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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】設計装置、設計方法及び設計プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 41/142 20220101AFI20241217BHJP
【FI】
H04L41/142
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022581134
(86)(22)【出願日】2021-02-12
(86)【国際出願番号】 JP2021005371
(87)【国際公開番号】W WO2022172423
(87)【国際公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌村 星平
(72)【発明者】
【氏名】林 裕平
(72)【発明者】
【氏名】三好 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】西岡 孟朗
(72)【発明者】
【氏名】森岡 千晴
(72)【発明者】
【氏名】中務 諭士
(72)【発明者】
【氏名】武井 勇樹
【審査官】中川 幸洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-232395(JP,A)
【文献】Yufei Wang, et al.,Explicit routing algorithms for Internet traffic engineering,Proceedings Eight International Conference on Computer Communications and Networks,1999年10月11日,pp.582-588
【文献】蔡 東風, 石塚 満,線形計画法を利用した離散制約最適化問題の効率的近似解法,人工知能学会誌,1999 年 14 巻 2 号,1999年03月01日,pp. 334-341
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 41/142
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに含まれる隣接するノード間のリンクのそれぞれに割り当てられたトラヒック量を第1の粒度で最適化する最適化部と、
前記第1の粒度で最適化されたトラヒック量を第2の粒度で近似した近似解を残容量として計算する近似計算部と、
前記残容量の総和が最も少ない経路へ優先して論路パスをマッピングし、前記経路の前記残容量の総和が足りない場合は、前記残容量の総和が最も多い経路に優先してマッピングを行うマッピング部と、
を有することを特徴とする設計装置。
【請求項2】
前記最適化部は、交流トラヒックを実数解で最適化し、
前記近似計算部は、前記実数解を整数解で近似することを特徴とする請求項1に記載の設計装置。
【請求項3】
設計装置によって実行される設計方法であって、
ネットワークに含まれる隣接するノード間のリンクのそれぞれに割り当てられたトラヒック量を第1の粒度で最適化する最適化工程と、
前記第1の粒度で最適化されたトラヒック量を第2の粒度で近似した近似解を残容量として計算する近似計算工程と、
前記残容量の総和が最も少ない経路へ優先して論路パスをマッピングし、前記経路の前記残容量の総和が足りない場合は、前記残容量の総和が最も多い経路に優先してマッピングを行うマッピング工程と、
を含むことを特徴とする設計方法。
【請求項4】
コンピュータを、請求項1又は2に記載の設計装置として機能させるための設計プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設計装置、設計方法及び設計プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワーク事業者においては、キャリア特有の信頼性や品質に関する様々なポリシーを満足しつつトラヒックを効率的に収容するために、トラヒックを収容する経路を適切に設計する必要がある。
【0003】
トラヒックを効率的に収容するために、従来は、ネットワーク装置実装の制約から、ある端点ノード間の経路は、収容するユーザやサービスによらず同一の単一経路に、もしくは複数経路にランダムに振り分けられることが一般的であった。
【0004】
一方で近年、トラヒックの詳細を監視して収容されるユーザやサービスを識別する技術や、その細分化された単位で論理パスを設定する技術が登場しており、これらの技術を活用することで更なるトラヒック収容効率の改善が見込まれる。
【0005】
トラヒック需要とネットワークトポロジーが与えられたときの経路計算方法として、トポロジーの各リンクに付与されたリンクコストに基づいて、そのリンクコストの和が最小となる経路をDijkstra法等を用いて計算する方法が知られている。
【0006】
例えば、非特許文献1では、リンクコストの与え方を工夫することで、網内の最大リンク利用率を最小化し、トラヒック収容効率を高める方法が提案されている。
【0007】
また、トラヒック需要とネットワークトポロジーが与えられたときに厳密最適解を算出する方法としては数理計画問題を用いたアプローチが存在する。
【0008】
例えば、非特許文献2では、始終点ノード間でトラヒックの分岐や合流を許容した実数解を算出するBifurcation Problem(分岐許容問題、以下BP)と、始終点ノード間では単一の経路となる整数解を算出するNon-Bifurcation Problem(非分岐問題、以下NBP)の2つの問題が定義されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】B. Fortz, M. Thorup, “Internet Traffic Engineering by Optimizing OSPF Weights,” in IEEE INFOCOM 2000.
【文献】Y. Wang and Z. Wang, "Explicit Routing Algorithms for Internet Traffic Engineering," in Proc. of ICCCN'99, Sep. 1999.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の技術には、通信ネットワークにおけるトラヒック収容効率の高い経路設計を、現実的な方法により行うことが困難な場合があるという問題がある。
【0011】
例えば、非特許文献1に記載されているヒューリスティックな解法では、リンクコストの最小和で間接的に経路を求めており、厳密最適解が得られない場合がある。
【0012】
また、例えば、非特許文献2に記載のBPは線形計画問題として、NBPは整数計画問題として定式化可能であるためそれぞれ厳密最適化を算出可能である。
【0013】
一方で、BPでは実数解を計算するため計算が高速であるが、計算された実数解は実在するNW(ネットワーク)装置で設定できる解ではない。また、NBPは整数解のため実在するNW装置で設定可能であるが、問題がNP困難のため、キャリア網規模での計算が実用的な時間で実行できない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、設計装置は、ネットワークに含まれる隣接するノード間のリンクのそれぞれに割り当てられたトラヒック量を第1の粒度で最適化する最適化部と、前記第1の粒度で最適化されたトラヒック量を第2の粒度で近似した近似解を計算する近似計算部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、通信ネットワークにおけるトラヒック収容効率の高い経路設計を、現実的な方法により行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、BP及びNBPを説明する図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る通信システムの構成例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る設計装置の構成例を示す図である。
図4図4は、経路計算の流れを説明する図である。
図5図5は、交流トラヒックを説明する図である。
図6図6は、交流トラヒックの一例を示す図である。
図7図7は、第1の実施形態に係る設計装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図8図8は、マッピング処理の流れを示すフローチャートである。
図9図9は、マッピング処理の一例を示す図である。
図10図10は、スーバル法を説明する図である。
図11図11は、設計プログラムを実行するコンピュータの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本願に係る設計装置、設計方法及び設計プログラムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態により限定されるものではない。
【0018】
[BP及びNBPについて]
図1は、BP及びNBPを説明する図である。図1に示すように、BP及びNBPにおける厳密最適化は、例えばwang99によって行われる。
【0019】
また、BPではトラヒックの途中分岐が許容される。前述の通り、BPは実数解のため計算が容易(早い)が実装に即さない。またNBPは整数解のため実装可能だが、問題がNP困難で計算が実用的でない課題がある。
【0020】
一方、キャリア網規模を想定すると、BPによるアプローチが有効であるが、実在するNW装置ではトラヒックの分岐や合流、及び任意の実数の粒度での論理パス設定はできないため、BPによる最適計算の結果を適用できない課題がある。
【0021】
本実施形態の目的の1つは、BP及びNBPの課題を解決した設計方法を実現することである。
【0022】
[第1の実施形態]
図2は、第1の実施形態に係る通信システムの構成例を示す図である。図1に示すように、通信システム1は、通信ネットワークN、設計装置10、監視装置20及び制御装置30を有する。
【0023】
通信ネットワークNは、複数のノードを含むパケット網である。例えば、ノードは、IPルータ及びL2スイッチ等である。また、通信ネットワークNのノード間は光ファイバー等のリンクで接続される。
【0024】
設計装置10は、通信ネットワークNの経路設計を行う。例えば、設計装置10は、監視装置20及び制御装置30からの情報に基づきネットワーク構成を管理し、経路の設計(計算)を行う。
【0025】
監視装置20は、通信ネットワークNを監視する。例えば、監視装置20は、各リンクに流れるトラヒック量、始点ノード及び終点ノードで設定される論理パス(例えばVPN等)ごとの交流トラヒック情報を観測する。また、監視装置20は、得られたトラヒック情報を設計装置10及び制御装置30に提供する。
【0026】
制御装置30は、通信ネットワークNを制御する。例えば、制御装置30は、設計装置10によって設計された経路情報を各ノードに設定する。
【0027】
図3は、第1の実施形態に係る設計装置の構成例を示す図である。設計装置10は、監視装置20によって観測された情報の入力を受け付ける。例えば、設計装置10は、通信ネットワークNのトポロジー及び交流トラヒックの入力を受け付ける。また、設計装置10は、経路情報を制御装置30に対して出力する。
【0028】
図3に示すように、設計装置10は、インタフェース部11、記憶部12及び制御部13を有する。
【0029】
インタフェース部11は、データの入力及び出力のためのインタフェースである。例えば、インタフェース部11はNIC(Network Interface Card)である。インタフェース部11は他の装置との間でデータの送受信を行うことができる。
【0030】
また、インタフェース部11は、マウスやキーボード等の入力装置と接続されていてもよい。また、インタフェース部11は、ディスプレイ及びスピーカ等の出力装置と接続されていてもよい。これにより、インタフェース部11は、ネットワークオペレータとのインタフェースとして機能する。
【0031】
記憶部12は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、光ディスク等の記憶装置である。なお、記憶部12は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、NVSRAM(Non Volatile Static Random Access Memory)等のデータを書き換え可能な半導体メモリであってもよい。記憶部12は、設計装置10で実行されるOS(Operating System)や各種プログラムを記憶する。
【0032】
記憶部12は、経路DB121、トポロジーDB122及びトラヒックDB123を記憶する。
【0033】
経路DB121は、始点ノードと終点ノードとの間に設定される論理パスごとの経路情報を保持する。経路情報の計算方法については後述する。
【0034】
トポロジーDB122は、ノードとリンクの接続情報、及び各リンクの容量情報を保持する。また、トラヒックDB123は、リンクごとのトラヒック情報、及び論理パスごとの交流トラヒック情報を管理する。
【0035】
なお、設計装置10は、トポロジーDB122及びトラヒックDB123から経路情報を計算し、計算した経路情報を経路DB121に格納する。また、設計装置10は、計算した経路情報を出力してもよい。
【0036】
制御部13は、設計装置10全体を制御する。制御部13は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の電子回路や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路である。また、制御部13は、各種の処理手順を規定したプログラムや制御データを格納するための内部メモリを有し、内部メモリを用いて各処理を実行する。
【0037】
制御部13は、各種のプログラムが動作することにより各種の処理部として機能する。例えば制御部13は、最短経路計算部131、最適化部132、近似計算部133及びマッピング部134を有する。
【0038】
最短経路計算部131は、指定された始点ノードと終点ノードとの間の最短経路を計算する。
【0039】
最適化部132は、ネットワークに含まれる隣接するノード間のリンクのそれぞれに割り当てられたトラヒック量を第1の粒度で最適化する。例えば、最適化部132は、交流トラヒック量を実数解で最適化する。例えば、第1の粒度は実数である。
【0040】
近似計算部133は、第1の粒度で最適化されたトラヒック量を第2の粒度で近似した近似解を計算する。例えば、近似計算部133は、実数解を整数解で近似する。例えば、第2の粒度は整数である。
【0041】
マッピング部134は、近似計算部133によって近似されたトラヒック量に従って、リンクによって構成される経路のそれぞれに論理パスをマッピングする。
【0042】
ここで、図5を用いて、交流トラヒックについて説明する。図5は、交流トラヒックを説明する図である。
【0043】
交流トラヒックは、隣接ノード間のリンクに流れる合算されたトラヒック量ではなく、始点ノードと終点ノード間の経路(リンクの集合)のトラヒック量を表す。
【0044】
図5の例では、ノード51とノード54との間の交流トラヒックは40Gbpsである。また、ノード51とノード52との間の交流トラヒックは20Gbpsである。
【0045】
図6は、交流トラヒックの一例を示す図である。図5のような2つの交流トラヒックが発生している場合は、図6の表に示すようなマトリクス表記がされる。
【0046】
図4を用いて、設計装置10による経路計算を詳細に説明する。図4は、経路計算の流れを説明する図である。
【0047】
図4に示すように、設計装置10には、パスの分解能、交流トラヒック及びトポロジーが与えられる。パスの分解能とは、経路に設定可能なトラヒック量の最小粒度(例えば、整数)である。
【0048】
例えば、経路に設定可能なトラヒック量の単位が決められている場合がある。この単位が最小粒度に相当する。例えば、図4のように、割り当て可能な単位が1G(bps)であれば、最小粒度は整数ということになる。
【0049】
図4のステップS1において、最適化部132は、交流トラヒックとトポロジーから実数解となる最適経路を計算する。例えば、最適化部132は、非特許文献2に記載されて方法で実数解を計算する。
【0050】
図4の例では、最適化部132は、ノード51とノード53との間のリンクのトラヒック量を34.77Gのように実数で計算する。また、最適化部132は、ノード53とノード54との間のリンクのトラヒック量を29.84Gと計算する。
【0051】
ここで、非特許文献2に記載の線形計画法で算出される解は実数解であるため、与えられたパスの分解能では設定できない粒度の解ということになる。
【0052】
そこで、ステップS2において、近似計算部133は、最適化部132によって計算された解を、パスの分解能の倍数となる値、すなわち最小粒度で近似する。例えば、近似計算部133は、パスの分解能より低い桁(ここでは小数点第1位以下)に対して四捨五入もしくは切り捨てを行う。
【0053】
図4の例では、近似計算部133は、ノード51とノード53との間のリンクのトラヒック量を34.77Gから35Gに近似する。また、近似計算部133は、ノード53とノード54との間のリンクのトラヒック量を29.84Gから30Gに近似する。
【0054】
さらに、ステップS3において、マッピング部134は、各経路にトラヒックをマッピングする。このとき、マッピング部134は、各リンクに割り当てられるトラヒック量が、近似計算部133の計算結果になるべく近くなるようにマッピングを行う。
【0055】
図4の例では、マッピング部134は、ノード51とノード54との間の経路であって、ノード53を経由する経路に、1Gの論理パスを30本マッピングする。
【0056】
なお、本実施形態の設計装置10による設計処理(各種計算及びマッピング)は、通信ネットワークNの経路を初期設計する時だけでなく、交流トラヒックが変動した時に行われてもよい。
【0057】
交流トラヒックが変動した場合、設計装置10は、トラヒック量の計算を再度行い、交流トラヒックの変動が起こる前の状態との全体差分をとることができる。また、設計装置10は、指定した対地間の経路計算を行い、当該指定した対地間のみの差分をとることで、網運用時のトラヒック変動に対する解を得るようにしてもよい。
【0058】
[第1の実施形態の処理]
図7は、第1の実施形態に係る設計装置の処理の流れを示すフローチャートである。図7に示すように、設計装置10は各リンクのトラヒック量の実数解を計算する(ステップS10)。
【0059】
次に、設計装置10は、実数解を最小粒度(例えば整数)で近似する(ステップS20)。そして、設計装置10は、近似した整数解を基に各経路への論理パスのマッピングを行う(ステップS30)。
【0060】
図8は、マッピング処理の流れを示すフローチャートである。図8に示す処理は、図7のステップS30の処理に相当する。また、図7の各ステップと図9の例とを適宜対応付けて説明を行う。図9は、マッピング処理の一例を示す図である。
【0061】
まず、マッピング部134は、始点ノードと終点ノードのペア(選択対地)を選択する(ステップS301)。図9の例では、マッピング部134は、近似された経路情報におけるノード51を始点ノードに選択し、ノード54を終点ノードに選択する。このとき、選択対地はノード51とノード54である。
【0062】
ここで、実数解は全ての始点ノード及び終点ノードのペアに対して計算されるが、その実数解はペアごとに計算されるものであるため、マッピング部134はどのような順番でペアを選択していってもよい。
【0063】
次に、最短経路計算部131は、残容量(近似されたトラヒック量)をリンクコストとして最小リンクコスト経路を計算し、複数の経路候補を計算する(ステップS302)。図9の例では、最短経路計算部131は、下記の経路候補を計算する。
第1の経路候補:ノード51→ノード52→ノード54(リンクコスト総和:5+10=15)
第2の経路候補:ノード51→ノード53→ノード52→ノード54(リンクコスト総和:35+5+10=50)
第3の経路候補:ノード51→ノード52→ノード53→ノード54(リンクコスト総和:5+5+30=40)
第4の経路候補:ノード51→ノード53→ノード54(リンクコスト総和:35+30=65)
【0064】
最短経路計算部131は、Dijkstra法を実行し一度利用したリンクを削除してk個の経路を計算する方法、K-shortest pathアルゴリズムを用いてリンク利用の重複があるk個の経路を計算する方法、スーバル法を用いてDisjointなK個の経路を計算する方法等により複数経路候補を計算することができる。
【0065】
図10はスーバル法を説明する図である。図10に示すように、スーバル法は以下の手順で行われる。
(1)Dijkstra法等により、最短コスト経路を計算する。
(2)最短コスト経路上のリンクを逆向きにするとともに、リンクコストをマイナスにする。
(3)Bellman-Ford法等により、最短コスト経路を計算する。
(4)2つの経路計算結果をあわせ、共通部分を除去し、冗長パスを得る。
【0066】
スーバル法は、ノード/リンク冗長パス計算アルゴリズムである。スーバル法によれば、ノード/リンク冗長パスが存在する場合、必ず発見することが可能である。スーバル法では、現用パス、予備パスのコストの和が最小となるような組が発見される。一方、Dijkstra法(最短経路探索アルゴリズム)を2回適用する方法では、ノード/リンク冗長パスが存在しても発見できないことがある。
【0067】
マッピング部134は、選択対地の経路候補に対し、リンクコスト総和の小さいものから、与えられた分解能でトラヒックのマッピングを試す(ステップS303)。図9の例では、マッピング部134は、1周目においてはリンクコスト総和が最小の第1の経路候補へのマッピングを試す。
【0068】
マッピングができた場合(ステップS304、Yes)、マッピング部134はステップS306へ進む。そして、マッピング部134は、残容量を更新する(ステップS306)。図9の例では、マッピング部134は、1周目においては第1の経路候補の各リンクの残容量を更新する。
【0069】
なお、残容量が0に更新されたリンクのリンクコストは、次周以降十分大きな値(例えば無限大)とみなされる。
【0070】
いずれの経路候補についてもマッピングができなかった場合(ステップS304、No)、マッピング部134はステップS305へ進む。そして、マッピング部134は、最も残容量の総和が大きい経路に対してトラヒックのマッピングを試す(ステップS305)。
【0071】
ここで、マッピング部134は、要求トラヒック量(選択対地で発生している交流トラヒックの量)を全て割り当てた場合(ステップS307、Yes)、ステップS308へ進む。一方、マッピング部134は、要求トラヒック量を全て割り当てていない場合(ステップS307、No)、ステップS302へ戻り処理を繰り返す。
【0072】
また、マッピング部134は、全てのペアに対して処理を実行した場合(ステップS308、Yes)、処理を終了する。一方、マッピング部134は、全てのペアに対して処理を実行していない場合(ステップS308、No)、ステップS301へ戻り処理を繰り返す。
【0073】
このように、マッピング部134は、近似されたトラヒック量が少ない経路へのマッピングを優先し、近似されたトラヒック量が足りない場合は、近似されたトラヒック量が最も多い経路に優先してマッピングを行う。
【0074】
図9の例では、残容量が少ない経路から順にトラヒックがマッピングされていき、残容量が0以下となるとリンクコストとしては大きい値として扱われるため、残容量がある経路へとトラヒックのマッピングが行われていく。
【0075】
なお、マッピングされるトラヒック量は分解能に応じて一律であるため、残容量が少ない経路から割り当てる方法と、逆に残容量が多いトラヒック量から割り当てる方法とでは、マッピング先の容量が変化するだけであるため、性能差は無いものと考えられる。
【0076】
[第1の実施形態の効果]
これまで説明してきたように、最適化部132は、ネットワークに含まれる隣接するノード間のリンクのそれぞれに割り当てられたトラヒック量を第1の粒度で最適化する。近似計算部133は、第1の粒度で最適化されたトラヒック量を第2の粒度で近似した近似解を計算する。
【0077】
前述の通り、従来の技術には、実数解のため実際に網に設定できない、もしくはキャリア網規模で演算ができないといったことから実用的ではないという問題があった。本実施形態では、最適解を近似しつつ実際に設定可能な解が算出される。その結果、本実施形態によれば、通信ネットワークにおけるトラヒック収容効率の高い経路設計を、現実的な方法により行うことが可能になる。さらに、トラヒック収容効率の高い経路設計により、設備コスト削減という効果が生じる。
【0078】
また、最適化部132は、交流トラヒック量を実数解で最適化する。近似計算部133は、実数解を整数解で近似する。これにより、1Gbps単位の論理パスがマッピング可能になる。
【0079】
また、マッピング部134は、近似計算部133によって近似されたトラヒック量に従って、リンクによって構成される経路のそれぞれに論理パスをマッピングする。これにより、設計装置10は、近似計算の結果を実際の通信ネットワークに反映させることができる。
【0080】
また、マッピング部134は、近似されたトラヒック量が少ない経路へのマッピングを優先し、近似されたトラヒック量が足りない場合は、近似されたトラヒック量が最も多い経路に優先してマッピングを行う。これにより、設計装置10は、効率の良いマッピングを実現することができる。
【0081】
[システム構成等]
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示のように構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散及び統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散又は統合して構成することができる。さらに、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。なお、プログラムは、CPUだけでなく、GPU等の他のプロセッサによって実行されてもよい。
【0082】
また、本実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0083】
[プログラム]
一実施形態として、設計装置10は、パッケージソフトウェアやオンラインソフトウェアとして上記の設計処理を実行する設計プログラムを所望のコンピュータにインストールさせることによって実装できる。例えば、上記の設計プログラムを情報処理装置に実行させることにより、情報処理装置を設計装置10として機能させることができる。ここで言う情報処理装置には、デスクトップ型又はノート型のパーソナルコンピュータが含まれる。また、その他にも、情報処理装置にはスマートフォン、携帯電話機やPHS(Personal Handyphone System)等の移動体通信端末、さらには、PDA(Personal Digital Assistant)等のスレート端末等がその範疇に含まれる。
【0084】
また、設計装置10は、ユーザが使用する端末装置をクライアントとし、当該クライアントに上記の設計処理に関するサービスを提供する設計サーバ装置として実装することもできる。例えば、設計サーバ装置は、通信ネットワークの交流トラヒック及びトポロジーを入力とし、論理パスのマッピング結果を出力とする設計サービスを提供するサーバ装置として実装される。この場合、設計サーバ装置は、Webサーバとして実装することとしてもよいし、アウトソーシングによって上記の設計処理に関するサービスを提供するクラウドとして実装することとしてもかまわない。
【0085】
図11は、設計プログラムを実行するコンピュータの一例を示す図である。コンピュータ1000は、例えば、メモリ1010、CPU1020を有する。また、コンピュータ1000は、ハードディスクドライブインタフェース1030、ディスクドライブインタフェース1040、シリアルポートインタフェース1050、ビデオアダプタ1060、ネットワークインタフェース1070を有する。これらの各部は、バス1080によって接続される。
【0086】
メモリ1010は、ROM(Read Only Memory)1011及びRAM(Random Access Memory)1012を含む。ROM1011は、例えば、BIOS(Basic Input Output System)等のブートプログラムを記憶する。ハードディスクドライブインタフェース1030は、ハードディスクドライブ1090に接続される。ディスクドライブインタフェース1040は、ディスクドライブ1100に接続される。例えば磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能な記憶媒体が、ディスクドライブ1100に挿入される。シリアルポートインタフェース1050は、例えばマウス1110、キーボード1120に接続される。ビデオアダプタ1060は、例えばディスプレイ1130に接続される。
【0087】
ハードディスクドライブ1090は、例えば、OS1091、アプリケーションプログラム1092、プログラムモジュール1093、プログラムデータ1094を記憶する。すなわち、設計装置10の各処理を規定するプログラムは、コンピュータにより実行可能なコードが記述されたプログラムモジュール1093として実装される。プログラムモジュール1093は、例えばハードディスクドライブ1090に記憶される。例えば、設計装置10における機能構成と同様の処理を実行するためのプログラムモジュール1093が、ハードディスクドライブ1090に記憶される。なお、ハードディスクドライブ1090は、SSD(Solid State Drive)により代替されてもよい。
【0088】
また、上述した実施形態の処理で用いられる設定データは、プログラムデータ1094として、例えばメモリ1010やハードディスクドライブ1090に記憶される。そして、CPU1020は、メモリ1010やハードディスクドライブ1090に記憶されたプログラムモジュール1093やプログラムデータ1094を必要に応じてRAM1012に読み出して、上述した実施形態の処理を実行する。
【0089】
なお、プログラムモジュール1093やプログラムデータ1094は、ハードディスクドライブ1090に記憶される場合に限らず、例えば着脱可能な記憶媒体に記憶され、ディスクドライブ1100等を介してCPU1020によって読み出されてもよい。あるいは、プログラムモジュール1093及びプログラムデータ1094は、ネットワーク(LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等)を介して接続された他のコンピュータに記憶されてもよい。そして、プログラムモジュール1093及びプログラムデータ1094は、他のコンピュータから、ネットワークインタフェース1070を介してCPU1020によって読み出されてもよい。
【符号の説明】
【0090】
N 通信ネットワーク
1 通信システム
10 設計装置
11 インタフェース部
12 記憶部
13 制御部
20 監視装置
30 制御装置
121 経路DB
122 トポロジーDB
123 トラヒックDB
131 最短経路計算部
132 最適化部
133 近似計算部
134 マッピング部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11