(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】EUVリソグラフィ用反射型マスクブランク、EUVリソグラフィ用反射型マスク、およびそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/24 20120101AFI20241217BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
G03F1/24
C23C14/06 N
(21)【出願番号】P 2024068078
(22)【出願日】2024-04-19
(62)【分割の表示】P 2022566893の分割
【原出願日】2021-11-26
【審査請求日】2024-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2020201198
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021174692
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】赤木 大二郎
(72)【発明者】
【氏名】河原 弘朋
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 健一
(72)【発明者】
【氏名】石川 一郎
(72)【発明者】
【氏名】宇野 俊之
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-514651(JP,A)
【文献】特開2015-73013(JP,A)
【文献】特開2014-229825(JP,A)
【文献】特開2019-49720(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0264503(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G03F 1/00~1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、
EUV光を反射する多層反射膜と、
前記多層反射膜の保護膜と、
EUV光を吸収する吸収層とが、この順に形成されたEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクであって、
前記保護膜が、ロジウム(Rh)、または、Rhと、窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)、ホウ素(B)、ルテニウム(Ru)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、ジルコニウム(Zr)およびチタン(Ti)からなる群から選択される少なくとも1つの元素(X)とを含むロジウム系材料からなることを特徴とし、
前記保護膜が、Rhを90at%以上含み、膜密度が10.0~14.0g・cm
-3であり、
前記吸収層が、Ru、Ta、クロム(Cr)、Nb、白金(Pt)、Ir、レニウム(Re)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、金(Au)、Si、アルミニウム(Al)およびハフニウム(Hf)から選択される少なくとも1つの元素を含み、
前記吸収層の膜厚が、20nm以上80nm以下である、EUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
【請求項2】
前記保護膜は、膜厚が1.0nm以上10.0nm以下である、請求項1に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
【請求項3】
前記保護膜表面の表面粗さ(rms)が、0.3nm以下である、請求項1又は2に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
【請求項4】
前記多層反射膜と前記保護膜との間に拡散バリア層を有しており、前記拡散バリア層が、Nb、Ru、Ta、ケイ素(Si)、Zr、TiおよびMoから選択される少なくとも1つの元素を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
【請求項5】
前記多層反射膜と前記保護膜との間に拡散バリア層を有しており、前記拡散バリア層が、Ruを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
【請求項6】
前記拡散バリア層が、さらに、O、N、CおよびBからなる群から選択される少なくとも1つの元素をさらに含む、請求項4又は5に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブラン
ク。
【請求項7】
前記拡散バリア層は、膜厚が0.5nm以上2.0nm以下である、請求項4~6のいずれか1項に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
【請求項8】
前記吸収層が、Ruを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
【請求項9】
前記吸収層が、Ruと、Ta、Cr、Ir、Re、WおよびHfから選択される少なくとも1つの元素とを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
【請求項10】
前記吸収層がさらに、O、N、CおよびBからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
【請求項11】
前記吸収層の上に、エッチングマスク膜を有しており、前記エッチングマスク膜が、Cr、Nb、Ti、Mo、TaおよびSiからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
【請求項12】
前記エッチングマスク膜が、さらに、O、N、CおよびBからなる群から選択される少なくとも1つの元素をさらに含む、請求項11に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクの前記吸収層に、パターンが形成されているEUVリソグラフィ用反射型マスク。
【請求項14】
基板上にEUV光を反射する多層反射膜を形成する工程と、
前記多層反射膜上に保護膜を形成する工程と、
前記保護膜上に、EUV光を吸収する吸収層を形成する工程と、を含み、
前記保護膜が、Rh、または、Rhと、N、O、C、B、Ru、Nb、Mo、Ta、Ir、Pd、ZrおよびTiからなる群から選択される少なくとも1つの元素とを含むロジウム系材料からなることを特徴とし、
前記保護膜が、Rhを90at%以上含み、膜密度が10.0~14.0g・cm
-3であり、
前記吸収層が、Ru、Ta、クロム(Cr)、Nb、白金(Pt)、Ir、レニウム(Re)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、金(Au)、Si、アルミニウム(Al)およびハフニウム(Hf)から選択される少なくとも1つの元素を含み、
前記吸収層の膜厚が、20nm以上80nm以下である、EUVリソグラフィ用反射型マスクブランクの製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクの製造方法によって、製造したEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクにおける吸収層をパターニングして、パターンを形成することを特徴とするEUVリソグラフィ用反射型マスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造等に使用されるEUV(Extreme Ultra Violet:極端紫外)リソグラフィ用反射型マスクブランク(以下、本明細書において、「EUVマスクブランク」という。)、EUVリソグラフィ用反射型マスク、およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体産業において、Si基板等に微細なパターンからなる集積回路を形成する上で必要な微細パターンの転写技術として、可視光や紫外光を用いたフォトリソグラフィ法が使用されてきた。しかし、半導体デバイスの微細化が加速する一方で、従来のフォトリソグラフィ法の限界に近づいてきた。フォトリソグラフィ法の場合、パターンの解像限界は露光波長の1/2程度である。液浸法を用いても露光波長の1/4程度と言われており、ArFレーザ(193nm)の液浸法を用いても20nm以上30nm以下程度が限界と予想される。そこで20nm以上30nm以下以降の露光技術として、ArFレーザよりさらに短波長のEUV光を用いた露光技術のEUVリソグラフィが有望視されている。本明細書において、EUV光とは、軟X線領域または真空紫外線領域の波長の光線を指す。具体的には波長10nm以上20nm以下程度、特に13.5nm±0.3nm程度の光線を指す。
【0003】
EUV光は、あらゆる物質に対して吸収されやすく、かつこの波長で物質の屈折率が1に近い。そのため、従来の可視光または紫外光を用いたフォトリソグラフィのような屈折光学系を使用できない。このため、EUVリソグラフィでは、反射光学系、すなわち反射型マスクとミラーとが使用される。
【0004】
マスクブランクは、フォトマスク製造用に用いられるパターニング前の積層体である。 EUVマスクブランクの場合、ガラス等の基板上にEUV光を反射する多層反射膜と、保護膜と、EUV光を吸収する吸収層と、がこの順で形成された構造を有する。保護膜は、ドライエッチングプロセスにより吸収層に転写パターンを形成する際に、多層反射膜を保護する。保護膜の材料としては、エッチングガスとして、塩素系ガスのようなハロゲン系ガスを用いたドライエッチングのエッチング速度が吸収層よりも遅く、かつこのドライエッチングによりダメージを受けにくい材料として、ルテニウム(Ru)を含む材料が広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特許第6343690号公報
【文献】日本国特許第3366572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、パターンの微細化・高密度化が進む中で、より高解像度のパターンが求められる。高解像度のパターンを得るためには、レジストの膜厚を薄くすることが必要とされる。 しかし、レジストの膜厚を薄くすると、エッチング工程実施中のレジスト膜の消耗により、吸収層へ転写されるパターン精度が低下するおそれがある。
吸収層のエッチング条件に対して耐性を有するエッチングマスク膜を吸収層上に設けることでレジストを薄膜化できることが知られている(特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1に記載のEUVマスクブランクでは、エッチングマスク膜にクロム(Cr)を含む材料が用いられている。特許文献1に記載のEUVマスクブランクでは、エッチングガスとして、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いてドライエッチングを行い、Crを含む材料を用いたエッチングマスク膜を除去する。
【0008】
Ruを含む材料を用いた保護膜は、エッチングガスとして、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングによりエッチングされる(特許文献2参照)。
そのため、エッチングガスとして、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスのような、酸素系ガスを用いたドライエッチングにより、Ruを含む材料を用いた保護膜がダメージを受けるおそれがある。
【0009】
吸収層にCrやルテニウム(Ru)を含む材料が用いられている場合もある。この場合、エッチングガスとして、酸素系ガスを用いたドライエッチングにより吸収層に転写パターンを形成する。そのため、Ruを含む材料を用いた保護膜がダメージを受けるおそれがある。
【0010】
エッチングプロセスにより保護膜がダメージを受けると多層反射膜にもダメージが及ぶ。多層反射膜がダメージを受けると、多層反射膜の反射率の低下など、EUVマスクブランクの光学特性の劣化につながる。
【0011】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決するため、エッチングガスとして、ハロゲン系ガスを用いたドライエッチング、およびエッチングガスとして、酸素系ガスを用いたドライエッチングによる、多層反射膜のダメージが抑制される、EUVマスクブランクの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[1] 基板上に、
EUV光を反射する多層反射膜と、
上記多層反射膜の保護膜と、
EUV光を吸収する吸収層とが、この順に形成されたEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクであって、
上記保護膜が、ロジウム(Rh)、または、Rhと、窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)、ホウ素(B)、ルテニウム(Ru)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、ジルコニウム(Zr)およびチタン(Ti)からなる群から選択される少なくとも1つの元素とを含むロジウム系材料からなることを特徴とするEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
[2] 上記保護膜が、Rhと、N、O、CおよびBからなる群から選択される少なくとも1つの元素とを含む、[1]に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
[3] 上記保護膜が、Rhを40at%以上99at%以下、N、O、CおよびBから選択される群から選択される少なくとも1つの元素を1at%以上60at%以下の範囲で含む、[2]に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
[4] 上記保護膜が、Rhを90at%以上含み、膜密度が10.0~14.0g・cm-3である、[1]に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
[5] 上記保護膜が、Ru、Nb、Mo、Ta、Ir、Pd、Zr、およびTiからなる群から選択される少なくとも1つの元素(X)を、RhとXとの組成比(at%)(Ru:X)で99:1~1:1の範囲で含む、[1]~[4]のいずれかに記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
[6] 上記保護膜は、膜厚が1.0nm以上10.0nm以下である、[1]~[5]のいずれかに記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
[7] 上記保護膜表面の表面粗さ(rms)が、0.3nm以下である、[1]~[6]のいずれかに記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
[8] 上記多層反射膜と上記保護膜との間に拡散バリア層を有しており、上記拡散バリア層が、Nb、Ru、Ta、ケイ素(Si)、Zr、TiおよびMoから選択される少なくとも1つの元素を含む、[1]~[7]のいずれかに記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
[9] 上記拡散バリア層が、さらに、O、N、CおよびBからなる群から選択される少なくとも1つの元素をさらに含む、[8]に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
[10] 上記吸収層が、Ru、Ta、クロム(Cr)、Nb、白金(Pt)、Ir、レニウム(Re)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、金(Au)、Si、アルミニウム(Al)およびハフニウム(Hf)から選択される少なくとも1つの元素を含む、[1]~[9]のいずれかに記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
[11] 上記吸収層がさらに、O、N、CおよびBからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む、[10]に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
[12] 上記吸収層の上に、エッチングマスク膜を有しており、上記エッチングマスク膜が、Cr、Nb、Ti、Mo、TaおよびSiからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む、[1]~[11]のいずれかに記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
[13] 上記エッチングマスク膜が、さらに、O、N、CおよびBからなる群から選択される少なくとも1つの元素をさらに含む、[12]に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
[14] [1]~[13]のいずれかに記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクの上記吸収層に、パターンが形成されているEUVリソグラフィ用反射型マスク。
[15] 基板上にEUV光を反射する多層反射膜を形成する工程と、
上記多層反射膜上に保護膜を形成する工程と、
上記保護膜上に、EUV光を吸収する吸収層を形成する工程と、を含み、
上記保護膜が、Rh、または、Rhと、N、O、C、B、Ru、Nb、Mo、Ta、Ir、Pd、ZrおよびTiからなる群から選択される少なくとも1つの元素とを含むロジウム系材料からなることを特徴とするEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクの製造方法。
[16] [15]に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクの製造方法によって、製造したEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクにおける吸収層をパターニングして、パターンを形成することを特徴とするEUVリソグラフィ用反射型マスクの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明のEUVマスクブランクは、エッチングガスとして、ハロゲン系ガスを用いたドライエッチング、およびエッチングガスとして、酸素系ガスを用いたドライエッチングに対し、エッチング耐性に優れた保護膜を有する。
そのため、エッチングガスとして、ハロゲン系ガスを用いたドライエッチング、およびエッチングガスとして、酸素系ガスを用いたドライエッチングによる、多層反射膜のダメージが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明のEUVマスクブランクの1実施形態を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、本発明のEUVマスクブランクの別の1実施形態を示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、本発明のEUVマスクブランクのさらに別の1実施形態を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、本発明のEUVマスクの1実施形態を示す概略断面図である。
【
図5】
図5は、例1について、酸素系ガスによるドライエッチング処理後のサンプルをTEM観察した結果を示す図である。
【
図6】
図6は、例6について、酸素系ガスによるドライエッチング処理後のサンプルをTEM観察した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明のEUVマスクブランクを説明する。
図1は、本発明のEUVマスクブランクの1実施形態を示す概略断面図である。
図1に示すEUVマスクブランク1aは、基板11上にEUV光を反射する多層反射膜12と、多層反射膜12の保護膜13と、EUV光の吸収する吸収層14とが、この順に形成されている。
【0016】
以下、EUVマスクブランク1aの個々の構成要素を説明する。
【0017】
基板11は、EUVマスクブランク用の基板としての特性を満たす。そのため、基板11は、低熱膨張係数(具体的には、20℃における熱膨張係数が0±0.05×10-7/℃が好ましく、特に好ましくは0±0.03×10-7/℃)を有し、平滑性、平坦度、および酸または塩基を用いる洗浄液への耐性に優れる。基板11としては、具体的には低熱膨張係数を有するガラス、例えばSiO2-TiO2系ガラス等を用いるが、これに限定されず、β石英固溶体を析出した結晶化ガラスや石英ガラスやシリコンや金属等の基板も使用できる。
基板11は、表面粗さ(rms)0.15nm以下の平滑な表面と100nm以下の平坦度を有すると、パターン形成後の反射型マスクにおいて高反射率および転写精度が得られるため好ましい。
基板11の大きさや厚さ等はマスクの設計値等により適宜決定される。後で示す実施例では外形6インチ(152mm)角で、厚さ0.25インチ(6.3mm)のSiO2-TiO2系ガラスを使用した。
基板11の多層反射膜12が形成される側の表面に欠点が存在しないのが好ましい。しかし、欠点が存在していても、凹状欠点および/または凸状欠点によって位相欠点が生じなければよい。具体的には、凹状欠点の深さおよび凸状欠点の高さが2nm以下、かつこれら凹状欠点および凸状欠点の半値幅が60nm以下が好ましい。凹状欠点の半値幅とは、凹状欠点の深さの1/2深さ位置での幅を指す。凸状欠点の半値幅とは、凸状欠点の高さの1/2高さ位置での幅を指す。
【0018】
多層反射膜12は、高屈折率層と低屈折率層を交互に複数回積層させることにより、高EUV光線反射率を達成する。多層反射膜12において、高屈折率層には、Moが広く使用され、低屈折率層にはSiが広く使用される。すなわち、Mo/Si多層反射膜が最も一般的である。但し、多層反射膜はこれに限定されず、Ru/Si多層反射膜、Mo/Be多層反射膜、Mo化合物/Si化合物多層反射膜、Si/Mo/Ru多層反射膜、Si/Mo/Ru/Mo多層反射膜、Si/Ru/Mo/Ru多層反射膜も使用できる。
【0019】
多層反射膜12は、反射型マスクブランクの多層反射膜として所望の特性を有するものである限り特に限定されない。ここで、多層反射膜12に特に要求される特性は、高EUV光線反射率である。具体的には、EUV光の波長域の光線を入射角6度で多層反射膜12表面に照射した際に、波長13.5nm付近の光線反射率の最大値が60%以上が好ましく、65%以上がより好ましい。
【0020】
多層反射膜12を構成する各層の膜厚および層の繰り返し単位の数は、使用する膜材料および多層反射膜に要求されるEUV光線反射率に応じて適宜選択できる。Mo/Si多層反射膜を例にとると、EUV光線反射率の最大値が60%以上の多層反射膜12とするには、多層反射膜は膜厚2.3±0.1nmのMo層と、膜厚4.5±0.1nmのSi層とを繰り返し単位数が30以上60以下になるように積層させればよい。
【0021】
なお、多層反射膜12を構成する各層は、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法など、周知の成膜方法を用いて所望の厚さになるように成膜すればよい。例えば、イオンビームスパッタリング法を用いてSi/Mo多層反射膜を形成する場合、ターゲットとしてSiターゲットを用い、スパッタガスとして、Arガス(ガス圧1.3×10-2Pa以上2.7×10-2Pa以下)を使用して、イオン加速電圧300V以上1500V以下、成膜速度0.030nm/sec以上0.300nm/sec以下で厚さ4.5nmになるようにSi層を成膜し、次に、ターゲットとしてMoターゲットを用い、スパッタガスとして、Arガス(ガス圧1.3×10-2Pa以上2.7×10-2Pa以下)を使用して、イオン加速電圧300V以上1500V以下、成膜速度0.030nm/sec以上0.300nm/sec以下で厚さ2.3nmになるようにMo層を成膜するのが好ましい。これを1周期として、Si層およびMo層を40周期以上50周期以下積層することによりSi/Mo多層反射膜が成膜される。
【0022】
多層反射膜12表面の酸化を防止するため、多層反射膜12の最上層は酸化されにくい材料の層が好ましい。酸化されにくい材料の層は多層反射膜12のキャップ層として機能する。キャップ層として機能する酸化されにくい材料の層の具体例としては、Si層を例示できる。多層反射膜12がSi/Mo膜の場合、最上層をSi層とすれば、該最上層がキャップ層として機能する。その場合キャップ層の膜厚は、11±2nmが好ましい。
【0023】
本発明における保護膜13は、ロジウム(Rh)、または、Rhと、窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)、ホウ素(B)、ルテニウム(Ru)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、ジルコニウム(Zr)およびチタン(Ti)からなる群から選択される少なくとも1つの元素とを含むロジウム系材料からなる。Rhまたはロジウム系材料からなる保護膜は、エッチングガスとしてハロゲン系ガスを用いたドライエッチング(以下、「ハロゲン系ガスによるドライエッチング」と記載する場合がある。)、およびエッチングガスとして酸素系ガスを用いたドライエッチング(以下、「酸素系ガスによるドライエッチング」と記載する場合がある。)のいずれを実施した場合もエッチング速度が低い。そのため、吸収層14にパターン形成する際に広く用いられるハロゲン系ガスによるドライエッチング、およびエッチングマスク膜の除去や、後述するルテニウム(Ru)系材料を用いた吸収層14にパターン形成する際に用いられる酸素系ガスによるドライエッチングのいずれに対しても優れた耐性を示す。
ハロゲン系ガスによるドライエッチングとは、Cl2、SiCl4、CHCl3、CCl4、BCl3等の塩素系ガスおよびこれらの混合ガスを用いたドライエッチング、ならびにCF4、CHF3、SF6、BF3、XeF2等のフッ素系ガスおよびこれらの混合ガスを用いたドライエッチングを指す。
酸素系ガスによるドライエッチングとは、酸素ガスを用いたドライエッチング、および酸素ガスとハロゲン系ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングを指す。ハロゲン系ガスとしては、上記の塩素系ガスおよびそれらの混合ガス、ならびに、上記のフッ素系ガスおよびそれらの混合ガスを用いる。
【0024】
なお、ハロゲン系ガスによるドライエッチングに対する保護膜13の耐性、および酸素系ガスによるドライエッチングに対する保護膜13の耐性は、下記式により求まる吸収層14に対するエッチング選択比により評価できる。
エッチング選択比
= 保護膜13のエッチング速度/吸収層14のエッチング速度
保護膜13は、ハロゲン系ガスによるドライエッチング、および酸素系ガスによるドライエッチングのいずれについても、吸収層14に対するエッチング選択比が1/5以下が好ましい。
【0025】
保護膜13は、EUVリソグラフィにおいて、レジストの洗浄液として使用される硫酸過水(SPM)に対し耐性を有することが求められる。Rhまたはロジウム系材料からなる保護膜は、SPMに対する耐性に優れる。
【0026】
EUVマスクブランクは、多層反射膜12の上に保護膜13を設けた状態でも高EUV光線反射率を達成することが求められる。具体的には、多層反射膜12の上に保護膜13を設けた状態でも波長13.5nm付近の光線反射率の最大値が60%以上が好ましく、65%以上がより好ましい。Rhまたはロジウム系材料からなる保護膜は、EUV光の波長域における屈折率および消衰係数が低い。そのため、上記のEUV光線反射率を達成できる。
【0027】
Rhからなる保護膜13は、ハロゲン系ガスによるドライエッチング、および酸素系ガスによるドライエッチングに対する耐性に特に優れる。
【0028】
Rhと、Ru、Nb、Mo、Ta、Ir、Pd、ZrおよびTiからなる群から選択される少なくとも1つの元素(X)を含むロジウム系材料からなる保護膜13はRhと元素Xとの合金膜である。Rhと元素Xとの合金膜は、Rhからなる保護膜に比べて、ハロゲン系ガスによるドライエッチング、および酸素系ガスによるドライエッチングに対する耐性が低くなるが、多層反射膜12の上に保護膜13を設けた状態でのEUV光線反射率が向上する。元素Xとしては、Ru、Nb、MoおよびZrが、多層反射膜12の上に保護膜13を設けた状態でのEUV光線反射率が向上するため好ましい。
Rhと元素Xとの合金膜は、Rhおよび元素Xを、RhとXとの組成比(at%)(Ru:X)で99:1~1:1の範囲で含むことが好ましい。RhとXとの組成比(at%)で99:1よりもXが多いと、多層反射膜12の上に保護膜13を設けた状態でのEUV光線反射率が向上する。RhとXとの組成比(at%)で1:1よりもXが少ないと、ハロゲン系ガスによるドライエッチング、および酸素系ガスによるドライエッチングに対する耐性に優れる。Rhと元素Xとの合金膜は、Rhおよび元素Xを、RhとXとの組成比(at%)(Ru:X)は、10:3~1:1の範囲で含むことが好ましい。
【0029】
なお、酸素系ガスによるドライエッチングとして、酸素ガスとハロゲン系ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングを実施する場合、酸素ガスとハロゲン系ガスとの混合比を変化させても、RhまたはRh系材料からなる保護膜のエッチング速度は大きく変化しない。したがって、吸収層14のエッチング速度が最大となるように、酸素ガスとハロゲン系ガスとの混合比を調節することで、吸収層14に対するエッチング選択比を小さくすることができる。
【0030】
本発明における保護膜13は、Rh、または、Rhおよび元素Xに加えて、N、O、CおよびBからなる群から選択される少なくとも1つの元素Yを含んでいてもよい。元素Yを含むと、ハロゲン系ガスによるドライエッチング、および酸素系ガスによるドライエッチングに対する耐性が低くなるが、膜の結晶性が低くなり、膜の結晶状態がアモルファス構造または微結晶構造となる。これにより、保護膜の平滑性が向上する。膜の結晶状態がアモルファス構造または微結晶構造であることは、X線回折(XRD)法によって確認することができる。膜の結晶状態がアモルファス構造であるか、または微結晶構造であれば、XRD測定により得られる回折ピークにシャープなピークが見られない。
元素YとしてN、O、CおよびBから選択される群から選択される少なくとも1つの元素を含む場合、RhまたはRhおよび元素Xの合計を40at%以上99at%以下、N、O、CおよびBから選択される群から選択される少なくとも1つの元素を合計で1at%以上60at以下%で含むことが好ましく、RhまたはRhおよび元素Xの合計を80at%以上99at%以下、N、O、CおよびBから選択される群から選択される少なくとも1つの元素を合計で1at%以上20at%以下で含むことがより好ましい。
【0031】
また、保護膜13が、Rhを90at%以上含み、膜密度が10.0~14.0g・cm-3である場合も、膜の結晶性が低くなり、膜の結晶状態がアモルファス構造または微結晶構造となる。これにより、保護膜の平滑性が向上する。なお、この場合、保護膜13は、Rh以外に元素Xおよび/または元素Yを含有する。保護膜13の膜密度は11.0~13.0g・cm-3が好ましい。保護膜13がRhを100at%で含む場合、すなわち、保護膜13がRhからなる場合も、膜密度が11.0~12.0g・cm-3の範囲であれば、膜の結晶性が低くなり、膜の結晶状態がアモルファス構造または微結晶構造となる。これにより、平滑性が向上する。
なお、保護膜13の膜密度は、後述する実施例ではX線反射率法を用いて測定したが、これに限定されず、例えば、ラザフォード後方散乱分光法により測定した面密度と透過電子顕微鏡により測定した膜厚との比で密度を算出することも可能である。
【0032】
保護膜13は、膜厚が1.0nm以上10.0nm以下が好ましく、2.0nm以上3.5nm以下がより好ましい。
【0033】
保護膜13は表面平滑性に優れることが好ましい。保護膜13は表面平滑性に優れていると、保護膜13上に形成される吸収層14の表面平滑性が向上する。保護膜表面の表面粗さ(rms)は、0.3nm以下が好ましく、0.1nm以下がより好ましい。保護膜表面の表面粗さ(rms)は、0.001nm以上が好ましく、0.01nm以上がより好ましい。
【0034】
保護膜13は、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法等の周知の成膜方法を用いて成膜する。例えば、DCスパッタリング法を用いて、Rh膜を形成する場合、ターゲットとして、Rhターゲットを用い、スパッタガスとしてArガス(ガス圧1.0×10-2Pa以上1.0×100Pa以下)を使用して、ターゲット面積当たりの投入電力密度1.0W/cm2以上8.5W/cm2以下、成膜速度0.020nm/sec以上1.000nm/sec以下で厚さ1nm以上10nm以下となるように成膜するのが好ましい。なお、Rh膜を形成する場合、スパッタガスとしてN2ガス、もしくは、ArガスとN2の混合ガス(混合ガス中のN2ガスの体積比(N2/(Ar+N2))=0.05以上1.0以下)、ガス圧1.0×10-2Pa以上1.0×100Pa以下)を使用してもよい。
DCスパッタリング法を用いて、RhO膜を形成する場合、ターゲットとして、Rhターゲットを用い、スパッタガスとしてO2ガス、もしくは、ArガスとO2の混合ガス(混合ガス中のO2ガスの体積比(O2/(Ar+O2))=0.05以上1.0以下)、ガス圧1.0×10-2Pa以上1.0×100Pa以下)を使用して、ターゲット面積当たりの投入電力密度1.0W/cm2以上8.5W/cm2以下、成膜速度0.020nm/sec以上1.000nm/sec以下で厚さ1nm以上10nm以下となるように成膜するのが好ましい。DCスパッタリング法を用いて、RhRu膜を形成する場合、ターゲットとして、RhターゲットおよびRuターゲット、またはRhRuターゲットを用い、スパッタガスとしてArガス(ガス圧1.0×10-2Pa以上1.0×100Pa以下)を使用して、ターゲット面積当たりの投入電力密度1.0W/cm2以上8.5W/cm2以下、成膜速度0.020nm/sec以上1.000nm/sec以下で厚さ1nm以上10nm以下となるように成膜するのが好ましい。
【0035】
吸収層14は、Ru、Ta、クロム(Cr)、Nb、白金(Pt)、Ir、レニウム(Re)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、金(Au)、Si、アルミニウム(Al)およびハフニウム(Hf)から選択される少なくとも1つの元素を含むことが好ましい。
【0036】
バイナリマスク用の吸収層14の場合、吸収層14は、Ta、Nb、Pt、Ir、ReおよびCrから選択される少なくとも1つの元素を含むことが好ましく、TaおよびNbから選択される少なくとも1つの元素を含むことがより好ましく、Taを含むことがさらに好ましい。吸収層14がTaおよびNbの少なくとも一方を含む場合は、ハロゲン系ガスによるドライエッチングにより転写パターンを形成するのが好ましく、ハロゲン系ガスによるドライエッチングとして、塩素系ガスを用いてドライエッチングを実施することがより好ましい。また、吸収層14がPtおよびIrの少なくとも一方を含む場合、ハロゲン系ガスによるドライエッチングにより転写パターンを形成するのが好ましく、ハロゲン系ガスとしてフッ素系ガスの使用が好ましい。吸収層14がCrおよびReの少なくとも一方を含む場合は、酸素系ガスによるドライエッチングにより転写パターンを形成するのが好ましく、酸素系ガスによるドライエッチングとして、酸素ガスと塩素系ガスとの混合ガスを用いてドライエッチングを実施することがより好ましい。
【0037】
位相シフトマスク用の吸収層14の場合、吸収層14は、Ruを含むことが好ましく、さらにTa、Cr、Ir、Re、WおよびHfから選択される少なくとも1つの元素を含むことがより好ましい。Ruと上記元素とを含む場合、Ruと上記元素とが合金をなす。Ruと、Ta、Cr、Ir、Re、WおよびHfから選択される少なくとも一つの元素とを含むRu合金の場合、Ruに対する上記元素の含有量により、EUV光線反射率を制御できるため、所望のEUV光線反射率になるように上記元素の含有量を調節できる。一方で、Ruに対する上記元素の含有量が多すぎると、EUV光の波長域における屈折率nが大きくなり、位相を反転するのに必要な膜厚が厚くなってしまうため、上記元素の含有量はRuに対して50at%以下が好ましい。なお、Ru合金が上記元素を2種以上含む場合、上記元素の含有量は、2種以上の元素の合計含有量を指す。
吸収層14が、Ruを含む、または、RuとTa、Cr、Ir、Re、WおよびHfから選択される少なくとも一つの元素を含むRu合金を含む場合、酸素系ガスによるドライエッチングにより転写パターンを形成するのが好ましく、酸素系ガスによるドライエッチングとして、酸素ガスとハロゲン系ガスとの混合ガスを用いてドライエッチングを実施することがより好ましい。酸素系ガス中の酸素ガスとハロゲン系ガスの混合比により吸収層14のエッチング速度を調節できる。酸素ガスとハロゲン系ガスの混合比は、酸素ガスとハロゲン系ガスの体積比(酸素ガス:ハロゲン系ガス)が、好ましくは10:90~50:50であり、より好ましくは20:80~40:60である。また、Ru合金がTa、Cr、IrおよびWから選択される少なくとも1つの元素を含む場合は、ハロゲン系ガスとして、フッ素系ガスを用いるのが好ましい。
【0038】
バイナリマスク用の吸収層14および位相シフトマスク用の吸収層14のいずれの場合も、吸収層14は、上記の元素の他に、O、N、CおよびBからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含んでもよい。これらの元素を含むことで、膜の結晶性が低くなり吸収層の表面平滑性が向上する。O、NおよびBからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含むことがより好ましく、OおよびNからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含むことがさらに好ましい。
バイナリマスク用の吸収層14としては、例えば、TaとNを含むTaN膜が挙げられる。位相シフトマスク用の吸収層14としては、例えば、RuとOとNを含むRuON膜が挙げられる。
【0039】
バイナリマスク用の吸収層14および位相シフトマスク用の吸収層14のいずれの場合も、吸収層14の膜厚は、20nm以上80nm以下が好ましく、30nm以上70nm以下がより好ましく、40nm以上60nm以下がさらに好ましい。
【0040】
バイナリマスク用の吸収層14および位相シフトマスク用の吸収層14のいずれの場合も、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法等の周知の成膜方法を用いて成膜する。
例えば、マグネトロンスパッタリング法を用いてTaN膜を形成する場合、ターゲットとして、Taターゲットを用い、スパッタガスとして、ArおよびN2の混合ガス(ガス圧1.0×10-1Pa以上50×10-1Pa以下)を使用して投入電力密度1.0W/cm2以上8.5W/cm2以下、成膜速度0.020nm/sec以上1.000nm/sec以下で厚さ20nm以上80nm以下となるように成膜するのが好ましい。
マグネトロンスパッタリング法を用いて、RuON膜を形成する場合、ターゲットとして、Ruターゲットを用い、スパッタガスとして、Ar、O2およびN2を含む混合ガス(ガス圧1.0×10-2Pa以上1.0×100Pa以下)を使用して投入電力密度1.0W/cm2以上8.5W/cm2以下、成膜速度0.020nm/sec以上1.000nm/sec以下で厚さ20nm以上80nm以下となるように成膜するのが好ましい。
マグネトロンスパッタリング法を用いて、RuN膜を形成する場合、ターゲットとして、Ruターゲットを用い、スパッタガスとして、ArおよびN2の混合ガス(ガス圧1.0×10-2Pa以上1.0×100Pa以下)を使用して投入電力密度1.0W/cm2以上8.5W/cm2以下、成膜速度0.020nm/sec以上1.000nm/sec以下で厚さ20nm以上80nm以下となるように成膜するのが好ましい。
マグネトロンスパッタリング法を用いて、RuB膜を形成する場合、ターゲットとして、RuターゲットおよびBターゲットを用い、またはRuB化合物ターゲットを用い、スパッタガスとして、Arガス(ガス圧1.0×10-2Pa以上1.0×100Pa以下)を使用して投入電力密度0.1W/cm2以上8.5W/cm2以下、成膜速度0.010nm/sec以上1.000nm/sec以下で厚さ20nm以上80nm以下となるように成膜するのが好ましい。
マグネトロンスパッタリング法を用いて、RuTa膜を形成する場合、ターゲットとして、RuターゲットおよびTaターゲット、またはRuTa化合物ターゲットを用い、スパッタガスとして、Arガス(ガス圧1.0×10-2Pa以上1.0×100Pa以下)を使用して投入電力密度0.1W/cm2以上8.5W/cm2以下、成膜速度0.020nm/sec以上1.000nm/sec以下で厚さ20nm以上80nm以下となるように成膜するのが好ましい。
マグネトロンスパッタリング法を用いて、RuW膜を形成する場合、ターゲットとして、RuターゲットおよびWターゲット、またはRuW化合物ターゲットを用い、スパッタガスとして、Arガス(ガス圧1.0×10-2Pa以上1.0×100Pa以下)を使用して投入電力密度0.1W/cm2以上8.5W/cm2以下、成膜速度0.020nm/sec以上1.000nm/sec以下で厚さ20nm以上80nm以下となるように成膜するのが好ましい。
マグネトロンスパッタリング法を用いて、RuCr膜を形成する場合、ターゲットとして、RuターゲットおよびCrターゲット、またはRuCr化合物ターゲットを用い、スパッタガスとして、Arガス(ガス圧1.0×10-2Pa以上1.0×100Pa以下)を使用して投入電力密度0.1W/cm2以上8.5W/cm2以下、成膜速度0.020nm/sec以上1.000nm/sec以下で厚さ20nm以上80nm以下となるように成膜するのが好ましい。
【0041】
バイナリマスク用の吸収層14として好適なTaを含む吸収層は、ハロゲン系ガスによるドライエッチングにより転写パターンを形成できる。
位相シフトマスク用の吸収層14として好適なRuを含む吸収層は、酸素系ガスによるドライエッチングにより転写パターンを形成できる。
【0042】
図2は、本発明のEUVマスクブランクの別の1実施形態を示す概略断面図である。
図2に示すEUVマスクブランク1bは、基板11上に多層反射膜12と、拡散バリア層15と、保護膜13と、吸収層14とが、この順に形成されている。
EUVマスクブランク1bの構成要素のうち、基板11、多層反射膜12、保護膜13、および吸収層14は、上記したEUVマスクブランク1aと同様であるので省略する。
【0043】
保護膜13のRhまたはロジウム系材料が多層反射膜12の最上層(Si層)へと拡散するとEUV反射率が低下するおそれがある。拡散バリア層15を設けることで、保護膜13のRhまたはロジウム系材料が多層反射膜12の最上層(Si層)へと拡散するのを抑制できる。
拡散バリア層15は、Nb、Ru、Ta、Si、Zr、TiおよびMoから選択される少なくとも1つの元素を含むことが好ましく、Nb,SiおよびRuから選択される少なくとも1つの元素を含むことがより好ましい。
【0044】
拡散バリア層15は、上記の元素の他に、O、N、CおよびBからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含んでもよい。これらの元素を含むことで、保護膜13から多層反射膜12への拡散を抑制するために必要な拡散バリア層15の膜厚を薄くすることができる。O、NおよびBからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含むことがより好ましく、OおよびNからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含むことがさらに好ましい。
【0045】
拡散バリア層15は、膜厚が0.5nm以上2.0nm以下が好ましく、0.5nm以上1.0nm以下がより好ましい。
【0046】
拡散バリア層15は、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法等の周知の成膜方法を用いて成膜する。マグネトロンスパッタリング法によりRu膜を成膜する場合、ターゲットとしてRuターゲットを用い、スパッタガスとしてArガス(ガス圧1.0×10-2Pa以上1.0×100Pa以下)を使用して投入電圧30V以上1500V以下、成膜速度0.020nm/sec以上1.000nm/sec以下で厚さ0.1nm以上2nm以下となるように成膜するのが好ましい。
【0047】
図3は、本発明のEUVマスクブランクのさらに別の1実施形態を示す概略断面図である。
図3に示すEUVマスクブランク1cは、基板11上に多層反射膜12と、保護膜13と、吸収層14と、エッチングマスク膜16とが、この順に形成されている。
EUVマスクブランク1cの構成要素のうち、基板11、多層反射膜12、保護膜13、および吸収層14は、上記したEUVマスクブランク1aと同様であるので省略する。
【0048】
図3に示すEUVマスクブランク1cは、吸収層14上にエッチングマスク膜16を設けることによりレジストを薄膜化できる。
エッチングマスク膜16は、Cr、Nb、Ti、Mo、TaおよびSiからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含むことが好ましい。
バイナリマスク用の吸収層14として好適なTaを含む吸収層の場合、エッチングマスク膜16はCrを含むことが好ましい。
位相シフトマスク用の吸収層14として好適なRuを含む吸収層の場合、エッチングマスク膜16はNbを含むことが好ましい。
【0049】
エッチングマスク膜16は、上記の元素の他に、O、N、CおよびBからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含んでもよい。O、NおよびBからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含むことがより好ましく、OおよびNからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含むことがさらに好ましい。
【0050】
エッチングマスク膜16の膜厚は、2nm以上30nm以下が好ましく、2nm以上25nm以下がより好ましく、2nm以上10nm以下がさらに好ましい。
【0051】
エッチングマスク膜16は公知の成膜方法、例えば、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法により形成できる。
【0052】
本発明のEUVマスクブランク1a~1cは、多層反射膜12、保護膜13、拡散バリア層15、吸収層14、およびエッチングマスク膜16以外に、EUVマスクブランクの分野において公知の機能膜を有してもよい。このような機能膜の具体例としては、例えば、日本国特表2003-501823号公報の記載のような、基板の静電チャッキングを促すために、基板の裏面側に施される高誘電性コーティングが挙げられる。ここで、基板の裏面とは、
図1の基板11において、多層反射膜12が形成されている側とは反対側の面を指す。このような目的で基板の裏面に施す高誘電性コーティングは、シート抵抗が100Ω/□以下となるように、構成材料の電気伝導率と厚さを選択する。高誘電性コーティングの構成材料としては、公知の文献に記載のものから広く選択できる。例えば、日本国特表2003-501823号公報に記載の高誘電率のコーティング、具体的には、シリコン、TiN、モリブデン、クロム、TaSiからなるコーティングを適用できる。高誘電性コーティングの厚さは、例えば10nm以上1000nm以下とできる。
高誘電性コーティングは、公知の成膜方法、例えば、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法といったスパッタリング法、CVD法、真空蒸着法、電解メッキ法を用いて形成できる。
【0053】
本発明のEUVマスクブランクの製造方法は下記工程a)~工程c)を含む。
a)基板上にEUV光を反射する多層反射膜を形成する工程
b)工程a)で形成された多層反射膜上にRhまたはロジウム系材料からなる保護膜を形成する工程
c)工程b)で形成された保護膜上にEUV光を吸収する吸収層を形成する工程
本発明のEUVマスクブランクの製造方法によれば、
図1に示すEUVマスクブランク1aが得られる。
【0054】
図4は、本発明のEUVマスクの1実施形態を示す概略断面図である。
図4に示すEUVマスク2は、
図1に示すEUVマスクブランク1aの吸収層14にパターン(吸収層パターン)140が形成されている。すなわち、基板11上にEUV光を反射する多層反射膜12と、多層反射膜12の保護膜13と、EUV光を吸収する吸収層14と、が、この順に形成されており、吸収層14にパターン(吸収層パターン)140が形成されている。
EUVマスク2の構成要素のうち、基板11、多層反射膜12、保護膜13、および吸収層14は、上記したEUVマスクブランク1aと同様である。
本発明のEUVマスクの製造方法では、本発明のEUVマスクブランクの製造方法によって製造されたEUVマスクブランクの吸収層14をパターニングしてパターンを形成する。本発明のEUVマスクブランクは、保護膜13が、ハロゲン系ガスによるドライエッチング、および酸素系ガスによるドライエッチングに対する耐性に優れているため、吸収層14のパターニング時の多層反射膜12のダメージを抑制できる。
【実施例】
【0055】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。例1~例19のうち、例1~例5、例8~19が実施例であり、例6~例7が比較例である。
【0056】
<例1>
例1では、
図1に示すEUVマスクブランクを作製した。
成膜用の基板として、SiO
2-TiO
2系のガラス基板(外形6インチ(152mm)角、厚さが6.3mm)を使用した。このガラス基板の20℃における熱膨張係数は0.02×10
-7/℃、ヤング率は67GPa、ポアソン比は0.17、比剛性は3.07×10
7m
2/s
2であった。このガラス基板を研磨により、表面粗さ(rms)が0.15nm以下の平滑な表面と100nm以下の平坦度に形成した。
【0057】
基板の裏面側には、マグネトロンスパッタリング法を用いて厚さ100nmのCr膜を成膜することによって、シート抵抗100Ω/□の高誘電性コーティングを施した。
平板形状をした通常の静電チャックに、形成したCr膜を介して基板(外形6インチ(152mm)角、厚さ6.3mm)を固定して、該基板の表面上にイオンビームスパッタリング法を用いてSi膜およびMo膜を交互に成膜することを40周期繰り返すことにより、合計膜厚272nm((4.5nm+2.3nm)×40)のSi/Mo多層反射膜12を形成した。
さらに、Si/Mo多層反射膜上に、DCスパッタリング法を用いてRh膜(膜厚2.5nm)を成膜することにより、保護膜を形成した。保護膜を形成後のEUV光線反射率は、最大で64.5%であった。
【0058】
Si膜、Mo膜およびRh膜の成膜条件は以下の通りである。
<Si膜の成膜条件>
ターゲット:Siターゲット(ホウ素ドープ)
スパッタガス:Arガス(ガス圧2.0×10-2Pa)
電圧:700V
成膜速度:0.077nm/sec
膜厚:4.5nm
<Mo膜の成膜条件>
ターゲット:Moターゲット
スパッタガス:Arガス(ガス圧2.0×10-2Pa)
電圧:700V
成膜速度:0.064nm/sec
膜厚:2.3nm
<Rh膜の成膜条件>
ターゲット:Rhターゲット
スパッタガス:Arガス(ガス圧2.0×10-2Pa)
ターゲット面積当たりの投入電力密度:3.7W/cm2
成膜速度:0.048nm/sec
【0059】
次に、保護膜上に、RuONを含む吸収層(RuON膜)、RuNを含む吸収層(RuN膜)、もしくはTaNを含む吸収層(TaN膜)を、マグネトロンスパッタリング法として、反応性スパッタリング法を用いて成膜した。RuONを含む吸収層(RuON膜)、RuNを含む吸収膜(RuN膜)、および、TaNを含む吸収層(TaN膜)の成膜条件は以下の通りである。
<RuON膜の成膜条件>
ターゲット:Ruターゲット
スパッタガス:ArガスとO2とN2の混合ガス(混合ガス中のO2ガスの体積比(O2/(Ar+O2+N2))=0.17、混合ガス中のN2ガスの体積比(N2/(Ar+O2+N2))=0.17、ガス圧:2.0×10-1Pa)
ターゲット面積当たりの投入電力密度:7.4W/cm2
成膜速度:0.20nm/sec
RuONの組成比(at%)は、Ru:O:N=40:55:5である。
膜厚:52nm
<RuN膜の成膜条件>
ターゲット:Ruターゲット
スパッタガス:ArガスとN2の混合ガス(混合ガス中のN2ガスの体積比(N2/(Ar+N2))=0.17、ガス圧:2.0×10-1Pa)
ターゲット面積当たりの投入電力密度:6.2W/cm2
成膜速度:0.20nm/sec
RuNの組成比(at%)は、Ru:N=98:2である。
膜厚:35nm
<TaN膜の成膜条件>
ターゲット:Taターゲット
スパッタガス:ArガスとN2の混合ガス(混合ガス中のN2ガスの体積比(N2/(Ar+N2))=0.17、ガス圧:2.0×10-1Pa)
ターゲット面積当たりの投入電力密度:4.3W/cm2
成膜速度:0.029nm/sec
膜厚:60nm
または、保護膜上に、RuBを含む吸収層(RuB膜)を、マグネトロンスパッタリング法を用いて成膜した。RuBを含む吸収層(RuB膜)の成膜条件は以下の通りである。
<RuB膜の成膜条件>
ターゲット:Ruターゲット
Bターゲット
スパッタガス:Arガス(ガス圧:2.0×10-1Pa)
Ruターゲット面積当たりの投入電力密度:0.2W/cm2
Bターゲット面積当たりの投入電力密度:10.0W/cm2
成膜速度:0.013nm/sec
RuBの組成比(at%)は、Ru:B=80:20である。
膜厚:35nm
【0060】
上記の手順で得られたEUVマスクブランクに対し、下記のエッチング耐性評価(1)~(3)を実施した。下記評価(1)~(3)は、保護膜上に吸収層を積層していないものやシリコンウエハ上にRh膜を成膜したものも、同様な評価結果が得られる。各例における膜組成は、X線光電子分光分析装置(X-ray Photoelectron Spectroscopy)(アルバック・ファイ社製)を用いて分析した。
【0061】
(1)酸素系ガスとして、酸素ガスと塩素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチング耐性の評価
ICP(誘導結合方式)プラズマエッチング装置の試料台上に、保護膜(Rh膜)が形成された試料を設置し、以下に示す条件でICPプラズマエッチングして、エッチング速度を求めた。また、RuON、RuNまたはRuBを含む吸収層(RuON膜、RuN膜またはRuB膜)が形成された試料を設置し、同様の手順でエッチング速度を求めた。
ICPアンテナバイアス:200W
基板バイアス:40W
トリガー圧力:3.5×100Pa
エッチング圧力:3.0×10-1Pa
エッチングガス:O2とCl2との混合ガス
ガス流量(Cl2/O2):10/10sccm
上記エッチングによって算出されたRh保護膜のエッチング速度は0.4nm/minであった。また、RuON、RuN、RuBを含む吸収層(RuON膜、RuN膜またはRuB膜)のエッチング速度はそれぞれ45.8nm/min、18.3nm/min、12.3nm/minであった。RuON、RuN、RuBを含む吸収層(RuON膜、RuN膜またはRuB膜)に対するRh保護膜のエッチング選択比は8.7×10-3、2.2×10-2、3.3×10-2であり、吸収層(RuON膜、RuN膜またはRuB膜)のエッチング速度に対して十分遅い。したがって、酸素系ガスとして、酸素ガスと塩素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングに対し十分な耐性を有する。
【0062】
上記の手順で基板上にSi/Mo多層反射膜およびRh膜を形成したサンプルを上記と同条件で、60秒間エッチング処理した。エッチング処理前後のサンプルについて、サンプル表面の組成をX線光電子分光分析装置(XPS)を用いて分析した。エッチング処理をする前の組成は、Rh:Si:Mo=81.4:17.3:1.3であり、エッチング処理後のサンプルの組成は、Rh:Si:Mo=81.0:18.4:0.6であった。エッチング前後でサンプルの組成の違いはほとんど見られなかった。なお、SiおよびMoが検出されているのは、XPSは深さ方向の分解能が数nm~10nm程度であるため、Rh膜の下地となるSi膜およびMo膜を検出しているからである。
また。エッチング処理後のサンプルをTEM(transmission electron Microscope)観察を行った結果を
図5に示す。TEM像からもエッチング処理後もRh保護膜が存在していることが確認できた。
【0063】
(2)ハロゲン系ガスとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチング耐性の評価
(1)と同様に、以下に示す条件でICPプラズマエッチングして、エッチング速度を求めた。また、TaNを含む吸収層(TaN膜)が形成された試料を設置し、同様の手順でエッチング速度を求めた。
ICPアンテナバイアス:100W
基板バイアス:40W
トリガー圧力:3.5×100Pa
エッチング圧力:3.0×10-1Pa
エッチングガス:HeとCF4との混合ガス
ガス流量(He/CF4):12/12sccm
上記エッチングによって算出されたRh保護膜のエッチング速度は1.4nm/minであった。また、TaNを含む吸収層(TaN膜)のエッチング速度は22.1nm/minであった。TaNを含む吸収層(TaN膜)に対するRh保護膜のエッチング選択比は0.063であり、吸収層(TaN膜)のエッチング速度に対して十分遅い。したがってハロゲン系ガスとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングに対し十分な耐性を有する。
【0064】
(3)SPM耐性の評価
保護膜(Rh膜)が形成された試料を以下の溶液に浸漬処理し、処理前後の膜厚の変化を調査した。
溶液:濃硫酸:過酸化水素=3:1 (体積比)
溶液温度:100℃
処理時間:20分
浸漬処理後、Rh膜は0.7nm程度膜厚が増加しており、SPM耐性は問題ないことを確認した。
【0065】
<例2>
例2は、保護膜として、Rh膜(膜厚2.5nm)を下記条件で成膜した以外、例1と同様の手順で実施した。
<Rh膜の成膜条件>
ターゲット:Rhターゲット
スパッタガス:ArガスとN2の混合ガス(混合ガス中のN2ガスの体積比(N2/(Ar+N2))=0.31、ガス圧:1.5×10-1Pa)
ターゲット面積当たりの投入電力密度:3.7W/cm2
成膜速度:0.037nm/sec
また、試料台(4インチ石英基板)上に、試料として保護膜(Rh膜)を上記と同条件で成膜した。上記の試料に対して、X線反射率法(XRR(X-ray Reflectometry))を用いた膜密度の測定を行った。Rh膜の膜密度は、11.9g・cm-3であった。この試料について、XRD測定を実施した。得られる回折ピークにシャープなピークが見られず、膜の結晶状態がアモルファス構造であるか、または微結晶構造であることが確認できた。
酸素系ガスとして、酸素ガスと塩素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングのエッチング速度は、0.77nm/minであり、ハロゲン系ガスとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングのエッチング速度は、2.7nm/minであった。RuONを含む吸収層に対するエッチング選択比、TaNを含む吸収層に対するエッチング選択比はそれぞれ0.017、0.12であり、いずれも吸収層のエッチング速度に対して十分遅かった。したがって、酸素系ガスとして、酸素ガスと塩素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチング、およびハロゲン系ガスとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングに対し十分な耐性を有する。
【0066】
<例3>
例3は、保護膜として、RhRu膜(膜厚2.5nm)を下記条件で成膜した以外、例1と同様の手順で実施した。
<RhRu膜の成膜条件>
ターゲット:Rhターゲット
Ruターゲット
スパッタガス:Arガス(ガス圧:2.0×10-1Pa)
Rhターゲット面積当たりの投入電力密度:3.7W/cm2
Ruターゲット面積当たりの投入電力密度:1.5W/cm2
成膜速度:0.58nm/sec
RhRuの組成比(at%)は、Rh:Ru=75:25である。
酸素系ガスとして、酸素ガスと塩素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングのエッチング速度は、1.0nm/minであり、ハロゲン系ガスとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングのエッチング速度は、3.2nm/minであった。RuONを含む吸収層(RuON膜)に対するエッチング選択比、TaNを含む吸収層(TaN膜)に対するエッチング選択比はそれぞれ0.022、0.14であり、いずれも吸収層(RuON膜、TaN膜)のエッチング速度に対して十分遅い。したがって、酸素系ガスとして、酸素ガスと塩素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチング、およびハロゲン系ガスとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングに対し十分な耐性を有する。
【0067】
<例4>
例4は、保護膜として、RhRu膜(膜厚2.5nm)を下記条件で成膜した以外、例1と同様の手順で実施した。
<RhRu膜の成膜条件>
ターゲット:Rhターゲット
Ruターゲット
スパッタガス:Arガス(ガス圧:2.0×10-1Pa)
Rhターゲット面積当たりの投入電力密度:3.7W/cm2
Ruターゲット面積当たりの投入電力密度:4.7W/cm2
成膜速度:0.88nm/sec
RhRuの組成比(at%)は、Rh:Ru=50:50である。
酸素系ガスとして、酸素ガスと塩素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングのエッチング速度は、1.2nm/minであり、ハロゲン系ガスとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングのエッチング速度は、3.7nm/minであった。RuONを含む吸収層(RuON膜)に対するエッチング選択比、TaNを含む吸収層(TaN膜)に対するエッチング選択比はそれぞれ0.026、0.17であり、いずれも吸収層(RuON膜、TaN膜)のエッチングに対して十分遅い。したがって、酸素系ガスとして、酸素ガスと塩素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチング、およびハロゲン系ガスとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングに対し十分な耐性を有する。
【0068】
<例5>
例5は、保護膜として、RhO膜(膜厚2.5nm)を下記条件で成膜した以外、例1と同様の手順で実施した。
<RhO膜の成膜条件>
ターゲット:Rhターゲット
スパッタガス:ArガスとO2の混合ガス(混合ガス中のO2ガスの体積比(O2/(Ar+O2))=0.31、ガス圧:1.5×10-1Pa)
Rhターゲット面積当たりの投入電力密度:3.7W/cm2
成膜速度:0.073nm/sec
RhOの組成比(at%)は、Rh:O=42:58である。
酸素系ガスとして、酸素ガスと塩素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングのエッチング速度は、1.4nm/minであり、ハロゲン系ガスとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングのエッチング速度は、5.0nm/minであった。RuONを含む吸収層(RuON膜)に対するエッチング選択比、TaNを含む吸収層(TaN膜)に対するエッチング選択比はそれぞれ0.030、0.22であり、いずれも吸収層(RuON膜、TaN膜)のエッチング速度に対して十分遅い。したがって、酸素系ガスとして、酸素ガスと塩素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチング、およびハロゲン系ガスとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングに対し十分な耐性を有する。
【0069】
<例6>
例6は、保護膜として、Ru膜(膜厚2.5nm)を下記条件で成膜した以外、例1と同様の手順で実施した。
<Ru膜の成膜条件>
ターゲット:Ruターゲット
スパッタガス:Arガス(ガス圧:2.0×10
-1Pa)
Ruターゲット面積当たりの投入電力密度:6.2W/cm
2
成膜速度:0.053nm/sec
酸素系ガスとして、酸素ガスと塩素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングのエッチング速度は、20.0nm/minであった。RuONを含む吸収層(RuON膜)に対するエッチング選択比は0.44であり、十分ではない。また、上記の手順で基板上にSi/Mo多層反射膜およびRh膜を形成したサンプルを例1と同条件で酸素系ガスを用いて60秒間エッチング処理した。エッチング処理前後のサンプルについて、サンプル表面の組成をXPSを用いて分析した。エッチング処理をする前の組成は、Ru:Si:Mo=89.3:9.9:1.0であり、エッチング処理後の組成は、Ru:Si:Mo=3.8:92.9:3.3であった。エッチング処理後に保護膜のRu膜が消失しており、多層反射膜へのダメージが懸念される。なお、SiおよびMoが検出されているのは、XPSは深さ方向の分解能が数nm~10nm程度であるため、Ru膜の下地となるSi膜およびMo膜を検出しているからである。また。エッチング処理後のサンプルをTEM観察を行った結果を
図6に示す。TEM像からもエッチング処理後、Ru保護膜が消失していることが確認できた。
【0070】
<例7>
例7は、保護膜として、RhSi膜(膜厚2.5nm)を下記条件で成膜した以外、例1と同様の手順で実施した。
<RhSi膜の成膜条件>
ターゲット:Rhターゲット
Siターゲット
スパッタガス:Arガス(ガス圧:2.0×10-1Pa)
Rhターゲット面積当たりの投入電力密度:3.7W/cm2
Siターゲット面積当たりの投入電力密度:6.9W/cm2
成膜速度:0.083nm/sec
RhSiの組成比(at%)は、Rh:Si=60:40である。
酸素系ガスとして、酸素ガスと塩素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングのエッチング速度は、1.2nm/minであり、ハロゲン系ガスとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングのエッチング速度は、7.6nm/minであった。TaNを含む吸収層(TaN膜)に対するエッチング選択比は0.34であり、十分ではない。そのため、TaNを含む吸収層(TaN膜)のエッチングの際に多層反射膜がダメージを受けるおそれがある。
【0071】
<例8>
例8は、吸収層として、RuTaを含む吸収層(RuTa膜)をマグネトロンスパッタを用いて下記条件で成膜した以外は、例1と同様の手順でEUVマスクブランクを作製し、下記のエッチング耐性評価(4)を実施した。下記のエッチング耐性評価(4)は、シリコンウエハ上にRh膜や吸収膜を成膜したものも、同様な評価結果が得られる。各例における膜組成は、X線光電子分光分析装置(X-ray Photoelectron Spectroscopy)(アルバック・ファイ社製)を用いて分析した。
<RuTa膜の成膜条件>
ターゲット:
Ruターゲット
Taターゲット
スパッタガス:Arガス(ガス圧:1.5×10-1Pa)
ターゲット面積当たりの投入電力密度:
Ru:7.5W/cm2
Ta:1.2W/cm2
RuTaの組成比(at%)は、Ru:Ta=82:18である。
成膜速度:0.16nm/sec
膜厚:35nm
【0072】
(4)酸素系ガスとして、酸素ガスとフッ素系ガスとの混合ガスを用いたドライエッチング耐性の評価
エッチング耐性評価(1)と同様に、以下に示す条件でICPプラズマエッチングして、エッチング速度を求めた。また、RuTaを含む吸収層(RuTa膜)が形成された試料を設置し、同様の手順でエッチング速度を求めた。
ICPアンテナバイアス:200W
基板バイアス:40W
トリガー圧力:3.5×100Pa
エッチング圧力:3.0×10-1Pa
エッチングガス:O2とCF4との混合ガス
ガス流量(O2/CF4):4/28sccmの時、上記エッチングによって算出されたRh保護膜のエッチング速度は1.0nm/minであった。また、RuTaを含む吸収層(RuTa膜)のエッチング速度は31.4nm/minであった。RuTaを含む吸収層(RuTa膜)に対するRh保護膜のエッチング選択比は3.3×10-2であり、吸収層(RuTa膜)のエッチング速度に対して十分遅い。したがって、酸素系ガスとして、酸素ガスとフッ素系ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングに対し十分な耐性を有する。
【0073】
<例9>
例9は、吸収層として、RuTaを含む吸収層(RuTa膜)を下記条件で成膜した以外、例8と同様の手順で実施した。
<RuTa膜の成膜条件>
ターゲット:
Ruターゲット
Taターゲット
スパッタガス:Arガス(ガス圧:1.5×10-1Pa)
ターゲット面積当たりの投入電力密度:
Ru:7.5W/cm2
Ta:2.7W/cm2
RuTaの組成比(at%)は、Ru:Ta=67:33である。
成膜速度:0.19nm/sec
膜厚:35nm
ガス流量(O2/CF4):4/28sccmの時、上記エッチングによって算出されたRh保護膜のエッチング速度は1.0nm/minであった。また、RuTaを含む吸収層(RuTa膜)のエッチング速度は14.0nm/minであった。RuTaを含む吸収層(RuTa膜)に対するRh保護膜のエッチング選択比は7.4×10-2であり、吸収層のエッチング速度に対して十分遅い。したがって、酸素系ガスとして、酸素ガスとフッ素系ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングに対し十分な耐性を有する。
【0074】
<例10>
例10は、吸収層として、RuTaを含む吸収層(RuTa膜)を下記条件で成膜した以外、例8と同様の手順で実施した。
<RuTa膜の成膜条件>
ターゲット:
Ruターゲット
Taターゲット
スパッタガス:Arガス(ガス圧:1.5×10-1Pa)
ターゲット面積当たりの投入電力密度:
Ru:7.5W/cm2
Ta:4.7W/cm2
RuTaの組成比(at%)は、Ru:Ta=54:46である。
成膜速度:0.22nm/sec
膜厚:35nm
ガス流量(O2/CF4):8/24sccmの時、上記エッチングによって算出されたRh保護膜のエッチング速度は1.3nm/minであった。また、RuTaを含む吸収層(RuTa膜)のエッチング速度は27.0nm/minであった。RuTaを含む吸収層(RuTa膜)に対するRh保護膜のエッチング選択比は4.8×10-2であり、吸収層(RuTa膜)のエッチング速度に対して十分遅い。したがって、酸素系ガスとして、酸素ガスとフッ素系ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングに対し十分な耐性を有する。
【0075】
<例11>
例11は、吸収層として、RuTaを含む吸収層(RuTa膜)を下記条件で成膜した以外、例8と同様の手順で実施した。
<RuTa膜の成膜条件>
ターゲット:
Ruターゲット
Taターゲット
スパッタガス:Arガス(ガス圧:1.5×10-1Pa)
ターゲット面積当たりの投入電力密度:
Ru:7.0W/cm2
Ta:9.9W/cm2
RuTaの組成比(at%)は、Ru:Ta=37:63である。
成膜速度:0.31nm/sec
膜厚:35nm
ガス流量(O2/CF4):8/24sccmの時、上記エッチングによって算出されるRh保護膜のエッチング速度は1.4nm/minであった。また、RuTaを含む吸収層(RuTa膜)のエッチング速度は15.7nm/minであった。RuTaを含む吸収層(RuTa膜)に対するRh保護膜のエッチング選択比は8.7×10-2であり、吸収層(RuTa膜)のエッチング速度に対して十分遅い。したがって、酸素系ガスとして、酸素ガスとフッ素系ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングに対し十分な耐性を有する。
【0076】
<例12>
例12は、吸収層として、RuWを含む吸収層(RuW膜)をマグネトロンスパッタリング法として、反応性スパッタリング法を用いて下記条件で成膜した以外は下記条件で成膜した以外、例8と同様の手順で実施した。
<RuW膜の成膜条件>
ターゲット:
Ruターゲット
Wターゲット
スパッタガス:Arガス(ガス圧:1.5×10-1Pa)
ターゲット面積当たりの投入電力密度:
Ru:7.5W/cm2
W:0.9W/cm2
RuWの組成比(at%)は、Ru:W=80:20である。
成膜速度:0.16nm/sec
膜厚:35nm
ガス流量(O2/CF4):4/28sccmの時、上記エッチングによって算出されたRh保護膜のエッチング速度は1.1nm/minであった。また、RuWを含む吸収層(RuW膜)のエッチング速度は34.7nm/minであった。RuWを含む吸収層(RuW膜)に対するRh保護膜のエッチング選択比は3.3×10-2であり、吸収層(RuW膜)のエッチング速度に対して十分遅い。したがって、酸素系ガスとして、酸素ガスとフッ素系ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングに対し十分な耐性を有する。
【0077】
<例13>
例13は、吸収層として、RuWを含む吸収層(RuW膜)を下記条件で成膜した以外、例12と同様の手順で実施した。
<RuW膜の成膜条件>
ターゲット:
Ruターゲット
Wターゲット
スパッタガス:Arガス(ガス圧:1.5×10-1Pa)
ターゲット面積当たりの投入電力密度:
Ru:7.5W/cm2
W:2.0W/cm2
RuWの組成比(at%)は、Ru:W=66:34である。
成膜速度:0.18nm/sec
膜厚:35nm
ガス流量(O2/CF4):4/28sccmの時、上記エッチングによって算出されたRh保護膜のエッチング速度は1.1nm/minであった。また、RuWを含む吸収層(RuW膜)のエッチング速度は26.3nm/minであった。RuWを含む吸収層(RuW膜)に対するRh保護膜のエッチング選択比は4.3×10-2であり、吸収層(RuW膜)のエッチング速度に対して十分遅い。したがって、酸素系ガスとして、酸素ガスとフッ素系ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングに対し十分な耐性を有する。
【0078】
<例14>
例14は、吸収層として、RuWを含む吸収層(RuW膜)を下記条件で成膜した以外、例12と同様の手順で実施した。
<RuW膜の成膜条件>
ターゲット:
Ruターゲット
Wターゲット
スパッタガス:Arガス(ガス圧:1.5×10-1Pa)
ターゲット面積当たりの投入電力密度:
Ru:7.5W/cm2
W:3.5W/cm2
RuWの組成比(at%)は、Ru:W=53:47である。
成膜速度:0.21nm/sec
膜厚:35nm
ガス流量(O2/CF4):8/24sccmの時、上記エッチングによって算出されたRh保護膜のエッチング速度は1.4nm/minであった。また、RuWを含む吸収層(RuW膜)のエッチング速度は23.6nm/minであった。RuWを含む吸収層(RuW膜)に対するRh保護膜のエッチング選択比は5.9×10-2であり、吸収層(RuW膜)のエッチング速度に対して十分遅い。したがって、Rh保護膜はRuW吸収膜に対して、十分なエッチング選択比を有する。したがって、酸素系ガスとして、酸素ガスとフッ素系ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングに対し十分な耐性を有する。
【0079】
<例15>
例15は、吸収層として、RuWを含む吸収層(RuW膜)を下記条件で成膜した以外、例12と同様の手順で実施した。
<RuW膜の成膜条件>
ターゲット:
Ruターゲット
Wターゲット
スパッタガス:Arガス(ガス圧:1.5×10-1Pa)
ターゲット面積当たりの投入電力密度:
Ru:7.5W/cm2
W:8.0W/cm2
RuWの組成比(at%)は、Ru:W=30:70である。
成膜速度:0.31nm/sec
膜厚:35nm
ガス流量(O2/CF4):8/24sccmの時、上記エッチングによって算出されたRh保護膜のエッチング速度は1.4nm/minであった。また、RuWを含む吸収層(RuW膜)のエッチング速度は25.6nm/minであった。RuWを含む吸収層(RuW膜)に対するRh保護膜のエッチング選択比は5.5×10-2であり、吸収層(RuW膜)のエッチング速度に対して十分遅い。したがって、酸素系ガスとして、酸素ガスとフッ素系ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングに対し十分な耐性を有する。
【0080】
<例16>
例16は、吸収層として、RuCrを含む吸収層(RuCr膜)をマグネトロンスパッタリング法として、反応性スパッタリング法を用いて下記条件で成膜した以外、例8と同様の手順で実施した。
<RuCr膜の成膜条件>
ターゲット:
Ruターゲット
Crターゲット
スパッタガス:Arガス(ガス圧:1.5×10-1Pa)
ターゲット面積当たりの投入電力密度:
Ru:7.5W/cm2
Cr:0.94W/cm2
RuCrの組成比(at%)は、Ru:Cr=94:6である。
成膜速度:0.16nm/sec
膜厚:35nm
ガス流量(O2/CF4):4/28sccmの時、上記エッチングによって算出されたRh保護膜のエッチング速度は1.1nm/minであった。また、RuCrを含む吸収層(RuCr膜)のエッチング速度は19.1nm/minであった。RuCrを含む吸収層(RuCr膜)に対するRh保護膜のエッチング選択比は5.8×10-2であり、吸収層(RuCr膜)のエッチング速度に対して十分遅い。したがって、酸素系ガスとして、酸素ガスとフッ素系ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングに対し十分な耐性を有する。
【0081】
<例17>
例17は、吸収層として、RuCrを含む吸収層(RuCr膜)を下記条件で成膜した以外、例16と同様の手順で実施した。
<RuCr膜の成膜条件>
ターゲット:
Ruターゲット
Crターゲット
スパッタガス:Arガス(ガス圧:1.5×10-1Pa)
ターゲット面積当たりの投入電力密度:
Ru:7.5W/cm2
Cr:2.1W/cm2
RuCrの組成比(at%)は、Ru:Cr=86:14である。
成膜速度:0.18nm/sec
膜厚:35nm
ガス流量(O2/CF4):4/28sccmの時、上記エッチングによって算出されたRh保護膜のエッチング速度は1.1nm/minであった。また、RuCrを含む吸収層(RuCr膜)のエッチング速度は26.5nm/minであった。RuCrを含む吸収層(RuCr膜)に対するRh保護膜のエッチング選択比は4.2×10-2であり、吸収層(RuCr膜)のエッチング速度に対して十分遅い。したがって、酸素系ガスとして、酸素ガスとフッ素系ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングに対し十分な耐性を有する。
【0082】
<例18>
例18は、吸収層として、RuCrを含む吸収層(RuCr膜)を下記条件で成膜した以外、例16と同様の手順で実施した。
<RuCr膜の成膜条件>
ターゲット:
Ruターゲット
Crターゲット
スパッタガス:Arガス(ガス圧:1.5×10-1Pa)
ターゲット面積当たりの投入電力密度:
Ru:7.5W/cm2
Cr:3.5W/cm2
RuCrの組成比(at%)は、Ru:Cr=77:23である。
成膜速度:0.21nm/sec
膜厚:35nm
ガス流量(O2/CF4):4/28sccmの時、上記エッチングによって算出されたRh保護膜のエッチング速度は1.1nm/minであった。また、RuCrを含む吸収層(RuCr膜)のエッチング速度は36.7nm/minであった。RuCrを含む吸収層(RuCr膜)に対するRh保護膜のエッチング選択比は3.0×10-2であり、吸収層(RuCr膜)のエッチング速度に対して十分遅い。したがって、酸素系ガスとして、酸素ガスとフッ素系ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングに対し十分な耐性を有する。
【0083】
<例19>
例19は、吸収層として、RuCrを含む吸収層(RuCr膜)を下記条件で成膜した以外、例16と同様の手順で実施した。
<RuCr膜の成膜条件>
ターゲット:
Ruターゲット
Crターゲット
スパッタガス:Arガス(ガス圧:1.5×10-1Pa)
ターゲット面積当たりの投入電力密度:
Ru:7.5W/cm2
Cr:8.1W/cm2
RuCrの組成比(at%)は、Ru:Cr=59:41である。
成膜速度:0.29nm/sec
膜厚:35nm
ガス流量(O2/CF4):4/28sccmの時、上記エッチングによって算出されたRh保護膜のエッチング速度は1.1nm/minであった。また、RuCrを含む吸収層のエッチング速度は35.8nm/minであった。RuCrを含む吸収層(RuCr膜)に対するRh保護膜のエッチング選択比は3.0×10-2であり、吸収層(RuCr膜)のエッチング速度に対して十分遅い。したがって、酸素系ガスとして、酸素ガスとフッ素系ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングに対し十分な耐性を有する。
【0084】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは、当業者にとって明らかである。
本出願は、2020年12月3日出願の日本特許出願2020-201198および2021年10月26日出願の日本特許出願2021-174692に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0085】
1a,1b,1c:EUVマスクブランク
2:EUVマスク
11:基板
12:多層反射膜
13:保護膜
14:吸収層
15:拡散バリア層
16:エッチングマスク膜
140:吸収層パターン