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  • 特許-レジスト材料及びパターン形成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】レジスト材料及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/039 20060101AFI20241217BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20241217BHJP
   C08F 12/14 20060101ALI20241217BHJP
   C08F 20/26 20060101ALI20241217BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20241217BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
G03F7/039 601
G03F7/004 501
C08F12/14
C08F20/26
C09K3/00 K
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022042937
(22)【出願日】2022-03-17
(65)【公開番号】P2023136980
(43)【公開日】2023-09-29
【審査請求日】2024-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】樋田 源太郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 知洋
(72)【発明者】
【氏名】大友 雄太郎
(72)【発明者】
【氏名】野口 智成
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0311915(US,A1)
【文献】特開2020-003677(JP,A)
【文献】特開2013-200561(JP,A)
【文献】特開2022-029411(JP,A)
【文献】特開2010-018788(JP,A)
【文献】国際公開第2018/079449(WO,A1)
【文献】特開2017-110191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/039
G03F 7/004
C08F 12/14
C08F 20/26
C09K 3/00
G03F 7/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジスト材料であって、
(Ia)水酸基又はカルボキシ基を含む繰り返し単位(A)を含有するポリマーと、
(II)下記式(1)で表される構造を有する架橋剤と、
(III)下記式(2)で表される構造を有する熱酸発生剤と、
(IV)有機溶剤と、
(V)活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する成分と、
を含有するものであることを特徴とするレジスト材料。
【化1】
[式中、Rは、置換基を有してもよいn価の有機基である。
は、単結合、エステル結合、及びエーテル結合から選ばれる連結基である。
は、単結合又は2価の有機基である。nは1~4の整数である。]
【化2】
[式中、R31は、ヘテロ原子、置換基を有してもよい1価の有機基である。R32~R34は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~15の1価炭化水素基である。また、R32、R33及びR34のいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成していてもよい。]
【請求項2】
レジスト材料であって、
(Ib)水酸基又はカルボキシ基を含む繰り返し単位(A)と、活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する構造部位を有する繰り返し単位(C)とを含有するポリマーと、
(II)下記式(1)で表される構造を有する架橋剤と、
(III)下記式(2)で表される構造を有する熱酸発生剤と、
(IV)有機溶剤と、
を含有するものであることを特徴とするレジスト材料。
【化3】
[式中、Rは、置換基を有してもよいn価の有機基である。
は、単結合、エステル結合、及びエーテル結合から選ばれる連結基である。
は、単結合又は2価の有機基である。nは1~4の整数である。]
【化4】
[式中、R31は、ヘテロ原子、置換基を有してもよい1価の有機基である。R32~R34は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~15の1価炭化水素基である。また、R32、R33及びR34のいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成していてもよい。]
【請求項3】
前記ポリマーに含有される前記繰り返し単位(C)は、下記式(c)で表されることを特徴とする請求項2に記載のレジスト材料。
【化5】
[式中、Rc1は、水素原子又はメチル基である。
は、単結合、又はエステル結合である。Zは、単結合又は炭素数1~25の2価の有機基であり、エステル結合、エーテル結合、ラクトン環、アミド結合、スルトン環、及びヨウ素原子のうち1つ以上を含んでいてもよい。
Rfc1~Rfc4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基であるが、少なくとも1つはフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。
c2~Rc4は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基であり、Rc2、Rc3及びRc4のいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成していてもよい。]
【請求項4】
前記レジスト材料は、さらに(V)活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する成分を含むものであることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のレジスト材料。
【請求項5】
前記ポリマーに含有される前記繰り返し単位(A)は、下記式(a1)及び/又は(a2)で表されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のレジスト材料。
【化6】
[式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。Ya1は、それぞれ独立に、単結合、又はフェニレン基、ナフチレン基、エステル結合、エーテル結合、ラクトン環、アミド基、及びヘテロ原子のうち少なくとも1つ以上を有する炭素数1~15の2価の連結基である。Ya2は、それぞれ独立に、単結合、又はフェニレン基、ナフチレン基、エステル結合、エーテル結合、ラクトン環、アミド基、及びヘテロ原子のうち少なくとも1つ以上を有する2価の炭素数1~12の連結基である。Ra1は水素原子、フッ素原子、又はアルキル基であり、Ra1とYa2とは結合して環を形成してもよい。kは1又は2、lは0~4の整数であり、1≦k+l≦5である。mは0又は1である。]
【請求項6】
前記式(2)中のR31は、ヨウ素原子を含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のレジスト材料。
【請求項7】
前記式(1)中のRは、芳香族炭化水素基を含むことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のレジスト材料。
【請求項8】
前記レジスト材料は、(VI)クエンチャーをさらに含むものであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のレジスト材料。
【請求項9】
パターン形成方法であって、
(i)請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のレジスト材料を用いて基板上にレジスト材料を塗布してレジスト膜を形成する工程と、
(ii)前記レジスト膜を高エネルギー線で露光する工程と、
(iii)前記露光されたレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程と
を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項10】
前記工程(i)において、前記レジスト膜を130℃以上でプリベークする工程をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載のパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト材料及びパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が急速に進んでいる。5Gの高速通信と人工知能(artificial intelligence、AI)の普及が進み、これを処理するための高性能デバイスが必要とされているためである。最先端の微細化技術としては、波長13.5nmの極端紫外線(EUV)リソグラフィーによる5nmノードのデバイスの量産が行われている。更には、次世代の3nmノード、次次世代の2nmノードデバイスにおいてもEUVリソグラフィーを用いた検討が進められている。
【0003】
DUV光源、即ちKrF及びArFエキシマレーザーを用いたリソグラフィーにおいては、露光により感光剤から発生した酸を触媒として、ベースポリマー樹脂の反応を起こすことにより、現像液に対する溶解性を変化させる化学増幅型のレジストが高感度、高解像リソグラフィーを実現し、実生産工程に使用される主力レジストとして微細化を牽引した。
【0004】
EUV等の次世代リソグラフィーにおいても、引き続き化学増幅型レジストが広く検討されており、商用化に至っている。一方、微細化に伴い、レジスト性能向上に対する要求は一層高まっている。特に、レジストパターン寸法のばらつき(LER:ラインエッジラフネス)は、基板加工後のパターン寸法ばらつきに影響し、最終的にはデバイスの動作安定性に影響し得るため、これを極限まで抑制することが求められる。
【0005】
化学増幅型レジストにおけるLERの因子としては、対露光量に対する溶解速度変化曲線(溶解コントラスト)の特性、酸拡散長、混合組成物の相溶性等、種々挙げられているが、それらに加え、ポリマー樹脂の鎖長・分子サイズ・分子量の影響が最近注目されている。ポリマーの分子量を小さくして現像時の溶解単位を小さくすることがLER低減に有効だと考えられる。
【0006】
しかし、ベースポリマーの低分子量化に伴い、強度の低下によるパターン倒れや、ガラス転移点(Tg)降下に伴う酸拡散の助長、および未露光部の現像液溶解性の上昇に伴う解像性の低下などといった問題が発生する恐れがある。これらの問題を解決するため、酸分解性を有する架橋基によりポリマー鎖間を架橋する試みがなされている。架橋により予め分子量を大きくすることができると共に、露光時に発生した酸により、露光部の架橋を分解させることができる。特許文献1には、カルボキシ基もしくは水酸基を有する単位と、ジビニルエーテル単位を反応して得られる架橋型ポリマーが開示されている。
【0007】
一方で、ポリマー鎖同士の架橋によって生成される架橋型ポリマーは分子量が非常に大きくなり、レジスト溶液として長時間保存するとポリマー同士の凝集が発生し、欠陥数が増大するという問題が生じる。
【0008】
特許文献2には、反応性部位を有するポリマーとモノマー架橋剤とを含有するレジスト材料が開示されている。
【0009】
更に、特許文献3では、反応性部位を有するポリマーとモノマー架橋剤及び熱酸発生剤を含有させることで、分子内架橋をもたらすポジ型感熱性レジスト材料が開示されている。
【0010】
しかしながら、基板上に塗布後の焼成工程において、架橋剤とポリマー間の架橋反応が十分に進行せず、残存するモノメリックな成分がリソ性能に悪影響を与えるという問題がある。また、光酸発生剤の作用により露光部で生じた酸が未露光部に拡散すると、容易に架橋構造が分解してしまうという問題も存在する。また、架橋反応の促進を目的としてレジスト溶液に酸を添加するのは、溶液保存中に架橋反応が進行してしまうため、膜厚の変動などといった、保存安定性上の問題を生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第5562651号公報
【文献】国際公開WO2018/079449号公報
【文献】特開2000―187326
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
架橋剤としてビニルエーテル基を有する化合物を含有するレジストでは、カルボキシ基や水酸基に対する付加反応によりアセタール構造を形成する。一方で、生成するアセタール構造は、光酸発生剤から生じる強酸成分の作用により容易に分解するため、露光部では低分子量、未露光部では高分子量のレジスト膜となり、溶解コントラストを高めることができる。
【0013】
しかしながら、従来の架橋剤含有レジストでは、短時間の焼成工程において架橋反応が十分に進行せず、架橋剤が未反応のままに残存することになる。また、アセタール構造は非常に分解しやすいため、露光部で生じた強酸成分の拡散により、容易に分解してモノマー成分を生じる。こうした成分は、レジスト膜において可塑剤のような効果を示し、膜のガラス転移点を降下させるため、露光により生じた酸の拡散を助長し、リソグラフィー性能の悪化を招くという問題を抱えていた。また、架橋反応を促進させることを目的として、レジスト溶液に酸を添加するのは、溶液保存中の望まない架橋反応の進行に起因する、保存安定性上の問題を抱えていた。
【0014】
本発明は、前記事情に鑑みなされたもので、従来のポジ型レジスト材料を上回る感度及び解像度、溶解コントラストを有し、エッジラフネスや寸法バラツキが小さく、露光後のパターン形状が良好であるレジスト材料、及びパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明では、
レジスト材料であって、
(Ia)水酸基又はカルボキシ基を含む繰り返し単位(A)を含有するポリマーと、
(II)下記式(1)で表される構造を有する架橋剤と、
(III)下記式(2)で表される構造を有する熱酸発生剤と、
(IV)有機溶剤と、
(V)活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する成分と、
を含有するものであることを特徴とするレジスト材料
を提供する。
【化1】
[式中、Rは、置換基を有してもよいn価の有機基である。
は、単結合、エステル結合、及びエーテル結合から選ばれる連結基である。
は、単結合又は2価の有機基である。nは1~4の整数である。]
【化2】
[式中、R31は、ヘテロ原子、置換基を有してもよい1価の有機基である。R32~R34は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~15の1価炭化水素基である。また、R32、R33及びR34のいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成していてもよい。]
【0016】
このようなレジスト材料であれば、露光後のエッジラフネスや寸法バラツキが小さく、解像性に優れ、露光後のパターン形状が良好で、更に保存安定性も良好であるレジスト材料を提供できる。
【0017】
また、本発明は、
レジスト材料であって、
(Ib)水酸基又はカルボキシ基を含む繰り返し単位(A)と、活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する構造部位を有する繰り返し単位(C)とを含有するポリマーと、
(II)下記式(1)で表される構造を有する架橋剤と、
(III)下記式(2)で表される構造を有する熱酸発生剤と、
(IV)有機溶剤と、
を含有するものであることを特徴とするレジスト材料
を提供する。
【化3】
[式中、Rは、置換基を有してもよいn価の有機基である。
は、単結合、エステル結合、及びエーテル結合から選ばれる連結基である。
は、単結合又は2価の有機基である。nは1~4の整数である。]
【化4】
[式中、R31は、ヘテロ原子、置換基を有してもよい1価の有機基である。R32~R34は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~15の1価炭化水素基である。また、R32、R33及びR34のいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成していてもよい。]
【0018】
このようなレジスト材料であれば、露光後のエッジラフネスや寸法バラツキが小さく、解像性に優れ、露光後のパターン形状が良好で、さらに保存安定性も良好であるレジスト材料を提供できる。
【0019】
また、前記ポリマーに含有される前記繰り返し単位(C)は、下記式(c)で表されることが好ましい。
【化5】
[式中、Rc1は、水素原子又はメチル基である。
は、単結合、又はエステル結合である。Zは、単結合又は炭素数1~25の2価の有機基であり、エステル結合、エーテル結合、ラクトン環、アミド結合、スルトン環、及びヨウ素原子のうち1つ以上を含んでいてもよい。
Rfc1~Rfc4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基であるが、少なくとも1つはフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。
c2~Rc4は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基であり、Rc2、Rc3及びRc4のいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成していてもよい。]
【0020】
このようなレジスト材料であれば、アルカリ現像液に対する溶解性が良好なレジスト材料を提供できる。
【0021】
また、上記レジスト材料は、さらに(V)活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する成分を含むものであることが好ましい。
【0022】
このようなレジスト材料であれば、未露光部との溶解コントラストを向上させることができる。
【0023】
また、前記ポリマーに含有される前記繰り返し単位(A)は、下記式(a1)及び/又は(a2)で表されることが好ましい。
【化6】
[式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。Ya1は、それぞれ独立に、単結合、又はフェニレン基、ナフチレン基、エステル結合、エーテル結合、ラクトン環、アミド基、及びヘテロ原子のうち少なくとも1つ以上を有する炭素数1~15の2価の連結基である。Ya2は、それぞれ独立に、単結合、又はフェニレン基、ナフチレン基、エステル結合、エーテル結合、ラクトン環、アミド基、及びヘテロ原子のうち少なくとも1つ以上を有する2価の炭素数1~12の連結基である。Ra1は水素原子、フッ素原子、又はアルキル基であり、Ra1とYa2とは結合して環を形成してもよい。kは1又は2、lは0~4の整数であり、1≦k+l≦5である。mは0又は1である。]
【0024】
このようなレジスト材料であれば、光酸発生剤の作用により露光部で生じる酸の拡散を抑えることができる。
【0025】
また、前記式(2)中のR31は、ヨウ素原子を含むことが好ましい。
【0026】
このようなレジスト材料であれば、基板上でのレジスト材料中ポリマーの架橋反応を促進させることができる。
【0027】
また、前記式(1)中のRは、芳香族炭化水素基を含むことが好ましい。
【0028】
このようなレジスト材料であれば、露光部と未露光部とのコントラストを向上させることができる。
【0029】
また、前記レジスト材料は、(VI)クエンチャーをさらに含むものであることが好ましい。
【0030】
このようなレジスト材料であれば、光酸発生剤の作用により露光部で生じる酸の拡散を抑えることができる。
【0031】
また、本発明は、
パターン形成方法であって、
(i)前記レジスト材料を用いて基板上にレジスト材料を塗布してレジスト膜を形成する工程と、
(ii)前記レジスト膜を高エネルギー線で露光する工程と、
(iii)前記露光されたレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程と、
を含むパターン形成方法を提供する。
【0032】
このようなパターン形成方法であれば、エッジラフネスや寸法バラツキが小さく、解像性に優れ、露光後のパターン形状が良好なパターンを得ることができる。
【0033】
また、前記工程(i)において、前記レジスト膜を130℃以上でプリベークする工程をさらに含むことが好ましい。
【0034】
このようなパターン形成方法であれば、架橋剤による架橋反応を効率的に進行させることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明のレジスト材料は、反応性基を有するポリマー、ビニルエーテル架橋剤に加え、カルボン酸アンモニウム塩型の熱酸発生剤を含有している。この熱酸発生剤は、焼成工程の加熱によって弱酸を発生し、架橋反応を促進させる。発生するフルオロカルボン酸は架橋反応を促進するのに適した酸性度を有する。一方で、熱酸発生剤は弱酸塩であるため、レジスト溶液に添加しても、溶液保存中の望まない架橋反応は起こさないことから、保存安定性上の問題も解決される。
【0036】
また、レジスト材料がクエンチャー成分を含む場合、クエンチャー成分の効果により、溶液状態では中性の環境でありつつ、微小露光領域においては弱酸性の環境とすることができるため、露光部で発生した酸をトラップして酸の拡散をより抑制することができる。
【0037】
特定の熱酸発生剤とビニルエーテル架橋剤、を含有する本発明のレジスト材料は、前記効果によりポリマー鎖の架橋反応が効率よく進行し、露光後のパターン形状やラフネス、および解像性が優れており、保存安定性も良好であることから実用性が極めて高く、特に超LSI製造用あるいはEB描画によるフォトマスクの微細パターン形成材料、EBあるいはEUVリソグラフィー用のパターン形成材料として非常に有用である。本発明のレジスト材料は、例えば、半導体回路形成におけるリソグラフィーだけでなく、マスク回路パターンの形成、マイクロマシーン、薄膜磁気ヘッド回路形成にも応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の実施例と比較例のコントラストを比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
上述のように、エッジラフネスや寸法バラツキが小さく、解像性が優れ、露光後のパターン形状が良好で、さらに保存安定性も良好であるレジスト材料の開発が求められていた。
【0040】
本発明者は、前記課題を解決するべく検討を重ねた結果、特定の官能基を有する高分子化合物と特定のビニルエーテル架橋剤、および特定のカルボン酸塩型熱酸発生剤を含有するレジストにおいて、LERが小さくかつ解像性の優れるパターン形成を可能にし、保存安定性の問題も克服する本発明を完成させた。
【0041】
即ち、本発明の第1態様は、
レジスト材料であって、
(Ia)水酸基又はカルボキシ基を含む繰り返し単位(A)を含有するポリマーと、
(II)下記式(1)で表される構造を有する架橋剤と、
(III)下記式(2)で表される構造を有する熱酸発生剤と、
(IV)有機溶剤と、
(V)活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する成分と、
を含有するものであることを特徴とするレジスト材料である。
【化7】
[式中、Rは、置換基を有してもよいn価の有機基である。
は、単結合、エステル結合、及びエーテル結合から選ばれる連結基である。
は、単結合又は2価の有機基である。nは1~4の整数である。]
【化8】
[式中、R31は、ヘテロ原子、置換基を有してもよい1価の有機基である。R32~R34は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~15の1価炭化水素基である。また、R32、R33及びR34のいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成していてもよい。]
【0042】
また、本発明の第2態様は、
レジスト材料であって、
(Ib)水酸基又はカルボキシ基を含む繰り返し単位(A)と、活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する構造部位を有する繰り返し単位(C)とを含有するポリマーと、
(II)下記式(1)で表される構造を有する架橋剤と、
(III)下記式(2)で表される構造を有する熱酸発生剤と、
(IV)有機溶剤と、
を含有するものであることを特徴とするレジスト材料である。
【化9】
[式中、Rは、置換基を有してもよいn価の有機基である。
は、単結合、エステル結合、及びエーテル結合から選ばれる連結基である。
は、単結合又は2価の有機基である。nは1~4の整数である。]
【化10】
[式中、R31は、ヘテロ原子、置換基を有してもよい1価の有機基である。R32~R34は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~15の1価炭化水素基である。また、R32、R33及びR34のいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成していてもよい。]
【0043】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
[第1態様]
本発明の第1態様は、上記(Ia),(II),(III),(IV)及び(V)成分を含有するものであるレジスト材料である、以下、各成分について詳細に説明する。
【0045】
[(Ia)ベースポリマー]
本発明におけるベースポリマー(P)は、水酸基もしくはカルボキシ基を含む繰り返し単位(A)を含む。繰り返し単位(A)が後述の(II)架橋剤との反応部位として機能し、基板上で高分子量体を形成することで、光酸発生剤の作用により露光部で生じる酸の拡散を抑えることができる。
【0046】
繰り返し単位(A)としては、下記式(a1)又は(a2)で表されるものが好ましい。
【化11】
【0047】
式(a1)、および(a2)中、Rは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。
【0048】
式(a1)中、Ya1は、それぞれ独立に単結合、又はフェニレン基、ナフチレン基、エステル結合、エーテル結合、ラクトン環、アミド基、及びヘテロ原子のうち少なくとも一つ以上を有する炭素数1~15の2価の連結基である。
【0049】
式(a2)中、Ya2はそれぞれ独立に、単結合、又はフェニレン基、ナフチレン基、エステル結合、エーテル結合、ラクトン環、アミド基、及びヘテロ原子のうち少なくとも1つ以上を有する2価の炭素数1~12の連結基である。
【0050】
式(a2)中、Ra1は水素原子、フッ素原子、若しくはアルキル基であり、Ra1とYa2とは結合して環を形成してもよい。
【0051】
式(a2)中、kは、1又は2である。lは、0~4の整数である。ただし、1≦k+l≦5である。mは0又は1の整数である。
【0052】
繰り返し単位(a1)を与えるモノマーとしては以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化12】
【0053】
繰り返し単位(a2)を与えるモノマーとしては以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化13】
【0054】
ベースポリマー(P)に含まれる繰り返し単位(A)の含有量は、5mol%以上であることが好ましく、10mol%以上80mol%以下であることがより好ましい。
【0055】
繰り返し単位(A)としては、繰り返し単位(a1)、(a2)以外の繰り返し単位も用いることができる。
【0056】
前記ベースポリマー(P)は、さらに繰り返し単位(A)中のカルボキシ基の水素原子が酸不安定基で置換された繰り返し単位(B)を含有するのが好ましい。レジスト膜の、現像液に対する溶解性を変化させる主たる方法として、分子量を変化させること、および極性を変化させることが挙げられる。架橋剤(II)の作用により分子量変化の効果が得られるうえ、繰り返し単位(B)により極性変化の効果が得られるため、コントラストを著しく向上させることができる。
【0057】
前記繰り返し単位(B)は下記式(b)で表されることが好ましい。
【化14】
【0058】
式(b)中、Rは、水素原子又はメチル基である。Yは、単結合、又はフェニレン基、ナフチレン基、エステル結合、エーテル結合、ラクトン環、アミド基、及びヘテロ原子のうち少なくとも1つ以上を有する炭素数1~15の2価の連結基である。Rb1は酸不安定基である。
【0059】
繰り返し単位(b)を与えるモノマーとしては以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化15】
【0060】
【化16】
【0061】
また、Rb1で表される酸不安定基として、下記式(AL―3)-1~(AL-3)―19で表される基が挙げられるが、これらに限定されない。
【化17】
(式中、破線は、結合手である。)
【0062】
式(AL-3)-1~(AL-3)-19中、RL14は、それぞれ独立に、炭素数1~8の飽和ヒドロカルビル基又は炭素数6~20のアリール基である。RL15及びRL17は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~20の飽和ヒドロカルビル基である。RL16は、炭素数6~20のアリール基である。前記飽和ヒドロカルビル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。また、前記アリール基としては、フェニル基等が好ましい。Rは、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である。gは、1~5の整数である。
【0063】
ベースポリマー(P)に含まれる繰り返し単位(B)の含有量は、90mol%以下であることが好ましく、70mol%以下20mol%以上であることがより好ましい。
【0064】
[(II)架橋剤]
本発明における架橋剤(II)は、ベースポリマー(P)の構造単位(A)が有するカルボキシ基もしくは水酸基と付加反応を起こすビニルエーテル基を有している。基板上でベースポリマー同士を架橋することで分子量を大幅に増大し、酸の拡散および現像液に対する溶解を抑制する。また、架橋反応後に形成されるアセタール構造は、後述の露光により酸を発生する成分(V)から発生する強酸成分により分解し、露光部のみが低分子量化するため、露光部と未露光部とのコントラストが向上する。
【0065】
前記架橋剤(II)は下記式(1)で表される構造を有する。
【化18】
【0066】
式(1)中、Lは、単結合、エステル結合、エーテル結合から選ばれる連結基である。
【0067】
式(1)中、Rは単結合又は2価の有機基である。
【0068】
式(1)中、Rは置換基を有してもよいn価の有機基である。Rは環状構造を含むものが好ましく、その環構造が芳香族炭化水素基であるものがより好ましい。
【0069】
式(1)中、nは1~4の整数である。nは2以上であるのが好ましい。
【0070】
架橋剤(II)としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化19】
【0071】
【化20】
【0072】
架橋剤(II)の含有量は、ベースポリマー100質量部に対し、0.1~50質量部が好ましく、1~40質量部がより好ましい。前記架橋剤(II)は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0073】
[(III)熱酸発生剤]
本発明における熱酸発生剤(III)は、焼成工程で発生させた酸によって架橋反応を促進させる成分である。
【0074】
熱酸発生剤(III)はカルボン酸アニオンとアンモニウムカチオンからなる弱酸塩であり、系中で発生した酸は架橋反応を促進するが、形成されたアセタール結合の分解には寄与しない。
【0075】
熱酸発生剤(III)は下記式(2)で表される構造を有する。
【化21】
【0076】
式(2)中、R31は、ヘテロ原子、置換基を有してもよい1価の有機基である。前記有機基はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、ラクトン環、またはスルトン環を有してもよい、R31は芳香族炭化水素基を含有するものが好ましく、ヨウ素原子を含むものがより好ましい。
【0077】
式(2)中、R32~R34は、それぞれ独立にヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~15の1価炭化水素基である。また、R32、R33及びR34のいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成していてもよい。
【0078】
熱酸発生剤(III)のアニオン構造としては以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化22】
【0079】
【化23】
【0080】
【化24】
【0081】
【化25】
【0082】
熱酸発生剤(III)のカチオン構造としては以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化26】
【0083】
本発明のレジスト材料における熱酸発生剤(III)の含有量は、ベースポリマー(P)100質量部に対し、0.1~50質量部が好ましく、1~40質量部がより好ましい。前記熱酸発生剤(III)は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0084】
[(IV)有機溶剤]
本発明のレジスト材料は、有機溶剤を含有する。前記有機溶剤は、本発明のレジスト材料に含まれる各成分が溶解可能なものであれば、特に限定されない。前記有機溶剤としては、特開2008-111103号公報の段落[0144]~[0145]に記載の、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチル-2-n-ペンチルケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコールモノtert-ブチルエーテルアセテート等のエステル類;γ-ブチロラクトン等のラクトン類等が挙げられる。
【0085】
本発明のレジスト材料中、前記有機溶剤の含有量は、ベースポリマー100質量部に対し、100~10,000質量部が好ましく、200~8,000質量部がより好ましい。前記有機溶剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0086】
[(V)活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する成分]
本発明のレジスト材料は、さらに光酸発生剤を含有する。パターン露光により光酸発生剤から発生する酸は、後述するクエンチャー(VI)よりも酸性度の強い強酸であり、前記繰り返し単位(B)の有する酸不安定基や、架橋剤(II)によって形成されるアセタール結合を分解する。これにより、レジスト膜露光部の極性変化および低分子量化が起こるため、未露光部との溶解コントラストが向上する。
【0087】
前記光酸発生剤としては、例えば、活性光線又は放射線に感応して酸を発生する化合物が挙げられる。光酸発生剤としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいかなるものでも構わないが、スルホン酸、イミド酸又はメチド酸を発生するものが好ましい。好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N-スルホニルオキシイミド、オキシム-O-スルホネート型酸発生剤等がある。光酸発生剤の具体例としては、特開2008-111103号公報の段落[0122]~[0142]に記載されているものが挙げられる。
【0088】
本発明のレジスト材料における光酸発生剤(V)の含有量は、ベースポリマー(P)100質量部に対し、0.1~50質量部が好ましく、1~40質量部がより好ましい。前記光酸発生剤(V)は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0089】
また、上記の光酸発生剤として、下記式(3)で表されるスルホニウム塩が好適に使用できる。
【化27】
【0090】
式(3)中、R21~R23は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、後述の式(c)中のRc2~Rc4の説明において例示するものと同様のものが挙げられる。また、これらの基の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、これらの基の-CH-の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。また、R21とR22とが、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。このとき、前記環としては、式(c)の説明において、Rc2、Rc3及びRc4のいずれか2つが互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に形成し得る環として例示するものと同様のものが挙げられる。
【0091】
式(3)で表されるスルホニウム塩のカチオンとしては、後述の繰り返し単位(C)を与えるモノマーのスルホニウムカチオンとして例示するものと同様のものが挙げられる。
【0092】
式(3)中、Xaは、下記式(3A)~(3D)から選ばれるアニオンである。
【化28】
【0093】
式(3A)中、Rfaは、フッ素原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、後述する式(3A’)中のR111で表されるヒドロカルビル基として例示するものと同様のものが挙げられる。
【0094】
式(3A)で表されるアニオンとしては、下記式(3A’)で表されるものが好ましい。
【化29】
【0095】
式(3A’)中、RHFは、水素原子又はトリフルオロメチル基であり、好ましくはトリフルオロメチル基である。R111は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~38のヒドロカルビル基である。前記ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子等が好ましく、酸素原子がより好ましい。前記ヒドロカルビル基としては、微細パターン形成において高い解像度を得る点から、特に炭素数6~30であるものが好ましい。
【0096】
111で表されるヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、ウンデシル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、イコサニル基等の炭素数1~38のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、1-アダマンチルメチル基、ノルボルニル基、ノルボルニルメチル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、テトラシクロドデカニルメチル基、ジシクロヘキシルメチル基等の炭素数3~38の環式飽和ヒドロカルビル基;アリル基、3-シクロヘキセニル基等の炭素数2~38の不飽和脂肪族ヒドロカルビル基;フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等の炭素数6~38のアリール基;ベンジル基、ジフェニルメチル基等の炭素数7~38のアラルキル基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。
【0097】
また、これらの基の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、これらの基の-CH-の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。ヘテロ原子を含むヒドロカルビル基としては、テトラヒドロフリル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メチルチオメチル基、アセトアミドメチル基、トリフルオロエチル基、(2-メトキシエトキシ)メチル基、アセトキシメチル基、2-カルボキシ-1-シクロヘキシル基、2-オキソプロピル基、4-オキソ-1-アダマンチル基、3-オキソシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0098】
式(3A’)で表されるアニオンを含むスルホニウム塩の合成に関しては、特開2007-145797号公報、特開2008-106045号公報、特開2009-7327号公報、特開2009-258695号公報等に詳しい。また、特開2010-215608号公報、特開2012-41320号公報、特開2012-106986号公報、特開2012-153644号公報等に記載のスルホニウム塩も好適に用いられる。
【0099】
式(3A)で表されるアニオンとしては、特開2018-197853号公報の式(1A)で表されるアニオンとして例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0100】
式(3B)中、Rfb1及びRfb2は、それぞれ独立に、フッ素原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、式(3A’)中のR111で表されるヒドロカルビル基として例示したものと同様のものが挙げられる。Rfb1及びRfb2として好ましくは、フッ素原子又は炭素数1~4の直鎖状フッ素化アルキル基である。また、Rfb1とRfb2とは、互いに結合してこれらが結合する基(-CF-SO-N-SO-CF-)と共に環を形成してもよく、このとき、Rfb1とRfb2とが互いに結合して得られる基は、フッ素化エチレン基又はフッ素化プロピレン基であることが好ましい。
【0101】
式(3C)中、Rfc1、Rfc2及びRfc3は、それぞれ独立に、フッ素原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、式(3A’)中のR111で表されるヒドロカルビル基として例示したものと同様のものが挙げられる。Rfc1、Rfc2及びRfc3として好ましくは、フッ素原子又は炭素数1~4の直鎖状フッ素化アルキル基である。また、Rfc1とRfc2とは、互いに結合してこれらが結合する基(-CF-SO-C-SO-CF-)と共に環を形成してもよく、このとき、Rfc1とRfc2とが互いに結合して得られる基は、フッ素化エチレン基又はフッ素化プロピレン基であることが好ましい。
【0102】
式(3D)中、Rfdは、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、式(3A’)中のR111で表されるヒドロカルビル基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0103】
式(3D)で表されるアニオンを含むスルホニウム塩の合成に関しては、特開2010-215608号公報及び特開2014-133723号公報に詳しい。
【0104】
式(3D)で表されるアニオンとしては、特開2018-197853号公報の式(1D)で表されるアニオンとして例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0105】
なお、式(3D)で表されるアニオンを含む光酸発生剤は、スルホ基のα位にフッ素原子を有していないが、β位に2つのトリフルオロメチル基を有していることに起因して、ベースポリマー中の酸不安定基を切断するのに十分な酸性度を有している。そのため、光酸発生剤として使用することができる。
【0106】
[(VI)クエンチャー]
本発明のレジスト材料は、さらにクエンチャー(VI)を含んでもよい。本発明においてクエンチャー(VI)を用いると、露光部で発生した酸をトラップして拡散を抑制することができる。クエンチャー(VI)は下記式(4)で表される構造を有するカルボン酸アニオンとスルホニウムカチオンからなる弱酸塩であることが好ましく、架橋剤(II)の架橋反応を促進する触媒としての機能も有し得る。
【化30】
【0107】
このようにして系中で発生した弱酸は、架橋剤(II)により形成されたアセタール結合の分解には寄与せず、むしろ残存する未反応のビニルエーテル構造の架橋を促進する酸触媒として機能し得る。
【0108】
式(4)中、R41は、置換基を有してもよい1価の有機基である。前記有機基はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、ラクトン環、またはスルトン環を有してもよい。R41は芳香族炭化水素基を含有するものが好ましく、ヨウ素原子を含むものがより好ましい。
【0109】
式(4)中、R42~R44は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。また、R42、R43及びR44のいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成していてもよい。
【0110】
クエンチャー(VI)のアニオンの構造としては以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化31】
【0111】
【化32】
【0112】
【化33】
【0113】
【化34】
【0114】
クエンチャー(VI)のカチオンの構造としては、後述の繰り返し単位(C)におけるスルホニウムカチオンとして例示するものと同様のものが挙げられる。
【0115】
本発明のレジスト材料におけるクエンチャー(VI)の含有量は、ベースポリマー(P)100質量部に対し、0.1~50質量部が好ましく、1~40質量部がより好ましい。前記クエンチャー(VI)は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0116】
[界面活性剤]
本発明のレジスト材料は、前述した成分に加えて、界面活性剤を含んでもよい。
【0117】
前記界面活性剤としては、特開2008-111103号公報の段落[0165]~[0166]に記載されたものが挙げられる。界面活性剤を添加することによって、レジスト材料の塗布性を一層向上あるいは制御することができる。本発明のレジスト材料が前記界面活性剤を含む場合、その含有量は、ベースポリマー100質量部に対し、0.0001~10質量部が好ましい。前記界面活性剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0118】
[第2態様]
本発明の第2態様は、上記(Ib)、(II)、(III)、及び(IV)を含有するものであるレジスト材料である。本発明の第1態様では(Ia)ベースポリマーとは別に(V)成分として添加型の光酸発生剤を用いるのに対して、本発明の第2態様では(Ib)ベースポリマー自体が光酸発生剤の機能を有する。以下、各成分について詳細に説明する。
【0119】
[(Ib)ベースポリマー]
本発明におけるベースポリマー(P)は、水酸基又はカルボキシ基を含む繰り返し単位(A)と、活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する構造部位を有する繰り返し単位(C)とを含有するポリマーである。
【0120】
繰り返し単位(A)としては、上述の(Ia)ベースポリマーのところで説明したものと同様のものとすることができる。
【0121】
前記ベースポリマーは活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する構造部位を有する繰り返し単位(C)を含有する。繰り返し単位(C)は極性が高いため、繰り返し単位(C)を含有しかつ分子量の小さいポリマーは、アルカリ現像液に対する溶解性が高い。一方で、こうした易溶性成分を架橋により高分子量化すると、現像液溶解性が著しく低下する。この効果により、架橋部と非架橋部の溶解コントラストを大きく変化させることができる。
【0122】
上記繰り返し単位(C)として、下記式(c)で表される繰り返し単位(C)を用いることができる。
【化35】
【0123】
式(c)中、Rc1は、水素原子又はメチル基である。
【0124】
式(c)中、Zは、単結合、又はエステル結合である。Zは、単結合又は炭素数1~25の2価の有機基であり、エステル結合、エーテル結合、ラクトン環、アミド結合、スルトン環、及びヨウ素原子のうち1つ以上を含んでいてもよい。直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メタンジイル基、エタン-1,1-ジイル基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ブタン-2,2-ジイル基、ブタン-2,3-ジイル基、2-メチルプロパン-1,3-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基等の炭素数1~20のアルカンジイル基;シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基等の炭素数3~20の環式飽和ヒドロカルビレン基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。
【0125】
式(c)中、Rfc1~Rfc4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基であるが、少なくとも1つはフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。
【0126】
式(c)中、Rc2~Rc4は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。
【0127】
また、Rc2、Rc3及びRc4のいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成していてもよい。このとき、前記環としては、以下に示す構造のものが好ましい。
【化36】
(式中、破線は、Rc4との結合手である。)
【0128】
繰り返し単位(C)を与えるモノマーのアニオン構造としては以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化37】
【0129】
【化38】
【0130】
【化39】
【0131】
【化40】
【0132】
【化41】
【0133】
【化42】
【0134】
【化43】
【0135】
【化44】
【0136】
【化45】
【0137】
【化46】
【0138】
【化47】
【0139】
【化48】
【0140】
【化49】
【0141】
【化50】
【0142】
繰り返し単位(C)を与えるモノマーのスルホニウムカチオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化51】
【0143】
【化52】
【0144】
ベースポリマー(P)は、繰り返し単位(A)及び(C)に加えて、繰り返し単位(A)中のカルボキシ基の水素原子が酸不安定基で置換された繰り返し単位(B)を含有するのが好ましい。繰り返し単位(B)としては、上述の(Ia)ベースポリマーのところで説明したものと同様のものとすることができる。
【0145】
ベースポリマー(P)に含まれる繰り返し単位(C)の含有量は、50mol%以下であることが好ましく、30mol%以下5mol%以上であることがより好ましい。
【0146】
[(II)架橋剤]
(II)架橋剤としては、上述の第1態様のところで説明したものと同様のものとすることができる。
【0147】
[(III)熱酸発生剤]
(III)熱酸発生剤としては、上述の第1態様のところで説明したものと同様のものとすることができる。
【0148】
[(IV)有機溶剤]
(IV)有機溶剤としては、上述の第1態様のところで説明したものと同様のものとすることができる。
【0149】
[(V)活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する成分]
本発明の第2態様のレジスト材料には、(V)成分として添加型の光酸発生剤を配合してもよい。(V)成分としては、上述の第1態様のところで説明したものと同様のものとすることができる。
【0150】
[(VI)クエンチャー]
本発明の第2態様のレジスト材料には、(VI)成分としてクエンチャーを配合してもよい。(VI)成分としては、上述の第1態様のところで説明したものと同様のものとすることができる。
【0151】
[界面活性剤]
本発明の第2態様のレジスト材料には、界面活性剤を配合してもよい。界面活性剤としては、上述の第一態様のところで説明したものと同様のものとすることができる。
【0152】
[パターン形成方法]
本発明のレジスト材料はポジ型のレジスト材料として好適であり種々の集積回路製造に用いる場合は、公知のリソグラフィー技術を適用することができる。例えば、パターン形成方法としては、
(i)前述したレジスト材料を用いて基板上にレジスト材料を塗布してレジスト膜を形成する工程と、
(ii)前記レジスト膜を高エネルギー線で露光する工程と、
(iii)前記露光されたレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程と
を含む方法が挙げられる。
【0153】
[工程(i)]
まず、本発明のレジスト材料を、集積回路製造用の基板(Si、SiO、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜等)あるいはマスク回路製造用の基板(Cr、CrO、CrON、MoSi、SiO等)上にスピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の適当な塗布方法により塗布膜厚が0.01~2μmとなるように塗布する。これをホットプレート上で、30秒~20分間プリベークし、レジスト膜を形成する。架橋剤による架橋反応を効率的に進行させるべく、プリベークの温度は130℃以上が好ましい。
【0154】
[工程(ii)]
次いで、高エネルギー線を用いて、前記レジスト膜を露光する。前記高エネルギー線としては、紫外線、遠紫外線、EB、波長3~15nmのEUV、X線、軟X線、エキシマレーザー光、γ線、シンクロトロン放射線等が挙げられる。前記高エネルギー線として紫外線、遠紫外線、EUV、X線、軟X線、エキシマレーザー光、γ線、シンクロトロン放射線等を用いる場合は、直接又は目的のパターンを形成するためのマスクを用いて、露光量が好ましくは1~200mJ/cm程度、より好ましくは10~100mJ/cm程度となるように照射する。高エネルギー線としてEBを用いる場合は、露光量が好ましくは0.1~100μC/cm程度、より好ましくは0.5~50μC/cm程度で直接又は目的のパターンを形成するためのマスクを用いて描画する。なお、本発明のポジ型レジスト材料は、特に高エネルギー線の中でもKrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、EB、EUV、X線、軟X線、γ線、シンクロトロン放射線による微細パターニングに好適であり、特にEB又はEUVによる微細パターニングに好適である。
【0155】
露光後、ホットプレート上又はオーブン中で、好ましくは50~150℃、10秒~30分間、より好ましくは60~120℃、30秒~20分間PEB(ポストエクスポージャーベーク)を行ってもよい。PEBとは、レジスト膜露光後に行う加熱工程のことである。
【0156】
[工程(iii)]
露光後又はPEB後、0.1~10質量%、好ましくは2~5質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、3秒~3分間、好ましくは5秒~2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により露光したレジスト膜を現像することで、光を照射した部分は現像液に溶解し、露光されなかった部分は溶解せず、基板上に目的のポジ型のパターンが形成される。
【0157】
前記レジスト材料を用いて、有機溶剤現像によって現像を行うこともできる。このときに用いる現像液としては、2-オクタノン、2-ノナノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸ブテニル、酢酸イソペンチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、ギ酸イソペンチル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸ペンチル、乳酸イソペンチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、ギ酸ベンジル、ギ酸フェニルエチル、3-フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2-フェニルエチル等が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0158】
現像の終了時には、リンスを行う。リンス液としては、現像液と混溶し、レジスト膜を溶解させない溶剤が好ましい。このような溶剤としては、炭素数3~10のアルコール、炭素数8~12のエーテル化合物、炭素数6~12のアルカン、アルケン、アルキン、芳香族系の溶剤が好ましく用いられる。
【0159】
具体的に、炭素数3~10のアルコールとしては、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1-ブチルアルコール、2-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、tert-ペンチルアルコール、ネオペンチルアルコール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、3-メチル-3-ペンタノール、シクロペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、2,3-ジメチル-2-ブタノール、3,3-ジメチル-1-ブタノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、2-エチル-1-ブタノール、2-メチル-1-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-メチル-3-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-3-ペンタノール、4-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、4-メチル-3-ペンタノール、シクロヘキサノール、1-オクタノール等が挙げられる。
【0160】
炭素数8~12のエーテル化合物としては、ジ-n-ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジ-sec-ブチルエーテル、ジ-n-ペンチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ-sec-ペンチルエーテル、ジ-tert-ペンチルエーテル、ジ-n-ヘキシルエーテル等が挙げられる。
【0161】
炭素数6~12のアルカンとしては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、メチルシクロペンタン、ジメチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン等が挙げられる。炭素数6~12のアルケンとしては、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、ジメチルシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等が挙げられる。炭素数6~12のアルキンとしては、ヘキシン、ヘプチン、オクチン等が挙げられる。
【0162】
芳香族系の溶剤としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、メシチレン等が挙げられる。
【0163】
リンスを行うことによってレジストパターンの倒れや欠陥の発生を低減させることができる。また、リンスは必ずしも必須ではなく、リンスを行わないことによって溶剤の使用量を削減することができる。
【0164】
現像後のホールパターンやトレンチパターンを、サーマルフロー、RELACS技術又はDSA技術でシュリンクすることもできる。ホールパターン上にシュリンク剤を塗布し、ベーク中のレジスト膜からの酸触媒の拡散によってレジスト膜の表面でシュリンク剤の架橋が起こり、シュリンク剤がホールパターンの側壁に付着する。ベーク温度は、好ましくは70~180℃、より好ましくは80~170℃であり、ベーク時間は、好ましくは10~300秒であり、余分なシュリンク剤を除去し、ホールパターンを縮小させる。
【実施例
【0165】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0166】
[レジスト材料の調製及びその評価]
(1)レジスト材料の調製
界面活性剤としてオムノバ社製界面活性剤PolyFox PF-636を50ppmで溶解させた溶剤に、表1、2に示す組成で各成分を溶解させた溶液を、0.2μmサイズのフィルターで濾過して、レジスト材料(実施例用:R1~R17、比較例用:cR1~cR13)をそれぞれ調製した。各レジスト材料の内容について表1,2に示す。
【0167】
表1、表2中の各成分の内容は以下のとおりである。
・有機溶剤:PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
DAA(ジアセトンアルコール)
EL(乳酸エチル)
【0168】
・ベースポリマー:P-1~P-11、cP-1、cP-2
【化53】
【0169】
【化54】
【0170】
・光酸発生剤:PAG-1~PAG-5
【化55】
【0171】
・クエンチャー:Q-1~Q-5
【化56】
【0172】
・架橋剤:X-1、X-2、X-3、X-4
【化57】
【0173】
・熱酸発生剤:T-1~T-7、cT-1~cT-5
【化58】
【0174】
【化59】
【0175】
・その他添加剤:A-1、A-2、A-3、A-4
【化60】
【0176】
【表1】
【0177】
【表2】
【0178】
(2)架橋反応性評価(実施例1-1~1-19、比較例1-1~1-13)
レジスト材料R1~R17、cR1~13をSi基板上にスピンコートし、ホットプレートを用いて60秒間プリベークして膜厚50nmのレジスト膜を作成した。これを基板から剥がし、有機溶剤に溶解した後、溶剤としてジメチルホルムアミドを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算重量平均分子量を測定した。表3に実施例1-1~1-19のレジスト膜を作成したときのプリベーク時温度とプリベーク後の分子量を示す。比較例1-1~1-13の上記内容について表4に示す。
【0179】
(3)溶解コントラスト評価(実施例2-1~2-19、比較例2-1~2-9)
レジスト材料R1~R17、cR5~cR13を、8インチウエハ上に膜厚61nmで作成した日産化学(株)製反射防止膜DUV―42上にスピンコートし、ホットプレートを用いて60秒間プリベークして膜厚50nmのレジスト膜を作成した。これに、KrF露光機((株)ニコン製;S206D)を用いて露光し、ホットプレート上にて95℃で60秒間PEBを行い、2.38質量%のTMAH水溶液で、30秒間現像を行った。この現像処理後のレジスト膜厚を測定し、露光量と現像処理後のレジスト膜厚との関係をプロットし、溶解コントラストを分析した。更に、下記判定基準に従ってコントラストの評価を行い、実施例2-1~2-19、比較例2-1~2-9とした。また、膜厚の測定には(株)日立ハイテク製膜厚VM-2210を使用した。実施例2-1~2-19の結果を表5に、比較例2-1~2-9を表6に示す。
【0180】
上記溶解コントラスト評価における代表的な組成として、実施例2-9と比較例2-2のレジスト膜のコントラストカーブを図1に示す。なお、図1中の縦軸は現像処理後の膜厚を、処理前の膜厚で規格化した値である。表5中のコントラストの値は、レジスト膜の現像液溶解性が急激に変化するところの、露光量に対する膜厚変化の傾きを表すものである。膜厚が初期膜厚の80%以下となったところから、膜が溶けきるまでの区間において、横軸を露光量の対数、縦軸を規格化した膜厚としたときの傾きをコントラスト値とし、各レジスト組成物から形成されるレジスト膜のコントラストの判定について、コントラスト値の絶対値をもとに以下のように評価した。
(判定基準)
◎:コントラスト値の絶対値が10以上
〇:コントラスト値の絶対値が5以上10未満
×:コントラスト値の絶対値が5未満
【0181】
(4)保存安定性評価(実施例3-1~3-17、比較例3-1~3-4)
表1、表2に記載のレジスト材料を、40℃および23℃で2週間保存した後、8インチウエハ上に膜厚61nmで作成した日産化学(株)製反射防止膜DUV―42上にスピンコートし、ホットプレートを用いて60秒間プリベークして膜厚約50nmのレジスト膜を作成した。膜厚の測定には(株)日立ハイテク製膜厚計VM―2210を使用した。これに、KrF露光機((株)ニコン製;S206D、NA0.68、σ0.75、2/3輪体照明、6%ハーフトーン位相シフト)を用いて露光し、ホットプレート上にて95℃で60秒間PEBを行い、2.38質量%のTMAH水溶液で30秒間現像を行った。現像後のパターンを(株)日立ハイテクノロジーズ製測長SEM(S9380)で観察し、感度を評価した。40℃保管品と23℃保管品を、それぞれ同一条件で評価したときの感度の差を下記判定基準で評価した。実施例3-1~3-17の結果を表7に、比較例3-1~3-4の結果を表8に示す。
(判定基準)
〇:感度差が2%未満
×:感度差が2%以上
【0182】
(5)リソグラフィー評価(実施例4-1~4-17、比較例4-1~4-9)
表1,2に記載のレジスト材料R1~R17、cR5~cR13を、8インチウエハ上に膜厚61nmで作成した日産化学(株)製反射防止膜DUV―42上にスピンコートし、ホットプレートを用いて60秒間プリベークして膜厚約50nmのレジスト膜を作成した。これを、エリオニクス社製、電子線描画装置(ELS―F125、加速電圧125kV)を用いて露光し、ホットプレート上にて95℃で60秒間PEBを行い、2.38質量%のTMAH水溶液で30秒間現像を行った。現像後のパターンを(株)日立ハイテクノロジーズ製測長SEM(S9380)で観察し、その結果から算出した標準偏差(σ)の3倍値(3σ)をパターン幅のバラツキ(LWR)として求めた。さらに、下記判定基準に基づきパターン幅のバラツキを評価した。実施例4-1~4-17の結果を表9に、比較例4-1~4-9の結果を表10に示す。
(判定基準)
◎:LWRの値が3.0未満
〇:LWRの値が3.0以上3.5未満
×:LWRの値が3.5以上
【0183】
【表3】
【0184】
【表4】
【0185】
【表5】
【0186】
【表6】
【0187】
【表7】
【0188】
【表8】
【0189】
【表9】
【0190】
【表10】
【0191】
表3、表4に示す通り、ビニルエーテル架橋剤及び熱酸発生剤を含有する実施例1-1~1-19では、プリベーク後の平均分子量が増大して、架橋反応が進行したことが示唆された。なお実施例1-11では、プリベーク後のレジスト膜がGPC溶媒に不溶となるほど架橋したことが分かった。一方で、スルホン酸又はスルホン酸塩型、フッ素原子を含まないカルボン酸塩型の熱酸発生剤を添加した際には分子量増大効果が見られなかった。熱酸発生剤より発生した酸の酸性度が弱すぎる場合は架橋触媒として機能せず、また、酸性度が強すぎる場合は、架橋後速やかにアセタール結合の分解反応が起こっていることが示唆され、発生した酸の酸性度の制御が重要であることが分かった。
【0192】
図1に示す通り、実施例2-9は比較例2-2と比較し、露光部と未露光部の溶解度差が大きく異なり、露光量に対する現像処理後の膜厚変化が急峻であることが確認できる。表5、表6中のコントラストの値は、この膜厚変化の傾きを表しており、ネガ型レジストでは正の傾き、ポジ型レジストでは負の傾きとなる。また、絶対値が大きいほど溶解コントラストに優れることを表す。反応性基を有するポリマー、架橋剤、およびフルオロカルボン酸塩型熱酸発生剤を含有する実施例群2-1~2-19はいずれも良好なコントラストを示し、これは熱酸発生剤による未露光部の架橋が促進されたことに起因すると考えられる。また、架橋部位をより多く有するビニルエーテルを含有するレジストが、良好なコントラストを示すことが明らかとなった。加えて、ベースポリマー中に、光により酸を発生する構造単位(C)を有するレジスト組成物が特に優れたコントラストを示した。構造単位(C)は極性および親水性が高いため、(C)を含有する未架橋の低分子量体は現像液溶解性が高い。一方で、こうした易溶性成分を架橋により高分子量化すると、現像液溶解性が著しく低下する。この効果により、露光部・未露光部間の溶解コントラストを大きく変化させることができるため、ベースポリマーは構造単位(C)を有するのが好ましい。
【0193】
熱酸発生剤を含有せず架橋促進剤として酸A-1~A-4が微量添加されたレジスト組成物cR1-cR4を使用したレジスト膜は、表8の比較例3-1~3-4に示す通り、長期保管中に膜厚が厚くなり、また、感度差の値も大きくなって低感度化していた。これは、比較例3-1~3-4は架橋促進剤として酸が含まれるため、溶液として保管している最中に架橋反応が進行し、ポリマーが高分子量化したことに起因する変化であると考えられる。したがって、構造単位(C)を有していても、熱酸発生剤を含有しないレジスト材料は、保存安定性に劣ることが示された。
【0194】
表9に示されたように、反応性基を有するポリマー、架橋剤、およびフルオロカルボン酸塩型熱酸発生剤を含有する実施例4-1~4-17はいずれも良好なLWRを示した。また、ベースポリマー中に、光により酸を発生する構造単位(C)を有するレジスト組成物が特に優れたLWRを示した。
【0195】
以上の結果より、本発明のレジスト材料は、高い溶解コントラストと良好なLWRを満たすため、エッジラフネスや寸法バラツキが小さく、解像性が優れ、露光後のパターン形状が良好で、保存安定性が良好であるレジスト材料であることが示された。
【0196】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術範囲に包含される。
図1