(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】エッジリング及びエッチング装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/302 101B
(21)【出願番号】P 2021089366
(22)【出願日】2021-05-27
【審査請求日】2023-11-20
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】石田 寿文
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 祐介
【審査官】原島 啓一
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-516072(JP,A)
【文献】特開2010-045200(JP,A)
【文献】特開2016-225588(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0029609(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/205
H01L 21/302
H01L 21/31
H01L 21/365
H01L 21/461
H01L 21/469
H01L 21/86
H05H 1/00-1/54
C23C 16/00-16/56
C23F 1/00-4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理チャンバ内の基板支持部に支持された被エッチング物の外周を囲むエッジリングであって、
前記エッジリングは、外周部から内周部に向かって低くなる傾斜面を有し、
前記エッジリングの最内周と最外周から等距離にある中間線よりも内周部の前記傾斜面の上に位置する地点Xaにおけるプラズマ処理前の前記エッジリングの厚さをT1とし、
前記中間線よりも外周
部の前記傾斜面の上に位置する地点Xbにおけるプラズマ処理前の前記エッジリングの厚さをT2とし、
前記地点Xaにおけるプラズマ処理後の前記エッジリングの厚さをT3とし、
前記地点Xbにおけるプラズマ処理後の前記エッジリングの厚さをT4とするとき、
T2/T1>T4/T3の関係を満たす、
エッジリング。
【請求項2】
プラズマ処理チャンバ内の基板支持部に支持された被エッチング物の外周を囲むエッジリングであって、
前記エッジリングは、外周部から内周部に向かって低くなる傾斜面を有し、
前記エッジリングの最内周と最外周から等距離にある中間線よりも内周部の前記傾斜面の上に位置する地点Xaにおけるプラズマ処理前の前記エッジリングの厚さをT1とし、
前記中間線よりも外周
部の前記傾斜面の上に位置する地点Xbにおけるプラズマ処理前の前記エッジリングの厚さをT2とし、
前記地点Xaにおけるプラズマ処理後の前記エッジリングの厚さをT3とし、
前記地点Xbにおけるプラズマ処理後の前記エッジリングの厚さをT4とするとき、
(T1-T3)<(T2-T4)の関係を満たす、
エッジリング。
【請求項3】
前記プラズマ処理前のエッジリングは、エッチング装置内にて未使用のエッジリングであり、
前記プラズマ処理後のエッジリングは、前記エッチング装置内にて使用済みのエッジリングである、
請求項1
または請求項2に記載のエッジリング。
【請求項4】
前記エッジリングの上面
に、前記中間線よりも内側に位置し、内側よりも外側が低くなる段差部を有し、
前記傾斜面は、前記段差部よりも外側の一部又は全部
に設けられている、
請求項1
乃至請求項3のいずれか一項に記載のエッジリング。
【請求項5】
前記エッジリングは、Si又はSiCにより形成されている、
請求項1
乃至請求項4のいずれか一項に記載のエッジリング。
【請求項6】
前記被エッチング物は、前記基板支持部の上に保持され、
前記被エッチング物の端部は、前記エッジリングの内周側面を越えて外側に張り出すように構成され、
前記傾斜面は、前記被エッチング物の端部よりも外側に位置する、
請求項1
乃至請求項5のいずれか一項に記載のエッジリング。
【請求項7】
前記傾斜面の水平面に対する角度は、3°以上7°以下である、
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のエッジリング。
【請求項8】
プラズマ処理チャンバと、
前記プラズマ処理チャンバ内に配置された基板支持部と、
前記基板支持部に支持された被エッチング物の外周を囲むエッジリングと、を有するエッチング装置であって、
前記エッジリングは、外周部から内周部に向かって低くなる傾斜面を有し、
前記エッジリングの最内周と最外周から等距離にある中間線よりも内周部の前記傾斜面の上に位置する地点Xaにおけるプラズマ処理前の前記エッジリングの厚さをT1とし、
前記中間線よりも外周の前記傾斜面の上に位置する地点Xbにおけるプラズマ処理前の前記エッジリングの厚さをT2とし、
前記地点Xaにおけるプラズマ処理後の前記エッジリングの厚さをT3とし、
前記地点Xbにおけるプラズマ処理後の前記エッジリングの厚さをT4とするとき、
T2/T1>T4/T3の関係を満たすように構成される、エッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エッジリング及びエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エッチング等のプラズマ処理は基板の近傍に配置される部品であるエッジリングの消耗をもたらす。エッジリングの消耗によりエッジリングの厚みが減少すると、エッジリングの上部のシースの形状が変化し、プラズマからのイオンの基板のエッジ領域に対する入射方向が垂直方向に対して内向きに傾斜する(以下、「チルト(Tilt)」ともいう)。この結果、プラズマ処理の面内均一性が損なわれる。基板のエッジ領域に近いエッジリングの内周部の消耗がチルトに大きな影響を与えるため、内周部の消耗を抑制できるエッジリングが望まれている。なお、エッジリングは、フォーカスリングとも呼ばれる。
【0003】
例えば、特許文献1は、フォーカスリングの消耗に起因するエッチング形状などの処理結果への悪影響を極力低減するとともに、フォーカスリングの使用期間を長期化することが可能なプラズマ処理方法を提供する。特許文献1では、フォーカスリングに直流電源が接続されており、フォーカスリングの消耗度、フォーカスリング上方の電界変化の検知結果、または既に実施されたプラズマ処理結果に基づき、所定の直流電圧がフォーカスリングに印加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、エッジリングの内周部の消耗を抑制できるエッジリングを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の態様によれば、プラズマ処理チャンバ内の基板支持部に支持された被エッチング物の外周を囲むエッジリングであって、前記エッジリングは、外周部から内周部に向かって低くなる傾斜面を有し、前記エッジリングの最内周と最外周から等距離にある中間線よりも内周部の前記傾斜面の上に位置する地点Xaにおけるプラズマ処理前の前記エッジリングの厚さをT1とし、前記中間線よりも外周部の前記傾斜面の上に位置する地点Xbにおけるプラズマ処理前の前記エッジリングの厚さをT2とし、前記地点Xaにおけるプラズマ処理後の前記エッジリングの厚さをT3とし、前記地点Xbにおけるプラズマ処理後の前記エッジリングの厚さをT4とするとき、T2/T1>T4/T3の関係を満たす、エッジリングが提供される。
【発明の効果】
【0007】
一の側面によれば、エッジリングの内周部の消耗を抑制できるエッジリングを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1(a)は、参考例に係るエッジリング、
図1(b)は、実施形態に係るエッジリングを示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るエッジリング周辺を示す一例の図である。
【
図3】
図3は、実施形態及び参考例のエッジリングの電界強度を示すグラフである。
【
図4】
図4(a)及び(b)は、実施形態及び参考例の外周部に対する内周部のエッジリングの電界強度比と消耗レート比の相関を示すグラフである。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係るエッジリングを示す平面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係るエッジリングを示す断面図(
図5のA-A断面図)である。
【
図7】
図7は、第2~4実施形態に係るエッジリングを示す断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係るエッチング装置の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複する。説明を省略する場合がある。
【0010】
[エッジリング]
はじめに、
図1及び
図2を参照し、実施形態に係るエッジリングFRを説明する。
図1(a)は、参考例に係るエッジリングFR'、
図1(b)は、実施形態に係るエッジリングFRを示す図である。
図2は、実施形態に係るエッジリングFR及びその周辺を示す一例の図である。
【0011】
エッジリングFRは、エッチング装置10(
図8参照)のプラズマ処理チャンバ12内の基板支持部STに支持された被エッチング物の一例である基板(以下、「ウエハW」という。)の外周を囲むように配置された環状部材である。エッジリングFRは、一例では、Si又はSiC等の導電性を有する材料により形成されている。カバーリング14aは、エッジリングFRの外周を囲むように配置された環状部材である。カバーリング14aは、一例では、石英等の絶縁性を有する材料により形成されている。エッチング装置10は、ウエハW上の被エッチング物(エッチング対象膜)をプラズマ処理(エッチング)する装置である。基板支持部STは、基台16及び静電チャック18を含む。エッチング装置10の他の構成については後述する。
【0012】
図1(a)の参考例に係るエッジリングFR'及び
図1(b)の実施形態に係るエッジリングFR(以下、Taper FRとも表記する)について説明する。参考例に係るエッジリングFR'及び実施形態に係るエッジリングFRは、上面の形状が異なり、それ以外の形状は同一である。
【0013】
図1(a)に示す参考例に係るエッジリングFR'の縦断面は、内周側面160bと、外周側面160dと、内周側面160bと外周側面160dの下端を結ぶ底面160eと、内周側面160bと外周側面160dの上端を結ぶ上面160aと、をエッジリングFR'の半径方向に切断したとき各切断線により囲まれた面である。エッジリングFR'の上面160aは、面160a1、面160a2及び段差部160cから構成される。
【0014】
図1(b)に示す実施形態に係るエッジリングFRの縦断面は、内周側面60bと、外周側面60dと、内周側面60bと外周側面60dの下端を結ぶ底面60eと、内周側面60bと外周側面60dの上端を結ぶ上面60aと、をエッジリングFRの半径方向に切断したとき各切断線により囲まれた面である。エッジリングFRの上面60aは、面60a1、面60a2、面60a3及び段差部60cから構成される。なお、エッジリングFRの内周側面60b及び外周側面60dから水平方向に見て等距離にある中間線Axに対してその内側の領域をエッジリングFRの内周部(FR内周部)とし、外側の領域をエッジリングFRの外周部(FR外周部)とする。同様にエッジリングFRの内周側面160b及び外周側面160dから水平方向に見て等距離にある図示しない中間線に対してその内側の領域をエッジリングFRの内周部(FR内周部)とし、外側の領域をエッジリングFRの外周部(FR外周部)とする。
【0015】
基台16又は環状部材15に支持されたエッジリングFR'において、上面160aのうち面160a1及び面160a2は水平面である。また、基台16又は環状部材15に支持されたエッジリングFRにおいて、上面60aのうち面60a2及び面60a3は水平面であり、面60a1はエッジリングFRの外周部から内周部に向かって低くなる傾斜面である。底面160eと面160a1及び面160a2とは略平行な面である。同様に、底面60eと面60a2及び面60a3とは略平行な面である。本明細書中において上記各面が「水平面」であるとは、エッジリングFR'、FRが基台16のリング支持面16b上に配置されたときに、面160a1及び面160a2と、面60a2及び面60a3の各面が水平面になることを意味する。同様に本明細書中において「傾斜面」とは、エッジリングFRが基台16のリング支持面16b上に配置されたときに、面60a1が外周部から内周部に向かって低くなる傾斜面になることを意味する。
【0016】
基台16は、静電チャック18を支持するための中央領域(中央支持面16a)と、エッジリングFR、FR'を支持するための環状領域(リング支持面16b)とを有する。基台16のリング支持面16bは、平面視で中央支持面16aを囲んでいる。静電チャック18は、基台16の中央支持面16a上に配置され、エッジリングFR、FR'は、基台16のリング支持面16b上に配置される。
【0017】
基台16は、導電性部材を含む。基台16の導電性部材は下部電極として機能する。静電チャック18の上面は、基板支持面18aを有し、ウエハWは基板支持面18a上に配置される。エッジリングFR、FR'は、静電チャック18上のウエハWを囲むように配置される。
【0018】
図2に示すように、リングアセンブリ14は、エッジリングFRとカバーリング14aとにより構成されている。エッジリングFRの一部とカバーリング14aは、環状部材15により支持されている。環状部材15は、石英等の絶縁体から形成されている。環状部材15は、基台16の外周を囲むように構成される。
【0019】
エッジリングFRの最外周の高さ(厚さ)とカバーリング14aの最内周の高さ(厚さ)は略同一である。つまり、エッジリングFRの最外周の上面とカバーリング14aの少なくとも最内周の上面とは段差がない。カバーリング14aの下面は、外周側が内周側よりも下部にリング状に突出し、環状部材15の上面の外周側に形成されたリング状の凹部に係合されている。なお、基台16のリング支持面16bは、伝熱シートを介してエッジリングFRを配置してもよい。
【0020】
図1に戻り、ウエハWの端部がエッジリングFR、FR'の内周側面60b、160bを越えて外側に張り出すようにエッジリングFR、FR'が構成されている。エッジリングFR、FR'の上面60a、160aには、ウエハWの端部の近傍であってウエハWの端部よりも外側に段差部60c、160cが形成されている。エッジリングFR、FR'の上面60a、160aのうち最内周から段差部60c、160cまでの面60a3、160a2は平坦な水平面である。以下、面60a3は第1面とする。
【0021】
図1(a)の参考例のエッジリングFR'では、上面160aは、エッジリングFR'の最内周から段差部160cまでの面160a2と、段差部160cからエッジリングFR'の最外周までの面160a1とを有し、面160a2は内周側面160bの上端から約1~2mmの幅である。エッジリングFR'の内周側面160bから段差部160cまでのエッジリングFR'の厚さは同じである。また、段差部160cからエッジリングFR'の外周側面160dまでのエッジリングFR'の厚さは同じである。段差部160cからエッジリングFR'の外周側面160dまでのエッジリングFR'の厚さは、エッジリングFR'の内周側面160bから段差部160cまでのエッジリングFR'の厚さよりも厚い。つまり、段差部160cよりも外周側の面160a1の高さは、段差部160cよりも内周側の面160a2の高さよりも高い。
【0022】
これに対して、
図1(b)の実施形態のエッジリングFRでは、上面60aは、エッジリングFRの内周側面60bから段差部60cまでの第1面60a3と、段差部60cの外周側に向かう傾斜面60a1と第2面60a2とからなり、第1面60a3は内周側面60bの上端から約1~2mmの幅である。第1面60a3及び第2面60a2はそれぞれ基台16のリング支持面16b上に配置されたときに水平面であり、内周側面60bから段差部60cまでのエッジリングFRの厚さは同じである。第2面60a2は、基台16のリング支持面16b上に配置されたときに水平面でもよいし、傾斜面でもよい。傾斜面60a1は、第1面60a3と第2面60a2の間の面である。それぞれ第1面60a3、第2面60a2、傾斜面60a1の各面は平坦である。段差部60cより外側のエッジリングFRの厚さは、段差部60cより内側のエッジリングFRの厚さに対して傾斜面60a1の内周部で薄くなり、外周部で厚くなる。
【0023】
係る構成により、
図1(a)の参考例のエッジリングFR'では、段差部160cよりも外周側のエッジリングFR'の厚さは同じになる。これに対して、
図1(b)の実施形態のエッジリングFRでは、段差部60cよりも外周側のエッジリングFRの厚さは外側に向かって厚くなる(傾斜面60a1)。
【0024】
これにより、エッジリングFR、FR'の内周側面60b、160bから段差部60c、160cまでの厚さはそれぞれのエッジリングFR、FR'で同一であるが、段差部60c、160cの外側ではウエハWの上表面からの相対的な高さがエッジリングFRとエッジリングFR'とで異なる。すなわち、
図1(a)の参考例のエッジリングFR'では、段差部160cの外側においても上面160aは水平面であるため、ウエハWの上表面からの上面160aの相対的な高さは同一である。これに対して、
図1(b)の実施形態のエッジリングFRでは、段差部60cの外側の上面60aのうち少なくとも傾斜面60a1においてウエハWの上表面からの相対的な高さは外周部から内周部に向かって低くなる。
【0025】
エッジリングFR、FR'には、後述するように基台16に第1の高周波電源HFS及び/又は第2の高周波電源LFSから高周波電力が印加され(
図8参照)、エッジリングFR、FR'に高周波電流(RF電流)が流れる。
【0026】
同一条件の場合、高周波電流によりエッジリングFR、FR'上に形成されるシースにおける電界強度は、全体としては一定であり、例えば電界強度を0にすることはできない。エッジリングFR、FR'の段差部60c、160cよりも外周側の上面60a、160aの高さを変えることで、外周部及び内周部の電界強度を相対的に変えることができる。
【0027】
例えば、参考例のエッジリングFR'では、段差部160cの外側の上面160aにおいてウエハWの上表面からの相対的な高さが同じである。このため、エッジリングFR'の表層を流れる高周波電流の割合は外周部及び内周部にて概ね同じである。この結果、シースにおける電界強度も外周部及び内周部において概ね同じ値になる。
【0028】
一方、実施形態のエッジリングFRでは、傾斜面60a1において内周部は外周部よりもウエハWの上表面からの相対的な高さが低い。このため、エッジリングFRの表層を流れる高周波電流が相対的に変化し、シースにおけるFR外周部の電界強度はFR内周部の電界強度よりも高くなる。
【0029】
図3のグラフは、以下の条件でエッジリングFR、FR'を流れる高周波電流により発生する電界強度(縦軸)を、横軸のエッジリングFR、FR'の径方向の位置に対してプロットしたシミュレーション結果を示す。グラフの150mmは、ウエハWの中心から半径150mmの位置であるウエハWの端部Aの位置であり、180mmは、ウエハWの中心から180mmの位置であるエッジリングFR、FR'の端部Bの位置である(
図1(a)及び(b)参照)。
<シミュレーション条件>
エッジリングFRの傾斜面60a1の水平面に対する角度(傾斜角):3°
エッジリングFR'の面160a1の水平面に対する角度:0°
エッチングガス:C
4F
6ガス、O
2ガス及びArガスの混合ガス
圧力:50mTorr(6.67Pa)
第1の高周波電源HFSから出力するRF(HF):100MHz
第2の高周波電源LFSから出力するRF(LF):3.2MHz
第1の高周波電源HFSから出力するRF(HF):100MHzおよび第2の高周波電源LFSから出力するRF(LF):3.2MHzとは下部電極に供給する設定とした。
【0030】
図3のグラフ中の曲線Sは、
図1(a)に示す参考例のエッジリングFR'の径方向のウエハWの端部AからエッジリングFR'の端部Bまでの各位置における電界強度を示す。曲線Sでは、約153mm付近の段差部160cよりも外周側において径方向にウエハWの中心から約153mm~約175mmの範囲で電界強度が略同一になった。
【0031】
図3のグラフ中の曲線Tは、
図1(b)に示す実施形態のエッジリングFR(Taper FR)の径方向の各位置における電界強度を示す。曲線Tでは、約153mm付近の段差部60cよりも外周側において径方向にウエハWの中心から約153mm~約175mmの範囲で外周部の電界強度と内周部の電界強度に高低が生じた。特に、エッジリングFRでは、エッジリングFR'よりもウエハWの中心から約153mm~約160mmの範囲で内周部の電界強度が低くなり、約170mm~約180mmの範囲で外周部の電界強度が高くなった。
【0032】
以上の結果から、実施形態に係るエッジリングFRでは、上面60aに径方向に内周部が外周部よりも低くなるように傾斜面60a1を有することでエッジリングFRの径方向に対してシースにおけるFR外周部の電界強度をFR内周部の電界強度より高くできる。つまり、
図1(b)に示すように、エッジリングFRは、FR外周部からFR内周部に向かって低くなる傾斜面60a1により、内周部の電界強度を外周部の電界強度よりも相対的に小さくできる。これにより、電界強度が相対的に低いFR内周部では、電界強度が相対的に高いFR外周部よりもシース内に入射するイオンのエネルギーが小さくなる。これにより、FR内周部にてFR外周部よりもエッジリングFRの消耗レートを低くすることができる。
【0033】
このようにして、
図1(b)に示す実施形態に係るエッジリングFRでは、上面60aに内周部が外周部よりも低くなるように傾斜をつける構造を有することで、エッジリングFRの外周側と内周側とで電界強度差を発生させる。これにより、意図的にエッジリングFRの部分の消耗レートを制御することができる。
【0034】
図2に位置Xa、Xbの一例を示すように、中間線Axに対して内周部にある上面60a上の位置Xaは、中間線Axに対して外周部にある上面60a上の位置Xbよりも相対的な高さが低い。例えば、
図3のグラフの曲線Tに示す実施形態に係るエッジリングFRでは、内周部の位置Xa(例えばウエハWの中心から約153mm)では、外周部の位置Xb(例えばウエハWの中心から約176mm)よりも電界強度を相対的に下げることができる。一方、
図3のグラフの曲線Sに示す参考例に係るエッジリングFR'では、内周部の位置Xaと外周部の位置Xbの電界強度は概ね同じである。
【0035】
次に、エッジリングFR'FRの消耗について以下の実験条件で実験を行った。
<実験条件>
エッジリングFRの傾斜面60a1の水平面に対する角度(傾斜角):3°
エッジリングFR'の面160a1の水平面に対する角度:0°
被エッチング物(エッチング対象膜):SiO2
エッチングガス:C4F6ガス、O2ガス及びArガスの混合ガス
本実験では、累積200時間、基板Wをエッチングした。
【0036】
実験の結果、エッジリングFR'の消耗レートを1として規格化したとき、エッジリングFR'の消耗レートに対するエッジリングFRの消耗レート比は、エッジリングFR'、FRの最内周から3mmの位置、すなわちウエハWの中心から153mmの位置において約0.6倍となり、エッジリングFR'、FRの最外周から4mmの位置、すなわちウエハWの中心から176mmの位置において約0.9倍となった。上記の<実験条件>のうち、エッジリングFRの傾斜面の水平面に対する傾斜角度θを7°にし、それ以外の条件を同じにした場合、エッジリングFR'の消耗レートに対するエッジリングFRの消耗レートの比は、内周部で約0.5倍、外周部で約1.0倍となった。いずれの場合でも、内周部の消耗量(消耗レート)は外周部の消耗量(消耗レート)よりも小さくなる。
【0037】
実施形態に係るエッジリングFRでは、上面の外周部の高さを内周部の高さよりも高くする。これにより、上面の高さが同じ平坦な参考例のエッジリングFR'よりもウエハWの近傍の内周部の消耗量(変化量)を減少させることができる。すなわち、実施形態に係るエッジリングFRによれば、FR内周部にてFR外周部よりもエッジリングFRの消耗レートを低くすることができる。つまり、地点Xaにおけるプラズマ処理前のエッジリングFRの厚さをT1とし、中間線Axよりも外周部の傾斜面60a1上に位置する上面60a上の地点Xbにおけるプラズマ処理前のエッジリングFRの厚さをT2とし、当該地点Xaにおけるプラズマ処理後のエッジリングFRの厚さをT3とし、当該地点Xbにおけるプラズマ処理後のエッジリングFRの厚さをT4としたとき、内周部の消耗量(消耗レート)は、T1-T3と、外周部の消耗量(消耗レート)はT2-T4と表すことができ、(T1-T3)<(T2-T4)の関係が成立する。また、チルトを抑制し、ウエハWのエッジにおいても垂直なエッチングを可能とする。これにより、エッチングの面内均一性が向上する。また、意図的にエッジリングFRの部分の消耗レートを制御することでエッジリングFRの寿命を延はし、コスト面のメリットも有する。さらに、n(n≧1)枚目のウエハWとn+1枚目のウエハWとでチルト量のバラツキを改善することができる。
【0038】
図4(a)及び(b)は、
図1(b)に示す上面60aのうち傾斜面60a1のみ傾斜し、第2面60a2が水平面である実施形態に係るエッジリングFRと、
図1(a)に示す上面160aが平坦な参考例のエッジリングFR'とを用いた
図3に示すシミュレーション結果と上記の実験結果との相関関係を示す。
【0039】
図4(a)は、エッジリングFR、FR'を流れる高周波電流により発生する電界強度の内周部と外周部との電界強度比のシミュレーション結果(
図3)を横軸に示し、消耗レート比を縦軸に示し、その相関関係をグラフにした図である。なお内周部はウエハWの中心から153mmの位置、外周部はウエハWの中心から176mmの位置である。
図1(a)に示す参考例のエッジリングFR'の外周部の消耗量を消耗レート比「1」と規格化し、エッジリングFR'の外周部の電界強度を電界強度比「1」と規格化した。F1-innerはエッジリングFR'の内周部を示し、F1-outerはエッジリングFR'の外周部を示し、T1-innerはエッジリングFRの内周部を示し、T1-outerはエッジリングFRの外周部を示す。
【0040】
図4(a)及び(b)に示すように、参考例のエッジリングFR'では、外周部(F1-outer)に対する内周部(F1-inner)の電界強度比及び消耗レート比はほぼ同じであった。これに対して、実施形態のエッジリングFRでは、外周部(T1-outer)の電界強度は、エッジリングFR'の外周部(F1-outer)の電界強度と同じであったが、エッジリングFRの内周部(T1-inner)の、エッジリングFR'の外周部(F1-outer)及びエッジリングFRの外周部(T1-outer)に対する電界強度比は約0.7倍であった。実施形態のエッジリングFRの消耗レート比は、外周部(T1-outer)でエッジリングFR'の外周部(F1-outer)に対して0.9倍であり、内周部(T1-inner)でエッジリングFR'の外周部(F1-outer)に対して0.6倍であった。すなわち、エッジリングFRでは、ウエハWからのエッジリングFRの相対的な高さの比が小さくなるほど消耗レート比が下がった。また、エッジリングFRでは、内周部(inner)は外周部よりもウエハWからのエッジリングFRの相対的な高さが低くなり、エッジリングFRの外周部に対する内周部の電界強度比が小さくなり、消耗レート比が下がった。以上から、ウエハWに対するエッジリングFRの相対的な高さの比を変えることで外周部に対する内周部の電界強度比及び消耗レート比を変えることができ、これにより、エッジリングFRの内周部における消耗量を低減することができた。
【0041】
[エッジリングの第1~第4実施形態]
(第1実施形態)
次に、第1実施形態に係るエッジリングFRについて、
図5及び
図6を参照しながら説明する。
図5は、第1実施形態に係るエッジリングFRを示す平面図である。
図6は、第1実施形態に係るエッジリングFRを示す断面図(
図5のA-A断面図)である。
【0042】
図5に示すように、第1実施形態では、半径が略150mmのウエハWの外周を囲むようにエッジリングFRが配置されている。エッジリングFRは、ウエハWの中心軸Oに対して軸を共通にし、概ね同心円状に配置される。
【0043】
エッジリングFRの内径Iは約300mm~約305mmであり、エッジリングFRの外径Jは約360~365mmであり、エッジリングFRの径方向の幅Cは約28mm~32mmである。エッジリングFRの最内周から段差部60cまでの径方向の幅Eは約1mm以上約2mm以下であってよい。
【0044】
エッジリングFRの上面60aは、段差部60cの外側に傾斜面60a1及び第2面60a2を有する。エッジリングFRの上面60aは、段差部60cの内側に第1面60a3を有する。第1面60a3、傾斜面60a1及び第2面60a2は平坦である。上面60aは、一部が傾斜面であってもよく、全部が傾斜面であってもよい。つまり、第2面60a2は、傾斜面でもよく、水平面でもよい。
図5のA-A断面を示す
図6の例では、第2面60a2は水平面である。
【0045】
第2面60a2は、エッジリングFRの最外周から内側に径方向に約5mm以上約7mm以下の幅Gを有する。傾斜面60a1の径方向の幅は約20mm以上約30mm以下であってもよい。本開示では、傾斜面60a1は、外周部から内周部に向かって水平面に対する傾斜角度θ(°)が2.5°以上10°以下になるように一律に低くなる平坦な面であってよい。傾斜角度θ(°)が2.5°未満では、FR内周部の消耗低減の効果が十分とは言えず、10°を超えると基板処理の初期(エッジリングの外周部が消耗する前)における面内均一性が悪化する虞がある(チルトを抑制するのが難しくなる)。角度が大きくなるとシースの下端の歪みが大きくなり、チルトの制御が難しくなる(基板エッジ外側へのチルト(アウターチルト)が大きくなる。)ため、10°以下にする必要がある。チルト制御性およびエッジリングの内周部の消耗低減度合の2つの観点を考慮すると、傾斜角度θ(°)は、3°以上7°以下であることがより好ましい。すなわち、傾斜角度θ(°)を3°以上とすることで、FR外周部を流れる高周波電流に対してFR内周部を流れる高周波電流の割合をより低下させ、内周部における消耗低減の効果を十分に得ることができる。また、傾斜角度θ(°)を7°以下とすることで、ウエハWのエッジにおいて外側へチルト(アウターチルト)するチルト量が大きくなることを防止でき、ウエハWのエッジを含め、ウエハWの面内において垂直形状のエッチングが可能となる。
【0046】
エッジリングFRの最内周の厚さDは、約3mmである。最外周のエッジリングFRの厚さHの最大値は、約3.5mm以上約7.0mm以下である。段差部60cの高さFは、約0.2mmである。
【0047】
図6の破線で示す傾斜面60a1は、エッジリングFRのプラズマ処理前の高さを示し、実線で示す傾斜面60a1は、エッジリングFRのプラズマ処理後の高さを示す一例である。プラズマ処理前のエッジリングFRは、未使用(新品)のエッジリングFRを意味してもよい。また、プラズマ処理後のエッジリングFRは、使用済みのエッジリングFR、すなわち、プラズマ処理を経て消耗後(例えば交換時)のエッジリングFRを意味してもよい。
【0048】
エッジリングFRの最内周と最外周から水平方向に見て等距離にある中間線Axよりも内周部の傾斜面60a1上に位置する上面60a上の地点をXaとし、地点Xaにおけるプラズマ処理前のエッジリングFRの厚さをT1とする。中間線Axよりも外周部の傾斜面60a1上に位置する上面60a上の地点Xbにおけるプラズマ処理前のエッジリングFRの厚さをT2とする。
【0049】
当該地点Xaにおけるプラズマ処理後のエッジリングFRの厚さをT3とし、当該地点Xbにおけるプラズマ処理後のエッジリングFRの厚さをT4とする。このとき、T2/T1>T4/T3の関係が成立する。
【0050】
(第2~4実施形態)
次に、
図7を参照しながら、第2~4実施形態に係るエッジリングFRについて説明する。
図7は、第2~4実施形態に係るエッジリングFRを示す断面図である。第1実施形態と異なる点は、第2~4実施形態では、エッジリングFRの上面60aが有する傾斜面60a1が平坦な面でない点である。その他のエッジリングFRの構成は第1実施形態と同一である。つまり、第2~4実施形態では、傾斜面60a1は、平坦な面、凹面、凸面及び曲面の少なくともいずれかであってよい。
【0051】
図7(a)の第2実施形態では、傾斜面60a1が凹面となっている。
図7(b)の第3実施形態では、傾斜面60a1が凸面となっている。
図7(c)の第4実施形態では、傾斜面60a1の外周部が凸面となっており、内周部が凹面となっている。
【0052】
第2~4実施形態において、エッジリングFRの傾斜面60a1までの高さが最大値Hmax及び最小値Hminとなる傾斜面60a1の位置に対応する水平面の位置Xmax、Xminの径方向の距離を(Xmax-Xmin)とする。距離(Xmax-Xmin)に対する最大値と最小値の高さの差分(Hmax-Hmin)はtanθで示される。第1~4実施形態のエッジリングFRは、tanθ(=(Hmax-Hmin)/(Xmax-Xmin))が9/210以上37/210以下であるように構成される。
【0053】
[エッチング装置]
最後に、実施形態に係るエッジリングFRが配置されるエッチング装置10の一例について、
図8を参照しながら説明する。
図8は、実施形態に係るエッチング装置10の一例を示す断面模式図である。実施形態に係るエッチング装置10は、ウエハWを処理ガス(エッチングガス)のプラズマに晒して、エッチング対象膜をエッチングする。これにより、エッチング対象膜にホールといった形状を形成する。
【0054】
エッチング装置10は、容量結合型プラズマエッチング装置であり、略円筒状のプラズマ処理チャンバ12を備えている。プラズマ処理チャンバ12は、例えば、その表面は陽極酸化処理されたアルミニウムから構成されている。このプラズマ処理チャンバ12は保安接地されている。
【0055】
プラズマ処理チャンバ12の底部上には、絶縁材料から構成された円筒上の環状部材15が配置されている。この環状部材15は、その内壁面において、基台16を支持している。環状部材15の上部にリングアセンブリ14が配置されている。基台16は、例えばアルミニウムといった金属から構成されており、略円盤形状を有している。
【0056】
基台16には、整合器MU1を介して第1の高周波電源HFSが接続されている。第1の高周波電源HFSは、プラズマ生成用の高周波電力を発生する電源であり、27~100MHzの範囲内の周波数、一例においては100MHzの高周波を発生させる。整合器MU1は、第1の高周波電源HFSの出力インピーダンスと負荷側(基台16側)の入力インピーダンスを整合させるための回路を有している。
【0057】
また、基台16には、整合器MU2を介して第2の高周波電源LFSが接続されている。第2の高周波電源LFSは、ウエハWにイオンを引き込むための高周波電力(高周波バイアス電力)を発生して、当該高周波バイアス電力を基台16に供給する。高周波バイアス電力の周波数は、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数であり、一例においては3.2MHzである。整合器MU2は、第2の高周波電源LFSの出力インピーダンスと負荷側(基台16側)の入力インピーダンスを整合させるための回路を有している。
【0058】
ただし、第1の高周波電源HFS及び第2の高周波電源LFSは、基台16(下部電極)に結合される構成に限定されない。第1の高周波電源HFSは、後述する上部電極30に結合され、第2の高周波電源LFSは下部電極に結合される構成でもよい。
【0059】
基台16上には、静電チャック18が設けられている。基板支持部STは、下部電極及び静電チャック18を含む。静電チャック18は、基台16と共にウエハWを支持するための載置台を構成している。静電チャック18は、導電膜である電極20を一対の絶縁層又は絶縁シート間に配置する構造を有している。電極20には、直流電源22が電気的に接続されている。静電チャック18は、直流電源22からの直流電圧により生じたクーロン力等の静電力によりウエハWを吸着保持することができる。
【0060】
基台16の上面であって、静電チャック18の周囲には、本開示のフォーカスリングFRが配置されている。
図8ではフォーカスリングFRの形状を模式的に示している。
【0061】
基台16の内部には、流路24が設けられている。流路24には、外部に設けられたチラーユニットから配管26a、26bを介して所定温度の温調媒体、例えば冷却水が循環供給される。このように循環される温調媒体の温度を制御することにより、静電チャック18上に載置されたウエハWの温度が制御される。
【0062】
また、エッチング装置10には、ガス供給ライン28が設けられている。ガス供給ライン28は、伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスを、静電チャック18の上面とウエハWの裏面との間に供給する。
【0063】
また、エッチング装置10は、上部電極30を備えている。この上部電極30は、基台16の上方において、当該基台16と対向配置されており、基台16と上部電極30とは、互いに略平行に設けられている。これら上部電極30と基台16との間には、ウエハWにプラズマエッチングを行うための処理空間Sが画成される。
【0064】
上部電極30は、絶縁性遮蔽部材32を介して、プラズマ処理チャンバ12の上部に支持されている。上部電極30は、電極板34及び電極支持体36を含み得る。電極板34は、処理空間Sに面しており、複数のガス吐出孔34aを画成している。この電極板34は、ジュール熱の少ない低電気抵抗の導電体又は半導体から構成され得る。
【0065】
電極支持体36は、電極板34を着脱自在に支持するものであり、例えばアルミニウムといった導電性材料から構成され得る。この電極支持体36は、水冷構造を有し得る。電極支持体36の内部には、ガス拡散室36aが設けられている。このガス拡散室36aからは、ガス吐出孔34aに連通する複数のガス通流孔36bが下方に延びている。また、電極支持体36にはガス拡散室36aに処理ガスを導くガス導入口36cが形成されており、このガス導入口36cには、ガス供給管38が接続されている。
【0066】
ガス供給管38には、バルブ群42及び流量制御器群44を介してガスソース群40が接続されている。ガスソース群40は、複数のガスソースを含んでいる。流量制御器群44は、複数の流量制御器を含み、これら複数の流量制御器の各々は、マスフローコントローラであり得る。バルブ群42は、複数のバルブを含み、これら複数のバルブの各々は、流量制御器の各々に接続されている。
【0067】
エッチング装置10では、ガスソースのうち選択されたガスソースからのガスが、対応の流量制御器及びバルブを介して、流量制御された状態で、ガス供給管38に供給される。ガス供給管38に供給されたガスは、ガス拡散室36aに至り、ガス通流孔36b及びガス吐出孔34aを介して処理空間Sに吐出される。
【0068】
また、エッチング装置10は、接地導体12aを更に備え得る。接地導体12aは、略円筒状の接地導体であり、プラズマ処理チャンバ12の側壁から上部電極30の高さ位置よりも上方に延びるように設けられている。
【0069】
また、エッチング装置10では、プラズマ処理チャンバ12の内壁に沿ってデポシールド46が着脱自在に設けられている。また、デポシールド46は、環状部材15の外周にも設けられている。デポシールド46は、プラズマ処理チャンバ12にエッチング副生物(デポ)が付着することを防止するものであり、アルミニウム材にY2O3等のセラミックスを被覆することにより構成され得る。
【0070】
プラズマ処理チャンバ12の底部側においては、環状部材15とプラズマ処理チャンバ12の内壁との間に排気プレート48が設けられている。排気プレート48は、例えば、アルミニウム材にY2O3等のセラミックスを被覆することにより構成され得る。この排気プレート48の下方においてプラズマ処理チャンバ12には、排気口12eが設けられている。排気口12eには、排気管52を介して排気装置50が接続されている。排気装置50は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、プラズマ処理チャンバ12内を所望の真空度まで減圧することができる。また、プラズマ処理チャンバ12の側壁にはウエハWの搬入出口12gが設けられており、この搬入出口12gはゲートバルブ54により開閉可能となっている。
【0071】
また、プラズマ処理チャンバ12の内壁には、導電性部材(GNDブロック)56が設けられている。導電性部材56は、高さ方向においてウエハWと略同じ高さに位置するように、プラズマ処理チャンバ12の内壁に取り付けられている。この導電性部材56は、グランドにDC的に接続されており、異常放電防止効果を発揮する。
【0072】
また、エッチング装置10は、制御部Cntを更に備え得る。この制御部Cntは、プロセッサ、記憶部、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータであり、エッチング装置10の各部を制御する。この制御部Cntでは、入力装置を用いて、オペレータがエッチング装置10を管理するためにコマンドの入力操作等を行うことができ、また、表示装置により、エッチング装置10の稼働状況を可視化して表示すことができる。さらに、制御部Cntの記憶部には、エッチング装置10で実行される各種処理をプロセッサにより制御するための制御プログラムや、処理条件に応じてエッチング装置10の各構成部に処理を実行させるためのプログラム、即ち、処理レシピが格納される。
【0073】
実施形態のエッジリングFRは、エッチング装置10に配置することができる。エッジリングFR近傍の構成以外のプラズマ処理装置(エッチング装置)の構成は例えば、
図8に示した特開2015-41624(対応米国US2015056808.A1)に記載の装置を用いることができる。ただし、これに限らず、本開示のエッチング装置10は、Inductively Coupled Plasma(ICP)、Radial Line Slot Antenna(RLSA)、Electron Cyclotron Resonance Plasma(ECR)、Helicon Wave Plasma(HWP)のいずれのタイプの装置でも適用可能である。
【0074】
以上に説明したように、本開示のエッジリングFR及びエッチング装置10によれば、ウエハWのエッジ領域に近いエッジリングFRの内周部の電界強度よりもエッジリングFRの外周部における電界強度を相対的に上げる。これにより、エッジリングFRの内周部における電界強度を相対的に下げる。これにより、電界強度が相対的に低いエッジリングFRの内周部においてイオンエネルギーが小さくなり、エッジリングFRの消耗レートが低くなる。具体的には、エッジリングFRの内周部よりも外周部を厚くすることで、ウエハW近傍のエッジリングFRの内周部の消耗を抑制し、チルト制御性を向上させることができる。
【0075】
また、開示する実施形態は以下の付記の態様をさらに含む。
(付記1)プラズマ処理チャンバ内の基板支持部に支持された被エッチング物の外周を囲むエッジリングであって、
前記エッジリングは、外周部から内周部に向かって低くなる傾斜面を有し、
前記エッジリングの最内周と最外周から等距離にある中間線よりも内周部の前記傾斜面の上に位置する地点Xaにおけるプラズマ処理前の前記エッジリングの厚さをT1とし、
前記中間線よりも外周の前記傾斜面の上に位置する地点Xbにおけるプラズマ処理前の前記エッジリングの厚さをT2とし、
前記地点Xaにおけるプラズマ処理後の前記エッジリングの厚さをT3とし、
前記地点Xbにおけるプラズマ処理後の前記エッジリングの厚さをT4とするとき、
(T1-T3)<(T2-T4)の関係を満たす。
(付記2)前記傾斜面の水平面に対する角度は、3°~7°である(付記1)に記載のエッジリング。
【0076】
今回開示された実施形態に係るエッジリング及びエッチング装置は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0077】
10 エッチング装置
12 プラズマ処理チャンバ
14 リングアセンブリ
14a カバーリング
16 基台
18 静電チャック
60a1 傾斜面
FR エッジリング
ST 基板支持部