(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】基地局制御システム、基地局制御方法、基地局制御装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 16/08 20090101AFI20241217BHJP
H04W 16/18 20090101ALI20241217BHJP
H04W 52/38 20090101ALI20241217BHJP
【FI】
H04W16/08
H04W16/18
H04W52/38
(21)【出願番号】P 2023543589
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 JP2021031421
(87)【国際公開番号】W WO2023026445
(87)【国際公開日】2023-03-02
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124844
【氏名又は名称】石原 隆治
(72)【発明者】
【氏名】中平 俊朗
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 元晴
(72)【発明者】
【氏名】村山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中山 章太
(72)【発明者】
【氏名】守山 貴庸
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 泰司
【審査官】本橋 史帆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-033435(JP,A)
【文献】特開2019-033409(JP,A)
【文献】国際公開第2015/029282(WO,A1)
【文献】田代 太一 Taichi Tashiro,負荷状況に応じた基地局制御技術の検討 A study of technology for controlling base stations based on the load situation,電気学会研究会資料 The Papers of Technical Meeting on "Communications",IEE Japan,日本,一般社団法人電気学会 The Institute of Electrical Engineers of Japan(IEEJ),2014年01月23日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配置位置が決まっていない第1の基地局と、基地局制御装置とを含む基地局制御システムであって、
前記基地局制御装置は、
既設の第2の基地局と、前記第2の基地局に接続する端末とをクラスタリングによってクラスタに分割するクラスタリング部と、
複数の前記クラスタのうち、前記第2の基地局を含まないクラスタに対応する位置を前記第1の基地局の配置位置として決定する配置部と、
前記第1の基地局が前記位置に配置された場合について、前記第1の基地局の複数通りの送信電力ごとに、前記第1の基地局に接続する第1の端末の数と前記第2の基地局に接続する第2の端末の数とを算出する算出部と、
前記第1の端末の数及び前記第2の端末の数に基づいて、前記第1の基地局の送信電力を選択する選択部と、
を有することを特徴とする基地局制御システム。
【請求項2】
前記第2の基地局は、既設の複数の基地局のうち、接続する端末の数が相対的に多い一部の前記第2の基地局である、
ことを特徴とする請求項1記載の基地局制御システム。
【請求項3】
前記算出部は、前記第1の基地局の複数通りの送信電力ごとに、前記第1の基地局及び前記第2の基地局のいずれかにも接続できない第3の端末の数を算出し、
前記選択部は、前記第1の端末の数、前記第2の端末の数及び前記第3の端末の数に基づいて、前記第1の基地局の送信電力を選択する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の基地局制御システム。
【請求項4】
前記選択部は、更に、一つの送信電力を選択できない場合、前記送信電力ごとに特定される、前記第1の基地局からの前記第1の端末の受信電力及び前記第2の基地局からの前記第2の端末の受信電力に基づいて、前記第1の基地局の送信電力を選択する、
ことを特徴とする請求項1乃至3いずれか一項記載の基地局制御システム。
【請求項5】
配置位置が決まっていない第1の基地局を制御する基地局制御装置が、
既設の第2の基地局と、前記第2の基地局に接続する端末とをクラスタリングによってクラスタに分割するクラスタリング手順と、
複数の前記クラスタのうち、前記第2の基地局を含まないクラスタに対応する位置を前記第1の基地局の配置位置として決定する配置手順と、
前記第1の基地局が前記位置に配置された場合について、前記第1の基地局の複数通りの送信電力ごとに、前記第1の基地局に接続する第1の端末の数と前記第2の基地局に接続する第2の端末の数とを算出する算出手順と、
前記第1の端末の数及び前記第2の端末の数に基づいて、前記第1の基地局の送信電力を選択する選択手順と、
を実行することを特徴とする基地局制御方法。
【請求項6】
配置位置が決まっていない第1の基地局を制御する基地局制御装置であって、
既設の第2の基地局と、前記第2の基地局に接続する端末とをクラスタリングによってクラスタに分割するクラスタリング部と、
複数の前記クラスタのうち、前記第2の基地局を含まないクラスタに対応する位置を前記第1の基地局の配置位置として決定する配置部と、
前記第1の基地局が前記位置に配置された場合について、前記第1の基地局の複数通りの送信電力ごとに、前記第1の基地局に接続する第1の端末の数と前記第2の基地局に接続する第2の端末の数とを算出する算出部と、
前記第1の端末の数及び前記第2の端末の数に基づいて、前記第1の基地局の送信電力を選択する選択部と、
を有することを特徴とする基地局制御装置。
【請求項7】
請求項6記載の基地局制御装置としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局制御システム、基地局制御方法、基地局制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
エリアカバレッジを効率的に確保するため、無線基地局をエリアに満遍なく配置した場合、端末混雑や遮蔽などの影響により、特定エリアの通信品質が低下することが考えられる。これに対し、通信品質が低下したエリアに可動基地局を動的に配置し、通信品質の低下を改善する技術が検討されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】新井拓人,五藤大介,岩渕匡史,岩國辰彦,丸田一輝、「オフロード効率改善を実現する適応可動APシステムの提案」、電子情報通信学会技術研究報告, vol. 116, no. 46, RCS2016-43, pp. 107-112, 2016年5月、電子情報通信学会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、可動基地局を動的に配置する際、当該可動基地局からの受信電力が他の基地局に比べて大きくなり過ぎると、多くの端末が自律的に当該可動基地局へ接続して、端末接続の過度な偏りが発生し、通信品質の低下が生じる可能性が有る。
【0005】
図1は、従来技術の課題を説明するための図である。
図1では、1台の既設基地局と6台の端末が存在する環境に、1台の可動基地局を追加設置する場合を例に説明する。
図1の(1)には可動基地局配置前の状態が示され、(2)には可動基地局配置後の状態が示されている。
【0006】
可動基地局配置前において、1台の既設基地局に対して6台の端末が接続し、通信が混雑しているため、1台の可動基地局を配置することで、混雑を解消又は緩和しようとする。
【0007】
従来技術では、6台の端末に対するクラスタリングにより可動基地局の配置を算出した結果、例えば、(2)のように、既設基地局の近くに可動基地局が設置される。
【0008】
このとき、6台の端末のうち5台の端末については可動基地局の方が既設基地局よりも距離が近い。したがって、既設基地局及び可動基地局の送信電力が同一の場合、当該5台の端末が可動基地局から受信する信号電力は、既設基地局から受信する信号電力よりも大きくなる。
【0009】
端末は、複数の基地局からの信号が受信可能な場合、最も受信電力が大きい基地局へ接続するのが一般的な無線システムにおける動作であるため、当該5台の端末は可動基地局に接続する。
【0010】
その結果、可動基地局には5台の端末が接続し、既設基地局には1台の端末が接続した状態となり、既設基地局と可動基地局との間で接続する端末数に偏りが生じてしまう。
【0011】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、各基地局へ接続する端末数の偏りを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで上記課題を解決するため、配置位置が決まっていない第1の基地局と、基地局制御装置とを含む基地局制御システムにおいて、前記基地局制御装置は、既設の第2の基地局と、前記第2の基地局に接続する端末とをクラスタリングによってクラスタに分割するクラスタリング部と、複数の前記クラスタのうち、前記第2の基地局を含まないクラスタに対応する位置を前記第1の基地局の配置位置として決定する配置部と、前記第1の基地局が前記位置に配置された場合について、前記第1の基地局の複数通りの送信電力ごとに、前記第1の基地局に接続する第1の端末の数と前記第2の基地局に接続する第2の端末の数とを算出する算出部と、前記第1の端末の数及び前記第2の端末の数に基づいて、前記第1の基地局の送信電力を選択する選択部と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
各基地局へ接続する端末数の偏りを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】本発明の実施の形態における通信システム1の構成例を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態における制御局10のハードウェア構成例を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態における制御局10の機能構成例を示す図である。
【
図5】制御局10が実行する処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図6】既設基地局30への端末50の接続状態の具体例を示す図である。
【
図7】クラスタリングの結果の一例を示す図である。
【
図10】各候補パタンの評価値Xの算出結果の一例を示す図である。
【
図11】各候補パタンの評価値Yiの算出結果の一例を示す図である。
【
図12】本実施の形態による各基地局への端末50の接続状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図2は、本発明の実施の形態における通信システムの構成例を示す図である。
図2に示されるように、通信システム1は、1以上の既設基地局30、1以上の可動基地局20、1以上の中継基地局40及び制御局10等を含む。なお、基地局とは、無線通信(例えば、無線LAN)の基地局(アクセスポイント)をいう。
【0016】
既設基地局30は、本実施の形態において既設の基地局である。本実施の形態において、既設基地局30は移動の対象とされないが、既設基地局30は移動可能であってもよい。
【0017】
可動基地局20は、移動可能な基地局であり、本実施の形態において新たに配置される(配置位置が決まっていない)基地局である。例えば、或る既設基地局30において通信が混雑している場合等において、可動基地局20が動的に配置される。なお、可動基地局20を移動させるための駆動手段は、特定のものに限定されない。例えば、車両やドローン等が当該駆動手段であってもよい。また、予め施設されたレール上を移動するように可動基地局20が構成されてもよい。
【0018】
中継基地局40は、可動基地局20と制御局10との通信を中継する基地局である。中継基地局40は、可動基地局20と無線通信によって接続される。したがって、可動基地局20は、中継基地局40と無線通信が可能な範囲で移動可能である。
【0019】
なお、以下において、既設基地局30及び可動基地局20を区別しない場合、単に「基地局」という。また、図示は省略されているが、いずれかの基地局に無線接続して通信を行う複数の端末(以降における端末50)が存在する。各端末は、自律制御によりいずれかの基地局に接続する。当該自律制御は、例えば、端末は、当該端末における受信電力が相対的に大きい基地局に接続するといった制御である。
【0020】
制御局10は、可動基地局20の配置の制御及び可動基地局20の送信電力の制御を行う1以上のコンピュータである。制御局10は、各既設基地局30及び各中継基地局40とネットワーク(有線及び無線の別を問わない)を介して接続される。制御局10は、ネットワークを介して各基地局及び端末から収集した情報に基づき、可動基地局20の配置や可動基地局20の送信電力の制御を行う。
【0021】
図3は、本発明の実施の形態における制御局10のハードウェア構成例を示す図である。
図3の制御局10は、それぞれバスBで相互に接続されているドライブ装置100、補助記憶装置102、メモリ装置103、CPU104、及びインタフェース装置105等を有する。
【0022】
制御局10での処理を実現するプログラムは、CD-ROM等の記録媒体101によって提供される。プログラムを記憶した記録媒体101がドライブ装置100にセットされると、プログラムが記録媒体101からドライブ装置100を介して補助記憶装置102にインストールされる。但し、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体101より行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータよりダウンロードするようにしてもよい。補助記憶装置102は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0023】
メモリ装置103は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置102からプログラムを読み出して格納する。CPU104は、メモリ装置103に格納されたプログラムに従って制御局10に係る機能を実行する。インタフェース装置105は、ネットワークに接続するためのインタフェースとして用いられる。
【0024】
図4は、本発明の実施の形態における制御局10の機能構成例を示す図である。
図4において、制御局10は、クラスタリング部11、配置部12、生成部13、算出部14、選択部15及び設定部16を有する。これら各部は、制御局10にインストールされた1以上のプログラムが、CPU104に実行させる処理により実現される。
【0025】
以下、制御局10が実行する処理手順について説明する。
図5は、制御局10が実行する処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【0026】
ステップS101において、クラスタリング部11は、複数の既設基地局30のそれぞれの接続端末数に基づき、可動基地局20の設置対象の(可動基地局20によって負荷の軽減を軽減させる)既設基地局30(以下、「対象既設基地局30」という。)を選択する。例えば、端末接続が相対的に混雑している(接続端末数が相対的に多い)一部の既設基地局30が対象既設基地局30として選択される。この場合、クラスタリング部11は、各既設基地局30の端末接続が混雑しているか否かを判定する。例えば、クラスタリング部11は、接続する端末50の数(接続端末数)が、予め定めた閾値以上である既設基地局30が混雑していると判定する。
【0027】
図6は、既設基地局30への端末50の接続状態の具体例を示す図である。本実施の形態では、3台の既設基地局30が設置されており、11台の端末50がいずれかの既設基地局30に接続されている状態において、2台の可動基地局20を追加設置する状況が想定されているとする。なお、図中において、端末50と既設基地局30との間を接続する破線は、端末50と既設基地局30との接続関係(端末50が接続する既設基地局30がいずれであるのか)を示す。したがって、
図6の例において、既設基地局30-1の接続端末数は1であり、既設基地局30-2の接続端末数は5であり、既設基地局30-3の接続端末数は5である。
【0028】
図6の例において、既設基地局30の混雑を判定するための閾値が5であるとすると、既設基地局30-2及び既設基地局30-3の2台の既設基地局30が混雑していると判定される。したがって、これら2台の既設基地局30が対象既設基地局30として選択される。
【0029】
又は、別の判定方法として、全ての既設基地局30のうち、接続端末数が上位α%に含まれれば混雑しており、含まれなければ混雑していないと判定されてもよい。αはパラメータであり、例えば、α=50のときは、上位50%の既設基地局30が混雑状態となる。
【0030】
又は、別の判定方法として、接続端末数が、全ての既設基地局30の平均接続端末数を上回る既設基地局30が混雑状態と判定されてもよい。
【0031】
続いて、クラスタリング部11は、対象既設基地局30と、いずれかの対象既設基地局30に接続する端末50とを要素とする集合について、各要素の位置情報に基づいてクラスタリング(階層型クラスタリング)を行い、当該集合を(対象既設基地局数+可動基地局数)分のクラスタ(対象既設基地局30ごと、かつ、可動基地局20ごとのクラスタ)に分割する(S102)。
図6の例では、対象既設基地局30は2台であり、いずれかの対象既設基地局30に接続する端末50の数は10台である。また、対象既設基地局30と可動基地局20との合計数は4である。したがって、12台の対象既設基地局30及び端末50が、4つのクラスタに分割される。
【0032】
図7は、クラスタリングの結果の一例を示す図である。
図7では、クラスタc1~c4に分割された例が示されている。
【0033】
なお、各既設基地局30の位置情報は、各既設基地局30から収集される情報に基づいて特定可能である。また、各端末50の位置は、各端末50が測位した位置情報を制御局10が収集(既設基地局30を介して収集)することで特定可能である。例えば、「https://www.wi-fi.org/ja/discover-wi-fi/wi-fi-location」に開示された技術を用いて、各端末50の位置が特定されてもよい。
【0034】
クラスタリング部11は、各クラスタについて、可動基地局20の配置の要否を評価するための基準となるパラメータ(以下、「クラスタ評価値」という。)を計算し、計算結果をメモリ装置103へ記憶する。
【0035】
図8は、クラスタ評価値の一例を示す図である。
図8に示されるように、クラスタ評価値は、既設基地局数、端末数、既設基地局からの受信電力の最小値等を含む。既設基地局数は、クラスタに属する既設基地局30の数である。端末数は、クラスタに属する端末50の数である。既設基地局からの受信電力の最小値は、クラスタに属する端末50が既設基地局30から受信する電力のうちの最小値である。
【0036】
続いて、配置部12は、既設基地局数が0である(既設基地局30を含まない)クラスタの数が可動基地局数と一致するか否かを判定する(S103)。
【0037】
既設基地局数が0であるクラスタの数が可動基地局数と一致する場合(S103でY)、配置部12は、各該当クラスタに対して1台ずつ可動基地局20を割り当てる(S104)。
図7の例では、クラスタc2及びクラスタc4のそれぞれに1台の可動基地局20が割り当てられる。
【0038】
一方、既設基地局数が0であるクラスタの数が可動基地局数を超える場合(S103でN)、配置部12は、これらのクラスタのうち端末数が上位N番目(N=可動基地局数)までの各クラスタに対して1台ずつ可動基地局20を割り当てる(S105)。但し、上位N番目に複数のクラスタが該当する場合には、配置部12は、これらのクラスタのうち、既設基地局30からの受信電力の最小値が最小であるクラスタに対して1台の可動基地局20を割り当てる。
【0039】
以下、ステップS104又はS105において可動基地局20が割り当てられたクラスタを「対象クラスタ」という。
【0040】
ステップS104又はS105に続いて、配置部12は、各対象クラスタに対応する位置を各可動基地局20の配置位置として決定し、当該配置位置へ各可動基地局20を配置するための制御を行う(S106)。具体的には、配置部12は、各可動基地局20に対して、当該可動基地局20について決定された配置位置へ移動させるための指示を送信する。各可動基地局20は、当該指示に指定された配置位置へ移動する。なお、対象クラスタの重心が、当該対象クラスタに割り当てられた可動基地局20の配置位置とされてもよいし、その他の方法で配置位置が決定されてもよい。
【0041】
各可動基地局20の配置が完了すると、生成部13は、各可動基地局20に対する送信電力調整量の組み合わせについて、複数通りの異なるパタンを生成する(S107)。以下、当該パタンを、「候補パタン」という。なお、送信電力調整量とは、最大送信電力からの相対的な電力の低下量をいう。例えば、国によっても設定可能な送信電力は異なるため、本実施の形態では、最大値を基準とした相対値とされている。但し、送信電力調整量ではなく、送信電力の絶対値が候補パタンを構成してもよい。
【0042】
図9は、候補パタンの一例を示す図である。
図9に示されるように、ステップS107では、候補パタンごとに、候補パタン番号及び送信電力調整量列が生成される。候補パタン番号は、候補パタンの識別番号である。送信電力調整量列は、各可動基地局20に対する送信電力調整量の組み合わせである。例えば、
図9における[0,0]は、のうちの1番目の0は、一方の可動基地局20に対する送信電力調整量を示し、2番目の0は、他方の可動基地局20に対する送信電力調整量を示す。
【0043】
続いて、算出部14は、各基地局の位置、各端末50(いずれかの対象基地局に接続している各端末50)の位置、及び各基地局の送信電力等に基づいて、各候補パタンの評価用パラメータを算出する(S108)。本実施の形態において、評価用パラメータは、(a)既設基地局の接続端末数、(b)可動基地局20の接続端末数、(c)基地局接続不可端末である。
【0044】
或る候補パタンの(a)既設基地局の接続端末数とは、各可動基地局20の送信電力調整量が当該候補パタンの通りである場合に、各対象既設基地局30へ接続する端末50の数をいう。
【0045】
或る候補パタンの(b)可動基地局20の接続端末数とは、各可動基地局20の送信電力調整量が当該候補パタンの通りである場合に、各可動基地局20へ接続する端末50の数をいう。
【0046】
或る候補パタンの(c)基地局接続不可端末とは、既設基地局30が配置されているエリアに存在する端末50のうち、各可動基地局20の送信電力調整量が当該候補パタンの通りである場合に、いずれの可動基地局20及び対象既設基地局30へも接続できない端末50をいう。(c)の値は、基地局接続不可端末に該当する端末50が存在する場合には0となり、基地局接続不可端末に該当する端末50が存在しない場合には1となる。
【0047】
(a)及び(b)について、算出部14は、対象既設基地局30及び可動基地局20からの各端末50での受信電力を、各端末50と各対象既設基地局30及び各可動基地局20との距離、並びに各対象既設基地局30及び各可動基地局20のそれぞれの送信電力に基づいて算出し、最も受信電力が高い基地局に端末50を接続させた場合の基地局ごとの接続端末数を算出する。
【0048】
(c)について、算出部14は、(a)及び(b)に関して各端末50について基地局ごとに算出した受信電力のうちの最大値(各対象既設基地局30からの受信電力と各可動基地局20からの受信電力とのうちの最大値)が予め定めた閾値(所要受信電力)を下回る端末50の有無を判定結果とする。
【0049】
続いて、算出部14は、候補パタンごとに、(a)~(c)に基づいて評価値Xを算出する(S109)。ここでは、一例として、(a)、(b)及び(c)の積((a)×(b)×(c))が評価値Xとして算出される。
【0050】
図10は、各候補パタンの評価値Xの算出結果の一例を示す図である。
図10には、候補パタンごとに、(a)~(c)の値の一例と、評価値Xの一例とが示されている。
【0051】
続いて、選択部15は、評価値Xが最大である候補パタンが複数であるか否かを判定する(S110)。評価値Xが最大である候補パタンが一つである場合(S110でN)、選択部15は、当該候補パタンを選択して(S111)、ステップS119へ進む。なお、評価値Xが最大である候補パタンは、基地局間の接続端末数の偏りが小さく、かつ、基地局接続不可端末が存在しないパタンとなり、各可動基地局20について、端末接続の偏りが小さい送信電力調整量を特定できる。
【0052】
一方、評価値Xが最大である候補パタンが複数である場合(すなわち、評価値Xで候補パタンを一意に選択できない場合)(S110でY)、選択部15は、評価値Xが最大である候補パタンごとに、(d)既設基地局接続端末の受信電力の最小値、及び(e)可動基地局接続端末の受信電力の最小値を算出し、(d)及び(e)の昇順にi番目(i=1,2)の値(すなわち、i番目に小さい値)を、当該候補パタンの評価値Yiとする(S112)。なお、或る候補パタンにおける既設基地局接続端末とは、各可動基地局20の送信電力調整量が当該候補パタンの通りである場合に、対象既設基地局30に接続する端末50(可動基地局20からの受信電力よりも対象既設基地局30からの受信電力の方が大きい端末50)をいう。また、或る候補パタンにおける可動基地局接続端末とは、各可動基地局20の送信電力調整量が当該候補パタンの通りである場合に、可動基地局20に接続する端末50(対象既設基地局30からの受信電力よりも可動基地局20からの受信電力の方が大きい端末50)をいう。したがって、(d)既設基地局接続端末の受信電力の最小値とは、各既設基地局接続端末における既設基地局30からの受信信号の電力のうちの最小値をいう。(e)可動基地局接続端末の受信電力の最小値とは、各可動基地局接続端末における可動基地局20からの受信信号の電力のうちの最小値をいう。なお、各基地局からの端末50における受信電力は、各基地局と端末50との距離及び各基地局の送信電力等に基づいて算出可能である。
【0053】
図11は、各候補パタンの評価値Yiの算出結果の一例を示す図である。
図11には、評価値Xが最大である候補パタンについて、更に、(d)既設基地局接続端末の受信電力の最小値、(e)可動基地局接続端末の受信電力の最小値、評価値Y1及び評価値Y2が示されている。
【0054】
続いて、選択部15は、変数iに1を代入する(S113)。続いて、選択部15は、評価値Yiが最大である候補パタンが複数である否かを判定する(S114)。評価値Yiが最大である候補パタンが一つである場合(S114でN)、選択部15は、当該候補パタンを選択して(S115)、ステップS119へ進む。
【0055】
一方、評価値Yiが最大である候補パタンが複数である場合(S114でY)、選択部15は、変数iの値がimaxに一致するか否かを判定する(S116)。imaxは、対象既設基地局30及び可動基地局20の総数である。iがimaxに一致しない場合(S116でN)、選択部15は、iに1を加算して(S117)、ステップS114以降を繰り返す。
【0056】
iがi
maxに一致する場合(S116でY)、選択部15は、評価値Yiが最大である候補パタンの中で、
図11における並び順が先頭である(候補パタン番号が最小である)候補パタンを選択して(S118)、ステップS119へ進む。ステップS112以降により、端末50における最低受信信号電力がより高い候補パタンを選択できる。
【0057】
ステップS119において、設定部16は、ステップS111、S115又はS118において選択された候補パタンにおける送信電力調整量を、各可動基地局20に設定する。その結果、各基地局への端末50の接続状態は、例えば、
図12に示されるようになる。
図12では、既設基地局30-2に対して3台の端末50が接続し、既設基地局30-3に対して2台の端末50が接続し、可動基地局20-1に対して3台の端末50が接続し、可動基地局20-2に対して2台の端末50が接続しており、いずれの基地局も混雑していない。
【0058】
上述したように、本実施の形態によれば、各基地局へ接続する端末数の偏りを低減することができる。ひいては、通信品質の改善を期待することができる。
【0059】
なお、基地局がビーコン信号とデータ信号で異なる送信電力を設定できる場合、送信電力を下げる際にデータ信号の信号送信電力は下げず、ビーコン信号の送信電力のみ下げるようにしてもよい。
【0060】
また、可動基地局20を収容するバックホール回線の通信可能エリアを考慮し、可動基地局20の配置候補を予め限定してもよい。
【0061】
また、可動基地局20の高さ方向に対する調整が行える場合、高さ方向についても可動基地局20の配置候補を複数用意してもよい。
【0062】
また、可動基地局20がビーム送信方向を変更できる場合(アナログビームフォーミングの方向や、デジタルビームフォーミングのアンテナパタン選択等)、ビーム送信方向を切り替えた場合によって、更に候補パタンを区別してもよい。
【0063】
また、本実施の形態は、可動基地局20だけでなく、固定基地局の配置等に関して適用されてもよい。例えば、新設される固定基地局に関する配置位置や送信電力の決定に、本実施の形態が適用されてもよい。
【0064】
なお、本実施の形態において、可動基地局20は、第1の基地局の一例である。既設基地局30は、第2の基地局の一例である。制御局10は、基地局制御装置の一例である。
【0065】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 通信システム
10 制御局
11 クラスタリング部
12 配置部
13 生成部
14 算出部
15 選択部
16 設定部
20 可動基地局
40 中継基地局
30 既設基地局
50 端末
100 ドライブ装置
101 記録媒体
102 補助記憶装置
103 メモリ装置
104 CPU
105 インタフェース装置
B バス