(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】シリコン含有ポリマー組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 77/34 20060101AFI20241217BHJP
G03F 7/11 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
C08G77/34
G03F7/11 502
G03F7/11 503
(21)【出願番号】P 2021543790
(86)(22)【出願日】2020-09-02
(86)【国際出願番号】 JP2020033158
(87)【国際公開番号】W WO2021045068
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-08-14
(31)【優先権主張番号】P 2019162265
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020023547
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】大矢 拓未
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-279589(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031563(WO,A1)
【文献】特開2003-321545(JP,A)
【文献】国際公開第2015/194555(WO,A1)
【文献】特表2015-512980(JP,A)
【文献】特開平07-005683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00-77/62
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒を含む被処理シリコン含有ポリマー組成物を、
強酸性の官能基を有するゲル型陽イオン交換樹脂で処理すること
、及び前記有機溶媒は、前記被処理シリコン含有ポリマー組成物が含む溶媒の100%であることを特徴とする、処理前後のシリコン含有ポリマーの重量平均分子量変化(ΔMw)が低減された、シリコン含有ポリマー組成物の製造方法。
【請求項2】
上記重量平均分子量変化(ΔMw)が70以下である、請求項1に記載のシリコン含有ポリマー組成物の製造方法。
【請求項3】
上記イオン交換樹脂が、スルホン酸基を官能基として有する、請求項1又は2に記載のシリコン含有ポリマー組成物の製造方法。
【請求項4】
上記イオン交換処理後の金属24元素合計の残存量が、1ppb以下であり、前記金属24元素がLi、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、As、Zr、Mo、Ag、Cd、Sn、Ba、W、及びPbである、請求項1~3何れか1項に記載のシリコン含有ポリマー組成物の製造方法。
【請求項5】
前記処理する方法が、回分式又はカラム流通式である、請求項1~4何れか1項に記載のシリコン含有ポリマー組成物の製造方法。
【請求項6】
被処理シリコン含有ポリマーの重量平均分子量(Mw)が800~100000である、請求項1~5いずれか1項に記載のシリコン含有ポリマー組成物の製造方法。
【請求項7】
強酸性の官能基を有するゲル型陽イオン交換樹脂処理前後の、シリコン含有ポリマーの重量平均分子量変化(ΔMw)が70以下であり、イオン交換処理後の金属24元素合計の残存量が1ppb以下であり、前記金属24元素がLi、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、As、Zr、Mo、Ag、Cd、Sn、Ba、W、及びPbである、シリコン含有ポリマー組成物を含む、シリコン含有レジスト下層膜形成組成物。
【請求項8】
請求項7記載のシリコン含有レジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し、焼成してシリコン含有レジスト下層膜を形成する工程、該下層膜の上にレジスト膜形成組成物を塗布しレジスト膜を形成する工程、該レジスト膜を露光する工程、露光後に該レジスト膜を現像しパターン化されたレジスト膜を得る工程、該パターン化されたレジスト膜により該シリコン含有レジスト下層膜をエッチングしてパターン化する工程、及び該パターン化されたレジスト膜とシリコン含有レジスト下層膜により半導体基板を加工する工程を含む、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半導体装置製造におけるリソグラフィー工程において、欠陥の原因となる金属不純物が低減されたシリコン含有ポリマーの産業上有用な製造方法(金属不純物の精製方法)に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置製造におけるリソグラフィー工程において使用されるリソグラフィー用塗布膜形成組成物は、ウエハー上の微小欠陥(例えば1~100nm程度、ディフェクト等と呼ばれる)の原因となる金属不純物の低減が求められている。
【0003】
アルカリ金属イオンの含有量の少ないシリコーンレジンを効率よく得るための精製方法が開示されている(特許文献1)。
【0004】
また、蒸留による精製も金属不純物を効率良く除去する方法として用いることができるが、被精製化合物が固体または高沸点である場合、あるいは被精製化合物が熱に対しての安定性が低い場合には適用することができない等の問題がある。
【0005】
一般的な金属不純物除去法としてイオン交換樹脂を用いる方法も知られているが、イオン交換樹脂はアルコキシシランの重合を促進する触媒として作用し、被精製化合物の変性を促すという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、特定の構造を有するイオン交換樹脂で金属不純物を含む被処理シリコン含有ポリマー組成物を処理することで、処理前後の重量平均分子量変化(ΔMw)を抑えつつ、金属不純物を低減させることができるシリコン含有ポリマー組成物の製造方法およびシリコン含有ポリマー組成物を提供することを目的とする。
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、特にスルホン酸基を官能基として有するゲル型の強酸性陽イオン交換樹脂で金属不純物を含む被処理シリコン含有ポリマー組成物を処理することで、シリコン含有ポリマーの変性(すなわち、重量平均分子量変化(ΔMw))を抑えながら効率よく金属不純物を低減させることができる手法を見出し、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下を包含する。
【0010】
[1]
有機溶媒を含む被処理シリコン含有ポリマー組成物を、ゲル型陽イオン交換樹脂で処理することを特徴とする、処理前後のシリコン含有ポリマーの重量平均分子量変化(ΔMw)が低減された、シリコン含有ポリマー組成物の製造方法。
【0011】
好ましくは、有機溶媒、及びシリコン含有ポリマーを含む被処理シリコン含有ポリマー組成物を、ゲル型陽イオン交換樹脂で処理することを特徴とするシリコン含有ポリマー組成物の製造方法であって、処理前のシリコン含有ポリマー組成物中のシリコン含有ポリマーに対する処理後のシリコン含有ポリマー組成物中のシリコン含有ポリマーの重量平均分子量変化(ΔMw)が低減される方法。
【0012】
[2]
上記重量平均分子量変化(ΔMw)が70以下である、[1]に記載のシリコン含有ポリマー組成物の製造方法。
【0013】
[3]
上記イオン交換樹脂が、強酸性の官能基を有する、[1]又は[2]に記載のシリコン含有ポリマー組成物の製造方法。
【0014】
[4]
上記イオン交換樹脂が、スルホン酸基を官能基として有する、[1]~[3]何れか1に記載のシリコン含有ポリマー組成物の製造方法。
【0015】
[5]
上記イオン交換処理後の金属24元素合計の残存量が、1ppb以下である、[1]~[4]何れか1に記載のシリコン含有ポリマー組成物の製造方法。
【0016】
好ましくは、被処理シリコン含有ポリマー組成物が更に金属不純物を含み、上記イオン交換処理後のシリコン含有ポリマー組成物中のLi、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、As、Zr、Mo、Ag、Cd、Sn、Ba、W、及びPbの合計量が1ppb以下である、[1]~[4]何れか1に記載のシリコン含有ポリマー組成物の製造方法。
【0017】
[6]
前記処理する方法が、回分式又はカラム流通式である、[1]~[5]何れか1に記載のシリコン含有ポリマー組成物の製造方法。
【0018】
[7]
被処理シリコン含有ポリマー、すなわち、被処理シリコン含有ポリマー組成物に含まれるシリコン含有ポリマーの重量平均分子量(Mw)が800~100000 である、[1]~[6]いずれか1に記載のシリコン含有ポリマー組成物の製造方法。
【0019】
[8]
ゲル型陽イオン交換樹脂処理前後の、シリコン含有ポリマーの重量平均分子量変化(ΔMw)が70以下であり、イオン交換処理後の金属24元素合計の残存量が1ppb以下である、シリコン含有ポリマー組成物。
【0020】
又は、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、As、Zr、Mo、Ag、Cd、Sn、Ba、W、及びPbの合計量が、0.8ppb未満であるシリコン含有ポリマー組成物。
【0021】
[9]
[8]記載のシリコン含有ポリマー組成物を含む、シリコン含有レジスト下層膜形成組成物。
【0022】
[10]
[9]記載のシリコン含有レジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し、焼成してシリコン含有レジスト下層膜を形成する工程、該下層膜の上にレジスト膜形成組成物を塗布しレジスト膜を形成する工程、該レジスト膜を露光する工程、露光後に該レジスト膜を現像しパターン化されたレジスト膜を得る工程、該パターン化されたレジスト膜により該シリコン含有レジスト下層膜をエッチングしてパターン化する工程、及び該パターン化されたレジスト膜とシリコン含有レジスト下層膜により半導体基板を加工する工程を含む半導体装置の製造方法。
【0023】
[11]
有機溶媒を含む被処理シリコン含有ポリマー組成物を、ゲル型陽イオン交換樹脂で処理する工程を含む、処理前後のシリコン含有ポリマーの重量平均分子量変化(ΔMw)が低減された、シリコン含有レジスト下層膜形成組成物の製造方法。
【0024】
[12]
[11]記載の方法で製造されたシリコン含有レジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し、焼成してシリコン含有レジスト下層膜を形成する工程、該下層膜の上にレジスト膜形成組成物を塗布しレジスト膜を形成する工程、該レジスト膜を露光する工程、露光後に該レジスト膜を現像しパターン化されたレジスト膜を得る工程、該パターン化されたレジスト膜により該シリコン含有レジスト下層膜をエッチングしてパターン化する工程、及び該パターン化されたレジスト膜とシリコン含有レジスト下層膜により半導体基板を加工する工程を含む、半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0025】
本願の方法によれば、半導体リソグラフィー工程で用いられる、高純度が要求されるシリコン含有ポリマー組成物の製造において、本願の方法にてイオン交換樹脂処理を行うと、シリコンポリマーの変性、具体的には重量平均分子量(Mw)の処理前後での変化量(ΔMw)を抑えつつ、上記シリコン含有ポリマー組成物中の金属不純物を低減することが出来る。
【0026】
本願の方法により、金属不純物が低減されたシリコン含有レジスト下層膜形成組成物、半導体装置の製造方法が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<イオン交換樹脂>
イオン交換樹脂の一例としては、スチレン・ジビニルベンゼンの共重合体からなる多孔質担体の表面にイオン交換基を固定化させたものである。樹脂のもつ固定交換基の種類によって強酸性、弱酸性などに分類される。強酸性のものとしては、スルホン基が挙げられる。弱酸性のものとしては、カルボキシル基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、亜砒酸基およびフェノキシド基が挙げられる。また、担体の物理的性質からゲル型、ゲル型樹脂体に細孔を形成させ、多孔質化した巨大網目(MR[Micro-Reticular])型等に分類される。
【0028】
イオン交換樹脂の触媒作用は、反応物とイオン交換樹脂表面との接触面積およびイオン交換樹脂表面上の官能基種類に依存する。理論に拘束されるものではないが、ゲル型イオン交換樹脂は、一般にミクロ孔(細孔径:十数Å-数十Å)のみを有するために反応物がポリマー等の大きな分子量を有するものである場合、樹脂細孔内へ侵入しづらいことが想定される。MR型イオン交換樹脂は、メソ孔-マクロ孔(細孔径:数百Å~)を有するために反応物がポリマー等の大きな分子量を有するものである場合でも細孔内に侵入可能であり、相対的にポリマー等とイオン交換樹脂表面との接触面積が大きくなることが想定できる。本発明において用いるイオン交換樹脂は、スルホン酸基を有するゲル型の強酸性イオン交換樹脂であることが好ましい。
【0029】
本特徴を有するもの、すなわちゲル型陽イオン交換樹脂であればイオン交換樹脂は特に限定はされず、市販されているものを用いることができる。
【0030】
イオン交換樹脂による金属不純物の除去は、オイル状または固体状の被処理シリコン含有ポリマーを有機溶媒に再溶解させた溶液(被処理シリコン含有ポリマー組成物)、又は被処理シリコン含有ポリマーを合成後、後処理をしたシリコン含有ポリマー含有溶液(被処理シリコン含有ポリマー組成物)を回分式またはカラム流通式によりイオン交換樹脂で処理することで行うことができる。
【0031】
回分式とは、被処理溶液とイオン交換樹脂を一定時間撹拌混合した後、ろ過等により樹脂を除去する方法である。又カラム流通式とは、イオン交換樹脂を充填したカラムや充填塔などの固定層に被処理溶液を通液することで金属不純物を被処理溶液から除去する方法である。
【0032】
上記回分式とカラム流通式とを比較すると、一般的に被処理溶液とイオン交換樹脂の接触効率の観点から、カラム流通式の方が短時間でイオン交換樹脂での処理が可能なため、重量平均分子量変化(ΔMw)の低減効果が大きい。
【0033】
処理の回数は通常1回であるが、2回以上行ってもよい。回分式による処理時間は、被処理シリコン含有ポリマー組成物に含まれるシリコン含有ポリマーやイオン交換樹脂の種類や量、使用する溶媒の種類や量により異なる。同様に、カラム流通式における通液速度は、被処理シリコン含有ポリマー組成物に含まれるシリコン含有ポリマーやイオン交換樹脂の種類や量、使用する溶媒の種類や量により異なる。これらの諸条件は、当業者がルーチン実験によって容易に最適化することができる。
【0034】
本発明において用いるイオン交換樹脂の使用量は被処理シリコン含有ポリマー組成物に含まれるシリコン含有ポリマーの種類や使用する有機溶媒の種類にもよるが、被処理シリコン含有ポリマー組成物に含まれるシリコン含有ポリマーの量に対して通常0.01~1000質量%程度であり、0.1~500質量%が好ましく、1質量%~100質量%がより好ましい。
【0035】
<被処理シリコン含有ポリマー組成物に含まれるシリコン含有ポリマー>
本発明で用いられる被処理シリコン含有ポリマー組成物に含まれるシリコン含有ポリマーは特に限定されず、市販のものでも、公知の方法で合成したものでもよい。シリコン含有ポリマーは、市販されているアルコキシケイ素化合物を公知の方法(例えば加水分解による共縮合等)で重合することにより得ることが出来る。
【0036】
アルコキシケイ素化合物の具体例としては、例えば信越化学工業(株)製の下記(2-1)~(2-28)に示す化合物が挙げられる。
【0037】
【化1】
また、シリコン含有ポリマーは公知の方法(例えば、WO2011/102470、WO2019/003767)で得られるものや、特開2003-26809で合成できるものが挙げられる。
【0038】
アルコキシケイ素化合物の具体例としては下記式(3-1)~(3-19)の化合物が挙げられる。
【0039】
【0040】
<有機溶媒>
本発明において被処理シリコン含有ポリマー組成物に含まれる有機溶媒、及び/又は被処理シリコン含有ポリマー組成物にイオン交換処理時に添加される有機溶媒は、例えば下記に記載される有機溶媒が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0041】
前記有機溶媒としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロペンチルメチルエーテル、4-メチル-2-ペンタノール、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル、エトキシ酢酸エチル、酢酸2-ヒドロキシエチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、2-ヘプタノン、メトキシシクロペンタン、アニソール、γ-ブチロラクトン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、n-へプタン、ヘキサン、イソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン,2-メチルテトラヒドロフラン、及び2,5-ジメチルテトラヒドロフランが挙げられる。これらの溶剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
これらの溶媒の中でプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、シクロヘキサノン、n-へプタン、ヘキサン、トルエン、イソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、及び2,5-ジメチルテトラヒドロフラン等が好ましい。特にプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、イソプロピルエーテルが好ましい。
【0043】
有機溶媒の使用量としては被処理シリコン含有ポリマーを十分に溶解させることができる量であれば特に限定されないが、被処理シリコン含有ポリマー100質量部に対して通常2質量部~1000質量部程度であり、4質量部~100質量部が好ましい。
【0044】
本願の被処理シリコン含有ポリマー組成物が含む有機溶媒は、該組成物が含む溶媒の100%であることが好ましいが、有機溶媒以外の溶媒を含んでいてもよい。例えば組成物全体を100質量%とした場合に、1質量%以下の割合で有機溶媒以外の溶媒(例えば、水)を含んでいてもよい。
【0045】
被処理シリコン含有ポリマー組成物に含まれるシリコン含有ポリマーの重量平均分子量(Mw)は通常800~100000、好ましくは800~10000、さらに好ましくは800~5000である。重量平均分子量(Mw)は、例えば実施例に記載のGPC法により求められる。イオン交換樹脂処理前後の重量平均分子量(Mw)変化は70以下であることが好ましく、小さい程好ましいが、60以下、50以下、40以下、30以下、20以下、10以下、5以下、3以下、1以下、又は0であることが好ましい。
【0046】
イオン交換樹脂処理後のシリコン含有ポリマー組成物中の金属24元素(Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、As、Zr、Mo、Ag、Cd、Sn、Ba、W、Pb)合計の残存量が、1ppb以下であることが好ましい。金属24元素合計の残存量は、例えば実施例に記載の誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)により測定できる。
【0047】
金属24元素合計の残存量が、0.9ppb以下であることが好ましい。金属24元素合計の残存量が、0.8ppb未満、又は0.8ppb以下であることが好ましい。金属24元素合計の残存量が、0.7ppb以下であることが好ましい。金属24元素合計の残存量が、0.6ppb以下であることが好ましい。金属24元素合計の残存量が、0.5ppb以下であることが好ましい。金属24元素合計の残存量が、0.4ppb以下であることが好ましい。金属24元素合計の残存量が、0.3ppb以下であることが好ましい。金属24元素合計の残存量が、0.2ppb以下であることが好ましい。金属24元素合計の残存量が、0.1ppb以下であることが好ましい。金属24元素合計の残存量が、0.08ppb以下であることが好ましい。金属24元素合計の残存量が、0.05ppb以下であることが好ましい。金属24元素合計の残存量が、0.03ppb以下であることが好ましい。金属24元素合計の残存量が、0.01ppb以下であることが好ましい。金属24元素合計の残存量が、0(検出限界以下)であることが好ましい。
【0048】
<シリコン含有レジスト下層膜形成組成物>
本願のシリコン含有レジスト下層膜形成物は、本願の方法で処理されたシリコン含有ポリマー組成物を含む。被処理シリコン含有ポリマー組成物に含まれるシリコン含有ポリマーとしては、公知のシリコン含有レジスト下層膜形成組成物、例えばWO2019/181873、WO2019/124514、WO2019/082934、WO2019/009413、WO2018/181989、WO2018/079599、WO2017/145809、WO2017/145808、WO2016/031563等が挙げられるが、これに限定されない)に含まれるシリコン含有ポリマー(ポリシロキサン等)が挙げられる。
【0049】
本願のシリコン含有レジスト下層膜形成組成物の好ましい実施態様は、上記明細書に記載の実施態様が挙げられる。
【0050】
被処理シリコン含有ポリマー組成物に含まれるシリコン含有ポリマーとしては、例えば WO2016/031563に記載の被覆用ポリシロキサン組成物に含まれるポリシロキサンが挙げられる。被覆用ポリシロキサン組成物の全シラン中、2つ乃至3つの加水分解性基を有する加水分解性シランを30乃至100モル%となる割合で含む加水分解性シランの加水分解縮合物を含む被覆用ポリシロキサン組成物、である。
【0051】
加水分解性シランが式(1):
【化4】
(式(1)中、R
1はアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、もしくはシアノ基を有する有機基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R
2はアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、aは0乃至2の整数を示す。)で示され、かつ全シラン中に、式(1)中aが1乃至2である加水分解性シランを30乃至100モル%及び、式(1)中aが0である加水分解性シランを0乃至70モル%となる割合で含むものである。
【0052】
上記本願のレジスト下層膜形成組成物や被覆用ポリシロキサン組成物は、例えば式(1)で示されるような加水分解性シランの加水分解縮合物と、溶剤とを含む。そして任意成分として酸、水、アルコール、硬化触媒、酸発生剤、他の有機ポリマー、吸光性化合物、及び界面活性剤等を含むことができる。
【0053】
上記被覆用ポリシロキサン組成物における固形分は、例えば0.1乃至50質量%、又は0.1乃至30質量%、0.1乃至25質量%である。ここで固形分とは被覆用ポリシロキサン組成物の全成分から溶剤成分を除いたものである。
【0054】
固形分中に占める加水分解性シラン、その加水分解物、及びその加水分解縮合物の割合は、通常20質量%以上であり、例えば50乃至100質量%、60乃至99質量%、70乃至99質量%である。
【0055】
そして上述の加水分解性シラン、その加水分解物、及びその加水分解縮合物はそれらの混合物として用いることもできる。加水分解性シランを加水分解し、得られた加水分解物を縮合した縮合物として用いることができる。加水分解縮合物を得る際に加水分解が完全に完了しない部分加水分解物やシラン化合物が加水分解縮合物に混合されて、その混合物を用いることもできる。この縮合物はポリシロキサン構造を有するポリマーである。
【0056】
又、被処理シリコン含有ポリマー組成物に含まれるシリコン含有ポリマーとしては、例えばWO2019/082934に記載の加水分解性シランを加水分解し縮合して得られた加水分解縮合物が挙げられる。
【0057】
前記加水分解性シランは式(1-1):
【化5】
(式(1-1)中、R
1は第1級アミノ基、第2級アミノ基、又は第3級アミノ基を有する有機基を表し、且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものである。R
2はアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、アシルオキシアルキル基、又はアクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、エステル基、スルホニル基、もしくはシアノ基を有する有機基、又はそれらの組み合わせである基を表し、且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものである。ここで、R
1とR
2とは結合して環構造を形成してもよい。R
3はアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を表す。aは1の整数を示し、bは0~2の整数を示し、a+bは1~3の整数を示す。)で表される加水分解性シランを含み、前記加水分解縮合物は強酸に由来する対アニオンと第1級アンモニウム基、第2級アンモニウム基、又は第3級アンモニウム基に由来する対カチオンとの塩構造を有する有機基を含むものである。
【0058】
上記加水分解縮合物の好ましい実施態様としては、WO2019/082934に記載の内容に準ずる。
【0059】
上記アルキル基としては直鎖又は分枝を有する炭素原子数1乃至10のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、n-ヘキシル、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基及び1-エチル-2-メチル-n-プロピル基等が挙げられる。
【0060】
また環状アルキル基を用いることもでき、例えば炭素原子数1乃至10の環状アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル基及び2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基等が挙げられる。
【0061】
上記アルケニル基としては炭素原子数2乃至10のアルケニル基であり、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチル-1-エテニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-エチルエテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-n-プロピルエテニル基、1-メチル-1-ブテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、1-メチル-3-ブテニル基、2-エチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-3-ブテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-3-ブテニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基、1-i-プロピルエテニル基、1,2-ジメチル-1-プロペニル基、1,2-ジメチル-2-プロペニル基、1-シクロペンテニル基、2-シクロペンテニル基、3-シクロペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、1-メチル-1-ペンテニル基、1-メチル-2-ペンテニル基、1-メチル-3-ペンテニル基、1-メチル-4-ペンテニル基、1-n-ブチルエテニル基、2-メチル-1-ペンテニル基、2-メチル-2-ペンテニル基、2-メチル-3-ペンテニル基、2-メチル-4-ペンテニル基、2-n-プロピル-2-プロペニル基、3-メチル-1-ペンテニル基、3-メチル-2-ペンテニル基、3-メチル-3-ペンテニル基、3-メチル-4-ペンテニル基、3-エチル-3-ブテニル基、4-メチル-1-ペンテニル基、4-メチル-2-ペンテニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、4-メチル-4-ペンテニル基、1,1-ジメチル-2-ブテニル基、1,1-ジメチル-3-ブテニル基、1,2-ジメチル-1-ブテニル基、1,2-ジメチル-2-ブテニル基、1,2-ジメチル-3-ブテニル基、1-メチル-2-エチル-2-プロペニル基、1-s-ブチルエテニル基、1,3-ジメチル-1-ブテニル基、1,3-ジメチル-2-ブテニル基、1,3-ジメチル-3-ブテニル基、1-i-ブチルエテニル基、2,2-ジメチル-3-ブテニル基、2,3-ジメチル-1-ブテニル基、2,3-ジメチル-2-ブテニル基、2,3-ジメチル-3-ブテニル基、2-i-プロピル-2-プロペニル基、3,3-ジメチル-1-ブテニル基、1-エチル-1-ブテニル基、1-エチル-2-ブテニル基、1-エチル-3-ブテニル基、1-n-プロピル-1-プロペニル基、1-n-プロピル-2-プロペニル基、2-エチル-1-ブテニル基、2-エチル-2-ブテニル基、2-エチル-3-ブテニル基、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル基、1-t-ブチルエテニル基、1-メチル-1-エチル-2-プロペニル基、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル基、1-エチル-2-メチル-2-プロペニル基、1-i-プロピル-1-プロペニル基、1-i-プロピル-2-プロペニル基、1-メチル-2-シクロペンテニル基、1-メチル-3-シクロペンテニル基、2-メチル-1-シクロペンテニル基、2-メチル-2-シクロペンテニル基、2-メチル-3-シクロペンテニル基、2-メチル-4-シクロペンテニル基、2-メチル-5-シクロペンテニル基、2-メチレン-シクロペンチル基、3-メチル-1-シクロペンテニル基、3-メチル-2-シクロペンテニル基、3-メチル-3-シクロペンテニル基、3-メチル-4-シクロペンテニル基、3-メチル-5-シクロペンテニル基、3-メチレン-シクロペンチル基、1-シクロヘキセニル基、2-シクロヘキセニル基及び3-シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0062】
上記アリール基としては炭素原子数6乃至20のアリール基が挙げられ、例えばフェニル基、o-メチルフェニル基、m-メチルフェニル基、p-メチルフェニル基、o-クロルフェニル基、m-クロルフェニル基、p-クロルフェニル基、o-フルオロフェニル基、p-メルカプトフェニル基、o-メトキシフェニル基、p-メトキシフェニル基、p-アミノフェニル基、p-シアノフェニル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基、o-ビフェニリル基、m-ビフェニリル基、p-ビフェニリル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基及び9-フェナントリル基が挙げられる。
【0063】
上記エポキシ基を有する有機基としては、グリシドキシメチル、グリシドキシエチル、グリシドキシプロピル、グリシドキシブチル、エポキシシクロヘキシル等が挙げられる。
【0064】
上記アクリロイル基を有する有機基としては、アクリロイルメチル、アクリロイルエチル、アクリロイルプロピル等が挙げられる。
【0065】
上記メタクリロイル基を有する有機基としては、メタクリロイルメチル、メタクリロイルエチル、メタクリロイルプロピル等が挙げられる。
【0066】
上記メルカプト基を有する有機基としては、エチルメルカプト、ブチルメルカプト、ヘキシルメルカプト、オクチルメルカプト等が挙げられる。
【0067】
上記シアノ基を有する有機基としては、シアノエチル、シアノプロピル等が挙げられる。
【0068】
上記アルコキシ基としては、炭素原子数1乃至20の直鎖、分岐、環状のアルキル部分を有するアルコキシ基が挙げられ、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチロキシ基、1-メチル-n-ブトキシ基、2-メチル-n-ブトキシ基、3-メチル-n-ブトキシ基、1,1-ジメチル-n-プロポキシ基、1,2-ジメチル-n-プロポキシ基、2,2-ジメチル-n-プロポキシ基、1-エチル-n-プロポキシ基、n-ヘキシロキシ基、1-メチル-n-ペンチロキシ基、2-メチル-n-ペンチロキシ基、3-メチル-n-ペンチロキシ基、4-メチル-n-ペンチロキシ基、1,1-ジメチル-n-ブトキシ基、1,2-ジメチル-n-ブトキシ基、1,3-ジメチル-n-ブトキシ基、2,2-ジメチル-n-ブトキシ基、2,3-ジメチル-n-ブトキシ基、3,3-ジメチル-n-ブトキシ基、1-エチル-n-ブトキシ基、2-エチル-n-ブトキシ基、1,1,2-トリメチル-n-プロポキシ基、1,2,2-トリメチル-n-プロポキシ基、1-エチル-1-メチル-n-プロポキシ基及び1-エチル-2-メチル-n-プロポキシ基等が、また環状のアルコキシ基としてはシクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、1-メチル-シクロプロポキシ基、2-メチル-シクロプロポキシ基、シクロペンチロキシ基、1-メチル-シクロブトキシ基、2-メチル-シクロブトキシ基、3-メチル-シクロブトキシ基、1,2-ジメチル-シクロプロポキシ基、2,3-ジメチル-シクロプロポキシ基、1-エチル-シクロプロポキシ基、2-エチル-シクロプロポキシ基、シクロヘキシロキシ基、1-メチル-シクロペンチロキシ基、2-メチル-シクロペンチロキシ基、3-メチル-シクロペンチロキシ基、1-エチル-シクロブトキシ基、2-エチル-シクロブトキシ基、3-エチル-シクロブトキシ基、1,2-ジメチル-シクロブトキシ基、1,3-ジメチル-シクロブトキシ基、2,2-ジメチル-シクロブトキシ基、2,3-ジメチル-シクロブトキシ基、2,4-ジメチル-シクロブトキシ基、3,3-ジメチル-シクロブトキシ基、1-n-プロピル-シクロプロポキシ基、2-n-プロピル-シクロプロポキシ基、1-i-プロピル-シクロプロポキシ基、2-i-プロピル-シクロプロポキシ基、1,2,2-トリメチル-シクロプロポキシ基、1,2,3-トリメチル-シクロプロポキシ基、2,2,3-トリメチル-シクロプロポキシ基、1-エチル-2-メチル-シクロプロポキシ基、2-エチル-1-メチル-シクロプロポキシ基、2-エチル-2-メチル-シクロプロポキシ基及び2-エチル-3-メチル-シクロプロポキシ基等が挙げられる。
【0069】
上記アシルオキシ基としては、上記炭素原子数2乃至20のアシルオキシ基が挙げられ、例えばメチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n-プロピルカルボニルオキシ基、i-プロピルカルボニルオキシ基、n-ブチルカルボニルオキシ基、i-ブチルカルボニルオキシ基、s-ブチルカルボニルオキシ基、t-ブチルカルボニルオキシ基、n-ペンチルカルボニルオキシ基、1-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、3-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,1-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1,2-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、2,2-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1-エチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、n-ヘキシルカルボニルオキシ基、1-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、2-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、3-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、4-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、1,1-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,2-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,3-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2,2-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2,3-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、3,3-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1-エチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2-エチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,1,2-トリメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1,2,2-トリメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1-エチル-1-メチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1-エチル-2-メチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基、及びトシルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0070】
アシルオキシアルキル基は上述のアルキル基と下記のアシルオキシ基の組み合わせを挙げることができ、たとえばアセトキシメチル基、アセトキシエチル基、アセトキシプロピル基等が例示される。
【0071】
上記ハロゲン基としてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0072】
以上に記載した基の例は、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基におけるアルキル基、アリール基、アルコキシ基及びハロゲン基の部分にも適用される。
【0073】
<半導体装置の製造方法>
以下、本発明に用いるシリコン含有レジスト下層膜形成組成物の使用について説明する。
【0074】
半導体装置の製造に使用される基板(例えば、シリコンウェハー基板、シリコン/二酸化シリコン被覆基板、シリコンナイトライド基板、ガラス基板、ITO基板、ポリイミド基板、及び低誘電率材料(low-k材料)被覆基板等)の上に、スピナー、コーター等の適当な塗布方法により本発明のシリコン含有レジスト下層膜形成組成物が塗布され、その後、焼成することによりシリコン含有レジスト下層膜が形成される。焼成する条件としては、焼成温度80℃~250℃、焼成時間0.3~60分間の中から適宜、選択される。好ましくは、焼成温度150℃~250℃、焼成時間0.5~2分間である。
【0075】
ここで、形成される下層膜の膜厚としては、例えば、10~1000nmであり、または20~500nmであり、または50~300nmであり、または100~200nmである。そして、本発明はシリコン含有レジスト下層膜がEUVレジストの下層膜であって、該シリコン含有レジスト下層膜の膜厚を1nm~30nm、又は1nm~20nm、又は1nm~5nmとすることができる。
【0076】
次いでそのシリコン含有レジスト下層膜の上に、例えばフォトレジストの層が形成される。フォトレジストの層の形成は、周知の方法、すなわち、フォトレジスト組成物溶液の下層膜上への塗布及び焼成によって行なうことができる。フォトレジストの膜厚としては例えば50~10000nmであり、または100~2000nmであり、または200~1000nmである。本発明では基板上に有機下層膜を成膜した後、この上に本発明に用いるシリコン含有レジスト下層膜を成膜し、更にその上にフォトレジストを被覆することができる。これによりフォトレジストのパターン幅が狭くなり、パターン倒れを防ぐ為にフォトレジストを薄く被覆した場合でも、適切なエッチングガスを選択することにより基板の加工が可能になる。例えば、フォトレジストに対して十分に早いエッチング速度となるフッ素系ガスをエッチングガスとして本発明に用いるシリコン含有レジスト下層膜に加工が可能であり、また本発明に用いるシリコン含有レジスト下層膜に対して十分に早いエッチング速度となる酸素系ガスをエッチングガスとして有機下層膜の加工が可能であり、更に有機下層膜に対して十分に早いエッチング速度となるフッ素系ガスをエッチングガスとして基板の加工を行うことができる。
【0077】
本発明に用いるシリコン含有レジスト下層膜の上に形成されるフォトレジストとしては露光に使用される光に感光するものであれば特に限定はない。ネガ型フォトレジスト及びポジ型フォトレジストのいずれも使用できる。ノボラック樹脂と1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとからなるポジ型フォトレジスト、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト、酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物とアルカリ可溶性バインダーと光酸発生剤とからなる化学増幅型フォトレジスト、及び酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物と光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジストなどがある。例えば、シプレー社製商品名APEX-E、住友化学工業(株)製商品名PAR710、及び信越化学工業(株)製商品名SEPR430等が挙げられる。また、例えば、Proc.SPIE,Vol.3999,330-334(2000)、Proc.SPIE,Vol.3999,357-364(2000)、やProc.SPIE,Vol.3999,365-374(2000)に記載されているような、含フッ素原子ポリマー系フォトレジストを挙げることができる。
【0078】
次に、本発明では所定のマスクを通して露光が行なわれる。露光には、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)及びF2エキシマレーザー(波長157nm)等を使用することができる。露光後、必要に応じて露光後加熱(post exposure bake)を行なうこともできる。露光後加熱は、加熱温度70℃~150℃、加熱時間0.3~10分間から適宜、選択された条件で行われる。
【0079】
また、本発明ではレジストとしてフォトレジストに変えて電子線リソグラフィー用レジスト、又はEUVリソグラフィー用レジストを用いることができる。電子線レジストとしてはネガ型、ポジ型いずれも使用できる。酸発生剤と酸により分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーからなる化学増幅型レジスト、アルカリ可溶性バインダーと酸発生剤と酸により分解してレジストのアルカリ溶解速度を変化させる低分子化合物からなる化学増幅型レジスト、酸発生剤と酸により分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーと酸により分解してレジストのアルカリ溶解速度を変化させる低分子化合物からなる化学増幅型レジスト、電子線によって分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーからなる非化学増幅型レジスト、電子線によって切断されアルカリ溶解速度を変化させる部位を有するバインダーからなる非化学増幅型レジストなどがある。これらの電子線レジストを用いた場合も照射源を電子線としてフォトレジストを用いた場合と同様にレジストパターンを形成することができる。また、EUVレジストとしてはメタクリレート樹脂系レジストを用いることができる。
【0080】
次いで、現像液(例えばアルカリ現像液)によって現像が行なわれる。これにより、例えばポジ型フォトレジストが使用された場合は、露光された部分のフォトレジストが除去され、フォトレジストのパターンが形成される。
【0081】
現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリンなどの水酸化四級アンモニウムの水溶液、エタノールアミン、プロピルアミン、エチレンジアミンなどのアミン水溶液等のアルカリ性水溶液を例として挙げることができる。さらに、これらの現像液に界面活性剤などを加えることもできる。現像の条件としては、温度5~50℃、時間10~600秒から適宜選択される。
【0082】
また、本発明では現像液として有機溶剤を用いることができる。露光後に現像液(溶剤)によって現像が行なわれる。これにより、例えばポジ型フォトレジストが使用された場合は、露光されない部分のフォトレジストが除去され、フォトレジストのパターンが形成される。
【0083】
現像液としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2-メトキシブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、4-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-エチル-3-メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2-エトキシブチルアセテート、4-エトキシブチルアセテート、4-プロポキシブチルアセテート、2-メトキシペンチルアセテート、3-メトキシペンチルアセテート、4-メトキシペンチルアセテート、2-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、4-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、メチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-エトキシプロピオネート、プロピル-3-メトキシプロピオネート等を例として挙げることができる。さらに、これらの現像液に界面活性剤などを加えることもできる。現像の条件としては、温度5~50℃、時間10~600秒から適宜選択される。
【0084】
そして、このようにして形成されたフォトレジスト(上層)のパターンを保護膜として本発明のシリコン含有レジスト下層膜(中間層)の除去が行われ、次いでパターン化されたフォトレジスト及び本発明のシリコン含有レジスト下層膜(中間層)からなる膜を保護膜として、有機下層膜(下層)の除去が行われる。最後に、パターン化された本発明のシリコン含有レジスト下層膜(中間層)及び有機下層膜(下層)を保護膜として、半導体基板の加工が行なわれる。
【0085】
まず、フォトレジストが除去された部分の本発明のシリコン含有レジスト下層膜(中間層)をドライエッチングによって取り除き、半導体基板を露出させる。本発明のシリコン含有レジスト下層膜のドライエッチングにはテトラフルオロメタン(CF4)、パーフルオロシクロブタン(C4F8)、パーフルオロプロパン(C3F8)、トリフルオロメタン、一酸化炭素、アルゴン、酸素、窒素、六フッ化硫黄、ジフルオロメタン、三フッ化窒素及び三フッ化塩素、塩素、トリクロロボラン及びジクロロボラン等のガスを使用することができる。
【0086】
シリコン含有レジスト下層膜のドライエッチングにはハロゲン系ガスを使用することが好ましい。
【0087】
ハロゲン系ガスによるドライエッチングでは、基本的に有機物質からなるフォトレジストは除去されにくい。それに対し、シリコン原子を多く含む本発明のシリコン含有レジスト下層膜はハロゲン系ガスによって速やかに除去される。そのため、シリコン含有レジスト下層膜のドライエッチングに伴うフォトレジストの膜厚の減少を抑えることができる。そして、その結果、フォトレジストを薄膜で使用することが可能となる。シリコン含有レジスト下層膜のドライエッチングはフッ素系ガスによることが好ましく、フッ素系ガスとしては、例えば、テトラフルオロメタン(CF4)、パーフルオロシクロブタン(C4F8)、パーフルオロプロパン(C3F8)、トリフルオロメタン、及びジフルオロメタン(CH2F2)等が挙げられる。
【0088】
その後、パターン化されたフォトレジスト及び本発明のシリコン含有レジスト下層膜からなる膜を保護膜として有機下層膜の除去が行われる。有機下層膜(下層)は酸素系ガスによるドライエッチングによって行なわれることが好ましい。シリコン原子を多く含む本発明のシリコン含有レジスト下層膜は、酸素系ガスによるドライエッチングでは除去されにくいからである。
【0089】
最後に、半導体基板の加工が行なわれる。半導体基板の加工はフッ素系ガスによるドライエッチングによって行なわれることが好ましい。
【0090】
フッ素系ガスとしては、例えば、テトラフルオロメタン(CF4)、パーフルオロシクロブタン(C4F8)、パーフルオロプロパン(C3F8)、トリフルオロメタン、及びジフルオロメタン(CH2F2)等が挙げられる。
【0091】
また、基板の加工としてイオン注入を行うことができる。基板の加工後にマスク層が過酸化水素を含む薬液で除去する工程を経て半導体装置が製造される。マスク層はレジスト又はシリコン含有レジスト下層膜を含む有機下層膜である。
【0092】
また、本発明において、シリコン含有レジスト下層膜の上層には、フォトレジストの形成前に有機系の反射防止膜を形成することができる。そこで使用される反射防止膜組成物としては特に制限はなく、これまでリソグラフィープロセスにおいて慣用されているものの中から任意に選択して使用することができ、また、慣用されている方法、例えば、スピナー、コーターによる塗布及び焼成によって反射防止膜の形成を行なうことができる。
【0093】
また、本発明において、シリコン含有レジスト下層膜形成組成物が塗布される基板は、その表面にCVD法などで形成された有機系または無機系の反射防止膜を有するものであってもよく、その上に本発明のシリコン含有レジスト下層膜を形成することもできる。
【0094】
本発明において、シリコン含有レジスト下層膜形成組成物より形成されるシリコン含有レジスト下層膜は、また、リソグラフィープロセスにおいて使用される光の波長によっては、その光に対する吸収を有することがある。そして、そのような場合には、基板からの反射光を防止する効果を有する反射防止膜として機能することができる。さらに、本発明に用いられるシリコン含有レジスト下層膜は、基板とフォトレジストとの相互作用の防止するための層、フォトレジストに用いられる材料又はフォトレジストへの露光時に生成する物質の基板への悪作用を防ぐ機能とを有する層、加熱焼成時に基板から生成する物質の上層フォトレジストへの拡散を防ぐ機能を有する層、及び半導体基板誘電体層によるフォトレジスト層のポイズニング効果を減少させるためのバリア層等として使用することも可能である。
【0095】
また、シリコン含有レジスト下層膜形成組成物より形成されるシリコン含有レジスト下層膜は、デュアルダマシンプロセスで用いられるビアホールが形成された基板に適用され、ホールを隙間なく充填することができる埋め込み材として使用できる。また、凹凸のある半導体基板の表面を平坦化するための平坦化材として使用することもできる。
【0096】
また、EUVレジストのレジスト下層膜としてはハードマスクとしての機能以外に以下の目的にも使用できる。EUVレジストとインターミキシングすることなく、EUV露光(波長13.5nm)に際して好ましくない露光光、例えば上述のUVやDUV(ArF光、KrF光)の基板又は界面からの反射を防止することができるEUVレジストの下層反射防止膜として、上記シリコン含有レジスト下層膜形成組成物を用いることができる。EUVレジストの下層で効率的に反射を防止することができる。EUVレジスト下層膜として用いた場合は、プロセスはフォトレジスト用下層膜と同様に行うことができる。
【実施例】
【0097】
次に実施例を挙げ本発明の内容を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0098】
<GPC(Gel Permeation Chromatography)分析条件>
後述する例に示す分子量は、GPCによる測定結果であり、測定条件等は次のとおりである。
【0099】
装置:HLC-8320GPC(東ソー(株))
カラム:KF-G(4.6mmI.D.x100mm)+KF-803L(8.0mmI.D.x300mm)
+KF-802(8.0mmI.D.x300mm)+KF801(8.0mmI.D.x300mm)(昭和電工(株))
溶離液:THF(HPLCグレード)
流速:1.0ml/min.
カラム温度:40℃
検出器:RI(示差屈折率計)
注入量:30μL
サンプル濃度:固形分濃度1.0%に調製
希釈溶媒:プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)
標準サンプル:ポリスチレン,分子量47,200、13,300、3,180、1,390、580
検量線作成法:三次曲線
排除時間:0分
<略号の説明>
(有機溶媒)
PGEE:プロピレングリコールモノエチルエーテル
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0100】
<イオン交換樹脂を用いた被処理シリコン含有ポリマー(A)組成物の処理>
[実施例1]
WO2016/031563の合成例3に準じた方法にて製造されたシリコン含有ポリマー(A)PGEE/PGMEA溶液(固形分:約13質量%)95gに対して、PGEE/PGMEA溶液で洗浄し、樹脂中の水分を置換したゲル型強酸性陽イオン交換樹脂であるオルガノ社製ORLITE DS-1(商品名)を乾燥樹脂基準で5g添加し、室温で24時間撹拌後、デカンテーションにより樹脂を除去し、処理溶液(精製溶液)を得た。
【0101】
得られた精製シリコン含有ポリマー(A)溶液について、分子量に関してはGPC、残存金属量に関しては誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS(Agilent7500:アジレントテクノロジー株式会社製))にて測定した。分子量、残存金属量を測定した結果を表1に示す。残存金属量はシリコン含有ポリマー溶液1kg中に1mgの金属が溶解している場合、金属濃度が1000ppbであるとしたときの値を示す。
【0102】
残存金属量を測定した24元素は以下の金属である。Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、As、Zr、Mo、Ag、Cd、Sn、Ba、W、Pb。
【0103】
[比較例1]
実施例1のオルガノ社製ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂に代えて、MR型構造を有するオルガノ社製強酸性陽イオン交換樹脂ORLITE DS-4を使用して同様な処理を行った結果を表1に示す。
【0104】
[比較例2]
実施例1のオルガノ社製ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂に代えて、MR型構造を有する強酸性陽イオン交換樹脂とMR型構造を有する強塩基性陰イオン交換樹脂の混合品であるオルガノ社製ORLITE DS-7を使用して同様な処理を行った結果を表1に示す。なお、樹脂投入量は混合品中の強酸性陽イオン交換樹脂量が実施例1と同等となるようにした。
【0105】
【表1】
表1に示すように実施例1のイオン交換樹脂を用いた場合はシリコン含有ポリマーの変性を抑えながら残存金属不純物を除去することができたのに対して、比較例1~2のイオン交換樹脂を用いた場合はシリコン含有ポリマーの変性(ΔMwの変化)が大きく、実用的でないことが示された。イオン交換工程でのシリコン含有ポリマーの変性は、イオン交換樹脂が触媒として作用し、シリコン含有ポリマーの重合反応が促進していることに由来すると考えられる。イオン交換樹脂の触媒作用は、反応物とイオン交換樹脂表面との接触面積およびイオン交換樹脂表面上の官能基種類に依存する。実施例1と比較例1との結果から、DS-1はゲル型イオン交換樹脂であり、ミクロ孔(細孔径:十数Å-数十Å)のみを有するために高分子であるシリコン含有ポリマーが樹脂細孔内へ侵入できないこと、DS-4はMR型イオン交換樹脂であり、メソ孔-マクロ孔(細孔径:数百Å~)を有するためにシリコン含有ポリマーが細孔内にも侵入可能であり、相対的にシリコン含有ポリマーとイオン交換樹脂表面との接触面積が大きくなることを示唆している。また、実施例1と比較例2との結果から、陰イオン交換樹脂表面の塩基性官能基は、シリコン含有ポリマーの重合反応を促進する触媒作用が大きいことが示唆される。
【0106】
[実施例2]
実施例1と同様のイオン交換樹脂および新たに製造された被処理液ポリマーを用いて、カラム流通式イオン交換により処理溶液(精製溶液)を得た。なお、被処理液ポリマーの通液速度はカラム内の樹脂充填層体積に対して空間速度(SV[1/h]:Space velocity)が2、すなわち被処理液の滞留時間が30分となるように調整した。また、操作は常温にて実施した。分子量、残存金属量を測定した結果を表2に示す。
【0107】
【表2】
表2に示すようにカラム流通式においても実施例2のイオン交換樹脂を用いた場合、シリコン含有ポリマーの変性を抑えながら残存金属不純物を除去することができた。
【産業上の利用可能性】
【0108】
半導体装置製造におけるリソグラフィー工程において使用される、欠陥の原因となる金属不純物が低減されたシリコン含有ポリマーの産業上有用な精製方法である。