガスには、244ca以外にも、未反応の245ca、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(1233yd)、1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロペン(1232xd)、1,3-ジクロロ-2,3-ジフルオロプロペン(1232yd)、2,3-ジクロロ-1,3-ジフルオロプロペン(1232xe)、1,2,3-トリクロロ-3-フルオロプロペン(1231xd)、2,3,3-トリクロロ-1-フルオロプロペン(1231xe)、1,3,3-トリクロロ-2-フルオロプロペン(1231yd)、1,2,3,3-テトラクロロプロペン(1230xd)、クロロトリフルオロプロペン、ジクロロトリフルオロプロペン、および使用するCl化合物に応じて上記に記載の化合物等が含まれることがある。
上記244ca以外の成分は、蒸留、抽出蒸留、共沸蒸留、膜分離、二層分離、吸着等の既知の手段により、望まれる程度に除去できる。
【0055】
製造後の244caと244ca以外の成分との分離効率の点からは、原料として245caを用いて気相反応により244caを製造する際、Cl化合物としてジクロロメタンを用いることが好ましい。
【0056】
なお、本明細書中では特に断らずに化合物名や化合物の略称を用いた場合には、Z体およびE体から選ばれる少なくとも1種を示し、より具体的には、Z体もしくはE体、または、Z体とE体の任意の割合の混合物を示す。化合物名や化合物の略称の後ろに(E)または(Z)を付した場合には、それぞれの化合物の(E)体または(Z)体を示す。例えば、1233yd(Z)はZ体を示し、1233yd(E)はE体を示す。
【0057】
得られた244caを脱フッ化水素反応させて、1233ydを製造してもよい。
脱フッ化水素反応の手順としては、国際公開第2016/136744号等の公知の方法が挙げられる。
【0058】
上記244caの脱フッ化水素反応は、液相反応および気相反応のいずれでもよい。なお、液相反応とは、液体状態または液体に溶解している244caを脱フッ化水素反応させることをいう。また、気相反応とは、気体状態の244caを脱フッ化水素反応させることをいう。
【0059】
また、本発明の製造方法において、化合物1が1,1,2,2,3,3,4,4,5-ノナフルオロペンタン(HFC-449pccc)である場合、化合物2として5-クロロ-1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロペンタン(HCFC-448occc)が得られる。
以下、原料として、449pcccを用いた場合について詳述する。
【0060】
449pcccは公知の方法で製造でき、例えば、RUSSIAN JOURNAL OF APPLIED CHEMISTRY Vol.5 No.7 2002 pp.1162-1165に記載の方法によって製造できる。
【0061】
原料として449pcccを用いて気相反応により448occcを製造する際には、448occcを粗ガスの成分として得ることができる。粗ガスには、448occc以外にも、未反応の449pccc、C(7-x)Cl(1+x)(xは、0~7を表す。)等が含まれることがある。
上記448occc以外の成分は、蒸留、抽出蒸留、共沸蒸留、膜分離、二層分離、吸着等の既知の手段により、望まれる程度に除去できる。
【0062】
得られた448occcを脱フッ化水素反応させて、1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテン(HCFO-1437dycc)を製造してもよい。特に、(Z)-1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテン(HCFO-1437dycc(Z))を製造することが好ましい。
脱フッ化水素反応の手順としては、Zhurnal Organicheskoi Khimii,(ロシア),1988年,24巻,8号,1626-1633頁等の公知の方法が挙げられる。
【0063】
上記448occcの脱フッ化水素反応は、液相反応および気相反応のいずれでもよい。なお、液相反応とは、液体状態または液体に溶解している448occcを脱フッ化水素反応させることをいう。また、気相反応とは、気体状態の448occcを脱フッ化水素反応させることをいう。
【0064】
また、本発明の製造方法において、化合物1が1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロヘキサンである場合、化合物2として6-クロロ-1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6-ドデカフルオロヘキサンおよび6,6-ジクロロ-1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5-ウンデカフルオロヘキサンを製造できる。化合物1としては、市販品(AC-2000、AGC株式会社製)を用いることができる。
得られた6-クロロ-1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6-ドデカフルオロヘキサンおよび6,6-ジクロロ-1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5-ウンデカフルオロヘキサンは、公知の方法によって分離できる。
【実施例
【0065】
以下に、例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。後述する例1~14、16~18は、実施例に該当する。例15は、比較例に該当する。
【0066】
<ガスクロマトグラフの条件>
以下の各種化合物の製造において、得られた生成物の組成分析はガスクロマトグラフ(GC)を用いて行った。カラムはDB-1301(長さ60m×内径250μm×厚み1μm、アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いた。
【0067】
<触媒調製>
後述する反応に用いる触媒を、以下のように調製した。
なお、各調製例で用いた反応装置としては、図1に基づいて説明した反応装置20と同様の反応装置を用いた。反応器1としては、内径21.4mm、長さ24cmのSUS304製の管状反応器を用いた。
【0068】
(触媒調製例1)
クロム亜鉛複合酸化物(PRICAT62-3M、ジョンソンマッセイ社)109.2gを反応器に充填し、窒素(N)を150Nml/minを流しながら、反応器内を300℃に昇温した。反応器内を大気圧に維持しながら、反応器出口から得られるガス中の水分が5体積ppm以下になるまで充填された触媒を乾燥した。その後、反応器を350℃に昇温し、トリフルオロメタン(HFC-23)を75Nml/min、Nを150NmL/minの流量で15時間供給し、反応器内で部分フッ素化されたクロム亜鉛複合酸化物を調製した。なお、得られた触媒は、金属酸化物の部分フッ化物に該当する。
なお、上記クロム亜鉛複合酸化物(PRICAT62-3M)中のCrの含有量は、触媒に含まれる金属全質量に対して、97.0質量%であり、Znの含有量は、触媒に含まれる金属全質量に対して、2.9質量%であった。
【0069】
(触媒調製例2)
クロム亜鉛複合酸化物(PRICAT62-3M、ジョンソンマッセイ社製)をクロムアルミニウムマグネシウム複合酸化物(N401AG、日揮触媒化成社製)96.3gに変更した以外は、(触媒調製例1)と同様の手順に従って、部分フッ素化されたクロムアルミニウムマグネシウム複合酸化物を得た。なお、得られた触媒は、金属酸化物の部分フッ化物に該当する。
なお、上記クロムアルミニウムマグネシウム複合酸化物(N401AG)中のCrの含有量は、触媒に含まれる金属全質量に対して、20.3質量%であり、Alの含有量は、触媒に含まれる金属全質量に対して、76.6質量%であり、Mgの含有量は、触媒に含まれる金属全質量に対して、3.0質量%であった。
【0070】
(触媒調製例3)
クロム亜鉛複合酸化物(PRICAT62-3M、ジョンソンマッセイ社製)をアルミナ(N612N、日揮触媒化成社製)73.2gに変更した以外は、(触媒調製例1)と同様の手順に従って、フッ素化処理を行い、部分フッ素化されたアルミナを得た。なお、得られた触媒は、金属酸化物の部分フッ化物に該当する。
【0071】
(触媒調製例4)
1100gのCr(NO・9HOを2.5リットルの水に溶解させ、28質量%の水酸化アンモニウムの水溶液2000gを加えた。加熱された4Lの水を撹拌しながら、上記で得られた水溶液をこの水に添加して、水酸化物の沈殿を得た。次いで、沈殿物を濾別し、得られた固形分を純水により洗浄し、乾燥して、得られた生成物を解砕し酸化物粉末を得た。得られた酸化物粉末にグラファイトを3質量%混合し、打錠成形機によって直径5mm、高さ5mmの円筒状に成形し、窒素中、420℃で5時間焼成してクロム酸化物を調製した。
クロム亜鉛複合酸化物(PRICAT62-3M、ジョンソンマッセイ社製)を上記で得たクロム酸化物104.9gに変更した以外は、(触媒調製例1)と同様の手順に従って、部分フッ素化したクロム酸化物を得た。
【0072】
(触媒調製例5)
クロム亜鉛複合酸化物(PRICAT62-3M、ジョンソンマッセイ社)109.2gを反応器に充填し、窒素(N)を150Nml/minを流しながら、反応器内を300℃に昇温した。反応器内を大気圧に維持しながら、反応器出口から得られるガス中の水分が5体積ppm以下になるまで充填された触媒を乾燥した。
【0073】
<例1>
触媒調製例1で調製した触媒を含む反応器にNを26.2NmL/minの流量で流通させながら、反応器温度が175℃となるように設定した。反応器温度が安定した後、245caを0.313g/min、四塩化炭素を0.180g/minの流量で反応器に供給した。反応器出口の粗ガスは水洗後、アルカリ洗浄部、モレキュラーシーブ4Aを通すことで、酸分を除去し乾燥した生成物を得た。また、反応器出口の粗ガスの各成分をガスクロマトグラフィで分析した。245caおよび四塩化炭素の供給開始から10時間後の粗ガスの分析結果を表2に示す。
なお、表2に示す反応成績は、炭素数3以上の化合物についての反応成績である。粗ガス中に含まれる炭素数2以下の化合物として、四塩化炭素、CFC-11、CFC-12、CFC-13を観測した。
【0074】
<例2>
表2に示すように、245caおよびCl化合物の供給量を変更した以外は、例1と同様の手順に従って、生成物を得た。
【0075】
<例3>
表2に示すように、Cl化合物の種類、反応温度、各種原料の供給量を変更した以外は、例1と同様の手順に従って、生成物を得た。
なお、得られた粗ガス中に含まれる炭素数2以下の化合物として、クロロホルム、HCFC-21、HCFC-22、HFC-23を観測した。
【0076】
<例4>
表2に示すように、Cl化合物の種類、各種原料の供給量を変更した以外は、例1と同様の手順に従って、生成物を得た。
なお、得られた粗ガス中に含まれる炭素数2以下の化合物として、テトラクロロエチレン、CFO-1111、CFO-1112、CFC-111、CFC-112、CFC-113、CFC-114、HCFC-121、HCFC-122、HCFC-123、HCFC-124を観測した。
【0077】
<例5>
表2に示すように、触媒の種類を変更した以外は、例1と同様の手順に従って、生成物を得た。
【0078】
<例10>
表2に示すように、反応温度、および、各種原料の供給量の供給量を変更した以外は、例1と同様の手順に従って、生成物を得た。
【0079】
<例11>
表2に示すように、反応温度、および、各種原料の供給量の供給量を変更した以外は、例1と同様の手順に従って、生成物を得た。
【0080】
<例12>
表2に示すように、Cl化合物の種類、反応温度、および、各種原料の供給量の供給量を変更した以外は、例1と同様の手順に従って、生成物を得た。
なお、得られた粗ガス中に含まれる炭素数2以下の化合物として、ジクロロメタン、クロロフルオロメタン(HCFC-31)、ジフルオロメタン(HFC-32)を観測した。
【0081】
<例13>
表2に示すように、触媒の種類を変更した以外は、例1と同様の手順に従って、生成物を得た。
【0082】
<例14>
表2に示すように、触媒の種類、反応温度、および、各種原料の供給量の供給量を変更した以外は、例1と同様の手順に従って、生成物を得た。
【0083】
<例16>
表2に示すように、反応温度、および、各種原料の供給量の供給量を変更した以外は、例12と同様の手順に従って、生成物を得た。
【0084】
<例17>
表2に示すように、反応温度、および、各種原料の供給量の供給量を変更した以外は、例12と同様の手順に従って、生成物を得た。
【0085】
表2中、転化率は、反応に使用した245caのモル量に対する、反応で消費された245caのモル量の割合(単位:%)を表す。
244ca選択率は、反応で消費された245caのモル量に対する、生成物中の244caのモル量の割合(単位:%)を表す。
1233yd(Z)選択率は、反応で消費された245caのモル量に対する、生成物中の1233yd(Z)のモル量の割合(単位:%)を表す。
その他選択率は、反応で消費された245caのモル量に対する、生成物中の上記成分以外の炭素数3以上の化合物のモル量の割合(単位:%)を表す。
なお、例1~5、12~14、16~17においては、反応圧力(反応器内の圧力)はいずれも0MPaGであり、滞留時間はいずれも30秒間であった。例10においては、反応圧力(反応器内の圧力)は0MPaGであり、滞留時間は40秒間であった。例11においては、反応圧力(反応器内の圧力)は0MPaGであり、滞留時間は4秒間であった。また、後述する例6においては、反応圧力(反応器内の圧力)は0MPaGであり、滞留時間は30秒間であった。
【0086】
【表2】
【0087】
表2に示すように、本発明の製造方法によれば、転化率および選択率が高く、HCFCを効率よく製造できた。
なお、例1の触媒調製例1で得られた触媒の代わりに、触媒調製例3で得られた触媒を用いた場合、所定のHCFCを得ることができた(例6)が、転化率は例5よりも低く、選択率も75%程度であり、やや劣っていた。
例1~6の比較より、触媒にCrが含まれる場合、より効果が優れることが確認された。
【0088】
例1と例10との比較より、反応温度が160℃以上の場合、転化率がより優れることが確認された。
例1と例14の比較より、活性化処理が実施された場合(言い換えれば、金属酸化物の部分ハロゲン化物を用いた場合)、転化率がより優れることが確認された。
【0089】
<例7>
触媒調製例1で調製した触媒を含む反応器にNを26.2NmL/minの流量で流通させながら、反応器温度が175℃となるように設定した。反応器温度が安定した後、449pcccを0.561g/min、四塩化炭素を0.180g/minの流量で反応器に供給した。反応器出口の粗ガスは水洗後、アルカリ洗浄部、モレキュラーシーブ4Aを通すことで、酸分を除去し乾燥した生成物を得た。また、反応器出口の粗ガスの各成分をガスクロマトグラフィで分析した。449pcccおよび四塩化炭素の供給開始から2時間後の粗ガスを分析した結果、449pcccの転化率は56.2%、448occc選択率は94.1%、1437dycc(Z)選択率は0.1%であった。
なお、上記転化率は、反応に使用した449pcccのモル量に対する、反応で消費された449pcccのモル量の割合(単位:%)を表す。
448occc選択率は、反応で消費された449pcccのモル量に対する、生成物中の448occcのモル量の割合(単位:%)を表す。
1437dycc(Z)選択率は、反応で消費された449pcccのモル量に対する、生成物中の1437dycc(Z)のモル量の割合(単位:%)を表す。
【0090】
<例8>
撹拌機、ジムロート冷却器を設置した2リットル四つ口フラスコに、例1で得られた244caの251.31g、テトラ-n-ブチルアンモニウムクロリド(TBAC)の2.51gを入れ、フラスコを50℃に加熱した。反応温度を50℃に維持し、34質量%水酸化カリウム(KOH)水溶液の631.55gを5分かけて滴下した。その後、30時間撹拌を続け、有機層を回収した。上記で回収した有機層を水洗後、蒸留して1233yd(E)および1233yd(Z)を含む精製1233ydを得た。1233yd(E)の選択率は8.9%であり、1233yd(Z)の選択率は91.0%であった。
【0091】
<例9>
撹拌機、ジムロート冷却器を設置した0.2リットル四つ口フラスコに、例7で得られた448occcの100.7g、相間移動触媒としてのテトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド(TBAB)の1.0gを入れ、フラスコを10℃に冷却した。反応温度を10℃に維持し、34質量%水酸化カリウム(KOH)水溶液の153.9gを30分かけて滴下した。その後、38時間撹拌を続けた。得られた反応液を有機相と水相に二相分離し、有機層を回収した。回収した有機相を精製して、純度99.5%の1437dycc(Z)と1437dycc(E)の異性体混合物を78.6g得た。なお、異性体混合物中の1437dycc(Z)と1437dycc(E)の質量比(1437dycc(Z)/1437dycc(E))は、99/1であった。
【0092】
(触媒比較調製例1)
活性炭触媒(粒状白鷺C2x、大阪ガスケミカル社)を反応器に充填し、窒素(N)を150Nml/minを流しながら、反応器内を300℃に昇温した。反応器内を大気圧に維持しながら、反応器出口から得られるガス中の水分が5体積ppm以下になるまで充填された触媒を乾燥した。その後、反応器を350℃に昇温し、トリフルオロメタン(HFC-23)を75Nml/min、Nを150NmL/minの流量で15時間供給した。
【0093】
<例15>
触媒比較調製例1で調製した触媒を含む反応器にNを26.2NmL/minの流量で流通させながら、反応器温度が175℃となるように設定した。反応器温度が安定した後、245caを0.313g/min、四塩化炭素を0.180g/minの流量で反応器に供給した。反応器出口の粗ガスは水洗後、アルカリ洗浄部、モレキュラーシーブ4Aを通すことで、酸分を除去し乾燥した生成物を得た。また、反応器出口の粗ガスの各成分をガスクロマトグラフィで分析した。245caの転化率は1%以下であり、244ca選択率は50%以下で、244caはほとんど得られなかった。
【0094】
<例18>
触媒調製例1で調製した触媒を含む反応器にNを56.0NmL/minの流量で流通させながら、反応器温度が350℃となるように設定した。反応器温度が安定した後、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロヘキサン(HFC-52-13p)を0.401g/min、四塩化炭素を0.193g/minの流量で反応器に供給した。反応器出口の粗ガスは水洗後、アルカリ洗浄部、モレキュラーシーブ4Aを通すことで、酸分を除去し乾燥した生成物を得た。また、反応器出口の粗ガスの各成分をガスクロマトグラフィで分析した。HFC-52-13pおよび四塩化炭素の供給開始から2時間後の粗ガスを分析した結果、HFC-52-13pの転化率は29.3%、6-クロロ-1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6-ドデカフルオロヘキサン選択率は69.2%、6,6-ジクロロ-1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5-ウンデカフルオロヘキサン選択率は17.5%であった。
なお、上記転化率は、反応に使用したHFC-52-13pのモル量に対する、反応で消費されたHFC-52-13pのモル量の割合(単位:%)を表す。
6-クロロ-1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6-ドデカフルオロヘキサン選択率は、反応で消費されたHFC-52-13pのモル量に対する、生成物中の6-クロロ-1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6-ドデカフルオロヘキサンのモル量の割合(単位:%)を表す。
6,6-ジクロロ-1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5-ウンデカフルオロヘキサン選択率は、反応で消費されたHFC-52-13pのモル量に対する、生成物中の6,6-ジクロロ-1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5-ウンデカフルオロヘキサンのモル量の割合(単位:%)を表す。
なお、HFC-52-13pとして、AGC社製アサヒクリンAC-2000を用いた。
なお、2019年04月25日に出願された日本特許出願2019-084194号の明細書、特許請求の範囲、要約書および図面の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0095】
1:反応器
2:化合物1の供給ライン
2a:予熱器
3:Cl化合物の供給ライン
3a:予熱器
4:窒素の供給ライン
4a:予熱器
5:混合物供給ライン
6:冷却部
7:出口ライン
8:水蒸気および酸性液の回収槽
9:アルカリ洗浄装置
10:脱水塔
11:分析装置
20:反応装置
図1