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特許7605319コミュニケーション支援システム、コミュニケーション支援方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】コミュニケーション支援システム、コミュニケーション支援方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
G06F3/01 510
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023534550
(86)(22)【出願日】2021-07-15
(86)【国際出願番号】 JP2021026655
(87)【国際公開番号】W WO2023286249
(87)【国際公開日】2023-01-19
【審査請求日】2024-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124844
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 隆治
(72)【発明者】
【氏名】瀬古 俊一
(72)【発明者】
【氏名】笹川 真奈
(72)【発明者】
【氏名】萩山 直紀
【審査官】日比野 可奈子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-167815(JP,A)
【文献】特開2017-207974(JP,A)
【文献】特開2019-009666(JP,A)
【文献】特開2016-012196(JP,A)
【文献】国際公開第2012/121160(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/069529(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/130486(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F3/01
G06F3/048-3/0489
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信装置と受信装置とを備えるコミュニケーション支援システムであって、
前記送信装置および前記受信装置のうちの少なくともいずれか一方は、
前記送信装置を操作する送信ユーザの感情を推定する感情推定部と、
前記送信ユーザの集中度を推定する集中度推定部と、
前記推定された感情および集中度に基づいてスコアを算出するスコア算出部と、
前記スコアに基づいて、前記受信装置を操作する受信ユーザに体感させる温度を決定する温度決定部と、
前記スコアに基づいて、前記受信ユーザに体感させる硬度を決定する硬度決定部と、を備える、
コミュニケーション支援システム。
【請求項2】
前記感情推定部は、前記送信ユーザの発した音声を示す音声データおよび前記送信ユーザを撮像した画像データの少なくともいずれか一方に基づいて、前記送信ユーザの感情を推定する、
請求項1に記載のコミュニケーション支援システム。
【請求項3】
前記集中度推定部は、前記送信ユーザを撮像した画像データに含まれる前記送信ユーザの視線を示す情報を解析して、前記送信ユーザの集中度を推定する、
請求項1または2に記載のコミュニケーション支援システム。
【請求項4】
前記スコア算出部は、対話の相手に対してポジティブに思っているのかネガティブに思っているのか、または相手に気が向いていないのかの度合いを示す前記スコアを算出する、
請求項1から3のいずれか1項に記載のコミュニケーション支援システム。
【請求項5】
前記送信装置は、
前記感情推定部と前記集中度推定部と前記スコア算出部と、
前記算出されたスコアを示すスコアデータを、前記受信装置に送信する送信部と、を備える、
請求項1から4のいずれか1項に記載のコミュニケーション支援システム。
【請求項6】
温度制御対象を制御する温度制御装置と、硬度制御対象を制御する硬度制御装置と、をさらに備え、
前記温度制御装置は、決定された前記温度に基づいて、前記温度制御対象の温度を制御し、
前記硬度制御装置は、決定された前記硬度に基づいて、前記硬度制御対象の硬度を制御する、
請求項1から5のいずれか1項に記載のコミュニケーション支援システム。
【請求項7】
コミュニケーション支援システムが備える送信装置および受信装置のうちの少なくともいずれか一方が実行するコミュニケーション支援方法であって、
前記送信装置を操作する送信ユーザの感情を推定するステップと、
前記送信ユーザの集中度を推定するステップと、
前記推定された感情および集中度に基づいてスコアを算出するステップと、
前記スコアに基づいて、前記受信装置を操作する受信ユーザに体感させる温度を決定するステップと、
前記スコアに基づいて、前記受信ユーザに体感させる硬度を決定するステップと、を備える、
コミュニケーション支援方法。
【請求項8】
コンピュータを、請求項1から6のいずれか1項に記載のコミュニケーション支援システムが備える送信装置および受信装置のうちの少なくともいずれか一方における各部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コミュニケーション支援システム、コミュニケーション支援方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
リモート会議、マスク着用状態における対話などのような、感情が伝わりにくい環境におけるコミュニケーションを支援する技術が研究されている。例えば、非特許文献1には、ユーザの発話と口の表情を代替するマスク型デバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】石井綾郁,橋本直,MouthOver:発話と口の表情を代替するマスク型デバイス,インタラクション2017論文集,2017,pp.907-912
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の技術のように、一方のユーザの表情、音声・言語等のような視覚情報、聴覚情報等を加工する技術では、他方のユーザに違和感を生じさせてしまう場合がある。例えば、視覚情報、聴覚情報等の加工によって、かえって不自然な表情、音声等となってしまう虞がある。
【0005】
開示の技術は、視覚情報および聴覚情報の加工に依らずに、コミュニケーションを支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術は、送信装置と受信装置とを備えるコミュニケーション支援システムであって、前記送信装置および前記受信装置のうちの少なくともいずれか一方は、前記送信装置を操作する送信ユーザの感情を推定する感情推定部と、前記送信ユーザの集中度を推定する集中度推定部と、前記推定された感情および集中度に基づいてスコアを算出するスコア算出部と、前記スコアに基づいて、前記受信装置を操作する受信ユーザに体感させる温度を決定する温度決定部と、前記スコアに基づいて、前記受信ユーザに体感させる硬度を決定する硬度決定部と、を備えるコミュニケーション支援システムである。
【発明の効果】
【0007】
視覚情報および聴覚情報の加工に依らずに、コミュニケーションを支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】コミュニケーション支援システムのシステム構成例を示す図である。
図2】送信装置の機能構成例を示す図である。
図3】受信装置の機能構成例を示す図である。
図4】送信処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5】受信処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】コンピュータのハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(本実施の形態)を説明する。以下で説明する実施の形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施の形態は、以下の実施の形態に限られるわけではない。
【0010】
(本実施の形態の概要)
本実施の形態に係るコミュニケーション支援システムは、送信装置と受信装置とを備える。送信装置は、音声データおよび映像データを取得して、送信ユーザの感情と集中度を推定し、ポジティブスコアを算出する。ポジティブスコアは、対話の相手に対してポジティブに思っているのかネガティブに思っているのか、または相手に気が向いていないのかの度合いを示す値である。
【0011】
送信装置は、算出したポジティブスコアを示すスコアデータを受信装置に送信する。受信装置は、受信したスコアデータに基づいて、受信ユーザの近くに配置されたペルチェ素子および風船を制御する。
【0012】
なお、参考文献[1]には、知らない人の写真をみて性格を判断する実験において、事前にホットコーヒーを持って手が温まった状態になっている被験者の方が、そうでない被験者より「あたたかい」(寛大で思いやりがある)と判断するといった実験の結果が開示されている。
【0013】
また、参考文献[2]には、柔らかいイスに座っていると、あたたかい・親しみやすいといった印象を相手に抱きやすくなり、硬いイスに座っているとと、冷たい・頑固といった印象を相手に抱きやすくなることが記載されている。
【0014】
このように、皮膚からの温度感覚や触覚が、他人に対する印象や信頼感といった心理や、自分自身の行動に影響をもたらすという研究結果がある。本実施の形態に係るコミュニケーション支援システムは、このような研究結果を応用して、送信ユーザの感情を受信ユーザに伝えることによって、コミュニケーションを支援するシステムである。
【0015】
(コミュニケーション支援システムのシステム構成例)
図1は、コミュニケーション支援システムのシステム構成例を示す図である。コミュニケーション支援システム1は、送信装置10と受信装置20とを備える。送信装置10および受信装置20は、通信ネットワーク30を介して互いに通信可能に接続されている。
【0016】
送信装置10には、撮像装置110および音響装置120が接続されている。撮像装置110は、例えばカメラであって、送信装置10を操作するユーザ(以下、送信ユーザという)を撮像して、撮像された画像を示す画像データを送信装置10に送信する。画像データに示される画像は、静止画像でも動画像でも良い。
【0017】
音響装置120は、例えばマイクであって、送信ユーザの発した音声を示す音声データを送信装置10に送信する。
【0018】
送信装置10は、撮像装置110から受信した画像データと、音響装置120から受信した音声データとを、通信ネットワーク30を介して受信装置20に送信する。
【0019】
受信装置20には、温度制御装置210および硬度制御装置220が接続されている。温度制御装置210は、ペルチェ素子230の温度を制御する制御装置であって、例えばワンボードマイコンである。
【0020】
ペルチェ素子230は、受信装置20を操作するユーザ(以下、受信ユーザという)に温度を体感させるように配置され、例えば、受信ユーザが在室している場合には、ペルチェ素子230は、室温を制御するように配置される。なお、ペルチェ素子230は、温度制御装置210による制御対象の一例であって、他でも良い。例えば、温度制御対象は、受信ユーザに温度を体感させるものであればペルチェ素子でなくても良く、例えば空気調和機等であっても良い。
【0021】
硬度制御装置220は、電動空気ポンプ240を介して風船250の硬度を制御する制御装置であって、例えばワンボードマイコンである。
【0022】
電動空気ポンプ240は、硬度制御装置220によって指定された硬度を実現させるように、電気的な制御によって、風船250の内部の空気圧を上昇または下降させる。
【0023】
風船250は、例えば受信ユーザの身体の一部に接触する位置に配置され、受信ユーザに硬度を体感させるものであって、例えば粉粒体を含んでいる。なお、風船250は、硬度制御装置220による制御対象の一例であって、他でも良い。例えば、硬度制御対象は、受信ユーザに硬度を体感させるものであれば電動空気ポンプ240および風船250でなくても良く、例えばマッサージチェア等であっても良い。
【0024】
なお、上述した送信ユーザと受信ユーザは、それぞれ対話における話し手であっても聞き手であっても良い。例えば、話し手である受信ユーザが、聞き手である送信ユーザの感情を知るという使用方法であっても良く、聞き手である受信ユーザが、話し手である送信ユーザの感情を知るという使用方法であっても良い。
【0025】
(送信装置の機能構成例)
図2は、送信装置の機能構成例を示す図である。送信装置10は、感情推定部11と、集中度推定部12と、スコア算出部13と、送信部14と、を備える。
【0026】
感情推定部11は、音声データおよび画像データに基づいて、送信ユーザの感情を推定する。なお、感情推定部11は、音声データと画像データのいずれかに基づいて感情を推定しても良いし、両方に基づいて感情を推定しても良い。
【0027】
具体的には、感情推定部11は、例えば送信ユーザを撮像した画像から送信ユーザの表情を解析して、送信ユーザの感情の推定値PNVを算出する。推定値PNVは、送信ユーザの感情がポジティブな感情かネガティブな感情かの度合いを示す値である。
【0028】
例えば、感情推定部11は、送信ユーザの感情が、ポジティブな感情である確率を示す値pos[0≦pos≦1]と、ネガティブな感情である確率を示す値neg[0≦neg≦1]と、を算出する。ここで、pos+neg=1とする。そして、感情推定部11は、推定値PNVを次の式によって算出する。
【0029】
PNV=(pos-neg)×2
【0030】
なお、感情推定部11は、例えば参考文献[3]に記載されている技術を応用して、顔の画像から特徴点を抜き出し、そのパターンを機械学習させることによって、感情を推定しても良い。
【0031】
集中度推定部12は、画像データに基づいて、送信ユーザの集中度の推定値CONVを算出する。推定値CONVは、送信ユーザが受信ユーザに対してどの程度集中しているかを示す値である。
【0032】
例えば、集中度推定部12は、参考文献[4]に記載されている技術を応用して、画像データから送信ユーザの視線を示す情報を抽出して視線パターンを分析することによって、推定値CONVを算出しても良い。
【0033】
なお、集中度推定部12は、他の方法によって推定値CONVを算出しても良い。例えば、集中度推定部12は、加速度センサ、バイタルセンサ、視線計測機器等を用いた測定結果に基づいて、推定値CONVを算出しても良い。
【0034】
スコア算出部13は、ポジティブスコアPSを算出する。ポジティブスコアPSは、前述の通り、対話の相手に対してポジティブに思っているのかネガティブに思っているのか、または相手に気が向いていないのかの度合いを示す値である。
【0035】
具体的には、スコア算出部13は、感情の推定値PNVおよび集中度の推定値CONVを用いて、以下の式によってポジティブスコアPSを算出する。
【0036】
PS=2・PNV・CONV/(PNV+CONV)
【0037】
なお、感情の推定値PNVおよび集中度の推定値CONVは、それぞれ0以上1以下の値に正規化された値を使用しても良い。
【0038】
送信部14は、算出されたポジティブスコアPSを示すスコアデータを、受信装置20に送信する。
【0039】
(受信装置の機能構成例)
図3は、受信装置の機能構成例を示す図である。受信装置20は、受信部21と、温度決定部22と、硬度決定部23と、を備える。
【0040】
受信部21は、送信装置10から通信ネットワーク30を介してスコアデータを受信する。
【0041】
温度決定部22は、受信したスコアデータに示されるポジティブスコアPSに基づいて、受信ユーザに体感させる温度を決定する。受信装置20は、決定された温度を示すデータ(温度データ)を温度制御装置210に送信する。
【0042】
具体的には、温度決定部22は、制御前の室温におけるペルチェ素子230の表面温度を示す情報を取得する。そして、温度決定部22は、取得した情報に示される表面温度をポジティブスコアPS=0.5に、制御可能な最低温度をポジティブスコアPS=0に、制御可能な最高温度をポジティブスコアPS=1に、それぞれ対応させる。
【0043】
これによって、温度決定部22は、ポジティブスコアPSに基づいて、ペルチェ素子230の表面温度を決定する。
【0044】
例えば、ポジティブスコアPSが0.5未満の場合、温度決定部22は、制御前よりも低い温度に決定する。この場合、温度制御装置210は、温度データを受信すると、吸熱方向への電流を発生させることによって、ペルチェ素子230の温度を下げるように制御する。
【0045】
また、ポジティブスコアPSが0.5より大きい場合、温度決定部22は、制御前よりも高い温度に決定する。この場合、温度制御装置210は、温度データを受信すると、発熱方向への電流を発生させることによって、ペルチェ素子230の温度を上げるように制御する。
【0046】
硬度決定部23は、受信したスコアデータに示されるポジティブスコアPSに基づいて、受信ユーザに体感させる硬度を決定する。受信装置20は、決定された硬度を示すデータ(硬度データ)を硬度制御装置220に送信する。
【0047】
具体的には、硬度決定部23は、制御前の通常状態における風船250の硬度を示す情報を取得する。そして、硬度決定部23は、取得した情報に示される硬度をポジティブスコアPS=0.5に、制御可能な最低硬度をポジティブスコアPS=0に、制御可能な最高硬度をポジティブスコアPS=1に、それぞれ対応させる。
【0048】
これによって、硬度決定部23は、ポジティブスコアPSに基づいて、風船250の硬度を決定する。
【0049】
例えば、ポジティブスコアPSが0.25である場合、硬度決定部23は、制御前よりも25%空気を増加させるような硬度に決定する。この場合、硬度制御装置220は、硬度データを受信すると、風船250に空気を送り込ませるように電動空気ポンプ240を制御することによって、風船250の硬度を下げるように制御する。
【0050】
また、ポジティブスコアPSが0.75である場合、硬度決定部23は、制御前よりも25%空気を減少させるような硬度に決定する。この場合、硬度制御装置220は、硬度データを受信すると、風船250から空気を抜くように電動空気ポンプ240を制御することによって、風船250の硬度を上げるように制御する。
【0051】
(コミュニケーション支援システムの動作例)
次に、コミュニケーション支援システム1の動作例について、図面を参照して説明する。送信装置10は、送信ユーザの操作等を受けて、送信処理を開始する。
【0052】
図4は、送信処理の流れの一例を示すフローチャートである。送信装置10は、音声データおよび画像データを取得する(ステップS11)。次に、感情推定部11は、音声データおよび画像データに基づいて、感情を推定する(ステップS12)。
【0053】
続いて、集中度推定部12は、画像データに基づいて、集中度を推定する(ステップS13)。そして、スコア算出部13は、感情の推定値および集中度の推定値に基づいて、ポジティブスコアを算出する(ステップS14)。送信部14は、算出されたポジティブスコアを示すスコアデータを送信する(ステップS15)。
【0054】
また、受信装置20は、送信装置10からスコアデータを受信することによって、受信処理を開始する。
【0055】
図5は、受信処理の流れの一例を示すフローチャートである。受信部21は、スコアデータを取得する(ステップS21)。続いて、温度決定部22は、スコアデータに基づいて、受信ユーザに体感させる温度を決定する(ステップS22)。続いて、硬度決定部23は、受信ユーザに体感させる硬度を決定する(ステップS23)。
【0056】
受信装置20は、ペルチェ素子230の温度を制御する(ステップS24)。具体的には、受信装置20は、決定した温度を示す温度データを温度制御装置210に送信する。温度制御装置210は、受信した温度データに基づいて、ペルチェ素子230の温度を制御する。
【0057】
続いて、受信装置20は、風船250の硬度を制御する(ステップS25)。具体的には、受信装置20は、決定した硬度を示す硬度データを硬度制御装置220に送信する。硬度制御装置220は、受信した硬度データに基づいて、電動空気ポンプ240を介して、風船250の硬度を制御する。
【0058】
(本実施の形態に係るハードウェア構成例)
送信装置10、受信装置20、温度制御装置210または硬度制御装置220は、例えば、コンピュータに、本実施の形態で説明する処理内容を記述したプログラムを実行させることにより実現可能である。なお、この「コンピュータ」は、物理マシンであってもよいし、クラウド上の仮想マシンであってもよい。仮想マシンを使用する場合、ここで説明する「ハードウェア」は仮想的なハードウェアである。
【0059】
上記プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(可搬メモリ等)に記録して、保存したり、配布したりすることが可能である。また、上記プログラムをインターネットや電子メール等、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0060】
図6は、上記コンピュータのハードウェア構成例を示す図である。図6のコンピュータは、それぞれバスBで相互に接続されているドライブ装置1000、補助記憶装置1002、メモリ装置1003、CPU1004、インタフェース装置1005、表示装置1006、入力装置1007、出力装置1008等を有する。
【0061】
当該コンピュータでの処理を実現するプログラムは、例えば、CD-ROM又はメモリカード等の記録媒体1001によって提供される。プログラムを記憶した記録媒体1001がドライブ装置1000にセットされると、プログラムが記録媒体1001からドライブ装置1000を介して補助記憶装置1002にインストールされる。但し、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体1001より行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータよりダウンロードするようにしてもよい。補助記憶装置1002は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0062】
メモリ装置1003は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置1002からプログラムを読み出して格納する。CPU1004は、メモリ装置1003に格納されたプログラムに従って、当該装置に係る機能を実現する。インタフェース装置1005は、ネットワークに接続するためのインタフェースとして用いられる。表示装置1006はプログラムによるGUI(Graphical User Interface)等を表示する。入力装置1007はキーボード及びマウス、ボタン、又はタッチパネル等で構成され、様々な操作指示を入力させるために用いられる。出力装置1008は演算結果を出力する。なお、上記コンピュータは、CPU1004の代わりにGPU(Graphics Processing Unit)またはTPU(Tensor processing unit)を備えていても良く、CPU1004に加えて、GPUまたはTPUを備えていても良い。その場合、例えば特殊な演算が必要な処理をGPUまたはTPUが実行し、その他の処理をCPU1004が実行する、というように処理を分担して実行しても良い。
【0063】
(本実施の形態の効果)
本実施の形態に係るコミュニケーション支援システム1によれば、送信装置は、音声データおよび映像データを取得して、送信ユーザの感情と集中度を推定し、ポジティブスコアを算出する。受信装置は、受信したスコアデータに基づいて、受信ユーザの近くに配置された温度制御対象および硬度制御対象を制御する。これによって、受信ユーザは、温度と硬度を体感することによって、送信ユーザの感情を知ることができる。したがって、視覚情報および聴覚情報の加工に依らずに、コミュニケーションを支援することができる。
【0064】
(本実施の形態の変形例)
温度と硬度を体感させる方法は、他でも良い。例えば、受信ユーザの同一の部位(例えば手)に温度と硬度をともに体感させても良いし、異なる部位(例えば手と臀部)に、それぞれ温度と硬度を別々に体感させても良い。また、キーボード、マウス等に皮膚を刺激する機器を追加することによって、キーボード、マウス等に触れている手などに温度や硬度を体感させるようにしても良い。
【0065】
対話において、一方のユーザが送信ユーザであって、他方のユーザが受信ユーザである場合に、逆に一方のユーザが受信ユーザであって、他方のユーザが送信ユーザとなっても良い。すなわち、双方のユーザが送信ユーザであって受信ユーザであっても良い。その場合、各ユーザが操作する装置は、送信装置10および受信装置20の機能をともに備えていれば良い。これによって、双方向に感情の伝達が可能となる。
【0066】
本実施の形態に係る送信装置10および受信装置20の機能の分担は、一例であって他でも良い。具体的には、送信装置10が備える感情推定部11、集中度推定部12、スコア算出部13のうちの一部または全部の機能を受信装置20が備えていても良い。例えば、送信装置10は、音声データおよび画像データを受信装置20に送信し、受信装置20が、受信した音声データおよび画像データに基づいて、感情および集中度を推定して、ポジティブスコアを算出しても良い。
【0067】
(参考文献)
[1]:Williams LE, Bargh JA. Experiencing physical warmth promotes interpersonal warmth. Science. 2008;322(5901):606-607.
[2]:沼崎 誠,松崎 圭佑,埴田 健司,持つものの柔らかさ・硬さによって生じる皮膚感覚が対人認知と自己認知に及ぼす効果,実験社会心理学研究,2015-2016,55巻,2号,pp.119-129
[3]:B. T. Nguyen, M. H. Trinh, T. V. Phan and H. D. Nguyen, "An efficient real-time emotion detection using camera and facial landmarks," 2017 Seventh International Conference on Information Science and Technology (ICIST), Da Nang, 2017, pp. 251-255.
[4]:片渕典史,他,画像センシングによる視聴映像の注目度推定システム,情報処理学会研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM),2004,40(2004-CVIM-144),pp.267-272
【0068】
(実施の形態のまとめ)
本明細書には、少なくとも下記の各項に記載したコミュニケーション支援システム、コミュニケーション支援方法およびプログラムが記載されている。
(第1項)
送信装置と受信装置とを備えるコミュニケーション支援システムであって、
前記送信装置および前記受信装置のうちの少なくともいずれか一方は、
前記送信装置を操作する送信ユーザの感情を推定する感情推定部と、
前記送信ユーザの集中度を推定する集中度推定部と、
前記推定された感情および集中度に基づいてスコアを算出するスコア算出部と、
前記スコアに基づいて、前記受信装置を操作する受信ユーザに体感させる温度を決定する温度決定部と、
前記スコアに基づいて、前記受信ユーザに体感させる硬度を決定する硬度決定部と、を備える、
コミュニケーション支援システム。
(第2項)
前記感情推定部は、前記送信ユーザの発した音声を示す音声データおよび前記送信ユーザを撮像した画像データの少なくともいずれか一方に基づいて、前記送信ユーザの感情を推定する、
第1項に記載のコミュニケーション支援システム。
(第3項)
前記集中度推定部は、前記送信ユーザを撮像した画像データに含まれる前記送信ユーザの視線を示す情報を解析して、前記送信ユーザの集中度を推定する、
第1項または第2項に記載のコミュニケーション支援システム。
(第4項)
前記スコア算出部は、対話の相手に対してポジティブに思っているのかネガティブに思っているのか、または相手に気が向いていないのかの度合いを示す前記スコアを算出する、
第1項から第3項のいずれか1項に記載のコミュニケーション支援システム。
(第5項)
前記送信装置は、
前記感情推定部と前記集中度推定部と前記スコア算出部と、
前記算出されたスコアを示すスコアデータを、前記受信装置に送信する送信部と、を備える、
第1項から第4項のいずれか1項に記載のコミュニケーション支援システム。
(第6項)
温度制御対象を制御する温度制御装置と、硬度制御対象を制御する硬度制御装置と、をさらに備え、
前記温度制御装置は、決定された前記温度に基づいて、前記温度制御対象の温度を制御し、
前記硬度制御装置は、決定された前記硬度に基づいて、前記硬度制御対象の硬度を制御する、
第1項から第5項のいずれか1項に記載のコミュニケーション支援システム。
(第7項)
コミュニケーション支援システムが備える送信装置および受信装置のうちの少なくともいずれか一方が実行するコミュニケーション支援方法であって、
前記送信装置を操作する送信ユーザの感情を推定するステップと、
前記送信ユーザの集中度を推定するステップと、
前記推定された感情および集中度に基づいてスコアを算出するステップと、
前記スコアに基づいて、前記受信装置を操作する受信ユーザに体感させる温度を決定するステップと、
前記スコアに基づいて、前記受信ユーザに体感させる硬度を決定するステップと、を備える、
コミュニケーション支援方法。
(第8項)
コンピュータを、第1項から第6項のいずれか1項に記載のコミュニケーション支援システムが備える送信装置および受信装置のうちの少なくともいずれか一方における各部として機能させるためのプログラム。
【0069】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 コミュニケーション支援システム
10 送信装置
11 感情推定部
12 集中度推定部
13 スコア算出部
14 送信部
20 受信装置
21 受信部
22 温度決定部
23 硬度決定部
30 通信ネットワーク
110 撮像装置
120 音響装置
210 温度制御装置
220 硬度制御装置
230 ペルチェ素子
240 電動空気ポンプ
250 風船
1000 ドライブ装置
1001 記録媒体
1002 補助記憶装置
1003 メモリ装置
1004 CPU
1005 インタフェース装置
1006 表示装置
1007 入力装置
1008 出力装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6