(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】無線パラメータ制御方法、制御装置、無線パラメータ制御システム、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 28/16 20090101AFI20241217BHJP
H04W 24/02 20090101ALI20241217BHJP
H04W 92/12 20090101ALI20241217BHJP
H04W 24/10 20090101ALI20241217BHJP
【FI】
H04W28/16
H04W24/02
H04W92/12
H04W24/10
(21)【出願番号】P 2023522026
(86)(22)【出願日】2021-05-17
(86)【国際出願番号】 JP2021018674
(87)【国際公開番号】W WO2022244081
(87)【国際公開日】2022-11-24
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124844
【氏名又は名称】石原 隆治
(72)【発明者】
【氏名】中平 俊朗
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 元晴
(72)【発明者】
【氏名】守山 貴庸
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 泰司
【審査官】▲高▼木 裕子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0159205(US,A1)
【文献】特開2017-103558(JP,A)
【文献】特開2017-103553(JP,A)
【文献】国際公開第2013/046502(WO,A1)
【文献】特開2017-175205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線ネットワークを構成する複数の基地局に対して制御装置が行う無線パラメータ制御方法であって、
前記無線ネットワークにおける無線環境情報と、前記複数の基地局がそれぞれ提供する通信エリア毎の通信品質情報を収集する情報収集ステップと、
前記通信品質情報に基づいて、無線パラメータ制御を実施するか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにより、無線パラメータ制御を実施すると判定された場合に、前記無線環境情報に基づいて、前記複数の基地局のうちの少なくとも1つの基地局に対する無線パラメータを算出する無線パラメータ算出ステップと、
前記無線パラメータ算出ステップにより算出された無線パラメータを、前記少なくとも1つの基地局に設定する制御ステップと、を備え、
前記無線パラメータ算出ステップにおいて、前記制御装置は、
前記無線環境情報における基地局間の無線信号電力情報に対する調整を行い、調整後の無線信号電力情報に基づいて、少なくとも1つの基地局に対する無線パラメータの算出を行う
無線パラメータ制御方法。
【請求項2】
前記判定ステップにおいて、前記制御装置は、
前記複数の基地局のうちの少なくとも1つの基地局に対して無線パラメータ制御を実施した場合に想定される通信品質想定情報を算出し、当該通信品質想定情報と、実際に収集された通信品質情報とを比較することにより、無線パラメータ制御を実施するか否かを判定する
請求項1に記載の無線パラメータ制御方法。
【請求項3】
前記判定ステップにおいて、前記制御装置は、
予め定めた時間内における通信品質情報の変動が、閾値以上となった場合に、無線パラメータ制御を実施すると判定する
請求項1又は2に記載の無線パラメータ制御方法。
【請求項4】
前記無線パラメータ算出ステップにおいて、前記制御装置は、
前記通信品質情報に基づいて、通信品質が低下した基地局が送信元となる受信側の無線信号電力情報に対する調整を行う
請求項
1ないし3のうちいずれか1項に記載の無線パラメータ制御方法。
【請求項5】
無線ネットワークを構成する複数の基地局に対する無線パラメータ制御を行うための制御装置であって、
前記無線ネットワークにおける無線環境情報と、前記複数の基地局がそれぞれ提供する通信エリア毎の通信品質情報を収集する情報収集部と、
前記通信品質情報に基づいて、無線パラメータ制御を実施するか否かを判定する判定部と、
前記判定部により、無線パラメータ制御を実施すると判定された場合に、前記無線環境情報に基づいて、前記複数の基地局のうちの少なくとも1つの基地局に対する無線パラメータを算出する無線パラメータ算出部と、
前記無線パラメータ算出部により算出された無線パラメータを、前記少なくとも1つの基地局に設定する制御部と、を備え、
前記無線パラメータ算出部は、前記無線環境情報における基地局間の無線信号電力情報に対する調整を行い、調整後の無線信号電力情報に基づいて、少なくとも1つの基地局に対する無線パラメータの算出を行う
制御装置。
【請求項6】
請求項
5に記載の前記制御装置と、前記複数の基地局とを備える無線パラメータ制御システム。
【請求項7】
コンピュータを、請求項
5に記載の制御装置における各部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の基地局を備える無線ネットワークにおける基地局に対する無線パラメータ制御を行う技術に関連するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレットをはじめとする無線端末の急速な普及に伴い、無線端末による大容量コンテンツの利用者が増加しており、無線ネットワークが広く利用されている。
【0003】
無線ネットワークの提供に係る要素には、無線基地局(以下、基地局と呼ぶ)の施工やパラメータ設定等の無線通信部分、基地局-アクセスネットワーク-コアネットワーク間等のネットワーク部分、及びユーザ認証やポータル画面等の上位サービス部分等、様々な要素が含まれるが、本発明では基地局の無線パラメータ設定に着目する。
【0004】
一般的には、無線ネットワークにおいて、エリアをくまなくカバーするために、複数の基地局がエリア(セルと呼んでもよい)をオーバラップして設置される。そのため、基地局同士が同じ周波数チャネルを利用するとセル間干渉が生じ、通信品質が低下する。
【0005】
そこで、基地局同士の無線環境情報やユーザの通信状況に基づいた無線パラメータ設計技術が提案されている。例えば非特許文献1では、繰り返し最適化により、ユーザのスループットを改善するための基地局の周波数チャネル・帯域幅の設計技術が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】B. A. H. S. Abeysekera, M. Matsui, Y. Asai, and M. Mizoguchi, "Network controlled frequency channel and bandwidth allocation scheme for IEEE 802.11a/n/ac wireless LANs: RATOP," in Proc. of IEEE PIMRC'14, Sep. 2014.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ユーザの場所や通信状況、周辺の環境は時々刻々と変化し、変化する度に無線ネットワークの通信状況は変化する。通信状況に応じて無線パラメータを常に変更すると、無線パラメータの算出頻度が高くなり、パラメータ変更による瞬断の多発や、最適化計算リソースの増大を招いてしまう。従来技術では、無線ネットワークの設計見直しを適切に判断して無線パラメータ制御を行うことが難しかった。
【0008】
また、無線ネットワークにおける品質低下を招く課題の1つとしてセル間干渉があり、通信品質が低下したセルに対する周囲からのセル間干渉を低減するような無線パラメータ制御を行う必要がある。しかし、そのような無線パラメータ制御を行うことは従来技術では難しかった。
【0009】
すなわち、従来技術では、無線ネットワークを構成する基地局に対する無線パラメータの制御を適切に行うことが難しいという課題があった。
【0010】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、無線ネットワークを構成する基地局に対する無線パラメータの制御を適切に行うための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
開示の技術によれば、無線ネットワークを構成する複数の基地局に対して制御装置が行う無線パラメータ制御方法であって、
前記無線ネットワークにおける無線環境情報と、前記複数の基地局がそれぞれ提供する通信エリア毎の通信品質情報を収集する情報収集ステップと、
前記通信品質情報に基づいて、無線パラメータ制御を実施するか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにより、無線パラメータ制御を実施すると判定された場合に、前記無線環境情報に基づいて、前記複数の基地局のうちの少なくとも1つの基地局に対する無線パラメータを算出する無線パラメータ算出ステップと、
前記無線パラメータ算出ステップにより算出された無線パラメータを、前記少なくとも1つの基地局に設定する制御ステップと、を備え、
前記無線パラメータ算出ステップにおいて、前記制御装置は、
前記無線環境情報における基地局間の無線信号電力情報に対する調整を行い、調整後の無線信号電力情報に基づいて、少なくとも1つの基地局に対する無線パラメータの算出を行う
無線パラメータ制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
開示の技術によれば、無線ネットワークを構成する基地局に対する無線パラメータの制御を適切に行うための技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態における無線ネットワークの全体構成図である。
【
図4】制御装置300の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図6】無線信号電力情報の例を説明するための図である。
【
図7】無線信号電力情報の例を説明するための図である。
【
図8】無線信号電力情報の例を説明するための図である。
【
図9】無線信号電力情報の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(本実施の形態)を説明する。以下で説明する実施の形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施の形態は、以下の実施の形態に限られるわけではない。
【0015】
本実施の形態における基地局は、例えば、非特許文献1に記載の無線LANの基地局(アクセスポイント)であるが、これに限定されない。例えば、本実施の形態における基地局は、6G、5G、LTE、3G等の無線アクセス技術における基地局であってもよい。また、異なる無線アクセス技術の基地局が混在したマルチ無線システムに本発明を適用することも可能である。
【0016】
(システム構成例)
図1に、本実施の形態における無線ネットワーク(無線パラメータ制御システムと呼んでもよい)の全体構成例を示す。
図1に示すように、複数の基地局1-1~1-nが備えられ、各基地局はネットワーク200に無線又は有線で接続されている。各基地局は通信エリアを構成し、通信エリア内には、図示しない0台以上の端末が存在する。
【0017】
基地局自体は既存の基地局であり、端末と無線で通信するとともに、ネットワーク200を介して、他の基地局やアプリケーションサーバ等と通信をすることが可能である。ネットワーク200は、例えば、LAN、インターネット、モバイル網のコアネットワーク等である。
【0018】
また、ネットワーク200には、制御装置300が接続されている。制御装置300は、本発明に係る機能を備える装置であり、後述する方法で各基地局の無線パラメータの算出を行うとともに、基地局に対する無線パラメータ設定等の制御を行う。
【0019】
(装置構成例)
図2に、制御装置300の機能構成例を示す。
図2に示すように、制御装置300は、情報収集部310、演算部320、制御部330、データ格納部340を有する。
【0020】
情報収集部310は、各基地局の通信エリアの通信品質情報、各基地局の無線環境情報等を収集する。判定部320は、少なくとも1つの基地局に対する無線パラメータ制御を実行するか否かを判定する。無線パラメータ算出部330は、判定部320により無線パラメータ制御を実行すると判定された場合において、無線パラメータの算出を行う。
【0021】
制御部330は、無線パラメータ算出部330により算出された無線パラメータを該当の基地局に設定する。データ格納部350には、情報収集部310が収集した情報、判定部320や無線パラメータ算出部330による演算に必要な情報、演算結果等が格納される。
【0022】
制御装置300は、1つの装置(コンピュータ)で構成されてもよいし、複数のコンピュータで構成されてもよい。例えば、判定部320と、その他の機能部が別々のコンピュータで構成されていてもよい。
【0023】
<ハードウェア構成例>
制御装置300は、例えば、コンピュータにプログラムを実行させることにより実現できる。このコンピュータは、物理的なコンピュータであってもよいし、クラウド上の仮想マシンであってもよい。
【0024】
すなわち、制御装置300は、コンピュータに内蔵されるCPUやメモリ等のハードウェア資源を用いて、制御装置300で実施される処理に対応するプログラムを実行することによって実現することが可能である。上記プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(可搬メモリ等)に記録して、保存したり、配布したりすることが可能である。また、上記プログラムをインターネットや電子メール等、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0025】
図3は、上記コンピュータのハードウェア構成例を示す図である。
図3のコンピュータは、それぞれバスBで相互に接続されているドライブ装置1000、補助記憶装置1002、メモリ装置1003、CPU1004、インタフェース装置1005、表示装置1006、入力装置1007、出力装置1008等を有する。
【0026】
当該コンピュータでの処理を実現するプログラムは、例えば、CD-ROM又はメモリカード等の記録媒体1001によって提供される。プログラムを記憶した記録媒体1001がドライブ装置1000にセットされると、プログラムが記録媒体1001からドライブ装置1000を介して補助記憶装置1002にインストールされる。但し、プログラムのインストールは必ずしもコンピュータ読み取り可能な記録媒体1001より行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータよりダウンロードするようにしてもよい。補助記憶装置1002は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0027】
メモリ装置1003は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置1002からプログラムを読み出して格納する。CPU1004は、メモリ装置1003に格納されたプログラムに従って、制御装置300に係る機能を実現する。インタフェース装置1005は、ネットワークに接続するためのインタフェースとして用いられ、送信部及び受信部として機能する。表示装置1006はプログラムによるGUI(Graphical User Interface)等を表示する。入力装置1007はキーボード及びマウス、ボタン、又はタッチパネル等で構成され、様々な操作指示を入力させるために用いられる。出力装置1008は演算結果を出力する。
【0028】
なお、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、コンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。
【0029】
また上記プログラムは、制御装置300の機能の一部を実現するためのものであっても良く、前述した機能をコンピュータにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。また、制御装置300の機能の一部又は全部が、PLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されるものであってもよい。
【0030】
(動作例)
以下、
図4に示すフローチャートの手順に沿って、本実施の形態における制御装置300の動作例を説明する。以下の動作の前提として、制御装置300のデータ格納部350には、基地局情報として、各基地局の位置情報、各基地局の仕様情報(無線方式、送信電力、機種、容量等)等が格納されているものとする。後述する判定部320や無線パラメータ制御部330は、当該基地局情報を適宜利用して無線パラメータの算出や、無線パラメータ制御後の通信品質情報の算出等を行うことができる。
【0031】
<S1>
S1(ステップ1)において、情報収集部310が、各基地局から、通信エリア毎の通信品質情報、及び、各基地局における無線環境情報を収集し、収集した情報をデータ格納部350に格納する。通信品質情報は、例えば、通信エリア毎(基地局毎)のスループット、遅延量等である。無線環境情報は、例えば、各基地局において使用している周波数チャネルの情報、各基地局において使用している帯域幅の情報、各基地局における干渉情報等である。干渉情報は、例えば、他の基地局から受信する無線信号の受信電力の情報である。
【0032】
<S2、S3>
S2において、判定部320が、S1で収集した情報に基づいて、少なくとも1つの基地局に対する無線パラメータ制御を実施するか否かを決定(判定)する。S2での判定結果がYes(無線パラメータ制御を実施する)であればS4に進む。
【0033】
S2での判定がNo(無線パラメータ制御を実施しない)である場合には、S3に進み、一定期間待機した後にS1に戻り、再び情報収集を行って、S1で収集した情報に基づく無線パラメータ制御実施判定を行う(S2)。
【0034】
S2における判定方法は特定の方法に限られないが、例えば、下記の例1~例3のうちのいずれかの方法を使用できる。なお、例1~例3のうちのいずれか複数を組み合わせて適用してもよい。
【0035】
例1:
例1において、判定部320は、現在の通信品質情報に基づいて、無線パラメータ制御を実施するか否かを判定する。例えば、判定部320は、少なくとも1つの通信エリア(基地局)の通信品質(例:スループット)が、閾値よりも悪い場合に、無線パラメータ制御を実施すると判断してS4に進む。「閾値よりも悪い」とは、例えば、通信品質がスループットであれば、「通信品質<閾値」となることであり、通信品質が遅延量であれば、「通信品質>閾値」となることである。
【0036】
また、S2での判定結果(例えば、"ある通信エリアの通信品質が閾値よりも悪い")が得られた後に、すぐにS4に進まずに、S3に進み、再びS1の情報収集を行って、S2での判定を行うことを繰り返すこととしてもよい。
【0037】
この繰り返しの中で、判定部320は例えば、「少なくとも1つの通信エリアの通信品質が閾値よりも悪い」という判定結果が、連続してN回得られた場合に、無線パラメータ制御を実施すると判定し、S4に進むこととしてもよい。ここでNは、1よりも大きな整数である。
【0038】
また、P回の繰り返しの中で、N回以上、「少なくとも1つの通信エリアの通信品質が閾値よりも悪い」という判定結果が得られた場合に無線パラメータ制御を実施すると判定し、S4に進むこととしてもよい。ここでPは、P>Nを満たす整数である。
【0039】
例2:
例2において、判定部320は、無線環境情報、通信品質情報等に基づいて、無線パラメータ制御を、少なくとも1つの基地局に対して適用した場合に想定される通信品質情報(通信品質想定情報と呼ぶ)を算出し、当該通信品質想定情報とS1で取得した通信品質情報との比較を行い、その比較により得られる評価値が予め定めた閾値以上になる場合に、無線パラメータ制御を実施すると判定し、S4に進む。
【0040】
また、S2での判定結果(例えば、"評価値が閾値以上になる")が得られた後に、すぐにS4に進まずに、S3に進み、再びS1の情報収集を行って、S2での判定を行うことを繰り返すこととしてもよい。
【0041】
この繰り返しの中で、判定部320は例えば、「評価値が閾値以上になる」という判定結果が、連続してN回得られた場合に、無線パラメータ制御を実施すると判定し、S4に進むこととしてもよい。ここでNは、1よりも大きな整数である。
【0042】
また、P回の繰り返しの中で、N回以上、「評価値が閾値以上になる」という判定結果が得られた場合に無線パラメータ制御を実施すると判定し、S4に進むこととしてもよい。ここでPは、P>Nを満たす整数である。
【0043】
例2において、通信品質想定情報を得るための無線パラメータ制御は、実際に基地局への無線パラメータ制御を行うことではなく、現在の無線環境情報(干渉情報等)等に基づいて、各基地局の無線パラメータを算出し、算出した無線パラメータを各基地局に設定したと仮定した場合に、その設定後の通信品質想定情報を得ることである。
【0044】
例2における無線パラメータの算出方法として、例えば、非特許文献1に開示されている方法(RATOPアルゴリズム)を使用してもよい。また、例2における無線パラメータの算出方法として、後述するS4で説明する方法を用いてもよい。また、例2における無線パラメータの算出方法として、これら以外の方法を使用してもよい。
【0045】
また、上記の評価値に関して、例えば、制御対象とする複数の基地局全体の現在の通信品質情報(例:スループットの平均)を通信品質情報とし、仮想的な無線パラメータ制御後における、制御対象とする複数の基地局全体の通信品質情報(例:スループットの平均)を通信品質仮想情報とした場合に、「通信品質仮想情報-通信品質情報」を評価値としてもよい。また、仮想的な無線パラメータ制御後における、複数の基地局のうちの通信品質が最悪の基地局の通信品質仮想情報を評価値としてもよい。
【0046】
評価値は上記に限定されず、通信品質情報に対する通信品質仮想情報の改善度合を評価できる値であればどのような値を使用してもよい。
【0047】
例3:
例3において、判定部320は、S3の一定期間待機と、S1の情報収集を繰り返し、予め定めた時間内における通信品質情報の変動が、予め定めた閾値以上となった場合に、無線パラメータ制御を実施すると判定し、S4に進む。
【0048】
例えば、閾値をThとした場合において、ある時間内での通信品質情報の最良値がQBであり、最悪値がQWであった場合に、QB-QWの絶対値がTh以上であれば、無線パラメータ制御を実施すると判定し、S4に進む。
【0049】
上記のように、「変動」を最良値と最悪値との差分とすることは一例である。例えば、通信品質情報のある基準値を定めて、その基準値からの乖離の絶対値が閾値以上となる回数が、上記時間内で予め定めた回数以上となる場合に、無線パラメータ制御を実施すると判定し、S4に進むこととしてもよい。
【0050】
<S4>
次に、S4について説明する。S4では、例えば、非特許文献1に開示された方法を用いて各基地局の無線パラメータを算出することができる。また、計算機(つまり、制御装置300)上で、基地局間の無線信号電力情報に対する調整を行うことにより、各基地局に対する無線パラメータを算出することとしてもよい。基地局間の無線信号電力情報は、各基地局において、他の基地局から受信する無線信号の受信電力を示す情報であり、S1で収集した無線環境情報に含まれる情報である。以下、基地局間の無線信号電力情報に対する調整を行うことにより無線パラメータを算出する方法を詳細に説明する。
【0051】
図5は、無線パラメータ算出方法の説明にあたって想定する無線ネットワークの構成例を示す図である。
【0052】
図5に示すように、本無線ネットワークにおいて、制御装置300の制御対象の基地局として、基地局1-1~1-4が存在し、それぞれの通信エリアとしてエリア100-1-1~100-1-4が存在する。各基地局はネットワーク200に接続される。
【0053】
図6、
図7は、
図5に示す構成例における無線信号電力情報の例を示す。
図6、
図7は同じ情報を異なる形式で示している。
図6、
図7により、例えば、基地局1-4は、基地局1-1、基地局1-2、基地局1-3からそれぞれ、-85dBm、-75dBm、-75dBmの強度で無線信号を受信していることが示されている。
【0054】
例えば、S4での無線パラメータ算出処理の時点において、
図7に示す無線信号電力情報が、データ格納部350に格納されているとする。S4において、無線パラメータ算出部330は、データ格納部350から当該無線信号電力情報を読み出す。
【0055】
ここで、S1で収集した通信品質情報に基づいて、基地局1-1の通信エリアにおける通信品質の低下が検知されたと想定すると、無線パラメータ算出部330は、基地局1-1が送信元となる無線信号電力情報が高くなるように無線信号電力情報を調整する。この調整は、実際に基地局1-1の調整を行うのではなく、計算機上の情報に対して調整を行うことである。
【0056】
調整後の無線信号電力情報の例を
図8、
図9に示す。
図8、
図9に示すように、この例では、受信側の基地局1-2、基地局1-3、基地局1-4においてそれぞれ10dBmだけ高くなるように電力情報を調整している。
【0057】
無線パラメータ算出部330は、この調整後の電力情報に基づいて、無線パラメータ(例:基地局が使用する周波数チャネル)を算出する。このように、ある無線信号電力情報のもとで無線パラメータを算出する際には、非特許文献1に開示された技術を使用してもよいし、非特許文献1に開示された技術以外の既存技術を使用してもよい。いずれの技術においても、電力情報調整を行ったことにより隣接基地局からの干渉が増大した基地局に対して、干渉を低減するような無線パラメータの調整がなされることが想定される。
【0058】
上記の電力情報の調整により、例えば、基地局1-4にとってはこれまで干渉対象でなかった基地局1-1からの干渉がより強く検出されるようになり、調整前は無線パラメータ制御により基地局1-1と同じ周波数チャネルを利用していた場合でも、調整後では無線パラメータ制御により別周波数チャネルを使用すると考えられる。
【0059】
なお、上記の例では、電力情報の調整において、通信品質の低下が検出された基地局が送信元となる受信側の電力情報を大きくする調整を行っているが、これは一例である。例えば、通信品質の低下が検出された基地局1-1に隣接する基地局1-2、1-3が送信元となる受信側の電力情報を小さくするような調整を行ってもよい。これにより、例えば、通信品質の低下が検出された基地局1-1において、調整前は干渉になっていた基地局1-2、1-3からの信号が干渉ではなくなる結果、通信品質の低下が検出された基地局1-1の周波数チャネルが変更されることが考えられる。
【0060】
<S5>
S5において、制御部340は、S4において算出された無線パラメータを、少なくとも1つの該当基地局に設定する。
【0061】
(実施の形態の効果)
本実施の形態に係る技術により、無線ネットワークを構成する基地局に対する無線パラメータの制御を適切に行うことが可能となる。より具体的には、無線ネットワークの設計見直しの判断を容易に行うことができ、効率的な制御が行える。また、簡易な処理により通信品質が低下したセルに対する周囲からのセル間干渉を低減するような無線パラメータ設定を行うことが可能となる。
【0062】
(実施の形態のまとめ)
本明細書には、少なくとも下記各項に記載の無線パラメータ制御方法、制御装置、無線パラメータ制御システム、及びプログラムが開示されている。
(第1項)
無線ネットワークを構成する複数の基地局に対して制御装置が行う無線パラメータ制御方法であって、
前記無線ネットワークにおける無線環境情報と、前記複数の基地局がそれぞれ提供する通信エリア毎の通信品質情報を収集する情報収集ステップと、
前記通信品質情報に基づいて、無線パラメータ制御を実施するか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにより、無線パラメータ制御を実施すると判定された場合に、前記無線環境情報に基づいて、前記複数の基地局のうちの少なくとも1つの基地局に対する無線パラメータを算出する無線パラメータ算出ステップと、
前記無線パラメータ算出ステップにより算出された無線パラメータを、前記少なくとも1つの基地局に設定する制御ステップと
を備える無線パラメータ制御方法。
(第2項)
前記判定ステップにおいて、前記制御装置は、
前記複数の基地局のうちの少なくとも1つの基地局に対して無線パラメータ制御を実施した場合に想定される通信品質想定情報を算出し、当該通信品質想定情報と、実際に収集された通信品質情報とを比較することにより、無線パラメータ制御を実施するか否かを判定する
第1項に記載の無線パラメータ制御方法。
(第3項)
前記判定ステップにおいて、前記制御装置は、
予め定めた時間内における通信品質情報の変動が、閾値以上となった場合に、無線パラメータ制御を実施すると判定する
第1項又は第2項に記載の無線パラメータ制御方法。
(第4項)
前記無線パラメータ算出ステップにおいて、前記制御装置は、
前記無線環境情報における基地局間の無線信号電力情報に対する調整を行い、調整後の無線信号電力情報に基づいて、少なくとも1つの基地局に対する無線パラメータの算出を行う
第1項ないし第3項のうちいずれか1項に記載の無線パラメータ制御方法。
(第5項)
前記無線パラメータ算出ステップにおいて、前記制御装置は、
前記通信品質情報に基づいて、通信品質が低下した基地局が送信元となる受信側の無線信号電力情報に対する調整を行う
第4項に記載の無線パラメータ制御方法。
(第6項)
無線ネットワークを構成する複数の基地局に対する無線パラメータ制御を行うための制御装置であって、
前記無線ネットワークにおける無線環境情報と、前記複数の基地局がそれぞれ提供する通信エリア毎の通信品質情報を収集する情報収集部と、
前記通信品質情報に基づいて、無線パラメータ制御を実施するか否かを判定する判定部と、
前記判定部により、無線パラメータ制御を実施すると判定された場合に、前記無線環境情報に基づいて、前記複数の基地局のうちの少なくとも1つの基地局に対する無線パラメータを算出する無線パラメータ算出部と、
前記無線パラメータ算出部により算出された無線パラメータを、前記少なくとも1つの基地局に設定する制御部と
を備える制御装置。
(第7項)
第6項に記載の前記制御装置と、前記複数の基地局とを備える無線パラメータ制御システム。
(第8項)
コンピュータを、第6項に記載の制御装置における各部として機能させるためのプログラム。
【0063】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1-1~1-n 基地局
100 エリア
200 ネットワーク
300 制御装置
310 情報収集部
320 判定部
330 無線パラメータ算出部
340 制御部
350 データ格納部
1000 ドライブ装置
1001 記録媒体
1002 補助記憶装置
1003 メモリ装置
1004 CPU
1005 インタフェース装置
1006 表示装置
1007 入力装置