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特許7605440リチウムイオン伝導性ハロボロ-オキシサルファイド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】リチウムイオン伝導性ハロボロ-オキシサルファイド
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/06 20060101AFI20241217BHJP
   C03C 3/064 20060101ALI20241217BHJP
   C03C 3/089 20060101ALI20241217BHJP
   C03C 3/14 20060101ALI20241217BHJP
   C03C 3/19 20060101ALI20241217BHJP
   C03C 3/23 20060101ALI20241217BHJP
   C03C 4/14 20060101ALI20241217BHJP
   H01B 1/08 20060101ALI20241217BHJP
   H01B 1/10 20060101ALI20241217BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20241217BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241217BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241217BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20241217BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20241217BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20241217BHJP
   H01M 50/497 20210101ALI20241217BHJP
【FI】
H01B1/06 A
C03C3/064
C03C3/089
C03C3/14
C03C3/19
C03C3/23
C03C4/14
H01B1/08
H01B1/10
H01B13/00 Z
H01M4/62 Z
H01M10/052
H01M10/0562
H01M50/403 A
H01M50/434
H01M50/497
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021575340
(86)(22)【出願日】2020-06-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-24
(86)【国際出願番号】 EP2020066610
(87)【国際公開番号】W WO2020254314
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】19180687.6
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】510238650
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ウォータールー
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】カウプ,カヴィシュ
(72)【発明者】
【氏名】ナザール,リンダ
(72)【発明者】
【氏名】クリシュ,イェルン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,シヤオハン
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-093260(JP,A)
【文献】特表2017-538266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/06
C03C 3/064
C03C 3/089
C03C 3/14
C03C 3/19
C03C 3/23
C03C 4/14
H01B 1/08
H01B 1/10
H01B 13/00
H01M 4/62
H01M 10/052
H01M 10/0562
H01M 50/403
H01M 50/434
H01M 50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
Li2x+z2yb*ax+3y (I)
(式中、
Mは、Siであり、
Xは、Cl、BrおよびIからなる群から選択される1種または複数であり、
xは0.1~0.7の範囲であり、
yは0.05~0.5の範囲であり、
zは0.01~0.5の範囲であり、
aは0.01~0.5の範囲であり、
bは1.9~2.6の範囲であり、
0.995≦x+y+z+a≦1.005である)
による組成を有する固体材料。
【請求項2】
一般式(I)による組成を有する前記固体材料が、ガラス状である、請求項1に記載の固体材料。
【請求項3】
一般式(Ia)
Li2x+z2ySib*ax+3y (Ia)
(式中、
xは0.1~0.3の範囲であり、
yは0.1~0.25の範囲であり、
zは0.2~0.48の範囲であり、
aは0.08~0.5の範囲であり、
bは1.95~2.05の範囲であり、
0.995≦x+y+z+a≦1.005である)
による組成を有する、請求項1または2に記載の固体材料。
【請求項4】
25℃におけるイオン伝導率が0.1mS/cm以上である、請求項1からのいずれか一項に記載の固体材料。
【請求項5】
シートの形態である、請求項1からのいずれか一項に記載の固体材料。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載の固体材料を製造するための方法であって、
a)前駆体
Li
、またはホウ素と硫黄の両方
素MとしてのSiの酸化物
1種または複数の化合物LiX(式中、Xは、Cl、BrおよびIからなる群から選択される)
を用意する工程、
b)工程a)で用意された前駆体を含む混合物を製造する工程であって、前記混合物中の元素Li、S、B、M、OおよびXのモル比は一般式(I)に適合する、製造する工程、
)工程b)で製造された混合物を熱処理して溶融物を得る工程、
d)工程c)で得られた溶融物を急冷して、一般式(I)による組成を有する固体材料が得られるようにする工
を含む、方法。
【請求項7】
工程a)で用意される前駆体が、LiSと、Sと、Bと、SiOと、LiCl、LiBrおよびLiIのうち1種または複数とである、
かつ/または
工程b)において、混合が、機械的粉砕を用いて行われる、
かつ/または
工程c)において、熱処理が密閉容器で行われる、
かつ/または
工程d)において、急冷が、工程c)で得られた溶融物を、水、氷、過冷却ガス、金属板または化学的に不活性な型と接触させることによって行われる、
請求項に記載の方法。
【請求項8】
工程c)が、
- 400℃~650℃の範囲の温度で1~13時間の期間熱処理する第1段階
および
- 700℃~1000℃の範囲の温度で1~40時間の期間熱処理する第2段階
を含む、請求項またはに記載の方法。
【請求項9】
前記第1段階の前記処理が5~13時間の期間行われ、
前記第2段階の前記処理が20~30時間の期間行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2段階の前記処理が700℃~900℃の範囲で行われる、請求項8または9に記載の方法。

【請求項11】
工程b)において、前駆体を含む混合物がペレットに形成され、これが工程c)で熱処理される、請求項7から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程b)において、いかなる取り扱いも保護ガス雰囲気下で行われる、請求項から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
電気化学セルのための固体電解質として請求項1からのいずれか一項に記載の固体材料を使用する方法であって、固体電解質が、カソード、アノードおよびセパレーターからなる群から選択される電気化学セルのための固体構造の構成要素である、使用する方法。
【請求項14】
電気化学セルのための固体構造であって、カソード、アノードおよびセパレーターからなる群から選択され、請求項1からのいずれか一項に記載の固体材料を含む、固体構造。
【請求項15】
請求項1からのいずれか一項に記載の固体材料を含む電気化学セルであって、固体材料が、請求項14に記載の固体構造の構成要素である、電気化学セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
リチウムイオンに対してイオン伝導性を有する固体材料、前記固体材料を製造するための方法、電気化学セルのための固体電解質として前記固体材料を使用する方法、電気化学セルのためのカソード、アノードおよびセパレーターからなる群から選択される固体構造、ならびにそのような固体構造を含む電気化学セルが記載される。
【背景技術】
【0002】
全固体リチウム電池が広範囲にわたって使用されているため、リチウムイオンに対して高い伝導性を有する固体状態の電解質の需要が高まっている。そのような固体電解質の重要な種類は、硫化物系および酸化物系ガラス状材料である。ガラス状固体電解質材料では、結晶質経路が存在しないことで、実質的に粒界抵抗がない等方性伝導がもたらされる。メルトクエンチ手法によってアモルファス電解質材料が高密度で欠陥のない膜として得られるので、ガラス状電解質材料において粒界が存在しないことで、樹枝状結晶の形成も防ぐことができる。通常、これらの材料は、Bなどのガラス形成剤に加えてLiSを含有する。ガラスのリチウムイオン濃度およびイオン伝導率を増大させるために、ハロゲン化リチウム塩(例えばLiX(式中、X=Cl、Br、Iである))またはリチウムオルト-オキソ塩(例えばLiSiO、LiPO)が加えられる。
【0003】
酸化物および硫化物はそれぞれ、固体電解質に対してある特定の望ましい特性を示すが、ある特定の欠点も示す。酸化物は、通常、より良い化学的および電気化学的安定性をもたらす、より安定な構造フレームワークを形成するが、硫化物は、通常、イオン伝導率がより高く、加えて加工が容易である。しかしながら、硫化物系の固体電解質は通常、空気安定性が低いという欠点があり、それらは感湿性であるために分解されやすい。多くの硫化物は、空気からの水分と急速に反応して分解し、HSガスを放出する。したがって、酸化物と硫化物の利点を合わせ持つが、欠点を排除する電解質が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気化学セルのための固体電解質として使用できる固体材料を提供することが本開示の目的である。加えて、前記固体材料を製造するための方法、電気化学セルのための固体電解質として前記固体材料を使用する方法、電気化学セルのためのカソード、アノードおよびセパレーターからなる群から選択される固体構造、ならびにそのような固体構造を含む電気化学セルが提供され、ここで、前記固体構造は前記固体材料を含む。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様によれば、一般式(I)
Li2x+z2yb*ax+3y (I)
(式中、
Mは、P、Si、Ge、AsおよびSbからなる群から選択される1種または複数であり、
Xは、ハライドおよび擬ハライドからなる群から選択される1種または複数であり、
xは0.1~0.7の範囲であり、
yは0.05~0.5の範囲であり、
zは0.01~0.5の範囲であり、
aは0.01~0.5の範囲であり、好ましくは、aは0.05~0.48の範囲であり、
bは1.9~2.6の範囲であり、好ましくは、bは2~2.5の範囲であり、
0.995≦x+y+z+a≦1.005、好ましくはx+y+z+a=1である)による組成を有する固体材料が提供される。
【0006】
驚くべきことに、上記で定義した固体材料は、リチウム金属と直接接触して好都合なリチウムイオン伝導性ならびに電気化学的安定性を示し、空気および水分に対して化学的安定性を示すことが判明した。
【0007】
一般式(I)による組成は、オキシサルファイド、より具体的にはハロボロ-オキシサルファイドと考えることができる。
【0008】
上記で定義した固体材料、すなわち一般式(I)による組成を有する固体材料は、ガラス状であってもよい。
【0009】
特定の理論に拘泥するものではないが、LiS-B-MO-LiX(式中、M、bおよびXは、上記で定義した通りである)系の相図は、少なくとも1種のガラス形成領域を示し、一般式(I)による組成は明らかにそのような領域内にあると仮定される。
【0010】
本明細書では、用語「擬ハライド」は、その化学的性質に関してハロゲン化物アニオンと似ており、したがってそのような化合物の特性を実質的に変えることなく化合物中のハロゲン化物アニオンと置き換えることができる、1価のアニオンを表す。用語「擬ハロゲン化物イオン」は、当技術分野で公知である。IUPACゴールドブック(Goldbook)を参照のこと。擬ハロゲン化物アニオンの例は、N 、SCN、CN、OCN、BF およびBH である。擬ハライドがB、SおよびOからなる群からの元素を含有する場合、B、SおよびOの含有量は、上記に定義した一般式(I)のパラメーターx、y、aおよびbで考慮されない。対照的に、ハライドおよび擬ハライドの合計量は、一般式(I)のパラメーター「z」によって示される。一般式(I)の擬ハライド含有組成では、擬ハライドは、好ましくはSCN、BF およびBH からなる群から選択される。
【0011】
一般式(I)による組成を有する固体材料は、(1)LiS、(2)B、(3)Mの1種または複数の酸化物、および(4)1種または複数の化合物LiXの組合せと考えることができる。特定の理論に拘泥するものではないが、一般式(I)による組成を有する固体材料では、Mが上記で定義した通りである酸化物(3)は、一次ガラスネットワーク形成剤B(2)の隣の二次ガラスネットワーク形成剤として機能し得るが、LiS(1)は、ガラスネットワーク改質剤として機能し、LiX(4)はさらにリチウムイオンを提供することが現在仮定されている。さらに、二次ガラスネットワーク形成剤の取り込みにより、チオホウ酸塩ネットワーク(一次ガラスネットワーク形成剤Bによって形成されたネットワーク)が再構築されて、ガラスマトリックス内のより大量のLiXの溶解が可能になり、それによってLiイオンの濃度と移動度の両方が増大する。
【0012】
上記に定義した第1の態様による固体材料、すなわち一般式(I)による組成を有する固体材料は、アモルファスであってもよい。材料は、結晶の特徴である長距離秩序を欠如する場合、そのX線回折図に明確に定義された反射がないことによって示されるように、アモルファスと呼ばれる。この文脈では、反射は、その強度がバックグラウンドより10%より高い場合、明確に定義されていると見なされる。
【0013】
上記に定義した第1の態様による固体材料は、上記で定義した一般式(I)に基づいていない組成を有する第二相および/または不純物相を伴うこともある。このような場合には、一般式(I)による組成を有する体積分率は、上記に定義した第1の態様による固体材料と全ての第二相および不純物相の全体積に基づいて、50%以上、時々80%以上、好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上であり得る。
【0014】
第二相および不純物相はそれぞれ結晶性またはアモルファスであり得る。典型的には、前記で定義した一般式(I)による組成を有する固体材料が、第二相および不純物相をそれぞれ伴う場合、前記第二相および不純物相それぞれのうち少なくとも1個は結晶相である。結晶性の第二相および不純物相がそれぞれ存在する場合、結晶相の体積分率は、一般式(I)による組成を有する固体材料と全ての第二相および不純物相の全体積に基づいて、20%以下、時々10%以下、または5%以下、または1%以下であり得る。典型的には、一般式(I)による組成を有する固体材料は、唯一のアモルファス相である。結晶性である第二相および不純物相がそれぞれ存在する場合(例えば、LiI)、一般式(I)による組成を有する固体材料の体積分率は、公知の結晶性材料の標準的な添加によって決定することができる。
【0015】
存在する場合、第二相および不純物相は主に、固体材料を製造するのに使用される前駆体((1)LiS、(2)B、またはBとSの両方、(3)Mの1種または複数の酸化物(Mは前記で定義した通りである)、(4)1種または複数の化合物LiX(式中、Xは前記で定義した通りである)および前記前駆体から形成された中間体(例えばBとSが前駆体(2)として元素形態で提供される場合、B)のそれぞれ、場合によっては前駆体の不純物に由来する可能性がある不純物相で構成される。上記に定義した第1の態様の固体材料の製造の詳細については、本開示の第2の態様の文脈において下記に提供される情報を参照されたい。
【0016】
上記に定義した第1の態様によるある特定の固体材料では、Mは、Si、PおよびSbからなる群から選択される。
【0017】
上記に定義した第1の態様によるある特定の固体材料では、Xは、Cl、BrおよびIからなる群から選択される。
【0018】
上記に定義した第1の態様による特定の固体材料では、Mは、Si、PおよびSbからなる群から選択され、Xは、Cl、BrおよびIからなる群から選択される。前記特定の固体材料は、一般式(I)に基づくモル比で、Li、B、M(Mは、Si、PおよびSbからなる群から選択される)、O、SおよびX(Xは、Cl、BrおよびIからなる群から選択される)で構成される。
【0019】
上記に定義した第1の態様による特に特定の固体材料では、Mは、SiおよびXは、Cl、BrおよびIからなる群から選択される。前記特定の固体材料は、一般式(I)に基づくモル比で、Li、B、Si、O、SおよびX(Xは、Cl、BrおよびIからなる群から選択される)で構成される。
【0020】
上記に定義した第1の態様による固体材料は、25℃におけるイオン伝導率が0.1mS/cm以上、好ましくは1mS/cm以上であってもよい。イオン伝導率は、電気化学的インピーダンス分光法を用いた電池材料開発の分野で公知の通常の方法で決定される(詳細については、下記の実施例の項を参照)。
【0021】
同時に、上記に定義した第1の態様による固体材料は、ほとんど無視できる電気伝導率を示す。より具体的には電気伝導率は、イオン伝導率よりも少なくとも3桁低く、好ましくはイオン伝導率よりも少なくとも5桁低くてもよい。ある特定の場合においては、上記に定義した第1の態様による固体材料は、10-9S/cm以下の電気伝導率を示す。電気伝導率は、異なる電圧における直流(DC)分極測定を用いた電池材料開発の分野で公知の通常の方法で決定される(詳細については、下記の実施例の項を参照)。
【0022】
リチウムイオン伝導性に関しては、金属M(Mは、前記で定義した通りである)の酸化物の含有量を定義する一般式(I)のパラメーター「a」が、0.1~0.45、好ましくは0.2~0.3の範囲であることが好ましいことが観察された。
【0023】
リチウムイオン伝導性に関しては、LiX(式中、Xは、前記で定義した通りである)の含有量を定義する一般式(I)のパラメーター「z」が、0.26~0.41、好ましくは0.33~0.4の範囲であることが好ましいことが観察された。
【0024】
好ましくは、金属Mの酸化物の含有量を定義する一般式(I)のパラメーター「a」は、0.1~0.45、好ましくは0.2~0.3の範囲であり、LiXの含有量を定義する一般式(I)のパラメーター「z」は、0.26~0.41、好ましくは0.33~0.4の範囲である。
【0025】
上記に定義した第1の態様による固体材料は、モノリシックガラス、例えば溶融注型モノリシックガラスの形態であってもよい。
【0026】
上記に定義した第1の態様による固体材料は、シートの形態であってもよい。好ましくは前記シートは、薄いシート、例えば厚さが0.1μm~10mm、例えば10μm~10mmの範囲のシートである。好ましくは、前記シートは、独立している。
【0027】
上記に定義した第1の態様による固体材料の特定の群では、MはSiであり、XはIである。したがって、上記に定義した特定の群の固体材料は、一般式(Ia)
Li2x+z2ySib*ax+3y (Ia)
(式中、
xは0.1~0.3の範囲であり、
yは0.1~0.25の範囲であり、
zは0.2~0.48の範囲であり、好ましくは、zは0.26~0.41の範囲であり、
aは0.08~0.5の範囲であり、好ましくは、aは0.1~0.45の範囲であり、
bは1.95~2.05の範囲であり、好ましくは、bは2であり、
0.995≦x+y+z+a≦1.005、好ましくはx+y+z+a=1である)による組成を有する。
【0028】
驚くべきことに、上記に定義した特定の群の固体材料は、リチウム金属と直接接触して好都合なリチウムイオン伝導性ならびに電気化学的安定性を示し、空気および水分に対して化学的安定性を示すことが判明した。
【0029】
一般式(Ia)による組成は、ヨードチオホウケイ酸リチウムと考えることができる。
【0030】
上記に定義した特定の群の固体材料、すなわち一般式(Ia)による組成を有する固体材料は、ガラス状であってもよい。
【0031】
特定の理論に拘泥するものではないが、LiS-B-SiO-LiI四成分系の相図は、少なくとも1種のガラス形成領域を示し、一般式(Ia)による組成は明らかにそのような領域内にあると仮定される。
【0032】
一般式(Ia)による組成を有する固体材料は、(1)LiS、(2)B、(3)Siの酸化物、および(4)LiIの組合せと考えることができる。特定の理論に拘泥するものではないが、一般式(Ia)による組成を有する固体材料では、Siの酸化物(3)(典型的にはSiO)は、一次ガラスネットワーク形成剤B(2)の隣の二次ガラスネットワーク形成剤として機能し得るが、LiS(1)は、ガラスネットワーク改質剤として機能し、LiI(4)はさらにリチウムイオンを提供することが現在仮定されている。さらに、二次ガラスネットワーク形成剤SiOの取り込みにより、チオホウ酸塩ネットワーク(一次ガラスネットワーク形成剤Bによって形成されたネットワーク)が再構築されて、ガラスマトリックス内のより大量のLiIの溶解が可能になり、それによってLiイオンの濃度と移動度の両方が増大する。驚くべきことに、少量のSiOの添加でも、ガラスマトリックス内のかなりの量のLiIを溶解させることができる。したがって、SiOは、強力なガラス形成能を有しており、それ故に好都合な二次ガラスネットワーク形成剤である。
【0033】
上記に定義した特定の群の固体材料、すなわち一般式(Ia)による組成を有する固体材料は、アモルファスであってもよい。材料は、結晶の特徴である長距離秩序を欠如する場合、そのX線回折図に明確に定義された反射がないことによって示されるように、アモルファスと呼ばれる。この文脈では、反射は、その強度がバックグラウンドより10%より高い場合、明確に定義されていると見なされる。
【0034】
上記に定義した特定の群の固体材料は、前記で定義した一般式(Ia)に基づいていない組成を有する第二相および/または不純物相を伴うこともある。このような場合には、一般式(Ia)による組成を有する体積分率は、上記に定義した特定の群の固体材料と全ての第二相および不純物相の全体積に基づいて、50%以上、時々80%以上、好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上であり得る。
【0035】
第二相は結晶性またはアモルファスであり得る。典型的には、前記で定義した一般式(Ia)による組成を有する固体材料が、第二相および不純物相をそれぞれ伴う場合、前記第二相および不純物相それぞれのうち少なくとも1個は結晶相である。結晶性の第二相および不純物相がそれぞれ存在する場合、結晶相の体積分率は、一般式(Ia)による組成を有する固体材料と全ての第二相および不純物相の全体積に基づいて、20%以下、時々10%以下、好ましくは5%以下、最も好ましくは1%以下であり得る。典型的には、一般式(I)による組成を有する固体材料は、唯一のアモルファス相である。結晶性である第二相および不純物相がそれぞれ存在する場合(例えば、LiI)、一般式(Ia)による組成を有する固体材料の体積分率は、公知の結晶性材料の標準的な添加によって決定され得る。
【0036】
存在する場合、第二相および不純物相は主に、固体材料を製造するのに使用される前駆体(LiS、S、B、SiO、LiI)および前記前駆体から形成された中間体(例えばB)のそれぞれ、場合によっては前駆体の不純物に由来する可能性がある不純物相で構成される。上記に定義した特定の群の固体材料の製造の詳細については、本開示の第2の態様の文脈において下記に提供される情報を参照されたい。
【0037】
上記に定義した特定の群の固体材料は、25℃におけるイオン伝導率が0.1mS/cm以上、好ましくは1mS/cm以上であってもよい。イオン伝導率は、電気化学的インピーダンス分光法を用いた電池材料開発の分野で公知の通常の方法で決定される(詳細については、下記の実施例の項を参照)。
【0038】
同時に、上記に定義した特定の群の固体材料は、ほとんど無視できる電気伝導率を示す。より具体的には電気伝導率は、イオン伝導率よりも少なくとも3桁低く、好ましくはイオン伝導率よりも少なくとも5桁低くてもよい。ある特定の場合においては、上記に定義した特定の群の固体材料は、10-9S/cm以下の電気伝導率を示す。電気伝導率は、異なる電圧における直流(DC)分極測定を用いた電池材料開発の分野で公知の通常の方法で決定される(詳細については、下記の実施例の項を参照)。
【0039】
リチウムイオン伝導性に関しては、酸化ケイ素(典型的にはSiO)の含有量を定義する一般式(Ia)のパラメーター「a」が、0.1~0.45、好ましくは0.2~0.3の範囲であることが好ましいことが観察された。
【0040】
リチウムイオン伝導性に関しては、LiIの含有量を定義する一般式(Ia)のパラメーター「z」が、0.26~0.41、好ましくは0.33~0.4の範囲であることが好ましいことが観察された。
【0041】
好ましくは、酸化ケイ素(典型的にはSiO)の含有量を定義する一般式(Ia)のパラメーター「a」は、0.1~0.45、好ましくは0.2~0.3の範囲であり、LiIの含有量を定義する一般式(Ia)のパラメーター「z」は、0.26~0.41、好ましくは0.33~0.4の範囲である。
【0042】
上記に定義した特定の群の固体材料は、モノリシックガラス、例えば溶解成形モノリシックガラスの形態であってもよい。
【0043】
上記に定義した特定の群の固体材料は、シートの形態であってもよい。好ましくは前記シートは、薄いシート、例えば厚さが0.1μm~10mm、例えば10μm~10mmの範囲のシートである。好ましくは、前記シートは、独立している。
【0044】
前記で定義した第1の態様による好ましい固体材料は、1個または複数の上記に開示した特定の特徴を有するものである。
【0045】
第2の態様によれば、上記に定義した第1の態様による固体材料を得るための方法が提供される。前記方法は、
a)前駆体
(1)Li
(2)B、またはホウ素と硫黄の両方
(3)P、Si、Ge、AsおよびSbからなる群から選択される元素Mの1種または複数の酸化物
(4)1種または複数の化合物LiX(式中、Xは、ハライドおよび擬ハライドからなる群から選択される)
を用意する方法工程、
b)工程a)で用意された前駆体を含む混合物を製造する方法工程であって、前記混合物中の元素Li、S、B、M、OおよびXのモル比は一般式(I)に適合する、製造する方法工程、
c)方法工程b)で製造された混合物を熱処理して溶融物を得る方法工程、
d)工程c)で得られた溶融物を急冷して、一般式(I)による組成を有する固体材料が得られるようにする方法工程
を含む。
【0046】
上記に定義した第2の態様による方法は、「溶融-急冷」と呼ばれる。このような方法は、費用対効果が大きく、容易に拡張可能である。それにより、特に薄いシート、例えば厚さが0.1μm~10mm、例えば10μm~10mmの範囲の、ガラス質シートの形態の固体材料を得ることが可能になる。好ましくは、前記シートは、独立している。
【0047】
上記に定義した第2の態様による方法の工程a)において、工程b)で製造すべき混合物のための前駆体が用意される。前記前駆体は、
(1)Li
(2)B、またはBとSの両方、すなわち化合物B、またはそれぞれが元素形態のBとSのいずれか
(3)P、Si、Ge、AsおよびSbからなる群から選択される元素Mの1種または複数の酸化物
(4)1種または複数の化合物LiX(式中、Xは、ハライドおよび擬ハライドからなる群から選択される)
である。
【0048】
上記に定義した第2の態様によるある特定の方法では、1種または複数の酸化物(3)は、Si、PおよびSbの酸化物からなる群から選択される。
【0049】
上記に定義した第2の態様によるある特定の方法では、1種または複数の化合物LiX(4)は、LiCl、LiBrおよびLiIから選択される。
【0050】
上記に定義した第2の態様による特定の方法では、1種または複数の酸化物(3)は、Si、PおよびSbの酸化物からなる群から選択され;1種または複数の化合物LiXは、LiCl、LiBrおよびLiIから選択される。
【0051】
上記に定義した第2の態様による特に特定の方法では、酸化物は、SiOであり、1種または複数の化合物LiXは、LiCl、LiBrおよびLiIから選択される。前記特に特定の方法では、工程a)で用意される前駆体は、(1)LiSと、(2)それぞれが元素形態のSおよびBと、(3)SiOと、(4)LiCl、LiBrおよびLiIのうち1種または複数とであってもよい。
【0052】
上記に定義した第2の態様による方法の工程b)において、前記で定義した工程a)で用意された前駆体(1)から(4)を含む混合物が製造される。工程b)で製造された前記混合物では、元素Li、S、B、M(Mは、前記で定義した通りである)、OおよびX(Xは、前記で定義した通りである)のモル比は、一般式(I)に適合する。
【0053】
特定の場合には、工程b)で製造された前記混合物は、工程a)で用意された前駆体(1)から(4)からなる。
【0054】
工程b)において、混合は、機械的粉砕を用いて、例えばボールミル粉砕を用いて行うことができる。
【0055】
工程b)において、いかなる取り扱いも保護ガス雰囲気下で行われることが有用である。
【0056】
工程b)において、前駆体を含む混合物は、ペレットに形成でき、これは工程c)で熱処理される。
【0057】
上記に定義した第2の態様による方法の工程c)において、方法工程b)で製造された混合物は、熱処理されて、溶融物、典型的にはガラス質溶融物を得る。したがって、工程c)は、工程b)で製造された混合物の溶融温度よりも高い温度での熱処理を伴う。
【0058】
熱処理は、密閉容器で行ってもよい。密閉容器は、密封された石英管または熱処理の温度に耐えることができ、ガラスの成分と反応しにくい任意の他のタイプの容器、例えばガラス状炭素るつぼもしくがタンタルるつぼであってもよい。
【0059】
好ましくは、工程c)は、
- 400℃~650℃の範囲の温度で1~13時間、好ましくは5~13時間の期間熱処理する第1段階
および
- 700℃~1000℃の範囲、好ましくは700℃~900℃の範囲の温度で1~40時間、好ましくは20~30時間の期間熱処理する第2段階
を含む。
【0060】
上記に定義した第2の態様による方法の工程d)において、工程c)で得られた溶融物を急冷して、一般式(I)による組成を有する固体材料が得られるようにする。
【0061】
急冷は、急速な冷却が達成されるように、工程c)で得られた溶融物を、水、氷、過冷却ガス(例えば液体窒素または液体アルゴン)、金属板または化学的に不活性な型(例えば耐食性材料でできた型、好ましくは金属でできた型)と接触させることによって行うことができる。
【0062】
急冷すると、工程c)で得られた溶融物は、モノリシックガラス、例えば溶融注型モノリシックガラスに形成することができる。
【0063】
急冷すると、工程c)で得られた溶融物は、ガラスシートに形成することができる。ガラスシートは、連続シートの形態で得ることができ、それはその後所望のサイズに切断される。
【0064】
上記に定義した第2の態様による特定の方法は、上記に定義した第1の態様よる固体材料の上記に定義した特定の群の固体材料を製造するのに適している。
【0065】
上記に定義した第2の態様による前記特定の方法の工程a)において、上記に定義した第1の態様による固体材料の上記に定義した特定の群の固体材料を製造するのに適しており、工程a)で用意される前駆体は、
(1)Li
(2)両方とも元素形態のホウ素と硫黄、またはB
(3)SiO
(4)LiI
である。
【0066】
上記に定義した第1の態様による固体材料の上記に定義した特定の群の固体材料を製造するのに適した、上記に定義した第2の態様による前記特定の方法の工程b)において、上記で定義した工程a)で用意された前駆体(1)から(4)を含む混合物が製造される。工程b)で製造された前記混合物では、元素Li、S、B、Si、OおよびIのモル比は、一般式(Ia)に適合する。
【0067】
特定の場合には、工程b)で製造された前記混合物は、上記で定義した工程a)で用意された前駆体(1)から(4)からなる。
【0068】
工程b)において、混合は、機械的粉砕を用いて、例えばボールミル粉砕を用いて行うことができる。
【0069】
工程b)において、いかなる取り扱いも保護ガス雰囲気下で行われることが有用である。
【0070】
工程b)において、前駆体を含む混合物はペレットに形成されてもよく、これが工程c)で熱処理される。
【0071】
上記に定義した第2の態様による前記特定の方法の工程c)において、方法工程b)で製造された混合物は、熱処理されて、溶融物、典型的にはガラス質溶融物を得る。工程c)のさらなる詳細については、上記で提供した開示を参照されたい。
【0072】
上記に定義した第2の態様による前記特定の方法の工程d)において、工程c)で得られた溶融物を急冷して、一般式(Ia)による組成を有する固体材料が得られるようにする。工程d)のさらなる詳細については、上記で提供した開示を参照されたい。
【0073】
前記で定義した第2の態様による好ましい方法は、上記に開示した1個または複数の特定の特徴を有するものである。
【0074】
上記に定義した第2の態様による方法によってそれぞれ得られた上記に定義した第1の態様による固体材料は、電気化学セルのための固体電解質として使用することができる。本明細書において、固体電解質は、電気化学セルのための固体構造の構成要素を形成でき、前記固体構造は、カソード、アノードおよびセパレーターからなる群から選択される。したがって、上記に定義した第2の態様による方法によってそれぞれ得られた上記に定義した第1の態様による固体材料は、単独で、または電気化学セルのための固体構造、例えばカソード、アノードもしくはセパレーターを生成するための追加の構成要素と併せて使用することができる。
【0075】
したがって、本開示は、電気化学セルのための固体電解質として、上記に定義した第2の態様による方法によってそれぞれ得られた上記に定義した第1の態様による固体材料を使用する方法をさらに提供する。より具体的には、本開示は、電気化学セルのための固体構造の構成要素として、上記に定義した第2の態様による方法によってそれぞれ得られた上記に定義した第1の態様による固体材料を使用する方法であって、前記固体構造が、カソード、アノードおよびセパレーターからなる群から選択される、使用する方法をさらに提供する。
【0076】
本開示の文脈において、放電中に正味の負電荷が発生する電極はアノードと呼ばれ、放電中に正味の正電荷が発生する電極は、カソードと呼ばれる。セパレーターは、電気化学セル内でカソードとアノードを互いから電気的に分離する。
【0077】
全固体電気化学セルのカソードは通常、固体電解質をさらなる構成要素として活性カソード材料の隣に含む。また、全固体電気化学セルのアノードは通常、活性アノード材料の隣にさらなる構成要素として固体電解質を含む。
【0078】
電気化学セル、特に全固体リチウム電池のための固体構造の形態は、特に生成された電気化学セル自体の形態よって決まる。
【0079】
本開示は、カソード、アノードおよびセパレーターからなる群から選択される電気化学セルのための固体構造であって、上記に定義した第2の態様による方法によってそれぞれ得られる上記に定義した第1の態様による固体材料を含む、固体構造をさらに提供する。
【0080】
本開示は、上記に定義した第2の態様による方法によってそれぞれ得られる上記に定義した第1の態様による固体材料を含む電気化学セルをさらに提供する。前記電気化学セルにおいて、上記に定義した第2の態様による方法によってそれぞれ得られる上記に定義した第1の態様による固体材料は、カソード、アノードおよびセパレーターからなる群から選択される1種または複数の固体構造の構成要素を形成し得る。
【0081】
上記に定義した電気化学セルは、以下の構成体
α)少なくとも1種のアノード、
β)少なくとも1種のカソード、
γ)少なくとも1種のセパレーター、
を含む再充電可能な電気化学セルであってもよく、ここで、3種の構成物質のうちの少なくとも1種は、上記に定義した第2の態様による方法によってそれぞれ得られる上記に定義した第1の態様による固体材料を含む固体構造である。
【0082】
好適な電気化学的に活性なカソード材料および適当な電気化学的に活性なアノード材料は、当技術分野で公知である。上記のような電気化学セルにおいて、アノードα)は、黒鉛状炭素、金属リチウムまたはアノード活性材料としてリチウムを含む金属合金を含んでいてもよい。
【0083】
上記のような電気化学セルは、アルカリ金属含有セル、特にリチウムイオン含有セルであってもよい。リチウムイオン含有セルにおいて、電荷輸送はLiイオンによって影響を受ける。
【0084】
リチウム金属と直接接触する際のその優れた電気化学的安定性により、前記で定義した固体構造のある特定の好ましい場合、上記に定義した第2の態様による方法によってそれぞれ得られる上記に定義した第1の態様による固体材料は、リチウム金属を含むアノードと直接接触していてもよく、したがって、それらの間に保護層の必要がない。したがって、全固体電池において、上記に定義した第2の態様による方法によってそれぞれ得られる上記に定義した第1の態様による固体材料は、固体電解質として、またはリチウム金属を含むアノードもしくはリチウム金属を含む合金と直接接触している固体電解質の構成要素として適用することができる。リチウム金属と直接接触している前記固体電解質の優れた電気化学的安定性により、このような全固体電池は、多数のサイクルにわたる好都合なサイクル安定性、クーロン効率および容量維持率を示し得る。
【0085】
電気化学セルは、円盤状または角柱状の形状を有していてもよい。電気化学セルは、鋼鉄またはアルミニウム製であってよい筐体を含んでいてよい。
【0086】
上記のような複数の電気化学セルは、固体電極と固体電解質の両方を有する全固体電池と組み合わせることができる。本開示のさらなる態様は、上記のような少なくとも1種の電気化学セル、例えば上記のような2種以上の電気化学セルを含む、電池、より具体的にはアルカリ金属イオン電池、特にリチウムイオン電池を指す。上記のような電気化学セルは、例えば直列接続または並列接続で、アルカリ金属イオン電池で互いに組み合わせることができる。直列接続が好ましい。
【0087】
電気化学セル、本明細書に記載されている電池はそれぞれ、自動車、コンピューター、携帯情報端末、携帯電話、時計、カメラ一体型ビデオレコーダー、デジタルカメラ、温度計、計算機、ラップトップBIOS、通信機器または遠隔カーロックを作製または操作するために、かつ発電所のエネルギー貯蔵装置などの定置用途に、使用することができる。本発明の他の態様は、少なくとも1つの本発明の電池または少なくとも1つの本発明の電気化学セルを使用して、自動車、コンピューター、携帯情報端末、携帯電話、時計、カメラ一体型ビデオレコーダー、デジタルカメラ、温度計、計算機、ラップトップBIOS、通信機器、遠隔カーロックを作製または操作する方法、および発電所のエネルギー貯蔵装置などの定置用途の方法である。
【0088】
本開示のさらなる態様は、自動車車両、電気モーターで作動する自転車、ロボット、航空機(例えば、ドローンを含む無人航空機)、船舶、または定置型エネルギー貯蔵庫に上記のような電気化学セルを使用する方法である。
【0089】
本開示は、上記のような少なくとも1つの本発明の電気化学セルを含む装置をさらに提供する。車両、例えば自動車、自転車、航空機、または水上車両、例えば船もしくは船舶などの移動装置が好ましい。移動装置の他の例は、携帯型のもの、例えばコンピューター、特にラップトップ、電話または電動工具、例えば建設部門の、特にドリル、電池駆動のドライバーまたは電池駆動のタッカーである。
【0090】
本発明を以下の実施例によってさらに例示するが、これは限定するものではない。
【実施例
【0091】
1.材料の製造
工程a)
以下の前駆体
(1)LiS(Sigma Aldrich、99.98%)
(2)両方とも元素形態のホウ素(Sigma Aldrich 99%)と硫黄
(3)SiO
(4)LiI
を用意した。
【0092】
工程b)
工程a)で用意した前駆体の混合物は、得られた混合物中の元素Li、S、B、M、OおよびXのモル比が一般式(I)に適合するような量で前駆体を一緒に粉砕することによって製造した。
【0093】
比較のために、SiOを添加せずに混合物を製造した。
【0094】
各混合物をペレットにした。
【0095】
粉末の全ての取り扱いを、アルゴン充填グローブボックス内で実施した。
【0096】
工程c)
工程b)で得られたペレットにした混合物をそれぞれ熱処理するために、ガラス状炭素るつぼに入れ、それを石英管に入れた。各石英管を、真空下で密封し、炉内に垂直に配置した。石英管を500℃まで加熱し、12時間保持し、その後800℃で20時間保持した。
【0097】
工程d)
熱処理を完了した後、得られた溶融物を氷水中で急冷した。
【0098】
得られた材料は粉末形態であった。得られた材料の組成の詳細については、下記表を参照されたい。
【0099】
2.イオン伝導率および電気伝導率
Bio-logic MTZ-35インピーダンスアナライザーを使用した、10MHz~100mHzの周波数範囲で振幅100mVの電気化学的インピーダンス分光法によって、得られた固体材料の試料のバルク抵抗を決定した。25℃~80℃の温度範囲で測定を実施した。試料は、粉末材料を10mm直径の特注のSwagelokセルでペレットにすることによって得た。インピーダンススペクトルを記録するために、試料を2枚のインジウムホイルの間に挟んで、可変温度で良好な接触を得た。試料のバルク抵抗からリチウムイオン伝導率を計算した。
【0100】
25℃で測定した全ての試料のリチウムイオン伝導率を、下記の表1および2に示す:
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
表1および2において、「I含有量」は、ヨウ素(I)の含有量を表す。
【0104】
表のデータおよび図1(表2の材料のイオン伝導率対SiO含有量のプロット)は、イオン伝導率が、SiO含有量(式(Ia)のパラメーター「a」)によって著しく影響を受けることを示す。少量のSiOを添加すると、イオン伝導率が大幅に増加する。特定の理論に拘泥するものではないが、この効果は、SiOを含まない比較材料Li1.060.481.020.46と比較して、二次ガラスネットワーク形成剤SiOの存在によるガラス形成の改善に起因する。イオン伝導率は、最大値を過ぎた後でわずかに減少した後にかなり高いレベルに留まるが、SiO含有量がさらに増加すると最終的には著しく減少する。
【0105】
加えて、表から分かるように、LiX含有量が増加するとイオン伝導率が増加する。
【0106】
電気伝導率は、2個のステンレス鋼ピストンの間で粉末を圧縮する、10mm直径の特注のセルを使用して、DC分極によって決定した。各測定のために、0.125、0.25、0.5、および0.75Vの電圧をそれぞれ1時間印加した。Li0.850.38Si0.20.40.820.37(最も高いイオン伝導率を示す材料)では、電気伝導率5.9310-9S/cmが測定され、これはイオン伝導率(2.05mS/cm、表2参照)よりも5桁以上低い。
【0107】
3.X線回折
XRDパターンを記録するために、粉末試料をゼロバックグラウンドホルダーに配置し、Kaptonフィルムで密封した。回折パターンを、Bragg-Brentano型のPan Analytical EmpryeanX線回折計でCuKアルファ放射線を用いて5°2シータ~90°2シータの範囲で測定した。
【0108】
図2は、SiO含有量a(組成の詳細については、上記表2参照)が異なる一組の試料のXRDパターンを示す。
【0109】
この試料のセットでは、XRDパターンにシャープな反射がないことから明らかなように、ガラス形成領域は、a=0.2からa=0.43に伸びている。SiO含有量aがこの範囲外の場合、XRDパターンに観察された第二相および不純物相のそれぞれが由来の反射が出現することにより、材料は複合材料と考えることができる。
【0110】
SiO含有量aが0から0.2に増加したときのLiI第二相のシャープな反射の低下は、SiOを含まない比較材料の不十分なガラスネットワーク形成が、少量のSiOにより既に著しく改善されていることを明らかに示す。ガラスネットワーク形成がより良いほど、より多くのLiIがガラスネットワークに組み込まれ、その結果、LiI第二相の反射が消失し(図2参照)、イオン伝導率が増加する(図1参照)。
【0111】
aが0.2~0.43(ガラス形成領域)の範囲にある材料のXRDパターンは、反射を示さないか、または非常に弱い反射のみを示すので、LiIは、ガラスマトリックス中にほぼ完全に溶解していると推定される。
【0112】
SiO含有量aが0.43では、LiIおよびSiOの反射がXRDパターンに出現し、SiO含有量の増加と共により顕著になる(図2参照)。明らかに、LiIおよびSiOは、ガラスネットワークから結晶化し始めている。a=0.43を超えると、試料は、ナノコンポジットのような挙動を示し、リチウムイオン伝導経路を破壊して伝導率を大幅に低下させる結晶性SiOおよびLiIナノドメインを含有している可能性が高い(図1参照)。
【0113】
図1から明らかなように、ガラス形成領域に収まる組成を有する試料は、好都合なイオン伝導率を示し、ガラス形成領域の下限値に相当するSiO含有量a=0.23でイオン伝導率が最大である。ガラス形成領域内のSiO含有量のさらなる増加に伴うリチウムイオン伝導率の減少は、おそらく総組成に対するLiIの割合の相関的な減少によるものである。
【0114】
ガラス形成領域内にSiOをさらに添加することはイオン伝導率の観点から有利ではないが、化学的安定性の観点から有利な場合がある(下記参照)。
【0115】
4.空気に対する安定性
試料は、粉末材料100mgを10mm直径のペレットに圧縮することによって得た。空気に対する安定性を試験するために、試料を三つ口丸底フラスコに入れた。空気ポンプを逆に運転し、周囲空気を三つ口丸底フラスコに流入させた。フラスコの第二口は、HSセンサー(BW GasAlertMicro 5 マルチガス検出器)に直接接続されていたプローブを含有していた。正確なHSモニタリングを確実にするために、プローブを試料の真上に配置した。第三口は、排気/吹出口として使用した。空気温度は、約23~25℃で、相対湿度40~50%であった。大気暴露時の試料からのHS発生を約3時間モニタリングした。
【0116】
比較のために、β-LiPS(溶液処理によって製造した、WO2018/054709A1参照)、およびLi11の試料も試験を行った。
【0117】
試験の結果を図3に示す。
【0118】
予想したように、Li11は、不十分な安定性を示し、最初の5分間で10ppmを超えるレベルで急速なHS発生を示した。HSレベルが検出器の限界を越えた200ppm超に達したため、実験を100分後に短縮した。対照的に、β-LiPSは、観察可能なHS発生を示さなかった。これは、大気中の水分の存在下で材料を安定させるのに役立つ低い処理温度のために、材料に溶媒が残留していることが原因である可能性がある。
【0119】
対照的に、組成Li0.770.39Si0.230.460.770.5の試料は、5ppmのHS発生を3時間示し、組成Li0.50.25Si0.5OSI0.25の試料は、1時間の大気暴露後に確認された2ppmのHSへの一次的な増加を除いて、β-LiPSとほぼ同じ低いHS発生を示した。しかしながら、組成Li0.50.25Si0.5OSI0.25は、低いリチウムイオン伝導率を示した。
【0120】
明らかに、シリケート基の数が増加すると、イオン伝導率とのトレードオフで化学安定性が増加する。
【0121】
リチウムイオン電池は典型的には、水分が大幅に少ない(<1%相対湿度)乾燥室条件下で処理されるが、ここで実施した実験は、やや極端な条件を示していることに留意しなければならない。したがって、ここで研究したチオヨードホウケイ酸塩は、電池の組み立てに必要とされる制限時間内にHSがほとんどまたは全く発生しないことが合理的に予想できるため、有望であると考えられる。
【0122】
5.顕微鏡法
Li0.850.38Si0.20.40.820.37(最も高いイオン伝導率を示す材料)の粒子の走査型電子顕微鏡像および付随のエネルギー分散X線分析(EDX)(図示せず)ならびに電子エネルギー損失スペクトル(EELS)を伴う走査型透過電子顕微鏡法(STEM)分析(図示せず)は、研究された材料が、サブミクロンスケールで元素分散の高度な均一性を示すことを示した。
【0123】
6.熱安定性
5~10mgの量の固体材料をアルミニウムパンに入れ、Tzero試料プレスを用いてアルゴンを充填したグローブボックスに気密密閉した。示差走査熱分析(DSC)を、TA Instruments Q2000 DSCを使用して窒素流下で実施した。試料を、5℃/分の速度で25℃~500℃に加熱した。
【0124】
ガラスの熱安定性は、軟化(ガラス転移)温度(T)および結晶化に対する安定性によって特徴づけることができ、これは結晶化開始温度(T)とガラス転移温度(T)の間の温度差によって決定される。
【0125】
いくつかの材料のガラス転移温度(T)、結晶化開始温度(T)および溶融温度Tを表3にまとめる。Tは、DSCベースラインの低下の最大勾配が発熱結晶化ピークの前に生じる温度に対応する。Tは、ガラスネットワークから再結晶するLiIからの結晶化の開始に対応する。LiIの再結晶をXRDによって確認した(図示せず)。Tは、ガラス自体の溶融に対応しないが、以前にガラスから再結晶されたLiIの溶融に対応する。
【0126】
SiO含有量がa=0からa=0.2に増加すると、Tが増加し、TおよびTがさらに大幅に増加することが表3から見られる。SiO含有量がa=0.27にさらに増加すると、Tがさらに増加するが、TおよびTはわずかに変化するだけである。Tとは対照的にTの増加が強いため、SiO含有量がa=0からa=0.27に増加すると、熱安定性パラメーター、ΔT(T-T)が増加し、SiO含有量の増加により、再結晶に関してガラスネットワークの安定性が増加することを意味する。SiO含有量がa=0.33にさらに増加すると、TおよびTがいくらか減少するが、Tおよび熱安定性パラメーターはわずかに変化するだけである。
【0127】
【表3】
【0128】
7.電気化学的研究
Li0.850.38Si0.20.40.820.37(最も高いイオン伝導率を示す材料)に電気化学的研究を行った。
【0129】
リチウム金属と接触している固体電解質の界面反応性を、対称Li|固体電解質|Liセル(ここで、固体電解質はLi0.850.38Si0.20.40.820.37(本発明による)またはβ-LiPS(比較のため)のいずれかである)の定電流サイクル測定と併せた電気化学的インピーダンス分光法(EIS)の組合せを用いて評価した。アルゴン雰囲気で充填されたグローブボックス内で対称セルを組み立てた。固体電解質を、10mm直径のPEEKシリンダー中2トンの荷重下で1分間圧縮して、厚さ約0.12mmのペレットを形成した。Li金属ホイル(Sigma Aldrich)を、固体電解質と接触しているペレットのいずれかの側にホイルを押圧した。この組立体Li-ホイル|固体電解質|Li-ホイルは、2本のステンレス鋼ロッドの間に挟み、特注の装置を使用して圧力下で保持した。セルは、4N・mのトルクに設定されたトルクレンチで締めつけた。セルの定電流サイクルを、Bio-Logic VMP-3を使用して室温で行った。本発明によるセルは、電流密度0.1mA/cmで0.1mAh/cmの面積容量まで定電流サイクルを行った。比較セルは、電流密度0.1mA/cmで0.05mAh/cmの面積容量まで定電流サイクルを行った。同時に、各セルの抵抗を、100mVの印加電圧で電気化学インピーダンス分光法を使用して5サイクル毎に測定した。図4は、サイクル時間(5サイクル毎に測定した)の増加に伴うセル抵抗の発生を示す。上のグラフは比較セルに関するものであり、下のグラフは本発明によるセルに関する。
【0130】
本発明によるセルは、比較セル(100mV)の10分の1の分極電圧(10mV)で110時間の安定なサイクル(リチウムの剥離/めっき)を示す。この差の大部分は、β-LiPSと比較してLi0.850.38Si0.20.40.820.37のイオン伝導率が著しく高いためである。比較セルの抵抗は、変動するように見えるが、サイクル中に増加する。比較セルの抵抗の増加は、β-LiPSについて当技術分野で公知であり(例えばZ.Liu、W.Fu、E.A.Payzant、X.Yu、Z.Wu、N.J.Dudney、J.Kiggans、K.Hong、A.J.Rondinone、C.Liang、J.Am.Chem.Soc.2013年、135、975参照)、当技術分野で公知のLiSおよびLiPから構成される不動態化間相の形成に起因する可能性がある(例えばK.N.Wood、K.X.Steirer、S.E.Hafner、C.Ban、S.Santhanagopalan、S.H.Lee、G.Teeter、Nat.Commun.2018年、9、2490参照)。その不動態化間相の形成のために、β-LiPSは、他の最新技術の固体電解質と比較して、Li金属と接触する最も安定な固体電解質の1つと広く見なされている(例えばS.Wenzel、D.A.Weber、T.Leichtweiss、M.R.Busche、J.Sann、J.Janek、Solid State Ionics 2016年、286、24;S.Wen-zel、S.Randau、T.Leichtweiss、D.A.Weber、J.Sann、W.G.Zeier、J.Janek、Chem.Mater.2016年、28、2400;およびS.Wenzel、T.Leichtweiss、D.Krueger、J.Sann、J.Janek、Solid State Ionics 2015年、278、98参照)。対照的に、本発明によるセルは、サイクルの間に抵抗の大幅な増加を示さない。この効果は、本発明によるセルの固体電解質へのLiIの取り込みに起因する可能性がある。
【0131】
電池サイクル試験を、Li-In合金で作製されたアノード、Li0.850.38Si0.20.40.820.37で作製された固体電解質層(セパレーター)および固体電解質Li0.850.38Si0.20.40.820.37とTiS(Sigma Aldrich、99.9%、粒径75μm)を1:1の質量比で混合することによって製造された複合材料を含むカソードを含む全固体セルで実施した。カソード複合体(8mg;5.13mg/cmに対応するTiS含有量)、および固体電解質(60mg)を10mm直径のPEEKシリンダー中で圧縮して、二層ペレットを形成した。アノードのLi-In合金は、目的組成がLi0.5Inであり、リチウムホイルとインジウムホイルを0.5モル比で圧縮することによって形成され、固体電解質と接触して配置される。次いでセルを2本のステンレス鋼ロッドで挟み、特注の装置を使用して圧力下に保持した。セルの圧力緩和を可能にするために、サイクル前にセルを8時間休止させた。セルの面積容量は、1.2mAh/cmであった。セルの定電流サイクル(充電/放電)を、Bio-Logic VMP-3を使用して室温で行った。セルを、C/10で、室温(約25℃)、0.9~2.4V対Li-In(1.5~3V対Li)の電圧範囲で充電および放電させた。
【0132】
サイクル1、2、5、10、20および50の充電-放電曲線を図5に示す。2.7V対Liでの最初の充電サイクル後、カソード界面での初期電解質酸化に起因する小さな不可逆容量(6mAh/g)が明らかである。この不可逆容量が観察される電位は、S2-が酸化を受けるチオリン酸塩系の電解質で観察されたものと類似している(例えばW.D.Richards、L.J.Miara、Y.Wang、J.C.Kim、G.Ceder、Chem.Mater.2015年、28、266;およびR.Koerver、F.Walther、I.Ayguen、J.Sann、C.Dietrich、W.G.Zeier、J.Janek、J.Mater.Chem.A 2017年、5、22750参照)。最初の充電サイクルで起こるこの不可逆プロセスは、図6に示されている対応するdQ/dVプロットでより明確に見られる。2.15V対Li-Inでのピークは、最初のサイクル後に強度の急激な低下を示し、10サイクル目までに完全に消失し、安定なカソード-電解質界面の形成を示唆する。
【0133】
最初のサイクル後、セルは、C/10で優れたサイクル性能を示し(図7の上のグラフ)、3か月のサイクルで容量が実質的に失われなかった。セルは、平均99.9%の高いクーロン効率で、約239mAh/g(TiSの理論容量:240mAh/g)の容量を130サイクル以上維持する(図7の下のグラフ)。
【0134】
同じ電圧範囲内および25℃でサイクルを行った同一の全固体セルのレート性能を、図8に示す。最初に、C/5でサイクルを行ったセルは、213mAh/gの容量を達成し、これは電流密度を2倍にした場合の90%の容量維持率を表す。その後電流密度を1Cレートに上げると、容量の75%が保持されており、初期のC/5レートに戻ると容量は完全に回復した。
【図面の簡単な説明】
【0135】
図1図1(表2の材料のイオン伝導率対SiO含有量のプロット)は、イオン伝導率が、SiO含有量(式(Ia)のパラメーター「a」)によって著しく影響を受けることを示す。
図2図2は、SiO含有量a(組成の詳細については、上記表2参照)が異なる一組の試料のXRDパターンを示す。
図3】比較のために、β-LiPS(溶液処理によって製造した、WO2018/054709A1参照)、およびLi11の試料も試験を行った。試験の結果を図3に示す。
図4図4は、サイクル時間(5サイクル毎に測定した)の増加に伴うセル抵抗の発生を示す。
図5】サイクル1、2、5、10、20および50の充電-放電曲線を図5に示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8