(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】情報適正化装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 41/0631 20220101AFI20241217BHJP
H04L 41/069 20220101ALI20241217BHJP
H04L 41/16 20220101ALI20241217BHJP
【FI】
H04L41/0631
H04L41/069
H04L41/16
(21)【出願番号】P 2023531326
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(86)【国際出願番号】 JP2021025161
(87)【国際公開番号】W WO2023276150
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅井 文香
(72)【発明者】
【氏名】山本 憲男
(72)【発明者】
【氏名】野末 晴久
(72)【発明者】
【氏名】金井 俊介
(72)【発明者】
【氏名】リ テキ
(72)【発明者】
【氏名】田山 健一
【審査官】浜岸 広明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/094032(WO,A1)
【文献】特開2020-112869(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0172371(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 41/00-43/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムの動作状態を表す
第1の補正対象情報を適正化する情報適正化装置であって、
前記
第1の補正対象情報と関連性を有する複数のイベントを所定の時間相関性を有するもの同士でグループ化して、少なくとも1つのイベントグループを生成するグループ化処理部と、
前記
第1の補正対象情報に記載された
補正対象の事象発生日時を示す第1の日時情報と、前記イベントグループに
含まれる複数のイベントの発生時刻のうちの代表時刻を示す第2の日時情報との時間差を算出し、算出された前記時間差が予め設定された条件を満たす前記イベントグループの前記第2の日時情報を補正日時候補として特定する特定処理部と、
特定された前記第2の日時情報に基づいて前記第1の日時情報を補正する補正処理部と
を具備する情報適正化装置。
【請求項2】
前記
第1の補正対象情報が、前記システムの構成を表すトポロジ情報に存在しているか否かを判定し、存在していると判定された場合に前記
第1の補正対象情報を前記グループ化処理部へ出力する適正判定処理部を、さらに具備する請求項1に記載の情報適正化装置。
【請求項3】
前記グループ化処理部は、
前記
第1の補正対象情報に記載された対象装置および当該対象装置と所定の相関性を有する範囲に位置する関連装置
が発生したイベントであって、かつ前記
第1の補正対象情報に記載された前記第1の日時情報の前後の時間帯の予め設定された第1の時間範囲内に発生された複数のイベントを抽出する処理部と、
抽出された前記複数のイベントを予め設定された第2の時間範囲内に含まれるもの同士でグループ化する処理部と
を備える、請求項1または2に記載の情報適正化装置。
【請求項4】
前記特定処理部は、
前記第1の日時情報と前記第2の日時情報との前記時間差を、第1の時間差情報として算出する処理部と、
前記第1の日時情報の前後の時間帯の予め設定された第3の時間範囲内に
事象発生日時が含まれる第2の補正対象情報
を少なくとも1つ取得して、取得した前記第2の補正対象情報から前記第3の時間範囲内に含まれる事象発生日時を示す第3の日時情報を抽出し、前記第1の日時情報と前記第3の日時情報との時間差を、第2の時間差情報として算出する処理部と、
前記第1の時間差情報と前記第2の時間差情報とを比較し、前記第1の時間差情報が前記第2の時間差情報より小さい場合に、前記第1の時間差情報を算出した前記イベントグループの前記第2の日時情報を前記補正日時候補として特定する処理部と
を備える、請求項1乃至3のいずれかに記載の情報適正化装置。
【請求項5】
前記補正処理部により補正された前記第1の日時情報を含む前記
第1の補正対象情報に基づいて学習データを生成し、生成された前記学習データを前記システムの前記動作状態を判定する学習モデルを学習させるために出力する学習データ生成処理部を、さらに具備する請求項1乃至4のいずれかに記載の情報適正化装置。
【請求項6】
システムの動作状態を表す補正対象情報を適正化する情報処理装置が実行する情報適正化方法であって、
前記補正対象情報と関連性を有する複数のイベントを所定の時間相関性を有するもの同士でグループ化して、少なくとも1つのイベントグループを生成する過程と、
前記補正対象情報に記載された
補正対象の事象発生日時を示す第1の日時情報と、前記イベントグループに
含まれる複数のイベントの発生時刻のうちの代表時刻を示す第2の日時情報との第1の時間差を算出し、算出された第1の時間差が予め設定された条件を満たす前記イベントグループの前記第2の日時情報を補正日時の候補として特定する過程と、
特定された前記第2の日時情報に基づいて前記第1の日時情報を補正する過程と
を具備する情報適正化方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載の情報適正化装置が具備する前記各処理部による処理機能を、前記情報適正化装置が備えるプロセッサに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の一態様は、例えば、障害特定ルールを生成する際の学習データとして使用される情報を適正化するために用いられる情報適正化装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ネットワークで発生する障害の要因等を効率良く特定するために、機械学習を用いて障害特定ルールを自動的に生成する技術が提案されている(例えば特許文献1を参照)。この技術は、例えば既存のデータベースから過去の障害履歴情報を取得し、取得された上記障害履歴情報を学習データとして学習装置に与えることで上記障害特定ルールを生成するものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、過去の障害履歴情報の中には、オペレータが手入力により情報を登録したものがあり、障害履歴情報をそのまま学習データとして学習装置に与えてしまうと、適切な学習が行われない可能性がある。特に、障害発生日時については保守者が認知した日時や大凡の日時を障害対応後に記録する場合が多く正確性に欠け、学習に及ぼす影響が大きい。このため、通常では、障害履歴情報を学習データとして学習装置に与える前に、障害履歴情報の内容を人手により分析して情報内容、特に障害発生日時を修正するようにしている。そのため、学習データとして適正な障害履歴情報を得るまでに多くの時間と労力が必要となり、また障害履歴情報が適正であるかどうかの判断が困難で、修正を見逃すこともあるため情報の信頼性の低下を招くおそれがある。
【0005】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、補正対象情報の適正化処理を人手に頼らずに効率良く行えるようにし、これにより作業効率の向上と情報の信頼性の向上を可能にする技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためにこの発明に係る情報適正化装置または方法の一態様は、システムの動作状態を表す補正対象情報を適正化する際に、前記補正対象情報と関連性を有する複数のイベントを所定の時間相関性を有するもの同士でグループ化して、少なくとも1つのイベントグループを生成し、前記補正対象情報に記載された補正対象の事象発生日時を示す第1の日時情報と、前記イベントグループに含まれる複数のイベントの発生時刻のうちの代表時刻を示す第2の日時情報との第1の時間差を算出し、算出された第1の時間差が予め設定された条件を満たす前記イベントグループの前記第2の日時情報を補正日時候補として特定し、特定された前記第2の日時情報に基づいて前記第1の日時情報を補正するようにしたものである。
【0007】
この発明の一態様によれば、例えば、補正対象情報に記載された日時情報が人手により入力された正確性に欠ける情報だったとしても、上記補正対象情報に記載された日時情報は自動的に補正される。このため、人手による解析や修正作業を必要とすることなく補正対象情報に記載された日時情報を適正な値に補正することが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
すなわちこの発明の一態様によれば、補正対象情報の適正化処理を人手に頼らずに効率良く行えるようになり、これにより作業効率の向上と情報の信頼性の向上を可能にする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、この発明の一実施形態に係る情報適正化装置を備える学習システムの全体構成を示す図である。
【
図2】
図2は、この発明の一実施形態に係る情報適正化装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、この発明の一実施形態に係る情報適正化装置のソフトウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、
図3に示した情報適正化装置により実行される情報適正化処理の処理手順と処理内容の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図4に示した処理手順のうち情報の適正判定処理の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、
図4に示した処理手順のうち、イベントのグループ化処理、補正候補となる時刻の特定処理、障害発生日時の補正処理および学習データ生成処理の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、障害対応履歴情報DBに記憶される障害対応履歴情報の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、事前定義情報の一つとして設定される情報取得先指定情報の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、事前定義情報の一つとして設定される日時規則情報の一覧リストの一例を示す図である。
【
図10】
図10は、
図9に示した日時規則情報の一覧リストに従い変換された日時情報の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、関連情報DBに記憶されるネットワーク構成情報の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、補正対象となる障害発生日時を起点とする前後の時間帯で発生したイベントと、このイベントから抽出された参照イベントの一例を示す図である。
【
図13】
図13は、参照イベントを同一事象によるもの同士でグループ化した状態の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、補正対象となる障害発生日時を起点とする前後の時間帯の最大誤差範囲内に含まれる他の障害発生日時の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、
図13でグループ化された参照イベントの代表時刻と補正対象となる障害発生日時との間の時間差、および上記グループ化された参照イベントの代表時刻と
図14に示される他の障害発生日時との間の時間差の第1の例を示す図である。
【
図16】
図16は、
図13でグループ化された参照イベントの代表時刻と補正対象となる障害発生日時との間の時間差、および上記グループ化された参照イベントの代表時刻と
図14に示される他の障害発生日時との間の時間差の第2の例を示す図である。
【
図17】
図17は、
図13でグループ化された参照イベントの代表時刻と補正対象となる障害発生日時との間の時間差、および上記グループ化された参照イベントの代表時刻と
図14に示される他の障害発生日時との間の時間差の第3の例を示す図である。
【
図18】
図18は、補正時間比率αの定義を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
【0011】
[一実施形態]
(構成例)
(1)システム
図1は、この発明の一実施形態に係る情報適正化装置を備える障害判定用学習システムの全体構成を示す図である。
このシステムは、学習装置2と、その前段に配置される情報適正化装置1と、障害対応履歴データベース(以後データベースをDBと略称する)3と、関連情報DB4と、入力装置5とを備える。
【0012】
学習装置2は、例えばネットワークにおいて発生する各種障害を判定するために使用される学習モデルを生成し管理するもので、学習モデル記憶部と学習機能とを備える。学習機能は、例えばCNN(Convolutional Neural Network)機械学習により障害判定用の学習モデルを生成し、生成された学習モデルを上記学習モデル記憶部に記憶させる。
【0013】
障害対応履歴DB3は、過去に発生したネットワーク障害の各々についてその属性情報と対応情報とを記憶したものである。属性情報には、例えば発生日時、復旧時刻、障害が発生した装置の名称および障害内容を表す情報が含まれる。対応情報には、障害に対する対応内容を表す情報と担当者名が含まれる。
図7は障害対応履歴情報の一例を示すもので、上記属性情報および対応情報に含まれる上記複数の情報要素が予め設定された順序で配置されている。
【0014】
関連情報DB4は、例えばネットワーク構成(ネットワークトポロジとも云う)を表す情報と、イベント情報とを管理するもので、これらの情報は学習装置2および情報適正化装置1により共用される。ネットワーク構成を表す情報は、情報適正化装置1が上記障害対応履歴DB3から学習データの候補として取得した障害対応履歴情報の適正判定を行うために使用される。イベント情報は、情報適正化装置1が上記学習データの候補となる障害発生履歴情報に記載された障害発生日時を補正する際の参照先として使用される。
【0015】
入力装置5は、例えば上記情報適正化装置1に付属する入出力デバイス、または独立したパーソナルコンピュータからなり、情報適正化装置1に対し障害対応履歴情報の適正判定を行うための各種定義情報を事前設定する際に使用される。
【0016】
なお、上記情報適正化装置1と、学習装置2、障害対応履歴DB3、関連情報DB4および入力装置5との間は、通常ではLAN(Local Area Network)等のネットワークを介して接続されるが、信号ケーブルにより接続されてもよい。
【0017】
(2)情報適正化装置1
情報適正化装置1は、上記学習装置2に与える学習データを適正化するために用いられるもので、障害対応履歴DB3から過去の障害対応履歴情報を上記学習データの候補として取得する取得機能と、取得された上記障害対応履歴情報の適正判定を行う機能と、上記障害対応履歴情報に記載されている障害発生日時を補正する機能と、上記適正判定機能により適正と判定され、かつ上記補正機能により障害発生日時が補正された障害対応履歴情報もとに、学習データを生成する機能とを有する。
【0018】
図2および
図3は、それぞれ情報適正化装置1のハードウェア構成およびソフトウェア構成を示すブロック図である。
【0019】
情報適正化装置1は、例えばパーソナルコンピュータからなり、中央処理ユニット(Central Processing Unit:CPU)等のハードウェアプロセッサを使用した制御部10を備えている。制御部10には、バス50を介して、プログラム記憶部20およびデータ記憶部30を有する記憶ユニットと、通信I/F部40が接続されている。
【0020】
通信I/F部40は、制御部10の制御の下、例えばLANで定義される通信プロトコルを使用して、上記学習装置2、障害対応履歴DB3および関連情報DB4との間でデータの送受信を行うと共に、入力装置5から入力情報を受け取る機能を有する。
【0021】
プログラム記憶部20は、例えば、記憶媒体としてHDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリとを組み合わせて構成したもので、OS(Operating System)等のミドルウェアに加えて、この発明の一実施形態に係る各種制御処理を実行するために必要なアプリケーションプログラムを格納する。
【0022】
データ記憶部30は、例えば、記憶媒体として、HDDまたはSSD等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリと組み合わせたもので、この発明の一実施形態に係る主要な記憶部として、管理情報記憶部31と、障害対応履歴記憶部32と、補正日時候補記憶部33と、学習データ記憶部34とを有している。
【0023】
管理情報記憶部31は、入力装置5から入力された各種定義情報を記憶するために使用される。定義情報には、例えば障害対応履歴情報に含まれる各情報要素のうち参照先となる情報要素を指定する情報と、情報適正化処理に利用可能な障害発生日時の表現形式を表す日時規則情報とが含まれる。
図8に上記情報要素を指定する情報の一例を示す。また
図9には上記障害発生日時の表現形式を表す日時規則情報の一例を示す。
【0024】
障害対応履歴記憶部32は、障害対応履歴DB3から取得された障害対応履歴情報を一時保存するために使用される。
【0025】
補正日時候補記憶部33は、制御部10により特定された補正日時の候補を保存するために使用される。
【0026】
学習データ記憶部34は、制御部10により生成された学習データを学習装置2へ出力するまで保存するために使用される。
【0027】
制御部10は、この発明の一実施形態に係る処理機能として、定義情報管理処理部11と、障害対応履歴情報取得処理部12と、適正判定処理部13と、障害発生日時補正処理部14と、学習データ生成処理部15と、学習データ出力処理部16とを備えている。これらの処理部11~16は、何れもプログラム記憶部20に格納されたプログラムを制御部10のハードウェアプロセッサに実行させることにより実現される。
【0028】
定義情報管理処理部11は、障害対応履歴情報の適正判定に必要な上記各定義情報を、事前に入力装置5から取得して管理情報記憶部31に記憶させる処理を行う。また定義情報管理処理部11は、障害発生日時の補正処理に必要な、最大誤差時間Xおよび補正時間比率α等のパラメータを、事前に入力装置5から取得して管理情報記憶部31に記憶させる処理も行う。
【0029】
障害対応履歴情報取得処理部12は、障害対応履歴DB3から学習データの候補となる障害対応履歴情報を取得し、取得された上記障害対応履歴情報を障害対応履歴記憶部32に一時保存させる処理を行う。
【0030】
適正判定処理部13は、上記管理情報記憶部31に記憶された各定義情報と、関連情報DB4により管理されるネットワーク構成を表す情報とを参照して、上記障害対応履歴情報が学習データとして適正か否かを判定する。また適正判定処理部13は、障害発生日時が処理可能な表現形式で記載されたものか否かを判定する。そして、適正と判定された障害対応履歴情報のみを障害発生日時補正処理部14に渡す処理を行う。
【0031】
障害発生日時補正処理部14は以下の処理機能を有する。
(1) 関連情報DB4から、障害対応履歴情報に記載された障害発生装置および当該障害発生装置から1ホップまでの装置のイベントで、かつ上記障害対応履歴情報に記載された障害発生日時を起点に最大誤差時間Xの範囲内で発生されたイベントを、上記障害発生日時を補正する際の参照イベントとして取得する処理。
(2) 取得された上記参照イベントを同一事象により発生されたもの同士でグループ化する処理。
(3) 補正対象となる上記障害対応履歴情報に記載された障害発生日時と、上記グループ化された参照イベントの代表日時との時間差を算出すると共に、上記補正対象となる障害発生日時と時刻が近いその他の障害対応履歴情報の障害発生日時と、上記グループ化された参照イベントの代表日時との時間差を算出する。そして、算出された上記各時間差を比較して、その比較結果をもとに上記補正対象となる障害発生日時の補正日時の候補を特定する処理。
(4) 上記補正対象となる障害発生日時を、上記補正日時の候補として特定された参照イベントの代表日時に基づいて補正し、障害発生日時が補正された障害対応履歴情報を障害対応履歴記憶部32に保存する処理。
【0032】
学習データ生成処理部15は、障害発生日時が補正された上記障害対応履歴情報を障害対応履歴記憶部32から読み込んで学習データを生成し、生成された上記学習データを学習データ記憶部34に一時記憶させる処理を行う。
【0033】
学習データ出力処理部16は、学習装置2において学習モデルの学習フェーズが設定されたときに、上記学習データ記憶部34から学習データを読み出し、読み出された上記学習データを通信I/F部40から学習装置2へ送信する処理を行う。
【0034】
(動作例)
次に、以上のように構成された情報適正化装置1の動作例を説明する。
図4は、情報適正化装置1の制御部10により実行される全体の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【0035】
(1)定義情報の設定
情報適正化装置1の制御部10は、ステップS1により定義情報の設定要求の入力を監視している。この状態で、入力装置5から定義情報の設定要求が入力されると、制御部10は定義情報管理処理部11の制御の下、ステップS2において、入力装置5により入力された各定義情報を通信I/F部40を介して取得し、管理情報記憶部31に記憶させる。設定される定義情報には、例えば
図8に示すような障害対応履歴情報から抽出する情報要素の配置位置(列)を指定する情報が含まれる。また定義情報には、情報適正化装置1で取り扱い可能な障害発生日時の表現形式の一覧を表す日時規則(
図9に例示)と、変換先の日時の表現規則(
図10に例示)が含まれる。
【0036】
また定義情報管理処理部11は、障害発生日時の補正処理に必要な、最大誤差時間Xおよび補正時間比率α等のパラメータを、入力装置5から取得して管理情報記憶部31に記憶させる。
【0037】
(2)障害対応履歴情報の取得
上記定義情報およびパラメータの設定が終了すると、情報適正化装置1の制御部10は、障害対応履歴情報取得処理部12の制御の下、ステップS3において、障害対応履歴DB3から障害対応履歴情報を通信I/F部40を介して取得する。そして、取得された上記障害対応履歴情報を障害対応履歴記憶部32に保存する。
【0038】
図7に、取得された上記障害対応履歴情報の一例を示す。なお、障害対応履歴情報の取得タイミングは、定期的でもよいが随時であってもよく、さらに学習装置2から学習データの提供を要求されたときでもよい。
【0039】
(3)障害対応履歴情報の適正判定
上記障害対応履歴情報が取得されると、情報適正化装置1の制御部10は、適正判定処理部13の制御の下、ステップS4において、上記障害対応履歴情報が学習データを生成するための情報として適正か否かを判定する処理を、以下のように実行する。
【0040】
図5は、適正判定処理の処理手順と処理内容の一例を示すフローチャートである。すなわち、適正判定処理部13は、先ずステップS41により障害対応履歴情報の記憶番号(以後レコードとも云う)を示すiを1に設定し、i=1番目の障害対応履歴情報を障害対応履歴記憶部32から読み出す。そして適正判定処理部13は、ステップS42において、管理情報記憶部31に記憶されている情報要素指定情報をもとに、上記障害対応履歴情報から参照先の情報要素を抽出する。
【0041】
例えば、いま情報要素指定情報において
図8に示すように参照先が定義されていれば、適正判定処理部13は、この指定情報に従い上記障害対応履歴情報から「障害発生日時」、「障害箇所」、「障害内容」、「対応内容」、「回復時刻」をそれぞれ抽出する。なお、「回復時刻」を抽出するか否かは任意に指定される。
【0042】
適正判定処理部13は、次にステップS43において、抽出された上記「障害発生日時」が表現形式に則っているか否かを判定する。例えば、いま定義情報として
図9に示すように障害発生日時の表現形式が指定されていると、適正判定処理部13は抽出された上記障害発生日時が上記表現形式のいずれかに該当するか否かを判定する。この判定の結果、障害発生日時が上記いずれかの表現形式に該当していれば、障害発生日時の表現形式を
図10に示すように統一された一つの表現形式に変換する。
【0043】
例えば、いま抽出された障害発生日時の表現形式が(2020/1/1 14:00)であったとする。この場合、適正判定処理部13は、上記障害発生日時の表現形式は
図9の2行目の表現形式に該当するため、この表現形式をそのまま採用する。また、抽出された障害発生日時の表現形式が(2020年1月1日14時00分)であれば、
図9の3行目の表現形式に該当するため、この表現形式を
図10に示される上記(2020/1/1 14:00)に変換する。
【0044】
これに対し、抽出された障害発生日時の表現形式が
図9に示す表現規則のいずれにも該当しなかったとする。この場合、適正判定処理部13は、当該障害発生日時が記載された障害対応履歴情報は学習データとして不適当と判断し、ステップS46により当該障害対応履歴情報を破棄する。
【0045】
適正判定処理部13は、続いてステップS44において、関連情報DB4からネットワーク構成(ネットワークトポロジ)を表す情報を取得する。そして、上記ステップS42により抽出された上記「障害箇所」が、取得された上記ネットワーク構成を表す情報に存在しているか否かを判定する。そして、上記「障害箇所」が上記ネットワークトポロジを表す情報に存在していれば、当該「障害箇所」が記載された障害対応履歴情報を採用し、存在していなければ当該障害箇所が記載された障害対応履歴情報は学習データとして不適当と判断し、ステップS46により当該障害対応履歴情報を破棄する。
【0046】
例えば、いまネットワークトポロジが
図11に示すように定義されており、抽出された「障害箇所」が
図7に示す「新宿サーバ01」だったとする。この場合、適正判定処理部13は、「新宿サーバ01」は
図11に示すネットワークトポロジに存在しているので、当該障害対応履歴情報を学習データの生成候補として採用する。
【0047】
これに対し、抽出された「障害箇所」が
図7に示す「仙台サーバ02」であれば、適正判定処理部13は、この「仙台サーバ02」は
図11のネットワークトポロジに存在していないので、当該障害対応履歴情報は学習データの生成候補として不適当と判断し、当該障害対応履歴情報をステップS46により破棄する。
【0048】
適正判定処理部13は、上記日時規則の判定およびネットワークトポロジの判定が終了すると、ステップS45においてiの値をインクリメント(i=i+1)し、ステップS42~S44により次のi=2番目の障害対応履歴情報に対し上記各判定処理を実行する。以後同様に適正判定処理部13は、iの値が障害対応履歴情報のレコードの上限数に達するまで、上記適正判定処理を繰り返す。
【0049】
(4)障害発生日時の補正
(4-1)イベントの取得とそのグループ化処理
情報適正化装置1の制御部10は、上記適正判定処理により適正と判定された障害対応履歴情報について、当該障害対応履歴情報に記載された障害発生日時を補正するための処理を実行する。この障害発生日時の補正処理は、障害発生日時補正処理部14の制御の下、ステップS5~ステップS7において以下の手順で実行される。
【0050】
図6は、障害発生日時補正処理部14により実行される一連の補正処理の処理手順および処理内容の一例を示すフローチャートである。
すなわち、障害発生日時補正処理部14は、先ずステップS51により、i=1番目の障害対応履歴情報を障害対応履歴記憶部32から読み込み、読み込まれた上記障害対応履歴情報から補正対象の障害発生日時を抽出する。
【0051】
障害発生日時補正処理部14は、次にステップS52において、関連情報DB4から、補正対象の障害発生日時を補正する際に参照するイベントを取得する。このとき、取得対象とする参照イベントは、上記i番目の障害対応履歴情報に記載された障害装置から相関範囲内の装置で発生するイベント(例えば、障害対応履歴情報に記載された障害装置および当該障害装置から1ホップまでの範囲に位置する装置のイベント)であって、かつ上記i番目の障害対応履歴情報に記載された障害発生日時を起点に、その前後の時間帯の最大誤差時間Xの範囲内で発生されたイベントである。
【0052】
例えば、いま上記i番目の障害対応履歴情報に記載された障害発生日時Time
Fiの前後の時間帯に、
図12に示すように複数のイベントが発生しているものとする。なお、
図12では相関範囲イベントをEa、その他のイベントをEbと表している。障害発生日時補正処理部14は、上記複数のイベントのうち相関範囲のイベントEaに該当し、かつ補正対象の障害発生日時Time
Fiを起点にその前後の時間帯の最大誤差時間Xの範囲内で発生された参照イベントとして取得する。なお、上記i番面の障害対応履歴情報に復旧時刻が記載されている場合には、この復旧時刻以前の時間帯に含まれるイベントを取得対象とする。
【0053】
障害発生日時補正処理部14は、続いてステップS53において、取得された上記参照イベントを同一の事象により発生されたもの同士でグループ化する。このグループ化は、同一の事象で発生する複数のイベントの最大発生間隔をΔTamaxとするとき、発生時刻がこの最大発生間隔ΔTamaxの範囲内に含まれる複数のイベントを1つのグループとして選択することにより行われる。
【0054】
例えば、いま
図13に示すように参照イベントが取得されているものとすると、障害発生日時補正処理部14は、上記参照イベントを発生時刻がΔTa
maxの範囲内で近接しているもの同士で図示するようにグループ化する。そして、障害発生日時補正処理部14は、上記参照イベントの各グループG
j(G
1,G
2,G
3)の各々について、代表時刻Time
1=t
1,Time
2=t
3,Time
3=t
5を設定する。代表時刻Time
jには、例えばグループG
jごとにグループ内で発生時刻が最も早いイベントの発生時刻が選ばれる。
【0055】
(4-2)その他の障害発生日時の取得処理
障害発生日時補正処理部14は、次にステップS54において、上記i番目の障害対応履歴情報に対し障害発生日時および障害発生装置が近いその他の障害対応履歴情報を取得する。その他の障害対応履歴情報は、例えば
図14に示すように、上記i番目の障害対応履歴情報の障害発生日時Time
Fiを起点に、それより前の時間帯の最大誤差時間Xの範囲と、それより後の時間帯の上記最大誤差時間Xの2倍の範囲をそれぞれ検索範囲とし、これらの検索範囲に障害発生日時が設定されている障害対応履歴情報F
okを、障害対応履歴記憶部32から検索することにより取得される。また、取得対象となる上記障害対応履歴情報は、取得対象の上記i番目の障害対応履歴情報に記載された障害装置から相関範囲内の装置(例えば、障害対応履歴情報に記載された障害装置および当該障害装置から1ホップまでの範囲に位置する装置)に限定される。
【0056】
図14に示した例では、その他の障害対応履歴情報F
okの障害発生日時Time
Fokとして、補正対象の障害発生日時Time
Fiより前の時間帯の検索範囲からTime
Fo1が、また後の時間帯の検索範囲からTime
Fo2がそれぞれ検索された場合を示している。なお、補正対象の障害発生日時Time
Fiより前の時間帯の検索範囲を、最大誤差時間Xとした理由は、上記その他の障害対応履歴情報がi番目より前の障害対応履歴情報で、既に障害発生日時Time
Fokが補正された履歴情報であるからである。
【0057】
(4-3)補正日時候補の特定処理
障害発生日時補正処理部14は、次に補正対象の障害発生日時TimeFiを補正するための補正候補日時を特定する処理を、以下のように実行する。
【0058】
障害発生日時補正処理部14は、先ずステップS61によりイベントグループの番号jをj=1に設定し、このj=1番目のイベントグループを選択する。そして、障害発生日時補正処理部14は、ステップS62において、上記補正対象の障害発生日時TimeFiと、各イベントグループG1の代表時刻Time1との間の時間差(第1の時間差)ΔtF,1を
ΔtF,1=β|Time1-TimeFi|
によりそれぞれ算出する。但し、βは絶対値内の値がマイナスとなるときβ=α、それ以外のときはβ=1に設定される。
【0059】
ここで、αは補正時間比率を表す。補正時間比率αとは、+方向の補正に対する-方向の補正の時間比率を示すもので、日時の補正の傾向としてマイナス方向への補正の割合または補正時間が大きい場合や、マイナス方向への時間の割合と+方向への時間の割合を等価に評価しない場合に使用される。
【0060】
例えば、日時の補正が時間を遡る方向となる傾向が強く、補正日時の候補が例えば-10分と+8分であった場合、単純な補正時間差としては+8分が選択される。しかし、-10分は+8分より誤差として小さいと評価する場合に、上記補正時間比率αが用いられる。
【0061】
図18に補正時間比率αの一例を示す。この例では、+方向の補正時間の平均が+18分、-方向の補正時間の平均が-25分の場合を示しており、この例ではα=25:18となり、-10分は10/25×18=7.2分に換算される。
【0062】
障害発生日時補正処理部14は、続いてステップS63において、先にステップS54により抽出されたその他の障害対応履歴情報F
okの障害発生日時Time
Fokと、各イベントグループG
1の代表時刻Time
1との間の時間差のうち、最小となる時間差(第2の時間差)Δt
Fo,1を、
【数1】
によりそれぞれ算出する。
【0063】
上記第1および第2の時間差ΔtF,1,ΔtFo,1の算出が終了すると、障害発生日時補正処理部14は、次にステップS64において、算出された上記第1の時間差ΔtF,1と第2の時間差ΔtFo,1とを比較し、ΔtF,1<ΔtFo,1であるか否かを判定する。そして、この判定の結果ΔtF,1<ΔtFo,1であれば、ステップS65により上記ΔtF,1,Time1を補正日時候補として補正日時候補記憶部33に保存する。
【0064】
上記j=1番目のイベントグループG1に対する処理が終了すると、障害発生日時補正処理部14は、ステップS66においてjの値をインクリメント(j=j+1)する。そして、j=2番目のイベントグループG2を選択し、選択されたイベントグループG2について上記ステップS62~ステップS65による処理を実行する。以後同様に障害発生日時補正処理部14は、すべてのイベントグループGjの選択が終了するまで、選択された各イベントグループについて上記ステップS62~ステップS65による処理を繰り返す。
【0065】
以上の処理により、
図15に示す例では、各イベントグループG
1,G
2,G
3の各々について、時間差Δt
F,1,Δt
F,2,Δt
F,3,と、時間差Δt
Fo,1,Δt
Fo,2,Δt
Fo,3,がそれぞれ算出される。そして、算出された上記時間差を比較すると、
Δt
F,1>Δt
Fo,1
Δt
F,2>Δt
Fo,2
Δt
F,3<Δt
Fo,3
となる。従って、この場合障害発生日時補正処理部14は、補正日時候補として、イベントグループG
3の代表時刻Time
3=t
5を特定し、補正日時候補記憶部33に保存する。
【0066】
これに対し、例えば
図16に示す例では、算出された時間差を比較すると、
Δt
F,1>Δt
Fo,1
Δt
F,2>Δt
Fo,2
Δt
F,3>Δt
Fo,3
となり、いずれも補正日時候補としての条件を満たさない。このため、障害発生日時補正処理部14は、上記イベントグループG
jを補正日時候補として保存しない。
【0067】
なお、
図15および
図16の例はα=1とした場合の例であるが、α=0.5とした場合も同様である。
図17はこのα=0.5とした場合の時間差の比較結果の一例を示すものである。
図17の例では、
Δt
F,1>Δt
Fo,1
Δt
F,2<Δt
Fo,2
Δt
F,3<Δt
Fo,3
となる。従って、この場合障害発生日時補正処理部14は、イベントグループG
2の各代表時刻Time
2=t
3と、イベントグループG
3の代表時刻Time
3=t
5を補正日時候補として特定し、補正日時候補記憶部33に保存する。
【0068】
(4-4)日時の補正処理
上記補正日時候補を特定する処理が終了すると、障害発生日時補正処理部14は、i番目の障害対応履歴情報の障害発生日時TimeF1を、特定された上記補正日時候補をもとに補正する処理を以下のように実行する。
【0069】
すなわち、障害発生日時補正処理部14は、先ずステップS71により補正日時候補記憶部33に補正日時候補が保存されているか否かを判定する。この判定の結果、補正日時候補が保存されていなければ、ステップS76において、上記i番目の障害対応履歴情報を学習データの生成候補として不適当と判断して破棄する。
【0070】
一方、補正日時候補記憶部33に補正日時候補が保存されていたとする。この場合、障害発生日時補正処理部14は、ステップS72において、保存されている時間差ΔtF,jが最小となる代表時刻Timejを選択し、選択された代表時刻Timejを用いて上記補正対象の障害発生日時TimeF1を、TimeF1=Timejとなるように補正する。そして、補正後の障害発生日時TimeF1をi番目の障害対応履歴情報に反映させ、反映後の障害対応履歴情報を障害対応履歴記憶部32に記憶させる。また、障害発生日時補正処理部14は、ステップS73において、i番目の障害対応履歴情報の対象時刻を算出する。対象時刻の算出には、予め定義されている障害発生日時幅が使用される。これにより、例えば、障害発生日時幅が+10分の場合、障害発生日時(時間幅指定)は、障害発生日時TimeF1からTimeF1+10分として算出される。
【0071】
(4-5)学習データの生成
上記i番目の障害対応履歴情報の障害発生日時TimeF1の補正が終了すると、情報適正化装置1の制御部10は、学習データ出力処理部16の制御の下、ステップS74において以下のように学習データを生成する。
【0072】
すなわち、学習データ出力処理部16は、障害対応履歴記憶部32から障害発生日時TimeF1が補正されたi番目の障害対応履歴情報を読み込む。そして、読み込まれた上記障害対応履歴情報から学習対象となる情報要素である、「障害発生日時」、「障害装置」、「障害内容」、「障害に対する対応内容」を抽出し、抽出された各情報要素を所定のフォーマットで記載した学習データを生成する。
【0073】
そうしてi番目の障害対応履歴情報に対する日時補正処理および学習データの生成処理が終了すると、情報適正化装置1の制御部10は、ステップS75によりiの値をインクリメント(i=i+1)する。そして、i=2番目の障害対応履歴情報を選択し、選択されたi=2番目の障害対応履歴情報について、ステップS52~ステップS74により、障害発生日時TimeF2の補正処理および学習データの生成処理を実行する。以後同様に制御部10は、iの値が障害対応履歴情報のレコードの上限数に達するまで、上記障害発生日時TimeFiの補正処理および学習データの生成処理を繰り返す。
【0074】
(5)学習データの出力
情報適正化装置1の制御部10は、学習データ出力処理部16は、予め設定された時刻になるか、または例えば学習装置2から学習データの提供要求が送られた場合に、上記学習データ記憶部34から学習データを読み出し、読み出された上記学習データを通信I/F部40から学習装置2へ出力する処理を行う。
【0075】
なお、学習装置2が障害判定処理と学習モデルの更新処理を並行して行っている場合には、学習データ出力処理部16は、新たな学習データが生成されるごとに当該学習データを学習装置2へ送信するようにしてもよい。
【0076】
(作用・効果)
以上述べたように一実施形態では、障害対応履歴情報に記載された障害発生日時を補正する際に、先ず上記障害発生日時を起点にその前後の時間帯の最大誤差時間Xの範囲に含まれ、かつ上記障害対応履歴情報に記載された障害装置と相関性を有するイベントを抽出して、抽出された上記イベントを同一事象により発生するもの同士でグループ化する。そして、各イベントグループの代表時刻と上記補正対象の障害発生日時との時間差を算出して、この時間差が最小のイベントグループの代表時刻を補正日時として特定し、特定された上記代表時刻をもとに上記補正対象の障害発生日時を補正するようにしている。
【0077】
従って、障害対応履歴情報の障害発生日時が、保守者が認知した大凡の日時だったり、障害対応後に入力された正確性に欠ける日時だったとしても、上記障害対応履歴情報の障害発生日時は自動的に補正される。このため、人手による解析や修正作業を必要とすることなく障害対応履歴情報の障害発生日時を適正な値に補正することが可能となる。
【0078】
また一実施形態では、上記障害発生日時の補正処理に先立ち、障害対応履歴情報に記載された障害発生装置がネットワークトポロジに存在するものか否かを判定すると共に、障害発生日時が処理可能な表現形式で記載されたものか否かを判定し、適正なものでなければ事前に破棄するようにしている。このため、不必要な日時補正処理が行われないようにして、装置の処理負荷を軽減することが可能となる。
【0079】
さらに一実施形態では、障害発生日時を補正する際に、補正対象の障害対応履歴情報に記載された障害発生日時と所定の誤差時間範囲内で発生日時が近いその他の障害対応履歴情報から障害発生日時を抽出して、抽出されたその他の障害発生日時と各イベントグループの代表時刻との時間差を算出している。そして、算出された他の障害発生日時との時間差と、各イベントグループの代表時刻と補正対象の障害発生日時との時間差とを比較し、この補正対象の障害発生日時との時間差より上記他の障害発生日時との時間差の方が小さい場合には、上記イベントグループの代表時刻を補正日時として採用しないようにしている。
【0080】
このため、イベントグループがその他の障害対応履歴情報に対応する不確かなものである場合に、補正対象の障害発生日時を上記不確かなイベントグループの代表時刻により補正されないようにすることができ、これにより補正後の障害発生日時の正確性を高めることが可能となる。
【0081】
[その他の実施形態]
前記一実施形態では、学習装置2の前段にこの発明に係る情報適正化装置1を配置した場合を例にとって説明した。しかし、この発明はそれに限定されるものではなく、例えば学習装置2内にこの発明に係る情報適正化装置1の機能を配置するようにしてもよい。
【0082】
また前記一実施形態では、イベント情報およびネットワークトポロジを表すネットワーク構成情報を外部のデータベース4から取得するようにしたが、上記データベース4を情報適正化装置1内に備えるようにしてもよい。
【0083】
さらに前記一実施形態では、障害対応履歴情報を学習データとして学習モデルの学習に提供する場合を例にとって説明した。しかし、この発明はそれに限定されるものではなく、例えば障害対応履歴情報を保守者またはシステム管理者がシステム設備の保守やシステム管理のために任意に使用する場合にも適用可能である。この場合、保守者またはシステム管理者は、より信頼性の高い障害対応履歴情報をもとにより適切な保守またはシステム管理を行うことが可能となる。
【0084】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0085】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1…情報適正化装置
2…学習装置
3…障害対応履歴DB
4…関連情報DB
5…入力装置
10…制御部
20…プログラム記憶部
30…データ記憶部
40…通信I/F部
50…バス
11…定義情報管理処理部
12…障害対応履歴情報取得処理部
13…適正判定処理部
14…障害発生日時補正処理部
15…学習データ生成処理部
16…学習データ出力処理部
31…管理情報記憶部
32…障害対応履歴記憶部
33…補正日時候補記憶部
34…学習データ記憶部