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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/18 20060101AFI20241217BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20241217BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20241217BHJP
   B24B 37/10 20120101ALI20241217BHJP
   B24B 47/22 20060101ALI20241217BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20241217BHJP
【FI】
B24B49/18
B24B7/04 A
B24B49/12
B24B37/10
B24B47/22
B24B41/06 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021035240
(22)【出願日】2021-03-05
(65)【公開番号】P2022135442
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】現王園 二郎
【審査官】荻野 豪治
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-97089(JP,A)
【文献】特開2020-172010(JP,A)
【文献】特開2008-87104(JP,A)
【文献】特開2015-226945(JP,A)
【文献】米国特許第6572444(US,B1)
【文献】特開2003-77993(JP,A)
【文献】特開2018-58160(JP,A)
【文献】特開2020-124753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 3/00 - 7/30
B24B 21/00 - 51/00
B23Q 17/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持面によって被加工物を保持するチャックテーブルと、
基台の下面に環状に研削砥石を配置した研削ホイールをスピンドルの下端に連結したマウントに装着し、該研削砥石によって被加工物を研削する研削ユニットと、
該研削ユニットを該保持面に垂直な方向に昇降させる研削送り機構と、
制御部と、
を備える研削装置であって、
少なくとも該研削ホイールの該基台の厚みが記録された記録媒体に記録された該基台の厚みを読み取る読取り部と、
該読取り部によって読み取られた該基台の厚みを記憶する基台厚み記憶部と、
該研削送り機構によって該研削ユニットを下降させ、該マウントの装着面、および、該マウントに装着された該研削ホイールの該研削砥石の下面を検知する検知部と、
をさらに備え、
該制御部は、
該研削送り機構によって該研削ユニットが下降されて該検知部が該マウントの該装着面を検知した際の該研削ユニットの高さを記憶する装着面高さ記憶部と、
該マウントに該研削ホイールが装着された後、該研削送り機構によって該研削ユニットが下降されて該検知部が該研削砥石の下面を検知した際の該研削ユニットの高さを記憶する砥石下面高さ記憶部と、
該装着面高さ記憶部に記憶された高さと該砥石下面高さ記憶部に記憶された高さとの差から、該基台厚み記憶部に記憶された該基台の厚みを差し引くことによって、該研削砥石の残量を算出する砥石残量算出部と、
を備えた研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
研削装置による被加工物の研削加工は、研削ユニットに備えられる研削ホイールを回転させながら、チャックテーブルの保持面に保持された被加工物の上面に、研削ホイールの基台の下面に環状に配置された研削砥石を当接させて行われる。研削加工においては、まず、研削砥石の下面と被加工物の上面とが当接する直前の研削ユニットの高さ位置まで研削ユニットを被加工物に向けて高速で下降させ、次いで、研削ユニットの下降速度を被加工物の研削に適した速度に変えて、再び研削ユニットを降下させて被加工物を研削する。これにより、加工時間の短縮が図られる。
【0003】
被加工物の研削加工を実施するためには、研削砥石の下面と被加工物の上面とが当接するときの研削ユニットの高さ位置が、あらかじめ研削装置に認識されている必要がある。そのため、特許文献1に示すように、研削加工の実施前に、チャックテーブルの保持面と研削砥石の下面とが当接する研削ユニットの高さ位置である原点位置を研削装置に記憶させるセットアップ作業が行われる。そして、セットアップ作業により研削装置に記憶された原点位置から被加工物の厚みの分だけ上昇させた研削ユニットの高さ位置が、研削砥石の下面と被加工物の上面とが当接する研削ユニットの高さ位置として認識される。
研削砥石が研削加工によって一定の量だけ摩耗すると、研削ホイールは交換されることになる。従来、研削ホイールの交換直後にノギス等によって測定された交換直後の研削砥石の残量から、研削加工によって摩耗した研削砥石の摩耗量を差し引くことで現在の研削砥石の残量を算出し、算出された現在の研削砥石の残量が既定の値を下回ったときに研削ホイールの交換を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-135853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、研削ホイールの交換直後にオペレータ等がノギス等を用いて測定した研削砥石の残量と、研削砥石の実際の残量との間には、誤差が生じ得る。従って、研削砥石が残っていないのに研削を継続してしまい研削ホイールの基台で被加工物を研削してしまい被加工物を破損させることがある。または、実際には研削砥石が残っているにも関わらず研削砥石が無くなったと判断して研削ホイールの交換を作業者に促し研削ホイールの交換を行っている。すなわち、研削砥石の残量測定に抱える誤差要因を理由として、研削砥石がなくなる限界まで研削砥石を使用することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の研削装置は、保持面によって被加工物を保持するチャックテーブルと、基台の下面に環状に研削砥石を配置した研削ホイールをスピンドルの下端に連結したマウントに装着し、該研削砥石によって被加工物を研削する研削ユニットと、該研削ユニットを該保持面に垂直な方向に昇降させる研削送り機構と、制御部と、を備える研削装置であって、少なくとも該研削ホイールの該基台の厚みが記録された記録媒体に記録された該基台の厚みを読み取る読取り部と、該読取り部によって読み取られた該基台の厚みを記憶する基台厚み記憶部と、該研削送り機構によって該研削ユニットを下降させ、該マウントの装着面、および、該マウントに装着された該研削ホイールの該研削砥石の下面を検知する検知部と、をさらに備え、該制御部は、該研削送り機構によって該研削ユニットが下降されて該検知部が該マウントの該装着面を検知した際の該研削ユニットの高さを記憶する装着面高さ記憶部と、該マウントに該研削ホイールが装着された後、該研削送り機構によって該研削ユニットが下降されて該検知部が該研削砥石の下面を検知した際の該研削ユニットの高さを記憶する砥石下面高さ記憶部と、該装着面高さ記憶部に記憶された高さと該砥石下面高さ記憶部に記憶された高さとの差から、該基台厚み記憶部に記憶された該基台の厚みを差し引くことによって、該研削砥石の残量を算出する砥石残量算出部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の研削装置では、基台厚み記憶部に基台の厚みを記憶させるとともに、研削砥石の下面からマウントの装着面までの距離から、記憶された基台の厚みを差し引くことにより研削砥石の残量を算出する。従って、従来のようなノギス等による測定が不要となり、研削砥石の残量を適切に認識して管理することができる。また、基台の厚みにばらつきがある場合でも、研削砥石の残量を良好に算出することができる。さらに、研削装置においては、ある程度使用した研削砥石の実際の残量と、砥石残量算出部によって算出されて認識された研削砥石の残量とに違いがないか確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】研削装置の全体を表す斜視図である。
図2】マウントの下方に検知器が位置づけられているときの研削装置を表す断面図である。
図3】マウントの下面に検知器が接触しているときの研削装置を表す断面図である。
図4】マウントの下面によって検知器が押し下げられているときの研削装置を表す断面図である。
図5】研削砥石の下方に検知器が位置づけられているときの研削装置を表す断面図である。
図6】研削砥石の下面に検知器が接触しているときの研削装置を表す断面図である。
図7】研削砥石の下面によって検知器が押し下げられているときの研削装置を表す断面図である。
図8】AEセンサを備える検知器を表す断面図である。
図9】バネを備える検知器を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1 研削装置の構成
図1に示す研削装置1は、研削ユニット3を用いて被加工物17を研削する研削装置である。以下、研削装置1の構成について説明する。
【0010】
研削装置1は、図1に示すようにY軸方向に延設されたベース10を備えている。
【0011】
ベース10の上には、チャックテーブル2が配設されている。チャックテーブル2は、吸引部20と、吸引部20を支持する枠体21とを備えている。吸引部20の上面は、被加工物17が保持される保持面200である。枠体21の上面210は、保持面200に面一に形成されている。
【0012】
チャックテーブル2は、有底筒状のケーシング24に支持されている。ケーシング24の内部には、チャックテーブル2に接続された回転機構25が配設されている。回転機構25は、Z軸方向の回転軸26を軸にしてチャックテーブル2を回転させることができる。
【0013】
吸引部20には、吸引源27が接続されている。吸引源27を作動させることにより、吸引部20の上面である保持面200に吸引力が伝達される。例えば、保持面200に被加工物17が載置されている状態で吸引源27を作動させることにより、保持面200によって被加工物17を吸引保持することができる。
【0014】
ベース10の内部には内部ベース100が配設されており、内部ベース100の上には水平移動機構6が配設されている。水平移動機構6は、Y軸方向の回転軸65を有するボールネジ60と、ボールネジ60に平行に配設された一対のガイドレール61と、ボールネジ60に連結されボールネジ60を回転軸65のまわりに回動させるモータ62と、内部のナットがボールネジ60に螺合し底部がガイドレール61に摺接する可動板63と、を備えている。可動板63の上には、ケーシング24が支持されている。
【0015】
水平移動機構6では、モータ62によってボールネジ60が回転軸65を軸にして回転することにより、可動板63が、ガイドレール61に案内されながらY軸方向に移動する。そして、可動板63のY軸方向への移動に伴って、可動板63に支持されたケーシング24、及びケーシング24に支持されたチャックテーブル2が、一体的にY軸方向に移動する。
【0016】
チャックテーブル2の周囲には、カバー22、及び、カバー22に伸縮自在に連結された蛇腹23が配設されている。チャックテーブル2がY軸方向に移動すると、カバー22が、チャックテーブル2とともにY軸方向に移動して、蛇腹23が伸縮することとなる。
【0017】
ベース10の+Y方向側には、コラム11が立設されている。コラム11の-Y方向側の側面には、研削ユニット3を保持面200に垂直な方向であるZ軸方向に昇降移動させる研削送り機構4が配設されている。
【0018】
研削ユニット3は、Z軸方向の回転軸35を有するスピンドル30と、スピンドル30を回転可能に支持するハウジング31と、回転軸35を軸にしてスピンドル30を回転駆動するスピンドルモータ32と、スピンドル30の下端に連結されたマウント33と、マウント33の下面に着脱可能に装着された研削ホイール34と、を備えている。
【0019】
研削ホイール34は、基台341と、基台341の下面に環状に配列された略直方体状の複数の研削砥石340とを備えている。研削砥石340の下面3400は、被加工物17に接触する研削面である。
【0020】
スピンドルモータ32を用いてスピンドル30を回転させることにより、スピンドル30に接続されたマウント33及びマウント33の下面に装着された研削ホイール34が一体的に回転することとなる。
【0021】
研削送り機構4は、Z軸方向の回転軸45を有するボールネジ40と、ボールネジ40に対して平行に配設された一対のガイドレール41と、Z軸方向の回転軸45を軸にしてボールネジ40を回転させるZ軸モータ42と、Z軸モータ42の回転角度を検知するためのエンコーダ92と、内部のナットがボールネジ40に螺合して側部がガイドレール41に摺接する昇降板43と、昇降板43に連結され研削ユニット3を支持するホルダ44と、を備えている。
【0022】
Z軸モータ42によってボールネジ40が駆動されて、ボールネジ40が回転軸45を軸にして回転すると、これに伴って、昇降板43がガイドレール41に案内されながらZ軸方向に昇降移動するとともに、ホルダ44に保持されている研削ユニット3が、保持面200に垂直な方向であるZ軸方向に移動することとなる。
【0023】
研削ホイール34の基台341の側面には、記録媒体36が設けられている。記録媒体36は、例えば1次元コード等のバーコードが印刷されたシールであり、基台341の側面に貼着されている。記録媒体36には基台341の厚みが記録されている。すなわち、記録媒体36には、基台341の厚みの情報を含む情報が記録されている。
【0024】
研削装置1は、記録媒体36に記録された基台341の厚みを読み取る読取り部70を備えている。読取り部70は、例えば、上記の1次元コード等を読み取るバーコードリーダーである。
【0025】
研削装置1は、読取り部70によって読み取られた基台341の厚みを記憶する基台厚み記憶部71を備えている。基台厚み記憶部71は、読取り部70に接続されている。読取り部70によって読み取られた基台341の厚みの情報は、基台厚み記憶部71に伝達されて、基台厚み記憶部71において記憶される。
【0026】
研削装置1は、研削装置1の諸々の動作を制御する制御部8を備えている。
【0027】
カバー22の上、かつ、チャックテーブル2の側方には、研削砥石340の下面3400とマウント33の装着面330とのそれぞれに接触して研削砥石340の下面3400及びマウント33の装着面330を検知する検知部5が配設されている。
【0028】
検知部5は、シリンダ51と、下部がシリンダ51に収容され上部がシリンダ51から上方に突出するように設けられたテーブル50と、シリンダ51の内部に配設されたセンサ52とを備えている。
【0029】
テーブル50は、研削ユニット3が-Z方向に下降したときに研削砥石340あるいは基台341と接触しうるように、カバー22の上に配設されたシリンダ51に設けられている。
【0030】
センサ52は、本実施形態では、透過型の光電センサである。センサ52は、図2に示すように、発光部520と受光部521とを備えている。研削装置1の運転時には、発光部520から放たれ続ける光が、検出ライン522に沿って直進し、受光部521に受光されている。
【0031】
センサ52には、図1に示すように信号発信部56が接続されている。発光部520から放たれた光が受光部521に受光されなくなると、信号発信部56から制御部8に検知信号が発信されることとなる。
【0032】
図1および図2に示すように、検知部5のシリンダ51は、リリーフバルブ53及びバルブ54を介して、エア源55に接続されている。テーブル50は、エア源55により生み出される空気が送り込まれて加圧されたシリンダ51によって、+Z方向に付勢されている。テーブル50は、上方から押圧力が加えられない状態では、上限位置に位置している。上方からテーブル50が押し込まれてシリンダ51内の空気が加圧されることにより、シリンダ51内の空気の圧力が所定の圧力以上の圧力になると、リリーフバルブ53が適宜開放され、エア源55からシリンダ51の内部に供給される空気が、シリンダ51の外部の空間に排気されて、シリンダ51の内部にかかる圧力が一定に保たれる。
【0033】
図1に示すように、昇降板43には、昇降板43とともに移動し、研削ユニット3のZ軸方向の高さ位置を測定する高さ測定部90が備えられている。また、ガイドレール41には、目盛りを備えたスケール91が備えられている。高さ測定部90が、スケール91の値(目盛り)を読み取ることで、研削送り機構4によってZ軸方向に移動される研削ユニット3の高さ位置が測定される。
【0034】
なお、Z軸モータ42の回転角度を検知したエンコーダ92から出力される高さ信号(研削ユニット3の高さ位置を示す信号)に基づいて、研削ユニット3の高さ位置が測定されてもよい。
【0035】
制御部8は、装着面高さ記憶部80を備えている。装着面高さ記憶部80は、研削送り機構4によって研削ユニット3が下降されて検知部5がマウント33の装着面330を検知した際の研削ユニット3の高さを記憶する機能を有している。
【0036】
制御部8は、砥石下面高さ記憶部81を備えている。砥石下面高さ記憶部81は、マウント33に研削ホイール34が装着された後、研削送り機構4によって研削ユニット3が下降されて、検知部5が研削砥石340の下面3400を検知した際の研削ユニット3の高さを記憶する機能を有している。
【0037】
制御部8は、砥石残量算出部82を備えている。砥石残量算出部82は、装着面高さ記憶部80に記憶された高さと砥石下面高さ記憶部81に記憶された高さとの差から、基台厚み記憶部71に記憶された基台341の厚みを差し引くことによって、研削砥石340の残量を算出する機能を有している。
【0038】
2 研削装置の動作
研削装置1によって被加工物17を研削加工する際の動作について説明する。この場合、まず、オペレータあるいは制御部8は、被加工物17を、図1に示したチャックテーブル2の保持面200に吸引保持させる。
【0039】
その後、制御部8は、水平移動機構6によって、チャックテーブル2を研削ユニット3の下方に位置付ける。
【0040】
次に、制御部8は、回転機構25によって回転軸26を軸にしてチャックテーブル2を回転させて保持面200に保持されている被加工物17を回転させるとともに、スピンドルモータ32を用いて回転軸35を軸にして研削砥石340を回転させる。
【0041】
この状態で、制御部8は、研削送り機構4を用いて研削ユニット3を-Z方向に下降させる。これにより、研削砥石340の下面3400が、被加工物17の上面170に接触する。この状態から、制御部8は、研削砥石340を-Z方向にさらに下降させていく。これにより、研削砥石340によって被加工物17が研削される。制御部8は、被加工物17が所定の厚みに研削されたら、被加工物17の研削加工を終了する。
【0042】
このような研削により、研削砥石340の下面3400が磨耗して、基台341の下面3410からの研削砥石340の突出量(残量)が小さくなる。このため、研削ホイール34は、研削砥石340の残量が無くなる直前に、新しいものに交換される。
そこで、研削装置1では、制御部8は、適宜のタイミングにて、検知部5を用いた研削砥石340の残量を認識する処理を行う。なお、かかる処理は、研削ホイール34を新しいものに交換した際にも行われる。
以下、研削装置1において研削砥石340の残量を認識する際の動作について説明する。
【0043】
研削砥石340の残量を認識するために、制御部8は、マウント33に研削ホイール34を装着する際において、読取り部70を用いて、記録媒体36に記録された基台341の厚みを読み取る。読み取られた基台341の厚みは、基台厚み記憶部71に記憶される。
【0044】
また、制御部8は、マウント33に研削ホイール34が装着されていない状態で、研削送り機構4によって研削ユニット3を-Z方向に下降させ、検知部5を用いて研削ユニット3のマウント33の装着面300を検知する。そして、制御部8は、マウント33の装着面330が検知された際の研削ユニット3の高さを、装着面高さ記憶部80に記憶する。
【0045】
具体的には、制御部8は、図2に示すように、まず、水平移動機構6によって可動板63をY軸方向に移動させることにより、検知部5のテーブル50の接触面500を、マウント33の下方に位置付ける。
【0046】
次いで、制御部8は、図3に示すように、研削送り機構4によって研削ユニット3を-Z方向に降下させ、マウント33の装着面330とテーブル50の接触面500とを接触させる。この状態で、制御部8は、研削送り機構4によってマウント33をさらに-Z方向に降下させていき、マウント33の装着面330によって、テーブル50を下方に押し下げていく。
【0047】
そして、図4に示すように、テーブル50の下面501がセンサ52の検出ライン522の位置まで押し下げられると、センサ52の発光部520から放たれた光が、テーブル50によって遮られて、受光部521に受光されなくなる。受光部521に光が受光されなくなった瞬間に、マウント33の装着面330が検知された旨の検知信号が、検知部5の信号発信部56から制御部8に発信される。
このとき、テーブル50が押し下げられることによってシリンダ51の内部にかかる圧力を上昇させないように、シリンダ51の内部に接続するリリーフバルブ53を介して排気されることで、ほぼ一定圧に維持される。これにより、テーブル50の接触面500からマウント33の装着面330にかかる+Z方向の力がほぼ一定に保たれるため、良好な測定を実施することができる。なお、研削砥石340の残量認識をしていないときには、シリンダ51内の空気が排気されて、テーブル50が最下位まで降下され、テーブル50の接触面500が保持面200よりも下に位置付けられる。
【0048】
そして、マウント33の装着面330が検知された旨の検知信号が制御部8に受信されると、制御部8は、研削送り機構4を制御して、研削ユニット3の下降を停止する。また、制御部8は、この検知信号が受信されたときに高さ測定部90によって読み取られたスケール91の値を、研削ユニット3の第1高さZ1として認識し、装着面高さ記憶部80に記憶させる。
なお、このマウント33の装着面330が検知されたときの研削ユニット3の高さ位置測定は、スピンドルユニットの交換などを行った際に実施する。つまり、研削ホイール34を交換する際に必ず行う必要はない。
なお、研削装置1では、事前に、検知部5のテーブル50の下面501がセンサ52の検出ライン522の位置まで押し下げられたときの、テーブル50の接触面500の高さと、保持面200の高さとの差を認識している。
【0049】
その後、制御部8は、研削送り機構4によって研削ユニット3を上昇させ、研削ホイール34をテーブル50から離間させる。
【0050】
その後、オペレータが、マウント33に研削ホイール34を装着する。次に、制御部8が、研削送り機構4によって研削ユニット3を-Z方向に下降させ、検知部5を用いて研削砥石340の下面3400を検知する。そして、制御部8は、研削砥石340の下面3400が検知された際の研削ユニット3の高さを、砥石下面高さ記憶部81に記憶する。
【0051】
具体的には、制御部8は、図5に示すように、まず、水平移動機構6によって可動板63をY軸方向に移動させることにより、検知部5のテーブル50の接触面500を、研削砥石340の下方に位置付ける。
【0052】
次いで、制御部8は、図6に示すように、研削送り機構4によって研削ユニット3を-Z方向に下降させ、研削砥石340の下面3400とテーブル50の接触面500とを接触させる。
【0053】
この状態で、制御部8は、研削送り機構4によって研削砥石340をさらに-Z方向に降下させていき、研削砥石340の下面3400によって、テーブル50を下方に押し下げていく。
【0054】
そして、図7に示すように、テーブル50の下面501がセンサ52の検出ライン522の位置まで押し下げられると、センサ52の発光部520から放たれた光が、テーブル50によって遮られて、受光部521に受光されなくなる。受光部521に光が受光されなくなった瞬間に、研削砥石340の下面3400が検知された旨の検知信号が、検知部5の信号発信部56から制御部8に発信される。
【0055】
そして、研削砥石340の下面3400が検知された旨の検知信号が制御部8に受信されると、制御部8は、研削送り機構4を制御して、研削ユニット3の下降を停止する。また、制御部8は、この検知信号が受信されたときに高さ測定部90によって読み取られたスケール91の値を、研削ユニット3の第2高さZ2として認識し、砥石下面高さ記憶部81に記憶させる。
【0056】
次に、砥石残量算出部82が、装着面高さ記憶部80に記憶された第1高さZ1と、砥石下面高さ記憶部81に記憶された第2高さZ2との差を、研削砥石340の下面3400からマウント33の装着面330までの距離Rとして算出する。
【0057】
その後、砥石残量算出部82が、第1高さZ1と第2高さZ2との差、すなわち、研削砥石340の下面3400からマウント33の装着面330までの距離Rから、基台厚み記憶部71に記憶された基台341の厚みを差し引くことによって、研削砥石340の残量とする。
【0058】
以上のように、研削装置1では、基台厚み記憶部71に基台341の厚みを記憶させるとともに、研削砥石340の下面3400からマウント33の装着面330までの距離Rから、記憶された基台341の厚みを差し引くことにより、研削砥石340の残量を算出する。従って、従来のようなノギス等による測定が不要となり、研削砥石の残量を適切に認識することができる。また、基台341の厚みにばらつきがある場合でも、研削砥石340の残量を良好に算出することができる。さらに、ある程度使用した研削砥石340の実際の残量と、算出されて認識された研削砥石340の残量とに違いがないか確認することができる。
【0059】
なお、制御部8は、算出された研削砥石340の残量の値を、研削装置1に備えられる図示しないディスプレイに表示してもよい。この場合、オペレータは、研削砥石340の残量を容易に把握することができるので、研削ホイール34を交換すべきか否かを適切に判断することができる。
また、制御部8は、算出された研削砥石340の残量が所定の値よりも小さい場合に、警報音を鳴らす等して、研削ホイール34を交換すべき旨をオペレータに報知するように構成されていてもよい。
【0060】
なお、検知部5は、例えば図2に示した透過型の光電センサであるセンサ52に代えて、図8に示すような、テーブル50の上端に接触子57を備えたAEセンサを備えであってもよい。AEセンサを用いる場合、たとえば研削砥石340の下面3400の検知では、研削砥石340の下面3400とAEセンサの接触子57の上面570とが接触した瞬間に、研削砥石340の下面3400が検知されて、研削砥石340の下面3400が検知された旨の検知信号が、検知部5の信号発信部56から制御部8に発信される。AEセンサを用いれば、AEセンサの接触子57の上面570と研削砥石340の下面3400とが接触した後に、研削砥石340を研削送り機構4によって降下させる必要がない。したがって、研削砥石340の残量の算出にかかる時間を短縮することができる。
【0061】
また、検知部5は、図9に示すように、テーブル50を収容する上部が開口された有底筒58と、有底筒58に囲繞されたバネ59を備えるものであってもよい。バネ59は、その一端がテーブル50の下面501に接続されているとともに、他端が有底筒58の内側の底部に固定されている。バネ59を用いることで、エア源55等の圧力発生機構を研削装置1に配設することなく、テーブル50を上方に付勢することができる。このため、研削装置1全体の大きさを小さくすることができるとともに、圧力を発生させるためのコストを削減することができる。
【0062】
また、図9に示す構成では、降下したテーブル50の下面501を検知する近接センサが設けられてもよい。また、図9に示す構成では、研削加工しているときに研削砥石340がテーブル50に接触することを回避できるような位置に、検知部5のシリンダ51を配設する。シリンダ51は、たとえば、図1に示す位置から-Y方向にずれた位置に配設される。
また、本実施形態では、検知部5のシリンダ51が、カバー22に配設されている。これに関し、検知部5のシリンダ51が可動板63に配設されて、シリンダ51およびテーブル50が、カバー22から突出していてもよい。
【0063】
なお、記録媒体36は上記の1次元コードに限定されず、例えば2次元コードまたはRFIDであってもよい。また、記録媒体36はシールとして基台341の側面に貼着されたものに限定されず、レーザーマーキング等によって基台341の側面に直接記入されていてもよい。記録媒体36は、例えば研削ホイール34の検査表に印刷されているものであってもよい。
【0064】
また、エンコーダ92から出力される高さの信号に基づいて研削ユニット3の高さの測定が行われる場合には、例えば、エンコーダ92からの高さの信号を装着面高さ記憶部80および砥石下面高さ記憶部81が受信し、それに基づき高さの差が計算されることとなる。
なお、図1に示すように、研削装置1は、被加工物17の厚みを測定する厚み測定ユニット75を備えていてもよい。厚み測定ユニット75は、保持面200の高さを測定する保持面高さ測定器751と、被加工物17の上面170の高さを測定する上面高さ測定器752とを備え、保持面高さ測定器751の値と上面高さ測定器752の値との差を被加工物17の厚みとして算出している。
制御部8は、被加工物17を研削終了したときの研削ユニット3の高さ位置を記憶させ、その高さ位置から研削後の被加工物17の厚みを差し引くことで、保持面200に研削砥石340の下面3400が接触する研削ユニット3の高さ位置を認識している。たとえば、制御部8は、この高さ位置から、あらかじめ認識している保持面200にマウント33の装着面330が接触するときの研削ユニット3の高さ位置と、基台厚み記憶部71に記憶されている研削ホイール34の基台341の厚みとを差し引くことによって、研削砥石340の残量を取得することが可能である。
つまり、制御部8は、研削終了時に被加工物17の厚みを測定して、研削砥石340の残量を認識することが可能になる。
【0065】
研削装置1による被加工物17の研削時の研削砥石340の原点を設定するいわゆるセットアップでは、研削送り機構4によって研削ユニット3を下降させることにより研削砥石340がチャックテーブル2の保持面200に接触した時の研削ユニット3の高さ位置を認識している。本実施形態においては、研削砥石340の残量を算出することで、保持面200に研削砥石340の下面3400が接触する研削ユニット3の高さ位置を認識するセットアップが完了する。
【0066】
さらに、研削砥石340のドレッシングを行う場合も、研削送り機構4によって研削ユニット3を下降させることにより、チャックテーブル2や図示しないサブテーブルに保持されたドレッシングボードに研削砥石340の下面3400を接触させる。したがって、研削砥石340の下面3400のドレッシングと、厚み測定ユニット75によるドレッシングボードの厚み測定と、スケール91による研削ユニット3の高さ位置の認識によって認識した研削ユニット3の高さ位置を用いた研削砥石340の残量の認識とを、一連の動作として実施することもできる。
【符号の説明】
【0067】
1:研削装置 10:ベース 100:内部ベース 11:コラム
17:被加工物 170:上面
2:チャックテーブル 20:吸引部 200:保持面
21:枠体 210:上面
22:カバー 23:蛇腹 24:ケーシング 25:回転機構
26:回転軸 27:吸引源
3:研削ユニット 30:スピンドル 31:ハウジング 32:スピンドルモータ
33:マウント 34:研削ホイール 35:回転軸 36:記録媒体
300:装着面 330:装着面 340:研削砥石 341:基台
3400:下面 3410:下面
4:研削送り機構 40:ボールネジ 41:ガイドレール
42:Z軸モータ 43:昇降板 44:ホルダ 45:回転軸
5:検知部 50:テーブル 51:シリンダ 52:センサ 53:リリーフバルブ
54:バルブ 55:エア源 56:信号発信部 57:接触子 570:上面
58:有底筒 59:バネ 500:接触面 501:下面 520:発光部
521:受光部 522:検出ライン
6:水平移動機構 60:ボールネジ 61:ガイドレール 62:モータ
63:可動板 65:回転軸
70:読取り部 71:基台厚み記憶部
75:厚み測定ユニット 751:保持面高さ測定器 752:上面高さ測定器
8:制御部 80:装着面高さ記憶部 81:砥石下面高さ記憶部
82:砥石残量算出部
90:高さ測定部 91:スケール
R:距離 Z1:第1高さ Z2:第2高さ
図1
図2
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図9