IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クラレの特許一覧

特許7605655建築又は土木構造物セメント混和用樹脂およびその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】建築又は土木構造物セメント混和用樹脂およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/26 20060101AFI20241217BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
C04B24/26 B
C04B24/26 E
C04B24/26 H
C04B28/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021027448
(22)【出願日】2021-02-24
(65)【公開番号】P2022128958
(43)【公開日】2022-09-05
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110002206
【氏名又は名称】弁理士法人せとうち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 結稀
(72)【発明者】
【氏名】加藤 利典
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/099082(WO,A1)
【文献】特開2019-119891(JP,A)
【文献】特開平09-316272(JP,A)
【文献】特開2011-246286(JP,A)
【文献】国際公開第2019/132030(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00-28/36
C08J 3/12
C08F 16/06
C08F 8/12
C08F 8/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルアルコール系重合体架橋物からなる、建築又は土木構造物セメント混和用樹脂であって、
前記ビニルアルコール系重合体架橋物が、ビニルアルコール系重合体を架橋剤と反応させてなるものであり、
前記ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度が400以上3000以下であり、前記ビニルアルコール系重合体における、全構成単位に対する、ビニルアルコール単位以外の他の構成単位の含有量が3モル%以上20モル%以下であり、カルボキシル基、エステル基、スルホン酸基、アミノ基およびそれらの塩からなる群から選択される1種以上の官能基を導入するモノマー由来の構成単位の含有量が3モル%以上10モル%以下であり、
前記架橋剤がグリオキサール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド及びグルタルアルデヒドからなる群から選択される一種以上の多価アルデヒド化合物であり、
前記ビニルアルコール系重合体の水酸基に対する架橋剤量が0.001モル%以上0.5モル%以下であり、
細孔直径0.1~10μmの細孔の累積細孔体積が0.01~2.0mL/gである、セメント混和用樹脂。
【請求項2】
前記ビニルアルコール系重合体架橋物が、カルボキシル基、エステル基、スルホン酸基、アミノ基およびそれらの塩からなる群から選択される1種以上の官能基を含む、請求項1に記載のセメント混和用樹脂。
【請求項3】
前記ビニルアルコール系重合体架橋物が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸およびそれらの誘導体からなる群から選択される1種以上のカルボン酸系モノマー構成単位を含む、請求項に記載のセメント混和用樹脂。
【請求項4】
溶媒100質量部に対し、けん化前のビニルアルコール系重合体1質量部以上30質量部以下で、けん化反応を行う工程を含む、請求項1~のいずれか1項に記載のセメント混和用樹脂の製造方法。
【請求項5】
ビニルアルコール系重合体を不均一反応により架橋を行う工程を含む、請求項1~のいずれか1項に記載のセメント混和用樹脂の製造方法。
【請求項6】
請求項1~のいずれかに記載のセメント混和用樹脂及びセメントを含む、インスタントセメント。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載のセメント混和用樹脂、セメント及び砂を含む、インスタントモルタル。
【請求項8】
請求項1~のいずれかに記載のセメント混和用樹脂、セメント、砂及び石を含む、インスタントコンクリート。
【請求項9】
請求項に記載のインスタントセメント及び水を含む、セメントペースト。
【請求項10】
請求項に記載のインスタントモルタル及び水を含む、フレッシュモルタル。
【請求項11】
請求項に記載のインスタントコンクリート及び水を含む、フレッシュコンクリート。
【請求項12】
請求項1~のいずれかに記載のセメント混和用樹脂を含むモルタル。
【請求項13】
請求項1~のいずれかに記載のセメント混和用樹脂を含むコンクリート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築又は土木構造物セメント混和用樹脂およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高度経済成長期に建築された高速道路やトンネルなどのインフラの老朽化が課題となっている。コンクリート製品の劣化の要因の一つとして、ひび割れした部分からの雨水や空気の浸透による酸性化がある。これら建築構造物や土木構造物に使用されるセメントのひび割れは、次のような毛管張力機構によって生じるとされている。1)セメントと水が水和する過程において、硬化体内部が乾燥状態となり、空隙が生じる。2)この硬化体中の空隙が不飽和状態となって気液界面が生じると、水の表面張力によってメニスカスが形成される。3)液状水に負圧が生じ、硬化体に弾性的な体積減少を生じさせる。このようなセメントの体積減少、つまり「自己収縮」が起きることが、要因の一つとなっている。
【0003】
コンクリートの自己収縮を抑制するには、セメントに対する水の量を増加することが望ましいが、近年の鉄筋コンクリート造建築物等の建造物の高層化に伴うコンクリートの高強度化の要求に伴い、水の量を低減して用いることが増えている。しかし、水の量を低減したコンクリートでは特に空隙内部が乾燥しやすいため自己収縮が顕著であり、建造物の強度低下の要因の一つとなっている。
【0004】
非特許文献1には、セメントペーストに吸水性樹脂を添加することで亀裂を抑制できることが示されている。これによると、水和反応に伴う水の消費による空隙内部の乾燥に対し、吸水性樹脂が保持している水を徐放することで毛管張力を低減し、自己収縮を抑制するとされている。さらに硬化後には、吸水性樹脂が離水し、収縮するため、膨潤した吸水性樹脂に相当するサイズの空隙が残り、コンクリートやモルタルの残存水凍結による体積増加に伴う亀裂発生を緩和するという効果も有している。
【0005】
特許文献1には、建築又は土木構造物セメント用としてポリアクリル酸ゲルを主成分とする吸水性樹脂が、特許文献3には、掘削セメント用として熱架橋した変性ポリビニルアルコール系樹脂が使用できることが開示されている。しかしポリアクリル酸ゲルは、脱イオン水や水道水に対しては高吸水力を示すものの、セメント中に含まれるカルシウムイオンやアルミニウムイオンなどを多量に含有した多価電解質溶液に対しては、イオン架橋により不溶化が進行し、吸水力が極端に低下する場合がある。また、変性ポリビニルアルコール系樹脂はセメント中のアルカリ下において架橋が切れ、硬化までに吸水性能を保持できなくなるという問題があった。
【0006】
このような問題を解決するため、特許文献2には、カチオン性または両性吸水性樹脂が、セメント組成物に含まれる多量の多価電解質を含んだ場合においても吸水量の低下が抑制でき、掘削泥水用セメント混和材として好適に使用できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭56-069257
【文献】WO2017-099082
【文献】特開平1-203251
【非特許文献】
【0008】
【文献】Application of Superabsorbent Polymers (SAP) in Concrete Construction: State-of-the-Art Report Prepared by Technical Committee 225-SAP, 2012.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本発明者らの検討によれば特許文献2に示されているカチオン性または両性吸水性樹脂は、多量の水を保持することができるものの、硬化過程の初期において、水とセメントの水和生成物や砂などの隙間に十分な水を供給することができないため、毛管張力による圧力を緩和することができず、充分なひび割れ抑制効果を発揮することができない場合があった。本発明が解決しようとする課題は、上記問題を解決することであり、多価電解質下やアルカリ下であるセメントペースト中であっても吸水量が十分高く、一方で硬化過程においては周囲に水を供給することができる、内部養生効果を持つセメント添加剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の累積細孔体積を有することで樹脂からセメントへの離水性を発現し、かつ特定の架橋構造を有する樹脂を用いることによって、建築又は土木構造物セメント中のアルカリ存在下であっても十分な吸水量を有することを見出し、本発明に到達した。
【0011】
[1]ビニルアルコール系重合体架橋物からなる、建築又は土木構造物セメント混和用樹脂であって、細孔直径0.1~10μmの細孔の累積細孔体積が0.01~2.0mL/gである、セメント混和用樹脂。
[2]前記ビニルアルコール系重合体架橋物の架橋構造が、多価アルデヒド化合物または多価エポキシ化合物に由来する、[1]に記載のセメント混和用樹脂。
[3]前記ビニルアルコール系重合体架橋物が、カルボキシル基、エステル基、スルホン酸基、アミノ基およびそれらの塩からなる群から選択される1種以上の官能基を含む、[1]または[2]に記載のセメント混和用樹脂。
[4]前記ビニルアルコール系重合体架橋物が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸およびそれらの誘導体からなる群から選択される1種以上のカルボン酸系モノマー構成単位を含む、[3]に記載のセメント混和用樹脂。
[5]前記カルボン酸系モノマー構成単位量が0.1mol%~50mol%である[1]~[4]のいずれか1項に記載のセメント混和用樹脂。
[6]溶媒100質量部に対し、けん化前のビニルアルコール系重合体1質量部以上30質量部以下で、けん化反応を行う工程を含む、[1]~[5]のいずれか1項に記載のセメント混和用樹脂の製造方法。
[7]ビニルアルコール系重合体を不均一反応により架橋を行う工程を含む、[1]~[4]のいずれか1項に記載のセメント混和用樹脂の製造方法。
[8][1]~[5]のいずれかに記載のセメント混和用樹脂及びセメントを含む、インスタントセメント。
[9][1]~[5]のいずれかに記載のセメント混和用樹脂、セメント及び砂を含む、インスタントモルタル。
[10][1]~[5]のいずれかに記載のセメント混和用樹脂、セメント、砂及び石を含む、インスタントコンクリート。
[11][8]に記載のインスタントセメント及び水を含む、セメントペースト。
[12][9]に記載のインスタントモルタル及び水を含む、フレッシュモルタル。
[13][10]に記載のインスタントコンクリート及び水を含む、フレッシュコンクリート。
[14][1]~[5]のいずれかに記載のセメント混和用樹脂を含むモルタル。
[15][1]~[5]のいずれかに記載のセメント混和用樹脂を含むコンクリート。
【発明の効果】
【0012】
本発明のセメント混和用樹脂は、建築又は土木構造物セメント中のアルカリ存在下においても吸水性及び離水性に優れることで、高い内部養生効果、つまりモルタルやコンクリートの自己収縮を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は本実施形態に限定されない。
【0014】
本発明のセメント混和用樹脂は、細孔直径0.1~10μmの細孔の累積細孔体積が0.01~2.0mL/gである。本発明者らが検討したところ、上記累積細孔体積が0.01mL/g以上であることにより、表面積が大きく、かつ細孔内に離水しやすい水を保持することができるため、セメント混和用樹脂として用いるのに好適であることが分かった。また、上記累積細孔体積が2.0mL/gを超えると、吸水時に粒子同士が融着した粗大な凝集物が形成したり、輸送時の衝撃等で圧壊しやすくなったりといった課題が生じたりする。上記累積細孔体積は、好ましくは0.1mL/g以上、より好ましくは0.15mL/g以上、さらに好ましくは0.2mL/g以上であり、好ましくは1.5mL/g以下、より好ましくは1.0mL/g以下、さらに好ましくは0.5mL/g以下である。
【0015】
上記累積細孔体積の範囲を満たすセメント混和用樹脂は、ポリ酢酸ビニルのけん化によりポリビニルアルコールを製造する際のポリ酢酸ビニルの濃度の調整や、ビニルアルコール系重合体とグリセリン、エチレングリコールなどの助剤成分とを混合して分散体を調製し、該分散体から助剤成分を溶出させる方法における助剤成分の含有量の調整や分散剤の添加などによる助剤成分の分散度合の調整などによって制御することができる。例えば前者の方法に関しては、ポリ酢酸ビニルのメタノールなどの溶媒に対する濃度を低くすることによって累積細孔体積は大きくなり、濃度を高くすることによって累積細孔体積は小さくなる。上記累積細孔体積は、例えば水銀圧入法により測定でき、より詳細には実施例に記載の方法に従って測定した値である。
【0016】
本発明のセメント混和用樹脂は、好ましくは公称目開き1000μmの篩を通過し、より好ましくは公称目開き700μmの篩を通過し、更に好ましくは公称目開き500μmの篩を通過し、特に好ましくは公称目開き300μmの篩を通過する粒度を有し、好ましくは公称目開き10μmの篩を通過しない、より好ましくは公称目開き30μmの篩を通過しない、更に好ましくは公称目開き50μmの篩を通過しない、特に好ましくは公称目開き70μmの篩を通過しない粒度を有する。好ましい一実施態様において、セメント混和用樹脂は、公称目開き1000μmの篩を通過し、かつ公称目開き10μmの篩を通過しない粒度を有する。セメント混和用樹脂がこのような粒度を有すると、モルタルまたはコンクリートが硬化した後にセメント混和用樹脂が離水して収縮し、適度なサイズの空隙を残すことでモルタルまたはコンクリートに含まれる水の凍結融解によるひび割れを抑制する効果を適切に発現することができる。
【0017】
本明細書では、「構成単位」とは重合体を構成する繰り返し単位のことを意味するが、例えば、ビニルアルコール単位は「1単位」、2単位のビニルアルコール単位がアセタール化された構造は「2単位」と数えることとする。
【0018】
本発明のセメント混和用樹脂は、建築又は土木構造物セメント中での樹脂の溶出を抑制する観点から、ビニルアルコール系重合体架橋物からなる。架橋構造の形態に特に制限はなく、その例としては、エーテル結合、アセタール結合、エステル結合および炭素-炭素結合等による架橋構造を挙げることができる。ビニルアルコール系重合体中の架橋構造の有無は、例えば100℃の熱水またはジメチルスルホキシド中での溶出率により測定することができる。具体的には、試料の質量に対する、溶出した試料の質量の割合(溶出した試料の質量×100/試料の質量)で示される溶出率が一定の値以下(例えば90質量%以下)であることにより、架橋構造の存在を確認できる。
【0019】
上記エーテル結合の例としては、ビニルアルコール系重合体が有する水酸基間の脱水縮合により形成されるエーテル結合を挙げることができる。上記エーテル結合の別の例としては、ビニルアルコール系重合体の製造において、1分子中に複数のエポキシ基を有する多価エポキシ化合物を用いた場合に形成されるエーテル結合を挙げることができる。上記アセタール結合の例としては、ビニルアルコール系重合体の製造において、1分子中に複数のアルデヒド基を有する多価アルデヒド化合物を用いた場合に形成されるアセタール結合を挙げることができる。上記エステル結合の例としてはビニルアルコール系重合体の製造において、1分子中に複数のカルボキシル基またはエステル基を有する多価カルボニル化合物を用いた場合に形成されるアセタール結合を挙げることができる。上記エステル結合の別の例としては、ポリビニルアルコール系重合体が有するカルボキシル基と水酸基の脱水縮合、またはエステル基と水酸基のエステル交換により形成されるエステル結合を挙げることができる。上記炭素-炭素結合としては、例えば活性エネルギー線をビニルアルコール系重合体に照射したときに生じる、ビニルアルコール系重合体の炭素ラジカル間のカップリングにより形成される炭素-炭素結合を挙げることができる。これらの架橋構造は1種が含まれていても、複数種が含まれていてもよい。中でも、製造容易性の観点からアセタール結合またはエステル結合またはエーテル結合による架橋構造が好ましく、セメント中での架橋構造の耐塩基性(溶出率)の観点ではアセタール結合またはエーテル結合による架橋構造がより好ましい。
【0020】
ビニルアルコール系重合体架橋物の架橋構造は、多価アルデヒド化合物または、多価エポキシ化合物に由来することが好ましい。多価アルデヒド化合物としては例えば、グリオキサール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、1,9-ノナンジアール、アジポアルデヒド、マレアルデヒド、タルタルアルデヒド、シトルアルデヒド、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、およびテレフタルアルデヒド等の2官能のアルデヒドを挙げることができる。多価アルデヒド化合物を用いた場合、ビニルアルコール系重合体の異なる分子鎖のうち一方が有する水酸基が、上記多価アルデヒド化合物の有する1つのアルデヒド基とアセタール化反応をし、また、2つのビニルアルコール系重合体のうち他方が有する水酸基が、当該多価アルデヒド化合物の有する別の1つのアルデヒド基とアセタール化反応をすることで、アセタール結合を2つ導入することができる。好ましい化合物の種類としては溶媒の選定の幅の広さから多価アルデヒド化合物であり、その中でも特に樹脂中に均一に架橋を分布させられるという点からグリオキサール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒドがさらに好ましい。
【0021】
ビニルアルコール系重合体架橋物の原料となるビニルアルコール系重合体の水酸基に対する架橋剤量としては、建築又は土木構造物セメント中での吸水性を維持しやすい観点から、好ましくは0.001モル%以上、より好ましくは0.005モル%以上、更に好ましくは0.01モル%以上、より更に好ましくは0.03モル%以上であり、好ましくは0.5モル%以下、より好ましくは0.4モル%以下、更に好ましくは0.3モル%以下である。
【0022】
前記ビニルアルコール系重合体のビニルアルコール単位の含有量は、上記ビニルアルコール系重合体の全構成単位に対して好ましくは20モル%以上、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは60モル%以上であり、好ましくは98モル%以下、より好ましくは95モル%以下、更に好ましくは90モル%以下である。上記ビニルアルコール単位の含有量は、FTIRまたは固体13C-NMR等により測定できるが、一定量の無水酢酸と反応させた際の無水酢酸の消費量から算出することもできる
【0023】
前記ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度は、特に制限はないが、製造容易性の観点から、好ましくは20000以下、より好ましくは10000以下、更に好ましくは4000以下、特に好ましくは3000以下である。一方、ビニルアルコール系重合体の力学特性および水への耐溶出性の観点からは、粘度平均重合度は、好ましくは100以上、より好ましくは200以上、更に好ましくは400以上である。粘度平均重合度は、JIS K 6726に準拠した方法により測定できる。架橋構造としてエーテル構造、アセタール構造またはエステル構造を有する場合、粘度平均重合度の測定は、架橋構造を切断した後に行うことができる。前記切断は、一般的な方法、例えば、エーテル構造においては臭化水素酸やヨウ化水素酸などの強酸による求核置換反応、アセタール構造においては酸による加水分解反応、エステル構造においては酸またはアルカリを用いた加水分解反応、により行うことができ、この操作はビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度に影響を与えない。
【0024】
前記ビニルアルコール系重合体は、ビニルアルコール単位以外の他の構成単位を含んでも良い。上記他の構成単位の例としては、後述する官能基を導入するためのモノマー由来の構成単位;酢酸ビニル、およびピバル酸ビニル等のカルボン酸ビニル由来の構成単位;エチレン、1-ブテン、およびイソブチレン等のオレフィン由来の構成単位;等を挙げることができる。上記他の構成単位は1種を含有していても複数種を含有していてもよい。
【0025】
上記他の構成単位の含有量は、ビニルアルコール系重合体の全構成単位に対して、好ましくは50モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは20モル%以下、更により好ましくは10モル%以下、特に好ましくは5モル%以下であり、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上、更に好ましくは1モル%以上、更により好ましくは2モル%以上、特に好ましくは3モル%以上である。上記他の構成単位の含有量が前記下限値以上であり、前記上限値以下であると、本発明のセメント混和用樹脂のより優れた吸水量または吸水速度を得やすい。
【0026】
本発明の一態様において、建築又は土木構造物セメント中での吸水性を発現する観点から、前記ビニルアルコール系重合体架橋物は、セメントフィルター溶液中での溶出率が0~40%であることが好ましく、0~30%がさらに好ましく、0~25%がより好ましい。上記溶出率が上限より高いと吸水能を持つ有効な部分が少なくなり、後述の吸水倍率が低下するためビニルアルコール系重合体架橋物を多量に添加する必要があったり、形状を維持できずに間隙の吸水能が低下したりといった問題が懸念される。この溶出率は、15~25℃のセメントフィルター溶液にビニルアルコール系重合体架橋物を24時間浸漬した後のビニルアルコール系重合体架橋物の純分の重量と浸漬前のビニルアルコール系重合体架橋物の重量から算出され、より詳細には実施例に記載の方法に従って測定した値である。なおセメントフィルター溶液とは、Materials and Structures(2018)51:116に記載の通り、質量比で普通ポルトランドセメント1に対してイオン交換水5を分散させ、マグネチックスターラーを用いて24時間撹拌後のスラリーをろ過して得られた水溶液であり、この水溶液中での吸水量や溶出挙動はセメントペースト中でのビニルアルコール系重合体架橋物の挙動を模している。
【0027】
本発明の一態様において、硬化過程において周囲に十分な水を供給する観点から、前記ビニルアルコール系重合体架橋物は、セメントフィルター溶液中での吸水倍率が好ましくは10g/g以上、より好ましくは15g/g以上、特に好ましくは25g/g以上である。10g/gより低いと樹脂が保持できる水が少ないため、離水量も少なくなる。一方、セメントペーストの混練等における形状保持という力学強度の観点から、好ましくは100g/g以下、より好ましくは70g/g以下、特に好ましくは40g/g以下である。100g/gより高いと膨潤した樹脂がセメントペーストの混練で外圧を受けた際に形状を維持できずに破断し、好ましい粒径よりも小さくなることが懸念される。この吸水倍率は、15~25℃のセメントフィルター溶液に樹脂を24時間浸漬した後の吸水量と浸漬前の樹脂の重量から算出され、より詳細には実施例に記載の方法に従って測定した値である。
【0028】
本発明の一態様において、硬化後に、周囲に十分な水を供給する観点から、前記ビニルアルコール系重合体架橋物1g当たりの離水量が、好ましくは7.0g以上、より好ましくは7.5g以上、特に好ましくは8.0g以上である。離水量は、セメントフィルター溶液で飽和膨潤させた吸水性樹脂を所定の回転数で遠心脱水したときの離水量から算出され、より詳細には実施例に記載の方法に従って測定した値である。
【0029】
前記ビニルアルコール系重合体架橋物は、カルボキシル基、エステル基、スルホン酸基、アミノ基およびそれらの塩からなる群から選択される1種以上の官能基を含むことが望ましい。
【0030】
本発明のセメント混和用樹脂に上記カルボキシル基を導入するモノマーとしては特に制限はなく、その例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸等のカルボン酸及びその塩を挙げることができる。なお、カルボキシル基の塩を導入したい場合、カルボキシル基を導入した後で、塩に変換してもよい。
【0031】
前記ビニルアルコール系重合体架橋物に上記エステル基を導入するモノマーとしては特に制限はなく、アクリル酸エステル、カルボン酸系モノマーの無水物、および中和物等も挙げることができ、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、マレイン酸モノメチル、イタコン酸ジメチル、無水マレイン酸、メサコン酸ジメチル、およびシトラコン酸ジメチル等を用いることができる。また、エステル基として、ポリビニルアルコール系重合体に由来する水酸基とカルボン酸エステルより脱水反応して生じた、ラクトンを含んでいてもよい。
【0032】
前記ビニルアルコール系重合体架橋物に上記スルホン酸基を導入するモノマーとしては特に制限はなく、その例としては、ビニルスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、およびp-スチレンスルホン酸等を挙げることができる。また、その塩を導入するモノマーの例としては、ビニルスルホン酸ナトリウム、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム、およびp-スチレンスルホン酸ナトリウム等を用いることができる。なお、スルホン酸基の塩を導入したい場合、スルホン酸基を導入した後で、塩に変換してもよい。
【0033】
前記ビニルアルコール系重合体架橋物に上記アミノ基を導入するモノマーとしては特に制限はなく、その例としては、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ビニルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、p-ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、および3-(メタクリルアミド)プロピルトリメチルアンモニウムクロライド等を挙げることができる。また、上記アンモニウム基を有するモノマーの誘導体の例としては、該モノマーのアミン等を挙げることができ、例えば、ジアリルメチルアミン、ビニルアミン、アリルアミン、p-ビニルベンジルジメチルアミン、および3-(メタクリルアミド)プロピルジメチルアミン等を用いることができる。
【0034】
上記官能基の塩のカウンターカチオンの例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、およびセシウムイオン等のアルカリ金属イオン;マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、およびバリウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アルミニウムイオン、および亜鉛イオン等のその他金属イオン;アンモニウムイオン、イミダゾリウム類、ピリジニウム類、およびホスホニウムイオン類等のオニウムカチオン;等を挙げることができる。
【0035】
前記ビニルアルコール系重合体架橋物における、導入するモノマーの含有量は、ビニルアルコール系重合体の全構成単位に対して0.1モル%以上、好ましくは1モル%以上、より好ましくは3モル%以上、更に好ましくは4モル%以上、特に好ましくは5モル%以上であり、50モル%以下、好ましくは40モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは25モル%以下、更により好ましくは20モル%以下、特に好ましくは15モル%以下、更に特に好ましくは10モル%以下である。上記官能基の含有量が前記下限値以上であると、ビニルアルコール系重合体は、より向上した吸水量または吸水速度を有しやすい。上記官能基の含有量が前記上限値以下であると、ビニルアルコール系重合体は、セメント中に含まれる二価イオンとの接触時にも優れた吸液量または吸液速度を維持しやすく、この吸液量または吸液速度は、長期間にわたって低下しにくい。
【0036】
本発明のセメント混和用樹脂は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸およびそれらの誘導体からなる群から選択される1種以上のカルボン酸系モノマー構成単位を含むことが望ましく、製造容易性の観点からアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、マレイン酸モノメチル、イタコン酸ジメチル、無水マレイン酸が好ましい。
【0037】
本発明のセメント混和用樹脂の製造方法は、溶媒100質量部に対し、けん化前のビニルアルコール系重合体1質量部以上30質量部以下で、けん化反応を行う工程(A)を含むことが好ましい。
【0038】
製造効率の観点から、工程(A)で用いられるけん化前のビニルアルコール系重合体であるポリ酢酸ビニルの量は溶媒100質量部に対して1質量部以上、好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上とすることが好ましい。細孔を形成する観点から30質量部以下、好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下とすることが好ましい。
【0039】
工程(A)で用いる溶媒の種類としては、けん化反応がエステル交換で進行するためアルコール系溶媒であるメタノールやエタノールが好ましく、中でも、その後の樹脂からの除去容易性という観点でメタノールがさらに好ましい。
【0040】
工程(A)で用いるポリ酢酸ビニルの粘度平均重合度は、特に制限はないが、製造容易性の観点から、好ましくは20000以下、より好ましくは10000以下、更に好ましくは4000以下、特に好ましくは3000以下である。一方、ビニルアルコール系重合体の力学特性および水への耐溶出性の観点からは、粘度平均重合度は、好ましくは100以上、より好ましくは200以上、更に好ましくは400以上である。ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度は、JIS K 6726に準拠した方法により測定できる。
【0041】
工程(A)において、ポリ酢酸ビニルの均一な溶液に所望の濃度で溶媒に希釈した塩基性化合物を滴下することが好ましい。本操作によってけん化されたポリ酢酸ビニルが、溶媒と相溶でなくなり、析出してくるため、生成物の回収が容易となる。
【0042】
工程(A)において、系内の水分率は0.5%~1%が好ましい。0.5%より低いと反応が速く進行し制御が困難である一方で、1%より高いと水分が抜けにくく、乾燥後に水分が残存する懸念がある。
【0043】
工程(A)において、98.5mol%以上けん化させる場合、塩基性化合物と酢酸ビニルのモル比は0.03~0.035mol%が好ましい。0.03mol%より低いと、けん化が完全に進行しない一方で、0.035mol%より高いと反応が速く進行し制御が困難である懸念がある。
【0044】
工程(A)において、反応温度は、けん化反応は発熱反応のため、塩基性化合物を添加する際には40℃、目視でポリビニルアルコールの析出がほぼ終了したのを確認してから60~70℃に昇温して行うのが好ましい。
【0045】
本発明のセメント混和用樹脂の製造方法は、ビニルアルコール系重合体を不均一反応により架橋する行う工程(B)を含むことが好ましい。
【0046】
工程(B)において、不均一反応を用いることで、前記多孔質なポリビニルアルコール粒子が有する細孔を維持した状態で架橋できるため、細孔直径が0.1~10μmである細孔の細孔体積の合計が0.01~2.0mL/gであるセメント混和用樹脂を得やすい。より具体的には、原料のビニルアルコール系重合体を、かかるビニルアルコール系重合体が不溶である溶媒中に分散させ、架橋剤と反応させる不均一反応を用いることが好ましい。不均一反応かどうかは、架橋反応を行っている系を目視により観察し、該当系中に粒子が観察された場合、不均一反応となる。
【0047】
工程(B)において、(1)原料のビニルアルコール系重合体を、かかるビニルアルコール系重合体が不溶である溶媒中に分散させ、溶媒に溶解させた架橋剤と反応させる方法、(2)原料のビニルアルコール系重合体に架橋剤、または架橋剤を分散させた溶液を噴霧し、加熱し反応させる方法が挙げられる。
【0048】
工程(B)において、ビニルアルコール系重合体の架橋物の製造方法としてはいずれの方法でも特に制限はないが、反応の制御の容易さという観点からは(1)の方法が好ましい。例えば多価アルデヒドによる架橋を行う場合、具体的には公知の手法で製造されたビニルアルコール系重合体の少なくとも一部のビニルアルコール単位を、触媒の存在下もしくは非存在下、好ましくは80℃以下の反応温度で、多価アルデヒドの誘導体から選ばれる1種以上により少なくとも一部のビニルアルコール単位をアセタール化することで製造できる。
【0049】
工程(B)において、用いられる分散媒は、原料として用いるビニルアルコール系重合体粒子を膨潤させることが可能であり、かつ反応時の温度にて溶解させない限り特に制限されない。反応中、ビニルアルコール系重合体を溶解させず粒子状に保つという観点からは、分散媒は有機溶媒を含有することが好ましい。分散媒中の有機溶媒の含有量は好ましくは5質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上であり、100質量%であってもよい。上記有機溶媒の含有量が上記下限値以上であると、樹脂の融着を抑制でき、樹脂の形状を維持することができる。一方で、上記有機溶媒の含有量が95質量%以下(より好ましくは92質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下、特に好ましくは85質量%以下)であることも、本発明の好ましい一態様である。上記有機溶媒の含有量が上記上限値以下であるとき、上記ポリビニルアルコール粒子を溶媒に適度に膨潤させ、かつカルボニル化合物を溶解させやすいため、上記ポリビニルアルコール粒子の内部まで均一にアセタール化させやすい傾向にある。
【0050】
上記有機溶媒は特に限定されないが、例えば、アセトン、2-ブタノン等のジアルキルケトン;アセトニトリル等のニトリル;メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、tert-ブタノール等のアルコール;1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、ジグライム等のエーテル;エチレングリコール、トリエチレングリコール等のジオール化合物;アセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のカルボン酸アミド;ジメチルスルホキシド、フェノールなどが挙げられる。中でも、不均一反応後に得られた変性ポリビニルアルコール樹脂からの溶媒の除去の容易さ、溶媒に対するカルボニル化合物および酸触媒の溶解性、および溶媒の工業的入手性を考慮すると、上記有機溶媒は、ジアルキルケトン、ニトリル、アルコールおよびエーテルからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましく、アセトン、2-ブタノン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、tert-ブタノール、1,4-ジオキサンおよびテトラヒドロフランからなる群より選択される少なくとも1つであることがより好ましく、アセトン、2-ブタノン、アセトニトリル、メタノール、2-プロパノール、1,4-ジオキサンおよびテトラヒドロフランからなる群より選択される少なくとも1つであることがさらに好ましい。これらの有機溶媒は一種を単独で用いてもよく、二種以上混合して用いてもよい。不均一反応で用いられる溶媒は水を含んでいてもよいが、不均一反応で用いられる溶媒が水を含まない場合は、上記有機溶媒はジアルキルケトン、ニトリル、アルコールおよびエーテルからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、アルコールであることがさらに好ましい。なお、アセタール化反応が進行するにつれて変性ポリビニルアルコール樹脂と溶媒の相互作用が変化するため、膨潤度を制御することを目的とし、反応途中で溶媒を添加してもよい。
【0051】
本発明の建築又は土木構造物セメント混和用樹脂として用いる際、種々の形態があり、当該樹脂及びセメントを含むインスタントセメント;当該樹脂、セメント及び砂を含む、インスタントモルタル;当該樹脂、セメント、砂及び石を含む、インスタントコンクリート;当該樹脂、セメント、及び水を含む、セメントペースト;当該樹脂、セメント、砂及び水を含むフレッシュモルタル;当該樹脂、セメント、砂、石及び水を含むフレッシュコンクリート;当該樹脂を含むモルタル;当該樹脂を含むコンクリートが挙げられる。
【0052】
上記の砂とは10mm目の篩を通り、5mm目の篩を85重量%以上通過するものであり、石とは5mm目の篩に85重量%以上とどまる砂利または砥石である。
【0053】
本発明の建築又は土木構造物セメント混和用樹脂として用いる際の混和方法としては種々の方法が挙げられ、例えば、セメントペースト製造時に直接セメント混和用樹脂を添加する方法や水で膨潤させたセメント混和用樹脂を添加する方法などが挙げられる。
【0054】
インスタントセメントは当該樹脂、セメントを混合したものであり、必要に応じて接着剤や保水材や収縮低減剤などの添加剤をドライブレンドしたものである。インスタントモルタルは当該樹脂、セメント及び砂を混合したものである。インスタントモルタルは任意の割合で各材料を混合でき、例えば、体積比でセメント1に対して、当該セメント用混和樹脂を0.004、砂3をドライブレンドしたものが挙げられる。インスタントコンクリートは当該樹脂、セメント、砂及び石を混合したものである。インスタントコンクリートは任意の割合で各材料を混合でき、例えば、体積比でセメント1に対して、当該セメント用混和樹脂を0.004、砂3、石3~6をドライブレンドしたものが挙げられる。当該セメント用混和樹脂量としてはセメントに対して10vol%以下が好ましく、1vоl%以下がより好ましい。また、いずれも目的に応じて接着剤や保水材や収縮低減剤などの添加剤を含んでいても良く、セメントも普通ポルトランドセメントだけでなく目的に応じて種々のセメントを用いることができる。
【0055】
セメントペーストは、当該セメント用混和樹脂が含まれている上記インスタントセメント及び水を任意の割合で混合でき、例えば、体積比でインスタントセメント1に対して水1.5~1.8を混合したものが挙げられる。フレッシュモルタルは上記インスタントモルタル及び水を任意の割合で混合でき、例えば、体積比でセメント1に対して砂3、水1.5~1.8が好ましく、接着強度を高めたい場合はセメント1に対して砂2の配合比が好ましい。フレッシュコンクリートは上記インスタントコンクリート及び水を任意の割合で混合でき、例えば、体積比でセメント1に対して砂3、石3~6、水1.5~1.8が好ましく、強度を高めたい場合はセメント1に対して砂2、石4の配合比が好ましい。セメントペースト、フレッシュモルタル、フレッシュコンクリートはいずれも目的に応じて接着剤や保水材や収縮低減剤などの混和剤を含んでいても良く、セメントも普通ポルトランドセメントだけでなく目的に応じて種々のセメントを用いることができる。また当該セメント用混和樹脂が含まれているモルタルは、上記フレッシュモルタルの水が一部または全部、水和反応や乾燥によって消費されたものである。さらに当該セメント用混和樹脂が含まれているコンクリートは、上記フレッシュコンクリートの水が一部または全部、水和反応や乾燥によって消費されたものである。
【0056】
また、本発明のインスタントセメント、インスタントモルタル、インスタントコンクリート、セメントペースト、フレッシュモルタル、フレッシュコンクリート、モルタル及びコンクリートは本発明の効果を損なわない範囲で添加剤を含んでいてもよい。添加剤の例としては、膨張剤、急結剤、高強度混和剤、シリカフューム、防水材、AE剤、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤、硬化促進剤、凝結遅延剤、起泡剤、水中不分離性混和剤、水和熱抑制剤、棒結剤、乾燥収縮低減剤、耐寒剤などの一般的にセメントへの混合に用いられる添加剤の他、デンプン、変性デンプン、アルギン酸ナトリウム、キチン、キトサン、セルロース及びその誘導体などの多糖類;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリコハク酸、ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミド6・10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6・12、ポリヘキサメチレンジアミンテレフタルアミド、ポリヘキサメチレンジアミンイソフタルアミド、ポリノナメチレンジアミンテレフタルアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリオキシメチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸塩、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-アクリル酸塩共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体、エチレン-メタクリル酸塩共重合体などの樹脂類;天然ゴム、合成イソプレンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマーなどのゴム・エラストマー類;カオリナイト、スメクタイト、モンモリロナイト、セリサイト、クロライト、グローコナイト、タルク、天然ゼオライト、合成ゼオライトなどの粘土鉱物類;砂などが挙げられる。これらは1種を単独で含んでいても、複数種を含んでいてもよい。
【0057】
混練方法は、練り舟や工事用一輪車を使用して人力で混ぜる方法や、コンクリートミキサーを使う方法、ミキサー車を使う方法などがある。セメントと砂や石を混合してから水を加えて混錬し、この混練したものに当該セメント用混和樹脂を粉体の状態で加えても良いし、予め粉体状態の樹脂に一部の水を吸水させて膨潤させてから加えても良い。
【0058】
また、一般的な型枠にセメントペーストを流し込む敷設方法だけでなく、吹付けコンクリートに対しても適用できる。適用対象とするセメントの種類は特に制限はなく、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメントなどのポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメントなどの混合セメント、アルミナセメントなどの特殊セメントなどに適用できる。
【0059】
本発明のセメント混和用樹脂はセメント混和材として優れた吸水及び離水特性を示すことから、建築・土木構造物の用途に好適である。本発明のセメント混和用樹脂が用いられる建築物の例としては、ビル、住宅、スタジアムなどが挙げられる。また、土木構造物の例としては、高速道路や電車などの高架橋、トンネル、高速道路などの法面、ダム、道路、港湾などが挙げられる。
【実施例
【0060】
以下、実施例などにより本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はかかる実施例などにより何ら限定されない。
【0061】
(測定方法)
【0062】
(1)セメントフィルター溶液の調整
太平洋セメント(株)の普通ポルトランドセメント150gをイオン交換水750gに分散させ、マグネチックスターラーを用いて24時間撹拌後のスラリーをろ過して得られた水溶液を使用した。このセメントフィルター溶液のpHは、22℃で株式会社堀場製作所製pHメータで測定したところ、12.54~12.79であった。以下(3)~(5)の測定において本方法で作成した溶液を使用した。
【0063】
(2)累計細孔体積
実施例及び比較例で得られた樹脂0.25gを標準5cc粉体用セル(ステム容積0.4cc)に採り、初期圧2.5kPaの条件で、マイクロメリティックス細孔分布測定装置(株式会社島津製作所製、オートポア9520)を用いて測定した。水銀パラメータは、水銀接触角130degrees、水銀表面張力485hynes/cmとした。
【0064】
(3)溶出率
分級した100μ~212μmのセメント混和用樹脂と、3辺を封止したナイロンメッシュ製ティーバッグ(サイズ:7cm×12cm、目開き:57μm)を、40℃、一晩、減圧乾燥(0.67MPa)した。ティーバッグの風袋重量を測定し、セメント混和用樹脂0.2gをティーバッグに入れ、残りの1辺をヒートシールした。ティーバッグを22℃のセメントフィルター溶液500mLに24時間浸浸漬し、その後、ティーバックを取り出し再び真空乾燥機にて一晩、40℃、減圧乾燥(0.67MPa)した。ティーバックから樹脂を取り出して重量測定し、下記式にて溶出率を算出した。なお、1種類の樹脂につきティーバッグを4つ作製し試験を実施、その平均値を採用した。
(溶出率[%])=100×[{(セメントフィルター溶液に浸漬する前の樹脂の重量[g])-(セメントフィルター溶液に浸漬し乾燥させた後の樹脂の重量[g])}/(セメントフィルター溶液に浸漬する前の樹脂の重量[g])]
ただし、セメントフィルター溶液に浸漬することで樹脂のカウンターカチオン置換による重量増加や炭酸カルシウムの樹脂表面析出による重量増加により、乾燥後の重量が増加したサンプルについては溶出率の算出はしなかった。
【0065】
(4)吸水倍率
Materials and Structures(2018)51:116に記載の方法に従って算出した。(3)の溶出率測定と同様、ティーバック及びセメント混和用樹脂を乾燥、セメントフィルター溶液への浸漬を行った後、取り出したセメント混和用樹脂入りティーバックを30秒間紙ウエスにのせ余剰の水を除いた。重量を測定し、wet状態の樹脂とティーバッグの重量とした。そして次式に従い吸水倍率を算出した。なお本試験も(3)溶出率試験同様、4サンプルの平均値を採用した。
(吸水倍率[g/g])={(wet状態の樹脂とティーバッグの重量[g])-(セメントフィルター溶液に浸漬する前のティーバッグと乾燥樹脂の重量[g])-(ティーバッグの吸液量[g])}/(乾燥樹脂の重量[g])
なお、ティーバッグの吸液量は、上記同様のティーバックを40℃、一晩、減圧乾燥(0.67MPa)した後、セメントフィルター溶液に30秒浸漬、取り出し後、30秒間紙ウエスに乗せ余剰の水を除いた後、重量を測定し、次式に従い算出した。なお、本試験は10個のティーバックに対して行い、その平均値を採用した。
(ティーバッグの吸液量[g])=(含水したティーバッグの重量[g])-(セメントフィルター溶液に浸漬する前のティーバッグの重量[g])
【0066】
(5)樹脂1gあたりの離水量
(4)で得られた吸水倍率の量よりも過剰量となるセメントフィルター溶液に分級した100μm~300μmのセメント混和用樹脂を3g程度浸漬し、16時間静置した後、目開き57μmのナイロンメッシュでろ過しゲルを作製した。プラスチック製3mLシリンジに不織布2枚に挟んだ口径10μmのメンブレンフィルターを詰め、上記ゲルから3mLを採取して加えた後、2200rpmで遠心分離を行った。この時流出したセメントフィルター溶液(流出した溶液)の割合から下記の通り離水率を算出し、下記式より樹脂1gあたりの離水量を算出した。
(ゲル中の溶液量[g])=(ゲル重量[g])―{(ゲル重量[g])÷((3)で求めた吸水倍率[g/g])}
(離水率[%])=(流出した溶液量[g])/(ゲル中の溶液量[g])×100
(樹脂1gあたりの離水量[g])=(樹脂1[g])×((3)で求めた吸水倍率[g/g])×(離水率[%])
上記においてゲル重量は、ゲル3mLの重量[g]である。
【0067】
[製造例1]
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、および開始剤の添加口を備えた反応器に、酢酸ビニル9030g、アクリル酸メチル18.15g、およびメタノール3810gを導入し、窒素バブリングをしながら30分間反応器内を不活性ガス置換した。水浴を用いて反応器の昇温を開始し、反応器の内部温度が60℃となったところで、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を2.40g添加し、重合を開始させた。適宜サンプリングを行い、その固形分濃度から重合の進行を確認し、導入した酢酸ビニルとアクリル酸メチルの合計質量に対する、重合により消費された酢酸ビニルとアクリル酸メチルの合計質量である、消費率を求めた。消費率が4質量%に到達したところで、反応器の内部温度を30℃まで冷却して重合を停止させた。真空ラインに接続し、残留する酢酸ビニルをメタノールとともに30℃で減圧留去した。反応器内を目視で確認しながら、粘度が上昇したところで適宜メタノールを添加しながら留去を続け、5.2モル%のアクリル酸由来構成単位を含有するポリ酢酸ビニルを得た。アクリル酸由来構成単位の含有量は固体13C-NMRを用いて測定した。
次に、上記と同様の反応器に、得られたアクリル酸由来構成単位含有ポリ酢酸ビニル360gおよびメタノール6552gを添加し、アクリル酸由来構成単位含有ポリ酢酸ビニルを溶解させた。水浴を用いて反応器の昇温を開始し、反応器の内部温度が70℃になるまで撹拌しながら加熱した。ここに水酸化ナトリウムのメタノール溶液(メタ苛性、濃度15質量%)280.8gを添加し、70℃で2時間けん化を行った。
けん化後の溶液を濾過し、40℃で真空乾燥させ、ポリビニルアルコール(以下ポリビニルアルコール(a)を165g得た。得られたポリビニルアルコール(a)の粘度平均重合度は1700、けん化度は99.5モル%、アクリル酸由来構成単位の含有率は5.2モル%であった。
【0068】
[製造例2]
還流冷却器、原料供給ライン、温度計、窒素導入口、攪拌翼を備えた、重合容器(連続重合装置)と、還流冷却器、原料供給ライン、反応液取出ライン、温度計、窒素導入口、攪拌翼を備えた装置を用いた。重合槽に酢酸ビニル(VAM)(656L/H)、メタノール(MeOH)(171L/H)、変性種としてマレイン酸モノメチル(MMM)の20%メタノール溶液(101L/H)、開始剤として2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(AMV)の2%メタノール溶液(25L/H)を定量ポンプを用いて連続的に供給した。重合槽内の液面が一定になるように重合槽から重合液を連続的に取り出した。重合槽から取り出される重合液中の酢酸ビニルの重合率が40%になるよう調整した。重合槽の滞留時間は4時間であった。重合槽から取り出される重合液の温度は63℃であった。重合槽から重合液を取り出し、当該重合液にメタノール蒸気を導入することで未反応の酢酸ビニルの除去を行い、ポリ酢酸ビニル(PVAc)のメタノール溶液(濃度35%)を得た。
上記ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液に、所望量の水及びメタノールを添加して、けん化原料溶液である含水率1.3質量%のポリ酢酸ビニル(PVAc)/メタノール溶液(濃度32質量%)を調製した。けん化触媒溶液である水酸化ナトリウム/メタノール溶液(濃度4質量%)を上記PVAc中の酢酸ビニルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比が0.10となるように添加した。けん化原料溶液及びけん化触媒溶液をスタティックミキサーを用いて混合した。得られた混合物をベルト上に載置し、40℃の温度条件下で18分保持して、けん化反応を進行させた。けん化反応により得られたゲルを粉砕し、脱液した。得られたポリビニルアルコール粉末600kg/hr(樹脂分)を連続的にジャケット温度105℃の乾燥機に供給した。乾燥機内の粉体の平均滞留時間は4時間であった。その後、粉砕を行い、ポリビニルアルコール(b)を得た。得られたポリビニルアルコール(b)の粘度平均重合度は1200、けん化度は96.0モル%、カルボキシル基を2つ有する単量体単位の含有率は4.0モル%であった。
【0069】
[実施例1]
還流冷却管および撹拌翼を備えた三つ口セパラブルフラスコに、メタノール445.5g、純水47.4g、25質量%グルタルアルデヒド水溶液(富士フィルム和光純薬株式会社製)1.206g、およびポリビニルアルコール(a)150gを導入し、23℃で撹拌し、ポリビニルアルコール(a)を分散させた。47質量%硫酸水溶液5.66gと純水3gとの混合液を10分かけて滴加し、65℃に昇温して6時間架橋反応させた。反応後、濾過により重合体を取り出し、濾取した重合体を220gのメタノールに分散して30分間撹拌して濾過することにより洗浄を行った。洗浄は7回繰り返した。
洗浄後の重合体を還流冷却管および撹拌翼を備えた三つ口セパラブルフラスコに導入し、メタノール245g、純水40.8g、および50質量%水酸化カリウム24.35gを加え、65℃で2時間反応させた。反応後、濾過により重合体を取り出した後、濾取した重合体を330gのメタノールに分散して30分間撹拌して濾過することにより洗浄を行った。洗浄は7回繰り返した。洗浄後の重合体を40℃で12時間真空乾燥し、目的のセメント混和用樹脂を得た。樹脂の全構成単位に対するアクリル酸由来構成単位の含有量は5.2モル%であった。得られたセメント混和用樹脂について、上述の(2)~(5)の試験を実施し、各測定を行った。結果を表1に示す。
【0070】
[実施例2]
還流冷却管および撹拌翼を備えた三つ口セパラブルフラスコに、メタノール445.5g、純水47.4g、25質量%グルタルアルデヒド水溶液1.206g、およびポリビニルアルコール(a)150gを導入し、23℃で撹拌し、ポリビニルアルコールを分散させた。47質量%硫酸水溶液5.66gと純水3gとの混合液を10分かけて滴加し、65℃に昇温して6時間架橋反応させた。反応後、濾過により重合体を取り出し、濾取した重合体を220gのメタノールに分散して30分間撹拌して濾過することにより洗浄を行った。洗浄は7回繰り返した。洗浄後の重合体を40℃で12時間真空乾燥し、目的のセメント混和用樹脂を得た。得られた樹脂について、上述の(2)~(5)の試験を実施し、各測定を行った。結果を表1に示す。
【0071】
[比較例1]
ポリビニルアルコール(a)をポリビニルアルコール(b)に変更し、25質量%グルタルアルデヒド水溶液量を1.118gに変更したこと以外は実施例1と同様の方法で目的のセメント混和用樹脂を得て、測定を行った。結果を表1に示す。
【0072】
[比較例2]
ポリビニルアルコール(b)を500gナスフラスコに秤取し、エバポレーターを用いて減圧下130℃で5時間熱処理することにより架橋反応を行い、目的のセメント混和用樹脂を得て、測定を行った。樹脂1gあたりの離水量測定時サンプルを調製する際に樹脂がセメントフィルター溶液に溶解してしまったため、離水量の測定は実施できなかった。結果を表1に示す。
【0073】
[比較例3]
汎用的な吸水性樹脂として、住友精化株式会社製のアクアキープ10-SHPF(アクリル酸-アクリル酸ナトリウム共重合体架橋物)を用いて、上述の(2)~(5)試験を実施し、各測定を行った。結果を表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
実施例1~2が示すように、本発明の累積細孔体積を満たすビニルアルコール系重合体架橋物は、セメントフィルター溶液中、つまりアルカリ水溶液下において、溶出率が低く、且つ高い吸水倍率を示し、建築又は土木構造物のコンクリートのひび割れ抑制に相関があるとされる、離水性を発現することが示された。一方、けん化工程が異なり、累積細孔体積の量が少ない比較例1では殆ど離水性を示さなかった。架橋方法が異なる場合(比較例2)ではゲル強度が低く、離水試験ができなかった。また汎用的な吸水性樹脂を使用した場合(比較例3)は、殆どセメント溶液を吸液できず離水効果を示さなかった。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の、建築又は土木構造物セメント混和用樹脂は、離水性に優れるため、セメントと水の水和反応による体積収縮によって生じた空隙に対して十分な水を供給することができ、自己収縮によるひび割れを抑制し得ることから、モルタルやコンクリートの強度向上に好適に利用できる。