(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】トリクロロシランの製造方法及びトリクロロシランの製造装置
(51)【国際特許分類】
C01B 33/107 20060101AFI20241217BHJP
F16K 5/06 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
C01B33/107 Z
F16K5/06 H
F16K5/06 L
(21)【出願番号】P 2021558247
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(86)【国際出願番号】 JP2020040367
(87)【国際公開番号】W WO2021100422
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2019211556
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】阪井 純也
(72)【発明者】
【氏名】飯山 昭二
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/098344(WO,A1)
【文献】特開2012-017826(JP,A)
【文献】特開平08-105552(JP,A)
【文献】実開昭53-134140(JP,U)
【文献】特開平07-190211(JP,A)
【文献】登録実用新案第3050961(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 - 33/193
F16K 5/00 - 5/22
F16K 51/00
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリクロロシランの製造方法であって、
前記トリクロロシランの製造系において金属シリコン粉体が流通する流路の開閉を、
樹脂製であるバルブシートに対して非接触な状態で回転可能に設けられる弁体を有する無摺動バルブを用いて行い、
前記流路内に配置された吐出口から、前記バルブシートと前記弁体との間に形成される空間に対して
、前記トリクロロシランの生成のために前記金属シリコン粉体と塩化水素とを反応させた際に得られるとともに、前記トリクロロシランの製造系において循環する水素を吹き付けることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記空間に対し、前記
水素を、線速度が30m/秒以上300m/秒以下で、5秒以上50秒以下の間、吹き付けることを特徴とする請求項
1に記載の製造方法。
【請求項3】
トリクロロシランの製造装置であって、
金属シリコン粉体が流通する配管と、
前記トリクロロシランの製造系において前記配管に設けられ、前記配管の流路を開閉すると共に、
樹脂製であるバルブシートに対して非接触な状態で回転可能に設けられる弁体を有する無摺動バルブと、を備え、
前記バルブシートと前記弁体との間に形成される空間に対して
、前記トリクロロシランの生成のために前記金属シリコン粉体と塩化水素とを反応させた際に得られるとともに、前記トリクロロシランの製造系において循環する水素を吹き付けるための吐出口が前記流路内に配置されることを特徴とする製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリクロロシランの製造方法及びトリクロロシランの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流路の開閉を行うバルブとして、ボール状の弁体を有するボールバルブが知られている。しかし、このボールバルブでは、弁体がシート部材に接触しながら回転するため、シート部材が摩耗し、恒久的な密封性を担保できないという問題があった。この問題を解決するために、例えば、特許文献1には、弁体がシート部材に対して非接触な状態で回転した後に、弁体がシート部材側に変位してシート部材に密接することにより、流路を遮断するように構成された無摺動バルブが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術において、粉体が流通する流路の遮断に無摺動バルブを用いることにより、無摺動バルブの耐久性を向上させると共に、無摺動バルブの交換頻度を下げることができる。しかしながら、無摺動バルブの耐久性のさらなる向上及び交換頻度のさらなる低下が求められていた。本発明の一態様は、従来のトリクロロシランの製造方法及び製造装置に比べて、無摺動バルブの耐久性をさらに向上させると共に、無摺動バルブの交換頻度をさらに下げることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る製造方法は、トリクロロシランの製造方法であって、前記トリクロロシランの製造系において金属シリコン粉体が流通する流路の開閉を、バルブシートに対して非接触な状態で回転可能に設けられる弁体を有する無摺動バルブを用いて行い、前記流路内に配置された吐出口から、前記バルブシートと前記弁体との間に形成される空間に対して気体を吹き付ける。
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る製造装置は、トリクロロシランの製造装置であって、金属シリコン粉体が流通する配管と、前記トリクロロシランの製造系において前記配管に設けられ、前記配管の流路を開閉すると共に、バルブシートに対して非接触な状態で回転可能に設けられる弁体を有する無摺動バルブと、を備え、前記バルブシートと前記弁体との間に形成される空間に対して気体を吹き付けるための吐出口が前記流路内に配置される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、従来のトリクロロシランの製造方法及び製造装置に比べて、無摺動バルブの耐久性をさらに向上させると共に、無摺動バルブの交換頻度をさらに下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態1に係る製造装置の構成の一例を示す模式図である。
【
図2】
図1に示す製造装置が備える無摺動バルブが閉じる場合の無摺動バルブの動作を示す図である。
【
図3】
図1に示す製造装置が備える無摺動バルブが開く場合の無摺動バルブの動作を示す図である。
【
図4】
図1に示す製造装置において、金属シリコン粉体が流通する流路内に配置された吐出口付近の構造を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態2に係る製造装置の構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
(製造装置1の構成)
図1は、本発明の実施形態1に係る製造装置1の構成の一例を示す模式図である。本明細書において、製造装置1は、金属シリコン粉体を用いてトリクロロシランを製造するトリクロロシランの製造装置であれば、特に限定されない。製造装置1として、例えば、流動床方式反応装置が挙げられる。流動床方式反応装置を用いることにより、連続的に金属シリコン粉体及び塩化水素を供給して、連続的にトリクロロシランを合成することが可能である。なお、トリクロロシランについては、SiHCl
3またはTCSとも称する。
【0010】
金属シリコン粉体と塩化水素との反応では、金属シリコンの使用量が多いため、金属シリコン粉体が流通する流路に設けられたバルブに金属シリコン粉体が噛み込むことによってバルブシートに損傷が生じ易い。そこで、金属シリコン粉体が流通する流路に無摺動バルブを設けると共に、バルブシートと弁体との間に形成される空間に対して気体を吹き付ける。これにより、金属シリコン粉体と塩化水素との反応では、バルブシートの損傷を抑制するという本発明の一態様による効果が特に顕著に発揮される。
【0011】
なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意味する。また、以下では、一例として
図1に金属シリコン粉体と塩化水素とを反応させてトリクロロシランを生成する装置を挙げて説明するが、その他に金属シリコン粉体を用いてトリクロロシランを生成する装置を用いてもよい。
【0012】
本明細書において、「金属シリコン粉体」とは、冶金製金属シリコン、珪素鉄またはポリシリコン等の金属状態の珪素元素を含む固体物質を意図し、公知のものが何ら制限なく使用される。また、それら金属シリコン粉体には鉄化合物等の不純物が含まれていてもよく、その成分及び含有量において特に制限はない。かかる金属シリコン粉体は、通常、平均粒径が150~350μm程度の微細な粉末の形態で使用される。
【0013】
図1に示すように、製造装置1は、圧縮機2,11と、反応容器3と、冷却器4,7,9と、フィルター5と、収容槽6と、熱媒ドラム8と、凝縮器10と、蒸留塔13と、無摺動バルブb1~b4と、を備えている。製造装置1が備えるこれらの構成要素は、互いに配管によって接続されている。
【0014】
また、製造装置1は、金属シリコン粉体が流通する配管を備え、トリクロロシランを製造する。金属シリコン粉体が流通する配管とは、トリクロロシランの製造系において金属シリコン粉体が流通する流路の配管である。金属シリコン粉体が流通する流路の配管とは、例えば、後述する導入流路f1、導出流路f2、排出流路f31及び排出流路f32の配管である。トリクロロシランの製造系とは、トリクロロシランを製造する製造装置全体を示しており、例えば、製造装置1の全体及び後述する製造装置1Aの全体の少なくとも一方を示している。
【0015】
製造装置1を用いたトリクロロシランの製造方法では、トリクロロシランの製造系において金属シリコン粉体が流通する流路の開閉を、無摺動バルブb1~b4を用いて行う。トリクロロシランの製造系において金属シリコン粉体が流通する流路とは、例えば、後述する導入流路f1、導出流路f2、排出流路f31及び排出流路f32である。
【0016】
圧縮機2は、塩化水素が流通する配管に設けられており、その配管の内部を流通する塩化水素を圧縮し、塩化水素を反応容器3に供給する。反応容器3は、外部から供給された金属シリコン粉体及び塩化水素を収容し、金属シリコン粉体と塩化水素とを反応させてトリクロロシランを生成する。反応容器3の内部では、主に、以下の式(1)及び(2)に示す反応が生じる。
金属シリコン粉体(Si)+3HCl→SiHCl3+H2・・・(1)
金属シリコン粉体(Si)+4HCl→SiCl4+2H2・・・(2)
【0017】
反応容器3が有する形状(換言すれば、反応容器3が有する側壁の形状)については特に限定されない。例えば、反応容器3のうち流動層(図示せず)を囲む側壁は、反応容器3の高さ方向に直交する切断面の断面積が、一定であるような形状(図示せず)であってもよいし、上方に向かって大きくなるようなテーパー形状(図示せず)であってもよい。
【0018】
反応容器3の外部から反応容器3に金属シリコン粉体を導く導入流路f1の配管には、無摺動バルブb1が設けられる。
図2に示すように、無摺動バルブb1は、ステム31,32と、弁体33と、バルブシート35,36と、本体部40と、を備えている。無摺動バルブb1は、導入流路f1の開閉を行う。導入流路f1は、トリクロロシランの製造系において金属シリコン粉体が流通する流路の一部である。
【0019】
金属シリコン粉体の粒径は小さいので、従来のバルブの摺動部を可能な限り小さくしたとしても、バルブの摺動時に金属シリコン粉体が入り込み、バルブシートが金属シリコン粉体による損傷を受ける。このため、摺動部が存在しない無摺動バルブb1を用いることが好ましい。
【0020】
特に、金属シリコン粉体と塩化水素とを反応させてトリクロロシランを生成する反応では、金属シリコンの使用量が多いため、導入流路f1に設けられるバルブの開閉頻度は多くなる。そこで、導入流路f1に無摺動バルブb1を設けることにより、金属シリコン粉体と塩化水素とを反応させてトリクロロシランを生成する反応では、バルブシート35,36の損傷を抑制するという効果が特に顕著に発揮される。なお、無摺動バルブb1の動作の詳細については後述する。
【0021】
反応容器3の内部には、熱媒体を流通させる熱媒管15が設けられている。熱媒管15は、冷却器7と熱媒ドラム8とを接続している。冷却器7は、熱媒管15の内部を流通する熱媒体の温度を下げ、熱媒ドラム8は、熱媒体を貯留する。
【0022】
反応容器3の下部から取り出される金属シリコン粉体が流通する導出流路f2の配管には、無摺動バルブb2が設けられる。無摺動バルブb2は、導出流路f2の開閉を行う。導出流路f2は、反応容器3と反応容器3の下部から取り出される金属シリコン粉体を収容する収容槽6との間にある。導出流路f2は、トリクロロシランの製造系において金属シリコン粉体が流通する流路の一部である。
【0023】
特に、金属シリコン粉体と塩化水素とを反応させてトリクロロシランを生成する反応では、金属シリコンの使用量が多いため、反応容器3の下部から取り出される金属シリコン粉体の量が多くなる。そこで、導出流路f2に無摺動バルブb2を設けることにより、金属シリコン粉体と塩化水素とを反応させてトリクロロシランを生成する反応では、バルブシートの損傷を抑制するという効果が特に顕著に発揮される。
【0024】
反応容器3の上部から排出される金属シリコン粉体が流通する排出流路f3は、反応容器3から収容槽6に至るまでの流路である。排出流路f3のうちの排出流路f31の配管には、無摺動バルブb3が設けられる。無摺動バルブb3は、排出流路f31の開閉を行い、冷却器4とフィルター5との間にある。排出流路f31は、反応容器3と金属シリコン粉体を除去するフィルター5との間にある。排出流路f31は、トリクロロシランの製造系において金属シリコン粉体が流通する流路の一部である。なお、無摺動バルブb3は、反応容器3と冷却器4との間にあってもよい。
【0025】
排出流路f3のうちの排出流路f32には、フィルター5によって除去された金属シリコン粉体が流通する。排出流路f32の配管には、無摺動バルブb4が設けられる。無摺動バルブb4は、排出流路f32の開閉を行う。排出流路f32は、フィルター5と収容槽6との間にある。排出流路f32は、トリクロロシランの製造系において金属シリコン粉体が流通する流路の一部である。
【0026】
なお、排出流路f31には、水素、並びに、反応容器3によって生成されたトリクロロシラン及びテトラクロロシラン等が流通する。また、排出流路f31の配管には、冷却器4が設けられる。冷却器4は、排出流路f31を流通する金属シリコン粉体、水素、トリクロロシラン及びテトラクロロシラン等を冷却する。なお、テトラクロロシランについては、SiCl4またはSTCとも称する。
【0027】
フィルター5は、冷却器4によって冷却された金属シリコン粉体、水素、トリクロロシラン及びテトラクロロシラン等から、金属シリコン粉体を除去する。フィルター5は、除去した金属シリコン粉体を収容槽6に排出し、水素、トリクロロシラン及びテトラクロロシラン等を冷却器9に供給する。冷却器9は、水素、トリクロロシラン及びテトラクロロシラン等を冷却水により冷却し、冷却した水素、トリクロロシラン及びテトラクロロシラン等を凝縮器10に供給する。
【0028】
凝縮器10は、水素、トリクロロシラン及びテトラクロロシラン等を気液分離させ、水素を圧縮機11に供給し、トリクロロシラン及びテトラクロロシラン等を蒸留塔13に供給する。蒸留塔13は、トリクロロシラン及びテトラクロロシランを蒸留によって回収する。
【0029】
圧縮機11は、水素が流通する配管に設けられており、その配管の内部を流通する水素を圧縮する。圧縮機11は、後工程の構成要素に圧縮した水素を供給する。圧縮機11と、後工程の構成要素と、の間に接続されている配管P1から分岐する配管P2は、無摺動バルブb1~b4のそれぞれのノズル54に接続されている。ノズル54については後述する。配管P2の内部には、水素が流通する。配管P2にはバルブが設けられていてもよい。
【0030】
(無摺動バルブの動作)
図2は、
図1に示す製造装置1が備える無摺動バルブb1が閉じる場合の無摺動バルブb1の動作を示す図である。
図3は、
図1に示す製造装置1が備える無摺動バルブb1が開く場合の無摺動バルブb1の動作を示す図である。
【0031】
配管34は、無摺動バルブb1が設けられた導入流路f1の配管である。
図2における101で示される図は、無摺動バルブb1が完全に開いている状態を示している。弁体33には、開口部37が形成されている。配管34の内部を流通する金属シリコン粉体は、開口部37に囲まれた空間を通過する。金属シリコン粉体の流れる方向は、無摺動バルブb1の入口部38から出口部39に向かう方向である。
【0032】
弁体33の上端にはステム31が取り付けられており、弁体33の下端にはステム32が取り付けられている。本体部40に形成された上側の凹部41と入口部38との境界には、バルブシート35が設けられ、本体部40に形成された下側の凹部42と入口部38との境界には、バルブシート36が設けられている。バルブシート35,36は、無摺動バルブb1の気密性を保つためのものである。バルブシート35,36の材料は、例えば、カーボン、テフロン(登録商標)、その他の樹脂製品または金属であってもよい。
【0033】
図2における101で示される図の通り、無摺動バルブb1の下から見て、ステム32を右回りに回転させると、弁体33が閉方向に回転する。弁体33が回転するとき、弁体33は、バルブシート35,36とは接触せずに回転する。ステム32を右回りに90°回転させると、
図2における102で示される図の通り、弁体33が閉じている状態になる。ただし、無摺動バルブb1が完全に閉じている状態ではない。ステム32を右回りに90°回転させるだけでは、弁体33は、バルブシート35,36とは接触しない。
【0034】
ステム32を右回りに90°回転させた後、
図2における103に示される図の通り、無摺動バルブb1の上から見て、ステム31を右回りに回転させると、ステム31を支点に弁体33が傾く。そして、
図2における104で示される図の通り、弁体33は、バルブシート35,36と接触する。ステム31を右回りに回転させ終えると、弁体33がバルブシート35,36に押し付けられ、無摺動バルブb1は完全に閉じている状態になる。つまり、配管34の内部にある金属シリコン粉体の流れを止める。
【0035】
また、
図3における201で示される図は、無摺動バルブb1が完全に閉じている状態を示している。
図3における202で示される図の通り、無摺動バルブb1の上から見て、ステム31を左回りに回転させると、ステム31を支点に弁体33がバルブシート35,36から離れる方向に移動する。
図3における203で示される図の通り、ステム31を左回りに回転させ終えると、弁体33はバルブシート35,36から完全に離れる。
【0036】
ステム31を左回りに回転させ終えた後、
図3における203で示される図の通り、無摺動バルブb1の下から見て、ステム32を左回りに回転させると、弁体33が開方向に回転する。弁体33が回転するとき、弁体33は、バルブシート35,36とは接触せずに回転する。ステム32を左回りに90°回転させると、
図3における204で示される図の通り、無摺動バルブb1が完全に開いている状態になる。
【0037】
したがって、無摺動バルブb1は、バルブシート35,36に対して非接触な状態で回転可能に設けられる弁体33を有する。また、無摺動バルブb1は、配管34に設けられ、配管34の流路を開閉する。
【0038】
また、無摺動バルブb1は、弁体33とバルブシート35,36とがメタルタッチする構造を有してもよい。メタルタッチとは、金属からなるもの同士が接触することである。つまり、弁体33及びバルブシート35,36は金属からなり、ステム31を右回りに回転させたとき、弁体33及びバルブシート35,36は互いに接触する。これにより、無摺動バルブb1を閉じたとき、弁体33とバルブシート35,36とがメタルタッチする。よって、無摺動バルブb1の耐熱温度が200℃を超えるので、無摺動バルブb1を、200℃を超える温度で使用することができる。
【0039】
なお、無摺動バルブb2~b4及び後述する無摺動バルブb5~b8は、無摺動バルブb1と同様の構造を有する。また、無摺動バルブb1~b8の構造は、ここで説明した構造に限らず、弁体とバルブシートとが摺動しない構造であれば、特に限定されない。
【0040】
(吐出口の構造)
図4は、
図1に示す製造装置1において、金属シリコン粉体が流通する流路内に配置された吐出口51付近の構造を示す図である。ここでは、例えば、無摺動バルブb1の内部に配置された吐出口51の構造について説明する。
図4に示すように、無摺動バルブb1の外側には、ノズル54が取り付けられている。具体的には、本体部40におけるバルブシート35が設けられている側とは反対側にノズル54が取り付けられている。また、無摺動バルブb1内には、吐出口51が配置されている。
【0041】
吐出口51とノズル54との間には、気体が流通する経路52,53が形成されている。経路52は、バルブシート35に形成され、経路53は、本体部40に形成されている。前述した配管P2は、ノズル54に接続されているため、ノズル54内には水素が流通する。水素は、経路52,53を流通し、吐出口51から吐出される。
【0042】
このように、ノズル54は、吐出口51まで気体を流通させるためのものであると共に、製造装置1に備えられるものである。前記構成によれば、吐出口51から吐出される気体の所望の線速度が得られるように、適切なノズル口径を有するノズル54を無摺動バルブb1の外側に設けることができる。
【0043】
また、バルブシート35と弁体33との間に形成される空間SPに対して、気体を吹き付けるための吐出口51が、金属シリコン粉体が流通する流路内に配置される。換言すると、金属シリコン粉体が流通する流路内に配置された吐出口51から、空間SPに対して気体を吹き付ける。
【0044】
前記構成によれば、バルブシート35や弁体33に付着した金属シリコン粉体を気体によって吹き飛ばすことができる。これにより、無摺動バルブb1によって流路が遮断された場合、バルブシート35と弁体33との密封性を向上させることができる。このため、従来の製造方法に比べて、無摺動バルブb1の耐久性をさらに向上させると共に、無摺動バルブb1の交換頻度をさらに下げることができる。空間SPに対して気体を吹き付けることにより、バルブシート35及び弁体33の両方に気体を吹き付けることができる。
【0045】
なお、吐出口51は、バルブシート36にも形成され、本体部40におけるバルブシート36が設けられている側とは反対側にもノズル54が取り付けられていてもよい。つまり、バルブシート36と弁体33との間に形成される空間に対しても気体が吹き付けられてもよい。また、2つの吐出口51が、弁体33に対して対称となるように配置されていてもよく、3つ以上の吐出口51が、弁体33の周囲に均等な間隔で配置されていてもよい。この場合、本体部40における各吐出口51が配置されている側とは反対側にノズル54が取り付けられる。
【0046】
空間SPに対する気体の吹き付けは、
図2における103で示される図において、ステム31を右回りに回転させる直前に行われる。つまり、無摺動バルブb1が閉じる場合において、弁体33がバルブシート35,36と接触する直前に行われる。
【0047】
さらに、ノズル54内には水素が流通するため、空間SPに対して吹き付ける気体として水素を用いることになる。前記構成によれば、トリクロロシランの製造系において循環する気体である水素を用いて、バルブシート35と弁体33との間に形成される空間SPに対して気体を吹き付ける構造を容易に実現することができる。
【0048】
反応容器3で発生した水素が配管P2に流通し、配管P2を流通する水素が吐出口51から吐出されることにより、空間SPに対して吹き付ける水素は、製造装置1において循環する水素となる。このように、空間SPに対して吹き付ける気体として、トリクロロシランの製造系において循環する水素を用いる。
【0049】
前記構成によれば、トリクロロシランの製造系において循環する水素を用いることにより、金属シリコン粉体が流通する流路に、トリクロロシランの製造系では用いられない気体を混入しなくて済む。これにより、トリクロロシランの製造系の後の工程で当該気体を除去する処理にかかる負担が生じないようにすることができる。また、トリクロロシランの製造系において循環する水素を、空間SPに対して吹き付ける水素として再利用することができるため、トリクロロシランの製造にかかるコストを低減することができる。
【0050】
空間SPに対して吹き付ける気体の量は、例えば、1つのノズル54につき、50~200Lである。また、空間SPに対して気体を吹き付ける場合、気体を吹き付ける回数は、例えば、1回である。つまり、所定の気体の吹き付け期間内に、空間SPに対して気体が吹き付けられている状況で、無摺動バルブb1を閉じることにより、気体を吹き付ける回数を1回とする。
【0051】
また、空間SPに対し、気体を、線速度が30m/秒以上300m/秒以下で、5秒以上50秒以下の間、吹き付けることが好ましい。ここで、気体の線速度が30m/秒以上300m/秒以下であり、かつ、気体の吹き付け時間が5秒以上50秒以下である範囲を範囲R1と称する。
【0052】
以下の表1に示すように、無摺動バルブb1を閉じた後に、無摺動バルブb1の出口部39に対して加圧したときの圧力は、範囲R1未満の場合では少し変化し、範囲R1内及び範囲R1より大きい場合では変化なしであった。当該圧力が変化することは、バルブシート35や弁体33に金属シリコン粉体が付着していると共に、気体の漏れが発生していることを示す。前記圧力の観測は、前記圧力を計測する圧力計を目視することによって行われている。
【0053】
【0054】
また、気体の吹き付けの操作において、1つのノズル54につき使用される気体の量は、範囲R1未満の場合では20L以下であり、範囲R1内の場合では50~200Lであり、範囲R1より大きい場合では250L以上である。よって、範囲R1内の場合、バルブシート35や弁体33に付着した金属シリコン粉体を気体によって十分に吹き飛ばすことができると共に、使用される気体の量を少なくして、コストを低減することができる。また、後述の実施例1及び2においても、範囲R1内であることが好ましいことの一例が示されている。
【0055】
無摺動バルブb2~b4及び後述する無摺動バルブb5~b8は、無摺動バルブb1と同様の構造を有する。このため、
図4に示す吐出口51付近の構造について、無摺動バルブb2~b4及び無摺動バルブb5~b8の構造は、無摺動バルブb1の構造と同様の構造となる。
【0056】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
図5は、本発明の実施形態2に係る製造装置1Aの構成の一例を示す模式図である。
【0057】
図5に示すように、製造装置1Aは、熱交換器21と、加熱器22と、第2反応容器23と、第2フィルター24と、第2収容槽25と、冷却器26と、凝縮器27と、圧縮機28と、蒸留塔29と、無摺動バルブb5~b8と、を備えている。製造装置1Aが備えるこれらの構成要素は、互いに配管によって接続されている。なお、本実施形態では、トリクロロシランの製造系において金属シリコン粉体が流通する流路とは、第2導入流路f5、第2排出流路f61、第2排出流路f62及び第2導出流路f8である。
【0058】
熱交換器21には、水素及びテトラクロロシランが供給される。この水素は、圧縮機28から供給された水素であり、このテトラクロロシランは、蒸留塔29から供給されたものである。なお、このテトラクロロシランは、例えば、前述した反応容器3によって副反応として生じたものであってもよい。熱交換器21は、第2反応容器23を経由した金属シリコン粉体、水素及びトリクロロシランを、水素及びテトラクロロシランと熱交換する。熱交換器21は、水素及びテトラクロロシランを加熱器22に供給する。
【0059】
加熱器22は、テトラクロロシラン及び水素を加熱して、テトラクロロシラン及び水素を第2反応容器23に供給する。第2反応容器23は、テトラクロロシラン、水素、及び、外部から供給された金属シリコン粉体を収容し、テトラクロロシランと水素と金属シリコン粉体とを反応させてトリクロロシランを生成する。第2反応容器23の内部では、主に、以下の式(3)に示す反応が生じる。第2反応容器23は、金属シリコン粉体、水素、トリクロロシラン及び未反応のテトラクロロシランを、熱交換器21を介して第2フィルター24に供給する。
金属シリコン粉体(Si)+3SiCl4+2H2→4SiHCl3・・・(3)
【0060】
第2フィルター24は、熱交換器21を介して第2反応容器23から供給された金属シリコン粉体、水素、トリクロロシラン及び未反応のテトラクロロシランから、金属シリコン粉体を除去する。第2フィルター24は、除去した金属シリコン粉体を第2収容槽25に供給する。
【0061】
第2反応容器23の外部から第2反応容器23に金属シリコン粉体を導く第2導入流路f5の配管には、無摺動バルブb5が設けられる。無摺動バルブb5は、第2導入流路f5の開閉を行う。第2導入流路f5は、トリクロロシランの製造系において金属シリコン粉体が流通する流路の一部である。
【0062】
第2反応容器23から排出される金属シリコン粉体が流通する第2排出流路f6は、第2反応容器23から第2収容槽25に至るまでの流路である。第2排出流路f6のうちの第2排出流路f61の配管には、無摺動バルブb6が設けられる。無摺動バルブb6は、第2排出流路f61の開閉を行い、熱交換器21と第2フィルター24との間にある。
【0063】
第2排出流路f61は、第2反応容器23と金属シリコン粉体を除去する第2フィルター24との間にある。第2排出流路f61は、トリクロロシランの製造系において金属シリコン粉体が流通する流路の一部である。なお、無摺動バルブb6は、第2反応容器23と熱交換器21との間にあってもよい。
【0064】
第2排出流路f6のうちの第2排出流路f62には、第2フィルター24によって除去された金属シリコン粉体が流通する。第2排出流路f62の配管には、無摺動バルブb7が設けられる。無摺動バルブb7は、第2排出流路f62の開閉を行う。第2排出流路f62は、第2フィルター24と第2収容槽25との間にある。第2排出流路f62は、トリクロロシランの製造系において金属シリコン粉体が流通する流路の一部である。
【0065】
第2反応容器23の下部から取り出される金属シリコン粉体が流通する第2導出流路f8の配管には、無摺動バルブb8が設けられる。無摺動バルブb8は、第2導出流路f8の開閉を行う。第2導出流路f8は、第2反応容器23と第2反応容器23の下部から取り出される金属シリコン粉体を収容する第2収容槽25との間にある。第2導出流路f8は、トリクロロシランの製造系において金属シリコン粉体が流通する流路の一部である。
【0066】
また、第2フィルター24は、水素、トリクロロシラン及び未反応のテトラクロロシランを冷却器26に供給する。冷却器26は、水素、トリクロロシラン及び未反応のテトラクロロシランを冷却水により冷却し、冷却した水素、トリクロロシラン及び未反応のテトラクロロシランを凝縮器27に供給する。
【0067】
凝縮器27は、水素、トリクロロシラン及び未反応のテトラクロロシランを気液分離させ、水素を圧縮機28に供給し、トリクロロシラン及びテトラクロロシランを蒸留塔29に供給する。蒸留塔29は、トリクロロシラン及びテトラクロロシランを蒸留によって回収する。蒸留塔29は、回収したテトラクロロシランを熱交換器21に供給する。
【0068】
圧縮機28は、水素が流通する配管に設けられており、その配管の内部を流通する水素を圧縮する。圧縮機28は、熱交換器21に圧縮した水素を供給する。圧縮機28と熱交換器21との間に接続されている配管P3から分岐する配管P4は、無摺動バルブb5~b8のそれぞれのノズル54に接続されている。配管P4の内部には、水素が流通する。第2反応容器23で発生した水素が配管P4に流通し、配管P4を流通する水素が吐出口51から吐出されることにより、空間に対して吹き付ける水素は、製造装置1Aにおいて循環する水素となる。
【0069】
〔まとめ〕
本発明の一態様に係る製造方法は、トリクロロシランの製造方法であって、前記トリクロロシランの製造系において金属シリコン粉体が流通する流路の開閉を、バルブシートに対して非接触な状態で回転可能に設けられる弁体を有する無摺動バルブを用いて行い、前記流路内に配置された吐出口から、前記バルブシートと前記弁体との間に形成される空間に対して気体を吹き付ける。
【0070】
前記構成によれば、バルブシートや弁体に付着した金属シリコン粉体を気体によって吹き飛ばすことができる。これにより、無摺動バルブによって流路が遮断された場合、バルブシートと弁体との密封性を向上させることができる。このため、従来の製造方法に比べて、無摺動バルブの耐久性をさらに向上させると共に、無摺動バルブの交換頻度をさらに下げることができる。
【0071】
前記製造方法において、前記空間に対して吹き付ける気体として水素を用いてもよい。前記構成によれば、トリクロロシランの製造系において循環する気体である水素を用いて、バルブシートと弁体との間に形成される空間に対して気体を吹き付ける構造を容易に実現することができる。
【0072】
前記製造方法において、前記空間に対して吹き付ける気体として、前記トリクロロシランの製造系において循環する水素を用いてもよい。前記構成によれば、トリクロロシランの製造系において循環する水素を用いることにより、金属シリコン粉体が流通する流路に、トリクロロシランの製造系では用いられない気体を混入しなくて済む。これにより、トリクロロシランの製造系の後の工程で当該気体を除去する処理にかかる負担が生じないようにすることができる。また、トリクロロシランの製造系において循環する水素を、空間に対して吹き付ける水素として再利用することができるため、トリクロロシランの製造にかかるコストを低減することができる。
【0073】
前記製造方法において、前記空間に対し、前記気体を、線速度が30m/秒以上300m/秒以下で、5秒以上50秒以下の間、吹き付けてもよい。前記構成によれば、バルブシートや弁体に付着した金属シリコン粉体を気体によって十分に吹き飛ばすことができると共に、使用される気体の量を少なくして、コストを低減することができる。
【0074】
本発明の一態様に係る製造装置は、トリクロロシランの製造装置であって、金属シリコン粉体が流通する配管と、前記トリクロロシランの製造系において前記配管に設けられ、前記配管の流路を開閉すると共に、バルブシートに対して非接触な状態で回転可能に設けられる弁体を有する無摺動バルブと、を備え、前記バルブシートと前記弁体との間に形成される空間に対して気体を吹き付けるための吐出口が前記流路内に配置される。
【0075】
前記製造装置は、前記無摺動バルブの外側に取り付けられると共に、前記吐出口まで気体を流通させるためのノズルをさらに備えてもよい。前記構成によれば、吐出口から吐出される気体の所望の線速度が得られるように、適切なノズル口径を有するノズルを無摺動バルブの外側に設けることができる。
【0076】
本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例1】
【0077】
以下、実施例1によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、本実施例1に限定されるものではない。無摺動バルブの構造については、
図2及び
図4を参照する。金属シリコン粉体を反応器に投入するラインに、ノズルが取り付けられた無摺動バルブを設置した。金属シリコン粉体が通過するラインは、内径が100mmの配管であり、無摺動バルブ内の弁体33には、内径が100mmの開口部37が形成されている。
【0078】
無摺動バルブの構造は、弁体33を回転させることにより、ラインを通過する金属シリコン粉体や気体が流通する流路を遮断する構造となっている。無摺動バルブが完全に閉じた状態では、弁体33がバルブシート35と接触する。無摺動バルブが完全に閉じる前に、バルブシート35と弁体33との間に形成される空間SPに対して気体を吹き付けるためのノズル54を含むガスラインを1か所設けた。ガスラインは、水素の供給ラインと接続されている。
【0079】
無摺動バルブが完全に閉じた状態で、ノズル54と無摺動バルブの本体部40との境界には、オリフィスが設けられており、吐出口51における水素の線速度が60m/秒となるように設定されている。なお、オリフィスの径を2~5mmに設定することにより、水素の線速度が80m/秒となるように設定したところ、無摺動バルブの交換頻度が飛躍的に激減した。このように、バルブシート35と弁体33との間に形成される空間SPに対して気体を吹き付ける機能を設けることにより、無摺動バルブを交換することなく、通年での運転が可能となった。
【0080】
無摺動バルブの操作方法について以下に説明する。まず、無摺動バルブを閉じた状態にする。無摺動バルブを閉じた状態にした後、無摺動バルブの入口部38に金属シリコン粉体を投入する。金属シリコン粉体を投入した後、無摺動バルブを開いた状態にして、金属シリコン粉体を無摺動バルブの出口部39から排出する。ノズル54から弁体33に対して、水素を、線速度が60m/秒で10秒間吹き付ける。ここで説明した操作を3回繰り返す。
【0081】
無摺動バルブが閉じた状態で、無摺動バルブの出口部39に対して水素で加圧し、水素の漏れ量を確認した。弁体33としてステンレス製のものを使用し、バルブシート35としてステンレス製またはバイトン(登録商標)製のものを使用して試験を行った結果、表2に示す通りになった。
【0082】
【0083】
表2において、「0.85MPa」は、無摺動バルブの出口部39に対する水素の圧力が0.85MPaであることを示しており、「0.15MPa」は、無摺動バルブの出口部39に対する水素の圧力が0.15MPaであることを示している。表2に示すように、ステンレス製のバルブシート35及びバイトン製のバルブシート35のいずれにおいても、水素の吹き付けを行った場合、水素の漏れ量が激減した。特に、バイトン製のバルブシート35を使用した場合、水素の漏れが発生しなかった。
【実施例2】
【0084】
以下、実施例2によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、本実施例2に限定されるものではない。実施例2では、無摺動バルブが完全に閉じる前に、バルブシート35と弁体33との間に形成される空間SPに対して気体を吹き付けるためのノズル54を含むガスラインを2か所設けた。2か所のガスラインのノズル54は、弁体33に対して対称となるように配置されている。ガスラインを2か所設けたことと水素の線速度を変更したこと以外は、実施例1と同様である試験を行った結果、表3に示す通りになった。
【0085】
【0086】
表3において、「0.85MPa」は、無摺動バルブの出口部39に対する水素の圧力が0.85MPaであることを示しており、「0.15MPa」は、無摺動バルブの出口部39に対する水素の圧力が0.15MPaであることを示している。表3に示すように、水素の線速度が15m/秒である場合では、水素の漏れが発生したが、水素の線速度が30m/秒である場合では、水素の漏れが発生しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、トリクロロシランの製造に利用することができる。
【符号の説明】
【0088】
1、1A 製造装置
33 弁体
35、36 バルブシート
51 吐出口
54 ノズル
b1~b8 無摺動バルブ
SP バルブシートと弁体との間に形成される空間