(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】ガス処理方法及びガス処理装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/04 20060101AFI20241217BHJP
B01D 53/68 20060101ALI20241217BHJP
B01D 53/81 20060101ALI20241217BHJP
B01J 20/18 20060101ALI20241217BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20241217BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B01D53/04
B01D53/68 200
B01D53/81
B01J20/18 B ZAB
B01J20/20 B
B01J20/28 Z
(21)【出願番号】P 2021537659
(86)(22)【出願日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 JP2020027717
(87)【国際公開番号】W WO2021024746
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2019144440
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100175259
【氏名又は名称】尾林 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168701
【氏名又は名称】豆塚 浩二
(74)【代理人】
【識別番号】100109715
【氏名又は名称】塩谷 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】松井 一真
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-047338(JP,A)
【文献】国際公開第2015/125877(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/124726(WO,A1)
【文献】特表2013-503039(JP,A)
【文献】特開昭63-315127(JP,A)
【文献】特開2019-077603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/00-53/96
C01B 39/00-39/54
C01B 32/00-32/991
B01J 20/00-20/34
H01L 21/00-21/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロモフルオロエチレンを含有するガスを、0℃以上
70℃以下の温度環境下で、平均細孔径0.4nm以上4nm以下の細孔を有する吸着剤に接触させて、前記ブロモフルオロエチレンを前記吸着剤に吸着させることにより、前記ガスから前記ブロモフルオロエチレンを分離
し、前記吸着剤がゼオライト及び活性炭の少なくとも一方であるガス処理方法。
【請求項2】
前記ブロモフルオロエチレンは、ブロモトリフルオロエチレン、1-ブロモ-2,2-ジフルオロエチレン、(E)-1-ブロモ-1,2-ジフルオロエチレン、(Z)-1-ブロモ-1,2-ジフルオロエチレン、1-ブロモ-1-フルオロエチレン、(E)-1-ブロモ-2-フルオロエチレン、(Z)-1-ブロモ-2-フルオロエチレン、1,1-ジブロモ-2-フルオロエチレン、(E)-1,2-ジブロモ-2-フルオロエチレン、(Z)-1,2-ジブロモ-2-フルオロエチレン、及びトリブロモフルオロエチレンのうちの少なくとも1種である請求項1に記載のガス処理方法。
【請求項3】
前記ブロモフルオロエチレンを含有するガスは前記ブロモフルオロエチレンと不活性ガスとの混合ガスである請求項1又は請求項2に記載のガス処理方法。
【請求項4】
前記不活性ガスは、窒素ガス、ヘリウム、アルゴン、ネオン、及びクリプトンのうちの少なくとも1種である請求項3に記載のガス処理方法。
【請求項5】
前記ブロモフルオロエチレンを含有するガス中の前記ブロモフルオロエチレンの含有率が25体積%未満である請求項1~4のいずれか一項に記載のガス処理方法。
【請求項6】
平均細孔径0.4nm以上4nm以下の細孔を有する吸着剤が収容された吸着処理容器を備え、
ブロモフルオロエチレンを含有するガスに0℃以上70℃以下の温度環境下で前記吸着剤による吸着処理を施すガス処理装置であって、
前記吸着剤がゼオライト及び活性炭の少なくとも一方であり、
前記吸着処理容器は、
前記ブロモフルオロエチレンを含有するガスが供給される供給口と、前記ブロモフルオロエチレンを含有するガスに前記吸着剤による吸着処理が施されてなる処理済みガスを、前記吸着処理容器内から外部に排出する排出口と、を有するガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガス処理方法及びガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程においては、ドライエッチング装置のエッチングガスやCVD装置のチャンバークリーニングガス等として、四フッ化炭素、六フッ化エタン等のパーフルオロカーボンが使用されている。これらのパーフルオロカーボンは、非常に安定な化合物であり地球温暖化に対する影響が大きいため、大気に放出した場合の環境への悪影響が懸念されている。そのため、半導体の製造工程から排出される排ガスは、含有されているパーフルオロカーボンを回収又は分解した上で、大気に放出することが好ましい。
【0003】
特許文献1には、上記のパーフルオロカーボンの代替となる、環境負荷が小さいプラズマエッチングガスとして、二重結合を有するブロモフルオロカーボン(ブロモフルオロアルケン)を含有するプラズマエッチングガスが開示されている。ブロモフルオロアルケンは、四フッ化炭素、六フッ化エタン等の二重結合を有しないパーフルオロカーボンと比較して地球温暖化に対する影響が小さいが、無視できるほどに小さいものではない。また、ブロモフルオロアルケンは毒性が高く、大気にそのまま放出すると人体及び環境に悪影響を与えるので、半導体の製造工程から排出される排ガスは、含有されているブロモフルオロアルケンを回収又は分解した上で、大気に放出する必要がある。
ブロモフルオロアルケンの処理方法としては、例えば特許文献2において、炭素数3又は4のブロモフルオロアルケンをゼオライトに吸着させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2012/124726号
【文献】日本国特許公開公報 2017年第47338号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、炭素数2のブロモフルオロアルケン(ブロモフルオロエチレン)を効率良く除去する方法は見出されていない。
本発明は、ブロモフルオロエチレンを効率良く除去することができるガス処理方法及びガス処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の一態様は以下の[1]~[9]の通りである。
[1] ブロモフルオロエチレンを含有するガスを、0℃以上120℃未満の温度環境下で、平均細孔径0.4nm以上4nm以下の細孔を有する吸着剤に接触させて、前記ブロモフルオロエチレンを前記吸着剤に吸着させることにより、前記ガスから前記ブロモフルオロエチレンを分離するガス処理方法。
【0007】
[2] 前記ブロモフルオロエチレンは、ブロモトリフルオロエチレン、1-ブロモ-2,2-ジフルオロエチレン、(E)-1-ブロモ-1,2-ジフルオロエチレン、(Z)-1-ブロモ-1,2-ジフルオロエチレン、1-ブロモ-1-フルオロエチレン、(E)-1-ブロモ-2-フルオロエチレン、(Z)-1-ブロモ-2-フルオロエチレン、1,1-ジブロモ-2-フルオロエチレン、(E)-1,2-ジブロモ-2-フルオロエチレン、(Z)-1,2-ジブロモ-2-フルオロエチレン、及びトリブロモフルオロエチレンのうちの少なくとも1種である[1]に記載のガス処理方法。
【0008】
[3] 前記ブロモフルオロエチレンを含有するガスは前記ブロモフルオロエチレンと不活性ガスとの混合ガスである[1]又は[2]に記載のガス処理方法。
[4] 前記不活性ガスは、窒素ガス、ヘリウム、アルゴン、ネオン、及びクリプトンのうちの少なくとも1種である[3]に記載のガス処理方法。
[5] 前記ブロモフルオロエチレンを含有するガス中の前記ブロモフルオロエチレンの含有率が25体積%未満である[1]~[4]のいずれか一項に記載のガス処理方法。
【0009】
[6] 前記吸着剤がゼオライト及び活性炭の少なくとも一方である[1]~[5]のいずれか一項に記載のガス処理方法。
[7] 前記温度環境が0℃以上100℃以下である[1]~[6]のいずれか一項に記載のガス処理方法。
[8] 前記温度環境が0℃以上70℃以下である[1]~[6]のいずれか一項に記載のガス処理方法。
【0010】
[9] 平均細孔径0.4nm以上4nm以下の細孔を有する吸着剤が収容された吸着処理容器を備え、
前記吸着処理容器は、ブロモフルオロエチレンを含有するガスが供給される供給口と、前記ブロモフルオロエチレンを含有するガスに前記吸着剤による吸着処理が施されてなる処理済みガスを、前記吸着処理容器内から外部に排出する排出口と、を有するガス処理装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ブロモフルオロエチレンを効率良く除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るガス処理装置の構成を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態について以下に説明する。なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。また、本実施形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。
【0014】
本実施形態のガス処理装置1は、平均細孔径0.4nm以上4nm以下の細孔を有する吸着剤7が収容された吸着塔6(本発明の構成要件である「吸着処理容器」に相当する)を備えている。この吸着塔6は、ブロモフルオロエチレンを含有するガスが供給される供給口4と、ブロモフルオロエチレンを含有するガスに吸着剤7による吸着処理が施されてなる処理済みガスを、吸着塔6内から外部に排出する排出口5と、を有する。
【0015】
さらに、本実施形態のガス処理装置1は、ブロモフルオロエチレンガスを供給するブロモフルオロエチレンガス供給機構2と、不活性ガスを供給する不活性ガス供給機構3と、フーリエ変換赤外分光分析を行うフーリエ変換赤外分光光度計8と、を備えている。
ブロモフルオロエチレンガス供給機構2と吸着塔6の供給口4とが配管で接続されていて、ブロモフルオロエチレンガス供給機構2から送気されたブロモフルオロエチレンガスが供給口4から吸着塔6の内部に供給され、0℃以上120℃未満の温度環境下で吸着剤7による吸着処理が施されるようになっている。
【0016】
供給口4から吸着塔6の内部に供給されるガスは、ブロモフルオロエチレンのみからなるブロモフルオロエチレンガスであってもよいが、ブロモフルオロエチレンガスと他種のガスとの混合ガスであってもよい。他種のガスは特に限定されるものではないが、例えば不活性ガスが挙げられる。すなわち、
図1に示すように、ブロモフルオロエチレンガス供給機構2から延びる配管と、不活性ガス供給機構3から延びる配管が合流し、合流した配管が吸着塔6の供給口4に接続されていてもよい。
【0017】
このような構成であれば、ブロモフルオロエチレンガス供給機構2から送気されたブロモフルオロエチレンガスと、不活性ガス供給機構3から送気された不活性ガスが、合流した配管内で混合されて混合ガスとなり、混合ガスが供給口4から吸着塔6の内部に供給されることとなる。以下、ブロモフルオロエチレンのみからなるブロモフルオロエチレンガス、及び、ブロモフルオロエチレンガスと他種のガスとの混合ガスを、「ブロモフルオロエチレン含有ガス」と記すこともある。
【0018】
吸着塔6の内部に供給されたブロモフルオロエチレン含有ガスは、0℃以上120℃未満の温度環境下で吸着剤7と接触し、吸着剤7による吸着処理が施される。すなわち、ブロモフルオロエチレン含有ガス中のブロモフルオロエチレンは吸着剤7に吸着されるため、ブロモフルオロエチレン含有ガスはブロモフルオロエチレンと他種のガスとに分離される。
吸着剤7による吸着処理が施されてなる処理済みガス、すなわち分離された他種のガスは、排出口5を介して吸着塔6内から外部に排出される。排出口5とフーリエ変換赤外分光光度計8が配管により接続されているので、処理済みガスはフーリエ変換赤外分光光度計8に供給される。
【0019】
フーリエ変換赤外分光光度計8においては、処理済みガスのフーリエ変換赤外分光分析が行われ、処理済みガス中に含有されるブロモフルオロエチレンの定量分析又は定性分析が行われる。
フーリエ変換赤外分光光度計8には廃棄用配管9が接続されており、フーリエ変換赤外分光分析が終了した処理済みガスは、廃棄用配管9を介して系外に排出される。
本実施形態のガス処理装置1を用いれば、煩雑な操作を必要とせず穏和な条件にてブロモフルオロエチレンを効率良く除去することができる。
【0020】
以下に、本実施形態のガス処理装置1と本実施形態のガス処理方法について、さらに詳細に説明する。
〔ブロモフルオロエチレン〕
ブロモフルオロエチレンとは、分子内にフッ素原子と臭素原子を有する炭素数2の不飽和炭化水素を指す。
ブロモフルオロエチレンの具体例としては、ブロモトリフルオロエチレン、1-ブロモ-2,2-ジフルオロエチレン、(E)-1-ブロモ-1,2-ジフルオロエチレン、(Z)-1-ブロモ-1,2-ジフルオロエチレン、1-ブロモ-1-フルオロエチレン、(E)-1-ブロモ-2-フルオロエチレン、(Z)-1-ブロモ-2-フルオロエチレン、1,1-ジブロモ-2-フルオロエチレン、(E)-1,2-ジブロモ-2-フルオロエチレン、(Z)-1,2-ジブロモ-2-フルオロエチレン、トリブロモフルオロエチレン等が挙げられる。
【0021】
これらの中でも、常温で容易に気化できるという観点から、ブロモトリフルオロエチレン、1-ブロモ-2,2-ジフルオロエチレン、(E)-1-ブロモ-1,2-ジフルオロエチレン、(Z)-1-ブロモ-1,2-ジフルオロエチレン、1-ブロモ-1-フルオロエチレン、(E)-1-ブロモ-2-フルオロエチレン、(Z)-1-ブロモ-2-フルオロエチレンが好ましい。
ブロモフルオロエチレンは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
〔不活性ガス〕
不活性ガスとしては、窒素ガス(N2)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、ネオン(Ne)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)があげられる。これらの中では、窒素ガス、ヘリウム、アルゴン、ネオン、及びクリプトンが好ましく、窒素ガス及びアルゴンがより好ましい。これら不活性ガスは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
〔吸着剤〕
吸着剤の種類は、平均細孔径0.4nm以上4nm以下の細孔を有するものであれば特に限定されるものではないが、経済性や入手容易性の観点から、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、アルミナが好ましく、ゼオライト及び活性炭がより好ましい。
ゼオライトの構造としては、例えば、T型、エリオナイト型、チャバザイト型、4A型、5A型、ZSM-5型、LiLSX型、AlPO4-11型、フェリエライト型、オフレタイト型、モルデナイト型、ベータ型、AlPO4-5型、NaY型、NaX型、CaX型、AlPO4-8型、UTD-1型、VPI-5型、クロベライト型、MCM-41型、FSM-16型が挙げられる。ゼオライトの中では、入手容易性の観点から、モレキュラーシーブ4A(例えばユニオン昭和株式会社製)、モレキュラーシーブ5A(例えばユニオン昭和株式会社製)、モレキュラーシーブ13X(例えばユニオン昭和株式会社製)などが特に好ましい。
吸着剤が有する細孔の平均細孔径が0.4nm以上4nm以下であれば、ブロモフルオロエチレンが効率よく吸着されるとともに、吸着したブロモフルオロエチレンの脱着が生じにくい。
吸着剤の形状は特に限定されるものではないが、例えば、繊維状、ハニカム状、円柱状、ペレット状、破砕状、粒状、粉末状であってもよい。
【0024】
〔吸着処理の温度〕
吸着剤7による吸着処理は、0℃以上120℃未満の温度環境下で行う必要があるが、0℃以上100℃以下の温度環境下で行うことが好ましく、0℃以上70℃以下の温度環境下で行うことがより好ましい。
上記の温度環境下でブロモフルオロエチレン含有ガスと吸着剤7とを接触させて吸着処理を行えば、吸着されたブロモフルオロエチレンが吸着剤7から脱着しにくくなるため、ブロモフルオロエチレンの吸着量が多くなる。また、温度制御のための大掛かりな装置が不要であるため、ガス処理装置1の構成を簡易なものとすることができる。さらに、吸着塔6内でのブロモフルオロエチレンの液化が生じにくい。
【0025】
〔その他の吸着条件〕
ブロモフルオロエチレン含有ガス中のブロモフルオロエチレンの含有率(濃度)、ブロモフルオロエチレン含有ガスの流量、吸着剤7の量、吸着塔6の大きさ等の吸着条件は、特に限定されるものではなく、ブロモフルオロエチレン含有ガスの種類、量等に応じて適宜設定することができる。ただし、ブロモフルオロエチレン含有ガス中のブロモフルオロエチレンの含有率(濃度)は、50体積%以下とすることができ、30体積%以下とすることが好ましく、25体積%以下とすることがさらに好ましい。
【実施例】
【0026】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明をより詳細に説明する。
〔実施例1〕
図1に示すガス処理装置1と同様の構成を有するガス処理装置を用いて、ブロモフルオロエチレン含有ガスの吸着処理を行った。このガス処理装置は、内径1インチ、長さ100mmのステンレス製の吸着塔を備えており、この吸着塔には、吸着剤として28.7gのモレキュラーシーブ13X(ユニオン昭和株式会社製)が充填されている。
【0027】
モレキュラーシーブ13Xが有する細孔の平均細孔径は、1.0nmである。平均細孔径はBET吸着法により測定した。測定条件は下記の通りである。
測定機器 :日機装株式会社製のBELSORP-max
吸着質 :窒素ガス
測定温度 :-196℃
吸着剤の前処理:真空条件にて300℃、6h加熱乾燥した。
吸着剤の使用量:0.10g
【0028】
ブロモトリフルオロエチレンと乾燥窒素の混合ガス(混合ガス中のブロモトリフルオロエチレンの含有率は20体積%)を、流量50mL/minで吸着塔に供給して、吸着処理を行った。なお、吸着処理中は、吸着塔内の温度(詳細には吸着剤の表面温度)を30.0~40.0℃に維持した。
【0029】
吸着塔の排出口から排出される処理済みガス中のブロモトリフルオロエチレンの濃度を、フーリエ変換赤外分光光度計を用いて測定した。その結果、混合ガスの供給開始直後から30分間のブロモトリフルオロエチレンの濃度は、206.35~273.81体積ppmであった(下記の表1を参照)。すなわち、吸着剤としてモレキュラーシーブ13Xを用いた場合は、99.86~99.90%のブロモトリフルオロエチレンが吸着剤に吸着されたことになる。
【0030】
【0031】
〔実施例2〕
吸着剤としてモレキュラーシーブ13Xの代わりにヤシ殻系活性炭(大阪ガスケミカル株式会社製)を用いた点以外は実施例1と同様にして、ブロモトリフルオロエチレンの吸着処理を行った。ヤシ殻系活性炭が有する細孔の平均細孔径は、2.5nmである。その結果、混合ガスの供給開始直後から30分間のブロモトリフルオロエチレンの濃度は、27.78~436.51体積ppmであった(下記の表2を参照)。すなわち、吸着剤としてヤシ殻系活性炭を用いた場合は、99.78~99.99%のブロモトリフルオロエチレンが吸着剤に吸着されたことになる。
【0032】
【0033】
〔実施例3〕
吸着剤としてモレキュラーシーブ13Xの代わりに石炭系活性炭(大阪ガスケミカル株式会社製)を用いた点以外は実施例1と同様にして、ブロモトリフルオロエチレンの吸着処理を行った。石炭系活性炭が有する細孔の平均細孔径は、3.4nmである。その結果、混合ガスの供給開始直後から30分間のブロモトリフルオロエチレンの濃度は、23.81~369.05体積ppmであった(下記の表3を参照)。すなわち、吸着剤として石炭系活性炭を用いた場合は、99.82~99.99%のブロモトリフルオロエチレンが吸着剤に吸着されたことになる。
【0034】
【0035】
〔実施例4〕
吸着剤としてモレキュラーシーブ13Xの代わりにモレキュラーシーブ5A(ユニオン昭和株式会社製)を用いた点以外は実施例1と同様にして、ブロモトリフルオロエチレンの吸着処理を行った。モレキュラーシーブ5Aが有する細孔の平均細孔径は、0.5nmである。
その結果、混合ガスの供給開始直後のブロモトリフルオロエチレンの濃度は630.95体積ppm、混合ガスの供給開始から5分後のブロモトリフルオロエチレンの濃度は5507.94体積ppmであった(下記の表4を参照)。吸着効率が低下した原因は、吸着剤が破過したためと考えられる。すなわち、吸着剤としてモレキュラーシーブ5Aを用いた場合は、モレキュラーシーブ13X及び上記活性炭に比べて吸着容量は劣るものの、97%以上のブロモトリフルオロエチレンが吸着された。
【0036】
【0037】
〔実施例5〕
吸着塔内の温度を60~70℃とした点以外は実施例1と同様にして、ブロモトリフルオロエチレンの吸着処理を行った。その結果、混合ガスの供給開始から15分後のブロモトリフルオロエチレンの濃度は503.97体積ppm、20分後のブロモトリフルオロエチレンの濃度は2222.22体積ppmであった(下記の表5を参照)。
実施例1に比べて吸着容量が低下した理由は、吸着剤が加温されることで、ブロモトリフルオロエチレンの脱着が促進されたためであると考えられる。しかしながら、本条件でも、98%以上のブロモトリフルオロエチレンが吸着された。
【0038】
【0039】
〔実施例6〕
吸着塔内の温度を0~5℃とした点以外は実施例1と同様にして、ブロモトリフルオロエチレンの吸着処理を行った。その結果、混合ガスの供給開始直後から30分間のブロモトリフルオロエチレンの濃度は、19.84~206.35体積ppmであった(下記の表6を参照)。実施例1に比べて吸着容量が向上した理由は、吸着剤を冷却することで、ブロモトリフルオロエチレンの脱着が抑制されたためであると考えられる。
【0040】
【0041】
〔実施例7〕
ブロモフルオロエチレン含有ガスとして1-ブロモ-1-フルオロエチレンと乾燥窒素の混合ガス(混合ガス中の1-ブロモ-1-フルオロエチレンの含有率は20体積%)を用いた点以外は実施例1と同様にして、1-ブロモ-1-フルオロエチレンの吸着処理を行った。その結果、混合ガスの供給開始直後から30分間の1-ブロモ-1-フルオロエチレンの濃度は、178.57~202.38体積ppmであった(下記の表7を参照)。すなわち、吸着剤としてモレキュラーシーブ13Xを用いた場合は、99.90~99.91%の1-ブロモ-1-フルオロエチレンが吸着剤に吸着されたことになる。
【0042】
【0043】
〔実施例8〕
吸着剤としてモレキュラーシーブ13Xの代わりに石炭系活性炭(大阪ガスケミカル株式会社製)を用いた点以外は実施例7と同様にして、1-ブロモ-1-フルオロエチレンの吸着処理を行った。その結果、混合ガスの供給開始直後から30分間の1-ブロモ-1-フルオロエチレンの濃度は、23.81~206.35体積ppmであった(下記の表8を参照)。すなわち、吸着剤として石炭系活性炭を用いた場合は、99.90~99.99%の1-ブロモ-1-フルオロエチレンが吸着剤に吸着されたことになる。
【0044】
【0045】
〔実施例9〕
ブロモフルオロエチレン含有ガスとして1-ブロモ-2-フルオロエチレン((E)-1-ブロモ-2-フルオロエチレンと(Z)-1-ブロモ-2-フルオロエチレンとを等モル量混合したもの)と乾燥窒素の混合ガス(混合ガス中の1-ブロモ-2-フルオロエチレンの含有率は20体積%)を用いた点以外は実施例1と同様にして、1-ブロモ-2-フルオロエチレンの吸着処理を行った。その結果、混合ガスの供給開始直後から30分間の1-ブロモ-2-フルオロエチレンの濃度は、162.70~285.71ppmであった(下記の表9を参照)。すなわち、吸着剤としてモレキュラーシーブ13Xを用いた場合は、99.86~99.92%の1-ブロモ-2-フルオロエチレンが吸着剤に吸着されたことになる。
【0046】
【0047】
〔実施例10〕
吸着剤としてモレキュラーシーブ13Xの代わりに石炭系活性炭(大阪ガスケミカル株式会社製)を用いた点以外は実施例9と同様にして、1-ブロモ-2-フルオロエチレン((E)-1-ブロモ-2-フルオロエチレンと(Z)-1-ブロモ-2-フルオロエチレンとを等モル量混合したもの)の吸着処理を行った。その結果、混合ガスの供給開始直後から30分間の1-ブロモ-2-フルオロエチレンの濃度は、19.84~166.67体積ppmであった(下記の表10を参照)。すなわち、吸着剤として石炭系活性炭を用いた場合は、99.92~99.99%の1-ブロモ-2-フルオロエチレンが吸着剤に吸着されたことになる。
【0048】
【0049】
〔実施例11〕
ブロモフルオロエチレン含有ガスとして1-ブロモ-2,2-ジフルオロエチレンと乾燥窒素の混合ガス(混合ガス中の1-ブロモ-2,2-ジフルオロエチレンの含有率は20体積%)を用いた点以外は実施例1と同様にして、1-ブロモ-2,2-ジフルオロエチレンの吸着処理を行った。その結果、混合ガスの供給開始直後から30分間の1-ブロモ-2,2-ジフルオロエチレンの濃度は、150.79~246.03体積ppmであった(下記の表11を参照)。すなわち、吸着剤としてモレキュラーシーブ13Xを用いた場合は、99.88~99.92%の1-ブロモ-2,2-ジフルオロエチレンが吸着剤に吸着されたことになる。
【0050】
【0051】
〔実施例12〕
吸着剤としてモレキュラーシーブ13Xの代わりに石炭系活性炭(大阪ガスケミカル株式会社製)を用いた点以外は実施例11と同様にして、1-ブロモ-2,2-ジフルオロエチレンの吸着処理を行った。その結果、混合ガスの供給開始直後から30分間の1-ブロモ-2,2-ジフルオロエチレンの濃度は、23.81~206.35体積ppmであった(下記の表12を参照)。すなわち、吸着剤として石炭系活性炭を用いた場合は、99.90~99.99%の1-ブロモ-2,2-ジフルオロエチレンが吸着剤に吸着されたことになる。
【0052】
【0053】
〔比較例1〕
吸着剤としてモレキュラーシーブ13Xの代わりにB型シリカゲル(豊田化工株式会社製)を用いた点以外は実施例1と同様にして、ブロモトリフルオロエチレンの吸着処理を行った。B型シリカゲルが有する細孔の平均細孔径は、6.0nmである。その結果、混合ガスの供給開始から2分以内に、定量測定限界(8000ppm)を超える濃度のブロモトリフルオロエチレンが検出された。すなわち、吸着剤としてB型シリカゲルを用いた場合は、ブロモトリフルオロエチレンが吸着されなかったことになる。
【0054】
〔比較例2〕
吸着剤としてモレキュラーシーブ13Xの代わりにモレキュラーシーブ3A(ユニオン昭和株式会社製)を用いた点以外は実施例1と同様にして、ブロモトリフルオロエチレンの吸着処理を行った。モレキュラーシーブ3Aが有する細孔の平均細孔径は、0.3nmである。その結果、混合ガスの供給開始直後から、定量測定限界(8000ppm)を超える濃度のブロモトリフルオロエチレンが検出された。すなわち、吸着剤としてモレキュラーシーブ3Aを用いた場合は、ブロモトリフルオロエチレンが吸着されなかったことになる。
【0055】
〔比較例3〕
吸着剤としてモレキュラーシーブ13Xの代わりにγ-アルミナ(株式会社高純度化学研究所製)を用いた点以外は実施例1と同様にして、ブロモトリフルオロエチレンの吸着処理を行った。γ-アルミナが有する細孔の平均細孔径は、8.5nmである。その結果、混合ガスの供給開始直後から、定量測定限界(8000ppm)を超える濃度のブロモトリフルオロエチレンが検出された。すなわち、吸着剤としてγ-アルミナを用いた場合は、ブロモトリフルオロエチレンが吸着されなかったことになる。
【0056】
〔比較例4〕
吸着塔内の温度を120℃とした点以外は実施例1と同様にして、ブロモトリフルオロエチレンの吸着処理を行った。その結果、混合ガスの供給開始直後から、定量測定限界(8000ppm)を超える濃度のブロモトリフルオロエチレンが検出された。すなわち、吸着塔内の温度が120℃以上の高温である場合は、ブロモトリフルオロエチレンが吸着されなかったことになる。
【0057】
〔比較例5〕
処理ガスとして2-ブロモ-1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペンと乾燥窒素の混合ガス(混合ガス中の2-ブロモ-1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペンの含有率は20体積%)を用いた点以外は実施例4と同様にして、2-ブロモ-1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペンの吸着処理を行った。その結果、混合ガスの供給開始直後から、定量測定限界(8000ppm)を超える濃度の2-ブロモ-1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペンが検出された。すなわち、吸着剤としてモレキュラーシーブ5Aを用いた場合は、2-ブロモ-1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペンが吸着されなかったことになる。
【0058】
〔比較例6〕
処理ガスとして2-ブロモ-1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペンと乾燥窒素の混合ガス(混合ガス中の2-ブロモ-1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペンの含有率は20体積%)を用いた点以外は実施例1と同様にして、2-ブロモ-1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペンの吸着処理を行った。その結果、混合ガスの供給開始から10分経過後に、定量測定限界(8000ppm)を超える濃度の2-ブロモ-1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペンが検出された。すなわち、吸着剤としてモレキュラーシーブ13Xを用いた場合は、2-ブロモ-1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペンの吸着量は、ブロモトリフルオロエチレンの吸着量に劣るという結果が得られた。
【符号の説明】
【0059】
1 ガス処理装置
2 ブロモフルオロエチレンガス供給機構
3 不活性ガス供給機構
4 供給口
5 排出口
6 吸着塔
7 吸着剤
8 フーリエ変換赤外分光光度計
9 廃棄用配管