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特許7605128環状オレフィン重合体及びその製造方法並びに光学素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】環状オレフィン重合体及びその製造方法並びに光学素子
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/08 20060101AFI20241217BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
C08G61/08
G02B1/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021561510
(86)(22)【出願日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2020044086
(87)【国際公開番号】W WO2021107041
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2019217426
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100173473
【弁理士】
【氏名又は名称】高井良 克己
(72)【発明者】
【氏名】摺出寺 浩成
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-031320(JP,A)
【文献】特開2009-046615(JP,A)
【文献】特開2017-134305(JP,A)
【文献】国際公開第2011/105133(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/08
G02B 1/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるナフチル基含有脂環式化合物(A)に由来する構造単位:
【化1】
〔式中、R2a~R5aは、何れか1つがナフチル基であり、残りの基及びR1aが、それぞれ独立して、
(i)水素原子;
(ii)ハロゲン原子;又は
(iii)酸素原子、窒素原子、硫黄原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換もしくは非置換の炭素原子数1~30の炭化水素基(芳香環を含むものを除く)である。〕
を含む開環重合体又はその水素化物である、環状オレフィン重合体であって、
全構造単位中の前記化合物(A)に由来する構造単位の割合が、20mol%以上100mol%以下であ重量平均分子量が、18,000以上100,000以下である、環状オレフィン重合体。
【請求項2】
全構造単位中の前記化合物(A)に由来する構造単位の割合が、20mol%以上90mol%以下である、請求項1記載の環状オレフィン重合体。
【請求項3】
2a~R5aのうちナフチル基以外の残りの基、及びR1aは、水素原子である、請求項1又は2記載の環状オレフィン重合体。
【請求項4】
前記化合物(A)に由来する構造単位;及び
1種以上の、前記化合物(A)とは異なるノルボルネン系単量体(B)に由来する構造単位
を含む開環重合体又はその水素化物である、請求項1~3のいずれか一項記載の環状オレフィン重合体。
【請求項5】
前記ノルボルネン系単量体(B)が、
(i)非置換又はアルキル基、アルケニル基、芳香環基、酸素原子を含む極性基、もしくは窒素原子を含む極性基を置換基として有するノルボルネン類;
(ii)下記式(3)で示される単量体:
【化2】
〔式(3)中、
1b及びR2bは、それぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基;又はケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む有機基;を表し、
1b及びR2bは、互いに結合して環を形成しているか又はしておらず、
3bは置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の二価の炭化水素基である。〕;
又は
(iii)下記式(4)で示される単量体:
【化3】
〔式(4)中、
4b~R7bは、それぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基;又はケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む有機基;を表し、
4bとR6bは、互いに結合して環を形成しているか又はしておらず、
mは、1又は2である。〕
である、請求項4記載の環状オレフィン重合体。
【請求項6】
重量平均分子量が、20,000以上40,000以下である、請求項1~5のいずれか一項記載の環状オレフィン重合体。
【請求項7】
屈折率が1.545以上である、請求項1~6のいずれか一項記載の環状オレフィン重合体。
【請求項8】
下記式(1)で表されるナフチル基含有脂環式化合物(A)又は前記化合物(A)に由来する構造単位を含む開環重合体:
【化4】
〔式中、R2a~R5aのうち1つは、ナフチル基であり、
2a~R5aのうちそれ以外、及びR1は、それぞれ独立に、
(i)水素原子;
(ii)ハロゲン原子;又は
(iii)酸素原子、窒素原子、硫黄原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換もしくは非置換の炭素原子数1~30の炭化水素基(芳香環を含むものを除く)である〕
開環重合させることを含み、重合用原料中の全単量体及び構造単位の合計モル数に対する、前記化合物(A)及び前記化合物(A)に由来する構造単位の合計モル数の割合が、20mol%以上100mol%以下であ重量平均分子量が、18,000以上100,000以下である、環状オレフィン重合体の製造方法。
【請求項9】
前記化合物(A)もしくは前記化合物(A)に由来する構造単位を含む開環重合体;及び
1種以上の、前記ナフチル基含有脂環式化合物(A)とは異なるノルボルネン系単量体(B)もしくは前記ノルボルネン系単量体(B)に由来する構造単位を含む開環重合体
を含む重合用原料、又は
前記化合物(A)に由来する構造単位及び前記ノルボルネン系単量体(B)に由来する構造単位を含む開環重合体を含む重合用原料
開環重合させることを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
開環重合は、メタセシス重合触媒の存在下で行われ、
メタセシス重合触媒が、式(1):
M(NRa)X4-p(ORbp・Lq (1)
(式中、
Mは、周期律表第6族の遷移金属原子から選択される金属原子であり、
aは、3、4及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基又は-CH2cで表される基であり、ここで、Rcは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基であり、
bは、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基であり、
Xは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルキルシリル基であり、
Lは、電子供与性の中性配位子であり、
pは、0又は1であり、
qは、0~2の整数であり、
複数のXが存在するとき、複数のXは同一であっても異なっていてもよく、
複数のLが存在するとき、複数のLは同一であっても異なっていてもよい。)
で表される遷移金属イミド錯体である、請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
開環重合で得られた開環重合体を水素化することをさらに含む、請求項8~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
請求項1~7のいずれか一項記載の環状オレフィン重合体を含む、光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィン重合体及び環状オレフィン重合体の製造方法、並びに、当該環状オレフィン重合体を用いた光学素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光学素子や医療用容器の材料として、環状オレフィンを開環または付加重合してなる重合体が注目されている。
【0003】
そして、例えば特許文献1には、透明性及び耐熱性に優れ、有機溶媒への高い溶解性を有し、特異な複屈折性及び波長依存性を有するノルボルネン系開環(共)重合体が開示されている。また、特許文献2には、複屈折の逆波長分散を効果的に発現させるシクロオレフィンコポリマー及び該コポリマーからなるフィルムが開示されている。また、特許文献3には、高い屈折率を有しつつアッベ数を低めに調整可能な環状オレフィン系共重合体及び電子線あるいはガンマ線照射による変色が少なく、かつ、透明性に優れる医療用容器が開示されている。また、特許文献4には、液晶表示装置の色見を向上させるための波長分散の程度を大きくできるノルボルネン系重合体フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-46615号公報
【文献】特開2009-46614号公報
【文献】国際公開第2019/107363号
【文献】特開2008-31319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、光学レンズ等の光学素子の設計の自由度を上げるため、高い屈折率を有し、アッベ数が従来の環状オレフィン樹脂よりも低くなり、光学素子にした際の複屈折も小さい樹脂が求められている。
【0006】
しかし、上記従来の開環または付加重合体では、高い屈折率、低いアッベ数、及び低い複屈折(例、応力複屈折)を並立することができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、高い屈折率、低いアッベ数、及び低い複屈折を並立した環状オレフィン重合体(開環重合または付加重合による重合体)、その製造方法、及び当該環状オレフィン重合体を用いた光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、ナフチル基含有脂環式化合物(A)に由来する構造単位を構造単位として所定の割合で含む重合体又はその水素化物である、環状オレフィン重合体であれば、高い屈折率、低いアッベ数、及び低い複屈折(低い応力光学係数)を並立し得ることを新たに見出した。
そして、本発明者は、上述した新たな知見に基づき、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の環状オレフィン重合体は、下記式(1)で表されるナフチル基含有脂環式化合物(A)に由来する構造単位:
【化1】
〔式中、R2a~R5aは、何れか1つがナフチル基であり、残りの基及びR1aが、それぞれ独立して、
(i)水素原子;
(ii)ハロゲン原子;又は
(iii)酸素原子、窒素原子、硫黄原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換もしくは非置換の炭素原子数1~30の炭化水素基(芳香環を含むものを除く)である。〕;及び
任意にその他の単量体に由来する構造単位
を含む重合体又はその水素化物である、環状オレフィン重合体であって、
全構造単位中の化合物(A)に由来する構造単位の割合が、20mol%以上100mol%以下であることを特徴とする。
【0010】
全構造単位中の化合物(A)に由来する構造単位の割合は、20mol%以上90mol%以下であることが好ましい。また、R2a~R5aのうちナフチル基以外の残りの基、及びR1aは、水素原子であることが好ましい。
【0011】
また、本発明の環状オレフィン重合体は、
前記化合物(A)に由来する構造単位;及び
1種以上の、前記化合物(A)とは異なるノルボルネン系単量体(B)に由来する構造単位;及び
任意にその他の単量体に由来する構造単位
を含む重合体又はその水素化物であることが好ましい。
【0012】
ここで、ノルボルネン系単量体(B)は、
(i)非置換又はアルキル基、アルケニル基、芳香環基、酸素原子を含む極性基、もしくは窒素原子を含む極性基を置換基として有するノルボルネン類;
(ii)下記式(3)で示される単量体:
【化2】
〔式(3)中、
1b及びR2bは、それぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基;又はケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む有機基;を表し、
1b及びR2bは、互いに結合して環を形成しているか又はしておらず、
3bは置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の二価の炭化水素基である。〕;
又は
(iii)下記式(4)で示される単量体:
【化3】
〔式(4)中、
4b~R7bは、それぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基;又はケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む有機基;を表し、
4bとR6bは、互いに結合して環を形成しているか又はしておらず、
mは、1又は2である。〕
であることが好ましい。
【0013】
環状オレフィン重合体の重量平均分子量は、20000以上であることが好ましく、40000以下であることが好ましい。
【0014】
環状オレフィン重合体の屈折率(nd)は、1.545以上であることが好ましく、1.640以下であることが好ましい。また、本発明の環状オレフィン重合体は、アッベ数(νd)が20以上であることが好ましく、50以下であることが好ましい。また、本発明の環状オレフィン重合体は、応力複屈折(CR)が-500×10-12Pa-1以上であることが好ましく、1400×10-12Pa-1以下であることが好ましい。屈折率、アッベ数、及び応力複屈折が上記範囲内であれば、光学素子の材料として使用した際に、光学設計の自由度を高めることができる。
なお、本発明において、屈折率、アッベ数、及び応力複屈折は、本明細書の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0015】
なお、本発明の環状オレフィン重合体が、ナフチル基含有脂環式化合物(A)及び任意にその他の単量体に由来する構造単位を含む重合体又はその水素化物である場合、本発明の環状オレフィン重合体は、単量体としてのナフチル基含有脂環式化合物(A)又は、前記化合物(A)に由来する構造単位及び任意にその他の単量体に由来する構造単位を含む重合体、並びに任意にその他の単量体を、所定の割合で含む混合単量体を重合(例、開環重合、付加重合)させる工程を含む製造方法を用いて容易に製造することができる。また、本発明の環状オレフィン重合体が、ナフチル基含有脂環式化合物(A)、1種以上の、前記化合物(A)とは異なるノルボルネン系単量体(B)に由来する構造単位、及び任意にその他の単量体に由来する構造単位を含む重合体又はその水素化物である場合、本発明の環状オレフィン重合体は、単量体としてのナフチル基含有脂環式化合物(A)又は、前記化合物(A)に由来する構造単位及び任意にその他の単量体に由来する構造単位を含む重合体、当該ナフチル基含有脂環式化合物(A)とは異なる、1種以上のノルボルネン系単量体(B)又は、前記ノルボルネン系単量体(B)に由来する構造単位及び任意にその他の単量体に由来する構造単位を含む重合体、並びに任意にその他の単量体又は重合体を、所定の割合で含む混合単量体を重合(例、開環重合、付加重合)させる工程を含む製造方法を用いて容易に製造することができる。開環重合は、例えば、メタセシス重合触媒の存在下で行ってもよい。付加重合は、例えば、チーグラーナッタ触媒、メタロセン触媒、ニッケル触媒、パラジウム触媒のいずれかの存在下により行ってもよい。また、環状オレフィン重合体の製造方法は、重合体を水素化する工程をさらに含んでいてもよい。
【0016】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の光学素子は、上述した環状オレフィン重合体を含むことを特徴とする。上述した環状オレフィン重合体を含有していれば、光学素子等の材料として有利に使用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高い屈折率、低いアッベ数、及び低い複屈折(例、応力複屈折)を並立した環状オレフィン重合体、その製造方法、及び当該環状オレフィン重合体を用いた光学素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0019】
(環状オレフィン重合体)
本発明の環状オレフィン重合体は、ナフチル基含有脂環式化合物(A)を含み、任意にその他の単量体を含む混合単量体の重合体(例、開環重合又は付加重合による重合体)又はその水素化物である。混合単量体中のナフチル基含有脂環式化合物(A)の割合は、20mol%以上100mol%以下である。本発明の環状オレフィン重合体は、高い屈折率、低いアッベ数、低い複屈折(例、応力複屈折)、又は高いガラス転移温度のいずれかの優れた特性を有する。なお、本明細書において、「重合体」は、単独の構造単位から構成される重合体(例、ホモ重合体)、又は共重合体であってもよい。
【0020】
また、好ましくは、本発明の環状オレフィン重合体は、ナフチル基含有脂環式化合物(A)、及びナフチル基含有脂環式化合物(A)とは異なる1種以上のノルボルネン系単量体(B)を含み、任意にその他の単量体を含む混合単量体の重合体(例、開環重合又は付加重合による重合体)又はその水素化物であってもよい。混合単量体中のナフチル基含有脂環式化合物(A)の割合は、20mol%以上100mol%以下である。本発明の環状オレフィン重合体は、例えば、ランダム共重合体又はブロック共重合体であってもよい。本発明の環状オレフィン重合体が、前記化合物(A)に由来する構造単位、前記ノルボルネン系単量体(B)に由来する構造単位、及び任意に、その他の単量体に由来する構造単位を含む共重合体であれば、ナフチル基含有脂環式化合物(A)を単独の単量体として重合することにより得られる重合体に比して、より高い屈折率、より低いアッベ数、より低い複屈折(例、応力複屈折)、又はより高いガラス転移温度のいずれかのより優れた特性を有するので好ましい。
【0021】
<ナフチル基含有脂環式化合物>
ナフチル基含有脂環式化合物(A)は、下記式(1)で表される化合物である。
【化4】
〔式中、R2a~R5aは、何れか1つがナフチル基であり、残りの基及びR1aが、それぞれ独立して、
(i)水素原子;
(ii)ハロゲン原子;又は
(iii)酸素原子、窒素原子、硫黄原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換もしくは非置換の炭素原子数1~30の炭化水素基(芳香環を含むものを除く)である。〕
【0022】
ナフチル基含有脂環式化合物(A)は、ナフチル基として1-ナフチル基もしくは2-ナフチル基が結合した化合物、又はこれらの混合物であってもよい。ナフチル基のノルボルネン環への結合様式としては、立体異性的に、exo結合(橋頭位のメチレンと同方向への結合)及びendo結合(橋頭位のメチレンと反対方向への結合)が存在するが、ナフチル基含有脂環式化合物(A)は、ナフチル基がノルボルネン環とexoもしくはendo結合した化合物(exo体もしくはendo体)、又はこれらの混合物であってもよい。したがって、ナフチル基含有脂環式化合物(A)は、1-ナフチル基-exo結合化合物、2-ナフチル基-exo結合化合物、1-ナフチル基-endo結合化合物、2-ナフチル基-endo結合化合物、又はこれらの任意の混合物であってもよい。
【0023】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0024】
炭素原子数1~30の炭化水素基としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;エチリデン基、プロピリデン基等のアルキリデン基等が挙げられる。これらの炭化水素基は置換されていてもよく、置換基としてはたとえばフッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、フェニルスルホニル基、シアノ基等が挙げられる。
【0025】
また、前記の置換または非置換の炭化水素基は、直接環構造に結合していてもよいし、あるいは連結基を介して結合していてもよい。連結基としては、たとえば炭素原子数1~10の2価の炭化水素基(たとえば、-(CH2q-(ここで、qは1~10の整数)で表わされるアルキレン基);酸素原子、窒素原子、硫黄原子またはケイ素原子を含む連結基(たとえば、カルボニル基(-CO-)、カルボニルオキシ基(-COO-)、スルホニル基(-SO2-)、スルホニルエステル基(-SO2-O-)、エーテル結合(-O-)、チオエーテル結合(-S-)、イミノ基(-NH-)、アミド結合(-NHCO-)、シロキサン結合(-Si(R2)O-(ここで、Rはメチル、エチル等のアルキル基));あるいはこれらの2種以上が組み合わさって連なったものが挙げられる。
【0026】
2a~R5aのうちナフチル基以外の残りの基、及びR1aは、すべて水素原子が好ましい。
【0027】
<ノルボルネン系単量体>
ノルボルネン系単量体(B)は、式(2)で表されるノルボルネン構造を有する化合物である。
【化5】
【0028】
ノルボルネン系単量体(B)としては、分子内にノルボルネン環と縮合する環を有しないノルボルネン系単量体及び3環以上の多環式ノルボルネン系単量体等が挙げられる。
【0029】
分子内にノルボルネン環と縮合する環を有しないノルボルネン系単量体としては、ノルボルネン、5-メチルノルボルネン、5-エチルノルボルネン、5-ブチルノルボルネン、5-ヘキシルノルボルネン、5-デシルノルボルネン、5-シクロヘキシルノルボルネン、5-シクロペンチルノルボルネン等の非置換又はアルキル基を有するノルボルネン類;
5-エチリデンノルボルネン、5-ビニルノルボルネン、5-プロペニルノルボルネン、5-シクロヘキセニルノルボルネン、5-シクロペンテニルノルボルネン等のアルケニル基を有するノルボルネン類;
5-フェニルノルボルネン等の芳香環を有するノルボルネン類;
5-メトキシカルボニルノルボルネン、5-エトキシカルボニルノルボルネン、5-メチル-5-メトキシカルボニルノルボルネン、5-メチル-5-エトキシカルボニルノルボルネン、ノルボルネニル-2-メチルプロピオネート、ノルボルネニル-2-メチルオクタネート、5-ヒドロキシメチルノルボルネン、5,6-ジ(ヒドロキシメチル)ノルボルネン、5,5-ジ(ヒドロキシメチル)ノルボルネン、5-ヒドロキシ-i-プロピルノルボルネン、5,6-ジカルボキシノルボルネン、5-メトキシカルボニル-6-カルボキシノルボルネン等の酸素原子を含む極性基を有するノルボルネン類;
5-シアノノルボルネン等の窒素原子を含む極性基を有するノルボルネン類;
等が挙げられる。
【0030】
3環以上の多環式ノルボルネン系単量体とは、分子内にノルボルネン環と、該ノルボルネン環と縮合している1つ以上の環とを有するノルボルネン系単量体である。その具体例としては、下記に示す式(3)又は式(4)で示される単量体が挙げられる。
【0031】
【化6】
【0032】
(式(3)中、
1b及びR2bはそれぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基(例えば、アルキル基);又はケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む置換基;を表し、互いに結合して環を形成していてもよく、
3bは置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の二価の炭化水素基(例えば、アルキレン基)である。)
【0033】
【化7】
【0034】
(式(4)中、
4b~R7bはそれぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基(例えば、アルキル基);又はケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む置換基;を表し、R4bとR6bは互いに結合して環を形成していてもよく、
mは1又は2である。)
【0035】
式(3)で示される単量体としては、ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-8-エン等の芳香環構造を含まないノルボルネン系単量体が挙げられる。また、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ-3,5,7,12-テトラエン(1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロ-9H-フルオレンともいう)、テトラシクロ[10.2.1.02,11.04,9]ペンタデカ-4,6,8,13-テトラエン(1,4-メタノ-1,4,4a,9,9a,10-ヘキサヒドロアントラセンともいう)等の芳香環を有するノルボルネン誘導体も挙げることができる。
【0036】
式(4)で示される単量体としては、mが1であるテトラシクロドデセン類、mが2であるヘキサシクロヘプタデセン類が挙げられる。
【0037】
テトラシクロドデセン類としては、テトラシクロドデセン、8-メチルテトラシクロドデセン、8-エチルテトラシクロドデセン、8-シクロヘキシルテトラシクロドデセン、8-シクロペンチルテトラシクロドデセン、8-メトキシカルボニル-8-メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン等の非置換又はアルキル基を有するテトラシクロドデセン類;
8-メチリデンテトラシクロドデセン、8-エチリデンテトラシクロドデセン、8-ビニルテトラシクロドデセン、8-プロペニルテトラシクロドデセン、8-シクロヘキセニルテトラシクロドデセン、8-シクロペンテニルテトラシクロドデセン等の環外に二重結合を有するテトラシクロドデセン類;
8-フェニルテトラシクロドデセン等の芳香環を有するテトラシクロドデセン類;
8-メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8-メチル-8-メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8-ヒドロキシメチルテトラシクロドデセン、8-カルボキシテトラシクロドデセン、テトラシクロドデセン-8,9-ジカルボン酸、テトラシクロドデセン-8,9-ジカルボン酸無水物等の酸素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;
8-シアノテトラシクロドデセン、テトラシクロドデセン-8,9-ジカルボン酸イミド等の窒素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;
8-クロロテトラシクロドデセン等のハロゲン原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;8-トリメトキシシリルテトラシクロドデセン等のケイ素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;
等が挙げられる。
【0038】
ヘキサシクロヘプタデセン類としては、前記のテトラシクロドデセン類とシクロペンタジエンとのディールズ・アルダー付加体をいずれも用いることができる。
【0039】
ノルボルネン系単量体(B)は、中でも、屈折率、アッベ数、複屈折(例、応力複屈折)、又はガラス転移温度を良好にする観点から、上述したノルボルネン系単量体のうち、非極性ノルボルネン系単量体が好ましく、非置換又はアルキル基を有するノルボルネン類(例、ノルボルネン(NB)、8-エチルテトラシクロドデセン)、アルケニル基を有するノルボルネン類(例、エチリデンテトラシクロドデセン(8-エチリデンテトラシクロドデセン、ETD))、ジシクロペンタジエン(DCPD)、芳香環を有するノルボルネン誘導体(例、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ-3,5,7,12-テトラエン(1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロ-9H-フルオレン(MTF)ともいう))、非置換又はアルキル基を有するテトラシクロドデセン類(例、テトラシクロドデセン(TCD)、8-メトキシカルボニル-8-メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン(MTCD))がより好ましい。
【0040】
ノルボルネン系単量体は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。3環以上の多環式ノルボルネン系単量体には、endo体とexo体の異性体が含まれるが、これらのいずれも使用することができ、異性体の混合物であってもよい。
【0041】
本発明の効果を損なわない限り、共重合可能なその他の単量体を併用することができる。共重合可能なその他の単量体は、全単量体を100モル%としたとき、50モル%以下であることが好ましい。
【0042】
共重合可能なその他の単量体としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4-ジメチルシクロペンテン、3-メチルシクロヘキセン、2-(2-メチルブチル)-1-シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a-テトラヒドロ-4,7-メタノ-1H-インデン等のシクロオレフィン;1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン等の非共役ジエン;等が挙げられる。これらの共重合可能な単量体は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
<ナフチル基含有脂環式化合物(A)の含有割合>
混合単量体中のナフタレン環含有脂環式化合物(A)の割合は、20mol%以上であり、好ましくは25mol%以上、より好ましくは30mol%以上であってもよく、例えば、100mol%以下、95mol%以下、又は90mol%以下、好ましくは87mol%以下、より好ましくは85mol%以下であってもよい。しかし、高屈折率性を一層向上させる観点から、混合単量体がナフチル基含有脂環式化合物(A)及びノルボルネン系単量体(B)を含みかつ、混合単量体中に含まれる、ナフチル基含有脂環式化合物(A)とノルボルネン系単量体(B)の含有割合の合計が100mol%であること、即ち、本発明の環状オレフィン重合体の原料となる単量体が化合物(A)及び単量体(B)のみからなり、本発明の環状オレフィン重合体が、化合物(A)及び単量体(B)に由来する構造単位のみからなることが好ましい。
【0044】
<水素化率>
本発明の環状オレフィン重合体は、安定性が向上し、熱による着色や劣化が抑制されるために、水素化物であることが好ましく、十分に水素化されていることがより好ましい。本発明の環状オレフィン重合体の水素化率は、90mol%以上であることが好ましく、95mol%以上であることがより好ましく、99mol%以上であることが更に好ましい。水素化率の値が上記下限値以上であれば、環状オレフィン重合体の耐熱性を高めることができる。なお、重合体の水素化率は、主鎖中の炭素-炭素二重結合の水素化率である。また、ナフチル基含有脂環式化合物(A)に由来する構造中のナフチルは、通常水素化されていない。
【0045】
<環状オレフィン重合体の構造>
本発明の環状オレフィン重合体は、上述したナフチル基含有脂環式化合物(A)及び任意にその他の単量体が重合することにより形成される重合体である。また、好ましくは、本発明の環状オレフィン重合体は、上述したナフチル基含有脂環式化合物(A)、1種以上のノルボルネン系単量体(B)、及び任意にその他の単量体が重合することにより形成される重合体であってもよい。重合は、開環重合及び付加重合のいずれであってもよく、1つの環状オレフィン重合体中に、開環重合及び付加重合の両方が含まれていてもよい。重合は、開環重合が好ましい。本発明の環状オレフィン重合体は、化合物(A)に由来する構造単位及び任意にその他の単量体に由来する構造単位を含む重合体として表すことができる。また、好ましくは、本発明の環状オレフィン重合体は、化合物(A)に由来する構造単位、ノルボルネン系単量体(B)に由来する構造単位、及び任意にその他の単量体に由来する構造単位を含む重合体として表してもよい。全構造単位中の化合物(A)に由来する構造単位の割合は、20mol%以上であり、好ましくは25mol%以上、より好ましくは30mol%以上であってもよく、例えば、100mol%以下、95mol%以下、又は90mol%以下、好ましくは87mol%以下、より好ましくは85mol%以下であってもよい。全構造単位中に含まれる、化合物(A)に由来する構造単位とノルボルネン系単量体(B)に由来する構造単位の含有割合の合計が100%であること、即ち、本発明の環状オレフィン重合体が、化合物(A)及び単量体(B)に由来する構造単位のみからなることが好ましい。
【0046】
重合が開環重合である場合、本発明の環状オレフィン重合体は、例えば、化合物(A)に由来する構造単位(a)及び任意にその他の単量体に由来する構造単位を含む重合体として表すことができる。また、好ましくは、重合が開環重合である場合、本発明の環状オレフィン重合体は、例えば、化合物(A)に由来する構造単位(a)、ノルボルネン系単量体(B)に由来する構造単位(b)、及び任意にその他の単量体に由来する構造単位を含む重合体として表してもよい。
【0047】
<化合物(A)に由来する構造単位(a)>
開環重合の場合、化合物(A)(式(1)で表される化合物)を開環反応させることにより、式(5)で表される構造単位が生じる。さらに、水素化反応を行うことにより、式(5)で表される構造単位の主鎖中の炭素-炭素二重結合が水素化され、式(6)で表される構造単位が生じる。したがって、開環重合の場合の化合物(A)に由来する構造単位(a)は、水素化反応を行わない場合は、式(5)で表される構造単位として表すことができ、水素化反応を行った場合は、式(6)で表される構造単位、又は式(5)で表される構造単位と式(6)で表される構造単位の混合(混合比は水素化の程度により変動し得る)として表すことができる。
【化8】
〔式中、R1a~R5aは、上述のとおりである。〕
【0048】
<ノルボルネン系単量体(B)に由来する構造単位(b)>
開環重合の場合、ノルボルネン系単量体(B)(式(2)で表される主構造を有する化合物)を開環反応させることにより、式(7)で表される主構造を有する構造単位が生じる。さらに、水素化反応を行うことにより、式(7)で表される主構造を有する構造単位の主鎖中の炭素-炭素二重結合が水素化され、式(8)で表される主構造を有する構造単位が生じる。したがって、開環重合の場合のノルボルネン系単量体(B)に由来する構造単位(b)は、水素化反応を行わない場合は、式(7)で表される主構造を有する構造単位として表すことができ、水素化反応を行った場合は、式(8)で表される主構造を有する構造単位、式(7)で表される主構造を有する構造単位と式(8)で表される主構造を有する構造単位の混合(混合比は水素化の程度により変動し得る)として表すことができる。ノルボルネン系単量体(B)が、置換基を含む及び/又は他の環と縮合環を形成する場合、構造単位(b)も相当する位置にて置換基を含む及び/又は縮合環を形成する。置換基及び縮合環の例は、上述したとおりである。
【化9】
【0049】
例えば、ノルボルネン系単量体(B)が、上述した式(3)で示される単量体である場合、開環重合の場合のノルボルネン系単量体(B)に由来する構造単位(b)は、水素化の有無又は程度により、式(9)で表される構造単位、式(10)で表される構造単位、又はこれらの混合として表すことができる。式中、R1b~R3bは、上述したとおりである。
【化10】
【0050】
また、例えば、ノルボルネン系単量体(B)が、上述した式(3)又は式(4)で示される単量体である場合、開環重合の場合のノルボルネン系単量体(B)に由来する構造単位(b)は、下記に示す式(9)又は式(10)で示される。式中、R1b~R7bは及びmは、上述したとおりである。
また、例えば、ノルボルネン系単量体(B)が、上述した式(4)で示される単量体である場合、開環重合の場合のノルボルネン系単量体(B)に由来する構造単位(b)は、水素化の有無又は程度により、式(11)で表される構造単位、式(12)で表される構造単位、又はこれらの混合として表すことができる。式中、R4b~R7bは及びmは、上述したとおりである。
【化11】
【0051】
開環重合の場合のノルボルネン系単量体(B)に由来する構造単位(b)の具体例は、ノルボルネン系単量体(B)の具体例として列記した化合物の開環及び任意での水素化により生じた構造単位に相当する。
【0052】
本発明の効果を損なわない限り、環状オレフィン重合体は、その他の構造単位を含んでいてもよい。その他の構造単位としては、上述した共重合可能なその他の単量体に由来する構造単位が挙げられる。その他の構造単位は、単独種類でも、2種以上であってもよい。その他の構造単位の数は、全構造単位数を100%としたとき、50%以下であることが好ましい。
【0053】
<環状オレフィン重合体の平均分子量>
本発明の環状オレフィン重合体の平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)として表すことができる。上記重量平均分子量(Mw)は、通常18000以上、好ましくは19000以上、より好ましくは20000以上であってもよい。また、上記重量平均分子量(Mw)は、通常100000以下、好ましくは50000以下、より好ましくは40000以下であってもよい。
重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、通常4.0以下、好ましくは3.7以下、より好ましくは3.5以下であってもよい。比(Mw/Mn)は1.0以上であり、1.0であってもよい。
【0054】
(環状オレフィン重合体の製造方法)
<単量体の製造方法>
本発明の環状オレフィン重合体の原料である単量体は、例えば公知の合成方法により製造することができる。ナフチル基含有脂環式化合物(A)は、例えば、パラジウムカップリング(例、ノルボルナジエンとブロモナフタレンの反応)、ディールズ・アルダー反応(例、シクロペンタジエンとビニルナフタレンの反応)により製造してもよい。ナフチル基含有脂環式化合物(A)の製造方法としては、具体的には実施例に記載の方法が挙げられる。ナフチル基含有脂環式化合物(A)は、exo体又はendo体として選択的に得られてもよく、exo体及びendo体の混合物として得られてもよい。
【0055】
<重合体の製造方法>
本発明の環状オレフィン重合体が、ナフチル基含有脂環式化合物(A)及び任意にその他の単量体に由来する構造単位を含む重合体又はその水素化物である場合、本発明の環状オレフィン重合体は、
ナフチル基含有脂環式化合物(A)もしくは化合物(A)に由来する構造単位を含む重合体、及び任意に、その他の単量体もしくはその単量体に由来する構造単位を含む重合体を含む重合用原料
を重合(例、開環重合、付加重合)させて重合体を得る工程(重合工程)
を含む方法により製造することができる。
【0056】
また、本発明の環状オレフィン重合体が、ナフチル基含有脂環式化合物(A)、1種以上の、前記化合物(A)とは異なるノルボルネン系単量体(B)に由来する構造単位、及び任意にその他の単量体に由来する構造単位を含む重合体又はその水素化物である場合、本発明の環状オレフィン重合体は、
ナフチル基含有脂環式化合物(A)もしくは化合物(A)に由来する構造単位を含む重合体、1種以上の、化合物(A)とは異なるノルボルネン系単量体(B)もしくはノルボルネン系単量体(B)に由来する構造単位を含む重合体、及び任意に、その他の単量体もしくはその単量体に由来する構造単位を含む重合体を含む重合用原料、又は
化合物(A)に由来する構造単位、ノルボルネン系単量体(B)に由来する構造単位、及び任意に、その他の単量体に由来する構造単位を含む重合体を含む重合用原料
を重合(例、開環重合、付加重合)させて重合体を得る工程(重合工程)
を含む方法により製造することができる。
【0057】
重合用原料中の全単量体及び構造単位の合計モル数に対する、化合物(A)及び化合物(A)に由来する構造単位の合計モル数の割合は、目的とする環状オレフィン重合体の全構造単位中の化合物(A)に由来する構造単位の割合に合わせて調整される。例えば、全構造単位中の化合物(A)に由来する構造単位の割合が20mol%以上100mol%以下、好ましくは20mol%以上90mol%以下である環状オレフィン重合体を製造するために、重合用原料中の全単量体及び構造単位の合計モル数に対する、化合物(A)及び化合物(A)に由来する構造単位の合計モル数の割合を20mol%以上、好ましくは20mol%以上90mol%以下とすることができる。
【0058】
また、本発明の環状オレフィン重合体の製造方法は、重合体を水素化して重合体の水素化物を得る工程(水素化工程)をさらに含んでいてもよい。水素化により、環状オレフィン重合体の耐熱性、耐候性、耐光性、耐溶剤性、耐薬品性、耐水性などの特性が改善されることがある。
【0059】
また、本発明の環状オレフィン重合体の製造方法は、重合体を回収する工程(回収工程)をさらに含んでいてもよい。
【0060】
<重合工程>
重合用原料に含まれる重合単位化合物は、単量体又は重合体(共重合体を含む)のいずれであってもよい。重合単位化合物としての重合体は、重合工程と同じ重合反応により調製してもよい。
【0061】
重合工程及び重合単位化合物としての重合体の調製に用いられる重合反応としては、例えば、開環重合、及び付加重合が挙げられる。以下、重合工程の場合の重合反応を説明する。
【0062】
開環重合は、重合用原料を、メタセシス重合触媒の存在下で、開環メタセシス重合させることにより行うことができる。開環メタセシス重合は、重合用原料及びメタセシス重合触媒を溶媒(例、有機溶媒)中に混合した反応系で行ってもよい。重合効率を向上させるために、反応系は、活性化剤、連鎖移動剤、その他の助剤(例、ルイス塩基)をさらに含んでいてもよい。以下、開環重合に用いる触媒等の試薬類、反応の諸条件について説明する。
【0063】
<メタセシス重合触媒>
メタセシス重合触媒として、式(1)で表される遷移金属イミド錯体を用いる。
M(NRa)X4-p(ORbp・Lq (1)
(式中、
Mは、周期律表第6族の遷移金属原子から選択される金属原子であり、
aは、3、4及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基又は-CH2cで表される基であり、ここで、Rcは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基であり、
bは、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基であり、
Xは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルキルシリル基であり、
Lは、電子供与性の中性配位子であり、
pは、0又は1であり、
qは、0~2の整数であり、
複数のXが存在するとき、複数のXは同一であっても異なっていてもよく、
複数のLが存在するとき、複数のLは同一であっても異なっていてもよい。)
【0064】
<<遷移金属イミド錯体>>
式(1)におけるMは、周期律表第6族の遷移金属原子であり、クロム、モリブデン及びタングステンから選択することができる。中でも、モリブデン、タングステンが好ましく、タングステンがより好ましい。
【0065】
式(1)の遷移金属イミド錯体は、金属イミド結合(N=Ra)を含む。Raは、金属イミド結合を構成する窒素原子上の置換基である。
【0066】
式(1)におけるRaは、3、4及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基又は-CH2cで表される基である。
【0067】
aの、3、4及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基の置換基としては、
アルキル基(例えば、メチル基、エチル基等の炭素原子数1~4のアルキル基);
ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等);
アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素原子数1~4のアルコキシ基);
等が挙げられ、3、4及び5位の少なくとも2つの位置に存在する置換基が互いに結合したものであってもよい。
【0068】
3、4及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基としては、フェニル基;
4-メチルフェニル基、4-クロロフェニル基、3-メトキシフェニル基、4-シクロヘキシルフェニル基、4-メトキシフェニル基等の一置換フェニル基;
3,5-ジメチルフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基等の二置換フェニル基;
3,4,5-トリメチルフェニル基、3,4,5-トリクロロフェニル基等の三置換フェニル基;
2-ナフチル基、3-メチル-2-ナフチル基、4-メチル-2-ナフチル基等の置換基を有していてもよい2-ナフチル基;
等が挙げられる。
【0069】
aの、-CH2cで表される基におけるRcの、置換基を有していてもよいアルキル基の炭素原子数は特に限定されず、通常1~20、好ましくは1~10、より好ましくは1~4である。このアルキル基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。置換基は特に限定されず、例えば、フェニル基、置換基を有していてもよいフェニル基(例えば、4-メチルフェニル基等);アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等の炭素原子数1~4のアルコキシ基);等が挙げられる。
【0070】
cの、置換基を有していてもよいアリール基としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。置換基は特に限定されず、例えば、フェニル基、置換基を有していてもよいフェニル基(例えば、4-メチルフェニル基等);アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等の炭素原子数1~4のアルコキシ基);等が挙げられる。
【0071】
cとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等の炭素原子数が1~20のアルキル基が好ましい。
【0072】
式(1)における(4-p)は4又は3であり、式(1)は、4個又は3個のXを有する。Xは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルキルシリル基である。Xは同じであっても異なっていてもよい。
Xについて、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
アリール基としては、フェニル基、4-メチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。
アラルキル基としては、ベンジル基、ネオフィル基等が挙げられる。
アルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基等が挙げられる。
【0073】
式(1)におけるpは0又1はであり、式(1)は、1個の金属アルコキシド結合又は1個の金属アリールオキシド結合(ORb)を有するものであってもよい。Rbは、金属アルコキシド結合又は金属アリールオキシド結合を構成する酸素原子上の置換基である。
【0074】
bは、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基であり、前述のRcの、置換基を有していてもよいアルキル基及び置換基を有していてもよいアリール基として例示及び好適例が適用される。
【0075】
式(1)におけるqは0~2の整数であり、式(1)は、1個又は2個の電子供与性の中性配位子(L)を有するものであってもよい。
Lとしては、周期律表第14族又は第15族の原子を含有する電子供与性化合物が挙げられ、
トリメチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;
ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類;
トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ルチジン等のアミン類;
等が挙げられる。これらの中でも、エーテル類が好ましい。
【0076】
式(1)の遷移金属イミド錯体としては、フェニルイミド基を有するタングステンイミド錯体(式(1)中、Mがタングステン原子で、Raがフェニル基であるタングステンイミド錯体)が好ましく、テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)、テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロピラン)がより好ましい。
【0077】
式(1)の遷移金属イミド錯体は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
式(1)の遷移金属イミド錯体は、第6族遷移金属のオキシハロゲン化物と、3、4及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニルイソシアナート類又は一置換メチルイソシアナート類を、必要に応じて電子供与性の中性配位子(L)、アルコール類、金属アルコキシド、金属アリールオキシドとともに混合する方法等(例えば、特開平5-345817号公報に記載された方法)により合成することができる。合成された遷移金属イミド錯体は、結晶化等により精製・単離した後、開環重合反応に用いてもよいし、精製することなく、得られた混合液をそのまま触媒液として用いてもよい。
【0079】
式(1)の遷移金属イミド錯体の使用量は、ノルボルネン系単量体100モル%に対して、0.00005モル%以上1モル%以下とすることができ、0.0001モル%以上0.2モル%が好ましく、0.0002モル%以上0.1モル%以下がより好ましい。上記範囲内であれば、触媒除去が困難となることを十分回避でき、十分な重合活性を得ることができる。
【0080】
<<活性化剤>>
式(1)の遷移金属イミド錯体は、単独でも触媒活性を示すが、活性化剤と組み合わせることにより、より高活性な重合用触媒となり得る。
【0081】
活性化剤としては、炭素原子数1~20の炭化水素基(例えば、アルキル基)を有する周期律表第1、2、12、13、14族の化合物が挙げられる。中でも、有機リチウム、有機マグネシウム、有機亜鉛、有機アルミニウム、又は有機スズが好ましく用いられ、有機アルミニウム又は有機スズが特に好ましく用いられる。
【0082】
有機リチウムとしては、メチルリチウム、n-ブチルリチウム、フェニルリチウム等が挙げられる。
有機マグネシウムとしては、ブチルエチルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、エチルマグネシウムクロリド、n-ブチルマグネシウムクロリド、アリルマグネシウムブロミド等が挙げられる。
有機亜鉛としては、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛等が挙げられる。
有機アルミニウムとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムイソブトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド、イソブチルアルミニウムジイソブトキシド等が挙げられる。
有機スズとしては、テトラメチルスズ、テトラ(n-ブチル)スズ、テトラフェニルスズ等が挙げられる。
【0083】
活性化剤は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
活性化剤を使用する場合、使用量は、式(1)の遷移金属イミド錯体に対して、0.1モル倍以上100モル倍以下とすることができ、0.2モル倍以上50モル倍以下が好ましく、0.5モル倍以上20モル倍以下がより好ましい。上記範囲内であれば、活性化剤の使用による重合活性の向上が十分得られ、副反応が生ずることを十分回避できる。
【0085】
<<その他の助剤>>
重合速度や得られる重合体の分子量分布を制御するため、さらにルイス塩基を添加することができる。
ルイス塩基としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、シクロヘキサノン等のケトン類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;トリエチルアミン、N,N-ジエチルアニリン等のアミン類;ピリジン、ルチジン等のピリジン類;トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;トリフェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド類;エチルアセテート等のエステル類;等が挙げられる。これらの中でも、エーテル類、ピリジン類、ニトリル類が好ましい。ルイス塩基は、単独でも、2種以上を組み合わせ用いてもよい。
【0086】
ルイス塩基を使用する場合、使用量は、式(1)の遷移金属イミド錯体に対して、0.1モル倍以上1,000モル倍以下とすることができ、0.2モル倍以上500モル倍以下が好ましく、0.5モル倍以上200モル倍以下がより好ましい。
【0087】
<連鎖移動剤>
重合反応において、連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤を用いることで、得られる開環重合体の分子量を調整するとともに、二量体等の含有率を効果的に低減させることができる。
【0088】
連鎖移動剤としては、α-オレフィン、内部オレフィン、芳香族ビニル化合物等が挙げられる。内部オレフィンは、二重結合をオレフィン鎖の末端ではなく内部に有する化合物をいう。芳香族ビニル化合物は、ビニル基上に置換基(例えば、アルキル基)を有する化合物を包含する。
【0089】
α-オレフィンとしては、α位に二重結合を有する炭素原子数2~20個のアルケンが挙げられ、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられる。
内部オレフィンとしては、2-ブテン、3-ヘキセン等が挙げられる。
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、4-t-ブチルスチレン等が挙げられる。
中でも、反応性及び分子量制御性の点から、1-ヘキセン、スチレン、1-デセンが好ましく、1-ヘキセン、スチレンがより好ましい。
【0090】
連鎖移動剤は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
連鎖移動剤を使用する場合、連鎖移動剤の使用量は、ノルボルネン系単量体100モル%に対して、0.1モル%以上15モル%未満とすることができる。上記範囲内であれば、連鎖移動剤を使用することによる効果が十分に得られる。二量体等の含有率の低減の点から、連鎖移動剤は、0.3モル%以上10モル%未満が好ましく、0.5モル%以上9モル%以下がより好ましく、1モル%以上6モル%以下がさらに好ましい。
【0092】
<有機溶媒>
重合反応は、通常、有機溶媒中で行われる。
【0093】
有機溶媒は、ノルボルネン系単量体及び目的物であるノルボルネン系重合体を溶解又は分散可能であり、反応に不活性なものであれば、特に限定されず、例えば、
ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;
シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素;
ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;
ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系脂肪族炭化水素;
クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系芳香族炭化水素;
ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル等の含窒素炭化水素系溶媒;
ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;又はこれらの混合溶媒が挙げられる。これらの溶媒の中でも、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、エーテル類が好ましく用いられる。
【0094】
有機溶媒は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0095】
有機溶媒は、ノルボルネン系単量体の濃度が、1質量%以上50質量%以下となるような量で使用することができ、2質量%以上45質量%以下が好ましく、3質量%40質量%以下がより好ましい。上記範囲であれば、生産性が十分であり、取り扱い性の点からも便利である。
【0096】
<重合反応の諸条件>
重合反応は、ノルボルネン系単量体、式(1)の遷移金属イミド錯体、及び任意の活性化剤、連鎖移動剤を、通常有機溶媒中で撹拌することにより行うことができるが、本発明は、その際、ノルボルネン系単量体の少なくとも一部を、連続的に添加することを特徴とする。
【0097】
連続的に添加するノルボルネン系単量体以外の成分は、予め反応器に装入し、撹拌しておけばよい。反応器内の反応液の撹拌は、ノルボルネン系単量体の連続的な添加の間も継続して行い、重合反応を進めることができる。
【0098】
連続的に添加するノルボルネン系単量体は、全量であっても、一部であってもよい。反応選択性及び反応安定性の点から、連続的に添加するノルボルネン系単量体を一部とし、残部を予め反応器中に装入しておくことが好ましい。予め反応器に装入するノルボルネン系単量体の量は、全量を100質量%とした場合、0.1質量%以上70質量%以下とすることができ、0.5質量%以上50質量%以下が好ましく、1質量%以上35質量%以下がより好ましい。上記範囲内であれば、得られる重合体の重量平均分子量の制御が容易となる。
【0099】
ノルボルネン系単量体の連続的な添加は、前述の有機溶媒に溶解又は分散させた液体として、連続的に滴下することにより行うことができる。液体中のノルボルネン系単量体の濃度は1質量%以上50質量%以下とすることができ、2質量%以上45質量%以下が好ましく、3質量%以上40質量%以下がより好ましい。この範囲であれば、生産性が十分であり、取り扱い性の点からも便利である。
【0100】
連続的な添加の時間は、20分以上200分以下とすることができる。立体化学の制御の点から、40分以上180分以下が好ましく、60分以上160分以下がより好ましい。
【0101】
重合温度は、20℃以上60℃以下とすることができる。立体化学の制御の点から、25℃以上55℃以下が好ましく、30℃以上50℃以下がより好ましい。
【0102】
連続的に添加するノルボルネン系単量体の温度は、20℃以上60℃以下とすることができる。立体化学の制御の点から、22.5℃以上50℃以下が好ましく、25℃以上45℃以下がより好ましい。
【0103】
ノルボルネン系単量体の連続的な添加は、分子量の制御の点から、連続的な添加終了時の重合反応系においてノルボルネン系単量体の重合転化率が40%以上となるように行うことが好ましい。重合転化率はより好ましくは60%以上である。重合転化率は、ノルボルネン系単量体の添加の速度等の添加の条件、重合温度等の重合反応の条件を調整することにより、制御することができる。添加の際の速度以外の条件が同一の場合、速度を大きくすると、重合転化率は高くなり、速度を小さくすると、重合転化率は小さくなる傾向にあり、温度が高いと、重合転化率は高く、温度が低いと重合転化率は小さくなる傾向にある。上限は、特に限定されないが、通常99%以下である。
【0104】
連続的な添加が終了した後、反応液を継続的に撹拌して、重合反応を終了させる。終了後の混合撹拌の時間は、15分以上300分以下とすることができる。重合転化率及び生産性の点から、20分以上270分以下が好ましく、30分以上240分以下がより好ましい。
【0105】
遷移金属イミド錯体については、少なくとも一部を連続的に添加してもよい。これにより、反応選択性が期待できる。連続的に添加する遷移金属イミド錯体は、前述の有機溶媒に溶解又は分散させた液体として、連続的に滴下することにより行うことができる。液体中の遷移金属イミド錯体の濃度は0.01質量%以上20質量%以下とすることができる。錯体の溶液安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、0.5質量%以上10質量%以下がより好ましい。連続的に添加するタイミングは、ノルボルネン系単量体の連続添加のタイミングと同じであっても、異なっていてもよい。
【0106】
連鎖移動剤を使用する場合、立体化学の制御及び二量体等の含有率の低減の点から、ノルボルネン系重合体の連続的な添加の量が、連鎖移動剤1モルあたり、0.060モル/分以上となるような量とすることができ、0.080モル/分以上となるような量が好ましく、また、2.000モル/分以下となるような量とすることができ、1.000モル/分以下が好ましい。
【0107】
付加重合は、例えば、チーグラーナッタ触媒、メタロセン触媒、ニッケル触媒、パラジウム触媒のいずれかの存在下により行うことができる。付加重合は、公知の反応条件を適宜改変した反応条件下で行ってもよい。
【0108】
<水素化工程>
重合工程で得られたノルボルネン系重合体は、主鎖中に炭素-炭素二重結合を有する。また、重合に用いた単量体の種類によって、主鎖、あるいは5員環に結合した置換基もしくは5員環との縮合環(以下、側鎖という)の中に、炭素-炭素二重結合を有することもある。ノルボルネン系重合体を水素化することにより、これらの炭素-炭素二重結合を水素添加して飽和結合にした、水素添加物が得られる。水素添加物とすることによって、耐熱性、耐候性、耐光性、耐溶剤性、耐薬品性、耐水性などの特性が改善されることがある。水素添加の方法としては、公知の方法を利用することができ、例えば、水素添加触媒の存在下でノルボルネン系重合体の溶液に水素を供給し付加反応させることにより行うことができる。水素添加触媒は、主鎖中の炭素-炭素二重結合を水素化し、かつナフチル基のナフタレン環を水素化しない触媒が好ましい。このような水素添加触媒としては、例えば、ルテニウム触媒(クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム)、パラジウム触媒が挙げられる。水素の供給は、例えば、水素を高圧(例、1MPa以上)で付加し、高温(例、120℃以上)で撹拌することによって行われてもよい。
【0109】
<回収工程>
重合工程で得られたノルボルネン系重合体または水素化工程で得られた水素添加物は、環状オレフィン重合体として回収することができる。例えば、反応溶液を沈殿剤(例、イソプロパノール、メタノール等の貧溶媒)と混合することにより環状オレフィン重合体を沈殿させて、沈殿物として環状オレフィン重合体を回収することができる。回収した環状オレフィン重合体は、乾燥(例、真空乾燥)させてもよい。
【0110】
(環状オレフィン重合体の物性)
<屈折率>
屈折率は、波長及び温度に依存して変化し得るものであり、いかなる波長及び温度条件下で測定してもよいが、本明細書では、屈折率として、波長587.6nmの光における25℃での屈折率(nd)を用いる。本発明の環状オレフィン重合体の屈折率(nd)は、光学素子の光学的機能を発揮させるために、1.545以上であることが好ましく、1.550以上であることがより好ましい。また、本発明の環状オレフィン重合体の屈折率(nd)は、光学素子の機能を奏するために、1.640以下であることが好ましく、1.635以下であることがより好ましい。
【0111】
<アッベ数>
アッベ数は、3種類の波長における屈折率に基づいて計算される値であり、波長の組合せによって種々の定義が存在するが、本明細書では、アッベ数として、下記式(1)で定義されるアッベ数(νd)を用いる。
νd=(nd-1)/(nF-nC) (1)
式(1)中、nd、nC、及びnFはそれぞれ、波長587.6nm、656.3nm、及び486.1nmにおける25℃での屈折率を表す。
本発明の環状オレフィン重合体のアッベ数(νd)は、20以上であることが好ましく、21以上であることがより好ましい。また、本発明の環状オレフィン重合体のアッベ数(νd)は、光学素子の色収差を低減させるために、50以下であることが好ましく、49以下であることがより好ましい。
【0112】
<応力複屈折>
応力複屈折(CR)は、測定試料に応力(F)を加え、その後、特定の波長(例、波長543nm)での測定試料の中心部の面内レターデーション(Re(b)[nm])及び厚み(T(b)[mm])を測定し、下記式(X1)及び(X2)により、δn値を算出することができる。
δn=Re(b)×(1/T(b))×10-6 (X1)
R=δn/F (X2)
δn値が0に近いものほど複屈折が小さいことを示す。また、遅相軸が延伸方向のものは正の値を示し、遅相軸が延伸方向と直交するものは負の値を示す。本発明の環状オレフィン重合体の応力複屈折(CR)は、-500×10-12Pa-1以上であることが好ましく、-400×10-12Pa-1以上であることがより好ましい。また、本発明の環状オレフィン重合体の応力複屈折(CR)は、光学素子の品質のばらつきを抑制するために、1400×10-12Pa-1以下であることが好ましく、900×10-12Pa-1以下であることがより好ましい。
【0113】
<ガラス転移温度>
本発明の環状オレフィン重合体のガラス転移温度は、例えば、40℃以上200℃以下であり得る。なお、ガラス転移温度は、例えば、本発明の環状オレフィン重合体を合成する際に用いる単量体組成物の組成を調節すること等に基づいて、制御することができる。
【0114】
(環状オレフィン重合体の用途)
<組成物>
本発明の環状オレフィン重合体は、組成物として用いることができる。組成物は、本発明の環状オレフィン重合体、及び任意に、耐候安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、充填剤などの添加剤や、溶剤を更に含有する。
なお、本発明の環状オレフィン重合体と、添加剤又は溶剤とは、既知の混合方法を用いて混合することができる
【0115】
ここで、添加剤としては、具体的には、例えば、特開2005-330465号公報に例示されているものを用いることができる。また、溶剤としては、上述した有機溶媒等の既知の溶剤を用いることができる。
【0116】
本発明の環状オレフィン重合体又は本発明の環状オレフィン重合体を含む組成物は、光学素子等の材料として有利に使用することができる。
【0117】
<成形体>
本発明の環状オレフィン重合体は、成形体として用いることができる。成形体は、本発明の環状オレフィン重合体又は本発明の環状オレフィン重合体を含む組成物を成形してなる。そして、本発明の環状オレフィン重合体から得られる成形体は、光学素子等として有利に使用することができる。
【0118】
なお、成形体の成形方法としては、例えば、射出成形法、エクストルージョンブロー成形法、インジェクションブロー成形法、二段ブロー成形法、多層ブロー成形法、コネクションブロー成形法、延伸ブロー成形法、回転成形法、真空成形法、押出成形法、カレンダー成形法、溶液流延法、熱プレス成形法、インフレーション法などを用いることができる。
【実施例
【0119】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0120】
<物性の評価方法>
各種の物性の測定は、下記の方法に従って行った。
【0121】
(重量平均分子量Mwの測定方法)
重量平均分子量Mwは、シクロヘキサンを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリイソプレン換算値として求めた。標準ポリイソプレンとしては、東ソー株式会社製標準ポリイソプレンを用いた。サンプルがシクロヘキサンに溶解しない場合は、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液としてGPCにより測定し、標準ポリスチレン換算値として求めた。標準ポリスチレンとしては、東ソー株式会社製標準ポリスチレンを用いた。
【0122】
(ガラス転移温度の測定方法)
ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量分析計(ナノテクノロジー社製、製品名:DSC6220SII)を用いて、JIS K 6911に基づき、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
【0123】
(重合体の応力複屈折CRの測定方法)
重合体を、縦35mm×横10mm×厚み1mmのシート状に成形して、サンプルシートを得た。このサンプルシートの両端をクリップで固定した後に、片方のクリップに55gの重りを固定した。次いで、重合体のガラス転移温度(Tg)+15℃に温度を設定したオーブン内に、重りを固定していない方のクリップを起点にして、1時間サンプルシートを吊るして延伸処理を行った。その後、サンプルシートをゆっくりと冷やして室温まで戻し、測定試料を得た。
この測定試料について、複屈折計(株式会社フォトニックラティス製「WPA-100」)を用いて、測定波長543nmで、測定試料の中心部の面内レターデーション(Re(b)[nm])を測定した。また、測定試料の前記中心部の厚み(T(b)[mm])を測定した。これらの測定値Re(b)及びT(b)を用いて、下記式(X1)により、δn値を算出した。
δn=Re(b)×(1/T(b))×10-6 (X1)
当該δn値及びサンプルに加えた応力(F)を用い、下記式(X2)により、応力複屈折(CR)を計算した。
R=δn/F [Pa-1] (X2)
δn値が0に近いものほど複屈折が小さい。また、遅相軸が延伸方向のものは正の値を示し、遅相軸が延伸方向と直交するものは負の値を示す。
【0124】
(屈折率測定)
厚さ5mmのシート状に成形し、〔ガラス転移温度(Tg)-15〕℃の雰囲気下に20時間放置したものを測定試料とした。
得られた測定試料について、精密屈折計(株式会社島津製作所製、製品名:KPR-200、光源=Heランプ(波長:587.6nm)、H2ランプ(波長:656.3nm及び486.1nm)を用いて、25℃における屈折率(nd、nC、及びnF)を測定した。表中には、波長が587.6nmの光における屈折率を示す。
【0125】
(アッベ数測定)
屈折率測定により得られた、25℃における屈折率(nd、nC、及びnF)を用いて、下記式(1)に従ってアッベ数(νd)を算出した。
νd=(nd-1)/(nF-nC) (1)
式(1)中、nd、nC、及びnFはそれぞれ、波長587.6nm、656.3nm、及び486.1nmにおける屈折率を表す。
【0126】
<合成例1:exo-1-ナフチルノルボルネン単量体の製造方法>
1-ブロモナフタレン(和光純薬社製)458g、ジメチホルムアミド(和光純薬社製)500mL、ノルボルナジエン(東京化成工業株式会社製)455mL、ピペリジン(和光純薬社製)656mL、ギ酸(99%、和光純薬社製)220mL、及びパラジウム触媒(パラジウムジクロロビストリフェニルホスフィン、東京化成工業株式会社製、製品コード:B1667)2.75gを仕込み、90℃で6.5時間攪拌した。反応液を酢酸エチル/水で抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。これを、ろ過及びエバポレーションした。残存物をカラムクロマトグラフィーに付し(展開溶媒:ヘキサン)、パラジウム残渣を除去した。得られた溶液をエバポレーションし、残存液を減圧蒸留した(1.2mmHg/135~152℃)。下記式で表される無色透明な液体のexo-1-ナフチルノルボルネン(exo-1-NaphNB)269gを得た。ガスクロマトグラフィーにかけて、そのピーク純度を測定したところ、純度95.0%であった。
【0127】
【化12】
【0128】
<合成例2:exo-2-ナフチルノルボルネン単量体の製造方法>
2-ブロモナフタレン(和光純薬社製)458g、ジメチホルムアミド(和光純薬社製)500mL、ノルボルナジエン(東京化成工業株式会社製)455mL、ピペリジン(和光純薬社製)656mL、ギ酸(99%、和光純薬社製)220mL、及びパラジウム触媒(パラジウムジクロロビストリフェニルホスフィン、東京化成工業株式会社製、製品コード:B1667)2.75gを仕込み、90℃で6.5時間攪拌した。反応液を酢酸エチル/水で抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。これを、ろ過及びエバポレーションした。残存物をカラムクロマトグラフィーに付し(展開溶媒:ヘキサン)、パラジウム残渣を除去した。得られた溶液をエバポレーションし、残存液を減圧蒸留した(1.2mmHg/135~152℃)。下記式で表される無色透明な液体のexo-2-ナフチルノルボルネン(exo-2-NaphNB)269gを得た。ガスクロマトグラフィーにかけて、そのピーク純度を測定したところ、純度95.0%であった。
【0129】
【化13】
【0130】
<実施例1:ノルボルネン系重合体の製造及び評価>
(1-1)開環重合体の製造
内部を窒素置換したガラス製反応容器に、脱水したトルエン96g、1-ヘキセン2mol%、及びジエチルアルミニウムエトキシド(Et2Al(OEt))1.2mol%を室温で入れ混合した後、50℃に保ちながら、テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)(錯体1)の2.0重量%トルエン溶液0.4mol%を全量投入し、その後、exo-2-ナフチルノルボルネンとテトラシクロドデセン(TCD)の混合モノマー(モル比=56:44、合計0.03mol)を2時間かけて連続的に添加し開環重合した。次いで、重合溶液にイソプロピルアルコール48mol%を加えて重合触媒を不活性化し重合反応を停止させた。反応溶液の全量は121gであった。得られた開環重合体の重量平均分子量Mwは2.5×104であった。また、単量体の重合体への転化率は、100%であった。文中、「mol%」は、混合モノマーのモル数を基準とした%値を示す。
【0131】
(1-2)水素化によるノルボルネン系重合体の製造
次いで、前記の工程(1-1)で得られた開環重合体を含有する反応溶液95gに対して、シクロヘキサン155gを加え、さらに水素添加触媒として、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.05重量%を加え、水素により4.5MPaに加圧して撹拌しながら温度160℃まで加温した後、8時間反応させ、exo-2-ナフチルノルボルネン/TCD開環共重合体水素添加物を含有する反応溶液を得た。得られた溶液を、大量のイソプロパノール中に注ぎ、開環重合体の水素化物としてのノルボルネン系重合体を沈殿させた。沈殿したノルボルネン系重合体を濾取した後に、真空乾燥機(200℃、1Torr)で10時間乾燥させて、ノルボルネン系重合体5gを得た。ノルボルネン系重合体の重量平均分子量は3.04×104であった。
【0132】
(1-3)ノルボルネン系重合体の評価
得られたノルボルネン系重合体のガラス転移温度(Tg)、応力複屈折(CR)、屈折率(nd)、及びアッベ数(νd)を上述した方法で測定した。結果を表1に示す。
【0133】
<実施例2~7及び比較例1:ノルボルネン系重合体の製造及び評価>
混合モノマー中のモノマー化合物の種類及び組成比を表1に示すものを用いたこと、または混合モノマーに代えて表1に示すモノマー化合物を用いたこと以外は、実施例1と同様である。評価結果を表1に示す。
【0134】
【表1】
【0135】
表1中の化合物名の略称は以下のとおりである。
exo-2-NaphNB:exo-2-ナフチルノルボルネン
exo-1-NaphNB:exo-1-ナフチルノルボルネン
TCD:テトラシクロドデセン
MTCD:8-メトキシカルボニル-8-メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン
MTF:1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロ-9H-フルオレン
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明によれば、高い屈折率、低いアッベ数、及び低い複屈折を並立した環状オレフィン重合体を提供することができる。
また、本発明によれば、光学素子等の材料として有利に使用し得る組成物、および、光学素子等として有利に使用し得る成形体を提供することができる。