(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】積層体、包装材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20241217BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20241217BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241217BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20241217BHJP
C08L 33/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B32B27/00 101
B32B27/32 C
B65D65/40 D BRH
C08L83/04
C08L33/00
(21)【出願番号】P 2024506112
(86)(22)【出願日】2023-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2023007707
(87)【国際公開番号】W WO2023171514
(87)【国際公開日】2023-09-14
【審査請求日】2024-07-02
(31)【優先権主張番号】P 2022037021
(32)【優先日】2022-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100146570
【氏名又は名称】佐武 紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【氏名又は名称】菅谷 英史
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕季
(72)【発明者】
【氏名】岡 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】二川 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】神山 達哉
(72)【発明者】
【氏名】高田 泰廣
(72)【発明者】
【氏名】大原 伸一
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/013136(WO,A1)
【文献】特許第5822048(JP,B2)
【文献】国際公開第2016/068236(WO,A1)
【文献】特開2016-201238(JP,A)
【文献】特開2002-216715(JP,A)
【文献】国際公開第2020/004001(WO,A1)
【文献】特開2012-031382(JP,A)
【文献】特開2010-090274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシール層と、延伸ポリオレフィンフィルムと、コート層と、をこの順に含む積層体の製造方法であって、
前記コート層を、ポリシロキサンセグメント(a1)と、ビニル系重合体セグメント(a2)とを有する複合樹脂(A)と、活性エネルギー線硬化性モノマーを含む組成物を塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化させて形成する、積層体の製造方法。
【請求項2】
前記コート層が、さらに無機粒子(m)を含む請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記複合樹脂(A)と前記無機粒子(m)とが、前記ポリシロキサンセグメント(a1)でシロキサン結合を介して結合している請求項2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記活性エネルギー線硬化性モノマーがビニル系反応基を複数有する多官能ビニル系モノマーを含む請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記活性エネルギー線硬化性モノマーのガラス転移温度が-30℃以上250℃以下である請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
前記組成物の固形分に占める前記活性エネルギー線硬化性モノマーの含有量が1~85質量%である請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項7】
前記活性エネルギー線が電子線である請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項8】
前記延伸ポリオレフィンフィルムと、前記コート層との間に、前記コート層に接して配置されたプライマー層とを有する請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項9】
前記延伸ポリオレフィンフィルムと、前記コート層との間に配置された印刷層を有する請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項10】
前記延伸ポリオレフィンフィルムと前記ヒートシール層との間に配置された接着層と、 前記延伸ポリオレフィンフィルムと前記接着層との間に配置された印刷層とを有する請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の積層体の製造方法により得られる積層体を製袋
する、包装材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクル性、耐熱性に優れ、食品包材に好適な積層体、当該積層体を用いて得られる包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や日用品の包装に用いられる包装材料は通常、未延伸のポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムといったヒートシール性のフィルムと、ポリエステルフィルムやナイロンフィルムとった耐熱性および強度に優れる樹脂フィルムとを、接着剤を用いて貼り合わせた積層体からなる(特許文献1、2)。一方近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、包装材料をリサイクルして使用することが試みられている。しかしながら、上記のような異種の樹脂フィルムを貼り合わせた積層体では種類ごとに樹脂を分離することが難しく、リサイクルに適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-004799号公報
【文献】特開2004-238050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リサイクル性に優れた包材用の積層体としては、内容物から見て外層側に延伸ポリプロピレンや延伸ポリエチレンフィルム等の延伸ポリオレフィンフィルムを用い、内層側(シーラントフィルム)として未延伸ポリプロピレンフィルムや低密度ポリエチレンフィルム等を用いることが考えられる。このような積層体は、積層体全体の殆どをオレフィン樹脂が占めるため、異種の基材を用いた積層体に比べてリサイクル性に優れる。
【0005】
しかしながらオレフィン系フィルムはポリエステルフィルムやナイロンフィルムに比べて耐熱性が低いため、外層側に延伸ポリオレフィンフィルムを用いた積層体は、ポリエステルフィルムやナイロンフィルムを用いた場合と同様のヒートシール温度で製袋すると収縮してしまう。これを避けるために従来よりも低い温度で製袋するには、より長い時間ヒートシールする必要があり、生産性が低下する。
【0006】
本発明はこのような背景に鑑み為されたものであって、リサイクル性、耐熱性に優れた積層体、当該積層体を用いた包装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ヒートシール層と、延伸ポリオレフィンフィルムと、コート層と、をこの順に含み、コート層がポリシロキサンセグメント(a1)と、ビニル系重合体セグメント(a2)とを有する複合樹脂(A)を含む積層体に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の積層体によれば、耐熱性、リサイクル性に優れた積層体、包装材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<積層体>
本発明の積層体は、ヒートシール層と、延伸ポリオレフィンフィルムと、コート層と、をこの順に有する。
【0010】
(延伸ポリオレフィンフィルム)
延伸ポリオレフィンフィルムとしては、高密度ポリエチレンフィルム(HDPE)、一軸延伸ポリエチレンフィルム(MDOPE)、二軸延伸ポリエチレンフィルム(OPE)、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)等が挙げられる。
【0011】
延伸ポリオレフィンフィルムの膜厚は目的に応じて適宜調整され得るが、機械的強度と加工性のバランスから、5μm以上300μm以下であることが好ましい。より好ましくは7μm以上100μm以下である。
【0012】
延伸ポリオレフィンフィルムには、表面処理が施されていてもよい。これにより、隣接する層との密着性を向上することができる。表面処理の方法は特に限定されず、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス及び/ 又は窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理等の物理的処理、並びに化学薬品を用いた酸化処理等の化学的処理が挙げられる。
【0013】
(ヒートシール層)
ヒートシール層は、オレフィン樹脂からなり、熱によって溶融し相互に融着するヒートシール性を有する。具体例としては低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン等のオレフィン樹脂からなるフィルムが挙げられる。ヒートシール層は、延伸ポリオレフィンフィルムと同様の方法で表面処理が施されていてもよい。
【0014】
ヒートシール層の膜厚は15μm以上500μm以下であることが好ましく、20μm以上250μm以下であることがより好ましく、30μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。これにより、ヒートシール性樹脂層のヒートシール性を維持しつつ、本発明の積層体の加工適性や耐突き刺し性を向上させることができる。
【0015】
(コート層)
コート層は、延伸ポリオレフィンフィルム上に直接、または後述する印刷層を介して設けられる。コート層は本発明の積層体を製袋した際には内容物から見て最外層に位置し、製袋時にヒートシールバーが接触する層である。コート層は、ポリシロキサンセグメント(a1)と、ビニル系重合体セグメント(a2)とを有する複合樹脂(A)を含むコーティング剤の硬化塗膜である。積層体の最外層としてこのような層を配置することにより、積層体の耐熱性を向上させることができる。コート層は、延伸ポリオレフィンフィルムの全面に設けられていてもよいし、本発明の積層体を製袋する際にヒートシールバーが接触する部分とその周辺のみに部分的に設けられていてもよい。
【0016】
ポリシロキサンセグメント(a1)は、シラノール基および/または加水分解性シリル基を有するシラン化合物を縮合して得られるセグメントであって、下記一般式(1)および/または一般式(2)で表される構造単位と、シラノール基および/または加水分解性シリル基とを有する。ポリシロキサンセグメント(a1)の含有率が複合樹脂(A)の全固形分量に対して10~90重量%であると、後述する無機粒子(m)と結合が容易になるため好ましい。
【0017】
【0018】
【0019】
上記一般式(1)及び(2)におけるR1、R2及びR3は、それぞれ独立して、-R4-CH=CH2、-R4-C(CH3)=CH2、-R4-O-CO-C(CH3)=CH2、及び-R4-O-CO-CH=CH2、または下記式(3)で表される基からなる群から選ばれる重合性二重結合を有する基(但し、R4は単結合又は炭素原子数1~6のアルキレン基を表す)、炭素原子数が1~6のアルキル基、炭素原子数が3~8のシクロアルキル基、アリール基、炭素原子数が7~12のアラルキル基、エポキシ基を表す。
【0020】
【化3】
(一般式(3)中、nは1から5で表される整数であり、構造Qは、-CH=CH
2または-C(CH
3)=CH
2のいずれかを表す。)
【0021】
上記一般式(1)および/または(2)で表される構造単位は、ケイ素の結合手のうち2または3つが架橋に関与した、三次元網目状のポリシロキサン構造単位である。三次元網目構造を形成しながらも密な網目構造を形成しないので、ゲル化等を生じることもなく保存安定性も良好となる。
【0022】
上記一般式(1)及び(2)において、R4における炭素原子数が1~6のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、ペンチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基、tert-ペンチレン基、1-メチルブチレン基、2-メチルブチレン基、1,2-ジメチルプロピレン基、1-エチルプロピレン基、ヘキシレン基、イソヘシレン基、1-メチルペンチレン基、2-メチルペンチレン基、3-メチルペンチレン基、1,1-ジメチルブチレン基、1,2-ジメチルブチレン基、2,2-ジメチルブチレン基、1-エチルブチレン基、1,1,2-トリメチルプロピレン基、1,2,2-トリメチルプロピレン基、1-エチル-2-メチルプロピレン基、1-エチル-1-メチルプロピレン基等が挙げられる。原料の入手の容易さから単結合または炭素原子数が2~4のアルキレン基が好ましい。
【0023】
炭素原子数が1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、1-エチル-1-メチルプロピル基等が挙げられる。
【0024】
炭素原子数が3~8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0025】
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、4-ビニルフェニル基、3-イソプロピルフェニル基等が挙げられる。
炭素原子数が7~12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0026】
また、R1、R2及びR3の少なくとも1つが重合性二重結合を有する基であると、活性エネルギー線等により硬化させることができ、活性エネルギー線、並びに、シラノール基及び/又は加水分解性シリル基の縮合反応の2つの硬化機構により、得られる硬化物の架橋密度が高くなり、より優れた耐摩耗性、低線膨張を有する硬化物を形成できるため好ましい。
【0027】
重合性二重結合を有する基は、ポリシロキサンセグメント(a1)中に2つ以上存在することが好ましく、3~200個存在することがより好ましく、3~50個存在することが更に好ましい。これにより、より線膨張の低い成形物を得ることができる。具体的には、ポリシロキサンセグメント(a1)中の重合性二重結合の含有率が3~35重量%であれば、延伸ポリオレフィンフィルムよりも線膨張係数を低く設計でき、積層体の耐熱性を向上させることができる。ここで重合性二重結合とは、ビニル基、ビニリデン基もしくはビニレン基のうち、フリーラジカルによる生長反応を行うことができる基の総称である。また、重合性二重結合の含有率とは、ビニル基、ビニリデン基もしくはビニレン基のポリシロキサンセグメント中における重量%を示すものである。
【0028】
重合性二重結合を有する基としては、ビニル基、ビニリデン基、ビニレン基を含有してなる公知の全ての官能基を使用することができるが、中でも-R4-C(CH3)=CH2や-R4-O-CO-C(CH3)=CH2で表される(メタ)アクリロイル基は、活性エネルギー線硬化の際の反応性に富むことや、後述のビニル系重合体セグメント(a2)との相溶性が良好となるため好ましい。
【0029】
また、重合性二重結合を有する基が上記一般式(3)で表される基である場合、式中の構造Qは芳香環にビニル基が複数個結合してもよいことを示している。例えば、芳香環にQが2個結合している場合は、下記構造式(4)のような構造も含まれ得る。
【0030】
【0031】
スチリル基に代表されるような構造には酸素原子が含まれないため、酸素原子を基点とした酸化分解が起こりにくく耐熱分解性が高いため、耐熱性が要求される用途に好適である。これは、嵩高い構造により酸化される反応が阻害されるためだと考えられる。また、耐熱性の向上には、-R4-CH=CH2、-R4-C(CH3)=CH2からなる群から選ばれる重合性二重結合を有する基を有することが好ましい。
【0032】
ポリシロキサンセグメント(a1)において、上記式中R1、R2及びR3の少なくとも1つがエポキシ基であると、熱硬化や活性エネルギー線硬化により硬化させることができ、エポキシ基、並びに、シラノール基及び/又は加水分解性シリル基の縮合反応の2つの硬化機構により、得られる硬化物の架橋密度が高くなり、より優れた低線膨張率を有する硬化物を形成できる。
【0033】
本明細書においてシラノール基とは、珪素原子に直接結合した水酸基を有する珪素含有基である。シラノール基は具体的には、一般式(1)および/または(2)で表される構造単位の、結合手を有する酸素原子が水素原子と結合して生じたシラノール基であることが好ましい。
【0034】
また本明細書において加水分解性シリル基とは、珪素原子に直接結合した加水分解性基を有する珪素含有基であり、例えば、下記一般式(5)で表される基が挙げられる。
【0035】
【化5】
(式(6)中、R
5はアルキル基、アリール基又はアラルキル基等の1価の有機基を、R
6はハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基及びアルケニルオキシ基からなる群から選ばれる加水分解性基である。またbは0~2の整数である。)
【0036】
R5におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、1-エチル-1-メチルプロピル基等が挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、4-ビニルフェニル基、3-イソプロピルフェニル基等が挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0037】
R6において、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、第二ブトキシ基、第三ブトキシ基等が挙げられる。
またアシロキシ基としては、例えば、ホルミルオキシ、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ブタノイルオキシ、ピバロイルオキシ、ペンタノイルオキシ、フェニルアセトキシ、アセトアセトキシ、ベンゾイルオキシ、ナフトイルオキシ等が挙げられる。
アリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ等が挙げられる。
アルケニルオキシ基としては、例えば、ビニルオキシ基、アリルオキシ基、1-プロペニルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、2-ブテニルオキシ基、3-ブテニルオキシ基、2-ペテニルオキシ基、3-メチル-3-ブテニルオキシ基、2-ヘキセニルオキシ基等が挙げられる。
【0038】
R6で表される加水分解性基が加水分解されることにより、一般式(5)で表される加水分解性シリル基はシラノール基となる。加水分解性に優れることから、中でも、メトキシ基およびエトキシ基が好ましい。
また加水分解性シリル基は具体的には、一般式(1)および/または一般式(2)で表される構造単位の、結合手を有する酸素原子が前記加水分解性基と結合もしくは置換されている加水分解性シリル基であることが好ましい。
【0039】
シラノール基や加水分解性シリル基は、シラノール基中の水酸基や加水分解性シリル基中の前記加水分解性基の間で加水分解縮合反応が進行するので、ポリシロキサン構造の架橋密度が高まり、耐摩耗性に優れ、低線膨張である硬化物を形成することができる。
また、シラノール基や加水分解性シリル基を含むポリシロキサンセグメント(a1)と後述のビニル系重合体セグメント(a2)とを、下記一般式(6)で表される結合を介して結合させる際に使用する。
【0040】
【0041】
ポリシロキサンセグメント(a1)は、一般式(1)および/または(2)で表される構造単位と、シラノール基および/または加水分解性シリル基とを有する以外は特に限定はなく、他の基を含んでいてもよい。例えば、一般式(1)におけるR1が重合性二重結合を有する基である構造単位と、一般式(1)におけるR1がメチル等のアルキル基である構造単位とが共存したポリシロキサンセグメント(a1)であってもよいし、一般式(1)におけるR1が重合性二重結合を有する基である構造単位と、一般式(1)におけるR1がメチル基等のアルキル基である構造単位と、一般式(2)におけるR2及びR3がメチル基等のアルキル基である構造単位とが共存したポリシロキサンセグメント(a1)であってもよいし、一般式(1)におけるR1が重合性二重結合を有する基である構造単位と、一般式(2)におけるR2及びR3がメチル基等のアルキル基である構造単位とが共存したポリシロキサンセグメント(a1)であってもよい。
【0042】
ビニル系重合体セグメント(a2)は、ビニル基または(メタ)アクリル基含有モノマーを重合して得られる重合体セグメントであって、ビニル重合体セグメント、アクリル重合体セグメント、ビニル/アクリル共重合体セグメント等が挙げられ、これらは用途により適宜選択することが好ましい。本発明に用いられる複合樹脂(A)は、ビニル系重合体セグメント(a2)を有するため、延伸ポリオレフィンフィルムへの密着性に優れる。
【0043】
アクリル重合体セグメントは、例えば、汎用の(メタ)アクリルモノマーを重合または共重合させて得られる。(メタ)アクリルモノマーとしては特に限定はなく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の炭素原子数が1~22のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート類;ベンジル(メタ)アクリレート、2-フェニルエチル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、4-メトキシブチル(メタ)アクリレート等のω-アルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類;クロトン酸メチル、クロトン酸エチル等のクロトン酸のアルキルエステル類;ジメチルマレート、ジ-n-ブチルマレート、ジメチルフマレート、ジメチルイタコネート等の不飽和二塩基酸のジアルキルエステル類等が挙げられる。
【0044】
ビニル重合体セグメントとしては、具体的には芳香族ビニル重合体セグメント、ポリオレフィン重合体、フルオロオレフィン重合体等が挙げられ、それらの共重合体でも構わない。これらビニル重合体を得るためには、ビニル基含有モノマーを重合すればよく、具体的にはエチレン、プロピレン、1,3-ブタジエン、シクロペンチルエチレン等のα-オレフィン類;スチレン、1-エチニル-4-メチルベンゼン、ジビニルベンゼン、1-エチニル-4-メチルエチルベンゼン、ベンゾニトリル、アクリロニトリル、ptert-ブチルスチレン、4-ビニルビフェニル、4-エチニルベンジルアルコール、2-エチニルナフタレン、フェナントレン-9-エチニル、等の芳香環を有するビニル化合物;フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン等のフルオロオレフィン類等、が好適に使用できる。更に好ましくは、芳香環を有するビニル化合物である、スチレン、p-tert-ブチルスチレンである。
【0045】
ビニル/アクリル共重合体セグメントとしては、これらの(メタ)アクリルモノマーとビニル基含有モノマーを共重合して得られるものが挙げられる。
【0046】
モノマーを共重合させる際の重合方法、溶剤、あるいは重合開始剤にも特に限定はなく、公知の方法によりビニル系重合体セグメント(a2)を得ることができる。例えば、塊状ラジカル重合法、溶液ラジカル重合法、非水分散ラジカル重合法等の種々の重合法により、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート等の重合開始剤を使用してビニル系重合体セグメント(a2)を得ることができる。
【0047】
ビニル系重合体セグメント(a2)の数平均分子量としては、数平均分子量(以下Mnと略す)に換算して500~200,000の範囲であることが好ましく、複合樹脂(A)を製造する際の増粘やゲル化を防止でき、且つ耐久性に優れる。Mnは中でも700~100,000の範囲がより好ましく、1,000~50,000の範囲がさらに好ましい。
【0048】
本明細書において、ビニル重合体セグメント(a2)の数平均分子量は下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
測定装置 :ゲル浸透クロマトグラフ GCP-244(WATERS社製)
カラム :Shodex HFIP 80M 2本(昭和電工(株)製)
溶媒 :ジメチルホルムアミド
流速 :0.5ml/min
温度 :23℃
試料濃度 :0.1% 溶解度:完全溶解 ろ過:マイショリディスク W-13-5
注入量 :0.300ml
検出器 :R-401型示差屈折率器(WATERS)
分子量校正:ポリスチレン(標準品)
【0049】
ビニル系重合体セグメント(a2)は、ポリシロキサンセグメント(a1)と一般式(6)で表される結合により結合された複合樹脂(A)とするために、ビニル系重合体セグメント(a2)中に、炭素原子に直接結合したシラノール基および/または加水分解性シリル基を有する。これらのシラノール基および/または加水分解性シリル基は、複合樹脂(A)中において一般式(6)で表される結合となってしまうために、最終生成物である複合樹脂(A)中のビニル系重合体セグメント(a2)には殆ど存在しない。しかしながらビニル系重合体セグメント(a2)にシラノール基および/または加水分解性シリル基が残存していても何ら問題はなく、複合樹脂(A)を硬化させる際、シラノール基中の水酸基や加水分解性シリル基中の加水分解性基の間で加水分解縮合反応が進行するので、得られる硬化物のポリシロキサン構造の架橋密度が高まり、耐熱性及び耐摩耗性に優れた硬化物を形成することができる。
【0050】
炭素原子に直接結合したシラノール基および/または加水分解性シリル基をビニル系重合体セグメント(a2)に導入するには、具体的には、ビニル系重合体セグメント(a2)を重合する際に、ビニル基重合モノマー及び(メタ)アクリルモノマーに対し、炭素結合に直接結合したシラノール基および/または加水分解性シリル基を含有するビニル系モノマーを併用すればよい。
【0051】
炭素原子に直接結合したシラノール基および/または加水分解性シリル基を含有するビニル系モノマーとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリ(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、2-トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン等が挙げられる。中でも、加水分解反応を容易に進行でき、また反応後の副生成物を容易に除去することができることからビニルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0052】
ビニル系重合体セグメント(a2)は、各種官能基を有していてもよい。例えば重合性二重結合を有する基、エポキシ基、アルコール性水酸基、酸性基等であり、導入するには該当する官能基を有するビニル系モノマーを重合時に配合すればよい。ビニル系重合体セグメント(a2)が酸基を有すると、後述するアルカリ処理を施した際に、コート層がより延伸ポリオレフィンフィルムから剥離しやすくなることから好ましい。
【0053】
エポキシ基を有するビニル系モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、ビニルシクロヘキセンオキシド、グリシジルビニルエーテル、メチルグリシジルビニルエーテルもしくはアリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0054】
アルコール性水酸基を有するビニル系モノマーとしては、例えば、(2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジ-2-ヒドロキシエチルフマレート、モノ-2-ヒドロキシエチルモノブチルフマレート、ポリエチレングルコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、「プラクセルFMもしくはプラクセルFA」〔ダイセル化学(株)製のカプロラクトン付加モノマー〕等の各種α、β-エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類、またはこれらとε-カプロラクトンとの付加物、等が挙げられる。
【0055】
酸性基を含有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、無水マレイン酸、4-メチルシクロヘキセ-4-エン-1,2-ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、1,2,3,4,5,8,9,10-オクタヒドロナフタレン-2,3-ジカルボン酸無水物、2-オクタ-1,3-ジケトスピロ[4.4]ノン-7-エン、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、マレオピマル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、メチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチル―ノルボルネン-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、ノルボルン-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、スルホン化スチレン、ビニルベンゼンスルホンアミド等が挙げられる。
【0056】
コート層の形成に用いられるコーティング剤は、複合樹脂(A)に加えて無機粒子(m)を含んでいてもよい。さらに、複合樹脂(A)と無機粒子(m)とが結合していてもよい。複合樹脂(A)と無機粒子(m)とは、複合樹脂(A)が有するポリシロキサセグメント(a1)でシロキサン結合を介して結合させることができる。コート層中に無機粒子(m)が存在することにより、さらにコート層の耐熱性を向上させることができる。また、複合樹脂(A)と無機粒子(m)とが結合していることで、後述するアルカリ処理を施した際に、コート層がより延伸ポリオレフィンフィルムから剥離しやすくなる効果が期待できる。
【0057】
無機粒子(m)は、本発明の効果を損なわなければとくに限定されないが、ポリシロキサンセグメント(a1)とシロキサン結合を介して結合させる場合には、シロキサン結合を形成しうる官能基を有するものから選ばれる。シロキサン結合を形成しうる官能基とは、水酸基、シラノール基、アルコキシシリル基等、シロキサン結合を形成しうる官能基であれば何でも良い。シロキサン結合を形成しうる官能基は無機粒子(m)自身が有していてもよいし、無機粒子(m)を修飾することで官能基を導入してもよい。無機粒子(m)の修飾方法としては、公知慣用の方法を用いればよく、シランカップリング剤処理や、シロキサン結合を形成しうる官能基を有する樹脂でコーティングを行う等の方法がある。
【0058】
無機粒子(m)としては、例えば、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、シリカ(石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等)等が耐熱性に優れるため好ましい。あるいは窒化ホウ素、窒化アルミ、酸化アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素等が熱伝導性に優れるため好ましい。無機粒子(m)は、単独で使用しても、複数種組み合わせて使用してもかまわない。
【0059】
例えば無機粒子(m)としてシリカを用いる場合、特に限定はなく粉末状のシリカやコロイダルシリカなど公知のシリカ粒子を使用することができる。市販の粉末状のシリカ粒子としては、例えば、日本アエロジル(株)製アエロジル50、200、旭硝子(株)製シルデックスH31、H32、H51、H52、H121、H122、日本シリカ工業(株)製E220A、E220、富士シリシア(株)製SYLYSIA470、日本板硝子(株)製SGフレ-ク等を挙げることができる。市販のコロイダルシリカとしては、例えば、日産化学工業(株)製メタノ-ルシリカゾル、IPA-ST、PGM-ST、NBA-ST、XBA-ST、DMAC-ST、ST-UP、ST-OUP、ST-20、ST-40、ST-C、ST-N、ST-O、ST-50、ST-OL等を挙げることができる。
【0060】
表面修飾をしたシリカ粒子を用いてもよく、例えば、上記で例示したシリカ粒子を、疎水性基を有する反応性シランカップリング剤で表面処理したものや、(メタ)アクリロイル基を有する化合物で修飾したものがあげられる。(メタ)アクリロイル基を有する化合物で修飾した市販の粉末状のシリカとしては、日本アエロジル(株)製アエロジルRM50、R7200、R711等、(メタ)アクリロイル基を有する化合物で修飾した市販のコロイダルシリカとしては、日産化学工業(株)製MIBK-SD、MEK-SD、等、疎水性基を有する反応性シランカップリング剤で表面処理したコロイダルシリカとしては、日産化学工業(株)製MIBK-ST、MEK-ST等が挙げられる。
【0061】
シリカ粒子の形状は特に限定はなく、球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、または不定形状のものを用いることができる。例えば、市販の中空状シリカ粒子としては、日鉄鉱業(株)製シリナックス等を用いることができる。
【0062】
酸化チタン粒子としては、体質顔料のみならず紫外光応答型光触媒が使用でき、例えばアナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタンなどが使用できる。更に、酸化チタンの結晶構造中に異種元素をドーピングさせて可視光に応答させるように設計された粒子についても用いることができる。酸化チタンにドーピングさせる元素としては、窒素、硫黄、炭素、フッ素、リン等のアニオン元素や、クロム、鉄、コバルト、マンガン等のカチオン元素が好適に用いられる。また、形態としては、粉末、有機溶媒中もしくは水中に分散させたゾルもしくはスラリーを用いることができる。市販の粉末状の酸化チタン粒子としては、例えば、日本アエロジル(株)製アエロジルP-25、テイカ(株)製ATM-100等を挙げることができる。また、市販のスラリー状の酸化チタン粒子としては、例えば、テイカ(株)TKD-701等が挙げられる。
【0063】
無機微子(m)の一次粒子径は、5~200nmの範囲が好ましい。5nm以上であると、分散体中の無機粒子(m)が分散良好となり、200nm以内の径であれば、硬化物の強度が良好となる。より好ましくは10nm~100nmである。尚ここでいう「粒径」とは、走査型電子顕微鏡(TEM)などを用いて測定される。
【0064】
無機粒子(m)は、延伸ポリオレフィンフィルムへの密着性と耐熱性とのバランスの観点から複合樹脂(A)と無機粒子(m)との固形分総量に対しての5~90重量%の割合で配合でき、目的に応じて配合量を適時変更すればよい。耐熱性の観点からは、複合樹脂(A)と無機粒子(m)との固形分総量に占める無機粒子(m)の配合量が20質量%以上であることが好ましい。
【0065】
複合樹脂(A)と無機粒子(m)とを結合させる場合、炭素原子に直接結合したシラノール基および/または加水分解性シリル基を有するビニル系重合体セグメント(a2)を合成する工程1と、アルコキシシランと無機粒子(m)とを混合する工程2と、アルコキシシランを縮合反応する工程3とを有することを特徴とする製造方法によって得ることができる。この時、各工程は別々に行ってもよく、同時に行ってもかまわない。例えば、次のような方法で製造することができる。
【0066】
<方法1>
工程1で得られる炭素原子に直接結合したシラノール基および/または加水分解性シリル基を有するビニル系重合体セグメント(a2)と、シラノール基および/または加水分解性シリル基含有シラン化合物と無機粒子(m)とを工程2で同時に混合し、この混合物を工程3においてシラノール基および/または加水分解性シリル基含有シラン化合物の縮合を行い、ポリシロキサンセグメント(a1)の形成と、ビニル系重合体セグメント(a2)及び無機粒子(m)との結合を形成する方法。
【0067】
<方法2>
シラノール基および/または加水分解性シリル基含有シラン化合物と無機粒子(m)とを工程2で混合し、工程3においてシラノール基および/または加水分解性シリル基含有シラン化合物の縮合を行い、ポリシロキサンセグメント(a1)の形成と無機粒子結合を形成したうえで、工程1で得られるシラノール基および/または加水分解性シリル基を有するビニル系重合体セグメント(a2)とポリシロキサンセグメント(a1)無機粒子(m)とを再び工程3にて加水分解縮合させることで結合を形成する方法。
【0068】
工程1は、炭素原子に直接結合したシラノール基および/または加水分解性シリル基を有するビニル系重合体セグメント(a2)を合成する工程である。炭素原子に直接結合したシラノール基および/または加水分解性シリル基をビニル系重合体セグメント(a2)に導入するには、具体的には、ビニル系重合体セグメント(a2)を重合する際に、ビニル基重合モノマー及び(メタ)アクリルモノマーに対し、炭素結合に直接結合したシラノール基および/または加水分解性シリル基を含有するビニル系モノマーを併用すればよい。
【0069】
さらにこの後、上記ビニル系重合体セグメント(a2)にシラノール基および/または加水分解性シリル基を含有するシラン化合物を加水分解縮合することで、炭素原子に直接結合したシラノール基および/または加水分解性シリル基に対し、ポリシロキサンセグメント前駆体を結合させておいても良い。
【0070】
工程2は、シラノール基および/または加水分解性シリル基含有シラン化合物と無機粒子(m)とを混合する工程である。シラン化合物としては後述する汎用のシラノール基および/または加水分解性シリル基含有シラン化合物を使用できる。このとき、ポリシロキサンセグメントに導入したい基がある場合は、導入したい基を有するシラン化合物を併用する。例えばアリール基を導入する場合は、アリール基とシラノール基および/または加水分解性シリル基とを併有するシラン化合物を適宜併用すればよい。また重合性二重結合を有する基を導入する場合は、重合性二重結合を有する基とシラノール基および/または加水分解性シリル基とを併有するシラン化合物を併用すればよい。生成するポリシロキサン中にエポキシ基を導入するためには、シラノール基および/または加水分解性シリル基とを併有するエポキシ基含有シラン化合物を同時に使用すればよい。
【0071】
混合には、公知の分散方法を使用することができる。機械的手段としては、例えば、ディスパー、タービン翼等攪拌翼を有する分散機、ペイントシェイカー、ロールミル、ボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等が挙げられ、均一に混合させるためにはガラスビーズ、ジルコニアビーズ等の分散メディアを使用するビーズミルによる分散が好ましい。
【0072】
ビーズミルとしては、例えば、アシザワ・ファインテック(株)製のスターミル;三井鉱山(株)製のMSC-MILL、SC-MILL、アトライタ MA01SC;浅田鉄工(株)のナノグレンミル、ピコグレンミル、ピュアグレンミル、メガキャッパーグレンミル、セラパワーグレンミル、デュアルグレンミル、ADミル、ツインADミル、バスケットミル、ツインバスケットミル:寿工業(株)製のアペックスミル、ウルトラアペックスミル、スーパーアペックスミル等が挙げられる。
【0073】
工程3は、シラノール基および/または加水分解性シリル基含有シラン化合物を縮合反応する工程である。本工程3によって、シラノール基および/または加水分解性シリル基含有シラン化合物が縮合し、シロキサン結合が生成する。前述のポリシロキサンセグメント(a1)が有するシラノール基および/または加水分解性シリル基と、前述のビニル系重合体セグメント(a2)が有するシラノール基および/または加水分解性シリル基とを脱水縮合反応する場合、一般式(6)で表される結合が生じる。従って一般式(6)中、炭素原子は前記ビニル系重合体セグメント(a2)の一部分を構成し、酸素原子のみに結合したケイ素原子は、ポリシロキサンセグメント(a1)の一部分を構成するものとする。また、シラノール基および/または加水分解性シリル基含有シラン化合物と無機粒子(m)を混合した状態で縮合することで、シラノール基および/または加水分解性シリル基含有シラン化合物と無機粒子(m)の間でシロキサン結合が形成され、ポリシロキサンセグメント(a1)と無機粒子(m)が化学的に結合する。
【0074】
複合樹脂(A)において、ポリシロキサンセグメント(a1)とビニル重合体セグメント(a2)との結合位置は、任意であり、例えば、ポリシロキサンセグメント(a1)がビニル重合体セグメント(a2)の側鎖として化学的に結合したグラフト構造を有する複合樹脂や、ビニル重合体セグメント(a2)とポリシロキサンセグメント(a1)とが化学的に結合したブロック構造を有する複合樹脂等が挙げられる。
【0075】
工程1~工程3で使用するシラノール基および/または加水分解性シリル基含有シラン化合物としては、汎用のシラン化合物が使用可能である。例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ-n-ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、iso-ブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等の各種のオルガノトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ-n-ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等の、各種のジオルガノジアルコキシシラン類;メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシランもしくは等のクロロシラン類が挙げられる。
【0076】
また、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランもしくはテトラn-プロポキシシランなどの4官能アルコキシシラン化合物や該4官能アルコキシシラン化合物の部分加水分解縮合物を、本発明の効果を損なわない範囲で併用することもできる。4官能アルコキシシラン化合物又はその部分加水分解縮合物を併用する場合には、ポリシロキサンセグメント(a1)を構成する全珪素原子に対して、該4官能アルコキシシラン化合物の有する珪素原子が、20モル%を超えない範囲となるように併用することが好ましい。
【0077】
また、ホウ素、チタン、ジルコニウムあるいはアルミニウムなどの珪素原子以外の金属アルコキシド化合物を、本発明の効果を損なわない範囲で併用することもできる。例えば、ポリシロキサンセグメント(a1)を構成する全珪素原子に対して、上述の金属アルコキシド化合物の有する金属原子が25モル%を超えない範囲で併用することが好ましい。
【0078】
ポリシロキサンセグメント(a1)を形成するときに使用するシラノール基および/または加水分解性シリル基含有シラン化合物中において、炭素原子数が1~4のアルキル基を有するモノアルキルトリアルコキシシランが40モル%以上であると、ポリシロキサンセグメント(a1)の加水分解縮合が進行しやすく、結合がより強固になるため耐熱性に優れ、好ましい。モノアルキルトリアルコキシシランにおいて、アルコキシ基の炭素原子数が1~4であると好ましく、アルキル基の炭素原子数が1~2であると、より好ましい。
【0079】
炭素原子数が1~4のアルキル基を有するモノアルキルトリアルコキシシランとしては、具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ-n-ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ-n-ブトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシランもしくはブチルトリエトキシシラン等が挙げられ、好ましくはメチルトリメトキシシランである。
【0080】
また、重合性二重結合を有する基を導入する際に使用する重合性二重結合を有する基とシラノール基および/または加水分解性シリル基とを併有するシラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリ(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、2-トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン等を併用する。中でも、加水分解反応を容易に進行でき、また反応後の副生成物を容易に除去することができることからビニルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0081】
また、ポリシロキサンセグメント(a1)にエポキシ基を導入するには、エポキシ基含有シラン化合物を使用すればよい。エポキシ基含有シラン化合物としては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリアセトキシシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシエトキシシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリアセトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルジエトキシメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルジメトキシエトキシメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルジアセトキシメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジエトキシメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシエトキシメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジアセトキシメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルジメトキシエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルジエトキシエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルジメトキシエトキシエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルジアセトキシエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジエトキシエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシエトキシエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジアセトキシエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルジメトキシイソプロピルシラン、γ-グリシドキシプロピルジエトキシイソプロピルシラン、γ-グリシドキシプロピルジメトキシエトキシイソプロピルシラン、γ-グリシドキシプロピルジアセトキシイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジエトキシイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジエトキシイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシエトキシイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジアセトキシイソプロピルシラン、γ-グリシドキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルエトキシジメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルメトキシエトキシジメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルアセトキシジメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシジメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルエトキシジメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシエトキシジメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルアセトキシジメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルメトキシジエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルメトキシエトキシジエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルアセトキシジエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシジエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルエトキシジエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシエトキシジエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルアセトキシジエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルメトキシジイソプロピルシラン、γ-グリシドキシプロピルエトキシジイソプロピルシラン、γ-グリシドキシプロピルメトキシエトキシジイソプロピルシラン、γ-グリシドキシプロピルアセトキシジイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシジイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルエトキシジイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシエトキシジイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルアセトキシジイソプロピルシラン、γ-グリシドキシプロピルメトキシエトキシメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルアセトキシメトキシメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルアセトキシエトキシメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシエトキシメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシアセトキシメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルエトキシアセトキシメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルメトキシエトキシエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルアセトキシメトキシエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルアセトキシエトキシエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシエトキシエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシアセトキシエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルエトキシアセトキシエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルメトキシエトキシイソプロピルシラン、γ-グリシドキシプロピルアセトキシメトキシイソプロピルシラン、γ-グリシドキシプロピルアセトキシエトキシイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシエトキシイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシアセトキシイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルエトキシアセトキシイソプロピルシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α-グリシドキシメチルトリメトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β-グリシドキシメチルトリメトキシシラン、α-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、α-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α-グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、β-グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシブチルトリエトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリプトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリフェノキシシラン、γ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、δ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、δ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジエトキシシラン、α-グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、α-グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、β-グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、β-グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、α-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、α-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ-グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルエチルジプロポキシシラン、γ-グリシドキシプロピルビニルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0082】
また、ポリシロキサンセグメント(a1)に式(3)で表される基を導入するには、式(3)で表される基を有するシラン化合物を用いればよい。式(3)で表される基を有するシラン化合物の具体例としては、p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0083】
工程2において、無機粒子(m)と混合させるシラノール基および/または加水分解性シリル基含有シラン化合物の一部またはすべてが加水分解縮合されていても良い。さらに、固形分量や粘度を調製する目的として、分散媒を使用してもよい。分散媒としては、本発明の効果を損ねることのない液状媒体であればよく、各種有機溶剤や水、液状有機ポリマーおよびモノマーが挙げられる。
【0084】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン類、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキソラン等の環状エーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族類、カルビトール、セロソルブ、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ノルマルプロピルアルコールなどのアルコール類が挙げられ、これらを単独又は併用して使用可能である。
【0085】
本発明に用いられるコート剤は、複合樹脂(A)に加えて複合樹脂(A)との硬化反応に直接寄与する反応性基を有するポリマーまたはモノマーを含んでいてもよい。
【0086】
反応性化合物としてポリイソシアネートを使用する場合は、複合樹脂(A)におけるビニル系重合体セグメント(a2)がアルコール性水酸基を有することが好ましい。その際のポリイソシアネートは、複合樹脂(A)全量に対して5~50重量%含有させることが好ましい。ポリイソシアネートを該範囲含有させることで延伸ポリオレフィンフィルムが変形した場合のコート層の追従性が向上する。これは、ポリイソシアネートと系中の水酸基(これは、ビニル系重合体セグメント(a2)中の水酸基や後述のアルコール性水酸基を有する活性エネルギー線硬化性モノマー中の水酸基である)とが反応して、ソフトセグメントであるウレタン結合が形成され、重合性二重結合由来の硬化による応力の集中を緩和させる働きをするのではと推定している。使用するポリイソシアネートとしては特に限定はなく公知のものを使用することができる。
【0087】
ポリイソシアネート中のイソシアネート基は、コート層の追従性の観点から3~30重量%であること好ましい。ポリイソシアネート中のイソシアネート基が30%を超える場合、応力緩和による追従性向上効果が発現しなくなるおそれがある。
【0088】
ポリイソシアネートと系中の水酸基(これは、ビニル系重合体セグメント(a2)中の水酸基や後述のアルコール性水酸基を有する活性エネルギー線硬化性モノマー中の水酸基である)との反応は、特に加熱等は必要なく、室温に放置することで徐徐に反応していく。また必要に応じて、80℃で数分間~数時間(20分~4時間)加熱して、アルコール性水酸基とイソシアネートの反応を促進してもよい。その場合は、必要に応じて公知のウレタン化触媒を使用してもよい。ウレタン化触媒は、所望する反応温度に応じて適宜選択する。
【0089】
反応性化合物として活性エネルギー線硬化性モノマーを使用する場合は、ビニル系反応基を複数有することを特徴とする多官能ビニル系モノマーを含有するのが好ましい。多官能ビニル系モノマーとしては特に限定は無く、多官能ビニルモノマーや多官能(メタ)アクリルモノマーといった公知のものを使用することができる。例えば、1,2-エタンジオールジアクリレート、1,2-プロパンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2-アクリロイルオキシ)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、ジ(ペンタエリスリトール)ペンタアクリレート、ジ(ペンタエリスリトール)ヘキサアクリレート等の1分子中に2個以上の重合性2重結合を有する多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等も多官能アクリレートとして例示することができる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上併用しても良い。
【0090】
例えば、前述のポリイソシアネートを併用する場合には、ペンタエリスリトールトリアクリレートやジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の水酸基を有するアクリレートが好ましい。
また、耐摩耗性を向上させる目的として、イソシアヌレート構造を有する多価(メタ)アクリレートを使用することが好ましく、具体的にはトリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、εカプロラクトン変性トリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート等が挙げられる。
【0091】
反応性化合物として、単官能ビニル系モノマーを併用することもできる。例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート(例えばダイセル化学工業(株)製商品名「プラクセル」)、フタル酸とプロピレングリコールとから得られるポリエステルジオールのモノ(メタ)アクリレート、コハク酸とプロピレングリコールとから得られるポリエステルジオールのモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、各種エポキシエステルの(メタ)アクリル酸付加物、等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、などのカルボキシル基含有ビニル単量体;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレートなどのスルホン酸基含有ビニル単量体;2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-3-クロロ-プロピルアシッドホスフェート、2-メタクリロイルオキシエチルフェニルりん酸などの酸性りん酸エステル系ビニル単量体;N-メチロール(メタ)アクリルアミドなどのメチロール基を有するビニル単量体等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0092】
積層体の耐熱性の観点から、反応性化合物として活性エネルギー線硬化性モノマーを使用する場合はガラス転移温度が-30℃以上のものを用いることが好ましい。ガラス転移温度の上限は特に制限されないが、一例として250℃以下である。二種以上の活性エネルギー線硬化性モノマーを併用する場合は、下記Foxの式で計算した温度(K)をセルシウス温度(℃)に換算した数値を反応性化合物のガラス転移温度とする。下記式中、W1、W2、W3、W4は各種成分の質量分率(質量%)を意味する。また、Tg1、Tg2、Tg3、Tg4は各種成分のホモポリマーのガラス転移温度(K)を意味する。
【0093】
【0094】
エポキシ基を含有する場合の反応性化合物としては、エポキシ樹脂用の公知の硬化剤を用いることができ、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等のフェノール系化合物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物系化合物;ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等のアミド系化合物;ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ-ル、BF3-アミン錯体、グアニジン誘導体等のアミン系化合物等が挙げられる。
【0095】
反応性化合物として、コート層に酸性基を導入しうるポリマーまたはモノマーを用いることも好ましい。これにより、後述するアルカリ処理を施した際に、コート層がより延伸ポリオレフィンフィルムから剥離しやすくなる効果が期待できる。このような反応生成物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、無水マレイン酸、4-メチルシクロヘキセ-4-エン-1,2-ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、1,2,3,4,5,8,9,10-オクタヒドロナフタレン-2,3-ジカルボン酸無水物、2-オクタ-1,3-ジケトスピロ[4.4]ノン-7-エン、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、マレオピマル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、メチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチル―ノルボルネン-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、ノルボルン-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、スルホン化スチレン、ビニルベンゼンスルホンアミド等が挙げられる。
【0096】
反応性化合物として、コート層にエーテル骨格を導入しうるポリマーまたはモノマーを用いることも好ましい。これにより、後述するアルカリ処理を施した際に、コート層がより延伸ポリオレフィンフィルムから剥離しやすくなる効果が期待できる。
【0097】
反応性化合物の平均官能基数は適宜調整され得るが、2~6であることが好ましい。コート層の線膨張係数を低く設計でき、積層体の耐熱性を向上させることができる。
【0098】
反応性化合物を用いる場合の使用量としては、複合樹脂(A)を含有するコート剤の全固形分量の1~85重量%が好ましく、5~80重量%がより好ましい。反応性化合物を上記範囲内で使用することによって、コート層の延伸ポリオレフィンフィルムへの密着性、積層体の耐熱性を調製することができる。
【0099】
また必要に応じて上記反応性化合物に加え、硬化促進剤を適宜併用することもできる。硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。特に硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、イミダゾール化合物では2-エチル-4-メチルイミダゾール、リン系化合物ではトリフェニルフォスフィン、第3級アミンでは1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-ウンデセン(DBU)が好ましい。
【0100】
本発明に用いられるコート剤の固形分量や粘度を調製する目的として、分散媒を使用してもよい。分散媒としては、本発明の効果を損ねることのない液状媒体であればよく、各種水性溶媒、有機溶剤、液状有機ポリマー等が挙げられる。
【0101】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン類、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキソラン等の環状エーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族類、カルビトール、セロソルブ、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ノルマルプロピルアルコールなどのアルコール類が挙げられ、これらを単独又は併用して使用可能であるが、中でもメチルエチルケトンが塗工時の揮発性や溶媒回収の面から好ましい。
【0102】
液状有機ポリマーとは、硬化反応に直接寄与しない液状有機ポリマーであり、例えば、カルボキシル基含有ポリマー変性物(フローレンG-900、NC-500:共栄社)、アクリルポリマー(フローレンWK-20:共栄社)、特殊変性燐酸エステルのアミン塩(HIPLAAD ED-251:楠本化成)、変性アクリル系ブロック共重合物(DISPERBYK2000;ビックケミー)などが挙げられる。
【0103】
コート剤は、その他触媒、重合開始剤、有機フィラー、無機フィラー、有機溶剤、無機顔料、有機顔料、体質顔料、粘土鉱物、ワックス、界面活性剤、安定剤、流動調製剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤等を含んでいてもよい。
【0104】
コート層は、上述のコート剤を延伸ポリオレフィンフィルム上に直接または印刷層を介して塗布、乾燥させて設けられる。複合樹脂(A)や無機粒子(m)の反応性官能基を用い、硬化させることがより好ましい。硬化方法は、複合樹脂(A)、無機粒子(m)が有する反応性官能基により適宜選択される。
【0105】
コート剤の塗布方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。一例として、スプレーコート、ダイレクトグラビアコート、グラビアキスリバースコート、オフセットグアビアコート、フレキソコート、オフセットコート、バーコート、ロールキスコート、正回転ロールコート、リバースロールコート、スロットダイコート、バキュームダイコート、(マイクロ)チャンバードクターコート、エアードクターコート、ブレードコート、ナイフコート、スピンコート、ディッピングコート等の各種塗工方式が挙げられる。
【0106】
コート層の膜厚は適宜調整され得るが、耐熱性の観点から0.3μm以上であることが好ましい。密着性の観点から6μm以下であることが好ましい。
【0107】
本発明に用いられるコート剤は例えば、複合樹脂(A)のポリシロキサンセグメント(a1)が有する、シラノール基および/または加水分解性シリル基を介して熱硬化させることができる。熱硬化では単独で加熱し硬化させることも可能であるが、硬化触媒を併用することも可能である。硬化触媒としては例えば、塩酸、硫酸、燐酸等の無機酸類;p-トルエンスルホン酸、燐酸モノイソプロピル、酢酸等の有機酸類;水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等の無機塩基類;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン酸エステル類;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリ-n-ブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、モノエタノールアミン、イミダゾール、1-メチルイミダゾール等の各種の塩基性窒素原子を含有する化合物類;テトラメチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、ジラウリルジメチルアンモニウム塩等の各種の4級アンモニウム塩類であって、対アニオンとして、クロライド、ブロマイド、カルボキシレートもしくはハイドロオキサイドなどを有する4級アンモニウム塩類;ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、オクチル酸錫又はステアリン酸錫など錫カルボン酸塩等が挙げられる。触媒は単独で使用しても良いし、2種以上併用しても良い。
【0108】
また、ビニル系重合体セグメント(a2)がアルコール性水酸基を含有し、更に組成物がイソシアネート基含有化合物を含有する場合には、触媒を添加することでウレタン化反応を起こすことができる。
また、ビニル系重合体セグメント(a2)またはポリシロキサンセグメント(a1)が重合性二重結合を有する基を有する場合には、熱重合開始剤を使用することで、反応させることができる。
また、ビニル系重合体セグメント(a2)またはポリシロキサンセグメント(a1)がエポキシ基を有する場合には、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基または酸無水物、またはアミド基を有する化合物を配合することで、反応させることができ、汎用のエポキシ樹脂用硬化剤が使用可能である。
【0109】
複合樹脂(A)と、熱硬化性樹脂を併用することも可能である。熱硬化性樹脂としては、ビニル系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、エポキシエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、石油樹脂、ケトン樹脂、シリコン樹脂あるいはこれらの変性樹脂等が挙げられる。
【0110】
複合樹脂(A)において、ビニル系重合体セグメント(a2)またはポリシロキサンセグメント(a1)が重合性不飽和基を有する場合には、活性エネルギー線硬化により硬化させることもできる。より具体的には、コート剤に光重合開始剤を配合することで、光硬化することが可能である。光硬化としては、紫外線硬化が好ましい。光重合開始剤としては公知のものを使用すればよく、例えば、アセトフェノン類、ベンジルケタール類、ベンゾフェノン類からなる群から選ばれる一種以上を好ましく用いることができる。アセトフェノン類としては、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン等が挙げられる。ベンジルケタール類としては、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。ベンゾフェノン類としては、例えば、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル等が挙げられる。ベンゾイン類等としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。光重合開始剤は単独で使用しても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0111】
紫外線硬化させる場合は、必要に応じて多官能(メタ)アクリレートを配合してもよく、硬化密度が向上する為、耐熱性が向上する。また、単官能(メタ)アクリレートを使用してもかまわない。
【0112】
紫外線硬化させる際に使用する光は、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、アルゴンレーザー、ヘリウム・カドミウムレーザー、紫外線発光ダイオード等を使用することができる。
【0113】
あるいは、活性エネルギー線として、加速器にて人工的に電子を加速した電子線(Electron Bearm)を使用し、電子線硬化によりコート層を形成することもできる。電子線硬化によりコート層を形成する場合は、コート剤は光重合開始剤を含まない。
【0114】
電子線硬化によりコート層を形成する場合は、複合樹脂(A)に加えて、反応性化合物として多官能または単官能の(メタ)アクリレートを併用することも好ましい。
【0115】
電子線硬化させる際に使用する電子線のエネルギー強度としては30,000~300,000eVであり、照射線量が5~100kGy・m/min.(キログレイ)である事が好ましい。
【0116】
コート層は、上述のコート剤を活性エネルギー線硬化により硬化させて設けられたものであることが好ましく、電子線硬化により硬化させて設けられたものであることがより好ましい。電子線硬化を用いる場合、コート層が光重合開始剤を含まないため、無臭あるいは臭気が抑制された積層体とすることができ、本発明の積層体を食品包材とした際に光重合開始剤が内容物に移行してしまう懸念もない。また電子線硬化の場合、照射物に与える熱の影響が小さいため、熱による歪み、しわ、変形等が殆ど生じず、10~400m/分、あるいはそれ以上でのライン速度での処理が可能である。
【0117】
さらに延伸ポリオレフィンフィルムに接触するようコート剤を塗布し、電子線硬化してコート層を形成した場合、延伸ポリオレフィンフィルムとコート層との密着性が良好となる。このような効果は複合樹脂(A)がメタクリロイル基を有するか、メタクリロイル基を有する活性エネルギー線硬化性モノマーを併用した場合により顕著なものとなる。従って、延伸ポリオレフィンフィルムとコート層との間に後述する印刷層を設ける場合は延伸ポリオレフィンフィルムとコート層とが接触する領域が存在するように、延伸ポリオレフィンフィルムの全面ではなく部分的に設けることが好ましい。
【0118】
(接着層)
延伸ポリオレフィンフィルムとヒートシール層とは任意の方法で貼り合わせられるが、一例としてポリオール組成物とポリイソシアネート組成物とを含む2液硬化型の接着剤によりこれらを貼り合わせることができる。本明細書では、2液硬化型接着剤の硬化塗膜を接着層と称する。
【0119】
ポリオール組成物は、複数の水酸基を有するポリオールを含む。このようなポリオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等のグリコール;
【0120】
グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能又は4官能の脂肪族アルコール;
ビスフェノールA、ビスフェノールF、水素添加ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールF等のビスフェノール;
ダイマージオール;
前記グリコール、3官能又は4官能の脂肪族アルコール等の重合開始剤の存在下にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレン等のアルキレンオキシドを付加重合したポリエーテルポリオール;
ポリエーテルポリオールを更に前記芳香族又は脂肪族ポリイソシアネートで高分子量化したポリエーテルウレタンポリオール;
【0121】
プロピオラクトン、ブチロラクトン、ε-カプロラクトン、σ-バレロラクトン、β-メチル-σ-バレロラクトン等の環状エステル化合物の開環重合反応によって得られるポリエステルと前記グリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールとの反応物であるポリエステルポリオール(1);
前記グリコール、ダイマージオール、又は前記ビスフェノール等の2官能型ポリオールと、多価カルボン酸とを反応させて得られるポリエステルポリオール(2):
3官能又は4官能の脂肪族アルコールと、多価カルボン酸とを反応させて得られるポリエステルポリオール(3);
2官能型ポリオールと、前記3官能又は4官能の脂肪族アルコールと、多価カルボン酸とを反応させて得られるポリエステルポリオール(4);
ジメチロールプロピオン酸、ひまし油脂肪酸等のヒドロキシル酸の重合体である、ポリエステルポリオール(5);
【0122】
ポリエステルポリオール(1)~(5)と前記ポリエーテルポリオールと芳香族若しくは脂肪族ポリイソシアネートとを反応させて得られるポリエステルポリエーテルポリオール;
ポリエステルポリオール(1)~(5)を芳香族若しくは脂肪族ポリイソシアネートで高分子量化して得られるポリエステルポリウレタンポリオール;
ひまし油、脱水ひまし油、ひまし油の水素添加物であるヒマシ硬化油、ひまし油のアルキレンオキサイド5~50モル付加体等のひまし油系ポリオール等、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0123】
ポリエステルポリオール(2)~(4)の調製に用いられる多価カルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;及びこれら脂肪族又はジカルボン酸の無水物あるいはエステル形成性誘導体;p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体、ダイマー酸等の多塩基酸類が挙げられる。
【0124】
ポリオールは、ポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールの少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0125】
ポリオールの数平均分子量は特に限定されないが、一例として300以上4000以下であることが好ましい。なお本明細書における数平均分子量は下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
【0126】
測定装置 ;東ソー株式会社製 HLC-8320GPC
カラム ;東ソー株式会社製 TSKgel 4000HXL、TSKgel 3000HXL、TSKgel 2000HXL、TSKgel 1000HXL
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社製 マルチステーションGPC-8020modelII
測定条件 ;カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.35ml/分
標準 ;単分散ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.2質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0127】
ポリイソシアネート組成物は、複数のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を含む。ポリイソシアネート化合物としては、従来公知のものを特に制限なく用いることができ、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、及びこれらジイソシアネートのビュレット体、ヌレート体、アダクト体、アロファネート体、カルボジイミド変性体、ウレトジオン変性体、これらポリイソシアネートとポリオールを反応させたウレタンプレポリマー等が挙げられ、これらを単独でまたは複数組み合わせて使用することができる。
【0128】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI、あるいはクルードMDIとも称される)、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0129】
芳香脂肪族ジイソシアネートとは、分子中に1つ以上の芳香環を有する脂肪族イソシアネートを意味し、m-又はp-キシリレンジイソシアネート(別名:XDI)、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(別名:TMXDI)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0130】
脂肪族ジイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(別名:HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0131】
脂環族ジイソシアネートとしては、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(別名:IPDI)、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0132】
ウレタンプレポリマーの合成に用いるポリオールとしては、上述したポリオールとして例示したものと同様のものを用いることができる。ポリアルキレングリコール又はポリエステルポリオールの少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0133】
軟包装基材用としては芳香族ポリイソシアネートと数平均分子量200~6,000の範囲にあるポリアルキレングリコールとを反応させて得られるポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートと数平均分子量200~3,000の範囲にあるポリエステルポリオールとを反応させて得られるポリイソシアネートが硬化物に適度な柔軟性を付与できる点から好ましい。滴定法(ジ-n-ブチルアミン使用)によるイソシアネート含有率が5~20質量%のものが適正な樹脂粘度となって塗工性に優れる点から好ましい。
【0134】
一方、硬質基材用では芳香族ポリイソシアネートと数平均分子量200~3,000の範囲にあるポリエステルポリオールとを反応させて得られるポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートと、数平均分子量200~3,000の範囲にあるポリエステルポリオールと、数平均分子量200~6,000の範囲にあるポリアルキレングリコールの混合物とを反応させて得られるポリイソシアネートが接着強度に優れる点から好ましい。定法(ジ-n-ブチルアミン使用)によるイソシアネート含有率が5~20質量%のものが、やはり適正な樹脂粘度となって塗工性に優れる点から好ましい。
【0135】
ポリイソシアネート化合物がウレタンプレポリマーである場合、その合成反応に供されるポリイソシアネートとポリオールとは、イソシアネート基と水酸基との当量比[NCO]/[OH]は1.5~5.0の範囲であることが、接着剤の粘度が適正範囲となって塗工性が良好となる点から好ましい。
【0136】
接着剤は、上述の成分以外の成分を含んでいてもよい。その他の成分は、ポリオール組成物、ポリイソシアネート組成物のいずれかまたは両方に含まれていてもよいし、これらとは別に調整しておき、接着剤の塗工直前にポリオール組成物、ポリイソシアネート組成物とともに混合して用いてもよい。以下、各成分について説明する。
【0137】
本発明に用いられる接着剤は触媒を含んでいてもよい。触媒としては、金属系触媒、アミン系触媒、脂肪族環状アミド化合物等が例示される。
【0138】
金属系触媒としては、金属錯体系、無機金属系、有機金属系の触媒が挙げられる。金属錯体系の触媒としては、Fe(鉄)、Mn(マンガン)、Cu(銅)、Zr(ジルコニウム)、Th(トリウム)、Ti(チタン)、Al(アルミニウム)、Co(コバルト)からなる群より選ばれる金属のアセチルアセトナート塩、例えば鉄アセチルアセトネート、マンガンアセチルアセトネート、銅アセチルアセトネート、ジルコニアアセチルアセトネート等が例示される。
【0139】
無機金属系の触媒としては、Sn、Fe、Mn、Cu、Zr、Th、Ti、Al、Co等から選ばれるものが挙げられる。
【0140】
有機金属系触媒としては、オクチル酸亜鉛、ネオデカン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛等の有機亜鉛化合物、スタナスジアセテート、スタナスジオクトエート、スタナスジオレエート、スタナスジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジクロライド等の有機錫化合物、オクチル酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル等の有機ニッケル化合物、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト等の有機コバルト化合物、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス等の有機ビスマス化合物、テトライソプロピルオキシチタネート、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライド、脂肪族ジケトン、芳香族ジケトン、炭素原子数2~10のアルコールの少なくとも1種をリガンドとするチタンキレート錯体等のチタン系化合物等が挙げられる。
【0141】
アミン系触媒としては、トリエチレンジアミン、2-メチルトリエチレンジアミン、キヌクリジン、2-メチルキヌクリジン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチル-(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、ジメチルエタノールアミン、ジメチルイソプロパノールアミン、ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N-ジメチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N-ジメチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)プロパンジアミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)アミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)イソプロパノールアミン、3-キヌクリジノール、N,N,N’,N’-テトラメチルグアニジン、1,3,5-トリス(N,N-ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、N-メチル-N’-(2-ジメチルアミノエチル)ピペラジン、N,N’-ジメチルピペラジン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、1-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、1-ジメチルアミノプロピルイミダゾール、N,N-ジメチルヘキサノールアミン、N-メチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、1-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾール、1-(2-ヒドロキシプロピル)イミダゾール、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシプロピル)-2-メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0142】
脂肪族環状アミド化合物としては、δ-バレロラクタム、ε-カプロラクタム、ω-エナントールラクタム、η-カプリルラクタム、β-プロピオラクタム等が挙げられる。これらの中でもε-カプロラクタムが硬化促進により効果的である。
【0143】
本発明に用いられる接着剤は、酸無水物を含んでいてもよい。酸無水物としては、環状脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物、不飽和カルボン酸無水物等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。より具体的には、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物、ポリ(エチルオクタデカン二酸)無水物、ポリ(フェニルヘキサデカン二酸)無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルハイミック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリテート二無水物、ヘット酸無水物、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物、3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸二無水物、1-メチル-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸二無水物等が挙げられる。
【0144】
また、酸無水物として上述した化合物をグリコールで変性したものを用いてもよい。変性に用いることができるグリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のアルキレングリコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポチテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルグリコール類等が挙げられる。更には、これらのうちの2種類以上のグリコール及び/又はポリエーテルグリコールの共重合ポリエーテルグリコールを用いることもできる。
【0145】
本発明に用いられる接着剤はカップリング剤を含んでいてもよい。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。
【0146】
シランカップリング剤としては、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン;ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン;ヘキサメチルジシラザン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0147】
チタネート系カップリング剤としては、例えば、テトライソプロポキシチタン、テトラ-n-ブトキシチタン、ブチルチタネートダイマー、テトラステアリルチタネート、チタンアセチルアセトネート、チタンラクテート、テトラオクチレングリコールチタネート、チタンラクテート、テトラステアロキシチタン等が挙げられる。
【0148】
アルミニウム系カップリング剤としては、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【0149】
本発明に用いられる接着剤は顔料を含んでいてもよい。顔料としては特に制限はなく、塗料原料便覧1970年度版(日本塗料工業会編)に記載されている体質顔料、白顔料、黒顔料、灰色顔料、赤色顔料、茶色顔料、緑色顔料、青顔料、金属粉顔料、発光顔料、真珠色顔料等の有機顔料や無機顔料、さらにはプラスチック顔料などが挙げられる。
【0150】
体質顔料としては、例えば、沈降性硫酸バリウム、ご粉、沈降炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、寒水石、アルミナ白、シリカ、含水微粉シリカ(ホワイトカーボン)、超微粉無水シリカ(アエロジル)、珪砂(シリカサンド)、タルク、沈降性炭酸マグネシウム、ベントナイト、クレー、カオリン、黄土などが挙げられる。
【0151】
有機顔料の具体例としては、ベンチジンエロー、ハンザエロー、レーキッド4R等の、各種の不溶性アゾ顔料;レーキッドC、カーミン6B、ボルドー10等の溶性アゾ顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の各種(銅)フタロシアニン系顔料;ローダミンレーキ、メチルバイオレットレーキ等の各種の塩素性染め付けレーキ;キノリンレーキ、ファストスカイブルー等の各種の媒染染料系顔料;アンスラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ペリノン系顔料等の各種の建染染料系顔料;シンカシアレッドB等の各種のキナクリドン系顔料;ヂオキサジンバイオレット等の各種のヂオキサジン系顔料;クロモフタール等の各種の縮合アゾ顔料;アニリンブラックなどが挙げられる。
【0152】
無機顔料としては、黄鉛、ジンククロメート、モリブデートオレンジ等の如き、各種のクロム酸塩;紺青等の各種のフェロシアン化合物;酸化チタン、亜鉛華、マピコエロー、酸化鉄、ベンガラ、酸化クロームグリーン、酸化ジルコニウム等の各種の金属酸化物;カドミウムエロー、カドミウムレッド、硫化水銀等の各種の硫化物ないしはセレン化物;硫酸バリウム、硫酸鉛等の各種の硫酸塩;ケイ酸カルシウム、群青等の各種のケイ酸塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の各種の炭酸塩;コバルトバイオレット、マンガン紫等の各種の燐酸塩;アルミニウム粉、金粉、銀粉、銅粉、ブロンズ粉、真鍮粉等の各種の金属粉末顔料;これら金属のフレーク顔料、マイカ・フレーク顔料;金属酸化物を被覆した形のマイカ・フレーク顔料、雲母状酸化鉄顔料等のメタリック顔料やパール顔料;黒鉛、カーボンブラック等が挙げられる。
【0153】
プラスチック顔料としては、例えば、DIC(株)製「グランドールPP-1000」、「PP-2000S」等が挙げられる。
【0154】
用いる顔料については目的に応じて適宜選択すればよいが、例えば耐久性、対候性、意匠性に優れることから白色顔料としては酸化チタン、亜鉛華等の無機酸化物を用いることが好ましく、黒色顔料としてはカーボンブラックを用いることが好ましい。
【0155】
本発明に用いられる接着剤は可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤としては、例えば、フタル酸系可塑剤、脂肪酸系可塑剤、芳香族ポリカルボン酸系可塑剤、リン酸系可塑剤、ポリオール系可塑剤、エポキシ系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、カーボネート系可塑剤などが挙げられる。
【0156】
フタル酸系可塑剤としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジへキシルフタレート、ジへプチルフタレート、ジ-(2-エチルヘキシル)フタレート、ジ-n-オクチルフタレート、ジノニルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジデシルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ジステアリルフタレート、ジフェニルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、オクチルデシルフタレート、ジメチルイソフタレート、ジ-(2-エチルヘキシル)イソフタレート、ジイソオクチルイソフタレートなどのフタル酸エステル系可塑剤、例えば、ジ-(2-エチルヘキシル)テトラヒドロフタレート、ジ-n-オクチルテトラヒドロフタレート、ジイソデシルテトラヒドロフタレートなどのテトラヒドロフタル酸エステル系可塑剤が挙げられる。
【0157】
脂肪酸系可塑剤としては、例えば、ジ-n-ブチルアジペート、ジ-(2-エチルへキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジ(C6-C10アルキル)アジペート、ジブチルジグリコールアジペートなどのアジピン酸系可塑剤、例えば、ジ-n-へキシルアゼレート、ジ-(2-エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレートなどのアゼライン酸系可塑剤、例えば、ジ-n-ブチルセバケート、ジ-(2-エチルへキシル)セバケート、ジイソノニルセバケートなどのセバシン酸系可塑剤、例えば、ジメチルマレート、ジエチルマレート、ジ-n-ブチルマレート、ジ-(2-エチルヘキシル)マレートなどのマレイン酸系可塑剤、例えば、ジ-n-ブチルフマレート、ジ-(2-エチルへキシル)フマレートなどのフマル酸系可塑剤、例えば、モノメチルイタコネート、モノブチルイタコネート、ジメチルイタコネート、ジエチルイタコネート、ジブチルイタコネート、ジ-(2-エチルヘキシル)イタコネートなどのイタコン酸系可塑剤、例えば、n-ブチルステアレート、グリセリンモノステアレート、ジエチレングリコールジステアレートなどのステアリン酸系可塑剤、例えば、ブチルオレート、グリセリルモノオレート、ジエチレングリコールモノオレートなどのオレイン酸系可塑剤、例えば、トリエチルシトレート、トリ-n-ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、アセチルトリ-(2-エチルへキシル)シトレートなどのクエン酸系可塑剤、例えば、メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、グリセリルモノリシノレート、ジエチレングリコールモノリシノレートなどのリシノール酸系可塑剤、および、ジエチレングリコールモノラウレート、ジエチレングリコールジペラルゴネート、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルなどのその他の脂肪酸系可塑剤などが挙げられる。
【0158】
芳香族ポリカルボン酸系可塑剤としては、例えば、トリ-n-ヘキシルトリメリテート、トリ-(2-エチルヘキシル)トリメリテート、トリ-n-オクチルトリメリテート、トリイソオクチルトリメリテート、トリイソノニルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテートなどのトリメリット酸系可塑剤、例えば、テトラ-(2-エチルヘキシル)ピロメリテート、テトラ-n-オクチルピロメリテートなどのピロメリット酸系可塑剤などが挙げられる。
【0159】
リン酸系可塑剤としては、例えば、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ-(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェートなどが挙げられる。
【0160】
ポリオール系可塑剤としては、例えば、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ-(2-エチルブチレート)、トリエチレングリコールジ-(2-エチルヘキソエート)、ジブチルメチレンビスチオグリコレートなどのグリコール系可塑剤、例えば、グリセロールモノアセテート、グリセロールトリアセテート、グリセロールトリブチレートなどのグリセリン系可塑剤などが挙げられる。
【0161】
エポキシ系可塑剤としては、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシブチルステアレート、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2-エチルヘキシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソデシル、エポキシトリグリセライド、エポキシ化オレイン酸オクチル、エポキシ化オレイン酸デシルなどが挙げられる。
【0162】
ポリエステル系可塑剤としては、例えば、アジピン酸系ポリエステル、セバシン酸系ポリエステル、フタル酸系ポリエステルなどが挙げられる。
【0163】
カーボネート系可塑剤としては、プロピレンカーボネートやエチレンカーボネートなどが挙げられる。
【0164】
また、可塑剤としては、その他に、部分水添ターフェニル、接着性可塑剤、さらには、ジアリルフタレート、アクリル系モノマーやオリゴマーなどの重合性可塑剤などが挙げられる。これら可塑剤は、単独または2種以上併用することができる。
【0165】
本発明に用いられる接着剤はリン酸化合物を含んでいてもよい。リン酸化合物としては、リン酸、ピロリン酸、トリリン酸、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、イソドデシルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸等が挙げられる。
【0166】
本発明に用いられる接着剤は、溶剤型または無溶剤型のいずれの形態であってもよい。なお本明細書において「溶剤型」の接着剤とは、接着剤を基材に塗工した後に、オーブン等で加熱して塗膜中の有機溶剤を揮発させた後に他の基材と貼り合せる方法、いわゆるドライラミネート法に用いられる形態をいう。ポリオール組成物、ポリイソシアネート組成物のいずれか一方、もしくは両方がポリオール組成物、ポリイソシアネート組成物の構成成分を溶解(希釈)することが可能な有機溶剤を含む。
【0167】
有機溶剤としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチレンクロリド、エチレンクロリド等のハロゲン化炭化水素類、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホアミド等が挙げられる。ポリオール組成物、ポリイソシアネート組成物の構成成分の製造時に反応媒体として使用された有機溶剤が、更に塗装時に希釈剤として使用される場合もある。
【0168】
本明細書において「無溶剤型」の接着剤とは、ポリオール組成物およびポリイソシアネート組成物が上記で例示したような溶解性の高い有機溶剤、特に酢酸エチル又はメチルエチルケトンを実質的に含まず、接着剤を基材に塗工した後に、オーブン等で加熱して溶剤を揮発させる工程を経ずに他の基材と貼り合せる方法、いわゆるノンソルベントラミネート法に用いられる接着剤の形態を指す。ポリオール組成物、ポリイソシアネート組成物の構成成分や、その原料の製造時に反応媒体として使用された有機溶剤が除去しきれずに、ポリオール組成物、ポリイソシアネート組成物中に微量の有機溶剤が残留してしまっている場合は、有機溶剤を実質的に含まないと解される。また、ポリオール組成物が低分子量アルコールを含む場合、低分子量アルコールはポリイソシアネート組成物と反応して塗膜の一部となるため、塗工後に揮発させる必要はない。従ってこのような形態も無溶剤型接着剤として扱い、低分子量アルコールは有機溶剤とはみなされない。
【0169】
接着剤は、ポリイソシアネート組成物に含まれるイソシアネート基のモル数[NCO]とポリオール組成物に含まれる水酸基のモル数[OH]との比[NCO]/[OH]が1.0~3.0となるよう配合して用いることが好ましい。これにより、塗工時の環境湿度に依存することなく適切な硬化性を得ることができる。
【0170】
接着層の膜厚は適宜調整され得るが、一例として0.5μm以上6μm以下である。
【0171】
(蒸着層)
ヒートシール層は、さらに延伸ポリオレフィンフィルム側の面に蒸着層が設けられていてもよい。蒸着層としては、アルミニウム等の金属や酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウム等の無機酸化物を含む蒸着層が挙げられる。酸素バリア性及び水蒸気バリア性という観点からは、アルミニウム蒸着層が好ましい。
【0172】
また、延伸ポリオレフィンフィルムは、ヒートシール層側の面に酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウム等の無機酸化物を含む蒸着層が設けられていてもよい。
【0173】
蒸着層の形成方法としては、従来公知の方法を採用でき、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法及びイオンプレーティング法等の物理気相成長法(Physical VaporDeposition法、PVD法)、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical VaporDeposition法、CVD法)等が挙げられる。
【0174】
蒸着膜の膜厚は、アルミニウム蒸着膜の場合には、1nm以上100nm以下であることが好ましく、15nm以上60nm以下であることがより好ましく、10nm以上40nm以下であることがさらに好ましい。珪素酸化物又は酸化アルミニウム蒸着膜の場合には、1nm以上140nm以下であることが好ましく、5nm以上30nm以下であることがより好ましく、5nm以上20nm以下であることがさらに好ましい。
【0175】
また、例えば、物理気相成長法と化学気相成長法の両者を併用して異種の無機酸化物の蒸着膜の2層以上からなる複合膜を形成して使用することもできる。蒸着チャンバーの真空度としては、酸素導入前においては、10-2~10-8mbar程度が好ましく、酸素導入後においては、10-1~10-6mbar程度が好ましい。なお、酸素導入量等は、蒸着機の大きさ等によって異なる。導入する酸素には、キャリヤーガスとしてアルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガス等の不活性ガスを支障のない範囲で使用してもよい。フィルムの搬送速度としては、10~800m/min程度、特に50~600m/min程度が好ましい。
【0176】
(バリアコート層)
本発明の積層体は上述のコート層よりもヒートシール層側であれば任意の位置に、バリアコート層を有していてもよい。特に、本発明の積層体が蒸着層を有する場合、蒸着層上に設けることが好ましい。これにより蒸着層にクラック等が生じるのを抑制することができ、本発明の積層体をガスバリア性に優れたものとすることができる。
【0177】
バリアコート層としては、従来公知の組成物を用い、従来公知の方法で設けることができる。一例としてアルコキシドと水溶性高分子とをゾルゲル法触媒、酸、水及び有機溶剤の存在下で、ゾルゲル法によって重縮合して得られるアルコキシドの加水分解物またはアルコキシドの加水分解縮合物等のガスバリア性組成物からなる膜である。さらにシランカップリング剤を含んでいてもよい。
【0178】
アルコキシドとしては、一般式R1
nM(OR2)mで表される少なくとも1種のアルコキシドを用いることができる。上記式においてR1、R2は炭素数1~8の有機基を表し、Mは金属原子を表し、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表しn+mはMの原子価を表す。金属原子Mとしては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム等を用いることができる。R1、R2で表される有機基の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基等のアルキル基が挙げられる。同一分子中においてこれらのアルキル基は同一であっても異なっていてもよい。アルコキシドの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。
【0179】
水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール系樹脂若しくはエチレン・ビニルアルコール共重合体のいずれか又はその両方を好ましく用いることができる。これら樹脂は市販のものを使用してもよく、例えばエチレン・ビニルアルコール共重合体として、株式会社クラレ製のエバールEP-F101(エチレン含量;32モル%)、日本合成化学工業株式会社製のソアノールD2908 (エチレン含量;29モル%)等を使用することができる。また、ポリビニルアルコールとして、株式会社クラレ製のRS-110(ケン化度=99%、重合度=1,000)、クラレポバールLM-20SO(ケン化度=40%、重合度=2,000)、日本合成化学工業株式会社製のゴーセノールNM-1 4 (ケン化度=99%、重合度=1,400)等を使用することができる。
水溶性高分子の含有量は、一例としてアルコキシド100質量部に対して5~500である。
【0180】
ゾルゲル法触媒としては、3級アミンが用いられる。例えば、N,N-ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン等を使用することができる。特に、N,N-ジメチルベンジルアミンが好ましい。アルコキシシランおよびシランカップリング剤の合計量100質量部当り、例えば0.01~1.0質量部を用いることが好ましい。
【0181】
有機溶剤としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール等を用いることができる。
【0182】
シランカップリング剤としては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、(3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられ、1種ないし2種以上を併用することができる。シランカップリング剤の使用量は、アルコキシド100質量部に対して1~20質量部である。
【0183】
バリアコート層は、グラビアロールコーター等を用いたロールコート、スプレーコート、スピンコート、ディッピング、刷毛、バーコート、アプリケーター等の従来公知の方法により1回または複数回塗布して形成される。
バリアコート層の膜厚は適宜調整されるが、一例として0.01~100μm程度であり、より好ましくは0.01~50μmである。
【0184】
(印刷層)
本発明の積層体は印刷層を有していてもよい。印刷層は、文字、図形、記号、その他所望の絵柄等が、リキッドインキを用いて印刷された層である。印刷層が設けられる位置は任意であるが、一例として延伸ポリオレフィン基材と接着層との間(蒸着層やガスバリアコート層が設けられる場合はこれらの層と接着剤層との間)、あるいは延伸ポリオレフィン基材とコート層との間が挙げられる。本明細書においてリキッドインキはグラビア印刷またはフレキソ印刷に用いられる溶剤型のインキの総称である。樹脂、着色剤、溶剤を必須の成分として含むものであってもよいし、樹脂と溶剤を含み、着色剤を実質的に含まない、いわゆるクリアインキであってもよい。
【0185】
リキッドインキに用いられる樹脂は特に限定されるものではなく、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン‐マレイン酸樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル-アクリル共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、セルロース系樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂等が挙げられ、1種または2種以上を併用できる。好ましくはポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種、あるいは2種以上である。
【0186】
リキッドインキに用いられる着色剤としては、酸化チタン、弁柄、アンチモンレッド、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛などの無機顔料、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料当の有機顔料、炭酸カルシウム、カオリンクレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルクなどの体質顔料が挙げられる。
【0187】
リキッドインキに用いられる有機溶剤は、芳香族炭化水素系有機溶剤を含まないことが好ましい。より具体的には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系有機溶剤、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタンなどの脂肪族炭化水素系有機溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素系有機溶剤などが挙げられ、1種または2種以上を組合わせて用いることができる。
【0188】
(プライマー層)
本発明の積層体はさらに、延伸ポリオレフィンフィルムとコート層との間に、コート層の密着性を向上させるためのプライマー層が設けられていてもよい。
【0189】
本発明の積層体は、ヒートシールバーと接触する位置に上記コート層を配置することにより積層体の耐熱性を向上させることができる。即ちヒートシール時の積層体の熱収縮を抑制することができ、コート層を有しない積層体よりも20℃程度高い温度でのヒートシールが可能となる。
【0190】
さらに上述のコート層は、本発明の積層体をアルカリ処理することで延伸ポリオレフィンフィルムから容易に剥離させることができる。また、この方法であれば接着層や印刷層、蒸着層等を基材(延伸ポリオレフィンやヒートシール層)から剥離、あるいは溶解させることもできる。この点からも、本発明の積層体はリサイクル性に優れる。
【0191】
コート層の剥離に用いられるアルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液等が好ましい。水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液は0.5質量%~10質量%の濃度の水溶液が好ましく1質量%~5質量%の濃度の水溶液がなお好ましい。またPHは10以上が好ましい。
【0192】
アルカリ溶液は、水溶性有機溶剤を含有していてもよい。水溶性有機溶剤としては例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(セロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メチルカルビトール)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(カルビトール)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(ジエチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、メチレンジメチルエーテル(メチラール)、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトン、ジアセトンアルコール、アセトニルアセトン、アセチルアセトン、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(メチルセロソルブアセテート)、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(メチルカルビトールアセテート)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(カルビトールアセテート)、エチルヒドロキシイソブチレートおよび乳酸エチルなどを例示することができ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0193】
アルカリ溶液における前記水溶性有機溶剤の含有割合としては、0.1質量%~20質量%が好ましく、1質量%~10質量%がより好ましい。
【0194】
またアルカリ溶液は、非水溶性有機溶剤を含有していてもよい。非水溶性有機溶剤の具体例としては、n-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、オクタノールなどのアルコール系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、ノルマルパラフィンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン、アルキルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶剤、塩化メチレン、1-クロロブタン、2-クロロブタン、3-クロロブタン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、エチルエーテル、ブチルエーテルなどのエーテル系溶剤を例示することができ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0195】
アルカリ溶液は、界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤としては各種のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられ、これらの中では、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0196】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が挙げられ、これらの具体例として、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩などが挙げられる。
【0197】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルアルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー等が挙げられる。ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマーが好ましい。
【0198】
その他の界面活性剤として、ポリシロキサンオキシエチレン付加物のようなシリコーン系界面活性剤;パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテルのようなフッ素系界面活性剤;スピクリスポール酸、ラムノリピド、リゾレシチンのようなバイオサーファクタント等も使用することができる。
【0199】
これらの界面活性剤は、単独で用いることもでき、又2種類以上を混合して用いることもできる。界面活性剤を添加する場合は、その添加量はアルカリ溶液全量に対し0.001~2質量%の範囲が好ましく、0.001~1.5質量%であることがより好ましく、0.01~1質量%の範囲であることがさらに好ましい。
【0200】
本発明の積層体からコート層を剥離させる方法としては、上述のアルカリ溶液を20~90℃に加熱するか、または超音波振動させた状態で本発明の積層体を浸漬させる方法が挙げられる。加熱方法としては特に限定なく、熱線、赤外線、マイクロ波等による公知の加熱方法が採用できる。また超音波振動は、例えば処理槽に超音波振動子を取り付けアルカリ溶液に超音波振動を付与する方法等が採用できる。
【0201】
浸漬時には、アルカリ液は攪拌されていることが好ましい。攪拌方法としては、例えば、処理槽内に収容した積層フィルムの分散液を、攪拌羽根により機械的攪拌する方法、水流ポンプにより水流攪拌する方法、窒素ガス等の不活性ガス等によるバブリング方法などが挙げられ、多層フィルムを効率的に剥離させるために前述の方法を併用しても良い。
【0202】
積層体をアルカリ溶液に浸漬する時間は、積層体の構成にもよるが一例として2分~48時間の範囲である。
【0203】
<包装材>
本発明の積層体は、食品や医薬品などの保護を目的とする多層包装材料として使用することができる。多層包装材料として使用する場合には、内容物や使用環境、使用形態に応じてその層構成は変化し得る。
【0204】
本発明の包装材は、例えば、本発明の積層体のヒートシール層を対向して重ね合わせた後、その周辺端部をヒートシールして得られる。製袋方法としては、本発明の積層体を折り曲げるか、あるいは重ねあわせてその内層の面(シーラントフィルムの面)を対向させ、その周辺端部を、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型、その他のヒートシール型等の形態によりヒートシールする方法が挙げられる。本発明の包装材は内容物や使用環境、使用形態に応じて種々の形態をとり得る。自立性包装材(スタンディングパウチ)等も可能である。ヒートシールの方法としては、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。
【0205】
本発明の包装材に、その開口部から内容物を充填した後、開口部をヒートシールして本発明の包装材を使用した製品が製造される。充填される内容物としては、米菓、豆菓子、ナッツ類、ビスケット・クッキー、ウェハース菓子、マシュマロ、パイ、半生ケーキ、キャンディ、スナック菓子などの菓子類、パン、スナックめん、即席めん、乾めん、パスタ、無菌包装米飯、ぞうすい、おかゆ、包装もち、シリアルフーズなどのステープル類、漬物、煮豆、納豆、味噌、凍豆腐、豆腐、なめ茸、こんにゃく、山菜加工品、ジャム類、ピーナッツクリーム、サラダ類、冷凍野菜、ポテト加工品などの農産加工品、ハム類、ベーコン、ソーセージ類、チキン加工品、コンビーフ類などの畜産加工品、魚肉ハム・ソーセージ、水産練製品、かまぼこ、のり、佃煮、かつおぶし、塩辛、スモークサーモン、辛子明太子などの水産加工品、桃、みかん、パイナップル、りんご、洋ナシ、さくらんぼなどの果肉類、コーン、アスパラガス、マッシュルーム、玉ねぎ、人参、大根、じゃがいもなどの野菜類、ハンバーグ、ミートボール、水産フライ、ギョーザ、コロッケなどを代表とする冷凍惣菜、チルド惣菜などの調理済食品、バター、マーガリン、チーズ、クリーム、インスタントクリーミーパウダー、育児用調整粉乳などの乳製品、液体調味料、レトルトカレー、ペットフードなどの食品類が挙げられる。また、本発明の包装材はタバコ、使い捨てカイロ、輸液パック等の医薬品、化粧品、真空断熱材などの包装材料としても使用され得る。
【実施例】
【0206】
以下、実施例と比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。配合組成その他の数値は特記しない限り質量基準である。
【0207】
実施例、比較例で用いた化合物の詳細は以下の表1~4に示す通りである。
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
【0212】
<複合樹脂(A)の調整>
(合成例1)ポリシロキサンセグメント(a1-1)の調製
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、MTMS 415部、MPTS 756部を仕込み、窒素ガスの通気下、攪拌しながら60℃まで昇温した。次いで、「A-3」 0.1部と脱イオン水 121部からなる混合物を5分間で滴下した。滴下終了後、反応容器中を80℃まで昇温し、4時間攪拌することにより加水分解縮合反応を行い、反応生成物を得た。
【0213】
得られた反応生成物中に含まれるメタノールおよび水を、1~30キロパスカル(kPa)の減圧下、40~60℃の条件で除去することにより、数平均分子量が1000で、有効成分が75.0%であるポリシロキサンセグメント(a1-1)1000部を得た。なお、「有効成分」とは、使用したシランモノマーのメトキシ基が全て加水分解縮合反応した場合の理論収量(重量部)を、加水分解縮合反応後の実収量(重量部)で除した値、即ち、〔シランモノマーのメトキシ基が全て加水分解縮合反応した場合の理論収量(重量部)/加水分解縮合反応後の実収量(重量部)〕の式により算出したものである。
【0214】
(合成例2)ポリシロキサンセグメント(a1-2)の調製
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、MTMS 442部、APTS 760部を仕込み、窒素ガスの通気下、攪拌しながら60℃まで昇温した。次いで、「A-3」 0.1部と脱イオン水 129部からなる混合物を5分間で滴下した。滴下終了後、反応容器中を80℃まで昇温し、4時間攪拌することにより加水分解縮合反応を行い、反応生成物を得た。
【0215】
得られた反応生成物中に含まれるメタノールおよび水を、1~30キロパスカル(kPa)の減圧下、40~60℃の条件で除去することにより、数平均分子量が1000で、有効成分が75.0%であるポリシロキサンセグメント(a1-2)1000部を得た。
【0216】
(合成例3)ビニル系重合体セグメント(a2-1)の調製
合成例1と同様の反応容器に、PTMS 20.1部、DMDMS 24.4部、酢酸n-ブチル 107.7部を仕込み、窒素ガスの通気下、攪拌しながら、80℃まで昇温した。次いで、MMA 15部、BMA 45部、EHMA 39部、AA 1.5部、MPTS 4.5部、HEMA 45部、酢酸n-ブチル15部、TBPEH 15部を含有する混合物を、同温度で、窒素ガスの通気下、攪拌しながら前記反応容器中へ4時間で滴下した。さらに同温度で2時間撹拌したのち、前記反応容器中に、「A-3」 0.05部と脱イオン水 12.8部の混合物を、5分間をかけて滴下し、同温度で4時間攪拌することにより、PTMS、DMDMS、MPTSの加水分解縮合反応を進行させた。反応生成物を、1H-NMRで分析したところ、前記反応容器中のシランモノマーが有するトリメトキシシリル基のほぼ100%が加水分解していた。次いで、同温度にて10時間攪拌することにより、TBPEHの残存量が0.1%以下の反応生成物であるビニル系重合体セグメント(a2-1)が得られた。尚、TBPEHの残存量は、ヨウ素滴定法により測定した。
【0217】
(合成例4)ビニル系重合体セグメント(a2-2)の調製
合成例1と同様の反応容器に、PTMS 17.6部、DMDMS 21.3部、酢酸n-ブチル129部を仕込み、窒素ガスの通気下、攪拌しながら、80℃まで昇温した。次いで、MMA 21部、BMA 63部、EHMA 54.6部、AA 2.1部、MPTS6.3部、HEMA 63部、酢酸n-ブチル21部、TBPEH 21部を含有する混合物を、同温度で、窒素ガスの通気下、攪拌しながら、前記反応容器中へ4時間で滴下した。さらに同温度で2時間撹拌したのち、前記反応容器中に、「A-3」 0.04部と脱イオン水 11.2部の混合物を、5分間をかけて滴下し、同温度で4時間攪拌することにより、PTMS、DMDMS、MPTSの加水分解縮合反応を進行させた。反応生成物を、1H-NMRで分析したところ、前記反応容器中のシランモノマーが有するトリメトキシシリル基のほぼ100%が加水分解していた。次いで、同温度にて10時間攪拌することにより、TBPEHの残存量が0.1%以下の反応生成物であるビニル系重合体セグメント(a2-2)が得られた。
【0218】
(合成例5)ビニル系重合体セグメント(a2-3)の調製
合成例1と同様の反応容器に、PTMS 20.1部、DMDMS 24.4部、酢酸n-ブチル107.7部を仕込んで、窒素ガスの通気下、攪拌しながら、80℃まで昇温した。次いで、MMA 14.5部、BMA 2部、CHMA 105部、AA 7.5部、MPTS 4.5部、HEMA 15部、酢酸n-ブチル 15部、TBPEH 6部を含有する混合物を、同温度で、窒素ガスの通気下、攪拌しながら、前記反応容器中へ4時間で滴下した。さらに同温度で2時間撹拌したのち、前記反応容器中に、「A-3」0.05部と脱イオン水12.8部の混合物を、5分間をかけて滴下し、同温度で4時間攪拌することにより、PTMS、DMDMS、MPTSの加水分解縮合反応を進行させた。反応生成物を、1H-NMRで分析したところ、前記反応容器中のシランモノマーが有するトリメトキシシリル基のほぼ100%が加水分解していた。次いで、同温度にて10時間攪拌することにより、TBPEHの残存量が0.1%以下の反応生成物であるビニル系重合体セグメント(a2-3)が得られた。
【0219】
(合成例6)複合樹脂(A-1)の調製
合成例3で得られたビニル重合体セグメント(a2-1)全量に、合成例1で得られたポリシロキサン(a1-1)162.5部を添加して、5分間攪拌したのち、脱イオン水 27.5部を加え、80℃で4時間攪拌を行い、前記反応生成物とポリシロキサンの加水分解縮合反応を行った。得られた反応生成物を、10~300kPaの減圧下で、40~60℃の条件で2時間蒸留することにより、生成したメタノール及び水を除去し、次いで、MEK 150部、酢酸n-ブチル 27.3部を添加し、不揮発分が50.0%であるポリシロキサンセグメント(a1-1)とビニル重合体セグメント(a2-1)からなる複合樹脂(A-1)600部を得た。
【0220】
(合成例7)複合樹脂(A-2)の調製
合成例3で得られたビニル重合体セグメント(a2-1)全量に、合成例1で得られたポリシロキサンセグメント(a1-1)562.5部を添加して、5分間攪拌したのち、脱イオン水 80部を加え、80℃で4時間攪拌を行い、前記反応生成物とポリシロキサンの加水分解縮合反応を行った。得られた反応生成物を、10~300kPaの減圧下で、40~60℃の条件で2時間蒸留することにより、生成したメタノール及び水を除去し、次いで、MEK 128.6部、酢酸n-ブチル 5.8部を添加し、不揮発分が70.0%であるポリシロキサンセグメント(a1-1)とビニル重合体セグメント(a2-1)からなる複合樹脂(A-2)600部を得た。
【0221】
(合成例8)複合樹脂(A-3)の調製
合成例4で得られたビニル重合体セグメント(a2-2)全量に、合成例1で得られたポリシロキサンセグメント(a1-1)87.3部を添加して、5分間攪拌したのち、脱イオン水 80部を加え、80℃で4時間攪拌を行い、前記反応生成物とポリシロキサンの加水分解縮合反応を行った。得られた反応生成物を、10~300kPaの減圧下で、40~60℃の条件で2時間蒸留することにより、生成したメタノール及び水を除去し、次いで、MEK 150部を添加し、不揮発分が50.0%であるポリシロキサンセグメント(a1-1)とビニル重合体セグメント(a2-2)からなる複合樹脂(A-3)600部を得た。
【0222】
(合成例9)複合樹脂(A-4)の調製
合成例5で得られたビニル重合体セグメント(a2-3)全量に、合成例2で得られたポリシロキサンセグメント(a1-2)162.5部を添加して、5分間攪拌したのち、脱イオン水 27.5部を加え、80℃で4時間攪拌を行い、前記反応生成物とポリシロキサンの加水分解縮合反応を行った。得られた反応生成物を、10~300kPaの減圧下で、40~60℃の条件で2時間蒸留することにより、生成したメタノール及び水を除去し、次いで、MEK 150部、酢酸ブチル 27.3部を添加し、不揮発分が50.0%であるポリシロキサンセグメント(a1-2)とビニル重合体セグメント(a2-3)からなる複合樹脂(A-4)600部を得た。
【0223】
(合成例10)ビニル系重合体セグメント(a2-4)の調製
合成例1と同様の反応容器に、シラン化合物としてPTMS 20.1部、DMDMS 24.4部、溶剤としてMIBK 107.7部を仕込み、窒素ガスの通気下、攪拌しながら、95℃まで昇温した。
【0224】
次に、AA 1.5部、BA1.5部、MMA 30.6部、BMA 29.4部、CHMA 75部、HEMA 7.5部、MPTS 4.5部、TBPEH 6.8部、MIBK 15部を含有する混合物を、同温度で、窒素ガスの通気下、攪拌しながら、前記反応容器中へ4時間で滴下した後、さらに同温度で2時間撹拌し、数平均分子量が5800、水酸基価(OHv)が64.7mgKOH/gであるビニル系重合体を含有する反応液を得た。前記反応容器中に、「A-4」 0.06部と脱イオン水 12.8部の混合物を、5分間をかけて滴下し、同温度で5時間攪拌することにより、シラン化合物の加水分解縮合反応を進行させた。反応生成物を、1H-NMRで分析したところ、前記反応容器中のシランモノマーが有するトリメトキシシリル基のほぼ100%が加水分解していた。次いで、同温度にて10時間攪拌することにより、TBPEHの残存量が0.1%以下である、ビニル系重合体セグメント(a2-4)を得た。
【0225】
(調整例1)無機粒子(m-1)の分散体の調製
MTMS 651.5部、MPTS 1188.2部、アエロジル200 1450.4部、「A-4」 0.8部、脱イオン水 258.7部、MIBK 1450.4部を配合し、寿工業(株)製のウルトラアペックスミル UAM015を用いて分散をおこなった。分散体を調製するにあたり、ミル内にメディアとして100μm系のジルコニアビーズをミルの容積に対して70%充填し、周速10m/s、毎分1.5リットルの流量で配合物の循環粉砕を行った。循環粉砕を30分間行い、シリカ粒子が混合物中に分散した無機粒子(m-1)の分散体を得た。
【0226】
(調整例2)無機粒子(m-2)の分散体の調製
MTMS 276.8部、MPTS 504.8部、IPA-ST 4107.9部、「A-4」 0.7部、脱イオン水 109.9部を用い、MIBKを用いなかったこと以外は調製例1と同様にして、無機粒子(m-2)の分散体を得た。
【0227】
(合成例11)複合樹脂(A-5)の調製
ビニル系重合体セグメント(a2-4)336.8部に対し、無機粒子(m-1)の分散体を886.3部添加して、5分間撹拌したのち、脱イオン水 14.7部を加え、80℃で4時間撹拌を行い、ビニル系重合体セグメントとシラン化合物との加水分解縮合反応を行った。得られた反応生成物を、1~30kPaの減圧下で、40~60℃の条件で2時間蒸留することにより、生成したメタノール及び水を除去し、次いで、MIBK 145.1部、DAA 417.9部を添加し、シリカの含有量が33重量%であり、無機粒子(m-1)が結合した複合樹脂(A-5)(固形分35.0%)を得た。
【0228】
(合成例12)複合樹脂(A-6)の調製
無機粒子(m-1)の分散体に換えて、無機粒子(m-2)の分散体 1217.2部を用い、MIBKを610.6部、DAAを用いなかった以外は合成例11と同様にして、シリカの含有量が50重量%であり、無機粒子(m-2)が結合した複合樹脂(A-6)(固形分45.2%)を得た。
【0229】
<コート剤の調製>
(実施例1)
複合樹脂(A-1) 100部(固形分換算で50部)に、TMP3EOTA 50部を加えて実施例1のコート剤を調製した。
【0230】
(実施例2)~(実施例4)
用いる複合樹脂(A)、反応性化合物とその配合量を表5に示すものに変更した以外は実施例1と同様にして実施例2~4のコート剤を調製した。
【0231】
(実施例5)
複合樹脂(A-1)を50部(固形分換算で25部)、シリカ粒子(日本アエロジル(株)製 アエロジル50、平均一次粒子径約30nm)25部及び以下MIBK 175部の混合物を、寿工業(株)製のウルトラアペックスミル UAM015を用い、ミル内にメディアとして30μm径のジルコニアビーズをミルの容積に対して50%充填し、毎分1.5リットルの流量で30分間の循環粉砕を行った。エバポレーターを用いてMIBKを除去し、不揮発分濃度50%の複合樹脂(A-1)とシリカの分散液体 100部を得た。ここにTMP3EOTA 100部を加えて実施例5のコート剤を調製した。
【0232】
(実施例6)~(実施例11)
用いる複合樹脂(A)、シリカ粒子、反応性化合物とその配合量を表5、6に示すものに変更した以外は実施例5と同様にして実施例6~11のコート剤を調製した。
【0233】
(実施例12)
複合樹脂(A-5) 100部(固形分換算で35部)に、TMP3EOTA 35部を加えて実施例12のコート剤を調製した。
【0234】
(実施例13)~(実施例17)
用いる複合樹脂(A)、反応性化合物とその配合量を表6、7に示すものに変更した以外は実施例12と同様にして実施例13~17のコート剤を得た。
【0235】
(比較例2)
TMP3EOTAを比較例2のコート剤として用いた。
(比較例3)
TMP3EOTA 50部とTCDDA 50部の混合物を比較例3のコート剤として用いた。
(比較例4)
TMP3EOTA 50部とMEK-ST-40 125部の混合物を比較例4のコート剤として用いた。
【0236】
<積層体の製造>
調整したコート剤を、膜厚25μmの延伸ポリエチレンフィルム(東京インキ(株)製 ハイブロン P)上に2g/m2となるように塗布し、溶剤を揮発させた後、EB装置を使用しエネルギー強度が125,000eV、照射線量が50kGy・m/min.(キログレイ)にて電子線を照射しコート層を形成した。
【0237】
<評価>
(基材密着性)
コート層にセロハンテープ(ニチバン社製TF-12)を圧着し、テープを一気に剥がした時の剥がれの程度を目視で判断し、3段階にて評価した。なお比較例1はコート層の形成を行わなかったため密着性は評価していない。
〇:剥がれ無し
△:一部剥がれた
×:全て剥がれた
【0238】
(耐熱性)
積層体を熱傾斜式ヒートシールテスター(テスター産業(株)製)を用い、シール温度140℃~150℃、圧力3kg/cm2 、時間1秒で、コート層に直接触れるようヒートシールバーを接触させた。ヒートシールバーを接触させた後のフィルムの状態を目視にて3段階で評価した。
〇:シール部周辺にシワの発生無し
△:シール部周辺にシワが僅かに確認できる
×:シール部周辺全体にシワをはっきりと確認できる
【0239】
(リサイクル性)
2cm×2cmの大きさにカットした積層体を、1.5% NaOH水溶液中に投入し、85℃にて1時間攪拌した。その後積層体を洗浄、乾燥し、コート層の剥離の有無を目視にて確認し4段階で評価した。
◎:全て剥がれた
〇:ほとんど剥がれた
△:一部剥がれた
×:剥がれ無し
【0240】
【0241】
【0242】
【0243】
実施例、比較例から明らかなように、本発明の積層体は優れた密着性、耐熱性、リサイクル性を示した。